JPH09295891A - 希土類元素ドープSi材料およびその製造方法 - Google Patents

希土類元素ドープSi材料およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】発光効率が高く、光デバイスへの応用が可能な
希土類元素ドープSi材料およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】超微結晶により形成されたSi材料に、希
土類元素をドープし、上記超微結晶により形成されたS
i材料の可視発光と上記希土類元素の赤外および可視発
光とを発現できるようにしたものである。高純度のアモ
ルファスSi薄膜の中に希土類元素をイオン注入し、希
土類元素の原子を核にして希土類元素ドープSi材料を
製造したり、レーザー・アブレーションを用いて、希土
類元素添加のSiターゲットから直接的に、希土類元素
ドープSi材料を製造したりすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類元素を添加
(ドープ)したシリコン(Si)材料、即ち、希土類元
素ドープSi材料およびその製造方法に関し、さらに詳
細には、光メモリなどの光デバイスの製造を可能にする
希土類元素ドープSi材料およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【発明の背景および発明が解決しようとする課題】従来
より、半導体に添加された希土類元素の原子は、4f内
殻遷移による鋭い赤外および可視発光を示すことが知ら
れている。
【0003】こうした希土類元素の原子の発光の波長位
置や半値全幅は、半導体たる母体材料または温度にほと
んど依存せず、一定の値を示すものである。
【0004】特に、希土類元素の中で、例えば、エルビ
ウム(Er)は、1.55μmの波長で発光するもので
あった。
【0005】ここで、1.55μmという波長は、光フ
ァイバーの最小伝達損失波長であるため、エルビウムの
発光の光ファイバー通信への応用が大きく期待されてい
る。即ち、現在においては、こうした希土類元素の光学
特性を利用した光デバイスの開発が切望されている。
【0006】本発明は、上記した背景に鑑みてなされた
ものであり、発光効率が高く、光メモリなどの光デバイ
スへの応用が可能な希土類元素ドープSi材料およびそ
の製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明における希土類元素ドープSi材料は、超微
結晶により形成されたSi材料に、希土類元素をドープ
し、上記超微結晶により形成されたSi材料の可視発光
と上記希土類元素の赤外および可視発光とを発現できる
ようにしたものである。
【0008】また、希土類元素としてエルビウムを、超
微結晶により形成されたSi材料にドープするようにし
たものである。
【0009】さらに、本発明による希土類元素ドープS
i材料の製造方法は、高純度のアモルファスSi薄膜の
中に希土類元素をイオン注入し、希土類元素の原子を核
にして希土類元素ドープSi材料を製造するものであ
る。
【0010】さらにまた、本発明による希土類元素ドー
プSi材料の製造方法は、レーザー・アブレーションを
用いて、希土類元素添加のSiターゲットから直接的
に、希土類元素ドープSi材料を製造するものである。
【0011】また、上記した本発明による希土類元素ド
ープSi材料の製造方法のそれぞれにおいて、希土類元
素としてエルビウムを用いたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面に基づいて、本
発明による希土類元素ドープSi材料およびその製造方
法の実施の形態を詳細に説明するものとする。
【0013】ところで、半導体における希土類元素の原
子の発光メカニズムは、今だ明確には解明されていな
い。このため、エルビウムをSi材料に添加して発光特
性を観測する研究は近年多く報告されているが、上記発
光メカニズムの未解明のために、発光効率が低く、実用
するまでに至っていないという問題点があった。
【0014】しかしながら、出願人は、約10年前から
希土類元素としてエルビウムをドープした半導体の光学
特性の研究に取り組み、エルビウムが母体材料に占める
位置やエネルギー伝達過程などを明らかにし、この系の
試料作製と評価手段を熟知しており、発光効率の高い希
土類ドープSi材料を得ることができた。
【0015】即ち、結晶の寸法が3〜5nmの大きさの
微結晶により構成されるSi(以下、「ナノ微結晶S
i」と称す。)では、量子サイズ効果が現れることにな
り、電子の波としての性質が顕著に現れて、バルク状の
Si材料とは異なる光学的、電気的特性を示すことにな
るものであり、出願人は、平均粒径3nmのナノ微結晶
Si薄膜を製作し、世界ではじめてSi材料の青色の強
い発光を室温で実現した(特開平7−237995号公
報参照)。この発光は、室温でも極低温でも発光効率が
極めて高く劣化しないが、この優れた光学特性は、量子
準位間の直接遷移に基づくものである。
【0016】ここで、Si材料にドープされた希土類元
素の発光効率を高めるためには、母体結晶たるSi結晶
にドープされる希土類元素と母体結晶との相互作用を如
何に強くすることができるかが重要である。
【0017】つまり、希土類元素としてエルビウムを選
択した場合に、Si材料にドープされたエルビウムの発
光効率を高めるためには、母体結晶たるSi結晶にドー
プされるエルビウムと母体結晶との相互作用を如何に強
くすることができるかが重要である。
【0018】エルビウム・イオンからの発光は、エルビ
ウム原子の内殻にある4f軌道の電子の結晶場分裂準位
間の遷移によって起こる。基本的には、結晶場によっ
て、エルビウム原子の対称性が減り、遷移確率が上が
る。また、遷移確率は、遷移する準位の状態密度に比例
する。そこで、出願人は、一個のナノ微結晶に一個のエ
ルビウムをドープし、超微細構造による結晶場対称性の
低下をはかり、また、量子サイズ効果により、母体ナノ
微結晶の量子準位の状態密度を格段に上げることに着目
し、エルビウムのエネルギー伝達効率を高め、発光効率
のよい材料作製に成功した。
【0019】出願人の実験によれば、母体材料のSiを
nmオーダーの超微結晶により形成したナノ微結晶Si
として形成し、4f電子とSi量子ドットに閉じこめら
れた電子との相互作用によって、エルビウム発光中心へ
のエネルギー伝達が効率よく行われ、発光の高効率化が
可能となった。
【0020】図1には、エルビウムをドープしたナノ微
結晶Siの1.55μm発光スペクトルが示されてい
る。本実験により、エルビウムの中心発光効率が高めら
れ、図1に示すような鋭い発光は、室温まで観測でき
た。このエルビウム添加ナノ微結晶Si材料を用いれ
ば、室温で動作する、Si発光素子をはじめて製作でき
る。こうしたエルビウムをドープしたナノ微結晶Siに
おいては、ナノ微結晶Siによる青色発光とエルビウム
による1.55μmの波長の発光との双方を発現するこ
とができたものであり、エルビウムをドープしたナノ微
結晶Siにおける発光メカニズムは、エルビウムの内殻
準位と量子準位の相互作用によるものである。
【0021】即ち、エルビウム発光中心の励起は、母体
材料となるナノ微結晶Siの量子準位に励起された電子
からのエネルギー伝達によって起こり、またその逆の過
程も存在する。ナノ微結晶Siでは、量子サイズ効果に
より直接遷移が著しく増幅され、室温での可視青色発光
が強く観測されている(特開平7−237995号公報
参照)。
【0022】こうしたエルビウムをドープしたナノ微結
晶Siにおいて、ナノ微結晶Siからの青色発光は発光
寿命が数百ピコ秒と非常に速いため、超高速な励起が可
能である。一方、エルビウムによる1.55μmの波長
の発光の発光寿命は1ミリ秒以上であり、ナノ微結晶S
iからの青色発光より6桁も長い(図2参照)。つま
り、可視青色発光準位への励起を用いて、エルビウム準
位に書かれた情報は、1ミリ秒まで保持できる。つま
り、エルビウムの発光寿命としての1ミリ秒は、コンピ
ュータのDRAMのメモリー時間としては十分な長さで
あるので、エルビウム準位を光のメモリーとして用いる
ことが十分可能である(図3(a)参照)。また、エル
ビウム準位に記録されたデータの読み出しはエルビウム
を再励起し、母体材料の発光として取り出すことになる
(図3(b))。エルビウム原子が励起準位にいる時間
が1ミリ秒以上あるため、光データを記録する格好の媒
体となりうる。
【0023】即ち、エルビウムをナノ微結晶Siにドー
プすることにより、青色発光および1.55μmの波長
で発光する光デバイスが作成可能であり、従って、エル
ビウムをドープしたナノ微結晶Siにより、Si基板に
電子回路と光回路とを集積することが可能になる。
【0024】つまり、エルビウムをドープしたナノ微結
晶Si(ナノ微結晶Si:Er)は、Si基板上で構成
することが可能であり、ナノ微結晶Si:Erにより構
成した光メモリーでは、書き換えや読み出しの光を可視
光とし、情報の出力は光ファイバーの最小伝達損失波長
の1.55μmで行うことができる。即ち、単結晶のS
iでは、発光的遷移の確率が極めて低く、エルビウム準
位へのエネルギーの伝達も効率が低いため、エルビウム
からの強い発光が期待できず、情報の読み書きもほぼ不
可能である。しかしながら、ナノ微結晶Si:Erで
は、量子準位とエルビウム内殻電子との相互作用によ
り、エルビウム準位を高速に励起または再励起すること
ができ、その情報を可視光の青色光で書いたり、読んだ
りすることができる。
【0025】なお、ナノ微結晶Si:Erを用いて光デ
バイスとして光メモリを構成するには、例えば、図4
(a)(b)に示すように、Si基板10上にナノ微結
晶Si:Er(nc−Si:Er)のセル12のアレイ
14を形成し(図4(a))、レーザー16を照射して
ナノ微結晶Si:Erの各セル12に情報を書き込むと
ともに、検出器18によりセル10からの発光を検出し
て情報を読み取るようにすればよい(図4(b))。
【0026】また、図5に示すように、図4の場合と同
様にSi基板10上にナノ微結晶Si:Er(nc−S
i:Er)のセル12のアレイ14を形成し、電流によ
りセル10への情報の書き込みを行い、検出器18によ
りセル10からの発光を検出して情報を読み取るように
構成してもよい。
【0027】上記したように、ナノ微結晶Si:Erを
用いて光デバイスとして光メモリを構成することができ
るが、光メモリ以外の光デバイスとしては、例えば、図
6に示す波長変換器を構成することができる。
【0028】即ち、図6に示す波長変換器においては、
レーザーやLEDから出射される可視光情報をナノ微結
晶Si:Er(nc−Si:Er)に入射することによ
り、可視光情報を1.55μm波長(光ファイバーの最
小伝達損失波長)の光情報に変換して、光ファイバー・
システムに入力することができる。
【0029】上記したナノ微結晶Si:Erの薄膜を製
造するには、以下の2種類の方法を用いることができ
る。
【0030】即ち、第1の方法は、高純度のアモルファ
スSi薄膜の中にエルビウムをイオン注入し、エルビウ
ム原子を核にするナノ微結晶Siを製作する方法であ
る。この方法では、一個のSiドットに一個のエルビウ
ム原子をドープすることができ、母体のナノ微結晶から
のエネルギー伝達を良くする。
【0031】第2の方法は、レーザー・アブレーション
を用いて直接エルビウム添加のSiターゲットからSi
の微結晶を作製する。この方法では、ナノ微結晶Si:
Erを大面積かつ厚く製作することができる。
【0032】また、エルビウムの発光は、極低温でも室
温でも1.55μmで一定の値を示しており、この性質
は、エルビウム発光が母体材料の物性を調べるプローブ
となり得ることを示している。即ち、エルビウムは、母
体からのエネルギー伝達により励起されるので、非発光
な母体材料でも、エルビウムを発光させることができ、
この発光をプローブに使用することができる。
【0033】例えば、ポーラス・シリコンのような発光
エネルギーと吸収端が一致しないような材料や、微結晶
Siのようなアモルファス領域の存在によって微結晶の
吸収が隠される場合、エルビウムの発光をプローブに、
母体材料の吸収端あるいは禁制帯幅を測定できる。図7
は、エルビウム発光の励起特性から母体ポーラス・シリ
コンの禁制帯幅Egを測定できることを示したグラフで
あり、図7(a)は試料1たるエルビウム(Er)を添
加したポーラス・シリコンのエルビウム発光とポーラス
・シリコンの可視発光との励起特性であり、図7(b)
は試料2たるエルビウム(Er)を添加したポーラス・
シリコンのエルビウム発光とポーラス・シリコンの可視
発光との励起特性であり、エルビウム発光の励起エネル
ギー依存性と母体ポーラス・シリコンの励起エネルギー
の依存性とが示されている。図7(a)(b)に示され
ているように、エルビウムとポーラス・シリコンとは同
じ吸収端を持ち、エルビウム発光の吸収端が母体ポーラ
ス・シリコンの禁制帯幅Egと一致する。従って、ポー
ラス・シリコンの発光が観測できなくても、この方法で
Egを同定できる。ポーラス・シリコンに限らず、エル
ビウムのような発光エネルギーが0.8eV(1.54
μm)と小さいプローブを用いれば、多くの材料、特
に、混合材料のプローブとして有効である。
【0034】即ち、図7(a)(b)は発光するポーラ
ス・シリコンを例に示したが、発光しない母体材料で
も、エルビウム発光の吸収端を測定すれば、母体材料の
禁制帯幅Egが決まる。
【0035】なお、上記においては、希土類元素として
エルビウムを用いた場合に関して説明したが、エルビウ
ム以外の希土類元素を用いてもよいことは勿論である。
【0036】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、発光効率が高く、光デバイスへの応用が可
能な希土類元素ドープSi材料およびその製造方法を提
供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】エルビウムをドープしたナノ微結晶Siの1.
55μm発光スペクトルを示すグラフである。
【図2】エルビウムの発光の時間応答特性を示すグラフ
である。
【図3】光データの読み書きの原理を示す説明図であっ
て、(a)は光データの書き込みの原理を示す説明図で
あり、(b)は光データの読み込みの原理を示す説明図
である。
【図4】ナノ微結晶Si:Erを用いて構成した光メモ
リの説明図であって、(a)は光メモリの平面構成説明
図であり、(b)は動作原理の断面説明図である。
【図5】ナノ微結晶Si:Erを用いて構成した光メモ
リの他の動作原理の説明図である。
【図6】ナノ微結晶Si:Erを用いて構成した波長変
換器動作原理の説明図である。
【図7】エルビウム発光の励起特性から母体ポーラス・
シリコンの禁制帯幅Egを測定できることを示したグラ
フであり、図7(a)は試料1たるエルビウム(Er)
を添加したポーラス・シリコンのエルビウム発光とポー
ラス・シリコンの可視発光との励起特性であり、図7
(b)は試料2たるエルビウム(Er)を添加したポー
ラス・シリコンのエルビウム発光とポーラス・シリコン
の可視発光との励起特性であり、エルビウム発光の励起
エネルギー依存性と母体ポーラス・シリコンの励起エネ
ルギーの依存性とが示されている。
【符号の説明】
10 Si基板 12 ナノ微結晶Si:Er(nc−Si:Er)
のセル 14 アレイ 16 レーザー 18 検出器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅野 卓雄 埼玉県和光市広沢2番1号 理化学研究所 内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超微結晶により形成されたSi材料に、
    希土類元素をドープし、前記超微結晶により形成された
    Si材料の可視発光と前記希土類元素の赤外および可視
    発光とを発現できることを特徴とする希土類元素ドープ
    Si材料。
  2. 【請求項2】 前記希土類元素がエルビウムである請求
    項1に記載の希土類元素ドープSi材料。
  3. 【請求項3】 高純度のアモルファスSi薄膜の中に希
    土類元素をイオン注入し、希土類元素の原子を核にして
    希土類元素ドープSi材料を製造することを特徴とする
    希土類元素ドープSi材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 レーザー・アブレーションを用いて、希
    土類元素添加のSiターゲットから直接的に、希土類元
    素ドープSi材料を製造することを特徴とする希土類元
    素ドープSi材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記希土類元素がエルビウムである請求
    項3または請求項4のいずれか1項に記載の希土類元素
    ドープSi材料の製造方法。
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