JPH09224673A - 一対のミニリボザイム、ミニリボザイム・ダイマー、それらによる標的rnaの切断・不活化方法及び薬剤 - Google Patents

一対のミニリボザイム、ミニリボザイム・ダイマー、それらによる標的rnaの切断・不活化方法及び薬剤

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JPH09224673A
JPH09224673A JP8034898A JP3489896A JPH09224673A JP H09224673 A JPH09224673 A JP H09224673A JP 8034898 A JP8034898 A JP 8034898A JP 3489896 A JP3489896 A JP 3489896A JP H09224673 A JPH09224673 A JP H09224673A
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dimer
target rna
miniribozyme
minizyme
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Kazumasa Tahira
和誠 多比良
Satoshi Nishikawa
諭 西川
Akira Yamada
亮 山田
Kazunori Hanada
和紀 花田
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Taisho Pharmaceutical Co Ltd
Resonac Corp
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Agency of Industrial Science and Technology
Hitachi Chemical Co Ltd
Taisho Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】一対のミニザイムを混合して形成される活
性リボザイムであって、標的RNAに対しては二箇所の
領域で結合することのできるミニザイム・ダイマー。 【効果】標的RNAの結合領域中に5’−NUX−3’
配列がなくとも、標的RNAの他の箇所にNUX配列が
あれば標的RNAを特異的によく切断・失活させること
のできる優れた機能をもつミニザイムを提供できた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子疾患の治療
や診断に有用な一対のミニリボザイム、ミニリボザイム
・ダイマー、それらによる標的RNAの切断・不活化方
法及び薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】チェック(T. Chech)は、酵素活性を有
するRNA分子、すなわちリボザイムを1981年に初
めて発見した。また、ハセロフ(J. Haseloff)とジャ
ーラック(W. L. Gerlach)は、数種の植物ウィルスの
リボザイムの間で共通に保存されている塩基配列に着目
し、リボザイム分子の大きさがわずか22ヌクレオチド
(但し、標的RNA結合領域を除く。)で構成された短
鎖リボザイム(ハセロフとジャーラックのリボザイム
(Haseloff-Gerlach ribozyme)、又はハンマーヘッド
型リボザイムという。)を作製することに成功した(Na
ture, Vol.334, p.585-591(1988);特表平3−5026
38号公報)。
【0003】図1は、ハンマーヘッド型リボザイムとそ
の系統的番号付け、基質(標的RNA)/リボザイム複
合体、標的RNAの切断部位、分子内部位の名称等を示
す模式図である。リボザイムは、標的であるRNA分子
の塩基配列を認識して塩基対を形成する結合領域(ヘリ
ックスI及びヘリックスIII)と、触媒活性部位及びヘ
リックスIIを有する領域から構成されており、標的RN
Aは標的RNA中のGUCの3’側(図1中、矢印で示
す。)で切断される。なお、標的RNAが切断される部
位GUC配列は、他の配列(NUX;但し、NはA、
U、G及びCのいずれでもよく、XはA、U又はCを示
す。)でも切断されることが知られている(いわゆる、
NUXルールと呼ばれる。)。
【0004】一方、リボザイムの活性を維持させたまま
で、ハンマーヘッド型リボザイムよりも更に短いリボザ
イムが得られれば、リボザイムの基礎研究及び応用面で
有用であるため、その研究・開発が盛んになされてい
る。例えば、マッコール(M. J. McCall)らは、ハンマ
ーヘッド型リボザイムのステムIIを完全に欠いても、4
又は5個のヌクレオチド(3個以下のヌクレオチドでは
活性が著しく低い。また、ヌクレオチドはRNAよりも
DNAがほうが好ましい。)から成るループ構造があれ
ば、ハンマーヘッド型リボザイムと同様の活性があると
報告している(Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5710-
5714,1992)。 また、トシュル(T. Tuschl)らは、ル
ープIIの長さを4塩基とし、ステムIIの長さ及びループ
IIの塩基配列の相違がリボザイム活性にどう影響するか
を検討した結果、ステムIIは2塩基対まで短くすること
ができたが、1塩基対又はそれ以下にするとリボザイム
活性は著しく減少すること、リボザイムの活性の発揮に
G(10.1)*C(11.1)塩基対は必須であること、更に
このときの活性リボザイムの大きさは最小のもので18
ヌクレオチド(但し、標的RNA結合領域を除く。)で
あることを報告している(Pro. Natl. Acad. Sci. USA,
90, 6991-6994,1993)。
【0005】しかし、前記マッコールら及びトシュルら
の報告したミニザイムは、その切断活性が一般に知られ
ているハンマーヘッド型リボザイムの活性に比べて著し
く低い。これに対し、本発明者らは、従来のミニザイム
の中でヌクレオチド鎖長が最も短く、かつ一般に知られ
ているハンマーヘッド型リボザイムと殆ど同レベルの切
断活性を示すリボザイム(ミニリボザイム又はミニザイ
ム)を開発した。本発明者らは、このミニザイム(モノ
マー)が標的RNAと結合するときの2次構造を、先
に、図2のように推定した。ミニザイムが図2に示され
るような2次構造をとると推定すると、このミニザイム
にはループII構造もステムII構造も無く、このようなミ
ニザイムがなぜ標的RNA切断能を有するのか、理由は
よく分からなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このミニザイムについ
ての基礎的課題は、主として次の2点であった。 1.図2に示されるような、ループII構造もステムII構
造も欠くミニザイムが標的RNAを切断する機作の解
明。 2.ミニザイムの作用を最大限に発揮させる核酸配列の
設計と安定化。
【0007】いっぽう、ハンマーヘッド型リボザイム等
の従来型リボザイムが、標的RNAを認識してこれを切
断・失活させる条件は、標的RNAの結合領域中に5’
−NUX−3’配列が必ず含まれていること(NUXル
ール)であった。換言すれば、その結合領域中に5’−
NUX−3’配列がなければリボザイムで切断・失活さ
せることは不可能であった。もし、標的RNAの結合領
域中に5’−NUX−3’配列がなくとも、リボザイム
により特異的に標的RNAを切断・失活させることがで
きるならば、遺伝子疾患の診断、治療薬等へのリボザイ
ムの応用範囲は格段に広がるものと期待される。本発明
は、前述の基礎的課題の解決と相俟って、標的RNAの
結合領域中に5’−NUX−3’配列がなくとも、(標
的RNAの他の箇所にNUX配列があれば)標的RNA
を特異的によく切断・失活させることのできる優れた機
能のミニリボザイム、すなわち一対のミニザイムもしく
はミニザイム・ダイマーを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはミニザイム
についての基礎的課題を種々検討しているうちに、次の
ようなことが分かってきた。すなわち、(a)ミニザイ
ム2分子が比較的高濃度に存在する場合は、図2に示さ
れるような構造をとるのではなく、図3に示されるよう
にダイマーを形成して標的RNAを認識し切断するこ
と、(b)形成されたミニザイム・ダイマーの2次構造
は、ハンマーヘッド型リボザイムと類似する構造をもつ
こと、(c)しかし、形成されたミニザイム・ダイマー
はハンマーヘッド型リボザイムとは異なり、標的RNA
との結合領域がダイマー中に2箇所存在すること、等で
ある。本発明は、以上の知見を基礎とし、これを発展さ
せ完成したものである。
【0009】なお、本明細書において用いた記号・略号
は下記の意味である。 A:アデニンモノリボヌクレオチド G:グアニンモノリボヌクレオチド C:シトシンモノリボヌクレオチド U:ウラシルモノリボヌクレオチド dA:アデニンモノデオキシリボヌクレオチド dG:グアニンモノデオキシリボヌクレオチド dC:シトシンモノデオキシリボヌクレオチド dT:チミンモノデオキシリボヌクレオチド *:ワトソン−クリック型塩基対 ┬:チオリン酸エステル結合
【0010】本発明は、先ず、 次の配列(I)で表されるミニザイム
【化5】 15.3 15.2 15.1 14 13 12 2.1 2.2 3'-Q1n…Q1211 A A A G L V Q2122…Q2m-5' (I) と、次の配列(II)で表されるミニザイム
【化6】 15.3 15.2 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-R1n…R1211 W M A G Y A G U C R2122…R2m-5'(II) との組合せからなる、一対のミニザイムである。
【0011】但し、配列(I)及び(II)中、Aはアデ
ニンモノリボヌクレオチド、Gはグアニンモノリボヌク
レオチド、Cはシトシンモノリボヌクレオチド、Uはウ
ラシルモノリボヌクレオチドを示し、Yは、A、G、
C、Uのいずれか任意のモノリボヌクレオチドを示し、
L及びMは、Lが (3')-C-(5')であるときMは(3')-G
-(5')であるか、Lが(3')-CNp-(5')であるときMは
(3')-N'pG-(5')である、いずれかの配列から選ばれ、
ここでNはA、U、G、Cのいずれかを示し、N'はN
に相補的なヌクレオチドを示し、pは1〜10の整数
で、Np及びN'pはそれぞれ異なってもよいNのp個の
ヌクレオチド配列及びN'のp個のヌクレオチド配列を
示し、V及びWは、Vが(3')-AGYAGUC-(5')であ
るときWは(3')-AAG-(5')であり、Vがヌクレオチド
無し、すなわち単なる結合手であるときWも結合手であ
る、いずれかの配列又は結合手から選ばれ、Q及びR
は、標的RNAの核酸塩基に相補するモノヌクレオチド
もしくはモノヌクレオチド類似体であって、A、G、
C、U、アデニンモノデオキシリボヌクレオチド(d
A)、グアニンモノデオキシリボヌクレオチド(d
G)、シトシンモノデオキシリボヌクレオチド(dC)
及びチミンモノデオキシリボヌクレオチド(dT)から
選ばれるモノヌクレオチドで、それらの類似体でもよ
く、配列Q1n…Q1211と配列R1n…R1211、及び
配列Q2122…Q2mと配列R2122…R2mは、互いに
同じであっても異なっていてもよく、m及びnは、整数
を示し、配列(I)及び(II)中の上段の数字は、ミニ
リボザイム中のモノヌクレオチドの位置を示す系統的番
号であり、また3'-Q1n…Q1211A と Q2122…Q
2m-5'の配列、及び3'-R1n…R1211と R2122…R
2m-5'の配列は、標的RNAとの結合領域である。
【0012】ここで、配列(I)、(II)においてLが
(3')-C-(5')、Mが(3')-G-(5')、Vが(3')-AGYA
GUC-(5')、Wが(3')-AAG-(5')ある場合、一対の
ミニザイムは次の配列(I−a)及び(II−a)で表さ
れる。
【化7】 15.3 15.2 15.1 14 13 12 11 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-Q1n…Q1211 A A A G C A G Y A G U C Q2122… Q2m-5' (I−a)
【化8】 15.3 15.2 14 13 12 11 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-R1n…R1211 A A G G A G Y A G U C R2122… R2m-5' (II−a)
【0013】配列(I)、(II)において、Lが(3')-
CNp-(5')、Mが(3')-N'pG-(5')、pが1(すなわ
ち、Lが(3')-CN-(5')でMが(3')-N'G-(5'))で、
NがG、N'がCであり、Vが(3')-AGYAGUC-
(5')、Wが(3')-AAG-(5')の場合、一対のミニザイム
は次の配列(I−b)及び(II−b)で表される。
【化9】 15.3 15.2 15.1 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-Q1n…Q1211 A A A G C G A G Y A G U C Q2122… Q2m-5' (I−b)
【化10】 15.3 15.2 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-R1n…R1211 A A G C G A G Y A G U C R2122… R2m-5' (II−b)
【0014】配列(I)、(II)において、Lが(3')-
CNp-(5')、Mが(3')-N'pG-(5')、pが3(すなわ
ち、Lが(3')-CNNN-(5')でMが(3')-N'N'N'G-
(5'))で、NNNがGCG、N'N'N'がCGCであ
り、Vが(3')-AGYAGUC-(5')でWが(3')-AAG-
(5')の場合、一対のミニザイムは次の配列(I−c)及
び(II−c)で表される。
【化11】 15.3 15.2 15.1 14 13 12 11.1 11.2 10.2 10.1 9 8 7 6 5 3'-Q1n…Q1211 A A A G C G C G A G Y A G 4 3 2.1 2.2 U C Q2122…Q2m-5' (I−c)
【化12】 15.3 15.2 14 13 12 11.1 11.2 10.2 10.1 9 8 7 6 5 3'-R1n…R1211 A A G C G C G A G Y A G 4 3 2.1 2.2 U C R2122…R2m-5' (II−c)
【0015】本発明の一対のミニザイムの好ましいひと
つの形態は、リボザイム・ダイマーが形成されるとき、
そのダイマーの二箇所の結合領域の一方は、標的RNA
に対し結合能を有するがその結合部位を切断しないよう
に設計され、ダイマーの二箇所の結合領域の他方は、標
的RNAに対し結合能を有すると共にその結合部位を切
断するように設計された一対のミニザイム、である。
【0016】ミニザイム・ダイマーが認識する二箇所の
結合領域のうちの一方を、標的RNAと結合能を有する
がその結合部位を切断しないように設計する利点は、 1)リボザイムのいわゆる「NUXルール」に制約され
ることなく、この結合領域を標的RNAとリボザイムの
特異結合に利用できること、 2)この結合部位はリボザイムで切断されないので、ダ
イマー形成が保持され、もう一つの結合部位(切断部位
でもあり、ここではNUXルールが支配する)における
リボザイム本来の切断活性が亢進される、と考えられ
る。
【0017】本発明は、また、 次のミニザイム・ダイマーである。すなわち、前記
配列(I)と前記配列(II)の一対のミニザイムを混合
して形成される活性リボザイムであって、標的RNAに
対しては配列 3'−Q1n…Q1211A R2122…R2m
−5' 及び配列 5'−Q2m…Q22211112…R1n
−3'の二箇所の領域で結合することができる、下記ミニ
ザイム・ダイマー(I/II)である。
【0018】
【化13】 〔式中、*は相補的塩基対を示し、V及びWは、前記と
同じであり、L*Mは、次のいずれかのステム構造を示
す。〕
【0019】
【化14】 C*G、 又は C *G すなわち C*G C*G C*G … C*G Np*N'p N*N'、 N*N' N*N' N*N' N*N'、N*N' N*N' N*N'、 N*N' N*N' N*N' N*N' N*N' N*N' N*N' N*N'
【0020】配列(I)と配列(II)のミニザイムの配
列が全く同じであるとき、形成されるミニザイム・ダイ
マー(I/II)はホモダイマーであり、配列(I)と配
列(II)のミニザイムの配列が異なるときは、形成され
るミニザイム・ダイマー(I/II)は、ヘテロダイマー
である。
【0021】本発明のリボザイム・ダイマーの好ましい
ひとつの形態は、ダイマーが形成されるとき、ダイマー
の二箇所の結合領域の一方は、標的RNAに対し結合能
を有するがその結合部位を切断しないように設計され、
ダイマーの二箇所の結合領域の他方は、標的RNAに対
し結合能を有すると共にその結合部位を切断するように
設計されたミニザイム・ダイマーで、その利点は前述の
とおりである。
【0022】また、本発明は、 前記した一対のミニザイム又はミニザイム・ダイマ
ーを利用する、標的RNAの切断・不活化方法、遺伝子
疾患治療薬あるいは遺伝子疾患診断薬である。
【0023】本発明において、配列(I)又は配列(I
I)中のm及びnの数(すなわち、ミニザイムの結合領
域の長さ)は、それぞれ2以上、好ましくは3〜20の
整数である。2未満ではミニザイムの標的RNAへの特
異性が悪くなり、必要以上に大きな数となるとリボザイ
ム自体を化学合成する際の収率が下がり好ましくない。
【0024】配列(I)又は配列(II)のミニザイムに
おける結合領域のヌクレオチド(すなわち、QやR)配
列は、標的RNAとの特異的結合に関係しリボザイム切
断活性(触媒能)にはあまり関係がない。そのためこの
結合領域のヌクレオチドは、RNAに代えて安定なDN
Aでもよい。また、RNAやDNAに代えて、下記(化
15)
【化15】 〔Bは、アデニン、シトシン、グアニン又はチミンを示
す。〕のペプチド核酸(PNA)等とすることもでき
る。
【0025】また、配列(I)又は配列(II)のミニザ
イムにおける第7番のYは、Uであるときに活性は最も
高いが、血中に多量含まれるRNase A型のリボヌクレ
アーゼの攻撃から保護するため、これをG又はAとして
もよい。
【0026】本発明で用いる一対のミニザイム、及びそ
れを組合せて得られるミニザイム・ダイマーを安定に長
時間保たせるため、上記のように配列の一部をRNAか
らDNAへ替えたり、ペプチド核酸(PNA)等へ替え
る方法は有効な手段のひとつであるが、そのような方法
のほかにモノヌクレオチドのリン酸エステル基又はリボ
ース部分の水酸基を、そのミニザイムの活性を著しく低
下させない範囲で、他の安定な基に置き換えることも有
効である。具体的には、モノヌクレオチドのリン酸エス
テル基をチオリン酸エステル基〔−O−P(=S)(O
H)−O−又は−O−P(=O)(SH)−O−〕やメ
チルホスホネート基〔−O−P(=O)(CH3)−O
−〕等で置き換えたり、モノヌクレオチドのリボース部
分の水酸基をメトキシやアリロキシ等のアルコキシ基、
アミノ基、又はフッ素原子等で置き換えることである。
【0027】配列(I)又は配列(II)のミニザイムの
第3番のC、第4番のU、又は第7番のYのモノリボヌ
クレオチドの3'側のリン酸エステル基はRNase A型
のリボヌクレアーゼにより分解を受けやすい部位なの
で、この部分のリン酸エステル基をチオリン酸エステル
基やメチルホスホネート基等で置き換えることは、特に
有効である。
【0028】配列(I)又は配列(II)のミニザイム、
又は上記のような方法でリボヌクレアーゼ等からの攻撃
を受けにくくした安定化ミニザイム(モノマー)は、基
本的にはいわゆる固相化学合成法のうちの、ベータシア
ノエチルホスホアミダイト法に基礎を置く方法で合成で
きる。メチルホスホアミダイトを用いた場合もチオフェ
ノールによる処理を追加するだけで、安定化ミニザイム
(モノマー)を製造できる。また、全てRNAから構成
されるミニザイムは、ミニザイムRNAをコードするD
NAを化学合成し、これをベクターに挿入し、転写する
ことによって得ることもできる。
【0029】安定化ミニザイムのうち、チオリン酸エス
テル結合型のものにはR型及びS型の立体異性体が存在
するが、これらはR型及びS型のいずれを用いてもよ
く、RS混合型を用いてもよい。
【0030】また、配列(I)又は配列(II)のミニザ
イムの、3'−又は5'−末端の水酸基はリン酸化された
もの、あるいは遊離のもののいずれであってもよい。
【0031】配列(I)と配列(II)(IとIIの配列は
同じであっても異なってもよい。同じである場合に形成
されるダイマーをホモ・ダイマー、異なる場合に形成さ
れるダイマーをヘテロ・ダイマーという。)で表される
ミニザイムが、化13又は図3で示されるような2次構
造をとってその活性を発揮していることは、後述の実施
例における結果から支持される。
【0032】化13又は図3で示されるようなミニザイ
ム・ダイマーの2次構造は、ハンマーヘッド型リボザイ
ム(図1)の2次構造とよく類似していることが分か
る。しかし、ミニザイム・ダイマーがハンマーヘッド型
リボザイムと決定的に異なる点は、標的RNAとの結合
領域がハンマーヘッド型リボザイムにあっては1箇所で
あるのに対して、ミニザイム・ダイマーにおいては2箇
所存在することである。
【0033】また、ミニザイム・ヘテロダイマーにあっ
ては、化13に示されるように一方のミニザイム(モノ
マー)における標的RNA結合領域の一部が他方の標的
RNA結合領域の一部と入れ替わって、別の配列を認識
できるように変化していることである。更に本発明者ら
は、ミニザイム・ダイマーが標的RNAに対して結合領
域を2箇所もつということに着目すると、従来のリボザ
イムでは必然的に伴ったNUXルールにほとんど制約さ
れないことに気が付いた。
【0034】本発明の一対のミニザイム、又はこれらを
組み合わせて形成されるミニザイム・ダイマーは標的R
NAを切断又は不活化するので、ヒトの遺伝子疾患の治
療用又は遺伝子疾患の診断用として、有用に利用でき
る。ここでは、染色体転座によって引き起こされる異常
mRNAを例にとり、異常mRNAを標的とする「リボ
ザイムによるがんの遺伝子治療」への応用とその原理に
ついて、以下に簡単に述べる。図6は、ゲノムDNAか
らmRNAへの転写と異常タンパク質の生成・発がんを
示す説明図である。ヒトのような真核細胞においては、
DNAからRNAへ転写が進行する過程でイントロン
(介在配列)が除かれ、エキソンの連なった成熟RNA
を生成する。健常人では、図6に示すようにエキソン1
−エキソン2と繋がって成熟mRNAを生成されるとこ
ろ、急性リンパ性白血病患者等ではエキソン1−エキソ
ン3のように繋がって異常mRNAが生成されることが
知られている。図6における正常mRNAと異常mRN
Aとの違いが、ジャンクション近傍のみにあり他の配列
は同じとすると、両者をリボザイムで区別し、異常mR
NAのみを切断・不活化しようとする場合、従来のリボ
ザイムでは切断部位は必然的にジャンクション近傍に求
めなければならない。ジャンクション近傍に「NUX」
配列があれば、これを利用してリボザイムの結合領域の
配列を設計し、異常mRNAを切断・不活化することが
できる。しかし、急性リンパ性白血病のような場合に
は、ジャンクション近傍に「NUX」配列がなくジャン
クション部から離れたところに「NUX」配列があっ
て、従来のリボザイムでは異常mRNAだけを切断・不
活化することは不可能であった。
【0035】一方、本発明の一対のミニザイム、又はこ
れらを組み合わせて形成されるミニザイム・ダイマー
は、2箇所の領域で標的RNAを認識できる。そのた
め、標的RNAの一方の領域にNUX配列が無くとも、
他方の領域にNUX配列があればその標的RNAは本発
明の一対のミニザイム又はミニザイム・ダイマーによっ
て特異的に切断・失活させることができるのである。後
述の急性リンパ性白血病のbcr-abl mRNAの例(実施例
2)は、その一例である。
【0036】本発明の一対のミニザイム又はミニザイム
・ダイマーはヒトの遺伝子疾患の治療用又は遺伝子疾患
の診断用としてばかりでなく、動物用もしくは農薬用薬
剤等として有効に利用することができる。標的RNAと
しては、種々病原性のウィルス由来のRNA、がん遺伝
子由来のRNA、細胞の増殖・分化に関係する遺伝子由
来のRNA等がある。切断又は不活化の反応は、適宜好
適な条件を選べばよいが、例えば、5〜500mMのマ
グネシウム又はマンガンイオンの存在下、pH8.0±
3.0、温度20〜70℃で行うことができる。医薬と
しては例えば、エイズ、白血病、各種悪性腫瘍、流行性
結膜炎等の治療用医薬がある。動物薬としては例えば、
牛、豚、ニワトリ、イヌ、ネコ等の各種ウィルス病の治
療用動物薬がある。農薬としては例えば、タバコモザイ
ク病、イネ萎縮病、キュウリモザイク病等の各種植物ウ
ィルス病に対する農薬等がある。
【0037】
【実施例】以下実施例により、本発明を詳細に説明す
る。 実施例1 合成基質S11を切断するミニザイム・ダイ
マー (1)ミニザイム設計のストラテジー 標的のモデルRNAとして、配列番号7の合成基質S1
1を用いた。S11の核酸配列は5’−GCCGUC↓
CCCCG−3’(↓はミニザイムで切断される箇所)
で、5’末端は32Pで標識されている。図4に本発明の
ミニザイム・ヘテロダイマーで基質S11を切断する場
合の、一対のミニザイム設計のストラテジーを示した。
図4において、(A)はミニザイムMzL(ダイマーを
化13のように表すとき、左側にくるのでMzLと略記
する。)を示し、(B)はミニザイムMzR(ダイマー
を化13のように表すとき、右側にくるのでMzRと略
記する。)を示し、(C)は一対のミニザイムMzL及
びMzRから形成されるヘテロ・ダイマーMzL/Mz
Rの2次構造、基質(S11)及び擬似基質(5’−G
GAACGUdCGUCGUCG−3’。ミニザイムで
は切断されない。)との結合(2次構造)を示す。
【0038】(2)一対のミニザイムの合成 先ず、次の配列番号3のミニザイムMzLを合成した。
【化16】 15.1 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2.1 3'-CGG C A A A G C G A G U A G U C C AGUAGC-5' (配列番号:3) 式中、下線部は標的RNAとの結合領域示す(以下、同
じ)。
【0039】DNA/RNA合成装置(アプライドバイ
オシステムズ社製、380B型)にC−CPGカラム
(シトシン量:1μmol)を装着した後、バージョン
1.34のプログラムを用いて、以下の(1)〜(5)の
手順で行った。
【0040】(1)2%(w/v)トリクロル酢酸のジク
ロルメタン溶液を1.6ml/minで50秒間カラム
に流して、5'−水酸基のジメトキシトリチル基を外
す。 (2)アセトニトリルでカラムを洗浄した後、5’−O
−ジメトキシトリチル−2’−O−t−ブチルジメチル
シリル−グアノシン−N2−イソブチリル−N,N’−
ジイソプロピルアミノシアノエチルホスホアミダイトの
アセトニトリル溶液(77mg/ml)及び4%(w/
v)テトラゾールのアセトニトリル溶液の1:1(容量
比)混合液を1.5ml/minで10秒間給液したの
ち、10分間保持し、反応を起こさせてホスファイト結
合を形成させる。 (3)アセトニトリルでカラムを洗浄後、10%(v/
v)無水酢酸及び10%(v/v)2,6−ルチジンを
含むテトラヒドロフラン溶液と16%(v/v)1−メ
チルイミダゾールを含むテトラヒドロフラン溶液の1:
1(容量比)混合液を1.5ml/minで20秒間流
し、未反応の5'−水酸基をアセチル化する。 (4)アセトニトリルで洗浄後、3%(w/v)ヨウ
素、20%(v/v)ピリジン、及び2%(v/v)H2
Oを含むテトラヒドロフラン溶液を1.6ml/minで25
秒間流し、20秒間放置し、ホスファイト結合をホスフ
ェート結合に酸化したのち、再びアセトニトリルで洗浄
する。 (5)上記の(1)〜(4)の工程を、配列番号:3の
3’側から数えて3番目以降の核酸塩基配列に従って繰
り返す。
【0041】ここで、手順(2)のアミダイト試薬は、
Aの場合、5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−
t−ブチルジメチルシリル−アデノシン−N6−ベンゾ
イル−N,N’−ジイソプロピルアミノシアノエチルホ
スホアミダイト、Gの場合、5’−O−ジメトキシトリ
チル−2’−O−t−ブチルジメチルシリル−グアノシ
ン−N2−イソブチリル−N,N’−ジイソプロピルア
ミノシアノエチルホスホアミダイト、Cの場合、5’−
O−ジメトキシトリチル−2’−O−t−ブチルジメチ
ルシリル−シチジン−N4−ベンゾイル−N,N’−ジ
イソプロピルアミノシアノエチルホスホアミダイト、U
の場合、5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−t
−ブチルジメチルシリル−ウリジン−N,N’−ジイソ
プロピルアミノシアノエチルホスホアミダイト、を用い
る。
【0042】すべてのアミダイト試薬の反応を終えた
後、5'−水酸基の保護基を手順(1)と同様の方法で除
去し、28%アンモニアとエタノールの3:1(容量
比)混合液を18秒間流し、15分間放置したのちカラ
ムから合成物を切り出した。この切り出しの操作は更に
3回繰り返した。次に合成物を、55℃で8時間処理
し、核酸塩基及びリン酸基の保護基を外した。アンモニ
アとエタノールを減圧して除去後、適量の水に溶解し、
波長260nmの吸光度を測定し、水を減圧除去した
後、1Mテトラブチルアンモニウムフルオライドのテト
ラヒドロフラン溶液(以下、TBAFと略す)に溶解
し、室温で12時間放置し、2'−水酸基の保護基を除
去した。加えたTBAFと同容量の0.1Mのトリエチ
ルアンモニウム−酢酸緩衝液(以下、TEAAと略す)
を加え、ペレット状になるまで凍結乾燥した。
【0043】次に、このペレットをOPCカラム(アプ
ライドバイオシステムズ社製)で精製した。すなわち、
カラムを先ず、5mlのアセトニトリル、次いで5ml
の2M TEAAの順で洗浄し、これに予め0.1M T
EAA1mlで溶解したペレット溶解液を1〜2滴/秒
の速さで流し、通過液を再び同様にカラムに流して目的
物を吸着させた。5mlの0.1M TEAA、続いて
10mlの脱イオン水の順でカラムを洗浄後、50%
(v/v)アセトニトリル1.8mlを1〜2滴/秒で
流し、目的物を溶出した。
【0044】溶出液は更にFPLC(ファルマシア社
製)で精製した。すなわち、カラムはPepRPC H
R10/10、カラム温度は40℃、流速は2ml/m
inとし、移動相は初期濃度が10%(v/v)のアセ
トニトリルを含む0.1M TEAAとして、カラムに
溶出液を負荷後、移動相中のアセトニトリル濃度を1時
間かけて10%(v/v)から60%(v/v)に直線
的に増加させ、目的物を溶出した。なお、目的物の溶出
位置は254nmの吸光度を測定し、モニターした。
【0045】同様にして、上記ミニザイムの相手ペアと
なる、次の配列番号4のミニザイムMzRを合成した。
【化17】 15.1 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2.1 3'-CCUUG C A A A G C G A G U A G U C G GGGC-5' (配列番号:4)
【0046】(3)ミニザイム・ヘテロダイマーによる
基質の切断 6本の反応容器を用意し、それぞれ次の内容物を入れ反
応させた。6本の反応容器の組成は次の通りであり、用
いた緩衝液は25mM塩化マグネシウムを含む50mM
トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)である。 容器1:S11(0.2μM); 容器2:S11(0.2μM)+MzL(1μM); 容器3:S11(0.2μM)+MzL(1μM)+M
zR(1μM); 容器4:S11(0.2μM)+MzR(1μM); 容器5:S11(0.2μM)+MzL(1μM)+擬
似基質(2.5μM); 容器6:S11(0.2μM)+MzL(1μM)+M
zR(1μM)+擬似基質(2.5μM)。 なお、用いた擬似基質は5’−GGAACGUdCGU
CGUCG−3’でミニザイムでは切断されない。
【0047】これらを37℃で4分間反応させ、その
後、反応停止液(9M尿素、100mM EDTA、
0.1%キシレンシアノール及び0.1%ブロモフェノ
ールブルーを含む)を加え、20%ポリアクリルアミ
ド、7M尿素の変性ゲル中で電気泳動を行ない、イメー
ジアナライザを用いて分析した。電気泳動の結果を図5
に示した。図5から、基質のS11は、MzL又はMz
Rの単独では切断されないが、MzLとMzRの両者を
加えることによって良く切断されること(レーン3)、
また、S11と共に擬似基質を加えることによって基質
S11は更に良く切断されることが分かる(レーン
6)。
【0048】実施例2 異常キメラmRNA(Bcr ex2-
Abl ex2)を切断するミニザイム・ダイマー (1)ミニザイム・ダイマー設計のストラテジー 図7に正常mRNA(Abl ex1-Abl ex2)を認識せず、
異常キメラmRNA(Bcr ex2-Abl ex2)のみを認識・
切断するヘテロダイマーを設計するストラテジーを示し
た。図7において、(A)はスプライシングにより生成
する正常mRNA(Abl ex1-Abl ex2)のジャンクショ
ン部位のRNA配列、(B)は異常キメラmRNA(Bc
r ex2-Abl ex2)のジャンクション部位のRNA配列で
あり、(C)は後者の異常キメラmRNAのジャンクシ
ョン部位のRNA配列を特異的に認識するように設計さ
れたミニザイム・ヘテロダイマー(MzL/MzR)
と、異常キメラmRNA(Bcr ex2-Abl ex2)とが形成
する基質/ミニザイム・ヘテロダイマー複合体及び基質
の切断箇所を示す。
【0049】(2)一対のミニザイムの合成 前記ミニザイム・ダイマー設計のストラテジーに沿っ
て、次の配列番号5のミニザイムMzLを合成した。
【化18】 15.1 14 13 12 11.1 2.1 3'-GGAGUCCC A A A G C U A C UUUCUUCGGGAA -5' (配列番号:5)
【0050】同様にして、上記ミニザイムの相手ペアと
なる、次の配列番号6のミニザイムMzRを合成した。
【化19】 10.1 9 8 7 6 5 4 3 2.1 3'-GACUGGUAGUUAUU G A G A G U A G U C A CUC AC -5' (配列番号:6)
【0051】(3)ミニザイム・ヘテロダイマーによる
基質の切断 6本の反応容器を用意し、それぞれ次の内容物を入れ反
応させた。6本の反応容器の組成は次の通りであり、用
いた緩衝液は25mM塩化マグネシウムを含む50mM
トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)である。 容器1:基質S16(0.2μM); 容器2:基質S16(0.2μM)+MzL(1μ
M); 容器3:基質S16(0.2μM)+MzR(1μ
M); 容器4:基質S16(0.2μM)+MzL(1μM)
+MzR(1μM); 容器5:基質S16(0.2μM)+MzL(1μM)
+MzR(1μM)+Abl ex1-Abl ex2(2.5μ
M); 容器6:基質(0.2μM)+MzL(2μM)+Mz
R(1μM)+Bcr ex2-Abl ex2(2.5μM)。 なお、用いた基質S16は配列番号8の5’−CCUC
AGGGUC↓UGAGUG−3’(↓はミニザイムで
切断される箇所)で、5’末端は32Pで標識されてい
る。
【0052】これらを37℃で4分間反応させ、その
後、反応停止液(9M尿素、100mM EDTA、
0.1%キシレンシアノール及び0.1%ブロモフェノ
ールブルーを含む)を加え、20%ポリアクリルアミ
ド、7M尿素の変性ゲル中で電気泳動を行ない、イメー
ジアナライザを用いて分析した。電気泳動の結果を図8
に示した。基質はMzL又はMzRの単独では切断され
ず、MzL及びMzRの両者を加えても切断されず、M
zL及びMzRの両者にAbl ex1-Abl ex2が添加されて
も切断されず、MzL及びMzRの両者にBcr ex2-Abl
ex2を加えて初めて切断されること(レーン6)を、図
8は示している。これは、本発明の方法によって、正常
mRNA(Abl ex1-Abl ex2)と異常キメラmRNA(B
cr ex2-Abl ex2)が区別され、異常キメラmRNA(Bc
r ex2-Abl ex2)のみを切断、不活化できることを示す
ものである。
【0053】実施例3 安定化ミニザイムの合成
【化20】 15.5 15.3 15.1 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2.1 3'-dC┬dG┬dG┬C A A A G C G A G G A G┬U┬C┬dG┬ 2.2 2.3 2.4 2.5 dG┬dG┬dG┬dC-5' (V) 〔式中、┬はチオリン酸結合を示す。〕
【0054】DNA/RNA合成装置にdC−CPGカ
ラム(シトシン量:1μmol)を装着した後、バージ
ョン1.34のプログラムを用いて、以下の(1)〜
(5)の手順で、安定化ミニザイムを合成した。
【0055】(1)2%(w/v)トリクロル酢酸のジク
ロルメタン溶液を1.6ml/minで50秒間カラム
に流して、5'−水酸基のジメトキシトリチル基を外
す。 (2)アセトニトリルでカラムを洗浄した後、5’−O
−ジメトキシトリチルデオキシグアノシン−N2−イソ
ブチル−N,N−ジイソプロピルアミノエチルホスホア
ミダイトのアセトニトリル溶液(77mg/ml)及び
4%(w/v)テトラゾールのアセトニトリル溶液の
1:1(容量比)混合液を1.5ml/minで10秒
間給液し、30秒間保持し、縮合反応を起こさせてホス
ファイト結合を形成させる。 (3)アセトニトリルでカラムを洗浄後、10%(v/
v)無水酢酸及び10%(v/v)2,6−ルチジンを
含むテトラヒドロフラン溶液と16%(v/v)1−メ
チルイミダゾールを含むテトラヒドロフラン溶液の1:
1(容量比)混合液を1.5ml/minで20秒間流
し、未反応の5'−水酸基をアセチル化する。 (4)アセトニトリルで洗浄後、15%テトラエチルチ
ウラムジサルファイドを含むアセトニトリル溶液を1.
6 ml/minで23秒間流し、15分間放置し、ホスファ
イト結合をチオリン酸結合に酸化し、再びアセトニトリ
ルで洗浄する。 (5)配列(V)に示した3’側からの3番目以降の核
酸塩基配列に従い、またその配列がDNAであるかRN
Aであるか、及びホスフェート結合であるかチオリン酸
結合であるかに対応させて、上記(1)〜(4)の工程又
は実施例1(2)の(1)〜(4)の工程を、繰り返す。
【0056】ここで、手順(2)のアミダイト試薬は、
A、G、C及びUの場合、前記実施例1で述べたそれぞ
れのアミダイト試薬と同じであり、また、dA、dG及
びdCの場合、前記実施例2で述べたそれぞれのアミダ
イト試薬と同じである。アミダイト試薬の糖部分がデオ
キシリボースの場合は上記(2)に記載の方法で、リボー
スの場合はアミダイト試薬のアセトニトリル溶液(77
mg/ml)と4%(w/v)テトラゾールのアセトニ
トリル溶液の1:1(容量比)混合液を用いて1.5m
l/minで10秒間給液した後、10分間保持し、縮
合反応を起こさせホスファイト結合を形成させた。
【0057】また、チオリン酸結合ではなく、ホスフェ
ート結合を形成させる場合は、手順(4)の「15%テ
トラエチルチウラムジサルファイドを含むアセトニトリ
ル溶液を1.6ml/minで23秒間流し、15分間
放置」する代わりに、「3%(w/v)ヨウ素、20%
(v/v)ピリジン、及び2%(v/v)H2Oを含むテ
トラヒドロフラン溶液を1.6ml/minで25秒間流し、
20秒間放置」し、ホスファイト結合をホスフェート結
合に酸化した。
【0058】すべてのアミダイト試薬の反応を終えた
後、実施例1(2)と同様な方法で、切り出し、脱保護
基、凍結乾燥、OPCカラムによる精製及びFPLCに
よる精製を行なった。
【0059】
【発明の効果】本発明の一対のミニザイム又はミニザイ
ム・ダイマーは、以下のような利点や効果がある。 (1)標的RNAを2箇所の領域で認識・切断可能であ
る。 (2)標的RNAのリボザイム結合領域中に5’−NU
X−3’配列がなくとも、(標的RNAの他の箇所に
5’−NUX−3’配列があれば)標的RNAを特異的
に切断・失活させることができる。 (3)標的RNAの2箇所の領域を認識してリボザイム
切断活性を発揮するので、基質特異性が高い。 (4)正常mRNAと異常mRNAのように両者の塩基
配列が互いに類似していてもこれを区別することができ
る。どちらか一方のみを切断・失活させ、あるいは検出
することもできる。
【0060】
【配列表】
【0061】配列番号:1 配列の長さ:32 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CGGGGCUGAU GAGGCCGAAA GGCCGAAACG GC
32
【0062】配列番号:2 配列の長さ:22 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CGGGGCUGAU GAGCGAAACG GC
22
【0063】配列番号:3 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CGAUGACCUG AUGAGCGAAA CGGC 24
【0064】配列番号:4 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CGGGGCUGAU GAGCGAAACG UUCC 24
【0065】配列番号:5 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 GAAGGGCUUC UUUCAUCGAA ACCCUGAGG 29
【0066】配列番号:6 配列の長さ:30 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CACUCACUGA UGAGAGUUAU UGAUGGUCAG 30
【0067】配列番号:7 配列の長さ:11 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 GCCGUCCCCC G 11
【0068】配列番号:8 配列の長さ:16 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 配列の種類:他の核酸 合成RNA 配列 CCUCAGGGUC UGAGUG 16
【図面の簡単な説明】
【図1】ハンマーヘッド型リボザイムとその系統的番号
付け、基質(標的RNA)/リボザイム複合体及び標的
RNAの切断部位を示す模式図である。
【図2】ミニザイム(モノマー)とその系統的番号付
け、基質(標的RNA)/ミニザイム複合体及び標的R
NAの切断部位を示す模式図である。
【図3】配列番号2のミニザイムのダイマー(ホモ型)
形成とその2次構造を示す模式図である。
【図4】ミニザイム・ヘテロダイマーによる合成基質S
11切断のストラテジーを説明する図である。(A)は
ミニザイムMzL、(B)はミニザイムMzR、(C)
はミニザイムMzLとミニザイムMzRから形成される
ヘテロダイマーMzL/MzR、基質及び擬似基質との
結合を示す。
【図5】ミニザイム・ヘテロダイマーMzL/MzRに
よる基質の切断と、擬似基質添加による切断活性の亢進
を示す電気泳動図である。Sは基質(S11)、Pは分
解産物。レーン1は、基質(S11)のみ;レーン2
は、基質(S11)+MzL;レーン3は、基質(S1
1)+MzL+MzR;レーン4は、基質(S11)+
MzR;レーン5は、基質(S11)+MzL+擬似基
質;レーン6は、基質(S11)+MzL+MzR+擬
似基質。
【図6】ゲノムDNAからmRNAへの転写と異常タン
パク質の生成・発がんを模式的に示す説明図である。
【図7】正常mRNA(Abl ex1-Abl ex2)を認識せ
ず、異常キメラmRNA(Bcr ex2-Abl ex2)のみを認
識・切断するミニザイム・ヘテロダイマー設計のストラ
テジーを説明する図である。(A)は正常mRNA(Abl ex
1-Abl ex2)が生成するジャンクション部分のmRNA
の塩基配列を示し、(B)は異常キメラmRNA(Bcr
ex2-Abl ex2)が生成するジャンクション部分のmRN
Aの塩基配列を示し、(C)は異常キメラmRNAのみ
を認識し切断するミニザイム・ヘテロダイマーとそのダ
イマーがジャンクション部分から離れた部位のRNA配
列を切断する図である。
【図8】設計されたミニザイム・ヘテロダイマーは正常
mRNA(Abl ex1-Abl ex2)を認識せず、異常キメラ
mRNA(Bcr ex2-Abl ex2)のみを認識・切断するこ
とを示す電気泳動図である。Sは基質(S16)、Pは
分解産物。レーン1は、基質(S16)のみ;レーン2
は、基質(S16)+MzL;レーン3は、基質(S1
6)+MzR;レーン4は、基質(S16)+MzL+
MzR;レーン5は、基質(S16)+MzL+MzR
+Abl ex1-Abl ex2;レーン6は、基質(S16)+M
zL+MzR+Bcr ex2-Abl ex2。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07H 21/02 C07H 21/02 21/04 21/04 B C12N 9/16 C12N 9/16 A C12Q 1/68 7823−4B C12Q 1/68 Z // A01N 63/00 A01N 63/00 D (72)発明者 多比良 和誠 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 西川 諭 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 山田 亮 茨城県つくば市和台48 日立化成工業株式 会社筑波開発研究所内 (72)発明者 花田 和紀 東京都豊島区高田三丁目24番1号 大正製 薬株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の配列(I) 【化1】 15.3 15.2 15.1 14 13 12 2.1 2.2 3'-Q1n…Q1211 A A A G L V Q2122…Q2m-5' (I) で表されるミニリボザイムと、次の配列(II) 【化2】 15.2 15.1 9 8 7 6 5 4 3 2.1 2.2 3'-R1n…R1211 W M A G Y A G U C R2122…R2m-5'(II) で表されるミニリボザイムとの組合せからなる、一対の
    ミニリボザイム。〔但し、配列(I)及び(II)中、A
    はアデニンモノリボヌクレオチド、Gはグアニンモノリ
    ボヌクレオチド、Cはシトシンモノリボヌクレオチド、
    Uはウラシルモノリボヌクレオチドを示し、 Yは、A、G、C、Uのいずれか任意のモノリボヌクレ
    オチドを示し、 L及びMは、Lが (3')-C-(5')であるときMは(3')-G
    -(5')であるか、Lが(3')-CNp-(5')であるときMは
    (3')-N'pG-(5')である、いずれかの配列から選ばれ、
    ここでNはA、U、G、Cのいずれかを示し、N'はN
    に相補的なヌクレオチドを示し、pは1〜10の整数
    で、Np及びN'pはそれぞれ異なってもよいNのp個の
    ヌクレオチド配列及びN'のp個のヌクレオチド配列を
    示し、 V及びWは、Vが(3')-AGYAGUC-(5')であるとき
    Wは(3')-AAG-(5')であるか、Vが結合手であるとき
    Wは結合手である、いずれかの配列又は結合手から選ば
    れ、 Q及びRは、標的RNAの核酸塩基に相補するモノヌク
    レオチドもしくはモノヌクレオチド類似体であって、
    A、G、C、U、アデニンモノデオキシリボヌクレオチ
    ド(dA)、グアニンモノデオキシリボヌクレオチド
    (dG)、シトシンモノデオキシリボヌクレオチド(d
    C)及びチミンモノデオキシリボヌクレオチド(dT)
    から選ばれるモノヌクレオチドで、それらの類似体でも
    よく、 配列Q1n…Q1211と配列R1n…R1211、及び配列
    2122…Q2mと配列R2122…R2mは、互いに同じ
    であっても異なっていてもよく、 m及びnは、整数を示し、 配列(I)及び(II)中の上段の数字は、ミニリボザイ
    ム中のモノヌクレオチドの位置を示す系統的番号であ
    り、また3'-Q1n…Q1211A と Q2122…Q2m-5'
    の配列、及び3'-R1n…R1211A と R2122…R
    2m-5'の配列は、標的RNAとの結合領域である。〕
  2. 【請求項2】請求項1の一対のミニリボザイムを混合し
    て形成される活性リボザイムであって、標的RNAに対
    しては配列 3'−Q1n…Q1211A R2122…R2m
    5' 及び配列 5'−Q2m…Q22211112…R1n
    3'の二箇所の領域で結合することができる、下記ミニリ
    ボザイム・ダイマー。 【化3】 〔式中、*は相補的塩基対を示し、 V及びWは、前記と同じであり、 L*Mは、次のいずれかのステム構造を示す。〕 【化4】 〔但し、Np及びN'pは前記と同じである。〕
  3. 【請求項3】請求項2のダイマーが形成されるとき、そ
    のダイマーの二箇所の結合領域の一方は、標的RNAに
    対し結合能を有するがその結合部位を切断しないように
    設計され、ダイマーの二箇所の結合領域の他方は、標的
    RNAに対し結合能を有すると共にその結合部位を切断
    するように設計された、請求項1の一対のミニリボザイ
    ム。
  4. 【請求項4】ダイマーの二箇所の結合領域の一方は、標
    的RNAに対し結合能を有するがその結合部位を切断し
    ないように設計され、ダイマーの二箇所の結合領域の他
    方は、標的RNAに対し結合能を有すると共にその結合
    部位を切断するように設計された、請求項2のミニリボ
    ザイム・ダイマー。
  5. 【請求項5】請求項1又は3のいずれか一対のミニリボ
    ザイムによる、RNAの切断・不活化方法。
  6. 【請求項6】請求項2又は4のいずれかのミニリボザイ
    ム・ダイマーによる、RNAの切断・不活化方法。
  7. 【請求項7】請求項1又は3のいずれか一対のミニリボ
    ザイムを含む、遺伝子疾患治療薬。
  8. 【請求項8】請求項2又は4のいずれかのミニリボザイ
    ム・ダイマーを有効成分とする、遺伝子疾患治療薬。
  9. 【請求項9】請求項1又は3のいずれかの一対のミニリ
    ボザイムを含む、遺伝子疾患診断薬。
  10. 【請求項10】請求項2又は4のいずれかのミニリボザ
    イム・ダイマーを有効成分とする、遺伝子疾患診断薬。
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