JPH09246626A - 有機電子デバイス - Google Patents
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- JPH09246626A JPH09246626A JP5475796A JP5475796A JPH09246626A JP H09246626 A JPH09246626 A JP H09246626A JP 5475796 A JP5475796 A JP 5475796A JP 5475796 A JP5475796 A JP 5475796A JP H09246626 A JPH09246626 A JP H09246626A
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Landscapes
- Led Devices (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 電気的な信号により、分子性固体における相
転移、特に電荷移動錯体におけるNI転移を効果的に生
じさせ、それに伴う大きな物性変化を利用して動作する
有機電子デバイスを提供する。 【解決手段】 ドナー性分子およびアクセプター性分子
を含有する非発光性の電荷蓄積層(3)と、電荷蓄積層
(3)に正孔を注入する正孔注入層(4)と、電荷蓄積
層(3)に電子を注入する電子注入層(5)とを具備
し、正孔注入層(4)と電子注入層(5)とが互いに空
間的に分離されている有機電子デバイス。
転移、特に電荷移動錯体におけるNI転移を効果的に生
じさせ、それに伴う大きな物性変化を利用して動作する
有機電子デバイスを提供する。 【解決手段】 ドナー性分子およびアクセプター性分子
を含有する非発光性の電荷蓄積層(3)と、電荷蓄積層
(3)に正孔を注入する正孔注入層(4)と、電荷蓄積
層(3)に電子を注入する電子注入層(5)とを具備
し、正孔注入層(4)と電子注入層(5)とが互いに空
間的に分離されている有機電子デバイス。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は構成要素の一部とし
て有機分子の薄膜や固体を用いた有機電子デバイスに関
する。
て有機分子の薄膜や固体を用いた有機電子デバイスに関
する。
【0002】
【従来の技術】現在、半導体材料をベースとするデバイ
ス技術により様々な機能を有する種々のデバイスが製造
されており、これらは情報化社会を支える基盤となって
いる。しかし、今後さらに複雑な情報処理を行うために
は、新たな機能を有するデバイスの開発が望まれてい
る。新たな機能デバイスを生み出すには、新たな材料を
用いて新たな物性を利用することが重要である。このよ
うな観点から、有機分子を用いた機能デバイスへの期待
は大きい。
ス技術により様々な機能を有する種々のデバイスが製造
されており、これらは情報化社会を支える基盤となって
いる。しかし、今後さらに複雑な情報処理を行うために
は、新たな機能を有するデバイスの開発が望まれてい
る。新たな機能デバイスを生み出すには、新たな材料を
用いて新たな物性を利用することが重要である。このよ
うな観点から、有機分子を用いた機能デバイスへの期待
は大きい。
【0003】デバイス材料としての観点から、有機分子
は以下のような特徴を有する。まず第一に、有機分子は
蛍光・吸収など光学的特性に多様性がある点が挙げられ
る。実際、数多くの有機色素についての研究により、例
えば様々なレーザー色素が開発され、また2次高調波の
発生など非線形光学の応用もなされている。第二に、有
機分子にはドナー性またはアクセプター性の強いものが
あり、荷電状態が多様な点が挙げられる。例えば、有機
分子の骨格に1つの官能基を導入するだけで、ドナー性
またはアクセプター性は大きく変わり、しかも官能基の
種類によりドナー性またはアクセプター性の強さが広範
囲に変化する。これまでに、このことを利用してドナー
性またはアクセプター性の強さを示すイオン化ポテンシ
ャルまたは電子親和力の値が10meVオーダーの間隔
で異なるような数多くの分子が合成されている。
は以下のような特徴を有する。まず第一に、有機分子は
蛍光・吸収など光学的特性に多様性がある点が挙げられ
る。実際、数多くの有機色素についての研究により、例
えば様々なレーザー色素が開発され、また2次高調波の
発生など非線形光学の応用もなされている。第二に、有
機分子にはドナー性またはアクセプター性の強いものが
あり、荷電状態が多様な点が挙げられる。例えば、有機
分子の骨格に1つの官能基を導入するだけで、ドナー性
またはアクセプター性は大きく変わり、しかも官能基の
種類によりドナー性またはアクセプター性の強さが広範
囲に変化する。これまでに、このことを利用してドナー
性またはアクセプター性の強さを示すイオン化ポテンシ
ャルまたは電子親和力の値が10meVオーダーの間隔
で異なるような数多くの分子が合成されている。
【0004】以上のような有機分子の特徴を生かしたデ
バイスとして有機EL素子が挙げられる。代表的な有機
EL素子の構造を示すと、発光性分子の層を、電子輸送
性分子すなわちアクセプター性分子の層と、正孔輸送性
分子すなわちドナー性分子の層とで挟んだものが挙げら
れる。このような有機EL素子では、両側の電荷注入用
電極からそれぞれ正孔輸送層を通して正孔を電子輸送層
を通して電子を発光性分子層に注入し、発光を起こす。
近年多くの研究がなされ、発光効率の高いEL素子も報
告されている。しかし、有機EL素子は寿命が短いとい
う本質的な欠点を有するため、実用化には至っていな
い。この原因は、耐熱性に劣る有機分子層に電流を流し
て発光させるという素子動作に問題があると考えられて
いる。そこで、実用レベルの素子を実現するには有機分
子層に電流を流さずに素子を駆動することが不可欠と考
えられる。
バイスとして有機EL素子が挙げられる。代表的な有機
EL素子の構造を示すと、発光性分子の層を、電子輸送
性分子すなわちアクセプター性分子の層と、正孔輸送性
分子すなわちドナー性分子の層とで挟んだものが挙げら
れる。このような有機EL素子では、両側の電荷注入用
電極からそれぞれ正孔輸送層を通して正孔を電子輸送層
を通して電子を発光性分子層に注入し、発光を起こす。
近年多くの研究がなされ、発光効率の高いEL素子も報
告されている。しかし、有機EL素子は寿命が短いとい
う本質的な欠点を有するため、実用化には至っていな
い。この原因は、耐熱性に劣る有機分子層に電流を流し
て発光させるという素子動作に問題があると考えられて
いる。そこで、実用レベルの素子を実現するには有機分
子層に電流を流さずに素子を駆動することが不可欠と考
えられる。
【0005】前述した有機分子の特徴を生かした分子固
体物性として注目されるのが、ドナー性分子およびアク
セプター性分子からなる電荷移動錯体における中性−イ
オン性転移(NI転移)である。例えば、圧力印加によ
るNI転移が10種程度の電荷移動錯体において観測さ
れている。また、低温化によるNI転移もTTF−クロ
ラニルにおいて観測されている。NI転移に伴い、ドナ
ー性分子は中性状態からプラスイオン状態へ、アクセプ
ター性分子は中性状態からマイナスイオン状態へそれぞ
れ変化するため、分子内吸収が大きく変化し、これに伴
い電荷移動錯体の吸収も全く異なるものへと変化する。
体物性として注目されるのが、ドナー性分子およびアク
セプター性分子からなる電荷移動錯体における中性−イ
オン性転移(NI転移)である。例えば、圧力印加によ
るNI転移が10種程度の電荷移動錯体において観測さ
れている。また、低温化によるNI転移もTTF−クロ
ラニルにおいて観測されている。NI転移に伴い、ドナ
ー性分子は中性状態からプラスイオン状態へ、アクセプ
ター性分子は中性状態からマイナスイオン状態へそれぞ
れ変化するため、分子内吸収が大きく変化し、これに伴
い電荷移動錯体の吸収も全く異なるものへと変化する。
【0006】上記のような電荷移動錯体における大きな
物性変化を素子に応用するような試みも報告されてい
る。その1つが、光誘起のNI転移である。Koshi
haraらは、電荷移動錯体であるTTF−クロラニル
に対して色素レーザー、アルゴンレーザー、Nd:YA
Gレーザーからレーザー光を照射し、イオン性から中性
および中性からイオン性への変換を試みている(Phy
s.Rev.,B42,6853(1990);日本物
理学会講演概要集(1995年秋の分科会)第2分冊,
p.317,29p−Z−19)。彼らは、レーザー照
射前後で反射スペクトルを測定し、レーザー照射により
錯体結晶の一部でNI転移が生じていることを確認して
いる。しかし、光誘起NI転移の効率は低く、NI転移
を生じている領域は結晶内のごくわずかの領域であるた
め、物性の大きな変化は生じていない。また、電荷移動
錯体は光を照射している間は転移を起こしているもの
の、光を切った後はmsecオーダーのかなり速い緩和
時間で元の状態に戻ってしまう。このため現状では転移
した状態を安定に保持することはできない。
物性変化を素子に応用するような試みも報告されてい
る。その1つが、光誘起のNI転移である。Koshi
haraらは、電荷移動錯体であるTTF−クロラニル
に対して色素レーザー、アルゴンレーザー、Nd:YA
Gレーザーからレーザー光を照射し、イオン性から中性
および中性からイオン性への変換を試みている(Phy
s.Rev.,B42,6853(1990);日本物
理学会講演概要集(1995年秋の分科会)第2分冊,
p.317,29p−Z−19)。彼らは、レーザー照
射前後で反射スペクトルを測定し、レーザー照射により
錯体結晶の一部でNI転移が生じていることを確認して
いる。しかし、光誘起NI転移の効率は低く、NI転移
を生じている領域は結晶内のごくわずかの領域であるた
め、物性の大きな変化は生じていない。また、電荷移動
錯体は光を照射している間は転移を起こしているもの
の、光を切った後はmsecオーダーのかなり速い緩和
時間で元の状態に戻ってしまう。このため現状では転移
した状態を安定に保持することはできない。
【0007】他の研究の報告は、電荷移動錯体結晶の電
気的特性に関するものである。Tokuraらは、TT
F−クロラニルの電流・電圧特性を調べた結果、低温条
件下である電圧を印加すると、高抵抗状態から低抵抗状
態へのスイッチングが起きることを見いだした(Phy
s.Rev.,B38,2215(1988))。この
スイッチングの機構として、NI転移温度に近い低温で
は数分子程度の局所的にイオン化した領域、すなわちN
IDW(Neutral Ionic Domain
Wall)がある程度の密度で存在することを見い出し
た。このイオン化領域は、低電界では自由に動くことが
できないが、高電界では束縛から解かれて自由に動ける
ようになり電気伝導に寄与すると考えられている(Ap
pl.Phys.Lett.,55,2111(198
9))。しかし、この現象においては、電界によってイ
オン化領域の動きが誘起されているだけであり、イオン
化領域の密度が大幅に増加したりイオン化領域が拡大し
ているわけではない。換言すれば、電界による結晶のN
I転移は生じないので、光学特性などの大きな変化も生
じない。
気的特性に関するものである。Tokuraらは、TT
F−クロラニルの電流・電圧特性を調べた結果、低温条
件下である電圧を印加すると、高抵抗状態から低抵抗状
態へのスイッチングが起きることを見いだした(Phy
s.Rev.,B38,2215(1988))。この
スイッチングの機構として、NI転移温度に近い低温で
は数分子程度の局所的にイオン化した領域、すなわちN
IDW(Neutral Ionic Domain
Wall)がある程度の密度で存在することを見い出し
た。このイオン化領域は、低電界では自由に動くことが
できないが、高電界では束縛から解かれて自由に動ける
ようになり電気伝導に寄与すると考えられている(Ap
pl.Phys.Lett.,55,2111(198
9))。しかし、この現象においては、電界によってイ
オン化領域の動きが誘起されているだけであり、イオン
化領域の密度が大幅に増加したりイオン化領域が拡大し
ているわけではない。換言すれば、電界による結晶のN
I転移は生じないので、光学特性などの大きな変化も生
じない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、分子性
固体における相転移、特に電荷移動錯体におけるNI転
移は、大きな物性変化を伴うため、素子への応用が大い
に期待される現象である。しかし、現状では光照射や電
圧印加により中性錯体(イオン性錯体)内部にごく低密
度のイオン化領域(中性領域)が生じたり、またはイオ
ン化領域が動くようになるだけで、錯体物性の大きな変
化は実現していない。
固体における相転移、特に電荷移動錯体におけるNI転
移は、大きな物性変化を伴うため、素子への応用が大い
に期待される現象である。しかし、現状では光照射や電
圧印加により中性錯体(イオン性錯体)内部にごく低密
度のイオン化領域(中性領域)が生じたり、またはイオ
ン化領域が動くようになるだけで、錯体物性の大きな変
化は実現していない。
【0009】本発明の目的は、電気的な信号により、分
子性固体における相転移、特に電荷移動錯体におけるN
I転移を効果的に生じさせ、それに伴う大きな物性変化
を利用して動作する有機電子デバイスを提供することに
ある。
子性固体における相転移、特に電荷移動錯体におけるN
I転移を効果的に生じさせ、それに伴う大きな物性変化
を利用して動作する有機電子デバイスを提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の有機電子デバイ
スは、ドナー性分子およびアクセプター性分子を含有す
る非発光性の電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層に正孔を注
入する正孔注入層と、前記電荷蓄積層に電子を注入する
電子注入層とを具備し、前記正孔注入層と前記電子注入
層とが互いに空間的に分離されていることを特徴とする
ものである。
スは、ドナー性分子およびアクセプター性分子を含有す
る非発光性の電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層に正孔を注
入する正孔注入層と、前記電荷蓄積層に電子を注入する
電子注入層とを具備し、前記正孔注入層と前記電子注入
層とが互いに空間的に分離されていることを特徴とする
ものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。図1に本発明に係る有機電子デバイスの構造の一
例を示し、図2にこの有機電子デバイスの一部における
エネルギーバンド構造を示し、これらの図を参照して本
発明に係る有機電子デバイスの原理を説明する。
する。図1に本発明に係る有機電子デバイスの構造の一
例を示し、図2にこの有機電子デバイスの一部における
エネルギーバンド構造を示し、これらの図を参照して本
発明に係る有機電子デバイスの原理を説明する。
【0012】図1において、例えば金属からなる導電性
基板1上に絶縁膜2を介してドナー性分子およびアクセ
プター性分子を含有する非発光性の電荷蓄積層3が形成
されている。この電荷蓄積層3上に、正孔注入層4と電
子注入層5とが互いに空間的に分離して形成されてい
る。また、正孔注入層4に接して正孔注入電極6が、電
子注入層5に接して電子注入電極7がそれぞれ形成され
ている。
基板1上に絶縁膜2を介してドナー性分子およびアクセ
プター性分子を含有する非発光性の電荷蓄積層3が形成
されている。この電荷蓄積層3上に、正孔注入層4と電
子注入層5とが互いに空間的に分離して形成されてい
る。また、正孔注入層4に接して正孔注入電極6が、電
子注入層5に接して電子注入電極7がそれぞれ形成され
ている。
【0013】なお、導電性基板1としては、例えば透明
基板上に透明導電膜を形成したものを用いてもよい。ま
た、正孔注入層4はドナー性分子を含有し、電子注入層
5はアクセプター性分子を含有することが好ましい。こ
のような正孔注入層4と電子注入層5とを互いに空間的
に分離して形成するには、図1の構造に限らず、電荷蓄
積層3の両面にそれぞれ正孔注入層4と電子注入層5と
を積層してもよい。ただし、正孔注入層4と電子注入層
5との間における電荷蓄積層3での吸収色の変化を、他
の層を介さず直接識別できる点で、図1の構造がより好
ましい。正孔注入層4に接する正孔注入電極6および電
子注入層5に接する電子注入電極7に関しては、正孔注
入電極6の仕事関数が電子注入電極7の仕事関数と等し
いかそれより大きいことが好ましい。さらに、図1に示
す正孔注入電極6および電子注入電極7の代わりに、正
孔注入層4に正孔を注入する手段および電子注入層5に
電子を注入する手段として走査型プローブ電極の探針を
用いてもよい。
基板上に透明導電膜を形成したものを用いてもよい。ま
た、正孔注入層4はドナー性分子を含有し、電子注入層
5はアクセプター性分子を含有することが好ましい。こ
のような正孔注入層4と電子注入層5とを互いに空間的
に分離して形成するには、図1の構造に限らず、電荷蓄
積層3の両面にそれぞれ正孔注入層4と電子注入層5と
を積層してもよい。ただし、正孔注入層4と電子注入層
5との間における電荷蓄積層3での吸収色の変化を、他
の層を介さず直接識別できる点で、図1の構造がより好
ましい。正孔注入層4に接する正孔注入電極6および電
子注入層5に接する電子注入電極7に関しては、正孔注
入電極6の仕事関数が電子注入電極7の仕事関数と等し
いかそれより大きいことが好ましい。さらに、図1に示
す正孔注入電極6および電子注入電極7の代わりに、正
孔注入層4に正孔を注入する手段および電子注入層5に
電子を注入する手段として走査型プローブ電極の探針を
用いてもよい。
【0014】図2(a)は図1のA−A線に沿って形成
されている導電性基板1、絶縁膜2、電荷蓄積層3、正
孔注入層4および正孔注入電極6のエネルギーバンド構
造を示す図、図2(b)は図1のB−B線に沿って形成
されている導電性基板1、絶縁膜2、電荷蓄積層3、電
子注入層5および電子注入電極7のエネルギーバンド構
造を示す図である。図2に示されるように、一般に、正
孔注入層4を構成する分子はHOMO(Highest
Occupied Molecular Orbit
al)のエネルギーが高いため正孔注入電極6から容易
に正孔が注入されるが、LUMO(Lowest Un
occupied MolecularOrbita
l)のエネルギーも高いため電子はほとんど注入されな
い。一方、電子注入層5を構成する分子はLUMOのエ
ネルギーが低いため電子注入電極7から容易に電子が注
入されるが、HOMOのエネルギーも極めて低く深いと
ころに位置するため正孔はほとんど注入されない。ま
た、電荷蓄積層3を構成する分子として電荷移動錯体を
用いた場合には、HOMOのエネルギーは高くかつLO
MOのエネルギーは低いため、電子も正孔も容易に注入
される。なお、電荷蓄積層3に電荷移動錯体でない材料
を用いた場合でも、HOMOのエネルギーが高く、かつ
LUMOのエネルギーが低ければ、以下の議論は同様に
成立する。
されている導電性基板1、絶縁膜2、電荷蓄積層3、正
孔注入層4および正孔注入電極6のエネルギーバンド構
造を示す図、図2(b)は図1のB−B線に沿って形成
されている導電性基板1、絶縁膜2、電荷蓄積層3、電
子注入層5および電子注入電極7のエネルギーバンド構
造を示す図である。図2に示されるように、一般に、正
孔注入層4を構成する分子はHOMO(Highest
Occupied Molecular Orbit
al)のエネルギーが高いため正孔注入電極6から容易
に正孔が注入されるが、LUMO(Lowest Un
occupied MolecularOrbita
l)のエネルギーも高いため電子はほとんど注入されな
い。一方、電子注入層5を構成する分子はLUMOのエ
ネルギーが低いため電子注入電極7から容易に電子が注
入されるが、HOMOのエネルギーも極めて低く深いと
ころに位置するため正孔はほとんど注入されない。ま
た、電荷蓄積層3を構成する分子として電荷移動錯体を
用いた場合には、HOMOのエネルギーは高くかつLO
MOのエネルギーは低いため、電子も正孔も容易に注入
される。なお、電荷蓄積層3に電荷移動錯体でない材料
を用いた場合でも、HOMOのエネルギーが高く、かつ
LUMOのエネルギーが低ければ、以下の議論は同様に
成立する。
【0015】図1の構成において、導電性基板1に対し
て正孔注入電極6の電圧を正に設定すると、正孔注入電
極6から正孔注入層4へと正孔が注入され、さらにその
正孔は電荷蓄積層3へと注入される。また、導電性基板
1に対して電子注入電極7の電圧を負に設定すると、電
子注入電極7から電子注入層5へと電子が注入され、さ
らにその電子は電荷蓄積層3へと注入される。なお、本
発明においては、上記のような電荷蓄積層3への電子注
入および正孔注入を同時に行ってもよいし順次行っても
よい。本発明においては、正孔注入層4と電子注入層5
とが互いに空間的に分離されている点が重要である。こ
のような構造を採用すると、電子注入層5のHOMOの
エネルギーが十分低いため、電子注入過程においてすで
に電荷蓄積層3に注入されている正孔が電子注入層5を
通して逃げることはない。同様に、正孔注入層4のLU
MOのエネルギーが十分高いため、正孔注入過程におい
てすでに電荷蓄積層3に注入されている電子が正孔注入
層4を通して逃げることはない。
て正孔注入電極6の電圧を正に設定すると、正孔注入電
極6から正孔注入層4へと正孔が注入され、さらにその
正孔は電荷蓄積層3へと注入される。また、導電性基板
1に対して電子注入電極7の電圧を負に設定すると、電
子注入電極7から電子注入層5へと電子が注入され、さ
らにその電子は電荷蓄積層3へと注入される。なお、本
発明においては、上記のような電荷蓄積層3への電子注
入および正孔注入を同時に行ってもよいし順次行っても
よい。本発明においては、正孔注入層4と電子注入層5
とが互いに空間的に分離されている点が重要である。こ
のような構造を採用すると、電子注入層5のHOMOの
エネルギーが十分低いため、電子注入過程においてすで
に電荷蓄積層3に注入されている正孔が電子注入層5を
通して逃げることはない。同様に、正孔注入層4のLU
MOのエネルギーが十分高いため、正孔注入過程におい
てすでに電荷蓄積層3に注入されている電子が正孔注入
層4を通して逃げることはない。
【0016】また、本発明で用いられる非発光性の電荷
蓄積層3では電子と正孔との再結合確率が低い。特に、
電荷蓄積層3が電荷移動錯体からなる場合には、注入電
子が占める状態は主に電荷移動錯体を構成するアクセプ
ター性分子のLUMOであり、注入正孔が占める状態は
主に電荷移動錯体を構成するドナー性分子のHOMOで
あるため、注入電子と注入正孔とは状態の重なりが小さ
く、再結合確率は極めて小さい。したがって、電荷蓄積
層3内の注入電子と注入正孔は他の領域へ逃げることも
再結合により消滅することもなく蓄積される。
蓄積層3では電子と正孔との再結合確率が低い。特に、
電荷蓄積層3が電荷移動錯体からなる場合には、注入電
子が占める状態は主に電荷移動錯体を構成するアクセプ
ター性分子のLUMOであり、注入正孔が占める状態は
主に電荷移動錯体を構成するドナー性分子のHOMOで
あるため、注入電子と注入正孔とは状態の重なりが小さ
く、再結合確率は極めて小さい。したがって、電荷蓄積
層3内の注入電子と注入正孔は他の領域へ逃げることも
再結合により消滅することもなく蓄積される。
【0017】これに対して、従来の有機EL素子も上記
と同様な電子・正孔の注入により動作するが、有機EL
素子の場合には発光性分子層において電子と正孔とが再
結合して発光するため、注入された電荷が蓄積されるこ
とはない。
と同様な電子・正孔の注入により動作するが、有機EL
素子の場合には発光性分子層において電子と正孔とが再
結合して発光するため、注入された電荷が蓄積されるこ
とはない。
【0018】さらに、本発明の有機電子デバイスにおい
ては、注入電荷量に対する制限が緩いことが重要なポイ
ントになる。一般に、電子または正孔のいずれか一方の
電荷がある領域に注入された場合、その領域は注入され
た電荷の作り出す電場の影響によりポテンシャルが高く
なり、電荷がそれ以上注入されにくくなる。一方、本発
明においては、電子も正孔もともに電荷蓄積層に注入さ
れて蓄積されるため、注入電子の作る電場と注入正孔の
作る電場とが互いにキャンセルし合い、ポテンシャルが
あまり高くならない。このため、注入電荷の密度増加を
妨げる要因が小さく、高密度に電子・正孔を注入でき
る。
ては、注入電荷量に対する制限が緩いことが重要なポイ
ントになる。一般に、電子または正孔のいずれか一方の
電荷がある領域に注入された場合、その領域は注入され
た電荷の作り出す電場の影響によりポテンシャルが高く
なり、電荷がそれ以上注入されにくくなる。一方、本発
明においては、電子も正孔もともに電荷蓄積層に注入さ
れて蓄積されるため、注入電子の作る電場と注入正孔の
作る電場とが互いにキャンセルし合い、ポテンシャルが
あまり高くならない。このため、注入電荷の密度増加を
妨げる要因が小さく、高密度に電子・正孔を注入でき
る。
【0019】本発明では以上のような原理により、電荷
蓄積層3に互いにほぼ同程度の密度の電子と正孔とが同
時に、しかも高密度に存在する状態を作り出すことがで
きる。電荷蓄積層3を構成する分子のLUMOが注入電
子で占有され、HOMOが注入正孔で占有された状態
は、電荷蓄積層3の励起状態と捉えることができる。こ
のような状態では巨視的な内部電場は小さいが、微視
的、特に原子レベルでの局所的電場は極めて大きく様々
な物性変化が期待できる。特に、電荷蓄積層3が電荷移
動錯体からなる場合には、以下に述べるように、中性か
らイオン性およびイオン性から中性への相転移を起こす
ことが可能となる。
蓄積層3に互いにほぼ同程度の密度の電子と正孔とが同
時に、しかも高密度に存在する状態を作り出すことがで
きる。電荷蓄積層3を構成する分子のLUMOが注入電
子で占有され、HOMOが注入正孔で占有された状態
は、電荷蓄積層3の励起状態と捉えることができる。こ
のような状態では巨視的な内部電場は小さいが、微視
的、特に原子レベルでの局所的電場は極めて大きく様々
な物性変化が期待できる。特に、電荷蓄積層3が電荷移
動錯体からなる場合には、以下に述べるように、中性か
らイオン性およびイオン性から中性への相転移を起こす
ことが可能となる。
【0020】ここで電荷移動錯体は、基底状態が中性の
ものからイオン性のものまで幅広く存在する。中性とイ
オン性のどちらの状態が安定であるかは、電荷移動錯体
を構成するドナー性分子のイオン化ポテンシャル、アク
セプター性分子の電子親和力、および電荷移動錯体の構
成分子がイオン化したときのクーロンエネルギーの利得
であるマーデルングエネルギー、という3つの物理量で
決定される。
ものからイオン性のものまで幅広く存在する。中性とイ
オン性のどちらの状態が安定であるかは、電荷移動錯体
を構成するドナー性分子のイオン化ポテンシャル、アク
セプター性分子の電子親和力、および電荷移動錯体の構
成分子がイオン化したときのクーロンエネルギーの利得
であるマーデルングエネルギー、という3つの物理量で
決定される。
【0021】以下においては、電荷移動錯体の基底状態
を中性と仮定して議論する。いま、電荷移動錯体の中性
状態とイオン化状態との間のエネルギー差を、ドナー性
分子・アクセプター性分子1ペア当たりに換算した量を
ΔENIとする。また、電荷蓄積層の内部に存在するドナ
ー性分子・アクセプター性分子のペア数をNpair、上記
のプロセスにより電荷蓄積層に注入された電子または正
孔のうち多くない方の個数をNinj 、電荷移動錯体のH
OMO−LUMO間のエネルギー差をΔEHMとする。こ
こで、次式で定義される量、ΔECIT を考える。
を中性と仮定して議論する。いま、電荷移動錯体の中性
状態とイオン化状態との間のエネルギー差を、ドナー性
分子・アクセプター性分子1ペア当たりに換算した量を
ΔENIとする。また、電荷蓄積層の内部に存在するドナ
ー性分子・アクセプター性分子のペア数をNpair、上記
のプロセスにより電荷蓄積層に注入された電子または正
孔のうち多くない方の個数をNinj 、電荷移動錯体のH
OMO−LUMO間のエネルギー差をΔEHMとする。こ
こで、次式で定義される量、ΔECIT を考える。
【0022】 ΔECIT =Ninj ・ΔEHM−Npair・ΔENI このΔECIT は電子・正孔注入により作られた励起状態
と基底状態とのエネルギー差(第1項)および錯体全体
がイオン性であるイオン化状態と錯体全体が中性である
基底状態とのエネルギー差(第2項)の両者の差を表す
量である。より直接的にいえば、このΔECIT の値か
ら、励起状態またはイオン化状態のいずれがエネルギー
的に安定であるかがわかる。いま電荷移動錯体が1つの
励起状態にあるとして、その状態からNinj つまり注入
電荷を増加させて第2項より第1項を大きくしΔECIT
の値を正にすると、不安定な励起状態になる。この場
合、本発明において用いられる電荷移動錯体では電子・
正孔の再結合確率が小さいため、電荷移動錯体は基底状
態に戻らずに基底状態とは相の異なるイオン化状態へ相
転移する。
と基底状態とのエネルギー差(第1項)および錯体全体
がイオン性であるイオン化状態と錯体全体が中性である
基底状態とのエネルギー差(第2項)の両者の差を表す
量である。より直接的にいえば、このΔECIT の値か
ら、励起状態またはイオン化状態のいずれがエネルギー
的に安定であるかがわかる。いま電荷移動錯体が1つの
励起状態にあるとして、その状態からNinj つまり注入
電荷を増加させて第2項より第1項を大きくしΔECIT
の値を正にすると、不安定な励起状態になる。この場
合、本発明において用いられる電荷移動錯体では電子・
正孔の再結合確率が小さいため、電荷移動錯体は基底状
態に戻らずに基底状態とは相の異なるイオン化状態へ相
転移する。
【0023】中性状態とイオン化状態との間の全エネル
ギー差は錯体種により異なる。例えば、圧力や温度の変
化により中性状態からイオン化状態へと相転移する電荷
移動錯体では、ΔENIの値は室温で数十meVと見積も
られている。一方、ΔEHMは電荷移動錯体結晶の吸収ス
ペクトルにおいて観測される電荷移動吸収帯の周波数か
ら換算され、おおむねeVオーダーの量と考えられてい
る。つまり、Ninj はNpairよりも2桁程度小さい量で
あるにもかかわらず、ΔECIT の値は正になり相転移を
起こす。
ギー差は錯体種により異なる。例えば、圧力や温度の変
化により中性状態からイオン化状態へと相転移する電荷
移動錯体では、ΔENIの値は室温で数十meVと見積も
られている。一方、ΔEHMは電荷移動錯体結晶の吸収ス
ペクトルにおいて観測される電荷移動吸収帯の周波数か
ら換算され、おおむねeVオーダーの量と考えられてい
る。つまり、Ninj はNpairよりも2桁程度小さい量で
あるにもかかわらず、ΔECIT の値は正になり相転移を
起こす。
【0024】上述したように本発明においては、電子と
正孔の両方を注入するため注入可能な電荷密度は一方の
電荷を注入する場合より飛躍的に大きい。また、注入さ
れた電荷は電荷蓄積層において均一に分布するわけでは
なく、密度の高い領域と低い領域とが空間的に分布す
る。この場合、ΔECIT の値が正になるようなNinj の
値は、電荷密度の高い領域で達成されていればその領域
については相転移が起こるため、分子層内での平均密度
として達成される必要はない。さらに、ある領域で相転
移が起これば、その領域にはもはや電荷は注入されず、
相転移を起こしていない他の領域に電荷が蓄積される。
再び、最初に相転移を起こした以外の領域でΔECIT の
値が正になるような電荷密度Ninj が達成されれば、今
度はその領域で相転移が起こる。したがって、正孔注入
と電子注入を継続して行えば、上記のような機構で電荷
蓄積層全体で相転移が起こる。
正孔の両方を注入するため注入可能な電荷密度は一方の
電荷を注入する場合より飛躍的に大きい。また、注入さ
れた電荷は電荷蓄積層において均一に分布するわけでは
なく、密度の高い領域と低い領域とが空間的に分布す
る。この場合、ΔECIT の値が正になるようなNinj の
値は、電荷密度の高い領域で達成されていればその領域
については相転移が起こるため、分子層内での平均密度
として達成される必要はない。さらに、ある領域で相転
移が起これば、その領域にはもはや電荷は注入されず、
相転移を起こしていない他の領域に電荷が蓄積される。
再び、最初に相転移を起こした以外の領域でΔECIT の
値が正になるような電荷密度Ninj が達成されれば、今
度はその領域で相転移が起こる。したがって、正孔注入
と電子注入を継続して行えば、上記のような機構で電荷
蓄積層全体で相転移が起こる。
【0025】本発明の有機電子デバイスにおいて電荷蓄
積層をイオン化状態から再び中性状態へ戻すには、以下
のような手段を用いることができる。一般に、中性状態
とイオン化状態ではエネルギー構造が異なるため、電荷
注入特性も異なる。多くの場合、元来中性状態の材料が
イオン化状態に転移すると、電子も正孔も注入しにくく
なる。したがって、中性状態から電荷を注入した結果、
イオン化状態へ相転移すると、同じ電圧条件ではそれ以
上は電子も正孔も注入されない。この段階で正孔注入を
行うための正電圧および電子注入を行うための負電圧の
絶対値をともに増加させると、正孔も電子も注入され
る。このように電荷注入用電極への印加電圧を変えて、
イオン化状態にある電荷移動錯体に正孔・電子注入を行
えば、上記と逆に不安定なイオン化状態になり、イオン
化状態から中性状態への逆方向の相転移を起こすことが
できる。ただし、いったん電荷移動錯体が中性状態へ戻
ると電子も正孔も注入しやすくなるので、電圧を印加し
たまま保持すると再びイオン化状態へ戻る。これを避け
るためには、電子注入と正孔注入を同時に行うのではな
く時間的にずらして行うか、または電荷注入と同時に例
えば光吸収スペクトルの測定など何らかの物性測定を行
い中性状態へ戻った直後に印加電圧を減少させることが
好ましい。
積層をイオン化状態から再び中性状態へ戻すには、以下
のような手段を用いることができる。一般に、中性状態
とイオン化状態ではエネルギー構造が異なるため、電荷
注入特性も異なる。多くの場合、元来中性状態の材料が
イオン化状態に転移すると、電子も正孔も注入しにくく
なる。したがって、中性状態から電荷を注入した結果、
イオン化状態へ相転移すると、同じ電圧条件ではそれ以
上は電子も正孔も注入されない。この段階で正孔注入を
行うための正電圧および電子注入を行うための負電圧の
絶対値をともに増加させると、正孔も電子も注入され
る。このように電荷注入用電極への印加電圧を変えて、
イオン化状態にある電荷移動錯体に正孔・電子注入を行
えば、上記と逆に不安定なイオン化状態になり、イオン
化状態から中性状態への逆方向の相転移を起こすことが
できる。ただし、いったん電荷移動錯体が中性状態へ戻
ると電子も正孔も注入しやすくなるので、電圧を印加し
たまま保持すると再びイオン化状態へ戻る。これを避け
るためには、電子注入と正孔注入を同時に行うのではな
く時間的にずらして行うか、または電荷注入と同時に例
えば光吸収スペクトルの測定など何らかの物性測定を行
い中性状態へ戻った直後に印加電圧を減少させることが
好ましい。
【0026】以上で説明した電荷蓄積層を構成する有機
分子で相転移が起こると、その物性が大幅に変化する。
例えば、電荷蓄積層の相転移に伴う吸収色の変化を利用
して表示素子として用いることができる。
分子で相転移が起こると、その物性が大幅に変化する。
例えば、電荷蓄積層の相転移に伴う吸収色の変化を利用
して表示素子として用いることができる。
【0027】以上の議論は電荷蓄積層を構成する分子
が、基底状態で中性の電荷移動錯体である場合を例に挙
げて原理を説明したものであるが、基底状態がイオン化
状態である電荷移動錯体でも上記と同様な議論が成立
し、電子・正孔注入によるイオン性−中性転移を実現で
きる。
が、基底状態で中性の電荷移動錯体である場合を例に挙
げて原理を説明したものであるが、基底状態がイオン化
状態である電荷移動錯体でも上記と同様な議論が成立
し、電子・正孔注入によるイオン性−中性転移を実現で
きる。
【0028】なお、本発明で用いる正孔注入層は、以下
の構造式(D1)〜(D7)に示される分子骨格を少な
くとも一部に含むドナー性分子で形成することが望まし
い。一方、本発明で用いる電子注入層は、以下の構造式
(A1)〜(A4)で示される分子骨格を少なくとも一
部に含むアクセプター性分子で形成することが望まし
い。すなわち本発明では、これらの分子骨格からなるド
ナー性分子またはアクセプター性分子をそのまま用いて
もよいし、こうしたドナー性またはアクセプター性を示
す分子骨格を芳香族骨格あるいは脂環式骨格に導入し
た、下記一般式 Z−(X−Y)n (式中、Zは芳香族骨格または脂環式骨格、Yはドナー
性を示す分子骨格またはアクセプター性を示す分子骨
格、Xは結合基、nは2以上の整数である。)で表され
る化合物を正孔注入層や電子注入層に用いることもでき
る。
の構造式(D1)〜(D7)に示される分子骨格を少な
くとも一部に含むドナー性分子で形成することが望まし
い。一方、本発明で用いる電子注入層は、以下の構造式
(A1)〜(A4)で示される分子骨格を少なくとも一
部に含むアクセプター性分子で形成することが望まし
い。すなわち本発明では、これらの分子骨格からなるド
ナー性分子またはアクセプター性分子をそのまま用いて
もよいし、こうしたドナー性またはアクセプター性を示
す分子骨格を芳香族骨格あるいは脂環式骨格に導入し
た、下記一般式 Z−(X−Y)n (式中、Zは芳香族骨格または脂環式骨格、Yはドナー
性を示す分子骨格またはアクセプター性を示す分子骨
格、Xは結合基、nは2以上の整数である。)で表され
る化合物を正孔注入層や電子注入層に用いることもでき
る。
【0029】さらに、電荷蓄積層は、構造式(D1)〜
(D7)で示される分子骨格を少なくとも一部に含むド
ナー性分子、および構造式(A1)〜(A4)で示され
る分子骨格を少なくとも一部に含むアクセプター性分子
をともに含む材料、特にドナー性分子およびアクセプタ
ー性分子を1:1の構成比で含む電荷移動錯体により形
成することが望ましい。
(D7)で示される分子骨格を少なくとも一部に含むド
ナー性分子、および構造式(A1)〜(A4)で示され
る分子骨格を少なくとも一部に含むアクセプター性分子
をともに含む材料、特にドナー性分子およびアクセプタ
ー性分子を1:1の構成比で含む電荷移動錯体により形
成することが望ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】また本発明において、図1に示した有機電
子デバイスにおける導電性基板には、金属以外にガラス
基板などの透明基板上にITO、SnO2 などの透明導
電性薄膜や、Au、Ptなどの金属薄膜を形成したもの
を用いることができる。さらに、このような導電性基板
上の絶縁膜は、SiO2 、Y2 O3 、T2 O5 、Sm2
O3 、BaTiO3 、BaTa2 O6 、PbTiO3 、
Al2 O3 、PbNb2 O6 、ZrO2 、TiO2 、B
i2 O3 、ZnSなどの無機系のものや、ポリイミド、
ポリカーボネートなど有機ポリマー系の絶縁性材料で形
成することが可能である。
子デバイスにおける導電性基板には、金属以外にガラス
基板などの透明基板上にITO、SnO2 などの透明導
電性薄膜や、Au、Ptなどの金属薄膜を形成したもの
を用いることができる。さらに、このような導電性基板
上の絶縁膜は、SiO2 、Y2 O3 、T2 O5 、Sm2
O3 、BaTiO3 、BaTa2 O6 、PbTiO3 、
Al2 O3 、PbNb2 O6 、ZrO2 、TiO2 、B
i2 O3 、ZnSなどの無機系のものや、ポリイミド、
ポリカーボネートなど有機ポリマー系の絶縁性材料で形
成することが可能である。
【0049】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。 実施例1 本実施例においては図3に示す素子を以下のようにして
作製した。まず、石英基板11上に、CVD法により透
明電極として厚さ100nmのITO電極12および絶
縁膜として厚さ20nmのSiO2 膜13を順次形成し
た。このSiO2 膜13上に電荷移動錯体であるTTF
−クロラニルを100nmの厚さに蒸着して電荷蓄積層
14を形成した。次に、電荷蓄積層14上に正孔注入層
形成領域以外を覆うように金属マスクを設け、ドナー性
分子であるDiamineを10nmの厚さに蒸着して
正孔注入層15を形成した。次いで、電荷蓄積層14上
に電子注入層形成領域以外を覆うように金属マスクを設
け、アクセプター性分子であるDPNTCIを10nm
の厚さに蒸着して電子注入層16を形成した。その後、
上記と同様に金属マスクを用いて、正孔注入層15上に
Auを30nmの厚さに蒸着して正孔注入電極17を形
成した後、電子注入層16上にMg/Agを30nmの
厚さに蒸着して電子注入電極18を形成した。
する。 実施例1 本実施例においては図3に示す素子を以下のようにして
作製した。まず、石英基板11上に、CVD法により透
明電極として厚さ100nmのITO電極12および絶
縁膜として厚さ20nmのSiO2 膜13を順次形成し
た。このSiO2 膜13上に電荷移動錯体であるTTF
−クロラニルを100nmの厚さに蒸着して電荷蓄積層
14を形成した。次に、電荷蓄積層14上に正孔注入層
形成領域以外を覆うように金属マスクを設け、ドナー性
分子であるDiamineを10nmの厚さに蒸着して
正孔注入層15を形成した。次いで、電荷蓄積層14上
に電子注入層形成領域以外を覆うように金属マスクを設
け、アクセプター性分子であるDPNTCIを10nm
の厚さに蒸着して電子注入層16を形成した。その後、
上記と同様に金属マスクを用いて、正孔注入層15上に
Auを30nmの厚さに蒸着して正孔注入電極17を形
成した後、電子注入層16上にMg/Agを30nmの
厚さに蒸着して電子注入電極18を形成した。
【0050】
【化19】
【0051】この素子について、電圧を印加せずに電荷
蓄積層14の色を目視で観察すると黄色であった。電圧
無印加で電荷蓄積層14の吸収スペクトルを測定した結
果を図4に示す。この図に示されるように375nmお
よび517nmの2個所に吸収ピークがある。この吸収
スペクトルは中性状態のTTF−クロラニルに対応する
ものである。
蓄積層14の色を目視で観察すると黄色であった。電圧
無印加で電荷蓄積層14の吸収スペクトルを測定した結
果を図4に示す。この図に示されるように375nmお
よび517nmの2個所に吸収ピークがある。この吸収
スペクトルは中性状態のTTF−クロラニルに対応する
ものである。
【0052】次に、ITO電極12の電圧を0Vに設定
し、Auからなる正孔注入電極17電極に+3V、Mg
/Agからなる電子注入電極18に−3Vの電圧を印加
した。このとき、電荷蓄積層14の色は赤色に変化して
いた。このような電圧印加状態で電荷蓄積層14の吸収
スペクトルを測定した結果を図5に示す。この図に示さ
れるように、413nmおよび564nmの2個所に吸
収ピークがあり、電荷蓄積層14のTTF−クロラニル
の全体がイオン性に変化していることがわかる。
し、Auからなる正孔注入電極17電極に+3V、Mg
/Agからなる電子注入電極18に−3Vの電圧を印加
した。このとき、電荷蓄積層14の色は赤色に変化して
いた。このような電圧印加状態で電荷蓄積層14の吸収
スペクトルを測定した結果を図5に示す。この図に示さ
れるように、413nmおよび564nmの2個所に吸
収ピークがあり、電荷蓄積層14のTTF−クロラニル
の全体がイオン性に変化していることがわかる。
【0053】次いで、電圧印加を停止した後に吸収スペ
クトルを観測したところ、図5とほぼ同一であり、電圧
を切った後にも電荷蓄積層14はイオン性に保持されて
いた。その後、再び前と同じ条件で、すなわちITO電
極12の電圧を0Vに設定し、正孔注入電極17に+3
V、電子注入電極18に−3Vの電圧を印加して吸収ス
ペクトルの測定を行った。このとき観測されたスペクト
ルは、図5とほぼ同一のものであり、電荷蓄積層14の
TTF−クロラニルはイオン性のまま変化していないこ
とが確認された。
クトルを観測したところ、図5とほぼ同一であり、電圧
を切った後にも電荷蓄積層14はイオン性に保持されて
いた。その後、再び前と同じ条件で、すなわちITO電
極12の電圧を0Vに設定し、正孔注入電極17に+3
V、電子注入電極18に−3Vの電圧を印加して吸収ス
ペクトルの測定を行った。このとき観測されたスペクト
ルは、図5とほぼ同一のものであり、電荷蓄積層14の
TTF−クロラニルはイオン性のまま変化していないこ
とが確認された。
【0054】さらに、電圧印加条件を変え、ITO電極
12を0Vに維持したまま、正孔注入電極17に+7V
の電圧を2秒間印加し、電圧印加を停止した後、電子注
入電極18に−7Vの電圧を2秒間印加した。この状態
で電荷蓄積層14の吸収スペクトルを測定したところ、
図4とほぼ同一であり、電荷蓄積層14のTTF−クロ
ラニルは元の中性状態に戻ったことが確認された。これ
は、イオン化状態の電荷蓄積層14に高い電圧を印加し
たことにより正孔および電子がさらに注入され、イオン
化状態が不安定になったためである。
12を0Vに維持したまま、正孔注入電極17に+7V
の電圧を2秒間印加し、電圧印加を停止した後、電子注
入電極18に−7Vの電圧を2秒間印加した。この状態
で電荷蓄積層14の吸収スペクトルを測定したところ、
図4とほぼ同一であり、電荷蓄積層14のTTF−クロ
ラニルは元の中性状態に戻ったことが確認された。これ
は、イオン化状態の電荷蓄積層14に高い電圧を印加し
たことにより正孔および電子がさらに注入され、イオン
化状態が不安定になったためである。
【0055】このように本実施例では、電子・正孔注入
によりTTF−クロラニルの中性状態とイオン化状態と
の間の相転移を起こすことができ、しかも注入時の印加
電圧により中性からイオン性およびイオン性から中性と
いう可逆的な変化が可能であることが示された。
によりTTF−クロラニルの中性状態とイオン化状態と
の間の相転移を起こすことができ、しかも注入時の印加
電圧により中性からイオン性およびイオン性から中性と
いう可逆的な変化が可能であることが示された。
【0056】比較例 比較のために図6に示す素子を以下のようにして作製し
た。この素子において、図3に示す本発明に係る素子と
異なる構成は、電荷蓄積層14上に電子注入層および正
孔注入層を設けずに直接正孔注入電極17および電子注
入電極18を形成している点である。
た。この素子において、図3に示す本発明に係る素子と
異なる構成は、電荷蓄積層14上に電子注入層および正
孔注入層を設けずに直接正孔注入電極17および電子注
入電極18を形成している点である。
【0057】この素子について、電圧無印加で吸収スペ
クトルを測定したところ、図4とほぼ同一のスペクトル
が得られ、電荷蓄積層14のTTF−クロラニルは中性
状態であることが確認された。
クトルを測定したところ、図4とほぼ同一のスペクトル
が得られ、電荷蓄積層14のTTF−クロラニルは中性
状態であることが確認された。
【0058】次に、実施例1と同様に、ITO電極12
に0V、正孔注入電極17に+3V、電子注入電極18
に−3Vの電圧を印加して吸収スペクトルを測定した。
しかし、観測されたスペクトルは、図4とほぼ同一であ
り、電荷蓄積層14のTTF−クロラニルは中性状態の
まま変化していないことが確認された。また、正孔注入
電極17および電子注入電極18への印加電圧を変化さ
せたが、いずれの条件でも吸収スペクトルの変化は観測
されなかった。
に0V、正孔注入電極17に+3V、電子注入電極18
に−3Vの電圧を印加して吸収スペクトルを測定した。
しかし、観測されたスペクトルは、図4とほぼ同一であ
り、電荷蓄積層14のTTF−クロラニルは中性状態の
まま変化していないことが確認された。また、正孔注入
電極17および電子注入電極18への印加電圧を変化さ
せたが、いずれの条件でも吸収スペクトルの変化は観測
されなかった。
【0059】実施例2 本実施例においては図7に示す素子を以下のようにして
作製した。まず、石英基板21上にITOを被着して正
孔注入電極22を形成した。この正孔注入電極22上
に、ドナー性分子であるDiamineを20nmの厚
さに蒸着して正孔注入層23を、電荷移動錯体であるT
TF−クロラニルを100nmの厚さに蒸着して電荷蓄
積層24を、アクセプター性分子であるDPNTCIを
20nmの厚さに蒸着して電子注入層25を、Mg/A
gを蒸着して電子注入電極26をそれぞれ形成した。
作製した。まず、石英基板21上にITOを被着して正
孔注入電極22を形成した。この正孔注入電極22上
に、ドナー性分子であるDiamineを20nmの厚
さに蒸着して正孔注入層23を、電荷移動錯体であるT
TF−クロラニルを100nmの厚さに蒸着して電荷蓄
積層24を、アクセプター性分子であるDPNTCIを
20nmの厚さに蒸着して電子注入層25を、Mg/A
gを蒸着して電子注入電極26をそれぞれ形成した。
【0060】この素子について、正孔注入電極22に0
V、電子注入電極26に−6Vの電圧を印加して吸収ス
ペクトルを測定した。観測されたスペクトルは図5とほ
ぼ同一のものであり、電荷蓄積層24のTTF−クロラ
ニルが中性状態からイオン化状態へと変化したことが確
認された。
V、電子注入電極26に−6Vの電圧を印加して吸収ス
ペクトルを測定した。観測されたスペクトルは図5とほ
ぼ同一のものであり、電荷蓄積層24のTTF−クロラ
ニルが中性状態からイオン化状態へと変化したことが確
認された。
【0061】次に、波長520nmの吸収強度をモニタ
ーしながら、印加電圧を変化させて正孔注入電極22に
0V、電子注入電極26に−10Vの電圧を印加して、
波長520nmの吸収強度が変化すると同時に電圧印加
を停止した。その後、吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、図4とほぼ同様なスペクトルが得られ、電荷蓄積層
24のTTF−クロラニルが元の中性状態に戻ったこと
が確認された。
ーしながら、印加電圧を変化させて正孔注入電極22に
0V、電子注入電極26に−10Vの電圧を印加して、
波長520nmの吸収強度が変化すると同時に電圧印加
を停止した。その後、吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、図4とほぼ同様なスペクトルが得られ、電荷蓄積層
24のTTF−クロラニルが元の中性状態に戻ったこと
が確認された。
【0062】なお、波長520nmの吸収強度が変化が
観測された後も、電圧を切らない場合には、中性状態か
らイオン化状態およびイオン化状態から中性状態への変
化が周期的に起きることが観測された。
観測された後も、電圧を切らない場合には、中性状態か
らイオン化状態およびイオン化状態から中性状態への変
化が周期的に起きることが観測された。
【0063】実施例3 本実施例においては図8に示すように正孔注入電極およ
び電子注入電極を設けずに、走査型プローブ顕微鏡の1
種である原子間力顕微鏡(AFM)の探針30を備えた
素子を作製した。このAFM探針30の表面には金属が
コートされている。まず、ITO電極12を0Vに保っ
た状態で、AFM探針30に+3Vの電圧を印加してD
iamineからなる正孔注入層15に1秒間接触させ
て正孔を注入した。次に、AFM探針30を正孔注入層
15から引き離して水平方向へ移動させ、AFM探針3
0への印加電圧を−3Vに変え、再度垂直方向に移動し
て、DPNTCIからなる電子注入層16に1秒間接触
させて電子を注入した。
び電子注入電極を設けずに、走査型プローブ顕微鏡の1
種である原子間力顕微鏡(AFM)の探針30を備えた
素子を作製した。このAFM探針30の表面には金属が
コートされている。まず、ITO電極12を0Vに保っ
た状態で、AFM探針30に+3Vの電圧を印加してD
iamineからなる正孔注入層15に1秒間接触させ
て正孔を注入した。次に、AFM探針30を正孔注入層
15から引き離して水平方向へ移動させ、AFM探針3
0への印加電圧を−3Vに変え、再度垂直方向に移動し
て、DPNTCIからなる電子注入層16に1秒間接触
させて電子を注入した。
【0064】次いで、先端がL字型に曲がって細くなっ
ており、カンチレバーとしての機能を有するSNOAM
(Scanning Near−field Opti
cal and Atomic force Micr
oscope)用のファイバー探針を接近させ、図8の
素子に対する局所的な吸収スペクトル測定を行った。
ており、カンチレバーとしての機能を有するSNOAM
(Scanning Near−field Opti
cal and Atomic force Micr
oscope)用のファイバー探針を接近させ、図8の
素子に対する局所的な吸収スペクトル測定を行った。
【0065】図9および図10にそれぞれ電荷注入前お
よび電荷注入後に測定した吸収スペクトルを示す。これ
らの図はいずれも、図4および図5と比較してシャープ
な吸収を示しており、局所的なスペクトルであるために
不均一幅が大幅に減少していることがわかる。また、図
9から図10へのスペクトルの変化は図4から図5への
変化と同様であり、本実施例でも電荷蓄積層14のTT
F−クロラニルが中性からイオン性へと相転移したこと
がわかる。したがってここでは、正孔および電子を注入
する手段としてAFM探針30を用いることで、電荷蓄
積層14でより局所的な相転移を生じさせることがで
き、例えばこの相転移に伴う吸収色の変化を利用した表
示素子に応用する場合に色調の向上などが期待できる。
さらに、AFM探針30に+7Vの電圧を印加してDi
amineからなる正孔注入層15に接触させた後、A
FM探針30に−7Vの電圧を印加してDPNTCIか
らなる電子注入層16に接触させるという操作を順次行
った後、ファイバー探針で吸収スペクトルの変化を行っ
たところ、図9とほぼ同一であり、電荷蓄積層14のT
TF−クロラニルがイオン性から中性へと戻ったことが
確認された。
よび電荷注入後に測定した吸収スペクトルを示す。これ
らの図はいずれも、図4および図5と比較してシャープ
な吸収を示しており、局所的なスペクトルであるために
不均一幅が大幅に減少していることがわかる。また、図
9から図10へのスペクトルの変化は図4から図5への
変化と同様であり、本実施例でも電荷蓄積層14のTT
F−クロラニルが中性からイオン性へと相転移したこと
がわかる。したがってここでは、正孔および電子を注入
する手段としてAFM探針30を用いることで、電荷蓄
積層14でより局所的な相転移を生じさせることがで
き、例えばこの相転移に伴う吸収色の変化を利用した表
示素子に応用する場合に色調の向上などが期待できる。
さらに、AFM探針30に+7Vの電圧を印加してDi
amineからなる正孔注入層15に接触させた後、A
FM探針30に−7Vの電圧を印加してDPNTCIか
らなる電子注入層16に接触させるという操作を順次行
った後、ファイバー探針で吸収スペクトルの変化を行っ
たところ、図9とほぼ同一であり、電荷蓄積層14のT
TF−クロラニルがイオン性から中性へと戻ったことが
確認された。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、電
子と正孔とを同時に注入することにより分子性固体にお
ける相転移、特に電荷移動錯体におけるNI転移を効果
的に生じさせ、それに伴う大きな物性変化を利用して新
しい動作原理の有機電子デバイスを提供することができ
る。
子と正孔とを同時に注入することにより分子性固体にお
ける相転移、特に電荷移動錯体におけるNI転移を効果
的に生じさせ、それに伴う大きな物性変化を利用して新
しい動作原理の有機電子デバイスを提供することができ
る。
【図1】本発明に係る有機電子デバイスの一例を示す断
面図。
面図。
【図2】本発明に係る有機電子デバイスのエネルギーバ
ンド構造を示す図。
ンド構造を示す図。
【図3】本発明の実施例1における有機電子デバイスを
示す断面図。
示す断面図。
【図4】本発明の実施例1における有機電子デバイスに
ついて電荷注入前の吸収スペクトルを示す図。
ついて電荷注入前の吸収スペクトルを示す図。
【図5】本発明の実施例1における有機電子デバイスに
ついて電荷注入後の吸収スペクトルを示す図。
ついて電荷注入後の吸収スペクトルを示す図。
【図6】比較例の有機電子デバイスを示す断面図。
【図7】本発明の実施例2における有機電子デバイスを
示す断面図。
示す断面図。
【図8】本発明の実施例3における有機電子デバイスを
示す断面図。
示す断面図。
【図9】本発明の実施例3における有機電子デバイスに
ついて電荷注入前の吸収スペクトルを示す図。
ついて電荷注入前の吸収スペクトルを示す図。
【図10】本発明の実施例3における有機電子デバイス
について電荷注入後の吸収スペクトルを示す図。
について電荷注入後の吸収スペクトルを示す図。
1…導電性基板 2…絶縁膜 3…電荷蓄積層 4…正孔注入層 5…電子注入層 11…石英基板 12…ITO電極 13…SiO2 膜 14…電荷蓄積層 15…正孔注入層 16…電子注入層 17…正孔注入電極 18…電子注入電極 21…石英基板 22…正孔注入電極 23…正孔注入層 24…電荷蓄積層 25…電子注入層 26…電子注入電極 30…AFM探針
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 伸也 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 中山 俊夫 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内
Claims (8)
- 【請求項1】 ドナー性分子およびアクセプター性分子
を含有する非発光性の電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層に
正孔を注入する正孔注入層と、前記電荷蓄積層に電子を
注入する電子注入層とを具備し、前記正孔注入層と前記
電子注入層とが互いに空間的に分離されていることを特
徴とする有機電子デバイス。 - 【請求項2】 前記正孔注入層がドナー性分子を含有す
るか、または前記電子注入層がアクセプター性分子を含
有することを特徴とする請求項1記載の有機電子デバイ
ス。 - 【請求項3】 前記正孔注入層に接する正孔注入電極お
よび前記電子注入層に接する電子注入電極を有し、前記
正孔注入電極の仕事関数が前記電子注入電極の仕事関数
と等しいかそれより大きいことを特徴とする請求項1記
載の有機電子デバイス。 - 【請求項4】 前記正孔注入層に正孔を注入する手段お
よび前記電子注入層に電子を注入する手段として、走査
型プローブ電極の探針を有することを特徴とする請求項
1記載の有機電子デバイス。 - 【請求項5】 前記電荷蓄積層が導電性基板上に絶縁膜
を介して形成され、前記電荷蓄積層上に正孔注入層およ
び電子注入層が互いに空間的に分離されて形成されてい
ることを特徴とする請求項1記載の有機電子デバイス。 - 【請求項6】 前記非発光性の電荷蓄積層が、正孔およ
び電子の注入により相転移を起こすことを特徴とする請
求項1記載の有機電子デバイス。 - 【請求項7】 前記非発光性の電荷蓄積層を構成する分
子が電荷移動錯体であり、正孔および電子の注入により
中性−イオン性転移を起こすことを特徴とする請求項6
記載の有機電子デバイス。 - 【請求項8】 前記導電性基板が透明基板上に透明導電
膜を形成したものからなり、前記非発光性の電荷蓄積層
を構成する有機分子の相転移による吸収色の変化を表示
に利用することを特徴とする請求項5記載の有機電子デ
バイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5475796A JPH09246626A (ja) | 1996-03-12 | 1996-03-12 | 有機電子デバイス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5475796A JPH09246626A (ja) | 1996-03-12 | 1996-03-12 | 有機電子デバイス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09246626A true JPH09246626A (ja) | 1997-09-19 |
Family
ID=12979653
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5475796A Pending JPH09246626A (ja) | 1996-03-12 | 1996-03-12 | 有機電子デバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09246626A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100848312B1 (ko) * | 2006-09-05 | 2008-07-24 | 한국전자통신연구원 | 유기 유전박막을 구비한 분자 전자 소자 및 그 제조 방법 |
WO2008123054A1 (ja) * | 2007-03-22 | 2008-10-16 | Nippon Seiki Co., Ltd. | 有機elパネル |
US7759677B2 (en) | 2006-09-05 | 2010-07-20 | Electronics And Telecommunications Research Institute | Molecular electronic device including organic dielectric thin film and method of fabricating the same |
-
1996
- 1996-03-12 JP JP5475796A patent/JPH09246626A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100848312B1 (ko) * | 2006-09-05 | 2008-07-24 | 한국전자통신연구원 | 유기 유전박막을 구비한 분자 전자 소자 및 그 제조 방법 |
US7759677B2 (en) | 2006-09-05 | 2010-07-20 | Electronics And Telecommunications Research Institute | Molecular electronic device including organic dielectric thin film and method of fabricating the same |
WO2008123054A1 (ja) * | 2007-03-22 | 2008-10-16 | Nippon Seiki Co., Ltd. | 有機elパネル |
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