JPH09509390A - 安定化したポリ硫化アンモニウム溶液およびこの溶液の利用法 - Google Patents

安定化したポリ硫化アンモニウム溶液およびこの溶液の利用法

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Abstract

(57)【要約】 ポリ硫化アンモニウムの水性溶液と、アザ環状化合物、式R−O−Cn2nNH2を有する化合物、または式(CH32NR1を有する化合物であることができる水溶性の安定化化合物の安定化量とを含んでなり、組成物のpHが7〜14である、安定化したポリ硫化アンモニウム溶液。この安定化した組成物は、水性流中のシアン化物濃度の制御に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】 安定化したポリ硫化アンモニウム溶液およびこの溶液の利用法 発明の背景 1. 発明の分野 本発明は、ポリ硫化アンモニウム溶液の安定化、およびこのような安定化した ポリ硫化アンモニウム溶液を用いる水流中のシアン化物を制御する方法に関する 。 2. 先行技術の説明 シアン化物は、製油所、化学プラントなどの廃水流のような多くの工業的流に 見られる。シアン化物は、かなりの腐蝕、水素膨れ(hydrogen blistering)、お よび廃水処理問題を引き起こす。 このような廃水流におけるシアン化物を制御する方法としては、ポリ硫化ナト リウムおよびアンモニウムのようなポリ硫化物を廃水流に添加することが知られ ている。このポリ硫化物がシアン化物を非腐蝕性で生物学的分解性を有するチオ シアン酸塩に転換するのであり、このチオシアン酸塩は水溶性でありかつストリ ッピングによって容易に除去することができる。 ポリ硫化アンモニウムは溶液でしか知られておらず、一般的には硫化水素を2 8%水酸化アンモニウム溶液に通過させ、生成する溶液に過剰の硫黄を溶解させ ることによって得られる。経時的にかつ典型的な保存条件下では、ポリ硫化アン モニウムは分解して、遊離硫黄の沈澱を生じる。沈澱した硫黄を含むポリ硫化ア ンモニウム溶液は、活性成分が最早含まれていないので、シアン化物の制御の使 用にはほとんどが適さない。更に、沈澱した硫黄が弁、ポンプおよびラインに詰 まって、不経済な稼動休止時間を生じることがある。これは、例えば精製操作に おいて、比較的長時間保存されるシアン化物の制御に用いられるポリ硫化アン モニウムでは典型的であるので、シアン化物を制御する能力には悪影響を及ぼす ことなくポリ硫化アンモニウムの安定性を増大させる方法が必要である。 発明の要約 従って、本発明の目的は、ポリ硫化アンモニウム溶液を安定化する方法を提供 することである。 本発明のもう一つの目的は、安定化したポリ硫化アンモニウム溶液を提供する ことである。 更にもう一つの本発明の目的は、周囲温度以下の温度条件で安定なポリ硫化ア ンモニウム溶液を提供することである。 更にもう一つの本発明の目的は、安定化したポリ硫化アンモニウム溶液を用い て水性流中のシアン化物濃度を制御する方法を提供することである。 前記および他の本発明の目的は、本明細書に示される説明および請求の範囲か ら明らかになるであろう。 一つの態様では、本発明は、ポリ硫化アンモニウム溶液を安定化する方法であ って、アザ環状化合物、式R−O−Cn2nNH2(式中、Rは1〜3個の炭素原 子を有するアルキル基であり、nは1〜3である)を有する化合物、式(CH3 2NR1(式中、R1は1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基である)を有す る化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される水溶性の安定化化合 物の安定化量をポリ硫化アンモニウム溶液に添加し、安定化した溶液のpHが約 7〜約14の範囲になるようにすることを特徴とする方法を提供する。 本発明のもう一つの態様は、前記のような安定化化合物の安定化量を含むポリ 硫化アンモニウムの水溶液を含んでなる、pHが約7〜約14の安定化した組成 物である。 本発明は、水性流中のシアン化物の濃度を制御する方法であって、前記のよう な安定化化合物の安定化量を含むpH7〜14の安定化したポリ硫化アンモニウ ム水溶液の有効量を水性流中に注入することを特徴とする方法も意図するもので ある。 好ましい態様の説明 本発明の組成物および方法に用いられるポリ硫化アンモニウム溶液(APS) は、ウェイト・シンプルシアン化物(weight simple cyanides)を錯形成するのに 利用可能なネット・フリー(net-free)硫黄を含む硫化アンモニウム水溶液(通常 は70重量%までの濃度で入手可能)である。ネット・フリー硫黄は、アンモニ ア錯体から解離し、シアン化物と反応して所望のチオシアン酸塩を形成する硫黄 である。ポリ硫化アンモニウムは、下記の一般式を有する。 (NH42x (式中、xは2〜8の整数である)。 本発明の方法によれば、APSは、水溶性(APSに可溶性)で、ポリ硫化ア ンモニウムとシアン化物との反応に悪影響を及ぼさず、周囲温度(約20〜30 ℃)、周囲温度以下(約15°F未満)または両方の温度で、ポリ硫化アンモニ ウムの分解を防止するある種のアミン型化合物の安定化量を添加することによっ て安定化することができる。有用な安定化化合物は、アザ環状化合物、式 R−O−Cn2nNH2 (式中、Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜3である )を有する化合物、式(CH32NR1(式中、R1は1〜6個の炭素原子を有す る炭化水素基である)を有する化合物、およびそれらの混合物である。例えば、 R1は、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシルなどであることができる。ア ザ環状化合物の非制限的例としては、モルホリン、ピロリジン、エチレンイミン 、キヌクリジン、ピロリン、ピロール、N−メチルピロリドン(NMP)、2− ピロリジノンなどが挙げられる。特に好ましいものは、アザ環状化合物において 、窒素が第二アミンとして存在するものである。アザ環状安定化化合物として特 に 好ましいものは、モルホリンである。式R−O−Cn2nNH2を有する有用な化 合物の非制限的例としては、3−メトキシプロピルアミン、エトキシエチルアミ ン、メトキシエチルアミンなどが挙げられる。式(CH32NR1を有する有用 な化合物の非制限的例としては、ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。 添加される安定化剤の量は、APSの保存の長さ、保存を行なう温度条件、A PSに利用される保存のタイプ、用いられる安定化化合物の種類などによって変 化する。例えば、幾つかの安定化組成物は周囲温度で有効であるが、約15°F 未満の周囲温度以下の温度では有効でない。一般的には、安定化化合物は、安定 化量、すなわち保存または使用中におけるAPSからの遊離硫黄の沈澱を有意に 減少させる量で添加される。更に具体的には、安定化化合物の安定化量は、周囲 温度で、特にアンモニアがAPSから失われつつあるか、または失われてしまっ ているときに、遊離硫黄の有意な結晶化および沈澱を防止する量、または約15 °F未満、特に約10°F未満の周囲温度以下の温度でこのような結晶化および 沈澱を防止する量である。例えば、APSは、硫黄の有意な沈澱なしに少なくと も約30日間安定なままであることが望ましい。最も望ましくは、APSは、周 囲温度で硫黄の有意な沈澱なしに少なくとも約45日間、特に少なくとも約75 日間安定なままであることが望ましい。安定化化合物の有効または安定化量は、 当業者が容易に決定することができるが、一般的に言えば、安定化化合物は、組 成物、すなわち安定化化合物とAPSの量の約3〜約15重量%の量で存在する 。 安定化したAPSは、APSと水溶性の安定化化合物とを任意の好適なやり方 で混合することによって調製することができる。 本発明の方法に従って調製した安定化したAPS組成物のpHは、7より大き く、14までであり、更に好ましくは約8〜約12である。酸性pHは、ポリ硫 化アンモニウムを速やかに分解しやすいので、この酸性pHは避けるべきである ことが理解されるであろう。pHを約8〜12の間に保持すると、APSの安定 性が最適になり、処理される(水性)廃棄物流に過度にアルカリ性の溶液が導入 されることがないので、特に望ましい。 前記のように、APS溶液の脱安定化は、硫黄の沈殿によって明らかになる。 これは、製造、輸送および/または保存中の蒸発からアンモニアが失われること によって起こることがある。更に、低温、例えば約15°F以下、特に10°F 以下では、硫黄の沈澱が生じて、活性なシアン化物除去剤がなくなる。更に、前 記のように、沈澱した硫黄が存在すると、ライン、ポンプ、フィルターなどの目 詰まりを生じることがあり、これは明らかに望ましくない。 本発明の安定化したAPS組成物は、米国特許第4,508,683号明細書 に教示されているFCC反応装置の水系などのような水性流中のシアン化物を制 御する方法に有効に用いることができ、上記特許明細書の内容は、参考として本 明細書に包含される。このような水性流または系において、本発明の安定化した APSは、当業者が容易に決定することができる所望な部位でこの系に注入され 、APS溶液の量は、シアン化物、特にウェイト・シンプルシアン化物を錯形成 するのに十分なネット・フリー硫黄の重量比を提供するのに十分な量が注入され る。本発明の安定化したAPSを使用する際には、処理される水性流のpHを少 なくとも約8、好ましくは約9〜約11の範囲に保持することが好ましい。前記 のように、添加される安定化したAPSの量は、処理される水性流中のシアン化 物の濃度、APS溶液中のポリ硫化アンモニウムの濃度、および水性流中のシア ン化物を減少させることが望ましいその程度によって変化する。本発明の安定化 したAPSでは、硫黄の結晶化および沈澱の問題が実質的にないので、水性流ま たは組成物が工程に含まれまたはその一部を形成しているにも拘らず、様々な理 由により、APSの保存条件にある程度似た実質的に静止状態で存在する水性流 または組成物の処理に特に有用である。硫黄は、本発明の安定化したAPS組成 物か らは容易に結晶化または沈澱しないので、沈澱した硫黄が本発明に用いられるポ ンプ、ラインなどに目詰まりを起こす可能性は極めて少なくなる。 本発明を更に詳細に説明するため、下記の非制限的実施例を挙げる。総ての場 合に、用いたAPSのpHは約9〜約13であった。 実施例1 この実施例では、周囲温度でのアンモニアの喪失またはAPSの周囲温度以下 の温度への暴露により、どのようにしてAPSから硫黄が結晶化して、沈澱する かを示す。最初の組の実験では、5個の別個なAPSの40g試料に、0.5c c/分の浄化速度で窒素浄化を施して、所望の重量損失、すなわちアンモニアの 損失を得た。5回の実験を、窒素で浄化しなかったAPSと比較した。周囲温度 での結晶化の時間を記録した。第二の組の実験では、密封ガラスボトルに入れた 6個の別個なAPSの40g試料であって、最初の組の実験とまったく同じ6個 の40g試料を冷蔵庫に入れ、結晶化の時間を記録した。両方の組の実験につい ての結果を、下記の第1表に示す。 第1表のデーターから判るように、APSの製造、輸送および保存において頻 繁に起こる条件である周囲温度でのアンモニアの損失により、結晶化、すなわち APSの脱安定化が比較的短時間で起こる。例えば、アンモニアの損失が0.2 6重量%に達するときには、結晶化時間は24時間を上回るものから24時間未 満に低下し、重量損失が約0.5重量%を上回るときには、結晶化は約6時間で 起こる点に注目されたい。周囲温度以下の温度での6回の実験に関しては、アン モニアの損失が全くなくともAPSは約2〜3時間で結晶化し始めることが判る 。しかしながら、アンモニアの損失がごく僅かでも、結晶化は極めて短時間に起 こる。 実施例2 この実施例では、4個の異なるAPS40gの試料を窒素で浄化して、1%の アンモニアの重量損失を得た。次に、この4個の試料に様々な量のモルホリンを 加えて、結晶化時間を周囲温度および9°Fで測定した。結果を、下記の第2表 に示す。 第2表の結果から判るように、モルホリンの濃度が約3.0%を上回るときに は、周囲温度および9°Fでの結晶化時間は、著しく増加する。特に、5%の濃 度では、結晶化時間は、周囲温度および9°Fのいずれにおいても24時間を上 回る ことに注目されたい。 実施例3 この実施例では、APS80gの試料を各種濃度の安定化化合物と共に、およ び安定化化合物なしで、閉じた容器に入れた後、周囲温度浴または9°Fに保持 した冷蔵庫に入れた。各種試料の結晶化時間を測定した。結果を、下記の第3表 に示す。 第3表のデーターから判るように、アンモニア損失なしでは、モルホリンは周 囲温度および9°Fで約3重量%を上回る濃度で有効である。N−メチルピロリ ドン(NMP)(5重量%の量まで)の場合には、周囲温度で満足な安定化が示 される。しかしながら、低温(9°F)では、その濃度のNMPは余り有効な安 定化化合物ではない。しかしながら、10重量%の濃度では、NMPは有効な安 定化 剤である点に注目されたい。 実施例4 この実施例は、多種多様な可能性のある安定化化合物の有効性の試験結果を示 す。総ての場合に、安定化化合物を6重量%の濃度で用いたことを除き、実施例 3の手順に従った。結果を、下記の第4表に示す。 第4表から判るように、メトキシプロピルアミンおよびジメチルシクロヘキシ ルアミンを除けば、第4表に挙げた化合物はいずれも、周囲温度または9°Fの 温度のいずれでも有意な安定化効果を全く示さない。 実施例5 実施例3の手順を用いて、ピロリジンおよび2−ピロリジノンを安定化化合物 として用いる。これらの化合物は、周囲温度および9°Fにおいて有効であるこ とが判る。 上記の説明および実施例は、本発明の選択された態様を例示している。これら を考慮すれば、当業者には変更および改質が示唆されるであろうし、これらは総 て本発明の精神および範囲内にある。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. ポリ硫化アンモニウム水溶液を安定化する方法であって、前記ポリ硫化 アンモニウム溶液と、アザ環状化合物、式R−O−Cn2n−NH2(式中、Rは 1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜3である)を有する化 合物、式(CH32NR1(式中、R1は1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基 である)を有する化合物、およびそれらの混合物であって、前記ポリ硫化アンモ ニウム溶液に可溶性であるものからなる群から選択される水溶性の安定化化合物 の安定化量とを混合して、前記ポリ硫化アンモニウム溶液のpHが7〜14の範 囲となるようにすることを特徴とする方法。 2. アザ環状化合物がモルホリンである、請求項1に記載の方法。 3. 前記安定化化合物が約3〜約15重量%の量で存在する、請求項1に記 載の方法。 4. 前記安定化化合物を添加した後の前記ポリ硫化アンモニウム溶液のpH が約8〜約12の範囲にある、請求項1に記載の方法。 5. ポリ硫化アンモニウムの水性溶液と、アザ環状化合物、式R−O−Cn 2n−NH2(式中、Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは 1〜3である)を有する化合物、式(CH32NR1(式中、R1は1〜6個の炭 素原子を有する炭化水素基である)を有する化合物、およびそれらの混合物から なる群から選択される水溶性の安定化化合物の安定化量とを含んでなる、pH7 〜14の安定化したポリ硫化アンモニウム組成物。 6. 前記安定化化合物がモルホリンである、請求項5に記載の組成物。 7. 前記安定化化合物が約3〜約15重量%の量で存在する、請求項5に記 載の組成物。 8. 前記組成物のpHが約8〜約12である、請求項5に記載の組成物。 9. 水性流中のシアン化物濃度を制御する方法であって、前記水性流に、ポ リ硫化アンモニウムの水性溶液と、アザ環状化合物、式R−O−Cn2n−NH2 (式中、Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜3である )を有する化合物、式(CH32NR1(式中、R1は1〜6個の炭素原子を有す る炭化水素基である)を有する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選 択される水溶性の安定化化合物の安定化量とを含んでなるpH7〜14の組成物 の有効量を導入することを特徴とする方法。 10. 前記安定化化合物がモルホリンである、請求項9に記載の方法。 11. 前記安定化化合物の前記濃度が約3〜約15重量%である、請求項9 に記載の方法。
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