JPH092239A - 制動力制御方法及び車体減速度推定装置 - Google Patents

制動力制御方法及び車体減速度推定装置

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JPH092239A
JPH092239A JP15054995A JP15054995A JPH092239A JP H092239 A JPH092239 A JP H092239A JP 15054995 A JP15054995 A JP 15054995A JP 15054995 A JP15054995 A JP 15054995A JP H092239 A JPH092239 A JP H092239A
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JP
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pressure
time
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wheel cylinder
hydraulic
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JP15054995A
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Yoshitomo Watabe
良知 渡部
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Toyota Motor Corp
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明はブレーキ油圧の増減圧を繰り返して
ホイルシリンダ油圧の保持を図る車両用ブレーキ装置の
制御方法に関し、油圧の保持精度を向上することを目的
とする。 【構成】 ホイルシリンダに2位置弁を接続する。2位
置弁を繰り返し増圧位置と減圧位置とにして疑似保持モ
ードを実行する。アンチロックブレーキシステムの減圧
モードが開始された時点で車体減速度DVSOmを記憶
する(ステップ100〜104)。減圧モードが開始さ
れた後、2位置弁が増圧位置とされる時間と減圧位置と
される時間との偏差に相当するカウンタCT1 を読み込
む(ステップ106,110)。DVSOmとCT1
に基づいて疑似保持モード中の増圧時間と減圧時間との
割合を設定する(ステップ108)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、制動力制御方法及び車
体減速度推定装置に係り、特に、ブレーキ油圧の増減圧
を繰り返してホイルシリンダ油圧の保持を図る車両用ブ
レーキ装置の制御方法、又は減速度推定装置として好適
な制動力制御方法及び車体減速度推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車の分野においては、ホ
イルシリンダに供給する油圧を適当に制御して、過剰な
制動力に起因する車輪のロックを防止するアンチロック
ブレーキシステム(ABS)や、過剰な駆動力に起因す
る車輪の空転を防止するトラクションコントロールシス
テム(TRC)が知られている。ABS、TRC等の機
能を実現する機構としては、マスタシリンダとホイルシ
リンダとの間に車両状態に応じて油路の切り替わる油圧
回路を配置する構成が一般に採られている。
【0003】かかる構成を採用する装置として、例えば
特開平3−74248号公報には、ホイルシリンダに対
して2つの2位置弁を配設して所望の制動力制御の実現
を図る装置が開示されている。上記の装置において、2
つの2位置弁は、マスタシリンダ又はオイルポンプ等の
高圧源で生じた高圧の油圧をホイルシリンダに供給する
増圧モード、及びホイルシリンダへのブレーキ油圧の供
給を遮断すると共に、ホイルシリンダ内に生ずるホイル
シリンダ油圧(以下、W/C油圧と称す)をリザーバタ
ンクに開放する減圧モードとを実現するように構成され
ている。
【0004】ABS、TRCの機能は、増圧モード、減
圧モード及び保持モードが実現できれば実現することが
できる。これに対して、上記従来の装置によれば、2位
置弁を適当に制御することにより増圧モードと減圧モー
ドとを実現することができると共に、それらのモードを
繰り返し実行することにより、疑似的にW/C油圧を保
持するモードをつくり出すことができる。従って、上記
従来の装置によれば、十分にABS、TRCの機能を実
現することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、増圧モード
下で、単位時間当たりに生ずるW/C油圧の増圧幅は、
W/C油圧が低圧であるほど大きく、W/C油圧が高圧
になるに連れて小さくなる。また、減圧モード下で、単
位時間当たりに生ずるW/C油圧の減圧幅は、W/C油
圧が高圧であるほど大きく、W/C油圧が低圧になるに
連れて小さくなる。
【0006】このため、増圧モードと減圧モードとが均
等時間毎に繰り返された場合、W/C油圧が高圧である
場合は、その値が収束値に向けて減圧し、一方、W/C
油圧が低圧である場合は、その値が収束値に向けて増圧
される事態を生ずる。従って、増圧モードと減圧モード
とを繰り返すことにより、精度良くW/C油圧を保持す
るためには、W/C油圧に応じて増圧モードが実行され
る時間(以下、増圧時間と称す)と減圧モードが実行さ
れる時間(以下、減圧時間と称す)との比率を変化させ
ることが必要である。
【0007】しかし、上記従来の装置は、W/C油圧の
影響を考慮することなく、常に一定の時間比率で増圧モ
ードと減圧モードとを繰り返すことによりW/C油圧の
保持を図ることとしている。このため、上記従来の装置
によっては、疑似保持モード下で精度良くW/C油圧を
保持することが困難であった。
【0008】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、車両に生ずる減速度に基づいてW/C油圧を推
定し、そのW/C油圧に応じて疑似保持モードにおける
増圧時間と減圧時間との比率を変更することにより、上
記の課題を解決する制動力制御方法を提供すること、及
び、疑似保持モードが実行される状況下で精度良く車体
減速度を推定する車体減速度推定装置を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】図1は、請求項1記載の
発明の原理構成図を示す。上記の目的は、図1に示す如
く、車輪に配設されたホイルシリンダP10を液圧源P
12に導通させる増圧位置と、前記ホイルシリンダP1
0を低圧源P14に導通させる減圧位置とを実現する2
位置弁P16を用いて、ホイルシリンダ油圧を減圧する
必要がある場合にはホイルシリンダ油圧の減圧を図る減
圧モードを実行し、ホイルシリンダ油圧を保持する必要
がある場合には前記2位置弁P16を繰り返し増圧位置
と減圧位置とにして疑似保持モードを実行する制動力制
御方法において、前記減圧モードが開始された時点の車
体減速度を基準減速度として記憶する基準減速度記憶ス
テップS10と、前記減圧モードが開始された後、前記
2位置弁P16が増圧位置とされる時間と、前記2位置
弁P16が減圧位置とされる時間との偏差を増減時間偏
差として検出する増減時間偏差検出ステップS12と、
前記基準減速度と、前記増減時間偏差とに基づいて、疑
似保持モードにおいて前記2位置弁P16を増圧位置と
する時間と減圧位置とする時間との割合を設定する疑似
保持条件設定ステップS14と、を備えることを特徴と
する制動力制御方法。
【0010】図2は、請求項2記載の発明の原理構成図
を示す。図2に示す如く、車輪に配設されたホイルシリ
ンダP10を液圧源P12に導通させる増圧位置と、前
記ホイルシリンダP10を低圧源P14に導通させる減
圧位置とを実現する2位置弁P16を用いて、ホイルシ
リンダ油圧を保持する必要がある場合には前記2位置弁
P16を繰り返し増圧位置と減圧位置とにして疑似保持
モードを実行する機能を備える車体減速度推定装置にお
いて、制動力制御実行中の所定期間内において、前記2
位置弁P12が増圧位置とされる時間の積算値を計数す
る増圧時間積算手段P18と、制動力制御実行中の所定
期間内において、前記2位置弁P12が減圧位置とされ
る時間の積算値を計数する減圧時間積算手段P20と、
前記増圧時間積算手段P18の計数値と、前記減圧時間
積算手段P20の計数値との偏差を求める増減圧偏差演
算手段P22と、前記増減圧偏差演算手段P22の演算
値に基づいて、車体減速度の変化量に対するガード値を
設定するガード値設定手段P24と、前記ガード値設定
手段P24が設定したガード値の範囲内で車体減速度を
演算する車体減速度演算手段P26と、を備えることを
特徴とする車体減速度推定装置は、疑似保持モードが実
行される環境下で精度良く車体減速度を推定するうえで
有効である。
【0011】
【作用】請求項1記載の発明において、2位置弁P16
が増圧位置である場合は、ホイルシリンダP10に液圧
源P12が導通される。かかる状況下では、ホイルシリ
ンダP10に液圧が供給され、ホイルシリンダ油圧が増
加する。2位置弁P16が減圧位置である場合は、ホイ
ルシリンダP10に低圧源P14が導通される。かかる
状況下では、ホイルシリンダP10の液圧が開放され、
ホイルシリンダ油圧が低下する。
【0012】本発明において、ホイルシリンダP10の
ホイルシリンダ油圧を減圧する必要が生じた場合は減圧
モードが開始される。減圧モードは、2位置弁P16を
主に減圧位置とすることにより実現される。減圧モード
が開始されると、ホイルシリンダ油圧は、その後減圧し
始める。ホイルシリンダ油圧の減圧は、不当に制動力が
低下しない範囲で行う必要がある。このため、減圧モー
ドの開始後、適当にホイルシリンダ油圧が低下した状況
下では、ホイルシリンダ油圧を保持したい場合が生ず
る。本発明において、かかる要求が生じた場合は、2位
置弁P16を繰り返して増圧位置と減圧位置とすること
により疑似的にホイルシリンダ油圧を保持する疑似保持
モードが実行される。疑似保持モードによって、精度良
くホイルシリンダ圧を保持するためには、保持すべきホ
イルシリンダ油圧の大きさに応じて、疑似保持モード中
に2位置弁P16が増圧位置とされる時間と減圧位置と
される時間との割合を適切に設定する必要がある。
【0013】ところで、本発明において、基準減圧ステ
ップS10では、減圧モードが開始された時点の車体減
速度が記憶される。減圧モードは、車輪がロック状態に
移行する直前に開始される。従って、その際のホイルシ
リンダ油圧は、走行路の路面μに対して最大限発生し得
る油圧であり、路面μによってほぼ一義的に決まる値で
ある。一方、減圧モードが実行される状況下では、車両
には走行路の路面μに応じた減速度が発生する。このた
め、減圧モードが開始される時点では、ホイルシリンダ
油圧と車体減速度とに相関が認められる。この意味で、
減圧モードが開始される時点での車体減速度は、その時
点でのホイルシリンダ油圧の代用特性値であることにな
る。
【0014】また、増減時間偏差検出ステップS12で
は、減圧モードが開始された後、2位置弁P16が増圧
位置とされる時間と減圧位置とされる時間との偏差が検
出される。減圧モードが開始された後のホイルシリンダ
油圧は、2位置弁P16が増圧位置とされる時間に応じ
て増圧され、2位置弁P16が減圧位置とされる時間に
応じて減圧される。従って、本ステップS12で検出さ
れる増減時間偏差は、減圧モードが開始された後の、ホ
イルシリンダ油圧の変動量の代用特性値であることにな
る。
【0015】そして、疑似保持条件設定ステップS14
は、基準減速度と、増減時間偏差とに基づいて、すなわ
ち、減圧モード開始時におけるホイルシリンダ油圧と、
その後ホイルシリンダ油圧に生じた変動量とに基づい
て、疑似保持モードの実行条件を設定する。この場合、
疑似保持モード中における増圧時間と減圧時間との割合
は、常にホイルシリンダ油圧に応じた適切な割合とな
る。
【0016】請求項2記載の発明において、増圧時間積
算手段P18は、制動力制御の実行中の所定期間内に2
位置弁P12が増圧位置とされる時間の積算値を計数す
る。また、減圧時間積算手段P20は、制動力制御実行
中の所定期間内に2位置弁P12が減圧位置とされる時
間の積算値を計数する。
【0017】本発明においては、ホイルシリンダ油圧の
保持が疑似保持モードによって実行されるため、増圧時
間積算手段P18の積算値、及び減圧時間積算手段P2
0の積算値には、それぞれ疑似保持モードの実行中に2
位置弁P16が増圧位置とされた時間、及び減圧位置と
された時間が含まれる。従って、それらの積算値は、直
接的にはホイルシリンダ油圧の変動量を直接的には表し
ていない。
【0018】疑似保持モードは、制動力制御中にホイル
シリンダ油圧が変動しないように行われる。従って、所
定期間中における増圧時間の積算値に、疑似保持モード
の実行に起因する増圧時間が含まれている場合は、その
所定期間中における減圧時間の積算値にも、疑似保持モ
ードの実行に起因する減圧時間が含まれていると考えら
れる。また、疑似保持モード中におけるホイルシリンダ
油圧の増圧勾配と減圧勾配とは、ほぼ同等であると擬制
することができる。このため、所定期間における増圧時
間の積算値と、所定期間における減圧時間の積算値との
偏差を採ると、疑似保持モードの実行に起因する増圧時
間と減圧時間とが相殺されることになる。
【0019】これに対して、増減圧偏差演算手段P22
は、増圧時間積算手段P18の計数値と、減圧時間積算
手段P20の計数値との偏差を求める。また、ガード値
設定手段P24は、その偏差に基づいて車体減速度の変
化量に対するガード値を設定する。この場合、車体減速
度の変化量に対するガードは、現実にホイルシリンダ油
圧に生じた油圧変動量に応じた値となる。
【0020】車体減速度は、ホイルシリンダP10によ
って発生される制動力の増減に応じて変動する。従っ
て、ホイルシリンダ油圧の変動量と、車体減速度とには
相関が存在する。このため、車体減速度演算手段P26
が、ガード値設定手段P24が設定したガード値の範囲
内で車体減速度を演算した場合、その演算値は、精度良
く現実に車体に発生している減速とに一致することにな
る。
【0021】
【実施例】図3は、本発明の一実施例である制動力制御
装置の全体構成図を示す。本実施例の制動力制御装置
は、過剰な制動力に起因する車輪のロックを防止するア
ンチロックブレーキシステム(ABS)としての機能、
及び過剰な駆動力に起因する車輪の空転を防止するトラ
クションコントロールシステム(TRC)としての機能
を併せ持つ装置である。尚、本実施例の制動力制御装置
は、後輪駆動車に搭載される装置である。
【0022】図3において、ブレーキペダル10は、ブ
レーキブースタ12の入力軸12aに連結されている。
ブレーキペダル10には、ブレーキスイッチ14が配設
されている。ブレーキスイッチ14は、ブレーキペダル
10が踏み込まれた際に、オン出力を発生する。ブレー
キブースタ12は、入力軸12aに入力される推力に応
じた助勢力を発生する装置である。ブレーキブースタ1
2の出力軸12bは、レギュレータ及びプロポーショニ
ングバルブ(以下、Pバルブと称す)を内蔵するマスタ
シリンダ16に連結されている。
【0023】図4は、マスタシリンダ16の正面断面図
を示す。図4に示す如く、マスタシリンダ16のハウジ
ング18には、リザーバ連通孔18a,18b、ポンプ
連通孔18c、減衰油圧発生孔18d、非減衰油圧発生
孔18eが設けられている。また、ハウジング18の内
部には、第1ピストン20、及び第2ピストン22が、
液密かつ摺動可能に挿入されている。第1ピストン20
と第2ピストン22との間には第1油圧室24が形成さ
れている。この第1油圧室24には、第1ピストン20
と第2ピストン22との間で離間方向のバネ力を発生す
るスプリング26が配設されている。
【0024】第1ピストン20は、ブレーキブースタ1
2の出力軸12bに係合する部材であり、出力軸12b
に図4において右向きの推力が生ずると、その推力に応
じてハウジング18内を図中右向きに変位する。第1ピ
ストン20が図中右向きに変位すると、スプリング26
が縮小方向に弾性変形し、第1ピストン20と第2ピス
トン22とは、スプリング26に生ずる弾性変形分だけ
互いに接近する。
【0025】第1ピストン20には、リザーバ連通孔1
8aと第1油圧室28とを連通する油圧通路20aが設
けられている。また、油圧通路20aの途中には、第1
ピストン20の、ハウジング18に対する変位量に応じ
て開閉する弁機構20bが設けられている。本実施例に
おいてこの弁機構20bは、第1ピストン20の変位量
が所定値に満たない領域では開弁状態となり、第1ピス
トン20の変位量が所定値以上となる領域では閉弁状態
となるように設けられている。
【0026】第2ピストン22は、その内部にPバルブ
22aを備えている。また、第2ピストン22には、第
1油圧室28とPバルブ22aとを連通する油圧通路2
2b、減衰油圧発生孔18dとPバルブ22aとを連通
する油圧通路22c、及び図4において第2ピストン2
2の右側に形成される第2油圧室30とPバルブ22及
びリザーバ連通孔18bとを連通する油圧通路22dと
が設けられている。Pバルブ22aは、第1油圧室28
に連通する油圧通路22b内に導かれた油圧を所定の割
合で減衰させて減衰油圧発生孔18dに連通する油圧通
路22cに吐出するように構成されている。
【0027】ハウジング18の内部には、第2油圧室3
0を挟んで第2ピストン22と対向する位置に、レギュ
レータ32が配設されている。第2油圧室30内には、
レギュレータ32と第2ピストン22とを離間させる方
向の付勢力を発生するスプリング33が配設されてい
る。従って、第2ピストン22は、2つのスプリング2
6,22から受ける付勢力の合力に従ってハウジング1
8内を変位することになる。
【0028】レギュレータ32は、第2ピストン22の
油圧通路22dの開口部を弁座とするボール弁34を備
えている。ボール弁34は、可動部材36の一端に保持
されている。可動部材36は、その他端に棒状突起36
aを備える部材であり、レギュレータ32の軸方向(図
4において左右方向)に変位することができるように配
設されている。本実施例において、可動部材36の初期
位置は、第2ピストン22に変位が生じていない場合に
は、油圧通路22dとボール弁34との間に所定の間隙
が形成されるように、かつ、第2ピストン22に所定の
変位が生じた場合には、油圧通路22dがボール弁34
によって閉塞されるように、設定されている。
【0029】レギュレータ32は、上記の棒状突起36
aが貫通するように形成された弁座38を備えている。
弁座38の一端には、棒状突起36aの端部に当接する
ようにボール弁40が配設されている。ボール弁38
は、スプリング42によって弁座38側に付勢されてい
る。従って、可動部材36にボール弁40に向かう推力
が生じていない場合は、ボール弁40は弁座38に着座
する。一方、可動部材36にボール弁40へ向かう推力
が生じている場合は、その推力の大きさに応じてボール
弁40が弁座38から離座する。
【0030】レギュレータ32には、ボール弁40が弁
座38に着座することにより遮断状態とされ、ボール弁
40が弁座38から離座することにより導通状態とされ
る油圧通路44が形成されている。この油圧通路44
は、ハウジング18に形成されたポンプ連通孔18c
と、第2ピストン22とレギュレータ32との間に形成
される第2油圧室30とを連通するように設けられてい
る。
【0031】従って、第2油圧室30は、ボール弁34
が油圧通路22dから離座し、かつ、ボール弁40が弁
座38に着座している場合は、リザーバ連通孔18bと
導通した状態となり、また、ボール弁34が油圧通路2
2dに着座し、かつ、ボール弁40が弁座38から離座
している場合は、ポンプ連通孔18bと導通した状態と
なる。第2油圧室30は、ハウジング18に形成される
非減衰油圧発生孔18eに連通している。
【0032】上述した第2油圧室30は、ハウジング1
8に形成される非減衰油圧発生孔18eに連通してい
る。このため、非減衰油圧発生孔18eには、ボール弁
34,40の開閉状態に応じてリザーバ連通孔18b若
しくはポンプ連通孔18cから第2油圧室30に導かれ
た油圧が、そのまま導かれることになる。
【0033】図3に示す如く、マスタシリンダ16のリ
ザーバ連通孔18a,18bは、マスタシリンダ16の
上部に配設されるリザーバタンクに連通している。ま
た、リザーバタンク46には、ポンプ48の吸入側が接
続されている。ポンプ48の吐出側は、逆止弁50を介
して高圧通路52に連通している。高圧通路52には、
アキュムレータ54、リリーフ弁56、TRC切り換え
用2位置弁58、圧力スイッチ60、及びマスタシリン
ダ16のポンプ連通孔18cが連通している。
【0034】ポンプ48は、車両の運転中は常に作動し
ている。また、アキュムレータ54は、ポンプ48の発
生する油圧を蓄えるべく機能する。従って、マスタシリ
ンダ16のポンプ連通孔18cには、車両の運転中常に
安定した高圧の油圧が供給される。
【0035】マスタシリンダ16の非減衰油圧発生孔1
8eは、TRC切り換え用2位置弁58に連通している
と共に、左右前輪FL,FRに対応して設けられる油圧
制御用2位置弁62FL,62FRに連通されている。
一方、マスタシリンダ16の減衰油圧発生孔18eは、
ABS切り換え用2位置弁64を介して、左右後輪R
L,RRに対応して設けられる油圧制御用2位置弁62
RL,62RRに連通されている。
【0036】これら油圧制御用2位置弁62FL,62
FR,62RL,62RRの下流には、それぞれFL,
FR,RL,RRに対応して設けられるホイルシリンダ
66FL,66FR,66RL,66RRが連通してい
る。ホイルシリンダ66FL,66FR,66RL,6
6RRは、それぞれ油圧制御用2位置弁62FL,62
FR,62RL,62RRから高圧の油圧が供給された
場合、その油圧に応じた制動力を発生する。
【0037】上述したTRC切り換え用2位置弁58
は、駆動信号が供給されていない場合には非減衰油圧発
生孔18eをABS切り換え用2位置弁64の上流に連
通させ、一方、駆動信号が供給されている場合は高圧通
路52をABS切り換え用2位置弁64の上流に連通状
態とする電磁弁である。
【0038】また、上述したABS切り換え用2位置弁
64は、駆動信号が供給されていない場合には減衰油圧
発生孔18dを油圧制御用2位置弁62RL,62RR
の上流に連通させ、一方、駆動信号が供給されている場
合はTRC切り換え用2位置弁58を油圧制御用2位置
弁62RL,62RRの上流に連通させる電磁弁であ
る。
【0039】更に、油圧制御用2位置弁62FL,62
FR,62RL,62RRは、駆動信号が供給されてい
ない場合には、その上流側とホイルシリンダ66FL,
66FR,66RL,66RRとを連通状態とし、一
方、駆動信号が供給されている場合には、リザーバタン
ク46に通じるリザーバ通路68とホイルシリンダ66
FL,66FR,66RL,66RRとを連通状態とす
る電磁弁である。
【0040】上述したTRC切り換え用2位置弁58、
ABS切り換え用2位置弁64、及び油圧制御用2位置
弁62FL,62FR,62RL,62RRは、電子制
御ユニット(以下、ECUと称す)68によって制御さ
れている。ECU68には、上述したブレーキスイッチ
14を始め、スロットル開度を検出するスロットルセン
サ70、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速を検出
する車輪速センサ72FL,72FR,72RL,72
RR等のセンサが接続されている。ECU68は、これ
ら各種センサの出力に基づいて、TRC切り換え用2位
置弁58、ABS切り換え用2位置弁64、及び油圧制
御用2位置弁62FL,62FR,62RL,62RR
の制御を行う。
【0041】ECU68は、各種センサの出力信号に基
づいて車輪FL,FR,RL,RRの状態を推定し、A
BS、TRCの必要性を判断する。ABS、TRCの何
れも必要でない場合は、何れの2位置弁に対しても駆動
信号を供給しない。この場合、後輪のホイルシリンダ6
6RL,66RRには、マスタシリンダ16の減衰油圧
発生孔18dに生ずる油圧が導かれ、また、前輪のホイ
ルシリンダ66FL,66FRには、マスタシリンダ1
6の非減衰油圧発生孔18eに生ずる油圧が導かれる。
【0042】本実施例において、ブレーキペダル10に
ブレーキ踏力が入力されると、その踏力はブレーキブー
スタ12で増幅されてマスタシリンダ16の第1ピスト
ン20に入力される。第1ピストン20にブレーキ踏力
に起因する推力が作用すると、第1ピストン20には第
1油圧室28側に向かう変位が生ずる。その変位量が所
定量に達すると、弁機構20bが閉弁状態となり、第1
油圧室28とリザーバ連通孔18aとが遮断状態とな
る。このため、以後、ブレーキ操作が続行されると、第
1油圧室28には、ブレーキペダル10に入力されたブ
レーキ踏力に応じた油圧が生ずる。この際、Pバルブ2
2aは、上述の如く第1油圧室28に生じた油圧を適当
に減衰させて減圧油圧発生孔18dに供給する。従っ
て、後輪のホイルシリンダ66RL,66RRには、ブ
レーキ踏力に応じて第1油圧室28に生ずる油圧を、適
当な比率で減衰させてなる油圧が供給されることにな
る。
【0043】上記の如く第1ピストン20に変位が生
じ、また、第1油圧室28の油圧が上昇すると、その影
響で第2ピストン22にも第2油圧室30へ向かう変位
が生ずる。第2ピストン22のかかる変位が所定値に達
すると、第2ピストン22に設けられた油圧通路22d
がボール弁34によって閉塞され、第2油圧室30とリ
ザーバ連通孔18bとが遮断された状態となる。かかる
状態から更に第2ピストン22が変位すると、可動部材
36の棒状突起36aによってボール弁42が離座方向
に押圧され、油圧通路44が導通状態となる。油圧通路
44が導通状態となると、ポンプ連通孔18cから導か
れる高圧の油圧が第2油圧室30まで浸入し得る状態と
なる。第2油圧室30内に生ずる油圧は、第2ピストン
22を第1油圧室28側へ押し戻す力を発生させる。従
って、上記の如く第2油圧室30に高圧の油圧が導かれ
ると、以後、第2ピストン22が図4において左方へ向
けて変位し、やがてボール弁40によって油圧通路44
が遮断される状態となる。この結果、第2油圧室30の
油圧は、第1油圧室28の油圧とほぼ等圧に制御される
ことになる。従って、マスタシリンダ16の非減圧油圧
発生孔18eには、すなわち、前輪のホイルシリンダ6
6FL,FRには、ブレーキ踏力に応じて第1油圧室2
8に生ずる油圧が、ほぼそのまま供給されることにな
る。
【0044】このように、本実施例の制動力制御装置に
よれば、ABSの制御、またはTRCの制御が実行され
ない通常状態において、前輪のホイルシリンダ66F
L,FRには、ブレーキ踏力に応じたW/C油圧を、ま
た、後輪のホイルシリンダ66RL,66RRには、前
輪のW/C油圧に比して所定の比率で減衰されたW/C
油圧を、それぞれ発生させることができる。
【0045】本実施例においてECU68は、車両が加
速状態であり、かつ、駆動輪RL,RRの車輪速が他の
車輪の車輪速に比して著しく高速である場合に、駆動輪
RL,RRに空転が生じていると判別してTRC制御を
実行する。TRC制御は、TRC切り換え用2位置弁5
8、及びABS切り換え用2位置弁64に共に駆動信号
を供給した状態で実行される。
【0046】上記の状態では、油圧制御弁62RL,6
2RRの上流側には、高圧通路52が連通される。この
場合、マスタシリンダ16の状態に因らず、すなわちブ
レーキペダル10が踏み込まれているか否かに因らず、
油圧制御弁62RL,62RRの上流側に高圧の油圧が
導かれる。
【0047】かかる状況下では、油圧制御弁62RL,
62RRに駆動信号を供給しないことによりホイルシリ
ンダ66RL,66RRのW/C油圧を増圧させること
ができる(以下、かかる状態を増圧モードと称す)。ま
た、油圧制御弁62RL,62RRに駆動信号を供給す
ることによりホイルシリンダ66RL,66RRのW/
C油圧を減圧させることができる(以下、かかる状態を
減圧モードと称す)。更に、駆動信号の供給・遮断を繰
り返すことにより疑似的にホイルシリンダ66RL,6
6RRのW/C油圧を保持することができる(以下、か
かる状態を疑似保持モードと称す)。これら増圧モー
ド、減圧モード、疑似保持モードを適当に切り換えて実
行すれば、空転の起因となった過剰な駆動力を制動力に
より相殺することができる。従って、本実施例の制動力
制御装置によれば、TRCとしての機能を適切に実現す
ることができる。
【0048】また、ECU68は、車両が減速状態であ
り、かつ、何れかの車輪FL,FR,RL,RRの車輪
速が他の車輪の車輪速に比して著しく低速である場合
は、その車輪がロック状態に移行するおそれがあると判
断してABS制御を実行する。ABS制御は、TRC切
り換え用2位置弁58を通常状態に保持し、かつ、AB
S切り換え用2位置弁64に駆動信号を供給した状態で
実行される。
【0049】上記の状態では、油圧制御弁62FL,6
2FRの上流側のみならず、油圧制御弁62RL,62
RRの上流側にも非減衰油圧発生孔18eが連通され
る。この場合、油圧制御弁62FL,62FR,62R
L,62RRの上流側には、常に非減衰油圧発生孔18
eに生ずる油圧、すなわち、ブレーキペダル10に入力
されているブレーキ踏力に応じた油圧が導かれる。
【0050】かかる状況下では、油圧制御弁62FL,
62FR,62RL,62RRに駆動信号を供給しない
ことによりホイルシリンダ66FL,66FR,66R
L,66RRのW/C油圧を増圧させることができる
(以下、かかる状態を増圧モードと称す)。また、油圧
制御弁62FL,62FR,62RL,62RRに駆動
信号を供給することによりホイルシリンダ66FL,6
6FR,66RL,66RRのW/C油圧を減圧させる
ことができる(以下、かかる状態を減圧モードと称
す)。更に、駆動信号の供給・遮断を繰り返すことによ
り疑似的にホイルシリンダ66FL,66FR,66R
L,66RRのW/C油圧を保持することができる(以
下、かかる状態を疑似保持モードと称す)。
【0051】上述した増圧モード、減圧モード、及び疑
似保持モードは、ホイルホイルシリンダ66FL,66
FR,66RL,66RRに供給されたブレーキフルー
ドがマスタシリンダ16側へ逆流されることなく実行さ
れる。このため、マスタシリンダ16内に貯留されるブ
レーキフルードをホイルシリンダ66FL,66FR,
66RL,66RRに供給してW/C油圧の昇圧を図る
形式では、マスタシリンダ内のブレーキフルードが徐々
に減少する弊害が生ずる。これに対して、本実施例にお
いては、ABS作動中は常にポンプ48から圧送された
ブレーキフルードがホイルシリンダ66FL,66F
R,66RL,66RRに供給される構成である。この
ため、本実施例の制動力制御装置によれば、上述した増
圧モード、減圧モード、疑似保持モードを適当に切り換
えて実行することにより、何らの弊害を伴うことなく、
過剰な制動力の解除を図ることができる。従って、本実
施例の制動力制御装置によれば、ABSとしての機能を
適切に実現することができる。
【0052】図5は、本実施例の制動力制御装置におい
てABS制御が実行された際のW/C油圧の変動の様子
を示している。図5は、時刻t0 に制動操作が開始さ
れ、その後時刻t1 に車輪がロック状態に移行するおそ
れがあると判断されてABS制御が開始された場合を示
している。また、図5は、ABS制御の実行中に、時刻
3 と時刻t4 との間で、走行中の路面が高μ路から低
μ路に変化した場合を示している。
【0053】図5に示す如く、時刻t1 の後所定期間減
圧モードが実行されると、ブレーキペダル10が踏み込
まれたままであるにも関わらず、ロック状態に以降する
おそれのあった車輪のW/C油圧が減圧され、過剰な制
動力が解除される。その後、車輪のグリップ状態がが適
正な状態に復帰したと判断されると、疑似保持モード、
増圧モードを組み合わせて徐々にW/C圧の昇圧が図ら
れる。そして、再び車輪がロック状態に移行するおそれ
があると判断されると(時刻t2 )再度減圧モードが実
行される。
【0054】かかる制御が実行された場合、W/C油圧
は、ABS制御の実行中に路面μが変動した場合をも含
めて、常に車輪がロック状態に移行する直前の油圧近傍
に維持される。尚、図5において時刻t1 ,t2
3 ,t4 におけるW/C油圧は、それぞれの時点で車
輪をロックさせることなく発生させ得るW/C油圧の値
である。従って、その値は走行路の路面μが大きいほど
高く、また、走行路の路面μが小さいほど小さな値とな
る。この意味で、時刻t1 ,t2 ,t3 ,t4 における
W/C油圧には、走行路の路面μが反映されていること
になる。
【0055】ところで、増圧モードと減圧モードとを繰
り返し実行して疑似的にW/C油圧の保持を図る場合、
W/C油圧の大きさに応じて増圧モードを実行する時間
(以下、増圧時間と称す)と減圧モードを実行する時間
(如何、減圧モードと称す)との比率を適宜変更する必
要がある。W/C油圧が高圧である場合は、増圧モード
において単位時間あたりに増圧し得る幅が、減圧モード
において単位時間あたりに減圧し得る幅に比して小さ
く、また、W/C油圧が低圧である場合は、その逆の現
象が生ずるからである。
【0056】従って、本実施例の制動力制御装置におい
て高精度な制動力制御を実現するためには、W/C油圧
を精度良く検知し、その値に基づいて疑似保持モードの
条件を適切に設定することが必要である。W/C油圧の
検知は、各ホイルシリンダ66FL,66FR,66R
L,66RRに油圧センサを配設して実測することによ
っても行うことができる。しかしながら、かかる手法を
採ると、ハードウェア構成が複雑化し、また、複雑な処
理が必要となるという弊害が生ずる。
【0057】一方、ABSが実行される状況下では、車
両には路面μに応じた減速度が生ずる。従って、ABS
作動中に生ずる減速度を検出すれば、その時点での路面
μを推定することが可能である。また、ABS制御によ
って減圧モードが開始される時点のW/C油圧(上記図
5における時刻t1 ,t2 ,t3 ,t4 のW/C油圧)
は、上述の如く、路面μに対応して決まる値である。従
って、走行路の路面μが推定できれば、減圧モードが開
始される時点のW/C油圧を精度良く推定することは可
能である。このため、個々のホイルシリンダ66FL,
66FR,66RL,66RRについて減圧モードが開
始された時点のW/C油圧は、その時点の車両減速度に
基づいて推定することが可能である。
【0058】更に、ABS制御の実行中に生ずるW/C
油圧の変動量は、W/C油圧の増圧時間と、減圧時間と
に基づいてある程度推定することが可能である。従っ
て、それぞれのホイルシリンダ66FL,66FR,6
6RL,66RRの、任意の時点でのW/C油圧は、そ
れらのホイルシリンダ66FL,66FR,66RL,
66RRについて減圧モードが開始された時点のW/C
油圧に、その後の増圧時間及び減圧時間に応じた変動量
を加算することで推定することができる。
【0059】従って、各ホイルシリンダ66FL,66
FR,66RL,66RRのW/C油圧は、それぞれの
ホイルシリンダ66FL,66FR,66RL,66R
Rについて減圧モードが開始された時点での車両の減速
度と、その減圧モードが開始された後に実行された増圧
時間及び減圧時間とを検出することで推定することが可
能である。かかる手法によれば、W/C油圧を検出する
ための油圧センサを用いる必要がなく、実現が容易であ
る。そこで、本実施例においては、上述の手法に従って
W/C油圧を推定し、その推定値に基づいて、疑似保持
モードの実行条件を設定することとしている。
【0060】図6は、上記の手法に従って疑似保持モー
ドの実行条件を設定すべくECU68が実行する制御ル
ーチの一例のフローチャートを示す。尚、ECU68
は、4つのホイルシリンダ66FL,66FR,66R
L,66RRそれぞれについて、疑似保持モードの実行
条件を設定しているが、個々のホイルシリンダ66F
L,66FR,66RL,66RRに対して実行される
制御内容に相違がないため、図6には一のホイルシリン
ダに対するルーチンのみを表し、ここでは、そのルーチ
ンについてのみ説明する。
【0061】図6に示すルーチンは、6ms毎に起動され
る定時割り込みルーチンである。図6に示すルーチンに
おいては、先ずステップ100において、本ホイルシリ
ンダに対する前回の制御モードが減圧モードであったか
否かを判別する。前回の制御モードが減圧モードではな
いと判別された場合は、ステップ102へ進み、今回の
制御モードが減圧モードであるか否かを判別する。その
結果、今回の制御モードが減圧モードである場合は、そ
の時点を、減圧モードの開始時点、すなわち、上記図5
におけるt1 ,t2 ,t3 ,t4 に相当する時点である
と認識することができる。
【0062】減圧モードが開始された時点は、上述の如
く、W/C油圧が走行路の路面μに応じた値となる時
点、すなわち、車両の減速度に応じた値となる時点であ
る。このため、上記ステップ102において、今回の制
御モードが減圧モードであると判別された場合は、次に
ステップ104へ進み、車両の推定減速度DVSOを検
出し、その値を減圧モード開始時点の推定減速度DVS
Omとして記憶する処理を行う。この場合、DVSOm
は、その時点でのW/C油圧の代用特性値としての意味
を有していることになる。尚、車両の推定減速度DVS
Oは、車両の推定車速を微分することにより求めること
ができる。
【0063】上記の処理を終えたら、ステップ106へ
進み、カウンタCT1 を“0”にリセットする。カウン
タCT1 は、後述する他の制御ルーチンによって、減圧
モードの開始後における増圧時間と減圧時間との偏差を
表すべく計数されるカウンタである。従って、カウンタ
CT1 の値は、減圧モードが開始された後に生ずるW/
C油圧の変動量に相当している。ステップ106は、減
圧モードが開始された直後に実行されるステップである
ことから、ここではCT1 を“0”にリセットすること
としている。
【0064】上記ステップ106の処理を終えたら、ス
テップ108へ進み、減圧モード開始時点での推定減速
度DVSOmと、上述したカウンタCT1 とに基づいて
疑似保持モードの実行条件を設定して今回のルーチンを
終了する。一方、上記ステップ100において、前回の
制御モードが減圧モードではないと判別された場合、及
び上記ステップ102において今回の制御モードが減圧
モードではないと判別された場合は、その時点が減圧モ
ードが開始時点ではないと判断し、ステップ110でカ
ウンタCT1 を読み込んだ後、上述したステップ108
へ進む。この場合、カウンタCT1 には、前回減圧モー
ドが開始された後に実行された増圧時間と減圧時間との
偏差に対応する値、すなわち、W/C油圧の変動量に対
応する値が代入されていることになる。
【0065】本実施例において、上述したステップ10
8の処理は、下記表1に示すマップを参照して行う。す
なわち、ECU68には、下記表1に示す2次元マップ
が記憶されており、ECU68は、DVSOmとCT1
とでこのマップを検索して疑似保持モードの実行条件を
設定する。
【0066】
【表1】
【0067】上記表1に示すマップは、疑似保持モード
において実行すべき増圧時間と減圧時間とをms単位で表
したマップである。このマップは、疑似保持モードの実
行中に、精度良くW/C油圧を一定に保つことを目的と
して実験的に設定したマップである。従って、ECU6
8が上記図6中ステップ108で設定した条件に従って
疑似保持モードを実行した場合、疑似保持モード中にお
けるW/C油圧を、精度良く一定油圧に保持することが
可能である。
【0068】図7は、上述したカウンタCT1 を計数す
べくECU68が実行する制御ルーチンの一例のフロー
チャートを示す。尚、ECU68は、4つのホイルシリ
ンダ66FL,66FR,66RL,66RRそれぞれ
について、カウンタCT1 の計数を行っているが、個々
のホイルシリンダ66FL,66FR,66RL,66
RRに対して実行される制御内容に相違がないため、図
7には一のホイルシリンダに対するルーチンのみを表
し、ここでは、そのルーチンについてのみ説明する。
【0069】図7に示すルーチンは、1ms毎に起動され
る定時割り込みルーチンである。本ルーチンにおいて
は、先ずステップ200において、実行中の制御モード
が疑似保持モードであるか否かの判別を行う。上述の如
く、カウンタCT1 は、減圧モードが開始された後のW
/C油圧の変動量を表すカウンタである。一方、疑似保
持モードは、W/C油圧を変動させないように実行され
るモードである。従って、疑似保持モードの実行中はC
1 を変動させるべきでなない。このため、上記ステッ
プ200において、制御モードが疑似保持モードである
と判別された場合は、以後、何ら処理を実行することな
く今回のルーチンを終了する。
【0070】上記ステップ200において、実行中の制
御ルーチンが疑似保持モードではないと判別された場合
は、ステップ202へ進み、実行中の制御ルーチンが減
圧モードであるか否かを判別する。その結果、減圧モー
ドが実行されていると判別された場合は、ステップ20
4へ進みカウンタCT1 をデクリメントして今回のルー
チンを終了する。一方、減圧モードは実行されていない
と判別された場合は、実行中の制御モードが増圧モード
であると判断して、ステップ206でカウンタCT1
インクリメントした後今回のルーチンを終了する。
【0071】ECU68が上記のルーチンを実行する場
合、1ms毎にカウンタCT1 の更新が図られ、CT
1 は、減圧モードの実行が検出される毎に減少され、増
圧モードの実行が検出される毎に増加される。この場
合、CT1 の値は、精度良くW/C油圧の変動量に対応
することになる。
【0072】ところで、上記図7に示すCT1 計数ルー
チンは、制御モードとして増圧モードが実行されている
場合は常にW/C油圧の増圧が図られ、また、制御モー
ドとして減圧モードが実行されている場合は常にW/C
油圧の減圧が図られていることを前提として実行されて
いる。
【0073】これに対して、ABSの制御内容によって
は、減圧モードが更に急減圧モードと緩減圧モードとに
分けられ、また、増圧モードが更に急増圧モードと緩増
圧モードとに分けられる場合がある。減圧モード、及び
増圧モードをこのように使い分けると、より優れた制動
特性が実現できるからである。
【0074】上記の急減圧モード、及び急増圧モード
は、それぞれ減圧状態を継続されること、又は増圧状態
を継続させることにより実現される。また、緩減圧モー
ド、及び緩増圧モードは、減圧状態と減圧状態とを適当
な比率で繰り返すことで実現される。従って、緩減圧モ
ード、及び急減圧モードが実行された場合、減圧モード
中に一時的にW/C油圧が増圧される状態が混在し、ま
た、増圧モード中に一時的にW/C油圧が減圧される状
態が混在することになる。
【0075】かかる状況下では、上記図7に示すルーチ
ンの如く、実行中の制御モードが減圧モードであるか、
増圧モードであるかに応じてカウンタCT1 を増減させ
ることによっては、カンウタCT1 の値をW/C油圧の
変動量に対応させることができない。以下、かかる場合
にECU68が実行すべき処理の内容について説明す
る。
【0076】図8乃至図11は、ABSの制御内容とし
て、減圧モードとして急減圧モードと緩減圧モードとが
要求され、また、増圧モードとして急増圧モードと緩増
圧モードとが要求される場合に、W/C油圧の変動量に
対応した値をカウンタCT1に代入させるべくECU6
8が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示
す。
【0077】すなわち、ECU68は、減圧モードとし
て急減圧モードと緩減圧モードとが要求され、また、増
圧モードとして急増圧モードと緩増圧モードとが要求さ
れる場合には、上記図7に示すルーチンに代えて、図8
乃至図11に示すルーチンを実行してカウンタCT1
計数を行う。そして、ECU68は、そのCT1 に基づ
いて、上記図6に示すルーチンを実行して、疑似保持モ
ードの実行条件を設定する。
【0078】尚、ECU68は、4つのホイルシリンダ
66FL,66FR,66RL,66RRそれぞれにつ
いて、図8乃至図11に示すルーチンを実行している
が、制御内容に異なるところがないため、ここで一のホ
イルシリンダに対する説明のみを行う。
【0079】図8に示すルーチンは、1ms毎に起動され
る定時割り込みルーチンである。本ルーチンにおいて
は、先ずステップ300において、実行すべき制御モー
ドが前回の制御モードと同一であるか否かを判別する。
その結果、制御モードに変更がない場合は、ステップ3
02へ進みカウンタCT2 をインクリメントする処理を
行う。一方、制御モードが変更されている場合は、ステ
ップ304へ進みカウンタCT2 を“0”にリセットす
る処理を行う。この場合、カウンタCT2 は、疑似保持
モード、減圧モード、及び増圧モードそれぞれの実行継
続時間を計数するカウンタとして機能することになる。
【0080】上記ステップ302、又はステップ304
の処理を終えたら、次にステップ306へ進み実行すべ
き制御モードが疑似保持モードであるかを判別する。そ
の結果、実行すべき制御モードが疑似保持モードでない
場合は、ステップ308へ進み、実行すべき制御モード
が減圧モードであるかを判別する。かかる判別の結果、
実行すべき制御モードが減圧モードでない場合は、実行
すべき制御モードが増圧モードであると判断して、以後
の処理を進める。
【0081】上記ステップ306において、実行すべき
制御モードが疑似保持モードであると判断された場合
は、図9に示すステップ310へ進み、疑似保持モード
の実行を表すフラグFに“1”をセットする処理を行
う。次に、ステップ312では、疑似保持モードの実行
条件として設定されている減圧時間TH1、及び減圧時間
H2を読み込む処理を行う。尚、TH1,TH2は、上記図
6中ステップ108で設定された、最新の減圧時間及び
増圧時間である。
【0082】上記の処理を終えたら、次に、ステップ3
14へ進み、各制御モードの実行継続時間(ここでは疑
似保持モードの実行継続時間)を表すカウンタCT2
値が、減圧時間TH1未満であるかを判別する。その結
果、CT2 <TH1が成立する場合は、以後、ステップ3
16へ進み、W/C油圧を減圧する状態を形成するため
の出力を発する。
【0083】一方、上記ステップ314においてCT2
がTH1以上であると判別された場合は、ステップ318
へ進み、CT2 がTH2未満であるかを判別する。その結
果、未だCT2 がTH2に到達していないと判別された場
合は、ステップ320へ進み、W/C油圧を増圧する状
態を形成するための出力を発する。
【0084】さらに、上記ステップ318において、カ
ウンタCT2 の値が既にTH1以上であると判別された場
合は、以後、ステップ322でカウンタCT2 をクリア
して、上記ステップ316に進む。このため、疑似保持
モードが継続して実行される場合、カウンタCT2 の値
はTH2時間が経過する毎にクリアされることになる。か
かる制御によれば、疑似保持モードの実行中は、時間T
H1の減圧と時間TH2の増圧とが繰り返し実行されること
になる。
【0085】上記ステップ316の処理が終了したら、
次に、ステップ324においてフラグFに“1”がセッ
トされているかが判別される。その結果、F=1が不成
立である場合は、ステップ326でCT1 をデクリメン
トした後、一方、F=1が成立する場合はステップ32
6をジャンプして、今回のルーチンが終了される。これ
に対して、上記ステップ320の処理が終了したら、次
に、ステップ328においてフラグFに“1”がセット
されているかが判別される。その結果、F=1が不成立
である場合は、ステップ330でCT1 をインクリメン
トした後、一方、F=1が成立する場合はステップ33
0をジャンプして、今回のルーチンが終了される。
【0086】ところで、上記ステップ324,328の
判定に用いるフラグFは、上述の如く疑似保持モードの
実行中に“1”がセットされるフラグである。従って、
本ルーチンによれば、疑似保持モードの実行中にステッ
プ326及び330が実行されることはない。かかる制
御によれば、設定されたTH1とTH2とに偏差が存在する
場合に、その偏差に起因して疑似保持モードの実行中に
CT1 が更新されるという不都合を回避することができ
る。
【0087】上記図8中ステップ308の判別により、
実行すべき制御モードが減圧モードであると判別された
場合は、以後図10に示すステップ332以降の処理を
実行する。ステップ332では、上述したフラグFを
“0”にリセットする処理を行う。
【0088】次に、ステップ334では、実行すべきモ
ードが緩減圧モードであるかを判別する。その結果、実
行すべきモードが緩減圧モードではないと判別された場
合は、急減圧モードが要求されていると判断して、以
後、上記図9中ステップ316へ進む。一方、上記ステ
ップ334において実行すべきモードが緩減圧モードで
あると判断された場合は、ステップ336へ進み、緩減
圧モードの実行条件として設定されている減圧時間
R1、及び増圧時間TR2(TR1>TR2)を読み込む処理
を行う。尚、TR1,TR2は、車両の状態に応じて他のル
ーチンで設定される値、又は、予め設定した定数であ
る。
【0089】上記の処理を終えたら、次に、ステップ3
38へ進み、各制御モードの実行継続時間(ここでは減
圧モードの実行継続時間)を表すカウンタCT2 の値
が、減圧時間TR1未満であるかを判別する。その結果、
CT2 <TR1が成立する場合は、以後、上記図9中ステ
ップ316へ進む。
【0090】一方、上記ステップ338においてCT2
がTR1以上であると判別された場合は、ステップ340
へ進み、CT2 がTR2未満であるかを判別する。その結
果、未だCT2 がTR2に到達していないと判別された場
合は、上記図9に示すステップ320へ進む。
【0091】さらに、上記ステップ340において、カ
ウンタCT2 の値が既にTR1以上であると判別された場
合は、以後、ステップ342でカウンタCT2 をクリア
して、上記ステップ316に進む。このように、本ルー
チンにおいては、減圧モードの実行中、現実にW/C油
圧を減圧する状態が要求されている場合にはステップ3
16以降の処理が実行され、現実にはW/C油圧を増圧
する状態が要求されている場合にはステップ320以降
の処理が実行される。
【0092】ところで、減圧モードの実行中は、上述の
如くフラグFが“0”にリセットされている。従って、
この場合は、ステップ316,320に続いて、ステッ
プ326,330の処理が実行される。このため、カウ
ンタCT1 は、減圧モードの実行中であって、現実にW
/C油圧を減圧する状態が要求されている場合にはデク
リメントされ、減圧モードの実行中であっても現実には
W/C油圧を増圧する状態が要求されている場合にはイ
ンクリメントされることになる。
【0093】上記図8中ステップ308の判別により、
実行すべき制御モードが増圧モードであると判別された
場合は、以後図11に示すステップ344以降の処理が
実行される。ステップ344では、上述したフラグFを
“0”にリセットする処理を行う。
【0094】次に、ステップ346では、実行すべきモ
ードが緩増圧モードであるかを判別する。その結果、実
行すべきモードが緩増圧モードではないと判断された場
合は、急増圧モードが要求されていると判断して、以
後、上記図9中ステップ320へ進む。一方、上記ステ
ップ346において、実行すべきモードが緩増圧モード
であると判別された場合は、ステップ348へ進み、緩
増圧モードの実行条件として設定されている増圧時間T
A1、及び増圧時間TA2(TA1>TA2)を読み込む処理を
行う。尚、TA1,TA2は、車両の状態に応じて他のルー
チンで設定される値、又は、予め設定した定数である。
【0095】上記の処理を終えたら、次に、ステップ3
50へ進み、各制御モードの実行継続時間(ここでは増
圧モードの実行継続時間)を表すカウンタCT2 の値
が、増圧時間TA1未満であるかを判別する。その結果、
CT2 <TA1が成立する場合は、以後、上記図9中ステ
ップ320へ進む。
【0096】一方、上記ステップ338においてCT2
がTA1以上であると判別された場合は、ステップ352
へ進み、CT2 がTA2未満であるかを判別する。その結
果、未だCT2 がTA2に到達していないと判別された場
合は、上記図9に示すステップ316へ進む。
【0097】さらに、上記ステップ352において、カ
ウンタCT2 の値が既にTA1以上であると判別された場
合は、以後、ステップ354でカウンタCT2 をクリア
して、上記ステップ320に進む。このように、本ルー
チンにおいては、増圧モードの実行中、現実にW/C油
圧を増圧する状態が要求されている場合にはステップ3
20以降の処理が実行され、現実にはW/C油圧を減圧
する状態が要求されている場合にはステップ316以降
の処理が実行される。
【0098】そして、ステップ320、316に続いて
実行されるステップ330、326において、現実に要
求されている状態に応じて、カウンタCT1 がインクリ
メント又はデクリメントされる。このため、本ルーチン
によれば、減圧モードの実行中にW/C油圧を増圧させ
るべき処理が実行され、また、増圧モードの実行中にW
/C油圧を減圧させるべき処理が実行される場合がある
にも関わらず、カウンタCT1 の値を、現実のW/C油
圧の変動量に対応する値とすることができる。従って、
ECU68が本ルーチンを実行する場合、緩減圧モー
ド、緩増圧モードを駆使した制動力制御を実行しつつ、
高精度にW/C油圧を推定することが可能となる。
【0099】ところで、本実施例の制動力制御装置にお
いては、上述の如く車両の減速度DVSOに基づいて疑
似保持モードの実行条件を設定することとしている。従
って、疑似保持モードの実行条件を適切に設定するため
には、精度良く車両の減衰力を推定することが必要であ
る。
【0100】車両の減衰度DVSOは、上述の如く車両
の速度VSOを微分することにより求めることができ
る。また、車両の速度VSOは、車輪速に基づいて検出
することができる。しかしながら、ABSの作動中は、
車輪速が車速とは独立して変動する場合がある。そこ
で、本実施例においては、車輪速の変動幅に対してガー
ドを設定し、所定時間内に不当に大きな車輪速変化が生
じた場合には、そのガード値を用いて車速の近似値を求
めることとしている。以下、図12及び図13を参照し
て、本実施例における車速の演算手法について説明す
る。
【0101】ところで、各ホイルシリンダ66FL,6
6FR,66RL,66RRに対応して配設される4つ
の車輪速センサ72FL,72FR,72RL,72R
Rは、それぞれ異なる車輪速を出力する。ABSの作動
中は、真の車速に対して車輪速が遅れがちであるため、
最も高速で回転している車輪の車輪速が、最も精度良く
車速に対応していると考えられる。このため、本実施例
においては、4つの車輪速センサ72FL,72FR,
72RL,72RRから出力される車輪速のうち、最速
の車輪速に基づいて車速の推定を行うこととしている。
【0102】図12中に実線で示す曲線は、ABS制御
の実行中における最速車輪速VW0の変化状態を示す。
本実施例においては、このVWOに基づいて、所定時間
ΔT毎に、すなわち、図12に示すt1 〜t11のタイミ
ングで、車速演算を実行することとしている。
【0103】図12は、時刻t1 に制動操作が開始され
た場合を示している。制動操作が開始される以前は、最
大車輪速VWOが精度良く車速に一致していると考えら
れる。このため、時刻t1 においては、その時点での車
輪速VWOを車速VSO1として扱うことができる。
【0104】車両に最大限発生し得る加速度をαup、最
大限発生し得る減速度をαdownとすると、時刻t2 にお
ける車速VSO2は、VSO1−αdown・ΔT≦VSO
2≦VSO1+αup・ΔTの範囲内となるはずである。
従って、時刻t2 における車輪速VWOが、その範囲外
に検出された場合は、車輪速VWOが適正に車速VSO
2を表していないと判断することができる。
【0105】そこで、本実施例においては、時刻tn
おいて検出される車輪速VWOが、時刻tn-1 において
検出された車速VSOn-1 に対して、VSOn-1 −αdo
wn・ΔT≦VWO≦VSOn-1 +αup・ΔTの範囲内に
ある場合は、車輪速VWOの値を時刻tn の車速VSO
n とし、一方、VWOが上記の範囲内にない場合は、V
SOn-1 −αdown・ΔT、又はVSOn-1 +αup・ΔT
を、時刻tn における車輪速車速VSOn として扱うこ
ととしている。
【0106】かかる手法によれば、図12において時刻
3 〜t8 に示す如く、車輪速VWOが不当な急減速及
び急加速を示す場合に、図12中に一点鎖線で示す如
く、推定車体速度の変動幅を小さく抑制することができ
る。従って、本実施例の制動力制御装置によれば、その
車速VSOに基づいて、精度良く車体減速度DVSOを
演算することが可能である。
【0107】図13は、上記の手法に従って所定時間Δ
T毎に車速VSOn を演算すべくECU68が実行する
制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図1
3に示すルーチンは、所定時間ΔT毎の起動される定時
割り込みルーチンである。図13に示すルーチンにおい
ては、先ずステップ400において、時刻tn に検出さ
れた車輪速VWOが、時刻tn-1 に検出された車速VS
n-1 に対して、VSOn-1 +αup・ΔT<VWOの関
係を満たしているか否かが判別される。上記の関係が成
立する場合は、時刻tn-1 と時刻tn との間に、車体に
は生じ得ない加速度が車輪に生じたと判断することがで
きる。従って、その場合はステップ402へ進み、VS
n-1 +αup・ΔTを時刻tn における車速VSOn
する処理を行って今回のルーチンを終了する。
【0108】一方、上記ステップ400において、VS
n-1 +αup・ΔT<VWOなる関係が成立しないと判
別された場合は、ステップ404へ進み、時刻tn-1
おける車速VSOn-1 が、αdown・ΔTに比して小さい
値であるかが判別される。VSOn-1 が極めて低速であ
り、VSOn-1 <αdown・ΔTが成立する場合は、時刻
n における推定車速VSOn がVSOn ≦0となるの
を避けるため、ステップ406へ進み、減速側のガード
値αdownを“0”とする処理を行う。
【0109】上記ステップ404においてVSOn-1
αdown・ΔTが成立しないと判別された場合、及び、上
記ステップ406の処理が終了した後には、ステップ4
08の処理が実行される。ステップ408では、時刻t
n における車輪速VWOが、時刻tn-1 の車速VSO
n-1 に対して、VSOn-1 −αdown・ΔT>VWOの関
係を満たしているか否かを判別する。
【0110】その結果、上記の関係が成立する場合は、
時刻tn-1 と時刻tn との間に、車体には生じ得ない減
速度が車輪に生じたと判断することができる。従って、
その場合はステップ410へ進み、VSOn-1 −αdown
・ΔTを時刻tn における車速VSOn とする処理を行
って今回のルーチンを終了する。一方、上記ステップ4
08において、VSOn-1 −αdown・ΔT>VWOなる
関係が成立する場合は、ステップ412へ進み、時刻t
n における車輪速VWOを時刻tn における車速VSO
n として今回のルーチンを終了する。
【0111】このようにして、本実施例の制動力制御装
置においては、所定時間ΔT毎に車速VSOn を推定す
ることとしている。従って、以後、車速VSOn に微分
処理を施せば、車体減速度DVSOを求めることが可能
である。ところで、車体減速度DVSOと、各ホイルシ
リンダ66FL,66FR,66RL,66RRにおい
て発生される制動力FFR,FFL,FRR,FRLの総和FAL
L との間には比例関係が成立する。また、FALL と、各
ホイルシリンダ66FL,66FR,66RL,66R
RのW/C油圧の総和PALL との間にも比例関係が成立
する。従って、車体減速度DVSOと、W/C油圧の総
和PALL との間にも比例関係が成立することになる。
【0112】かかる関係が成立するとすれば、車体減速
度DVSOの変化は、PALL の変化に対応する範囲内で
生ずるはずである。従って、PALL が僅かに変化したに
過ぎない状況下で、大幅な変化を伴うDVSOが演算さ
れた場合には、そのDVSOには大きな誤差が含まれて
いると判断することができる。上記の観点からすれば、
車体減速度DVSOに対して、PALL の変化量に基づく
ガードが設定できることになる。かかるガードを設定し
た場合、より高精度にDVSOを推定することが可能で
ある。この意味で、各ホイルシリンダ66FL,66F
R,66RL,66RRのW/C油圧の変動量を精度良
く推定することは、DVSOの推定精度の向上を図る上
で有益である。
【0113】図8は、ABS制御中に実行される保持モ
ードが、疑似的な保持モードでなく、真にW/C油圧を
一定に保持するモードである場合におけるW/C油圧の
変動状態を示す。W/C油圧が図14に示す如く変動す
る場合、所定のサンプリング時間中におけるW/C油圧
の変化量は、サンプリング時間中における減圧時間T R
の総和に対応した値となる。
【0114】一方、図9は、本実施例の制動力制御装置
において実現されるW/C油圧の変動状態、すなわち、
ABS制御中に実行される保持モードが、疑似保持モー
ドである場合におけるW/C油圧の変動状態を示す。W
/C油圧が図15に示す如く変動する場合、所定のサン
プリング時間中に、減圧モードの実行中と保持モードの
実行中の一部においてW/C油圧の減少時間TR が検出
される。従って、この場合減圧時間TR の積算値は、W
/C油圧の変動量に対して大きな値となる。
【0115】つまり、本実施例の制動力制御装置におい
ては、ABS制御の実行中に検出される減圧時間TR
積算値、及び増圧時間TA の積算値が、疑似保持モード
を用いない装置において検出される減圧時間TR 、増圧
時間TA に対して長時間となる。
【0116】図16は、時刻tn-1 における車体減速度
DVSOn-1 を起点として、サンプリング時間内に検出
される増圧時間TA の積算値、及び減圧時間TR に基づ
いて設定されるガードの幅を示す。図16中に実線で示
す直線は、本実施例の制動力制御装置に対して設定され
るガード幅である。また、図16中に破線で示す直線
は、疑似保持モードを用いない装置に対して設定される
ガード幅である。図16に示す如く、W/C油圧の変動
幅に基づいて設定されるガードは、サンプリング時間内
に検出される減圧時間TR の積算値、及び増圧時間TA
の積算値が長時間となる場合に広く、それらが短時間と
なる場合に狭く設定される。
【0117】かかるガード幅の広狭は、図17に示す如
く、ABS制御の実行中におけるDVSOの推定精度に
大きく影響する。すなわち、図17に示す実線は、W/
C油圧の変動幅に基づくガード幅が大きい場合のDVS
Oを、また、図中に示す破線は、W/C油圧の変動幅に
基づくガード幅が小さい場合のDVSOを、それぞれ表
している。図17に示す如く、ABS制御の実行中にお
けるDVSOの値は、ガード幅が小さいほど小さな変動
幅で推定され、ガード幅の大きいほど大きな変動幅で推
定される。このように、DVSOを精度良く推定するた
めには、ガード幅は小さいほど有利である。
【0118】従って、W/C油圧の変動幅に基づくガー
ドを、減圧時間TR 、又は増圧時間TA の積算値に基づ
いて設定する手法を採用する場合、疑似保持モードを実
行する本実施例の制動力制御装置には、疑似保持モード
を実行しない装置に比して、DVSOの推定精度を確保
し難いという不利益が伴うことになる。
【0119】しかしながら、疑似保持モード中に行われ
るW/C油圧の増圧、及び減圧が、それぞれ等しい油圧
変動勾配で行われているとすれば、図18に示す如く、
疑似保持モード中の増圧時間TA は、疑似保持モード中
に実行される減圧時間ΔTと等しいとみなすことができ
る。そして、この場合は、サンプリング時間中に検出さ
れる減圧時間TR の総和から、サンプリング時間中に検
出される増圧時間TAを減算すれば、疑似保持モードの
実行に起因する過剰な減圧時間を相殺することができ
る。
【0120】そこで、本実施例の制動力制御装置におい
ては、W/C油圧の変動幅に基づいてDVSOのガード
を設定するにあたり、所定のサンプリング時間内の減圧
時間TR と増圧時間TA とをそれぞれ累積し、両者の偏
差に基づいてガードを設定することとしている。以下、
図19及び図20を参照して、上述の手法によりDVS
Oについてのガードを設定すべくECU68が実行する
制御内容について説明する。
【0121】図19は、各ホイルシリンダ66FL,6
6FR,66RL,66RRについて、所定のサンプリ
ング時間内における減圧時間TR の積算値、及び増圧時
間T A の積算値を計数すべくECU68が実行する制御
ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図19に
おいて“**”は、FL,FR,RL,RRの何れかを
指す記号である。
【0122】本実施例において、減圧時間TR 及び増圧
時間TA を累積する所定のサンプリング時間は12msに
設定されている。これに対して、本ルーチンは、1ms 毎
に起動される。本ルーチンが起動すると、先ずステップ
500において、油圧制御用2位置弁62**への出力が
増圧出力であるかを判別する。尚、**は、本ステップ
が実行される毎に、順にFL→FR→RL→RRへと変
更されるものとする。
【0123】上記の判別の結果、油圧制御用2位置弁6
**への出力が増圧出力である場合は、ステップ502
へ進み、増圧時間タイマTA** をインクリメントする処
理を行う。一方、油圧制御2位置弁62**への出力が増
圧出力でない場合、すなわち減圧出力である場合は、ス
テップ504へ進み、減圧時間タイマTR** をインクリ
メントする処理を行う。
【0124】上記ステップ502、又はステップ504
の処理を終えたら、ステップ506へ進み、4輪全てに
ついて上記ステップ500〜504の処理を実行したか
を判別する。その結果、未だ全ての車輪について上記の
処理が終了していない場合には上記ステップ500へ戻
り、一方、既に全ての車輪について上記の処理が終了し
ている場合は、以後ステップ508へ進む。
【0125】ステップ508では、サンプリング時間計
数用のカウンタCT3 をインクリメントする処理を行
う。次に、ステップ510では、カウンタCT3 の値が
既に12msに到達しているかを判別する。その結果、未
だCT3 ≧12が成立しない場合は、何ら処理を行うこ
となく今回のルーチンを終了し、以後、1ms毎に繰り返
し上記ステップ500以降の処理を実行する。一方、ス
テップ510でCT3 ≧12が成立すると判別された場
合は、ステップ512で、後述するガード算出ルーチン
を起動する処理を行った後今回のルーチンを終了する。
【0126】上述の処理によれば、TR** ,TA** (*
*=FL,FR,RL,RR)には、12msのサンプリ
ング時間内における、ホイルシリンダ66FL,66F
R,66RL,66RRそれぞれについての減圧時間T
R の積算値、及び増圧時間T R の積算値が計数されるこ
とになる。
【0127】図20は、上記の如く計数されたタイマT
R** ,TA** の値に基づいて、DVSOの変動量に対す
るガードを設定すべくECU68が実行する制御ルーチ
ンの1例のフローチャートを示す。本ルーチンは、上記
図19に示す制御ルーチン中ステップ512が実行され
る毎に、すなわち12ms毎に起動される。尚、図20に
おいて“**”は、上記図19の場合と同様にFL,F
R,RL,RRの何れかを指す記号である。
【0128】図20に示すルーチンにおいては、先ずス
テップ600において、増圧時間タイマTA** が減圧時
間タイマTR** に比して大きいか否かを判別する。尚、
**は、本ステップ600が実行される毎に、順にFL
→FR→RL→RRへと変更される。
【0129】上記の判別の結果、TA** >TR** が成立
する場合は、車輪**についてのW/C油圧がサンプリ
ング時間内に増圧されていると推定することができる。
この場合、W/C油圧の増圧量は、サンプリング時間中
にTA** −TR** 時間だけ増圧がなされ、かつ、減圧が
されなかった場合と同等となる。そこで、本ルーチンに
おいては、上記ステップ600の条件が成立する場合、
ステップ602へ進み、増圧時間タイマTA** を“T
A** −TR** ”に、また、減圧時間タイマTR**
“0”に、それぞれ書き換える処理を行う。この場合、
書き換えられたTA**の値は、サンプリング時間内の増
圧時間TA の総和から疑似保持モードの実行に伴う増圧
時間TA を相殺した値となる。従って、その値を基礎と
すれば、DVSOのガードを適切な範囲内に設定するこ
とができる。
【0130】上記ステップ600においてTA** >T
R** が不成立であると判断された場合は、ステップ60
4へ進み、TA** <TR** が成立するか否かを判別す
る。この条件が成立する場合は、車輪**についてのW
/C油圧がサンプリング時間内に減圧されていると推定
することができる。また、その減圧量は、サンプリング
時間中にTR** −TA** 時間だけ減圧がなされ、かつ、
増圧がされなかった場合と同等であると推定できる。
【0131】そこで、本ルーチンにおいては、上記ステ
ップ604の条件が成立する場合は、以後ステップ60
6へ進み、減圧時間タイマTR** を“TR** −TA**
に、また、増圧時間タイマTA** を“0”に、それぞれ
書き換える処理を行う。この場合、書き換えられたT
R** の値は、サンプリング時間内の減圧時間TR の総和
から疑似保持モードの実行に伴う減圧時間TR を相殺し
た値となる。従って、その値を基礎とすれば、DVSO
のガードを適切な範囲内に設定することができる。
【0132】上記ステップ604においてTA** <T
R** が不成立であると判断された場合は、車輪**につ
いてのW/C油圧がサンプリング時間内にほぼ変動して
いないと推定することができる。従って、この場合は、
サンプリング時間中には増圧も減圧もなされなかったと
見做すことができる。そこで、本ルーチンにおいては、
上記ステップ604の条件が不成立である場合、以後、
ステップ608へ進み、増圧時間タイマTA** 、及び減
圧時間タイマTR** を、共に“0”とする処理を行う。
この場合、書き換えられたTA** 、TR** に、疑似保持
モードの実行に伴う影響が重畳されることはない。従っ
て、それらの値を基礎とすれば、DVSOのガードを適
切な範囲内に設定することができる。
【0133】上記ステップ602、606又は608の
処理を終えたら、次に、ステップ610へ進み、4輪全
てについて上記ステップ600〜608の処理を実行し
たかを判別する。その結果、未だ全ての車輪について上
記の処理が終了していない場合には上記ステップ600
へ戻り、一方、既に全ての車輪について上記の処理が終
了している場合は、以後ステップ612へ進む。
【0134】ステップ612では、上記の如く求めた増
圧タイマTA** 及び減圧時間タイマTR** (**=F
L,FR,RL,RR)に基づいて、DVSOの変化量
に関する増圧側及び減圧側のガード値βup,βdownを求
める。これらβup,βdownは、それぞれ次式に従って求
める。
【0135】 βup=(TAFL +TAFR )×0.006 +(TARL +TARR )×0.004 (1) βdown=(TRFL +TRFR )×0.006 +(TRRL +TRRR )×0.004 (2) 車体減速度DVSOは、ホイルシリンダ66FL,66
FR,66RL,66RRのW/C油圧が増減すること
により変化する。本ルーチンにおいては、W/C油圧の
増減量が、上記ステップ602、606、又は608で
書き換えたTA* * ,TR** に反映されている。従って、
サンプリング時間中に車体減速度DVSOに生じ得る変
化量は、TA** ,TR** に応じた値となるはずである。
【0136】また、車両の減速時には、後輪RL,RR
に比して前輪FL,FRに大きな荷重が加わるため、前
輪FL,FR側のW/C油圧の増圧量は、後輪RL,R
R側のW/C油圧の増圧量に比して、車体減速度DVS
Oに大きな影響を与える。従って、車体減速度DVSO
は、前輪FL,FR側のW/C油圧の変動に対して比較
的敏感となり、後輪RL,RR側のW/C油圧の変動に
対して比較的鈍感となる。
【0137】これに対して、上記(1) 式の如くβupの演
算式を設定した場合、βupは、増圧時間タイマTA**
合成値に応じた値となると共に、前輪FL,FR側の増
圧時間タイマTAFL ,TAFR の値と、後輪RL,RR側
の増圧時間タイマTARL ,T ARR の値とが、6:4の比
率で反映された値となる。また、上記(2) 式の如くβdo
wnの演算式を設定した場合、βdownは、減圧時間タイマ
R** の合成値に応じた値となると共に、前輪FL,F
R側の減圧時間タイマTRFL ,TRFR の値と、後輪R
L,RR側の減圧時間タイマTRRL ,TRRR の値とが、
6:4の比率で反映された値となる。このため、本ルー
チンによれば、車体減速度DVSOの増加側のガード値
βup、及び減少側ガード値βdownを適切に設定すること
ができる。
【0138】上記の如く、ステップ612においてβu
p,βdownを演算したら、その後ステップ614で増圧
時間タイマTA** 、及び減圧時間タイマTR** を共に
“0”にクリアして、今回のルーチンを終了する。以
後、上記図19に示す制御ルーチンが起動され、12ms
のサンプリング時間が経過する毎に、上記ステップ60
0以降の処理が繰り返し実行される。
【0139】図21は、上記の如く設定したβup,β
downを用いて車体減速度DVSOを演算すべくEC
U68が実行する制御ルーチンの一例のフローチャート
を示す。尚、図13に示すルーチンは、所定時間ΔT毎
の起動される定時割り込みルーチンである。
【0140】本ルーチンにおいては、先ずステップ70
0で、上記図13に示す制御ルーチンにより求めた車速
VSOを微分して暫定車体減速度DVSOXを求める。
具体的には、上記図13に示す制御ルーチンによって時
刻tn-1 に検出された車速VSOn-1 から時刻tn に検
出された車速VSOn を減算し、その減算値を所定時間
ΔTで除算することにより、時刻tn における暫定車体
減速度DVSOXn を求める。
【0141】上記の処理を終えたら、次にステップ70
2へ進み、ECU68においてABS制御が実行されて
いるか否かを判別する。ABSが作動していない場合
は、車速VSOに重畳する誤差が少なく、その微分値が
比較的精度良く実際の車体減速度DVSOに一致してい
ると考えられるからである。
【0142】このため、上記ステップ702においてA
BS制御が実行されていないと判断される場合は、以
後、ステップ704以降の処理を実行する。ステップ7
04は、時刻tn の暫定車体減速度DVSOXn と、時
刻tn-1 の車体減速度DVSO n-1 とを比較して、車両
が減速状態にあるのか、加速状態にあるのかを判別する
ステップである。上記の判別の結果、DVSOXn ≧D
VSOn-1 が成立する場合は、車両が減速状態にあると
判断してステップ706へ進む。一方、DVSOXn
DVSOn-1 が不成立である場合は、車両が加速状態に
あると判断してステップ708へ進む。
【0143】ところで、本実施例においては、所定時間
ΔTを12msに設定している。12msの間に生じ得る車
体減速度DVSOの変動量は、ほぼ0.1G程度であ
る。従って、DVSOXn とDVSOn-1 との間に、
0.1を超える偏差が存在する場合は、DVSOXn
何らかの誤差が重畳していると考えることができる。
【0144】そこで、ステップ706では、上記ステッ
プ700で求めたDVSOXn と、DVSOn-1 に0.
1を加算した値とを比較し、両者のうち小さい方を最終
的に時刻tn における車体減速度DVSOn として採用
する処理を行う。また、ステップ708では、上記ステ
ップ700で求めたDVSOXn と、DVSOn-1 から
0.1を減算した値とを比較し、両者のうち大きい方を
最終的に時刻tn における車体減速度DVSOn として
採用する処理を行う。
【0145】この場合、時刻tn-1 からtn に至る過程
で、DVSOXn が不当な増加されている場合には、最
終的なDVSOn がDVSOn-1 +0.1にガードさ
れ、一方、時刻tn-1 からtn に至る過程で、DVSO
n が不当な減少されている場合には、最終的なDVS
n がDVSOn-1 −0.1にガードされる。従って、
車体減速度DVSOn に不当な大きな誤差が重畳される
ことがなく、DVSOnについて高精度な推定精度を得
ることができる。
【0146】上記ステップ702において、ABS制御
が実行されていないと判別された場合は、以後、ステッ
プ710へ進み、上記ステップ704と同様に、時刻t
n の暫定車体減速度DVSOn 時刻tn-1 の車体減
速度DVSOn-1 とを比較して、車両が減速状態にある
のか、加速状態にあるのかの判別を行う。
【0147】その結果、DVSOXn ≧DVSOn-1
成立する場合は、車両が減速状態にあると判断してステ
ップ712へ進む。一方、DVSOXn ≧DVSOn-1
が不成立である場合は、車両が加速状態にあると判断し
てステップ714へ進む。ABSの作動中は、各ホイル
シリンダ66FL,66FR,66RL,66RRのW
/C油圧の変動量に基づいて、上述の如く車体減速度D
VSOにガードを設定することができる。
【0148】そこで、ステップ712では、上記ステッ
プ700で求めたDVSOXn と、DVSOn-1 にβu
pを加算した値とを比較し、両者のうち小さい方を最終
的に時刻tn における車体減速度DVSOn として採用
する処理を行う。また、ステップ714では、上記ステ
ップ700で求めたDVSOXn と、DVSOn-1 から
βdownを減算した値とを比較し、両者のうち大きい
方を最終的に時刻tnにおける車体減速度DVSOn
して採用する処理を行う。
【0149】この場合、時刻tn-1 からtn に至る過程
で、DVSOXn が不当な増加されている場合には、最
終的なDVSOn がDVSOn-1 +βupにガードさ
れ、一方、時刻tn-1 からtn に至る過程で、DVSO
n が不当な減少されている場合には、最終的なDVS
n がDVSOn-1 −βdownにガードされる。従っ
て、車体減速度DVSOn に不当な大きな誤差が重畳さ
れることがなく、DVSOn について高精度な推定精度
を得ることができる。
【0150】上記の処理を終えたら、次に、ステップ7
16へ進み、上記の如く求めた車体減速度DVSO
n が、0.1より小さいか否かの判別を行う。この
“0.1”は、ABSの作動中に最低限発生すると考え
られる減速度である。従って、DVSOn <0.1が成
立する場合には、DVSOn に何らかの誤差が重畳して
いると考えることができる。
【0151】このため、上記ステップ716においてD
VSOn <0.1が不成立であると判別された場合は、
上記ステップ712、又は714で求めた減速度DVS
nが正常値であると判断し、以後、何ら処理を行うこ
となく今回のルーチンを終了する。一方、上記ステップ
716でDVSOn <0.1が成立すると判別された場
合は、以後、ステップ718においてDVSOn を0.
1として今回の処理を終了する。かかる処理によれば、
ABS制御の実行中に、誤って減速度DVSO n が過少
判断されるのを防止することができる。
【0152】上記図21に示す処理によれば、ABS制
御が実行されているか否かに関わらず、車体減速度DV
SOn を精度良く推定することができる。特に、本実施
例の制動力制御装置においては、上記図21の制御に用
いられるガード値βup,βdownが、疑似保持モー
ドの実行に起因する過剰な増圧時間TA 又は減圧時間T
R を相殺した状態で演算されている。このため、本実施
例の制動力制御装置によれば、ABS制御中におけるW
/C油圧の保持が、疑似保持モードにより実行される構
成であるにも関わらず、疑似保持モードを用いない装置
と同等の精度で,ABS制御中の車体減速度DVSOを
推定することができる。
【0153】ところで、上記の如く推定した車体減速度
DVSOは、本実施例の制動力制御装置において、疑似
保持モードの実行条件を設定する過程で用いられる(図
6中ステップ104)。しかしながら、車体減速度DV
SOの用途は、これに限定されるものではなく、車両の
走行状態を表すパラメータとして広く用いることができ
る。
【0154】尚、上述した実施例においては、マスタシ
リンダ16及びポンプ48が前記した液圧源12に、リ
ザーバタンク46が前記した低圧源P14に、油圧制御
用2位置弁62FL,62FR,62RL,62RRが
前記した2位置弁P16に、それぞれ相当している。
【0155】また、ECU68が、上記ステップ100
〜104の処理を実行することにより前記した基準減速
度記憶ステップS10が、上記ステップ200〜20
6、又はステップ300〜354の処理を実行すること
により前記した増減時間偏差検出ステップS12が、上
記ステップ108の処理を実行することにより前記した
疑似保持条件設定ステップS14が、それぞれ実現され
ている。
【0156】更に、上述した実施例においては、ECU
68が上記ステップ500〜506の処理を実行するこ
とにより、前記した増圧時間積算手段P18、及び減圧
時間積算手段P20が、上記ステップ600〜610の
処理を実行することにより前記した増減圧偏差演算手段
P22が、上記ステップ612の処理を実行することに
より前記したガード値設定手段P26が、また、上記ス
テップ710〜714の処理を実行することにより前記
した車体減速度演算手段P26が、それぞれ実現されて
いる。
【0157】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、減圧モードが開始される時点の車体減速度によっ
て、その時点のホイルシリンダ油圧を、また、減圧モー
ドが開始された後の増減時間偏差によって、減圧モード
開始後のホイルシリンダ油圧の変動量を、それぞれ把握
することができる。従って、本発明によれば、任意の時
期におけるホイルシリンダ油圧の把握することが可能で
ある。そして、本発明によれば、それらの車体減速度、
及び増減時間偏差に基づいて、疑似保持モード中におけ
る増圧時間と減圧時間との割合を、常にホイルシリンダ
油圧に応じた適切な割合とすることができる。このた
め、本発明に係る制動力制御方法によれば、保持すべき
ホイルシリンダ油圧の高低に関わらず、疑似保持モード
中に、常に精度良くホイルシリンダ油圧を保持すること
ができる。
【0158】請求項2記載の発明によれば、制動力制御
実行中の所定期間内における増圧時間の積算値と減圧時
間の積算値との偏差に基づいて車体減速度のガード値を
設定される。このため、ホイルシリンダ油圧の保持が、
疑似保持モードによって実行されるにも関わらず、現実
にホイルシリンダ油圧に発生し得る油圧変動量に応じた
ガード値を設定することができる。従って、本発明に係
る車体の減速度推定装置によれば、疑似保持モードが実
行される環境下においても、高精度に車体減速度を算出
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載の発明の原理構成図である。
【図2】請求項2記載の発明の原理構成図である。
【図3】本発明の一実施例である制動力制御装置の全体
構成図である。
【図4】本実施例の制動力制御装置に用いるマスタシリ
ンダの正面断面図である。
【図5】アンチロックブレーキシステムの作動時におけ
るホイルシリンダ油圧の変動状態を表す図である。
【図6】本実施例において電子制御ユニットが実行する
疑似保持条件設定ルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【図7】本実施例において電子制御ユニットが実行する
増減時間偏差計数ルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【図8】本実施例において電子制御ユニットが実行する
増減時間偏差計数ルーチンの他の例のフローチャート
(その1)である。
【図9】本実施例において電子制御ユニットが実行する
増減時間偏差計数ルーチンの他の例のフローチャート
(その2)である。
【図10】本実施例において電子制御ユニットが実行す
る増減時間偏差計数ルーチンの他の例のフローチャート
(その3)である。
【図11】本実施例において電子制御ユニットが実行す
る増減時間偏差計数ルーチンの他の例のフローチャート
(その4)である。
【図12】制動操作中における車輪速の変動状態を表す
図である。
【図13】本実施例において電子制御ユニットが実行す
る車速演算ルーチンの一例のフローチャートである。
【図14】疑似保持モードを用いない制動力制御装置に
よる制動力制御に伴うホイルシリンダ油圧の変動状態を
表す図である。
【図15】本実施例の制動力制御装置による制動力制御
に伴うホイルシリンダ油圧の変動状態を表す図(その
1)である。
【図16】ホイルシリンダ油圧の変動量に基づく車体減
速度のガード値の幅を表す図である。
【図17】ホイルシリンダ油圧の変動量に基づく車体減
速度のガード値を用いて演算される車体減速度の変動状
態を表す図である。
【図18】本実施例の制動力制御装置による制動力制御
に伴うホイルシリンダ油圧の変動状態を表す図(その
2)である。
【図19】本実施例において電子制御ユニットが実行す
る増減圧偏差演算ルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【図20】本実施例において電子制御ユニットが実行す
るガード値演算ルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【図21】本実施例において電子制御ユニットが実行す
る車体減速度演算ルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【符号の説明】
P10,66FL,66FR,66RL,66RR ホ
イルシリンダ P14 低圧源 P16 2位置弁 P18 増圧時間積算手段 P20 減圧時間積算手段 P22 増減圧偏差演算手段 P24 ガード値設定手段 P26 車体減速度演算手段 S10 基準減速度記憶ステップ S12 増減時間偏差検出ステップ S14 疑似保持条件設定ステップ 16 マスタシリンダ 46 リザーバタンク 58 トラクションコントロールシステム切り換え用2
位置弁 62FL,62FR,62RL,62RR 油圧制御用
2位置弁 64 アンチロックブレーキシステム切り換え用2位置
弁 68 電子制御ユニット(ECU)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪に配設されたホイルシリンダを液圧
    源に導通させる増圧位置と、前記ホイルシリンダを低圧
    源に導通させる減圧位置とを実現する2位置弁を用い
    て、ホイルシリンダ油圧を減圧する必要がある場合には
    ホイルシリンダ油圧の減圧を図る減圧モードを実行し、
    ホイルシリンダ油圧を保持する必要がある場合には前記
    2位置弁を繰り返し増圧位置と減圧位置とにして疑似保
    持モードを実行する制動力制御方法において、 前記減圧モードが開始された時点の車体減速度を基準減
    速度として記憶する基準減速度記憶ステップと、 前記減圧モードが開始された後、前記2位置弁が増圧位
    置とされる時間と、前記2位置弁が減圧位置とされる時
    間との偏差を増減時間偏差として検出する増減時間偏差
    検出ステップと、 前記基準減速度と、前記増減時間偏差とに基づいて、疑
    似保持モードにおいて前記2位置弁を増圧位置とする時
    間と減圧位置とする時間との割合を設定する疑似保持条
    件設定ステップと、 を備えることを特徴とする制動力制御方法。
  2. 【請求項2】 車輪に配設されたホイルシリンダを液圧
    源に導通させる増圧位置と、前記ホイルシリンダを低圧
    源に導通させる減圧位置とを実現する2位置弁を用い
    て、ホイルシリンダ油圧を保持する必要がある場合には
    前記2位置弁を繰り返し増圧位置と減圧位置とにして疑
    似保持モードを実行する機能を備える車体減速度推定装
    置において、 制動力制御実行中の所定期間内において、前記2位置弁
    が増圧位置とされる時間の積算値を計数する増圧時間積
    算手段と、 制動力制御実行中の所定期間内において、前記2位置弁
    が減圧位置とされる時間の積算値を計数する減圧時間積
    算手段と、 前記増圧時間積算手段の計数値と、前記減圧時間積算手
    段の計数値との偏差を求める増減圧偏差演算手段と、 前記増減圧偏差演算手段の演算値に基づいて、車体減速
    度の変化量に対するガード値を設定するガード値設定手
    段と、 前記ガード値設定手段が設定したガード値の範囲内で車
    体減速度を演算する車体減速度演算手段と、 を備えることを特徴とする車体減速度推定装置。
JP15054995A 1995-06-16 1995-06-16 制動力制御方法及び車体減速度推定装置 Pending JPH092239A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021524828A (ja) * 2018-05-30 2021-09-16 チンタオ シュイチョウ コンストラクション マシネリー セール アンド サービス カンパニー リミテッド ディスク型の油圧アンチロックブレーキ及びブレーキシステム

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021524828A (ja) * 2018-05-30 2021-09-16 チンタオ シュイチョウ コンストラクション マシネリー セール アンド サービス カンパニー リミテッド ディスク型の油圧アンチロックブレーキ及びブレーキシステム

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