JPH09501657A - テンプレートアセンブル合成タンパク質 - Google Patents

テンプレートアセンブル合成タンパク質

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JPH09501657A JP7506615A JP50661595A JPH09501657A JP H09501657 A JPH09501657 A JP H09501657A JP 7506615 A JP7506615 A JP 7506615A JP 50661595 A JP50661595 A JP 50661595A JP H09501657 A JPH09501657 A JP H09501657A
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Abstract

(57)【要約】 複雑なペプチド合成への化学選択的連結反応アプローチがテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)分子の簡単、便利な製造に採用された。保護されていない形態での、容易に合成される合成プロヘリカルペプチド−αCOSH分子と、これも保護されていない形態での合成(BrAc)4テンプレート ペプチド分子との反応は、水溶液中、迅速に進行し、均質な生成物を高収率で与える。得られたTASP分子は、単に精製して均質とすることができる。構造的均質性がイオンスプレ質量分析によって証明される。保護されていないペプチドの化学選択的連結反応は、TASP分子の合成に対する一般的アプローチとなる。

Description

【発明の詳細な説明】 発明の名称 テンプレートアセンブル合成タンパク質 技術分野 本発明は、枝分かれした、またはデンドリティック(樹枝状)ペプチドの合成 に関する。さらに詳しくは、本発明は化学選択的連結法を用いるテンプレートア センブル合成タンパク質(TASP)分子の合成ならびにψ(CO−S−CH2 −CO−NH)構造を有するデンドリティック結合単位を採用するTASP類に 関する。 背景技術 エミール フィッシャーの時代から、タンパク質を設計および化学的に合成す ることは有機化学者の目標であった。タンパク質、特にヘリックスバンドル(ら せん束形)タンパク質を新規に設計することおよび化学合成または組換えDNA 発現でそれらを製造することに、近年興昧が高まってきた。新規に設計されたヘ リックスバンドルタンパク質の例は、次の人々により報告されている。M.ヘク トら(サイエンス,249巻,884〜891頁,1990年)、L.レーガン ら(サイエンス,241巻,976〜978頁,1988年)、W.F.デグラ ードら(サイエンス,243巻,622〜628頁,1989年)およびN.E .チョーら(バイオケミストリ,31巻,5739〜5746頁,1992年) 。 幾つかの場合では、非共有結合分子間会合の制御不可能な性質のために、合成 ヘリックスバンドルの実験的に観察された構造が目的とする構造と異なっている という予期されない結果が得られてきた。たとえば、B.ラブジョイら(サイエ ンス,259巻,1288〜1293頁,1993年)を参照。このような問題 を避けるために、ヘリックスバンドルタンパク質は、ポルフィリン分子または金 属キレート錯体を介して結合された共有結合アレイを合成することによって作ら れてきた。予備的 な証拠は、期待された構造が達成されたことを示唆している。たとえばT.ササ キら(ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ,111巻,38 0〜381頁,1989年)およびR.M.ガジリら(ジャーナル オブ アメ リカン ケミカル ソサエティ,114巻,4000〜4002頁,1992年 )を参照。 予め決定された2次および3次構造の共有結合ペプチドアレイを合成する別途 の初期のアプローチは「テンプレートアセンブル(鋳型組立)合成タンパク質」 (TASP)という概念であり、これはM.ムッター(ペプチドケミストリー アンド バイオロジー,プロシーディングス オブ テンス アメリカンペプチ ドシンポジウム;G.R.マーシャル編;エスコム,ライデン,349〜353 頁,1988年)に開示されている。テンプレート分子が2次構造要素のアレイ を共有結合的にアンカーするのに用いられる。TASPアプローチの顕著な特徴 は、用いられる非線形トポロジーである。すなわち、分子は天然タンパク質の折 り畳まれた直線状ポリペプチド鎖よりむしろ分岐されたポリペプチドのアレイか ら成る。たとえば、M.ムッターら(アンゲバンデ ケミーインターナショナル エデイション イングリッシュ,28巻,535〜554頁,1989年)を 参照。このエレガントな概念は、タンパク質の新規設計に強い影響があるであろ うと予期される。 しかしながら、TASP分子集合体を合成するための従来の合成アプローチは 困難であるか、そして/または低収率を与える。たとえば、段階的固相合成(S PPS)および保護されたセグメント縮合反応アプローチの両方が限られた成功 の範囲内で用いられてきた。M.ムッターら(ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ,114巻,1463〜1470頁,1992年)には、 テンプレートアセンブル合成タンパク質の段階的固相合成(SPPS)の一例が 開示されている。さらに、B.ドルナーら(イノベーション アンド パースペ クティブズ イン ソリッド フェイズ シンセシス;固相合成の技術革新およ び展望,ロジャー エプトン編,インターセプト リミテッド,アンドーバー, 163〜170頁,1992年)およびI.アーネストら(テトラヘドロンレタ ーズ,31巻,4015〜4018頁、1990年)には、テンプレートアセン ブル合成タンパク質を合成するための保護されたセグメント縮合反応アプローチ の例が開示されている。最小数のTASP分子のみが困難な合成努力によって製 造されてきた。たとえば、前記文献およびM.ムッターら(プロテインズ,5巻 ,13〜21頁,1989年)およびG.ツヒシュラーら(プロテイン サイエ ンス,1巻,1377〜1386頁,1992年)を参照。これらの合成の幾つ かが実行された際に伴う見事な注意にもかかわらず、定義された共有結合組成物 の均質的な分子種としてのTASPの製造に関しては、未だ疑問が残る。疑う余 地のない具合に、これらの分子を簡便に、直接的に、一般的に合成することは、 非常な利用価値があるであろう。 最近、M.シュノルツァーは、未変性(すなわち直線状)のトポロジーを有す るタンパク質類似体の全化学合成の1つの方法として、保護されていないペプチ ドセグメントの化学選択的連結法を導入した(サイエンス,256巻,221〜 225頁,1992年)。このアプローチは、全く保護されていないペプチドセ グメントから長鎖の分子を共有結合的に組み立てるために、1つのタイプが各セ グメント上にある、特異な、相互に反応性のある官能基を用いる。このようにし て、保護されていないペプチドを合成し、取り扱い、精製し、および同定するこ とができる能力を最大限に利用している。溶解性の問題が軽減され、そして標的 分子が最終的に保護されていない状態で直接製造される。 発明の開示 本発明は、TASP分子の合成において化学選択的連結アプローチを利用する 。用いられたアプローチは図式1に示される。TASPは短い保護されていない ペプチドセグメントから組み立てられ、それらは標準的な方法によって回りくど くない様式で合成され、そして、高い均質性 の水準まで容易に精製される。標的とする4−ヘリックス(らせん)TASP分 子は、ムッター(テトラヘドロン,44巻,771〜785頁,1988年)の 研究に基づいて設計された。最終的な分子は、総数で4コピーのらせん形成ペプ チド1を含み、その1つのコピーがテンプレート分子中の4つのリシン残基の各 々の側鎖についている。テンプレート分子2は、逆向き回転構造の形成を容易な らしめるために、およびそうすることによってらせん形成ペプチドの会合を促進 するために、中央部にGly−Pro 配列を含む。 図面の簡単な説明 図1(A)および(B)は、TASP合成に用いられる保護されていない合成 ペプチドの例を示す。 図1(A)は、チオエステル樹脂上でSPPSによって合成された1 4残基から成るプロヘリックス ペプチドチオカルボキシレート 1を示す。 図1(B)は側鎖の差別的修飾を許容するようにNαBoc保護基および塩基 そして酸不安定な側鎖保護基を用いるSPPS法によって合成された9残基から 成るペプチドテンプレート2を示す。工程(i)はDMF中50% ピペリジン を用いる。工程(ii)はDCM中ブロモ無水酢酸を用いる。工程(iii)は0℃ で1時間、フッ化水素/10%p−クレゾールを用いる。詳細は「原料および製 造方法」の欄に記載されている。 図2(A)および(B)は、プロ−ヘリックス ペプチド−αチオカルボキシ レート1と(BrAc)テンプレートペプチド 2とのpH5で、水性溶液中で の反応を示す。 図2(A)は反応5時間後の反応混合物の分析HPLCを示す。反応剤、すな わち枝ペプチド1およびテンプレートペプチド2の位置および出発量は破線のピ ークで表される。生成物4−ヘリックス TASP3は実線で表される。少量の 成分は、イオンスプレー質量分析(MS)によって同定された。ピークaは、α チオカルボキシレートの加水分解によって形成されたプロヘリックスペプチド αカルボシキレートである。ピークbは、(プロヘリックス)3(BrAc)1テ ンプレートである。ピークcは空気酸化によって形成された2量体(プロヘリッ クス−αCOS−)2である。 図2(B)は、70分後の反応混合物の分析HPLCを示す。生成物はラベル され、そして上記のように同定された。 図3(A)は、HPLCで精製したピーク3のイオンスプレー質量分析を示す 。 データそのものが示されている。多重電荷状態はすべて分子量6647ドル トンを有する単一の分子種のプロトン化に由来する。HPLCフラクション中、 他の目立つ種は検出されなかった。 図3(B)は、すべての生の質量分析データを単一電荷状態に再構築 したものを示す。 図4は、HPLCで精製した4−ヘリックスTASP生成物3(実線)の水溶 液中の円2色性スペクトルを示す。220nm、208nmでの特徴的な最小値 および193nmでの最大値は結合TASPの高いらせん成分を示唆する。同一 の条件下で、プロ−ヘリックスペプチド1(点線)はらせん構造を示唆しない弱 い特徴のないスペクトルを与えた。 発明を実施するための最良の実施の形態 本発明は、ψ(CO−S−CH2−CO−NH)構造を有するデンドリティッ ク結合を採用するテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)に関する 。さらに詳しくは、TASPは上に示したデンドリティック結合単位を用いてお 互いに結合された少なくとも1つのテンプレートペプチドおよび1つの枝ペプチ ドを含む。テンプレートペプチドは、アミノ基、好ましくはリシン基を持つテン プレート側鎖を備える少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。テンプレートペプ チドは、アミノ基を持つリシンまたは他の側鎖を介してデンドリティック結合単 位にカップリングされる。枝ペプチドは、そのC末端を介してデンドリティック 結合単位にカップリングされる。本発明の重要な側面は、テンプレートペプチド および枝ペプチド間の化学選択的結合、すなわちテンプレート側鎖のアミノ基を 介して枝ペプチドのC末端をテンプレートペプチドにカップリングするψ(CO −S−CH2−CO−NH)構造である。デンドリティック結合単位は模式的に 以下のように例示される。 枝ペプチド−ψ(CO−S−CH2−CO−NH)−テンプレート側鎖−−テ ンプレートペプチド このアンサンブル(集合体)がテンプレートアセンブル合成タンパク質(TA SP)を形成する。 好適な発明の実施の形態において、枝ペプチドはプロ−ヘリカル(前らせん) ペプチドであり、テンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)に取り込 まれ、そしてらせん促進条件に晒されることによりら せん配置を取ることが可能である。好適な枝ペプチドは下記の配列を有する。す なわち、配列1; +NH3−D−A−A−T−A−L−A−N−A−L−K−K−L−G−COS − 上記の枝ペプチドはプロ−ヘリカルペプチドであり、テンプレートアセンブル 合成タンパク質(TASP)に取り込まれ、そしてらせん促進条件にさらされる ことにより、らせん配置を取ることが可能である。TASPは、ただ1つの枝ペ プチドまたは多数の枝ペプチドを含んでもよい。好適なTASPは、配列1を有 する4つの枝ペプチドを含む。多数の枝ペプチドが用いられるとき、各々の枝ペ プチドはそれ自身のデンドリティック結合単位を介してテンプレートペプチドに カップリングされる。 好適なテンプレートペプチドは、下記の配列、すなわち配列2を有する: +NH3−K(Ac−)−K(+NH3)−K(Ac−)−P−G− K(Ac−)E(COO-)K(Ac−)−G−COO- (前記でK(Ac−)はアセチル化されたアミノ基を備えるリシン側鎖を有す るリシンアミノ酸残基を表す)。 本発明は、またテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)の製造方 法をも意図する。製造方法は下記の工程から成る。 工程A:ハロアセチル官能基に結合されたアミノ基を含む側鎖を有するアミノ 酸残基を含む保護されていないテンプレートペプチドを提供すること; 工程B:そのC末端に各々αCOSH部分を有する保護されていない枝ペプチ ドを提供すること、そしてそれから 工程C:化学選択的に枝ペプチドをテンプレートペプチドに結合し、そしてテ ンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を形成するために、枝ペプチ ドのαCOSH部分とテンプレート分子のハロアセチル官能基との間の置換反応 を促進する求核反応条件下において、前記工 程Aからの保護されていないテンプレートペプチドと前記工程Bからの保護され ていない枝ペプチドを化合(混合)すること。 前記製造方法の好適な実施の形態において、工程Aのテンプレートペプチドの ハロアセチル官能基は、リシン側鎖のアミノ基についたブロモアセチル基である 。工程Cで、枝ペプチドのαCOSH部分およびテンプレート分子のブロモアセ チル基が求核置換反応を行ったときにデンドリティック結合が形成されて、次の 構造、すなわち: ψ(CO−S−CH2−CO−NH)を有するデンドリティック結合を創生す る。 TASPの製造方法の好適な実施の形態は、組立てが完了した後、反応生成物 をらせん促進条件に晒して、枝ペプチドの配座をらせん配座に変化させるための 付加的な工程を含んでもよい。 実施例 適当ならせん促進条件のもと、13の残基から成る両親媒性のらせんを形成す ることを目的とする、合成ペプチド1を付加的なC末端−GlyαCOSHを有 するように合成した(図1A)。このプロヘリックスペプチドを、ブロモアセチ ル部分を含むように修飾した4つのリシン側鎖を有するテンプレートペプチド2 と反応した(図1B)。ペプチド類は、発表された方法に基づいてマニュアル段 階的固相法に従って化学的に合成した。たとえばS.B.ケント(アニュアル レビュー バイオケミストリー,57巻,957〜989頁,1988年)およ びM.シュノルツァーら(インターナショナル ジャーナル ペプチド プロテ イン リサーチ,40巻,180〜193頁,1992年)を参照。チオエステ ル樹脂からのプロヘリックスペプチドの酸加水分解はペプチド−αCOSH1を 生成する。たとえば、J.ブレーク(インターナショナル ジャーナル ペプチ ド プロテイン リサーチ,17巻,273〜274頁,1981年)およびD .ヤマシロ(ジャーナル インターナショナル ジャーナル ペプチド プロテ イン リサーチ,31巻, 322頁,1988年)を参照。塩基不安定および酸不安定な保護基の組合せを 用いて、5つのリシン側鎖のうち4つをブロモアセチル基で修飾したテンプレー ト分子2を生成した(図1B)。たとえば、R.A.ロビら(アナリティカル バイオケミストリー,177巻,373〜377頁,1989年)を参照。2つ のペプチドに存在する反応基の範囲については、図1に示されている。 プロヘリックスペプチド1のαCOSH部分およびテンプレート分子2のブロ モアセチル官能基間の求核反応によって、所望の様式で保護されていないペプチ ドを単に結合した。反応は、pH5.0で、水性緩衝液中、環境温度で数時間か かってきれいに進行し、ほとんど定量的収率の4−ヘリックスTASP分子3( 図2A)を与えた。反応は、反応混合物の直接イオンスプレー質量分析、および 分析HPLCによって追跡した。たとえば、M.シュノルツァー(アナリティカ ル バイオケミストリー,204巻,335〜343頁,1992年)を参照、 塩類は一般的に蒸発イオン化工程を邪魔するが、本実施例で用いた希酢酸アンモ ニウム緩衝液は合成ペプチドの直接イオンスプレー質量分析と適合性があった。 過剰のペプチド−αCOSH成分1を用いた、そして最終反応混合物には、完全 に(BrAc)4テンプレート分子2が欠落していた。連結反応はHPLC追跡 したところ非常に速やかに進行した。ちょうど70分後、反応はほとんど完全な まで進行した(図2B)。標的とする4−ヘリックスTASP3に加えて、他の 検出できる成分は残留する過剰なプロ−ヘリックス−αCOSH1、残留量の( プロ−ヘリックス)3(BrAc)1テンプレート、および痕跡量のプロ−ヘリッ クス−αCOOHおよび(プロ−ヘリックス−αCOS−)22量体のみであっ た。検知できたただ1つの反応中間体が(プロ−ヘリックス)3(BrAc)1テ ンプレートであったということはかなり興昧がある。 所望の生成物は、容易にHPLCで精製され、そして凍結乾燥されて白色固体 を与えた。これはイオンスプレー質量分析(図3)で同定され、 そして期待される質量、すなわち観測分子量が6647.1±2.8ドルトンを 有する高純度の標的とする4−ヘリックスTASP3であることが見いだされた 。一方、単一同位体組成(モノアイソトーピック)C28850382884につ いての計算分子量は6645.6であり、平均的な同位体組成を有するC2885 0382884についての計算分子量は6649.9である。連結された4−ヘ リックスTASP3は、pH5.0、10mM 酢酸アンモニウム中で環境温度 で何日も安定であり、そしてpH6.0、4℃で無期限に安定であった。連結T ASP分子3の水中での2次構造を決定するために円2色性スペクトロスコピー を用いた。分子は高度にらせん状であった(図4)。同一の条件下で、ペプチド 1を比較試験したところらせん成分を全然示さなかった。これらの配座的特性は 周知の方法(上記参照)で合成された密接に関係のある4−ヘリックスTASP で観察された性質に似通っていた。未変性の条件でのイオンスプレー質量分析は 、4−ヘリックスTASPがモノメリック(単一)種としてあることを示した。 たとえば、M.バッカら(ジャーナル アメリカン ケミカル ソサエティ,1 14巻,3992〜3993頁,1992年)を参照。 この合成アプローチの圧倒的な特徴は、その簡便さである。連結反応は水溶液 で迅速に進行し、そして実質的に、他の反応生成物が検出されなかった。生成物 は容易に精製されて提案された共有結合的構造と一致する質量数を有する例外的 に均質な物質を与えた。観測されたらせん2次構造は、標的4−ヘリックスTA SP分子3の生成と一致した。 化学選択的連結反応アプローチの主な利点は、最終生成物において微小な不均 質性の除去およびアプローチの一般性を含む。段階的固相合成によってテンプレ ート上で同時に積み上げられたペプチドは大変不均質な粗生成物を与える。ムッ ターおよび共同研究者は、最終生成物の純度を増加させるために厳密なクロマト 手法を用いることを示した(上記参照)。しかしこれらのプロトコールは、モン タールおよび共同研究者( プロシーディング ナショナル アカデミー サイエンス,U.S.A.,88 巻,6418〜6422頁,1991年)によって合成されたより大きいそして より疎水性イオンチャンネル会合体には適用されなかった。保護されたペプチド セグメントのセグメント縮合法が不均質性を減少させるために用いられてきたが 、溶解度の問題によって連結反応が極端に遅くなり、その結果として収率が低い 。デグラートおよび共同研究者の最近の研究は、保護されていないペプチドセグ メントを用いた、しかしながら、これは連結反応がすべての官能基グループ、特 にリシンのε−アミノ基と適合性がないことから適用が限られている。(ジャー ナル アメリカン ケミカル ソサエティ,114巻,9656〜9657頁, 1992年)。 これらのアプローチと比較して、化学選択的連結反応アプローチは保護されて いないペプチド成分の精製を容易にし、それらは迅速でかつ清浄な反応において 高濃度で連結することができる。標的化合物は、最終的に保護されていない形態 で直接得られ、そして容易に精製される。本方法は、化学的にペプチドおよびタ ンパク質で見いだされるすべての官能基グループと適合性があることから、一般 的適用性がある(サイエンス,256巻,221〜225頁,1992年)。以 前の研究で本発明者らは、精製された保護されていないペプチドはたとえば6M グアニジン塩酸塩または有機−水溶性混合液のような溶媒中、正しく連結され得 ることを示した。迅速な反応のために必要な溶解度を維持するようにプロ−ヘリ ックス配列および溶媒条件を選択するにおいて、これは非常な融通性を許容する 。 原料および製造方法 分析およびセミプレパラティブ勾配HPLCは、Vydac C−18分析カ ラム(5ミクロン、0.46×15cm)およびセミプレパラティブ(10m、 1.0×25cm)カラムを用いて、214nmUV検出でRainin20ポ ンプ高圧混合システムで実施した。分析試験 は、0%〜67%B勾配液を30分間にわたって1ml/分で用い、そこで緩衝 液Aは水中、0.1%TFAであり、緩衝液Bは90%アセトニトリル+10% 緩衝液Aであった。質量分析スペクトルは、Sciex API−III 4重 極イオンスプレー質量分析計で得た。CD測定はAviv 62 DS機を用い て得られた。ペプチド濃度は、110℃で、24時間、6N塩酸中加水分解後、 アミノ酸分析によって決定した。 プロ−ヘリックスペプチド1の合成 特記する以外は、公表された手法に従ってマニュアル段階的固相法を用いてペ プチドの合成を行った。たとえばS.B.ケント(アニュアルレビュー バイオ ケミストリー,57巻,957〜989頁,1988年)およびM.シュノルツ ァーら(インターナショナル ジャーナルペプチド プロテイン リサーチ,4 0巻,180〜193頁,1992年)を参照。カップリング収率をニンヒドリ ン定量で追跡した。プロ−ヘリックスは、標準的なNαBoc化学 SPPSを 用いて、Glyチオエステル樹脂上で合成した。たとえば、J.ブレーク(イン ターナショナル ジャーナル ペプチド プロテイン リサーチ,17巻,27 3〜274頁,1981年)およびD.ヤマシロ(ジャーナル インターナショ ナル ジャーナル ペプチド プロテイン リサーチ,31巻,322頁,19 88年)を参照。0℃で、1時間フッ化水素プラス2% アニソールと処理する ことにより、ペプチドから保護基を取り除き、そして同時に樹脂から開裂させた 。粗ペプチドをニートTFA中に取り、二重蒸留水で0.5%TFAに希釈し、 そして残留するアニソールを除去するために凍結乾燥した。プロ−ヘリックスを セミプレパラティブ逆相HPLC(0%〜67%緩衝液B、60分間,3ml/ 分)で精製し、そしてイオンスプレー質量分析で同定した。観測された分子量は 、1372.2±0.4ドルトンであった。一方、計算分子量は単一同位体組成 で、1371.8ドルトン、または平均同位体組成で137 2.6ドルトンである。 テンプレートペプチド2の合成 テンプレートペプチドは、Gly−OCH2−Pam−樹脂上で、NαBoc 化学SPPSおよびNαFmocリシン側鎖保護を組合せ用いて合成した(図1 B)。早過ぎるFmoc除去の可能性を最小にするために、カップリング工程で の溶液中の中和反応よりむしろ、5%ジイソプロピルエチルアミン/DMFでの 別途の短い中和反応を用いた。たとえば、M.ジュノルツァーら(インターナシ ョナル ジャーナル ペプチド プロテイン リサーチ,40巻,180〜19 3頁,1992年)を参照。9回の合成サイクルに続いて、リシン側鎖上のSm oc保護基を50%ピペリジン/DMFとの5分間処理を2回行って除去した。 遊離eアミノ基をブロモー酢酸/DICカップリング法を用いてブロモアセチル 化した。たとえばR.A.ロービーら(アナリティカル バイオケミストリー, 177巻,373〜377頁,1989年)を参照。ペプチドを脱保護基化し、 そして標準プロトコールを用いて0℃で1時間、フッ化水素プラス10%p−ク レゾールで開裂した。たとえばM.シュノルツァーら(インターナショナル ジ ャーナル ペプチド プロテイン リサーチ,40巻,180〜193頁,19 92年)を参照。テンプレートをそれからセミプレパラティブ逆相HPLC(2 5%〜41%緩衝液B、30分間,3ml/分)で均質になるまで精製した。そ してイオンスプレー質量分析で同定した。すなわち、観測分子量は1482.7 ±0.4ドルトンであった。一方、計算分子量は1478.3ドルトン(単一同 位体組成)または1483.0ドルトン(平均同位体組成)である。 4−ヘリックスTASP3の合成 0.50mgの(BrAc)4テンプレート(化学式量:1484ドルトン、 3.36×10-7M、1.12mM)および2.75mgのプロヘリックス−α COSH(化学式量:1372ドルトン、2.0×1 0-6M、6.68mM)を23℃で、300μlの10mM酢酸アンモニウム水 性緩衝液(pH5.0)中、混合することにより連結反応を実施した。反応を分 析逆相HPLC(4μlアリコート)で追跡した。紫外線吸収に基づいてピーク を集め、そしてイオンスプレー質量分析で調べた。たとえば、M.シュノルツァ ー(アナリティカル バイオケミストリー,204巻,335〜343頁,19 92年)を参照。23℃で6.5時間の後、反応混合物を4.0℃で貯蔵した。 生成物(170μlの反応混合物)を逆相HPLC(38%〜54%、緩衝液B .30分間,3ml/分)で精製し、そして凍結乾燥すると、0.26mgの純 生成物が得られた。理論収率は、1.27mgで、20.5%であった。質量を イオンスプレー質量分析で決定した。すなわち観測分子量は6647.1±2. 8ドルトンであった。一方、計算分子量は6645.6ドルトン(単一同位体組 成)または6649.9ドルトン(平均同位体組成)である。 安定性 安定性は集めたピークを分析逆相HPLCおよび質量分析計で追跡して調べた 。連結反応から得られた1mM4−ヘリックスTASPは数日間分解することな しに23℃で貯蔵された。5mM4−ヘリックスTASPを100mM燐酸塩緩 衝液(pH6.0)中に貯蔵したところ、4℃で7日間の後、分解を全く示さな かった。 円2色性 プロヘリックス(7.5μM)および4−ヘリックスTASP(1.78μモ ル)の両方を2回蒸留した水中に溶解した。測定は、20.0℃で光路長1cm の2mlセルで、260nm〜190nmにかけて0.50nm毎にスキャンす ることにより行った。 結 論 上記の結果は、TASP類似巨大分子の合成の一般的方法としての化学選択的 連結反応アプローチの重要性を示唆している。既知の化学的戦 略を組合せることによって、各種のTASP関連化合物の設計および合成に用い ることができる保護されていないペプチド構築ブロックへ反応性部分を選択的に 導入することに対して非常な融通性を提供する。特に、ここで記載されたチオエ ステル求核連結化学方法は、タンパク質の断片を結合するために元来開発された 他の連結化学反応と組合せて非常に多様性のある非直線状共有結合分子トポコロ ジーを生み出すのに用いることができる。たとえばK.ローズら(バイオコンジ ュゲート ケミストリー,2巻,154〜159頁,1991年)およびH.ゲ ートナーら(バイオコンジュゲート ケミストリー,3巻,262〜268頁, 1992年)を参照。現代タンパク質分析化学と一緒に用いると、化学選択的合 成アプローチは、タンパク質関連巨大分子の設計、配座の研究および活性に対し て強力な補助手段となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,MW,SD),AM,AT, AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C Z,DE,DK,ES,FI,GB,GE,HU,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LT,LU, LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,P L,PT,RO,RU,SD,SE,SI,SK,TJ ,TT,UA,US,UZ,VN (72)発明者 ケント,ステファン ビー.エイチ. アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92037 ラホヤ ファモーサ アベニュー 6046

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.ψ(CO−S−CH2−CO−NH)構造のデンドリティック結合単位を 有することを特徴とするテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)。 2.さらにψ(CO−S−CH2−CO−NH)構造を有する4つのデンドリ ティク結合単位と、各々が+NH3−D−A−A−T−A−L−A−N−A−L− K−K−L−G−COS−配列を有する4つの枝ペプチドと、+NH3−K(Ac −)−K(+NH3)−K(Ac)−P−G−K(Ac−)−E(COO-)−K (Ac−)−G−COO-配列を有するテンプレートペプチドとを含んで成り、 かつ前記4つの結合単位が前記枝ペプチドを前記テンプレートペプチドの4つの K(Ac)残基にカップリングすることを特徴とする請求項1記載のテンプレー トアセンブル合成タンパク質(TASP)。 3.C末端を持つ枝ペプチドと、アミノ基を含むテンプレート側鎖を備えるア ミノ酸残基を含むテンプレートペプチドとを有する改良型テンプレートアセンブ ル合成タンパク質において、 ψ(CO−S−CH2−CO−NH)構造を有する連結単位が、前記枝ペプチ ドのC末端を下記のテンプレート側鎖のアミノ基を介して、前記テンプレートペ プチドにカップリングし: 枝ペプチド−ψ(CO−S−CH2−CO−NH)−テンプレート側鎖−− テンプレートペプチド、 かつ枝ペプチドがテンプレートペプチド上の枝としての役割を果たし、テンプレ ートアセンブル合成タンパク質を形成することを特徴とする改良型テンプレート アセンブル合成タンパク質(TASP)。 4.前記テンプレートペプチドのテンプレート側鎖がリシンアミノ酸残基に対 応するリシン側鎖である請求項3記載の改良型テンプレートアセンブル合成タン パク質(TASP)。 5.前記枝ペプチドがプロヘリカルペプチドであり、テンプレートア センブル合成タンパク質(TASP)に組込まれ、そしてらせん促進条件に晒ら されると、らせん配置を取ることが可能である請求項3記載の改良型テンプレー トアセンブル合成タンパク質(TASP)。 6.枝ペプチドが、各々C末端を持つ第1の枝ペプチドおよび第2の枝ペプチ ドを含み、そしてテンプレートペプチドがアミノ基を含む第1のテンプレート側 鎖を有する第1アミノ酸残基と、アミノ基を含む第2のテンプレート側鎖を有す る第2アミノ酸残基とを含み、さらに前記結合単位が各々ψ(CO−S−CH2 −CO−NH)構造を持つ第1結合単位および第2結合単位を含み、第1結合単 位が前記第1枝ペプチドのC端末を、第1テンプレート側鎖を介して、前記テン プレートペプチドにカップリングする役割を果たし、第2結合単位が第2枝ペプ チドのC末端を、第2テンプレート側鎖を介して、前記テンプレートペプチドに カップリングする役割を果たし、それによって第1および第2枝ペプチドがテン プレートペプチド上で第1および第2の枝部として働き、2つの枝部を有するテ ンプレートアセンブル合成タンパク質を形成することを特徴とする請求項3記載 の改良型テンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)。 7.前記第1および第2枝ペプチドがともにプロヘリカルペプチドであり、テ ンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)に組込まれ、そしてらせん促 進条件に晒らされると、らせん配置を取ることが可能である請求項6記載の改良 型テンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)。 8.工程A:ハロアセチル官能基に結合されたアミノ基を持つテンプレート側 鎖を有するアミノ酸残基を含むテンプレートペプチドを提供すること; 工程B:各ペプチドがαCOSH部分を持つC末端を含む1つまたはそれ以上 の枝ペプチドを提供すること;そして 工程C:化学選択的に枝ペプチドをテンプレートペプチドに結合し、 そしてテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を形成するために、 枝ペプチドのαCOSH部分と、テンプレート分子のハロアセチル官能基との間 の置換反応を促進する求核反応条件下において、前記工程Aからのテンプレート ペプチドと前記工程Bの1つまたはそれ以上の枝ペプチドを化合すること; 以上の工程を含んでなることを特徴とするテンプレートアセンブル合成タンパク 質(TASP)を製造する方法。 9.前記工程Aにおいて、ハロアセチル官能基がブロモアセチル官能基である 請求項8記載のテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を製造する 方法。 10.前記工程Aにおいて、ハロアセチル官能基に結合されたアミノ基を持つテ ンプレート側鎖が、リシンアミノ酸残基に対応するリシン側鎖である請求項9記 載のテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を製造する方法。 11.前記工程Cにおいて、枝ペプチドのC末端がψ(CO−S−CH2−CO −NH)構造を有する結合単位によってテンプレートペプチドのアミノ酸残基に 結合され、テンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を形成する請求 項8記載のテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)を製造する方法 。 12.前記工程Bにおいて、枝ペプチドがプロヘリカルペプチドであり、テンプ レートアセンブル合成タンパク質(TASP)に組込まれ、そしてらせん促進条 件に晒らされると、らせん配置を取ることが可能であり、そして、工程Cと同時 かその後で、 工程D:枝ペプチドによるらせん形成を促進するために、前記工程Cで形成さ れたテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP)をらせん促進条件に晒 すこと、 をさらに含む請求項8記載のテンプレートアセンブル合成タンパク質(TASP )を製造する方法。
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