JPH09313067A - 養殖池の構造 - Google Patents

養殖池の構造

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JPH09313067A
JPH09313067A JP15339396A JP15339396A JPH09313067A JP H09313067 A JPH09313067 A JP H09313067A JP 15339396 A JP15339396 A JP 15339396A JP 15339396 A JP15339396 A JP 15339396A JP H09313067 A JPH09313067 A JP H09313067A
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water
pond
wall
aquaculture pond
water depth
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Shigeru Masuda
茂 増田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来の池では困難であった養水の水質維持管理
を容易に行うことができ、これに伴い飼育魚の生産密度
を向上させることができる養殖池の提供。 【解決手段】計画水深より高く造られた仕切りを内部に
設け、その仕切りと外壁との間の水路にその仕切りの周
りに水を循環させる構造を有する水棲生物養殖池であっ
て、水の循環方向にその水深が徐々に深くなっており、
水循環路の任意位置において最深部あるいは最深部付近
と浅部を段差を有することにより接続させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はウナギ、鮎、イワ
ナ、エビ、マグロなどの水棲生物の養殖池に関するもの
であり、さらに詳しくは循環水流により養水の浄化を図
れ、かつ、エネルギーを効率の向上によりコスト削減を
図れ、さらに生産性の向上を図れる養殖池の構造に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の鮎、イワナ、ウナギなどの養殖池
の構造は水深0.5から2メートル前後、面積40から
200坪前後の四辺形又は円形で外壁の周囲からほぼ中
央もしくは片辺に向かってなだらかな傾斜をつけ、その
くぼみに養水の付加の主因となる残餌、生物死体、糞、
シルトなど(以下ヘドロという。)を1又は2以上の水
車、ポンプなどの水流によって集め、系外に排出あるい
は沈殿濾過槽に導入する構造になっている。
【0003】池に設備された水車、ポンプなどの役割は
溶存酸素の富加、および上記水流の発生を目的とし、こ
れは池の形状、水深、面積、水車の大きさ、台数、くぼ
みの位置、溶存酸素、ヘドロの集積具合を試みながら設
置している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな構造である場合、魚および共存生物のエネルギー代
謝に必要な酸素量又は有機物の分解に伴い変化する酸素
要求量ともう一方のヘドロを集積せしめる水流との関係
につり合いをとることは困難であった。
【0005】例えば、酸素の供給を増加したい場合、水
車の台数を増やせば水流が速くなり、ヘドロは長時間水
中に浮遊し、集積するのに時間がかかる。さらに水中に
新たな水流の系が発生しヘドロの集積位置が散逸する。
一方、ヘドロの集積を達成するために水流を弱めれば酸
素の供給量が伴わない。この場合、酸素供給量を満たす
ためエアーレイションを行うが、水流が弱ければ気泡は
短時間で水上に散逸し、接触時間が短く効率が悪い。ま
たこの効率の向上を図るために水深の深い位置にエアレ
ーション装置を設置すればエアーの浮上に伴う水流の系
が発生し、ヘドロは散逸又はその装置の下部に堆積し、
くぼみにまで到達しない。さらに、水流を弱めれば目標
の位置に到達せずヘドロは沈殿する。このように従来の
池の構造では、一方の目的のために水車の調整を行うこ
とは他の一方の目的を犠牲にするものであり、養水の水
質の維持管理は困難であった。
【0006】これらの現象を考慮して、集積部であるく
ぼみの面積を大きく又はくぼみの傾斜を大きくすること
も可能であるが、排出部が深くなり系外の排出口までを
深く設計するか、ポンプでくみ出さざるを得ない。ま
た、水流が停滞する面積が大きければ魚の生育場所が少
なくなるため生産性向上に反する。一方、水流の停滞は
池を小さくすることで改善されるが、設備費が高くなり
好ましくない。
【0007】本発明はこれらの問題点を解消するため
に、水深、水流、水車の関係を明らかにすることにより
エネルギーを効率よく使い、養水の水質を良好に維持
し、かつ、コスト削減につながり生産性向上の可能な養
殖池の構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者は養水における池
の構造と設置されている装置から発生する水の流動とヘ
ドロの排出との因果関係を鋭意研究した結果、池内に仕
切りを設け水を循環させることで生産性が向上すること
をを発見し、また魚の棲息場所を明確にして水深との関
係を見いだすことで本発明をするに至った。請求項1の
発明は計画水深より高く造られた仕切りを内部に設け、
該仕切りと外壁内周との間にできた水路に沿って水を循
環させる構造を有する水棲生物養殖池であって、水の循
環方向にその水深が徐々に深くなっており、水循環路の
任意位置において最深部あるいは最深部付近と浅部が段
差を有することにより接続されている構造を有する養殖
池である。
【0009】池内に仕切りを設けることは水流の安定性
に好結果を及ぼし、ヘドロを1箇所に集めやすくするた
めである。すなわち、本発明は養水を循環させることに
よって、水の停滞を防止するとともにヘドロをある1箇
所に集積させることを目的としてされたものである。従
来の養殖池では水循環装置によって起こされた水流が四
方に分散し、安定した水流を維持することは困難であっ
た。つまり仕切りを設置することによりその仕切りと外
壁の水路の幅が狭められ、一方向に流れやすくなる。ま
た分散した水流は仕切りに阻まれて他の装置より発生し
た水流の阻害となることは少なくなる。したがって、外
壁内周に沿って水路を循環する水流(以下、循環水流と
いう。)を発生させるのに必要な装置は従来よりもは少
なくてすみ、ランニングコストも削減できる。
【0010】また、水深が水の循環方向に徐々に深くな
っているのは、ヘドロを1箇所に集積させるのに効果を
有する。すなわち、循環している水は水深に比例してそ
の水流が緩やかになる。そこで水の循環方向に徐々に水
深を深くすると、ある点においてヘドロが沈殿しやすく
なる。また、堆積物は深部に蓄積しやすいため、浅部と
深部は段差を有し接続させると、その段差の手前が最も
水流が遅くなり、ヘドロは最深部であるその場所に集積
する。さらにその段差をこえると水深が浅くなるため循
環水の水流は回復し、ヘドロは浅部には堆積しにくい。
【0011】このように本発明は浅部より深部へ移るほ
ど養水中に徐々に不純物が増加していくため、養水の汚
染状況を明確に把握できる。つまり、養殖業において水
質管理は重要なことであるが、水質分析の精度以前の問
題としてサンプリングの精度が問題となっていた。従来
の池では養水が十分に流動されていないため場所によっ
て相当不均一となっており、このような池のサンプリン
グ作業は繁雑になる。また分析された値もデータとして
信頼性に乏しい。本発明の構造を有する養殖池では、養
水が層流で循環することと、負荷の最大値が最深部であ
ることより、最深部と処理後の養水をサンプリングする
ことで分析値に信頼性が充たされ、作業も容易となる。
したがって、不純物などを最も多く含む最深部の養水が
水質条件を満たすように養水を調整すればよい。
【0012】池内に設ける仕切りは養水の循環を安定化
させるものであるから、水路を閉塞するような極端に厚
みのあるものでなければ、壁のようなものであってもよ
いし、壁によって仕切られてなる空間であってもよい。
ただし計画水深より高く造られていることが必要であ
る。請求項2の発明は計画水深より高く造られた壁を内
部に設置し、該壁と外壁内周との間にできた水路に沿っ
て水を循環させる構造を有する水棲生物養殖池であっ
て、水の循環方向にその水深が徐々に深くなっており、
水循環路の任意位置において最深部または最深部付近と
浅部が段差を有することにより接続されている構造を有
する養殖池である。また、請求項3の発明は計画水深よ
り高く造られた壁で囲まれた空間を有し、該空間を形成
する壁と外壁内周との間にできた水路に沿って水を循環
させる構造を有する水棲生物養殖池であって、水の循環
方向にその水深が徐々に深くなっており、水循環路の任
意位置において最深部または最深部付近と浅部が段差を
有することにより接続されている構造を有する養殖池で
ある。これらは池の形状によって流動的に使い分ければ
よく、特に限定されるものではない。
【0013】請求項3の発明のように池内に設置する仕
切りを壁で囲まれた空間とする場合はその空間の有効利
用のために沈殿濾過槽もしくは酸化槽として利用でき
る。請求項4の発明は請求項3記載の計画水深より高く
造られた壁で囲まれた空間に沈殿濾過槽または酸化槽を
設置した請求項3記載の養殖池である。すなわち池の最
深部に堆積したヘドロを濾過することにより、養水を再
利用することができ、そのために沈殿濾過槽を設置する
ことは従来から行われているが、大部分は別にこれを設
ける必要があった。本発明はその沈殿濾過槽を池内の空
間に設置することとしたものである。また前述の通り、
池内に仕切りを設けることで循環水流の安定性が向上す
るため水循環装置の設置台数が少なくてすむが、このこ
とは溶存酸素量の不足を招くことにもなり、この弊害を
防止するため別途酸化槽を設けて、これを富加すること
が必要となる場合がある。これらの沈殿濾過槽および酸
化槽は壁で囲まれた空間を壁で区切ることにより、双方
設けても問題はない。
【0014】前述のように壁で囲まれた空間を沈殿濾過
槽もしくは酸化槽として利用する場合、この槽に養水を
送る必要があるが、その排水口をヘドロが集積している
最深部に設け、池の地下を通して沈殿濾過槽などとつな
げることが養水の浄化に最も効果的である。また、水を
排出するための排出口は従来通り池の最深部に設けるこ
とが好ましい。請求項5の発明は池の最深部から系外又
は請求項3記載の計画水深より高く造られた壁で囲まれ
た空間からなる沈殿濾過槽又は酸化槽に導入することが
可能な設備を設置した請求項3乃至4記載の養殖池であ
る。なお、排水口は最深部に1つだけ設けることに限定
されるものではなく、複数設けても特に問題はない。
【0015】本発明の養殖池は水路の幅が狭いため、魚
を捕獲する際に一方向から追い込むことにより、従来の
池よりも簡単に希望出荷量だけ捕獲することができる。
このときに水路の少なくとも一箇所に魚より小さい穴を
有した堰を設けることが好ましい。また魚の大きさに合
わせた穴を有する堰を取り付けることで、一定以上の大
きさの魚だけをふるい分け選別して捕獲することもでき
る。さらに池を分割して幼魚と成魚を分けて養殖する場
合などにも効果的である。請求項6の発明は水循環路の
任意の位置に水路を分割遮断する脱着可能な堰を少なく
とも1箇所以上設置した請求項1乃至5記載の養殖池で
ある。
【0016】本発明にかかる構造を有する池は養水を循
環させることにより効果を奏するが、このためには動力
を用いて水を流動させる設備が必要である。従来の養殖
池は水車を池中に複数設置して養水の循環および溶存酸
素の富加を行っていたが、水面近くの水のみを循環させ
やすく、水車の真下は水が循環せず、ヘドロがたまりや
すくなる。本発明では養水の循環の安定性が向上したた
め、そのようなことが従来よりも少なく、その動力も少
なくてすむ。さらに、深い部分の養水を循環させてもヘ
ドロの拡散が起こることなく、逆に池の最深部一箇所に
堆積しやすくなり、より効果的である。したがって、本
発明の構造を有する養殖池においては、池中に動力源を
設置する必要はなく、例えば動力源を地中に設置し、池
の底から水を吹き出すようなものであっても、池の外部
に設置し、循環の流れに沿って水を吹き出すものであっ
ても、まったく差し支えなく利用することができる。請
求項7の発明は任意の位置に動力を用いて水を流動させ
る設備を少なくとも1箇所以上設置した請求項1乃至6
記載の養殖池である。これらは循環水流が養殖の対象と
なる魚の生活環境に近くなるように調節して用いること
が好ましい。例えば、鮎やイワナのように、急流にすむ
魚には、水流を強くして養殖し、ウナギのようによどん
だ水流に棲息する魚は緩やかな水流で養殖するなどのよ
うに、自由に調節可能である。ただしヘドロが1箇所に
堆積する程度の流速は必要である。
【0017】本発明は池内に仕切りなどを設けその周り
に養水を循環させることによりヘドロを一箇所に堆積さ
せることができる点に特徴を有する。したがって、養水
が循環しなければ効果を奏することはできないため、池
が大きく仕切りを設けても水が安定して循環しない場合
は効果を発揮することができないこととなる。かかる場
合は池内に仕切りなどを複数設けることにより安定した
循環水流を得ることができ、この問題を改善することが
できる。請求項8の発明は請求項1記載の計画水深より
高く造られた仕切り又は請求項2記載の計画水深より高
く造られた壁または請求項3記載の計画水深より高く造
られた壁で囲まれた空間を池内に2箇所以上設置し、そ
れぞれこれらの周りに水が循環するような構造を持つ水
棲生物養殖池であって、水の循環方向にその水深が徐々
に深くなっており、水循環路の任意位置において最深部
または最深部付近と浅部が段差を有することにより接続
されている構造を有する請求項1乃至7記載の養殖池で
ある。
【0018】請求項1乃至8記載の発明は単なる養殖池
のみにとどまらず、各種水槽あるいは港湾及び湖などの
自然水圏にも簡単な処置を施すだけで上記の様々な効果
を期待できる。また養水の循環装置は特に限定されるも
のではない。よって、あらゆる養殖用の人為的水圏にお
いても広く適用することができる。さらに、本発明の構
造を有する水圏はヘドロの除去および水質の維持が容易
に行えるため、水質浄化作用に優れており、自然的水圏
に本構造を持たせた人為的水圏は、自然浄化力以上の水
質浄化作用を有することとなる。請求項9の発明は請求
項1乃至8記載の養殖池の構造を人為的に備えた人為的
水圏の構造である。
【0019】
【発明の実施の態様】続いて図1により長方形の池を用
いて本発明の構造を有する池の説明を行う。また図2
は、図1中のaとa’間の断面図であり、最深部と最浅
部を接続する段差を表したものである。
【0020】池の構造は面積、形状、水深など様々であ
るが、従来のものでは経験的に四角池より円形、8角形
の池の方が効率がよいことが知られている。本発明にお
ける構造を有する池は特に形に限定されるものではな
く、養水を層流で循環させるため、長方形、円形、など
のほか、例えば三角形や四辺形のものであっても効果を
奏することができ、有効な土地活用を可能とする。
【0021】長方形の池では幅に対して長さが長すぎて
も短すぎても養水の循環の効率は減少する。幅と長さは
1:3から1:5程度にするのがよいとされている。し
たがって幅の大きい池の場合は仕切りの幅を厚くする
か、壁で囲まれた空間を設置するなどして調節すべきで
ある。
【0022】池の水深の勾配については特に限定される
ものではなく、池の大きさに合わせて調整することが好
ましい。例えば大きい池の場合は、周回長さが長くなる
ため、最浅部と最深部の段差が大きくなりがちであるの
で、勾配を緩く設計、あるいは水路の途中にヘドロの集
積部である段差を複数設けるべきである。また循環方向
に水深が深くなるのであれば、その形は特に限定される
ものではない。例えば、図3のように段差近くで急に勾
配を大きくしたりなどしても何ら問題はなく、本発明の
効果は発揮される。また、図4のように段差のすぐ手前
を最深部とする必要はなく、最深部が段差の手前である
なら、最深部から段差までに水深が浅くなっていても問
題はない。また段差は図のように外壁と垂直な一辺から
なるものである必要はなく、例えば外壁の角としきりと
の間で斜めに段差を設置してもよい。また段差は直線的
なものである必要もなく排水口を中心にして曲線的に設
置しても問題はないまた深部と浅部の段差の形状は特に
垂直に設置されているものに限定されるのではなく、段
差付近で余計な水流を発生させるものでなければ図5の
ように凹凸を付すなどしても何ら問題はない。なお、浅
い水深を好む魚を養殖する場合などは、一定の水深以上
の水路には網などを設置し、底に堆積するヘドロと魚を
完全に分離させた状態で養殖することも可能である。
【0023】養水が循環する水路には外壁方向から仕切
りの方向へ砕石などにより、緩やかな下り勾配を持たせ
ることが有効であることが経験上わかっている。
【0024】池の角などに設置している砕石は養水の循
環を効率よく行うために設置するものである。これを完
全にコンクリートなどで固めてしまうと砕石の隙間など
に共存生物が繁殖できないため、砕石である方が養殖の
効率が向上し好ましい。また図に記載されている箇所や
大きさは養水の循環を効率よく行うものであるならば、
特に図1に記載のものに限定されるものではない。
【0025】図中では池内に設置する仕切りを壁で囲ま
れた空間とし、その空間の有効利用のために沈殿濾過槽
および酸化槽として利用した。排水口と沈殿濾過槽を池
の地下を通る水路で接続し、排水口からヘドロが水とと
もに沈殿濾過槽に移動するようにした。ここで大きなヘ
ドロが流れ込み水路を詰まらせることがないように排水
口には多孔板を設けた。また排水口は系外への排水と沈
殿濾過槽への排水とを切り替えることができるようにし
ておく。また沈殿濾過槽と酸化槽は計画水深より若干低
い壁で区切られており、ヘドロが沈殿分離された養水が
酸化槽中に移動する。酸化槽には養水中の溶存酸素を高
める装置を設置し、養水の溶存酸素量を増加させてい
る。この溶存酸素を増加させるための装置は特に限定さ
れるものではなく、水車、ブロワー、水中エアレータ
ー、バーチカルポンプ、気液拡散混合装置など各種装置
を使用することができるが、多量の酸素を送り込むこと
を考慮するとブロワーまたは気液拡散混合装置が好適で
ある。また酸化槽中での滞留時間を長くするために酸化
槽中に別途仕切りなどを設け、溶存酸素量の一層の増加
を図ることも可能である。また酸化槽で溶存酸素量を富
加された水はポンプで池中に送り込まれ再利用される。
その後、ポンプで送り込まれ計画水深よりも低くなった
酸化槽中の養水は沈殿濾過槽より送り込まれた水で補充
され、またこれに伴い、沈殿濾過槽の水深が低くなれば
排水溝から自動的に計画水深になるまで沈殿濾過槽から
養水が送り込まれる。このように沈殿濾過槽及び酸化槽
などを設置すると沈殿濾過槽にはポンプを接続する必要
がない。したがって、ヘドロがポンプで粉砕されること
なく大きい状態を維持したまま沈殿濾過槽に移動し、沈
殿しやすい状態を保つことができる。また底は酸化槽方
向に上り勾配を有しており、これにより沈殿の効率を上
げることができる。
【0026】養水を循環させる装置としては限定される
ものではないが、一定方向への養水の循環および水中へ
の酸素の溶存を考慮すると水車もしくは水中エアレータ
ーが好適に使用できる。設置台数は特に限定はなく、所
望の水流を調整することを基準として台数を決定すれば
よい。なお、台数の減少に伴う溶存酸素量の減少は前述
の酸化槽の設置により十分解消でき、不利益となるもの
ではない。設置位置は特に限定するものではないが、段
差の手前でヘドロが沈殿することを考慮すると、この付
近での水流は緩やかである必要があり、図1中に示すよ
うに段差から離して設置することが好ましい。
【0027】本発明の構造を有する養殖池は計画水深を
変化させることによっても水流を調節することができ
る。すなわち、計画水深が低い場合は段差の手まえと直
後での体積変化がより大きくなり、水流の回復が大きく
なる。一方、計画水深が高い場合は段差付近での水流の
回復は小さくなるため、循環水流は緩やかなものとな
る。
【0028】図中の堰は前述の通り、魚の捕獲、養殖池
の分割において効果を発揮する。この設置には、池外壁
と仕切りにコの字型の取り付け具を設置し、これに堰を
挟み込むように取り付ければよい。また、堰はあらゆる
大きさの穴を有するものをそれぞれ用意し、魚の大きさ
に合わせてふるいわけることができるようにしておく方
が効果的である。
【0029】池が大きく循環水流が発生しにくいような
場合には、仕切りを複数設けることにより循環水流が発
生しやすくなる。このような場合は図6に示すように最
深部と最浅部を接続する段差を設けることが好ましい。
なお図中に記載の黒い矢印は養水の流れを示す。
【0030】本発明に基づく養殖池は従来の池内に仕切
りを設け、採石などで水深を調節し、段差を設けること
により簡単に設計することができる。また前述のように
池の形や大きさに影響を受けることはない。さらに養水
循環装置は特に制限されることはなく、従来の水車など
をそのまま使用できる。
【0031】このように本構造を有する養殖池は従来の
養殖池に簡単な設計変更を施すことにより池の大きさ、
形状などを問わず簡便に実現できる。このことは単なる
池だけにとらわれることなく例えば、各種水槽または港
湾、湖などの自然物に対しても適応可能であり、上記の
効果を期待できることを意味する。
【0032】本発明の構造を有する養殖池は養水の制御
が容易であり、またヘドロの集積が確実に行われるた
め、簡便に養殖を行うことができ、また養殖魚の生育上
好ましい環境を作り出すことができるため、魚の死滅が
少なく、生産効率もよいものとなる。また、溶存酸素の
制御も容易であり、溶存酸素が不足するおそれがなくな
ったため、面積当たりの養殖量を増大させることがで
き、生産性の向上につながる。さらに、常時好ましい流
れの速さの循環水流中で生育するため、養殖魚は必要最
小限の運動を行うこととなり、従来の養殖池で養殖され
た魚より品質のよい養殖魚が生産される。
【0033】一方、本構造は養殖用水圏のみにとらわれ
ることなく、広く自然的水圏においての水質浄化システ
ムとしても利用することができる。例えば、水質汚染の
すすんだ沼などの浄化処理に本構造を持たせることによ
り、優れた浄化力を該水圏に持たせることができ自然浄
化力以上の効果が期待できることとなる。
【0034】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明する。
なお本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0035】(実施例1)図7は発明者が所有している
主にウナギを養殖するために用いていた従来の養殖池で
ある。この養殖池は中央部に排水口を有し、また養水循
環のために2馬力の水車を4台使用していた。
【0036】図7に示した池を用い、養水の流れを調査
し、対策を試みた。前提として、排水口を外壁近くの角
部に移動させた。図7において用いられている水車1を
水深60cm(水車の効力が及ぶとされている水深)の
ところに設置し、起動させたところ4m前後の幅を持ち
ながら7.2mのところで失速した。水の流れ方向の壁
に到達しないで失速したため水車2を起動させて水の流
れを観察したところ、5mの幅を持ちながら壁に到達し
た。
【0037】しかし、所々に循環流や短絡流がみられ、
全体として層流ではなかったため、この養殖池に仕切り
を設け、水深を調節した。最深部の水深は従来のように
1.4mそのままにして試みた。水深は水車1設置部か
ら勾配をなしながら最深部に至る。図8は設計変更後の
養殖池の概略図である。仕切り設置後は循環流も短絡流
もなく、角部の曲線に沿って最深部に到達して失速し
た。水車2の設置部の水深は50cmであり、流れ幅が
10mと広いため、水は失速状態に近い速さで水車2の
設置部へ至った。このことを考慮して図のように最深部
と最浅部を段差を設けることにより接続し、急に水深を
変化させた。このことにより流れ方向に向かって手前が
最深部、段差の後ろが最浅部となる。最浅部の水深は4
0cmとした。
【0038】計画水深を最浅部からそれぞれ5,10,
20cmとなるように変化させることによって流速に与
える影響を検討したところ、水深が浅いほど速くなり、
深いほど遅くなった。これらの水深はうなぎが主に棲息
するといわれている水深に該当し、またこの水深におけ
る循環水流の流れは非常に緩やかであることが好まし
い。 これらの水深をとるように計画水深を設定した場
合は最浅部における流速がこの程度のものとなった。
【0039】再度最浅部における計画水深を40cmに
設定し、水車2の効力を強めてみた結果、前述のように
最浅部の水深が5〜20cm程度に設定したときと同程
度の水の流れが発生した。このとき水車2から水車1ま
での間の水の流れは循環流や短絡流が発生しているが、
水車1から最深部に至るまでは養水は層流で移動し、最
深部で失速状態にあった。段差を通過した後は水車2の
設置部に至るまで広い面積を緩やかに流れており、その
流れは層流であった。このように機動部より段差を通過
して周回して流れているような流れは理想的流れの円形
池で発生するものであり、周回する一定方向の水の流れ
で魚の回遊は自然環境の泳遊空間が創出されたことにな
る。さらに広い棲息域も創出されたことになる。
【0040】上記の水の流れを確認後、池の養水を排出
し、池底のヘドロの集積状態を調査したところ最深部に
集積していることが確認できた。また上述のように従来
では4台の水車を設置しても不可能であったが、仕切り
を設け、水深に段差をつけることで2台の水車で十分目
的を果たすことが可能となった。また魚に理想的な遊泳
環境の水流が広い面積で創出されたことは、生産性の向
上に結びつく。
【0041】(実施例2)実施例1に用いた池を利用し
て、ウナギの養殖について検討した。図7に示した従来
の池を利用した飼育は飼育密度35000本(1.75
t)の種苗鰻を3ヶ月前後飼育して7tを目標にして生
産していた。実施例1の結果をふまえて養水に及ぼす最
大の付加であるヘドロを容易に系外に排出できることが
可能な上に、理想的水の流れが広い面積で達成できたこ
とを考慮して、60000本の種苗鰻を用いて実施し
た。
【0042】排出口より排水を沈殿濾過層に導入して前
処理でヘドロを除去し、後処理で溶存酸素量を富加し池
に戻るように設備して飼育を開始した。最深部の負荷が
最大となるので最深部の溶存酸素量を70%を維持され
るように調整することとした。飼育開始より3日間ヘド
ロを沈殿層に集積したままで溶存酸素の調査を続けた。
この間、溶存酸素量は68〜73%の間で推移し、飼育
開始6日目で60%まで低下したので、後処理層で溶存
酸素を100%処理し、1時間運転させたところ75%
まで回復した。飼育開始にあたってヘドロをあえて系外
に排出することなく養水に負荷を与えて開始したが8日
以後は日常管理としてヘドロを系外に排出し、最深部で
溶存酸素を測定し、70%を目標として維持管理をする
こととした。以後はヘドロを系外に排出しながら管理し
たことにより、養水に与える負荷が軽減されたので目標
値である70〜75%を維持することができた。また溶
存酸素の高濃度維持が可能となったため種苗鰻も死滅す
ることなく、従来の2倍以上の密度で養殖することが可
能となった。
【0043】さらに従来の出荷作業では池全体の養水と
ともに魚を排出したり池全面を網引き作業をして対応し
ていたが、本発明によれば最浅部と水車2の手前に水路
を分割遮断する脱着可能な堰を設けることにより希望出
荷量だけを取り上げることが容易となった。
【0044】
【発明の効果】本発明の養殖池の構造は従来の目的とす
る飼育魚の棲息環境を無視して設計、設備された池の固
定概念にとらわれることなく、具体的に水の流れと棲息
環境を観察し、開発されたものであり、養水の維持管理
を容易にかつ的確にすることができ、このことによる無
駄なエネルギーをかけることなくコスト削減が可能とな
る。さらに高い密度での生産が可能となり、きわめて経
済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 池内に仕切りを設け、水深を調節した池の構
造を示す正面図である。
【図2】 最深部と最浅部を接続する段差の断面図であ
る。
【図3】 最深部と最浅部を接続する段差の一例を示し
た断面図である。
【図4】 最浅部と最深部付近を段差を持って接続した
場合を示す断面図である。
【図5】 最深部と最浅部を接続する段差の一例を示し
た断面図である。
【図6】 池内に仕切りを複数設けた場合の本発明の実
施例を示した正面図である。
【図7】 鰻養殖用に用いていた従来の構造を有する養
殖池の正面図である。
【図8】 図7の池に壁によって仕切られた空間を設置
し、水深を調節した池の構造である本発明の一実施例を
示す正面図である。
【符号の説明】
1.仕切り 2.段差 3.最浅部 4.最深部 5.最深部付近 6.排水口 7.採石 8.水循環装置 9.ポンプ 10.堰 11.沈殿濾過槽 12.酸化槽 13.鰻取り水門 14.水車 15.水車1 16.水車2 17.外壁

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】計画水深より高く造られた仕切りを内部に
    設け、該仕切りと外壁内周との間にできた水路に沿って
    水を循環させる構造を有する水棲生物養殖池であって、
    水の循環方向にその水深が徐々に深くなっており、水循
    環路の任意位置において最深部あるいは最深部付近と浅
    部が段差を有することにより接続されている構造を有す
    る養殖池。
  2. 【請求項2】計画水深より高く造られた壁を内部に設置
    し、該壁と外壁内周との間にできた水路に沿って水を循
    環させる構造を有する水棲生物養殖池であって、水の循
    環方向にその水深が徐々に深くなっており、水循環路の
    任意位置において最深部または最深部付近と浅部が段差
    を有することにより接続されている構造を有する養殖
    池。
  3. 【請求項3】計画水深より高く造られた壁で囲まれた空
    間を有し、該空間を形成する壁と外壁内周との間にでき
    た水路に沿って水を循環させる構造を有する水棲生物養
    殖池であって、水の循環方向にその水深が徐々に深くな
    っており、水循環路の任意位置において最深部または最
    深部付近と浅部が段差を有することにより接続されてい
    る構造を有する養殖池。
  4. 【請求項4】請求項3記載の計画水深より高く造られた
    壁で囲まれた空間に沈殿濾過槽または酸化槽を設置した
    請求項3記載の養殖池。
  5. 【請求項5】池の最深部から系外又は請求項3記載の計
    画水深より高く造られた壁で囲まれた空間からなる沈殿
    濾過槽又は酸化槽に導入することが可能な設備を設置し
    た請求項3乃至4記載の養殖池。
  6. 【請求項6】水循環路の任意の位置に水路を分割遮断す
    る脱着可能な堰を少なくとも1箇所以上設置した請求項
    1乃至5記載の養殖池。
  7. 【請求項7】任意の位置に動力を用いて水を流動させる
    設備を少なくとも1箇所以上設置した請求項1乃至6記
    載の養殖池。
  8. 【請求項8】請求項1記載の計画水深より高く造られた
    仕切り又は請求項2記載の計画水深より高く造られた壁
    または請求項3記載の計画水深より高く造られた壁で囲
    まれた空間を池内に2箇所以上設置し、それぞれこれら
    の周りに水が循環するような構造を持つ水棲生物養殖池
    であって、水の循環方向にその水深が徐々に深くなって
    おり、水循環路の任意位置において最深部または最深部
    付近と浅部が段差を有することにより接続されている構
    造を有する請求項1乃至7記載の養殖池。
  9. 【請求項9】請求項1乃至8記載の養殖池の構造を人為
    的に備えた人為的水圏の構造。
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