【発明の詳細な説明】
5−アルファ−リダクターゼ−1−阻害剤としての
インドール誘導体
本発明はステロイド5α−リダクターゼ阻害活性を有するインドール誘導体に
関する。
より詳細には、本発明はある種の3−[(2,2−二置換−1,3−ベンゾジ
オキソラン−5−イル)カルボニル]2−メチルインドール誘導体、その調製及
びテストステロン5α−リダクターゼ阻害剤としてのこれらの利用に関する。
ステロイドホルモンのアンドロゲン類は男性及び女性の身体の特徴の違いに関
連している。アンドロゲンを産生する全ての臓器の中で、精巣はこれらのホルモ
ンを最も多く産生する。体内でのこれらのホルモンの過剰生産は、例えば尋常性
ざ瘡、脱毛症、脂漏、女性の粗毛症(female hirsutism)、良性前立腺肥大及び
男性型禿頭等の多くの望ましくない身体的な現われ方及び疾病状態を引き起こす
。
精巣から分泌される主なアンドロゲンはテストステロンであり、これは男性の
血漿中に存在する主要なアンドロゲンである。前立腺や皮脂腺のようないくつか
の臓器におけるアンドロゲン活性の主要なメディエーターは5α−還元型アンド
ロゲンである。従ってテストステロンはテストステロン5α−リダクターゼの作
用によって上記の臓器で局所的に形成される5α−ジヒドロテストステロン(D
HT)のプロホルモンである。従って、多くの疾病状態でジヒドロテストステロ
ンの数値が上昇していることから、テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤の
合成に関心が集まった。
酵素である5α−リダクターゼは、標的臓器において、テストステロンからよ
り強力なアンドロゲンであるDHTへの変換を局所的に触媒する。5α−リダク
ターゼの阻害剤はDHTの形成を遮断し、上記の望ましくない生理的条件の改善
を成し遂げると考えられ、論議されてきた。テストステロン5α−リダクターゼ
阻害剤はまたヒト前立腺癌の治療に有用であるかも知れない。近年、ヒトにおい
て2種の5−α−リダクターゼアイソザイム(タイプ1及び2と表記される)か
Andersson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87,3640-3644(1990);Andersso
n et al.,Nature,354,159-161(1991)に記載された。いくつかの構造的な差異
に加え、この2種のアイソザイムはその生化学的な性質、発現パターン、遺伝的
特質、及び薬学的な点でいくつかの違いを示している(Andersson et al.,Natu re
,354,159-161(1991); Jenkins,et al.,Journal of Clinical Investigati on
,89,293-300(1992))。この2種の5α−リダクターゼアイソザイムがアン
ドロゲン作用において果たしている役割を更に解明することは、現在大きな研究
主題となっている。これらのアイソザイムは一般に5α−リダクターゼ1または
2、あるいはタイプ1またはタイプ2の5α−リダクターゼと記載される。
5α−リダクターゼを阻害するために有用であるとして報告された化合物は、
一般に、Rasmusson et al.,J.Med.Chem.,29,(11),2298-2315(1986)のアザス
テロイドのようなステロイド誘導体;及びEPO291245号に開示されたもののよ
うなベンゾイルアミノフェノキシ酪酸誘導体である。
ヨーロッパ特許出願0532190号には、5−α−リダクターゼ阻害剤としてある
種のベンゾ[f]キノリノンが開示されている。ステロイド5−α−リダクターゼ
阻害活性を有するある種のインドール誘導体は国際特許出願PCT/EP93/00380(WO
/93/17014)号に一般的に開示されている。
今や、驚くべきことに、女性の粗毛症、尋常性ざ瘡、脂漏及び前立腺癌と同様
に、特にヒト頭皮における毛髪の損失に主に影響することが知られている男性型
禿頭の治療のために、本発明の化合物が、より効果的であり、かつより低い投与
量で適用し得るという治療上の利点につながる、ヒトテストステロン5α−リダ
クターゼの単一のアイソザイム(すなわち5α−リダクターゼ−1)に対するよ
り強力で選択的な阻害剤であることが見いだされた。
本発明は式:
[式中RはR12がHまたは生物的に不安定なエステルを形成する基である−CO2
R12であるか、またはRはテトラゾル−5−イルであり、そして
(a)R1が
でR2がF、Cl、Br、I、CH3またはCF3であるか、または
(b)R1がC3−C6アルキルでR2がC2−C4アルキルである。]
の化合物及びその製薬上許容し得る塩基性塩を提供する。
3個またはそれより多い炭素原子を含有するアルキル基は直鎖でも、または分
岐を有する鎖状であってもよい。
“生物的に不安定なエステルを形成する基”の語は、インビボで容易に分解し
てRが−CO2Hである式(I)の相当する化合物を放出することができるエス
テルを形成する基を意味するものとして医化学で良く理解されている。こうした
エステル基の多くは、例えばペニシリンの領域またはアンギオテンシン−変換酵
素(ACE)阻害剤である抗高血圧症剤の分野で良く知られている。
R12が生物的に不安定なエステルを形成する基である式(I)の化合物は、経
口投与の後にインビボでRが−CO2Hである式(I)の化合物を提供するプロ
ドラッグとして有用であるばかりでなく、Rが−CO2Hである式(I)の化合
物の調製のための中間体としても有用である。
特定のエステルを形成する基のこの目的に対する適合性は、伝統的なインビト
ロまたはインビボの酵素による加水分解研究によって評価することができる。
生物的に不安定なエステルを形成する基の例としては、アルキル、アルカノイ
ルオキシアルキル(そのアルキル、シクロアルキルまたはアリール置換誘導体を
含む)、アリールカルボニルオキシアルキル(そのアリール置換誘導体を含む)
、アリール、アリールアルキル、インダニル及びハロアルキルが挙げられる:こ
こでアルカノイル基は2から8個の炭素原子を有し、アルキル及びハロアルキル
基は1から8個の炭素原子を有し、アリールはフェニルまたはナフチル基を意味
し、そのいずれもがC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシまたはハロで任意に
置換されていても良い。アルキル、ハロアルキル、アルカノイル及びアルコキシ
基は、
適宜直鎖でも、分岐を有する鎖状でも良い。
生物的に不安定なエステルを形成する基の具体的な例は、C1−C6アルキル(
例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル)、ベンジル、1−(2,
2−ジエチルブチリルオキシ)エチル、2−エチルプロピオニルオキシメチル、
1−(2−エチルプロピオニルオキシ)エチル、1−(2,4−ジメチルベンゾ
イルオキシ)エチル、α−ベンゾイルオキシベンジル、1−(ベンゾイルオキシ
)エチル、2−メチル−1−プロピオニルオキシ−1−プロピル、2,4,6−
トリメチルベンゾイルオキシメチル、1−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイ
ルオキシ)エチル、ピバロイルオキシメチル、フェネチル、フェンプロピル、2
,2,2−トリフルオロエチル、1−または2−ナフチル、2,4−ジメチルフ
ェニル、4−t−ブチルフェニル及び5−インダニルである。
式(I)の化合物の製薬上許容し得る塩基性塩は非−毒性の塩を形成する適当
な塩基から形成され、その例としてはアルミニウム、カルシウム、リチウム、マ
グネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、N−ベンジル−N−(2−フェニル
エチル)アミン、1−アダマンチルアミン及びジエタノールアミン塩がある。
好ましい塩基性塩はナトリウム、カリウム、N−ベンジル−N−(2−フェニ
ルエチル)アミン及び1−アダマンチルアミンの塩である。ナトリウム塩は最も
好ましい。
製薬上適当な塩に関する総説については、Berge et al,J.Pharm.Sci.,66,1-1
9(1977)を参照すること。
式(I)の化合物に関する上記の定義において:
好ましくはRは−CO2Hである。
R1は、アルキルの場合にはC3−C4アルキルが好ましく、より好ましくはR1
はC4アルキル、更に好ましくはRlはn−ブチルである。
R1がアリールの場合、R2はF、Cl、BrまたはIが好ましく、より好まし
くはClである。
R2は、アルキルの場合には、C2またはC3アルキルが好ましく、最も好まし
くはエチルまたはn−プロピルである。
式(I)の化合物は1個またはそれ以上の不斉炭素原子を含有し、従って2個
またはそれ以上の立体異性体が存在していても良い。本発明は式(I)の化合物
の個々の立体異性体及びこれらの混合物を、式(I)の化合物の全ての互変異性
体と共に、適宜含んでいる。ジアステレオマーの分離は、伝統的な方法、例えば
式(I)の化合物またはその適当な塩あるいは誘導体の立体異性体混合物の分画
結晶化、クロマトグラフィーまたはHPLCによって行うことができる。化合物
の個々のエナンチオマーは、相当する光学的に純粋な中間体から、または適当な
キラル支持体を用いたラセミ体のHPLCのような分割によって、あるいはラセ
ミ体と適当な光学活性塩基との反応によって形成されるジアステレオマー塩の分
画結晶化によって調製することもできる。
本発明によって提供される式(I)の化合物は以下の方法によって調製しても
良い。
1)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R4は適当なエステルを形成する基であり、R1及びR2は式(I)の化合
物で先に定義したものである。]
のエステルの分解によって調製することができる。
分解して相当するカルボン酸を提供することのできる適当なエステルを形成す
る基は、多数のものが当業者に知られている。例えばT.W.Greene,“有機合成に
おける保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)”,Wiley-Intersci
ence(1981)参照のこと。
R4が加水分解によって除去し得るエステルを形成する基、例えば、(C1−C6
アルキルのような)R12で先に定義した生物的に不安定なエステルを形成する
基である場合、加水分解は、例えば適当な鉱酸あるいは適当な無機塩基の水溶液
を用いて、酸性または塩基性条件下で行なうことができる。加水分解は好ましく
は塩基性条件下で行うのが良い。
典型的な加水分解方法では、式(II)のエステルを、適当な有機共溶媒、例
えばテトラヒドロフランまたはC1−C4アルカノール(例えばメタノールまたは
エタノール)またはこれらの組み合せの存在下で、適当な塩基、例えば水酸化ナ
トリウムまたはカリウムの水溶液で処理する。加水分解は典型的には室温から還
流温度まで、好ましくは室温で行う。生成物は仕上げ処理工程で酸性化させるこ
とによってカルボン酸に変換させることのできる塩基性塩として得られる。
R4が還元によって除去し得るエステルを形成する基、例えばベンジル基であ
る場合、還元は例えば木炭上パラジウムを触媒として用いた触媒的水素化によっ
て行うことができる。
式(II)の化合物は、Rが−CO2Hである式(I)の化合物を、R4がこの
方法のために先に定義されたものである式R4OHのアルコールでエステル化す
ることによって調製することができる。
反応は過剰量のアルコールを用いるような古典的なエステル化反応条件下で、
硫酸またはp−トルエンスルホン酸を用いた酸触媒を用い、室温から還流温度ま
でで行うことができる。反応中に生じた水は共沸的な蒸留によって、または脱水
剤またはモレキュラーシーブを用いることによって除去することができる。
エステル化は、適当な脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドまたは
ジエチルアゾジカルボキシレート/トリフェニルフォスファインの存在下で酸を
アルコールと反応させることによって行うこともできる(O.Mitsunobu,Synthes
is,1981,1参照)。
あるいはまた、エステル化は最初にカルボン酸の活性化エステルまたはイミダ
ゾライド誘導体を形成させ、次に活性化エステルまたはイミダゾライドと式R4
OHのアルコールとのインジツ(in situ)での反応によって行うことができる
。活性化エステルは、適当な脱水剤、例えば1−(3−N,N−ジメチルアミノ
プロピル)−3−エチルカルボジイミドの存在下、適当な溶媒、例えばジクロロ
メタン中で室温下、カルボン酸を1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと反応させ
ることによって形成することができる。イミダゾライドは、適当な溶媒、例えば
ジ
クロロメタン中で、室温下、カルボン酸を1,1’−カルボニルジイミダゾール
と反応させることによって形成することができる。
2)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R5及びR6はそれぞれ独立してH及びC1−C4アルキルから選ばれ、R1
及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]の化合物の加水分解
によって調製することができる。
加水分解は、例えば適当な鉱酸(例えば塩酸または硫酸)または適当な無機塩
基(例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム)の水溶液を用いた酸性または塩基
性条件下、室温から還流温度までで行うことができる。塩基性加水分解条件で行
う場合、生成物は仕上げ処理工程における酸性化によってカルボン酸に変換する
ことのできる塩基性塩として得られる。
3)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物て先に定義したものであり、R7はHまた
はC1−C4アルキルである。]
の化合物の加水分解によって調製することができる。
加水分解は、例えば適当な酸(例えば塩酸または酢酸)または適当な無機塩基
(例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム)の水溶液を用いた酸性または塩基性
条件下、室温から還流温度までで行うことができる。塩基性加水分解条件で行う
場合、生成物は仕上げ処理工程における酸性化によってカルボン酸に変換するこ
とのできる塩基性塩として得られる。
4)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物の加水分解によって調製することができる。
加水分解は、例えば適当な酸(例えば塩酸または硫酸)または適当な無機塩基
(例えば水酸化ナトリウムまたはカリウム)の水溶液を用いた酸性または塩基性
条件下、室温から還流温度までで行うことができる。塩基性条件で行う場合、過
酸化水素が任意に存在していても良く、また生成物は仕上げ処理工程における酸
性化によってカルボン酸に変換することのできる塩基性塩として得られる。
5)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものであり、R8及びR9は
一緒になってエチレンを示し、該エチレンは任意にフェニルまたはC1−C4アル
キル(好ましくはメチル)で置換されている。R8及びR9は一緒になって−CH2
C(CH3)2−を示すものが好ましい。]
の化合物の酸性加水分解によって調製することができる。
加水分解は塩酸のような適当な酸の水溶液を用いて室温から還流温度までで行
うことができる。
6)式(I)の全ての化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物の塩基性塩(すなわちN−脱プロトン型)を、式:
の化合物またはその塩基性塩で、あるいは、Zが適当な脱離基、例えばハロ(好
ましくはブロモまたはヨード)、メタンスルホニルオキシまたはp−トルエンス
ルホニルオキシである式Z(CH2)3−CO2Hの化合物の塩基性塩でアルキル
化することによって調製することができる。
式Z(CH2)3−CO2Hの化合物の塩基性塩の好ましいものとしては、アル
カリ金属及びアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム及びカリウム塩が挙げられ
る。
式(VII)及び(VIII)の化合物の塩基性塩の好ましいものとして、ア
ルカリ金属塩、例えばナトリウム及びカリウム塩が挙げられる。
反応は、最初に式(VII)の化合物を適当な塩基、例えばナトリウム水素化
物または炭酸カリウムで脱プロトン化し、次に生じたアニオンを式(VIII)
の化合物またはその塩基性塩、あるいは式Z(CH2)3−CO2Hの化合物の塩
基性塩と反応させることによって適宜行うことができる。反応は適当な溶媒、例
えばN,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランまたは2−ブタノン中
で、0℃から還流温度までで行うことができる。
あるいはまた、反応は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような適当な
塩基を用いて相転移条件下で行うことができる。
式(I)の化合物は、仕上げ処理工程における酸性化によって、カルボン酸ま
たはNH−テトラゾールに変換することのできる塩基性塩として適宜得ることが
できる。
7)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中Z1は−CH=CH2または−C≡CHであり、R1及びR2は式(I)の化
合物で先に定義したものである。]
の化合物の酸化的分解によって調製することができる。
反応はオゾン分解または過マンガン酸カリウム水溶液処理によって行うことが
できる。
8)Rが−CO2HでR1及びR2が式(I)の化合物で先に定義したものである
式(I)の化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物の酸化によって調製することができる。この目的に適した酸化剤はピリ
ジン中三酸化クロムである。
9)式(I)の全ての化合物は、式:
[式中Rは式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物の、下記a)〜d)の化合物との反応で調製することができる。
a)式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。典型的な方法
では、式(XII)のケタール及び式(XI)の化合物を、適当な酸、例えばp
−トルエンスルホン酸の触媒量の存在下、適当な有機溶媒、例えばトルエン中で
還流下で共に加熱する。好ましくはジメチルケタールが用いられ、反応はDean-S
tark装置で行う]
の化合物;
b)式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物て先に定義したものてある。式(XIII
)の化合物において好ましいC1−C4アルキル基はメチルである。典型的な方法
では、式(XI)及び(XIII)の化合物は適当な有機溶媒、例えばトルエン
中で第二水銀触媒、例えば塩化第二水銀を用いて共に加熱する。]
の化合物;
c)式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。典型的な方法
では、式(XI)及び(XIV)の化合物を、適当な酸触媒、例えば塩酸または
硫酸の存在下、適当な有機溶媒、例えばトルエン中で還流下、好ましくはDean-S
tark装置中で共に加熱する。]
の化合物;または
d)R1部分が1,3−ベンゾジオキソラン環に結合する位置に対してα−位の
炭素原子上に水素原子を有するアルキルである式(I)の化合物において、式:
の化合物のエノール型エーテル誘導体[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先
に定義したものであるが、R1の定義において上記の条件を適用するものである
。反応は、典型的には酸触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、塩酸または硫酸
の存在下、適当な有機溶媒、例えばトルエン中で、室温から溶媒の還流温度まで
で行う。
この方法(d)で用いられる適当なエノール型エーテル誘導体は、式(XIV
A)の化合物から、酸触媒、例えばp−トルエンスルホン酸の存在下、適当なト
リ(C1−C4アルキル)オルトギ酸、例えばトリメチルオルトギ酸との反応によ
って導くことができる。]
式(I)の化合物を調製するために、式(XI)の化合物の適当な塩基(例え
ばナトリウム)性塩、例えばRが-CO2Hの場合は、カルボン酸塩を用いて、(
9)(a)から(d)の方法のいずれでも行うことができ、この反応に次いで仕
上げ処理工程における酸性化の段階を適宜踏むことができる。式(XI)の出発
物質は、式:
[式中R10及びR11はそれぞれ独立してH及びClから選ばれ、好ましくは共に
Clであり、Rは式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物の酸性加水分解で調製することができる。
典型的な方法では、加水分解は酢酸水溶液を用いて行い、反応は還流下で加熱
して行う。
式(XV)の化合物は、式(I)の化合物の調製のためにここに記載したもの
と同様の方法で調製することができる。
10)Rがテトラゾール−5−イルであり、R1及びR2が式(I)の化合物で先
に定義したものである式(I)の化合物は、R1及びR2が式(I)の化合物で先
に定義したものである式(V)の化合物を、適当なアジド、例えばアルカリ金属
アジド(好ましくはナトリウムアジド)またはトリメチルシリルアジドとフッ素
イオンの存在下で反応させて調製することができる。反応は典型的には適当な溶
媒、例えばN−メチル−2−ピロリジノン中で、100から150℃で行う(Sy
nthesis,1987,1133参照)。
11)Rがテトラゾール−5−イルであり、R1及びR2が式(I)の化合物で先
に定義したものである式(I)の化合物は、式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物からの保護基の脱離によって調製することができる。
典型的な方法では、保護基の脱離は、適当な溶媒、例えばテトラヒドロフラン
/メタノール中で、ほぼ室温下、適当な塩基、例えば水酸化ナトリウムを用いて
行う。
式(XVI)の化合物は、Rが−CO2Hであり、R1及びR2が式(I)の化
合物で先に定義したものである式(I)の相当する化合物から出発する2段階の
方法によって調製することができる。最初の段階では、ジクロロメタンのような
適当な溶媒中で、標準的なペプチドのカップリング条件下、例えば1−(3−N
,N−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド及び1−ヒドロキ
シベンゾトリアゾールを用いて、カルボン酸を3−アミノプロパニトリルと反応
させて式:
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物を提供する。
式(XVII)の化合物は、室温下、適当な溶媒、例えばテトラヒドロフラン
中でトリメチルシリルアジド、ジエチルアゾジカルボキシレート及びトリフェニ
ルホスフィンで処理することによって式(XVI)の化合物に変換させることが
できる。
Rが−CO2Hである式(I)の化合物をRがテトラゾール−5−イルである
式(I)の化合物に変換するこの方法は、J.Org.Chem.,56,2395(1991)に記載さ
れた文献的な方法に基づいている。
式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(IX)、(X)、
(XVI)及び(XVII)の化合物は全て、式(I)の化合物の調製のために
方法(6)に記載したものと同様の方法によって、式(VII)の化合物の塩基
性塩の適当なアルキル化によって調製することができる。
上記の反応及び先の方法で用いた新規な出発物質の調製は全て伝統的なもので
あり、目的とする生成物の単離のための方法と同様、これを実施し、または調製
するための適当な試薬及び反応条件は、先行技術文献及び以下の実施例及び製造
例を参考にすれば、当業者には良くわかるであろう。
式(I)の化合物の製薬上許容し得る塩基性塩は、式(I)の化合物の溶液と
必要な塩基を共に混合することによって容易に調製することができる。塩は溶液
から沈澱させ、濾過して回収するか、溶媒を蒸発させて回収することができる。
式(I)の化合物はステロイド5α−リダクターゼ阻害剤であり、従ってこれ
らは尋常性ざ癒、脱毛症、脂漏、女性の粗毛症、良性前立腺肥大及び男性型禿頭
のような疾患または状態の治療的または予防的な処置において有用である。
式(I)の化合物はまた、ヒトの前立腺癌の治療にも有用である。
式(I)の化合物は、ラットまたはヒトの前立腺の組織を用い、そのテストス
テロン5α−リダクターゼ阻害活性をインビトロで以下のようにして調べること
ができる:
(a)式(I)の化合物は、雄のラットから得た腹側の前立腺組織を用いてラッ
トのテストステロン5α−リダクターゼを阻害する能力を調べることができる。
ラット前立腺5α−リダクターゼに対する阻害能を決定するために、以下の方法
を用いた:
ラットの前立腺を細片に切った。組織をBrinkman Polytron(Kinematica GmBH
, Luzern)で緩衝液A(スクロース0.32M及びジチオスレイトール1mMを
含有する20mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5)中にホモジナイズし、
次いでモーター駆動式(1000rpm)Potter Elvehjem(teflon-to-glass)
ホモジナイザーでホモジナイズした。前立腺粒子を105,000Gで60分間
の遠心分離によって得た。ペレットを4倍量の緩衝液Aで洗浄し、105,00
0Gで再度遠心分離した。生じたペレットを上記のモーター駆動式Potter Elveh
jemホモジナイザーで緩衝液A(最初に用いた前立腺組織の1gあたり1ml)
中に分散させた。粒子化された懸濁液を1mlの試料として−70℃で保存した
。
緩衝液B(40mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5)に溶解した以下の
成分を試験用チューブに添加した:[3H]−テストステロン(1μCi、1n
mol;Du Pont,NEN Research Products,Stevenage,U.K.)500μl、0
.5mMのNADPH100μl、ジメチルスルホキシド5μlに溶解した式(
I)の化合物、及び最終反応容積1mlにするための緩衝液B。混合液を37℃
まで加温し、前立腺粒子懸濁液のアリコートの添加によって反応を開始させた。
反応混合液を37℃で30分間インキュベートし、次いで担体としてテストステ
ロン及び5α−ジヒドロテストステロンをそれぞれ20μg含有するエチルアセ
テート2mlを激しく撹拌しながら添加することによって反応を止めた。200
0Gで10分間の遠心分離によって水層と有機溶媒層を分離した。有機溶媒層を
第二の試験用チューブに移し、窒素下で蒸発乾燥させた。残渣を無水エタノール
50−80μlに溶解し、シリカゲル60 F254のTLCプレート(E.Merc
k,Darmstadt,Germany)上にスポットし、ジクロロメタン:アセトン(185
:15)で展開した。
基質(テストステロン)及び生成物(5α−ジヒドロテストステロン)のバン
ドにおける放射線含量をRITA Radio TLC Analyser(Raytest Instruments Ltd.,
Sheffield,U.K.)で定量した。5α−ジヒドロテストステロンに変換した放射
標識の回収率を計算し、酵素活性を定量するために用いた。全てのインキュベー
ション条件は基質(テストステロン)の15%より多くが生成物に変換されない
ように調整した。
阻害剤濃度の範囲で実験的に得られたデータをコンピューターにかけてシグモ
イダルな用量−応答曲線を出し、SIGFITプログラム(De Lean,A.,Munson,P.J.
and Rodbard,D.,American Journal of Physiology,235,E97(1978))を用い
て、5α−リダクターゼ活性の50%阻害を与える化合物の濃度(IC50’s)
を計算した。
(b)(i)式(I)の化合物は、肥大したヒトの前立腺の組織を用い、ヒトの
テストステロン5α−リダクターゼ−2に対する阻害能を調べることができる。
ヒト前立腺5α−リダクターゼ−2に対する阻害能を定量するために、以下の方
法を用いた:
凍結したヒト前立腺組織を液体窒素下、スチール製の乳鉢と乳棒を用いて微粉
砕した。粉末化した組織を4倍量の緩衝液A(スクロース0.32M)ジチオス
レイトール1mM及びNADPH50μMを含有する20mMリン酸ナトリウム
、pH6.5)中にUltra-Turraxホモジナイザー(Janke and Kunkel GmBH & Co
.,Staufen i.BR.,Germany)でホモジナイズした。組織の大きな粒子を除去する
ためにホモジェネートを500Gで5分間遠心分離し、次いで上清を100,0
00Gで1時間遠心分離した。生じたペレットを緩衝液A(最初に用いた前立腺
組織1gあたり1ml)にUltra-Turraxホモジナイザーで分散した。次いでこの
粒子化した調製物を2層の寒冷紗を通して濾過し、濾過物を2mlの試料として
−70℃で保存した。
緩衝液B(25mMリン酸クエン酸緩衝液、pH5.2)に溶解した以下の成
分を試験用チューブに添加した:[3H]−テストステロン(1μCi、1nm
ol;Du Pont,NEN Research Products,Stevenage,U.K.)100μl、NA
DPH再生系(NADPH5mM)グルコース−6−リン酸50mM、グルコー
ス−6−リン酸デヒドロゲナーゼ5ユニット/ml)100μl、ジメチルスル
ホキシド5μlに溶解した式(I)の化合物、及び最終反応容積1mlにするた
めの緩衝液B。混合液を37℃まで加温し、前立腺粒子懸濁液のアリコートの添
加によって反応を開始させた。反応混合液を37℃で30分間インキュベートし
、次いで担体としてテストステロン及び5α−ジヒドロテストステロンをそれぞ
れ
20μg含有するエチルアセテート2mlを激しく撹拌しなから添加することに
よって反応を止めた。2000Gで10分間の遠心分離によって水層と有機溶媒
層を分離した。有機溶媒層を第二の試験用チューブに移し、窒素下で蒸発乾燥さ
せた。残渣を無水エタノール50−80μlに溶解し、シリカゲル60 F25
4のTLCプレート(E.Merck,Darmstadt,Germany)上にスポットし、ジクロ
ロメタン:アセトン(185:15)で展開した。
基質(テストステロン)及び生成物(5α−ジヒドロテストステロン)のバン
ドにおける放射線含量をRITA Radio TLC Analyser(Raytest Instruments Ltd.,
Sheffield,U.K.)で定量した。5α−ジヒドロテストステロンに変換した放射
標識の回収率を計算し、酵素活性を定量するために用いた。全てのインキュベー
ション条件は基質(テストステロン)の15%より多くが生成物に変換されない
ように調整した。
阻害剤濃度の範囲で実験的に得られたデータをコンピューターにかけてシグモ
イダルな用量−応答曲線を出し、SIGFITプログラム(De Lean,A.,Munson,P.J.
and Rodbard,D.,American Journal of Physiology,235,E97(1978))を用い
て、5α−リダクターゼ活性の50%阻害を与える化合物の濃度(IC50’s)
を計算した。
(ii)式(I)の化合物は、DU145及びHPC36M細胞系を用い、ヒト
前立腺癌におけるステロイド5α−リダクターゼ活性に対する阻害能を調べるこ
とができる。5α−リダクターゼに対する阻害能を定量するために、以下の方法
を用いた:
ヒト前立腺癌の細胞系を5%血清を含有するダルベッコ修飾イーグル培地(D
MEM)中で増殖させた。遠心分離によって培地から細胞を回収し、血清なしの
DMEMで洗浄し、5−10×106cells/mlで血清なしの培地中に懸濁した。
以下の成分を試験用チューブに添加した:エタノールに溶解した[3H]−テ
ストステロン(1μCi、20pmol)10μl(Du Pont,NEN Research Pr
oducts,Stevenage,U.K.)及び式(I)の化合物のエタノール溶液5μl。窒
素下でエタノールを蒸発させ、テストステロン及び化合物をNADPH0.25
μmolを含有する血清なしの培地0.25mlに再溶解した。混合液を37℃
まで加温し、細胞懸濁液0.25ml(1.2−2.5×106cells)の添加に
よって反応を開始させた。反応混合液を37℃で2時間インキュベートし、次い
で担体としてテストステロン及び5α−ジヒドロテストステロンをそれぞれ20
μg含有するエチルアセテート1.5mlを激しく撹拌しなから添加することに
よって反応を止めた。
2000Gで10分間の遠心分離によって水層と有機溶媒層を分離した。テス
トステロン及びその代謝物を含有する有機溶媒層を第二の試験用チューブに移し
、窒素下で蒸発乾燥させた。残渣を無水エタノール50−80μlに溶解し、シ
リカゲル60 F254のTLCプレート(E.Merck,Darmstadt,Germany)上
にスポットし、ジクロロメタン:アセトン(185:15)で展開した。
基質(テストステロン)及び生成物(5α−ジヒドロテストステロン)のバン
ドにおける放射線含量をRITA Radio TLC Analyser(Raytest Instruments Ltd.,
Sheffield,U.K.)で定量した。5α−ジヒドロテストステロンに変換した放射
標識の回収率を計算し、酵素活性を定量するために用いた。全てのインキュベー
ション条件は基質(テストステロン)の15%より多くが生成物に変換されない
ように調整した。
阻害剤濃度の範囲で実験的に得られたデータをコンピューターにかけてシグモ
イダルな用量−応答曲線を出し、SIGFITプログラム(De Lean,A.,Munson,P.J.
and Rodbard,D.,American Journal of Physiology,235,E97(1978))を用い
て、5α−リダクターゼ活性の50%阻害を与える化合物の濃度(IC50’s)
を計算した。
式(I)の化合物は、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3640(1990)に記載された方
法に従って、クローン化したヒトテストステロン5α−リダクターゼ−1を用い
てインビトロでヒトテストステロン5α−リダクターゼ−1阻害活性を調べるこ
とができる。
ヒトでの利用のために、式(I)の化合物は単独で投与することができるが、
一般には想定された投与経路及び標準的な製薬学的な原理の点で選択される製薬
学的担体との混合物の形で投与されるだろう。例えば、澱粉または乳糖のような
賦形剤を含有する錠剤の形で、または単独または賦形剤と混合したカプセルまた
は小卵(ovules)で、あるいは香料または着色剤を含有するエリキシル剤、溶液
または懸濁液の形で経口的に投与することができる。これらは例えば静脈内、筋
肉内または皮下に非経口的に注射することができる。非経口的投与のためには、
例えば溶液を血液と等張にするために十分な塩またはグルコースのような他の物
質を含有することのできる無菌の水溶液の形が最も良く用いられる。
ヒトの患者への経口的及び非経口的投与において、式(I)の化合物の日用量
レベルは、0.01から20mg/kg(1回の、または分割した投与量)であり、
20mg/kgまでの投与量を用いても良いヒト前立腺癌の治療を除き、好ましくは
0.1から10mg/kgであろう。従って化合物の錠剤またはカプセルでは、一時
に1個または2個以上で適宜投与するためには5mgから0.5gの活性化合物
を含有することになるだろう。いずれにしても医者は個々の患者に最も適した実
際の投与量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重及び応答性によって変化す
るであろう。上記の投与量は平均的なケースの例である;もちろん、より高いま
たはより低い投与量の範囲が適した個々の場合もあり得るし、それらは本発明の
範囲内にある。
あるいはまた、式(I)の化合物は坐薬またはペッサリーの形で投与すること
ができ、あるいはローション、溶液、クリーム、軟膏または散布剤の形で局所的
に適用することができる。例えば、ポリエチレングリコールまたは流動パラフィ
ンの水性エマルジョンからなるクリームに入れることができる;または必要かも
知れない安定化剤及び保存剤と共に白ロウまたは白色液性パラフィンのベースか
らなる軟膏に1から10%の濃度で入れることができる。
式(I)の化合物はまた、特に良性前立腺肥大の治療または予防のためには、
α−アンタゴニスト(例えばプラゾシンまたはドキサゾシン)、抗アンドロゲン
剤(例えばフルタミド)またはアロマターゼ阻害剤(例えばアタメスタン)と共
に投与することもできる。
以下の実施例では式(I)の化合物の調製について説明する。
実施例1 4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−5 −イル]カルボニル)−2−メチルインドール−1−イル]酪酸
エチル−4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキ
ソラン−5−イル]カルボニル)−2−メチルインドール−1−イル]ブタノエ
ート(685mg)(実施例4参照)のテトラヒドロフラン(10ml)及びメ
タノール(10ml)溶液を2N水酸化ナトリウム水溶液(10ml)で処理し
、一晩撹拌した(25℃)。混合液を真空下で濃縮し、氷浴で冷却し、2N塩酸
水溶液で酸性化した。酸性層からエチルアセテート(50ml)で抽出操作をし
、有機抽出物を乾燥させ(MgSO4)、濾過して真空下で溶媒を蒸発させて黄
色泡状の標記化合物を得た(550mg)。
実施例2 4−[3−([2−ブチル−(4−n−プロピルフェニル)−1,3−ベンゾジ オキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸
出発物質としてエチル−4−[3−([2−ブチル−2[4−n−プロピルフ
ェニル)−1,3−ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルイ
ンドール−1−イル]ブタノエート(実施例5から)を用いる以外は実施例1の
方法で行ない、白色泡状の標記化合物を得た:
実施例3 4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニル)−1,3−ベンゾジオ キソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸
出発物質としてエチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニ
ル)−1,3−ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインド
ール−1−イル]ブタノエート(実施例6から)を用いる以外は実施例1の方法
で行ない、白色泡状の標記化合物を得た:
実施例4 エチル−4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソ ラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]ブタノエート
3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−5−イ
ル]カルボニル)2−メチルインドール(9.0g)(製造1参照)の2−ブタ
ノン懸濁液を無水炭酸カリウム(24.84g)及びエチルブロモブチレート(
3.35ml)で処理した。混合液を機械的に撹拌し、還流下で16時間加熱し
た。冷却後、混合液を濾過し、濾液を油状になるまで蒸発させた。フラッシュカ
ラムクロマトグラフィ−SiO2(3:1ヘキサン/エチルアセテート)により
、白色泡状の標記化合物(6.0g)を得た。
実施例5 エチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−n−プロピルフェニル)−1, 3−ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1− イル]ブタノエート
トルエン(40ml)中にエチル−4[3−(3,4−ジヒドロキシベンゾイ
ル)2−メチルインドール−1−イル]ブタノエート(320mg)(製造2参
照)及び1,1−ジメトキシ−1−(4−n−プロピルフェニル)ペンタン(5
80mg)(製造5参照)を入れた混合液を還流下(1時間)Dean and Stark装
置で処理した。トルエンの最初の数ミリリットルを集めて除去し、反応液を冷却
(60℃)し、反応混合液にp−トルエンスルホン酸(30mg)を添加した。
混合液を還流下(16時間)加熱し、冷却して溶媒を蒸発させた。フラッシュカ
ラムクロマトグラフィ−SiO2(3:1ヘキサン/エチルアセテート)により
、透明油状の標記化合物(380mg)を得た。
実施例6 エチル−4−[3−([2−ブチル−2(4−エチルフェニル)−1,3−ベン ゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]ブ タノエート
1,1−ジメトキシ−1−(4−n−プロピルフェニル)ペンタンの代わりに
1,1−ジメトキシ−1−(4−エチルフェニル)ペンタンを用いる以外は実施
例5の方法で行ない、透明油状の標記化合物を得た。
製造1 3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−5−イル ]カルボニル)2−メチルインドール
2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−5−カルボン酸
(9.70g)(製造3より)をジクロロメタン(200ml)に懸濁し、塩化
オキサリル(2.6ml)及びジメチルホルムアミド(7滴)で処理した。混合
液を均一になるまで撹拌し(1時間)、次いで溶媒を蒸発させてクリーム状の固
体とし、これをトルエンと共沸(×3)させて塩化オキサリルを除去した。粗酸
塩化物は次の段階にそのまま用いた。
2−メチルインドール(6.56g)のトルエン(50ml)溶液をヨウ化メ
チルマグネシウム(3.0Mのジエチルエーテル溶液16.7ml)で処理し、
−78℃まで冷却した。ピリジン(4.0ml)を添加し、次に上記のようにし
て調製した酸塩化物を少しずつ添加した;混合液を一晩で室温まで戻し、次いで
エチルアセテートと飽和塩化アンモニウム水溶液間に分配した。有機溶媒層を分
離し、少し濃縮した。一晩静置して標記化合物をピンクの固体として結晶化させ
た。濾過及び9:1ヘキサン/エチルアセテートによる粉砕によって、淡いピン
クの粉末の標記化合物を得た(9.0g)。
製造2 エチル−4[3−(3,4−ジヒドロキシベンゾイル)2−メチルインドール− 1−イル]ブタノエート
エチル−4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキ
ソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]ブタノエー
ト(4.5g)を氷酢酸(80ml)及び水(70ml)に溶解し、還流下で8
時間加熱した。反応混合液を冷却し、真空下で溶媒を蒸発させて残渣をエチルア
セテートと飽和重炭酸ナトリウム水溶液間に分配した。有機溶媒層を分離し、飽
和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄(×3)した。有機溶媒層を乾燥(MgSO4
)させ、溶媒を蒸発させて褐色固体の標記化合物を得た(1.52g)。
製造3 2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−5−カルボン酸
4,4’−ジクロロベンゾフェノンジメチルケタール(8.71g)(製造4
)及び3.4−ジヒドロキシメチルベンゾエート(5.19g)をトルエン(2
00ml)に入れた混合液を還流下Dean and Stark装置で加熱した(1時間)。
冷却(60℃)後、p−トルエンスルホン酸(50mg)を添加し、混合液を一
晩還流下で加熱した。冷却してすぐに混合液の溶媒を蒸発させて赤色ガム状とし
、これをメタノール(60ml)及びテトラヒドロフラン(60ml)に0℃で
溶
解させた;2N水酸化ナトリウム水溶液(60ml)を添加し、混合液を一晩撹
拌した。メタノール及びテトラヒドロフランを注意深く蒸発させ、次に混合液が
酸性になるまで2N塩酸を添加した。得られた沈澱物を集めて乾燥させ、わずか
に灰色がかった白色の粉末の標記化合物を得た(7.15g)。
製造4 4,4’−ジクロロベンゾフェノンジメチルケタール
4,4−ジクロロベンゾフェノン(20.0g)、トリメチルオルトギ酸(2
0.0ml)、メタノール(200ml)及びp−トルエンスルホン酸(100
mg)の混合液を還流下で加熱した(16時間)。冷却した反応液の溶媒を蒸発
させ、ナトリウムメトキシドの30重量%メタノール溶液数滴でアルカリ性にし
た;この時点で太い針状の生成物が晶出した。濾過により、結晶固体の標記化合
物を得た(22.0g)。
製造5 1,1−ジメトキシ−1−(4−n−プロピル)フェニルペンタン
1−(4−n−プロピル)フェニルペンタン−1−オン(500mg)(製造
6参照)、トリメチルオルトギ酸(1.1ml)、メタノール(20ml)及び
p−トルエンスルホン酸(10mg)を還流下で16時間加熱した。冷却した反
応混合液を(ナトリウムメトキシドの30重量%メタノール溶液数滴を用いて)
アルカリ性にし、反応混合液を水(20ml)及びジエチルエーテル(20ml
)
間に分配した。エーテル層を分離し、食塩水(20ml)で洗浄し、乾燥させて
(MgSO4)無色油状の標記化合物を得た(600mg)。
製造6 1−(4−n−プロピル)フェニルペンタン−1−オン
n−ブチルリチウム(1.6Nヘキサン溶液、3.65ml)のテトラヒドロ
フラン(10ml)溶液を−78℃に冷却し、N−メトキシ−N−メチル−4−
n−プロピルベンズアミド(1.1g)(製造7参照)のテトラヒドロフラン(
10ml)溶液数滴ずつで処理し、溶液を一晩かけて室温まで戻した。反応混合
液をジクロロメタン(50ml)及び2N塩酸(50ml)間に分配した。有機
溶媒層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、溶媒を蒸発させて黄色油状にし、こ
れをフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、溶出液=3:1ヘキサン/エチル
アセテート)にかけて透明油状の標記化合物を得た(545mg)。
製造7 N−メトキシ−N−メチル−4−n−プロピルベンズアミド
4−n−プロピル安息香酸(10.0g)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾー
ル水和物(8.20g)、1−(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)−3−
エチルカルボジイミド塩酸塩(21.5g)及びジクロロメタン(1000ml
)の混合液をトリエチルアミン(42.6ml)及びN,O−ジメチルヒドロキ
シルアミン塩酸塩(6.6g)数滴ずつで処理した。混合液を室温で一晩撹拌し
、次いで水(700ml)で処理した。有機溶媒層を分離し、2N塩酸(4×5
00ml)、次いで飽和重炭酸ナトリウム水溶液(4×500ml)で洗浄した
。有機溶媒層を乾燥させ(MgSO4)、濃縮して透明油状の標記化合物を得た
(10.8g)。
製造8 1,1−ジメトキシ−1−(4−エチルフェニル)ペンタン
この化合物は製造6及び7に概略したものと類似の方法によって調製した1−
(4−エチルフェニル)ペンタン−1−オンから製造5に概略した方法によって
調製した。
【手続補正書】
【提出日】1996年2月19日
【補正内容】
請求の範囲を次の通り補正する。
『1.式(I)の化合物:
[式中:RはR12がHまたは生物的に不安定なエステルを形成する基である−C
O2R12であるか、またはRはテトラゾル−5−イルであり、そして
(a)R1が
でR2がF、Cl、Br、I、CH3またはCF3であるか、または
(b)R1がC3−C6アルキルでR2がC2−C4アルキルである。]
及びその製薬上許容し得る塩基性塩。
2.RがCO2Hである、請求項1に記載の化合物。
3.R1がC3−C4アルキルである、請求項1または2に記載の化合物。
4.R1がn−ブチルである、請求項3に記載の化合物。
5.R2がエチルまたはn−プロピルである、請求項3または4に記載の化合物
。
6.R1が
であり、R2がF、Cl、BrまたはIである、請求項1または2に記載の化合
物。
7.下記の化合物のいずれか一つ:
4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−
5−イル]カルボニル)−2−メチルインドール−1−イル]酪酸;
4−[3−([2−ブチル−(4−n−プロピルフェニル)−1,3−ベンゾ
ジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸
;
4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニル)−1,3−ベンゾジ
オキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸;
エチル−4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキ
ソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]ブタノエー
ト;
エチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−n−プロピルフェニル)−1
,3−ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1
−イル]ブタノエート;及び
エチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニル)−1,3−
ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル
]ブタノエート、
及びその製薬上許容し得る塩基性塩。
8.該塩がナトリウム、カリウム、N−ベンジル−N−(2−フェニルエチル)
アミンまたは1−アダマンチルアミン塩である、請求項1〜7のいずれか1項に
記載の化合物。
9.請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物と、製薬上許容し得る希釈剤ま
たは担体とを含有する、5α−リダクターゼ−1を阻害する医薬組成物。
10.男性型禿頭、女性の粗毛症、尋常性ざ瘡、脂漏、前立腺癌、良性前立腺肥
大または脱毛症を治療または予防するための請求項9に記載の医薬組成物。
11.下記(1)〜(11)からなる、式(I)の化合物:
[式中、RはR12がHまたは生物的に不安定なエステルを形成する基である−C
O2R12であるか、またはRはテトラゾール−5−イルであり、そして
(a)R1が
でR2がF、Cl、Br、I、CH3またはCF3であるか、または
(b)R1がC3−C6アルキルでR2がC2−C4アルキルである。]
またはその製薬上許容し得る塩基性塩の製造方法:
(1)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(II):
[式中R4は分解可能なエステルを形成する基であり、R1及びR2は式(I)で
先に定義したものである。]
のエステルの分解;
(2)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(III):
[式中R5及びR6は独立してH及びC1−C4アルキルから選ばれ、R1及びR2は
式(I)で先に定義したものである。]
の化合物の加水分解;
(3)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(IV):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものであり、R7はHまたはC1−C4
アルキルである。]
の化合物の加水分解;
(4)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(V):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものである。]
の化合物の加水分解;
(5)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(VI):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものであり、R8及びR9は一緒にな
ってエチレンを示し、該エチレンは場合によってフェニルまたはC1−C4アルキ
ルで置換されていても良い。]
の化合物の酸性加水分解;
(6)式(I)のいずれかの化合物の調製のための、式(VII):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものである。]
の化合物の塩基性塩の、式(VIII):
の化合物またはその塩基性塩、あるいはZが脱離基である式Z(CH2)3−CO2
Hの化合物の塩基性塩によるアルキル化;
(7)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(IX):
[式中Z1は−CH=CH2または−CH≡CHであり、R1及びR2は式(I)で
先に定義したものである。]
の化合物の酸化的分解;
(8)RがCO2HでR1及びR2が式(I)で先に定義した化合物の調製のため
の、式(X):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものである。]
の化合物の酸化;
(9)式(I)のいずれかの化合物の調製のための、式(XI):
[式中Rは式(I)で定義したものである。]
の化合物の、
(a)式(XII)、(XIII)または(XIV):
[式中R1及びR2は式(I)で先に定義したものである。]
の化合物、または
(b)式(XIVA):
[式中、R1は、それが1,3−ベンゾジオキソラン環に結合する位置に対して
α−位の炭素原子上に水素原子を有するアルキルであり、R2は式(I)で先に
定義したものである。]
の化合物との反応;
(10)Rがテトラゾール−5−イルである式(I)の化合物の調製のための、
先に定義した式(V)の化合物のアジドとの反応;
(11)Rがテトラゾール〜5−イルである式(I)の化合物の調製のための、
式(XVI):
[式中R1及びR2は式(I)の化合物で先に定義したものである。]
の化合物からの保護基の脱離、及び必要な場合には得られた生成物の製薬上許容
し得る塩への変換。
12.R1がC3−C4アルキルである、請求項11に記載の方法。
13.R1がn-ブチルである、請求項12に記載の方法。
14.R2がエチルまたはn-プロピルである、請求項12または13に記載の方
法。
15.R1が
であり、R2がF、Cl、BrまたはIである、請求項11に記載の方法。
16.得られる化合物が下記のいずれか1つである、請求項11に記載の方法:
4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキソラン−
5−イル]カルボニル)−2−メチルインドール−1−イル]酪酸;
4−[3−([2−ブチル−(4−n−プロピルフェニル)−1,3−ベンゾ
ジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸
;
4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニル)−1,3−ベンゾジ
オキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]酪酸;
エチル−4−[3−([2,2−p−クロロフェニル−1,3−ベンゾジオキ
ソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル]ブタノエー
ト;
エチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−n−プロピルフェニル)−1
,3−ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1
−イル]ブタノエ−ト;及び
エチル−4−[3−([2−ブチル−2−(4−エチルフェニル)−1,3−
ベンゾジオキソラン−5−イル]カルボニル)2−メチルインドール−1−イル
]ブタノエート、
及びその製薬上許容し得る塩基性塩。
17.製薬上許容し得る塩がナトリウム、カリウム、N−ベンジル−N−(2−
フェニルエチル)アミンまたは1−アダマンチルアミン塩の中から選択される、
請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
18.下記の式のいずれか1つの化合物、またはその塩:
[式中、R1、R2、R5−R9及びZ1は先に定義したものである。]』
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07C 43/313 C07C 43/313
49/76 9049−4H 49/76 Z
49/784 49/784
49/813 49/813
321/20 321/20
323/07 323/07
325/02 7106−4H 325/02
C07D 405/14 209 9159−4C C07D 405/14 209
(72)発明者 モー,グラハム・ナイジェル
イギリス国 ケント シーティー13・9エ
ヌジェイ,サンドウィッチ,ラムズゲー
ト・ロード(番地なし),ファイザー・セ
ントラル・リサーチ内
(72)発明者 ローソン,デーヴィッド・ジェームズ
イギリス国 ケント シーティー13・9エ
ヌジェイ,サンドウィッチ,ラムズゲー
ト・ロード(番地なし),ファイザー・セ
ントラル・リサーチ内