JPH0949842A - 抗体を用いた牛の血中グルタチオンペルオキシダーゼ、全血セレン濃度、乳汁中体細胞数の測定法及び乳房炎診断法 - Google Patents

抗体を用いた牛の血中グルタチオンペルオキシダーゼ、全血セレン濃度、乳汁中体細胞数の測定法及び乳房炎診断法

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JPH0949842A
JPH0949842A JP20090795A JP20090795A JPH0949842A JP H0949842 A JPH0949842 A JP H0949842A JP 20090795 A JP20090795 A JP 20090795A JP 20090795 A JP20090795 A JP 20090795A JP H0949842 A JPH0949842 A JP H0949842A
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glutathione peroxidase
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bovine
milk
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JP20090795A
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Chikako Kinoshita
千佳子 木の下
Koichi Sase
孝一 佐瀬
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Nippon Zenyaku Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Zenyaku Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 牛由来グルタチオンペルオキシダーゼを
免疫抗原として得られる抗血清あるいはモノクローナル
抗体を用いた免疫化学的測定法により、全血中及び乳汁
中グルタチオンペルオキシダーゼを測定すると同時に、
本酵素と高い相関性を持つ全血セレン濃度及び乳汁中体
細胞数を間接的に測定する。また、間接的に測定された
乳汁中体細胞数から、乳房炎の診断を行う。 【効果】 簡易で迅速な牛血中グルタチオンペルオキシ
ダーゼ、全血セレン濃度、及び乳汁中体細胞数の測定が
可能になり、乳房炎の診断が容易になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は免疫化学的測定法に
よる牛の血中グルタチオンペルオキシダーゼ、全血セレ
ン濃度、乳汁中体細胞数の測定法及び乳房炎診断法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】グルタチオンペルオキシダーゼはグルタ
チオンによる過酸化水素、脂質過酸化物の分解を触媒す
る酵素であり、牛での本酵素の分子量はおよそ84k
d、その活性中心にセレノシステインの形でセレン4原
子を含むセレン含有酵素として知られている。このセレ
ンの生理的機能型である本酵素の活性値は、生体内にお
けるセレンの状態を最もよく反映するものであり、セレ
ン状態の評価に広く利用されている。
【0003】図10はグルタチオンペルオキシダーゼの
反応様式である。本酵素の活性測定法は、還元型グルタ
チオン(GSH)を水素供与体とし、H22または有機
ヒドロペルオキシドを基質としてグルタチオンペルオキ
シダーゼ反応を行わせ、生成される酸化型グルタチオン
(GSSG)を酵母由来グルタチオンレダクターゼによ
りGSHに還元し、このとき消費されるNADPHの減
少を、340nmでの吸光度の経時的減少として分光光
度計により測定記録するというものである。
【0004】しかしこの測定法は、1)高価な分光光度
計を必要とする(1分間吸光度モニタリングシステ
ム)、2)用いる試薬が用時調製である、3)試薬が高
価である、4)酵素活性が室温により左右されやすい、
5)多検体処理が困難である、などの問題点を有してい
る。
【0005】また、生体内のセレンの測定法には、原子
吸光法、ガスクロマトグラフ法、蛍光光度法及び蛍光検
出高速液体クロマトグラフィー法、などがあるが、いず
れも煩雑な操作を必要とする。
【0006】即ち、原子吸光法では検出感度を高めるた
めに黒鉛炉を用いるなど一般的な仕様では測定できな
い。また、ガスクロマトグラフ法ではセレンを標識し
て、電子捕獲型検出器を用いるが、標識剤がかなり高価
である。蛍光光度法では2,3−ジアミノナフタレン
(DAN)に含まれる他の蛍光物質や、DANと反応し
て生成するピアセノール(Se−DAN)以外の蛍光物
質を除去する操作を必要とし多検体処理に適していな
い。一方、蛍光検出高速液体クロマトグラフィー法は他
の測定法に比べ高感度でなおかつ簡易であるが、測定に
長時間かかるなど、臨床の場での実用性は低い。
【0007】牛の乳汁中体細胞数は、牛の重要な疾病の
一つである乳房炎の判定基準として用いられており、そ
の測定法には、直接顕微鏡で鏡検し細胞数を数えるBr
eed法、蛍光光学式体細胞測定機などによる自動測定
法、またCMT(California Mastit
is Test)家畜衛生試験場北陸支場変法(PLテ
スト)などのような間接法が一般的に用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、グルタ
チオンペルオキシダーゼ及びセレンの測定には、高価な
試薬や特殊な機材を必要とし、また操作もかなり煩雑で
あるため、実際にセレン欠乏牛及びグルタチオンペルオ
キシダーゼ活性低下牛が問題となる臨床の場での簡易測
定は困難である。また、牛の乳房炎の臨床現場での診断
法としてはPLテストが広く普及しているが、PLテス
トには定量性が低いという問題点がある。
【0009】そこで本発明者らは、上述の問題を解決す
るため、牛のグルタチオンペルオキシダーゼに対する抗
体を用いた免疫化学的測定法を用いてグルタチオンペル
オキシダーゼを測定することにより、全血中の本酵素活
性と高い相関性を持つ全血セレン濃度、及び乳汁におい
て本酵素のほとんどが存在する体細胞を間接的に測定す
る方法について検討を行い、本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、牛由来グルタ
チオンペルオキシダーゼに対する抗体を作製し、その抗
体を利用したグルタチオンペルオキシダーゼ活性、全血
セレン濃度及び乳汁中体細胞数を測定する免疫化学的測
定法であり、また牛由来グルタチオンペルオキシダーゼ
に対する抗体を用いた免疫化学的測定法を利用し、乳汁
中グルタチオンペルオキシダーゼを測定することにより
乳汁中体細胞数を間接的に測定して乳房炎を診断する方
法である。
【0011】以下に、本発明の手段を更に詳細に説明す
る。
【0012】本発明において、免疫化学的測定法とは、
抗原−抗体反応を利用することを特徴とする測定法であ
り、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、蛍光抗体
法、ラテックス凝集反応、酵素抗体法(ELISA法)
などを用いることができるが、酵素抗体法を用いること
が特に好ましい。
【0013】本測定法に用いるグルタチオンペルオキシ
ダーゼは牛の組織に広く分布している。そのため、市販
品又は様々な材料、例えば赤血球、血小板、血清、肝臓
などの組織から抽出、分画、精製したものを使用するこ
とができる。また、牛には肉用牛、乳用牛など多くの種
類が存在するが、グルタチオンペルオキシダーゼはこれ
らの種間では構造的に共通であるので、本測定法に用い
る本酵素の由来や、その測定対象は、牛の品種に限定さ
れるものではない。
【0014】本発明に利用される抗体には抗血清すなわ
ちポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の2種類が
存在する。
【0015】一般的に前者抗体の作製については、目的
の抗原、すなわちグルタチオンペルオキシダーゼを適当
な動物に、適量、数回、皮下または筋肉内に投与し、十
分に抗体価が上昇した後、免疫動物より採血し、その採
血した血清から、冷アルコール処理を行うCohn法、
塩析、透析及びカラムクロマトグラフィー法を組み合わ
せた方法により、免疫グロブリンを分離精製して得るこ
とができる。
【0016】一方、後者については、マウスやヒト由来
のミエローマなどを用いる細胞融合法、EBウィルスに
よりB細胞を刺激する方法、またはそれらの組み合わせ
方法などがあるが、最近では遺伝子工学的技術も用いら
れるようになってきた。どの方法を用いるかは、利用す
る対象の動物種によって異なってくるので、適宜良い方
法を選択することが大切である。
【0017】サンドイッチ酵素抗体法(ELISA法)
において、一次抗体を接着させる固相として、抗体を受
動的によく吸着するポリスチレン、ポリカーボネート、
ポリプロピレン、ポリビニール製のマイクロプレート、
ビーズ、スティック、試験管等が一般に用いられてお
り、どのようなものを選択するかは、それぞれ一長一短
があるが、ポリスチレン製やポリビニール製のELIS
A用及びRIA用のマイクロタイタートレイが良好な結
果を示す。
【0018】次に、標識抗体について説明する。標識物
質としては、蛍光物質、酵素、放射性物質などを用いる
ことができるが、特に酵素の使用が好ましい。抗体に標
識する酵素は純度が高く、安価で、活性が安定なもの、
分子量が小さいもの、短時間に多くの基質を分解できる
回転率の高いものが望ましい。具体的なものとして、酸
性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコ
ースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アル
カリ性ホスファターゼ(AP)、ワサビペルオキシダー
ゼ(HRP)、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラー
ゼ、チロシナーゼ等が使われているが、その中でも、A
P、HRPは良好な結果を示し、かつ数多く市販されて
いるので、比較的両者がよく使用されている。また、抗
体にビオチンを結合させ、さらにこのビオチンにHRP
等の酵素で標識したアビジンを結合させることにより、
間接的に標識する方法(ABC法)も用いることができ
る。酵素を抗体に標識する方法には、グルタルアルデヒ
ドを用いるAvrameasの方法や、NaIO4を用
いるWilsonやNakaneの方法のように、酵素
と抗体を架橋剤を用いて化学結合させる方法がよく用い
られる。
【0019】基質は、使用する標識物質によっても異な
るが、APにはp−ニトロフェニルリン酸が使用されて
おり、発色反応をNaOHで停止すると安定な黄色を保
ち、405nmで比色定量できる。一方HRPには、H
22とこれにより酸化される物質、0−フェニレンジア
ミンまたは2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾ
チアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(AB
TS)が感度が高いため使用されている。反応をH2
4またはNaFで停止させると、0−フェニレンジア
ミンの場合は黄褐色を呈し492nmで、またABTS
の場合は緑色を呈し414nmで比色定量できる。
【0020】本発明によれば、血液や乳汁の様に多くの
蛋白質や脂肪が含まれるサンプルであっても、その中の
グルタチオンペルオキシダーゼのみを特異的に測定する
ことができるので、測定前に遠心分離などの操作により
夾雑物を除く必要がない。ただし、血液をサンプルとし
て測定する場合、赤血球中の本酵素を測定可能な状態に
するため、血液を完全に溶血させる必要があるが、これ
は凍結融解、低張あるいは高張処理、種々の溶血剤の使
用などにより容易に行うことができる。また乳汁をサン
プルとする場合も、体細胞中の本酵素を測定可能な状態
にするため、体細胞を破壊する必要があるが、これも凍
結融解などにより容易に行うことができる。
【0021】以下、本発明の作用を明らかにするため、
次のような試験を行った。
【0022】試験1(マウスモノクローナル抗体を用い
たサンドイッチELISA法による牛血中グルタチオン
ペルオキシダーゼ活性及び全血セレン濃度の測定) a.グルタチオンペルオキシダーゼに対するモノクロー
ナル抗体の作製及び酵素活性阻害能の測定 牛赤血球由来グルタチオンペルオキシダーゼ(TOYO
BO社)200μg/mlを等量のフロイント完全アジ
ュバントと混合し、5週齢のBALB/cマウスの腹腔
内に2週間間隔で4回免疫後、ブースター接種を行い、
3日後に50%ポリエチレングリコール1000(和光
社)を用いて、免疫マウスの脾臓細胞とマウスミエロー
マ細胞(X63−Ag8−6.5.3)とで、Koeh
lerand Milstein(Nature 25
6:495 1975)らの方法により細胞融合を行っ
た。スクリーニングには、ELISA法を用いてグルタ
チオンペルオキシダーゼに強く反応するモノクローナル
抗体産生細胞を選び、限界希釈法でクローニング後、1
2株23クローンのハイブリドーマを樹立した(表
1)。
【0023】
【表1】
【0024】これらのハイブリドーマは、増殖後、免疫
抑制剤プリスタン(Aldrich社)で前処理した1
0週齢のBALB/cマウスの腹腔内に5×106ce
lls/ml PBS/マウスの濃度で移植させた。1
週間後、得られた腹水をBinding buffer
(1.5Mグリシン−3M NaCl pH8.9)で
希釈し、Protein Aカラム(ファルマシア L
KB社、25×200mm)に充填後、上記緩衝液で十
分洗浄し、100mMクエン酸緩衝液 pH5.0で抗
体を溶出した。溶出された抗体を蒸留水で透析し、凍結
乾燥したものを精製抗体とした。
【0025】得られたモノクローナル抗体の中でグルタ
チオンペルオキシダーゼに対する反応性の強かったGP
F−1、GPI−2及びGPJ−1の3種類のモノクロ
ーナル抗体について、それらが酵素本来の活性を阻害す
るかどうか検討を行った(図1)。0.55μgのグル
タチオンペルオキシダーゼに対し、3種類の精製モノク
ローナル抗体を、それぞれ抗体量を変えて37℃で1時
間反応させた後、酵素活性をPaglia and V
alentineのScholzらによる変法(Am.
J.Vet.Res.40:245 1979)により
測定した。この結果、最も強い酵素活性阻害作用を示し
たモノクローナル抗体であるGPJ−1を用いて、以下
に示すようなサンドイッチELISA系を作出した。
【0026】b.モノクローナル抗体を用いた牛血中グ
ルタチオンペルオキシダーゼ及び全血セレン濃度測定用
サンドイッチELISA系の作出 96穴イムノプレート(Nunc社)に、0.15Mリ
ン酸緩衝食塩液(PBS)で2.5μg/mlに調整し
た精製GPJ−1を1ウェルあたり100μl加え、3
7℃で1時間静置して固相化した。次に、1%牛血清ア
ルブミン加PBS(BSA−PBS)を1ウェルあたり
100μl添加し、37℃で1時間反応させ、ブロッキ
ングを行った。このように作製した抗体固相化済みプレ
ートは、測定時まで−20℃で保存した。測定時には、
プレートを数分間室温に放置後、1ウェル当たり100
μl〜300μlの0.05%Tween−20加PB
S(Tw20−PBS)で1回洗浄し、市販の牛赤血球
由来グルタチオンペルオキシダーゼ(TOYOBO
社)、または福島県内で飼養されていたホルスタイン種
牛62頭及び黒毛和種牛59頭、計121頭の全血サン
プルを1ウェルあたり50μl加え37℃で1時間反応
させた。これらの全血サンプルは、牛の頸静脈からヘパ
リン加真空採血管を用いて採血し、さらに溶血後PBS
で320倍に希釈したものを用いた。Tw20−PBS
で3回洗浄後、BSA−PBSで200倍に希釈したペ
ルオキシダーゼ標識GPJ−1を1ウェルあたり50μ
l加え、37℃で1時間反応させた。ペルオキシダーゼ
標識GPJ−1は、試験1のaで精製したGPJ−1の
モノクローナル抗体を、Nakane and Kaw
aoi(J.Histochem.Cytochem.
22:1084 1974)の方法によりHRPとカッ
プリングさせ作製し、使用するまで−80℃に保存し
た。再びTw20−PBSで3回洗浄後、基質液[0.
0675%(W/V)ABTS(シグマ社)及び0.0
25%(V/V)H22加100mMクエン酸緩衝液
pH 4.0]を50μl加え、37℃で10分間反応
させた後、0.32%NaF溶液をさらに50μl加え
て反応を停止させ、414nmでの吸光度を測定した。
また、同じ121頭の全血サンプルについてPagli
a andValentineのScholzらによる
変法を用いてグルタチオンペルオキシダーゼ活性の測
定、及び蛍光検出高速液体クロマトグラフィー法による
セレン濃度の測定を行った。
【0027】市販のグルタチオンペルオキシダーゼをサ
ンプルとして測定した結果を、標準曲線として図2に示
した。また、121頭の全血について、ELISAでの
測定値と酵素活性値との相関関係を示したものが図3、
及び全血セレン濃度との相関関係を示したものが図4で
あり、酵素活性値との相関係数Rは0.961、全血セ
レン濃度との相関係数Rは0.930と、両者ともかな
り高い値であった。この結果求められたY=7.049
X+1.7676及びY=149.7X+29.09と
いう式を用いることにより、ELISA測定値から酵素
活性値及び全血セレン濃度への換算が可能であることが
明らかになった。
【0028】試験2(抗血清を用いたサンドイッチEL
ISA法による全血セレン濃度の測定) a.グルタチオンペルオキシダーゼに対するウサギ抗血
清の作製 市販の牛赤血球由来グルタチオンペルオキシダーゼ(T
OYOBO社)100μg/ml PBSを同量のフロ
イント完全アジュバントと混合し、日本白色系ウサギ
(5〜6週齢)の背部皮下の数箇所に0.2〜0.4m
lずつ投与した。この操作を2週間間隔で3〜5回行
い、十分に抗体価が上昇したところで、ウサギの頸静脈
より全採血を行い、血液約100mlを得た。得られた
血液を室温に放置し、血餅が形成された後、3000回
転、30分の遠心分離により、約50mlの血清を得る
ことができた。この50mlの血清にBinding
buffer(1.5Mグリシン−3M Nacl p
H8.9)450mlを加えて希釈し、試験1のaと同
様の操作を行い、抗体(IgGとして約500mg)を
精製した。
【0029】b.ウサギ精製抗体を用いた牛全血セレン
濃度測定用サンドイッチELISA系の作出 試験2のaで調整した精製抗体を固相化抗体及びペルオ
キシダーゼ標識抗体として用い、試験1のbと同様の方
法でサンドイッチELISA系を作出した。ただし、固
相化抗体の濃度は5μg/ml、またペルオキシダーゼ
標識抗体は、試験1のbの通り作製したものをさらにB
SA−PBSで1000倍に希釈し使用した。測定用サ
ンプルとして、市販の牛赤血球由来グルタチオンペルオ
キシダーゼ(TOYOBO社)、及び福島県内で飼養さ
れていたホルスタイン種牛77頭の全血を用いた。さら
に同サンプルについて蛍光検出高速液体クロマトグラフ
ィー法によるセレン濃度の測定も行った。
【0030】市販のグルタチオンペルオキシダーゼをサ
ンプルとして測定した結果を、標準曲線として図5に示
した。また、77頭の全血について、ELISAでの測
定値と全血セレン濃度との相関関係を示したものが図6
であり、相関係数Rは0.836と高い価であった。こ
の結果求められたY=134.8X+22.24という
式を用いることにより、ELISA測定値から全血セレ
ン濃度への換算が可能であることが明らかとなった。
【0031】試験3(マウスモノクローナル抗体を用い
たサンドイッチELISA法による牛乳汁中グルタチオ
ンペルオキシダーゼ及び体細胞数の測定)試験1のaで
作製したモノクローナル抗体のうち、酵素活性阻害作用
の最も強かったGPJ−1、及び酵素活性阻害作用を全
く示さなかったGPI−2の2種類を用いてサンドイッ
チELISAを作製した。96穴イムノプレート(Nu
nc社)に、PBSで2μg/mlに調製した精製GP
I−1を1ウェルあたり100μl加え、37℃で1時
間静置して固相化した。次に、BSA−PBSを1ウェ
ルあたり100μl添加し、37℃で1時間反応させ、
ブロッキングを行った。このように作製した抗体固相化
済みプレートは、測定時まで−20℃で保存した。測定
時には、プレートを数分間室温に放置後、1ウェル当た
り100μl〜300μlのTw20−PBSで1回洗
浄し、市販の牛赤血球由来グルタチオンペルオキシダー
ゼ(TOYOBO社)、またはホルスタイン種由来乳汁
93検体を1ウェルあたり50μl加え37℃で1時間
反応させた。これらの乳汁は、福島県酪連生乳検査所で
乳質検査終了後のものであり、体細胞を完全に破壊する
ため−70℃で2回凍結融解後、その原液をサンプルと
した。Tw20−PBSで3回洗浄後、BSA−PBS
で8000倍に希釈したビオチン化GPJ−1を1ウェ
ルあたり50μl加え、37℃で1時間反応させた。精
製GPJ−1のビオチン化は、市販のビオチン化キット
(アメリカンコーレックス社)を用いて行った。再びT
w20−PBSで3回洗浄後、市販のアビジンービオチ
ン試薬(フナコシ社)を、使用説明書通りにPBSで調
整後、使用直前にBSA−PBSで16倍に希釈したも
のを1ウェルあたり50μl加え、同様に37℃で1時
間反応させた。Tw20−PBSで3回洗浄後、基質液
[0.0675%(W/V)ABTS(シグマ社)及び
0.025%(V/V)H22加100mMクエン酸緩
衝液pH4.0]を50μl加え、37℃で10分間反
応させた後、0.32%NaF溶液をさらに50μl加
えて反応を停止させ、414nmでの吸光度を測定し
た。
【0032】市販のグルタチオンペルオキシダーゼを本
法で測定した結果を標準曲線として図7に示した。試験
1のbの方法と比較すると、本法は約60倍高感度であ
ることが明らかとなった。この93検体の乳汁について
は、蛍光光学式体細胞数測定機(フォスエレクトリック
社製コンビフォス360システム)により体細胞数の測
定を行い、ELISA測定値と体細胞数との相関性につ
いて検討を行った(図8)。この結果、両者の間では、
相関係数Rが0.907という高い相関性が認められた
ことから、乳汁中グルタチオンペルオキシダーゼのほと
んどのものが体細胞中に存在していることが示唆され
た。また、Y=284.4X−77.51という換算式
を用いることにより、本法は体細胞数の簡易測定法とし
て利用可能であることが明らかとなった。
【0033】乳汁1ml中の体細胞数が50万から10
0万個であれば乳房炎の疑い、100万個以上であれば
乳房炎とする判定基準が一般に用いられている。従っ
て、この換算式から体細胞数50万個に相当するELI
SA測定値0.45という値を用いることにより、サン
ドイッチELISA法を用いた乳房炎の判定が可能とな
った。
【0034】本発明によって、牛全血中のグルタチオン
ペルオキシダーゼを測定することにより、全血中のグル
タチオンペルオキシダーゼ活性と高い相関性を示す全血
セレン濃度を同時に測定することができる。また、本発
明では、従来のグルタチオンペルオキシダーゼ活性測定
法では測定不可能であった乳汁中の本酵素の測定が可能
であり、乳汁中の本酵素の大部分が体細胞に存在してい
ることから、間接的に、体細胞数の測定も同時に行うこ
とができる。
【0035】また、間接的に測定された乳汁中体細胞数
から牛の乳房炎を判定することができる。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例をあげて詳述するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】実施例1(マウスモノクローナル抗体を用
いたサンドイッチELISA法による牛血中グルタチオ
ンペルオキシダーゼ及び全血セレン濃度の測定) 日本全薬工業株式会社中央研究所付属臨床研究牧場で飼
養されている成牛黒毛和種牛22頭について、ヘパリン
加真空採血管を用いて、頸静脈から5ml採血し、試験
1のbと同様の操作を行い、ELISA測定値から全血
グルタチオンペルオキシダーゼ活性値及び全血セレン濃
度を換算した。また同時に、同検体について、Pagl
ia and ValentineのScholzらに
よる変法による酵素活性値及び蛍光検出高速液体クロマ
トグラフィー法による全血セレン濃度の測定も行った
(表2)。
【0038】
【表2】
【0039】この結果、ELISA測定値から換算され
た酵素活性値とPaglia and Valenti
neのScholzらによる変法による酵素活性値との
相関係数は0.956、またELISA測定値から換算
された全血セレン濃度と蛍光検出高速液体クロマトグラ
フィー法での全血セレン濃度との相関係数は0.920
と高い関連性が示された。
【0040】実施例2(抗血清を用いたサンドイッチE
LISA法による牛全血セレン濃度の測定) 日本全薬工業株式会社中央研究所付属臨床研究牧場で飼
養されているホルスタイン種牛15頭について、ヘパリ
ン加真空採血管を用いて、頸静脈から5ml採血し、試
験2のbと同様の操作を行い、ELISA測定値から全
血セレン濃度を換算した。また同時に、同検体につい
て、蛍光検出高速液体クロマトグラフィー法による全血
セレン濃度の測定も行った(表3)。
【0041】
【表3】
【0042】この結果、ELISA測定値から換算され
た全血セレン濃度と蛍光検出高速液体クロマトグラフィ
ー法での全血セレン濃度との相関係数は0.898であ
り、両者の間の高い関連性が示された。
【0043】実施例3(マウスモノクローナル抗体を用
いたサンドイッチELISA法による牛乳汁中体細胞数
の測定) 福島県内の1酪農家で飼養されているホルスタイン種牛
13頭の左前及び左後分房から搾乳された分房別乳汁2
6検体について、試験3の方法により体細胞数の測定を
行った(表4)。
【0044】
【表4】
【0045】その結果、ELISA測定値から換算式に
より求められた体細胞数と、蛍光光学式体細胞数測定機
による測定値との間で、相関係数0.882という高い
相関性が認められた。
【0046】実施例4(サンドイッチELISA法によ
る乳房炎の判定) 福島県内の1酪農家で飼養されていたホルスタイン種乳
牛33頭由来分房別乳汁132検体について、試験3の
方法に従って測定を行い、体細胞数を測定するととも
に、試験3で求められた換算式より、体細胞数50万個
に相当するELISA測定値0.45以上を乳房炎乳と
判定した。その結果、132検体中92検体(69.7
%)が乳房炎乳と判定された。また、同じ132検体に
ついて、乳房炎の簡易診断法として普及しているPLテ
スト(日本全薬工業株式会社)を用いて乳房炎の判定を
行い、ELISA測定値とPLテストによる判定結果と
の関連性について検討を行った(図9)。ELISA測
定値が0.45以上であった92検体中、PLテストで
疑陽性または陽性と判定されたものは79検体(85.
9%)であり、また、PLテストで陽性と判定されたも
のに、ELISA測定値0.45以下の例がなかったこ
とから、サンドイッチELISA法とPLテストとの間
での高い相関性が示された。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
牛由来グルタチオンペルオキシダーゼを免疫抗原として
常法により作製した抗血清及びモノクローナル抗体を利
用した免疫化学的測定法を用いて、特異的かつ高感度に
グルタチオンペルオキシダーゼを測定することにより、
間接的に全血セレン濃度及び乳汁中体細胞数の測定、並
びに乳房炎の診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】モノクローナル抗体による酵素活性阻害試験で
の酵素活性と抗体量との関係を示す線図である。
【図2】モノクローナル抗体を用いたELISAの標準
曲線図である。
【図3】ELISA測定値と酵素活性値との相関関係を
示した線図である。
【図4】ELISA測定値と全血セレン濃度との相関関
係を示した線図である。
【図5】抗血清を用いたELISAの標準曲線図であ
る。
【図6】ELISAでの測定値と全血セレン濃度との相
関関係を示した線図である。
【図7】モノクローナル抗体を用いたABC−ELIS
Aの標準曲線図である。
【図8】ELISA測定値と体細胞数との相関関係を示
した線図である。
【図9】ELISA測定値とPLテストでの乳房炎判定
結果との関係図である。
【図10】グルタチオンペルオキシダーゼの反応様式図
である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 牛由来グルタチオンペルオキシダーゼに
    対する抗体を用いた免疫化学的測定法を利用し、血中グ
    ルタチオンペルオキシダーゼを測定することによる、全
    血セレン濃度の間接的測定法。
  2. 【請求項2】 免疫化学的測定法として酵素抗体法を用
    いる、請求項1記載の全血セレン濃度の間接的測定法。
  3. 【請求項3】 牛由来グルタチオンペルオキシダーゼに
    対する抗体を用いた免疫化学的測定法を利用し、乳汁中
    グルタチオンペルオキシダーゼを測定することによる、
    乳汁中体細胞数の間接的測定法。
  4. 【請求項4】 免疫化学的測定法として酵素抗体法を用
    いる、請求項3記載の乳汁中体細胞数の間接的測定法。
  5. 【請求項5】 牛由来グルタチオンペルオキシダーゼに
    対する抗体を用いた免疫化学的測定法を利用し、乳汁中
    グルタチオンペルオキシダーゼを測定して乳汁中体細胞
    数を間接的に測定することにより乳房炎を診断する乳房
    炎診断法。
  6. 【請求項6】 免疫化学的測定法として酵素抗体法を用
    いる、請求項5記載の乳房炎診断法。
JP20090795A 1995-08-07 1995-08-07 抗体を用いた牛の血中グルタチオンペルオキシダーゼ、全血セレン濃度、乳汁中体細胞数の測定法及び乳房炎診断法 Pending JPH0949842A (ja)

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