JPH09281536A - 光導波路及び光波長変換素子とそれらの製造方法、ならびに短波長光発生装置及び光ピックアップ - Google Patents

光導波路及び光波長変換素子とそれらの製造方法、ならびに短波長光発生装置及び光ピックアップ

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JPH09281536A
JPH09281536A JP8346143A JP34614396A JPH09281536A JP H09281536 A JPH09281536 A JP H09281536A JP 8346143 A JP8346143 A JP 8346143A JP 34614396 A JP34614396 A JP 34614396A JP H09281536 A JPH09281536 A JP H09281536A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 短波長光発生用の光波長変換素子の高効率化
及び出力安定化を図る。 【解決手段】 LiTaO3基板101の上に形成した分極反転
層104、プロトン交換層105、及びクラッド層110を含む
光波長変換素子において、クラッド層110を基板101より
高い屈折率を有する材料で形成する。これによって、伝
搬する基本波106の閉じ込めを強化して、基本波106と第
2高調波(第2高調波)107とのオーバラップを高め、
波長の変換効率を大幅に改善する。さらに、光損傷によ
る出力変動も低減されて、高出力且つ安定な光波長変換
素子が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コヒーレント光源
を応用した光情報処理或いは光応用計測に使用される光
導波路、及びそれを使用した光波長変換素子、ならびに
それらの製造方法に関する。さらに、上記のような光導
波路或いは光波長変換素子を用いて構成される短波長光
発生装置、及びそれを用いた光ピックアップに関する。
【0002】
【従来の技術】光導波路は、光波制御技術として、通
信、光情報処理、計測などの広い分野で応用されてい
る。中でも、光導波路を光波長変換素子に適用すれば、
半導体レーザから出射されるレーザ光(基本波)の波長
をそのような光波長変換素子で変換し、より短波長の光
(第2高調波)を得ることができる小型の短波長光源が
実現されるので、盛んに研究が行われている。
【0003】従来の光導波路としては、埋め込み型光導
波路が一般に用いられている。図1(a)〜(d)は、
プロトンイオン(+H)の交換を行うプロトン交換処理
と熱処理とによって埋め込み型光導波路を製造する、従
来技術による方法を説明する断面図である。
【0004】具体的には、まず図1(a)に示すよう
に、LiTaO3基板11の表面(+C面)に、直線状の開口
部を有するTa層12を形成する。Ta層12は、LiTaO3
板11の表面を、所定の領域を除いてマスクする。
【0005】次に、Ta層12でマスクされたLiTaO3基板
11を、約220℃〜約300℃のピロリン酸で処理し
て、図1(b)に示すように、マスクされていないLiTa
O3基板11の表面近傍にプロトン交換処理された領域1
3(以下では、「プロトン交換領域」とも称する)を形
成する。
【0006】続いて、Ta層12をフッ酸と硝酸とを1:
2で混合した溶液に数秒間浸して、図1(c)に示すよ
うにTa層12を除去する。
【0007】その後に、LiTaO3基板11をアニール処理
して、図1(d)に示すように、アニール処理されたプ
ロトン交換層14を形成する。このようにして形成され
たアニール処理されたプロトン交換層14が、埋め込み
型光導波路として機能する。
【0008】一方、光の閉じ込めを強化するためにリッ
ジ型の光導波路構造を採用した光波長変換素子が、例え
ば特開平1−238631号公報に開示されている。
【0009】図2(a)に示すのはそのようなリッジ型
光導波路22を含む従来の光波長変換素子の構成の一例
であり、LiNbO3基板21の上に形成された光導波路22
の表面がリッジ状に加工されている。すなわち、図2
(a)の線2B−2Bに沿った断面図である図2(b)
に示すように、光が導波する部分(すなわち、リッジ
部)22aの厚さdが、側部22bの厚さhよりも大き
くなっている。光導波路22にリッジを設け、そこを光
の導波部分22aとして機能させることにより、光の横
方向の閉じ込めが強まって導波路22の内部での基本波
のパワー密度が向上され、基本波から第2高調波への変
換効率の向上を実現している。
【0010】さらに、図2(a)の光波長変換素子の構
成では、光導波路22の厚さが、基本波P1が入射する
端面24の近傍でその他の部分よりも厚くなっていて、
LiNbO3基板21への入射部23を構成している。図2
(a)の線2C−2Cに沿った断面図である図2(c)
に示すように、端面24から入射部23を通ってLiNbO3
基板21に入射した基本波P1は、波長が変換されて第
2高調波P2となった後に、出射部25からLiNbO3基板
21の外へ出ていく。
【0011】さらに、例えば特開昭61−94031号
公報には、装荷型光導波路を用いた光波長変換素子が開
示されている。このような光波長変換素子の構成の一例
を、図3に示す。
【0012】具体的には、LiNbO3基板31の上にプロト
ン交換によって光導波路32が形成され、さらにその上
には、光導波路32より低い屈折率を有するSiO2によっ
て、ストライプ状のクラッド層(装荷層)33が形成さ
れている。このような構成を有する装荷型光導波路によ
り、低損失の導波路の形成が可能となって、基本波P1
を高効率で第2高調波P2に変換する光波長変換素子が
実現される。
【0013】また、LiNbO3基板にリッジ型導波路を形成
する以下のような方法が、すでに報告されている。
【0014】LiNbO3は機械的及び化学的に安定な材料で
あってエッチングされ難いために、レジストとのエッチ
ング選択比が小さい。そのため、LiNbO3の表面に深いエ
ッチング形状を作製することは、一般に困難である。し
かし、プロトン交換処理されたLiNbO3では、エッチング
速度が、未処理の基板の数倍に速まる。この現象を利用
して、以下のようなリッジ型光導波路の製造方法が提案
されている。すなわち、C板のLiNbO3基板を適切な酸の
中で熱処理して、その表面にプロトン交換層を形成す
る。さらに、形成されたプロトン交換層の上にフォトリ
ソグラフィ法でストライプ状のTi保護マスク層を形成
し、ECRエッチングにより非マスク部分をエッチング
する。その後にTi保護マスク層を除去し、光導波路の両
端面を光学研磨して、入出射部を形成する。
【0015】一方、図4は、埋め込み型光導波路を用い
た光波長変換素子の他の構成を示す。すなわち、LiNbO3
基板41の上にプロトン交換光導波路42が形成され、
さらにその上には、光導波路42より高い屈折率を有す
るTiO2によってクラッド層(装荷層)43が形成されて
いる。また、光導波路42に周期的に直交するように、
複数の分極反転層44が形成されている。このような構
成の入射部45から入射した基本波P1は、光導波路4
2を伝搬しながら分極反転層44とオーバラップして第
2高調波P2に変換され、出射部46から外に出てく
る。
【0016】図5(a)及び(b)は、クラッド層(装
荷層)43がない構成とある構成とにおける、光導波路
42の導波モードと分極反転層44とのオーバラップを
模式的に示す図である。図5(a)及び(b)のそれぞ
れにおいて、図の左側には光波長変換素子の断面構造を
示し、図の右側には、導波路断面の深さ方向の伝搬光の
電界分布を表す。
【0017】図5(a)に示すクラッド層を有さない構
成では、分極反転層44とオーバラップして高調波に変
換されるのは伝搬光(基本波P1)の約半分(図5
(a)の右側に示された電界分布におけるハッチングさ
れた領域)に過ぎず、得られる高調波出力はあまり大き
くない。一方、図5(b)に示すように光導波路42の
上に屈折率が大きいクラッド層43を有する構成では、
伝搬光(基本波P1)の大部分(図5(b)の右側に示
された電界分布におけるハッチングされた領域)が分極
反転層44にオーバラップするので、基本波P1を高効
率で第2高調波P2に変換する光波長変換素子が実現さ
れる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】光導波路を光波長変換
素子に適用する際には、導波モード(基本波及び第2高
調波)間のオーバラップが、高効率の光波長変換素子を
実現するための重要な要素である。すなわち、基本波の
電界分布と第2高調波と電界分布とのオーバラップが大
きいほど、光波長変換素子の変換効率が大きくなる。高
効率の光波長変換素子を実現するために基本波の電界分
布と第2高調波と電界分布とのオーバラップを大きくす
るには、例えば、光導波路の屈折率分布をステップ状に
することが考えられる。
【0019】しかし、上記のようにプロトン交換処理と
熱処理とによって埋め込み型光導波路を製造する従来技
術の方法では、形成される光導波路の屈折率分布が、プ
ロトンの熱拡散状態に依存して、表面近傍の屈折率が高
く深さ方向に向かって次第に低くなるグレーディッド状
となる。このような屈折率分布状態の下では、導波する
基本波と第2高調波との間で電界分布が大きく異なり、
高効率の光波長変換素子の実現が困難である。また、こ
の従来の方法では、光導波路の屈折率分布を自由に制御
できない。
【0020】また、従来の埋め込み型光導波路では、導
波路の周辺部への漏れ光によって光損傷が発生しやす
く、高いパワー密度を有する光を導波させて高出力の第
2高調波を発生させることが難しい。
【0021】一方、光導波路の上にクラッド層が形成さ
れている構成では、光導波路の閉じ込めを強化して高効
率化を図っている。すなわち、光導波路を伝搬する導波
光のモード分布(基本モード)を、クラッド層によって
表面近傍に移動させて、分極反転部分と基本モードの基
本波或いは基本モードの第2高調波とのオーバラップ
を、向上させようとしている。
【0022】しかし、従来の構成では、分極反転部と導
波モードとの間のオーバラップの増大は図れるが、変換
効率への影響が最も大きい基本波と第2高調波との間の
オーバラップの増大が図れないために、変換効率の向上
に限界がある。これは、基本波と第2高調波とでは、波
長の違いより光導波路内での導波モードの分布が互いに
大きく異なるため、両モード間のオーバラップの増大に
制限があるためである。
【0023】さらに、基本波と第2高調波とがオーバラ
ップしない部分が大きいために、光損傷の発生による第
2高調波出力の不安定性が生じ得る。
【0024】一方、リッジ型光導波路を用いる従来の光
波長変換素子では、光導波路の閉じ込め効果によるパワ
ー密度の増大により、変換効率の向上を達成している。
しかし、基本波に対するリッジ導波路による閉じ込め効
果の増大は横方向に限られていて、深さ方向の閉じ込め
は向上しない。これより、変換効率への影響が最も大き
い基本波と第2高調波との間のオーバラップ(特に深さ
方向のオーバラップ)の増大がリッジ構造では達成でき
ず、変換効率の向上に限界がある。
【0025】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであり、その目的は、(1)屈折率分布の制
御が可能であって、基本波と第2高調波とのオーバーラ
ップを大きくすることができるとともに、耐光損傷性に
優れた導波構造を有する光導波路を提供すること、
(2)上記のような光導波路を利用して、高出力の第2
高調波出力を安定して高効率に供給できる光導波路を提
供すること、(3)そのような光導波路及び光波長変換
素子の製造方法を提供すること、及び、(4)前述の光
導波路や光波長変換素子を用いて形成される短波長光発
生装置や光ピックアップを提供すること、である。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明の光導波路は、光
学材料と、該光学材料に形成された光導波層と、該光導
波層の表面に形成されたクラッド層と、を備え、該光導
波層は波長λ1の光及び波長λ2の光(λ1>λ2)が
導波可能であり、該クラッド層の屈折率と厚さは、該波
長λ2の光に対する導波条件を満足し且つ該波長λ1の
光に対してはカットオフ条件を満たすように設定されて
いて、そのことによって上記目的が達成される。
【0027】ある実施形態では、前記光導波層がストラ
イプ状である。
【0028】ある実施形態では、前記光学材料の表面近
傍に形成された屈折率n1の高屈折率層をさらに備え、
該光学材料が屈折率nsを有し、前記光導波層は該光学
材料の表面近傍にストライプ状に形成され且つ屈折率n
fを有しており、該屈折率はnf>n1>nsの関係を
満足している。
【0029】ある実施形態では、前記クラッド層がスト
ライプ状である。さらに、前記光導波層がストライプ状
であってもよい。
【0030】ある実施形態では、前記光導波層の表面に
ストライプ状にリッジが形成されており、前記クラッド
層は該リッジの上にストライプ状に形成されていて、該
光導波層の中の前記光は該リッジを導波する。
【0031】ある実施形態では、前記光学材料は円筒状
のコアを形成し、前記クラッド層は該コアの周辺部を覆
っている。
【0032】好ましくは、前記光導波路において、前記
波長λ1の光は基本モードで伝搬し、前記波長λ2の光
は高次モードで伝搬する。
【0033】好ましくは、前記クラッド層の実効屈折率
Ncと前記光導波層の実効屈折率NfとはNc>1.0
2・Nfの関係を満足している。
【0034】前記クラッド層が多層膜からなっていても
よい。
【0035】本発明の光波長変換素子は、非線形光学効
果を有する材料でできた基板と、該基板に形成された光
導波層と、該光導波層の表面に形成されたクラッド層
と、を備え、該光導波層は波長λの基本波及び波長λ/
2の第2高調波が導波可能であり、該クラッド層は、該
光導波層内を導波する基本モードの基本波と高次モード
の第2高調波との間の電界分布の重なりを高めて、該基
本波を該第2高調波に変換し、そのことによって上記目
的が達成される。
【0036】好ましくは、前記クラッド層の屈折率と厚
さは、前記第2高調波に対する導波条件を満足し且つ前
記基本波に対してはカットオフ条件を満たすように設定
されている。
【0037】ある実施形態では、前記光導波層がストラ
イプ状である。
【0038】ある実施形態では、前記基板の表面近傍に
形成された屈折率n1の高屈折率層をさらに備え、該基
板が屈折率nsを有し、前記光導波層は該基板の表面近
傍にストライプ状に形成され且つ屈折率nfを有してお
り、該屈折率はnf>n1>nsの関係を満足してい
て、前記クラッド層の屈折率と厚さは、前記第2高調波
に対する導波条件を満足し且つ前記基本波に対してはカ
ットオフ条件を満たすように設定されている。
【0039】ある実施形態では、前記クラッド層がスト
ライプ状であり、該クラッド層の屈折率と厚さは、前記
第2高調波に対する導波条件を満足し且つ前記基本波に
対してはカットオフ条件を満たすように設定されてい
る。好ましくは、前記光導波層がストライプ状である。
【0040】ある実施形態では、前記光導波層の表面に
ストライプ状にリッジが形成されており、前記クラッド
層は該リッジの上にストライプ状に形成されていて、該
光導波層の中の前記光は該リッジを導波し、該クラッド
層の屈折率と厚さは、前記第2高調波に対する導波条件
を満足し且つ前記基本波に対してはカットオフ条件を満
たすように設定されている。
【0041】好ましくは、前記光導波層において、前記
基本モードの基本波と前記高次モードの第2高調波とが
お互いに位相整合している。
【0042】好ましくは、前記クラッド層の実効屈折率
Ncと前記光導波層の実効屈折率NfとはNc>1.0
2・Nfの関係を満足している。
【0043】前記クラッド層が多層膜からなっていても
よい。
【0044】前記光導波層を伝搬する前記第2高調波の
モードの次数は、前記クラッド層を伝搬可能なモードの
次数より1つ大きくあり得る。
【0045】前記クラッド層がNb2O5を含んでいてもよ
い。或いは、前記クラッド層が線形材料からなっていて
もよい。
【0046】好ましくは、前記基板がLiNb1-xTaxO3(0
≦x≦1)で、該基板内に周期状の分極反転構造が形成
されている。
【0047】本発明の短波長光発生装置は、半導体レー
ザと、光波長変換素子と、を備え、該半導体レーザから
出射された光の波長が該光波長変換素子により変換さ
れ、該光波長変換素子が上記の特徴を有しており、その
ことによって上記目的が達成される。
【0048】本発明の光ピックアップは、短波長光発生
装置と、集光光学系と、を備え、該短波長光発生装置か
ら出射される短波長光が該集光光学系により集光され、
該短波長発生装置が上記の特徴を有しており、そのこと
によって上記目的が達成される。
【0049】本発明の光導波路の製造方法は、非線形光
学物質からなる基板の表面近傍に第1のイオン交換層を
形成する工程と、該第1のイオン交換層をアニール処理
してアニール処理イオン交換層を形成する工程と、該ア
ニール処理イオン交換層の所定の位置に第2のイオン交
換層を形成する工程と、該第2のイオン交換層の上方に
所定のパターンを有するレジストマスクを形成する工程
と、該レジストマスクを使用して該第2のイオン交換層
の非マスク部分をエッチングで除去し、リッジを形成す
る工程と、を包含しており、そのことによって上記目的
が達成される。
【0050】ある実施形態では、前記第2のイオン交換
層の形成工程は、前記アニール処理イオン交換層の表面
に直線状の金属マスクを形成する工程と、該アニール処
理イオン交換層のうちで該金属マスクに覆われていない
部分に前記第2のイオン交換層を形成する工程と、を含
み、前記レジストマスクは、該金属マスクの上のみに選
択的に形成される。好ましくは、前記レジストパターン
は、裏面露光を利用して前記金属マスクの上のみに選択
的に形成される。
【0051】他の実施形態では、前記第2のイオン交換
層の形成工程は、前記アニール処理イオン交換層の表面
近傍に前記第2のイオン交換層を形成する工程を含み、
前記レジストマスクは、該第2のイオン交換層の表面に
直線状に形成される。
【0052】前記リッジの表面に誘電体膜を形成する工
程をさらに包含し得る。
【0053】前記基板は、C板のLiNb1-XTaxO3(0≦x
≦1)基板であり得る。
【0054】前記第1のイオン交換層及び前記第2のイ
オン交換層は、いずれもプロトン交換層であり得る。
【0055】本発明の光波長変換素子の製造方法は、非
線形光学物質からなる基板の表面近傍に第1のイオン交
換層を形成する工程と、該第1のイオン交換層をアニー
ル処理してアニール処理イオン交換層を形成する工程
と、該基板内に分極反転層を形成する工程と、該アニー
ル処理イオン交換層の所定の位置に第2のイオン交換層
を形成する工程と、該第2のイオン交換層の上方に所定
のパターンを有するレジストマスクを形成する工程と、
該レジストマスクを使用して該第2のイオン交換層の非
マスク部分をエッチングで除去し、リッジを形成する工
程と、を包含しており、そのことによって上記目的が達
成される。
【0056】ある実施形態では、前記第2のイオン交換
層の形成工程は、前記アニール処理イオン交換層の表面
に直線状の金属マスクを形成する工程と、該前記アニー
ル処理イオン交換層のうちで該金属マスクに覆われてい
ない部分に前記第2のイオン交換層を形成する工程と、
を含み、前記レジストマスクは、該金属マスクの上のみ
に選択的に形成される。好ましくは、前記レジストパタ
ーンは、裏面露光を利用して前記金属マスクの上のみに
選択的に形成される。
【0057】他の実施形態では、前記第2のイオン交換
層の形成工程は、前記アニール処理イオン交換層の表面
近傍に前記第2のイオン交換層を形成する工程を含み、
前記レジストマスクは、該第2のイオン交換層の表面に
直線状に形成される。
【0058】前記リッジの表面に誘電体膜を形成する工
程をさらに包含し得る。
【0059】前記基板は、C板のLiNb1-XTaxO3(0≦x
≦1)基板であり得る。
【0060】前記第1のイオン交換層及び前記第2のイ
オン交換層が、いずれもプロトン交換層であり得る。
【0061】本発明の他の局面によれば、非線形光学物
質からなる基板と、該基板の表面近傍に形成された、光
導波領域を含む第1のイオン交換層と、該光導波領域の
近傍に形成された、該第1のイオン交換層のイオン交換
濃度より高いイオン交換濃度を有する第2のイオン交換
層と、を備える光導波路が提供され、そのことによって
上記目的が達成される。
【0062】ある実施形態では、前記第1のイオン交換
層が導波方向と実質的に平行な直線状のリッジを有し、
該リッジが前記光導波領域を含み、前記第2のイオン交
換層は該リッジの側面に形成されている。
【0063】他の実施形態では、前記第2のイオン交換
層は、前記第1のイオン交換層の表面に、導波方向と実
質的に平行な直線状のリッジを形成している。
【0064】前記基板は、C板のLiNb1-XTaxO3(0≦x
≦1)基板であり得る。
【0065】前記第1のイオン交換層及び前記第2のイ
オン交換層は、いずれもプロトン交換層であり得る。
【0066】本発明のさらに他の局面によれば、非線形
光学物質からなる基板と、該基板内に一定周期で形成さ
れた分極反転層と、該基板の表面近傍に形成された、光
導波領域を含む第1のイオン交換層と、該光導波領域の
近傍に形成された、該第1のイオン交換層のイオン交換
濃度より高いイオン交換濃度を有する第2のイオン交換
層と、を備える光波長変換素子が提供され、そのことに
よって上記目的が達成される。
【0067】ある実施形態では、前記第1のイオン交換
層が導波方向と実質的に平行な直線状のリッジを有し、
該リッジが前記光導波領域を含み、前記第2のイオン交
換層は該リッジの側面に形成されている。
【0068】他の実施形態では、前記第2のイオン交換
層は、前記第1のイオン交換層の表面に導波方向と実質
的に平行な直線状のリッジを形成している。
【0069】前記基板は、C板のLiNb1-XTaxO3(0≦x
≦1)基板であり得る。
【0070】前記第1のイオン交換層及び前記第2のイ
オン交換層は、いずれもプロトン交換層であり得る。
【0071】
【発明の実施の形態】本発明は、非線形光学効果による
第2高調波の発生を利用した光波長変換素子において、
基本モードの基本波と高次モードの第2高調波との間の
位相整合を利用して両者のオーバラップを大きくし、基
本波から第2高調波への変換効率を高めようとするもの
である。以下に、まず、その原理について説明する。
【0072】まず最初に、一般の光導波路における光波
長変換について説明する。
【0073】通常、光導波路は、図6(a)の断面図に
示すように、基板61(屈折率:ns)とその上に形成
された光導波路62(屈折率:nf)とから構成され
る。屈折率はnf>nsなる関係を満たし、導波するモ
ード(基本モードの基本波64、基本モードの第2高調
波65、及び1次モードの第2高調波66)の電界分布
は、図6(b)に示すようになる。基本波と第2高調波
との電界のオーバラップは、図6(b)から分かるよう
に、基本モードの基本波64と基本モードの第2高調波
65との間が最も大きく、第2高調波の導波モードの次
数が高くなるに従って、オーバラップは低下する。光波
長変換素子の変換効率は導波モードのオーバラップ量に
比例するため、上記のようにオーバラップ量が最も大き
い基本モード間の位相整合が、最も変換効率の高い変換
となる。
【0074】次に、光導波路の上に、その屈折率nfよ
り高い屈折率ncを有するクラッド層を形成した場合に
ついて、以下に説明する。
【0075】光導波路の上に、より高い屈折率を有する
クラッド層を設けると、基本波のモード分布はクラッド
層側に偏り、導波モードは素子の表面近傍に強く閉じ込
められる。従って、基本波の強い閉じ込めが実現する。
クラッド層を有する従来の光波長変換素子では、この基
本波の強い閉じ込めを利用して、変換効率の向上を図
る。しかし、基本波と第2高調波とでは波長が異なり、
その屈折率分散も存在するため、導波モードの分散はそ
れぞれ異なる(基本波に比べて第2高調波は、より強く
クラッド層に引きつけられる)。従って、モード間のオ
ーバラップの増大には、依然として限界がある。
【0076】上記のような問題点を解決するために、本
願発明者らは、高屈折率のクラッド層を利用して第2高
調波の導波モードを制御する、新しい方法を見い出し
た。その内容を、以下に説明する。
【0077】先に説明したように、高屈折率のクラッド
層を用いると、基本波の閉じ込めを強化することができ
る。しかし、クラッド層を厚くしていくと、基本波の閉
じ込めが強まる一方で、波長の短い第2高調波はクラッ
ド層の内部に閉じ込められて、素子の変換効率が極端に
減少する。
【0078】しかし、本願発明者らの解析によって、第
2高調波の高次導波モードが光導波路部分に電界分布を
持ち、基本波と十分なオーバラップを達成し得ることを
発見した。これを、図7(a)〜(d)を参照して説明
する。図7(a)〜(d)のそれぞれにおいて、図の左
側には光波長変換素子の断面構造を示し、図の右側に
は、導波路断面の深さ方向の電界分布を表す。これらの
図は、高屈折率のクラッド層を有する光導波路におい
て、クラッド層の厚みを変化させた場合の導波モードの
様子を表したものである。
【0079】図7(a)は、図6(a)及び(b)を参
照して説明したクラッド層が無い構成である。ここで
は、その説明は省略する。
【0080】図7(b)は、基板61の上に設けられた
光導波路62の上に、さらに薄いクラッド層63が設け
られている場合である。クラッド層63は、0次(基本
モード)の基本波64及び0次(基本モード)の第2高
調波65のそれぞれに対して、カットオフ条件(すなわ
ち、それらの導波モードがクラッド層63の内部に閉じ
こもらない条件)を満足している。従って、0次(基本
モード)の基本波64及び0次(基本モード)の第2高
調波65は、ともにクラッド層63の内部のみを導波す
ることができず、光導波路62の内部を伝搬する。但
し、クラッド層63により、0次(基本モード)の基本
波64及び0次(基本モード)の第2高調波65の電界
分布は、素子の表面近傍に引き寄せられている。
【0081】図7(c)は、より厚いクラッド層63が
設けられている場合であって、基本波64に対してはク
ラッド層63はカットオフ条件を満足しているが、第2
高調波に対しては、低次のモード65(この場合は基本
モード)の伝搬が可能となる。このとき、基本波の閉じ
込めは、図7(b)の構成に比べてさらに強くなる。し
かし、基本モードの第2高調波65がクラッド層63の
内部に閉じこもってしまうために、基本波から基本モー
ドの第2高調波への変換効率は極端に低下する。一方、
第2高調波のうちで、クラッド層63を導波可能なモー
ド(ここでは0次モード65)の次数よりも一つ高い次
数のモード(ここでは1次モード66)は、その大部分
が光導波路62を伝搬する。
【0082】このとき、光導波路62の内部における1
次モードの第2高調波66の電界分布は、図7(a)に
示したクラッド層が無い構成における基本モードの第2
高調波65の電界分布とほとんど変わらない。それに対
して、0次の基本波の導波モード64は、強くクラッド
層63に引きつけられている。即ち、基本モード(0
次)の基本波64は閉じ込めの強い導波モードになるの
に対し、高次モードの第2高調波(例えば1次の第2高
調波66)は、クラッド層63が存在しない構成からほ
とんど変化しない。そのため、両モード間のオーバラッ
プを飛躍的に増大することができて、これにより、変換
効率が大幅に向上される。
【0083】図7(d)は、さらに厚いクラッド層63
が設けられて、0次の基本波64がクラッド層63の中
を導波可能となった場合である。しかし、このように基
本波がクラッド層63の内部を導波可能となると、光導
波路62の内部での基本波と第2高調波とのオーバラッ
プが極端に減少するために、変換効率は大幅に低減す
る。
【0084】以上より、本願発明者による検討の結果と
して、高屈折率のクラッド層63を有する光導波路62
においては、図7(c)の構成の場合に、基本モード
(0次)の基本波64と高次モード(1次)の第2高調
波66との間のオーバラップが増大して、高効率の波長
変換が可能となることが見い出された。
【0085】しかし、図7(c)の構成を実現するに
は、いくつかの条件を満足する必要がある。
【0086】まず第1に、クラッド層63が、「基本波
がその内部を導波できない」という基本波に対するカッ
トオフ条件を満足するような厚さ及び屈折率を有してい
る必要がある。一方、クラッド層63が、「基本波がそ
の内部を導波できる」という基本波に対する導波条件を
満足している状態とは、実際には図7(d)の構成に対
応し、高効率の波長変換は不可能である。
【0087】第2に、図7(c)に示すように、第2高
調波の導波モードとして、光導波路62の部分に電界分
布のピークを有するような高次モードを導波させる必要
がある。その理由は、基本波から第2高調波への波長変
換に寄与するのは、光導波路62の内部における基本波
の電界と第2高調波の電界とのオーバラップであるから
である。この条件を満足させるためには、クラッド層6
3が第2高調波の導波条件を満足し、かつ、クラッド層
63を導波可能な次数の導波モードより一つ高い次数の
高次の導波モードの第2高調波が光導波路62の内部を
選択的に導波される必要がある。例えば、図7(c)の
場合には、クラッド層63を導波可能な第2高調波の導
波モードは基本モード(0次モード)65であり、一
方、光導波路62にピークを有する第2高調波の導波モ
ードは1次モード66である。
【0088】従って、光導波路62の上に高屈折率のク
ラッド層63が設けられている構成を有する高効率の波
長変換素子を実現するには、クラッド層63の厚さ及び
屈折率を、基本波に対してはカットオフ条件を満足し、
且つ第2高調波に対しては導波条件を満足するように設
定すればよい。
【0089】第3に、高効率の波長変換を実現するため
には、図7(c)の状態において、光導波路62の内部
における高次モードの第2高調波66の電界分布を、ク
ラッド層63の内部における電界分布に対して十分に大
きくする(すなわち、クラッド層63の内部における電
界分布を十分に小さくする)必要がある。
【0090】ここで、クラッド層63の屈折率ncと光
導波路62の屈折率nfとの比(nc/nf)と、クラ
ッド層63の第2高調波強度のピーク値Icと光導波路
62の第2高調波強度のピーク値Iwとの比(Ic/I
w)との間の関係を、図8に示す。これより、クラッド
層63及び光導波路62における第2高調波の強度分布
の比は、それぞれの屈折率の比の大きさに逆比例し、光
導波路62の屈折率に対してクラッド層63の屈折率が
増大するにつれて、クラッド層63における電界分布が
小さくなる。
【0091】図8の関係より、クラッド層63における
電界強度を光導波路62における電界強度の1/10以
下にして第2高調波光の利用効率を上げるには、クラッ
ド層63の屈折率ncを光導波路62の屈折率nfに対
してnc>1.02・nfという条件を満たすように設
定すれば十分である。サブピーク部分の第2高調波は損
失となるが、上記の条件で出射された第2高調波を集光
するとサブピークによる出力特性の劣化は観測されず、
回折限界までの集光特性が実現できる。
【0092】上記では、クラッド層が単層である構成に
ついて説明しているが、クラッド層が多層膜である場合
についても、同様の効果が得られる。特に、多層膜から
構成されたクラッド層を用いると、クラッド層の内部に
おける屈折率分布を制御することが可能になるので、素
子設計の自由度が増し、許容度の高い素子の作製が可能
となる。
【0093】また、クラッド層は、非線形効果を持たな
い線形材料で形成されることが望ましい。クラッド層を
非線形材料で構成するとクラッド層の内部で波長変換が
生じるが、そのようなクラッド層内部での波長変換は、
光導波路の内部での第2高調波光の発生効率に対する損
失となるからである。
【0094】また、本発明の構成を3次元光導波路に適
用すると、光導波路の横方向の電界分布に対しても、大
きな影響を与えることができる。即ち、高屈折率のクラ
ッド層を光導波路の上に形成することにより、第2高調
波及び基本波に対する実効屈折率が増大する。このた
め、横方向の電界分布の閉じ込めが、基本波及び第2高
調波のそれぞれについて、大幅に増大する。これによっ
て、光のパワー密度の増大、及び横方向でオーバラップ
の増大が得られて、結果として、変換効率の向上が可能
となる。
【0095】また、本発明によれば、基本波の波長を選
択することにより、光導波路を伝搬する第2高調波の導
波モードを一義的に選択できる。このため、基本波と高
次モードの第2高調波との間の位相整合を選択的に行っ
て両者の間のオーバラップを大きくして、高効率な波長
変換を実現することが可能となる。
【0096】さらに、本願発明者らの検討によれば、上
記の本発明による光導波路の構造が、耐光損傷強度の向
上に非常に有効となることがわかった。
【0097】光損傷は、短波長光(第2高調波)によっ
て結晶内部の不純物が励起され、内部電界を生じること
により発生する。さらに、基本波が介在すると、不純物
をトラップする準位を励起して、光損傷による内部電界
が固定化する傾向にある。この現象は、第2高調波の電
界分布の近傍で基本波が単独で存在する部分で、顕著に
現れる。一方、本発明の構成をとれば、光導波路内での
基本波と第2高調波とのオーバラップが増大して、第2
高調波及び基本波の電界分布のうちで、オーバラップし
ない部分が減少する。そのため、上記のようにして生じ
る光損傷の発生が、大幅に低減できる。
【0098】以上に説明した本発明の光導波路の構造
は、光導波路を伝搬する異なる波長の光のオーバラップ
を高めて、両者の間の相互作用を増大させるのに有効で
ある。具体的には、光波長変換素子のみならず、波長の
異なる2つ以上の光を同時に導波させる光導波路に対し
て、有効である。さらに、光の分布を素子表面の近傍に
引き寄せることができるために、表面上に形成された構
成要素(例えば電極)による導波光への影響を高めるこ
とが可能となり、高い動作効率を有する光集積回路素子
を構成することが可能となる。
【0099】次に、具体的な素子構造を参照して、本発
明の光波長変換素子の実施形態を説明する。
【0100】具体的な素子構造としては、(1) 周期
状の分極反転層を有する結晶の表面に高屈折率層を有
し、さらに高屈折率層上に、ストライプ状のクラッド層
を有する、装荷型光導波路を用いた素子構造、(2)
周期状の分極反転層を有する結晶の表面に、ストライプ
状のリッジ形状に加工された高屈折率層を有し、さらに
このリッジの表面にクラッド層を有する、装荷リッジ型
光導波路を用いた素子構造、及び(3) 周期状の分極
反転層を有する結晶の表面にストライプ状の高屈折率層
を有し、さらに結晶表面にクラッド層を有する、埋め込
み型光導波路を用いた素子構造、が挙げられる。以下で
は、各素子構造について、実施形態の中で説明する。
【0101】(第1の実施形態)本実施形態では、装荷
型光導波路を用いた光波長変換素子を説明する。
【0102】図9は、本実施形態における光波長変換素
子の構造を示す図である。具体的には、図9の(a)
は、光波長変換素子の斜視図であり、(b)は断面図で
ある。
【0103】本実施形態の光波長変換素子では、C板の
LiTaO3結晶(すなわち、その上面及び底面が、結晶のC
軸に垂直な面である)からなる基板101の内部に、周
期Λ=約3.5μm(周期Λは、図9では参照番号10
8として示されている)の分極反転層104が形成され
ている。分極反転層104の幅Wは、約1.7μmであ
る(幅Wは、図9では参照番号109として示されてい
る)。さらに、LiTaO3結晶基板101の表面には、深さ
約2μmの光導波路として機能するプロトン交換層10
5と、ストライプ状のNb2O5クラッド層(装荷層)11
0が形成されている。さらに、Nb2O5クラッド層110
を含む結晶基板101の表面は、SiO2からなるカバー層
111で被われている。
【0104】素子の端面から入射した波長約850nm
の基本波106は、プロトン交換層105を伝搬しなが
ら、波長約425nmの第2高調波107に変換され、
他方の端面から出射される。
【0105】図9の構成では、従来技術による構成とは
異なり、クラッド層110として、基板101より高い
屈折率を有するNb2O5を用いている。具体的には、波長
約800nmの光に対して、Nb2O5の屈折率は約2.2
5であり、LiTaO3の屈折率は約2.15である。但し、
素子内部を伝搬する基本波106がクラッド層110の
内部に閉じ込もらないように、クラッド層110の厚さ
は約300nmに設定している。
【0106】素子内部を伝搬する波長約850nmの基
本波106は、基本モード(TM00モード)で伝搬す
る。一方、第2高調波107は、素子の深さ方向には1
次モードで伝搬し、素子の幅方向には0次の高次モード
(TM01モード)で伝搬する。分極反転層104の周
期108に対する基本波106の波長を選択することに
より、第2高調波107の導波モード(TM01)が選択
的に励振される。本実施形態の構成では、従来技術によ
る構成とは異なり、基本波を基本モードで伝搬させ、第
2高調波を高次モードで伝搬させることによって、両者
の間のオーバラップを増大させ、波長変換効率を向上さ
せている。
【0107】次に、本実施形態の光波長変換素子の構造
における、基本波と第2高調波との間のオーバラップの
増大による波長変換効率の向上の原理について、以下に
説明する。
【0108】本実施形態に示すように、基板101の上
に設けられた光導波路(プロトン交換層)105の上に
さらにクラッド層110が形成されている構造を有する
光波長変換素子において、基本波を第2高調波に変換す
る効率は、基本波と第2高調波との間のオーバラップに
大きく依存する。図10を参照すれば、基本波と第2高
調波との間のオーバラップ122とは、基本波の電界
(Ew)の分布120と第2高調波の電界(E2w)の
分布121との非線形物質内における重なり(図10で
ハッチングされている領域)で表される。
【0109】光導波路層105の上に基板101より屈
折率の低いクラッド層(例えば、屈折率n=2.0のTa
2O5膜)131を有する光導波路や埋め込み型光導波路
(図11(a)参照)においては、図11(c)に示す
ように、基本モード(TM00モード)の基本波の電界分
布123と第2高調波(TM00モード)の電界分布12
4との間で、最大のオーバラップ125が得られる。し
かし、基本波及び第2高調波の波長分散特性により、素
子の深さ方向におけるオーバラップ125の大きさは限
られている。
【0110】一方、光導波路層105の上に基板101
より屈折率の高いクラッド層(例えば、屈折率n=2.
25のNb2O5膜)132を有する本発明の光波長変換素
子(図11(b)参照)を導波する光の電界分布を、図
11(d)に示す。この場合、基本波(TM00モード)
は、高い屈折率を有するクラッド層132により閉じ込
めが強くなり、素子の表面近傍にその電界分布126が
偏っている。一方、この構成におけるTM01モードの第
2高調波の電界分布127は、図11(c)におけるT
M00モードの第2高調波の電界分布124とほぼ同じで
あり、オーバラップ128は、図11(c)におけるオ
ーバラップ125に比べて大幅に増大している。この結
果、従来の装荷構造の光波長変換素子に比べて、本発明
の光波長変換素子の変換効率は、約2倍以上に高効率化
されている。さらに、高い屈折率を有するクラッド層1
32を形成することにより、図11(d)に示すよう
に、TM01モードの第2高調波の電界分布127のうち
でクラッド層132に存在する割合を非常に小さくでき
るので、図11(c)に示すTM00モードの第2高調波
の電界分布124とほとんど変わりない形状とすること
ができることが見い出された。
【0111】また、本発明の波長変換素子によって得ら
れる第2高調波出力のビームパターンは、従来の埋め込
み型光導波路を伝搬する基本波モードの第2高調波出力
のビームパターンと差はなく、回折限界近くまで集光可
能な波面特性を示す。
【0112】本願発明者らは、図11(b)の構造にお
いてTM00モードの第2高調波の光発生についても検討
を行ったが、TM00モードの第2高調波はクラッド層1
32の内部に閉じ込もってしまうために、基本波とのオ
ーバラップは極端に低下することが確認された。すなわ
ち、本発明の構成では、TM00モードの基本波と高次モ
ード(TM01モード)の第2高調波との間で、電界分布
のオーバラップの大幅な増大が可能になる。
【0113】次に、図12(a)〜(d)を参照して、
本実施形態の光波長変換素子の作製方法について述べ
る。
【0114】まず、図12(a)に示されているよう
に、+C板のLiTaO3基板101の表面に、光導波路とし
て機能するプロトン交換層105を形成する。具体的に
は、約260℃のピロ燐酸中で約14分間の熱処理を行
った後に、約420℃で約8分のアニール処理を行っ
て、光導波路(プロトン交換層)105を形成する。
【0115】次に、基板101の+C面(実際にはプロ
トン交換層105の表面)に櫛形電極112を形成し、
基板101の−C面(裏面)に平面電極(不図示)を形
成する。そして、両電極間に高圧のパルス電圧(約21
kV/mm)を印加して、図12(b)に示すような周
期状の分極反転層104を形成する。
【0116】続いて両電極を除去した後に、基板101
の+C面(プロトン交換層105の表面)に、図12
(c)に示すように、スパッタリング法でNb2O5膜11
0を約300nmの厚さに堆積する。さらに、堆積され
たNb2O5膜110の上にフォトリソグラフィ法でストラ
イプ状マスクパターン(不図示)を形成し、CHF3ガス雰
囲気中でドライエッチングを行って、図12(d)に示
すようにNb2O5膜110をストライプ状に加工する。
【0117】以上のような電界印加による分極反転層の
形成プロセスにおいて重要なことは、印加電圧波形であ
る。具体的には、LiTaO3に短周期の分極反転層104を
形成するには、パルス電圧波形として、反転電圧レベル
(分極が反転する電圧レベルであり、LiTaO3では約21
kV/mm)以下の大きさのバイアス電圧にパルス電圧
を重畳した電圧波形を印加する必要がある。このとき、
バイアス電圧レベルとパルス電圧レベルとの和は、反転
電圧のレベル以上である必要がある。
【0118】さらに、上記のプロセスでは、パルス電圧
が重畳された電圧を印加した後にさらにバイアス電圧の
みを印加するが、本願発明者らの検討によれば、そのバ
イアス電圧印加時間(Tb)が分極反転層の形状の均一
性に影響を与えることが明らかになった。すなわち、T
bが約2秒以下であると、形成される分極反転層104
の周期構造の不均一性が大きくなる。分極反転層104
の周期構造の均一性を得るには、Tbを約3秒以上に設
定する必要である。本願発明者らのさらなる検討によれ
ば、好ましくは約5秒以上にすることで、非常に均一性
の高い周期的分極反転層104が形成され、効率の高い
光波長変換素子が製造できることが明らかになった。
【0119】次に、以下では、光導波路を伝搬する導波
モードと光波長変換素子の特性との関係について、詳細
に説明する。
【0120】Nb2O5クラッド層を有する光導波路の導波
特性を解析する目的で行った屈折率分散特性の測定結果
を、図13に示す。図13では、LiTaO3基板(線13
2)及びNb2O5クラッド層(線131)の屈折率分散の
測定結果が示されている。
【0121】これより、波長によりLiTaO3基板とNb2O5
クラッド層との間の屈折率差が異なり、基本波の波長に
相当する800nm帯における基板とクラッド層との間
の屈折率差に比べて、第2高調波の波長に相当する40
0nm帯における屈折率差が、大きくなっている。
【0122】この結果に基づいて行った装荷型光導波路
の導波特性の解析結果を、図14に示す。図14は、光
導波路を導波する光の波長及びクラッド層(装荷層)の
厚さに対して、クラッド層の内部を伝搬可能な導波モー
ドの関係を示す特性要因図である。
【0123】領域Iでは、クラッド層の内部を光が伝搬
することができず、導波層のみが、光を伝搬可能な領域
として機能する。領域IIでは、基本モードの光のみがク
ラッド層の内部を伝搬可能であり、一方、領域IIIで
は、クラッド層を基本モード及びTM01モードの光が伝
搬可能である。
【0124】各々の領域での導波モードについて、以下
にさらに説明する。
【0125】まず、第1の場合として、クラッド層15
2の厚さが約0.1μmよりも小さい場合には、波長約
430nmの第2高調波と波長約860nmの基本波と
は、いずれも領域Iに分類される。従って、クラッド層
152の内部を伝搬可能な導波モードは存在しない。そ
のために、伝搬光の電界分布の形状は図15(a)に示
すようになり、基本波モードの基本波153と基本モー
ドの第2高調波154とがいずれも光導波層151の内
部を伝搬して、クラッド層152の内部における伝搬光
の電界分布は小さくなる。
【0126】次に、第2の場合として、クラッド層15
2の厚さが約0.1μmから約0.36μmの間にある
場合には、波長約430nmの第2高調波は領域IIに分
類され、クラッド層152の内部を基本モードの第2高
調波154が伝搬可能である。一方、波長約860nm
の基本波153は領域Iに分類され、クラッド層152
の内部を伝搬することは不可能である。この結果、基本
モードの第2高調波154は、図15(b)に示すよう
にクラッド層152の内部に閉じ込もってしまうが、基
本波153は導波層151の内部を伝搬する。
【0127】さらに、第3の場合として、クラッド層1
52の厚さが約0.36μmよりも大きい場合には、波
長約430nmの第2高調波は領域IIIに分類される一
方で、波長約860nmの基本波は領域IIに分類され
る。従って、基本波及び第2高調波のそれぞれについ
て、クラッド層152における基本モードの伝搬が可能
となり、基本モードの基本波153及び基本モードの第
2高調波154は、どちらもクラッド層152の内部に
閉じ込もる。
【0128】上記の各々の場合における基本波及び第2
高調波の電界分布のオーバラップを考えると、第1の場
合には、非線形性を有する光導波層における電界分布が
大きく、オーバラップは光導波層の内部に存在する。し
かし、第2の場合には、第2高調波がクラッド層内に閉
じ込もってしまうため、光導波層におけるオーバラップ
は非常に小さくなる。さらに、第3の場合には、基本波
及び第2高調波がどちらもクラッド層内に閉じ込もって
しまうために、光導波路における両者のオーバラップ
は、0に近くなると予想される。
【0129】しかし、本願発明者らの実験によれば、第
3の場合に相当する厚さを有するクラッド層について
は、基本波がクラッド層内に閉じ込もってオーバラップ
が減少して、変換効率の大幅な低下が観測されるもの
の、第2の場合に相当する厚さを有するクラッド層につ
いては、第2高調波への変換効率の大幅な向上が達成さ
れて、第1の場合における値よりも大きい値が得られ
た。そこで、導波特性についてさらに検討したところ、
変換効率の大幅な向上が得られる第2の場合において
は、第2高調波の導波モードが、基本モードではなく高
次の導波モードであることが発見された。すなわち、上
記の第2の場合には、基本モードの基本波と高次モード
の第2高調波との間における電界分布のオーバラップの
増大によって、変換効率の向上が実現していることが見
い出された。
【0130】クラッド層の厚さと変換効率が最大となる
第2高調波の導波モードとの関係を、以下の表1に示
す。
【0131】
【表1】
【0132】「第2高調波出力」の欄の記号(◎、△、
及び×)は、得られる第2高調波出力の大きさ(波長変
換効率の大きさ)を相対的に表すものであって、記号◎
が変換効率がよいことを意味し、記号×は変換効率が悪
いことを意味し、記号△はその中間を意味している。
【0133】図16(a)〜(d)は、上記表1の
(2)に示すクラッド層の厚さが約0.1μm〜約0.3μm
の領域における光の伝搬状態を示す図である。図16
(a)の屈折率分布に示すようにクラッド層162の屈
折率が導波層161の屈折率より低い場合(クラッド層
162が設けられていない場合も含む)には、図16
(b)に示すように、導波層161の内部に基本モード
の基本波163及び基本モードの第2高調波164が存
在している。一方、図16(c)の屈折率分布に示すよ
うにクラッド層162の屈折率が導波層161の屈折率
より大きい場合には、図16(d)に示すように、基本
モードの第2高調波164はクラッド層162の内部に
閉じ込もるが、TM01モードの第2高調波165は光導
波層161の内部を伝搬して、基本モードの基本波16
3とのオーバラップが大幅に向上する。特に、TM01モ
ードの第2高調波の電界分布165の大部分は光導波層
161に存在して、非線形性の小さいクラッド層162
には電界がほとんど存在せず、しかも基本波163の閉
じ込めが強くなるために、オーバラップの向上による変
換効率の大幅な増大が可能となる。ここで、第2高調波
に関しては、その波長選択性により所望の導波モードを
効率よく励起できるので、上記に述べた内容に従って、
高い変換効率をもたらす所望の導波モードの第2高調波
を選択的に励起できる。
【0134】また、高次モードの第2高調波の電界分布
について、クラッド層に存在する部分と導波層に存在す
る部分との比は、クラッド層と導波層との屈折率差に依
存する。屈折率差が大きい場合は、電界分布のうちで光
導波層に存在する部分が大きくなり、クラッド層での電
界のピークが小さくなる。一方、屈折率差が小さい場合
は、電界分布のうちで光導波層に存在する部分が小さく
なり、クラッド層での電界のピークが大きくなる。
【0135】一方、基本波の電界分布に対しては、クラ
ッド層と導波層との屈折率差が小さい方が有利である。
すなわち、屈折率差が小さいと、図14に示す領域Iに
相当するクラッド層の厚さの範囲が広がり、厚さの制御
に関する制約が緩和される。さらに、第2高調波への変
換効率は、TM01モードの第2高調波とTM00モードの
基本波との間の結合によって得られる値よりも、TM02
モードの第2高調波とTM00モードの基本波との間の結
合によって得られる値の方が、大きくなる。この条件を
満足するには、クラッド層と基板との屈折率差の関係
が、ΔN2w(波長400nm帯の光に対する基板とクラ
ッド層との屈折率差)>ΔNw(波長800nm帯の光
に対する基板とクラッド層との屈折率差)なる関係を満
たすことが望ましい。先に図13を参照して説明したよ
うに、Nb2O5クラッド層は、LiTaO3基板に対してΔN2w
>ΔNwの関係を満足するので、非常に有効である。
【0136】また、第2高調波が高次モードの場合、出
射された第2高調波の集光特性が劣化する場合がある。
例えば、ステップ状の屈折率分布を有する埋め込み型光
導波路において、1次の第2高調波の導波モードはTM
01モードとなる。従って、この第2高調波を集光すると
2つのピークを有する集光ビームとなり、単一のビーム
スポットに集光するにはビーム成形処理が必要となる。
しかし、Nb2O5装荷型光導波路を伝搬する第2高調波の
高次モードは、基本モードとほぼ同様の集光特性を有
し、回折限界までの集光が可能である。これは、第2高
調波に対する導波層と基板との間の屈折率差(Δn1=約
0.02)がクラッド層との間の屈折率差(Δn2=約
0.3)に比べて非常に小さいために、図16(d)に
示すように、クラッド層における導波モードの電界分布
が光導波層における電界分布に比べて非常に小さくなる
ためである。
【0137】第2高調波の集光特性を劣化させない第2
高調波の高次モードを実現するには、3Δn1<Δn2が必
要である。Δn2が小さいとクラッド層における電界分布
が大きくなり、変換効率の低下及び集光特性の劣化の原
因になる。
【0138】次に、光波長変換素子の効率向上を目的と
したクラッド層の最適構造を得るための設計について、
以下に述べる。
【0139】まず、最適なクラッド層の厚さについて、
Nb2O5を例にとって検討した。表2は、クラッド層の厚
さに対する、基本波及び第2高調波の導波状態、ならび
に第2高調波への変換効率を示す。
【0140】
【表2】
【0141】「変換効率」の欄の記号(◎、○、△、及
び×)は、波長変換効率の大きさを相対的に表すもので
あって、記号◎が変換効率がよいことを意味し、記号×
は変換効率が悪いことを意味し、記号○及び△はその中
間を意味している。
【0142】クラッド層の厚さが約100nm以下の場
合には、変換効率が最大となるのは基本波及び第2高調
波が基本モードである場合であって、この場合の変換効
率は、埋め込み型光導波路とあまり変わらない。厚さが
約100nm以上になると、1次(TM01)モードの第
2高調波との結合が増大しはじめて、変換効率が向上す
る。さらに約200nm以上の厚さでは、1次モードの
第2高調波への変換が非常に大きくなり、従来の埋め込
み型や装荷型光導波路を用いた光波長変換素子の2倍以
上の変換効率が得られる。さらに、クラッド層の厚さが
約300nm近傍であると、2次(TM02)の第2高調
波への変換が行われて、変換効率はさらに向上する。し
かし、クラッド層の厚さが約400nm近傍或いはそれ
以上になると、クラッド層の内部に基本波が閉じ込もる
ため、変換効率は大幅に減少する。これより、Nb2O5
ラッド層の厚さとしては、変換効率の向上のためには約
100nm〜約380nmが必要である。特に、変換効
率が向上する厚さとして、約200nm〜約340nm
が望ましい。
【0143】図17には、LiTaO3基板上のプロトン交換
層の上に形成したクラッド層の屈折率(基本波波長に対
する値)とクラッド層の厚さとの関係を示す。
【0144】領域Iでは、クラッド層が厚すぎるために
基本波はクラッド層内に閉じ込り、変換効率が極端に減
少する。領域IIでは、基本波と第2高調波との間のオー
バラップが向上して、変換効率が最大になる。領域III
でも、クラッド層の設置によって変換効率の向上が見ら
れる。このように、領域II及びIIIで、クラッド層の設
置による変換効率の向上が可能である。
【0145】図17から分かるように、クラッド層の屈
折率が増大するにつれて、領域II或いはIIIを達成する
ための最大許容厚さは薄くなり、高精度の厚さの設定が
要求される。通常の成膜装置でクラッド層を再現性よく
成膜するためには、数100nm以上の厚さが適当であ
り、屈折率としては約2.8以下が良い。
【0146】また、クラッド層と導波層との間の屈折率
差が小さすぎると、クラッド層によるオーバラップの向
上効果が得られない。クラッド層の屈折率が約2.2以
上である場合に、基本波と第2高調波との間のオーバラ
ップが大きくなり、変換効率が大幅に向上する。従っ
て、クラッド層の屈折率は、LiTaO3基板の場合には、基
本波の波長に対して約2.18以上であることが望まし
く、特に高効率化のためには約2.2〜約2.8の範囲
に設定することが好ましい。
【0147】本実施形態ではクラッド層の構成材料とし
てNb2O5を用いたが、その他に、LiNbO3、TiO2、ZnS、Ce
O2、またはこれらを含む混合材料、例えばTa2O5、Si
O2、Al2O3、SiN等との混合材料も、利用できる。これら
によって形成されるクラッド層は、その屈折率を変える
ことで、より大きなオーバラップを得ることができて、
変換効率の大幅な向上が可能となる。
【0148】また、本実施形態では、基板としてLiTaO3
基板を用いているが、他にMgO、Nb或いはNdなどを
ドープしたLiTaO3やLiNbO3、或いはそれらの混合物であ
るLiTa1-xNbxO3(0≦x≦1)、或いはKTP(KTiOPO4)等
からなる基板を用いても、同様な素子が作製できる。Li
TaO3、LiNbO3、及びKTPは、いずれも高い非線形性を有
し、高効率の光波長変換素子が作製できる。特にKTP
は、屈折率が約1.8と低いので、その上に形成される
クラッド層の材料としてTa2O5、Al2O3、SiN等の利用も
可能となり、有効である。また、これらの材料において
は、周期的分極反転層の形成方法が確立されており、高
効率の光波長変換素子が形成できるため、有効である。
【0149】次に、素子表面に形成されるカバー層につ
いて説明する。
【0150】先に説明した図9の構成では、光導波路
(詳しくは、プロトン交換層105及びクラッド層11
0)の表面を、約400nmの厚さのSiO2カバー層11
1で覆っている。これは以下の理由による。
【0151】装荷型光導波路では、クラッド層をエッチ
ングにより形成するため、クラッド層の側面に僅かな凹
凸が形成されて、導波損失の原因となる。カバー層11
1でクラッド層を被えば、クラッド層とその他の部分と
の間の屈折率差が小さくなり、クラッド層の側面の凹凸
による導波損失の低減を図ることができる。具体的に
は、導波損失は、カバー層111を設けることで約1/
2以下になる。
【0152】なお、本実施形態ではカバー層111とし
てSiO2を用いたが、カバー層111としては基板より屈
折率の低い材料が望ましく、例えばTa2O5等も有効であ
る。Ta2O5膜は屈折率が約2と大きいために、より低損
失の光導波路が形成できる。或いは、SiN、Al2O3等、高
屈折率層よりも小さい屈折率を有し、基本波及び高調波
に対して吸収や散乱損失の少ない材料であれば、カバー
層として同様の効果が得られる。
【0153】(第2の実施形態)ここでは、本発明の他
の構造による光波長変換素子の特性向上について述べ
る。具体的には、装荷リッジ型光導波路を適用した光波
長変換素子について述べる。
【0154】第1の実施形態で、屈折率の高いクラッド
層を用いた装荷型光導波路による光波長変換素子の特性
向上が確認できた。ここでは、光波長変換素子の構造に
さらに工夫を加えることにより、一層の特性向上を試み
た結果について述べる。
【0155】装荷型光導波路により基本波のモードプロ
ファイルの制御が可能になることを前述したが、装荷型
光導波路において、第2高調波のモードプロファイルへ
の影響を抑えながら基本波のモードプロファイルを制御
し、オーバラップの向上を図ると、第2高調波の導波モ
ードの幅方向の閉じ込めが弱くなる。その結果、光導波
路から出力する第2高調波のビームプロファイルのアス
ペクト比(出射光をコリメートビームにした場合の縦と
横の比)が1:3以上になり、厚み方向の広がり角が幅
方向に比べて大きくなる。このため、回折限界の集光特
性を得るための光の利用効率が大幅に減少するといった
問題が生じる。これを解決するため、本実施形態では、
図18に示す光波長変換素子の構造をとる。
【0156】具体的には、図18の(a)は、光波長変
換素子の斜視図であり、(b)は断面図である。本実施
形態の光波長変換素子では、C板のLiTaO3結晶(すなわ
ち、その上面及び底面が、結晶のC軸に垂直な面であ
る)からなる基板201の内部に、周期Λ=約3.5μ
m(周期Λは、図18では参照番号208として示され
ている)の分極反転層204が形成されている。分極反
転層204の幅Wは、約1.7μmである(幅Wは、図
18では参照番号209として示されている)。さら
に、LiTaO3結晶基板201の表面には、ストライプ状の
リッジ213を有するプロトン交換層205が形成さ
れ、リッジ213の上面には、Nb2O5クラッド層(装荷
層)210が形成されている。さらに、Nb2O5クラッド
層210を含む結晶基板201の表面は、SiO2からなる
カバー層211で被われている。リッジ213の厚みは
約200nmであり、クラッド層210の厚さは約30
0nmである。
【0157】導波路を伝搬する波長850nmの基本波
206は基本モード(TM00モード)で伝搬しており、
第2高調波207は、深さ方向には1次モード、幅方向
には0次の高次モード(TM01モード)で伝搬している
と考えられる。第1の実施形態で説明した装荷型光導波
路では、第2高調波107がTM01モードで伝搬してい
るため、横方向の閉じ込めが弱く、導波モードのアスペ
クト比が大きくなっている。これに対して、本実施形態
の構成では、リッジ213を付けることで横方向の閉じ
込めが改善され、第2高調波の導波モードのアスペクト
比が改善される。
【0158】次に、装荷リッジ型光導波路の特性につい
て述べる。
【0159】装荷リッジ型光導波路では、プロトン交換
層205をリッジ状に加工することにより、第2高調波
の幅方向の閉じ込めが強化される。その結果、横方向の
第2高調波の導波モードの広がりを、Nb2O5装荷型光導
波路の2/3〜1/2に抑えることが可能となり、横方
向の閉じ込めが強化される。そのため、横方向の基本波
と第2高調波とのオーバラップが増大し、装荷型光導波
路に比べて変換効率が1.5倍以上に向上する。このよ
うに、装荷リッジ構造が光波長変換素子の高効率化に有
効であることが明らかになった。
【0160】幅方向の閉じ込めを強くするリッジ213
の厚さとしては、約100nm以上が必要である。ま
た、幅方向のオーバラップの増大による光波長変換素子
の効率向上が見られたのは、リッジ213の厚さが約2
00nm〜約600nmの場合である。リッジ213の
厚さが約1000nm以上になると、光導波路の伝搬損
失が増大して光波長変換素子の特性が劣化する。
【0161】従って、リッジ213の厚みとしては、オ
ーバラップ向上を得るために約100nm〜約1000
nmが必要となる。さらに、変換効率の大幅な向上を得
るには、約200nm〜約600nmが望ましい。
【0162】次に、リッジ213の厚さが約300nm
の光導波路における、光導波路の幅に対する第2高調波
のアスペクト比の関係を説明する。
【0163】まず、基本波がマルチモード化することな
く導波するには、導波路の幅を約10μm以下にする必
要がある。さらに、アスペクト比の改善が可能となるの
は、導波路幅が約8μm以下の場合である。また、アス
ペクト比が1:1に近づくのは、導波路幅が約2μm〜
約4μmの場合であり、導波路幅が約1μm以下の場合
は、変換効率が低下する。
【0164】光導波路構造を装荷リッジ構造にすること
により、装荷型光導波路を用いた光波長変換素子の特性
に加えて出力ビームの成形が可能となり、特性の優れた
光波長変換素子の作製が可能となる。単一モード光導波
路として成り立つためには、光導波路幅は約1μm〜約
10μmであるのが望ましい。さらにアスペクト比を改
善するには、光導波路幅約1μm〜約8μmであるのが
望ましく、アスペクト比を1:1に近づけるためには、
光導波路幅を約2μm〜約4μmに制御する必要があ
る。
【0165】本実施形態ではクラッド層の構成材料とし
てNb2O5を用いたが、その他に、LiNbO3、TiO2、ZnS、Ce
O2、またはこれらを含む混合材料、例えばTa2O5、Si
O2、Al2O3、SiN等との混合材料も、利用できる。これら
によって形成されるクラッド層は、その屈折率を変える
ことで、より大きなオーバラップを得ることができて、
変換効率の大幅な向上が可能となる。
【0166】また、本実施形態では、基板としてLiTaO3
基板を用いているが、他にMgO、Nb或いはNdなどをドー
プしたLiTaO3やLiNbO3、或いはそれらの混合物であるLi
Ta1-xNbxO3(0≦x≦1)、或いはKTP等からなる基板を
用いても、同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3
及びKTPは、いずれも高い非線形性を有し、高効率の光
波長変換素子が作製できる。特にKTPは、屈折率が約
1.8と低いので、その上に形成されるクラッド層の材
料としてTa2O5、Al2O3、SiN等の利用も可能となり、有
効である。また、これらの材料においては、周期的分極
反転層の形成方法が確立されており、高効率の光波長変
換素子が形成できるため、有効である。
【0167】(第3の実施形態)Nb2O5クラッド層によ
るオーバラップの向上効果を埋め込み型光導波路に適用
することにより、簡便な構造による変換効率の向上が図
れる。図19は、埋め込み型光導波路を用いた本実施形
態の光波長変換素子の構成を示す。
【0168】具体的には、図19は、光波長変換素子の
斜視図である。本実施形態の光波長変換素子では、C板
のLiTaO3結晶(すなわち、その上面及び底面が、結晶の
C軸に垂直な面である)からなる基板301の内部に、
周期Λ=約3.5μm(周期Λは、図19では参照番号
308として示されている)の分極反転層304が形成
されている。分極反転層304の幅Wは、約1.7μm
である(幅Wは、図19では参照番号309として示さ
れている)。さらに、LiTaO3結晶基板301の表面に
は、ストライプ状のプロトン交換層305が形成されて
いる。さらに、プロトン交換層305を含む結晶基板3
01の表面には、基板301よりも高い屈折率を有する
Nb2O5クラッド層310が形成されている。さらに、ク
ラッド層310を含む結晶基板301の表面は、SiO2
らなるカバー層(不図示)で被われている。クラッド層
310の厚さは、約300nmである。
【0169】導波路を伝搬する波長850nmの基本波
306は基本モード(TM00モード)で伝搬しており、
第2高調波307は、深さ方向には1次モード、幅方向
には0次の高次モード(TM01モード)で伝搬してい
る。分極反転層304の周期308に対する基本波30
6の波長を選択することによって、第2高調波307の
導波モード(TM01モード)を選択的に励振している。
また、従来の構成とは異なって、基本波306の導波モ
ードを基本モードとし、第2高調波307の導波モード
を高次モードとすることで、両者の間のオーバラップを
増大させて、変換効率の向上を図っている。
【0170】埋め込み型光導波路の上にNb2O5クラッド
層310を約300nm堆積すると、基本波306の導
波モードの閉じ込めが向上し、第2高調波307と基本
波306のオーバラップが増大する。その結果、光波長
変換素子の変換効率が約3倍に向上し、高効率化が達成
される。具体的には、クラッド層310の厚さが約10
0nm程度から、基本波306と第2高調波307との
オーバラップが増大し始め、厚さ約300nmで最大と
なる。ところが、厚さが約400nmで、急激に変換効
率が低下する。これは、装荷型光導波路で得られたクラ
ッド層の厚さと第2高調波への変換効率との関係と、ほ
ぼ同じである。
【0171】埋め込み型光導波路は、装荷型光導波路に
比べて横方向の光の閉じ込めが強く、第2高調波の出射
ビームのアスペクト比は1:2.5程度であり、比較的
良好なビーム形状が得られる。
【0172】埋め込み型光導波路の利点は、伝搬損失の
小さな光導波路形成が可能なことである。リッジ形状の
光導波路は、導波路側面の凹凸により、伝搬損失が増大
する傾向にある。本願発明者らにより作製したリッジ型
光導波路でも、約1.5dB/cmの伝搬損失が観測されたのに
対し、埋め込み型の光導波路では伝搬損失が1dB/cm以下
であって、非常に低損失の光導波路の形成が可能である
ことが確認された。
【0173】さらに、横方向の閉じ込めを向上させる構
造として、クラッド層を光導波路上に選択的に堆積させ
る方法を試みた。具体的には、幅約5μmの光導波路に
対してクラッド層の幅を5μm以下にすることにより、
幅方向の閉じ込めが強化され、変換効率が1.2倍に向
上した。基本波波長に対するクラッド層の屈折率を約
2.18以上にすれば、オーバラップの向上による変換
効率が可能である。特に、屈折率が約2.2〜約2.5
の範囲では、オーバラップの向上が高まり、大幅な変換
効率の向上が可能である。
【0174】本実施形態ではクラッド層の構成材料とし
てNb2O5を用いたが、その他に、LiNbO3、TiO2、ZnS、Ce
O2、またはこれらを含む混合材料、例えばTa2O5、Si
O2、Al2O3、SiN等との混合材料も、利用できる。これら
によって形成されるクラッド層は、その屈折率を変える
ことで、より大きなオーバラップを得ることができて、
変換効率の大幅な向上が可能となる。
【0175】また、本実施形態では、基板としてLiTaO3
基板を用いているが、他にMgO、Nb或いはNdなどをドー
プしたLiTaO3やLiNbO3、或いはそれらの混合物であるLi
Ta1-xNbxO3(0≦x≦1)、或いはKTP等からなる基板を
用いても、同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3
及びKTPは、いずれも高い非線形性を有し、高効率の光
波長変換素子が作製できる。特にKTPは、屈折率が約
1.8と低いので、その上に形成されるクラッド層の材
料としてTa2O5、Al2O3、SiN等の利用も可能となり、有
効である。また、これらの材料においては、周期的分極
反転層の形成方法が確立されており、高効率の光波長変
換素子が形成できるため、有効である。
【0176】上記の第1〜第3の実施形態で示した装荷
型、装荷リッジ型、及び埋め込み型の構成は、低損失で
閉じ込めが強く、光波長変換素子としてだけではなく光
導波構造としても有望であり、光通信、光計測デバイス
等の光導波路素子への応用が可能である。
【0177】次に、埋め込み型光導波路の耐光損傷性の
向上を目的とした導波路構造について述べる。
【0178】埋め込み型光導波路は、高屈折率のクラッ
ド層を設けることにより、導波モード間のオーバラップ
が増大すると同時に、導波光の閉じ込めが深さ方向及び
幅方向ともに非常に強まり、高効率の波長変換が可能に
なる。また、導波路内での基本波と第2高調波とのオー
バラップを高めることで、基本波の電界分布が単独で存
在する領域が減少し、耐光損傷強度の向上が図れる。し
かし、光損傷の発生を完全に防止することはできず、例
えば約10mW以上の第2高調波出力に対して、光損傷
の発生が観測される。この特性は、装荷型及び装荷リッ
ジ型の光導波路に比べて、わずかに劣っている。
【0179】そこで、光損傷の発生原因について詳細に
検討したところ、光導波路の側部近傍で光損傷による屈
折率変化が最も大きいことが見いだされた。一方、装荷
型及び装荷リッジ型の光導波路では、導波路の側面近傍
にプロトン交換層が存在するために、横方向の閉じ込め
が緩和されるとともに光導波路側部の耐光損傷強度が向
上していると考えられる。
【0180】そこで、埋め込み型の光導波路構造におい
ても、耐光損傷強度の向上を目的として、導波路の側面
近傍に導波路より屈折率の低い層(基板より屈折率は高
い)を設ける方法を試みた。具体的には、図19の構成
において、濃度の薄いプロトン交換層を光導波路の側部
に形成した。その結果、光導波路の横方向の閉じ込めが
わずかに(数%)緩和され、変換効率は約10%低下す
る。しかし、耐光損傷強度は大幅に増大し、約20mW
以上の第2高調波に対しても光損傷が発生しない。プロ
トン交換層を設けたことによるこの光損傷強度の増大
は、光導波路の横方向閉じ込めの緩和によって生じるだ
けでなく、プロトン交換層(導波路側部)の耐光損傷強
度の増大によっても生じる。即ち、プロトン交換層は、
基板に比べて電気伝導度が高いため、光損傷の原因とな
る不純物準位での光励起電荷の寿命が短く、光損傷が発
生しにくい。そこで、光損傷の発生しやすい導波路側部
に電気伝導度の高いプロトン交換部を設けることで、そ
の部分の耐光損傷強度を増大することができる。
【0181】(第4の実施形態)ここでは、光波長変換
素子を用いた短波長光源について述べる。
【0182】前述した実施形態による光波長変換素子の
構成により、高効率で安定な光波長変換素子の実現が可
能となる。本発明による光波長変換素子を用いた短波長
光源の作製の構成を、図20に示す。
【0183】具体的には、上記短波長光源は、Siなど
から形成されるサブマウント420の上に搭載された波
長800nm帯の基本波光P1を発する半導体レーザ4
21、及び光波長変換素子422より構成され、半導体
レーザ421の発光領域423から出た基本波光P1を
光波長変換素子422の導波路402の端面に直接に結
合させて集光し、導波モードを励起する。光波長変換素
子422の導波路402の他の端面からは、波長変換さ
れた第2高調波光P2が出射する。基板420と光波長
変換素子422との間には、クラッド層403が形成さ
れている。
【0184】本発明によって変換効率が高い光波長変換
素子422が実現するので、出力約100mWの半導体
レーザ421を用いて、約10mWの青色の第2高調波
光P2が得られる。また、使用される光波長変換素子4
22は耐光損傷性に優れ且つ安定な出力が得られるの
で、出力変動を約2%以下に抑えることができ、安定な
出力が得られる。
【0185】400nm帯の波長は、印刷製版、バイ
オ、蛍光分光特性等の特殊計測分野や、光ディスク分野
など、広い応用分野において望まれている。本発明によ
る光波長変換素子を用いた短波長光源は、出力特性及び
安定性の両方の観点から、これらの応用分野での実用化
が可能である。
【0186】なお、半導体レーザ421の光を集光光学
系を用いて光波長変換素子422の導波路402に結合
させる構成であってもよい。但し、半導体レーザ421
と光波長変換素子422の光導波路402を直接結合さ
せる構成のほうが、小型且つ低価格の光源が実現でき
る。
【0187】(第5の実施形態)ここでは、短波長光源
を光ディスクのピックアップ用光源として用いた光ピッ
クアップについて説明する。
【0188】光ディスクでは高密度記録が望まれてお
り、小型の短波長光源の実現が必要不可欠である。光デ
ィスクを読み取るためのピックアップは、光源、集光光
学系、及び受光部分を含む。具体的には、図21に示す
ように、Siサブマウント520の上に半導体レーザ5
21及び光波長変換素子522が搭載された光源から発
せられた光P1は、レンズ540で平行光にされ、ビー
ムスプリッタ541を通過してからレンズ542で集光
されて、光ディスク543を照射する。光ディスク54
3からの反射光は、レンズ542で平行光にされた後
に、ビームスプリッタ541及びレンズ544を介し
て、光検出器545に集光される。
【0189】光源として本発明による光波長変換素子を
用いると、波長400nm帯の青色光を光ディスクの読
み取り光源として利用できるため、記録密度を2倍に向
上させることが可能となる。さらに、高出力の青色光の
発生が可能となるため、読み取りだけでなく、光ディス
クへ情報を書き込むことも可能となる。半導体レーザを
基本波光源として用いることで、非常に小型になり、民
生用の小型光ディスク読み取り及び記録装置にも利用で
きる。
【0190】さらに、光波長変換素子は、光導波路幅を
最適化することで、出力ビームのアスペクト比の最適化
が行える。例えば、装荷リッジ型導波路構造を有する光
波長変換素子において、光導波路の幅を約3μmにする
ことにより、アスペクト比を1:1に近づけることが可
能となる。この結果、光ピックアップの集光特性を向上
させるためのビーム成形プリズムなどが不要になり、高
い伝達効率、優れた集光特性、及び低価格化が実現でき
る。さらに、ビーム成形時に発生する散乱光のノイズが
低減でき、ピックアップの簡素化が実現できる。
【0191】(第6の実施形態)本実施形態では、閉じ
込めの強い光導波路の構成について述べる。
【0192】第1の実施形態で説明した光波長変換素子
の構造は、光導波路構造としても有効な構造である。そ
こで、図9に示した光波長変換素子における光導波路の
特性について説明する。
【0193】具体的には、図22(h)に示すように、
LiTaO3基板の上にプロトン交換層からなる光導波路が形
成され、さらにその上にNb2O5からなるクラッド層が形
成されている光波長変換素子に、波長約860nmの光
を導波させて、導波光の電界分布の観測を行った。比較
のために、Ta2O5からなるクラッド層が形成されている
装荷型光導波路(図22(g)参照)の導波光の電界分
布も測定した。波長約860nmの光に対する屈折率
は、プロトン交換層(光導波層)が約2.16、Ta2O5
層が約2.0、Nb2O5層が約2.25である。
【0194】厚さ約2μmのプロトン交換層の上に厚さ
約300nm且つ幅約5μmのストライプ状のクラッド
層を形成した装荷型光導波路の電界分布を、図22
(a)〜(f)を参照して説明する。
【0195】まず最初に、深さ方向の分布から説明す
る。図22(a)及び(b)は、Ta2O5からなるクラッ
ド層が形成されている装荷型光導波路とNb2O5からなる
クラッド層が形成されている装荷型光導波路について
の、深さ方向の導波光の電界強度分布であり、図22
(c)及び(d)は、それぞれの構造における深さ方向
の屈折率分布である。Ta2O5からなるクラッド層が形成
されている場合の深さ方向の電界強度分布(図22
(c)参照)は、半値全幅で約3μmに広がっているの
に対し、Nb2O5からなるクラッド層が形成されている場
合の深さ方向の電界強度分布(図22(d)参照)の半
値全幅は約2.5μmにまで減少し、光導波路の閉じ込
めが大幅に向上している。他の材料(例えば、SiO2やAl
2O3)からなるクラッド層についても検討した結果、深
さ方向の導波光の電界強度分布は、光導波層の屈折率
(約2.16)以下の屈折率を持つクラッド層ではほと
んど変わらない。従って、深さ方向の光の閉じ込めを向
上させるには、クラッド層として、導波層より屈折率の
高い層を形成する必要がある。
【0196】次に、幅方向の導波光の電界強度分布を、
図22(e)及び(f)にそれぞれ示す。幅方向の閉じ
込めに関しても、Ta2O5からなるクラッド層が形成され
ている場合(図22(e)参照)には、半値全幅で約6
μm以上に広がっているのに対して、Nb2O5クラッド層
(図22(f)参照)では、半値全幅が約5μmまで低
減されて、幅方向に閉じ込めの強い光導波路が形成され
ていることがわかる。
【0197】以上の結果、導波層より屈折率の高いクラ
ッド層を設けることにより、閉じ込めの強い光導波路が
形成できることが明らかになった。閉じ込めの強い光導
波路は、導波する光のパワー密度の増大が図れて光の制
御効率が向上するため、光導波路を用いた電気光学素子
や非線形光学素子に有効である。
【0198】(第7の実施形態)ここでは、光波長変換
素子の特性をさらに向上する方法を検討する。
【0199】クラッド層に屈折率の高い層を設けること
により基本波の導波モードの形状を制御することが可能
となるので、導波モードの形状制御を容易にするために
図23に示す構造を形成する。具体的には、クラッド層
を多層膜構造にすることにより、導波モードの制御を容
易にする。
【0200】図23の(a)は、光波長変換素子の斜視
図であり、(b)は断面図である。図23の構成は、ク
ラッド層が、SiO2層712とNb2O5層710との多層構
造になっている以外は、図9を参照して説明した構成と
同じである。対応する構成要素には、対応する類似した
参照番号を付しており、その説明を省略する。
【0201】導波モードのプロファイルを基板表面側に
引き寄せ、基本波と第2高調波とのオーバラップを向上
させるには、多層膜内に基板より屈折率の高い層が必要
である。ここでは、Ta2O5とNb2O5との多層膜によるクラ
ッド層を形成する。多層膜の厚さを制御することによ
り、オーバラップの向上が図れて変換効率が向上するこ
とを確認した。
【0202】次に、光導波路の屈折率分布を対称化する
ことによる変換効率の向上について述べる。
【0203】屈折率分布が深さ方向に対して対称な構造
になれば、基本波と第2高調波とのオーバラップを大幅
に向上させることができる。そのためには、クラッド層
として、基板と等しい屈折率を持つ材料が必要となる。
基板であるLiTaO3は、860nmの光に対する屈折率が
約2.15である。そこで、この値に近い屈折率をもつ
クラッド層を形成するため、Ta2O5とNb2O5との混合膜を
クラッド層に用いた。Ta2O5及びNb2O5の屈折率は、それ
ぞれ約2.0及び約2.25であり、混合比を制御する
ことにより、全体の屈折率を上記の値(2.15)に近
づけた。
【0204】成膜は、Ta2O5及びNb2O5の混合ターゲット
を用いるスパッタ蒸着により行う。クラッド層を厚さ約
500nmに堆積し、図23の構成による光波長変換素
子を作製したところ、オーバラップの増大による変換効
率の大幅な向上を確認できた。
【0205】このように、クラッド層に基板と同じ屈折
率の膜を用いることで、光波長変換素子の変換効率向上
が達成できる。変換効率の向上は、クラッド層の屈折率
がLiTaO3基板の屈折率以上で且つ導波層の屈折率より小
さい場合である。
【0206】(第8の実施形態)ここでは、耐光損傷強
度に優れた光波長変換素子構造について述べる。
【0207】光損傷とは、光導波路を導波する光により
導波路の屈折率が変化し、出力が不安定になる現象で、
特に短波長光に対して顕著に表れる。光波長変換素子は
基本波を波長変換して短波長の第2高調波(波長:緑〜
青〜紫外)を発生させるが、光損傷により導波路の屈折
率が変化すると、第2高調波出力が変動して波長変換特
性が不安定になる。
【0208】以下では、光損傷を低減するため構造につ
いて行った検討結果を述べる。
【0209】従来の埋め込み型光導波路を用いた光波長
変換素子の耐光損傷性を測定した。基板にLiTaO3を用
い、波長約860nmの基本波を波長変換して約430
nmの第2高調波の発生を行ったところ、数mWの第2
高調波の出力で光損傷が生じ、出力が不安定になること
が明らかになった。そこで、光損傷の原因について検討
を行った結果、次のことを発見した。
【0210】第1に、プロトン交換を行うことによりプ
ロトン交換部分の電気伝導度が向上し、これによって耐
光損傷強度が向上する。
【0211】第2に、光損傷は、導波路内部の耐光損傷
強度だけでなく、導波路周辺部の耐光損傷強度の影響を
受ける。埋め込み型光導波路は、光導波路周辺部の電気
伝導度が低く光損傷が生じ易くなっているため、プロト
ン交換光導波路周辺部において光損傷が発生している。
【0212】第3に、分極反転周期のデューティ比(分
極反転部の幅W/分極反転周期Λ)の不均一性が光損傷
特性に影響を与える。光損傷は、光により励起される電
界により、電気光学効果を介して屈折率変化が生じる現
象である。このため、周期的な分極反転構造により光励
起電界を相殺し、屈折率変化を低減することが可能とな
る。しかし、埋め込み型光導波路では、周期状の分極反
転構造のデューティ比が不均一になり易く、光損傷が低
出力の第2高調波光に対して生じる。
【0213】耐光損傷性に関する検討により、光導波路
の周辺部の耐光損傷性が、光導波路の特性に影響を与え
ることが明らかになった。装荷型光導波路では、導波路
側面にプロトン交換層を有するため、埋め込み型光導波
路の約10倍の耐光損傷強度を持っている。しかし、装
荷型光導波路の底面は、通常の埋め込み型光導波路と同
様の構造となっている。
【0214】そこで、図24に示す構造を形成する。図
24の(a)は、光波長変換素子の斜視図であり、
(b)は断面図である。具体的には、プロトン交換層を
多層構造にし、導波層である第1のプロトン交換層80
5の底面にプロトン濃度の薄い第2のプロトン交換層8
15を形成する。図24の構成は、プロトン交換層が上
記のように多層構造になっている以外は、図9を参照し
て説明した構成と同じである。対応する構成要素には対
応する類似した参照番号を付しており、その説明を省略
する。
【0215】導波層である第1のプロトン交換層805
の底面に第2のプロトン交換層815を設けて電気伝導
度を高めることで、光導波路の底部を電気伝導度の高い
層で覆って、耐光損傷性をより高めることができる。こ
れにより、耐光損傷性は、装荷型光導波路の2倍以上に
なる。
【0216】また、本願発明者らの検討により、光損傷
強度が分極反転周期にも依存することが明らかになっ
た。周期状の分極反転構造により光励起による電界を相
殺する効果があることは既に述べたが、分極反転周期が
粗くなると、この効果が薄れてきて光損傷が生じ易くな
る。具体的には、分極反転周期が約4μm以下で、耐光
損傷性が顕著に増大する。周期約8μm以下でも、基板
に対して2倍以上の耐光損傷性の向上が確認できた。し
かし、反転周期が約10μm以上になると、分極反転に
よる耐光損傷性の向上は確認できなかった。
【0217】(第9の実施形態)前述した実施形態で
は、高屈折率の導波層を形成する方法として、ピロ燐酸
中で基板を熱処理することによりLiTaO3基板中のLi+
酸中のH+とを交換し、基板表面に高屈折率のプロトン交
換層を形成していた。以下では、プロトン交換法にさら
なる改良を加え、低損失で且つ光損傷に強い光導波路を
形成する方法を提供する。
【0218】ピロ燐酸は、高温での解離定数が大きく、
液中での濃度むらが生じ難いために、ピロ燐酸を用いる
プロトン交換処理では、屈折率及び厚みの均一な低損失
のプロトン交換層が形成できる。しかし、基板中のLiイ
オンとプロトンの交換量が大きいので、基板表面に化学
損傷を与え、基板の非線形定数を極端に劣化させる。そ
こで、ピロ燐酸を用いたプロトン交換によるプロトン交
換量の制御性について検討した。
【0219】ピロ燐酸のプロトン交換量を制御する方法
として、酸を中和して解離定数を低減する方法がある。
そこで、燐酸Li塩をピロ燐酸中に加えて、プロトン交換
特性の変化を観測した。しかし、燐酸Liをピロ燐酸の10
倍以上加えても、プロトン交換特性(交換速度、屈折
率)の変化は見られなかった。また、燐酸Liを加える
と、溶液の粘度が増して作業性が極端に悪くなる結果と
なった。
【0220】そこで、基板表面にプロトン透過膜を設け
てプロトン交換を行う方法を提案する。
【0221】図25(a)及び(b)に、本実施形態の
光導波路の製造方法の工程図を示す。 まず、図25
(a)に示すように、スパッタ蒸着によりLiTaO3基板9
01の+C面にTa2O5膜(透過膜)902を堆積する。
次に、基板901をピロ燐酸中で熱処理する。Ta2O5
902を透過してプロトン交換を行うことにより、図2
5(b)に示すように、Ta2O5膜902とLiTaO3基板9
01との間に、プロトン交換層903を形成する。この
ようなTa2O5膜902を介したプロトン交換では、プロ
トン交換速度や濃度の制御が可能となる。
【0222】図26は、Ta2O5膜902の厚さとプロト
ン交換の拡散定数の関係を示した特性要因図である。約
260℃でプロトン交換処理を行う場合、拡散定数は、
Ta2O5膜の厚さがそれぞれ0nm、100nm及び40
0nmであるときに、それぞれ0.227μm2/h、
0.05μm2/h、及び0.0132μm2/hとな
る。これは、プロトン交換速度がTa2O5膜の厚さにより
制御されていることを示している。
【0223】形成されたプロトン交換層を評価したとこ
ろ、化学損傷が非常に小さく、光導波路の伝搬損失が1
/2以下に低減できることが見いだされた。さらに、耐
光損傷強度が2倍以上に向上し、特性の優れた光導波路
が形成されていることが確認された。
【0224】また、プロトン交換濃度を下げることで、
プロトン交換層の非線形性を向上させることができる。
プロトン交換を行うと、LiTaO3やLiNbO3等の材料にはプ
ロトン交換層が形成され、ステップ状の高屈折率層が形
成される。プロトン交換層は、交換濃度が高くなると、
非線形性が基板の半分以下に劣化することが知られてい
る。非線形性を回復するには、プロトン交換層をアニー
ル処理してプロトン交換濃度を下げる必要があるが、ア
ニール処理を行うとプロトン交換層が熱拡散により広が
り、屈折率分布がステップ状からグレーディッド状に変
化してしまう。このため、光波長変換素子等へ応用する
場合には、導波モードの電界分布形状のコントロールが
難しくなり、変換効率低下の原因になっていた。しか
し、Ta2O5膜を透過膜として用いることでプロトン濃度
分布の制御が可能となるので、ステップ形状の屈折率分
布を有する高非線形性を保った光導波路の形成が可能と
なる。
【0225】非線形性の劣化を防ぐTa2O5膜の厚さとし
ては、最低でも約500nm以上必要である。この方法
を用いて光波長変換素子を形成することにより、変換効
率の大幅な向上が可能となる。
【0226】また、図26に示すように、Ta2O5膜の厚
さが約100nm以下になると、膜厚に対する拡散定数
の変化が大きくなり、プロトン交換の深さを制御するた
めにTa2O5膜の厚さの精密なコントロールが必要となっ
て、実質的に制御が難しくなる。さらに、Ta2O5膜の厚
さが約50nm以下では、化学損傷の低減効果が少な
い。一方、Ta2O5膜の厚さが増大すると、拡散定数が低
下し、プロトン交換時間が長くなって生産性が悪くな
る。
【0227】このため、Ta2O5膜の厚さは、約1μm以下
が適当である。すなわち、高非線形導波路を形成するに
は約500nm〜約1000nmの厚さの透過膜(Ta2O
5膜)が必要であり、プロトン交換速度の制御を行うに
は、約50nm〜約100nm程度が適当である。
【0228】さらに、Ta2O5透過膜とプロトン交換選択
マスクを組み合わせることにより、プロトン交換形状を
大幅に変化させることが可能となり、導波モードの電界
分布の制御が可能となる。
【0229】具体的には、まず図27(a)に示すよう
に、LiTaO3基板910の+C面に、厚さ約60nmのTa
膜911で、ストライプ状のマスクパターン911を形
成する。次に、図27(b)に示すように、マスクパタ
ーン911の上に厚さ約400nmのTa2O5層912を
堆積する。さらに、ピロ燐酸中で熱処理して、Ta2O5
912を介したプロトン交換処理を行う。このとき、図
27(c)に示すように、Taマスクパターン911によ
って覆われていない部分のみに、ストライプ状のプロト
ン交換層913が形成される。プロトン交換処理は、約
260℃で約4時間行う。
【0230】図28(a)及び(b)には、プロトン交
換プロファイルの断面図を示す。図28(a)は、Ta2O
5透過膜が無い場合であり、(b)は、厚さ約400n
mのTa2O5透過膜912を介してプロトン交換を行った
場合である。図28(b)に示すようにTa2O5透過膜9
12を設けることにより、Taマスク911のエッジ部分
のみでプロトン交換が進み、中央部分では拡散速度が遅
くなる。そのため、プロトン交換層913の深さが、両
サイドで深くなる。これは、Taマスク911のエッジ部
分ではTa2O5透過膜912が薄くなるため、この部分の
プロトン交換速度が速くなるためと考えられる。
【0231】このようなプロトン交換処理によって形成
された光導波路では、2ピークを有する2次伝搬モード
を選択的に励起することが可能となり、2ピークの光出
力を取り出せる。これより、光コンピュータ、作動検出
用の計測装置、光ディスクの検出における位置修正用の
検出光として、2ビームの出力を利用できる。また、光
分波器に応用することにより、導波光を2つの導波路に
効率よく分波できる。
【0232】また、プロトン交換速度のTa2O5透過膜の
厚さへの依存性を利用して、プロトン交換プロファイル
の制御が可能となる。通常は、厚さの異なるプロトン交
換層を1ウェハ上に形成するには、適切なパターンのプ
ロトン交換マスクを形成して部分的にプロトン交換を行
う工程を、繰り返し行う必要がある。しかし、Ta2O5
過膜を用いることで、厚さの異なるプロトン交換層を1
回のプロトン交換工程で同時に形成することが可能とな
る。例えば、図29に示すように、Taマスクパターン9
11とともに使用するTa2O5透過膜912の厚さを部分
的に変えることにより、1回のプロトン交換処理で厚さ
の異なる複数のプロトン交換層913を基板910に形
成できる。さらに、Ta2O5透過膜912の厚さをテーパ
状に変化させることにより、深さがテーパ状に変化した
プロトン交換層の形成も可能となる。
【0233】以上の方法を用いれば、プロトン交換層の
分布を自由に変えることができて、プロセスの簡素化が
行える。
【0234】次に、長時間にわたるプロトン交換が可能
な、耐酸性に優れたマスクについて説明する。
【0235】LiTaO3、LiNbO3などに深いプロトン交換層
を形成するには、長時間のプロトン交換が必要である。
例えば、LiTaO3に約2μm以上の深さのプロトン交換層
を形成するには、一般に約260℃で約4時間以上のプ
ロトン交換処理が必要となる。ところが、上記のように
して選択的なプロトン交換を行うには、高温で長時間の
プロトン処理に耐えるマスクが必要となる。しかし、従
来技術によれば、耐酸性に優れたTaマスクを用いても、
1時間以上のプロトン交換は難しい。
【0236】これに対して本願発明者らは、金属膜上に
酸化膜を堆積することで、長時間のプロトン交換が可能
な耐酸性に優れたマスクが得られることを見い出した。
具体的には、Ta膜を約60nm堆積した後に、その表面
にTa2O5透過膜を厚さ約400nm堆積する。これによ
って、プロトン交換を4時間以上行ってもマスクは十分
な耐プロトン性を示し、マスクの下の基板は全くプロト
ン交換されていないことが確認された。このように、金
属マスク上に酸化膜を堆積することにより、耐酸性に優
れたプロトン交換マスクが実現できた。
【0237】なお、本実施形態では透過膜としてTa2O5
を用いているが、他にNb2O5、SiO2、TiO2、Al2O3、LiNbO
3、LiTaO3などの耐酸性に優れた酸化膜を用いれば、同
様の効果が得られる。
【0238】(第10の実施形態)次に、本発明の第1
0〜15の実施形態による光導波路及び光波長変換素子
の製造方法における、エッチング速度について説明す
る。
【0239】加工が困難で溶剤に腐食され難い構造的及
び化学的に安定な基板、例えば石英等は、ウェットエッ
チング、ドライエッチング、反応性イオンエッチング等
のエッチング手段を用いても、高精度にエッチングする
ことは困難である。このような基板は、エッチングにお
いてレジストバターンとの選択比が小さく、微細な形状
をエッチングする場合には、深いエッチング形状を形成
することが困難である。
【0240】これに対して、本発明の以下の光導波路及
び光波長変換素子の製造方法においては、エッチングす
る部分のみを選択的にイオン交換することにより基板の
特性を変えて、エッチング速度を向上させている。例え
ば、LiNbO3、LiTaO3等の基板を酸中で熱処理すると、結
晶中のLi原子とプロトン(+H)が交換されて、プロト
ン交換層が形成される。プロトン交換層では原子間の結
合が元の結晶に比べて弱くなっており、エッチングされ
易い状態となっている。この結果、プロトン交換層は、
ウエットエッチング、ドライエッチング、反応性イオン
エッチング等により、容易にエッチングされる。したが
って、本発明の光導波路及び光波長変換素子の製造方法
においては、エッチングする部分のみに選択的にイオン
交換を施し、この部分をエッチングすることにより、選
択比の高い高精度のエッチング処理が可能となる。この
ため、本発明の製造方法によれば、均一な品質を有する
光導波路及び光波長変換素子の形成が可能となる。
【0241】次に、導波方向に直交するように一定周期
毎に分極反転構造を有する光波長変換素子の製造方法に
おける、導波路の表面に発生する凹凸について説明す
る。
【0242】従来の製造方法においては、光導波路の表
面はエッチングにより凹凸が形成されて、光の伝搬損失
が大きい。この理由は、光導波路の表面における分極反
転部分と非反転部分で結晶面が異なるため、エッチング
速度に違いが生じるためである。しかし、このような周
期的な分極反転構造を有する面に対してイオン交換処理
を施すと、そのイオン交換部分においては、周期的に分
極反転構造を有する面であっても凹凸が発生しないこと
が発見された。そこで、エッチングする部分のみに選択
的にイオン交換処理を行った後にエッチングすることに
より、光導波路表面の凹凸をなくし、光の伝搬損失の少
ない高効率の光導波路を有する光波長変換素子の製造が
可能となる。
【0243】次に、本発明の製造方法により作製された
光導波路及び光波長変換素子における光損傷について説
明する。
【0244】従来の埋め込み型光導波路では、光導波路
を伝搬する光の電界分布が、光導波路より外部へ染みだ
している。このため、強い光が導波路を伝搬した場合、
導波路の外周部分において、光損傷(光があたることに
より物質の屈折率が変化する現象)が生じる。しかし、
本発明の製造方法により作製されたリッジ型の光導波路
においては、光導波路の表面にリッジ型の導波層が形成
されているため、光の電界分布の染みだしが小さくな
る。この結果、本発明による光導波路は、光損傷に対し
強い構造となる。
【0245】また、光損傷による屈折率変化は、光の照
射により結晶中の不純物から電荷が発生し、結晶内部に
電界を生じることにより誘起される。しかし、導波路近
傍にイオン交換部分を形成すると、このイオン交換部分
において電気伝導度が高くなり、内部電界の発生を抑圧
することが可能となる。そこで、本発明の製造方法によ
り形成された構造では、光導波路の表面にリッジ型のイ
オン交換層を形成しているため、光損傷の発生が抑圧さ
れる。
【0246】次に、本発明の光波長変換素子における電
界分布の重なりについて説明する。
【0247】光波長変換素子において、基本波と第2高
調波の電界分布の重なりが変換効率に大きく影響する。
本発明による光波長変換素子においては、光導波路の表
面にリッジが形成されているために屈折率分布がステッ
プ状となり、従来の埋め込み型光導波路に比べて、基本
波と第2高調波の重なりを大きくすることができる。さ
らに、光導波路の表面近傍にイオン濃度の高い層が形成
されているため、深さ方向の電界の重なりも大きくな
り、本発明による光波長変換素子は、高い変換効率を有
する。
【0248】図30(a)〜(f)は、本発明の第10
の実施形態における光導波路の製造方法を示す図であ
り、それぞれ、光の導波方向と直交する面にそった断面
図である。
【0249】まず、図30(a)に示すように、非線形
光学物質であるC板のLiTa03単結晶基板1001(結晶
のC軸に垂直な面で切り出した基板、以下では、「基板
1001」と略称する)を、約200℃〜約300℃の
ピロ燐酸液中に数分間浸してプロトン交換を行い、基板
1001の表面に帯板状の1次プロトン交換層1002
を形成する。
【0250】次に、基板1001に対して約400℃〜
約450℃でアニール処理を行い、1次プロトン交換層
1002の全部を、図30(b)に示すように帯板状の
アニール処理プロトン交換層1006にする。
【0251】次に、基板1001の表面である+C面上
に、厚さ約60nmのTa層をスパッタリング又は蒸着に
より堆積させる。その後、フォトリソグラフィ法とCF4
雰囲気中のドライエッチングによって、所定幅の直線状
のTa層1003を形成する。
【0252】さらに、Ta層1003を保護マスクとして
非マスク部分を再度プロトン交換し、図30(d)に示
すように、アニール処理プロトン交換層1006の表面
から所定の深さでの2次プロトン交換層1005を形成
する。
【0253】次に、基板1001の表面にネガレジスト
(不図示)を塗布した後に、裏面より紫外線を照射して
ネガレジストを露光して現像し、図30(e)に示すよ
うに直線状のTaマスク1003の上にレジストパターン
1004を形成する。このとき、直線状のTa層1003
が保護マスクとなって非マスク部分のみ露光されるた
め、Ta層1003の上のみに、所定幅を有した直線状の
レジストパターン1004が、選択的に形成される。
【0254】次に、形成されたレジストパターン100
4とTa層1003を保護マスクとしてCHF3雰囲気中でド
ライエッチングを行い、非マスク部分の2次プロトン交
換層1005をエッチングで除去する。さらに、基板1
001をフッ酸:硝酸=1:2の液中に数秒間浸して、
残留するTa層1003及びレジストパターン1004を
除去する。その後に、光導波路の入出射面となる両端面
を光学研磨して、図30(f)に示すようなリッジ10
07を有する光導波路が製造される。
【0255】なお、リッジ1007の側面には、プロト
ン交換部分1008が形成されている。プロトン交換部
分1008は、Ta層1003の保護マスクを用いて2次
プロトン交換層1005を形成する際に、プロトンの横
方向への拡散により形成される。このプロトン交換部分
1008はアニールされていないため、アニール処理さ
れたプロトン交換層1006に比べてプロトン濃度か高
く、屈折率変化も大きくなっている。
【0256】上記の製造方法におけるエッチングについ
て説明する。
【0257】上記の製造方法において、エッチング部分
のみがTa層1003を保護マスクとして選択的にプロト
ン交換されるため、エッチング速度は従来に比べて飛躍
的に向上しており、また、プロトン交換部分のみが確実
にエッチングされるため、導波部分にプロトン交換によ
る影響を全く与えることがない。
【0258】
【表3】
【0259】表3は、LiTaO3におけるCHF3雰囲気中での
エッチング速度を比較したデータであり、各種エッチン
グ対象基板のエッチング速度、及びレジストパターンに
対する選択比を示している。ここで選択比は、プロトン
交換したLiTaO3基板の値によって規格化した値を示して
いる。表3におけるエッチング対象基板は、LiTaO3
板、プロトン交換した後にアニール処理したLiTaO3
板、及びプロトン交換したLiTaO3基板の3種類である。
【0260】表3に示すように、LiTaO3基板をプロトン
交換処理することにより、他の基板に比べてレジストパ
ターンに対して高い選択比(5倍)がとれる。このた
め、プロトン交換したLiTaO3基板では、他の基板に比べ
て微細かつ深い形状を形成するエッチングが可能とな
る。
【0261】次に、上記の製造方法において、プロトン
交換を用いることによりエッチングの深さを高精度に制
御できることを説明する。
【0262】一般的なドライエッチング装置において
は、エッチングの厚み制御は±数%の誤差を有する。こ
のため、このようなドライエッチング装置を用いて光導
波路を製造する場合には、光導波路の特性がばらつくと
いう問題がある。しかし、本発明に係る上記の光導波路
の製造方法を用いることにより、エッチング深さは高精
度に制御可能である。その理由を以下に記載する。
【0263】上記の表3に示したように、エッチング速
度は、プロトン交換部分とアニールしたプロトン交換部
分とで大きく異なっている。このため、本発明の製造方
法において、プロトン交換層のエッチングか終了してア
ニール処理部分に達すると、エッチングの速度は急速に
低下し、実質的にエッチングは停止状態となる。従っ
て、エッチング深さは、プロトン交換層の深さとほぼ一
致する。また、プロトン交換層の深さは、±1%以下の
精度で制御することか可能である。このため、エッチン
グ深さの制御は、プロトン交換層の深さの制御と同等の
±1%以下の制御が可能である。
【0264】さらに、プロトン交換したLiTaO3基板はレ
ジストパターンに対して高い選択比を有しているため、
エッチング時に、レジストパターンの形状は確実に保持
されている。このため、本発明の製造方法において、プ
ロトン交換していないLiTaO3基板をエッチングする場合
に比べ、プロトン交換したLiTaO3基板では、より垂直に
近いエッチング形状が得られる。
【0265】次に、上記の製造方法におけるセルフアラ
イメントについて説明する。
【0266】上記の製造方法において、直線状のTa層1
003が、2次プロトン交換層1005を形成するため
の保護マスク、及びネガレジストを露光するためのマス
クの両方を兼用している。このため、Ta層1003は、
エッチング部分のみを選択的にプロトン交換するための
保護マスクとして機能するとともに、レジストパターン
1004を裏面から露光してTa層1003の上のみに確
実に形成させるためのマスクとしても、機能している。
この結果、レジストパターン1004はセルフアライメ
ントでTa層1003の上に正確に形成できるため、上記
の製造方法によれば、プロトン交換部分のみを正確にエ
ッチングすることが可能である。この結果、光導波路の
均一化及び低損失化を達成することができるので、上記
の光導波路の製造方法は、再現性及び量産性に優れた特
徴を有している。また、セルフアライメントにより金属
マスク上のみに確実にレジストバターンを形成できるた
め、製造が容易であり、且つ大量生産が可能である。
【0267】次に、上記の製造方法により製造された光
導波路の特性評価実験について説明する。
【0268】図31は、上記の製造方法により作製され
た光導波路を示す断面図である。図30(a)〜(f)
と同じ構成要素には、同じ参照番号を付している、この
光導波路に、波長約860nmの光を伝搬させて特性評
価実験を行った。具体的には、光導波路に波長約860
nmの半導体レ−ザの光をレンズを用いて結合させ、導
波する光の近視野像を光導波路の出射端面より計測し
た。この計測結果によれば、上記の光導波路は、リッジ
1007の側面のプロトン交換部分1008により強い
閉じ込めが可能となり、入射したレ−ザ光に対する光導
波路内に閉じ込められる光の分布は、従来技術の構造に
比べて数%向上していた。さらに、この光導波路には、
幅方向にステップ状の屈折率分布が形成されていること
が明らかになった。
【0269】次に、上記特性評価実験における各特性の
測定結果について説明する。
【0270】最初に、形成された光導波路の伝搬特性に
ついて説明する。
【0271】導波する光の伝搬損失の測定値は約2dB
/cmであって、比較的低損失の光導波路が形成され
た。この値は、LiTaO3基板自身を直接にエッチングした
場合の約1/2の値であり、上記の製造方法によって低
損失の光導波路が形成されることが理解できる。
【0272】次に、形成された光導波路の非線形性に関
する測定結果について説明する。
【0273】LiTaO3基板がプロトン交換されると非線形
光学定数や電気光学定数などが大きく悪化し、プロトン
交換したLiTaO3基板を有する光導波路を非線形光学素子
及び電気光学素子等に適用する際の大きな問題となって
いた。しかし、プロトン交換したLiTaO3基板の光導波路
をさらに高温でアニール処理することにより、プロトン
濃度が低下し、各定数も通常のLiTaO3基板と同等の値ま
で回復することが確認された。
【0274】本実施形態の製造方法により製造した光導
波路の非線形光学定数の測定結果より、この光導波路
は、アニールしたLiTaO3基板の光導波路とほぼ等しい値
の非線形光学定数を有していることを確認できた。この
理由は、2次プロトン交換層1005が、エッチングに
より除去されて光導波路に影響を与えない部分に選択的
に形成されるためである。実際にはリッジ1007の側
面に僅かにプロトン交換部分1008が存在するが、光
導波路の内部にはプロトン濃度の高い部分が存在しない
ために、高い非線形特性を維持することができる。
【0275】次に、形成される光導波路の導波損失特性
における測定結果について説明する。
【0276】リッジ型光導波路の導波損失の原因は、リ
ッジ形状をエッチングした際にその表面に生じる僅かな
凸凹である。特に、導波路部分(屈折率:約2.2)と
空気層(屈折率:1.0)との間の屈折率差が大きいた
め、光導波路の表面に凹凸が存在すると、導波損失が大
きくなる。この影響を低減するためには、光導波路全体
を、空気層より屈折率の高い物質で被う必要がある。
【0277】そこで、上記で形成されたリッジ型光導波
路の全体を空気層の屈折率より高い物質の膜で被覆した
際の、被覆膜の屈折率と導波損失との関係を測定した。
図32に、その測定結果を示す。図32に示すように、
屈折率が1.0より増加すると共に導波損失が低下す
る。しかし、被覆膜の屈折率が導波路の屈折率を超える
と、導波路に光が閉じ込められなくなり、基本波はカッ
トオフされる。このため、被覆膜は、空気層の屈折率
(1.0)より大きく且つ光導波路の屈折率(約2.
2)より小さい屈折率を有する光透過性材料から形成さ
れることが好ましい。
【0278】なお、上記の説明では、LiTaO3単結晶基板
を用いているが、LiNbO3の単結晶基板、或いは、LiTaO3
とLiNbO3との多結晶基板(LiNb1-xTax3(0≦X≦
1))でも、上記と同様の効果を得られる。LiNbO3は電
気光学定数及び非線形光学定数などが大きいので、多く
の分野における光導波路素子(光スイッチ、非線形光学
素子、音響光学素子等)に応用されている。したがっ
て、本実施形態の光導波路及び光波長変換素子の製造方
法は、これらの応用分野において非常に有効である。
【0279】さらに、LiTaO3基板の代わりに、MgOを添
加したMgO:LiNbO3基板やMgO:LiTaO3基板にも適用でき
る。これらの材料により形成された基板は光損傷に強い
ため、高出力の素子が作製できて有効である。
【0280】さらに、基板としては、KTP基板を用いる
こともできる。KTPを基板材料とした場合には、イオン
交換としてRbイオン交換が用いられて、上記と同様の
効果を有する光導波路が形成できる。KTPは耐光損傷性
に優れた特性を有しているため、KTP基板の光導波路
は、高出力の光導波路として有効である。
【0281】(第11の実施形態)図33(a)〜
(f)は、本発明の第11の実施形態における光導波路
の製造方法を示す図であり、それぞれ、光の導波方向と
直交する面にそった断面図である。
【0282】まず、図33(a)に示すように、非線形
光学物質であるC板のLiTa03単結晶基板1101(結晶
のC軸に垂直な面で切り出した基板、以下では、「基板
1101」と略称する)を、約200℃〜約300℃の
ピロ燐酸液中に数分間浸してプロトン交換を行い、基板
1101の表面に帯板状の1次プロトン交換層1102
を形成する。
【0283】次に、基板1101に対して約400℃〜
約450℃でアニール処理を行い、1次プロトン交換層
1102の全部を、図33(b)に示すように帯板状の
アニール処理プロトン交換層1106にする。
【0284】次に、基板を再度ピロ燐酸中で熱処理し
て、図33(c)に示すように、アニール処理プロトン
交換層1106の表面から所定の深さまでの2次プロト
ン交換層1105を形成する。
【0285】さらに、図33(d)に示すように、2次
プロトン交換層1105の上にフォトリソグラフィ法に
より所定幅の直線状レジストパターン1104を形成す
る。
【0286】そして、形成されたレジストパターン11
04を保護マスクとして用いて、CHF3雰囲気中でドライ
エッチングを行い、図33(e)に示すように、非マス
ク部分の2次プロトン交換層1105をエッチングで除
去する。
【0287】その後に、図33(f)に示すように、残留
する直線状の2次プロトン交換層1105の上のレジス
トパターン1104を除去する。
【0288】さらに光導波路の入出射面となる両端面を
光学研磨して、図面と直交する方向に光が導波する光導
波路が製造される。なお、上記の工程で形成されたアニ
ール処理プロトン交換層1106は、典型的にはその深
さが約2.5μmであり、最終工程で残存した2次プロ
トン交換層1105によって形成されるリッジの高さ
は、典型的には約0.4μmである。
【0289】上記の製造方法によれば、製造工程が簡便
なためにリッジ型光導波路を容易に製造することができ
る。また、上記の製造方法では、エッチングする部分に
2次プロトン交換層1105を形成することによって、
前述のようにエッチング部のみの特性を変えて、エッチ
ング速度を飛躍的に向上させている。さらに、エッチン
グの深さは2次プロトン交換層1105の深さと実質的
に一致するため、2次プロトン交換層1105の深さを
精度高く形成することにより、エッチング深さを所望の
深さに制御できる。このため、本実施形態の製造方法に
よれば、高い精度でリッジを形成できて品質のそろった
光導波路が製造できるとともに、プロトン交換部分が光
導波路に悪影響を与えることがほとんど無く、リッジに
のみプロトン交換部分を有する光導波路を形成すること
ができる。さらに、本実施形態の製造方法によれば、リ
ッジにはプロトン交換濃度の高い高屈折率層が形成され
ているため、閉じ込めの強い光導波路が形成できる。
【0290】さらに、本実施形態の光導波路は、その表
面にプロトン濃度の高い部分が形成されているため、優
れた耐光損傷性を有する。これは、プロトン濃度の高い
部分が基板に比べて高い電気伝導度を有しているので、
光損傷の原因となる光励起による自由電荷の偏りに伴う
電界の発生が抑圧されるためである。
【0291】また、光導波路の表面にプロトン濃度の高
い部分が形成されているため、光導波路の特性の経時変
化が抑圧されている。すなわち、LiNbO3やLiTaO3のアニ
ール処理プロトン交換層においては、屈折率の経時変化
が発生するが、本実施形態によれば、さらにプロトン交
換を行うことにより、そのような屈折率変化は抑圧され
る。これは、アニール処理プロトン交換層ではその表面
近傍の結晶構造がアニール処理後に徐々に変化するのに
対して、その表面部分に再度プロトン交換を施すことに
より、その部分の結晶構造が変化するためである。
【0292】なお、上記の説明では、LiTaO3単結晶基板
を用いているが、LiNbO3の単結晶基板、或いは、LiTaO3
とLiNbO3との多結晶基板(LiNb1-xTax3(0≦X≦
1))でも、上記と同様の効果を得られる。LiNbO3は電
気光学定数及び非線形光学定数などが大きいので、多く
の分野における光導波路素子(光スイッチ、非線形光学
素子、音響光学素子等)に応用されている。したがっ
て、本実施形態の光導波路及び光波長変換素子の製造方
法は、これらの応用分野において非常に有効である。
【0293】さらに、LiTaO3基板の代わりに、MgOを添
加したMgO:LiNbO3基板やMgO:LiTaO3基板にも適用でき
る。これらの材料により形成された基板は光損傷に強い
ため、高出力の素子が作製できて有効である。
【0294】さらに、基板としては、KTP基板を用いる
こともできる。KTPを基板材料とした場合には、イオン
交換としてRbイオン交換が用いられて、上記と同様の
効果を有する光導波路が形成できる。KTPは耐光損傷性
に優れた特性を有しているため、KTP基板の光導波路
は、高出力の光導波路として有効である。
【0295】さらに、上記では光導波路にプロトン交換
導波路を用いているが、他に、Ti、Cu、Nd、C
d、Zなどの金属拡散導波路も適用できる。これらの金
属拡散導波路は、非線形定数や電気光学定数の劣化が少
ないために、優れた特性を有する光学素子が製造でき
る。
【0296】(第12の実施形態)図34(a)〜
(g)は、本発明の第10の実施形態で説明した光導波
路の製造方法を利用した光波長変換素子の製造方法を示
す図であり、それぞれ、光の導波方向と直交する面にそ
った断面図である。
【0297】まず、図34(a)に示すように、非線形
光学物質であるC板のLiTa03単結晶基板1201(結晶
のC軸に垂直な面で切り出した基板、以下では、「基板
1201」と略称する)を、約200℃〜約300℃の
ピロ燐酸液中に数分間浸してプロトン交換を行い、基板
1201の表面に帯板状の1次プロトン交換層1202
を形成する。
【0298】次に、基板1201に対して約400℃〜
約450℃でアニール処理を行い、1次プロトン交換層
1202の全部を、図34(b)に示すように帯板状の
アニール処理プロトン交換層1206にする。
【0299】次に、基板1201の表面である+C面上
に櫛形電極1209aを設け、基板1201の裏面であ
る−C面には平面電極1209bを形成する。このよう
に取付けられた両電極間に電圧を印加して、図34
(c)に示すように、光導波方向に直交する分極反転層
1210が形成される。この分極反転層1210は、櫛
形電極1209aの形状に応じた一定周期毎に形成され
る。
【0300】さらに、両電極を取り除いた後に、基板1
201の+C面上に、厚さ約60nmのTa層をスパッタ
リング又は蒸着により堆積させる。その後、フォトリソ
グラフィ法とCF4雰囲気中のドライエッチングによっ
て、図34(d)に示すような所定幅の直線状のTa層1
203を形成する。
【0301】さらに、Ta層1203を保護マスクとして
非マスク部分を再度プロトン交換し、図34(e)に示
すように、アニール処理プロトン交換層1206の表面
から所定の深さでの2次プロトン交換層1205を形成
する。
【0302】次に、基板1201の表面にネガレジスト
(不図示)を塗布した後に、裏面より紫外線を照射して
ネガレジストを露光して現像し、図34(f)に示すよ
うに直線状のTaマスク1203の上にレジストパターン
1204を形成する。このとき、直線状のTa層1203
が保護マスクとなって非マスク部分のみ露光されるた
め、Ta層1203の上のみに、所定幅を有した直線状の
レジストパターン1204が、選択的に形成される。
【0303】次に、形成されたレジストパターン120
4とTa層1203を保護マスクとしてCHF3雰囲気中でド
ライエッチングを行い、図34(g)に示すように、非
マスク部分の2次プロトン交換層1205をエッチング
で除去する。さらに、基板1201をフッ酸:硝酸=
1:2の液中に数秒間浸して、残留するTa層1203及
びレジストパターン1204を除去する。その後に、光
導波路の入出射面となる両端面を光学研磨して、図34
(g)に示すようなリッジ1207を有する光導波路が
製造される。
【0304】なお、リッジ1207の側面には、プロト
ン交換部分1208が形成されている。プロトン交換部
分1208は、Ta層1203の保護マスクを用いて2次
プロトン交換層1205を形成する際に、プロトンの横
方向への拡散により形成される。このプロトン交換部分
1208はアニールされていないため、アニール処理さ
れたプロトン交換層1206に比べてプロトン濃度が高
く、屈折率変化も大きくなっている。
【0305】本実施形態の製造方法においては、帯板状
の光導波路を形成した後に分極反転層1210が形成さ
れるため、分極反転層1210は光導波路形成時の製造
工程により影響されることがない。従って、均一な分極
反転層1210を確実に形成ができる。
【0306】通常は、分極反転層をエッチングすると、
非分極反転層と分極反転層間でエッチング速度に違いが
あるために光導波路の表面に凹凸が形成される。しか
し、本実施形態の製造方法では、エッチングすべき分極
反転層1210を有する表面には2次プロトン交換層1
205が形成されているため、分極反転層1210の表
面にエッチングによる凹凸が形成されない。この結果、
本実施形態の製造方法は、低損失の光波長変換素子を形
成するのに適した製造方法である。
【0307】さらに、上記の製造方法によれば、2次プ
ロトン交換層1205の深さの制御により、エッチング
の深さを精度高く制御できるため、特性のそろった光波
長変換素子の製造が可能である。
【0308】次に、本実施形態の製造方法により製造さ
れた光波長変換素子の原理について説明する.図35
は、本実施形態の製造方法により製造された光波長変換
素子の構造を示す斜視図である。図34(a)〜(g)
と同じ構成要素には同じ参照番号を付しており、その説
明は省略する。
【0309】図35の光波長変換素子は、擬似位相整合
型の第2高調波発生素子であり、光導波路内の光の伝搬
の方向に周期的に形成された分極反転層1210によ
り、光導波路を伝搬する基本波が半分の波長の第2高調
波に変換される。例えば、波長860nmの赤外光をこ
の光導波路に入射すれば、半分の波長の430nmの青
色光が出射される。光波長変換素子の特性は、光導波路
の非線形光学定数、及び光導波路を伝搬する基本波と第
2高調波との電界の重なりに大きく依存している。
【0310】次に、上記の製造方法により製造された光
波長変換素子の特性評価結果について説明する。
【0311】最初に、リッジ型の光導波路を有する光波
長変換素子の導波モード(基本波と第2高調波)の重な
りについて説明する。
【0312】本実施形態の光波長変換素子の評価実験に
おいて、光導波路を伝搬する導波光の近視野像を観測し
て、導波光の電界分布の横方向(図35におけるX方
向)の重なりを求めた。図36(a)及び(b)は、基
本波光及び第2高調波光の光導波路における強度分布を
示すグラフであり、図36(a)は従来の埋め込み型導
波路の場合を示し、図36(b)は本実施形態のリッジ
型光導波路の場合を示している。これらのグラフより、
横方向の重なりは、従来の埋め込み型光導波路の強度分
布に比べて、本実施形態のリッジ型光導波路で非常に大
きくなっていることが分かる。この理由は、リッジ型光
導波路の屈折率分布がリッジ1207によってステップ
状になるとともに、リッジ1207の側面に形成された
プロトン交換部分1208が高屈折率部となって、光導
波路の閉じ込めに大きく貢献しているためである。この
結果、リッジ型光導波路を用いた本実施形態の光波長変
換素子では、従来の埋め込み型光導波路を用いた光波長
変換素子に比べて、変換効率が1.5倍に向上した。
【0313】次に、本実施形態で製造された光波長変換
素子における耐光損傷性について説明する。
【0314】光導波路における光損傷は、光導波路等の
光の閉じ込めの強い場所で発生しやすい。また、このよ
うな光損傷の発生は、光の波長が短い程、顕著になる。
従来の光波長変換素子においては、第2高調波の発生に
より光損傷が生じて、出力持性か不安定になる。そこ
で、従来の埋め込み型光導波路においては、耐光損傷性
に優れるとともに基板に比較して大きな耐光損傷強度を
有するプロトン交換したLiTaO3が用いられていた。しか
し、従来の埋め込み型光導波路では、導波する光がプロ
トン交換領域以外の部分へも染み出すため、導波路の外
周部で光損傷が生じて、結果として高出力の第2高調波
を発生させることは困難であった。
【0315】これに対して、本実施形態の製造方法によ
り製造された光波長変換素子について耐光損傷性の評価
実験を行ったところ、従来の埋め込み型光導波路を用い
た光波長変換素子の10倍以上の耐光損傷性を有してい
た。その理由は、リッジ型光導波路を用いた光波長変換
素子は、光導波路の表面にリッジ形状のプロトン交換層
を形成して、光導波路からの光の染みだしを抑制してい
るためである。また、プロトン交換層は電気伝導度が高
いため、光損傷の原因となる光励起自由電子の偏りによ
る電界の発生を抑圧している。このため、本実施形態の
波長変換素子では、導波路の表面に形成されたリッジ形
状のプロトン交換層により、耐光損傷性に優れた導波路
構造が実現されている。さらに、本実施形態の光波長変
換素子では、リッジ1207の側面に形成されたプロト
ン交換部分1208が高いプロトン濃度を有して電気伝
導度を高めているため、この点でも耐光損傷性が向上し
ている。
【0316】次に、本実施形態の光波長変換素子の変換
効率について説明する。
【0317】リッジ型光導波路において、リッジ120
7の側面に微細な凹凸が形成されると導波損失が大きく
なる。このような導波損失を低減するするために、前述
の第10の実施形態では、空気層の屈折率より高く且つ
光導波路の屈折率より低い膜で、光導波路を覆う。この
ような被膜は、本実施形態の波長変換素子についても有
効である。
【0318】また、本実施形態の光波長変換素子では、
リッジ型光導波路を用いることにより、光導波路におけ
る横方向の伝搬光の重なりを大きくすることが可能にな
っている。しかし、光導波路における深さ方向(図35
におけるZ方向)の光の強度分布の重なりはあまり改善
されておらず、高効率の光導波路を有する光波長変換素
子を形成するためには、その深さ方向の重なりを大きく
する必要が有る。そこで、深さ方向の導波光の強度分布
を制御する方法として、光導波路のリッジ1207の表
面に高屈折率層を形成する(すなわち、リッジ1207
の表面のみを選択的に屈折率の高い層で覆う)。このよ
うに高屈折率の膜をリッジ1207の表面に形成するこ
とにより、光導波路の深さ方向の閉じこめを強くして、
導波モード間の重なりを大きくすることができる。
【0319】図37(a)及び(b)は、光波長変換素
子における基本波と第2高周波の深さ方向の重なり状態
を示した状態図であり、(a)は前述の本実施形態の製
造方法により製造された光波長変換素子における導波モ
ード間の重なり状態を示し、(b)は、リッジ1207
の表面にさらに高屈折率層1220を形成した光波長変
換素子における導波モード間の重なり状態を示す。
【0320】図37(b)に示した光波長変換素子で、
リッジ1207の表面上のみに選択的に形成した高屈折
率層1220は、アモルファス状のLiNbO3である。光導
波路の閉じ込めを強くするには、光導波路の屈折率より
高い屈折率を持つ膜を、リッジ1207の表面上に形成
することが有効である。このため、LiTaO3の光導波路の
屈折率(約2.15)よりも大きい屈折率(約2.2
5)を有するアモルファス状のLiNbO3を、高屈折率層1
220の構成材料として用いている。高屈折率層122
0の厚さは、光導波路を伝搬する第2高調波がこの高屈
折率層1220を導波しない程度の厚さ、例えば約10
0nm〜約500nmとする。この理由は、第2高調波
がLiNbO3の表面層を導波すると、この表面層に第2高調
波が閉じ込もり、変換効率か大幅に低下してしまうため
である。図37(b)に示すように、LiNbO3の高屈折率
層1220を有する光波長変換素子では、深さ方向の導
波光における基本波と第2高調波間の強度分布の重なり
が大きいために、図37(a)に示した光波長変換素子
に比べて変換効率が1.3倍向上した。
【0321】なお、上記の説明では、LiTaO3単結晶基板
を用いているが、LiNbO3の単結晶基板、或いは、LiTaO3
とLiNbO3との多結晶基板(LiNb1-xTax3(0≦X≦
1))でも、上記と同様の効果を得られる。LiNbO3は電
気光学定数及び非線形光学定数などが大きいので、多く
の分野における光導波路素子(光スイッチ、非線形光学
素子、音響光学素子等)に応用されている。したがっ
て、本実施形態の光導波路及び光波長変換素子の製造方
法は、これらの応用分野において非常に有効である。
【0322】さらに、LiTaO3基板の代わりに、MgOを添
加したMgO:LiNbO3基板やMgO:LiTaO3基板にも適用でき
る。これらの材料により形成された基板は光損傷に強い
ため、高出力の素子が作製できて有効である。
【0323】さらに、基板としては、KTP基板を用いる
こともできる。KTPを基板材料とした場合には、イオン
交換としてRbイオン交換が用いられて、上記と同様の
効果を有する光導波路が形成できる。KTPは耐光損傷性
に優れた特性を有しているため、KTP基板の光導波路
は、高出力の光導波路として有効である。
【0324】さらに、基板としては、他にZnS、GaAsな
どの半導体基板を用いることもできる。半導体材料は大
きな非線形光学定数を有し、製造技術も発達しているた
め、高出力の光波長変換素子が作製できる。
【0325】さらに、上記では光導波路にプロトン交換
導波路を用いているが、他に、Ti、Cu、Nd、C
d、Zなどの金属拡散導波路も適用できる。これらの金
属拡散導波路は、非線形定数や電気光学定数の劣化が少
ないために、優れた特性を有する光学素子が製造でき
る。
【0326】(第13の実施形態)図38(a)〜
(f)は、本発明の第11の実施形態で説明した光導波
路の製造方法を利用した光波長変換素子の製造方法を示
す図であり、それぞれ、光の導波方向と直交する面にそ
った断面図である。
【0327】まず、図38(a)に示すように、非線形
光学物質であるC板のLiTa03単結晶基板1301(結晶
のC軸に垂直な面で切り出した基板、以下では、「基板
1301」と略称する)を、約200℃〜約300℃の
ピロ燐酸液中に数分間浸してプロトン交換を行い、基板
1301の表面に帯板状の1次プロトン交換層1302
を形成する。
【0328】次に、基板1301に対して約400℃〜
約450℃でアニール処理を行い、1次プロトン交換層
1302の全部を、図38(b)に示すように帯板状の
アニール処理プロトン交換層1306にする。
【0329】次に、基板を再度ピロ燐酸中で熱処理し
て、図38(c)に示すように、アニール処理プロトン
交換層1306の表面から所定の深さまでの2次プロト
ン交換層1305を形成する。
【0330】次に、基板1301の表面である+C面上
に櫛形電極1309aを設け、基板1301の裏面であ
る−C面には平面電極1309bを形成する。このよう
に取付けられた両電極間に電圧を印加して、図38
(d)に示すように、光導波方向に直交する分極反転層
1310が形成される。この分極反転層1310は、櫛
形電極1309aの形状に応じた一定周期毎に形成され
る。
【0331】さらに、両電極を取り除いた後に、さら
に、図38(e)に示すように、基板1301の上にフ
ォトリソグラフィ法により所定幅の直線状レジストパタ
ーン1304を形成する。
【0332】そして、形成されたレジストパターン13
04を保護マスクとして用いて、CHF3雰囲気中でドライ
エッチングを行い、非マスク部分の2次プロトン交換層
1305をエッチングで除去する。その後に、図38
(f)に示すように、残留する直線状の2次プロトン交
換層1305の上のレジストパターン1304を除去す
る。さらに光導波路の入出射面となる両端面を光学研磨
して、光波長変換素子が製造される。なお、上記の工程
で形成されたアニール処理プロトン交換層1106は、
典型的にはその深さが約2.5μmであり、最終工程で
残存した2次プロトン交換層1305によって形成され
るリッジの高さは、典型的には約0.4μmである。
【0333】上記の本実施形態の光波長変換素子の製造
方法では、簡便な製造工程で、リッジ型光導波路を有す
る光波長変換素子を容易に製造できる。さらに、形成さ
れる光波長変換素子は、そのリッジがプロトン濃度が高
く屈折率変化の大きな2次プロトン交換層1305に設
けられているため、光の閉じ込めの強い導波路構造が実
現される。
【0334】さらに、上記の製造方法によれば、2次プ
ロトン交換層1305の深さの制御により、エッチング
の深さを精度高く制御できるため、特性のそろった光波
長変換素子の製造が可能である。
【0335】次に、上記の製造方法により製造された光
波長変換素子の特性評価結果について説明する。
【0336】図39は、本実施形態の製造方法により製
造された光波長変換素子の構造を示す斜視図である。図
38(a)〜(f)と同じ構成要素には同じ参照番号を
付している。具体的には、基板1301の上に、アニー
ル処理プロトン交換層1306が形成されている。この
アニール処理プロトン交換層1306の上には、リッジ
1307であるプロトン交換部分1380が形成されて
いる。また、光の導波方向と直交するように、一定周期
毎に分極反転層1310が形成されている。プロトン交
換部分1380は、プロトン交換時に形成されたプロト
ン濃度の高い2次プロトン交換層1305の一部分であ
る。
【0337】上記の構成を有する光波長変換素子は、リ
ッジ1307として屈折率の高いプロトン交換層130
5を有するため、深さ方向の導波モード間(基本波と第
2高調波)の電界分布の重なりが大きく、高効率の光波
長変換素子となっている。以下に、その理由を述べる。
【0338】図40は、リッジの厚さと光波長変換素子
の変換効率との関係を示したグラフである。図40の
(a)、(b)及び(c)は、リッジの高さの異なる3
種類の光波長変換素子における各導波モード間(基本波
と第2高調波)の厚さ方向の重なりを示している。
【0339】図40の(a)に示す光波長変換素子で
は、リッジ1307が非常に薄く、実質的には表面に高
屈折率層が存在しない。この場合には、導波路の屈折率
分布がグレーデイッド状(中心部の屈折率か高く、外周
部分の屈折率か低い状態)になり、基本波と第2高調波
の重なりが小さくて、変換効率が低い。
【0340】図40の(b)に示す光波長変換素子で
は、やや厚いリッジ1307が設けられている。このよ
うな表面における高屈折率層により、基本波の強度分布
が表面近傍に引き寄せられ、基本波と第2高調波の重な
りか増大して、高い変換効率か得られる。具体的には、
図40の(b)に示す光波長変換素子の変換効率は、リ
ッジに高屈折率層を形成しない場合に比べて約1.5倍
に増大しており、変換効率の高効率化を達成するために
はリッジに高屈折率層を形成することが有効な手段であ
ることが、明らかである。
【0341】図40の(c)に示す光波長変換素子で
は、さらに厚い高屈折率層が設けられて、基本波と第2
高調波の重なりが増大している。このとき、基本波及び
第2高調波は、いずれも、表面の高屈折率層ではカット
オフされている。しかし、図40の(c)の光波長変換
素子では、第2高調波が高屈折率層を導波するので、変
換効率は逆に低下している。この理由は、高屈折率層に
おけるプロトン濃度が高く非線形光学定数か劣化してい
るために、この高屈折率層では高効率の波長変換が生じ
ないからである。
【0342】従って、高効率の光波長変換素子を構成す
るためには、リッジの厚さを第2高調波のみがカットオ
フとなる程度にするのが望ましい。
【0343】さらに、本実施形態の光波長変換素子で
は、光導波路の表面にプロトン濃度の高い部分が形成さ
れているため、優れた耐光損傷性を有する。これは、プ
ロトン濃度の高い部分が基板に比べて高い電気伝導度を
有しているので、光損傷の原因となる光励起による自由
電荷の偏りに伴う電界の発生が抑圧されるためである。
【0344】また、光導波路の表面にプロトン濃度の高
い部分が形成されているため、光導波路の特性の経時変
化が抑圧されている。すなわち、LiNbO3やLiTaO3のアニ
ール処理プロトン交換層においては、屈折率の経時変化
が発生するが、本実施形態によれば、さらにプロトン交
換を行うことにより、そのような屈折率変化は抑圧され
る。これは、アニール処理プロトン交換層ではその表面
近傍の結晶構造がアニール処理後に徐々に変化するのに
対して、その表面部分に再度プロトン交換を施すことに
より、その部分の結晶構造が変化するためである。
【0345】なお、上記の説明では、LiTaO3単結晶基板
を用いているが、LiNbO3の単結晶基板、或いは、LiTaO3
とLiNbO3との多結晶基板(LiNb1-xTax3(0≦X≦
1))でも、上記と同様の効果を得られる。LiNbO3は電
気光学定数及び非線形光学定数などが大きいので、多く
の分野における光導波路素子(光スイッチ、非線形光学
素子、音響光学素子等)に応用されている。したがっ
て、本実施形態の光導波路及び光波長変換素子の製造方
法は、これらの応用分野において非常に有効である。
【0346】さらに、LiTaO3基板の代わりに、MgOを添
加したMgO:LiNbO3基板やMgO:LiTaO3基板にも適用でき
る。これらの材料により形成された基板は光損傷に強い
ため、高出力の素子が作製できて有効である。
【0347】さらに、基板としては、KTP基板を用いる
こともできる。KTPを基板材料とした場合には、イオン
交換としてRbイオン交換が用いられて、上記と同様の
効果を有する光導波路が形成できる。KTPは耐光損傷性
に優れた特性を有しているため、KTP基板の光導波路
は、高出力の光導波路として有効である。
【0348】さらに、基板としては、他にZnS、GaAsな
どの半導体基板を用いることもできる。半導体材料は大
きな非線形光学定数を有し、製造技術も発達しているた
め、高出力の光波長変換素子が作製できる。
【0349】さらに、上記では光導波路にプロトン交換
導波路を用いているが、他に、Ti、Cu、Nd、C
d、Zなどの金属拡散導波路も適用できる。これらの金
属拡散導波路は、非線形定数や電気光学定数の劣化が少
ないために、優れた特性を有する光学素子が製造でき
る。
【0350】なお、本発明における光導波路の構成は、
例えばファイバ状の導波路に適用することもできる。そ
の場合には、光学材料によって形成される円筒状コアが
上記の説明における光導波層に相当し、そのコアの表面
を覆うように、上述の特徴を有するクラッド層が形成さ
れている。
【0351】
【発明の効果】以上に説明したように、光導波路上にク
ラッド層を設け、光導波路を伝搬する基本モードの基本
波と一部がクラッド層を導波する高次モードの第2高調
波との間で位相整合をとることにより、モード間のオー
バラップを高めて変換効率を大幅に向上することができ
るので、実用上、大きな効果が得られる。
【0352】また、屈折率の高い材料でクラッド層を形
成することにより、導波路の幅方向の閉じ込めも、強く
することができる。これによって、導波路から出射され
る光の出射角を幅方向と深さ方向でほぼ等しくすること
ができて、出射ビームのアスペクト比を改善し、光の利
用効率を大幅に向上させることができる。これによっ
て、実用上、大きな効果が得られる。
【0353】また、光波長変換素子において、高屈折率
層と基板より屈折率を有するクラッド層とを設けること
により、光導波路を伝搬する光の閉じ込めを強くして、
光のパワー密度を向上することができる。さらに、これ
によって、光導波路内を伝搬する基本波と高調波との電
界分布のオーバラップが増大するため、変換効率を大幅
に向上することが可能となり、実用上、大きな効果が得
られる。
【0354】また、本発明の光波長変換素子の構造によ
り、光損傷による第2高調波出力の変動を大幅に低減す
ることが可能となる。これにより、高出力で安定な第2
高調波出力が得られるようになり、実用上、大きな効果
が得られる。
【0355】さらに、本発明によれば、高屈折率のクラ
ッド層により電界分布の制御が可能となるので、光導波
路を伝搬するモードプロファイルの制御性が向上する。
これによって、第2高調波出力の放射パターンのアスペ
クト比を1に近づけることが可能となり、光の利用効率
が大幅に向上し、実用上、大きな効果が得られる。
【0356】さらに、光導波路の製造方法として、プロ
トン交換時に透過膜を通してプロトン交換を行うことに
より、プロトン交換層表面の化学損傷を低減できる。こ
れによって、導波損失の小さな光導波路が形成できて、
実用上、大きな効果が得られる。
【0357】また、透過膜の厚さの制御によって形成さ
れるプロトン交換層の厚さをコントロールすることがで
きるため、1回のプロトン交換処理により異なった深さ
を有するプロトン交換層が形成できる。さらに、形成さ
れるプロトン交換層の形状を透過膜の形状により制御で
きるため、作業の単純化、プロセス工程の削減による量
産性の向上が可能となり、実用上、大きな効果が得られ
る。
【0358】さらに、本発明の光導波路及び光波長変換
素子の製造方法では、金属マスクを用いてエッチング部
分のみを選択的にプロトン交換し、さらに金属マスク上
にレジストバターンを裏面露光により形成してエッチン
グすることにより、容易に光導波路を形成できる。ま
た、上記製造工程において、エッチング部分をイオン交
換にすることにより、エッチング速度及びエッチング精
度の向上を達成することができ、品質のそろった光導波
路の形成か可能となる。
【0359】さらに、製造された光導波路は、低損失で
且つ耐光損傷性に優れ、導波路を伝搬する導波モードの
電界分布の最適化が図られており、高効率且つ高出力の
光波長変換素子へ適用が可能である。
【0360】例えば、第10の実施形態の製造方法によ
れば、エッチングの深さを高精度に制御できるため、光
導波路の均一化及び導波損失の低減化を達成することが
できる。第11の実施形態における製造方法では、リッ
ジにプロトン交換濃度の高い高屈折率層を形成して、光
の閉じ込めの強い素子を実現するとともに、耐光損傷性
に優れた光導波路を容易に製造することができる。さら
に、第12の実施形態によれば、光導波路表面にリッジ
を形成し、このリッジに高屈折率部分を形成することに
よって、高い変換効率を有し、且つ耐光損傷性に優れた
光波長変換素子を得ることができる。また、第13の実
施形態に示した製造方法によれば、エッチングの深さを
高精度に制御できるため、均一な品質を有する光波長変
換素子を容易に製造できるとともに、変換効率の高い光
波長変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、従来の埋め込み型光導波路
の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】(a)は、従来の光波長変換素子の構成の一例
を示す斜視図であり、(b)は、(a)の線2B−2B
における断面図であり、(c)は、(a)の線2C−2
Cにおける断面図である。
【図3】従来の光波長変換素子の構成の他の一例を示す
斜視図である。
【図4】従来の光波長変換素子の構成のさらに他の一例
を示す斜視図である。
【図5】(a)及び(b)は、光導波層の導波モードと
分極反転層とのオーバラップを模式的に示す図である。
【図6】(a)は、光導波路の模式的な断面図であり、
(b)は、(a)の構成における導波モードの電界分布
を表す図である。
【図7】(a)〜(d)は、様々な構成の光導波路の模
式的な断面図とそれぞれの構成における導波モードの電
界分布を表す図である。
【図8】クラッド層及び光導波層における屈折率比と第
2高調波強度比との関係を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における光波長変換素
子の構成を示す図である。
【図10】基本波と第2高調波とのオーバラップを表す
図である。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれクラッド層を
有する光波長変換素子の構成を示す断面図であり、
(c)及び(d)は、それぞれ(a)及び(b)の構成
における導波光の電界強度分布を示す図である。
【図12】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態
における光波長変換素子の製造工程を説明する断面図で
ある。
【図13】LiTaO3及びNb2O5の屈折率分散特性を表す図
である。
【図14】導波光の波長及びクラッド層の厚さに対す
る、導波モードの特性を表す図である。
【図15】(a)〜(c)は、異なる厚さのクラッド層
に対する導波モードの電界分布を表す図である。
【図16】(a)〜(d)は、光の伝搬状態(基本波及
び第2高調波の導波モード)を説明するための図であ
る。
【図17】クラッド層の屈折率と厚さとの関係を表す図
である。
【図18】本発明の第2の実施形態における光波長変換
素子の構成を示す図である。
【図19】本発明の第3の実施形態における光波長変換
素子の構成を示す図である。
【図20】短波長光源の構成を示す図である。
【図21】光ピックアップの構成を示す図である。
【図22】(a)〜(h)は、異なる材料から構成され
たクラッド層が形成されている場合の導波モードの電界
分布を説明するための図である。
【図23】本発明の第7の実施形態における光波長変換
素子の構成を示す図である。
【図24】本発明の第8の実施形態における光波長変換
素子の構成を示す図である。
【図25】(a)及び(b)は、本発明の第9の実施形
態における光導波路の製造工程を説明する断面図であ
る。
【図26】Ta2O5透過膜の厚さと拡散定数との関係を表
す図である。
【図27】(a)〜(c)は、本発明の第9の実施形態
における光導波路の他の製造工程を説明する断面図であ
る。
【図28】(a)及び(b)は、形成されるプロトン交
換層の断面図である。
【図29】透過膜を用いるプロトン交換処理で形成され
るプロトン交換層の他の断面図である。
【図30】(a)〜(f)は、本発明の第10の実施形
態における光導波路の製造工程を説明する断面図であ
る。
【図31】光導波路の構成を示す断面図である。
【図32】図31の光導波路の表面に形成される層の屈
折率と導波損失との関係を示す図である。
【図33】(a)〜(f)は、本発明の第11の実施形
態における光導波路の製造工程を説明する断面図であ
る。
【図34】(a)〜(g)は、本発明の第12の実施形
態における光波長変換素子の製造工程を説明する断面図
である。
【図35】光波長変換素子の構成を示す斜視図である。
【図36】(a)及び(b)は、光導波路を伝搬する光
の横方向強度分布を示す図である。
【図37】(a)及び(b)は、光導波路を伝搬する光
の深さ方向強度分布を示す図である。
【図38】(a)〜(f)は、本発明の第13の実施形
態における光波長変換素子の製造工程を説明する断面図
である。
【図39】光波長変換素子の構成を示す斜視図である。
【図40】光波長変換素子におけるリッジの厚さと変換
効率との関係を示す図である。
【符号の説明】
101 LiTaO3基板 104 分極反転層 105 プロトン交換層 106 基本波光 107 第2高調波光 108 分極反転層の周期Λ 109 分極反転層の幅W 110 クラッド層 111 カバー層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 辰雄 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (50)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学材料と、 該光学材料に形成された光導波層と、 該光導波層の表面に形成されたクラッド層と、を備え、 該光導波層は波長λ1の光及び波長λ2の光(λ1>λ
    2)が導波可能であり、 該クラッド層の屈折率と厚さは、該波長λ2の光に対す
    る導波条件を満足し且つ該波長λ1の光に対してはカッ
    トオフ条件を満たすように設定されている、光導波路。
  2. 【請求項2】 前記光導波層がストライプ状である、請
    求項1に記載の光導波路。
  3. 【請求項3】 前記光学材料の表面近傍に形成された屈
    折率n1の高屈折率層をさらに備え、該光学材料が屈折
    率nsを有し、前記光導波層は該光学材料の表面近傍に
    ストライプ状に形成され且つ屈折率nfを有しており、
    該屈折率はnf>n1>nsの関係を満足している、請
    求項1に記載の光導波路。
  4. 【請求項4】 前記クラッド層がストライプ状である、
    請求項1に記載の光導波路。
  5. 【請求項5】 前記光導波層がストライプ状である、請
    求項4に記載の光導波路。
  6. 【請求項6】 前記光導波層の表面にストライプ状にリ
    ッジが形成されており、前記クラッド層は該リッジの上
    にストライプ状に形成されていて、該光導波層の中の前
    記光は該リッジを導波する、請求項1に記載の光導波
    路。
  7. 【請求項7】 前記光学材料は円筒状のコアを形成し、
    前記クラッド層は該コアの周辺部を覆っている、請求項
    1に記載の光導波路。
  8. 【請求項8】 前記光導波路において、前記波長λ1の
    光は基本モードで伝搬し、前記波長λ2の光は高次モー
    ドで伝搬する、請求項1から7のいずれかに記載の光導
    波路。
  9. 【請求項9】 前記クラッド層の実効屈折率Ncと前記
    光導波層の実効屈折率NfとはNc>1.02・Nfの
    関係を満足している、請求項1から8のいずれかに記載
    の光導波路。
  10. 【請求項10】 前記クラッド層が多層膜からなってい
    る、請求項1から9のいずれかに記載の光導波路。
  11. 【請求項11】 非線形光学効果を有する材料でできた
    基板と、 該基板に形成された光導波層と、 該光導波層の表面に形成されたクラッド層と、を備え、 該光導波層は波長λの基本波及び波長λ/2の第2高調
    波が導波可能であり、 該クラッド層は、該光導波層内を導波する基本モードの
    基本波と高次モードの第2高調波との間の電界分布の重
    なりを高め、該基本波を該第2高調波に変換する、光波
    長変換素子。
  12. 【請求項12】 前記クラッド層の屈折率と厚さは、前
    記第2高調波に対する導波条件を満足し且つ前記基本波
    に対してはカットオフ条件を満たすように設定されてい
    る、請求項11に記載の光波長変換素子。
  13. 【請求項13】 前記光導波層がストライプ状である、
    請求項11または12に記載の光波長変換素子。
  14. 【請求項14】 前記基板の表面近傍に形成された屈折
    率n1の高屈折率層をさらに備え、該基板が屈折率ns
    を有し、前記光導波層は該基板の表面近傍にストライプ
    状に形成され且つ屈折率nfを有しており、該屈折率は
    nf>n1>nsの関係を満足していて、前記クラッド
    層の屈折率と厚さは、前記第2高調波に対する導波条件
    を満足し且つ前記基本波に対してはカットオフ条件を満
    たすように設定されている、請求項11に記載の光波長
    変換素子。
  15. 【請求項15】 前記クラッド層がストライプ状であ
    り、該クラッド層の屈折率と厚さは、前記第2高調波に
    対する導波条件を満足し且つ前記基本波に対してはカッ
    トオフ条件を満たすように設定されている、請求項11
    に記載の光波長変換素子。
  16. 【請求項16】 前記光導波層がストライプ状である、
    請求項15に記載の光波長変換素子。
  17. 【請求項17】 前記光導波層の表面にストライプ状に
    リッジが形成されており、前記クラッド層は該リッジの
    上にストライプ状に形成されていて、該光導波層の中の
    前記光は該リッジを導波し、該クラッド層の屈折率と厚
    さは、前記第2高調波に対する導波条件を満足し且つ前
    記基本波に対してはカットオフ条件を満たすように設定
    されている、請求項11に記載の光波長変換素子。
  18. 【請求項18】 前記光導波層において、前記基本モー
    ドの基本波と前記高次モードの第2高調波とがお互いに
    位相整合している、請求項11から17のいずれかに記
    載の光波長変換素子。
  19. 【請求項19】 前記クラッド層の実効屈折率Ncと前
    記光導波層の実効屈折率NfとはNc>1.02・Nf
    の関係を満足している、請求項11から18のいずれか
    に記載の光波長変換素子。
  20. 【請求項20】 前記クラッド層が多層膜からなってい
    る、請求項11から19のいずれかに記載の光波長変換
    素子。
  21. 【請求項21】 前記光導波層を伝搬する前記第2高調
    波のモードの次数が、前記クラッド層を伝搬可能なモー
    ドの次数より1つ大きい、請求項11から20のいずれ
    かに記載の光波長変換素子。
  22. 【請求項22】 前記クラッド層がNb2O5を含んでい
    る、請求項11から21のいずれかに記載の光波長変換
    素子。
  23. 【請求項23】 前記クラッド層が線形材料からなる、
    請求項11から21のいずれかに記載の光波長変換素
    子。
  24. 【請求項24】 前記基板がLiNb1-xTaxO3(0≦x≦1)
    で、該基板内に周期状の分極反転構造が形成されてい
    る、請求項11から23のいずれかに記載の光波長変換
    素子。
  25. 【請求項25】 半導体レーザと、光波長変換素子と、
    を備え、該半導体レーザから出射された光の波長が該光
    波長変換素子により変換される短波長光発生装置であっ
    て、該光波長変換素子が請求項11から24のいずれか
    に記載のものである、短波長光発生装置。
  26. 【請求項26】 短波長光発生装置と、集光光学系と、
    を備え、該短波長光発生装置から出射される短波長光が
    該集光光学系により集光される光ピックアップであっ
    て、該短波長発生装置が請求項25に記載のものであ
    る、光ピックアップ。
  27. 【請求項27】 非線形光学物質からなる基板の表面近
    傍に第1のイオン交換層を形成する工程と、 該第1のイオン交換層をアニール処理してアニール処理
    イオン交換層を形成する工程と、 該アニール処理イオン交換層の所定の位置に第2のイオ
    ン交換層を形成する工程と、 該第2のイオン交換層の上方に所定のパターンを有する
    レジストマスクを形成する工程と、 該レジストマスクを使用して該第2のイオン交換層の非
    マスク部分をエッチングで除去し、リッジを形成する工
    程と、を包含する、光導波路の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記第2のイオン交換層の形成工程
    は、 前記アニール処理イオン交換層の表面に直線状の金属マ
    スクを形成する工程と、 該アニール処理イオン交換層のうちで該金属マスクに覆
    われていない部分に前記第2のイオン交換層を形成する
    工程と、を含み、前記レジストマスクは、該金属マスク
    の上のみに選択的に形成される、請求項27に記載の光
    導波路の製造方法。
  29. 【請求項29】 前記レジストパターンは、裏面露光を
    利用して前記金属マスクの上のみに選択的に形成され
    る、請求項28に記載の光導波路の製造方法。
  30. 【請求項30】 前記第2のイオン交換層の形成工程
    は、前記アニール処理イオン交換層の表面近傍に前記第
    2のイオン交換層を形成する工程を含み、 前記レジストマスクは、該第2のイオン交換層の表面に
    直線状に形成される、請求項27に記載の光導波路の製
    造方法。
  31. 【請求項31】 前記リッジの表面に誘電体膜を形成す
    る工程をさらに包含する、請求項27から30のいずれ
    かに記載の光導波路の製造方法。
  32. 【請求項32】 前記基板がC板のLiNb1-XTaXO3(0≦
    x≦1)基板である、請求項27から31のいずれかに
    記載の光導波路の製造方法。
  33. 【請求項33】 前記第1のイオン交換層及び前記第2
    のイオン交換層がいずれもプロトン交換層である、請求
    項27から32のいずれかに記載の光導波路の製造方
    法。
  34. 【請求項34】 非線形光学物質からなる基板の表面近
    傍に第1のイオン交換層を形成する工程と、 該第1のイオン交換層をアニール処理してアニール処理
    イオン交換層を形成する工程と、 該基板内に分極反転層を形成する工程と、 該アニール処理イオン交換層の所定の位置に第2のイオ
    ン交換層を形成する工程と、 該第2のイオン交換層の上方に所定のパターンを有する
    レジストマスクを形成する工程と、 該レジストマスクを使用して該第2のイオン交換層の非
    マスク部分をエッチングで除去し、リッジを形成する工
    程と、を包含する、光波長変換素子の製造方法。
  35. 【請求項35】 前記第2のイオン交換層の形成工程
    は、 前記アニール処理イオン交換層の表面に直線状の金属マ
    スクを形成する工程と、 該前記アニール処理イオン交換層のうちで該金属マスク
    に覆われていない部分に前記第2のイオン交換層を形成
    する工程と、を含み、前記レジストマスクは、該金属マ
    スクの上のみに選択的に形成される、請求項34に記載
    の光波長変換素子の製造方法。
  36. 【請求項36】 前記レジストパターンは、裏面露光を
    利用して前記金属マスクの上のみに選択的に形成され
    る、請求項35に記載の光波長変換素子の製造方法。
  37. 【請求項37】 前記第2のイオン交換層の形成工程
    は、前記アニール処理イオン交換層の表面近傍に前記第
    2のイオン交換層を形成する工程を含み、 前記レジストマスクは、該第2のイオン交換層の表面に
    直線状に形成される、請求項34に記載の光波長変換素
    子の製造方法。
  38. 【請求項38】 前記リッジの表面に誘電体膜を形成す
    る工程をさらに包含する、請求項34から37のいずれ
    かに記載の光波長変換素子の製造方法。
  39. 【請求項39】 前記基板がC板のLiNb1-XTaxO3(0≦
    x≦1)基板である、請求項34から38のいずれかに
    記載の光波長変換素子の製造方法。
  40. 【請求項40】 前記第1のイオン交換層及び前記第2
    のイオン交換層がいずれもプロトン交換層である、請求
    項34から39のいずれかに記載の光波長変換素子の製
    造方法。
  41. 【請求項41】 非線形光学物質からなる基板と、 該基板の表面近傍に形成された、光導波領域を含む第1
    のイオン交換層と、 該光導波領域の近傍に形成された、該第1のイオン交換
    層のイオン交換濃度より高いイオン交換濃度を有する第
    2のイオン交換層と、を備える、光導波路。
  42. 【請求項42】 前記第1のイオン交換層が導波方向と
    実質的に平行な直線状のリッジを有し、該リッジが前記
    光導波領域を含み、前記第2のイオン交換層は該リッジ
    の側面に形成されている、請求項41に記載の光導波
    路。
  43. 【請求項43】 前記第2のイオン交換層は、前記第1
    のイオン交換層の表面に、導波方向と実質的に平行な直
    線状のリッジを形成している、請求項41に記載の光導
    波路。
  44. 【請求項44】 前記基板がC板のLiNb1-XTaxO3(0≦
    x≦1)基板である、請求項41から43のいずれかに
    記載の光導波路。
  45. 【請求項45】 前記第1のイオン交換層及び前記第2
    のイオン交換層がいずれもプロトン交換層である、請求
    項41から44のいずれかに記載の光導波路。
  46. 【請求項46】 非線形光学物質からなる基板と、 該基板内に一定周期で形成された分極反転層と、 該基板の表面近傍に形成された、光導波領域を含む第1
    のイオン交換層と、 該光導波領域の近傍に形成された、該第1のイオン交換
    層のイオン交換濃度より高いイオン交換濃度を有する第
    2のイオン交換層と、を備える、光波長変換素子。
  47. 【請求項47】 前記第1のイオン交換層が導波方向と
    実質的に平行な直線状のリッジを有し、該リッジが前記
    光導波領域を含み、前記第2のイオン交換層は該リッジ
    の側面に形成されている、請求項46に記載の光波長変
    換素子。
  48. 【請求項48】 前記第2のイオン交換層は、前記第1
    のイオン交換層の表面に導波方向と実質的に平行な直線
    状のリッジを形成している、請求項46に記載の光波長
    変換素子。
  49. 【請求項49】 前記基板がC板のLiNb1-XTaxO3(0≦
    x≦1)基板である、請求項46から48のいずれかに
    記載の光波長変換素子。
  50. 【請求項50】 前記第1のイオン交換層及び前記第2
    のイオン交換層がいずれもプロトン交換層である、請求
    項46から49のいずれかに記載の光波長変換素子。
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