JPH0937738A - 分泌性下痢予防食品及び分泌性下痢防止剤 - Google Patents

分泌性下痢予防食品及び分泌性下痢防止剤

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JPH0937738A
JPH0937738A JP7193316A JP19331695A JPH0937738A JP H0937738 A JPH0937738 A JP H0937738A JP 7193316 A JP7193316 A JP 7193316A JP 19331695 A JP19331695 A JP 19331695A JP H0937738 A JPH0937738 A JP H0937738A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂を有
効成分とする分泌性下痢予防・防止食品、及びω−3系
列の脂肪酸を含有する油脂を有効成分とする分泌性下痢
予防・防止剤。 【効果】 本発明の分泌性下痢予防・防止食品及び分泌
性下痢予防・防止剤によれば、プロスタグランディンに
よって引き起こされる分泌性下痢を予防又は防止するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分泌性下痢を予防
又は防止することのできる食品及び薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】腸内に流入する1日の水分量は、経口摂
取の水分2リットル、唾液1リットル、胃液分泌2リッ
トル、膵液分泌2リットル、胆汁分泌1リットル及び小
腸液1リットルで合計約9リットルといわれている。健
康な人では、そのうち6.5 リットルが小腸で吸収され、
残り2.5 リットルの約96%が大腸で吸収される。このよ
うに、水及び電解質は腸から吸収され、逆に腸から管腔
内へ分泌される。これらの水の吸収機構の障害、腸運動
の亢進及び分泌の亢進は下痢を惹起する。
【0003】下痢を機序から分類すると、水溶性下痢、
脂肪性下痢及び大腸刺激性下痢に分けられ、さらに水溶
性下痢は分泌性下痢、浸透圧性下痢及び粘膜透過性異常
による下痢に分けられる(朝倉他編、臨床生理学シリー
ズ6 腸、分泌性下痢の病態生理、p111、南江堂、199
0)。分泌性下痢は、コレラ菌や大腸菌などの細菌性毒
素やブラディキニンなどの炎症メディエーター、アセチ
ルコリンなどの神経伝達物質、セロトニンやヒスタミン
などのアレルギー関連物質による小腸及び大腸上皮細胞
の起電性クロライド(Cl-)分泌の亢進とNaCl共役吸収
の抑制により引き起こされる(朝倉他編、臨床生理学シ
リーズ6 腸、電解質の吸収と分泌、p104、南江堂、19
90)。
【0004】ところで、プロスタグランディンは腸の蠕
動運動を調節し、内容物の移動に生理作用を発揮する一
方で、下痢の原因物質として知られている(Lebenthal
& Duffey編、Textbook of Secretory Diarrhe, Eicosan
oid-Mediated Intestinal Secretion, p15, Raven Pres
s, 1990)。このプロスタグランディンは、生体膜中の
アラキドン酸を初発物質として、上記の刺激によりサイ
クロオキシゲナーゼ系のカスケード反応により合成され
る。
【0005】ω−6系列の脂肪酸であるアラキドン酸は
サフラワー油やコーン油など多くの植物油の主成分であ
るリノール酸から生合成される。一方、魚油には植物油
にはないω−3系脂肪酸であるドコサヘキサエン酸やエ
イコサペンタエン酸が含まれており、これらの脂肪酸は
拮抗的にリノール酸からアラキドン酸の生合成を抑制す
る効果が知られている。米久保らは、魚油由来のω−3
系列の脂肪酸の比率を高めた飼料で生育させたラットの
母乳ならびに胎仔と新生仔ラットの脾臓及び脳の脂肪酸
において、アラキドン酸レベルが低下していることを示
した(Yonekuboet al., J. Nutrition, 123;1703-1708,
1993)。
【0006】従って、プロスタグランディンの過合成の
抑制には、ω−3系列の脂肪酸の比率を高めた飼料を用
い、生体膜中のアラキドン酸レベルを低下させることが
有効である。これまで、小腸を切除したラットを用い
て、残存腸での内容物の移動を指標にω−3/ω−6の
脂肪酸比率を高めた飼料の下痢防止作用が報告されてい
る(特開平6-211653号公報)。
【0007】しかしながら、この報告における下痢の種
類は経腸作用に伴って発生するものに限定されており、
従来より問題となっている分泌性下痢は日常生活で相当
数の人が細菌性毒素、神経伝達物質、アレルギー関連物
質によって発症することが知られており、普通の生活を
しながら予防及び防止することは解決されていなかっ
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、下痢
の中でも特に分泌性下痢を予防又は防止することのでき
る食品及び薬剤を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】プロスタグランディンが
バクテリア毒素、ブラディキニン、緩下剤などの作用に
より腸粘膜で過合成されると、腸上皮細胞の起電性クロ
ライド(Cl-)分泌とNaCl共役吸収の抑制が同時に起こ
り、水分泌が亢進されて分泌性下痢を惹起する。これま
で、ω−3系の脂肪酸を含む油脂が分泌性下痢の防止に
有効であることは知られていなかったが、本発明者ら
は、後述するように、分泌性下痢の細胞機構である起電
性Cl-分泌を電気生理学的に測定する(朝倉他編、臨床
生理学シリーズ6 腸、電解質の吸収と分泌、p104、南
江堂、1990)ことにより、ω−3系列の脂肪酸を含む油
脂を摂取すればプロスタグランディン関与の分泌性下痢
を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、ω−3系列の脂肪酸
を含有する油脂を有効成分とする分泌性下痢予防・防止
食品であり、特に上記ω−3系列の脂肪酸がエイコサペ
ンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸であり、また
上記ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂が魚油である分
泌性下痢予防・防止食品である。さらに、本発明は、ω
−3系列の脂肪酸を含有する油脂を有効成分とする分泌
性下痢予防・防止剤であり、特に上記ω−3系列の脂肪
酸がエイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン
酸であり、また上記ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂
が魚油である分泌性下痢予防・防止剤である。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
分泌性下痢予防・防止食品及び分泌性下痢予防・防止剤
は、ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂を有効成分とす
るが、ω−3系列の脂肪酸としては、エイコサペンタエ
ン酸、ドコサヘキサエン酸、α−リノレン酸、ステアリ
ドン酸等があり、これらの中でもエイコサペンタエン
酸、ドコサヘキサエン酸又はそれらの混合物を有効成分
として使用するのが好ましい。
【0012】本発明で使用する油脂は、ω−3系列の脂
肪酸を含有する油脂であればいかなるものであってもよ
いが、例えば魚油を用いることができる。魚油として
は、例えばイワシ油やマグロ油等が挙げられる。イワシ
油やマグロ油等の魚油は、エイコサペンタエン酸やドコ
サヘキサエン酸を高濃度で含有する。これら魚油の脂肪
酸組成中に占めるω−3系列の脂肪酸の含有量を表1に
示す。
【0013】
【表1】
【0014】魚油は食品として一般的に利用されている
ため、これを有効成分とすれば副作用等のない安全な分
泌性下痢予防・防止剤及び予防・防止食品が得られる。
これらの油脂は、ω−3/ω−6の脂肪酸比率を調整す
るために他の油脂、例えば大豆油、サフラワー油、コー
ン油、ヤシ油、パーム油、牛脂、卵黄油等と混合して用
いることができる。プロスタグランディン関与の分泌性
下痢を予防又は防止するには、ω−3/ω−6の脂肪酸
比率が3/97〜30/70となるように摂取するのが
好ましい。
【0015】ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂は、通
常の方法によって摂取することができるが、例えばω−
3系列の脂肪酸を高濃度に含有する精製魚油を、カプセ
ルなどに入れ直接経口摂取するか、栄養剤や食品として
他の油脂と混合して摂取できる。製剤化する場合は、ω
−3系列の脂肪酸を含有する油脂に通常の賦形剤、安定
化剤、必要によって結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、
矯味剤、矯臭剤等を添加し、常法により錠剤、顆粒剤、
散剤、カプセル剤等にして摂取することができる。
【0016】ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂を食品
として利用する場合は、ω−3系列の脂肪酸を含有する
油脂自体を食品として利用することもできるし、他の食
品に添加して利用することもできる。他の食品として
は、例えばマーガリン、クリーム、アイスクリーム類、
チーズフード類、パン、ドレッシング、サラダ油等が挙
げられる。
【0017】成人1日当たりの平均脂肪摂取量50〜7
0gのうち、その10〜100%をω−3系列の脂肪酸
を高濃度に含有する魚油を摂取するなどによって、必要
摂取量を確保できる。以上説明した本発明の分泌性下痢
予防・防止食品及び分泌性下痢予防・防止剤は、生体膜
中のアラキドン酸レベルを低下させ、刺激によるプロス
タグランディン合成を低下させることが可能であるた
め、腸の炎症や細菌毒素などに起因する分泌性下痢を予
防及び防止することができ、機能性食品、経腸栄養剤、
医薬品等として利用することができる。
【0018】
〔実施例1〕
(1) ω−3系列の脂肪酸を含む飼料の作製と実験動物の
飼育 脂肪をサフラワー油のみとした飼料を対照として、サフ
ラワー油をイワシ油及びマグロ油により30%又は60%置
換した、脂肪量10%の5種類のカゼイン精製飼料を調製
した。飼料組成を表2に示す。この飼料及び水を5週齢
のSD系雄ラット(n=8)に自由摂取させ、3週間飼
育した。
【0019】
【表2】
【0020】(2) 起電性Cl-分泌の電気生理学的測定法 ラットを撲殺し、放血後、開腹して結腸遠位部を摘出し
た。酸素化した冷リンガー液で結腸内容物を洗い流し
た。冷リンガー液を酸素化しながら、腸間膜に沿って切
開し、粘膜面を下にして固定した後、実体顕微鏡下で筋
肉層を剥ぎ取り、粘膜標本を作製した(Yajima, J. Phy
siol.,403, 559-575, 1988)。粘膜標本をUssingチェン
バーに取り付け、膜電位固定装置(日本光電社製)を用
いて、プロスタグランディンによる起電性Cl-分泌を短
絡電流の変化として測定した(Binder編、Mechanism of
intestinal secretion, Electrogenic chloride secre
tionby mammalian colon. p102, Alan R. Liss Inc. Ne
w York, 1979 )。
【0021】(3) ブラディキニンによる起電性Cl-分泌
とプロスタグランディン合成 ブラディキニンは腸粘膜でのプロスタグランディン合成
を刺激する生理活性物質として知られるが、このブラデ
ィキニン10-6Mを粘膜標本の漿膜側に滴下し、ラット結
腸粘膜標本の短絡電流の変化を測定した。結果を図1に
示す。図1中、短絡電流の増加は血管側から腸管腔側へ
のCl-分泌を表している。また、プロスタグランディン
合成の律速酵素サイクロオキシゲナーゼの阻害剤である
インドメタシンを前投与したものについて同様の測定を
行った結果、ブラディキニンによる短絡電流の増加は完
全に抑制された。これらの事実から、ブラディキニンに
よる結腸短絡電流の応答はプロスタグランディン関与の
Cl-分泌応答であることが証明される。
【0022】上記(1) のようにして飼育した各ラットの
結腸粘膜について、ブラディキニンの刺激により結腸組
織で合成され、漿膜側液に出てきたプロスタグランディ
ン(PG)E2 の量を酵素抗体法(アマシャムPGE2
測定キット)により測定した。その結果を図2に示す。
なお、図2中の「マグロ油」及び「イワシ油」のPGE
2 量の値は、魚油30%置換飼料で飼育したラットでの実
験値と魚油60%置換飼料で飼育したラットでの実験値と
の平均値である。図2より、ブラディキニンによるプロ
スタグランディンE2 の合成が魚油摂取によって抑制さ
れることが証明された。
【0023】(4) ブラディキニンによるラット結腸の分
泌応答の魚油摂取による抑制 上記(1) のようにして飼育した各ラットの結腸粘膜の短
絡電流応答を上記(2)の方法により測定した。測定結果
は2元配置の分散分析により検定した。その結果、ブラ
ディキニン刺激によるプロスタグランディン関与のCl-
分泌応答において、魚油濃度による差異はなかったが、
食餌(魚油摂取)による有意な差異が認められた。ブラ
ディキニン投与後10分間の短絡電流変化を積算して、血
管側から腸管腔側へ単位時間に分泌されたCl-量を図3
に示す。なお、図3中の「マグロ油」及び「イワシ油」
のクロライド分泌の値は、魚油30%置換飼料で飼育した
ラットでの実験値と魚油60%置換飼料で飼育したラット
での実験値との平均値である。
【0024】図3より、マグロ油(DHA)を摂取した
群及びイワシ油(EPA)を摂取した群は、両者ともコ
ントロール群に比較してCl-分泌応答が有意に(p<0.0
5)低下することが判明した。
【0025】
【発明の効果】本発明の分泌性下痢予防・防止食品及び
分泌性下痢予防・防止剤によれば、プロスタグランディ
ンによって引き起こされる分泌性下痢を予防又は防止す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブラディキニンの刺激によるラット結腸の起電
性クロライド(Cl-)分泌を短絡電流の変化で示したも
のである。
【図2】ブラディキニンの刺激により合成されたプロス
タグランディンE2 の量を酵素抗体法で測定した結果を
示す。
【図3】ブラディキニンの刺激による、単位時間におけ
るラット結腸クロライド(Cl-)分泌量を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年8月31日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正内容】
【0004】ところで、プロスタグランディンは腸の蠕
動運動を調節し、内容物の移動に生理作用を発揮する一
方で、下痢の原因物質として知られている(Leben
thal & Duffey編、Textbook o
f Secretory Diarrhea,Eico
sanoid−Mediated Intestina
l Secretion,p15,Raven Pre
ss,1990)。このプロスタグランディンは、生態
膜中のアラキドン酸を初発物質として、上記の刺激によ
りサイクロオキシゲナーゼ系のカスケード反応により合
成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】しかしながら、この報告における下痢の種
類は経腸栄養に伴って発生するものに限定されており、
従来より問題となっている分泌性下痢は日常生活で相当
数の人が細菌性毒素、神経伝達物質、アレルギー関連物
質によって発症することが知られており、普通の生活を
しながら予防及び防止することは解決されていなかっ
た。
フロントページの続き (72)発明者 星 清子 東京都東村山市栄町1−21−3 明治乳業 株式会社栄養科学研究所内 (72)発明者 桑田 有 東京都東村山市栄町1−21−3 明治乳業 株式会社栄養科学研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂を有
    効成分とする分泌性下痢予防・防止食品。
  2. 【請求項2】 ω−3系列の脂肪酸がエイコサペンタエ
    ン酸及び/又はドコサヘキサエン酸である請求項1記載
    の分泌性下痢予防・防止食品。
  3. 【請求項3】 ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂が魚
    油である請求項1記載の分泌性下痢予防・防止食品。
  4. 【請求項4】 ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂を有
    効成分とする分泌性下痢予防・防止剤。
  5. 【請求項5】 ω−3系列の脂肪酸がエイコサペンタエ
    ン酸及び/又はドコサヘキサエン酸である請求項4記載
    の分泌性下痢予防・防止剤。
  6. 【請求項6】 ω−3系列の脂肪酸を含有する油脂が魚
    油である請求項4記載の分泌性下痢予防・防止剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007519620A (ja) * 2003-12-05 2007-07-19 ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド グルタミンを含む下痢止め組成物

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