JPH09224706A - 抗菌性履物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 履物に足を装着した場合、足裏面が履物にあ
たる部分に対して、抗菌処理した素材を使用することに
より、足表面の汗や足表面があたる履物の個所における
細菌の付着，繁殖、特に水虫の原因である白癬菌の活動
を抑え、履物内部を衛生的な状態に保ち、快適な履き心
地を提供することを目的とする。 【構成】 前記抗菌剤が、履物内部の環境を浄化する乳
酸菌，光合成菌，酵母菌，放線菌，麹菌等の有用微生物
群から生成される抗酸化酵素を粘土に混ぜ、焼成してセ
ラミックス化したことを特徴とする抗菌性履物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】履物の履用において、履用による
足部の臭気の発生や水虫に悩む人のための履物で、特段
足の悩みの無い人でも靴の内部環境を衛生状態に保ち、
快適な履き心地を付与する履物を提供するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の抗菌性を有する履物には、履物を
構成する素材、例えば中底，中敷，甲被材，内装材に種
々の抗菌剤を処理したり、銅イオン，銅繊維等を使用し
たものが知られているが、白癬菌に対して殆ど効果がな
いのが現状である。又、一方、効果のある抗菌剤も数種
類は知られているが、毒性，皮膚刺激性が高く安全性に
問題があり、使用できないのが実情である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】一般的に履物を履用す
ると、履用によって足が発汗し、履物内部の中底，中
敷，甲被裏材，内装材等に汗が吸収され、汗の成分が溜
まると微生物の働きによってこれらの汗の成分が分解
し、不快臭を放つようになる。不快臭を軽減する為には
微生物の働きを抑制することが肝要である。

【０００４】特に水虫罹病の人については、足裏の皮下
に生息する白癬菌の活動が靴内の環境が高温，高湿にな
る程活発化し、しかも汗の成分が白癬菌の栄養源とな
り、さらに活動を促進することとなり、水虫の症状をさ
らに拡大することとなる。汗の成分を分解する微生物
や、白癬菌の活動を抑制する為の有効な手段が求められ
ているが、履物は人体の足の皮膚と直接接触する為、毒
性や皮膚刺激性のない安全なものを使用することが求め
られている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】一つ又は複数の部品又は
部材に抗菌剤を添加した履物において、前記抗菌剤が蘇
生型の好気性微生物群と嫌気性微生物群とを混合共存さ
せた培養生成物より得られた抗酸化酵素を主成分とする
ものであることを特徴とする抗菌性履物を提供すること
にある。

【０００６】

【実施の形態】本発明の抗菌性履物に使用される抗菌剤
は、農業分野における微生物の培養物を利用して、堆肥
の腐熟促進，土壌の改良，肥効の増進，残留農薬の無害
化，病害微生物を抑制する資料を製造する方法が研究さ
れる中から生み出された物である。

【０００７】自然界に生息する微生物を大別すると、蘇
生型の微生物と崩壊型の微生物の二つがあり、蘇生型の
微生物が繁殖する環境においては、全てのものが生き生
きとし、健全な状態を維持するような働きを示す傾向に
ある。例えば、土の中で蘇生型の微生物が優勢なところ
では、植物が驚くほどすくすく育ち、病気にもかかりに
くく、害虫も寄りつきにくく、農薬や化学肥料を殆ど必
要としない、良い土壌環境となる傾向がある。

【０００８】逆に崩壊型の微生物が存在すると、腐敗分
解を生じ、病気が発生し、全てのものに悪影響を及ぼす
方向に進む傾向がある。例えば、土の中を崩壊型の微生
物が支配すると、植物は病気がちで弱々しく、害虫が集
まってきて、農薬や化学肥料の支えがなければまともに
育ちにくい土壌環境となりやすい。

【０００９】前述の蘇生型の微生物は人類にとって有用
であり、「有用微生物群」（Ｅｆｆｅｃｔｉｖｅ Ｍｉ
ｃｒｏ−ｏｒｇａｎｉｓｍｓ）と命名されている。有用
微生物群には好気性微生物と嫌気性微生物があり、この
二つをうまく組み合わせた有用微生物群、例えば嫌気性
タイプの光合成菌，乳酸菌等と好気タイプの酵母菌，麹
菌等とを集めて土の中で増殖させると、抗酸化物質のレ
ベルが高くなるため、エネルギーの立体的な集約化、即
ち蘇生の構造となり、土中の空気や水も浄化され、植物
が健全な状態となることが確認されている。

【００１０】又、土壌微生物においては、一般に好気性
菌は善玉、嫌気性菌は悪玉と解釈されてきたが、有用微
生物群を構成する乳酸菌や光合成菌は嫌気性のグループ
に属するにもかかわらず、それらの菌の生成物は病原抑
制効果が高いことが確かめられている。

【００１１】本願発明に使用する抗菌剤は、前述の様に
自然界に生息する微生物のうち、蘇生型の好気性微生物
と嫌気性微生物とを混合し共存させて培養することによ
り生成された培養物の中から抽出された病原抑制効果の
高い抗酸化酵素を主成分とするものである。前記抗酸化
酵素を粘土に混ぜて還元状態にしながら、セ氏７００度
以上の高温で焼成し、セラミックスに担持させたもので
ある。

【００１２】蘇生型の嫌気性微生物のうち光合成菌の一
部にはセ氏１０００度以上でも情報転写し、失活しない
ものが存在し、本発明ではこれらの微生物より生成する
抗酸化酵素を前述の方法により、セラミックスに担持さ
せているので抗酸化作用を失なわず、従来の方法が微生
物をセラミックスに含浸させて、生物触媒的に使ってい
るために急激な微生物の減少と、効果が長続きしない欠
点を有するものに対し、長期間に亘って病原抑制効果を
受容できることとなるものである。

【００１３】本発明の抗菌性履物を構成する部品に、抗
菌剤を添加する対象としては以下の３種に大別される。
初めに、中底又は中敷を構成する足裏があたる面の布
帛、甲被を構成する甲裏布、長靴の内装材としての布帛
を第一の対象とする。次に、中底又は中敷を構成する足
裏があたる面の布帛の裏面に塗布される接着剤、甲被の
表布と裏布を貼着する接着剤、長靴の内装剤のうち足の
あたる方の布帛の裏側に塗布される接着剤を第二の対象
とする。最後に長靴の本体を構成するゴム又はプラスチ
ック等の材料を第三の対象とする。

【００１４】第一の対象、即ち布帛に抗菌剤を添加する
方法として、前記布帛を構成する繊維に対して目安とし
て３重量％，紡糸段階で添加される。布帛の繊維に添加
された抗菌剤は直接足部と接触し、有害な微生物や白癬
菌に対して抗酸化作用を及ぼす。第二の対象、即ち接着
剤に抗菌剤を添加する方法として、接着剤の固形分に対
して前記抗菌剤が担持されたセラミックスの粉末が３〜
１０重量％，加えられ、セラミックスの粉末は接着剤に
分散することを考慮して粒径７０ミクロン以下のものが
使用される。

【００１５】前記セラミックス粉末の添加量は３重量％
以上であれば、抗菌性の効果は十分あるが、１０重量％
を超えると接着力が著しく低下するので、１０重量％を
超えないことが望ましい。

【００１６】又、第二対象に適用される接着剤を塗布さ
れる布帛は、できるだけ目の粗い布が良く、布帛の隙間
を介して前記接着剤に混入された抗菌剤が足部と接触す
ることにより作用しやすくなる。

【００１７】第三の対象として長靴の本体（胴部，中底
部，底部等）を構成するゴム又はプラスチック等の射出
成形物に抗菌剤を添加する場合、ゴム又はプラスチック
等の射出成形用配合物に対して、前記抗菌剤が担持され
たセラミックスの粉末が射出成形用配合物に対して３重
量％を目安として添加される。

【００１８】前記のセラミックスの粉末は射出成形用配
合物に添加され、１７０〜２２０℃の高温度で可塑化さ
れても、抗酸化酵素の働きを失うことなく、射出成形後
においても抗酸化性能が失活することがない。又、セラ
ミックスの粉末となっている為、射出成形用配合物への
分散が良好である。長靴の本体の内側に内装される布帛
は、できるだけ目の粗い編布等が良く、抗菌剤が布帛の
隙間より露出し、足に直接接触することにより、抗酸化
作用を発揮する。

【００１９】

【実施例１】実施例に使用する抗菌剤は、日本食品工業
（株）より発売されている登録商標「ＥＭＸセラミッ
ク」の粉体である。前記「ＥＭＸセラミック」の粉体
は、有効微生物群の発酵培養によって生成された培養物
より抽出された抗酸化酵素「ＥＭ−Ｘ」を粘土に混入
し、７００℃の温度で還元状態で焼成し、大きさ約３０
０ミクロンに粉砕して、更に微粉化したセラミックス粉
体「ＥＭＸセラミック」である。

【００２０】実施例１は布靴の甲被を構成する甲表布
と、甲裏布の貼り合わせに使用する接着剤に添加するも
ので、前記「ＥＭＸセラミック」の粉体を接着剤の固形
分１００重量部に対して３重量％添加し、表１に示す接
着剤を作成した。

【００２１】

【表１】

【００２２】次に甲表布、甲裏布双方に前記接着剤を塗
布し、乾燥後、接着剤面同志を貼り合わせて、この貼り
合わせ素材を所定の型に裁断し、縫製し、靴用甲被を作
成した。この甲被をラストに吊り込み、甲被表の所定の
部分に接着剤を所定量塗布し、底ゴム，回しテープゴム
等の部品を貼着した後、加硫缶に入れて加硫条件１２７
℃でエアー圧３．０kgf/cm² で６０分間熱空気加硫を行
い、未加硫部品の加硫を行い布靴を成形した。

【００２３】

【実施例２】実施例２はポリ塩化ビニル製の射出成形長
靴に適用する場合であり、胴部と中底部を構成するポリ
塩化ビニル配合物に前記「ＥＭＸセラミック」の粉末を
３重量％添加した、表２に示す配合物を得た。

【００２４】

【表２】

【００２５】次に底部を構成するポリ塩化ビニル配合物
には、前記「ＥＭＸセラミック」の粉末を添加しない表
３に示す通常の配合物を得た。

【００２６】

【表３】

【００２７】次に長靴用のラストモールドにウエール数
３８／インチ，コース数３２／インチのナイロントリコ
ットからなる筒状の編布を裁断縫製し、靴下状にした内
装材を吊り込み、さらにボトムモールド，サイドモール
ドを嵌合し、内部形成された長靴成形空隙内の胴部と中
底部及び底部にそれぞれ表２，表３に示す塩化ビニル配
合物を射出温度１８０〜２１０℃で射出成形して、内装
材と一体化し長靴を得た。

【００２８】

【実施例２の長靴の試履試験】実施例２にて成形した長
靴の抗菌性効果を確認する為、水虫や足の臭いに悩む人
を対象に、予め調査の上、男性４人，女性７人の合計１
１人の被験者を選定し、試験的に前記長靴を履用しても
らったところ、６週間目までの聞取り調査では表４に示
すように水虫では殆どの被験者が快方に向かい、足の臭
いについても従来の長靴使用より好ましい結果が得られ
た。

【００２９】

【表４】

【００３０】尚、表５に示す通り「ＥＭＸセラミック」
を配合した表２の配合物の物性は、「ＥＭＸセラミッ
ク」を配合しない従来の配合と比べて何ら遜色なく、長
靴として強度上、実用上問題のないものであった。

【００３１】

【効果】以上の如く、本発明の抗菌性履物を構成する中
底，中敷，胛裏材等の素材に混入されている抗菌剤は、
蘇生型の好気性微生物と嫌気性微生物とを共存させて混
合培養された培養物より抽出された抗酸化酵素を主成分
とするものであるから、本発明の抗菌性履物を履用する
と、抗酸化酵素の抗酸化作用により履物の内側におい
て、汗の成分を腐敗する有害な微生物や、水虫の原因で
ある白癬菌の活動を抑制することができ、履物の内部環
境をクリーンに保ち、悪臭の発生を軽減したり、水虫の
拡大を防止，軽減することができる。

【００３２】本発明に使用される抗酸化物質は、自然界
に生息する蘇生型の微生物の生成物であるから、人体に
悪影響がなく安全である。又、本発明に使用される抗酸
化剤は、前記抗酸化酵素がセラミックに焼成固化されて
おり、高温になっても失活しないことを特徴とする為、
履物を構成する素材に混入しても、長期間持続的に効果
を発揮することができる。

【表５】

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一つ又は複数の部品又は部材に抗菌剤が
   添加されている履物において、前記抗菌剤が蘇生型の好
   気性微生物群と嫌気性微生物群を混合共存させた培養生
   成物より得られた抗酸化酵素が主成分であることを特徴
   とする抗菌性履物。
2. 【請求項２】 前記抗菌剤において、前記抗酸化酵素と
   粘土との混合物が、還元状態で焼成されることによりセ
   ラミックに担持された状態になっていることを特徴とす
   る請求項１記載の抗菌性履物。
3. 【請求項３】 前記蘇生型の微生物群の主体となる微生
   物が、光合成菌，乳酸菌，酵母菌，放線菌，麹菌のうち
   の一つ又は全部で構成されていることを特徴とする請求
   項１〜２記載のうちの何れか一つである抗菌性履物。
4. 【請求項４】 前記一つ又は複数の部品又は部材が、中
   敷，中底，甲被又は内装材のうちの一つまたは複数であ
   ることを特徴とする請求項１〜３記載のうちの何れか一
   つである抗菌性履物。
5. 【請求項５】 前記一つ又は複数の部品又は部材が射出
   成形靴の胴部，中底部，底部等を構成する本体部材であ
   ることを特徴とする請求項１〜３記載のうちの何れか一
   つである抗菌性履物。
6. 【請求項６】 前記一つ又は複数の部品又は部材が、前
   記抗菌剤が添加された接着剤で相互に貼り合わされてい
   ることを特徴とする請求項１〜４記載のうちの何れか一
   つである抗菌性履物。