JPH09512710A - 組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログ - Google Patents

組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログ

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JPH09512710A
JPH09512710A JP7528513A JP52851395A JPH09512710A JP H09512710 A JPH09512710 A JP H09512710A JP 7528513 A JP7528513 A JP 7528513A JP 52851395 A JP52851395 A JP 52851395A JP H09512710 A JPH09512710 A JP H09512710A
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シーダーホルム−ウィリアムズ,スチュアート・アンソニー
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    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Abstract

(57)【要約】 本発明は、フィブリン組成物に使用するフィブリン物質およびフィブリンモノマーベースのシーラントの活性化剤としてトロンビンを使用する必要を回避した方法に関する。本発明は、実質的に純粋なフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、他のN末端伸長を有するフィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリン−アナログを提供する。本発明はさらに、変異体フィブリンγ鎖を提供する。変異体γ鎖は、フィブリン−ホモログ中に導入されたときに該ホモログが自己重合する能力を欠くがフィブリノーゲンと非共有結合を形成しそれによってシーラントとして有用な混合ポリマーを形成する能力は有するように、コイルドコイル形成領域に続くC末端領域中に1またはそれ以上の変異および/または欠失を含む。本発明はまた、フィブリン鎖またはフィブリン鎖変異体をコードするヌクレオチド配列、およびフィブリン鎖、フィブリン鎖変異体、フィブリンモノマー、フィブリン前駆体またはフィブリノーゲン−アナログを発現する細胞をも提供する。本発明はさらに、その成分フィブリン鎖からフィブリン関連タンパク質をインビトロで形成する方法を提供する。本発明はさらに、自己重合できない第一のフィブリン関連タンパク質を自己重合できない第二のフィブリン関連タンパク質と反応させることによるフィブリンシーラントの形成方法をも提供する。本発明の方法によって製造したフィブリン鎖は、血管形成、血小板凝集、および他の生理学的プロセスを制御する重要なフィブリン由来因子の製造のための実質的に純粋な出発物質の供給源として用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】 組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログ 本発明は、フィブリン組成物に使用するフィブリン物質および活性化試薬とし てトロンビンを使用する必要を回避した方法に関する。 定義 本明細書において使用する以下に列挙した語句は、指摘した意味を有する。特 に断らない限り、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」の語句 は、ペプチド結合によって結合した2またはそれ以上のアミノ酸を同じ意味にて 使用する。 α鎖 = α鎖はフィブリンの3成分ポリペプチド鎖のうちの一つである。N 末端フィブリノペプチドAの配列が欠失されているのを除けば、α鎖のアミノ酸 配列は一般にフィブリノーゲンのAα鎖のものと同じである。α鎖はまた、フィ ブリンα鎖とも称する。 Aα鎖 = N末端Aフィブリノペプチドが結合したα鎖。Aα鎖はまたフィ ブリノーゲンAα鎖とも称する。 アミノ酸の番号付けおよび順序 = フィブリン鎖に関するアミノ酸の番号付 けはすべて、プロセシングされていない遺伝子産物の最初のメチオニンから開始 するヒトの配列に関するものである。非ヒト配列に関しては、本明細書に示す配 列範囲は相同配列をさす。たとえば、ヒトγ鎖については、プロセシングされた ポリペプチドの最初のアミノ酸は、プロセシングされていない遺伝子産物のN末 端メチオニンから数えて残基27である。本願の目的上、アミノ酸は、一方が他 方よりN末端に近い場合にそのアミノ酸を他方のアミノ酸の「前」に並べてある 。 β鎖 = β鎖はフィブリンの3成分ポリペプチド鎖のうちの一つである。N 末端フィブリノペプチドBの配列が欠失されているのを除けば、β鎖のアミノ酸 配列は一般にフィブリノーゲンのBβ鎖のものと同じである。β鎖はまた、フィ ブリンβ鎖とも称する。 Bβ鎖 = N末端Bフィブリノペプチドが結合したβ鎖。Bβ鎖はまたフィ ブリノーゲンBβ鎖とも称する。 鎖 = フィブリン、フィブリン−ホモログ、フィブリノーゲンまたはフィブ リノーゲン−アナログの成分ポリペプチド。 コイルドコイル(coiled-coil)領域 = D−ドメインを中央のE−ドメイン と連結しているフィブリン、フィブリン−ホモログ、フィブリノーゲンまたはフ ィブリノーゲン−アナログの領域は、らせん領域の「コイルドコイル」から構成 され、各らせん領域はα鎖、β鎖およびγ鎖またはvγ鎖のうちの一つから形成 されている。これらのらせん領域は一緒になってコイルドコイル領域を構成する 。 γ鎖のC末端部分の保存された2つのCys残基 = 一般に天然のすべての γ鎖配列のC末端部分中に認められるCys残基。ヒト配列では、これらは残基 352および365である。 構築物 = 組換えDNA技術を使用して産生されたヌクレオチド配列。 架橋フィブリンポリマー = 第XIII因子によって形成された架橋などの、 重合したフィブリン関連タンパク質間に共有結合架橋が形成されたフィブリンポ リマー。 desBBフィブリン = Bフィブリノペプチドを欠くがAフィブリノペプ チドは保持しているフィブリン。 desBBフィブリンモノマー = desBBフィブリンで形成されたフィ ブリンポリマーと対比した、個々のdesBBフィブリン単位。 伸長したα鎖または伸長したβ鎖 = N末端伸長を有するα鎖またはN末端 伸長を有するβ鎖。 フィブリン = 重合して血餅を形成しうるフィブリノーゲンの多くの誘導体 (たとえば、フィブリンI、フィブリンIIまたはdesBBフィブリン)のうち の一つ。これら誘導体は、フィブリノーゲンからAフィブリノペプチドまたはB フィブリノペプチドを開裂することによって創製される。 フィブリンI = Aフィブリノペプチドを欠くが、Bフィブリノペプチドは 保持しているフィブリン。フィブリンIは重合して血餅を形成できる。 フィブリンIモノマー = フィブリンIは重合可能であるため、「フィブリ ンIモノマー」は個々のフィブリンI単位を同定するために使用する。 フィブリンII = AフィブリノペプチドおよびBフィブリノペプチドを欠 くフィブリン。フィブリンIIは重合して血餅を形成できる。 フィブリンIIモノマー = フィブリンIIは重合可能であるため、「フィ ブリンIIモノマー」は個々のフィブリンII単位を同定するために使用する。 フィブリン鎖 = フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログまたはフィブ リノーゲン−アナログを構成する鎖であり、α鎖、β鎖、γ鎖またはvγ鎖のよ うな修飾したγ鎖を含む。 フィブリン鎖前駆体 = 開裂してフィブリン鎖を生成することができるN末 端リーダーペプチドを含むフィブリン鎖の前駆体。フィブリン鎖前駆体は特定の タイプのN末端伸長を有するフィブリン鎖である。 N末端伸長を有するフィブリン鎖 = N末端側でペプチド結合を介してアミ ノ酸、ペプチドまたはタンパク質と結合したフィブリン鎖。 トロンビン認識配列を欠くN末端伸長を有するフィブリン鎖 = α鎖、β鎖 、γ鎖または修飾したγ鎖を生成するトロンビン開裂を受けない、α鎖、β鎖、 γ鎖または修飾したγ鎖へのN末端伸長。 タンパク質加水分解プロセシングに適合していないN末端伸長を有するフィブ リン鎖 = α鎖、β鎖、γ鎖または修飾したγ鎖を生成するタンパク質加水分 解開裂を受けない、α鎖、β鎖、γ鎖または修飾したγ鎖へのN末端伸長。 フィブリン−ホモログ = このものは、γ鎖が修飾したγ鎖で置換されてい る点でフィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマーまたはdesBBフィブ リンモノマーと異なる。 フィブリン−ホモログ前駆体 = 1またはそれ以上のフィブリン鎖前駆体お よび修飾したγ鎖かまたは修飾したγ鎖前駆体のいずれかを含むフィブリノーゲ ン様分子。フィブイン−ホモログ前駆体は,その構成鎖上に1またはそれ以上の リーダーペプチドを含む。リーダーペプチドは、フィブリン−ホモログ前駆体か らインビボまたはインビトロでタンパク質加水分解的にプロセシングされてフィ ブリン−ホモログを生成しうる。 フィブリンまたはフィブリノーゲン関連タンパク質 = 2つのα鎖相同ポリ ペプチド、2つのβ鎖相同ポリペプチドおよび2つのγ鎖またはvγ鎖相同ポリ ペプチドを含む、フィブリンまたはフィブリノーゲンに関連するタンパク質。 フィブリンポリマー = 共有結合または非共有結合により会合してフィブリ ン関連タンパク質のポリマーを形成したフィブリン関連タンパク質の組成物。 フィブリン前駆体 = 1またはそれ以上のフィブリン鎖前駆体を含むフィブ リンの前駆体。フィブリン前駆体は、その構成鎖上に1またはそれ以上のリーダ ーペプチドを含む。リーダーペプチドは、フィブリン前駆体からインビボまたは インビトロでプロセシングされてフィブリンを生成しうる。 フィブリンシーラント(sealant) = 血液凝固の最終段階を模倣した作用を 有することによってフィブリン血餅を生成する生物学的接着剤。フィブリンシー ラントは、出血を制御し、または2つの組織を互いに接着させるために手術にお いて有用である。 フィブリノーゲン = 血餅を形成する基礎単位を提供するように機能する、 動物の循環系に認められるタンパク質。フィブリノーゲンは、2つのAα鎖、2 つのBβ鎖および2つのγ鎖を含む。フィブリノーゲンがフィブリンモノマーに プロセシングされると、フィブリンモノマーは重合して血餅を形成することがで きる。 フィブリノーゲン−アナログ = α鎖またはβ鎖への少なくとも一つのN末 端伸長(該伸長は、それぞれ、AフィブリノペプチドまたはBフィブリノペプチ ドと異なる)を有する点でフィブリンと異なる分子。成分α鎖またはβ鎖のすべ てがN末端伸長を有する場合には、フィブリノーゲン−アナログは一般に自己重 合できない。 フィブリノーゲン鎖 = フィブリノーゲン鎖はAα鎖またはBβ鎖である。 フィブリノーゲン半分子(half molecule) = フィブリノーゲン半分子は、 Aα鎖、Bβ鎖およびγ鎖を有するフィブリノーゲンの前駆体である。2つのフ ィブリノーゲン半分子はフィブリノーゲンを形成することができる。 γ鎖 = γ鎖はフィブリンまたはフィブリノーゲンの3成分ポリペプチド鎖 のうちの一つである。γ鎖はまたフィブリンγ鎖とも称する。 遺伝子融合 = 異種遺伝子のコード配列に機能的に連結したプロモーターか らなる遺伝子構築物であって、該プロモーターは該コード配列の転写を制御する もの。 遺伝子工学 = 組換えDNA方法により作られたヌクレオチド配列の導入お よび維持により宿主細胞の遺伝子を変えること。遺伝子工学には、宿主細胞にお いて自律複製が可能または可能でない組み込まれた(integrative)または組み込 まれていない(non-integrative)ヌクレオチド配列の形質転換、形質導入または トランスフェクション、並びに遺伝子が変えられた細胞を有する1またはそれ以 上の組織を有するトランスジェニック多細胞生物体を製造する方法が含まれるが 、これらに限られるものではない。 異種リーダーペプチド = 該リーダーペプチドが結合したタンパク質とは異 なるタンパク質に由来するリーダーペプチド。 相同ポリペプチド = α鎖、β鎖またはγ鎖の配列の有意部分、たとえば、 これら鎖の一つの少なくともおよそ半分の配列と高いホモロジーを有するポリペ プチド。 インビトロ = その一部または全体が完全な細胞の使用を含まないプロセス をいう。たとえば、フィブリンのインビトロ産生は、遺伝子操作した細胞により 産生されたフィブリン鎖のインビトロアセンブリーを含みうる。それはまた、細 胞により産生されたフィブリン鎖前駆体のインビトロプロセシングおよびその結 果得られるフィブリン鎖のフィブリンへのインビトロアセンブリー、またはフィ ブリン鎖前駆体のフィブリン前駆体へのインビトロアセンブリーおよびフィブリ ン前駆体のフィブリンへのインビトロプロセシングをも含む。 インビボ = そのすべてが完全な細胞の使用を含むプロセスをいう。たとえ ば、遺伝子操作した細胞中でのフィブリンのインビボ産生は、フィブリン鎖前駆 体をコードする発現構築物からの完全で機能性のフィブリンの細胞発現、プロセ シングおよびアセンブリーを含む。 リーダーペプチド = ポリペプチドまたはタンパク質のN末端にあるポリペ プチド。リーダーペプチドは、単一のアミノ酸から数個のアミノ酸長のペプチド およびタンパク質全体にいたるまで、いかなるサイズのものであってもよい。本 明細書においてはリーダーペプチドはすべての場合に「プロ」機能を有する。す なわち、リーダーペプチドは、たとえばタンパク質加水分解プロセシングにより 、それが結合したポリペプチドまたはタンパク質から特異的かつ完全に除去され うる。幾つかの場合においては、リーダーペプチドはさらに、それが結合したタ ンパク質の細胞区画化(compartmentalization)または細胞外輸送を指令するとい う点で「プレ」機能を有する。幾つかの場合においては、リーダーペプチドは、 細胞区画化または細胞外輸送に付随する膜移動(translocation)段階の間にプロ セシングされうる。 修飾したγ鎖 = フィブリン−ホモログ中に導入されたときに該ホモログが 自己重合する能力は欠くがフィブリノーゲンと非共有結合を形成する能力は有す るように、すべてのvγ鎖および化学的に修飾されたγ鎖を包含する。 天然のフィブリン = 動物に由来するフィブリン。 非共有結合 = 水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水相互作用、静 電相互作用などを含む、タンパク質が安定な会合を形成する相互作用。非共有結 合の存在は共有結合(すなわち、架橋)の可能性を排除するものではない。 非共有結合したフィブリンポリマー = 会合したフィブリン関連タンパク質 が非共有結合により会合しているフィブリンポリマー。 PCR = ポリメラーゼ連鎖反応 組換えフィブリン、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログ = フィブリン鎖およびフィブリン鎖前駆体をコードする発現構築物を有する 遺伝子操作した細胞により産生されたフィブリン、フィブリン−ホモログまたは フィブリノーゲン−アナログ。 RNA = リボ核酸。 自己重合 = 第一のタンパク質分子が第二のタンパク質分子に共有結合また は非共有結合により結合した同じタンパク質分子の集団。 安定な非共有結合 = 血餅を形成するに十分に安定なフィブリン関連タンパ ク質間での結合。 実質的に純粋 = 化合物が少なくとも50重量%の問題の物質を含む純度の 程度。 適当な細胞 = 本発明の目的のための「適当な細胞」は、特許請求されたヌ クレオチド配列によってコードされた選択されたN末端伸長をタンパク質加水分 解除去によりプロセシングしうる細胞である。 折り畳みを解除する量の変性剤 = タンパク質の折り畳みを実質的に解除す るに十分な組成物の量であり、一般に2.5M尿素と実質的に等価なポリペプチ ドの折り畳み解除活性を有する変性剤の量である。 vγ鎖または変異体γ鎖 = フィブリン−ホモログ中に導入されたときに該 ホモログが自己重合する能力は欠くがフィブリノーゲンと非共有結合を形成する 能力は有するように、コイルドコイル形成領域に続くC末端領域中に1またはそ れ以上の変異および/または欠失を含む変異体γ鎖。フィブリンおよび血餅 哺乳動物の止血、すなわち血液損失の防止の一つの機構は、血餅の形成である 。ヒトにおける血餅形成は複雑なカスケード反応により起こり、その最終段階は トロンビン、カルシウムイオンおよび活性化第XIII因子による最終的に架橋さ れたフィブリンIIポリマーへのフィブリノーゲンの変換であり、該フィブリン IIポリマーは不溶性フィブリンIIポリマーとしても知られる不溶性のフィブ リン血餅である。 フィブリノーゲンは血液の血漿タンパク質の約2〜4g/lを占め、(Aα)2 、(Bβ)2およびγ2で示されるジスルフィド結合した3対のポリペプチド鎖から なる複合タンパク質である。「A」および「B」は、それぞれフィブリノペプチ ドAおよびフィブリノペプチドBとして知られる2つの小さなアミノ末端ペプチ ドを示す。フィブリノーゲンのこれら6つのポリペプチド鎖は、直線配置で少な くとも3つの球状ドメイン、2つの末端「D−ドメイン」および中央の「E−ド メイン」に折り畳まれている。E−ドメインは、フィブリノーゲン分子中のポリ ペプチド鎖の6つのすべてのN末端残基を含んでいると考えられている。各D− ドメインは、一つのAα鎖、一つのBβ鎖、および一つのγ鎖からのC末端配列 を 含む。 不溶性フィブリン血餅(すなわち、架橋されたフィブリンIIポリマー)の形成 は、トロンビンによってフィブリンIモノマーに変換されたフィブリノーゲンで 開始されると考えられている。この変換は、フィブリノーゲンの2つの各Aα鎖 から16アミノ酸のフィブリノペプチドA(G1−R16)がトロンビンに媒体され て開裂し、アミノ酸配列G17−P−R−V20−の新たなN末端を有する2つの各 α鎖を生成することを含む。フィブリンIモノマーは、該変換されたフィブリン モノマーのE−ドメイン(いまや接近可能な非共有結合部位を有する)と異なるフ ィブリンIまたはフィブリンIIモノマーのD−ドメインとの間の分子間相互作 用(すなわち、非共有結合)により、他のフィブリンIまたはフィブリンIIモノ マーと自発的に重合しうると思われる。フィブリンモノマーの各D−ドメインは 、フィブリンIまたはフィブリンIIモノマーのE−ドメインと安定に相互作用 しうる重合部位を有する。 一つのフィブリンIモノマーの2つのE−ドメイン重合部位と2つの相補的な D−ドメイン重合部位(それぞれ、2つの異なるフィブリンIモノマーからのも の)との接触は、半分互い違いに重複して分子接触した、直線状のフィブリンフ ィブリル(すなわち、ポリマー)を形成すると思われる。このようにして生成した フィブリンIポリマーは、しばしば可溶性のフィブリンIポリマーと呼ばれる。 なぜなら、このフィブリンIポリマーは適当な化学的手段で処理することによっ て脱重合させ、フィブリンIモノマーに再度変換することができるからである。 フィブリン血餅の形成における次の段階は、フィブリンIモノマーのフィブリ ンIIモノマーへの変換を含む。この段階は、フィブリンIの2つの各Bβ鎖か らフィブリノペプチドBをトロンビンを介して開裂することを含む。14アミノ 酸のフィブリノペプチドBの除去により、それぞれG−H−R−のN末端配列を 有するβ鎖が得られる。フィブリンIIモノマーはフィブリンIモノマーと同様 に、一つのフィブリンIIモノマーのE−ドメイン中の分子間相互作用部位(い まや開裂反応により接近可能になっている)と他のフィブリンIIまたはフィブ リンIモノマーのD−ドメインとの間の分子間相互作用により、他のフィブリン IIまたはフィブリンIモノマーと自発的に重合しうる。フィブリンIポリマー と同様、フィブリンIIポリマーもまた、しばしば可溶性のフィブリンIIポリ マーと呼ばれる。なぜなら、このフィブリンIIポリマーは適当な化学的手段で 処理することによって脱重合させ、フィブリンIIモノマーに再度変換すること ができるからである。E−ドメイン中のβ鎖N末端配列の暴露はフィブリン血餅 形成にとって不可欠である。というのは、それが、フィブリンIIポリマー中の 隣接するフィブリンIIモノマーの活性化第XIII因子を介した共有結合架橋を 容易にするからである。活性化第XIII因子はフィブリンポリマー中のフィブリ ンIモノマーをも架橋することができるが、この反応はフィブリンI上のフィブ リノペプチドBの存在のために効率が悪い。架橋されたフィブリンIIポリマー はしばしば不溶性のフィブリンIIポリマーと呼ばれる。なぜなら、それは脱重 合することができず、フィブリンIIモノマーに再度変換することができないか らである。 フィブリノーゲンから架橋されたフィブリンIポリマーおよび架橋されたフィ ブリンIIポリマーへの変換の模式図を図8に示す。 トロンビンおよび第XIII因子に加えて、カルシウムイオンがフィブリン血餅 形成において重要であり、多くの重要な役割を有していると考えられている。カ ルシウムイオンはプロトロンビンのトロンビンへの活性化に必要であり、トロン ビンは第XIII因子を活性化するので、カルシウムイオンは第XIII因子の活性化 に間接的に必要であると思われる。さらに、活性な第XIII因子は、カルシウム イオンの不在下ではフィブリンポリマーを架橋することができないカルシウム依 存性の酵素であると考えられている。カルシウムイオンはまたポリマー性のフィ ブリンに直接結合し、該フィブリンポリマー鎖の不透明度(opacity)および機械 的特性を変化させる。血液凝固の機構およびフィブリン血餅の成分の概略につい ては、ジャクソン(C.M.Jackson)、1980、Ann.Rev.Biochem.、49: 765〜811、およびフリー(B.Furie)およびフリー(B.C.Furie)、19 88、Cell、53:505〜518を参照。フィブリンシーラント フィブリンシーラントは、フィブリンポリマーを形成する血液凝固の段階に作 用を模倣させた生物学的な接着剤である。シーラントは、フィブリンポリマーが 不溶性のフィブリンポリマーに変換されるように設計することができる。一つの タイプのフィブリンシーラントはフィブリノーゲンを使用し、2つの成分からな る。一つの成分は濃縮したヒトフィブリノーゲン、ウシアプロチニンおよび第X III因子を含む。第二の成分はウシトロンビンおよび塩化カルシウムを含む。こ のタイプのシーラントの適用は一般に二連式の注射器を用いて行い、そうするこ とによってフィブリン血餅形成の所望部位へ両成分を同時に送達することが可能 となる。標的部位で2つの成分を混合すると、上記反応系列によりフィブリン血 餅が形成される。 このタイプのフィブリンシーラントのフィブリノーゲン成分は、典型的にプー ルしたヒト血漿から調製する。フィブリノーゲンは、種々の試薬、たとえばポリ (エチレングリコール)、ジエチルエーテル、エタノール、硫酸アンモニアまたは グリシンを用いた凍結沈降(cryoprecipitation)または沈降によりヒト血漿から 濃縮することができる。このタイプのフィブリンシーラントの概略については、 ブレナン(M.Brennan)、1991、Blood Reviews、5:240〜244;ギ ッブル(J.W.Gibble)およびネス(P.M.Ness)、1990、Transfusion、3 0:741〜747;マトラス(H.Matras)、1985、J.Oral Maxillofac Surg.、43:605〜611およびラーナー(Lerner)およびビヌール(N.B inur)、1990、J.of Surgical Research、48:165〜181を参照。 第二の新しいタイプのフィブリンシーラントは、主としてフィブリンIモノマ ーおよび/またはフィブリンIIモノマーからなる組成物を使用する。ヨーロッ パ特許出願第0592242号(1994年4月公開)を参照。これらタイプのシ ーラントでは、シーラントの適用前にトロンビンなどのタンパク質加水分解酵素 を用いてフィブリノーゲンからフィブリンIモノマーおよび/またはフィブリン IIモノマーおよび/またはdesBBフィブリンモノマーを調製する。これら フィブリンモノマーは適当な緩衝液を用いて可溶性の形態に保持される。有用な 緩衝液としては、低いpHおよび/またはカオトロープ剤を有するもの、好まし くは低いカルシウムレベルを有するかまたはカルシウムを含まないものが挙げら れる。このような溶液中のフィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマーまた はdesBBフィブリンモノマーは、該溶液を第二の溶液と混合して、フィブリ ンモノマーが自発的に重合してフィブリン血餅を形成することを可能にする条件 を有する混合物を生成することによってフィブリンポリマーに変換することがで きる。 フィブリンI、フィブリンIIおよびdesBBフィブリンモノマーベースの シーラントは、フィブリノーゲンベースのシーラントに比べ幾つかの利点を有す る。特に、フィブリンモノマーベースのシーラントはウシまたはヒトトロンビン を含まない。そのようなシーラントの使用は、フィブリンモノマーを自己由来で (すなわち、患者自身から)調製した場合に、受容者に外来タンパク質を導入する ことがなく、それによって免疫学的な反応から生じる合併症および血液経由の感 染のリスクを回避することができる。フィブリンモノマーベースのシーラントは 都合よく調製することができる。可溶性のフィブリンポリマーは弱酸性溶液を用 いて溶解することができ、得られたフィブリンモノマーは微細な粉末に凍結乾燥 することができる。そのような粉末は弱酸中にて容易に再溶解でき、アルカリ緩 衝液を加えることにより再重合を起こすことができる。別のやり方として、粉末 化したフィブリンモノマーをカオトロープ溶液、たとえば尿素中に非常に高濃度 (>150mg/ml)にて溶解し、水を加えることにより再重合を起こさせるこ とができる。 フィブリンモノマーベースのシーラントの他の利点は、該シーラントは一般に 自己由来の成分を使用するので、該シーラントの使用によって肝炎(B型肝炎、 非A非B型肝炎を含む)や後天性免疫不全ウイルス(AIDS)などの血液経由の 感染因子に晒されるリスクが低いことである。シルバースタイン(L.E.Silber stein)ら、1988、Transfusion、28:319〜321;ライタカリ(K.L aitakari)およびルオトネン(J.Luotonen)、1989、Laryngoscope、99: 974〜976およびドルスデール(A.Dresdale)ら、1985、The Annals of Thoracic Surgery、40:385〜387を参照。そのような因 子によって引き起こされる疾患は、従来のフィブリノーゲンベースのシーラント によって伝播されうる。なぜなら、そのフィブリノーゲン成分は典型的にプール したヒト血漿から調製したものだからである。さらに、フィブリンベースのシー ラントの使用はまた、フィブリノーゲンベースのシーラントのウシトロンビン成 分に付随するリスクをも回避することができる。ウシトロンビン調製物は、感染 因子ウシ海綿様脳症(BSE)並びに哺乳動物の他のウイルス性病原体を含みうる 。また、ウシトロンビンは強力な抗原であり、ヒトにおいて有害な免疫学的反応 を引き起こしうる。フィブリノーゲンベースのシーラントに付随するこれらタイ プの合併症の詳細については、テイラー(D.M.Taylor)、1991、J.of H ospital Infection、18(補遺A):141〜146およびプルシナー(S.B. Prusiner)ら、1991、Cornell Vet.81:85〜96を参照。 従って、ウイルス感染および/またはアレルギー作用のないフィブリンシーラ ントの調製物に対する必要性が存在する。フィブリンモノマーベースのシーラン ト中での自己由来フィブリンの使用は溶液であるが、その適用は残念ながら、十 分な量の自己由来フィブリンモノマーを回収および調製するものとして、前以て 計画することが可能な状況に限られる。しかしながら、前以て計画することが不 可能な場合、すなわち緊急の場合や限られた量の自己由来血漿しか取っておけな い場合(すなわち、新生児)、安全で便利なフィブリンシーラントの調製に使用で きる感染のおそれのないフィブリンモノマーに対する必要性がなお存在する。組換えフィブリノーゲンおよびフィブリン 遺伝子工学は、フィブリノーゲンおよびフィブリンモノマーを比較的高収率か つ実質的に純粋な形態で、しかも肝炎やHIVなどの病原性ウイルスの存在なし に製造する方法を提供する。フィブリノーゲンおよびフィブリン鎖の異種発現は また、天然に存在するフィブリン変異体を模倣しうる変異の構築、およびこれら 稀な遺伝子欠損を有する患者の助けを借りることなくこれらタンパク質の単離お よび研究を可能とする。 フィブリノーゲンの3つの異なる各ポリペプチド鎖(Aα、Bβおよびγ)は、 別々の遺伝子によりコードされている。これら各鎖のcDNAは調製されており (チャング(Chung)ら、1983、Ann N.Y.Acad.Sci.、408:449〜 456;リクセン(Rixen)ら、1983、Biochemistry、22:3237〜3 244;チャングら、1983、Biochemistry、22:3244〜3250; チャングら、1983、Biochemistry、22:3250〜3256)、原核生物 において発現されている。さらに、各ヒトフィブリノーゲン鎖は、別々に(ファ ング(Huang)ら、1993、J.Biol.Chem.、268:8919〜8926; ロイ(Roy)ら、1992、J.Biol.Chem.、267:23151〜23158 ;ロイら、1991、J.Biol.Chem.、266:4758〜4763)、または 組み合わせて(ハートウィッグ(Hartwig)およびダニシェフスキー(Danishefsky )、1991、J.Biol.Chem.、266:6578〜6585;ハートウィッグ ら、上掲;ロイら、1991、J.Biol.Chem.、266:4758〜4763) 、発現プラスミド中に導入され、真核細胞中にトランスフェクションされている 。 組換えヒトフィブリノーゲンを発現させるのに用いるプラスミドの大部分は、 チャング博士(ワシントン大学、シアトル)によって構築されたものであり、cD NAクローン(リクセンら、1983、Biochemistry、22:3237〜324 4;チャングら、1983、Biochemistry、22:3244〜3250;チャ ングら、1983、Biochemistry、22:3250〜3256)に基づいている 。組換えフィブリノーゲン鎖の発現は、最初、大腸菌で達成された(ボルヤード( Bolyard)およびロード(Lord)、1988、Gene、66:183;ボルヤード およびロード、1989、Blood、73:1202〜1206;ロードおよびフ ァウルクス(Fowlkes)、1989、Blood、73:166〜171)。個々に発 現された鎖はフィブリノーゲンと抗原類似性を示し、天然のフィブリノーゲンに 認められるものと類似のトロンビン開裂可能部位を示した(ボルヤードおよびロ ード、1989、Blood、73:1202〜1206;ロードおよびファウルク ス、1989、Blood、73:166〜171)。フィブリノペプチドAおよび フィブリノペプチドBの放出もまた観察された(ボルヤードおよびロード、19 89、Blood、73:1202〜1206;ロードおよびファウルクス、198 9、7 3:166〜171)。 個々のフィブリノーゲン鎖をコードする適当な発現プラスミドを含む真核細胞 は、コードされたフィブリノーゲン鎖を合成すること、および細胞内での二量体 鎖分子、たとえば、Aα2、Bβ2またはγ2二量体の生成という結果となること が示された(ロイら、1990、J.Biol.Chem.、265:6389〜6393 ;ツァング(Zhang)およびレッドマン(Redman)、1992、J.Biol.Chem.、 267:21727〜21732)。さらに、3つのすべてのヒトフィブリノー ゲン鎖をコードする遺伝子を含む適当なプラスミドを同じ細胞中に移すと、3つ のすべての鎖が発現されるだけでなく、ポリペプチド鎖が対で会合し完全なフィ ブリノーゲンが周囲媒体中に分泌される(ロイら、1991、J.Biol.Chem.、 266:4758〜4763;ハートウィッグおよびダニシェフスキー、199 1、J.Biol.Chem.、266:6578〜6585)。天然のフィブリノーゲン と同様に、分泌された組換えフィブリノーゲンは3対の非同一ポリペプチド鎖か らなり、フィブリンポリマーを形成するうえで機能性である。 フィブリノーゲンは天然では肝臓で合成され、巨核球細胞および形質転換され た肝臓細胞は培養維持され、フィブリノーゲンの合成および分泌を継続する(オ ット(Otto)ら、1987、J.Cell.Biol.、105:1067〜1072;ユ ー(Yu)ら、1987、Thromb.Res.、46:281〜293;アルビング(A lving)ら、1982、Arch.Biochem.Biophys.、217:19を参照)。その ような細胞株の一つはHep G2細胞である(ノウルズ(Knowles)博士およびア デン(Aden)博士、ウイスター・インスティチュート(Wister Institute)、フ ィラデルフィア)。この細胞株はBβ鎖に対して過剰のAα鎖およびγ鎖を合成 し、その結果、生産能のないAα鎖とγ鎖との二量体複合体(たとえば、Aα2γ2 )を形成する。Bβ鎖をコードする別の発現ベクターを導入すると三量体複合体 (AαBβγ)が形成され、このものは正しい折り畳みおよび鎖内ジスルフィド結 合パターンに適合している(ロイら、1990、J.Biol.Chem.、265:63 89〜6393)。この折り畳みの機構は未だ不明であるが、補助的なタンパク 質および酵素が関与しているかもしれない(ロイら、1992、J.Biol.Chem. 、 267:23151〜23158)。これら研究は、Bβ cDNAの正しい転写 のみならず過剰のBβ鎖が完全なフィブリノーゲンのアセンブリーおよび分泌を 促進することを示している。 Hep G2細胞では、AαBβγ三量体複合体は対で会合して完全なフィブ リノーゲン分子を形成し、このものがグリコシル化され細胞から活性に分泌され る(ファングら、1993、J.Biol.Chem.、268:8919〜8926)。 実際、正しくアセンブリーしたフィブリノーゲン分子のみが分泌される。それゆ え、Hep G2細胞はフィブリノーゲンのアセンブリーのための合成および分 泌装置を有する。 その後の実験では、通常はフィブリノーゲンを合成しない真核細胞中にフィブ リノーゲン鎖をコードするcDNAプラスミドを導入した。これら実験により機 能性のフィブリノーゲンが首尾よく産生され、フィブリノーゲンのアセンブリー および分泌に必要な因子がHep G2のような肝臓由来の細胞に特有のもので はないことが示された。組換えフィブリノーゲンをアセンブリーおよび分泌する ことができる真核細胞としては、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、COS細 胞およびチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が知られている(ロイら、1 991、J.Biol.Chem.、266:4758〜4763:ハートウィッグおよ びダニシェフスキー、1991、The Journal of Biol.Chem.、266:6 578〜6585;ファレル(Farrell)ら、1991、Biochemistry、30: 9414〜9420)。 安定に形質転換された真核細胞により分泌された完全な機能性のフィブリノー ゲンは、約1〜2μg/mlのフィブリノーゲンレベルの蓄積となる。基礎的な 分泌レベルの何千倍ものレベルに発現レベルが達しうるように、CHO細胞など のトランスフェクションされた細胞からの組換えタンパク質の産出を増大させる 方法が知られている。 そのような首尾よくいった呈示にもかかわらず、ウイルスの混入や有害なアレ ルギー作用のない安全なフィブリンシーラントの製造に対する完全に満足のいく 解決を組換えフィブリノーゲンは与えてはいない。フィブリンシーラントにおけ る組換えフィブリノーゲンの使用が動物産生トロンビンによるプロセシングを依 然として必要とする限り、そのようなフィブリノーゲンベースのシーラントのト ロンビン成分によるウイルス混入やアレルギー反応に対する有意の懸念が残って いる。酵母およびアスペルギルス中での異種タンパク質の発現 組換えDNA技術の出現以来、種々の原核および真核細胞系で異種DNAを発 現させる努力がなされてきた。そのような2つの系は酵母および糸状菌アスペル ギルスである。 酵母およびアスペルギルスなどの他の真菌は、組換えDNAによりコードされ たポリペプチドまたはタンパク質の産生系として細菌や他の真核細胞に比べて多 くの利点を有する。酵母や他の真菌は大スケールでの発酵に広範に用いられてき ており、それゆえ酵母および他の真菌の発酵技術はよく知られており、多くの酵 母または他の真菌宿主および発現ベクターが開発されてきている。キングスマン ら、1985、Biotechnology and Genet.Engineering Rev.、3:337〜 416(サッカロミセス酵母);レイサー(Reiser)ら、1990、Adv.Biochem .Engineering and Biotechnol.、43:75〜102;(サッカロミセス以外 の酵母);サンダース(Sanders)ら、1989、Trends.Biotechnol.、7:2 83〜287、ジーンズ(Jeenes)ら、(1991)Biotechnol.Genet.Eng.Re ve.、9:327〜367、ファン・デア・ホンデル(van der Hondel)ら、(1 991)モア・ジーン・マニピュレーションズ・イン・ファンジャイ(More Gen e Manipulations in Fungi)、ベネット(Bennett)およびレイシャー(Lasure) 編、396〜428頁参照。加えて、酵母および他の真菌は、細菌や他の多くの タイプの真核細胞に比べて一層高密度に増殖することができ、連続的な発酵プロ セスにも容易に適合する。酵母および他の真菌は真核生物であるので、高等生物 と同じかまたは類似のコドンの選択を示すであろう。さらに、酵母および他の真 菌は天然では広範囲の糖タンパク質を分泌するため、細胞外真核性糖タンパク質 の産生に対してこれらの系を特に魅力的なものにしている。分泌は、酵母および 他の真菌が異種リーダーペプチドを正しく認識およびプロセシングしうること、 並び に分泌可能な融合タンパク質を構築するのに使用できる広範囲のクローニング同 種リーダーペプチドが利用可能であることによる。クレン(Cullen)ら、198 7、Bio/Technology、5:369〜376;ファン・ハーティングスベルト(v an Hartingsveldt)ら、1991、Proceedings of the 6th International Symposium on the Genetics of Industrial Microorganisms(ストラスブル ク)、107〜116;キングスマンら、上掲;レイサーら、上掲;ウォード(W ard)ら、1990、Bio/Technology、8:435〜440を参照。酵母および 他の真菌はまた、N末端プロセシングやグリコシル化などのほとんどの翻訳後修 飾を行う。キングスマンら、上掲;レイサーら、上掲;ファン・ブルント(Van Brunt)、1988、Biotechnol.4:1057〜1062を参照。 多くの異種タンパク質が酵母サッカロミセス中で首尾よく発現および分泌され ている。例としては、インターフェロン(ヒッツェマン(Hitzeman)およびロイン グ(Leung)、米国特許第4,775,622号(1988年10月4日発行);ヒッ ツェマンら、カナダ特許第1,205,026号(1986年5月27日発行);ヒ ッツェマンら、1981、Nature(ロンドン)293:717);血小板由来成長 因子(マレイ(Murray)ら、米国特許第4,801,542号(1989年1月31 日発行));グルカゴン(ノリス(Norris)ら、米国特許第4,826,763号(1 989年5月発行))が挙げられる。サッカロミセス以外の酵母中で産生される異 種タンパク質についてはレイサーらの文献をも参照。 同様に、真菌中でも多くの異種タンパク質が首尾よく発現および分泌されてい る。例としては、ブタ膵臓プロホスホリパーゼA2(ロバーツ(Roberts)ら、1 992、Gene 122:155〜161);ニワトリ卵白リゾチーム(ジーンズら 、1993、FEBS Microbiol.107:267〜272);ヒトラクトフェ リン(ウォードら、1992、Gene 122:219〜223);ヒトリゾチーム (ツチヤ(Tsuchiya)ら、1992、Appl.Microl.Biotechnol.38:109〜 114);ヒトインターフェロン(グウィン(Gwynne)ら、1987、Biotechnol .5:713〜719);ウシキモシン(クレンら、1987、Biotechnol.5: 369〜376);ヒト組織プラスモーゲンアクチベーター(アップシャル(Upsh all) ら、1987、Biotechnol.5:1031〜1034)が挙げられる。ジーンズ ら、1991、Biotechnol.Genet.Eng.Rev.、9:327〜367およびフ ァン・デア・ホンデルら、1991、モア・ジーン・マニピュレーションズ・イ ン・ファンジャイ、ベネットおよびレイシャー編、396〜428〜428頁を も参照。 発明の要約 本発明は、一般に、組換えフィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン− ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログに関する。組換えフィブリン鎖はフ ィブリン鎖由来因子の製造およびフィブリンモノマー、フィブリン−ホモログお よびフィブリノーゲン−アナログの製造に有用であり、フィブリンモノマー、フ ィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログはまた安全で便利な外科 用接着剤およびシーラントの製造に有用である。本発明は、組換えフィブリン鎖 、並びにフィブリンIモノマー、desBBフィブリンモノマーおよびフィブリ ンIIモノマー、およびフィブリン様のポリマーを形成するのに前以て酵素的プ ロセシングを必要としない有用な誘導体の製造を提供する。 本発明は、一つの側面において、たとえば、(a)αフィブリン鎖、フィブリン β鎖およびγフィブリン鎖、(b)フィブリンα鎖、フィブリノーゲンBβ鎖およ びγフィブリン鎖、または(c)フィブリノーゲンAα鎖、フィブリンβ鎖および フィブリンγ鎖を含む調製物から、フィブリンIモノマー、フィブリンIIモノ マーおよびdesBBフィブリンモノマーを調製する方法に関する。一つの場合 において、フィブリンモノマーは成分ポリペプチド鎖からインビトロで調製され 、他の場合にはフィブリンモノマーは上記フィブリン鎖の(a)〜(c)の組み合わ せの一つの合成を指令するDNA構築物を含む生物中でインビボで調製される。 他の側面において、本発明は、フィブリノーゲン半分子、フィブリノーゲン、フ ィブリノーゲンAα鎖、フィブリノーゲンBβ鎖、フィブリノペプチドAおよび フィブリノペプチドBのうちの少なくとも一つを本質的に含まないフィブリンI 、desBBフィブリンおよびフィブリンIIモノマー組成物に関する。 さらに他の側面において、本発明は、γ鎖が、フィブリン−ホモログが自己重 合はできないがフィブリノーゲンとともに重合しうるように変えられた変異体γ 鎖である、Aフィブリノペプチドおよび/またはBフィブリノペプチドを欠くフ ィブリン−ホモログに関する。変異体γ鎖は、D−ドメイン中に位置する球状領 域が隣接するフィブリンモノマーのEドメインと安定な分子内非共有結合を形成 (この相互作用はフィブリン重合の関与する)できないように該球状領域中で変え られているのが好ましい。さらに他の態様において、本発明は、フィブリン−ホ モログを含む組成物をフィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマー、des BBフィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲンアナログ組 成物などのフィブリン関連組成物と混合することによりフィブリンシーラントを 形成する方法に関する。本発明はさらに、フィブリンリーダー配列かまたは他の 輸送タンパク質由来のリーダー配列に由来する輸送リーダー配列を含む、N末端 伸長をコードするヌクレオチド配列に関し、その際、該N末端伸長をコードする 配列はα鎖またはβ鎖のヌクレオチド配列に結合している。本発明はまた、D− ドメインがEドメインと相互作用するのに必要な構造を欠くγ鎖アナログに関す る。 本発明の一つの側面は、フィブリン鎖およびフィブリンIモノマー、フィブリ ンIIモノマーおよびdesBBフィブリンモノマーを製造するための新規なフ ィブリン鎖前駆体および該前駆体をコードする核酸配列の使用に関する。 本発明のフィブリン鎖前駆体は、α鎖、β鎖、γ鎖またはvγ鎖に融合した異 種リーダーペプチドを含む。本発明は、4つの異なるクラスのフィブリン鎖前駆 体:α鎖前駆体、β鎖前駆体、γ鎖前駆体および変異体フィブリンγ鎖(vγ鎖 または変異体γ鎖)前駆体を提供する。本発明によれば、リーダーペプチドは、 「遊離の」フィブリン鎖前駆体から、またはアセンブリーしてフィブリン前駆体 を形成したフィブリン鎖前駆体から開裂して、それぞれフィブリン鎖またはフィ ブリンを生成しうる「プロ」配列として機能する。リーダーペプチドはさらに、 該リーダーペプチドを含むフィブリン鎖前駆体またはフィブリン前駆体の細胞区 画化および細胞外輸送を提供する「プレ」配列として機能しうる。上記N末端伸 長もまた「プレ」配列として機能する。 本発明は、本発明の新規なフィブリン鎖をコードするヌクレオチド配列および プロモーターに機能的に連結した該コード配列を含む発現構築物を提供する。本 発明によれば、これら構築物の細胞による発現を用いて個々のフィブリン鎖を産 生しうる。さらに、これら構築物の特定の組み合わせを同時に細胞発現させてフ ィブリンを産生させることができる。フィブリンモノマーを産生する組み合わせ は、以下の発現構築物の各一つを有していてよい:1)α鎖構築物またはAα鎖 構築物;2)β鎖構築物(フィブリンIIの産生のため)またはBβ鎖構築物(フィ ブリンIの産生のため);および3)γ鎖構築物またはvγ鎖構築物(これらすべ ての構築物は、フィブリン鎖前駆体またはフィブリン鎖の他のN末端伸長をコー ドしていてよい)。 本発明の他の側面は、フィブリンと類似の構造および特性を有する新規なフィ ブリン−ホモログ、および該フィブリン−ホモログを産生させるためのフィブリ ン鎖前駆体および新規な変異体γ鎖前駆体をコードする核酸配列の使用に関する 。本発明のフィブリン−ホモログはそれ自身と反応して均質ポリマーを形成する ことはできないが、適当な条件下でたとえばフィブリン−ホモログとフィブリン モノマーまたはフィブリノーゲンとを含む不均質ポリマーを形成しうる。 本発明の新規なフィブリン−ホモログは、以下のペアの各一つのペアを含んで いてよい:1)α鎖またはAα鎖(desBBフィブリン−ホモログにおいて); 2)β鎖(フィブリンII−ホモログにおいて)またはBβ鎖(フィブリンI−ホモ ログにおいて);および3)変異体γ鎖。本発明の変異体γ鎖は、vγ鎖がフィブ リン−ホモログ中にアセンブリーしたときにD−ドメイン中で球状構造を形成す るγ鎖の領域中に1またはそれ以上の変異または欠失を含む。これら変異または 欠失は、該ホモログのD−ドメインが他のフィブリンまたはフィブリン−ホモロ グモノマーのE−ドメインと非共有結合を形成する能力を減少または消失させる 。しかしながら、そのような変異は、フィブリン−ホモログがそのE−ドメイン によって他のフィブリンまたはフィブリノーゲンモノマーとの分子間非共有結合 の形成に預かる能力に影響を及ぼすものではない。それゆえ、フィブリン−ホモ ログは、フィブリノーゲン、フィブリンモノマーまたは機能性のD−ドメインを 有する他のタイプのフィブリン関連タンパク質と組み合わせることにより、外科 用 接着剤またはシーラントとして有用な不均質ポリマーを形成するのに用いること ができる。 フィブリン鎖前駆体と同様に、本発明の新規な変異体γ鎖前駆体は、特別の態 様においてプロまたはプレリーダーペプチドを含む。本発明は、vγ鎖前駆体が アセンブリーしてフィブリン−ホモログまたはフィブリン−ホモログ前駆体とな る前または後に、該リーダーペプチドが翻訳後にプロセシングされてよいことを 提供する。 本発明は、vγ鎖をコードするヌクレオチド配列およびプロモーターに機能的 に連結した該コード配列を含む発現構築物を提供する。本発明によれば、vγ鎖 、フィブリノーゲン鎖、およびフィブリン鎖前駆体をコードする構築物の特定の 組み合わせの細胞内での同時発現を用いて所望のフィブリン−ホモログを産生す ることができる。構築物の有用な組み合わせとしては、以下の発現構築物の少な くとも各一つを有するものが挙げられる:1)α鎖またはN末端伸長を有するα 鎖を形成するための構築物;2)β鎖またはN末端伸長を有するβ鎖を形成する ための構築物;および3)vγ鎖またはN末端伸長を有するvγ鎖を形成するた めの構築物。 本発明の他の側面は、組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホ モログを製造するための新規手段に関する。とりわけ、本発明は、フィブリン前 駆体またはフィブリン鎖前駆体を発現する細胞培養系、フィブリン鎖前駆体の組 換え遺伝子を発現してフィブリン鎖を産生する細胞培養系、およびフィブリンお よびフィブリン−ホモログを発現、プロセシングおよびアセンブリーする細胞培 養系を提供する。本発明はまた、フィブリン鎖前駆体をインビトロプロセシング してフィブリン鎖を形成する方法およびフィブリン鎖をインビトロアセンブリー してフィブリンおよびフィブリン−ホモログを形成する方法をも提供する。 本発明の方法により製造したフィブリン鎖は、血管形成、血小板凝集などを制 御するフィブリン由来因子の製造のための実質的に純粋な出発材料の入手源とし て用いることができる。本発明の方法により製造したフィブリンおよびフィブリ ン−ホモログは、フィブリン−モノマーベースの外科用シーラントの成分として 用いることができる。 図面の簡単な説明 図1 α鎖前駆体構築物の構築に用いる合成リーダー配列(項目1参照)。 図2 β鎖前駆体構築物の構築に用いる合成リーダー配列(項目2参照)。 図3 γフィブリン鎖構築物の構築に用いる合成3'末端断片(項目3参照)。 図4 γフィブリン鎖構築物の構築に用いる合成Kpnl/SalIアダプタ ー(項目3参照)。 図5 組換えフィブリン鎖の構築オリゴヌクレオチド(項目1参照)。 図6 pIGF融合ベクターの発現カセットの模式図(項目6参照)。 図7 ヒトγ鎖の部分ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。突然変異プライ マーMUT1GおよびMUT2GおよびシークエンシングプライマーPCRYお よびPCRXの位置を示す(項目4参照)。 図8 フィブリノーゲンから架橋フィブリンIIポリマーへの変換経路を示す 模式図。 発明の詳細な説明 本発明は、組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログに関 する。組換えフィブリン鎖は、フィブリン由来調節因子の有用な入手源である。 組換えフィブリンおよびフィブリン−ホモログは、安全で便利なフィブリンシー ラントの機能性成分として有用である。本発明は、フィブリノーゲン鎖、フィブ リン鎖、フィブリン鎖前駆体およびN−末端伸長を有するフィブリン鎖をコード する発現構築物で宿主細胞を遺伝子操作した後の、実質的に純粋なフィブリン鎖 、フィブリン、フィブリン−ホモログ、フィブリノーゲン−アナログおよびその 前駆体の製造を提供する。 本発明の組換えフィブリンモノマーおよびフィブリン−ホモログは、とりわけ コイルドコイル領域およびE−ドメインにおいてフィブリノーゲンのトロンビン プロセシングによって産生された天然のフィブリンと同一ではないにしても同様 の二次および三次構造を有する。天然のフィブリンモノマーと同様に、本発明の 組換えフィブリンモノマーおよびフィブリン−ホモログは、それぞれ、鎖内およ び鎖間ジスルフィド結合により共有結合した3対の非同一ポリペプチドからなる 。組換えフィブリンを形成する非同一ポリペプチドは、フィブリンのα鎖、β鎖 およびγ鎖またはその前駆体である。組換えフィブリン−ホモログを形成する非 同一ポリペプチドは、フィブリンのα鎖、β鎖およびvγ鎖などの修飾γ鎖また はその前駆体である。特別の場合において、フィブリノーゲンBβ鎖はβ鎖と置 換してたとえばフィブリンIおよびフィブリンI−ホモログを形成してよく、ま たはAα鎖はα鎖と置換してたとえばdesBβフィブリン−ホモログを形成し てよい。加えて、α鎖またはβ鎖は、それぞれのAまたはBフィブリノペプチド とは異なるN末端伸長を有していてよい。これらN末端が伸長した鎖は、Aおよ びBフィブリノペプチドが機能するように、重合を阻止または抑制する配列を有 する分子を形成するのに用いることができる。これら分子はフィブリノーゲン− アナログである。幾つかの態様において、これら伸長体は開裂してフィブリノー ゲン−アナログからフィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマーまたはde sBBフィブリンモノマーを生成しうる(この場合には、フィブリノーゲン−ア ナログはフィブリン前駆体である)。本発明の組換えフィブリンモノマー、フィ ブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログは、さらにタンパク質プロ セシングすることなく、また適当な条件下で、外科用シーラントの機能性成分と して使用しうる均質または不均質のフィブリンまたはフィブリン様ポリマーを形 成しうる。 さらに詳しくは、本発明の一つの態様は、フィブリン鎖を形成するための新規 なフィブリン鎖前駆体および該前駆体をコードするヌクレオチド配列の使用に関 する。新規なフィブリン鎖前駆体には、α鎖、β鎖、γ鎖またはvγ鎖のN末端 に融合した異種リーダーペプチドが含まれる。リーダーペプチドは、フィブリン 鎖前駆体またはフィブリン鎖前駆体を含むフィブリン前駆体またはフィブリン− ホモログ前駆体から完全かつ特異的にプロセシングされうるプロ配列として機能 しうる。好ましい態様において、リーダーペプチドはまた、該リーダーペプチド を含むフィブリン鎖前駆体またはフィブリンおよびフィブリン−ホモログの前駆 体の細胞の区画化または細胞外輸送を指令する「プレ」配列としても機能しうる 。 本発明によって提供されるヌクレオチド配列は新規なフィブリン鎖前駆体をコー ドする。本発明はまた、フィブリン鎖前駆体をコードする配列と該コード配列の 宿主細胞中での発現を制御するプロモーターとが機能的に連結した発現構築物を も提供する。 本発明の他の側面は、フィブリンと同様の構造および特性を有するフィブリン −ホモログ、およびフィブリン−ホモログを製造するための新規な変異体γ鎖ま たはその前駆体および該鎖および前駆体をコードする核酸配列の使用に関する。 本発明の変異体γ鎖は、突然変異γ鎖であり、これをフィブリン分子中に取り込 めば(それによってフィブリン−ホモログ分子が生成される)該ホモログが自己重 合する能力をなくさせるが、該ホモログがフィブリノーゲンと非共有結合するこ とは可能にするものである。該ホモログの2つのD−ドメインは、他のフィブリ ン分子またはフィブリン−ホモログ分子のE−ドメインと安定な分子間非共有結 合を形成する能力を欠くのが好ましい。本発明のフィブリン−ホモログが活性化 E−ドメイン(すなわち、AまたはBフィブリノペプチドが除去されたE−ドメ イン)を有していたとしても、該ホモログがD−ドメイン機能を欠くことによっ て該ホモログが均質ポリマーを形成するのが妨げられる。しかしながら、そのよ うなホモログも、機能性のD−ドメインを有するフィブリン、フィブリノーゲン またはフィブリン−ホモログと組み合わされた場合には、外科用シーラントとし て有用な不均質ポリマーを形成しうる。本発明の新規な変異体γ鎖は、コイルド コイル形成配列のC末端側の配列中に1またはそれ以上の変異、置換および/ま たは欠失を有する。他の態様において、変異体γ鎖は、C末端側の保存された一 対のCys残基のおよそ第一のものからC末端までの配列中に1またはそれ以上 の変異、置換および/または欠失を有する。さらに他の態様において、変異体γ 鎖は、C末端側の遠位で分子内ジスルフィド結合を形成するシスチン残基の1ま たはそれ以上の変異、置換および/または欠失を有する。本発明の他の変異体γ 鎖は、該変異体γ鎖がE−ドメインとの安定な非共有結合を形成できなくなるよ うにγ鎖の球状ドメインの構造を破壊したり、球状ドメインからの配列を欠失し た他の変異を有する。 本発明のさらに他の側面は、(1)修飾γ鎖(変異体γ鎖であってよい)を含むフ ィブリン−ホモログおよび(2)フィブリノーゲン、フィブリノーゲン−アナログ またはフィブリンモノマー組成を含むフィブリン関連混合ポリマー(該フィブリ ン−ホモログは第二の組成のフィブリン関連タンパク質に非共有結合している) に関する。第二の組成のフィブリン関連タンパク質は自己重合できないのが好ま しい。本発明はまた、混合ポリマーを形成しうるこれら2つの組成を別々に含む 外科用シーラントを形成するためのキットをも提供する。 本発明の他の側面は、組換えフィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン −ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログを製造する手段に関する。とりわ け、本発明は、本発明のヌクレオチド配列および構築物で遺伝子操作し、フィブ リン鎖前駆体、フィブリン鎖、フィブリン、フィブリン−ホモログまたはフィブ リノーゲン−アナログを正しく発現、プロセシングおよびアセンブリーさせる宿 主細胞系を提供する。本発明のポリペプチドおよびタンパク質分子を発現させる のに有用な宿主細胞としては、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、COS細胞 、チャイニーズハムスター卵胞(CHO)細胞、肝臓由来Hep細胞などの哺乳動 物細胞;サッカロミセス(Saccharomyces)属およびアスペルギルス(Aspergillu s)属由来のものなどの真菌細胞;並びに細菌、昆虫および植物細胞が挙げられる が、これらに限られるものではない。 幾つかの態様において、組換えフィブリンモノマー、フィブリン−ホモログお よびフィブリン−アナログの1またはそれ以上の構成鎖の合成は誘導性である。 他の態様において、フィブリン鎖、フィブリンまたはフィブリン−ホモログの前 駆体上のリーダーペプチドのプロセシングは誘導性である。好ましい態様におい て、宿主細胞は組換えフィブリン鎖、フィブリン、フィブリン−ホモログまたは その前駆体を合成し、輸送する。特に好ましい態様において、宿主細胞は、輸送 された組換えフィブリンまたはフィブリン−ホモログの重合を抑制する、約3. 0〜約5.0の間のpHを有する培地などの低pH培地中で組換えフィブリン、 フィブリン−ホモログまたはその前駆体を合成し、輸送する。そのような培地は 約4.0〜約4.8のpHを有するのが好ましい。適当な生物の例としては、アス ペル ギルス・フラビウス(Aspergillus flavius)、アスペルギルス・ニガー(A.nige r)、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)、およびアスペルギルス・オ リゼー(A.oryzae)が挙げられる。本発明はまた、フィブリン鎖前駆体のフィブ リン鎖へのインビトロプロセシングおよびフィブリン鎖のフィブリンおよびフィ ブリン−ホモログへのインビトロアセンブリーによるフィブリンおよびフィブリ ン−ホモログの製造を提供する。 好ましくは、本発明のタンパク質または核酸は巨大分子に関して少なくとも約 60%の純度、より好ましくは80%の純度、さらに一層好ましくは95%の純 度を有する。 開示を明快にするため、および限定を意図するものではなく、本発明の詳細な 説明は以下の細項目に分けられる。 1.フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フィブリンおよびフィブリン−ホモロ グ; 2.フィブリン鎖前駆体、フィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖をコードする ヌクレオチド配列; 3.変異体γ鎖をコードするヌクレオチド配列; 4.フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体およびフィブリノーゲン鎖の発現; 5.発現された遺伝子産物の同定および精製; 6.フィブリン鎖に対する抗体; 7.フィブリン、フィブリンホモログ、およびその前駆体のインビトロアセンブ リー; 8.組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログの用途; 9.実施例 1.フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フィブリンおよびフィブリンホモロ フィブリンモノマーおよびフィブリン−ホモログは、それぞれ、鎖内および鎖 間ジスルフィド結合により共有結合した3対の非同一ポリペプチドからなる複合 タンパク質である。3つの異なるタイプのフィブリンモノマー(フィブリンIモ ノマー、フィブリンIIモノマーおよびdesBBフィブリンモノマー)が可能 である。フィブリンIモノマーでは、3対の非同一ポリペプチドは、1)α鎖; 2)フィブリノーゲンBβ鎖;および3)γ鎖である。フィブリンIIモノマーで は、3対の非同一ポリペプチドは、1)α鎖;2)β鎖;および3)γ鎖である。 desBBフィブリンモノマーでは、3対の非同一ポリペプチドは、1)フィブ リノーゲンAα鎖;2)β鎖:および3)γ鎖である。 上記3つの異なるタイプのフィブリンモノマーに対応して、フィブリンI−ホ モログ、フィブリンII−ホモログおよびdesBBフィブリン−ホモログを含 む異なるタイプのフィブリン−ホモログが可能である。これら3つのタィプのフ ィブリン−ホモログのポリペプチド組成は、各タイプにおいてγ鎖が修飾γ鎖で 置換されている他は上記3つの異なるフィブリンモノマーのものと同一である。 たとえば、フィブリンI−ホモログは、以下の3対の非同一ポリペプチドであっ てよい:1)フィブリンα鎖、2)フィブリノーゲンBβ鎖、および3)vγ鎖。 本発明のフィブリン鎖は、フィブリン血餅を形成しうるフィブリンからのフィ ブリン鎖であればいかなるものであってもよい。同様に、本発明のフィブリノー ゲン鎖は、トロンビンによってプロセシングされてフィブリン鎖を形成しうるフ ィブリノーゲン鎖であればいかなるものであってもよい。好ましい鎖は、ヒトフ ィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖からのものである。ヒトフィブリノーゲン 鎖のヌクレオチド配列およびそれから導かれたアミノ酸配列については、リクソ ン(Rixon)らの1983、Biochemistry、22:3237〜3244;チャン グ(Chung)らの1983、Biochemistry、22:3244〜3250;チャン グらの1983、Biochemistry、22:3250〜3256を参照。 変異体γフィブリン(vγフィブリン)鎖とは、そのアミノ酸配列中に1または それ以上の変異または欠失を有するγ−フィブリン鎖である。変異は、フィブリ ン−ホモログが自己重合できないように、vγ−フィブリン鎖で形成されるフィ ブリン−ホモログ間の非共有結合の形成を妨害するものであればいかなるもので あってもよい。フィブリン−ホモログはフィブリノーゲンや他のフィブリン関連 タンパク質と非共有結合を形成できるのが好ましい。変異または欠失は、vγ− フィブリン鎖で形成されるフィブリンのD−ドメイン→E−ドメインフィブリン 間非共有結合機能を妨害するのが好ましい。好ましい変異または欠失は、D−ド メインのフィブリン間非共有結合機能に影響を及ぼすものである。特に好ましい のは、γ鎖のN末端−遠位鎖内ジスルフィド結合を妨害する変異である。最も好 ましいのは、ジスルフィド結合を形成するシスチン残基、すなわちヒトγ鎖にお けるCys352またはCys365または他のγ鎖における等価物の変異であ る。これら変異には、いずれかのシスチン残基を除去するミスセンスまたはイン フレームの欠失が含まれる。 天然に存在しないγ鎖をコードする核酸を構築するには、天然の配列を出発点 として用い、特定のニーズに沿うように修飾してよい。たとえば、配列を変異さ せて有用な制限部位を導入してよい。マニアチス(Maniatis)らのモレキュラー ・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A La boratory Manual)(コールドスプリングハーバープレス、1989)を参照。か かる制限部位は、「カセット」、すなわち制限酵素およびライゲーション反応を 用いて容易に置換できる核酸配列の領域を生成するのに用いることができる。カ セットは、変異したγ鎖アミノ酸配列をコードする合成配列を置換するのに用い ることができる。別のやり方として、γ鎖をコードする配列は、実質的にまたは 完全に合成されたものであってよい。たとえば、ゴッデル(Goeddel)らのProc. Natl.Acad.Sci.USA、76、106〜110、1979を参照。組換え発 現の目的のためには、かかる核酸が発現される生物におけるコドンの使用の選択 を、合成フィブリン鎖をコードする核酸を設計するに際して有利に考慮する。 所定の活性を保持する組換えタンパク質を製造するための欠失または変異法は よく知られている。それゆえ、本発明のフィブリン−ホモログは、フィブリノー ゲンと重合する能力を有するフィブリンのアナログを包含する。これらアナログ は、フィブリン分子のコイルドコイル領域を形成するγ鎖の配列をすべて保持し ているのが好ましい。好ましくは、γ鎖は、約272のC末端アミノ酸残基以外 、より好ましくは約150のC末端アミノ酸残基以外、さらに好ましくは約10 0のC末端アミノ酸残基以外、さらに一層好ましくは約83のC末端アミノ酸残 基 以外は天然のγ鎖と実質的に同一であろう。 好ましくは、保持されるべき天然配列の量は、欠失したまたは変異したγ鎖を 含むフィブリン−ホモログにおいて、フィブリノーゲンと非共有結合を形成する 天然のフィブリンの能力の実質的にすべてを保存するに十分なものであろう。好 ましくは、保持された天然配列は、フィブリン−ホモログにおいてフィブリノー ゲンとともに血餅を形成する能力を保存するに十分なものであろう。これら基準 を満足させて除去または変異させうる配列の正確な境界は、当該技術分野でよく 知られた遺伝子発現法を用いて決定することができる。たとえば、これら基準を 満足させるための推定の最小配列をコードする核酸を下記方法を用いて発現およ びフィブリン−ホモログに折り畳ませ、得られたフィブリン−ホモログがフィブ リノーゲンと相互反応する能力を試験することができる。 当業者であれば、上記欠失したγ鎖を含む本明細書に記載するフィブリン鎖は すべて、本明細書に記載する機能または各フィブリン鎖に付随する他の機能を実 質的に妨害することなく、ある程度変異させることができることを認識するであ ろう。好ましくは、かかる鎖は天然のフィブリン鎖に対して少なくとも約90% 、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、さらに 一層好ましくは少なくとも約99%のホモロジーを有するであろう。 変異および欠失法は、フィブリン鎖を発現する本発明の核酸配列のすべてに適 用することができる。上記で記載したように、保存的な変異が好ましい。かかる 保存的な変異には、下記群のうちの一つの群内で一つのアミノ酸を他のものと置 き換える変異が含まれる。 1.小さな脂肪族で非極性またはわずかに極性の残基 Ala、Ser、Thr 、ProおよびGly; 2.極性で負に荷電した残基およびそのアミド; 3.極性で正に荷電した残基; 4.大きな脂肪族で非極性の残基;Met、Leu、Ile、ValおよびCy s; 5.芳香族残基。 保存的置換の好ましい例示は以下の通りである。 これら置換タイプの選択は、シュルツ(Schultz)ら(プリンシプルズ・オブ・ プロテイン・ストラクチャー(Principles of Protein Structure)、スプリン ガー−フェアラーク、1978)によって開発された異なる種の相同タンパク質 間でのアミノ酸置換の頻度の分析、チョウ(Chou)およびファスマン(Fasman)( Biochemistry 13、211、1974およびAdv.Enzymol.47、45〜14 9、1978)によって開発された構造形成能(structure-forming potentials) の分析、およびアイゼンベルク(Eisenberg)ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81、140〜144、1984)、カイト(Kyte)&ドゥーリットル(Doolittl e)(J.Molec.Biol.157、105〜132、1981)およびゴールドマン (Goldman)ら(Ann.Rev.Biophys.Chem.15、321〜353、1986)に よって開発されたタンパク質における疎水性パターンの分析に基づく。 本発明のフィブリン鎖前駆体は、フィブリン鎖のN末端に異種リーダーペプチ ドが融合してなる。リーダーペプチドは複数の別個の配列を含んでいてよく、複 数の機能を有していてよい。リーダーペプチドの機能は、正しいN末端配列を有 するフィブリン鎖を放出するために、リーダーペプチドとフィブリン鎖との間の 融合ジャンクションにてフィブリン鎖前駆体の特異的なタンパク質加水分解開裂 を可能とすることである。本発明はまた、それぞれAおよびBフィブリノペプチ ドとは異なるN末端ポリペプチド伸長を有するフィブリンα鎖およびβ鎖を包含 する。これら伸長された鎖はトロンビン認識配列を欠いていてよく、α鎖または β鎖を生成するのに適した他のプロテアーゼ認識配列を含んでいても含んでいな くてもよい。 細胞発現を用いてフィブリン鎖前駆体を産生させる場合は、リーダーペプチド は、発現宿主中でフィブリン鎖前駆体からのリーダー配列の特異的タンパク質加 水分解開裂を可能とすることが知られているいかなるリーダー配列をも包含する (下記参照)。リーダーペプチドはさらに、該ペプチドを含む前駆体タンパク質を 細胞内区画または好ましくは細胞外へターゲティングする「プレ」機能をコード する配列を有していてよい。細胞発現を用いてN末端伸長を有するフィブリン鎖 を産生させる場合は、伸長ポリペプチドは発現プロセスの間に部分的または完全 な開裂を受けるものであってよい。さらに伸長ポリペプチドは、発現されたタン パク質をターゲティングすべく機能してよい。 従って、フィブリン鎖前駆体のリーダーペプチドまたはN末端伸長は、いかな るタンパク質のプレプロ配列をも含んでいてよい。好ましい態様において、プレ プロ配列は、フィブリンまたはフィブリン−ホモログを発現するのに用いた宿主 細胞または生物にとって、または該プレプロペプチドが正しく認識される宿主細 胞または生物に進化上密接に関連した細胞または生物にとって内生のタンパク質 からのものである。例示としてであって限定を意図するものではなく、フィブリ ン鎖前駆体のリーダーペプチドの構築に使用できるプレプロ配列を有するタンパ ク質は下記の通りである。サッカロミセス中で発現するには、下記タンパク質の いずれの前駆体からのプレプロ(シグナル)配列も使用できる。酸性ホスファター ゼ(PHO5)(パールマン(Perlman)およびハルボーセン(Halvorsen)、198 3、J.Molec.Biol.、67:391〜409);およびα−因子(Mfα)(ジュ リウス(Julius)ら、1984、Cell、36:309〜318;ブレイク(Brak e)ら、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:4642〜4646 ;キングスマン(Kingsman)ら、1985、Biotech.and Genet.Engineering Rev.、3:377〜416をも参照)。アスペルギルス中で発現させるには、下 記タンパク質のいずれの前駆体からのプレプロ(シグナル)配列も使用できる。ニ ワトリリゾチームシグナル配列(ツチヤ(Tsuchiya)ら、1992、Appl.Micro biol.Biotechnol.、38:109〜114);およびグルコアミラーゼ(gln A)シグナル配列(ジーンズ(Jeenes)ら、1993、FEMS Microbiol Lett .、107:267〜272;ウォード(Ward)ら、1990、Biotechnol.、8 :435〜440)。 さらに、プレプロペプチドの開裂認識部位が知られている場合には、開裂認識 部位のペプチド配列を用いてリーダーペプチドのカルボキシル末端を形成するこ とができる。開裂可能なリーダーペプチドを構築するのに用いられてきた特異的 な開裂認識部位の例としては、トロンビン開裂認識部位(チャング(J.Y.Chang )、1985、Eur.J.Biochem.、151−217−224)、第Xa因子開裂 認識開裂部位(ナガイ(Nagai)およびソーゲンセン(Thorgensen)、1984、N ature、309:810〜812)、およびKEX2開裂部位(ジュリウスら、上 掲)が挙げられる。開裂可能なリーダーペプチドの形成におけるトロンビンおよ び第Xa因子開裂認識部位の使用の例としてはスミス(Smith)およびジョンソン (Johnson)、1988、Gene、67:31〜40を、KEX2部位の使用の例 としてはキングスマンの上掲を参照のこと。好ましい認識部位は、ヒト病原体、 とりわけウイルス性病原体の担体または保有者である動物に由来しないプロテア ーゼに対するものである。 さらに、リーダーペプチドまたはN末端伸長は、フィブリン鎖前駆体の精製を 容易にする特性を有する配列をも含んでいてよい。所望の特性は、リーダーペプ チドを含むタンパク質を該ペプチドを含まないタンパク質から選択的に分離する ことを可能にする該ペプチドのあらゆる独特の物理的、化学的または生物学的特 性に基づいていてよい。そのような「精製配列」の例は、グルタチオンS−トラ ンスフェラーゼ(GST)のカルボキシル末端部分であり、このものはグルタチオ ンに対して高い親和性を有する。GST精製配列を含むリーダーペプチドを有す る融合タンパク質は、グルタチオン−アフィニティーカラムを用いて細胞抽出物 から都合よく精製することができる。融合タンパク質のアフィニティー精製にお けるGST精製配列の使用に関しては、スミスおよびジョンソンの上掲を参照。 融合タンパク質精製において有用なリーダーペプチドを形成するのに使用できる 他の精製配列としては、それに対する抗体の入手が容易なもの、たとえば、β− ガラクトシダーゼが挙げられる。融合タンパク質精製を容易にするのに使用でき るペプチドの他の例としては、転写因子(ガブリエルソン(Gabrielson)およびヒ ュエット(Huet)、1993 Methods in Enzymology 218:508〜525) 、ホスホチロシン含有タンパク質およびペプチド(フラッケルトン(Frackelton) ら、1991、Methods in Enzymology、201:79〜92)、およびセリン キナーゼ(ウッドゲット(J.R.Woodgett)、1991、Methods in Enzymolog y、200:169〜178)が挙げられる。 リーダーペプチドまたはN末端伸長は、発現宿主中て上記特性の1または2以 上を有するタンパク質またはポリペプチドに由来するものであってよい。別のや り方として、リーダーペプチドまたはN末端伸長は、幾つかの異なるペプチド配 列の混成体であり、各ペプチド配列が発現宿主中で上記特性の1または2以上を フィブリン鎖前駆体に付与しうるものであってよい。混成体のリーダーペプチド では、構成配列は各配列の全機能を保存するいかなる順序で整列されていてもよ い。プロテアーゼ開裂認識部位を含む配列は混成体リーダーペプチドのC末端を 形成するのが好ましい。 フィブリン鎖前駆体、フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖、フィブリン、フィ ブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログは、化学的合成、細胞の遺 伝子操作またはこれらの組み合わせにより製造できる。とりわけ、フィブリン鎖 前駆体、伸長されたフィブリン鎖、フィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖は、 市販のペプチド合成機などのような当該技術分野で知られた手順を用いて化学的 に合成することができる。そのようなポリペプチド合成の標準技術は、メリフィ ールド(Merrifield)、1963、J.Chem.Soc.、85:2149〜2154 およびフンカピラー(Hunkapillar)ら、1984、Nature(ロンドン)、310 :105〜111などの刊行物に記載されている。 好ましい態様において、フィブリン鎖前駆体、伸長されたフィブリン鎖、フィ ブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖は、細胞および生物の遺伝子操作により産生 される(下記参照)。 フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナロ グは、(必要なら)フィブリン鎖前駆体をインビトロプロセシングし、ついでその 構成鎖(すなわち、フィブリン鎖および/またはフィブリノーゲン鎖)を機能性の フィブリンおよびフィブリン−ホモログにインビトロアセンブリングすることに より製造できる(項目7を参照)。フィブリン、フィブリン−ホモログおよびフィ ブリノーゲン−アナログはまた、細胞および生物の遺伝子操作により産生したフ ィブリン鎖のインビトロアセンブリングによっても製造できる。さらに、フィブ リンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログはまた 、遺伝子操作した細胞および生物を用いて完全にインビボでも製造できる(下記 参照)。すなわち、遺伝子操作した細胞および生物を用いてフィブリン前駆体鎖 を発現およびプロセシングさせ、ついで得られたフィブリン鎖をフィブリンモノ マー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログにアセンブリン グさせることができる。 2.フィブリン鎖前駆体、フィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖をコードす るヌクレオチド配列 本発明は、フィブリノーゲン鎖、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フィブ リンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログの組換 え産生に有用な発現構築物を産生するのに使用できるヌクレオチド配列を提供す る。本発明により提供されるヌクレオチド配列の特性は、本発明のフィブリノー ゲン鎖、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フィブリンモノマー、フィブリン −ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログを産生するのに使用できる種々の 宿主細胞および生物の遺伝子構造と同じくらい様々である。好ましい態様では、 絶対に必須というわけではないが明らかに有利であると当業者が認めるであろう 多くの特性を記載するであろう。これらには、ヌクレオチド配列および遺伝子構 築物の単離、合成または構築、宿主細胞および生物中に導入すべき配列および構 築物の操作、配列および構築物のある種の特性、および配列および構築物に付随 するベクターのある種の特性が含まれる。 フィブリノーゲン鎖、フィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン−ホモ ログおよびフィブリノーゲン−アナログは、フィブリノーゲン鎖、フィブリン鎖 およびフィブリン鎖前駆体をコードする発現構築物の適当な組み合わせを宿主細 胞または生物中で発現させることにより製造できる。フィブリンIモノマー、フ ィブリンIIモノマー、desBBフィブリンモノマー、フィブリンI−ホモロ グ、フィブリンII−ホモログおよびdesBBフィブリン−ホモログを生成す るポリペプチド鎖の種々の組み合わせについては項目1を参照。α鎖およびβ鎖 はN末端メチオニンを有しないので、その遺伝子発現による産生には、インビト ロまたはインビボで開裂されて正しいN末端配列を生成しうるリーダーペプチド を有するα鎖前駆体およびβ鎖前駆体をコードする構築物を使用する必要がある 。 フィブリノーゲン鎖、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、およびN末端伸長 を有するフィブリン鎖をコードするヌクレオチド配列は、公知のいずれの方法に よっても構築できる。構築は単一の方法でも可能であるし、方法の組み合わせで も可能である。所望のヌクレオチド配列の合成は、フィブリン鎖、フィブリノー ゲン鎖の公知または導かれたアミノ酸配列、および前駆体鎖の場合にはフィブリ ン鎖とリーダーペプチドとの配列の組み合わせに基づいて行うことができる。す なわち、アミノ酸配列を、遺伝子コドンから、所望のポリペプチド配列から1ま たはそれ以上のヌクレオチド配列へ逆翻訳する(reverse-translated)。そのよう な逆翻訳に使用できるフィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖およびリーダーペ プチドのアミノ酸配列を含む文献については上記を参照。好ましい態様において は、逆翻訳したコード配列のコドンの使用は、コードしたポリペプチドを発現す るのに使用した宿主細胞または生物の好ましいコドンの使用と一致するものであ る。 所望のヌクレオチド配列の合成は、当該技術分野で知られた標準化学法(たと えば、フンカピラーら、1984、Nature、310:105〜111を参照)に より行うことができる。別のやり方として、ヌクレオチド配列はまた、化学的に 合成したオリゴヌクレオチドプライマー断片とともにポリメラーゼ連鎖反応(P CR)増幅を用いて合成することができる。PCR法については、たとえば、ゲ ルフィンド(Gelfind)、1989、PCRテクノロジープリンシプルズ・アンド ・アプリケーションズ・フォア・DNA・アンプリフィケーション(PCRTech nology.Principles and Applications for DNA Amplification)、エーリ ッヒ(H.A.Erlich)編、ストックトンプレス、ニューヨーク;カレント・プロ トコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Currrent Protocols inMol ecular Biobology)、1988、Vo1.2、Ch.15、オースベル(Ausubel)ら 編、ジョンウイリー&サンズ;およびホートン(Horton)ら、1989、Gene、 77:61〜68を参照。 フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖、フィブリン鎖前駆体、およびN末端伸長 を有するフィブリン鎖をコードするヌクレオチド配列はまた、当該技術分野でよ く知られた組換えDNA法を用いて構築することができる。たとえば、サンブル ック(Sambrook)ら、1989、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリ ー・マニュアル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールド スプリングハーバー、ニューヨークに記載された技術を参照。組換えDNA法は また、他の方法、たとえば化学的合成やPCRにより産生されたヌクレオチド配 列を維持し、操作し、および/または組換えるのに使用できる。 組換えDNA法を用いた所望のヌクレオチド配列の構築は、フィブリノーゲン 鎖、フィブリン鎖およびリーダーペプチドの利用可能なクローニング配列を操作 することにより行うことができる。そのようなクローニング配列は、たとえば制 限消化およびライゲーションにより構築に直接使用できる。 別のやり方として、クローニング配列はまたヌクレオチドプローブを構築する のに使用でき、該プローブは、標準法を用いて適当なゲノムライブラリーまたは cDNAライブラリーから所望の鎖またはリーダーペプチドをコードするゲノム クローンまたはcDNAクローンを単離するのに使用できる。そのような方法と しては、たとえば、バクテリオファージライブラリーについてはベントン(Bent on)およびデービス(Davis)、1977、Science、196:180、プラスミ ドライブラリーについてはグルンスタイン(Grunstein)およびホグネス(Hognes s)、1975、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、72:3961〜3965を 参照。さらに、ヌクレオチド配列はまた、適当なゲノムライブラリーまたはcD NAライブラリーまたはゲノムDNAから所望の鎖、リーダーペプチドまたはN 末端伸長をコードする配列を増幅するのに使用できるPCRオリゴヌクレオチド プライマーを構築するのに用いることができる。PCRは、たとえば、パーキン −エルマーシータスサーマルサイクラーおよびTaqポリメラーゼ(Gene AmpT M )を使用して行うことができる。増幅する核酸はmRNAまたはcDNAまたは ゲノムDNAを含む。PCR反応に使用するため幾つかの異なる縮重プライマー を合成するのを選択することができる。また、PCR反応をプライミングするの に使用するハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変え、フィブリ ン鎖、フィブリノーゲン鎖またはリーダーペプチド含有タンパク質をコードする 未知のヌクレオチド配列と単離した核酸ホモログとの間てヌクレオチド配列の類 似性の程度を一層大きくまたは小さくすることができる。所望のクローニング配 列のセグメントを首尾よく増幅した後、このセグメントを分子的にクローニング およびシークエンシングし、完全なcDNAまたはゲノムクローンを単離するた めのプローブとして利用することができる。それはまた、出発材料の核酸中に最 初に増幅したセグメントに隣接して存在する配列を増幅するのに使用できる5' RACE法に使用するPCRプライマーを設計するのに用いることができる。5 'RACE法については、フローマン(Frohman)、「ラピッド・アンプリフィケ ーション・オブ・cDNA・フォア・ジェネレーション・オブ・フルーレンクス ・cDNA (Rapid Amplification of cDNA for Generation of Full-Length cD NA)」、Methods in Enzymology、218:340〜356、1993を参照 。 いかなるヒト細胞(または他のフィブリン産生生物に由来する細胞)も、潜在的 にフィブリン鎖またはフィブリノーゲン鎖をコードする配列のモレキュラークロ ーニングのための核酸源になりうる。いかなる細胞または生物も、潜在的に、リ ーダーペプチドの成分の採取源となりうるタンパク質をコードする配列のクロー ニングのための核酸源となりうる。「リーダーペプチド成分」の好ましい採取源 は、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体またはフィブリン−ホモログを発現させ るのに使用した宿主細胞または生物である。DNAは、クローニングしたDNA (たとえば、DNA「ライブラリー」)から、cDNAクローニングにより、また は所望の細胞から精製したゲノムDNAまたはその断片のクローニングにより、 当該技術分野で知られた標準法により得ることができる。(たとえば、サンブル ックら、1989、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュア ル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、コールドスプリ ングハーバー、ニューヨーク;グロバー(Glover,D.M.)(編)、1985、DN A・クローニング:ア・プラクティカル・アプローチ(DNA Cloning:A Pr actical Approach)、MRLプレス、オックスフォード、U.K.Vol.I、II を参照)。ゲノムDNAに由来するクローンはコード領域に加えてある種の調節 DNA領域およびイントロンDNA領域を含みうる;cDNAに由来するクロー ンはイントロンを欠き、エクソン配列のみを含むであろう。採取源がいかなるも のであれ、コード配列の増殖のため該配列を適当なベクター中に分子的にクロー ニングしなければならない。 ゲノムDNAからのコード配列のモレキュラークローニングにおいて、DNA 断片が得られ、その幾つかは所望の配列をコードしているであろう。DNAは種 々の制限酵素を用いて特定の部位で開裂できる。別のやり方として、DNAを断 片化するためにマンガンの存在下でDNアーゼを用いることができ、または、た とえば超音波処理によりDNAを物理的に切断することができる。線状化した DNA断片は、ついでアガロースおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動および カラムクロマトグラフィーを含む(これらに限られるものではない)標準法により サイズに従って分離することができる。 DNA断片が得られたら、所望のコード配列を含む特定のDNA断片の同定を 多くの仕方により行うことができる。たとえば、相当量のフィブリン鎖遺伝子ま たはその特定RNAの一部が入手可能で精製でき、または合成でき標識できる場 合には、得られたDNA断片は標識プローブへの核酸ハイブリダイゼーションに よりスクリーニングすることができる(ベントンおよびデービス、1977、Sc ience、196:180;グルンスタインおよびホグネス、1975、Proc.Na tl.Acad.Sci.USA、72:3961)。プローブに対して実質的なホモロジ ーを有するDNA断片がハイブリダイズするであろう。適当な断片の同定はまた 、制限酵素消化し、得られた断片のサイズを公知の制限地図(利用可能かまたは 公知のヌクレオチド配列から導かれたもの)から期待されるサイズと比較するこ とによっても可能である。さらなる選択は、遺伝子の特性に基づいて行うことが できる。別のやり方として、遺伝子の存在は、その発現産物の物理的、化学的ま たは免疫学的特性に基づくアッセイにより検出できる。たとえば、cDNAクロ ーン、または適切なmRNAをハイブリダイズ選択できるDNAクローンは、た とえば、フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖またはリーダーペプチド含有タンパ ク質について知られている電気泳動移動度、等電点電気泳動における挙動、タン パク質加水分解消化地図、結合活性、または抗原特性と類似または同一の特性を 有するタンパク質を産生するものとして選択できる。所望のタンパク質に対する 抗体を使用することにより、ELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)型の方 法において推定フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖またはリーダーペプチド含有 タンパク質を合成するクローンへの標識抗体の結合によって同定することができ る。 フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖またはリーダーペプチド含有タンパク質を コードする配列はまた、核酸ハイブリダイゼーションによりmRNA選択した後 にインビトロ翻訳させることによっても同定できる。この方法では、相補的な mRNAをハイブリダイゼーションによって単離するために断片を用いる。単離 したmRNAの単離産物のインビトロ翻訳産物の免疫沈降分析は該mRNA、そ れゆえ所望の配列を含む相捕的なDNA断片を同定できる。加えて、特定のmR NAは、フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖またはリーダーペプチド含有タンパ ク質に対して特異的に向けられた固定化抗体への細胞から単離したポリソームの 吸着によっても選択できる。フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖およびリーダー ペプチド含有タンパク質をコードする放射性標識したcDNAは、(吸着したポ リソームから)選択したmRNAを鋳型として用いて合成できる。放射性標識し たmRNAまたはcDNAは、ついで、他のゲノムDNA断片からフィブリン鎖 、フィブリノーゲン鎖およびリーダーペプチド含有タンパク質をコードする断片 を同定するためのプローブとして使用できる。 同定および単離したコード配列は、ついで適当なクローニングベクター中に挿 入できる。当該技術分野で知られた多くのベクター−宿主系を使用できる。可能 なベクターとしては、プラスミド、コスミド、または修飾したウイルスまたはバ クテリオファージが挙げられ、これらに限られるものではないが、ベクター系は 使用した宿主細胞と適合するものでなければならない。そのようなベクターとし ては、ラムダおよびT4ファージ誘導体などのバクテリオファージ、またはpB R322またはpUCプラスミド誘導体などのプラスミドが挙げられるが、これ らに限られるものではない。クローニングベクター中への挿入は、たとえば、相 補的な粘着末端を有するクローニングベクター中に該DNA断片をライゲートす ることにより行うことができる。しかしながら、DNAを断片化するのに用いた 相補的な制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合には、該DNA分 子の末端を酵素的に修飾して、たとえば平滑末端ライゲーションを可能とするこ とができる。別のやり方として、DNA末端にヌクレオチド配列(リンカー)をラ イゲートすることにより所望の部位を生成することができる;これらライゲート したリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特定の化学的に 合成したオリゴヌクレオチドを含んでいてよい。別の方法において、開裂したベ クターおよびクローニングすべき配列はホモポリマーテーリングにより修飾でき る。 組換え分子は、該遺伝子配列の多数のコピーが得られるように、形質転換、トラ ンスフェクション、感染、エレクトロポレーションなどにより宿主細胞中に導入 できる。 別の方法において、所望の配列は、適当なクローニングベクター中に挿入した 後に「ショットガン」法において同定および単離できる。たとえばサイズ分画に より所望のコード配列を富ませることは、クローニングベクター中に挿入する前 に行うことができる。 特別の態様において、単離したフィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖、リーダー ペプチドまたはN末端伸長をコードする配列または合成DNA配列を導入した組 換えDNA分子で宿主細胞を形質転換することにより、遺伝子の複数のコピーを 生成することが可能となる。それゆえ、形質転換体を増殖させ、該形質転換体か ら組換えDNA分子を単離し、必要なら該単離した組換えDNAから挿入遺伝子 を回収することにより、遺伝子を大量に得ることができる。 フィブリン鎖、フィブリノーゲン鎖およびリーダーペプチド含有タンパク質を コードするクローニングおよび合成ヌクレオチド配列は、さらに、標準組換えD NA法を用いて所望の前駆体鎖をコードする配列を構築するために操作および使 用できる。たとえば、所望のリーダーペプチドまたはN末端伸長が幾つかの異な るタンパク質からのペプチド配列を含む場合には(上記参照)、各ペプチドをコー ドするヌクレオチド配列を一緒に連続的なコード配列中にスプライスし、この混 成コード配列を今度はフィブリン鎖コード配列の5'末端にスプライスすること ができる。そのようなスプライシングには、各コード配列上に存在する制限エン ドヌクレアーゼ部位、インビトロ突然変異誘発またはPCR増幅により導入した 人為的な制限部位またはクローニングした断片の末端にライゲートしたリンカー 上の制限エンドヌクレアーゼ部位の使用を含む、当該技術分野で知られた戦略を 利用することができる。同様に、ゲノムDNAおよびcDNA由来の配列は、フ ィブリン鎖前駆体またはフィブリノーゲン鎖構築物にとっては望ましくない調節 配列、リーダ−RNA配列、イントロンおよび/またはテーラーRNA配列を含 みうるので、そのような外来配列は上記で記載したようなものを含む公知の組 換えDNA法により除去することができる。 3.変異体γ鎖をコードするヌクレオチド配列 変異体γ鎖(vγ鎖)の製造および使用もまた想起することができ、本発明の範 囲内に含まれる。項目1にも記載したように、フィブリンのD−ドメイン機能の 欠失となるvγ鎖としては、γ鎖のN末端遠位分子内ジスルフィド結合を破壊す る変異を含む変異体が挙げられるが、これに限られるものではない。特に好まし い変異としては、ヒトγ鎖中のCys352および/またはCys365残基ま たは他のγ鎖中の等価なCysのミスセンス変異、または同残基を除去するイン フレームの欠失が挙げられるが、これらに限られるものではない。たとえば、有 用なミスセンス変異としては、シスチン残基の一つまたは両方がアラニンまたは バリン残基となる変異が挙げられる。他の有用な変異としては、Cys352ま たはCys365部位またはその近傍のvγ鎖の二次および/または三次コンホ メーションを変化させる変異が挙げられるが、これに限られるものではない。こ れら構造的な変化は、vγ鎖がフィブリンまたはフィブリノーゲン分子中に導入 されたときに該Cys残基が分子内ジスルフィド結合を形成できないようにする ようなものであってよい。 vγ鎖は、当該技術分野で知られた種々の方法により製造できる。該鎖の産生 となる操作は、遺伝子レベルでもタンパク質レベルでも起こりうる。γ鎖は当該 技術分野で知られた方法を用い、部位特異的突然変異誘発により遺伝子レベルで 変化させることができる。採用しうる一つのアプローチは、塩基置換を有する変 異体γ鎖を構築するための合成オリゴヌクレオチドの使用を含む。一つの態様に おいて、所望の変異を含むオリゴヌクレオチドを合成し、一本鎖の形態の野生型 のγ鎖配列にアニールさせる(ゾラー(Zoller)およびスミス(Smith)、1984 、DNA、3:479〜488)。得られた短いヘテロ二本鎖は、第二の鎖をD NAポリメラーゼにより合成するためのプライマーとして機能しうる。5'末端 には一本鎖のニックが生成されるが、これはDNAリガーゼにより閉じられる。 他の態様においては、それぞれ変異配列を含む2つの相補的なオリゴヌクレオチ ドを合成する。これら相補的なオリゴヌクレオチドがアニールした後に生成され る二 本鎖は、DNAリガーゼによって一層大きなDNA分子に結合させることができ るが、両分子の末端が相補的な一本鎖「粘着」末端を有することを条件とする。 採用できる他のアプローチは、DNA分子中に小さな一本鎖ギャップを導入し、 ついでミス修復DNA合成、すなわちギャップ中での非相補的なヌクレオチドの ミス導入を含む(ボットスタイン(Botstein)およびショートル(Shortle)、19 85、Science、229:1193)。ギャップにチオールヌクレオチドを導入 すると非相補的なヌクレオチドの切り出しを最小にすることができる。別のやり 方として、変異体γ鎖をコードする配列は、当該技術分野で知られた方法(たと えば、フレーラー(Froehler)、1986、Nucl.Acids Res.、14:539 9〜5407およびカルザース(Caruthers)ら、1982、Genetic Engineer ing、セットロウ(J.K.Setlow)およびホレンダー(A.Hollaender)ら編、プレ ナムプレス、ニューヨーク、vol.4、1〜17頁)を用いてDNAを化学的に 合成することにより調製できる。好ましい態様において、変異体γ鎖のセグメン トをコードする断片を化学的に合成し、ついでこれら断片を一緒にライゲートす る。得られた変異体γ鎖コード鎖は当該技術分野で知られた方法、たとえばPC R法を用いて増幅することができ、ついで項目2に記載したようにクローニング ベクター中に挿入できる。特別の態様において、PCR増幅をプライミングする のに使用したオリゴヌクレオチド中にミスマッチを導入することにより部位特異 的突然変異を生成することができる(ジョーンズ(Jones)およびハワード(Howar d)、1990、Biotechniques、8:178〜180)。 欠失変異を生成するための多数の方法が当該技術分野で知られている。たとえ ば、サンブルックら、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュ アル、第2版、コールドスプリングハーバープレス、1989を参照。これらに は、偶然の制限部位、エクソヌクレアーゼ消化戦略およびPCR法を用いた部分 長配列の増幅を使用した方法が含まれるが、これらに限られるものではない。 4.フィブリン鎖、N末端伸長を有するフィブリン鎖およびフィブリノーゲン 鎖の発現 本発明のフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、N末端伸長を有するフィブリン 鎖またはフィブリノーゲン鎖をコードするヌクレオチド配列は、適当な発現ベク ター、すなわち挿入したタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を 含むベクター中に挿入することができる。該タンパク質コード配列を発現させる ために種々の宿主−ベクター系を利用できる。これらには、ウイルス(たとえば 、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、レトロウイルスなど)を感染させた哺 乳動物細胞系;ウイルス(たとえば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系 ;DNAまたはT−DNAベクターで形質転換したまたはウイルスでトランスフ ェクションした植物または植物細胞;酵母ベクターまたは真菌ベクターを含む酵 母または真菌、バクテリオファージ、DNA、プラスミドDNAまたはコスミド DNAで形質転換した細菌などの微生物が挙げられるが、これらに限られるもの ではない。 ベクターの発現要素は、その強さおよび特異性が様々である。利用した宿主− ベクター系に依存して、多くの適当な転写および翻訳要素の一つを使用できる。 本発明の特別の態様は、本発明のフィブリンおよびフィブリン−ホモログの各構 成鎖のすべての発現を含む。本発明の別の態様は、完全かつ機能性のフィブリン 、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの産生を可能とする 、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、伸長したフィブリン鎖およびフィブリノ ーゲン鎖の特定の組み合わせの同時発現を含む。 ベクター中へのDNA断片の挿入のための本明細書に記載する方法のいずれを 用いても、適当な転写および/または翻訳調節シグナルおよびタンパク質コード 配列からなるキメラ遺伝子を含む発現ベクターを構築できる。これら方法には、 インビトロの組換えDNAおよび合成法およびインビボ組換え法(遺伝子組換え) が含まれる。フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、N末端伸長を有するフィブリ ン鎖またはフィブリノーゲン鎖をコードするヌクレオチド配列の発現は、組換え DNA分子で形質転換した宿主中でフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体およびフ ィブリノーゲン鎖が発現されるように第二のヌクレオチド配列によって調節され うる。たとえば、所望のタンパク質の発現は、当該技術分野で知られたプロモー ターおよび/またはエンハンサー要素によって制御されうる。所望のフィブリン 鎖 およびフィブリノーゲン鎖の発現を制御しうるプロモーターとしては、SV40 初期プロモーター領域(バーノイスト(Bernoist)およびシャンボン(Chambon)、 1981、Nature、290:304〜310)、ラウス肉腫ウイルスの3'ロン グターミナルリピート(long terminal repeat)中に含まれるプロモーター(ヤマ モト(Yamamoto)ら、1980、Cell、22:787〜797)、ヘルペスチミ ジンキナーゼプロモーター(ワグナー(Wagner)ら、1981、Proc.Natl.Aca d.Sci.USA、78:1441〜1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配 列(ブリンスター(Brinster)ら、1982、Nature、296:39〜42)、原 核細胞発現ベクター、たとえば、β−ラクタマーゼプロモーター(ビラーカマロ フ(Villa-Kamaroff)ら、1978、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、75: 3727〜3731)、tacプロモーター(ドゥボア(DeBoer)ら、1983、 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:21〜25)、trpEプロモーター; Scientific American、1980、242:74〜94中の「組換え細菌から の有用なタンパク質(Useful proteins from recombinant bacteria)」をも参照 ;オパインシンテターゼプロモーター領域(ヘレラ−エストレラ(Herrera-Estr ella)ら、Nature、303:209〜213)またはカリフラワーモザイクウイ ルス35S RNAプロモーター(ガードナー(Gardner)ら、1981、Nucl.A cids Res.、9:2871)を含有する植物発現ベクター、および光合成酵素の リブロース2リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(ヘレラ−エストレラら、 1984、Nature、310:115〜120);組織特異性を示しトランスジェ ニック動物において利用されてきた下記動物転写調節領域からのプロモーター: 膵臓胞状細胞において活性なエラスターゼI遺伝子調節領域(スウィフト(Swift )ら、1984、Cell、38:639〜646;オーニッツ(Ornitz)ら、19 86、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.、50:399〜409; マクドナルド(MacDonald)、1987、Hepatology、7:425〜515); 膵臓β細胞において活性なインスリン遺伝子調節領域(ハナハン(Hanahan)、1 985、Nature、315:115〜122)、リンパ球細胞において活性な免疫 グロブリン遺伝子調節領域(グロスシェドル(Grosshedl)ら、1984、Cell、 38:6 47〜658;アダムス(Adames)ら、1985、Nature、318:533〜5 38;アレキサンダー(Alexander)ら、1987、Mol.Cell.Biol.、7:1 436〜1444)、精巣、乳房、リンパ球およびマスト細胞において活性なマ ウス乳腫瘍ウイルス調節領域(レダー(Leder)ら、1986、Cell、45:4s s〜4s5)/肝臓において活性なアルブミン遺伝子調節領域(ピンカート(Pink ert)ら、1987、Genes and Devel.、1:268〜276)、肝臓において 活性なα−フェトプロテイン遺伝子調節領域(クルムラウフ(Krumlauf)ら、19 85、Mol.Cell.Biol.、5:1639〜1648;ハマー(Hammer)ら、19 87、Science、235:53〜58);肝臓において活性なα1−アンチトリ プシン遺伝子調節領域(ケルシー(Kelsey)ら、1987、Genes and Devel.、 1:161〜171)、脊髄細胞において活性なβ−グロビン遺伝子調節領域(モ グラム(Mogram)ら、1985、Nature、315:338〜340;コリアス( Kollias)ら、1986、Cell、46:89〜94);脳中の寡突起神経膠細胞 において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(リードヘッド(Readh ead)ら、1987、Cell、48:703〜712);骨格筋において活性なミオ シン軽鎖−2遺伝子調節領域(サニ(Sani)ら、1985、Nature、314:2 83〜286)、および視床下部において活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン 遺伝子調節領域(メイソン(Mason)ら、1986、Science、234:1372 〜1378)が挙げられるが、これらに限られるものではない。 好ましい態様において、宿主系は酵母または糸状菌などの真菌である。異種タ ンパク質の発現のためのそのような系はよく開発されている。有用なサッカロミ セス・セレビシエ発現ベクター(およびプロモーター)および宿主としては、キン グスマンら、1985、Biotech.and Genet.Engineering Rev.、3:377 〜416;またはエムル(S.C.Emr)、1990、Meth.Enzymology、185 :231に記載されているものが挙げられる。有用な非サッカロミセス酵母発現 ベクターおよび宿主としては、レイサー(Reiser)ら、1990、Adv.Biochem .Engineering Biotechn.、43;75〜102に記載されているものが挙げら れる。アスペルギルスベクターおよび宿主もまた本発明の好ましい発現系である 。 有用なアスペルギルスベクターおよび宿主としては、シュバレット(Chevalet) ら、1993、J.Biotechn.、27:239〜246(アスペルギルス・フラビ ウス(A.flavius)発現ベクターおよび宿主株);ジーンズ(Jeenes)ら、1993 、FEMS Microbiol.Lett.、107:267〜272、バードス(Verdoes) ら、1993、Transgenic Res.、2:84〜92、アーチャー(Archer)ら、 1992、Biotechn.Lett.、14:357〜362、ロバーツ(Roberts)ら、 1992、Biotechn.Lett.、14:897〜902、カーン(Khanh)ら、19 92、Biotechn.Lett.、14:1047〜1052、およびシャリフ(Sharif )ら、1992、Appl.Microbiol.Biotechn.、38:115〜116(アスペ ルギルス・ニガー(A.niger)発現ベクターおよび宿主);ラチムンド(Lachmund) ら、1993、Current Microbiol.、26:47〜51、およびウォード(Wa rd)ら、1992、Gene、122:219〜223(アスペルギルス・ニデュラ ンス(A.nidulans)発現ベクターおよび宿主)、ウォードら、上掲文献、および ツチヤ(Tsuchiya)ら、1992、Appl.Microbiol Biotechnol.、38:10 9〜114(アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)発現ベクターおよび宿主)が 挙げられるが、これらに限られるものではない。フィブリンおよびフィブリン− ホモログのインビボ産生および分泌に特に好ましい宿主は、pH4.0またはそ れ以下で増殖しうる宿主細胞である。所望の培養が低pHであるのは、そのよう な宿主の酸性の代謝、すなわち、酸の生成、または培地への酸の人為的な添加に よるものである。従って、有用な宿主は、サッカロミセス、アスペルギルス、ス トレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシルス(Lactobacillus)およびカ ンジダ(Candida)属が挙げられ、これらに限られるものではない。 フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体およびフィブリノーゲン鎖挿入を含む発現 ベクターは、3つの一般的なアプローチ:(a)核酸ハイブリダイゼーション、( b)「マーカー」遺伝子機能の存在または不存在、および(c)挿入された配列の 発現によって同定できる。第一のアプローチでは、発現ベクター中に挿入したポ リペプチドコード配列の存在は、挿入した配列に相同な配列を含むプローブを用 いた核酸ハイブリダイゼーションによって検出することができる。第二のアプロ ーチ では、組換えベクター/宿主系は、ベクター中への異種配列の挿入および該ベク ターによる宿主の形質転換によって引き起こされた、ある種の「マーカー」遺伝 子機能(たとえば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換の 表現型、バキュロウイルスにおける封入体の形成など)の存在または不存在に基 づいて同定および選択することができる。たとえば、ベクターのマーカー遺伝子 配列内にフィブリン鎖のコード配列が挿入されると、フィブリン鎖挿入を有する 組換え体は該マーカー遺伝子機能の不存在によって同定することができる。第三 のアプローチでは、組換え発現ベクターは宿主細胞によって発現された異種遺伝 子産物をアッセイすることによって同定することができる。そのようなアッセイ は、たとえば、インビトロアッセイ系における発現構築産物の物理的または機能 的な特性、たとえば、フィブリンポリマーの形成(ハートウィッグ(Hartwig)お よびダニシェフスキー(Danishefsky)、1991、J.Biol.Chem.、266: 6578〜6585)、フィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体またはフィブリノー ゲン鎖に対して向けられた抗体を用いたイムノアッセイに基づいていてよい。 特定の組換えDNA分子が同定および単離されたら、当該技術分野で知られた 幾つかの方法を用いて該分子を増殖させることができる。適当な宿主系および増 殖条件が確立されたら、組換え発現ベクターを大量に増殖および調製することが できる。すでに説明したように、使用できる発現ベクターとしては、わずかばか りの例を挙げるとすれば以下のベクターまたはその誘導体が挙げられるが、これ らに限られるものではない:ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスなどのヒ トまたは動物ウイルス;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルス;酵母ベクター; バクテリオファージベクター(たとえば、ラムダ)、およびプラスミドおよびコス ミドDNAベクター。 加えて、挿入した配列の発現を調節するか、または特定の所望の仕方で遺伝子 産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。ある種 のプロモーターからの発現はある種のインデューサーの存在下で促進されうる; それゆえ、遺伝子操作したフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体およびフィブリノ ーゲン鎖タンパク質の発現は制御することができる。さらに、異なる宿主細胞お よび生物は、タンパク質の翻訳および翻訳後のプロセシングおよび修飾(たとえ ば、開裂)のための特徴的で特異的な機構を有する。発現された外来タンパク質 の所望の修飾およびプロセシングを確実にすべく適当な細胞株または宿主系を選 択することができる。異なるベクター/宿主系はタンパク質加水分解開裂などの プロセシング反応に種々の程度に影響を及ぼすので、そのような差異は産生され た最終タンパク質産物を制御する機会を与える。 特定の態様において、宿主細胞または生物は、N末端伸長またはリーダーペプ チド上のターゲティング(「プレ」)および特異的な開裂(「プロ」)シグナル配列 を認識することができる。そのような宿主は、単一のフィブリン鎖前駆体をコー ドする構築物を発現させるのに用いた場合に、成熟した(すなわち、タンパク質 分解酵素によりプロセシングされた)フィブリン鎖または短くなったN末端伸長 を有するフィブリン鎖を産生および分泌するであろう。同宿主を、必要な(requi site)フィブリン鎖前駆体、フィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖(フィブリン またはフィブリン−ホモログを構成する)をコードする構築物を発現させるのに 用いた場合には、成熟したフィブリンモノマー、フィブリン−ホモログまたはフ ィブリノーゲン−アナログを産生するであろう。この点で、アスペルギルス宿主 は特に好ましい。なぜなら、アスペルギルス宿主は、細菌から哺乳動物由来のも のにわたる異種源のターゲティングおよび開裂シグナルを正しく認識およびプロ セシングするうえで非常に適用範囲が広いからである。グウィン(Gwynne)ら、 1987、Biotechnol.、5:369〜376;アップシャル(Upshall)ら、1 987、Biotechnol.、5:1301〜1304;ウォード(Ward)ら、199 2、Gene、122:219〜223;ツチヤ(Tsuchiya)ら、1992、Appl. Microbiol.Biotechnol.、38:109〜1134参照。 他の態様において、宿主細胞または生物は、N末端伸長またはリーダーペプチ ド上のターゲティング(「プレ」)シグナル配列は認識できるが特異的な開裂(「 プロ」)シグナル配列は認識できない。そのような宿主は、単一のフィブリン鎖 前駆体またはN末端仲長を有するフィブリン鎖をコードする構築物を発現させる のに用いた場合に、フィブリン鎖前駆体またはN末端伸長を有するフィブリン鎖 を 分泌する。同宿主を、必要なフィブリン鎖前駆体、N末端伸長したフィブリン鎖 、フィブリン鎖およびフィブリノーゲン鎖(フィブリンモノマー、フィブリン− ホモログ、またはフィブリノーゲン−アナログを構成する)をコードする構築物 を発現させるのに用いた場合には、フィブリンモノマーの前駆体、フィブリン− ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの前駆体を分泌する。かくして産生 されたフィブリン鎖前駆体、フィブリンモノマー前駆体またはフィブリン−ホモ ログ前駆体は、さらにインビトロでプロセシングして(すなわち、適当なプロセ シングプロテアーゼで開裂して)対応する成熟したポリペプチドまたはタンパク 質を産生することができる。たとえば、フィブリン鎖、フィブリンモノマーまた はフィブリン−ホモログ前駆体のリーダーペプチドが第Xa因子認識部位を含む 場合には、リーダーペプチドは第Xa因子でインビトロ消化することにより開裂 できる。スミスおよびジョンソンの上掲文献を参照。 さらに他の態様において、宿主細胞または生物は、フィブリン鎖前駆体または N末端伸長を有するフィブリン鎖のリーダーペプチド上のターゲティング(「プ レ」)または特異的な開裂(「プロ])シグナル配列を認識できない。そのような 宿主は、フィブリン鎖前駆体またはN末端伸長を有するフィブリン鎖をコードす る構築物を発現させるのに用いた場合に、フィブリン鎖前駆体または他の仕方で 伸長したフィブリン鎖を産生または分泌するであろう。同宿主を、必要なフィブ リン鎖前駆体、N末端伸長したフィブリン鎖、フィブリン鎖およびフィブリノー ゲン鎖(フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン− アナログを構成する)をコードする構築物を発現させるのに用いた場合には、フ ィブリンの前駆体、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの 前駆体を産生および分泌するであろう。かくして産生したフィブリン鎖前駆体、 フィブリン前駆体またはフィブリン−ホモログ前駆体は、宿主細胞から回収し、 さらにインビトロでプロセシングして(すなわち、適当なプロセシングプロテア ーゼで開裂して)対応する成熟したポリペプチドまたはタンパク質を産生するこ とができる。 本発明はまた、適当な場合に、フィブリン鎖前駆体またはかかる前駆体を含む フィブリンモノマーおよびフィブリン−ホモログの分泌および/またはプロセシ ングを可能にする必要な分泌および/またはプロセシング機能を有する宿主細胞 または生物を操作することをも提供する。たとえば、フィブリン鎖前駆体のリー ダーペプチドが第Xa因子またはトロンビン開裂認識部位を含む場合には、フィ ブリン鎖前駆体またはそのようなフィブリン鎖前駆体からアセンブリーしたフィ ブリンまたはフィブリン−ホモログの前駆体からのリーダーペプチドの適当な開 裂が可能となるように、第Xa因子またはトロンビンをコードする発現構築物で 宿主細胞または生物を操作することができる。同様に、特定のターゲティング配 列について輸送または膜機能が同定されている場合には、フィブリン鎖前駆体ま たはフィブリン、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの前 駆体であるかにかかわらず、所望のターゲティングまたはリーダーペプチド含有 タンパク質の分泌を可能とするため、遺伝子工学により、または可能なら伝統的 な遺伝子操作により、該機能を分泌欠損宿主細胞または生物中に導入することが できる。 5.発現された遺伝子産物の同定および精製 特定のコード配列について発現構築物が同定されたら、所望の遺伝子産物の発 現を分析し、タンパク質産物を精製することができる。発現された産物の分析は 、沈降遠心分離;遺伝子産物に特異的な抗体を用いたウエスタンブロッティング およびELISAを含むイムノアッセイ(項目6を参照);HPLC;ゲル電気泳 動;フィブリンポリマーの生成(ハートウィッグおよびダニシェフスキー、上掲 文献);などを含む、該産物の物理的または機能的特性に基づくアッセイにより 行うことができる。 混入物からのフィブリン鎖前駆体、フィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィ ブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの単離および精製は、クロ マトグラフィー(たとえば、イオン交換、アフィニティー、およびサイズカラム クロマトグラフィー)、遠心分離、分別溶解、またはタンパク質の精製のための 他の標準法を含む標準法により行うことができる。CM/セルロースクロマトグ ラフィーを用いた個々のフィブリン鎖を分離する手順についてはムラノ(Murano ) ら、1971、FEBS Lett.、14:37〜41を参照。リーダーペプチド またはN末端伸長が「精製容易化(purification-facilitating)」部分または配 列を含む場合には、フィブリン鎖前駆体、N末端伸長したフィブリン鎖、フィブ リン前駆体、フィブリン−ホモログ前駆体またはフィブリノーゲン−アナログの 精製は、対応するアフィニティー法(たとえば、GST由来のリーダーペプチド を含むタンパク質に対してはグルタチオニンカラム、特異的な抗体が存在するリ ーダーペプチドを含むタンパク質に対しては抗体カラムまたは免疫沈降など)を 用いて行うことができる。さらに、個々のフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体ま たは伸長したフィブリン鎖の精製は、個々のフィブリン鎖(すなわち、α鎖、β 鎖、γ鎖またはvγ鎖)に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を 用いたイムノアフィニティー法を用いて行うことができる(項目6を参照)。 フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナロ グおよびそれらの前駆体の精製はまた、それらが非共有結合した「可溶性の」ポ リマーを自発的に生成する能力に基づいても行うことができる。特別の態様にお いて、フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−ア ナログの前駆体(すなわち、その構成鎖の1またはそれ以上の上に存在するリー ダーペプチドまたはN末端伸長を有するもの)は、適当な「開裂部位特異的な」 プロテアーゼ(たとえば、第Xa因子またはトロンビン)によりインビトロでプロ セシングすることができる。インビトロまたはインビボでプロセシングされたフ ィブリンモノマーおよびフィブリン−ホモログは、まず、重合を妨害する緩衝液 (たとえば、pH4.0の緩衝液)中で前記の通常の生化学的手順のいずれかを 用いて精製することができる。フィブリンモノマーまたは自己重合しうるフィブ リノーゲン−アナログが産生される場合には、フィブリンモノマーまたはフィブ リノーゲン−アナログをついで緩衝液を中性にすることにより重合させ、可溶性 の混入物からフィブリンポリマーを分離できる適当なフィルターを用いた濾過に より精製する。適当なフィルターとしては、ポレックス(Porex,Inc.)からの 焼結ポリプロピレン20ミクロン孔径フィルター、フルオロテクニクス(Fluoro techniques,Inc.)からのテフロン20〜70ミクロン孔径フィルター、または コスター (Coster,Inc.)からのナイロン6622〜46ミクロン孔径フィルターが挙げら れる。産生したフィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログまた はフィブリノーゲン−アナログの機能的特性は、フィブリン、フィブリン−ホモ ログまたはフィブリノーゲン−アナログへのアセンブリーおよびフィブリンポリ マーの生成を含む(これらに限られるものではない)適当なアッセイを用いて評価 できる。 6.フィブリン鎖に対する抗体 公知の方法を用いて製造した実質的に純粋なフィブリン鎖調製物を免疫原とし て用い、各フィブリン鎖(すなわち、α鎖、β鎖、γ鎖またはvγ鎖)およびその 前駆体に対する特異的抗体を産生することができる。そのような抗体は、ポリク ローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fabフラグメント、またはFa b発現ライブラリーからのものであってよい。当該技術分野で知られた種々の手 順を用いてフィブリン鎖に対するポリクローナル抗体を産生することができる。 特別の態様において、各フィブリン鎖に対するウサギポリクローナル抗体を得る ことができる。抗体を産生するには、組換えにより製造したフィブリン鎖、また はその合成体または断片で種々の宿主動物を免疫すればよい。有用な宿主として は、ウサギ、マウス、ラットなどが挙げられるが、これらに限られるものではな い。免疫学的応答を増大するため、宿主の種に依存して種々のアジュバントを用 いることができ、フロイント(完全および不完全)のアジュバント、水酸化アルミ ニウムなどの無機物ゲル、界面活性物質、たとえば、リゾレシチン、プルロニッ クポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペッ トヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(バシルカルメット−ゲリ ン(bacille Calmette−Guerin))やコリネバクテリウム・パルブム(corynebact eriumparvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限られ るものではない。 フィブリン鎖またはフィブリン鎖前駆体に対して向けられたモノクローナル抗 体を調製するには、培養中の継続細胞株により抗体分子を産生することのできる いかなる技術も用いることができる。たとえば、コーラー(Kohler)およびミル シュテイン(Milstein)により最初に開発されたハイブリドーマ法(1975、N ature、256:495〜497)、並びにトリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリド ーマ法(コズボー(Kozbor)ら、1983、Immunology Today、4:72)、お よびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマ法(コー ル(Cole)ら、1985、「モノクローナル抗体および癌療法(Monoclonal Ant ibodies and Cancer Therapy)」、アラン・アール・リス(Alan R.Liss,Inc .)、77〜96頁)が挙げられる。 該分子のイディオタイプ(結合ドメイン)を含む抗体断片は、公知の技術により 生成できる。たとえば、そのようなフラグメントは、抗体分子のペプシン消化に より生成されるF(ab')2フラグメント;F(ab')2フラグメントのジスルフ ィド架橋の還元により生成できるFabフラグメント、および抗体分子をパパイ ンおよび還元剤で処理することにより生成できるFabフラグメントが挙げられ るが、これらに限られるものではない。 抗体の産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野で知られ た技術、たとえばELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)、ウエスタンブロ ッティング、免疫拡散アッセイにより行うことができる。たとえば、α鎖を認識 する抗体を選択するには、実質的に純粋なα鎖、フィブリンまたはフィブリノー ゲン調製物に結合する生成物について生成ハイブリドーマをアッセイすることが できる。 上記抗体は、項目5に記載したようにフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フ ィブリンモノマー、フィブリン−ホモログまたはフィブリノーゲン−アナログの イムノアッセイにおいて有用性を有する。これら抗体はまた、項目5に記載した ようにフィブリン鎖、フィブリン鎖前駆体、フィブリンまたはフィブリン−ホモ ログのイムノアフィニティー精製のための試薬としての有用性をも有する。 7.フィブリン、フィブリンホモログおよびその前駆体のインビトロアセンブ リー 本発明の他の側面は、構成鎖からのフィブリンモノマー、フィブリン−ホモロ グおよびフィブリノーゲン−アナログおよびその前駆体のインビトロアセンブリ ーを提供する。構成ポリペプチドからのタンパク質のアセンブリーに関する当該 技術分野で知られたいかなる手順も用いることができる。アセンブリー手順は一 般に、カオトロープ剤(変性剤)および還元剤の存在下でフィブリンモノマー、フ ィブリン−ホモログ、フィブリノーゲン−アナログまたはその前駆体の3つの構 成鎖(たとえば、フィブリンIモノマーについてはα鎖、Bβ鎖、およびγ鎖; フィブリンIホモログについてはα鎖、Bβ鎖、およびvγ鎖;フィブリンI前 駆体についてはγ鎖前駆体、Bβ鎖、およびα鎖;など)の等モル溶液を調製し 、ついで変性剤および還元剤を透析により徐々に除去することを含む。適当な条 件下、そのような手順により構成鎖は、機能性のフィブリン、フィブリン−ホモ ログまたは、フィブリンもしくはフィブリン−ホモログ前駆体の場合には、その 後にプロセシングされて機能性のフィブリンまたはフィブリン−ホモログを生成 しうる前駆体タンパク質にアセンブリーするであろう。構成鎖の他の比率も用い ることができる。好ましい態様において、アセンブリープロセスに使用した鎖調 製物の異種ペアは約1.5:1未満である。 さらに詳しくは、アセンブリー手順には、カオトロープ剤および変性剤を含む 初期アセンブリー(IA)溶液中に溶解した鎖調製物当たり約0.1mg/ml〜 約6.0mg/mlの各構成フィブリン鎖のほぼ等モルの混合物をアセンブリー 反応液として利用する。好ましい態様において、これら3つの鎖調製物(たとえ ば、フィブリンIのアセンブリーには、α鎖、Bβ鎖、およびγ鎖調製物)のそ れぞれをIA溶液中に約2.0〜約4.0mg/mlにて溶解する。いかなる純度 の鎖調製物をもアセンブリー手順に用いることができるが、実質的に純粋な鎖調 製物(>50重量%純度)を用いるのが好ましく、高度に純粋な鎖調製物(>80 重量%純度)を用いるのが一層好ましい。 IA溶液は、1またはそれ以上の高濃度のカオトロープ剤(変性剤)を含む。適 当なカオトロープ剤としては、尿素、臭化ナトリウム、塩酸グアニジン、KCN S、ヨウ化カリウムおよび臭化カリウムが挙げられる。いかなる変性剤をも用い ることができるが、好ましい変性剤は約0.5M、好ましくは2.5Mもしくはそ れ以上の濃度の尿素である。尿素の濃度は、より好ましくは約3.5Mまたはそ れ以 上、さらに一層好ましくは少なくとも約5.0Mまたはそれ以上である。他の変 性剤の匹敵するタンパク質折り畳み解除濃度を尿素の代わりに用いることができ る。IA溶液はさらに、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール( DTE)またはβ−メルカプトエタノールなどの1またはそれ以上の還元剤をも 含む。IA溶液中の還元剤の濃度は、約0.05mM〜約100mMの範囲であ ってよい。好ましい態様において、還元剤は約5〜約10mMの濃度のDTTで ある。IA溶液はさらに、トリス−HClやトリス−酢酸などの緩衝液を含む。 緩衝液の濃度は好ましくは約10〜約50mMであり、そのpH範囲は約6.5 〜約8.5である。好ましい態様において、緩衝液は約10mMおよび約pH7 のトリス−HClである。IA溶液はさらに、1またはそれ以上の2価カチオン キレート化剤を含む。キレート化剤の例としては、クエン酸、サッカリン酸、エ チレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチレ ンジアミン三酢酸(HEEDTA)、エチレンジアミンジ[o−ヒドロキシフェニ ル酢酸](EDDHA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四 酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2−ジアミノシ クロヘキサン四酢酸(DCTA)、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、およ びN−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)およびそれらの塩が挙げられ るが、これらに限られるものではない。好ましいキレート化剤はEDTAまたは EGTAであり、その濃度は約0.1mM〜約5mMである。 IA溶液中の構成鎖からのフィブリンモノマー、フィブリン−ホモログ、フィ ブリノーゲン−アナログおよびその前駆体のアセンブリーは、変性剤および還元 剤の除去によって開始される。この除去を行うために当該技術分野で知られたい かなる方法をも用いることができる。除去は、5またはそれ以上の等価工程から 変性剤および還元剤を欠く最終緩衝溶液への段階的な透析により行うことができ る(たとえば、5M尿素、15mM DTT IA溶液からの5等価工程透析は、 4M尿素、0mM DTTを含む溶液、3M尿素、0mM DTTを含む溶液、2 M尿素、0mM DTTを含む溶液、1M尿素、0mM DTTを含む溶液、およ び0mM尿素、0mM DTTを含む溶液に対して順次透析することからなる)。 幾 つかの態様においては、連続的な勾配の透析系を用いることができる。 アセンブリー反応の各工程に用いる透析溶液は、還元剤が存在せず変性剤が減 少している他はIA溶液と組成が同じであるのが好ましい。特別の態様において 、変性剤の濃度を約1Mおよびそれ以下から減少させるのに用いる透析溶液は、 アセンブリーしたフィブリンモノマーまたはフィブリン−ホモログ内でのジスル フィド結合の形成を容易にするために、さらにグルタチオン/酸化グルタチオン 、またはCuSO4を含んでいてよい。適用する場合には、グルタチオンおよび 酸化グルタチオンの好ましい濃度はそれぞれ約1〜3mMおよび0.3〜0.5m Mであり、CuSO4の好ましい濃度は約80mMである。 アセンブリー反応の温度は、約4℃〜約65℃であるのが好ましい。この反応 の好ましい温度は、約20℃〜約50℃C、さらに好ましくは約25℃である。 アセンブリー反応の透析の速度は、いかなる知られた手段を用いても制御でき る。たとえば、アセンブリー反応容量に対する膜表面積の比を増大または減少さ せることにより、溶質の交換速度、従って溶質が平衡に達するのに要する時間を 増大または減少させることができる。アセンブリープロセスの各透析工程は、約 15分〜約180分の平衡が得られる透析速度を用いるのが好ましい。特に好ま しい速度は、約60分以内に溶質の平衡を達成する。 フィブリンモノマーおよび自己重合性のフィブリノーゲン−アナログについて は、アセンブリーした分子は一般に透析が進行するにつれて重合するであろう。 アセンブリーおよび重合したフィブリンまたはフィブリノーゲン−アナログの調 製物は、フィブリンまたはフィブリン−ホモログポリマーからのモノマーの放出 という結果になるいかなる溶液を用いても可溶化することができる。可溶化は、 適当な酸性緩衝溶液で、該調製物を透析することにより、またはアセンブリー反 応液から回収したフィブリンポリマー血餅を溶解することにより行うことができ る。この酸性緩衝液は、約1〜約5、好ましくは約4のpHを有する。この酸性 緩衝液の好ましい濃度は、約0.02M〜約1M、最も好ましくは約0.1M〜約 0.3Mである。適当な酸性緩衝液の例としては、酢酸、コハク酸、グルクロン 酸、システイン酸、クロトン酸、イタコン酸、グルタミン酸、ギ酸、アスパラギ ン酸、アジピン酸およびそれらの塩が挙げられるが、これらに限られるものでは なく、コハク酸、アスパラギン酸、アジピン酸および酢酸の塩が好ましく、酢酸 ナトリウムが最も好ましい。 フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナロ グ調製物は、いかなる知られた物理的、化学的または生化学的方法を用いても混 入物からさらに精製することができる。 8.組換えフィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログのための用 大量かつ高純度のフィブリン鎖、フィブリンモノマー、フィブリン−ホモログ およびフィブリノーゲン−アナログは、本発明の方法を用いて得ることができる 。得ることができるフィブリン鎖の例としては、α鎖、β鎖、γ鎖およびvγ鎖 が挙げられる。得ることができるフィブリンの例としては、フィブリンI、de sBBフィブリンおよびフィブリンIIが挙げられる。得ることができるフィブ リン−ホモログの例としては、フィブリンI−ホモログ、desBBフィブリン −ホモログおよびフィブリンII−ホモログが挙げられる。フィブリノーゲン− アナログの例は、Aフィブリノペプチドのものとは異なるN末端伸長を有する2 つのα鎖、2つのβ鎖および2つのγ鎖からなる分子である。フィブリン鎖、フ ィブリンモノマー、フィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン−アナログは 、細胞性の物質を実質的に含んでおらず、ヒト血液由来の製品にしばしば認めら れる感染性のウイルス因子を完全に含んでいないのが好ましいであろう。フィブ リンモノマーおよびフィブリン−ホモログは、フィブリン−モノマーシーラント の調製に用いることができる。たとえば、エドワードソン(Edwardson)らのヨー ロッパ特許公開第0592242A1(4/13/94)を参照。 本発明はまた、自己重合することができない第一のフィブリン関連タンパク質 を自己重合することができない第二のフィブリン関連タンパク質と反応させるこ とによる、フィブリンポリマーシーラントの生成方法にも関する。第一のフィブ リン関連タンパク質の例はフィブリン−ホモログ(2つの修飾γ鎖を含有する)で ある。第二のタンパク質の例は、フィブリノーゲンおよび自己重合できないフィ ブリノーゲン−アナログである。これら自己重合できないフィブリノーゲン−ア ナログは、一般に、そのα鎖およびβ鎖上にN末端伸長(全部で4つの伸長)を有 するであろう。これら2成分フィブリン関連タンパク質組成物は、約2:1〜約 1:2のモル比で反応させるのが好ましく、さらに好ましくは約1.5:1〜約 1:1.5のモル比で反応させる。適当な緩衝液条件は、他のフィブリン−モノ マーシーラントに用いたものと同じである。EP0592242A1を参照。こ れら2組成物は、好ましくは約20%w/w未満、一層好ましくは約10%未満 、さらに一層好ましくは約5%未満の自己重合するフィブリン関連タンパク質を 含む。 さらに、フィブリン鎖、フィブリンおよびフィブリン−ホモログは、血管形成 、血小板凝集、フィブリン重合、細胞増殖などを制御する機能を有するフィブリ ンの生物活性な断片を生成するのに用いることができる。 以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、限定することを意図する ものではない。 9.実施例 9.1.発現構築物の構築 9.1.1.α鎖の構築 プライマーPCR1AおよびPCR2A(図5)を用い、ヒトフィブリノーゲン Aα鎖cDNAクローンから約560塩基対の断片を増幅させた。この断片をH indIIIおよびXbaIで消化し、HindIIIよびXbaIで切断したBlues criptII KS+プラスミド(ストラタジーン(Strategne))中にクローニングした 。この断片(α鎖のN末端部分をコードする)の配列を調べ、このクローンをpB Salpha1と称した。 pBSalpha1をKpnIおよびMluIで消化し、図1に示す合成リーダー 配列を挿入した。このクローンの配列を調べ、このクローンをpBSalpha2と 称した。 Aα鎖cDNAクローンをXbaIおよびNotIで消化し、α鎖のC末端部 分をコードする挿入物を精製した。この断片を、同様に消化したpBSalpha2 中に挿入した。かくして生成したクローンpBSalpha3は完全なα鎖をコード する。発現ベクター中にサブクローニングする前に、この構築物の完全な配列を 調べた。この構築物をKpnI/NotIで消化することにより除去し、発現ベ クターpREP4(インビトロジェン(Invitrogen))中に挿入した。 9.1.2.β鎖の構築 プライマーPCR1BおよびPCR2B(図5)を用い、ヒトフィブリノーゲン Bβ鎖cDNAクローンから約750塩基対の断片を増幅させた。この断片をH indIIIおよびBamHIで消化し、HindIIIおよびBamHIで切断した pBluescriptII KS+プラスミド中にクローニングした。この断片(β鎖のN 末端部分をコードする)の配列を調べ、このクローンをpBSbeta1と称した。 pBSbeta1をKpnIおよびHindIIIで消化し、図2に示す合成リーダ ー配列を挿入した。このクローンの配列を調べ、このクローンをpBSbeta2と 称した。 Bβ鎖cDNAクローンをBamHIおよびNotIで消化し、β鎖のC末端 部分をコードする挿入物を精製した。この断片を、同様に消化したpBSbeta2 中に挿入した。かくして生成したクローンpBSbeta3は完全なβ鎖をコードす る。発現ベクター中にサブクローニングする前に、この構築物の完全な配列を調 べた。この構築物をKpnIおよびNotIで消化することにより除去し、発現 ベクターpREP8(インビトロジェン)中に挿入した。 9.1.3.γ鎖の構築 プライマーPCR1GおよびPCR2G(図5)を用い、ヒトフィブリノーゲン γ鎖cDNAクローンから約310塩基対の断片を増幅させた。この断片をSp hIおよびEcoRIで消化し、SphIおよびEcoRIで切断したγ鎖cD NAクローンを含有するmp19ベクター中にクローニングした(該ベクターの SphI/EcoRI消化により該cDNAクローンの3'部分が除去され、こ の配列をsphI/EcoRI断片で置換した)。このクローンの配列を調べ、 mp19−gamma1と称した。 mp19−gamma1から二本鎖RF−DNAを調製し、AvrIIおよびEco RI で消化した。図3に示す合成3'断片を挿入した。得られたクローンの配列を調 べ、このクローンをmp19−gamma2と称した。このクローンは、完全長のガ ンマー鎖(γ鎖)挿入物を含んでいた。 mp19−gamma2二本鎖RF−DNAからSalIおよびNotI断片とし て挿入物を単離し、KpnIおよびNotI切断したpREP9(インビトロジ ェン)中にライゲートしたが、その際、ライゲーション反応液中にKpnI/S alIアダプター(図4に示す)を含ませた。この挿入物の構造をシークエンシン グにより確かめた。このクローンをgamma−pREP9と称した。 9.1.4.γ鎖の突然変異誘発 ここでは、γ鎖cDNAのCYS352コドンおよびCYS365コドンをA LAコドンで置換し、pREP9中にクローニングした。 gamma−pREP9からSphI(挿入物中の1057位)およびBamHI(N otI部位の3'側のベクターポリリンカー中に存在する部位)を用いて約400 塩基対の断片を単離し、M13mp18中にクローニングした。このクローン( mp18−gamma1)の配列をシークエンシングにより確かめた。 dut-minus、ung-minusの大腸菌株RZ1032の培養液に組換えmp18−ga mma1を感染させ、ウラシル置換した一本鎖mp18−gamma1DNAを調製した 。これを、プライマーMUT1G(6'−TTTGAAGGCAACGCTGCT GAACAGGA−3')およびMUT2G(5'−ACAAGGCTCACGCT GGCCATCTCAATGG−3')を用いた部位特異的突然変異誘発の鋳型と して用いた。両標的CYSのALA変換を有するクローンを、プライマーPCR Y(5'−GATCCATCCTGTTCAGCAGC−3')およびPCRX(5' −GGTTGGTGGATGAACAAGGC−3')および通常のシークエンシ ング(図7を参照)を用いた3'ミスマッチPCRの組み合わせを用いて同定した 。 得られたクローン(mp18−gamma2)をSphI部位とNotI部位との間 でシークエンシングした。このSphI/NotI断片を、γ鎖のN末端部分を コードするgamma−pREP9からのKpnI/SphI断片とともにKpnI 9.1.6.アスペルギルス・ニガー発現ベクター フィブリンアルファcDNAをGAM−融合ベクタ−pIGFのXbaI−m inus誘導体を用いて2段階でクローニングした(図6)。最初に、pIGFを XbaIおよびHpaIで切断し、合成XbaI/HpaIリンカー: をライゲーションにより挿入する(この結果、読み取り枠を変えることも停止コ ドンを導入することもなく、XbaI部位は失われるがHpaI部位は保持され る)ことにより該プラスミドのXbaI部位を除去する。 成熟アルファーフィブリンcDNAのおよそ最初の570塩基対(bp)をオリ ゴプライマーを用いたPCRにより増幅して、alpha-pREP4からシグナル配 列を除去およびアミノ末端のすぐ上流にインフレームにてHpaI部位およびK EX2エンドプロテアーゼプロセシング部位を導入し(導入した配列:AAT T TC GTT AAC AAG CGC GGC CCA CGC GTT GTG GA A、このものはHpaI部位をコードし、その後にKEX2プロセシング部位を 含むペプチドLysArgGlyProArgValValGluが続く)、6 34bpにてXbaI部位のすぐ下流にHpaI部位を導入した。このPCR断 片をHpaIで切断し、ゲル精製し、XbaI−minuspIGF誘導体のH paI部位中にクローニングした。GAM(G498)−融合、KEX2部位およ びXbaI/HpaI部位までのアルファーフィブリン配列の存在を調べるため 、挿入物を正しい方向で含むクローンをシークエンシングした。このクローンを pIGF−alpha5'と称した。 合成NotI−XbaI−NotIリンカーを用い、alpha-pREP4中のN otI部位にXbaI部位を導入した。得られた1310bpのXbaI断片( アルファ−フィブリンcDNAの残りを含有する)をゲル精製し、XbaIで切 断した正しいpIGF−alpha5'クローン中にクローニングした。 フィブリンベータcDNAも2段階手順を用いてクローニングしたが、pIG FのStuI−minus誘導体を用いた。pIGFを平滑末端切断剤(AGG CCT) であるStuIで切断し、glaA5'フランキング領域の最も5'末端にある単 一部位はターミナルトランスフェラーゼおよびジデオキシATP/TTPの混合 物を用いて破壊されるであろう。 9.2.フィブリノーゲンおよびフィブリンのインビトロアセンブリー 1mlの5M尿素、5mMDTT、10mMトリス−HCl、1mM EDT A、pH7.0当たり10mgのフィブリノーゲンを変性および解離させた。上 記「アセンブリー」反応液から尿素およびDTTを段階的透析により除去し、各 段階は4M、3M、2M、1Mおよび0M尿素を含有する10mMトリス−HC l、1mM EDTA、pH7.4透析緩衝液中、室温で1時間行った。最終調製 物は、トロンビンを10U/mlで添加したときに5mM CaCl2の存在下 および不在下のいずれにおいても重合した。この血餅の形成はフィブリノーゲン が首尾よくアセンブリーしたことを示しており、フィブリノーゲンはトロンビン によりフィブリンに変換され、フィブリンは重合した。 フィブリンのアセンブリーは以下のようにして行った。10mgのフィブリノ ーゲンを10U/mlのトロンビンで消化した。フィブリンを含有する反応液を 、ついで5M尿素、5mM DTT、10mMトリス−HCl、1mM EDTA 、pH7.4中で10mg/mlのフィブリン濃度とした。変性し解離したフィ ブリンは、上記、すなわち4M、3M、2M、1Mおよび0M尿素を含む透析緩 衝液に対する連続的な透析手順の後にアセンブリーした。1M尿素の段階では、 透析チューブから取った試料は認識しうる血餅を含んでおり、フィブリンのアセ ンブリーが首尾よくいったことを示していた。OM尿素緩衝液に移した20分後 に透析チューブから取った試料は一層強い(一層白い)血餅を含み、1M尿素の段 階におけるアセンブリー反応が不完全であったことを示していた。 9.3.γ鎖の欠失分析 一つの欠失変異は、gamma−pREP9をSphIで消化し、Met336の 後に停止コドンをコードするように設計した二本鎖SphIアダプターを挿入す ることにより作成する。他の欠失変異は、本質的に実施例9.1.2.に記載した 方法に3つの変更を加えて構築する。第一に、3'PCRプライマーは、Met 336をコードするものとC末端をコードするものとの間のいずれかに基づいて 設計する。第二に、増幅した配列中に3'断片を加えない。第三に、プライマー の5'末端はmp19ベクターおよびpREP9ベクター中にクローニングする ための適当な制限部位配列を含む。 9.4.Cys−修飾フィブリンおよびフィブリノーゲンを用いて作成した異種フ ィブリンシーラント 0.15M NaCl、0.05Mトリス、pH7.0中に溶解した変異体γ鎖( Cys352−Ala352、Cys365−Ala365)を含むフィブリンI I−ホモログ(100μg/ml)を、種々の濃度(同緩衝液中に10μg/ml〜 1000μg/ml)を含むフィブリノーゲンの等容量と混合し、37℃でイン キュベートする。重合を視覚観察により評価すると、異種フィブリンポリマーは フィブリノーゲン:フィブリンII−ホモログを1:0.5〜1:2.0のモル比で 含有する溶液において明らかである。 天然のヒトフィブリノーゲンを、Cys352および365を含む幾つかのC ys残基が穏やかな還元条件下で還元されアルキル化されるように、プロシク( Procyk)ら、Biochemistry 31:2273〜2278、1992およびプロシ クら、ヨーロッパ特許公開第472205A1(実施例1および2を参照)に概略 が記された手順を用いて修飾した。アルキル化したフィブリノーゲンをトロンビ ンで処理して活性化してフィブリノペプチドの大部分を除去し、フィブリンモノ マーを生成した(プロシクらの上掲文献)。アルキル化したフィブリンモノマーは 自己重合する能力を欠き、それゆえフィブリン−ホモログである。このアルキル 化したフィブリン−ホモログを0.15M NaCl、0.05Mトリス、pH7. 0中に100μg/mlにて溶解し、同緩衝液中のフィブリノーゲン溶液(10 μg/ml〜1000μg/ml)の等容量と混合し、37℃でインキュベート した。重合を視覚観察により評価すると、異種フィブリンポリマーはフィブリノ ーゲン:フィブリン−ホモログを1:0.5〜1:2.0のモル比で含有する溶液 において明らかであった。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.変異体γ鎖。 2.該γ鎖のC末端部分に認められる2つの保存されたCys残基のうちの最初 の残基のおよその位置とC末端との間の配列中に変異または欠失が生じている請 求項1に記載の変異体γ鎖。 3.ヒトγ鎖のCys残基352および365または非ヒトγ鎖の等価Cys残 基よりなる群から選ばれたCys残基の変異または欠失を有する、請求項2に記 載の変異体γ鎖。 4.γ鎖がヒトγ鎖である請求項1に記載の変異体γ鎖。 5.変異または欠失がヒトγ鎖のアミノ酸166とC末端との間の配列中に生じ ている請求項4に記載の変異体γ鎖。 6.ヒトフィブリン−ホモログを含む組成物であって、該ヒトフィブリン−ホモ ログが請求項4に記載の変異体γ鎖を含む組成物。 7.フィブリン−ホモログを含む組成物であって、該フィブリン−ホモログが請 求項1に記載の変異体γ鎖を含む組成物。 8.フィブリンモノマーまたはフィブリン−ホモログを含む組成物であって、本 質的にフィブリノーゲン、フィブリノーゲンAα鎖、フィブリノーゲンBβ鎖、 フィブリノペプチドAおよびフィブリノペプチドBの少なくとも一つを含まない 組成物。 9.本質的にフィブリノーゲンを含まない請求項8に記載の組成物。 10.フィブリンIまたはフィブリンIIモノマー組成物であって、本質的にフ ィブリノーゲンAα鎖を含まない請求項9に記載の組成物。 11.本質的にAフィブリノペプチドをも含まない請求項10に記載の組成物。 12.desBBフィブリンモノマーまたはフィブリンIIモノマー組成物であ って、本質的にフィブリノーゲンBβ鎖を含まない請求項9に記載の組成物。 13.本質的にBフィブリノペプチドをも含まない請求項12に記載の組成物。 14 該フィブリンモノマーがヒトフィブリンモノマーであり、該フィブリノー ゲン半分子がヒトのものであり、該フィブリノーゲンがヒトフィブリノーゲンで あり、該フィブリノーゲンAα鎖がヒトフィブリノーゲンAα鎖であり、該フィ ブリノーゲンBβ鎖がヒトフィブリノーゲンBβ鎖であり、該フィブリノペプチ ドAがヒトフィブリノペプチドAであり、該フィブリノペプチドBがヒトフィブ リノペプチドBである、請求項8に記載の組成物。 15.フィブリンを含むフィブリンポリマー組成物であって、本質的にフィブリ ノーゲン、フィブリノーゲンAα鎖、フィブリノーゲンBβ鎖、フィブリノペプ チドAおよびフィブリノペプチドBの少なくとも一つを含まない組成物。 16.本質的にフィブリノーゲン、フィブリノーゲンAα鎖およびAフィブリノ ペプチドを含まない請求項15に記載の組成物。 17.本質的にフィブリノーゲン、フィブリノーゲン半分子、フィブリノーゲン Bβ鎖およびBフィブリノペプチドを含まない請求項15に記載の組成物。 18.(1)修飾γ鎖を含むフィブリン−ホモログ組成物、および (2)フィブリノーゲン、フィブリノーゲン−アナログまたはフィブリンモノマー を含む第二成分組成物 からなり、該フィブリン−ホモログが該フィブリノーゲン、フィブリノーゲン− アナログまたはフィブリンモノマーに非共有結合により結合している、フィブリ ン関連混合ポリマー組成物。 19.該フィブリン−ホモログ、フィブリノーゲン、フィブリノーゲン−アナロ グまたはフィブリンモノマーがヒトタンパク質である、請求項18に記載のフィ ブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン混合ポリマー組成物。 20.該第二成分組成物がフィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナログ を含む、請求項18に記載のフィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン混合 ポリマー組成物。 21.該第二成分組成物が本質的にフィブリンモノマーを含まない請求項20に 記載のフィブリン−ホモログおよびフィブリノーゲン混合ポリマー組成物。 22.(1)修飾γ鎖を含むフィブリン−ホモログ組成物、および (2)フィブリノーゲン、フィブリノーゲン−アナログまたはフィブリンモノマー を含む第二成分組成物 からなり、該フィブリン−ホモログが該フィブリノーゲン、フィブリノーゲン− アナログまたはフィブリンモノマーと反応してフィブリンポリマーを生成する、 フィブリンシーラントキット。 23.フィブリン−ホモログ、フィブリノーゲン、フィブリノーゲン−アナログ またはフィブリンモノマーがヒトタンパク質である、請求項22に記載のフィブ リンシーラントキット。 24.該第二成分組成物がフィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナログ を含む請求項22に記載のフィブリンシーラントキット。 25.該第二成分組成物が本質的にフィブリンモノマーを含まない請求項24に 記載のフィブリンシーラントキット。 26.N末端伸長を有するα鎖をコードする実質的に純粋なヌクレオチド配列で あって、該N末端伸長がAフィブリノペプチドとは異なるヌクレオチド配列。 27.該伸長がトロンビン認識配列を欠く請求項26に記載の配列。 28.請求項27に記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクターであって、該配 列が該配列の発現を制御するプロモーターに機能的に連結している発現ベクター 。 29.コードされたN末端伸長を有するフィブリンα鎖がフィブリンα鎖前駆体 である請求項27に記載のヌクレオチド配列。 30.コードされた前駆体のN末端伸長が、該ヌクレオチド配列が適当な細胞中 で発現されたときにフィブリンα鎖から開裂されるように選択される、請求項2 9に記載のヌクレオチド配列。 31.該フィブリンα鎖がヒトフィブリンα鎖である請求項27に記載のヌクレ オチト配列。 32.N末端伸長を有するβ鎖をコードする実質的に純粋なヌクレオチド配列で あって、該伸長がBフィブリノペプチドとは異なるヌクレオチド配列。 33.該伸長がトロンビン認識配列を欠く請求項32に記載のヌクレオチド配列 。 34.請求項33に記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクターであって、該配 列が該配列の発現を制御するプロモーターに機能的に連結している発現ベクター 。 35.コードされたN末端伸長を有するフィブリンβ鎖がフィブリンβ鎖前駆体 である請求項33に記載のヌクレオチド配列。 36.コードされた前駆体のN末端伸長が、該ヌクレオチド配列が適当な細胞中 で発現されたときにフィブリンα鎖から開裂されるように選択される、請求項3 5に記載のヌクレオチド配列。 37.該フィブリンβ鎖がヒトフィブリンβ鎖である請求項33に記載のヌクレ オチド配列。 38.変異体γ鎖をコードする実質的に純粋なヌクレオチド配列。 39.請求項38に記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクターであって、該配 列が該配列の発現を制御するプロモーターに機能的に連結している発現ベクター 。 40.変異または欠失が、非変異γ鎖のC末端部分に認められる2つの保存され たCys残基の最初の位置に対応するおよその位置とC末端との間の配列中に生 じている、請求項38に記載の変異体γ鎖をコードする精製されたヌクレオチド 配列。 41.該変異体γ鎖が、ヒトγ鎖のCys残基352および365または非ヒト γ鎖の等価Cys残基よりなる群から選ばれたCys残基の変異または欠失を有 する、請求項40に記載のヌクレオチド配列。 42.該変異体γ鎖がヒトγ鎖の変異体である請求項38に記載のヌクレオチド 配列。 43.N末端伸長を有するα鎖をコードする実質的に精製したヌクレオチド配列 を含む細胞であって、該N末端伸長はAフィブリノペプチドとは異なり、該配列 は該配列を制御するプロモーターに機能的に連結している細胞。 44.N末端伸長を有するフィブリンβ鎖をコードする実質的に精製したヌクレ オチド配列を含む細胞であって、該N末端伸長はBフィブリノペプチドとは異な り、該配列は該配列を制御するプロモーターに機能的に連結している細胞。 45.変異体γ鎖をコードする実質的に精製したヌクレオチド配列を含む細胞で あって、該配列が該配列の発現を制御するプロモーターに機能的に連結している 細胞。 46.(i)フィブリンα鎖またはN末端伸長を有するフィブリンα鎖をコードす る配列を含む発現ベクター、 (ii)フィブリンβ鎖またはN末端伸長を有するフィブリンβ鎖をコードする配列 を含む発現ベクター、および (iii)γ鎖をコードする配列を含む発現ベクター を含む細胞であって、発現ベクター(i)または(ii)の少なくとも一つがそれぞれ AフィブリノペプチドまたはBフィブリノペプチドと異なるN末端伸長を有する α鎖またはフィブリンβ鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、各コード配列 (i)〜(iii)が該配列の発現を制御するプロモーターに機能的に連結しており、該 発現ベクター(i)〜(iii)は互いに同じであっても異なっていてもよい、細胞。 47.該発現ベクターによってコードされるフィブリン鎖がヒトフィブリン鎖で ある請求項46に記載の細胞。 48.(i)α鎖またはN末端伸長を有するα鎖のうちの一つをコードする配列を 含む発現ベクター、 (ii)フィブリンβ鎖またはN末端伸長を有するフィブリンβ鎖のうちの一つをコ ードする配列を含む発現ベクター、および (iii)変異体γ鎖をコードする配列を含む発現ベクター を含む細胞であって、各コード配列は該配列の発現を制御するプロモーターに機 能的に連結しており、該発現ベクター(i)〜(iii)は互いに同じであっても異なっ ていてもよい、細胞。 49.変異体γ鎖中の変異または欠失が、γ鎖のC末端部分に認められる2つの 保存されたCys残基の最初のおよその位置とC末端との間の配列中に生じてい る、請求項48に記載の細胞。 50.該変異体γ鎖が、ヒトγ鎖のCys残基352および365または非ヒト γ鎖の等価Cys残基よりなる群から選ばれたCys残基の変異または欠失を有 する、請求項49に記載の細胞。 51.該変異体γ鎖が変異体ヒトγ鎖である請求項48に記載の細胞。 52.(a)(i)フィブリンα鎖前駆体をコードする配列を含む発現ベクター、 (ii)フィブリンβ鎖前駆体をコードする配列を含む発現ベクター、およ び (iii)γ鎖をコードする配列を含む発現ベクター を含む細胞であって、各コード配列は該配列の発現を制御するプロモーターに機 能的に連結している細胞を培養し、それによって、α鎖、β鎖およびγ鎖を細胞 内で産生し、会合してフィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマーまたはd esBBフィブリンモノマーを形成させ、ついで (b)該フィブリンIモノマー、フィブリンIIモノマーまたはdesBBフィブ リンモノマーを回収する ことを特徴とするフィブリンモノマーの製造方法。 53.該細胞を約5.0未満のpHで増殖させる請求項52に記載のフィブリン の製造方法。 54.コードされたフィブリン鎖がヒトフィブリン鎖であり、回収されたフィブ リンがヒトフィブリンである請求項52に記載のフィブリンの製造方法。 55.形成されたフィブリンモノマーが培地中に分泌され、該培地から回収され る、請求項52に記載のフィブリンの製造方法。 56.(a)(i)フィブリンα鎖前駆体の一つをコードする配列を含む発現ベクタ ー、 (ii)フィブリンβ鎖前駆体の一つをコードする配列を含む発現ベクター、 および (iii)変異体γ鎖をコードする配列を含む発現ベクター を含む細胞であって、各コード配列は該配列の発現を制御するプロモーターに機 能的に連結している細胞を培養し、それによって、α鎖、β鎖および変異体γ鎖 を細胞内で産生し、会合してフィブリンI−ホモログ、フィブリンII−ホモロ グまたはdesBBフィブリン−ホモログを形成させ、ついで (b)該フィブリンI−ホモログ、フィブリンII−ホモログまたはdesBBフ ィブリン−ホモログを回収する ことを特徴とするフィブリン−ホモログの製造方法。 57.コードされたフィブリン鎖がヒトフィブリン鎖であり、回収されたフィブ リン−ホモログがヒトフィブリン−ホモログである請求項56に記載のフィブリ ンの製造方法。 58.形成されたフィブリン−ホモログが培地中に分泌され、該培地から回収さ れる、請求項56に記載のフィブリンの製造方法。 59.フィブリンα鎖が産生されるように請求項43に記載の細胞を増殖させ、 ついでフィブリンα鎖を回収することを特徴とする、フィブリンα鎖の製造方法 。 60.フィブリンα鎖が該細胞から分泌される請求項59に記載のフィブリンα 鎖の製造方法。 61.フィブリンα鎖前駆体が産生されるように請求項43に記載の細胞を増殖 させ、ついでフィブリンα鎖前駆体を回収することを特徴とする、フィブリンα 鎖前駆体の製造方法。 62.回収したフィブリンα鎖前駆体をインピトロプロセシングし、フィブリン α鎖を回収することをさらに含む、請求項61に記載の方法。 63 フィブリンβ鎖が産生されるように請求項44に記載の細胞を増殖させ、 ついでフィブリンβ鎖を回収することを特徴とする、フィブリンβ鎖の製造方法 。 64.フィブリンβ鎖が該細胞から分泌される請求項63に記載のフィブリンβ 鎖の製造方法。 65.フィブリンβ鎖前駆体が産生されるように請求項44に記載の細胞を増殖 させ、ついでフィブリンβ鎖前駆体を回収することを特徴とする、フィブリンβ 鎖前駆体の製造方法。 66.回収したフィブリンβ鎖前駆体をインビトロプロセシングし、該フィブリ ンβ鎖を回収することをさらに含む、請求項65に記載の方法。 67 変異体γ鎖が産生されるように請求項45に記載の細胞を増殖させ、つい で変異体γ鎖を回収することを特徴とする、変異体γ鎖の製造方法。 68.(a)(i)フィブリンα鎖組成またはN末端伸長を有するフィブリンα鎖の 組成物を有する第一成分、(ii)フィブリンβ鎖組成またはN末端伸長を有するフ ィブリンβ鎖の組成物を有する第二成分および(iii)γ鎖組成を有する第三成分 、よりなる混合物を得、ついで (b)鎖組成(i)、(ii)および(iii)を含むフィブリンモノマー、フィブリノーゲン またはフィブリノーゲン−アナログを形成する ことを特徴とするフィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲ ン−アナログの製造方法。 69.該形成が、該混合物を折り畳みを解除する量の変性剤および還元剤に暴露 し、ついで該変性剤および還元剤の濃度を減少させることからなる、請求項68 に記載のフィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナ ログの製造方法。 70.該変性剤の濃度が約0.5Mからおよそ飽和までの範囲であり、該還元剤 の濃度が約0.05mMから約100mMの範囲である、請求項69に記載のフ ィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナログの製造 方法。 71.鎖組成の異種ペアのモル比が約1.5:1未満である、請求項68に記載 のフィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナログの 製造方法。 72.鎖組成がほぼ等モルである、請求項71に記載のフィブリンモノマー、フ ィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナログの製造方法。 73.前駆体が最初に形成され、ついでフィブリンに変換される、請求項68に 記載のフィブリンモノマー、フィブリノーゲンまたはフィブリノーゲン−アナロ グの製造方法。 74.(a)(i)フィブリンα鎖調製物またはフィブリンα鎖前駆体の調製物を有 する第一成分、(ii)フィブリンβ鎖調製物またはフィブリンβ鎖前駆体の調製物 を有する第二成分および(iii)変異体γ鎖組成を有する第三成分、よりなる混合 物を得、ついで (b)鎖組成(i)、(ii)および(iii)を含むフィブリン−ホモログまたはフィブリン −ホモログ前駆体を形成する ことを特徴とするフィブリン−ホモログまたはフィブリンホモログ前駆体の製造 方法。 75.自己重合できない第一のフィブリン関連タンパク質を自己重合できない第 二のフィブリン関連タンパク質と反応させることを特徴とする、フィブリンシー ラントの形成方法。 76.該第一のフィブリン関連タンパク質が修飾γ鎖を含むフィブリン−ホモロ グを含む、請求項75に記載のフィブリンポリマーシーラントの形成方法。 77.変異、欠失または修飾が、γ鎖のC末端部分に認められる2つの保存され たCys残基の最初の位置とC末端との間の配列中に生じている、請求項76に 記載のフィブリンポリマーシーラントの形成方法。 78.該γ鎖が、ヒトγ鎖のCys残基352および365または非ヒトγ鎖の 等価Cys残基よりなる群から選ばれたCys残基の変異、欠失または修飾を有 する、請求項77に記載のフィブリンポリマーシーラントの形成方法。 79.該変異体γ鎖が変異体ヒトγ鎖である、請求項76に記載のフィブリンポ リマーシーラントの形成方法。 80.該第二のフィブリン関連タンパク質がフィブリノーゲンまたはフィブリノ ーゲン−アナログの少なくとも一つを含む、請求項75に記載のフィブリンポリ マーシーラントの形成方法。 81.該第二のフィブリン関連タンパク質が、トロンビン認識配列を欠くN末端 伸長を有するフィブリンα鎖またはフィブリンβ鎖を含むフィブリノーゲン−ア ナログを含む、請求項80に記載のフィブリンポリマーシーラントの形成方法。 82.フィブリノーゲン−アナログが、タンパク質加水分解プロセシングに適合 しないN末端伸長を有するフィブリンα鎖またはフィブリンβ鎖を含む、請求項 81に記載のフィブリンポリマーシーラントの形成方法。 83.該第二のフィブリン関連タンパク質が本質的にフィブリノーゲンまたはフ ィブリノーゲン−アナログからなる、請求項80に記載のフィブリンポリマーシ ーラントの形成方法。 84.フィブリン関連タンパク質のうち、自己重合するタンパク質が約20%w t/wt未満を示す、請求項75に記載のフィブリンポリマーシーラントの形成 方法。 85.該第一のフィブリン関連タンパク質および第二のフィブリン関連タンパク 質を約2:1〜約1:2の範囲の比で混合する、請求項75に記載のフィブリン ポリマーシーラントの形成方法。 86.該第一のフィブリン関連タンパク質および第二のフィブリン関連タンパク 質を約1.5:1〜約1:1.5の範囲の比で混合する、請求項85に記載のフィ ブリンポリマーシーラントの形成方法。 87.(a)i.組換えフィブリンα鎖前駆体またはフィブリノーゲンAα鎖前駆体 、 ii.組換えフィブリンβ鎖前駆体またはフィブリノーゲンBβ前駆体、および iii.組換えγ鎖前駆体 を発現する組換え細胞または生物を増殖させ、ついで (b)該細胞または組織から、または該細胞または組織から輸送された物質からフ ィブリンI、フィブリンIIまたはdesBB−フィブリンを回収する 工程により調製されたフィブリン組成物。 88.該工程をインビトロタンパク質加水分解工程なしに行う、請求項87に記 載の工程。 89.(a)i.組換えフィブリンα鎖前駆体またはフィブリノーゲンAα鎖前駆体 、 ii.組換えフィブリンβ鎖前駆体またはフィブリノーゲンBβ前駆体、および iii.組換えγ鎖前駆体 を発現する組換え細胞または生物を増殖させ、 (b)フィブリン鎖を回収し、 (c)回収したフィブリン鎖を含むフィブリンI、フィブリンIIまたはdesB B−フィブリンモノマーを形成させ、ついで (d)フィブリンI、フィブリンIIまたはdesBB−フィブリンを回収する工 程により調製されたフィブリン組成物。 90.該工程をインビトロタンパク質加水分解工程なしに行う、請求項89に記 載の工程。 91.N末端伸長を有するフィブリンα鎖であって、該伸長が、伸長されたフィ ブリンα鎖がトロンビンによってフィブリンα鎖に変換されることを可能にする トロンビン認識配列を欠くフィブリンα鎖。 92.該フィブリンα鎖がフィブリンα鎖への変換を受けない、請求項91に記 載の伸長されたフィブリンα鎖。 93.N末端伸長を有するフィブリンβ鎖であって、該伸長が、伸長されたフィ ブリンβ鎖がトロンビンによってフィブリンβ鎖に変換されることを可能にする トロンビン認識配列を欠くフィブリンβ鎖。 94.該鎖がフィブリンβ鎖への変換を受けない、請求項93に記載の伸長され たフィブリンβ鎖。 95.(1)変異、欠失または修飾されたγ鎖を同定し、 (2)該変異、欠失または修飾されたγ鎖を含むフィブリンモノマーを単離し、つ いで (3)該フィブリンモノマーが自己重合できるか否かおよびフィブリノーゲンと非 共有結合を形成しうるか否かを決定する ことを特徴とする、修飾されたγ鎖の同定方法。
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