JPH09309218A - サーマルヘッド - Google Patents

サーマルヘッド

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JPH09309218A
JPH09309218A JP15177296A JP15177296A JPH09309218A JP H09309218 A JPH09309218 A JP H09309218A JP 15177296 A JP15177296 A JP 15177296A JP 15177296 A JP15177296 A JP 15177296A JP H09309218 A JPH09309218 A JP H09309218A
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layer
buffer layer
thermal head
protective film
insulating ceramic
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JP15177296A
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Kazuo Tozawa
和夫 戸沢
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】蓄熱層にポリイミド樹脂を用いたサーマルヘッ
ドにおいて、バッファー層を緻密に低応力に厚く形成で
き、高効率(低消費電力)で印画中の異物粒子巻き込み
に耐え、耐湿性等の面でも優れた信頼性の高いものを提
供する。 【解決手段】高熱伝導性絶縁基板1上にポリイミド樹脂
でなる蓄熱層2を形成し、蓄熱層2と発熱抵抗体層3と
の間に、バッファー層4を設けた。バッファー層4は、
Si、Al、Mg、Ti、Sr、Y、Mo、Zr、H
f、TaまたはWの少なくとも一種と、NまたはOの少
なくとも一種と、LaまたはCeの少なくとも一種とか
らなる絶縁性セラミック層でなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱記録あるいは
感熱転写記録等に使用するサーマルヘッドに係り、印画
効率向上(低消費電力化)のためにポリイミド樹脂を蓄
熱層としたサーマルヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】サーマルヘッドはファクシミリやビデオ
プリンター等各種印画記録装置に使用され、これらの装
置の小型化、低電力化、低価格化の要求に伴い、サーマ
ルヘッドも小型化、低電力化、低価格化が要求されてい
る。
【0003】これらの要求に応えるため、印画効率の向
上(低電力化)を目的として、サーマルヘッドの基板と
発熱抵抗体との間に介在させる蓄熱層を、熱伝導率が約
0.7w/m・Kのグレーズに代え、低い熱伝導率(約
0.15w/m・K)のポリイミド樹脂等を用いること
が提案されている(特開昭52−100245号公
報)。
【0004】また、このようなポリイミド樹脂を蓄熱層
とするサーマルヘッドとして、例えば特開昭61−12
357号公報には、アルミナ等の絶縁性材料からなる基
板の表面にポリイミド樹脂でなる蓄熱層を形成し、その
上に、蓄熱層から発熱抵抗体への不純物拡散の防止と、
蓄熱層と発熱抵抗体との間で発生する熱応力の低減を目
的として、1μm〜5μmの厚みを有するSiO2、S
34、SiC等の絶縁性セラミック層(以下バッファ
ー層と呼ぶ)を形成し、その上に発熱抵抗体を形成し、
その上に駆動回路に接続されるリード電極と各発熱体に
共通に接続されるコモン電極を形成して、これらを耐熱
性、耐摩耗性の保護膜で覆ったものが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ポリイミド樹脂はその
ビッカース硬度が十数以下(測定荷重1g)であり、外
力により容易に変形する。この変形を防止するために
は、ポリイミド樹脂層でなる蓄熱層の上に前記特開昭6
1−12357号公報に開示されているようなバッファ
ー層および耐摩耗性保護膜よりなる機械的保護膜を厚く
形成することが有効である。このように機械的保護膜を
厚く形成することにより、印画中に異物粒子が巻き込ま
れた場合において、バッファー層や耐摩耗性保護膜の変
形、および発熱抵抗体のクラック発生や抵抗値増加を防
止する試みがなされている。
【0006】前記バッファー層をスパッタリング法を用
いて成膜する場合、バッファー層とポリイミド樹脂でな
る蓄熱層との間の密着性向上およびバッファー層の機械
的強度増加のために、バイアス・スパッタリング法を用
いてバッファー層を形成していた。このように、バイア
ス・スパッタリング法を用いてバッファー層を形成する
理由は、スパッタリング時にバイアス電圧がないと、膜
が柱状に成長して膜面と垂直方向に境界部が発生し、外
力が加わったときに割れやすくなり、またその境界部を
通じてポリイミド樹脂が吸湿し、密着力が低下するから
である。
【0007】しかしながら、バッファー層をバイアス・
スパッタリング法により形成する場合、スパッタリング
ガスとして用いられる多数のAr原子がバッファー層に
取り込まれ、バッファー層の膜応力が増加し、印画中の
異物粒子の巻き込みに耐えられるような十分な硬度を有
する膜厚に形成することが困難であった。
【0008】本発明は、上記した問題点に鑑み、バッフ
ァー層を緻密に低応力に厚く形成でき、高効率(低消費
電力)で印画中の異物粒子巻き込みに耐え、耐湿性等の
面でも優れた信頼性の高いサーマルヘッドを提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明は、高熱伝導性絶縁基板上に蓄熱層を介して
複数の発熱抵抗体を形成し、該発熱抵抗体に通電するた
めの電極を設け、その上に耐摩耗性保護膜を形成したサ
ーマルヘッドにおいて、前記蓄熱層がポリイミド樹脂で
なり、該蓄熱層と前記発熱抵抗体層との間に、Si、A
l、Mg、Ti、Sr、Y、Mo、Zr、Hf、Taま
たはWの少なくとも一種と、NまたはOの少なくとも一
種と、LaまたはCeの少なくとも一種とからなるバッ
ファー層を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】また本発明は、前記バッファー層上に、S
iと、NまたはOの少なくとも一種よりなる絶縁性セラ
ミック層を設けたことを特徴とする(請求項2)。
【0011】また、本発明は、前記発熱抵抗体および前
記電極と前記耐摩耗性保護膜との間に、前記バッファー
層と同じ材質の絶縁性セラミック層を設けたことを特徴
とする(請求項3)。
【0012】また、本発明は、バッファー層が、好まし
くは、SiLaxyzまたはSiCexyz(ただ
し、x=0.09〜1.43、y=0.30〜3.2
9、z=0.36〜1.27)で表されるものでなるこ
とを特徴とする(請求項4)。
【0013】また、本発明は、前記バッファー層等の絶
縁性セラミック層をバイアス・スパッタリング法で形成
したことを特徴とする(請求項5)。
【0014】また、本発明は、高熱伝導性絶縁基板上に
蓄熱層を介して複数の発熱抵抗体を形成し、該発熱抵抗
体に通電するための電極を設け、その上に耐摩耗性保護
膜を形成したサーマルヘッドにおいて、前記蓄熱層がポ
リイミド樹脂でなり、前記発熱抵抗体上における前記耐
摩耗性保護膜の測定荷重100gでのビッカース硬度が
1300以上、2700以下であることを特徴とする
(請求項6)。
【0015】
【作用】本発明においては、MLaxyzまたはおよ
びMCexyz(ただしMはSi、Al、Mg、T
i、Sr、Y、Mo、Zr、Hf、TaまたはWの少な
くとも一種)によりバッファー層を形成するものであ
り、LaまたはおよびCeの混入により、ポリイミド樹
脂とバッファー層との密着性が向上すると共に、緻密性
および耐湿性が向上する。またバッファー層の膜応力が
低下し、バッファー層を異物粒子の巻き込みに耐えられ
るような十分な強度の膜厚に形成することが可能とな
る。
【0016】
【発明の実施の態様】
(実施例1)図1(A)は本発明によるサーマルヘッド
の一実施例を示す断面図である。図1(A)において、
1はアルミナ等の高熱伝導性絶縁基板、2は該基板1上
に形成されたポリイミド樹脂でなる蓄熱層、3は発熱抵
抗体層、4は該発熱抵抗体層3と蓄熱層2との間に設け
たバッファー層、5a、5bは発熱抵抗体層3上に形成
したリード電極およびコモン電極、6はこれらの電極5
a、5bおよび発熱抵抗体層3上を覆うように形成され
た耐摩耗性保護膜である。なお、該耐摩耗性保護膜6
は、リード電極5a、コモン電極5bの外部回路との接
続部(図示せず)は露出させる。発熱体駆動用IC(図
示せず)は、基板1あるいは該基板1とは別の基板に搭
載し、そのICとリード電極5aの露出部とをワイヤー
ボンディング等により接続し、その他必要とされる部品
を実装してサーマルヘッドを構成する。
【0017】このサーマルヘッドを次のように製造し
た。ポリイミド樹脂前駆体を、溶媒としてのN−メチル
−2−ピロリドンまたはDMAc(ジメチルアセトアミ
ド)中に30wt%程度溶解させ、粘度が10,000
cps程度の溶液とし、これをアルミナ基板1上にディ
スペンサを用いて線状に塗布し、100℃で30分、2
40℃で30分、400℃で60分のキュアを順次行っ
た。この工程で底部幅が約0.8mm、最大膜厚が30
μmで、かつ断面形状が円弧形のポリイミド樹脂でなる
蓄熱層2を形成する。
【0018】次に、La23、Si34、SiO2を2
0:30:40のモル%の割合で粉砕混合し、焼結して
作製したターゲットを用い、図2(B)に示すバイアス
・スパッタリング装置を用いてバッファー層4の形成を
行った。図2(B)において、20は真空チャンバーで
あり、該真空チャンバー20内に、ターゲット11と、
基板ホルダー兼バイアス用電極18と、該バイアス用電
極18に保持される処理基板19とが収容される。真空
チャンバー20内には、スパッタリングガス導入口16
からスパッタリングガス(Ar)が導入され、スパッタ
リングガス排気口17から排出される。前記ターゲット
11と接地電位部との間には、スパッタリング高周波電
源用マッチングボックス12とスパッタリング用高周波
電源13とが設置される。また、前記バイアス用電極1
8と接地電位部との間には、バイアス高周波電源用マッ
チングボックス14とバイアス用高周波電源15が設置
される。
【0019】この図2(B)に示されるようなバイアス
・スパッタリング装置を用い、ターゲット11と処理基
板19との間に電源14、15より高周波電力を印加し
て基板19上の直流電圧成分が接地電位に対して−70
Vとなるように調整しながらスパッタリングしてLa−
Si−O−Nよりなるバッファー層4を10μmの厚み
に成膜した。
【0020】その後、発熱抵抗体層3として、Ta−S
iO2等をスパッタリング法で成膜した。文献(C.
Y.Ting V.J.Vivalda and H.
G.Schaefer J.Vac.Sci.Tech
nol.,15(3),1978)において述べられて
いるように、バイアス・スパッタリング法を用いればバ
ッファー層を厚く成膜しても、膜表面を平滑に保つこと
ができるので、その上に成膜する発熱抵抗体層3も通常
の平滑なグレーズ上に成膜するのと同等に行うことがで
きる。
【0021】次に、電極層として、Alを蒸着法(スパ
ッタリング法でもよい)により成膜し、フォトリソグラ
フィにより発熱抵抗体7およびリード電極5a、コモン
電極5bを形成し、耐摩耗性保護膜6としてSr−Si
−O−Nをスパッタリング法により8μmの厚みに成膜
し、その後リード電極5a、コモン電極5bの外部回路
との接続部を露出させた。その後、リード電極5aとI
C(図示せず)とのワイヤボンディング等による接続、
その他必要とされる部品を実装してサーマルヘッドを完
成した。
【0022】従来のSiO2等によりバッファー層4を
構成した場合、耐摩耗性保護膜6を形成した時点で基板
1の反りが6mm以上となり、基板搬送中に基板キャリ
アに収容されず、割れる等の不具合を生じたが、本発明
の材質のバッファー層の場合、基板1の反りは3mm以
下で、基板搬送等の製造上の不具合点はなかった。
【0023】前記バッファー層4としては、上述のLa
−Si−O−Nの他、La−Si−O、La−Sr−S
i−O−N、La−Si−Al−O−N、La−Ta−
O、Ce−Mg−Si−O−N、Ce−Ti−Si−O
−Nの組成のものを形成して応力を測定すると共に、比
較例(従来例)として、Si−O、Si−O−N、Sr
−Si−O−N、Si−Al−O−N、Mg−Si−O
−N、Ta−O、Ti−Si−O−Nでなるバッファー
層4を形成して応力測定を行った。その結果を表1に示
す。表1に示されるように、従来の絶縁性セラミック層
はバイアス・スパッタリング法による成膜時に応力増加
を生じるが、本発明による場合、すなわちLaあるいは
Ceを含有する場合には、バイアス・スパッタリング法
による場合であっても低応力であることが示される。本
例においては、Si、Al、Mg、Ti、Sr、Taの
うちの一種または2種と、LaまたはCeの一種と、N
またはOの少なくとも一種とからなる組成物によりバッ
ファー層4を形成した例を示したが、Si、Al、M
g、Ti、Sr、Ta以外に、Y、Mo、Zr、Hfま
たはWの少なくとも一種を、Si、Al、Mg、Ti、
Sr、Taの一種以上と複合したあるいは複合しない組
成としてもよく、また、これらとLaとCeの一方のみ
を複合させるのではなく、LaとCeの双方を複合させ
てもよい。
【0024】
【表1】
【0025】図2(C)は本発明によりバッファー層4
を形成する場合におけるターゲット作製時のLa23
Si34、SiO2の混合割合の好ましい範囲(斜線部
で示す範囲が好ましい範囲である)を示す図である。図
2(C)に示すように、本発明によりバッファー層4を
形成する場合の好ましい混合割合は、La23が10m
ol%〜50mol%、Si34が10mol%〜70
mol%、SiO2が10mol%〜80mol%であ
る。この範囲外ではバイアス無しでスパッタリング法で
成膜した膜応力が3×109dyn/cm2以上になった
り、また、十分な膜硬度(ビッカース硬度800以上)
が得られない等の不具合がある。成膜されたバッファー
層4の組成はターゲット11の組成とほぼ同じであるか
ら、バッファー層4の組成をSiLaxyzと表示し
た場合、x=0.09〜1.43、y=0.30〜3.
29、z=0.36〜1.27であればよい。
【0026】このようにして製造されるサーマルヘッド
のバッファー層4および耐摩耗性保護膜6の合計膜厚と
発熱抵抗体7上の耐摩耗性保護膜6の測定荷重100g
におけるビッカース硬度との関係を調べた結果を表2に
示す。
【0027】
【表2】 表2から分かるように、耐摩耗性保護膜6の膜厚が4μ
m以上でかつバッファー層4と耐摩耗性保護膜6の合計
膜厚が12μm以上であればビッカース硬度が1000
μm以上となった。
【0028】これらの種々の膜厚のサーマルヘッドをプ
リンタに組み込んで、印画中の異物の巻き込み時に発生
する発熱抵抗体7(発熱抵抗体層3における電極5a、
5b間の間の部分をさす)上のクラックおよび抵抗値の
増加の関係を調べた結果について述べる。実際には、プ
リンタで印画するだけでは異物の巻き込みは希にしか起
こらず、また、どのような異物が巻き込まれたかは特定
できない。そこで、その代替試験として、感熱紙等の印
画メディア上に市販の砥粒(純正化学(株)製硅砂80
メッシュ)を粘着剤で固定し、そのメディアを用いて印
画し砥粒を強制的にサーマルヘッド上を通過させ、砥粒
の通過前後での印画、抵抗値および顕微鏡観察による発
熱抵抗体7上の変化を調べるという試験(以下砥粒試験
と称す)を行った。この砥粒試験の結果を表3に示す。
【0029】
【表3】 この砥粒試験から、バッファー層4と耐摩耗性保護膜6
を発熱抵抗体7上の耐摩耗性保護膜6の測定荷重100
gにおけるビッカース硬度が1300以上好ましくは1
400以上に構成することによって、硅砂の砥粒試験に
耐えうることが判明した。硅砂のビッカース硬度は約8
00であるので、この砥粒試験に耐えることができれ
ば、実際に使用中のほとんどの異物巻き込みによるサー
マルヘッドのクラック発生や、抵抗値変化を防止するこ
とができる。さらに硬度の大きい異物の巻き込みに耐え
られるようにするには、耐摩耗性保護膜6のビッカース
硬度を上げればよい。
【0030】この耐摩耗性保護膜6のビッカース硬度を
上げるには、材質を変更する他に、バイアス・スパッタ
リング法により硬度を上げる方法がある。しかしなが
ら、バイアス・スパッタリング法を用いて硬度を上げる
と、同時に膜応力も増大して、膜剥離が発生する。製造
上の限界から、耐摩耗性保護膜6のビッカース硬度の上
限は2700程度となる。
【0031】これらのサーマルヘッドにおいて、バッフ
ァー層4および耐摩耗性保護膜6の膜厚と、印画に必要
とされる電力の関係を調べた結果を図3(A)に示す。
この試験を行うに当たり、耐摩耗性保護膜6の膜厚は7
μmに固定し、バッファー層4の厚みを種々に代えて試
験を行った。バッファー層4と耐摩耗性保護膜6の合計
膜厚が25μm以下ならば印画電力の増加は5%以下で
あった。
【0032】砥粒試験の結果から、バッファー層4の膜
厚は5μm以上、好ましくは7μm以上必要であり、バ
ッファー層4の膜厚と印画電力の関係から、21μm以
下(耐摩耗性保護膜の膜厚が4μm時)、好ましくは1
8μm以下であればよい。従来のポリイミド樹脂は、前
記特開昭61−12357号公報にも記載のように、最
大5μm程度でしかなく、ここで行われた砥粒試験には
耐えられなかった。
【0033】本発明によるサーマルヘッドの60℃、9
0RHにおける耐湿試験結果を、従来例と比較して図3
(B)に示す。この耐湿試験は、前述の工程により得ら
れたサーマルヘッドと従来例のサーマルヘッド(蓄熱層
がポリイミド樹脂でなり、バッファー層はSiO 2でか
つ膜厚が2μm、耐摩耗性保護膜6はSr−Si−O−
Nでなりかつ膜厚が8μmでなるもの)をそれぞれ10
個ずつ試験槽に入れ500時間後および1000時間後
に取り出して評価した。従来のサーマルヘッドは500
時間で10個中8個について膜の剥離が認められ、さら
に1000時間では残りの2個にも剥離が認められた。
本発明のサーマルヘッドは、1000時間でも膜の剥離
は認められず、抵抗値および印画状態も良好であり、耐
湿性の向上が認められた。
【0034】(実施例2)図1(B)は本発明によるサ
ーマルヘッドの他の実施例を示す断面図である。本実施
例は、発熱抵抗体7の形成部分を凸形状にした凸型サー
マルヘッドを示す。本実施例において、基板1はアルミ
ナ基板であり、発熱抵抗体7列形成部分に切削加工によ
り凸形状を、凸部1aの頂部の幅wが1mm、高さhが
1mmに形成した。ポリイミド樹脂を塗布する凸頂部以
外の部分には、切削面を平滑化してリード電極5a、コ
モン電極5bの断線を防止するため、予めグレース8が
形成してある。
【0035】この基板の凸部1aの頂部に、実施例1と
同様に断面形状が円弧状のポリイミド樹脂による蓄熱層
2を形成する。その後、バッファー層4、発熱抵抗体
層、電極層を形成し、フォトリソグラフィにより発熱抵
抗体7とリード電極5aおよびコモン電極5bを所定に
パターンに形成し、その上に耐摩耗性保護膜6をスパッ
タリング法(蒸着法やプラズマCVD法等であってもよ
い)により10μmの厚みに形成し、その後、リード電
極5a、コモン電極5bの外部回路との接続部を露出さ
せた。その後のICとの接続等の工程は実施例1の場合
と同様である。
【0036】本実施例のサーマルヘッドについて、実施
例1と同様に砥粒試験で評価した結果、このヘッドも印
画中の異物の巻き込みに対して十分耐性のあるヘッドで
あることが示された。また、この凸型サーマルヘッド
は、特願平5−52867号に記載されているように、
発熱抵抗体7が他のサーマルヘッドの構成部分より高い
ところにあるため、プリンタのメディアを印画時に湾曲
させずに済むため、可撓性のない印画メディア(硬質プ
ラスチックカード等)の印画に適しているという特徴が
ある。
【0037】(実施例3)図1(C)は本発明の他の実
施例を示す断面図である。本実施例は、実施例1と同様
に、基板1上に蓄熱層2、バッファー層4を形成し、そ
の上にSiO2でなる絶縁性セラミック層9を形成し、
その上に実施例1と同様に発熱抵抗体層3、電極5a、
5b、耐摩耗性保護膜6を形成したものである。
【0038】このようにSiO2等の絶縁性セラミック
層9を形成する理由は、実施例1(実施例2においても
同様)において、バッファー層4としてLa−Si−O
−N等を用いた場合、La−Si−O−Nは発熱抵抗体
7および電極5a、5bの形成時のエッチング工程等で
その表面が変化し、その上に成膜する耐摩耗性保護膜6
等との密着強度が低下する傾向があるので、発熱抵抗体
層3を形成する前にSiO2を設けてバッファー層4の
表面の変化を防いだものである。この絶縁性セラミック
層9はSi−O−N、Si−Nの組成であってもよい。
また、該絶縁性セラミック層9の厚みは0.2μm〜
2.0μm程度あればよい。なぜならば、発熱抵抗体層
3のエッチング工程によって該絶縁性セラミック層9が
消失しないためには、膜厚は0.2μm以上あればよ
く、また、バイアス・スパッタリング法により成膜した
該絶縁性セラミック層9の応力がバッファー層4および
耐摩耗性保護膜6の膜応力の増加に寄与しないために
は、膜厚が2μm以下であればよいからである。
【0039】(実施例4)図2(A)は本発明の他の実
施例を示す断面図である。本実施例は、実施例3と同様
に、基板1上に断面形状が円弧状の蓄熱層2、バッファ
ー層4、SiO2でなる絶縁性セラミック層9を成膜
し、その上に発熱抵抗体層3、リード電極5a、コモン
電極5bを形成した後、その上にバッファー層4と同じ
組成のLa−Si−O−Nでなる絶縁性セラミック層1
0をバイアス・スパッタリング法により例えば3μm成
膜し、その上に耐摩耗性保護膜6を例えば4μm成膜し
たものである。
【0040】このように、耐摩耗性保護膜6の膜応力が
大きい場合、その膜厚を必要最小限の例えば4μm程度
にして残りの必要な膜厚をバッファー層4と同じ材質の
絶縁性セラミック層10で構成することにより、膜平均
での応力を下げることができる。この絶縁性セラミック
層10は、バッファー層4の変化に呼応して、種々の材
質を用いることができる。
【0041】
【効果】請求項1によれば、バッファー層を、前記組成
のものにより形成することにより、バッファー層を緻密
にかつ低応力に厚く成膜することができるので、高効率
(低消費電力)で印画中の異物粒子巻き込みに耐え、耐
湿性等の信頼性の高いサーマルヘッドを提供することが
できる。また、バッファー層の膜応力が低いので、製造
工程中の基板の反りによる搬送異常等による歩留まり低
下を防止でき、プリンターに組み込んで実使用に際して
も、膜剥れを防止することができ、信頼性が向上する。
【0042】請求項2によれば、前記バッファー層上
に、Siと、NまたはOの少なくとも一種よりなる絶縁
性セラミック層を設けたので、発熱抵抗体形成時におけ
るエッチング等によるバッファー層の変質を防止するこ
とができ、耐摩耗性保護膜の密着性を確保することがで
きる。
【0043】請求項3によれば、前記発熱抵抗体および
前記電極と前記耐摩耗性保護膜との間に、前記絶縁性セ
ラミック層と同じ材質の絶縁性セラミック層を設けたの
で、耐摩耗性保護膜の平均的膜応力を低下させることが
でき、変形や剥離を防止することができる。
【0044】請求項4によれば、バッファー層を、Si
LaxyzまたはまたはSiCexyz(ただし、x
=0.09〜1.43、y=0.30〜3.29、z=
0.36〜1.27)で表されるものにより形成したの
で、膜応力を低下させ、十分な膜硬度を得ることができ
る。
【0045】請求項5によれば、バッファー層あるいは
その上の絶縁性セラミック層もしくは耐摩耗性保護膜の
下地層である絶縁性セラミック層をバイアス・スパッタ
リング法で形成したので、境界部のない割れにくい緻密
な層を形成することができる。
【0046】請求項6によれば、蓄熱層がポリイミド樹
脂であるにもかかわらず、発熱抵抗体上の耐摩耗性保護
膜の荷重100gでのビッカース硬度が1300以上、
2700以下であるようにサーマルヘッドを構成したの
で、異物巻き込みによる耐摩耗性保護膜の変形、クラッ
ク発生、および発熱抵抗体のクラック発生や抵抗値増加
を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明によ
るサーマルヘッドの各実施例を示す断面図である。
【図2】(A)は本発明によるサーマルヘッドの他の実
施例を示す断面図、(B)はバイアス・スパッタリング
装置の構成を示す図、(C)は本発明において用いるタ
ーゲット材の好ましい組成の範囲を示す図である。
【図3】(A)は本発明のサーマルヘッドのバッファー
層と耐摩耗性保護膜の合計膜厚と印画電力の関係を示す
図、(B)は本発明のサーマルヘッドの耐湿試験結果を
従来例と比較して示す図である。
【符号の説明】
1:基板、2:蓄熱層、3:発熱抵抗体層、4:バッフ
ァー層、5a:リード電極、5b:コモン電極、6:耐
摩耗性保護膜、7:発熱抵抗体、8:グレーズ、9、1
0:絶縁性セラミック層、11:ターゲット、12:ス
パッタリング高周波電源用マッチングボックス、13:
スパッタリング用高周波電源、14:バイアス高周波電
源用マッチングボックス、15:バイアス用高周波電
源、16:スパッタリングガス導入口、17:スパッタ
リングガス排気口、18:基板ホルダー兼バイアス電
極、19:処理基板、20:真空チャンバー

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高熱伝導性絶縁基板上に蓄熱層を介して複
    数の発熱抵抗体を形成し、該発熱抵抗体に通電するため
    の電極を設け、その上に耐摩耗性保護膜を形成したサー
    マルヘッドにおいて、 前記蓄熱層がポリイミド樹脂でなり、該蓄熱層と前記発
    熱抵抗体層との間に、 Si、Al、Mg、Ti、Sr、Y、Mo、Zr、H
    f、TaまたはWの少なくとも一種と、 NまたはOの少なくとも一種と、 LaまたはCeの少なくとも一種とからなる絶縁性セラ
    ミック層を設けたことを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記絶縁性セラミック層上に、Siと、NまたはOの少
    なくとも一種よりなる絶縁性セラミック層を設けたこと
    を特徴とするサーマルヘッド。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、 前記発熱抵抗体および前記電極と前記耐摩耗性保護膜と
    の間に、前記絶縁性セラミック層と同じ材質の絶縁性セ
    ラミック層を設けたことを特徴とするサーマルヘッド。
  4. 【請求項4】請求項1から3までのいずれかにおいて、 請求項1記載の絶縁性セラミック層が、 SiLaxyzまたはSiCexyz(ただし、x=
    0.09〜1.43、y=0.30〜3.29、z=
    0.36〜1.27)で表されることを特徴とするサー
    マルヘッド。
  5. 【請求項5】請求項1から4までのいずれかにおいて、 前記絶縁性セラミック層をバイアス・スパッタリング法
    で形成したことを特徴とするサーマルヘッド。
  6. 【請求項6】高熱伝導性絶縁基板上に蓄熱層を介して複
    数の発熱抵抗体を形成し、該発熱抵抗体に通電するため
    の電極を設け、その上に耐摩耗性保護膜を形成したサー
    マルヘッドにおいて、 前記蓄熱層がポリイミド樹脂でなり、前記発熱抵抗体上
    における前記耐摩耗性保護膜の測定荷重100gでのビ
    ッカース硬度が1300以上、2700以下であること
    を特徴とするサーマルヘッド。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1226951A2 (en) * 2001-01-29 2002-07-31 Alps Electric Co., Ltd. Power-saving thermal head
JP2013202798A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Toshiba Hokuto Electronics Corp サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ

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