JPH09238679A - サイレージ調製用セルラーゼ製剤及びそれを用いたサイレージの調製方法 - Google Patents

サイレージ調製用セルラーゼ製剤及びそれを用いたサイレージの調製方法

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JPH09238679A
JPH09238679A JP8078129A JP7812996A JPH09238679A JP H09238679 A JPH09238679 A JP H09238679A JP 8078129 A JP8078129 A JP 8078129A JP 7812996 A JP7812996 A JP 7812996A JP H09238679 A JPH09238679 A JP H09238679A
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徹 浜谷
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Toshiharu Miura
俊治 三浦
Toru Kitamura
亨 北村
Masao Yamashita
征夫 山下
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ドレインによる栄養成分の逸失をきたすこと
なく、サイレージの発酵品質改善効果を有する新たなセ
ルラーゼ製剤と、それを用いたサイレージ調製方法を提
供することを目的とする。 【解決手段】 アクレモニウム(Acremonium)属の菌が
生産するセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の
菌が生産するセルラーゼとを含有するサイレージ調製用
セルラーゼ製剤を提供すると共に、この製剤を用いてサ
イレージ原料を処理することを特徴とするサイレージの
調製方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サイレージ調製用
セルラーゼ製剤と、それを用いたサイレージの調製方法
に関する。詳しくは、アクレモニウム(Acremonium)属
の菌が生産するセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderm
a)属の菌が生産するセルラーゼとを、一定の割合で混
合してなるサイレージ調製用セルラーゼ製剤と、このサ
イレージ調製用セルラーゼ製剤を用いた、改良されたサ
イレージ調製方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】牧草のサイロへの詰め込みの際に添加
し、その発酵品質を改善せしめて、良質のサイレージを
調製することを目的とするサイレージ用酵素製剤とし
て、各種のセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼを
それぞれ単剤としたもの、或いはこれらを合剤として含
むもの、更に、これら酵素の効果を高めることを目的と
して、これら酵素と乳酸菌との合剤が既に市販されてい
る。
【0003】サイレージ用途に用いることのできるセル
ラーゼとしては、特開平4−117244号公報によれ
ば、トリコデルマ属の菌が生産するセルラーゼやアクレ
モニウム属の菌が生産するセルラーゼやアスペルギルス
属の菌が生産するセルラーゼが知られている。
【0004】また、特開平7ー236431号公報に
は、アクレモニウム属の菌が生産するセルラーゼを、良
質サイレージを調製するのが難しい生イネワラに応用
し、良好な結果が得られたことが記載されている。
【0005】ところで、特開平4ー117244号公報
記載のアクレモニウム属の菌が生産するセルラーゼは、
トリコデルマ属の菌が生産するセルラーゼやアスペルギ
ルス属の菌が生産するセルラーゼと比較し、より少ない
酵素(セルラーゼ活性)の添加量で、明瞭なサイレージ
発酵品質を改善すること(低pH、高乳酸産生、低揮発
性塩基態窒素産生)が知られている。
【0006】一方、上記したように、特開平7ー236
431号公報には、アクレモニウム属の菌が生産するセ
ルラーゼ製剤を用いることにより、良質なサイレージ調
製が困難な生イネワラでも、良好な発酵品質が得られ、
また、動物に供与した場合には消化率が向上することが
知られている。
【0007】しかしながら、その後の実用化研究による
と、アクレモニウム属の菌が生産するセルラーゼ製剤
は、通常用いられるイネ科やマメ科の牧草を用いた数百
トン以上の実規模サイレージを調製した際には、排汁
(ドレイン)が少なからず発生することが判明した。
【0008】このことは、実規模に於いて草にかかる圧
力が大きいことが原因として考えられるが、サイレージ
の発酵品質を改善できる量の酵素(アクレモニウム属の
菌が生産するセルラーゼ製剤)を加えると、牧草を組織
学的に崩壊させる作用が相乗的に強まり、本来動物の栄
養となるべき成分が排汁(ドレイン)として失われ、飼
料価値を低下させることとなり、発酵品質と排汁(ドレ
イン)発生とが、二律背反となることが明らかとなっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、サイ
レージ発酵品質改善能の高いアクレモニウム属の菌が産
生するセルラーゼを用い、しかも排汁(ドレイン)によ
る栄養成分の逸失をきたすことなく、サイレージの発酵
品質改善効果を有する新たなセルラーゼ製剤と、それを
用いたサイレージ調製方法を提供することにある。
【0010】本発明者らは、上記の目的に合致する酵素
製剤とサイレージ調製方法とを開発すべく鋭意検討した
結果、アクレモニウム属に属する菌が生産するセルラー
ゼと、トリコデルマ属に属する菌が生産するセルラーゼ
とを、一定範囲の比率で混合した製剤が、得られるサイ
レージの発酵品質が優れているにもかかわらず、排汁
(ドレイン)生成量が少ないことを見い出し、この知見
に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち、請求項1記載の本
発明は、アクレモニウム(Acremonium)属の菌が生産す
るセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の菌が生
産するセルラーゼとを含有するサイレージ調製用セルラ
ーゼ製剤を提供するものである。
【0012】次に、請求項5記載の本発明は、アクレモ
ニウム(Acremonium)属の菌が生産するセルラーゼとト
リコデルマ(Tricoderma)属の菌が生産するセルラーゼ
とを含有する製剤を用いてサイレージ原料を処理するこ
とを特徴とするサイレージの調製方法を提供するもので
ある。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1記載の本発明のサイレージ調製用セルラーゼ製
剤は、アクレモニウム(Acremonium)属の菌が生産する
セルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の菌が生産
するセルラーゼとを含有するものである。
【0014】ここでアクレモニウム(Acremonium)属に
属する菌としては、例えばアクレモニウム・セルロリテ
ィカス(Acremonium cellulolyticus )を好適なものと
して挙げることができる。
【0015】このようなアクレモニウム属の菌が生産す
るセルラーゼは、例えば特公昭60−43945号公報
に記載された方法に従って製造することができる。この
際、培養後、遠心分離等により除菌して得られた上澄み
液を更に限外濾過法により濃縮し、スプレードライ法に
より水分を除去すれば、粉末製剤を得ることができる。
なお、スプレードライの際、上澄み液に更に乳糖、澱
粉、澱粉の部分分解物又はグルコースなどを添加するこ
とにより、プロセス収率の改善や、得られた粉末製剤の
物性、例えば溶解性や安定性の改善が期待される。
【0016】一方、トリコデルマ(Tricoderma)属に属
する菌としては、例えばトリコデルマ・ビリデ(Tricod
erma viride)やトリコデルマ・レーゼイ( Trichoderma
reesei)などが挙げられ、これらを単独で、或いは二種
類以上を併用することもできる。
【0017】このようなトリコデルマ(Tricoderma)属
に属する菌が生産するセルラーゼを製造するには、一般
的な方法、例えば上述のアクレモニウム属の菌が生産す
るセルラーゼの製造方法等に従って行えば良い。
【0018】請求項1記載の本発明のサイレージ調製用
セルラーゼ製剤は、上述の如きアクレモニウム(Acremo
nium)属の菌が生産するセルラーゼ(以下、しばしばA
CCと略す。)とトリコデルマ(Tricoderma)属の菌が
生産するセルラーゼ(以下、しばしばTVCと略す。)
とを含有するものである。
【0019】ここでアクレモニウム(Acremonium)属の
菌が生産するセルラーゼ、即ちACCと、トリコデルマ
Tricoderma)属の菌が生産するセルラーゼ、即ちTV
Cのうちのいずれか一方のみを用いたとしても、本発明
の目的を達成することはできない。即ち、ACCのみを
用いた場合には、排汁(ドレイン)の生成量が多く、サ
イレージの栄養価を低下させてしまう。一方、TVCの
みを用いた場合には、pHが高くなり、発酵品質の優れ
た良質なサイレージを得ることができない。
【0020】請求項1記載の本発明のサイレージ調製用
セルラーゼ製剤は、通常、アビセラーゼ活性比で、前者
(ACC)1に対して、後者(TVC)0.1〜9.0
の割合で、好ましくはアビセラーゼ活性比で、前者(A
CC)1に対して、後者(TVC)0.2〜4.0の割
合で配合してなるものである。前者(ACC)の比率が
1:0.1以上に高まると、排汁(ドレイン)が顕著に
増加してしまい、一方、前者(ACC)の比率が1:
9.0以下になると、発酵品質が低下してしまうため、
いずれも好ましくない。
【0021】ここで、ACCとTVCの配合比率を規定
するアビセラーゼ活性は、pH4.5(50mM酢酸緩
衝液)、結晶性セルロースを基質とし、温度50℃で行
い生成還元糖量をDNS法(IUPAC規定方法)によ
り測定し、1分間に1マイクロモルのグルコース相当の
還元力の増加を有する活性を1単位とした。
【0022】但し、ACCとTVCの配合比率は、対象
とするサイレージ原料の種類等により若干異なるが、ア
ビセラーゼ活性比で、ACC:TVC=1:0.1〜
9.0、好ましくはACC:TVC=1:0.2〜4.
0である。
【0023】請求項1記載の本発明のサイレージ調製用
セルラーゼ製剤は、酵素の剤型としては上述の如き粉末
製剤をそのまま用いることも可能であるが、小麦粉など
を賦型剤にして混ぜ易い製剤としたものを用いても良
い。ここで賦型剤としては、例えば小麦粉、大豆粉、澱
粉、澱粉の部分分解物、グルコース、乳糖、米糠、フス
マなどを用いることができる。賦型剤の添加量は、原料
草へのセルラーゼ粉末製剤の設定添加量及び原料草への
添加作業の操作性を考慮すると、通常、セルラーゼ粉末
製剤の10〜100倍量の範囲が適当である。
【0024】また、請求項1記載の本発明のサイレージ
調製用セルラーゼ製剤としては、このような粉末製剤の
他、この粉末製剤を必要量水に溶解した液剤や、セルラ
ーゼ製造時に粉末化することなく、限外濾過法による濃
縮液より調製した液剤及び該液剤を適宜希釈した液剤で
も良い。液状製品は、限外濾過濃縮液に、通常は、安定
化剤としてソルビトールや還元マルトオリゴ糖類などの
糖アルコール類を添加し、保存剤として安息香酸やその
誘導体又はプロピオン酸などを添加して製造される。
【0025】なお、請求項1記載の本発明のサイレージ
調製用セルラーゼ製剤は、必要に応じて、ラクトバチル
ス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ペディオコ
ッカス属の乳酸菌等からなる製剤及び/又はプロピオニ
バクテリウム属等の酸生成菌からなる製剤と併用するこ
とができる。この場合には、相乗作用による一層の品質
改善効果がある。
【0026】次に、請求項5記載の本発明は、上記の如
き請求項1記載の本発明の製剤で、サイレージ原料を処
理することを特徴とするサイレージの調製方法である。
【0027】ここでサイレージ原料としては、通常のサ
イレージに用いられる牧草、飼料作物、製造副産物、農
業副産物、飼料等の全てが対象となる。まず牧草として
は、例えば、イネ科牧草としては、チモシー、オーチャ
ードグラス、イタリアンライグラス、ペレニアルライグ
ラス、メドウフェスク、ギニアグラス等を用いることが
でき、マメ科牧草としては、アルファルファ、クローバ
等を用いることができる。次に、飼料作物としては、ト
ウモロコシ、ソルガム、大麦、ライムギ、ライコムギ等
を用いることができ、また、製造副産物としては廃糖
蜜、酢粕、ビール粕、トウフ粕、ミカン粕、焼酎粕等を
用いることができる。さらに、農業副産物としては、麦
藁、ビートトップ、ビートパルプ等を用いることができ
る。また、サイレージ原料としての飼料は、通常、発酵
飼料に使用される単味飼料及び配合飼料や濃厚飼料、こ
れら飼料と粗飼料とを混合した混合飼料等を用いること
ができる。
【0028】サイレージ原料として牧草、飼料作物を用
いる場合は、原料草を刈り取り、そのまま用いるか、或
いは刈り取った後、1〜2日間放置して部分的に乾燥さ
せて用いる。この場合、原料草中の水分は50〜85
%、好ましくは60〜80%に調整する。その後、これ
らの原料草は、カッターなどで数センチメートル程度乃
至サイレージの方式に合わせた長さに切断してから用い
ることもできる。次に、製造副産物、農業副産物、原料
飼料等の場合も、水分を上記の範囲に調整した後、用い
ることができる。
【0029】なお、サイレージの方式は、タワーサイ
ロ、バンカサイロ、スタックサイロ、ロールベール方
式、スチールやプラスチック容器を用いる方法など様々
な方式を適用できるが、気密性の高いものが好ましい。
【0030】ところで、サイレージの発酵品質に大きく
影響を与える因子としては、水分を挙げることができ
る。水分は、通常、50〜85%、好ましくは60〜8
0%に調整する。また、発酵温度もサイレージ品質に大
きな影響を与える。発酵品質保持、排汁(ドレイン)防
止の観点から、貯蔵温度は30゜C以下、好ましくは2
5゜C以下にするのが良い。そして、貯蔵中の好気性菌
による変敗を抑制するため、容器を密閉し、嫌気度を高
めるのが基本である。さらに、サイレージ品質の安定や
開封後の好気的変敗を抑制する上で、原料草を詰め込ん
で密封したサイレージは、通常、少なくとも1ヶ月間以
上、好ましくは45日間以上貯蔵・熟成させることが望
ましい。
【0031】請求項5記載の本発明は、前記した如き請
求項1記載の本発明のサイレージ調製用セルラーゼ製剤
を用いて、上記の如きサイレージ原料を処理することを
特徴とするものであり、具体的には、前記した如き請求
項1記載の本発明のサイレージ調製用セルラーゼ製剤を
上記の如きサイレージ原料に添加して、これを処理する
ことを特徴とするものである。
【0032】ここで請求項1記載の本発明のサイレージ
調製用セルラーゼ製剤をサイレージ原料に添加する時期
としては、牧草や飼料作物等の場合は、刈り取りから、
適当な長さに切断した原料草をサイロに詰め込み鎮圧ま
での作業時に添加することができる。また、その他の材
料の場合は、これをサイロに詰め込み鎮圧までの作業時
に添加することができる。添加方法としては、粉剤を散
布、混合しても良いし、液剤を噴霧しても良い。
【0033】サイレージ原料に対する請求項1記載の本
発明のサイレージ調製用セルラーゼ製剤の添加量、即
ち、上記ACCとTVCの混合物の添加量は、アビセラ
ーゼ活性で、原料新鮮物重量1kg当たり、5〜300
単位(U)、好ましくは10〜200単位(U)であ
る。サイレージ原料に対する上記ACCとTVCの混合
物の添加量が、アビセラーゼ活性で、原料新鮮物重量1
kg当たり、5U/kg未満であると、サイレージとし
て発酵が不完全となりやすく、一方、300U/kgを
越えると、排汁(ドレイン)の増加や、コストパフォー
マンスの面から望ましくない。
【0034】なお、発酵品質、即ち得られたサイレージ
の品質としては、pHが低く、乳酸産生量は高く、酪酸
産生量は少なく、揮発性塩基態窒素分の全窒素に対する
比率が低い方が良いとされている。ここで、低いpH及
び乳酸産生量の増加は乳酸菌の増殖の、酪酸産生量の増
加は酪酸菌の増殖の、揮発性塩基態窒素分の全窒素に対
する比率の増加は蛋白質分解菌の増殖の、それぞれ指標
と考えられる。
【0035】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明す
る。 実施例1 (1)アクレモニウム属由来のセルラーゼ粉末の調製 アクレモニウム属由来のセルラーゼ製剤を得るため、生
産培養を行った。培地は、全て以下の組成よりなる培地
を常法により加熱殺菌したものを用いた。
【0036】〔培地組成〕セルロース4%、燐酸水素二
カリウム0.16%、バクトペプトン1%、硝酸カリウ
ム0.6%、尿素0.2%、塩化カリウム0.16%、
硫酸マグネシウム・7水塩0.12%、硫酸亜鉛・7水
塩0.001%、硫酸マンガン・7水塩0.001%、
硫酸銅・5水塩0.001%(pH4.0)。
【0037】上記培地500mLに、アクレモニウム・
セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus TN)
(FERM BP-685)を接種し、48時間撹拌し培養した。次
に、その培養液をシードとして15リットル培養に、更
にスケールアップを続け、最終的に600リットルタン
クで300リットルの通気培養を7日間行った。得られ
た培養液をフィルタープレスにより濾過後、ろ液を限外
濾過装置により15リットルまで濃縮し、乳糖2Kgを
添加してスプレードライヤーを用い、粉末化した。この
結果、アビセラーゼ活性851単位/gのセルラーゼ粉
末を5.0kg得ることができた。
【0038】(2)トリコデルマ属由来のセルラーゼ粉
末の調製 一方、トリコデルマ属由来のセルラーゼ製剤を得るた
め、生産培養を行った。培地は、全て上記した如き培地
を、常法により加熱殺菌したものを用いた。
【0039】上記培地500mLに、トリコデルマ・レ
ーゼイ(Trichoderma reesei MC-101 )(FERM P-1465
0)を接種し、48時間撹拌し培養した。次に、その培
養液をシードとして15リットル培養に、更にスケール
アップを続け、最終的に600リットルタンクで300
リットルの通気培養を7日間行った。得られた培養液を
フィルタープレスにより濾過後、ろ液を限外濾過装置に
より15リットルまで濃縮し、乳糖2kgを添加してス
プレードライヤーを用い、粉末化した。この結果、アビ
セラーゼ活性530単位/gのセルラーゼ粉末を9.0
Kg得ることができた。
【0040】(3)アクレモニウム属由来のセルラーゼ
粉末とトリコデルマ属由来のセルラーゼ粉末との混合粉
末製剤の調製 次いで、アクレモニウム属由来のセルラーゼ粉末(AC
C)とトリコデルマ属由来のセルラーゼの粉末(TV
C)とを、アビセラーゼ活性比で、ACC:TVCが、
それぞれ1:1、1:2、1:3、1:4となるように
秤量し、充分に混合して混合粉末製剤を調製した。
【0041】得られた混合粉末製剤(ACCとTVCが
1:1のもの)の各種酵素活性値は、次の表1に記載し
た通りであった。各種酵素活性測定は、ペクチナーゼ以
外は、pH4.5(50mM酢酸緩衝液)、温度50℃
の条件で行い、生成還元糖量をDNS法(IUPAC規
定方法)により測定し、1分間に1マイクロモルのグル
コース相当の還元力の増加を有する活性を1単位とし
た。また、ペクチナーゼの活性測定は、pH4.5(5
0mM酢酸緩衝液)、温度25℃の条件で行い、ペクチ
ン(1%)の粘度が1秒間に初発粘度の75%に低下さ
せる活性を1単位として定義した。
【0042】
【表1】
【0043】実施例2 0.01Mの酢酸緩衝液(pH4.5)で、サイレージ
原料1kg当たり50Uの添加量に相当するように所定
の混合割合(ACC:TVC=1:49〜1:0.0
5)に調整したACC−TVC合剤を溶解した液1ml
と、牧草を凍結乾燥させた後、0.1mmの遠心型粉砕
器で粉砕した粉末(牧草乾燥粉末)0.2gとを、試験
管内で混合し、25℃において2時間反応させた。反応
停止後、0.01Mの酢酸緩衝液(pH4.5)を2m
l加え、遠心(3000rpm、10分)後、上清を蒸
留水で30倍に希釈した。この液について、DNS法で
還元糖を測定し、酵素の添加及び25℃、2時間の反応
を除いて同様の処理をしたものをブランクとして、その
差を牧草粉末1g当たりから生成された還元糖とし、こ
の結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】表2の結果から、ACC:TVC=1:0.
1〜1:9の混合比率において、TVC単独及びACC
単独の場合よりも糖生成力が多いことが分かる。
【0046】実施例3 0.01Mの酢酸緩衝液(pH4.5)で所定の添加量
(サイレージ原料1kg当たり1〜500U)となるよ
うにACC−TVC(1:1)合剤を溶解した液1ml
と、実施例2と同様に調製した牧草乾燥粉末0.2gと
を、試験管内で混合し、25℃で2時間反応させた。以
下、実施例2と同様の方法により還元糖の生成量を測定
し、この結果を表3に示した。
【0047】
【表3】
【0048】第3表の結果から、チモシー、アルファル
ファとも、5U/kg以上の添加の場合、還元糖の生成
が顕著であることが分かる。
【0049】実施例4 牧場で栽培した牧草(チモシー1番草)に乳酸菌(Lact
obacillus casei subsp. rhamnosus SBT-2300)株( FE
RM-P-13245 )、105 cfu/g・原料草新鮮物重)の
みを散布した実験区(対照区)、ACC酵素製剤溶液
(53U/kg・原料草新鮮物重)と乳酸菌とを散布し
た実験区(ACC区)、実施例1記載のACC−TVC
混合粉末製剤溶液(53U/kg・原料草新鮮物重)と
乳酸菌とを散布した実験区(実験区1〜4)、及びTV
C酵素製剤溶液(53U/kg・原料草新鮮物重)と乳
酸菌とを散布した実験区(TVC区)を設け、各処理区
のn数は2とした。ハーベスターで収穫した牧草をカッ
ターで2〜3cmに切断したものを200kgずつ計量
し、乳酸菌及び酵素を均一に混合後、300リットルの
プラスティックサイロに詰め込み、ビニールフィルムで
密封した。1ヶ月間貯蔵後、開封し、得られたサイレー
ジの品質を分析した。なお、得られた7種のサイレージ
の乾物量は、全て約20%であった。
【0050】サイレージの品質は、次のようにpH、排
汁、有機酸組成(乳酸、酢酸、酪酸など)等を測定する
ことにより、評価した。即ち、サイレージを3倍量の蒸
留水で抽出した後、pHはガラス電極法により、乳酸は
酵素法により、他の有機酸はガスクロマトグラフィーに
より、それぞれ測定した。また、排汁については、10
0mlの遠心管に一定量の砂、ガーゼ、検体10gの順
に詰めて、500G、10分間の遠心後の検体の減少重
量より求め、それを以下の式により排汁指数として示し
た。この結果を表4に示す。
【0051】
【数1】・排汁指数(%)=〔(実験区排汁−対照区排
汁)/(ACC区排汁−対照区排汁)〕×100
【0052】
【表4】
【0053】表4に示すように、pHは、対照区、TV
C区に比べてACC区の値が低く、ACC−TVC混合
粉末製剤区(実験区1〜実験区4)は、いずれもACC
区と同等であった。次に、発酵品質を著しく低下させる
酪酸は、対照区、TVC区で検出されたがACC区及び
ACC−TV混合粉末製剤区(実験区1〜実験区4)で
は検出されなかった。また、排汁指数から判断すると、
サイレージの栄養価を低下させる排汁の生成量は、対照
区、TVC区に比べてACC区が多いことが分かる。し
かし、ACC−TVC混合粉末製剤区(実験区1〜実験
区4)の排汁の生成量は、いずれもACC区に比べて、
かなりの割合で減少することが分かる。
【0054】以上の傾向をまとめると、ACC−TVC
混合粉末製剤(実験区1〜実験区4)は、ACC区と同
等に発酵品質が改善され、排汁の生成量はACC区より
も少ないことが分かる。
【0055】実施例5 実施例4で調製したサイレージを用いて、搾乳牛による
採食試験を行った。すなわち、搾乳牛24頭を4群(各
群6頭ずつ)に分け、各群の搾乳牛の前にTVC区と実
験区のサイレージ(実験区1〜4のもの)とを、それぞ
れ別々のコンテナに1kgずつ入れて同時に給与した。
搾乳牛に4分間自由摂取させ、各群6頭の平均採食量を
測定した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】実施例6 実施例4で調製したサイレージを用いて、搾乳牛による
採食試験を行った。すなわち、搾乳牛24頭を4群(各
群6頭ずつ)に分け、各群の搾乳牛の前にACC区と実
験区のサイレージ(実験区1〜4のもの)とを、それぞ
れ別々のコンテナに1kgずつ入れて同時に給与した。
搾乳牛に4分間自由摂取させ、各群6頭の平均採食量を
測定した。結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】表5及び表6の結果より、本発明のサイレ
ージ調製用セルラーゼ製剤により得られたサイレージ
(実験区1〜4)は、従来のTVC単独処理で得られた
サイレージ(TVC区)、及びACC単独処理で得られ
たサイレージ(ACC区)と比べ、明らかに採食量が多
いことが分かる。従って、表4の結果などと考え合わせ
ると、本発明のサイレージ調製用セルラーゼ製剤によれ
ば、発酵品質が高く、しかも排汁(ドレイン)による栄
養成分の逸失がないばかりでなく、牛の嗜好に合ったサ
イレージが得られると考えられ、飼料価値が高いもので
あると認められる。
【0060】実施例7 牧場で栽培した牧草(チモシー1番草)に実施例4記
載の乳酸菌(105 cfu/g・原料草新鮮物重)のみ
を散布した実験区(対照区)と、牧場で栽培した牧草
(チモシー1番草)に実施例1記載のACC−TVC混
合粉末製剤溶液(配合比1:1、アビラーゼ活性で1
3.3、26.5、53.0、106.0U/kg・原
料新鮮物重)と乳酸菌とを散布した実験区(実験区A〜
D)と、牧場で栽培した牧草(チモシー1番草)に実
施例4記載のTVC酵素製剤溶液(0.01%)と乳酸
菌とを散布した実験区(TVC区)とを設け、各処理区
のn数は2とした。ハーベスターで収穫した牧草をカッ
ターで2〜3cmに切断したものを200kgずつ計量
し、乳酸菌及び酵素を均一に混合した後、300リット
ルのプラスティックサイロに詰め込み、ビニールフィル
ムで密封した。1ヶ月間貯蔵後、開封し、得られたサイ
レージの品質を分析した。得られた6種のサイレージの
乾物量は全て約20%であった。この結果を表7に示
す。
【0061】
【表7】
【0062】表7に示すように、ACC−TVC混合粉
末製剤区(実験区A〜実験区D)のpHは、対照区に比
べて、いずれも低かった。ACC−TVC混合粉末製剤
区(実験区A〜実験区D)では、散布量の増加に伴い、
pHはより低下し、乳酸含量は増加した。また、ACC
−TVC混合粉末製剤区(実験区A〜実験区D)は、少
ない酵素の添加量(TVC区の1/4の活性量)で、T
VC区と同等のサイレージ品質が得られた。
【0063】
【発明の効果】請求項1記載の本発明のサイレージ調製
用セルラーゼ製剤は、アクレモニウム属に属する菌が生
産するセルラーゼと、トリコデルマ属に属する菌が生産
するセルラーゼとを、一定範囲の比率で混合したもので
あって、得られるサイレージの発酵品質が優れているに
もかかわらず、排汁(ドレイン)生成量が少ないもので
ある。
【0064】即ち、請求項1記載の本発明のサイレージ
調製用セルラーゼ製剤は、サイレージ発酵品質改善能の
高いアクレモニウム属の菌が産生するセルラーゼを用
い、しかもドレインによる栄養成分の逸失をきたすこと
なく、サイレージの発酵品質改善効果を保持している。
【0065】また、請求項1記載の本発明のサイレージ
調製用セルラーゼ製剤は、少ない酵素(セルラーゼ活
性)の添加量で、サイレージの発酵品質を改善すること
ができる。
【0066】さらに、請求項5記載の本発明のサイレー
ジ調製方法は、サイレージ発酵品質改善能が高く、しか
もドレインによる栄養成分の逸失が少ない。このように
して得られたサイレージは、発酵品質が高く、しかもド
レインによる栄養成分の逸失が少なく、飼料価値が高い
ものである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年3月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】 −1)(FERM P−14650)を接種し、48時
間撹拌し培養した。次に、その培養液をシードとして1
5リットル培養に、更にスケールアップを続け、最終的
に600リットルタンクで300リットルの通気培養を
7日間行った。得られた培養液をフィルタープレスによ
り濾過後、ろ液を限外濾過装置により15リットルまで
濃縮し、乳糖2kgを添加してスプレードライヤーを用
い、粉末化した。この結果、アビセラーゼ活性530単
位/gのセルラーゼ粉末を9.0Kg得ることができ
た。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正内容】
【0049】実施例4 牧場で栽培した牧草(チモシ−1番草)に乳酸菌(La
ctobacillus casei subsp.
hamnosus SBT−2300)株(FERM
P−13245)、10cfu/g・原料草新鮮物
重)のみを散布した実験区(対照区)、ACC酵素製剤
溶液(53U/kg・原料草新鮮物重)と乳酸菌とを散
布した実験区(ACC区)、実施例1記載のACC−T
VC混合粉末製剤溶液(53U/kg・原料草新鮮物
重)と乳酸菌とを散布した実験区(実験区1〜4)、及
びTVC酵素製剤溶液(53U/kg・原料草新鮮物
重)と乳酸菌とを散布した実験区(TVC区)を設け、
各処理区のn数は2とした。ハーベスターで収穫した牧
草をカッターで2〜3cmに切断したものを200kg
ずつ計量し、乳酸菌及び酵素を均一に混合後、300リ
ットルのプラスティックサイロに詰め込み、ビニールフ
ィルムで密封した。1ヶ月間貯蔵後、開封し、得られた
サイレージの品質を分析した。なお、得られた7種のサ
イレージの乾物量は、全て約20%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:885) (72)発明者 山辺 倫 茨城県つくば市東1−1−3 工業技術院 生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 浜谷 徹 埼玉県坂戸市千代田5−3−1 明治製菓 株式会社生物科学研究所内 (72)発明者 河野 敏明 埼玉県坂戸市千代田5−3−1 明治製菓 株式会社生物科学研究所内 (72)発明者 窪田 英俊 神奈川県川崎市幸区堀川町580 明治製菓 株式会社内 (72)発明者 三浦 俊治 北海道江別市西野幌36番地1 雪印種苗株 式会社技術研究所内 (72)発明者 北村 亨 北海道江別市西野幌36番地1 雪印種苗株 式会社技術研究所内 (72)発明者 山下 征夫 北海道江別市西野幌36番地1 雪印種苗株 式会社技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクレモニウム(Acremonium)属の菌が
    生産するセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の
    菌が生産するセルラーゼとを含有するサイレージ調製用
    セルラーゼ製剤。
  2. 【請求項2】 アクレモニウム(Acremonium)属の菌が
    生産するセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の
    菌が生産するセルラーゼとを、アビセラーゼ活性比で、
    前者1に対して、後者0.1〜9.0の割合で配合して
    なる請求項1記載のサイレージ調製用セルラーゼ製剤。
  3. 【請求項3】 アクレモニウム(Acremonium)属の菌
    が、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium
    cellulolyticus )である請求項1〜2記載のサイレージ
    調製用セルラーゼ製剤。
  4. 【請求項4】 トリコデルマ(Tricoderma)属の菌が、
    トリコデルマ・ビリデ(Tricoderma viride)及び/又は
    トリコデルマ・レーゼイ( Trichoderma reesei)である
    請求項1〜3記載のサイレージ調製用セルラーゼ製剤。
  5. 【請求項5】 アクレモニウム(Acremonium)属の菌が
    生産するセルラーゼとトリコデルマ(Tricoderma)属の
    菌が生産するセルラーゼとを含有する製剤を用いてサイ
    レージ原料を処理することを特徴とするサイレージの調
    製方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001231465A (ja) * 2000-02-24 2001-08-28 Natl Inst Of Advanced Industrial Science & Technology Meti 反芻動物の飼料用酵素剤
JP2010110742A (ja) * 2008-11-10 2010-05-20 Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd 発酵残渣濃縮液の製造方法及び飼料の製造方法
JP2020184937A (ja) * 2019-05-15 2020-11-19 雪印種苗株式会社 セルロース分解能増強組成物及びセルロース分解能増強変異株

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JP2020184937A (ja) * 2019-05-15 2020-11-19 雪印種苗株式会社 セルロース分解能増強組成物及びセルロース分解能増強変異株

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