【発明の詳細な説明】
カーバメートヌクレオシド間結合を有するビルディングブロックおよびそれから
誘導される新規なオリゴヌクレオチド
発明の背景産業上の利用分野
本発明は合成オリゴヌクレオチドに関する。特に本発明は、ヌクレアーゼ分解
に対する耐性を与えるように変性されたヌクレオシド間結合を有する合成オリゴ
ヌクレオチドに関する。関連技術の要約
近年遺伝子発現の調節物質として合成オリゴヌクレオチドの使用がかなり注目
されている(例えば、AgarawalのTrends in Biotechnology 10:152-158(1992)
参照)。その少なくとも一部において、従来のオリゴヌクレオチドホスホジエス
テルが有していたヌクレアーゼ分解に対する耐性がより高められた変性オリゴヌ
クレオチドの開発に関心が向けられている。このようなオリゴヌクレオチドには
種々の変性ヌクレオチド間結合を有するキメラオリゴヌクレオチドが含まれる。
例えば、Pederson等の米国特許5,149,797号は、RNアーゼ Hを活性化する領域
とRNアーゼ Hを活性化しない領域とを有するキメラ
オリゴヌクレオチドを開示している。
オリゴヌクレオチドに組み込まれている変性ヌクレオシド間結合にはホスフェ
ート系および非ホスフェート系の結合が含まれる。前者のグループには、良く知
られているホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートお
よびホスホルアミデート結合などが含まれている。後者のグループには、スルホ
ン、サルフェートおよびカーバメート結合が含まれている。このような結合は、
オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ分解に抵抗し、正常な水素結合と塩基の積み
重ねとを形成し、相補的な標的核酸と結合し、そして、細胞に取り込まれるとい
う能力に影響を与えることによりオリゴヌクレオチドを変性させるのである。
特定の種類のカーバメートヌクレオシド間結合がこれまでに知られている。Ga
itらはJ.Chem.Soc.,Perkin I:1684-1686(1974)において、5'-ヌクレオシド-3
'-OCONH-5'-ヌクレオシド-3'の構造のカーバメートヌクレオチド間結合を含んだ
ジヌクレオチドを最初に開示している。MungallとKaiserは、J.Org.Chem.42:703
-706(1977)において、同じ構造のカーバメート結合を有する変性ジヌクレオチ
ドおよびトリヌクレオチドの合成を開示している。CoullらはTetrahedron Lett.28
:745-748(1987)で、同じヌクレオシド間結合を有するヘキサマーのオリゴヌ
クレオチドカーバメートは、その大きさと形状が立体障害の原因とはならないに
もかかわらず、塩基の積み重ね
が起らないことを報告している。Stirchakらは、Nucleic Acids Res.17:6129-61
41(1989)において同じヌクレオシド間結合を有するヘキサマーのポリCモルホ
リン(morpholine)オリゴヌクレオチドカーバメートが相補的なポリ(dG)と
、ワトソン−クリックの二重鎖ではなく、多重鎖複合体を形成することを報告し
ている。WangとWellerは、Tetrahedron Lett.32:7385-7388(1991)で、この同
じヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドまたはモルホリンオリゴヌク
レオチドカーバメートの固相合成を開示している。
オリゴヌクレオチドカーバメートは広いpH範囲に渡る安定性と酵素分解に対す
る耐性により、遺伝子発現調節剤として使用するために有利であるが、塩基の積
み重ねを形成しないこと、および、未知の機序により多重鎖複合体を形成すると
いう点が、現実に使用する際の妨げとなっている。結果的に、分解に対して同様
の耐性を有するが、オリゴヌクレオチドの塩基の積み重ねを形成する能力を妨げ
ず、そして少なくともある構造において、オリゴヌクレオチドとその相補的な標
的核酸との間に形成される二重らせんを大きく不安定化させないような、新しい
結合が必要とされている。
本発明の簡単な要約
本発明は、新しいカーバメート結合を有するオリゴヌクレオチドを組み立てる
ために好都合なビルディングブ
ロックを提供する。本発明のビルディングブロックおよびオリゴヌクレオチド中
のカーバメート結合は、5'-ヌクレオシド-3'-NHCOO-5'-ヌクレオシド-3'の構造
を有し、これは、公知のカーバメートヌクレオシド間結合の構造の逆である。意
外にも、この新しいカーバメート結合を有するオリゴヌクレオチドは公知のカー
バメート結合オリゴヌクレオチドとは異なり、塩基の積み重ねを形成する。更に
、本発明のオリゴヌクレオチドに係る二重らせんの安定性は、オリゴヌクレオチ
ド内の特定の好ましい位置に新規なカーバメート結合が存在する場合にも、大き
く損なわれることはない。
第1の特徴として、本発明は、新規なカーバメート結合 5'-ヌクレオシド-3'-
NHCOO-5'-ヌクレオシド-3'により少なくとも2つのヌクレオシドが連結している
ような、ダイマー、トリマーおよびテトラマーのビルディングブロックを提供す
る。このようなビルディングブロックは好ましくはその5'および3'末端にオリゴ
ヌクレオチドを合成するための適切な保護基または脱離基を有する。これらのビ
ルディングブロックは液相法を用いて容易に調製することができ、固相オリゴヌ
クレオチド合成のために現在用いられている保護されたモノマーと全く同様にオ
リゴヌクレオチド組み立てに用いることができる。本発明のこのようなビルディ
ングブロックは、オリゴヌクレオチド内の種々の位置に新規なカーバメートヌク
レオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドの組み立てのた
めに有用である。
第2の特徴において、本発明は新規なカーバメート結合を有するオリゴヌクレ
オチドを組み立てるための本発明のビルディングブロックの使用方法を提供する
。この特徴においては、本発明のビルディングブロックを用いながら従来のオリ
ゴヌクレオチド合成法を使用する。
第3の特徴において、本発明はオリゴヌクレオチド内の1つ以上の位置にカー
バメートヌクレオシド間結合5'-ヌクレオシド-3'-NHCOO-5'-ヌクレオシド-3'を
有する新規なオリゴヌクレオチドを提供する。このようなオリゴヌクレオチドは
、1回以上の組み立てサイクル中で、本発明のダイマー、トリマーまたはテトラ
マーのビルディングブロックを用いて、従来の固相法により容易に組み立てられ
る。本発明の特定の実施態様によるこのようなオリゴヌクレオチドは二重らせん
の不安定化に対するカーバメートヌクレオシド間結合の影響に対する位置依存性
を研究する際に有用である。本発明のオリゴヌクレオチドの特定の好ましい実施
態様においては、新規なカーバメート結合はオリゴヌクレオチドと相補的標的核
酸との間に形成される二重らせんを大きく不安定化させることのないような位置
に存在する。より好ましくは、このような新規なカーバメート結合は、それがヌ
クレアーゼ分解に対するより高い耐性をオリゴヌクレオチドに付与するような位
置に存在する。このような実施態様によるオリゴヌクレオチドは、in vitroの実
験系、および、
植物、動物またはヒトの疾患の治療を目的として使用する場合の両者において、
遺伝子発現を調節するために有用である。
図面の簡単な説明
図1は、本発明のダイマーのビルディングブロックの一般的構造を示す。トリ
マーおよびテトラマーのビルディングブロックも同様の構造を有する。
図2は、本発明のジヌクレオシドカーバメートビルディングブロックの合成の
ための一般的なスキームを示す図である。
図3は、ジヌクレオシドカーバメートビルディングブロックのそのホスホルア
ミダイト誘導体への変換を示す図である。
図4は、ジヌクレオシド、トリヌクレオシドおよびテトラヌクレオシドのカー
バメート中間体およびビルディングブロックの例を示している。各化合物の番号
は実施例1における各化合物に対して示した番号に対応している。
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を付与するような変性ヌクレオシド
間結合を有する合成オリゴヌクレオチドに関する。本発明は、新規なカーバメー
トヌクレオシド間結合を有するビルディングブロック、オリゴヌクレオチドを組
み立てるためのこのようなビルディングブロックの使用方法、および新規なカー
バメートヌク
レオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを提供する。
第1の特徴において、本発明は新規なカーバメートヌクレオシド間結合を有す
るオリゴヌクレオチドを組み立てるための好都合なビルディングブロックを提供
する。本発明のビルディングブロックは、公知のヌクレオシド間結合の逆である
5'-ヌクレオシド-3'-NHCOO-5'-ヌクレオシド-3'の構造を有する新規なカーバメ
ートヌクレオシド間結合により連結される2つ、3つまたは4つのヌクレオシド
を有する。本発明のダイマーのビルディングブロックの1つの実施態様の一般的
な構造を図1に示す。例示する化合物の数を少なくするために、5'チミジンヌク
レオシドを有するビルディングブロックのみを、後述する実施例では構築した。
しかしながら、5'または3'ヌクレオシドの塩基はどのようなプリンまたはピリミ
ジンであってもよく、また、ワトソン−クリック二重らせんやフーグスティーン
三重らせんにおいて塩基対を形成できるようなこれらの何れの類似体であっても
よい。ヌクレオシドはリボヌクレオシドであっても、デオキシリボヌクレオシド
であってもよい。図1に示すとおり、R1またはR2は、好ましくはヒドロキシル基
、ジメトキシトリチルのような酸に不安定な保護基、レブリニルのような塩基に
不安定な保護基または、ホスホトリエステル、H−ホスホネートまたはホスホル
アミダイトのような脱離基、最も好ましくは、β-シアノエチルホスホルアミダ
イト基である。最も好ましくは、特定のビルディングブロ
ック内のR1とR2の組み合わせは、下記に示す表Iの組み合わせから選択する。
本発明のトリマーおよびテトラマーのビルディングブロックはダイマーのビル
ディングブロックについて上記したものと本質的に同様の構造を有する。
本発明のビルディングブロックの合成は、典型的にはモノマー、ダイマーまた
はトリマーのヌクレオシド5'-O-p-ニトロフェニルカーボネート中間体と3'-アミ
ノ-3'-
デオキシチミジン(または3'-アミノ-3'-デオキシウリジン)との反応により行
い、その際、反応は3'-アミンで位置特異的に起こる。このようにして得られた
ビルディングブロックを、次にジメトキシトリチル(DMT)により5'位を保護し
、その後3'-アセチルをアンモニア中で加水分解し、3'-ヒドロキシル基とする。
次にビルディングブロックを定法により相当する3'-ホスホルアミダイトに変換
する。
本明細書に記載する合成方法において、有機合成に使用する有機試薬、HPLCグ
レードおよび無水溶媒は、アルドリッチ社(Aldrich)およびフィッシャーサイ
エンティフィック社(Fisher Scientific Co.)より入手し、そのまま使用した
。3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシドはRIケミカル社(R.I.Che
mical Inc.)より入手し、アセトニトリル 100ml中1gの溶液として使用した。TL
Cはケイソウ土60F-254NIを含むメルク社(Merck)のDC alufolien、およびシリ
カゲルのカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,230-400メッシュ ASTM,メ
ルク社(Merck))を用いて行った。このような合成方法は後述する実施例1に
おいてより詳細に説明する。
第2の特徴において、本発明は1つ以上の新規なカーバメート結合を有するオ
リゴヌクレオチドを組み立てるための本発明のビルディングブロックの使用方法
を提供する。この使用方法の1例においては、ビルディングブロックを適当な固
相支持体マトリックスに直接共有結合
させる。1つの好ましい実施態様においては、支持体マトリックスは長鎖アルキ
ルアミドプロパン酸コントロール多孔性ガラス(CPG)であり、カルボキシル部
分は、ビルディングブロックの3'ヒドロキシル基と直接エステル化させる。この
実施態様においては、1〜3個の新規なカーバメート結合を合成されるオリゴヌ
クレオチドの最も3'のヌクレオシド間に導入する。合成されるオリゴヌクレオチ
ドの性質に応じて、新規なカーバメートヌクレオチド間結合を更に、本発明のビ
ルディングブロックを用いて、オリゴヌクレオチド内別の位置に1〜3個のグル
ープとして導入できる。これに加え、または、これの替わりに、ホスホジエステ
ル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アル
キルホスホノチオエート、ホスホルアミデートまたはその他公知のヌクレオシド
間結合を、公知の固相法を用いて分子内の別の位置に導入できる。別の実施態様
においては、本発明のビルディングブロックを用いて新規なカーバメート結合を
最も3'のヌクレオシド間に導入せず、種々の位置でオリゴヌクレオチドにこのよ
うな結合を導入することができる。これは、固体支持体マトリックスに直接ビル
ディングブロックを連結するのではなく、ヌクレオシドホスホルアミダイトモノ
マーのような別の種類のビルディングブロックを用いて開始しておいた生長中の
オリゴヌクレオチド鎖に連結することにより行なうことができる。
一般的に、新規なカーバメートヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチ
ドを組み立てるための本発明のビルディングブロックの使用方法はダイマー、ト
リマーまたはテトラマーのビルディングブロックを使用する以外は、良く知られ
たの従来の合成方法を用いて行なう。ホスホルアミダイト法が最も好ましく、本
明細書で例示する。しかしながら、例えば米国特許5,149,798号に開示されてい
るH−ホスホネート法のような他の公知の方法を用いてもよく、この特許の記載
内容を参考のために本明細書に引用する。古典的なホスホトリエステル法でも本
発明のビルディングブロックを用いることができる。このような場合、ヌクレオ
シドモノマーを誘導体化して相当するヌクレオシドH−ホスホネートまたはホス
ホトリエステルを形成するために現在使用されているよく知られた方法を用いて
、本発明のビルディングブロックを誘導体化して相当するジ、トリまたはテトラ
ヌクレオチドH−ホスホネートまたはホスホトリエステルを形成する。次に、ビ
ルディングブロックを用いて公知のH−ホスホネートまたはホスホトリエステル
法においてオリゴヌクレオチドを組み立てる。
第3の特徴において、本発明は、オリゴヌクレオチド内の1つ以上のヌクレオ
シド間の位置で新規なカーバメートヌクレオシド間結合を有する合成オリゴヌク
レオチドを提供する。このようなオリゴヌクレオチドは好ましくは約8〜約100
ヌクレオチドの長さである。ヌクレオチ
ドはリボヌクレオチドであってもよく、またデオキシリボヌクレオチドであって
もよい。いかなるオリゴヌクレオチドについても、存在することのできる新規な
カーバメートヌクレオシド間結合の最大数は式:n=3x(式中nはオリゴヌクレオ
チド中に存在する新規なカーバメート結合の数であり、xはオリゴヌクレオチド
を組み立てるために用いるビルディングブロックの数である)により容易に計算
できる。即ち、100量体の場合には、新規なカーバメートヌクレオシド間結合の
最大数は、本発明のテトラマーのビルディングブロック25個を用いて組み立てる
として、75である。
好ましい実施態様においては、本発明のオリゴヌクレオチドは最も3'のヌクレ
オシド間の位置でのみ新規なカーバメート結合を有する。最も好ましくは、この
ようなオリゴヌクレオチドは、最初の、2番目のおよび/または3番目の最も3'
のヌクレオシド間の位置でのみ新規なカーバメート結合を有する。この実施態様
によるオリゴヌクレオチドは従来のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ分解
に対する耐性が大きく、水素結合、塩基積み重ねおよび二重鎖の形成に関与する
ことができる。従って、本実施態様のオリゴヌクレオチドは、ウイルス、原核生
物または真核生物の病原体、または細胞内遺伝子または遺伝子発現制御領域に由
来する核酸と生理学的条件下でハイブリッドするヌクレオチド配列を有する場合
に、アンチセンスまたはアンチジーン(antigene)として有用
である。最も好ましい実施態様においては、このようなオリゴヌクレオチドは、
二重鎖形成に関与する能力を妨害することなくオリゴヌクレオチドのヌクレアー
ゼ耐性を更に向上させるような別の変性ヌクレオシド間結合を有する。このよう
なヌクレオシド間結合は公知の変性された結合から、好ましくはホスホロチオエ
ート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエ
ートまたはホスホルアミデート結合またはこれらの組み合わせから選択してよく
、そして、最も好ましくはホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
下記の実施例は本発明の特定の好ましい実施態様を更に説明するものであり、
本発明を制限するものではない。
実施例1
新規なカーバメート結合5'-ヌクレオシド-3'-
NHCOO-5'-ヌクレオシド-3'をヌクレオシド間結合
としてのみ含有するダイマー、トリマーまたは
テトラマーのビルディングブロックの合成
3'-アミノ-3'-デオキシチミジンの合成を、触媒としてPd/C-10%Pdを、溶媒と
してメタノールを用い、3'-アジド-3'-デオキシチミジンを用いて標準的な水素
化方法に従って行った。p-ニトロフェニル 3'-O-アセチル-デオキシチミジン 5'
-カーボネートを公知の方法(例えば、StrichakとSummerton,J.Org.Chem.52:42
02(1987);MungellとKaiser,J.Org.Chem.42:703(1977)参照)に従って、
3'-O-アセチル-デオキシチミジンとビス(p-ニトロフェニル)カーボネートとの
反応により調製した。
まず、3'-アミノ-3'-デオキシチミジリル-(3'-5'-カルバモイル)-3'-O-アセ
チル-デオキシチミジン,1,を合成した。この合成の一般的なスキームを図2に
示す。p-ニトロフェニル 3'-O-アセチル-デオキシチミジン 5'-カーボネート(3
24.68mg;0.72ミリモル)および3'-アミノ-3'-デオキシチミジン(122.87mg;0.50
ミリモル)を室温で無水ピリジン5mlに溶解した。反応混合物を一昼夜、窒素下
に攪拌した。次に溶媒を減圧下に除去し、残存物を、溶離剤として塩化メチレン
:メタノールの23:2の混合物を用い、シリカゲルでフラッシュクロマトグラフィ
ーに付した。白色固体として生成物276.6mg(99%)を得た。IR(KBr):3500-280
0; 1700; 1550; 1500; 1300; 1100; 800 cm-1.1H-NMR(DMSO; δ ppm): 1.70(
s,6H; 2 x CH3); 2.10 (s,3H; CH3);2.10-2.40 (m,4H; H-2'+H-2"); 3.
40-3.70 (m,2H; H-4'+H-4"); 3.80 (bs,1H; OH); 4.00-4.30 (m,4H; H-
5'+H-5"); 5.10-5.30 (m,2H; H-3'+H-3"); 6.10-6.30 (m,2H; H-1'+H-1"
); 7.50および7.80 (2s,2H; 2 x H-6); 7.90(bs,H; NH); 11.30および11
.40 (2s,2H;2 x NH)。
次の段階は、5'-O-ジメトキシトリチル-3'-アミノ-3'-デオキシチミジリル-(
3'-5'-カルバモイル)-3'-O-アセチル-デオキシチミジン,3,の合成である。3'
-アミノ-3'-デオキシチミジリル-(3'-5'-カルバモイル)-3'-O
-アセチル-デオキシチミジン(1,203.5mg; 0.366ミリモル)および4,4'-ジメ
トキシトリチルクロリド(186.02mg; 0.55ミリモル)を室温で無水ピリジン5ml
に溶解した。反応混合物を窒素雰囲気下で一昼夜攪拌放置した。得られた懸濁液
を次いで氷水に注ぎこみ、生成物を塩化メチレン(3 x 50ml)で抽出した。合わ
せた抽出液を水(3 x 50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して
、真空中で蒸発乾固させた。残存固体を、溶離剤として塩化メチレン、メタノー
ルおよびトリエチルアミンの23:1:1の混合物を用い、シリカゲルのフラッシュク
ロマトグラフィーに付した。白色固体として生成物309mg(98%)を得た。IR(KB
r):3500-2800; 1700; 1600; 1500; 1300; 1150; 1000; 950; 850; 790; 750; 5
50 cm-1.1H-NMR(DMSO; δ ppm): 1.78および1.80 (2s,6H; 2 x CH3); 2.1
0 (s,3H; CH3);2.30-2.50 (m,4H; H-2'+H-2"); 3.30-3.60 (m,2H; H-4'
+H-4"); 3.75 (s,6H; 2 x OCH3); 3.90-4.10 (m,2H; H-5'); 4.30-4.50
(m,2H; H-5"); 5.40 (m,H; H-3'); 6.0 (m,H; H-3"); 6.30-6.40 (m
,2H; H-1'+H-1"); 6.80-6.90 (m,フェニル); 7.20-7.30 (m,フェニル);
7.40 (bs,2H; H-6); 7.60 (bs; 1H; NH); 10.30 (bs,2H; 2 x NH)。
次に5'-保護ダイマービルディングブロック5'-O-ジメトキシトリチル-3'-アミ
ノ-3'-デオキシチミジリル-(3'-5'-カルバモイル)デオキシチミジン,4,を
以下に記
載するとおり調製した。5'-O-ジメトキシトリチル-3'-アミノ-3'-デオキシチミ
ジリル-(3'-5'-カルバモイル)-3'-O-アセチル-デオキシチミジン,3,(309m
g)を濃アンモニア5mlに溶解し、室温で3時間攪拌した。アンモニアを真空にし
て除去した後、残存固体をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付し
、塩化メチレン、メタノールおよびトリエチルアミンの22:2:1の混合物で溶離し
て、白色固体として生成物290mg(98%)を得た。IR(KBr):3500-2800; 1750; 1
500; 1450; 1300; 1200; 1100-1000; 900; 700; 600 cm-1.1H-NMR(CDCl3; δ
ppm): 1.35および1.80 (2s,6H; 2 x CH3); 2.0 (s,2H; H-2'); 2.40 (b
s,H; OH); 2.70 (s,2H;H-2"); 3.25-3.50 (m,2H; H-4'+H-4"); 3.75 (
s,6H; OCH3); 4.0-4.30 (m,2H,H-5'); 4.30-4.50 (m,2H; H-5"); 5.90
-6.0 (m,2H,H-3'+H-3"); 6.20-6.40 (m,2H; H-1'+H-1"); 6.70-6.90 (m
,フェニル); 7.15-7.30 (m,フェニル); 7.40 (bs,2H; H-6); 7.60 (bs
,H; NH)。
次にダイマーのビルディングブロックをトリマーのビルディングブロックに変
換するか、または、ダイマー形態のその3'-ホスホルアミダイトに変換した。ト
リマーの合成のために、ダイマーをまず(ビス-p-ニトロフェニル)カーボネー
トを用いて5'の位置で活性化(図1参照)して5'-カーボネートとし、これを更
に3'-アミノ-3'-デオキシチミジンと反応させた。このようにして得られた
トリマーを次に、5'の位置で保護して5'-ODMT-保護トリマーとし、次いでアンモ
ニア中で加水分解し、遊離の3'-ヒドロキシルを発生させた。生成物5は白色粉
末として、収率78.4%で得られた。IR(KBr):3500-2800; 1750; 1500; 1460; 12
50; 1180; 1150-1050; 850; 800 cm-1.1H-NMR(DMSO; δ ppm): 1.50,1.70お
よび1.80 (3s,9H; 3 x CH3); 1.75 (bs,H; OH); 2.10-2.50 (m,6H; H-2
'+H-2"+H-2"'); 3.10-3.40 (m,3H; H-4'+H-4"+H-4"'); 3.75 (s,6H; 2 x
OCH3); 3.90-4.40 (m,6H; H-5'+H-5"+H-5"'); 6.10-6.30 (m,3H; H-3'+H-
3"+H-3"'); 6.80-6.90 (m,フェニル); 7.20-7.40 (m,フェニルおよび3H;
H-1'+H-1"+H-1"'); 7.40-7.60 (m,3H; H-6); 7.80-8.0 (m,2H; 2 x NH)
,11.40 (m,3H; 3 x NH)。
トリマーからテトラマーへの変換は、上記した段階を再度繰り返すことにより
行った。生成物,6,は白色粉末として、収率83.8%で得られた。IR(KBr):360
0-2800; 1750; 1500; 1490; 1350; 1200; 1100-1000; 800; 750 cm-1。1H-NMR(
DMSO; δ ppm): 1.50,1.70,1.80 および1.90 (4s,12H; 4 x CH3); 1.60
(bs,H; OH); 2.00-2.50 (m,8H; H-2'+H-2"+H-2"'+H-2""); 3.0-3.40 (m
,4H; H-4'+H-4"+H-4"'+H-4""); 3.70 (s,6H; 2 x OCH3); 3.80-4.40 (m,
8H; H-5'+H-5"+H-5"'+H-5""); 6.10-6.30 (m,4H; H-4'+H-4"+H-4"'+H-4"");
6.80-7.0 (m,フェニル); 7.20-7.40 (m,フェニル
;および4H; H-6); 7.80-8.0 (m,3H; 3 x NH); 11.30-14.40 (m,4H; 4 x N
H)。
ダイマーを以下の方法により相当するそのβ-シアノエチルホスホルアミダイ
トに変換した。5'-O-DMT保護ダイマー,4,トリマー,5,またはテトラマー,6
を真空中、24時間70℃で五酸化リンで乾燥し、無水ベンゼンおよび無水塩化メ
チレン(塩化メチレン2mlとベンゼン5mlの混合物 x 3)とともに蒸発させ、乾燥
塩化メチレン(2ml)に溶解した。トリエチルアミン(1ml)を溶液に添加し、
その後、(N,N-ジイソプロピルアミノ)(2-シアノエトキシ)クロロホスフィン
(173.96mg,0.735ミリモル)を添加した。窒素下60分間攪拌して反応を行った
。反応混合物を重炭酸ナトリウム飽和冷水溶液に注ぎこみ、生成物を塩化メチレ
ン(3 x 20ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水( 3 x 10ml)で洗浄し
、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、真空中で蒸発乾固させた。残存固体
を塩化メチレン(2ml)に溶解し、-78℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2m
l)を含有するヘキサン(600ml)で沈殿させた。白色沈澱を濾過し、回収し、五
酸化リンを用い真空中で乾燥させ、白色固体としてダイマーのビルディングブロ
ック182mg(73%)を得た、これは、オリゴヌクレオチドの合成に直接用いること
ができるものである。31P-NMR (CDCl3; δ ppm); 144.65および144.20。同様
にしてトリマーおよびテトラマーのホスホルアミダイトを調製することも可能で
ある。立体障害
のために、これらについては、自動DNA合成における収率およびカップリング効
率の低下が予測される。
上記した生成物の分析の各々について、1H-および31P-NMRスペクトルは、内部
標準物質としてTMS、外部標準物質として85%リン酸を用い、Varian Unity 300
スペクトロメーターで測定した。IRスペクトルはKBr錠剤とした試料を用いてNic
olet 800 スペクトロメーターで記録した。
実施例2
種々の位置に新規なカーバメートヌクレオシド間
結合を有するオリゴヌクレオチドの合成
最も3'の位置に1、2または3個の新規なカーバメートヌクレオシド間結合を
有するオリゴヌクレオチドを合成するためには、標準的な方法を用い、1-(3-ジ
メチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を存在させて、ダイマ
ー,4,トリマー,5,またはテトラマー,6の 3'-ヒドロキシル基を直接カル
ボキシル部分とエステル化するため、5'-保護ダイマー,4,トリマー,5,ま
たはテトラマー,6,のビルディングブロックを長鎖アルキルアミドプロパン酸
コントロール多孔性ガラス(CPG)ビーズに連結した(例えば、DamhaらのNuclei
c Acid Res.18:3813(1990)参照)。初期の積載量はダイマー,4,トリマー
,5およびテトラマー,6,のビルディングブロックについて、それぞれ、37.4
,27.5および2.2マイクロモル/g CPGであった。トリマーとテトラマ
ーのビルディングブロックの積載値を改善するために、まず、3'-OH位でスクシ
ニル化し、次に、定法によりアミド結合を介して長鎖アルキルアミノコントロー
ル多孔性ガラス支持体に連結した(例えば、Caruthersら,Methods In Enzymolo
gy 154:287(1978);Damhaら,Nucleic Acids Res.18:3813(1990)参照)。こ
の操作により、積載値は、トリマー,5およびテトラマー,6,のビルディング
ブロックについて、それぞれ、25.0および14.6マイクロモル/g CPGとなった。
約10mgのCPG結合ジメトキシトリチル ジ−、トリ−またはテトラヌクレオシ
ドカーバメートを10ml容量のメスフラスコに入れ、1分間、過塩素酸(HClO4)-
エタノール(3:2)0.2mlで処理し、ジメトキシトリチル基を遊離させた。次に、
アセトニトリル9.8mlを添加し、498mmの吸光度を測定して下記の式により積載効
率を求めた。
最も3'-の位置にのみ1、2または3個のヌクレオシド間結合を有するオリゴ
ヌクレオチドについては、CPG結合ダイマー、トリマーまたはテトラマーを、そ
れぞれ用いてオリゴヌクレオチドの合成を開始した。合成は、特定のサイクルに
おいてモノマーを本発明のジヌクレオシド
カーバメートシアノエチルホスホルアミダイトと置き換えた以外はモノマーのヌ
クレオシドシアノエチルホスホルアミダイトを用いて定法に従い行った。この方
法を用いて、種々の位置に新規なカーバメートヌクレオシド間結合を有するオリ
ゴヌクレオチドを以下の表IIに示すとおり組み立てた。
オリゴヌクレオチドをCPGから切り離し、1時間室温で、次いで5時間55℃で
濃水酸化アンモニウムで脱保護した。得られた5'-O-DMT-保護オリゴヌクレオチ
ドを溶媒A(0.1M 酢酸アンモニウム水溶液)および溶媒B(20% 0.1M 酢酸アンモ
ニウム+80% アセトニトリル)との一次勾配を有する溶離剤により、プレパラテ
ィブC-18逆相カラムで精製した。オリゴヌクレオチドを室温で30分間80%酢酸水
溶液で脱トリチル化し、次いで、再度C-18クロマトグラフィー工程を繰り返すこ
とにより精製した。
実施例3
種々の位置に新規なカーバメートヌクレオシド間結合
を有するオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性の評価
表IIに示す各々のオリゴヌクレオチドのエキソヌクレアーゼ分解消化に対する
抵抗能力を調べた。0.2 OD単位のオリゴヌクレオチドを5μl/mlヘビ毒ホスホジ
エステラーゼI(VIII S型,Crotulus atrox由来,シグマ社、セントルイス、ミ
ズリー)を含む0.5mlの10mM トリス(pH8.5),10mM 塩化マグネシウム(MgCl2)
に溶解し、37℃でインキュベートした。260nmにおけるUV光の吸収をモニターす
ることにより消化を測定した。各オリゴヌクレオチドの結果を下記の表IIIに示
す。
これらの結果によれば新規なカーバメートヌクレオシド間結合を有するオリゴ
ヌクレオチドはホスホジエステルヌクレオシド間結合のみを有するオリゴヌクレ
オチドよりもエキソヌクレアーゼ分解消化に対する耐性が高い。3'カーバメート
結合の数が増大するほど安定性は高くなるが、ただしこれは、このような結合が
連続しており、ホスホジエステル結合が点在していない場合に限る。3'カーバメ
ート結合を有し、残りはホスホロチオエート結合であるようなオリゴヌクレオチ
ドが特に安定であり、30分の消化の後も検知可能な分解は認められなかった。
実施例4
種々の位置に新規なカーバメートヌクレオシド間結合
を有するオリゴヌクレオチドの結合特性
表IIのオリゴヌクレオチドの各々の相補性オリゴヌクレオチドホスホジエステ
ルに対する結合特性を試験した。各オリゴヌクレオチドについて、オリゴヌクレ
オチド0.2 OD単位およびその相補体0.2 OD単位を、温度範囲25〜80℃の閉鎖系キ
ュベット中、1mlの10mM リン酸水素ナトリウム(Na2PO4)(pH7.4), 100mM 塩
化ナトリウムに溶解した(Lambda 2TM,スペクトロフォトメーター、パーキンエ
ルマー社、ウベルリンゲン(Perkin Elmer,Uberlingen,)、 ドイツ)。温度範
囲内で1℃/分の速度で昇温し、A260の増大を測定した。各オリゴヌクレオチドの
結果を下記の表IVに示す。
これらの結果は少なくとも2つの結論の根拠となっている。まず、オリゴヌク
レオチドの最も3'の位置への1、2または3個の新規なカーバメート結合の導入
は、相補的な核酸への結合能力に殆ど、または、全く影響を与えなかった。一方
、より内部に3個の新規なカーバメート結合が導入された場合には、やや抑制作
用が認められ、オリゴヌクレオチド全体に渡り更に新規なカーバメート結合が導
入されると劇的な結合低下が起こる。即ち、3個以下の新規なカーバメート結合
が最も3'の位置にあるようなオリゴヌクレオチドがアンチセンス剤として最良で
あると考えられる。
第2に、3個以下の新規なカーバメート結合がオリゴヌクレオチドの3'末端近
傍にある場合は、これらの結合は隣接ヌクレオシドの関与する塩基積み重ねを大
きく妨げることはない。これは、3'不適合性を有する(そしてこのため末端塩基
積み重ね能力を欠く)オリゴヌクレオチドの安定性を3個の3'末端の新規なカー
バメート結合を有するオリゴヌクレオチド二重鎖の安定性とを比較することによ
り明らかにされる。高いイオン強度では、二重鎖の形成が安定化し、両者はそれ
ぞれTmが67.9℃および67.4℃と、同様の挙動を示す。しかしながら、イオン
強度が低下するにつれて、二重鎖の解離に遊離に働くようになるが、後者のオリ
ゴヌクレオチドがより安定である(Tmは50mM 塩濃度では62.9℃と65.0℃であり
、25mM 塩濃度では59.9℃と61.9℃である)。これらの結果は、末端塩基対形成
と塩基積み重ねが新規なカーバメート含有オリゴヌクレオチドで起こっており、
これにより末端不適合性を有する二重鎖と比較して、オリゴヌクレオチドホスホ
ジエステルとの二重鎖を安定化していることを示している。
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