JPH09275711A - ゲル被覆種子の育苗方法 - Google Patents

ゲル被覆種子の育苗方法

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JPH09275711A
JPH09275711A JP9105196A JP9105196A JPH09275711A JP H09275711 A JPH09275711 A JP H09275711A JP 9105196 A JP9105196 A JP 9105196A JP 9105196 A JP9105196 A JP 9105196A JP H09275711 A JPH09275711 A JP H09275711A
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gel
seeds
seed
coated
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JP9105196A
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Tatsuo Hayashi
健生 林
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Yazaki Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 種子を被覆剤で覆ったゲル被覆種子を製造し
た後、播種するまでの間に、期間を長期化させるような
新たな工程を増やさず、しかも、余分な手間やコストを
かけずにゲル被覆種子中の種子の発芽を促進させるこ
と。 【解決手段】 被覆剤が硬化してできたゲル31により
種子33を被覆したゲル被覆種子3を育苗する方法であ
って、上方に開口したトレイ1内の培地に前記ゲル被覆
種子3を播種した状態で、少なくとも前記ゲル31に達
する水位の水又は低浸透圧水溶液W中に前記ゲル被覆種
子3を浸し、該水又は低浸透圧水溶液Wを前記ゲル31
に吸収させて該ゲル31を膨潤、破裂させる第1の工程
と、前記第1の工程後、前記培地が含む前記水又は低浸
透圧水溶液Wの水分を前記種子33の発芽に適した所定
量に調整し、該培地から前記種子33が吸収する前記水
又は低浸透圧水溶液Wにより該種子33を発芽させる第
2の工程とを有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種子を高分子ゲル
で被覆したゲル被覆種子を育苗する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、栄養物質や殺菌剤等を含み弾
力性を有する水性の高分子ゲルで種子を被覆したゲル被
覆種子が知られている。このゲル被覆種子は、種子を動
物の食害から保護したり、種子を殺菌するのに有効であ
り、また、粒径の大型化により種子の取り扱いを容易に
して播種作業を効率化できる他、ゲル中の栄養物質の吸
収により発芽率を向上させることができるといった数多
くの利点を有している。
【0003】この種のゲル被覆種子は、発芽した種子の
芽や根を保護することができる利点がある反面、ゲルの
硬度が物理的障害となって、或は、ゲルによる大気との
接触の断絶が生化学的障害となって、さらには、ゲルが
含んでいる防腐剤等の薬剤が化学的障害となって、種子
の発芽に伴う芽や根の生長が鈍ってしまうという不都合
を有している。
【0004】そこで従来より、上述した不都合を排除し
ゲル被覆種子中の種子の発芽を促進させる方法として、
例えば、出願人の提案による特開平7−264905号
公報のカプセル化種子のように、播種前にゲル被覆種子
のゲル層に傷を入れておく方法や、特開平3−2183
03号公報のゲルビーズのように、播種前にゲルビーズ
を、ゲルの脆性を増加させる剤か、或は、フィルム形成
性を低減させる剤により処理しておく方法等が知られて
いる。また、ゲル被覆種子中の種子の発芽を促進させる
方法としては、本出願人が特願平7−98509号にお
いて過去に提案した前処理方法を利用し、播種前のゲル
被覆種子のゲルを吸水、膨潤させておき、発芽した種子
の芽がゲルを突き破り易いようにする方法を採ることも
できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の各方法はいずれも、ゲル被覆種子の播種前に行
うものであることから、ゲル被覆種子を製造してから播
種するまでの間に新たな工程を挟んで行うことになり、
その分、製造したゲル被覆種子を播種するまでの期間が
長期化してしまうと共に、新たな工程を実行する分だけ
余分な手間がかかってしまうという不具合があった。ま
た、最初に述べた2つの従来方法では、上述した不具合
に加えてさらに、ゲル被覆種子のゲル層に傷を入れるた
めの専用の装置や、ゲルビーズをゲルの脆性増加剤やフ
ィルム形成性低減剤により処理するための専用の装置が
別途必要になってしまうという不具合があった。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、本発明の目的は、種子をゲルで被覆したゲル被覆種
子を製造した後、播種するまでの間に、期間を長期化さ
せるような新たな工程を増やさず、しかも、余分な手間
やコストをかけずにゲル被覆種子中の種子の発芽を促進
させることができるゲル被覆種子の育苗方法を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成する本発
明は、種子をゲルで被覆したゲル被覆種子を育苗する方
法であって、上方に開口したトレイ内の培地に前記ゲル
被覆種子を播種した状態で、少なくとも前記ゲルに達す
る水位の水又は低浸透圧水溶液中に前記ゲル被覆種子を
浸し、該水又は低浸透圧水溶液を前記ゲルに吸収させて
該ゲルを膨潤、破裂させる第1の工程と、前記第1の工
程後、前記培地が含む前記水又は低浸透圧水溶液の水分
を前記種子の発芽に適した所定量に調整し、該培地から
前記種子が吸収する前記水又は低浸透圧水溶液により該
種子を発芽させる第2の工程とを有することを特徴とす
るものである。
【0008】
【発明の実施の形態】ここで、ゲルとは、アルギン酸、
グルコマンナン、アミロペクチン、キチン、ペクチン
酸、カゼイン、ゼラチン等の植物、又は、動物起源や、
ポリアクリル酸系、或は、ポリアクリルエステル系高分
子等の合成系の親水性の高分子物質が有用であるが、中
でも、アルギン酸塩が好ましく用いられる。
【0009】このようなゲルにより種子を被覆する方法
としては、本出願人が過去に提案した、例えば、特開昭
63−304910号公報に開示された方法、即ち、二
重管状のノズルの外管から有機高分子を滴下させつつ、
ノズル内管から種子を落下させて、ノズル先端において
種子をゲルにより包んで粒状に形成し、その後、硬化剤
との反応によりゲルを硬化させてゲル被覆種子とする方
法や、特開平3−218303号に開示された方法、即
ち、アルギン酸ナトリウム等の有機高分子水溶液中に種
子等を分散させておき、種子を含む有機高分子水溶液を
塩化カルシウム水溶液中に滴下して有機高分子をゲル化
させる方法等、従来公知の適宜のゲル被覆化方法を利用
することができる。
【0010】また、本発明において、水とは、水道水や
井戸水等の所謂軟水を指し、低浸透圧水溶液の低浸透圧
とは、ゲル被覆種子のゲルに水分を供給しこれを膨潤、
破裂させるのに十分な浸透圧を指す。尚、浸透圧の高い
水溶液は、これにゲル被覆種子を浸した場合にゲルが水
分を失って固化してしまうので、本発明の実施に用いる
には不適切である。
【0011】本発明によるゲル被覆種子の育苗方法によ
れば、第1の工程において、ゲル被覆種子のゲルが水又
は低浸透圧水溶液を吸収して膨潤、破裂する。このた
め、ゲルが破裂した後には、その破裂箇所において種子
がゲル被覆種子の外側に露出することとなり、第2の工
程において種子が発芽する際に、種子の芽や根がゲルの
破裂箇所からゲル被覆種子の外方に生長し易くなる。
【0012】また、第1の工程において、ゲルが水又は
低浸透圧水溶液を吸収して膨潤することで、ゲル自体の
硬度が低下するので、破裂箇所以外のゲル部分からも、
種子の芽や根がゲルを突き破ってゲル被覆種子の外方に
生長し易くなる。しかも、ゲルが破裂した後には、この
破裂箇所を介して種子が水又は低浸透圧水溶液や外気に
触れ易くなることから、発芽に必要な水分や酸素を種子
が取り込み易くなり、芽や根の生長がより一層促進され
る。
【0013】さらに、第1の工程において、ゲルが水又
は低浸透圧水溶液を吸収することから、ゲルが含んでい
る防腐剤等の薬剤の濃度が低下し、これら薬剤の害によ
り種子の発芽、及び、発芽後の芽や根の生長が障害を受
ける度合いが低減される。
【0014】そして、水又は低浸透圧水溶液の吸収によ
りゲルを膨潤、破裂させる第1の工程と、それに続く第
2の工程を、上方に開口したトレイ内の培地にゲル被覆
種子を播種した状態でいずれも行うことから、従来から
行っているゲル被覆種子の育苗工程中に第1及び第2の
両工程を並行して行うことが可能となる。従って、ゲル
被覆種子の製造から播種までの間に、期間を長期化させ
ることなく、種子の発芽を促進するための新たな工程を
実行することが可能となる。
【0015】尚、前記第1の工程は、トレイを上回る水
位の水又は低浸透圧水溶液中にこのトレイを水没させた
状態で行うこともできる。
【0016】
【実施例】以下、本発明をさらに具体的に説明するが、
本発明はこれらの例によって限定を受けるものではな
い。
【0017】〔実施例1〜2及び比較例1〜2〕 (ゲル被覆種子の作製)種子としてトマト(桃太郎)を
用い、被覆剤としてアルギン酸ナトリウム3重量%溶液
を用い、この被覆剤を浸漬して硬化させゲルとする硬化
剤として塩化カルシウム10重量%溶液を用いて、種子
をゲルで被覆した粒状のゲル被覆種子を作製した。
【0018】詳しくは、アルギン酸ナトリウム3重量%
溶液の液膜を二重管状のノズルの外管の出口に形成し、
この液膜上に、ノズル内管に投下した種子を到達させ、
この種子と共にノズル内管から液膜に噴出される空気を
利用して、種子と空気とを内包する被覆剤の液滴を形成
し、これを硬化槽中の塩化カルシウム10重量%溶液に
滴下させ、40秒間浸漬して、トマト種子と気泡を被覆
剤のゲルで覆った粒状のゲル被覆種子を多数作製した。
これらゲル被覆種子は、平均直径が10.0mm、1個
当たりの平均重量が0.52g、平均水分率は97重量
%であった。
【0019】(ゲル被覆種子の催芽)作製したゲル被覆
種子を25°C、暗黒条件の空間に24時間置いて催芽
させた。
【0020】(ゲル被覆種子と裸種子の播種)次に、図
1に示すように、内部への水の侵入が可能で上方に開口
した128個の育苗ポット11を有するセル成型トレイ
1を2つ用意し、これら2つのトレイ1を育苗ベッド7
内に入れて温室内に設置して、各トレイ1の128個の
育苗ポット11に中粒のバーミキュライト(図示せず、
培地に相当)をそれぞれ詰めた。そして、各トレイ1
を、64個の育苗ポット11を有するゲル区Aと通常区
Bとの2つの区にそれぞれ分け、ゲル区Aの64個の育
苗ポット11のバーミキュライトに、催芽させたゲル被
覆種子3をそれぞれ播種すると共に、通常区Bの64個
の育苗ポット11のバーミキュライトに、裸種子5をそ
れぞれ播種した。尚、図1中引用符号33はゲル被覆種
子3の種子、31はこの種子31を包む外側のゲルを示
す。
【0021】(ゲル被覆種子と裸種子の育苗)次に、こ
れら2つのトレイ1のうち1つを、図2に示すように、
縦横80cm×40cm、深さ20cmの大きさの2つ
のバット9内に移して、このバット9内に移したトレイ
1を湛水区とし、図3に示すように、育苗ベッド7内に
残したもう1つのトレイ1を慣行区とした。そして、慣
行区のトレイ1には、各育苗ポット11のバーミキュラ
イトの表面が乾燥する毎に、ジョウロを用いて水道水を
撒いて潅水した。
【0022】尚、慣行区のトレイ1を潅水する際に、ジ
ョウロでトレイ1に撒く1回の水道水の水量は、バーミ
キュライトに滲み込んだ水道水がトレイ1の各育苗ポッ
ト11の下部から流れ出るまでの量とした。これに対し
て、湛水区のトレイ1は、バット9内に入れた水道水W
の水面下に完全に沈ませ、この状態で5時間放置して、
第1の工程に相当する湛水処理を行い、その後は、図示
を省略するが、バット9内から水道水Wを一旦排水し、
慣行区のトレイ1と同様に、各育苗ポット11のバーミ
キュライトの表面が乾燥する毎に、バーミキュライトに
滲み込んでトレイ1の各育苗ポット11の下部から流れ
出るまで、ジョウロを用いてトレイ1に水道水を撒い
て、第2の工程に相当する潅水処理を行った。
【0023】(湛水処理後のゲル被覆種子の状態観察)
湛水区のトレイ1のゲル区Aのうち一部の育苗ポット1
1のバーミキュライトから、湛水処理を行った直後にゲ
ル被覆種子3を掘り返し、ゲル被覆種子3の平均重量
と、ゲル被覆種子3の種子33を包む外側のゲル31
に、図4に示すような破裂Sが発生している率とをそれ
ぞれ調べた。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1に示すように、ゲル被覆種子3の平均
重量は、育苗ベッド7で育苗する前の作製時のゲル被覆
種子3の平均重量である0.52gに比べて略2倍に増
し、また、大多数のゲル被覆種子3のゲル31に破裂S
が発生していた。
【0026】(ゲル被覆種子と裸種子の出芽率の比較
1)次に、慣行区のトレイ1を潅水処理し始めてから3
日が経過した時点で、ゲル区Aの全ての育苗ポット11
のゲル被覆種子3の出芽率を調べると共に(比較例
1)、通常区Bの全ての育苗ポット11の裸種子5の出
芽率を調べた。
【0027】同様に、湛水区のトレイ1を湛水処理し始
めてから3日が経過した時点(当然、この時点では湛水
処理から潅水処理に処理状態が変わっている)で、ゲル
区Aの全ての育苗ポット11のゲル被覆種子3の出芽率
を調べると共に(実験例1)、通常区Bの全ての育苗ポ
ット11の裸種子5の出芽率を調べた。以上の結果を表
2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】表2に示すように、慣行区のゲル被覆種子
3は出芽率が43%であったのに対し、湛水区のゲル被
覆種子3は出芽率が64%で、出芽した種子33の数が
略1.48倍に増えていることが分かる。参考までに、
慣行区のゲル被覆種子3の出芽率に対する湛水区のゲル
被覆種子3の出芽率の倍率は、慣行区の裸種子5の出芽
率(28%)に対する湛水区の裸種子5の出芽率(37
%)の倍率(略1.32倍)を上回っている。
【0030】以上のことから明らかなように、ゲル被覆
種子3を湛水処理することは、ゲル被覆種子3中の種子
33の発芽を促進させるのに効果があることがわかる。
【0031】(ゲル被覆種子と裸種子の出芽率の比較
2)尚、参考までに、慣行区のトレイ1において今まで
と同様の条件で潅水を再開し、最初に潅水処理し始めて
から7日が経過した時点で、ゲル区Aの全ての育苗ポッ
ト11のゲル被覆種子3の出芽率を調べると共に(比較
例2)、通常区Bの全ての育苗ポット11の裸種子5の
出芽率を調べた。
【0032】同様に、湛水区のトレイ1において今まで
と同様の条件で潅水を再開し、湛水区のトレイ1を湛水
処理し始めてから7日が経過した時点で、ゲル区Aの全
ての育苗ポット11のゲル被覆種子3の出芽率を調べる
と共に(実験例2)、通常区Bの全ての育苗ポット11
の裸種子5の出芽率を調べた。以上の結果を表3に示
す。
【0033】
【表3】
【0034】表3に示すように、慣行区のゲル被覆種子
3は出芽率が86%であったのに対し、湛水区のゲル被
覆種子3は出芽率が93%であり、また、慣行区の裸種
子5は出芽率が92%であったのに対し、湛水区の裸種
子5は出芽率が89%であり、ゲル被覆種子3及び裸種
子5の双方とも、慣行区と湛水区の差は殆ど誤差の範囲
であった。
【0035】〔実施例3〕 (ゲル被覆種子の作製及び催芽)実施例1及び実施例2
と同じ種子33と被覆剤、並びに、硬化剤を用いて、粒
状のゲル被覆種子3を多数作製し(平均直径10.0m
m、1個当たりの平均重量0.52g、平均水分率97
重量%)、作製したゲル被覆種子3を実施例1と同じ条
件(25°Cの暗黒空間に24時間放置)で催芽させ
た。
【0036】(ゲル被覆種子の播種及び育苗)次に、実
施例1〜2及び比較例1〜2で用いたものと同じセル成
型トレイ1を用意し、このトレイ1を育苗ベッド7内に
入れて温室に設置して、このトレイ1の128個の育苗
ポット11に中粒のバーミキュライトをそれぞれ詰め、
各育苗ポット11のバーミキュライトに催芽させたゲル
被覆種子3をそれぞれ播種し、その後、バット7にトレ
イ1を移して、実施例1及び実施例2と同じ条件で、5
時間湛水処理した後、潅水処理した。
【0037】(ゲル被覆種子の状態観察)トレイ1の各
育苗ポット11のバーミキュライトから、湛水処理の開
始後2時間毎にゲル被覆種子3を掘り返し、ゲル被覆種
子3の平均重量と、ゲル31の破裂Sの発生率とをそれ
ぞれ調べた結果、両者の経時変化は図5及び図6のグラ
フにそれぞれ示すようになった。
【0038】即ち、ゲル被覆種子3の平均重量は、湛水
処理の開始から10時間が経過する時点までの間、経過
した時間に略比例して増加し続け、12時間が経過した
時点で略最大重量に達した。また、ゲル31の破裂S
は、湛水処理の開始から4時間が経過した時点では認め
られず、湛水処理が終了した後の湛水処理の開始から6
時間が経過した時点以降では、ゲル31の破裂Sの発生
率が急激に増加し、10時間が経過した時点で全部のゲ
ル被覆種子3にゲル31の破裂Sが認められた。
【0039】以上の点から、5時間の湛水処理後に行う
ゲル被覆種子3の潅水処理は、5時間程度が適当と考え
られ、湛水処理と潅水処理を合わせた合計の処理時間
は、10時間程度が適当と考えられる。
【0040】〔実施例4〕 (ゲル粒の作製)実施例1及び実施例2と同じ被覆剤と
硬化剤を用いて、内部に種子33を包み込んでいないゲ
ル粒を作製した。尚、本実施例では、硬化剤への浸漬時
間(以下、硬化時間と称する)を10秒、20秒、30
秒、40秒、並びに、50秒とした5種類のゲル粒をそ
れぞれ多数作製した。
【0041】(ゲル粒の播種)次に、実施例1〜2及び
比較例1〜2で用いたものと同じセル成型トレイ1を5
つ用意し、このトレイ1を育苗ベッド7内に入れて温室
に設置して、各トレイ1の128個の育苗ポット11に
中粒のバーミキュライトをそれぞれ詰め、硬化時間10
秒、20秒、30秒、40秒、並びに、50秒の5種類
のゲル粒を、硬化時間の種類別にトレイ1を分けて、各
トレイ1の128個の育苗ポット11のバーミキュライ
トに播種した。
【0042】(ゲル粒の浸水)そして、5つのトレイ1
をバット9に移して、バット9内に入れた水道水Wの水
面下に完全に沈ませ、この状態でバット9を恒温、恒湿
器(図示せず、温度25°C、暗黒条件、相対湿度90
%)に設置した。
【0043】(硬化時間別のゲル粒の状態観察)5つの
トレイ1の各育苗ポット11のバーミキュライトから、
湛水処理の開始後2時間毎にゲル粒を10個ずつ掘り返
し、ゲル31の破裂Sしたゲル粒が最初に発生した時間
(以下、破裂開始時間と称する)と、全てのゲル粒がゲ
ル31に破裂Sを起こし終えた時間(以下、破裂終了時
間と称する)を調べた。この結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】表4に示すように、硬化時間が長くなる
程、ゲル31の破裂Sが発生しにくくなることが分か
る。そして、硬化時間を50秒とすると、ゲル31が固
過ぎて種子33が発芽障害を起こしてしまうので、硬化
時間は40秒以下とするのが好ましく、この点を考慮す
ると、湛水処理と潅水処理を合わせた合計の処理時間
は、4時間〜10時間程度が適当と考えられる。
【0046】〔実施例5〕 (ゲル粒の作製)実施例4と同じく、実施例1及び実施
例2と同じ被覆剤と硬化剤を用い、硬化時間を40秒と
して、内部に種子33を包み込んでいないゲル粒を多数
作製した。
【0047】(ゲル粒の播種)次に、実施例1〜2及び
比較例1〜2で用いたセル成型トレイ1を3つ用意し、
これら3つのトレイ1を育苗ベッド7内に入れて温室に
設置して、それぞれを試験区1〜3に振り分け、試験区
1のトレイ1の128個の各育苗ポット11には、バー
ミキュライトをそれぞれ詰め、試験区2のトレイ1の1
28個の各育苗ポット11には、バーミキュライトとピ
ートモスを1対1の体積比で混合した市販培地アをそれ
ぞれ詰め、試験区3のトレイ1の128個の各育苗ポッ
ト11には、バーミキュライト、ピートモス、パーライ
ト、並びに、燻炭等が混ざった市販培地イをそれぞれ詰
めた。そして、試験区1のトレイ1の128個の各育苗
ポット11に詰めたバーミキュライトにゲル粒をそれぞ
れ播種すると共に、同様に、試験区2、試験区3の各ト
レイ1の128個の各育苗ポット11に詰めた市販培地
ア、市販培地イにゲル粒をそれぞれ播種した。
【0048】(ゲル粒の浸水)そして、試験区1〜3の
3つのトレイ1を、育苗ベッド7から3つのバット9に
それぞれ移して、各バット9内に入れた水道水Wの水面
下にトレイ1を完全に沈ませ、実施例4で用いたものと
同じ恒温、恒湿器を実施例4と同じ条件として、この恒
温、恒湿器にバット9を設置した。
【0049】(培地がゲル粒の状態に与える影響の観
察)3つのトレイ1の各育苗ポット11から、湛水処理
の開始後2時間毎にゲル粒を10個ずつ掘り返し、破裂
開始時間と破裂終了時間をそれぞれ調べた。この結果を
表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】表5に示すように、破裂開始時間は、培地
としてバーミキュライト、市販培地ア、及び、市販培地
イのいずれを使うかによって影響を受けるが、破裂終了
時間は、培地に何を使うかには影響を受けないことが分
かる。従って、トレイ1の各育苗ポット11に詰めてゲ
ル被覆種子3を播種する培地の種類は、特に限定する必
要がないものと考えられる。
【0052】
【発明の効果】本発明のゲル被覆種子の育苗方法は、従
来のゲル被覆種子の播種前に行う育苗方法のような、ゲ
ル被覆種子を製造してから播種するまでの間に行う工程
と並行して新たな工程を行えるので、製造したゲル被覆
種子を播種するまでの期間を長期化させずに、しかも、
余分な手間をかけずにゲル被覆種子中の種子の発芽を促
進させることができるものであり、また、ゲル被覆種子
のゲル層に傷を入れるための専用の装置や、ゲルビーズ
をゲルの脆性増加剤やフィルム形成性低減剤により処理
するための専用の装置が不要であるので、コストをかけ
ずにゲル被覆種子中の種子の発芽を促進させることがで
きるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜2に係り、水稲用育苗箱内
に設置したトレイの各育苗カップにゲル被覆種子を播種
した状態を示す説明図である。
【図2】図1のトレイをバットに移して水道水中に水面
下に完全に沈ませた湛水区の状態を示す説明図である。
【図3】図1のトレイを水稲用育苗箱内に残した慣行区
の状態を示す説明図である。
【図4】図1のゲル被覆種子のゲルに発生した破裂の様
子を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例3に係り、トレイの各育苗ポッ
トから湛水処理の開始後2時間毎に掘り返したゲル被覆
種子の平均重量の経時変化を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例3に係り、トレイの各育苗ポッ
トから湛水処理の開始後2時間毎に掘り返したゲル被覆
種子のゲルの破裂の発生率の経時変化を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 トレイ 3 ゲル被覆種子 31 ゲル 33 種子 S 破裂 W 水道水(水又は低浸透圧水溶液)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 種子をゲルで被覆したゲル被覆種子を育
    苗する方法であって、 上方に開口したトレイ内の培地に前記ゲル被覆種子を播
    種した状態で、少なくとも前記ゲルに達する水位の水又
    は低浸透圧水溶液W中に前記ゲル被覆種子を浸し、該水
    又は低浸透圧水溶液を前記ゲルに吸収させて該ゲルを膨
    潤、破裂させる第1の工程と、 前記第1の工程後、前記培地が含む前記水又は低浸透圧
    水溶液の水分を前記種子の発芽に適した所定量に調整
    し、該培地から前記種子が吸収する前記水又は低浸透圧
    水溶液により該種子を発芽させる第2の工程と、 を有することを特徴とするゲル被覆種子の育苗方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の工程を、前記トレイを上回る
    水位の前記水又は低浸透圧水溶液中に該トレイを水没さ
    せた状態で行うようにした請求項1記載のゲル被覆種子
    の育苗方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO1999057958A1 (fr) * 1998-05-14 1999-11-18 Katakura Chikkarin Co., Ltd. Semences enrobees et procede de production de ces semences
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