JPH09329568A - コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度の診断方法および診断装置 - Google Patents

コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度の診断方法および診断装置

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JPH09329568A
JPH09329568A JP17301096A JP17301096A JPH09329568A JP H09329568 A JPH09329568 A JP H09329568A JP 17301096 A JP17301096 A JP 17301096A JP 17301096 A JP17301096 A JP 17301096A JP H09329568 A JPH09329568 A JP H09329568A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンクリート構造物中の鉄筋の腐食度を評価
できるようにする。 【解決手段】 コンクリート構造物の鉄筋かぶり部分の
コンクリートの自然電位、塩分量、含水率、炭酸化深さ
を測定し、該測定された自然電位に対し、塩分量、含水
率、炭酸化深さに基づく補正をして補正自然電位を算出
し、この補正自然電位に基づいて鉄筋の腐食確率または
腐食度の評価をする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビル、橋梁、トン
ネル等の各種のコンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率
または腐食度の診断方法および診断装置の技術分野に属
するものである。
【0002】
【従来技術】一般に、コンクリート構造物中には、強度
確保等の観点から鉄筋が埋設されるが、この埋設される
鉄筋の腐食が進行すると構造物の強度低下につながるた
め、補修をする必要が有る。ところが、鉄筋は構造物中
に埋設しているため、鉄筋が腐食しているか否かの診断
はコンクリート表面からはできない。
【0003】そこで、従来から、鉄筋の腐食診断法とし
てASTM(American Society fo
r Testing and Materials)の
C876−87でコンクリート中の無塗装鉄筋の自然電
位の測定法により鉄筋の腐食度合いを測定する手法が広
く用いられている。このものは、健全なコンクリート構
造物中では強アルカリ性のため鉄筋は不働態化してお
り、その自然電位は凡そ−100mV〜−200mV
(CSE)を示すが、塩化物の侵入や中性化(炭酸化)
によって鉄筋が活性態となって腐食が進行し、そして該
腐食が進行するとその電位が卑方向(負方向に大きくな
る)へ変化することに着目し、この自然電位の測定値を
もとに腐食の確率を診断する手法である。そしてこのも
のでは、表1に示すようなもので腐食の確率を診断して
いる。
【0004】
【0005】しかしながらこの腐食確率の診断法では、
不確定の領域が大きいうえ、実際の診断結果にもバラツ
キがあって信頼性に欠けるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで従来、コンクリ
ートの耐久性診断シリーズ3「鉄筋腐食の診断」(19
93年5月28日 森北出版株式会社発行)の第86頁
に記載されるように、鉄筋の自然電位は、コンクリート
表面においてかぶり部分を介して測定されるので、必ず
しも鉄筋腐食個所の真の電位を示すものとはならない。
また、種々の要因が測定値に影響を及ぼし、電位が変動
する原因ともなる。さらにOTH84205報告書で
は、測定値に影響を及ぼすと考えられる主な要因とそれ
らの影響の程度を示しているが、これら要因のうち、大
きな影響を及ぼすものは電気化学的な要因と抵抗的要因
とされている。前者はコンクリートの化学的および物理
的性状の不均一性に起因し、後者はコンクリート自体や
表面の炭酸化層などの抵抗に起因し、しかもそれらは含
水率や塩分量に左右される。この様に電位はかぶり部分
の性状により様々に変動するため、自然電位の測定によ
る判定と実際の腐食状況とが一致しないことになり、そ
れ故に信頼性に欠けることになる。
【0007】これに対して、「防錆管理」Vol.3
9,1995年11月号(平成7年11月1日 社団法
人日本防錆技術協会発行)の第393頁〜第399頁に
かけて記載されるように、種々の影響を受けることがな
い鉄筋近傍の自然電位(内部電位)を測定したところ、
信頼性の高い結果が得られた。しかしながら、測定した
い全てのところで内部電位を測定することは事実上無理
で、そこでこのものでは、コンクリート表面で実測した
自然電位(表面電位)と内部電位との差を補正電位と
し、これを用いてコンクリート表面で測定された自然電
位を補正する手法を採用した。ところがこの診断手法の
ものは、補正電位を算出するために、内部電位を測定す
る必要が有るが、補正電位は、ひとつのコンクリート構
造物において同じ様な環境下にある部位にしか有効でな
く、例えば南向き面と北向き面とでは乾燥度等の条件が
異なる等してかぶり部分の含水率等の性状が違うような
場合に、それぞれ別個に内部電位を測定しなければ正し
い補正電位を得ることができないことになる。この結
果、内部電位を測定するための孔を一つのコンクリート
構造物に対して多数穿設しなければならず、面倒かつ煩
雑で、作業性に劣るという問題が有るうえ、内部電位の
測定時には、孔部位を濡らしてはならないという、充分
に濡らした状態で行う表面電位の測定時の条件とは異な
る状態での測定が強いられ、しかも測定後には孔を塞が
ねばならないという煩雑さもある。そうして、鉄筋の腐
食の有無にとどまらず、どの程度まで腐食しているかの
判断ができれば、補修等を行う場合の重要な情報となる
が、腐食度の判定は、鉄筋を実際にはつりだし、建設省
総合技術開発プロジェクトがなした「コンクリートの耐
久性工場技術の開発」の報告書に示されている塩害建築
物の調査・診断・補修方針(案)(昭和63年11月建
設省)の鉄筋腐食度の区分(表2に示す)に基づいて目
視で行っているのが現状である。この様なことから、鉄
筋の腐食確率または腐食度についても自然電位の測定結
果から診断できれば、鉄筋腐食診断の効率化、高精度化
において望ましいが、現在のところこの様な知見はどこ
にもなく、これらに本発明が解決しようとする課題があ
った。
【0008】
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実
情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作
されたものであって、コンクリート構造物中の鉄筋の腐
食確率、腐食度を自然電位を測定して診断するにあた
り、実測した自然電位に対し、該コンクリート構造物の
かぶり部分のコンクリートの含水率による補正をして診
断するものである。そしてこの場合に、含水率による補
正は、コンクリート構造物中のかぶり部分の含水率が自
然電位の測定値に影響を与えない高い範囲では行わなく
て良いものである。この含水率による補正をしなくてよ
い範囲は、実験的には凡そ6%を越える場合であること
が確認された。さらに、含水率による補正をするにあた
り、コンクリートの塩分の有無による補正がさらになさ
れるものである。このものにおいて、含水率による補正
について塩分の有無による補正をさらにする場合、Xを
コンクリート構造物のかぶり部分のコンクリートの含水
率とすると、コンクリートが塩分を含まない場合は、 含水率による補正式=−25X+180 とし、塩分を3kg/m3含む場合は、 含水率による補正式=−20X+150 としてそれぞれ近似的に算出されることが実験的に求め
られ、コンクリートが上記塩分(0および3kg/
3)以外の塩分であるときには、上記二式から案分さ
れた補正式で算出されるものである。この場合の案分式
は、二次以上の高次元の式とすることもできるが、自然
電位の測定誤差が±20mV程度は有るという実情を鑑
みると、単純な一次の比例式で求められるもので良いと
いえる。また、含水率による補正に、コンクリートの炭
酸化深さによる補正がさらになされるものである。因み
に、上記両補正式の定数の値については、後述する実験
からの平均値として概算されたものであり、今後の実験
の積み重ねに伴うデータ蓄積により変動が有ると考えら
れるが、その変動量として2倍になるとか半分になると
かの大きな変動はなく、小さいものに押さえられるもの
と推定している。このものにおいて、含水率による補正
について炭酸化深さによる補正をさらにする場合、Yを
炭酸化深さとすると、コンクリートが塩分を含まない場
合は、 炭酸化深さによる補正式=8Y とし、塩分を3kg/m3含む場合は、 炭酸化深さによる補正式=4Y としてそれぞれ近似的に算出されることが実験的に求め
られ、コンクリートが上記以外の塩分量であるときに
は、上記二式から案分された補正式で算出されるもので
ある。この場合の案分式は、前記同様、二次以上の高次
元の式とすることもできるが、自然電位の測定誤差が±
20mV程度は有るという実情を鑑みると、単純な一次
の比例式で与えられるもので良いといえる。この場合の
定数の値についても前記同様と推定される。さらにこれ
らのものを勘案すると、コンクリート構造物中の鉄筋の
腐食確率または腐食度を自然電位を測定して診断するに
あたり、実測した自然電位に対し、コンクリートの含水
率、炭酸化深さ、塩分量を勘案した補正をするにあた
り、その補正量Zは、Wを含水率、Aを含水率の計数、
tを炭酸化深さ、Bを炭酸化深さの計数とした場合に、 補正量Z=C−A×W+B×t A=25−5/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結
果:kg/m3) B=8−4/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結果:
kg/m3) C=180−30/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定
結果:kg/m3) として近似的に算出し、前記測定した自然電位をこの補
正量Zで補正して得られる補正自然電位で鉄筋の腐食確
率または腐食度の評価をするものである。そしてこの場
合の腐食度の評価は、 補正自然電位E(mV) 腐食度 鉄筋の腐食状況 −250< I 腐食がなく黒皮の状態 −350<E<−250 II 表面に僅かの点錆が生じている状態 −450<E≦−350 III 薄い浮き錆が生じており、コンクリート に錆が付着している状態 <−450 IV、V 膨張性の錆が生じているが、断面欠損は 比較的少ない状態から著しい膨張性の錆 が生じており、断面欠損がある状態 に区分けされて評価されるものであり、この様にするこ
とで、コンクリート構造物体中の鉄筋の腐食度診断が容
易にできるようになった。
【0010】一方、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食
確率または腐食度を、コンクリート表面の自然電位測定
をして診断をし、その結果を表示するにあたり、その表
示には鉄筋位置の表示がなされるものとし、かつ該鉄筋
位置の表示は、腐食確率または腐食度の程度に基づいて
予め区分けされる複数の区分により識別表示されるよう
にすることで、鉄筋の腐食確率または腐食度の程度の関
係がより現実のものとして認識できることになる。さら
にこの場合、鉄筋位置を腐食確率または腐食度の程度に
基づいて識別表示するにあたり、隣設する測定点同志が
同じ腐食確率または腐食度の区分であるときには、両側
定位置間を同じ区分の識別表示をするようにしておけ
ば、測定点だけの点在的なものでなく、長尺物である鉄
筋としての腐食確率または腐食度の診断ができる。この
場合にさらに具体的には、コンクリート構造物中の鉄筋
の腐食確率または腐食度は、実測した自然電位に対し、
コンクリートの含水率、炭酸化深さ、塩分量を勘案した
補正するものとし、その補正量Zは、Wを含水率、Aを
含水率の計数、tを炭酸化深さ、Bを炭酸化深さの計数
とした場合に、 補正量Z=C−A×W+B×t A=25−5/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結
果:kg/m3) B=8−4/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結果:
kg/m3) C=180−30/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定
結果:kg/m3) として近似的に算出し、前記測定した自然電位をこの補
正量Zで補正して得られる補正自然電位とし、かつ補正
自然電位による腐食確率または腐食度の評価は、 補正自然電位E(mV) 腐食度 鉄筋の腐食状況 −250<E I 腐食がなく黒皮の状態 −350<E≦−250 II 表面に僅かの点錆が生じている状態 −450<E≦−350 III 薄い浮き錆が生じており、コンクリート に錆が付着している状態 E≦−450 IV、V 膨張性の錆が生じているが、断面欠損は 比較的少ない状態から著しい膨張性の錆 が生じており、断面欠損がある状態 に区分けされて評価することが好適で、この様にするこ
とで、今まで評価できなかった不確定の領域についても
良好な腐食確率または腐食度の評価ができるようになっ
た。
【0011】
【発明の実施の形態】前述した内部電位の測定による腐
食確率または腐食度の診断の信頼性が高いということ
は、測定される自然電位がコンクリートの乾燥度合いや
炭酸化に影響されないということであり、そこで、本発
明の発明者等は、コンクリートの含水率、炭酸化深さが
自然電位にどのような影響を与えているかについて供試
体を用いて検討した。また、塩分(主にNaCl)の有
無についての影響についても併せて検討した。 ・供試体の形態:コンクリートの単位セメント量は30
0kg/m3 水セメント比は65% ・供試体の含水率の測定方法:鉄筋かぶり表層部の含水
率は非破壊式簡易型水分計を用いて通常に行うことがで
きる。 ・供試体の炭酸化深さ(中性化深さ)の測定方法:フェ
ノールフタレイン法による。つまり、コンクリートを実
際にはつり、フェノールフタレイン溶液により発色して
いない部分の深さを測定する。 ・自然電位の測定方法:ASTMのC876−87に記
載される方法に準じる。ここで照合電極としては、内部
液が酸性溶液であるものや塩化物イオンを含むものは避
けた方が賢明で、測定の迅速化のためには回転型鉛照合
電極とすることが好ましい。電位差計は、100MΩ以
上の入力インピーダンスをもっているものが望ましい。
【0012】<塩分添加のない場合の含水率変化と自然
電位の変動についての検討>前記供試体のかぶり表層部
の含水率を約8%から3%まで変化させたものについ
て、内部電位(E1)と表面電位(E2)とを測定し、こ
れをプロットしたものを図1に示す。
【0013】これによると、内部電位(E1)は含水率
の変化にほとんど影響されず一定であるのに対し、表面
電位(E2)は含水率の変化に略直線的に変化している
ことが観測された。そこで、「E2−E1」の補正をする
ことで含水率による自然電位の補正ができるという知見
を得、算出した補正式は次の通りになった。式中、Xは
コンクリートのかぶり表層部の含水率(%)である。 含水率による補正式=−25X+180
【0014】<塩分添加のない場合の炭酸化進行に伴う
自然電位の変動についての検討>供試体について炭酸化
深さが0〜約8ミリメートルに達したものを調製し、こ
れらについて同様にして内部電位(E1)と表面電位
(E2)とを測定し、これをプロットしたものを図2に
示す。尚、内部電位(E1)は炭酸化されていない部位
について測定した。
【0015】これによると、内部電位(E1)は炭酸化
深さにほとんど影響されず一定であるのに対し、表面電
位(E2)は炭酸化深さの変化に略直線的に変化してい
ることが観測された。そこで、「E2−E1」の補正をす
ることで炭酸化深さによる自然電位の補正ができるとい
う知見を得、算出した補正式は次の通りになった。式
中、Yはコンクリートのかぶり部分の炭酸化深さ(ミリ
メートル)である。 炭酸化深さによる補正式=8Y
【0016】さらに炭酸化深さについての検討で、含水
率がどの様な影響を与えるかについて検討した。つま
り、前記供試体のうち、炭酸化深さ6ミリメートルおよ
び7.5ミリメートルのものについて1週間水に浸漬し
た後、同様にして表面電位(E2)を測定してみたとこ
ろ、E2≒E1であった。このときのかぶり表層部の含水
率を測定したところ、5.5〜6%程度であった。この
ことから、炭酸化深さについての補正は、含水率が凡そ
5.5〜6%を越えるものは無視することができ、5.
5〜6%以下のものについてだけ補正すればよいという
知見を得た。ここで、含水率に基づいて自然電位の補正
をするか否かの境界について、含水率を5.5から6%
のあいだのどの数値を具体的に設定するかが問題になる
が、例えば5.5%を基準として補正をするしないとし
て腐食度評価をした場合と、6%を基準として補正をす
るしないとして腐食度評価をしたものでは大差がないこ
とが多くの実験で明らかになっている。
【0017】<塩分を添加した場合の含水率変化と自然
電位の変動についての検討>塩分として塩化ナトリウム
を3kg/m3含む供試体を作成し、このものについて
含水率を約9%から3%まで変化させたものについて、
同様にして内部電位(E1)と表面電位(E2)とを測定
したが、その結果を図3に示す。これによると、塩分を
含むものは、内部電位(E1)についても含水率の変化
に直線的に影響されることが観測された。この結果に基
づき塩分を含む場合について算出した補正式は次の通り
になった。式中、Xはコンクリートのかぶり表層部の含
水率(%)である。 含水率による補正式=−20X+150
【0018】<塩分を添加した場合の炭酸化進行に伴う
自然電位の変動についての検討>同様に塩分を含む供試
体について、炭酸化深さが0〜約11ミリメートルに達
したものを調製し、これらについて同様にして内部電位
(E1)と表面電位(E2)とを測定したところ、図4に
示すようになった。これによると、内部電位(E1)は
炭酸化深さにほとんど影響されず一定であるのに対し、
表面電位(E2)は炭酸化深さの変化に略直線的に変化
していることが観測され、これに基づき塩分を含むもの
について算出した補正式は次の通りになった。式中、Y
はコンクリートのかぶり部分の炭酸化深さ(ミリメート
ル)である。 炭酸化深さによる補正式=4Y
【0019】そして、これら各補正式を一つの式にまと
めると、その補正量Zは、Wを含水率、Aを含水率の計
数、tを炭酸化深さ、Bを炭酸化深さの計数とした場合
に、 補正量Z=C−A×W+B×t A=25−5/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結
果:kg/m3) B=8−4/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結果:
kg/m3) C=180−30/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定
結果:kg/m3) に近似されて算出される。
【0020】<補正式が有効であるか否かの検討>次
に、各種コンクリート構造物についてその自然電位、塩
分濃度、含水率、炭酸化深さを測定した後、測定部分の
鉄筋のハツリ出しをし、鉄筋の腐食度がどの程度になっ
ているかを目視し、これを前記表2に基づいて評価し
た。その結果の一部を表3に示す。表3には前記AST
Mによる測定自然電位による腐食度の評価を参考のため
記載した。
【0021】
【表3】
【0022】これらの結果から、前記算出された補正自
然電位と前記腐食度I〜Vとは、表4のような関係で評
価され、これによってより確度の高い鉄筋の腐食確率ま
たは腐食度の評価ができる。
【0023】次に、これら補正自然電位Eをディスプレ
イ1に表示して診断するための診断装置であるが、該診
断装置は、データ入力をするための入力手段(キーボー
ド)2、該キーボード2からの入力信号に基づいて必要
な演算をし、その演算結果をディスプレイ1に出力する
制御部3とを用いて構成されるが、さらに必要ならば印
刷手段(プリンター)に出力して印刷物として表示して
も勿論よい。扨、制御部3はマイクロコンピュータ(C
PU)、メモリ等の必要な電子、電気部品や機器を用い
て構成されるが、コンクリート構造物中の縦横鉄筋位置
を表示する状態で鉄筋の腐食確率または腐食度を表示す
るための表示手段がプログラムとして組込まれている。
【0024】先ず、このものにおいて、診断しようとす
る実際のコンクリート構造物の鉄筋位置とディスプレイ
表示との関連付けであるが、これには、コンクリート構
造物の鉄筋位置を認定する必要が有る。鉄筋位置データ
は設計図(施工図)等で凡そ類推できるが、設計図と実
際の施工と異なる場合も多々有り、そのため現場におい
て測定範囲を四角枠で定めこの枠線上の鉄筋位置を探索
する。この探索手段としては通常使用されていれる鉄筋
探査器(金属探知器)を用いることが有効である。そし
て探索された鉄筋位置を縦横結ぶことで縦横鉄筋同志の
交差点を推測でき、この各交差点で自然電位差測定、塩
分濃度、含水率、炭酸化深さをそれぞれ測定することが
好ましく、図6の表示画面では、この鉄筋の各交差点を
測定した例について示されている。そしてこの様に実際
の鉄筋位置を探索し、測定位置を特定して各測定がなさ
れるが、測定点の数は400(つまり縦横鉄筋の本数が
20本づつ)点程度を最大とすることが目安とされる
が、これに限定されないことはいうまでもない。そうし
て、制御部3は、各測定位置での測定結果に基づいて前
述した近似式で補正量Zを演算し、補正自然電位を算出
する。この算出された各補正位置での補正自然電位につ
いて表4のように区分けされた評価表に基づき腐食確率
または腐食度の程度の評価をし、対応する腐食確率また
は腐食度の区分け表示(例えばディスプレーがカラー表
示できるものであれば色別表示、モノクロ表示であれば
濃淡差や網かけ模様の差で表示)をする。この場合に、
隣設する測定点同志で同じ程度の腐食確率または腐食度
として評価された場合、これらのあいだは略同じ腐食確
率または腐食度の区分けであると類推評価して対応する
識別表示をするように設定されている。従って、ディス
プレー表示を見ることで、どの位置の鉄筋がどの程度の
腐食確率または腐食度であるかの評価が単に目視するだ
けで簡単にでき、腐食程度に対応する補修の実行を行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】塩分を添加しない場合の含水率と内部電位(E
1)および表面電位(E2)との測定結果の関係をプロッ
トしたグラフ図である。
【図2】塩分を添加しない場合の炭酸化深さと内部電位
(E1)と表面電位(E2)との測定結果の関係をプロッ
トしたグラフ図である。
【図3】塩分を添加した場合の含水率と内部電位
(E1)と表面電位(E2)との測定結果の関係をプロッ
トしたグラフ図である。
【図4】塩分を添加した場合の炭酸化深さと内部電位
(E1)と表面電位(E2)との測定結果の関係をプロッ
トしたグラフ図である。
【図5】コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または
腐食度の診断装置の概略図である。
【図6】表示画面の概略正面図である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率
    または腐食度を自然電位を測定して診断するにあたり、
    実測した自然電位に対し、該コンクリート構造物のかぶ
    り部分のコンクリートの含水率による補正をして診断す
    るものであるコンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率ま
    たは腐食度の診断方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、含水率による補正
    は、コンクリート構造物中のかぶり部分の含水率が自然
    電位の測定値に影響を与えない高い範囲では行わなくて
    良いものであるコンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率
    または腐食度の診断方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、含水率による補正を
    しなくてよい範囲は、コンクリート構造物のかぶり部分
    のコンクリートの含水率が凡そ6%を越えるときである
    コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度の
    診断方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3において、含水率
    による補正は、コンクリートの塩分の有無による補正が
    さらになされるものであるコンクリート構造物中の鉄筋
    の腐食確率または腐食度の診断方法。
  5. 【請求項5】 請求項4において、含水率による補正に
    ついて塩分の有無による補正をさらにする場合、Xをコ
    ンクリート構造物のかぶり部分のコンクリートの含水率
    とすると、コンクリートが塩分を含まない場合は、 含水率による補正式=−25X+180 とし、塩分を3kg/m3含む場合は、 含水率による補正式=−20X+150 としてそれぞれ近似的に算出され、コンクリートが上記
    以外の塩分であるときには、上記二式から案分された補
    正式で算出されるものであるコンクリート構造物中の鉄
    筋の腐食確率または腐食度の診断方法。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3または4において、含
    水率による補正に、コンクリートの炭酸化深さによる補
    正がさらになされるものであるコンクリート構造物中の
    鉄筋の腐食確率または腐食度の診断方法。
  7. 【請求項7】 請求項6において、含水率による補正に
    ついて炭酸化深さによる補正をさらにする場合、Yを炭
    酸化深さとすると、コンクリートが塩分を含まない場合
    は、 炭酸化深さによる補正式=8Y とし、塩分を3kg/m3含む場合は、 炭酸化深さによる補正式=4Y としてそれぞれ近似的に算出され、コンクリートが上記
    以外の塩分量であるときには、上記二式から案分された
    補正式で算出されるものであるコンクリート構造物中の
    鉄筋の腐食確率または腐食度の診断方法。
  8. 【請求項8】 コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率
    または腐食度を自然電位を測定して診断するにあたり、
    実測した自然電位に対し、コンクリートの含水率、炭酸
    化深さ、塩分量を勘案した補正をするにあたり、その補
    正量Zは、Wを含水率、Aを含水率の計数、tを炭酸化
    深さ、Bを炭酸化深さの計数とした場合に、 補正量Z=C−A×W+B×t A=25−5/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結
    果:kg/m3) B=8−4/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結果:
    kg/m3) C=180−30/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定
    結果:kg/m3) として近似的に算出し、前記測定した自然電位をこの補
    正量Zで補正して得られる補正自然電位で鉄筋の腐食確
    率または腐食度の評価をするものであるコンクリート構
    造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度の診断方法。
  9. 【請求項9】 請求項8において、補正自然電位による
    鉄筋の腐食度の評価は、 補正自然電位E(mV) 腐食度 鉄筋の腐食状況 −250<E I 腐食がなく黒皮の状態 −350<E≦−250 II 表面に僅かの点錆が生じている状態 −450<E≦−350 III 薄い浮き錆が生じており、コンクリート に錆が付着している状態 E≦−450 IV、V 膨張性の錆が生じているが、断面欠損は 比較的少ない状態から著しい膨張性の錆 が生じており、断面欠損がある状態 に区分けされて評価するコンクリート構造物中の鉄筋の
    腐食確率または腐食度の診断方法。
  10. 【請求項10】 コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確
    率または腐食度を、コンクリート表面の自然電位測定を
    して診断をし、その結果を表示するにあたり、その表示
    には鉄筋位置の表示がなされるものとし、かつ該鉄筋位
    置の表示は、腐食確率または腐食度の程度に基づいて予
    め区分けされる複数の区分により識別表示されるコンク
    リート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度の診断装
    置。
  11. 【請求項11】 請求項10において、鉄筋位置を腐食
    確率または腐食度の程度に基づいて識別表示するにあた
    り、隣設する測定点同志が同じ腐食確率または腐食度の
    区分であるときには、両側定位置間を同じ区分の識別表
    示をするコンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または
    腐食度の診断装置。
  12. 【請求項12】 請求項10または11において、コン
    クリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度は、実
    測した自然電位に対し、コンクリートの含水率、炭酸化
    深さ、塩分量を勘案した補正するものとし、その補正量
    Zは、Wを含水率、Aを含水率の計数、tを炭酸化深
    さ、Bを炭酸化深さの計数とした場合に、 補正量Z=C−A×W+B×t A=25−5/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結
    果:kg/m3) B=8−4/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定結果:
    kg/m3) C=180−30/3×(未炭酸化部分の塩分量の測定
    結果:kg/m3) として近似的に算出し、前記測定した自然電位をこの補
    正量Zで補正して得られる補正自然電位とし、かつ補正
    自然電位による腐食度の評価は、 補正自然電位E(mV) 腐食度 鉄筋の腐食状況 −250<E I 腐食がなく黒皮の状態 −350<E≦−250 II 表面に僅かの点錆が生じている状態 −450<E≦−350 III 薄い浮き錆が生じており、コンクリート に錆が付着している状態 E≦−450 IV、V 膨張性の錆が生じているが、断面欠損は 比較的少ない状態から著しい膨張性の錆 が生じており、断面欠損がある状態 に区分けされて評価されるコンクリート構造物中の鉄筋
    の腐食確率または腐食度の診断装置。
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