JPH09301775A - セラミックスの製造方法 - Google Patents

セラミックスの製造方法

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JPH09301775A
JPH09301775A JP8116357A JP11635796A JPH09301775A JP H09301775 A JPH09301775 A JP H09301775A JP 8116357 A JP8116357 A JP 8116357A JP 11635796 A JP11635796 A JP 11635796A JP H09301775 A JPH09301775 A JP H09301775A
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JP
Japan
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gel
drying
solution
sol
solvent
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Withdrawn
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JP8116357A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Seki
博之 関
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Olympus Corp
Original Assignee
Olympus Optical Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH09301775A publication Critical patent/JPH09301775A/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C1/00Ingredients generally applicable to manufacture of glasses, glazes, or vitreous enamels
    • C03C1/006Ingredients generally applicable to manufacture of glasses, glazes, or vitreous enamels to produce glass through wet route

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  • Organic Chemistry (AREA)
  • Glass Melting And Manufacturing (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 歩留まり良く大型のセラミックスが安価に得
られるセラミックスの製造方法を提供する。 【解決手段】 昇華性有機物をSとし、少なくともSを
溶解した溶液中にゲル化工程の終了したウエットゲルを
浸漬し、ゲル内にSを溶解した溶液を浸透させた後で乾
燥させる。この時、ウエットゲルは熟成が終了している
方が浸漬によるゲル内の未反応成分の流出が少なく、ま
た未反応成分がSと反応する可能性が少ないため好まし
いが、特に限定はしない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゾルゲル法により
作製する多孔体,焼結体およびガラス等のセラミックス
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属アルコキシド等を原料としたゾルゲ
ル法によってセラミックスを製造する場合、従来はゾル
を合成してゲル化させ、このウエットゲルを乾燥してド
ライゲルとしている。そして、このドライゲルを加熱し
て残留有機物を燃焼させ、さらに加熱して無孔化させる
工程のうち、ウエットゲルを乾燥し、さらに加熱して残
留有機物を乾燥させる際、ゲルにクラック等が入ってし
まい、大型のセラミックスが得にくいという欠点があっ
た。
【0003】そこで、上記欠点を解消するため、特開平
1−153537号公報には、ゾルを合成する際のゾル
溶液中に昇華性有機物を溶解させ、その昇華性有機物の
融点以下の温度で乾燥し、昇華性有機物をゲル骨格に析
出させてゲルを強化することにより、クラックの発生を
抑えることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来技術には以下のような欠点があった。すなわち、シリ
コンアルコキシドや酸,塩基等の触媒や金属塩等の混合
されたゾル溶液は加水分解等の反応を経てゲル化する
が、反応性の高いゾル溶液中に昇華性有機物を溶解した
場合、昇華性有機物とゾル中の成分が反応することがあ
った。このため、ゲル化が阻害されたり、ゲル化した後
の細孔径やゲル強度が変化してしまう。この反応を防ぐ
ためには、ゾル溶液組成を変更するなどの対策が必要だ
ったが、やはり対策の影響によりゲル化時間,細孔径,
ゲル強度に悪影響を与えることが多い。
【0005】しかし、昇華性有機物がゾル溶液と反応し
ない場合が全くないわけではないが、溶解した昇華性有
機物分子が何らかの理由でゲル化工程に悪影響を与えて
ゲルの性質が変化することが多い。また、使用したい昇
華性有機物がゾル溶液に溶解できない場合もあり、その
場合は従来の方法が使用不能である。さらに、ウエット
ゲル内の液体成分をそのまま乾燥させるため、表面張力
の大きい液体であることが多く、乾燥時のクラック発生
の原因となる。
【0006】ゾルゲル法によるセラミックスの製造方法
では、ゾル溶液の組成は非常に重要かつデリケートで、
ゾル溶液の変更でゲルの性質が容易に変化する。仮に、
ゲルの細孔径が縮小すると、乾燥時にウエットゲル内の
液体表面張力の影響が大きくなり、クラックが入りやす
くなる。また、焼成時にゲル内の残留有機物の燃焼に時
間がかかるようになるため、条件の変更が必要となる。
さらに、ゲル強度が低下した場合は、焼成はおろか乾燥
さえもできなくなる可能性が高く、昇華性有機物を添加
したことによるメリットがキャンセルされ、あるいは、
かえって悪化し、大型のセラミックスを得ることや歩留
りを向上させることが困難であった。
【0007】また、屈折率分布型光学素子は、傾向とし
てゲル中に含まれる成分種類が多く、さらにゲル中の金
属成分濃度に分布が付与されているため、収縮率が同一
ではなく、均一な成分のゲルに比較して乾燥,焼成が困
難である。このゲルに昇華性有機物を添加すると、細孔
径の縮小,ゲル強度の低下等が発生した場合の影響がさ
らに大きな問題となる。
【0008】加えて、ゾルゲル法で製造するセラミック
スが屈折率分布型光学素子である場合には、少なくとも
ウエットゲル中に屈折率に寄与する成分濃度に分布を付
与する工程が必要である。通常、屈折率分布付与溶液に
ウエットゲルを浸漬して、ゲル内の金属成分を溶出させ
るか、ゲル内に金属成分を拡散させるか、あるいは分布
付与溶液中の金属成分とゲル内の金属成分を交換する。
この工程で、昇華性有機物が屈折率分布付与溶液に溶解
度を持つ場合、昇華性有機物が屈折率分布付与溶液中に
溶出して、効果が無くなってしまう場合があった。
【0009】本発明はの課題は、歩留まり良く大型のセ
ラミックスが安価に得られるセラミックスの製造方法を
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】以下に、セラミックス、
あるいは屈折率分布を有するガラスの作製例として、3
成分系セラミックスをゾルゲル法により作製する工程を
用いて本発明の作用を説明する。
【0011】なお、3成分系のうち、ゲル骨格を形成す
るシリコンアルコキシドやアルミニウムアルコキシド,
ジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシドをA,
Bとし、酢酸鉛やシュウ酸カリウム,硝酸バリウム等の
金属塩をCとし、アダマンタン,カンファ,パラジクロ
ロベンゼン,ナフタレン,アントラセン,イソキノリ
ン,タマリンやその誘導体等、安息香酸,カルボン酸,
酪酸等が化合した固体有機酸等の昇華性有機物をSとす
る。このSは昇華温度域の異なる2種以上の混合物でも
構わない。また、加水分解用の塩酸,硫酸,アンモニウ
ム等の酸、塩基触媒をEとする。また、A,BにEを加
えて部分加水分解を行った後、Cの水溶液を添加してゾ
ルを作製してゲル化させ、ウエットゲルを得る工程をゲ
ル化工程とする。
【0012】請求項1では、少なくともSを溶解した溶
液中にゲル化工程の終了したウエットゲルを浸漬し、ゲ
ル内にSを溶解した溶液を浸透させた後で乾燥させる。
この時、ウエットゲルは熟成が終了している方が浸漬に
よるゲル内の未反応成分の流出が少なく、また未反応成
分がSと反応する可能性が少ないため好ましいが、特に
限定はしない。また、ウエットゲルを浸漬する時間は、
ゲルの大きさ,細孔径によって様々で、均一にSを浸透
させる場合は充分な時間浸漬を行うが、周辺のSの濃度
が高くなるように時間を短くしてもかまわない。なお、
中心部のSの濃度が高くなるようにしたい場合は、再度
Sの濃度が低い、あるいは含まれていない溶液に再度浸
漬し、ゲル周辺のS濃度を低下させてもかまわない。
【0013】さらに、Sを溶解する溶媒は、ウエットゲ
ル内の液体成分(離漿液)と同一にする必要は特に無
く、ウエットゲル内の金属成分等が不溶または難溶であ
る方が扱いやすい。しかし、溶媒がウエットゲル内の成
分に高い溶解度を持つ場合は、溶出しやすい成分をウエ
ットゲル内の成分と同濃度にした溶媒にSを溶解した溶
液に浸漬してもかまわない。また、乾燥が容易で、Sと
同時あるいはSより速くゲル内から揮発する溶媒が望ま
しく、溶媒の蒸発初期にSが析出する方が、より好まし
い。また、析出したSがゲルの細孔径よりも大きくなっ
てゲル構造を破壊しない濃度でSを溶解する。
【0014】請求項1ではゾル溶液中に昇華性有機物を
添加しないため、ゲル化反応時に悪影響を及ぼすことが
無く、従来通りのゾル製作工程で乾燥,焼成条件を必ず
しも変更する必要は無い。Sを添加した効果により、ゲ
ルにクラックが発生する原因の一つである液相の表面張
力によって細孔が破壊される現象を防ぐ。詳しく述べる
と、ウエットゲルの細孔内は溶媒が満たされているが、
乾燥が進み、気−液界面が細孔に発生すると、毛細管力
によって細孔の内径を縮ませるように力が働く。この力
は一般に、 P=2γcosθ/d P:毛細管力 γ:溶媒(液相)の表面張力 θ:液相の濡れ角 d:細孔直径 と上記の式でほぼ表されると考えられている。
【0015】しかし、Sが溶媒の蒸発と共にゲル骨格に
析出して強化する働きをする。つまり、細孔の破壊強度
をQとした場合、Q<Pになるとクラックが発生してし
まうが、Qの値を大きくすることによってクラックの発
生を抑制する。また、析出したSは気−液界面を発生さ
せずに蒸発し、γ=0であるためPが働かない。さら
に、温度に対する連続した蒸気圧を持っているため、温
度を上昇させてSを昇華させる過程で急激にSの気体が
発生し、ゲル内からの排気可能速度を超えてゲルを破壊
することもない。このため、容易にゾルゲル法を用いて
作成した大型でもクラックが発生する可能性は少ない。
また、内部応力の小さいセラミックスが歩留まり良く得
られる。
【0016】さらに、ゲルが乾燥する工程では、通常周
辺から溶媒が蒸発して収縮が起こるが、ウエットゲル内
のSの濃度を調整することによって、例えば周辺部のS
の濃度を高くして析出したSによって収縮率を減少さ
せ、内部の溶媒蒸発速度と周辺の昇華速度とをコントロ
ールすれば、ゲル全体を均一かつ相似的に収縮させるこ
とも可能となり、ゲルにクラックが発生する原因の一つ
である内部応力を更に減少させることができる。つま
り、ドライゲルの内部応力を減少させることができれ
ば、焼成時のクラック発生の可能性が減少する。
【0017】さらに、Sを2種以上添加しても、ゾル溶
液と反応する可能性がないため、Sの種類を自由に選択
でき、なおかつ昇華温度域の違いを利用して低温から高
温まで広い温度域でゲルを強化し、クラックの発生を阻
止できるメリットもある。また、Sを溶解する溶媒を、
浸漬工程を行わない場合のゲルの離漿液よりもγが小さ
くて乾燥速度の速い液体にすれば、Pが減少するために
更にクラックが発生しにくく、また乾燥時間も短縮する
ことができる。
【0018】請求項2ではゲル化工程の後、熟成を行っ
たウエットゲルに屈折率分布を付与する工程を行う屈折
率分布を有するガラスの製造方法に本発明を適用するも
のである。ゲル化,熟成工程の後、ウエットゲルに屈折
率分布を付与する工程として、金属塩Bに高い溶解度を
持つ溶媒を分布付与溶液として用い、Bを析出させる。
この工程で分布付与溶液にSを添加しておき、任意のB
の分布を付与すると共に、Sをゲル内に浸透させた後、
乾燥させる。
【0019】場合によっては、分布付与工程の前に、金
属塩を微結晶にして固定する工程や、分布付与の後に分
布形状を固定する工程が存在したり、分布を付与する金
属がゲルの骨格形成物質で、酸,アルカリ等によって骨
格を破壊して溶出する方法であっても、これらゲルを液
体に浸漬するいずれかの工程の溶液にSを溶解し、少な
くとも乾燥まで十分に効果を発揮できるSが含まれてい
れば構わない。
【0020】請求項2では請求項1の効果に加えて、分
布付与等の従来から行われている工程にSを添加して処
理するだけで、工程の増加無しに効果を得ることができ
る。また、ゾル液中にSを溶解する方法で問題となって
いたゲル浸漬工程時のSの溶出も無い。
【0021】さらに、ゲル内に金属成分の濃度分布を持
つ屈折率分布を有するガラスでは収縮率の違いから相似
形状で収縮させることが難しく、ウエットゲルを乾燥し
てドライゲルを得る工程が非常に困難だった。しかしな
がら、中心部または周辺部のSの濃度をコントロールす
ることで収縮率の違いを減少させ、相似形のまま収縮さ
せることも可能となるために内部応力が少なく、大型で
クラックの無い屈折率分布を有するガラスを得ることが
出来る。また、従来から作製することの出来た屈折率分
布を有するガラスでも歩留まりが向上し、コストを削減
することが出来る。
【0022】請求項3ではウエットゲル中に含まれるS
を、ウエットゲルの温度を変更してSの溶解度を下げ
る、あるいはSの溶解度の低い溶液に交換する等の方法
を用いてゲル内にSの微結晶を析出させるが、ここでは
ウエットゲルの温度を変更して微結晶を析出した後で乾
燥,焼成するセラミックスの作成例を用いて説明する。
【0023】ウエットゲルの温度を変更する場合、通常
は溶媒の温度でSの溶解度が変化するため、ウエットゲ
ル内の溶媒の温度を下げて飽和量を越えさせるか、溶媒
の飽和量に近い状態とすることで核となるゲルの細孔内
にSの微結晶を析出させる。ただし、Sと溶媒の種類に
よっては、温度の高い方が溶媒に対するSの溶解度が低
下する場合もあるので、設定温度が逆転する場合もあ
る。また、Sの溶解度が低い溶媒に浸漬し、Sの微結晶
を析出させる場合では、極端に溶解度の違う溶液に交換
すると、結晶の急成長が起こるため注意が必要である。
【0024】なお、微結晶を析出させた状態でもまだ溶
媒中には高濃度でSが溶けており、溶解度の高い溶媒を
使用してそのまま乾燥すると、溶媒の蒸発と共に結晶が
大きく成長してしまう。この時は、Sが飽和量近く含ま
れているゲル内の溶液を再度洗い流す工程が必要とな
る。逆に、温度が低い状態でなければ微結晶が溶解して
しまうため、低い温度で乾燥しなければならない場合
は、Sに低い溶解度を持つ溶媒に浸漬しても構わない。
なお、この場合においては成長させるSの微結晶はゲル
の細孔径を超えないように制御する必要がある。
【0025】請求項3では乾燥前から既にSを析出させ
るため、ゲルの構造を乾燥前から強化することが出来
る。このため、乾燥時に溶媒が蒸発すると共にSが析出
するという不安定な状態となることが無く、既にSで強
化されたゲル骨格を持った状態で溶媒が蒸発するため、
さらに溶媒の表面張力の影響等でクラックが入る可能性
が少ない。また、溶媒の蒸発と共にゲル内にSを析出さ
せる方法に比較して、ゲルの乾燥前後の収縮が小さい。
何故ならば、ゲルの細孔径内にある程度大きなSの結晶
が析出しているために細孔が収縮できず、なおかつゲル
構造自体もSがコーティングした形で強固になっている
ためと考えられるからである。
【0026】つまり、通常はウエットゲルが持つ細孔径
と比較してドライゲルは収縮するために細孔径も縮小し
てしまう。しかし、請求項3では細孔径を大きく保った
ままウエットゲル内の溶媒を乾燥させた後、表面張力を
発生させずにSを除去することが出来るため、細孔径が
ウエットゲルと同程度で収縮率が少ないために内部応力
も殆ど無く、クラックの発生する可能性が少ない。
【0027】また、ドライゲルの細孔径が大きくなるメ
リットとして、焼成時にドライゲルを昇温する過程で吸
着していた残留水分や、脱離した水酸基がゲル外に放出
され易いため、ゲルが破壊し難い。また、ゲル内の残留
有機物を燃焼させるための酸素が入り込みやすく、燃焼
ガスも放出し易いため、炭素成分がセラミックス内に残
留する可能性も少なく、緻密化するセラミックスの場合
では更に気泡も残留しにくい。このため、焼成時間を短
縮することも可能である。
【0028】請求項4は、ゲル化工程,熟成の後、ゾル
溶液中に添加したE等の不要成分を除去する工程、ゲル
内の金属塩を微結晶として析出させる工程、微結晶を溶
出して金属塩に分布を付与した後、再度溶出させた金属
塩の分布を固定する工程で浸漬を行う屈折率分布を有す
るガラスの作製に本発明を適用するものである。
【0029】ゲル化,熟成の後、ウエットゲル内のEを
除いた離漿液の成分と近似する溶液にゲルを浸漬する。
この工程で、浸漬溶液に水には溶けやすく、アルコール
には不溶のSを溶解してEの抽出と同時にSをゲル内に
浸透させる。次の工程として、金属塩Cが難溶または不
溶のアルコールに浸漬してCの微結晶を析出させる。こ
の工程で、アルコールに不溶のSも析出させることが出
来る。この後、Cだけに大きな溶解度を持つアルコール
を分布溶液としてゲルを浸漬してCに分布を付与し、再
びC,Sに溶解度を持たないアルコールに浸漬して分布
の形状を固定する。この後、乾燥,焼成を行って屈折率
分布を有するガラスを作製する。
【0030】請求項4では請求項3の作用に加えて、分
布付与等の従来からある工程にSを添加して処理するだ
けで、工程の増加無しに効果を得ることが出来る。ま
た、従来ではゾル液中に溶解した昇華性有機物が浸漬工
程により溶出することもない。さらに、ゲル内に金属成
分の濃度分布を持つ屈折率分布を有するガラスでは収縮
率の違いから、ウエットゲルを乾燥してドライゲルを得
る工程が非常に困難だった。しかし、請求項4では非常
に少ない収縮率で乾燥が可能なため、細孔径を大きく保
ったまま内部応力も殆ど無いドライゲルを得ることが出
来る。
【0031】ちなみに、浸漬時間を調整するなどしてS
の微結晶サイズに分布を付与すれば更に精密な収縮率の
コントロールも可能となる。加えて、分布付与工程の時
には既にSが析出し、見かけ上、細孔径が小さい状態と
なり、分布付与溶液の浸透速度が遅くなる。このため、
時間で決定される非常に精密な制御を必要とする分布形
状が相対的に制御しやすくなる。
【0032】また、Cの分布を固定する溶液がCに溶解
度を持たない場合でも、ゲル内の分布溶液の影響により
若干の溶解度を持つことになり、通常は乾燥の際にゲル
表面へ溶媒の蒸発と同時に移動する現象が発生すること
があった。しかし、請求項4ではSがゲル構造内に析出
して金属塩成分を移動しにくくするため、分布形状の崩
れも改善することが可能となる。
【0033】請求項5ではゲル化,熟成工程の後、ウエ
ットゲルを乾燥させる工程で、Sを含む雰囲気中で乾燥
させた後、焼成してセラミックスを作製する。なお、乾
燥工程でSが含まれていれば、Sを溶媒に溶解するなど
して発生させた混合気体でも構わない。請求項5を用い
てSを含む雰囲気中で乾燥を行うと、ウエットゲル外周
部からウエットゲル内の溶媒が蒸発すると同時にSがゲ
ル構造に吸着してゆき、S分子でコートする現象が起き
てゲル構造が強化されるために、クラックの発生を抑え
られると考えられる。
【0034】請求項1の作用で述べたQ(細孔の破壊強
度)は、細孔がゲル表面にある場合とそうでない場合と
で異なり、周囲をゲル構造(細孔)で囲まれている部分
の細孔の破壊強度をQ、ゲル表面に開口部を持つ細孔の
破壊強度をQ’と定義し直すと、 Q>Q’ であり、周囲を全てゲル構造で覆われていない表面の細
孔の破壊強度が最も弱い。請求項5の方法では、Pによ
りクラックが発生する可能性が最も高いQ’を増大する
ことが出来る。
【0035】例を挙げれば、ガラス表面にクラックが入
ると、そのクラックに応力が集中して、急激に強度が低
下することは良く知られている。ゲルを乾燥させる際に
も、表面の細孔にクラックが発生すると、この細孔に周
囲のP、あるいは収縮による応力が集中し、連続的に破
壊が進んでゲル全体のクラックへと成長してしまうとい
う、良く似た現象が起こっていると考えられ、Sによる
ゲル表面からの強化で、ゲル表面の細孔にクラックが入
るのを防止するのである。
【0036】さらに、Q’が増大すると、乾燥時のゲル
の収縮率も減少することがわかっている。詳細な作用の
説明は困難だが、Sによりゲルが表面からコートされ
て、ちょうど卵の殻のようになり、表面にあるゲル構造
の末端を殻が固定する様な状態となり、縮みにくいので
はないかと考えられる。
【0037】通常はSをウエットゲルと一緒に乾燥容器
等に入れて乾燥させると、容易にその効果が得られる。
しかし、乾燥温度プログラムとSの種類によっては、ゲ
ルに再結晶したSが成長しすぎて細孔径を上回るとゲル
が破壊するため、Sの種類や昇華速度を調整する必要が
ある。また、溶媒にSを溶解して蒸発させると、溶媒に
よってSの蒸気分圧をコントロールすることが可能とな
り、Sの昇華速度を調整できる。
【0038】請求項5によれば、ゾル溶液中に昇華性有
機物を添加しないため、ゲル化反応時に悪影響を及ぼす
ことが無く、乾燥工程以外は全く従来通りのセラミック
ス作製工程を用いることが可能であり、乾燥雰囲気にS
を加えるという簡単な操作で、容易にゲル構造を強化し
てクラックを発生し難くし、歩留まりを向上させ、より
大型のセラミックスも得ることが可能となる。
【0039】請求項6ではゲル化工程,熟成の後、強酸
によりBを溶出する工程、ゲル内の強酸を洗浄する工程
で、ゲルの浸漬を行う屈折率分布を有するガラスの作製
例に本発明を適用するものである。ゲル化,熟成の後、
Bの金属成分を骨格とするゲル構造を破壊して溶出させ
るのに十分な強酸にゲルを浸漬し、ゲル構造内のBに分
布付与する。次に、分布付与の停止とゲル内の強酸を洗
浄するため、有機溶媒に浸漬する。この後、Sを含む雰
囲気中で乾燥を行い、焼成して屈折率分布を有するガラ
スを作製する。
【0040】この効果としては、請求項5の効果に加
え、ゾル液中に溶解した昇華性有機物が浸漬工程により
溶出することもなく、ゲルの浸漬工程には全く影響を与
えることがない。また、ゲル骨格を形成していたBを溶
出させたために、ゲルの中心部よりもゲルの表面層付近
は強度が低下しているため、乾燥時に表面層にクラック
が入り易かった。しかし、昇華したSがゲル表面から吸
着してゲルを強化し、クラックの発生を抑えることがで
きるため歩留まりが向上し、なおかつ更に大型の屈折率
分布を有するガラスを作製することが可能となった。
【0041】請求項7では、A,BにEを加えて部分加
水分解を行った後、Cの水溶液を添加してゾルを作製し
てゲル化させる工程で、このゾル溶液中に不溶または微
溶のS微粉末を添加して分散化させてゲル化する。通常
は熟成を行った後、場合によってはSに溶解度を持つ溶
媒にウエットゲルを浸漬してSを一部または全部溶解し
た後、乾燥,焼成してセラミックスを作製する。Sを全
部溶解した場合にはゲル溶媒内に溶解したSを残留さ
せ、乾燥時に析出させる。
【0042】また、Sはゾル溶液に不溶な方がゲル化時
に影響を及ぼさないため理想的であるが、実際には微溶
な場合も多い。この場合は、S微粉末の添加後、少なく
ともゲル化反応が完了するまで溶解しないS微粉末の大
きさおよび種類を選定しなければならない。なお、S微
粉末の大きさはゲルの系,強度および細孔径によって様
々だが、通常は粒径が数十オングストローム〜数μmを
使用するとよい。多孔体を得たい場合は、更に大きなS
粉末を添加しても差し支えないが、一緒に数十オングス
トローム〜数μmの小さい粉末を添加しておくと、より
効果が期待できる。
【0043】請求項7によれば、ゾル溶液中にSが不溶
なら、ゲル化反応時に悪影響を及ぼさず、Sが微溶であ
っても従来のようにSがゾル溶液に溶解した状態でゲル
化させるわけではないため、直接的なゲル化反応への影
響が少なく、本発明によるメリットをデメリットが上回
ることはまず無い。
【0044】さらに、Sの微粉末を添加すると、ゲル化
の際にゲル構造内へSが固体で取り込まれるため、Sが
昇華した後には大きな気孔が出来る。さらに、詳細な作
用は不明だが、S微粉末を添加することにより、ゲルの
細孔径自体が大きくなる現象が発生する。このため、従
来例と比較して焼成時にドライゲルを昇温してゆく過程
で吸着していた残留水分や、脱離した水酸基がゲル外に
放出されやすいため、ゲルが破壊し難い。また、ゲル内
の残留有機物を燃焼させるための酸素が入り込み易く、
燃焼ガスも放出し易いため、炭素成分がセラミックス内
に残留する可能性も少なく、緻密化するセラミックスの
場合では更に気泡も残留しにくい。また、焼成時間の短
縮も可能である。加えて、ゲルの細孔径が大きくなって
いるため、そもそもゲル内の溶媒が蒸発するときの表面
張力の影響を受けにくい。
【0045】以下にそれぞれ特有の作用を記す。ゾル溶
液にSが溶解せず、このまま乾燥させる場合の作用とし
ては、ウエットゲル内の溶媒が蒸発すると同時に固体の
Sも昇華してゲル構造に吸着,コートする現象が起きて
ゲル構造が強化されるために、クラックの発生を抑える
と考えられる。また、ゲル内の溶媒が乾燥し、液体とし
て存在しなくなった状態でもSがある程度の大きさを保
ってゲル内に存在するような昇華速度の遅いSを用いれ
ば、乾燥時の収縮率が非常に少なく、内部応力の発生も
減少する。
【0046】ゾル溶液にSが微溶な場合は、固体のSが
昇華してゲル構造に吸着する作用に加え、ゲル内の溶媒
がほぼSの飽和量に達しているため、乾燥によるゲル内
の溶媒の蒸発と共にSがゲル内に析出してゲル骨格をさ
らに強化するためクラックの発生を抑えると考えられ
る。ゲル構造を強化する効果としては、Sがウエットゲ
ル内の溶媒に溶解しない場合よりも強い傾向がある。
【0047】ゲル化,熟成の後、ウエットゲルを溶媒に
浸漬してSを一部溶解させる場合も、固体のSが昇華し
てゲル構造に吸着する作用に加え、溶解度の低い溶媒に
浸漬するなどしてSを一部溶解した状態が溶媒のSの飽
和量に近付けておくことで、乾燥によるゲル内の溶媒の
蒸発と共にSをゲル内に析出させてゲル骨格を強化して
クラックの発生を抑えることが出来る。
【0048】さらに、Sの溶解の度合いを調整して固体
のSの大きさを設定することで、乾燥時にゲルの収縮率
をコントロールすることも容易に可能である。なお、S
を一部溶解する溶媒を、浸漬工程を行わない場合のゲル
の離漿液よりも表面張力が小さく、乾燥速度の速い液体
にすれば、さらにクラックが発生し難く、乾燥時間も短
縮することが出来る。
【0049】ゲル化,熟成の後、Sを全て溶解する場合
も、Sを溶解した状態が溶媒のSの飽和量に近付けるこ
とで、乾燥によるゲル内の溶媒の蒸発と共にSをゲル内
に析出させてゲル骨格を強化してクラックの発生を抑え
ることが出来る。また、Sを溶解する溶媒を、浸漬工程
を行わない場合のウエットゲルの離漿液よりも表面張力
が小さく、乾燥速度の速い液体にすれば、さらにクラッ
クが発生し難く、乾燥時間も短縮することが出来る。
【0050】また、ウエットゲルからドライゲルになる
工程での収縮率は、ゲルを乾燥させる工程の後期までゲ
ル内にSを固体として残留させる方法より大きい。しか
し、乾燥前にSを溶解するため、固体のSが充填されて
いない大きな気孔をゲル内に発生させた状態で乾燥させ
るため、蒸発が容易で、乾燥時間が短くなる。本来、乾
燥時間をあまり短縮するとクラックの発生確率が高くな
るが、大きな細孔を形成することによって、歩留まり良
く、より大型のセラミックスも得ることが出来る。
【0051】請求項8ではゲル化工程で、ゾル溶液に不
溶のS微粉末を添加してゲル化させて熟成させる工程
と、C以外の金属塩Dを含む溶媒に浸漬してDの分布を
付与させる工程の後、乾燥,焼成して作製する屈折率分
布を有するガラスの作製に適用するものである。
【0052】ゾル溶液に不溶なS微粉末をゾル溶液に添
加し、均一に分散してゲル化させて熟成の後、S微粉末
に若干の溶解度を持ち、金属塩Dを含む溶液にゲルを浸
漬してゲル内にDの分布を付与すると共に、ゲル表面か
らS微粉末を溶解する。この結果、ゲル表面層ほどS微
粉末は溶かし出され、且つDの濃度は高いウエットゲル
となる。なお、分布を付与する溶液がSに高い溶解度を
持つ場合は、再度Sの溶解度の低い溶媒に浸漬し、乾燥
時に溶媒が蒸発すると、すぐにSが析出する状態にして
も構わない。この後に乾燥,焼成して屈折率分布を有す
るガラスを作製する。
【0053】請求項8を用いない場合は、ゲルの表面層
ほどDの濃度が高いため、同時に収縮率が小さくなり、
ゲル中心部付近の大きい収縮率との違いから乾燥時にク
ラックが発生してしまった。しかし、請求項8を用いた
場合、周辺のS微粉末は溶かし出され、中心部はS微粉
末が溶解されていないため、ゲル表面層の収縮率は大き
く、ゲル中心部の収縮率は小さくなる。つまり、ゲル内
の収縮率の違いをキャンセルする方向に働かせることも
可能となる。さらに、請求項7の効果も加わり、歩留ま
り良く、より大型の屈折率分布を有するガラスを得るこ
とが可能となる。
【0054】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)Si(OCH34 を55.4g,S
i(OC254 を44.2gおよびエタノール16
5gを混合し、さらに20gのHClを加え、加水分解
してゾルとする。このゾル溶液をテフロン容器に注入し
て密閉し、55℃でゲル化させて得られたゲルを、70
℃で5日間熟成した後、昇華性有機物のジ−1−ナフチ
ルケトンと1.6ナフタレンジオールをそれぞれ0.3
mol/l,0.4mol/lの濃度で溶解したアセト
ンに30時間浸漬し、その後小さな開口部を持つ乾燥容
器内で50℃で4日間乾燥させた。この後、80℃に昇
温して5日間乾燥し、割れの無いドライゲルを得た。こ
のドライゲルを20℃/hrで1000℃まで昇温し、
この状態で8時間保持して石英ガラスを得た。
【0055】(比較例1)実施の形態1の工程から昇華
性有機物−アセトン溶液の浸漬工程を除いて作製したウ
エットゲルを、クラックの無いドライゲルを得るように
乾燥させるためには36日以上の乾燥時間が必要で、な
おかつクラックの発生率を低く抑えることは出来なかっ
た。
【0056】(実施の形態2)Si(OCH34 を3
0g,Si(OC254 を50g,エタノールを1
20g,2規定のHClを23.8g,17規定の酢酸
を5.5g,0.85mol/lの硝酸バリウム水溶液
を40mlおよび1mol/lの硼酸水溶液60mlを
混合して加水分解し、円筒形のポリプロピレン製容器に
入れてゲル化させる。
【0057】このゲルを40℃で3日間熟成した後、離
漿液から酢酸および塩酸を除いた成分の溶液に昇華性有
機物のイサチンを0.2mol/l溶解した60℃の溶
液にゲルを浸漬して酸触媒を除去した後、1.25mo
l/lの硝酸鉛水溶液に浸漬して分布を付与し、再度ア
セトンに浸漬してピンホールの開口部を持つ乾燥容器に
入れ、30℃で2日間、70℃で5日間、150℃で7
日間乾燥させて、割れの無いドライゲルを得た。
【0058】(比較例2)実施の形態2の工程で離漿液
から酢酸および塩酸を除いた成分の溶液にイチサンの添
加を行わない従来の方法では、ドライゲルを得ることは
可能なものの、乾燥時間が20日間長く、また歩留まり
が30%以上悪かった。
【0059】(実施の形態3)Si(OC254
2.5gと15.3gのB(OC253 とを混合
し、0.015規定の塩酸33mlを加えて30℃で2
0分間撹拌し、1.53mol/lの酢酸鉛水溶液8
2.4gと蟻酸12.2gとを添加した後、激しく混合
してから脱泡を行い、シリコンコートしたステンレス容
器に注入し、50℃で4日間の熟成を行ってゲルを得
た。
【0060】このゲルを、60℃のイソプロピルアルコ
ール:水=8:2の混合溶媒を用いた酢酸鉛の0.82
mol/l溶液に昇華性有機物のγ−アミノ酪酸を0.
8mol/l添加し、蟻酸の除去を行った後、ゲルをI
PA:水=9.5:0.5,IPA:アセトン=8:
2,5:5,アセトンの順に各40時間づつ浸漬するこ
とにより、ゲル細孔中にγ−アミノ酪酸と酢酸鉛の微結
晶を析出・固定させた。
【0061】得られたゲルを0.395mol/lの酢
酸カリウムのエタノール溶液に20時間浸漬して分布を
付与した後、IPA:アセトン=5:5,アセトンの順
に各40時間づつ浸漬させることで酢酸鉛および酢酸カ
リウムの微結晶を細孔中に析出・固定した。このゲルを
小さな開口面積を持つ乾燥容器に入れ、50℃で2日
間、70℃で4日間、110℃で3日間、160℃で1
日間乾燥させ、割れの無いドライゲルを得た。このドラ
イゲルを570℃まで昇温して焼結することにより内部
応力が少なく、亀裂の無い無色透明の屈折率の分布をし
たガラスを得た。
【0062】(比較例3)実施の形態3と同一な手順
で、γ−アミノ酪酸のみを添加しないで作製した従来の
作製方法では、ドライゲルになった状態の収縮率が実施
の形態3の手順で作製したドライゲルの収縮率よりも3
0%大きかった。このため、大きな内部応力が働いてい
るようであり、焼成の際に湿度を含んだ空気中に数分間
暴露するとすぐにクラックが発生してしまうため取り扱
いが困難であった。また、クラック無く製作できるガラ
スの大きさの限界は、表面積比で40%小さかった(相
似形の円筒形状での比較)。
【0063】また、実施の形態3のゾル溶液にγ−アミ
ノ酪酸を10g添加し、その他の工程ではγ−アミノ酪
酸を添加しないで作製したところ、ゲル化工程で何らか
の反応が起きてゲルが非常に脆くなり、細孔径が縮小し
てしまった。さらに、蟻酸の除去工程でγ−アミノ酪酸
が殆ど溶出してしまい、ゲルの乾燥が終了する前に細か
く割れてしまった。
【0064】(実施の形態4)Si(OC254
27.39g,エタノールを21.7gおよび2規定塩
酸を3gを混合し、シリコンアルコキシドの部分加水分
解を行った。次に、11.3gのZr(OC374
をイソプロパノール25g中に溶解させた溶液を加え、
撹拌した。続いて、この溶液中に硝酸ナトリウム4.3
g,水22.5g,イソプロパノール5.2g,ジメチ
ルホルムアミド13.1gおよび1規定のアンモニア水
5.1gの混合溶液を1時間かけて滴下してゾルを調整
した。得られたゾルをテフロン製容器に分注し、30℃
の恒温槽に3日間静置してゲル化熟成させた。
【0065】得られたゲルを、3規定の硫酸に昇華性有
機物である2.4−キノリンジオールを0.8mol/
l溶解した溶液中に浸漬し、ゲルを30分間置いてジル
コニアを溶出し、2.4−キノリンジオールを含浸し、
それぞれに分布を付与した。その後、35℃のイソプロ
パノール:水=7:3の溶液に20時間、その後20℃
のイソプロパノールに25時間浸漬して2.4−キノリ
ンジオールの微結晶を析出させ、なおかつ硫酸で洗浄し
て分布を固定した。このゲルをピンホールを有する乾燥
容器に入れ、12℃/Dayで200℃まで昇温し、ク
ラックの無いドライゲルを得た。このドライゲルを11
50℃まで昇温して、屈折率分布を有する気泡の無い透
明なガラスを得た。
【0066】(比較例4)昇華性有機物を添加しない
で、その他の工程は実施の形態4と同様にして作製して
いた従来の方法では、どうしてもφ1mm,長さ4mm
以上のガラスを得ることは出来ず、ひどいクラックが発
生して生産することが出来なかった。
【0067】(実施の形態5)30gのSi(OC2
54 ,12.6gのAl(OC493 ,0.8m
ol/lの塩化カルシウム水溶液を18.5g,3塩化
リンを2.8gおよび3規定の塩酸を5.8g添加して
混合し、ゾル溶液を得た。この後、任意の形状のテフロ
ン容器に注入してゲル化させ、40℃で5日間熟成を行
ってウエットゲルを得た。このゲルを乾燥ボックスに移
した後、2日間65℃で70%アセトン,20%ナフタ
レンおよび10%ドライエアーの体積比率の気体を1L
/minで流し、この後2日間78℃で10%アセト
ン,30%ナフタレンおよび60%ドライエアーの体積
比率の気体を1L/minで流し、この後130℃でド
ライエアーを5L/min流して1日間乾燥させ、クラ
ックのないドライゲルを得た。また、得られたドライゲ
ルを1120℃に加熱して不純物の非常に少ないガラス
を得た。
【0068】(比較例5)実施の形態5と同様な条件で
作製したウエットゲルを小さな開口部を持つ乾燥容器に
入れ、実施の形態5と同様な気体を流さず、同一な昇温
スケジュールで乾燥させたところ、78℃で30時間を
経過したところでクラックが発生してしまった。
【0069】(実施の形態6)実施の形態5と同様な手
順で作製したウエットゲルを小さな開口部を持つ乾燥容
器に移し、この容器内に20gの2ミクロン程度に粉砕
したナフタレンを入れ、60℃で4日間、75℃で3日
間、90℃で3日間、150℃で7日間乾燥させてクラ
ックのないドライゲルを得た。
【0070】(実施の形態7)58.4gのSi(OC
34 に69.7gのエタノールと39.2gの0.
8規定塩酸とを加えて部分加水分解し、25gのSiO
2 粉末を110gのエタノールに分散した溶液と50.
0gのTi(OC4 94 を32.2gのエタノール
に溶解した溶液とを混合した。その後、47.6gのA
l(OC493 を添加して1時間55℃で撹拌し
た。次に、酢酸水溶液に溶解した5.2gの酢酸カリウ
ムを添加して撹拌し、ゾルを調整した。このゾルをテフ
ロンで作製された容器に流し込み、60℃に保持してゲ
ル化させてゲルを得た。このゲルをイソプロパノールと
アセトンとの混合液に浸漬して酢酸カリウムを微結晶と
して固定し、2.25mol/lの酢酸ランタンを含ん
だ2.5規定塩酸水溶液に浸漬して、拡散によりTiと
Kに凸状、Laに凹状の濃度分布を付与した。
【0071】このゲルをイソプロパノールとアセトンと
の混合液に浸漬して濃度分布を固定した後、1mm程度
の粒にした有機性昇華物の(+)−ショウノウとゲルと
を同一容器内に入れ、小さな開口部を設けて40℃で3
日間、60℃で2日間、80℃で5日間、130℃で2
日間乾燥させ、クラックのないドライゲルを得た。この
ドライゲルを、1280℃まで8℃/hrで昇温して焼
成し、屈折率分布を有するガラスを得た。この方法で量
産実験を行ったところ、不良率は0.2%だった。
【0072】(比較例7)実施の形態7と同一条件で作
製されたゾルを用いて有機性昇華物を用いずに乾燥させ
た場合、50日以上の日数を必要とした。乾燥時間が長
いため、個々の乾燥容器による蒸発量の微妙な違いが大
きな乾燥速度バラツキとなって現れるため、量産の実験
結果では歩留まりが38%だった。
【0073】(実施の形態8)50gのエタノールと
0.5規定塩酸水溶液を120gとを加えた溶液に、平
均粒径6μmの昇華性有機物であるグリオキシム粉末を
12g添加し、良く混合する。この溶液にSi(OC2
5 4 とZr(OC4 9 4 とを加え、加水分解し
て均一に混合してゾル溶液とし、この溶液をポリアセタ
ール樹脂製の容器に入れて50℃で20時間ゲル化,熟
成した後、乾燥,焼成装置に移し換えて圧力を1600
hPaに保ち、20℃/hrで1120℃まで昇温して
乾燥,焼成を行ってクラックの無い多孔性ガラスを得
た。
【0074】(比較例8)実施の形態8と同様な手順
で、グリオキシム粉末を有機バインダーに置き換えて作
製していたそれまでの方法では、乾燥,焼成工程で有機
バインダーが燃焼する際のガスによってどうしてもクラ
ックが発生してしまった。この現象を防ぐためには18
0℃〜460℃までの昇温速度を5℃/hrにしなけれ
ばならなかった。また、不良率が実施の形態8に比べて
16%以上悪かった。
【0075】(実施の形態9)Si(OC2 5 4
30g,メタノールを46g,ブタノールを24g,T
i(OC4 9 4 を12.6g,アクリル酸を8g,
さらに0.3規定の塩酸106gに硝酸カリウム8gを
溶解した後、昇華性有機物の8−アミノ−2−ナフトー
ル粉末(粒径0.05μm)を混合した溶液を混合,分
散してゾル溶液とし、50℃で3日間ゲル化,熟成を行
う。
【0076】このゲルを1.82mol/lの酢酸バリ
ウムをメタノール:水=8:2の溶液に溶解した液に6
時間浸漬してBaの分布を付与し、同時に8−アミノ−
2−ナフトールを一部溶解して粒径に分布を付与した。
この後、アセトンに浸漬して乾燥容器に入れ、溶媒の蒸
発速度を0.2g/hに設定して165℃まで昇温し、
乾燥させて割れのないドライゲルを得た。さらに、ドラ
イゲルを焼成炉で718℃まで昇温し、透明な内部応力
の少ない屈折率分布を有するガラスを得た。この時の不
良率は0.8%だった。
【0077】(比較例9)従来は実施の形態9の工程か
ら昇華性有機物を除いた製造方法を用いていた。しか
し、乾燥時に収縮率の違いからクラックの無いドライゲ
ルを得ることが非常に困難であり、乾燥条件を実施の形
態9と同様にした場合はゲルがバラバラになってしまっ
た。
【0078】
【発明の効果】請求項1の効果は、ゲル化反応時に悪影
響を及ぼすことがなく、従来通りのゾル作製工程で乾
燥,焼成条件を必ずしも変更する必要がなく、容易に大
型でもクラックの発生する可能性が少なく、また内部応
力が小さく、さらに乾燥時間の短いセラミックスが歩留
まり良く得れ、コストも低減できる。
【0079】請求項2の効果は、請求項1の効果に加
え、分布付与等の従来から行われている工程にSを添加
して処理するだけで、工程の増加が無い。また、昇華性
有機物が浸漬工程にて溶出することもない。
【0080】請求項3の効果は、大型でもクラックの発
生する可能性が少なく、また乾燥時に収縮が少なくて内
部応力が小さく、さらに乾燥,焼成時間の短いセラミッ
クスが歩留まり良く得られ、コストも低減できる。
【0081】請求項4の効果は、請求項3の効果に加
え、分布付与等の従来からある工程にSを添加して処理
するだけで、工程の増加無しに効果を得ることが出来、
浸漬工程にて昇華性有機物が溶出することもない。ま
た、分布形状の制御が容易になり、分布形状の崩れも改
善することが可能である。さらに、収縮率の違うゲルで
も屈折率分布を有するガラスを得ることが出来る。
【0082】請求項5の効果は、乾燥時まではセラミッ
クス作製工程を変更する必要が無く、非常に簡単な操作
で歩留まりが向上し、より大型のセラミックスを得るこ
とが可能となり、コストも低減できる。
【0083】請求項6の効果は、請求項5の効果に加
え、昇華性有機物が浸漬工程にて溶出することが無く、
また乾燥時までの処理方法を変更する必要がない。
【0084】請求項7の効果は、ゲル化反応への影響が
無いまたは非常に少なく、大幅な乾燥,焼成時間の短縮
を可能にし、また歩留まりが良く、さらに大型の気泡の
混入が無いセラミックスが得られ、コストも低減でき
る。
【0085】請求項8の効果は、請求項7の効果に加
え、浸漬工程にて昇華性有機物が溶出することが無く、
乾燥,焼成時の収縮率が違うゲルでも屈折率分布を有す
るガラスを得ることが出来る。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゾルゲル法によりセラミックスを製造す
    る方法において、ウエットゲルを昇華性有機物を含む溶
    液中へ浸漬した後に乾燥することを特徴とするセラミッ
    クスの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記セラミックスが屈折率分布を有する
    ガラスであることを特徴とする請求項1記載のセラミッ
    クスの製造方法。
  3. 【請求項3】 ゾルゲル法によりセラミックスを製造す
    る方法において、ウエットゲル中に含まれる昇華性有機
    物を、温度の変更あるいは溶媒に浸漬して昇華性有機物
    の溶解度を低下させ、ゲル内に昇華性有機物の微結晶を
    析出させた後に乾燥することを特徴とするセラミックス
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記セラミックスが屈折率分布を有する
    ガラスであることを特徴とする請求項3記載のセラミッ
    クスの製造方法。
  5. 【請求項5】 ゾルゲル法によりセラミックスを製造す
    る方法において、ウエットゲルを昇華性有機物を含む雰
    囲気中で乾燥させることを特徴とするセラミックスの製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記セラミックスが屈折率分布を有する
    ガラスであることを特徴とする請求項5記載のセラミッ
    クスの製造方法。
  7. 【請求項7】 ゾルゲル法によりセラミックスを製造す
    る方法において、ゾル溶液に不溶または微溶の昇華性有
    機物微粉末を添加してゲル化させることを特徴とするセ
    ラミックスの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記セラミックスが屈折率分布を有する
    ガラスであることを特徴とする請求項7記載のセラミッ
    クスの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016102038A (ja) * 2014-11-28 2016-06-02 新技術創造研究所株式会社 金属酸化物ガラス膜の製造方法
JP2016536265A (ja) * 2013-09-13 2016-11-24 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 金属酸化物粒子
US10626055B2 (en) 2013-09-13 2020-04-21 3M Innovative Properties Company Metal oxide particles

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