JPH09313223A - 耐酸性を有する有機宝石およびその製造方法 - Google Patents

耐酸性を有する有機宝石およびその製造方法

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JPH09313223A
JPH09313223A JP14166896A JP14166896A JPH09313223A JP H09313223 A JPH09313223 A JP H09313223A JP 14166896 A JP14166896 A JP 14166896A JP 14166896 A JP14166896 A JP 14166896A JP H09313223 A JPH09313223 A JP H09313223A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有機宝石における耐酸性および表面硬度を簡
単な製法により向上させる。 【解決手段】 カルシウムを主成分とする有機宝石(例
えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面に、弗化カルシウ
ムを主成分とする保護層を形成することにより、耐酸性
および表面硬度を大幅に向上させるようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、耐酸性を有する
有機宝石およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、カルシウムを主成分とする有機
宝石(例えば、真珠、装飾珊瑚等)は、耐酸性が低く且
つ表面硬度も低いため、使用中に光沢を失ったり、傷が
付いたりすることが多く、長期間に亙って装飾性を保持
することが難しいという問題があった。
【0003】上記のような問題に対処するためには、有
機宝石の表面にオイルやワックスを塗布するという方法
が一般的に採用されてきていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような方法では不十分であり、耐酸性の向上は見られ
ず、定期的な手入れが必要であるとともに、手入れ時に
おいては柔らかい布で拭かなければならないというよう
に、長期間に亙って装飾性を保持するために非常な努力
が必要となるという問題があった。
【0005】上記のような現状であるが、ユーザにとっ
ては、たいした手入れを行わなくとも、長期間に亙って
装飾性を保持できる有機宝石があればきわめて便利なと
ころから、このような有機宝石の開発が希求されてい
る。
【0006】本願発明は、上記の点に鑑みてなされたも
ので、有機宝石における耐酸性および表面硬度を簡単な
製法により向上させることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明では、カルシウ
ムを主成分とする有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾
珊瑚)の表面に、弗化カルシウムを主成分とする保護層
を形成することにより、耐酸性および表面硬度を大幅に
向上させるようにしている。
【0008】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の製造
方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、弗化
ナトリウムを含む弱酸性水溶液からなる浸漬液中に浸漬
し、常温より高い所定温度に加温しつつ所定時間放置す
ることにより前記有機宝石の表面に弗化カルシウムを主
成分とする保護層を形成するようにしている。このよう
にすれば、極めて簡単な製法で、耐酸性および表面硬度
に優れた有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)を
製造することができる。
【0009】この場合において、前記浸漬液に沸点の低
いアルカリ溶液を添加して中和状態で使用すれば、有機
宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面における
肌荒れを防止できる点で好ましい。
【0010】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、
弱酸性水溶液に所定時間浸漬した後、弗化ナトリウム水
溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温より高い所定温度
に加温しつつ所定時間放置することにより前記有機宝石
の表面に弗化カルシウムを主成分とする保護層を形成す
るようにしている。このようにすれば、極めて簡単な製
法で、耐酸性および表面硬度に優れた有機宝石(例え
ば、真珠あるいは装飾珊瑚)を製造することができる。
【0011】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、
弗化ナトリウム水溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温
より高い所定温度に加温しつつ所定時間放置することに
より前記有機宝石の表面に弗化カルシウムを主成分とす
る保護層を形成するようにしている。このようにすれ
ば、極めて簡単な製法で、耐酸性および表面硬度に優れ
た有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)を製造す
ることができる。
【0012】この場合において、前記浸漬液の量を、浸
漬する有機宝石の量の10倍程度とした場合、副生され
る炭酸ナトリウムの有機宝石表面への付着が防止できる
とともに、アルカリの影響による肌荒れも防止できる点
で好ましい。
【0013】上記三つの製造方法において、前記有機宝
石浸漬中には、前記浸漬液を撹拌するようにした場合、
弗化カルシウム生成時に副生する炭酸ナトリウムの分散
を促進することとなり、水溶液のPHを適正に保持し易
くなる点で好ましい。
【0014】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、弗化ナトリウムを含む電解水溶液を収容
してなる電解槽を用意し、該電解層における陽極近傍
に、カルシウムを主成分とする有機宝石(例えば、真珠
あるいは装飾珊瑚)を浸漬して電解を行うことにより該
有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面に弗
化カルシウムを主成分とする保護層を形成するようにし
ている。このようにすれば、極めて簡単な製法で、耐酸
性および表面硬度に優れた有機宝石(例えば、真珠ある
いは装飾珊瑚)を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して、本
願発明の幾つかの好適な実施の形態について詳述する。
【0016】第1の実施の形態 まず、2%の弗化ナトリウム(NaF)を含む弗化ナト
リウム水溶液を作り、これにリン酸(H3PO5)を加え
てPH5.5程度の弱酸性水溶液からなる浸漬液を調製
する。
【0017】上記ようにして調製された浸漬液に、カル
シウムを主成分とする有機宝石(例えば、真珠あるいは
装飾珊瑚)を浸漬し、常温より高い所定温度(例えば、
30〜40℃)に加温しつつ所定時間(例えば、30分
間)放置したところ、前記有機宝石(例えば、真珠ある
いは装飾珊瑚)の表面に弗化カルシウム(CaF2)を
主成分とする保護層が形成されていた。該保護層は、極
めて薄いため有機宝石本体の輝度・色調を損なうことは
なく、しかも耐酸性および表面硬度に優れたものであ
り、この保護層に被覆された有機宝石(例えば、真珠あ
るいは装飾珊瑚)はほぼ半永久的に装飾性を失わないも
のとなる。
【0018】ところで、上記浸漬過程においては、有機
宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面において
下記の化学反応が生ずる。
【0019】 CaCO3+2NaF→CaF2+Na2CO3 上記反応により有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊
瑚)の表面に弗化カルシウム(CaF2)を主成分とす
る保護層が形成されるのであるが、同時に生成される炭
酸ナトリウム(Na2CO3)が加水分解してアルカリ性
を呈する。ところが、浸漬液として弱酸性水溶液を用い
ているため、炭酸ナトリウムの生成に伴うアルカリ性が
中和されることとなり、水溶液のPHの変動が抑えられ
ることとなる。このことにより、有機宝石の肌荒れが防
止され、処理前の状態に限りなく近い状態のものが得ら
れるのである。
【0020】なお、浸漬液を調製するために用いられる
酸として、上記したリン酸の他、酢酸、塩酸等を採用す
ることも可能である。
【0021】浸漬液の温度は、真珠の場合30℃程度が
よく、装飾珊瑚の場合40℃程度がよく、浸漬時間は、
短くともよいが、30分間程度とするのが保護層の生成
を確実とするためには望ましい。また、浸漬中において
は浸漬液を噴流により撹拌する方が浸漬液におけるPH
調整が容易となるところから製品性状がより良好とな
る。
【0022】さらに、弗化ナトリウム水溶液の濃度は、
1%〜4%の範囲とするのが望ましく、濃度が1%未満
の場合、十分な弗化カルシウムの生成を得ようとすると
浸漬時間を長くしなければならなくなり、濃度が4%を
超えた場合、浸漬時間を極めて短時間とすれば、所定の
弗化カルシウムの生成は可能であるが、反応中に水溶液
のアルカリ度が上昇し過ぎてPH調整が難しくなって製
品に肌荒れが生じるおそれがある。
【0023】第2の実施の形態 まず、2%の弗化ナトリウム(NaF)を含む弗化ナト
リウム水溶液を作り、これにリン酸(H3PO5)を加え
てPH5.5程度の弱酸性水溶液を調製した後、沸点の
低いアルカリ溶液(例えば、アンモニア水溶液)を添加
して中和し、PH7程度の浸漬液を調製する。
【0024】上記ようにして調製された低温状態の浸漬
液に、カルシウムを主成分とする有機宝石(例えば、真
珠あるいは装飾珊瑚)を浸漬し、徐々に浸漬液の温度を
上げていき、常温より高い所定温度(例えば、30〜4
0℃)に加温しつつ所定時間(例えば、30分間)放置
したところ、前記有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾
珊瑚)の表面に弗化カルシウム(CaF2)を主成分と
する保護層が形成されていた。該保護層は、極めて薄い
ため有機宝石本体の輝度・色調を損なうことはなく、し
かも耐酸性および表面硬度に優れたものであり、この保
護層に被覆された有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾
珊瑚)はほぼ半永久的に装飾性を失わないものとなる。
【0025】この場合にも、第1の実施の形態における
と同様の化学反応が生じて炭酸ナトリウム(Na2
3)が生成される。
【0026】ところが、上記したように浸漬液の温度を
徐々に上げていくと、アンモニアが蒸発していって浸漬
液は弱酸性に傾いていく。つまり、上記化学反応に伴っ
て炭酸ナトリウムが生成してくる時点では、浸漬液は弱
酸性(即ち、PH6.5程度)となる。その後上記化学
反応が活発となって、炭酸ナトリウムの生成が増大して
きても、アンモニアの蒸発が続くため、浸漬液のPHは
安定した状態を持続することとなる。つまり、本実施の
形態において用いられるアンモニアは浸漬液のPHを調
整するための調整剤として作用することとなっているの
である。
【0027】なお、浸漬液を調製するために用いられる
酸として、上記したリン酸の他、酢酸、塩酸等を採用す
ることも可能である。
【0028】浸漬液の温度は、真珠の場合30℃程度が
よく、装飾珊瑚の場合40℃程度がよく、浸漬時間は、
短くともよいが、30分間程度とするのが保護層の生成
を確実とするためには望ましい。また、浸漬中において
は浸漬液を噴流により撹拌する方が浸漬液におけるPH
調整が容易となるところから製品性状がより良好とな
る。
【0029】さらに、弗化ナトリウム水溶液の濃度は、
1%〜4%の範囲とするのが望ましく、濃度が1%未満
の場合、十分な弗化カルシウムの生成を得ようとすると
浸漬時間を長くしなければならなくなり、濃度が4%を
超えた場合、浸漬時間を極めて短時間とすれば、所定の
弗化カルシウムの生成は可能であるが、反応中に水溶液
のアルカリ度が上昇し過ぎてPH調整が難しくなって製
品に肌荒れが生じるおそれがある。
【0030】第3の実施の形態 浸漬液として2%の弗化ナトリウム水溶液を用い、浸漬
する有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の量の
10倍程度の量を用いる。そして、有機宝石(例えば、
真珠あるいは装飾珊瑚)を浸漬した浸漬液を常温より高
い所定温度(例えば、30〜40℃)に加温しつつ所定
時間(例えば、30分間)放置したところ、前記有機宝
石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面に弗化カル
シウム(CaF2)を主成分とする保護層が形成されて
いた。該保護層は、極めて薄いため有機宝石本体の輝度
・色調を損なうことはなく、しかも耐酸性および表面硬
度に優れたものであり、この保護層に被覆された有機宝
石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)はほぼ半永久的に
装飾性を失わないものとなる。
【0031】この場合、浸漬液は弱アルカリとなるた
め、処理後の有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊
瑚)の表面に若干の肌荒れが生じるが、処理後の磨きに
より装飾性は十分に保持できる。なお、浸漬中に噴流に
よる撹拌を行うと、弗化カルシウムの生成過程において
生じた炭酸ナトリウム(Na2CO3)が分散させること
となり、有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の
表面への付着が防止できる。なお、炭酸ナトリウムの生
成により、浸漬液のアルカリ度は高くなるが、浸漬液の
量を極めて多くしているので、有機宝石(例えば、真珠
あるいは装飾珊瑚)へのアルカリの影響はさほど問題と
ならない。
【0032】浸漬液の温度は、真珠の場合30℃程度が
よく、装飾珊瑚の場合40℃程度がよく、浸漬時間は、
短くともよいが、30分間程度とするのが保護層の生成
を確実とするためには望ましい。
【0033】さらに、弗化ナトリウム水溶液の濃度は、
1%〜4%の範囲とするのが望ましく、濃度が1%未満
の場合、十分な弗化カルシウムの生成を得ようとすると
浸漬時間を長くしなければならなくなり、濃度が4%を
超えた場合、浸漬時間を極めて短時間とすれば、所定の
弗化カルシウムの生成は可能であるが、反応中に水溶液
のアルカリ度が上昇し過ぎてPH調整が難しくなって製
品に肌荒れが生じるおそれがある。
【0034】第4の実施の形態 まず、PH6程度の弱酸性水溶液(例えば、リン酸水溶
液)にカルシウムを主成分とする有機宝石(例えば、真
珠あるいは装飾珊瑚)を所定時間(例えば、30分間)
浸漬する。この時、弱酸性水溶液を30〜40℃の温度
に保つとともに、噴流により撹拌する。
【0035】ついで、弱酸性水溶液から取り出した有機
宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)を、2%の弗化
ナトリウム水溶液からなる浸漬液に浸漬し、常温より高
い所定温度(例えば、30〜40℃)に加温しつつ所定
時間(例えば、30分間)放置したところ、前記有機宝
石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面に弗化カル
シウム(CaF2)を主成分とする保護層が形成されて
いた。該保護層は、極めて薄いため有機宝石本体の輝度
・色調を損なうことはなく、しかも耐酸性および表面硬
度に優れたものであり、この保護層に被覆された有機宝
石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)はほぼ半永久的に
装飾性を失わないものとなる。
【0036】この場合にも、第1の実施の形態における
と同様の化学反応が生じて炭酸ナトリウム(Na2
3)が生成されるが、有機宝石(例えば、真珠あるい
は装飾珊瑚)を予め弱酸性水溶液に浸漬しているため、
アルカリの影響を受けるおそれはない。
【0037】なお、有機宝石(例えば、真珠あるいは装
飾珊瑚)を予め浸漬する弱酸性水溶液として、上記した
リン酸水溶液の他、酢酸水溶液、塩酸水溶液等を採用す
ることも可能である。
【0038】浸漬液の温度は、真珠の場合30℃程度が
よく、装飾珊瑚の場合40℃程度がよく、浸漬時間は、
短くともよいが、30分間程度とするのが保護層の生成
を確実とするためには望ましい。
【0039】さらに、弗化ナトリウム水溶液の濃度は、
1%〜4%の範囲とするのが望ましく、濃度が1%未満
の場合、十分な弗化カルシウムの生成を得ようとすると
浸漬時間を長くしなければならなくなり、濃度が4%を
超えた場合、浸漬時間を極めて短時間とすれば、所定の
弗化カルシウムの生成は可能であるが、反応中に水溶液
のアルカリ度が上昇し過ぎてPH調整が難しくなって製
品に肌荒れが生じるおそれがある。
【0040】第5の実施の形態 図1に示すように、2%程度の弗化ナトリウム(Na
F)を含む電解水溶液を収容してなる電解槽1を用意
し、該電解層1における陽極2近傍に、カルシウムを主
成分とする有機宝石4(例えば、真珠あるいは装飾珊
瑚)を浸漬し、陽極2と陰極3とに直流電源に接続した
ところ、該有機宝石4の表面に弗化カルシウム(CaF
2)を主成分とする保護層が形成された。符号5は勇気
宝石4を入れるためのカゴである。該保護層は、極めて
薄いため有機宝石本体の輝度・色調を損なうことはな
く、しかも耐酸性および表面硬度に優れたものであり、
この保護層に被覆された有機宝石(例えば、真珠あるい
は装飾珊瑚)はほぼ半永久的に装飾性を失わないものと
なる。
【0041】なお、電解水溶液としては、食塩水にリン
酸を加えたPH6.5程度のものを使用したが、他の電
解水溶液でもよい。また、電極2,3としては、電解中
に溶け出さない炭素棒が望ましいが、電解中に溶け出し
ても色の付かないものであれば他のものでもよい。
【0042】この方法の場合、陽極2の近傍に浸漬され
た有機宝石4(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面
が+に帯電するため、陰イオンであるフッ素イオンを効
率良く引き付けることとなり、弗化カルシウムの生成効
率が向上する。従って、前述した浸漬するだけの方法に
比べて短時間で保護層が形成できる。この場合、温度を
上げる必要もなく、撹拌も必要としない。
【0043】この場合にも、第1の実施の形態における
と同様の化学反応が生じて炭酸ナトリウム(Na2
3)が生成されるが、生成された炭酸ナトリウム(N
2CO3)のナトリウムイオンは陰極3側へ移動するた
め、陽極2近傍に浸漬された有機宝石4に影響を及ぼす
ことはない。
【0044】なお、弗化ナトリウム水溶液の濃度は、1
%〜4%の範囲とするのが望ましく、濃度が1%未満の
場合、十分な弗化カルシウムの生成を得ようとすると浸
漬時間を長くしなければならなくなり、濃度が4%を超
えた場合、浸漬時間を極めて短時間とすれば、所定の弗
化カルシウムの生成は可能であるが、反応中に水溶液の
アルカリ度が上昇し過ぎてPH調整が難しくなって製品
に肌荒れが生じるおそれがある。
【0045】上記実施の形態にかかる方法で処理した有
機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)と、処理前の
ものとの耐酸性を試験したところ、処理前のものでは、
真珠は50秒程度で、装飾珊瑚は20秒程度でともに気
泡が発生し始めるのに対して、処理後のものでは、3分
以上たってもほとんど変化が見られなかった。これは、
弗化カルシウム(CaF2)の生成により耐酸性が向上
したことを示す。なお、弗化カルシウム(CaF2)の
硬度が高いことは良く知られている事実であり、この点
においても装飾用として極めて有利なものとなる。
【0046】ちなみに、高知県立工業試験場において、
耐酸性試験を行った結果を表1に示す。この試験におい
ては、PH2.9の酢酸溶液中に試料A−1〜A−4
(耐酸処理しない珊瑚)と試料PS−1〜PS−4(耐
酸処理した珊瑚)とを浸漬し、日本電色工業製 MMP
−1D型 微小面積光沢計を用いて測定を行った。測定
面積は、0.6φmmであった。なお、本試験において
は、試料PS−1〜PS−4として、試料A−1〜A−
4より品質においてやや劣るものを使用した。
【0047】
【表1】
【0048】上記結果によれば、耐酸処理をしていない
珊瑚の場合、約10秒で酸に犯されて光沢を失ってしま
うが、耐酸処理をした本発明品の珊瑚の場合、約5〜6
分たっても十分光沢を保持していることがわかる。つま
り、本発明品の珊瑚は、耐酸処理しないものの約50倍
の耐酸強度を有していることになるのである。なお、真
珠は球面形状のため、本試験による光沢測定が不可能で
あったが、上記した珊瑚の結果から同様の効果を類推す
ることは容易である。
【0049】なお、本願発明は、真珠、装飾珊瑚の他に
も、象牙、鼈甲等の有機宝石にも適用可能なことは勿論
である。
【0050】
【発明の効果】本願発明によれば、カルシウムを主成分
とする有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表
面に、弗化カルシウムを主成分とする保護層を形成する
ことにより、耐酸性および表面硬度を大幅に向上させる
ようにしているので、半永久的に装飾性を保持すること
ができるという優れた効果がある。
【0051】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の製造
方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、弗化
ナトリウムを含む弱酸性水溶液からなる浸漬液中に浸漬
し、常温より高い所定温度に加温しつつ所定時間放置す
ることにより前記有機宝石の表面に弗化カルシウムを主
成分とする保護層を形成するようにしているので、極め
て簡単な製法で、耐酸性および表面硬度に優れた有機宝
石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)を製造することが
できる。
【0052】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、
弱酸性水溶液に所定時間浸漬した後、弗化ナトリウム水
溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温より高い所定温度
に加温しつつ所定時間放置することにより前記有機宝石
の表面に弗化カルシウムを主成分とする保護層を形成す
るようにしているので、極めて簡単な製法で、耐酸性お
よび表面硬度に優れた有機宝石(例えば、真珠あるいは
装飾珊瑚)を製造することができる。
【0053】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、カルシウムを主成分とする有機宝石を、
弗化ナトリウム水溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温
より高い所定温度に加温しつつ所定時間放置することに
より前記有機宝石の表面に弗化カルシウムを主成分とす
る保護層を形成するようにしているので、極めて簡単な
製法で、耐酸性および表面硬度に優れた有機宝石(例え
ば、真珠あるいは装飾珊瑚)を製造することができる。
【0054】本願発明の耐酸性を有する有機宝石の他の
製造方法では、弗化ナトリウムを含む電解水溶液を収容
してなる電解槽を用意し、該電解層における陽極近傍
に、カルシウムを主成分とする有機宝石(例えば、真珠
あるいは装飾珊瑚)を浸漬して電解を行うことにより該
有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)の表面に弗
化カルシウムを主成分とする保護層を形成するようにし
ているので、極めて簡単な製法で、耐酸性および表面硬
度に優れた有機宝石(例えば、真珠あるいは装飾珊瑚)
を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第5の実施の形態にかかる耐酸性を
有する有機宝石の製造方法において使用される電解槽の
概略図である。
【符号の説明】
1は電解槽、2は陽極、3は陰極、4は有機宝石。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシウムを主成分とする有機宝石の表
    面に、弗化カルシウムを主成分とする保護層を形成した
    ことを特徴とする耐酸性を有する有機宝石。
  2. 【請求項2】 前記有機宝石は真珠とされていることを
    特徴とする前記請求項1記載の耐酸性を有する有機宝
    石。
  3. 【請求項3】 前記有機宝石は装飾珊瑚とされているこ
    とを特徴とする前記請求項1記載の耐酸性を有する有機
    宝石。
  4. 【請求項4】 カルシウムを主成分とする有機宝石を、
    弗化ナトリウムを含む弱酸性水溶液からなる浸漬液中に
    浸漬し、常温より高い所定温度に加温しつつ所定時間放
    置することにより前記有機宝石の表面に弗化カルシウム
    を主成分とする保護層を形成することを特徴とする耐酸
    性を有する有機宝石の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記浸漬液に沸点の低いアルカリ溶液を
    添加して中和状態で使用することを特徴とする前記請求
    項4記載の耐酸性を有する有機宝石の製造方法。
  6. 【請求項6】 カルシウムを主成分とする有機宝石を、
    弱酸性水溶液に所定時間浸漬した後、弗化ナトリウム水
    溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温より高い所定温度
    に加温しつつ所定時間放置することにより前記有機宝石
    の表面に弗化カルシウムを主成分とする保護層を形成す
    ることを特徴とする耐酸性を有する有機宝石の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 カルシウムを主成分とする有機宝石を、
    弗化ナトリウム水溶液からなる浸漬液中に浸漬し、常温
    より高い所定温度に加温しつつ所定時間放置することに
    より前記有機宝石の表面に弗化カルシウムを主成分とす
    る保護層を形成することを特徴とする耐酸性を有する有
    機宝石の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記浸漬液の量を、浸漬する有機宝石の
    量の10倍程度としたことを特徴とする前記請求項7記
    載の耐酸性を有する有機宝石の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記有機宝石浸漬中には、前記浸漬液を
    撹拌することを特徴とする前記請求項4ないし請求項8
    のいずれか一項記載の耐酸性を有する有機宝石の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 弗化ナトリウムを含む電解水溶液を収
    容してなる電解槽を用意し、該電解層における陽極近傍
    に、カルシウムを主成分とする有機宝石を浸漬して電解
    を行うことにより該有機宝石の表面に弗化カルシウムを
    主成分とする保護層を形成することを特徴とする耐酸性
    を有する有機宝石の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記有機宝石は真珠とされていること
    を特徴とする前記請求項4ないし請求項10のいずれか
    一項記載の耐酸性を有する有機宝石の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記有機宝石は装飾珊瑚とされている
    ことを特徴とする前記請求項4ないし請求項10のいず
    れか一項記載の耐酸性を有する有機宝石の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100367890C (zh) * 2005-01-31 2008-02-13 童宗敏 一种珍珠首饰的制作工艺
WO2015104509A1 (fr) * 2014-01-10 2015-07-16 Universite Claude Bernard Lyon I Procédé de marquage de la nacre

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CN100367890C (zh) * 2005-01-31 2008-02-13 童宗敏 一种珍珠首饰的制作工艺
WO2015104509A1 (fr) * 2014-01-10 2015-07-16 Universite Claude Bernard Lyon I Procédé de marquage de la nacre
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