【発明の詳細な説明】
ポリウレタンコーティングを有する手袋を作るための方法
本発明の分野
本発明は、手袋を作る方法に関する。より具体的には、本発明は、マルチ浸漬
方法においてポリウレタンコーティングを有する打粉不含手袋を作る方法に関す
る。
本発明の背景
通常、医療用手袋、産業用手袋、コンドーム等の天然ゴム製品は、浸漬工程に
よってラテックスから作られる。伝統的には、3つの浸漬技術が使用されている
。浸漬の第1のタイプは、直接浸漬である。直接浸漬は、コンドーム、検査用手
袋、指サック等のような物品を作るのに用いることができる。直接浸漬の工程は
、清浄な型をラテックス中に浸漬し、沈着したフィルムを乾燥させ、そして型を
再びラテックス内に浸漬することを伴う。浸漬と乾燥は、必要な数の層が達成さ
れるまで反復される。最後の浸漬の後、ラテックスは、部分的にのみ乾燥され、
そして当該物品の袖口すなわち開いた端において、ビード巻きされる。ビード加
工した後、物品は加硫され、浸出され、そして型から湿式脱離される。乾式脱離
方法においては、物品は、浸出/浸漬の後乾燥され、コーンスターチ等のような
離型剤に浸され、そして型から取り外される。
浸漬の第2のタイプは、凝固浸漬である。凝固剤浸漬は、外科用、検査用及び
産業用手袋を生産するのに一層頻繁に使用されている。その名称が暗示している
ように、凝固浸漬は、凝固剤(硝酸カル
シウム、塩化カルシウム、硝酸亜鉛等のような、1価又は2価の金属塩である)
の使用を伴う。凝固剤は、通常、ラテックス中への浸漬の前又は後に、型面に沈
着させられる。
2つのタイプの凝固浸漬法が用いられている。Waterman,R.Mausser,E.Mil
ler,Materials and Processes for Latex Compounding(R.T.Vanderbilt Compa
ny,Inc.,New York,1972),p.106.を参照。第1の凝固浸漬法は、電着法で
ある。電着法においては、清浄化された型が凝固剤溶液又はスラリー中に浸漬さ
れ、乾燥され、そしてラテックス中に浸漬される。乾燥した凝固剤が、ラテック
スのエマルジョンを破壊して、ゴム粒子を合体させて、型面上にフィルムを形成
する。このフィルムは、次いで、過剰の凝固剤等のような水溶性成分を除去する
ために水中で浸出される。浸出後、フィルムは乾燥され、次いで加硫され、そし
て物品が型からはぎ取られる。
凝固浸漬法の第2のタイプは、ティーグ(Teague)法である。ティーグ法にお
いては、清浄化された型が、最初にラテックスに、次いで凝固剤溶液にそして次
いでラテックスに浸漬される。残りのステップは、電着法と同様である。
第3のタイプの浸漬は、感熱浸漬である。感熱浸漬は、加熱された型の使用を
伴う。ラテックスは、加熱された型に接触したとき熱感熱性にするように調合さ
れる。Blackley,High Polymer Latices,Vol.1 and 2,McClaren & Son,Ltd.
(1966)p.532.熱が周囲のラテックス中へと伝わって逃げるにつれて、沈着物
が型の周りに蓄積する(同)。得られる沈着物の厚みは、幾つかの要因、特にラ
テックス感熱性の程度、型の温度、及び型の熱容量(同)に依存す
る。
上記の方法は、典型的には、タルク、コーンスターチ等のような打粉の導入を
伴っている。打粉は、凝固剤中に含まれるか、又は、加硫した物品にはぎ取りに
先立って適用されるかの何れかである。打粉の添加は、2つの重要な目的に役立
つ。第1に、打粉は、手袋のべとつき又は粘着性を低下させて、型からの手袋の
取外しを容易にする。手袋においては、加硫したラテックス手袋がべとついて型
に接着する傾向があるため、型からの取外しが困難なことがしばしばある。しか
しながら、打粉は、手袋のべとつき又は粘着性を低下させ、はぎ取りを改善する
。第2に、打粉は、装着を容易にする。
打粉の使用は、べとつきを低下させて、装着を容易にする一方、多くの問題を
引き起こす。主たる問題は、完成した手袋が多量の残存打粉を含んでいるという
ことである。外科用手袋の場合、もしも手袋が裂け又は破れると、この打粉が手
袋から逃れて手術野を汚染する危険性がある。打粉の使用に関連した別の問題は
、手袋の形成の後、型面上に打粉が残ることである。型面上に打粉が残るため、
各手袋成形の後に型を清浄化しなければならない。これら全ての問題のために、
ゴム手袋の製造に際して打粉の使用を無くそうという幾つかの試みが成されてき
た。
打粉不含手袋を作るための幾つかの方法が当該分野において知られている。天
然ゴムラテックス物品を打粉不含にするための一つの方法は、バッチ法における
ハロゲン化(通常、塩素による)を介するものである。この塩素化方法は、手袋
の表面から打粉を除去し且つ装着を容易にするために、当該分野においてしばし
ば用いられて
きた。例えば、米国特許第3,411,982 号及び第3,740,262 号は、ゴム手袋の表面
を滑りやすくするためにハロゲン化を用いることを開示している。米国特許第4,
304,008 号は、ゴム物品において、装着を容易にするために打粉潤滑剤の代わり
にハロゲン化を用いることを開示している。例えば、米国特許第3,740,262 号は
、打粉不含の拒絶性外表面及び打粉不含の受容性内表面を提供するようハロゲン
化されている手袋を開示している。
ハロゲン化工程は、打粉を除去しそして装着を容易にする一方、ハロゲン化さ
れた製品は、幾つかの欠点を有している。第1に、ハロゲン化を用いて生産され
た手袋は、製造において用いられるハロゲン化ステップ、裏返しステップ、乾燥
工程数のために、生産に費用がかかる。また、ハロゲン化された製品は、貯蔵に
際しても使用に際しても、変色と経時的劣化の傾向がある。更には、ハロゲン化
された製品は、硬く、脆弱に、そして空気に曝されたとき褐色になる。加えて、
ハロゲン化に用いられる塩素等のような化合物は、有毒化合物と考えられており
、そのため処理問題及び環境問題を生ずる。
打粉不含手袋を作るための幾つかの方法が、当該分野において知られている。
例えば、米国特許第4,310,928 号は、脂質系物質及び界面活性剤を含有する凝固
溶液中に型を最初に浸漬することによる、タルク不含外科用手袋を開示している
。型は、次いで、手袋を形成するためにラテックス中に浸漬される。米国特許第
4,499,154 号は、界面活性剤及びシリコーンでコートされた親水性の内側コーテ
ィングを有する打粉不含ゴム物品を開示している。この特許はまた、そのような
打粉不含ゴム製品を作るための方法をも開示している
が、しかし、この方法が伴う反応の数はその方法を不当に費用のかかるものとし
ており、そして低分子量の成分(界面活性剤及びシリコーン)は、汚染を引き起
こし得る。
他の例としては、ラテックス及びマイクロカプセルを用いて打粉不含の手袋、
指サックその他の保護物品を作る米国特許第5,138,718 号が含まれる。マイクロ
カプセルは、物品の外表面から内表面へとマイクロカプセルの濃度が漸増するよ
うに、ラテックス中に濃度勾配を形成するように分散・配置される。マイクロカ
プセルは、エイズ又はヘルペス等のような疾患に対抗する殺ウイルス活性を備え
るよう、ノノキシノール(nonoxynol)、塩酸モロキシジン(moroxydine)、又は
ビダラビン等のような薬剤学的に活性な物質を含有することができる。米国特許
第5,024,852 号を参照。
今や数十年にわたって、ポリウレタン技術の成長には目ざましいものがある。
成長のために、夥しい種類のポリウレタンポリマーが知られている。ポリウレタ
ンとしては、分子の残り部分が何であろうと、主としてウレタン基を含むポリマ
ーが含まれる。J.H.Saunders and K.C.Firsch, Polyrethanes,Chemistry and Technology, Part I,
Interscience Publishers(1965).通常、これらのポリマ
ーは、ポリイソシアネートと、少なくとも幾つかのヒドロキシル基を有する反応
剤、例えば、ポリエーテル、ヒマシ油、及び簡単なグリコールなどとの組み合わ
せによって得られる。アミノ及びカルボキシ等のような、他の反応性の基もまた
存在してよい。こうして、典型的な「ポリウレタン」は、ウレタン基に加えて、
脂肪族及び芳香族炭化水素、エステル、エーテル、アミド及び尿素基を含んでよ
い。これらのポリマーもまた、時には「ウレタン」と、また時に
は「イソシアネートポリマー」と呼ばれる。
しばしば、ウレタンは、不安定なカルバミン酸のエステル、又は炭酸のアミド
エステルと考えられる:
そしてウレタン基は、特徴的な形態を有する:
ポリウレタンは、種々の方法で形成することができるが、最も広く使用されて
いる製造方法は、ヒドロキシル末端ポリエステル又はポリエーテル等のようなジ
又は多官能性ヒドロキシル化合物と、ジ又は多官能性イソシアネートとの反応で
ある。ジヒドロキシ化合物(HOROH)とジイソシアネート(OCNR’NC
O)とから誘導される線状ポリウレタンの一般的な構造は、次の一般式によって
表すことができる:
分枝した又は架橋させたポリマーを形成するためには、ヒドロキシル含有成分
並びにイソシアネートの官能基は、3又はより多くへと高めることができる。他
の構造的変更もまた、思いのままに行うことができる。例えば、Rの性質を、例
えば分子量及びタイプ(ポリエーテル、ポリエステル、簡単なグリコール)等に
つき変更する
ことができ、これらのポリヒドロキシ化合物をの混合物を使用することができる
。同様に、R’の性質も、例えばナフタリンジイソシアネートからヘキサメチレ
ンジイソシアネートに至るまでの変化があるように、変更する事ができる。これ
らの理由により、ポリウレタンは、架橋、鎖の柔軟性及び分子間力を、広範囲に
且つ殆ど独立して変更することができるという点において、殆ど独特である。こ
のため、ポリウレタンは、繊維、柔らかい及び硬いエラストマー、可撓性の及び
剛直な発泡体、多くの目的のコーティング、及び高架橋プラスチックを含むこと
が予測される筈である(同)。
上述のように、多くのポリウレタン樹脂系が知られており、そして新たな樹脂
が継続的に調製されている。ポリウレタンポリマーを記述する非常に多くの先行
技術があり、この技術を要約しようという努力はここでは払わない。しかしなが
ら、幾つかのポリウレタン特許の簡単なリストを以下に掲げる:
米国特許第3,828,238 号は、酸素、窒素に対して炭素の比率の低い、又はイオ
ン性の、第4級アンモニウム塩の基を基本骨格に有する又はイソシアネート量の
低い、親水性ポリウレタンポリマーを開示している。
米国特許第3,975,350 号は、活性な薬剤と結合させたポリウレタンを含む親水
性担体系を開示している。
米国特許第4,156,066 号及び第4,156,067 号は、約6,000 の分子量を有し且つ
ポリマー基本骨格中にラクトン基及びヒドロキシル基を有するポリウレタンポリ
マーを開示している。
米国特許第4,255,550 号は、pH11においてエタノールに可溶性であり、約6,
000 の分子量を有し且つポリマー基本骨格中にカルボ
キシレート基とヒドロキシル基とを有する、非水溶性のポリウレタンポリエーテ
ルポリマーを開示している。
米国特許第4,408,023 号は、親水性ポリウレタンジアクリレート組成物を開示
している。米国特許第4,424,305 号は、ポリウレタンジアクリレート組成物から
形成された外科用埋め込み物を開示しており、米国特許第4,439,583 号は、ポリ
ウレタンジアクリレート組成物から形成されたカニューレを開示している。
米国特許第4,439,584 号は、ガス透過性膜を形成するのに有用な親水性ポリウ
レタンジアクリレート組成物を開示している。米国特許第4,439,585 号は、薬理
学的に活性化薬剤のための担体として有用なポリウレタンジアクリレート組成物
を開示している。
米国特許第4,451,635 号は、1つ又はより多くの有機塩化物の溶液と、強塩基
の存在下に、水混和性有機溶媒中に溶解させた1つ又はより多くの親水性ポリウ
レタン樹脂とを反応させることによって得られる、ポリウレタン第4級アンモニ
ウム塩組成物を開示している。
米国特許第4,454,309 号及び第4,490,423 号及び第4,496,535 号は、親水性ポ
リウレタンポリエン組成物を開示している。この組成物は、1つ又はより多くの
ポリエンを1つ又はより多くの親水性ポリウレタンの存在下に反応させることに
よって得られる。
米国特許第4,780,512 号は、親水性ポリウレタンアクリレート組成物を開示し
ている。
米国特許第4,743,673 号は、親水性カルボキシルポリウレタンを開示している
。伝統的に、カルボキシルポリウレタンは、製造が困難であった。
米国特許第4,789,720 号は、ある種のアルキレングリコールの組み合わせより
製造される親水性ポリウレタンポリマーを開示している。このポリウレタンは、
改善された寸法安定性、機械的強度、及び、約10,000乃至約200,000 の平均分子
量を有する。
米国特許第4,810,582 号及び第4,798,876 号は、吸水性ポリウレタンポリエン
組成物を開示している。
米国特許第4,945,149 号は、親水性ポリウレタン樹脂よりなる実質的に無孔性
の透湿性のコーティング層又はフィルムを形成するための組成物を開示している
。この親水性ポリウレタン樹脂は、ポリオール組み合わせ及びポリイソシアネー
ト化合物、又はポリウレタン樹脂のプレポリマーを含む。
米国特許第4,119,094 号は、ポリビニルピロリドンポリウレタンインターポリ
マーでコートされた基質を開示している。このコーティングは、摩擦係数が非常
に低い。
米国特許第4,990,357 号は、エラストマー性のセグメント化された親水性ポリ
エーテルウレタン及びポリビニルピロリドン等のような親水性のポリマーよりな
る均一なブレンドよりなる、物品のためのコーティング組成物を開示している。
米国特許第4,100,309 号は、ポリビニルピロリドン─ポリウレタンインターポ
リマーでコートされた基質を開示している。
米国特許第14,670,330 号は、主鎖及び/又は側鎖に親水性基及び/又は親水
性セグメントを有する、非水溶性の、親水性ポリウレタン樹脂を開示している。
米国特許第4,783,857 号は、ポリウレタンフィルムを利用した透湿性手袋を開
示している。
本発明の目的は、注意深く設計された機能的内側層及び外側層を備えた、マル
チ浸漬コーティング技術を利用した、ポリウレタンコーティングを有する打粉不
含手袋を作るための方法を提供することである。この仕方で作られる手袋は、実
質的な経済的節約と更なる特徴及び利点を伴って、連続様式で製造することがで
きる。加えて、もしもこの方法と組み合わせて使用するのに水系が選択されるな
ら、環境に優しい材料及び方法が用いられる。
本発明の要約
本発明は、マルチ浸漬方法を用いたポリウレタンコーティングを有する打粉不
含手袋を作る方法を提供する。加えて、この方法は、外科用手袋及び検査用手袋
、カテーテル及びコンドーム等のような、打粉不含物品を作るのに使用すること
ができる。本出願において開示する方法はまた、指サック、外科用の手術野、エ
プロン、胸当て、及びキャップ等のような、他の医療用物品を構成するのにも使
用することができる。
マルチ浸漬工程を用いて打粉不含手袋を作る方法は次のステップを含む:
所望の手袋の形状の型を打粉不含のポリウレタンポリマー又はコポリマーの
分散液又はエマルジョン中に浸漬して第1の層を形成するステップ;依然として
型面上にある該第1の層を、打粉不含の凝固剤中に浸漬するステップ;該第1の
層をラテックスコンパウンド中に浸漬して第2の層を作るステップ;該第2の層
を水中において浸出するステップ;該第1及び第2の層を加硫するステップ;そ
して、得られた手袋を型からはぎ取るステップ。
本発明の上記の方法は、加硫の前又は後に、潤滑性の、打粉不含
のポリマーで該手袋をコートするステップを更に含むことができる。この潤滑性
の打粉不含のポリマーは、装着を容易するために、及び型からのはぎ取りを容易
にするよう物品のべとつきを低下させるために添加される。
本発明の方法は、打粉不含の多層手袋を作るために使用することができる。本
発明のマルチ浸漬方法は、中断なく連続様式で行うことができ、それにより、打
粉不含手袋を作るための伝統的な方法に比してこの方法を一層経済性のあるもの
にしている。また、本発明の方法は、環境に優しい材料を使用し、塩素等のよう
なハロゲンの使用を伴わない。
図面の記述
図1は、本発明の方法をフローチャートの形で示す。
本発明の詳細な記述
本発明は、打粉不含のポリウレタンコートされた手袋を製造するためのマルチ
浸漬方法を提供する。明細書及び添付の請求の範囲において用いるものとして、
「打粉不含」は、手袋の表面上の、全てではないとしても殆どの打粉を除去する
ように手袋が製造されていることを意味する。
打粉不含手袋を製造するために、第1の層を形成するために所望の形状の型が
打粉不含ポリマー組成物中に先ず浸漬される。使用される型は、手袋が意図され
ている種々の手のサイズに対応して、様々なサイズ及び形状のものである。型か
らの手袋の除去を容易にす
用することができる。輪郭の作られた、肌理のある乃至高度に磨き上げられたセ
ラミック又は陶磁器の表面を有する又はフルオロカー
ボンコーティングを有する型を用いることができる。加えて、ガラス、硬質木材
、及びプラスチックの型も使用する事ができる。
ポリマー組成物は、ポリマー懸濁液を含む。組成物中において用いられるポリ
マー懸濁液は、水性の分散液又はエマルジョンの形である。ポリマー水性分散液
を作るための方法は、当該分野において周知である。
この分散液又はエマルジョンに添加剤を加えることができる。例えば、気泡を
除去するために使用される消泡剤を使用することができる。また、濡れ特性又は
分散液若しくはエマルジョンの安定性を改善するために界面活性剤を添加するこ
とができる。界面活性剤は、水又は水溶液に溶解させたとき表面張力を低下させ
る化合物と定義される。ポリマーを不安定化しない限り、当該分野において周知
の非イオン性、陽イオン性、又は陰イオン性界面活性剤を使用することができる
。
ポリマー組成物において使用することを想定しているポリマーは、ポリウレタ
ンである。「本発明の背景」において論じたように、ポリウレタンは、分子の残
り部分が何であるかに関わりなく、ウレタン基を含む。多くのタイプのポリウレ
タンポリマー及びコポリマーが当該分野において知られており、本発明において
使用することができる。例えば、B.F.Goodrich Company(Cleveland,オハイオ
州)から入手し得るU50として知られているポリウレタンを使用することができ
る。U50は、中等度に柔らかい、僅かに固い水性の脂肪族ウレタン分散液である
。使用できる別のポリウレタンは、Witco Corporation(Houston,テキサス州)
から入手できるWitcobond
ド状の脂肪族ポリウレタン分散液である。しかしながら、好ましいポリウレタン
は、得られた手袋を型から除去するのを容易にする表面変性された末端基を有す
るものである。
表面変性末端基により変性されたポリウレタンは、Polymer Technology Group
Incorporated(Emeryville,カリフォルニア州,米国)より入手できる。表面変
性末端基は、オリゴマー性である。これらのオリゴマー性末端基を介した表面変
性は、通常、低い分子量制御を導入するポリマー合成に容易に適合させることが
できる。表面変性部分をポリウレタンのような線形ポリマーの末端に限定するこ
とにより、基本のポリマーバルクの性質に加えられる変更が最小限となる。Robe
rt S.Ward and Kathleen A.White,“Development of A New Family of Polyur
ethanesurea Biomaterial,”Topical Symposium VIII,Materials in Clinical
Applications,Florence,Italy,July 1994.使用できるオリゴマー性末端基の
例としては、2〜3を挙げると、ドデシルアミン、ポリジメチルシロキサンアミ
ン、ポリエチレンオキシドアミン又はアルコールである。そのようなポリウレタ
ンを作るための方法は、参照によりここに導入する、Fobert S.Ward and Kathl
een A.Whiteによる”Development of A New Family of Polyurethanesurea Bio
material,”Topical Symposiunm VIII,Materials in Clinical Applications,
Florence,Italy,July 1994.中に記述されている。
加えて、本発明において使用されるポリマー分散液又はエマルジョンは、実質
的に溶媒不含である。本明細書で用いるものとして、「実質的に溶媒不含」は、
不安定化を引き起こすことなく分散液ま又はエマルジョンに低レベルの溶媒を加
えることができることを意
味する。溶媒は、他の物質(溶質)を溶解させて、分子又はイオンサイズのレベ
ルで均一に分散した混合物(溶液)を形成することのできる物質である。溶媒は
、極性でも無極性でもよい。当業者は、高レベルの溶媒が、分散液及びエマルジ
ョン等のような水に担持された系を不安定化させることを認識するであろう。
ポリウレタン組成物が一旦調製されると、フィルム又は第1の層を形成させる
ために、型が該組成物中に浸漬される。数秒後、型はポリウレタン分散液又はエ
マルジョンから引き出され、型の表面にコーティングを均一に分布させるよう揺
り動かされ、そして乾燥される。乾燥後、該第1の層は、打粉不含凝固剤中に浸
漬される。
打粉不凝固剤は、水又はアルコール系のものであることができる。水又はアル
コール系の凝固剤が最も一般的に使用されるが、感熱性凝固系もまた使用するこ
とができる。感熱系においては、加熱された型が用いられる。ラテックスは、加
熱された型と接触したとき感熱性となるように調製される。周囲のラテックス内
へと熱が伝わって逃げるとき、型の周りに沈着物が蓄積する。Blackley,High P
olymer Latices,Vol.1 and 2,McClaren & Son,Ltd.(1966)p.532.得られ
る沈着物の厚みは、幾つかの要因、特にラテックスの温度感受性、型の温度、及
び型の熱容量に依存する(同)。感熱性は、如何なる標準の方法によっても誘導
することができるが、しかし、ポリビニルメチルエーテルによる調製が─この物
質が非常に効果的且つ然もラテックスコンパウンドの室温安定性を高める傾向が
あることから─最も有用な方法である(同)。
凝固剤溶液から型を引き上げた後、第1の層は、1乃至2分間70℃にて乾燥さ
れる。一旦乾燥されると、第1の層は、型がラテック
スコンパウンド中に浸漬されたとき凝固を誘導することができる。
第1の層の形成後、型は第2の層を形成するためにラテックスコンパウンド中
に浸漬される。ラテックスは、当該分野において知られている如何なる凝固可能
な天然又は合成のラテックスコンパウンド、凝固可能な天然又は合成のゴムラテ
ックス又はスチレンブロックコポリマー分散液であってもよい。ラテックスの調
製のための慣用の組成は当該分野においてよく知られており、当業者は、使用す
る特定のラテックス並びに所望の最終物品に適するように、組成及び加硫その他
の条件を容易に変化させることができよう。予備加硫した、部分的に加硫した又
は加硫していないラテックスを使用することができる。加えて、ラテックスは、
通常利用されている慣用のコンパウンド成分を含有してよい。具体的な例は米国
特許第3,1411,982 号に与えられており、参照によりここに導入する。
型がラテックスコンパウンド中に浸漬されたとき、乾燥した第1の層はラテッ
クスの凝固を誘導して型面上にラテックスの均一凝固沈着物を作り出す。ラテッ
クス中に型が浸漬される時間の長さ及び凝固剤の濃度が、物品の厚さを決定する
。浸漬時間が長い程、物品の壁厚は大きくなり、逆もしかりである。本発明の方
法によって製造された物品は、典型的には4乃至15 mils の厚みを有する。
型は、それに付着したゲル化したラテックスのコーティングを伴ってラテック
スから除去される。型は、水浴中に入れられて、タンパク質、電解質等のような
水溶性成分が浸出される。水浴の温度は、40〜60℃である。
浸出後、第2の層は、乾燥されるか又は潤滑性ポリマーによって
コートされる。もしも乾燥されるならば、次いで第1及び第2の層は、加硫され
る。あるタイプのポリマーは加硫の代わりに融合を必要とすることから、本発明
において用いるものとして「加硫」の語は、「融合する」又は「融合」を含む。
例えば、コポリマーであるポリ(スチレン−b−イソブレン−b−スチレン)(
SIS)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SBS)、及び
ポリ(スチレン−b−エチレンプロピレン−b−スチレン)(SEBS)等のよ
うな熱可塑性エラストマーは、融合を必要とする。しかしながら典型的には、加
硫が用いられる。加硫に必要な時間の長さは、選ばれたポリマーに依存するが、
しかし、大半のポリマーは、138 ℃において5乃至10分以内に加硫することがで
きる。加硫後、得られた物品は、冷却されそして型から取り外される。
手袋の装着及び型からの取外しを容易にするために、潤滑性ポリマーを物品表
面にコートすることができる。本発明において使用される潤滑性ポリマーは、分
散液又はエマルジョンの形であってよく、浸漬又は噴霧によって適用される。本
発明において用いることのできる潤滑性ポリマーとしては、物品に十分に固定さ
れ、装着を容易にし、そして型からの手袋の取外しを助けるコートを提供するポ
リマーが含まれる。第1の層を形成するのに使用されるポリウレタンポリマーは
、潤滑ポリマーとして使用することができる。しかしながら、ポリマー組成物を
形成するのに使用したのと同じポリマーを使用するよう制限されることはない。
異なったポリマーを使用することができる。例えば、使用できる潤滑性ポリマー
は、ホモポリマー、コポリマー(これにより2種又はより多くのモノマーよりな
るポリマーを意味する)、ホモポリマーとコポリマーとの混合物で
あってよい。使用できる適切なポリマーの例としては、、ビニルポリマー及びコ
ポリマー、アクリル酸及びメタクリル酸ポリマー及びコポリマー、スチレン系ブ
ロックコポリマー、ポリウレタンその他が含まれてよい。使用できるビニルポリ
マーの例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルその他が含ま
れてよい。使用できるアクリル酸ポリマーの例としては、アクリル酸エチル、ア
クリル酸メチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル等のようなアクリル
酸アルキルポリマー及びコポリマーが含まれてよい。スチレン系ブロックコポリ
マーの例としては、スチレン−ブタジエン、スチレン−エチレン−ブタジエン、
スチレン−エチレン−プロピレン、スチレン−イソプレンその他が含まれてよい
。当業者は、装着及び型からの手袋の取外しを容易にするのに種々のポリマーが
使用できるということを認識するであろう。
潤滑性ポリマーは、第2の層の乾燥の前でも、第2の層の乾燥後であるが但し
加硫前でも、又は加硫後でも、適用する事ができる。潤滑性ポリマーが適用され
るとき、それは、既に多層である物品に追加の層を付け加える。潤滑性ポリマー
加えられた後、それは放置されて乾燥されるか、又はオーブン中で乾燥される。
当業者は、オーブン中における潤滑性ポリマーの乾燥のための条件が用いた潤滑
性ポリマーのタイプに依存して変化するということを認識するであろう。もしも
加硫前に手袋に潤滑性ポリマーが加えられるならば、潤滑性ポリマーは乾燥され
そして手袋は1ステップで乾燥されてよい。もしも物品が加硫した後に潤滑性ポ
リマーが加えられるのならば、潤滑性ポリマーは乾燥されなければならない。一
旦乾燥されると、手袋は、型から取り外される。
潤滑性ポリマーに加えて、装着及び型からの物品の取外しを用にするために、
エマルジョンシリコーン等のような特定の添加剤も使用することができる。シリ
コーンは、一般に、交互のケイ素及び酸素原子を含んだ構造に基づく、ケイ素に
有機基が結合している、シロキサンポリマーを含んだ化合物と定義される。本発
明において使用されるエマルジョンシリコーンは、第1の層として適用されるポ
リウレタン組成物中に、第2の層を形成するために使用されるラテックス中に、
又は潤滑性ポリマー中に含まれていてよい。使用できる適したシリコーンの例と
しては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、Dow Corning Silicone Emulsio
n 365 その他が含まれる。一般に、それぞれのポリマー調合物への2%未満のこ
れらのシリコーンの添加が、物品の装着及び取外しを改善するのに十分であろう
。
型から手袋を取り外すと手袋は裏返しになり、それにより第1の層が外側にそ
してラテックス又は潤滑性の層が内側にくる。このはぎ取り工程には、型から手
袋を取り外すのに如何なる打粉も必要としない。加えて、得られた手袋は、如何
なるべとつきも示さない。
本発明の方法は、多層、打粉不含の手袋をもたらす。この方法に従って製造さ
れた手袋は、型から容易に取り外すことができ、べとつかず、そして良好な乾燥
装着特性を示す。本発明の方法に従って作ることのできる物品としては、手袋に
加えて、カテーテル及びコンドームが含まれる。
本発明に従って製造される手袋は、多くの特徴及び利点を有する。本発明の方
法に従って作られる物品は、慣用の方法に比して相当
な経済的節約を伴う連続方式で作ることができることから、多くの利点を有する
。打粉不含手袋を作るために使用される慣用の方法は、製造におけるハロゲン化
ステップ、裏返しステップ、乾燥ステップという多数のステップのために一層費
用がかかる。本方法に従って製造される手袋は、型から容易に取り外すことがで
き、べとつかず、良好な装着特性を示し、そして打粉不含である。本発明の方法
は、これらのステップの多くを除去する。
この発明の更なる利点は、本方法が環境に優しい材料を使用するという点にあ
る。打粉不含手袋を作るための他の方法とは異なって、本発明の方法は、ハロゲ
ン化ステップを含まない。ハロゲン化工程は、塩素等のような毒性の化学物質の
使用を伴い、それは多数の処分問題及び環境問題を引き起こす。加えて、ハロゲ
ン化された製品は、貯蔵及び使用中に変色及び経時的劣化を起こす傾向がある。
例として、しかし限定としてでなく、本発明の実施例が今や提示されよう。
実施例1
手形の素焼き型を、The Polymer Technology Groupより入手可能なWUMB 23115
/S10等(固形分6.5 %)のような表面変性末端基を有するウレタン分散液中に浸
漬し、次いで打粉不含メタノール凝固剤中に浸漬することによって、打粉不含の
、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)手袋を作った。コーティングを乾
燥させ、そして型を、Dexco Polymersから入手可能なDPX 546 等のようなスチレ
ン−イソプレンブロックコポリマー分散液中に浸漬した。厚い沈着物がコーティ
ング層上に形成され、これは次に温水(50℃)中で浸
出された。ウレタン分散液よりなる第2の被覆が浸漬コーティングによって適用
された。形成された手袋は、約71℃から93℃までオーブンの温度をゆっくりと上
昇させることによって71〜93℃にて約20分間融合された。冷却後、手袋を型から
取り外した。手袋は、良好な装着性を示した。コーティングは、SIS手袋に非
常によく固定されており、そして打粉不含であった。何れの側にも粘着性の徴候
はなかった。手袋の使用者側は艷があり平滑のようであり、他方の表面は、型の
表面の特徴を複製していた。
実施例2
The Polymer Technology Groupより入手可能なWUWB-23316/S5 等のような表面
変性末端基を有する水性の親水性ポリウレタン分散液(固形分重量で19.5%を含
有する)を、脱イオン水で6.4 %に希釈した。手袋を形成するために使用するセ
ラミック型を十分に濡らすために、十分な量のSurfynol TG をこの分散液に加え
た。この場合、7.46kgの分散液中の約18gのSurfynol TG が型を濡らすように
思われる。温かい(40〜50℃)肌理のあるセラミック製手持ち型をこの分散液中
に浸漬し、手で揺すってコーティングを型上に均一に分布させた。コーティング
をオーブン中にて約70℃で約5分間乾燥させた。コートされた型を、次いで、メ
タノール系の打粉不含凝固剤分散液中に、コーティングの少し上のレベルまで浸
漬した。凝固剤を乾燥させた後、型を天然ゴムラテックス手袋コンパウンド中に
、最初のコーティングのレベルまで浸漬した。沈着したフィルムを次いで温水(
37乃至54℃)で浸出し、次いでポリウレタンよりなる沈着物を、ラテックス沈着
物のレベルまで浸漬することにより適用した。形成された手袋を、次いで、138
℃にて約10分間加硫した。
形成されそして加硫した手袋を、次いで、慣用の仕方で型からはぎ取った。
実施例3
実施例2のポリウレタン分散液を固形分5.9 %まで希釈し、実施例4に詳述さ
れているようにして手袋を形成した。
実施例4
ビード加工された打粉不含のウレタンコーティングされた手袋を製造するため
に、凝固剤及びラテックス沈着物の約1/2インチより下方にコーティングを適
用しそしてビード加工を慣用の仕方で行ったことを除き、実施例2の手順に従っ
た。Witco Corporation か
イド状の脂肪族分散液等のような他の水性のポリウレタンを使用してもよい。
本発明は、主として特定の且つ好ましい具体例との関連において記述されたが
、本発明の範囲から逸脱することなく修正することができるということは理解さ
れるであろう。以下の請求の範囲は、本発明の原理に一般的に従う、そして、本
開示に含まれない本発明の関係する分野における既知の若しくは習慣的な実施の
範囲に属するような若しくは当業者に自明であるようなものを含む、本発明の全
ての変形、使用、又は適合を包含することが意図されている。