JPH09223628A - 電磁誘導機器の鉄心の消磁方法及び消磁装置を備えた電磁誘導機器 - Google Patents

電磁誘導機器の鉄心の消磁方法及び消磁装置を備えた電磁誘導機器

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JPH09223628A
JPH09223628A JP3083696A JP3083696A JPH09223628A JP H09223628 A JPH09223628 A JP H09223628A JP 3083696 A JP3083696 A JP 3083696A JP 3083696 A JP3083696 A JP 3083696A JP H09223628 A JPH09223628 A JP H09223628A
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voltage
degaussing
frequency
transformer
iron core
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JP3083696A
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Inventor
Yoshimasa Akagi
美雅 赤木
Nobuhiro Hino
悦弘 日野
Yoshiharu Matsumoto
由治 松本
Hiroshi Kuratani
弘 鞍谷
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大容量・高電圧の設備や機材を要することな
く、容易に残留磁束を減少させることのできる電磁誘導
機器の鉄心の消磁方法を提供する。また、低電圧・小容
量の消磁用電源で残留磁束の減少が可能な安価な消磁装
置を備え、電気的な悪影響や励磁突流を抑制でき信頼性
や耐久性の高い電磁誘導機器を得る。 【解決手段】 単相変圧器10の鉄心10aに巻回され
た一次巻線低圧巻線)10bに、消磁用周波数及び消磁
用電圧がともに変圧器10の定格周波数、定格電圧より
も低い消磁用の交流を印加し、消磁用電圧及び消磁用周
波数の少なくとも一方を鉄心10aの残留磁束を低減さ
せるように変化させる。消磁用周波数を定格周波数の1
/1000、例えば 0.05「Hz」とすれば、1/
1000の消磁用電圧を印加して漸次減少させれば消磁
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電磁誘導機器の
鉄心、詳しくは変圧器、変流器、あるいは計器用変圧器
などの電磁誘導機器の鉄心の消磁方法、及び消磁装置を
備えた電磁誘導機器に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、電磁誘導機器、例えば変
圧器において、使用中の当該変圧器の電源を遮断した
後、鉄心に磁束が残留し、偏磁された状態となる。ま
た、工場にて製作された変圧器は、例えば変電所・発電
所等の据付け場所(以下現地という)に搬入する。そし
て、諸試験を実施し、健全性を確認の上、電力系統に併
入する。試験の一つとして直流を使用して巻線抵抗を測
定する試験を行う場合がある。直流を使用した巻線抵抗
試験などの機器特有の試験を終了した後では、鉄心に磁
束が残留し、偏磁された状態となることが広く知られて
いる。
【0003】このような状態で電力系統に当該変圧器を
投入した場合、定格電流の数倍ないし拾数倍もの大きな
励磁突流が発生し、その後、時間とともに減衰し定常状
態となる過渡現象が発生する。このため、変圧器を保護
する保護継電器が誤動作したり、系統電圧の電圧降下が
発生し系統に悪影響を与える。また、変圧器側において
も、機器自身の鉄心が偏磁することによって、印加する
電圧が定格電圧以下であっても鉄心が過飽和の状態とな
る。そして、高調波を多く含んだ励磁電流が流れ、これ
に起因する高調波共振現象による過電圧が発生すること
がある。
【0004】さらに、例えばアーク炉や誘導加熱装置等
に用いられる変圧器においては、極めて頻繁に投入・遮
断が行われる。よって、励磁突流により変圧器の巻線に
発生する大きな電磁力に耐えうる強固な設計が必要とさ
れる。あるいは、これら励磁突流を低減するために、変
圧器の鉄心の磁束密度を小さく設計することが必要にな
る。しかし、これらの方法は変圧器自身の大きさや重量
が増加し、経済的にも問題がある。
【0005】従って、これらの不都合な点を防止するた
めに、鉄心の残留磁束を低減ないしほぼ零にする消磁が
行われる。従来の消磁方法として、例えば特開平7−2
3526号公報に示されたものがある。これは、三相三
脚の鉄心を備えた変圧器の三相結線された三つの巻線の
内の中央の鉄心脚に巻回された巻線に単相交流電源を接
続する。単相交流電源が発生する減衰交流電圧で巻線を
励磁し、中央の鉄心脚と同時に他の両側の鉄心脚の残留
磁束を零にするようにしたものである。
【0006】また、現地に搬入された変圧器は、試験の
一つとして直流を使用して巻線抵抗を測定する試験を行
う。このときに鉄心に残留する磁束を低減するための消
磁作業が行われる。従来は、例えば次のようにして鉄心
の消磁が行われている。現地の所内用電源、例えば50
[Hz]、6.0[kV]の電源に誘導電圧調整器を接
続し、誘導電圧調整器の出力電圧を昇圧変圧器にて昇圧
して消磁すべき変圧器の巻線に印加できるようにする。
誘導電圧調整器により電圧を徐々に変圧器の定格電圧近
くまで上昇させて所定時間保持し、しかる後励磁電圧を
漸次零まで下降させていく。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、変圧器
の電源をしゃ断した後や、現地における変圧器の試験を
終了した後においては、鉄心に偏磁した磁束が残留す
る。一般にこの残留磁束を消磁させるためには、鉄心の
磁束を一度所定の磁束レベルまで上げてから、徐々に下
げていく方法が採られている。
【0008】いずれにしても、従来の消磁方法は変圧器
の定格周波数と同じ周波数の交流を用い、巻線に印加す
る電圧を巻線の定格電圧の近傍まで上昇させて行なって
いた。このため、消磁用の電源及び機器として少なくと
も変圧器の励磁容量以上の大きなものを必要とする。従
って、これらのものを、鉄心の消磁用として設けること
は設置スペース、費用等の点からも困難であった。
【0009】現地にて変圧器の試験を実施後消磁を行う
場合、所内用電源、誘導電圧調整器、昇圧変圧器は、少
なくとも被試験器である変圧器の励磁容量以上の容量を
必要としていた。一方、励磁電圧においても、所定巻線
の定格電圧レベルまでの高電圧が発生可能な設備や機材
を必要としていた。例えば、1000/3[MVA]、
一次電圧525/√3[kV]、二次電圧275/√3
[kV]、三次電圧63[kV]の超高圧の単相変圧器
においては、少なくとも1000[kVA]、100
[kV]程度の容量・電圧を有する設備、機材を別途用
意する必要があった。
【0010】特に、建設中の現地においては、消磁のた
めの大容量の電源の確保が困難である。また、例えこれ
に見合う電源の容量が確保されたとしても、当該消磁作
業に必要な設備・機材、具体的には誘導電圧調整器、昇
圧変圧器などの輸送、搬入、据え付け、組み立て、分解
及び搬出等の各作業に多大な労力と時間を要していた。
また、現地に据付けられる変圧器の場合、絶縁強度の健
全性試験の実施前に、鉄心の消磁のために変圧器の巻線
に定格電圧近くまで電圧を印加することとなる。このた
め、変圧器の内部には相応の高電圧が発生し、試験・検
証のための手順上避けられないこととはいえ、変圧器自
身にとっても決して望ましいことではなかった。さら
に、非常に高い電圧を取扱うために取扱いが困難であ
り、高度な専門技術者を必要とする。
【0011】さらに、消磁効果を確認するためには、例
えば変圧器の印加電流の減衰状況を電流計及び表示装置
の励磁電流波形の目視によって確認していたため、鉄心
の偏磁程度や消磁後の消磁の程度の判断を的確に行うこ
とが困難であった。
【0012】この発明は、上記のような問題を解決する
ためになされたもので、次のようなことを目的とする。 a.低電圧、小容量の消磁の交流で電磁誘導機器の鉄心
の残留磁束を減少させることのできる電磁誘導機器の鉄
心の消磁方法を提供すること。 b.あわせて、偏磁あるいは消磁の程度を簡便に確認で
きる鉄心の消磁方法を提供すること。 c.定格電圧よりも低い電圧を印加して、鉄心の残留磁
束を減少させ異常電位振動などの異常現象や励磁突流を
抑制できる消磁装置を備えた信頼性や耐久性の高い電磁
誘導機器を得ること。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に記
載の電磁誘導機器の鉄心の消磁方法は、鉄心に巻回され
交流電圧が印加される巻線に消磁用電圧及び消磁用周波
数がともに交流電圧の電圧及び周波数よりも低くかつ消
磁用電圧及び消磁用周波数の少なくとも一方が鉄心の残
留磁束を低減させるように変化する消磁用の交流を印加
する方法である。鉄心に発生する磁束は巻線に印加され
る消磁用電圧に比例し消磁用周波数に反比例する。従っ
て、消磁用周波数を低くすれば巻線に印加すべき消磁用
電圧は低くてすむ。また、消磁用電圧を漸次減少させる
か、消磁用周波数を時間とともに増加させれば、鉄心に
発生する磁束は時間とともに減少し、消磁される。例え
ば、消磁用周波数を電磁誘導機器の定格周波数の1/1
000とすれば、消磁用電圧は定格電圧の1/1000
ですむ。
【0014】この発明の請求項2に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法は、電磁誘導機器の交流電圧の周波数
は商用周波数であり、消磁用電圧が消磁用周波数が商用
周波数よりも低い周波数から漸次増加するように電磁誘
導機器の巻線に印加する方法である。
【0015】この発明の請求項3に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法は、三相変圧器の三つの鉄心の内の二
つの鉄心にそれぞれ巻回された巻線を並列にして消磁用
の単相の交流を印加する方法である。消磁用の交流は単
相であり、二つの相の巻線を並列にして印加するので、
作業が容易である。
【0016】この発明の請求項4に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法は、消磁用電圧をその波高値が最大の
位相から印加するとともに、鉄心の磁束と巻線に流れる
消磁用電流とを鉄心の磁化ヒステリシス特性として描か
せる方法である。描かれた磁化ヒステリシス特性から偏
磁や残留磁束を視覚的に知ることができる。
【0017】この発明の請求項5に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器は、鉄心に巻回され交流電圧が印加さ
れる巻線に消磁用電圧及び消磁用周波数がともに交流電
圧の電圧及び周波数よりも低い消磁用の交流であって消
磁用電圧及び消磁用周波数の少なくとも一方が鉄心の残
留磁束を低減させるように変化する消磁用の交流を印加
する消磁装置を備えたものである。消磁用周波数及び消
磁用電圧が電磁誘導機器の定格周波数、定格電圧より低
いので消磁装置は低電圧、小容量のものになる。また、
鉄心に残留する磁束を低減することにより、電磁誘導機
器が電源に接続されたときの異常電位振動や励磁突流を
抑制でき、電磁誘導機器の信頼性や耐久性が向上する。
【0018】この発明の請求項6に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器は、交流電圧の周波数が商用周波数で
あり、消磁装置が消磁用周波数が商用周波数よりも低い
周波数から漸次増加するようにされたものである。
【0019】この発明の請求項7に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器は、電磁誘導機器が三つの鉄心にそれ
ぞれ巻回された三つの巻線を有する三相変圧器であっ
て、消磁装置が三つの鉄心の内の二つの鉄心に巻回され
た巻線を並列にして消磁用の単相の交流を印加するよう
にされたものである。消磁用の交流が単相で、巻線を並
列にして消磁用電圧を印加するようにされているので、
構成が簡易で、安価になる。
【0020】この発明の請求項8に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器は、消磁用の交流が巻線に印加されて
いるとき巻線への交流電圧の印加を禁止する禁止手段を
消磁装置に設けたものである。消磁用の交流を印加中に
誤って巻線に消磁用電圧よりも高い交流電圧を印加する
おそれがない。
【0021】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.図1〜図4は、この発明の実施の
一形態を示すものであり、図1は変圧器の消磁回路を示
す回路図、図2は低周波電源の構成を示す回路図であ
る。図3は低周波電源の発生電圧を示す波形図、図4は
消磁の状況を示す磁化ヒステリシス曲線である。
【0022】これらの図において、変圧器10は、鉄心
10a、鉄心10aに巻回された一次巻線(低圧巻線)
10b、二次巻線10c及び図示しない三次巻線を有す
る。変圧器10の仕様は、例えば、単相、容量1000
/3[MVA]、周波数50[Hz]、一次電圧525
/√3[kV]、二次電圧275/√3[kV]、三次
電圧63[kV]であり、この単相の変圧器が3台にて
三相容量1000[MVA]の変圧器を構成する。な
お、説明の便宜上、三次電圧を発生する巻線を一次巻
線、二次電圧を発生する巻線を二次巻線を称している。
【0023】商用周波数の電源12から低周波電源14
に、200[V]、50[Hz]の商用周波数の電力が
供給される。低周波電源14は、個別には図示しないが
低周波の信号を発生する信号発生器とこの信号を増幅す
る増幅器とを有する。この実施の形態では、周波数0.
01〜1[Hz]可変、電圧(実効値)0〜120
[V]可変、定格電流10[A]の単相の低周波の正弦
波の可変電圧可変周波数の交流を出力しうる。
【0024】低周波電源14は、図2にその構成を示す
ように、コンバータ部14a、インバータ部14b、ラ
インフィルタ14c、並列コンデンサ14dを有する。
低周波電源14の詳細構成や動作については、例えば電
気学会編、新版電気工学ハンドブック第5.2章(第7
26頁〜第730頁)「電圧形インバータ」(昭和63
年2月刊行)に記載されているような周知のものである
ので、詳細説明を省略する。
【0025】図2において交流側端子R,S,Tを介し
て電源12から商用周波数の三相交流が供給される。こ
の三相交流を互いに逆並列に接続された6組のサイリス
タ14aaが三相ブリッジ結線されたコンバータ部14
aにて直流に変換する。なお、サイリスタ14aaにて
直流電圧の制御をする。さらに、変換された直流を、4
個のトランジスタ14bbが単相ブリッジ結線されたイ
ンバータ部14bにて交流に変換し、波形を整形して正
弦波の単相の交流電圧Eを出力端子x,yに発生する。
【0026】図一に戻って、開閉器16は負荷回路を開
閉するものであり、低周波電源14の出力端子x,yに
接続されている。限流抵抗18が開閉器16の変圧器1
0側に設けられ、鉄心の飽和時の励磁電流jを低周波電
源14の定格電流以下に制限する。すなわち、低周波電
源14は電圧Eを発生し、開閉器16、限流抵抗18を
介して変圧器10の巻線10bに消磁用の交流である低
周波の励磁電圧Ecが印加される。分圧抵抗20は変圧
器10の巻線10bに並列に接続され、巻線10bに印
加される励磁電圧Ecを分圧して分圧端子20bから出
力する。シャント抵抗22は無誘導に製作されており、
巻線10bに流れる励磁電流jを電圧信号に変換して端
子22a,22bから出力する。
【0027】また、積分手段24は分圧抵抗20の分圧
端子20a,20bに接続されており、巻線10bに印
加される励磁電圧Ecの分圧値を積分して鉄心に加わる
磁束に応じた電圧信号を出力する。XYレコーダ26
は、積分手段24の出力、すなわち磁束Φと、シャント
抵抗22により電圧に変換された励磁電流jに応じた電
圧信号をその両端子22a,22bから受けてこれを記
憶する。励磁電流j、磁束ΦをCRT(陰極線管)の画
面のX軸、Y軸方向に表示して鉄心の磁化ヒステリシス
曲線を描く。
【0028】また、積分手段24及びXYレコーダ26
は一体に構成され、図示しないが、マイクロプロセッ
サ、読み出し専用メモリ(以下、ROMという)、ラン
ダムアクセスメモリ(以下、RAMという)を有する。
そして、ROMに記憶された所定のプログラムに従って
上記励磁電圧Ecを積分して磁束Φを求めて記憶し、同
時に記憶された励磁電流jとに基づき、CRTに鉄心の
磁化ヒステリシス曲線を描かせる。なお、この実施の形
態における低周波電源14及び開閉器16がこの発明に
おける消磁装置である。
【0029】次に、図1に示した回路図における変圧器
10の鉄心10aの消磁方法について説明する。変圧器
の巻線の誘起起電力Ee(実効値)は、周波数をf、巻
線の巻数をn、鉄心の磁束の最大値をΦmとしたとき、
一般に次の(1)、(2)式の関係が成立つ。 Ee =4.44f・n・Φm ・・・(1) よって、 Ee/f=(4.44・n)Φm ・・・(2) すなわち、磁束ΦmはEe/fに比例する。従って、同
じ磁束Φmを発生させるために巻線10bに印加すべき
電圧Ecは、周波数fを1/1000、つまり0.05
[Hz]にすれば、1/1000でよいことになる。
【0030】飽和磁束値Φsは変圧器10の鉄心10a
に使用されている珪素鋼板の特性から得られ、巻線10
bの巻数nは定っている。変圧器10の定格周波数fを
50[Hz]として、これらの値を上記(2)式に代入
して、定格周波数において飽和磁束励磁電圧Esを求め
ると、例えば100[kV]となる。従って、巻線10
bに印加する交流の消磁用周波数を0.05[Hz]に
すれば、印加すべき消磁用電圧(実効値)Esは100
[kV]の1/1000で100[V]となる。
【0031】また、変圧器10の巻線10bに印加する
消磁用の交流の消磁用周波数を0.1[Hz]にすれ
ば、印加すべき電圧Esは100[kV]の0.1/5
0=1/500で200[V]となる。巻線に印加する
消磁用の交流の周波数が低いほど消磁用の電源の容量が
小さくなるが、周波数をあまり低くすると消磁に要する
時間が長くなるので、両者の兼ね合いから適切な周波数
を選定する。
【0032】この実施の一形態においては、低周波電源
14の発生電圧Eの初期値(実効値)は、汎用的な低周
波電源14に鑑み、一般的に取り扱いが容易な電圧であ
る100Vに設定した。このときの周波数は、0.05
[Hz](一定)とした。以下、変圧値10の鉄心10
aの消磁方法について説明する。 a.低周波電源14の発生電圧Eの最初の1[サイク
ル]の波高値e1を100×√2[V]、周波数を0.
05[Hz]に設定する。そして、発生電圧Eの波高値
e1が最大の100×√2[V]のときに巻線10bに
電圧が印加されるように位相を合わせて励磁を開始す
る。 b.低周波電源14の発生電圧Eは、励磁開始後、図3
に示すような例えば周期Ts(20[sec])で1サ
イクルごとにその電圧の波高値e1,e2,e3,e
4,・・ が(e2/e1)=(e2/e3)=(e
4/e3)・・((e2/e1)=0.7)にて減衰す
る電圧である。この電圧を限流抵抗18を介して、5サ
イクル、100[sec]印加する。 c.XYレコーダ26にて消磁後の残留磁束がほぼ零で
あることを確認する。 d.確認後、開閉器16を開放して変圧器10を低周波
電源14から切離す。
【0033】上記のXYレコーダ26による残留磁束Φ
(図4参照)の確認は、次のようにして行なう。低周波
の励磁電流jを電圧に変換したシャント抵抗22の両端
子22a,22bの発生電圧をX軸に、巻線10bに印
加される励磁電圧Ecを積分手段24で積分処理して得
られる鉄心10aの磁束ΦをY軸にとって、XYレコー
ダ26に磁化ヒステリシス曲線を描かせる。図4は、消
磁の過程を鉄心の磁化ヒステリシス特性として描いた一
例を示したもので、縦軸Φは鉄心10aの磁束、横軸j
は低周波の励磁電流である。
【0034】図4において、消磁を行なう前においては
変圧器10の鉄心10aの偏磁レベルはΦ0であり、前
述の図3に示すように発生電圧Eをその波高値eが漸次
低減するようにして励磁する。その結果、磁束Φの変化
はヒステリシスループをたどり、残留磁束はほぼ零のΦ
1まで減少していることがわかる。
【0035】低周波電源14の発生電圧Eは、図3に示
すように正弦波で波高値eが等比級数的に減衰する波形
のものである。この発生電圧Eを、例えば残留磁束の初
期値が図4に示すΦ0であったとき、図3に示されるよ
うな発生電圧Eを限流抵抗18を介して巻線10bに印
加する。すると、鉄心10aの磁束Φは時間とともに増
加していき、やがて完全に飽和するために巻線10bの
インダクタンスLが極めて小さくなるが、限流抵抗18
により所定値を超えないように制限される。このため、
巻線10bに加わる励磁電圧Ecの波形は若干歪む。
【0036】低周波電源14は、対象となる変圧器の低
圧巻線の定格電圧は一般的に200[kV]以下であ
る。従って、低周波電源14は周波数0.1Hz以下、
電圧(実効値)200[V]程度の出力が可能な電源と
すれば、多くの電力用変圧器の消磁に用いることができ
る。さらに、低周波電源14の容量は、鉄心を消磁する
ための容量に加え、変圧器、変圧器に接続されたガス絶
縁機器(GISなど)、負荷等の対地間の静電容量によ
る進相容量分を加味する必要があるが、周波数が0.1
[Hz]程度であれば進相容量分は殆ど無視することが
できる。
【0037】このような消磁方法を採用することによ
り、消磁用電圧は極めて低い電圧とすることができるの
で、従来例にみるような大容量の電源設備や大容量・高
電圧の機材を必要としない。従来の方法においては、消
磁を行うために例えば1000[kVA]の容量の電源
や機器が必要であった。これに対し、例えば上記図1の
実施の形態のものにおいては、容量は100[V]、1
0[A]で1[kVA]程度あれば足りる。従って、低
周波電源14は小形で価格も安価になる。また、設置や
取扱いが簡便となる。
【0038】消磁に必要な電圧は極めて低い電圧である
ので、消磁のために頻繁に電圧を印加しても電気的な悪
影響を与えることがない。あるいは、現地据付け時に変
圧器の健全性の試験前に変圧器に何ら電気的な悪影響を
与えることなく消磁作業を行うことができる。
【0039】励磁電流jをX軸に、磁束ΦをY軸にとっ
て鉄心の磁化ヒステリシス特性が得られるので、偏磁及
び消磁の程度を容易に確認できる。消磁用電圧の波高値
が最大の時点から電圧の印加を開始すれば、すなわち鉄
心に与えるアンペアターンが零の状態から出発すれば、
磁化ヒステリシス曲線から鉄心の残留磁束の初期値Φ0
を容易に確認できる。なお、巻線に印加する消磁用電圧
を徐々に所定の電圧の近傍まで上昇させ、その後時間と
ともに減少させてもよい。しかし、短時間にて消磁を行
なうためや残留磁束の初期値Φ0の確認を容易にするた
めに、図3に示すように発生電圧Eの波高値eが最大の
時点から印加するのがよい。
【0040】発明の実施の形態2.図5は、この発明の
他の実施の形態を示すものであり、低周波電源の発生電
圧を示す波形図である。構成については、図1に示した
ものと同様であるが、低周波電源14の制御動作が異な
る。すなわち、発生電圧Eを一定とし、周波数fを変化
させるものである。
【0041】次に動作について説明する。磁束Φは、前
記(2)式に示すとおり、Ee/fに比例するので、低
周波電源14の発生電圧E(波高値e)を図5に示すよ
うに一定にする。例えば、発生電圧Eを100(波高値
約141)[V]一定にして,周波数をf1=0.05
[Hz]、つまり周期T1=20[sec]にして印加
開始する。1サイクル毎に周期T2,T3,T4, ・
・ を(T2/T1)=(T2/T3)=(T3/T
4)・・ 、((T2/T1)=0.7)となるよう
に、漸次減少(周波数は増加)させる。このようにして
も、同様に鉄心10aの消磁を行うことができる。
【0042】発明の実施の形態3.上記発明の実施の形
態1及び実施の形態2においては、巻線10bに印加す
る消磁用の交流の周波数f、発生電圧Eのいずれかを一
定にして消磁するものを示した。しかし、対象とする変
圧器の容量に応じて、図1における低周波電源14の出
力を可変電圧可変周波数に制御して、漸次その周波数f
を増加させながら同時に発生電圧Eを漸次減少させても
鉄心10aの消磁が可能である。もちろん、消磁用電圧
や消磁用周波数を変化させる割合は、消磁の目的を損な
わない程度にすればよい。なお、上記のように限流抵抗
18を介して低周波電源14の発生電圧Eを巻線10b
に供給する方法が簡易である。しかし、低周波電源14
により励磁電流jが所定値を超えないように制御するこ
ともできる。この場合、発生電圧Eは歪波となる。
【0043】発明の実施の形態4.図6〜図8は、さら
にこの発明の他の実施の形態を示すもので、図6は三相
変圧器の消磁回路を示す結線図、図7は図6における三
相変圧器が外鉄形の場合の鉄心の磁束の状態を示す説明
図である。図8は図6における三相変圧器が内鉄形の場
合の鉄心の磁束の状態を示す説明図である。これらの図
において、変圧器30は外鉄形の電力用変圧器であり、
一次巻線(低圧巻線)30bの各相巻線30bu,30
bv,30bwが、三角結線されて端子u,v,wを有
する。高圧側の巻線30cの各相巻線30cU,30c
V,30cWが、星形結線されて三相の端子U,V,W
及び中性点端子Oが設けられている。
【0044】第1の切換リレー32は励磁されたとき閉
じる4個の接点32a〜32dを有する。第1の切換リ
レー32は、図6に示すように低周波電源14から低周
波の消磁用の電力を変圧器30の低圧側の巻線30bに
供給しうるようにされている。低周波電源14の一方の
端子xは開閉器16、限流抵抗18、及び接点32aを
介して変圧器30の低圧側の端子uに接続される。低周
波電源14の他方の端子yは、開閉器16、シャント抵
抗22、及び接点32bを介して変圧器の低圧側の端子
vに接続される。同時に、端子yは開閉器16及び接点
32cを介して変圧器の低圧側の端子wに接続される。
また、接点32dは、分圧抵抗20を変圧器30の高圧
側の端子Uに接続する。
【0045】第2の切換リレー34は励磁されたとき閉
じる4個の接点34a〜34dを有する。第2の切換リ
レー34は、低周波電源14と変圧器30の巻線30b
との接続状態を切換えるものである。低周波電源14の
一方の端子xは開閉器16、限流抵抗18、及び接点3
4aを介して変圧器30の低圧側の端子vに接続され
る。低周波電源14の他方の端子yは、開閉器16、シ
ャント抵抗22、及び接点34bを介して変圧器の低圧
側の端子wに接続される。同時に、端子yは開閉器16
及び接点34cを介して変圧器の低圧側の端子uに接続
される。また、接点34dは、分圧抵抗20を変圧器3
0の高圧側の端子Vに接続する。
【0046】第1の切換リレー32が励磁された状態で
は、変圧器30の端子v,wが接点32b,32cによ
りシャント抵抗22を介して接続(短絡)される。そし
て、一次巻線30bのu相、w相巻線30bu,30b
wが並列に接続された状態で低周波電源14から限流抵
抗18を介して発生電圧Eの供給を受ける。
【0047】一次巻線30bのu相巻線30buに流れ
る励磁電流jはシャント抵抗22により電圧に変換され
て端子22a,22bから出力される。分圧抵抗20は
接点32dにより変圧器30の高圧側の巻線30cのU
相端子と中性点Oとの間に挿入される。分圧抵抗22
は、U相巻線30cUに誘起された電圧である低周波の
励磁電圧(Ecに相当)を分圧して、分圧端子20aか
ら出力する。なお、巻線30bvのインピーダンスは大
きいので巻線30buを流れる電流は端子wへは殆ど分
流しない。よって、シャント抵抗22により巻線30b
uに流れる電流を検出することができる。
【0048】第2の切換リレー34が励磁された状態で
は、変圧器30の端子w,uが接点34b、34cによ
ってシャント抵抗22を介して接続される。そして、一
次巻線30bのu相及びv相巻線30bu,30bvが
並列に接続された状態で、低周波電源14から限流抵抗
18を介して発生電圧Eの供給を受ける。一次巻線30
bのv相巻線30bvに流れる励磁電流jはシャント抵
抗22により電圧に変換されて端子22a,22bから
出力される。分圧抵抗20は接点34dにより変圧器3
0の高圧側の巻線30cのV相端子と中性点Oとの間に
挿入されるように接続される。分圧抵抗20は、V相巻
線30cVに誘起された電圧である低周波の励磁電圧
(Ecに相当)を分圧して分圧端子20aから出力す
る。
【0049】積分手段24は分圧抵抗20の分圧端子2
0aから電圧信号を受ける。この分圧された電圧信号を
ソフトウェア処理により積分して鉄心30au(図7)
に加わる磁束Φを算出する。XYレコーダ26は、積分
手段24の出力、すなわち磁束Φと、シャント抵抗22
により電圧に変換された励磁電流jを電圧信号としてそ
の両端子22a,22bから受けて記憶し、各々に基づ
きCRTの画面のX軸、Y軸に鉄心の磁化ヒステリシス
曲線を描く。なお、この実施の形態における低周波電源
14、開閉器16、切換リレー32,34がこの発明に
おける消磁装置である。
【0050】第1の切換リレー32が励磁された状態で
は、外鉄形の三相変圧器の場合は、図7に示されるよう
に(限流抵抗18、切換リレー32,34、XYレコー
ダ等の図示は省略している)、一次巻線30bvが短絡
されているので中央のv相鉄心30avには磁束が殆ど
通過しない。一方、図7の左右のu相,w相鉄心30a
u,30awには一次巻線30bu,30bwからおの
おの供給される励磁電圧Ecにより磁束Φu,Φwが発
生する。低周波電源14から供給する発生電圧Eを図1
の実施の形態における場合と同様に制御して、次のよう
にして消磁を行う。
【0051】a.低周波電源14の発生電圧Eを図1の
単相の変圧器10の場合と同様に、周波数を約0.05
[Hz]一定に設定する。そして、最初の1[サイク
ル]の実効値を100[V]とし、限流抵抗18を介し
て変圧器30の巻線30bのu相,w相の各巻線30b
u,30bwに発生電圧Eをその波高値eが最大の10
0×√2[V]の時点から印加し励磁を開始する。 b.低周波電源14の発生電圧Eは、励磁開始後、図3
に示す場合と同様にして周期Ts(20[sec])の
1サイクルごとに低減する。すなわち、電圧の波高値e
1,e2,e3,e4, ・・ を(e2/e1)=
(e2/e3)=(e4/e3) ・・ ((e2/
e1)=0.7)となるように、漸次低減し、5サイク
ル、100[sec]印加する。 c.XYレコーダ26にて鉄心30auの残留磁束Φ1
がほぼ零であることを確認する。
【0052】図6においては、シャント抵抗22を低周
波電源14の端子yと第1の切換リレーの接点32bと
の間に1個設けた。しかし、これに加え、低周波電源1
4の端子yと第1の切換リレーの接点32cとの間にも
シャント抵抗22を設けてw相鉄心30aw(図7)の
励磁電流を検出する。また、高圧側の巻線30cWに発
生する電圧を同様に分圧抵抗を設けて検出し、両者によ
り磁化ヒステリシス曲線を描かせれば、w相鉄心30a
wの消磁の状況を同時に確認することができる。
【0053】以上の操作により、変圧器30の鉄心30
au,30awに残留する磁束をほぼ零にすることがで
きる。しかし、鉄心30avの磁気回路には磁束が残留
するので、三相の鉄心30au〜30awを全てほぼ零
に消磁するために、さらに第1の切換リレー32を開放
し、第2の切換リレー34を励磁して低周波電源14と
変圧器30との接続を変更する。
【0054】第1の切換リレー32が開放され、第2の
切換リレー34が励磁された状態では、図7における一
次巻線のw相巻線30bwが短絡されている。従って、
右方のw相鉄心30awには磁束が通過せず、一次巻線
30bu,30bvからおのおの供給される低周波の励
磁電圧Eにより図7の左及び中央のu相,v相鉄心30
au,30avに磁束Φu,Φvが発生する。低周波電
源14から供給する低周波の励磁電圧Eを上記第1の切
換リレー32を励磁して行った場合と同様に励磁周波数
を0.05[Hz]一定にし、励磁電圧(実効値)を1
00[V]から漸次減少させて消磁を行う。同様にXY
レコーダ26に描かせた磁化ヒステリシス曲線にてv相
鉄心30avの消磁を確認する。確認後、第2の切換リ
レー34を開放して低周波電源14から変圧器30を切
離す。
【0055】なお、図示していないが、第1及び第2の
切換リレー32,34を開放するとき巻線30cのイン
ダクタンスのために残留エネルギが存在する場合があ
る。このため、切換リレー32,34の開放時に高電圧
が発生しないように、消磁用電流が流れる巻線を短絡し
て残留エネルギを消費するように、第1及び第2の切換
リレー32,34よりも変圧器30側に短絡用のスイッ
チを設けることもある。
【0056】内鉄形の三相変圧器の場合においても、図
6における変圧器30の代りに内鉄形の三相の変圧器4
0になるだけで結線は図6におけるのと全く同様であ
る。第1の切換リレー32が励磁された状態では、図8
における変圧器40の一次巻線40bの端子vと端子w
とが接点32b,32cによりシャント抵抗22(図6
参照)を介して接続される。一次巻線40bのu相及び
w相巻線40bu,40bwが並列に接続された状態
で、低周波電源14により限流抵抗18を介して低周波
の励磁電圧Eの供給を受ける。
【0057】第1の切換リレー32を閉成したときの変
圧器40の鉄心40aにおける磁束Φu,Φwの状態
は、図8に示すようになる。なお、図8においても限流
抵抗18、切換リレー32,34、XYレコーダ26等
の図示は省略している。このようにして、図7における
外鉄形の変圧器30と同様の方法により、消磁を行うこ
とができる。さらに、v相鉄心40avの消磁を行うに
は、図6における第2の切換リレー34を励磁して、同
様の方法により消磁作業及び消磁の状況の確認を行う。
【0058】発明の実施の形態6.図9、図10は、さ
らにこの発明の他の実施の形態を示すもので、図9は消
磁装置を備えたアーク炉用の外鉄形の三相変圧器を示す
結線図、図10は消磁制御装置の動作を示すフローチャ
ートである。図9において、変圧器50は外鉄形の三相
変圧器で、周波数50[Hz]、容量60[MVA]、
一次電圧140[kV]、定格二次電圧500[V]、
一次側星形結線、二次側三角形結線である。一次巻線側
に負荷時電圧切換器が設けられ、二次側の電圧を後述の
アーク炉57の操業に必要な電圧に調整できるようにさ
れている。主電源51は、主遮断器53を介して変圧器
50に周波数50[Hz]、電圧140[kV]の電力
を供給する。変圧器50の二次側の出力はアーク炉57
に供給される。なお、アーク炉57はアークによる熱を
利用して、自動車の車体等の鋼スクラップを溶解精錬し
て、鋼材を生産するものである。
【0059】電源12から低周波電源54に、200
[V]、50[Hz]の商用周波数の電力が供給され
る。低周波電源54は、周波数0.5〜5[Hz]可
変、電圧12[V]、電流20[A]の正弦波形の定電
圧可変周波数の電力を出力しうるものである。なお、こ
の実施に形態においては、限流抵抗を設けるかわりに低
周波電源54において電流制限を行っている。第1の切
換リレー56は励磁されたとき閉じる3個の接点56a
〜56cを有する。第1の切換リレー56は、図9に示
すように低周波電源54から低周波の消磁用の電力を変
圧器50の低圧側巻線50cに供給するためのものであ
る。低周波電源54の一方の端子xは開閉器16及び接
点56aを介して変圧器50の低圧側の端子uに接続さ
れる。低周波電源54の他方の端子yは、開閉器16及
び接点56bを介して変圧器の低圧側の端子vに接続さ
れる。同時に、端子yは接点56cを介して変圧器の低
圧側の端子wに接続される。
【0060】第2の切換リレー58は励磁されたとき閉
じる3個の接点58a〜58cを有する。第2の切換リ
レー58は、図9に示すように低周波電源54と変圧器
50との接続状態を切換えるものである。低周波電源5
4の一方の端子xは開閉器16及び接点58aを介して
変圧器50の低圧側の端子vに接続される。低周波電源
54の他方の端子yは、開閉器16及び接点58bを介
して変圧器の低圧側の端子wに接続される。同時に、端
子yは接点58cを介して変圧器の低圧側の端子uに接
続される。
【0061】第1の切換リレー56が励磁された状態で
は、二次巻線(低圧巻線)50cのv相巻線50cvが
接点56b,56cを介して短絡される。そして、二次
巻線50cのu相及びw相巻線50cu,50cwが並
列に接続された状態で低周波電源54より低周波の消磁
用電圧の供給を受ける。
【0062】第2の切換リレー58が励磁された状態で
は、二次巻線50cのw相巻線50cwが接点58b、
58cによって短絡される。二次巻線50cのu相及び
v相巻線50cu,50cvが並列に接続された状態で
低周波電源54から低周波の励磁電圧の供給を受ける。
消磁制御装置59は、図示しないがマイクロプロセッ
サ、ROM、RAM等を有する。消磁制御装置59は、
ROMに記憶された制御プログラムにより、主遮断器5
3の投入の禁止、第1及び第2の切換リレー56,58
の開閉制御を行う。なお、この実施の形態における低周
波電源54、開閉器16、切換リレー56,58がこの
発明における消磁装置である。
【0063】以下、図10のフローチャートを参照しな
がら消磁制御装置59の動作を説明する。ステップS1
0において主遮断器53が開放されたか否かを判定し、
開放されている場合はステップS12,14,16,1
8からステップS20へ進む。すなわち、ステップS1
2において主遮断器53の投入禁止指令を発する。ステ
ップS14において計時時間(サイクル)nを零に設定
する。
【0064】ステップS16にて第1の切換リレー56
を閉成して変圧器50の二次巻線50cu,50cwを
並列にした状態で低周波電源54から消磁用電圧を供給
する。低周波電源54の発生電圧Eは、例えば最初の1
サイクル、波高値10×√2[V]、周期1[se
c]、周波数1[Hz]相当の電圧を印加する。そし
て、図5に示した実施の形態における場合と同様に1サ
イクルごとに漸次周期を幾何級数的に短く(周波数を高
く)していく。このときの周期の減少割合は、例えば毎
サイクル0.6(Tn+1/Tn=0.6)とする。印
加電圧、周期を短くする割合等は予め低周波電源54に
て定めておく。ステップS18にて電圧印加開始からの
サイクルn(時間)の計測を始める。ステップS20に
おいて、時間TがN1[サイクル]、例えば5[サイク
ル]を超えたか否かを判定し、5[サイクル]を超えた
らステップS22に進む。
【0065】ステップS22において、計時時間(サイ
クル)nを零にリセットを行う。ステップS24におい
て、第1の切換リレー56を開放し、第2の切換リレー
58を閉成する。変圧器50の二次巻線50cu,50
cvを並列にした状態で低周波電源54から電圧を供給
する。発生電圧Eは、同様に最初の1サイクル、波高値
10×√2[V]、周期1[sec]、周波数1[H
z]相当の電圧を印加する。そして、1サイクルごとに
漸次周期を幾何級数的に短く(周波数を高く)してい
く。このときの周期の減少割合は、例えば毎サイクル
0.6とする。
【0066】ステップS26において再び電圧印加開始
からのサイクルn[サイクル]の計測を始める。ステッ
プS28においてサイクルnがN2、例えば4[サイク
ル]を超えたか否かを判定し、4[サイクル]を超えた
らステップS30に進む。ステップS30において、第
2の切換リレー58を開放する。ステップS32におい
て主遮断器32の投入禁止指令を解除し、主遮断器の投
入が可能な状態にする。なお、変圧器は内鉄形の三相変
圧器であっても、同様にして消磁を行うことができる。
もちろん、残留磁束をほぼ零にすることは、必ずしも必
要ではない。例えば、励磁突流を所定の値に抑制できる
ような残留磁束に低減できればよい。
【0067】また、変圧器が内鉄形の三相変圧器におい
て、例えば図11に示すように回路を構成する。変圧器
60は内鉄形の三相変圧器で、周波数50[Hz]、容
量60[MVA]で、図9の変圧器50と同様の仕様の
ものである。低周波電源64は発生電圧2〜20
[V]、周波数1[Hz]の正弦波電圧を出力しうるも
のにする。低周波電源64から変圧器60の二次巻線6
0cu,60cwが直列になるようにして消磁に必要な
電圧を印加する。これにより、両側の鉄心60au,6
0awには消磁に必要な磁束Φu,Φw(図示せず)が
発生する。第1の切換リレー66を閉成して接点66
a,66bを介して図3の実施の形態の場合と同様に、
最初の1サイクル、1[sec]は電圧(波高値)17
(14[V]の約1.4倍)×√2[V]を印加する。
以後、漸次電圧を低下させながら、例えば8[サイク
ル]、8[sec]印加する。
【0068】二次巻線60cは三角結線されているので
中央のv相鉄心に巻回された巻線60cvには必要以上
の1.4倍の電圧が印加され比較的大きな電流が流れる
ので、電源64はこれに見合う容量のものとしておく。
なお、この場合は図9における第2の切換リレー58は
不要であり、消磁制御装置54もそれに応じて上記のよ
うな制御動作をするものにプログラムを変更する。
【0069】図9に示された実施の形態において、以上
のような制御を行うことにより、変圧器の鉄心に残留す
る磁束をほぼ零あるいは必要とされる程度まで減少させ
ることができる。変圧器は外鉄形の三相変圧器であって
も、同様にして消磁を行うことができる。これにより、
主遮断器53を再投入したときの系統電圧の変動や励磁
突流を抑制することができる。低周波電源の周波数、印
加開始電圧、印加時間(サイクル)等は、変圧器に応じ
て選定する。
【0070】図9においては、負荷は交流のアーク炉の
場合を示した。この他に、直流アーク炉、誘導加熱装置
その他の多頻度に開閉される負荷に電力を供給する変圧
器や、電鉄用直流変電所等における変圧器等に本消磁装
置を設ければ、電源投入時の励磁突流による電源系統に
及ぼす瞬時電圧降下、高調波の影響等を軽減できる。ま
た、変圧器の巻線に加わる電位振動や電磁機械力を低減
でき、変圧器の耐久性、信頼性を向上させることができ
る。
【0071】発明の実施の形態7.図1、図9に示され
た実施の形態における低周波電源14、54の発生電圧
を、例えば図11の波形図に示すような時間とともに連
続的に減少する正弦波形の電圧としても同様の効果を奏
する。また、周波数を増加させる場合も同様に連続的に
変化させてもよい。また、低周波電源14、54等の電
圧形インバータの代わりに電流形インバータを用いても
よい。
【0072】さらに、梯形波、三角波その他の高調波を
含む交流であってもよい。上記各実施の形態に示したも
のと同様にその電圧を漸次減少させるか、周波数を増加
させることにより、あるいは電圧の減少と周波数の増加
の両者を組み合わせることにより、鉄心の残留磁束を低
減して巻線の電位振動や励磁突流を抑制することができ
る。また、低周波電源として、サイクロコンバータを用
いてもよい。直流電源が得られる場合は、例えば図2の
低周波電源14においてコンバータ部14aを省略する
ことができる。
【0073】図6、図9における低周波電源14,54
は単相のものを示した。しかし、三相の低周波電源を用
いれば、第1の切換リレー32,56、第2の切換リレ
ー34,58による巻線への印加電圧の切換えは不要で
あり、一回の操作で迅速に消磁を行うことができる。
【0074】変圧器は、高圧側巻線、低圧側巻線のいず
れの側から励磁して鉄心の消磁を行ってもよい。一般的
には、低圧側から励磁するほうが、例えば図9における
第1、第2の切換リレー56b,58の耐電圧、変圧器
50と第1、第2の切換リレー56b,58との接続配
線の耐電圧等の点から有利である。印加電圧を一定にし
て、周波数を逐次上昇させる方法ないし装置の方が消磁
時間を短くできる。また、上記各発明の実施の形態にお
いては、変圧器を対象としたものについて示した。この
他にも、リアクトル、変流器、計器用変圧器等の鉄心を
有する電磁誘導機器においても同様に適用が可能であ
る。
【0075】
【発明の効果】以上のように、この発明の請求項1に記
載の電磁誘導機器の鉄心の消磁方法によれば、鉄心に巻
回され交流電圧が印加される巻線に消磁用電圧及び消磁
用周波数がともに交流電圧の電圧及び周波数よりも低く
かつ消磁用電圧及び消磁用周波数の少なくとも一方が鉄
心の残留磁束を低減させるように変化する消磁用の交流
を印加するので、電磁誘導機器の定格電圧よりも低い電
圧で残留磁束を容易に低減できる。従って、電磁誘導機
器に電気的な悪影響を与えることを防止でき、また励磁
突流を抑制できる。
【0076】この発明の請求項2に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法によれば、電磁誘導機器の交流電圧の
周波数は商用周波数であり、消磁用電圧が交流電圧より
も低い電圧であって消磁用周波数が商用周波数よりも低
い周波数から漸次増加するように電磁誘導機器の巻線に
印加するので、周波数が漸次増加することにより鉄心の
残留磁束が減少し、周波数を一定にして電圧を時間とと
もに減少させる方法よりも迅速に残留磁束を減少させる
ことができる。
【0077】この発明の請求項3に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法によれば、三相変圧器の三つの鉄心の
内の二つの鉄心にそれぞれ巻回された巻線を並列にして
消磁用の単相の交流を印加するので、消磁用電圧は定格
電圧よりも低い電圧で単相ゆえ三相変圧器への作業が容
易である。
【0078】この発明の請求項4に記載の電磁誘導機器
の鉄心の消磁方法によれば、消磁用電圧をその波高値が
最大の位相から印加するとともに、鉄心の磁束と巻線に
流れる消磁用電流とを鉄心の磁化ヒステリシス特性とし
て描かせるので、描かれた磁化ヒステリシス特性から偏
磁や消磁の程度を視覚的に容易に確認できる。
【0079】この発明の請求項5に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器によれば、鉄心に巻回され交流電圧が
印加される巻線に消磁用電圧及び消磁用周波数がともに
交流電圧の電圧及び周波数よりも低い消磁用の交流であ
って消磁用電圧及び消磁用周波数の少なくとも一方が鉄
心の残留磁束を低減させるように変化する消磁用の交流
を印加する消磁装置を備えたので、消磁装置は低い消磁
用電圧及び低い消磁用周波数のものとなり容量が小さく
安価である。また、残留磁束を低減して、電磁誘導機器
に電気的な悪影響を与えることや励磁突流を抑制して電
磁誘導機器の信頼性や耐久性を向上させることができ
る。
【0080】この発明の請求項6に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器によれば、交流電圧の周波数が商用周
波数であり、消磁装置が消磁用周波数が商用周波数より
も低い周波数から漸次増加するようにされたものである
ので、消磁装置は低い消磁用電圧及び消磁用周波数のも
のとなり容量が小さく安価であり、また周波数を漸次増
加させることにより迅速に鉄心の残留磁束を低減でき
る。
【0081】この発明の請求項7に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器によれば、電磁誘導機器が三つの鉄心
にそれぞれ巻回された三つの巻線を有する三相変圧器で
あって、消磁装置が三つの鉄心の内の二つの鉄心に巻回
された巻線を並列にして消磁用の単相の交流を印加する
ようにされたものであるので、消磁装置は単相交流で構
成が簡易になり、かつ消磁装置を三相変圧器への供給が
容易である。
【0082】この発明の請求項8に記載の消磁装置を備
えた電磁誘導機器によれば、消磁用の交流が巻線に印加
されているとき巻線への交流電圧の印加を禁止する禁止
手段を消磁装置に設けたものであるので、消磁装置に誤
って電力用の交流電圧が印加されるおそれがなく、電磁
誘導機器や消磁装置の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の一形態を示す変圧器の消磁
回路を示す回路図である。
【図2】 図1における低周波電源の構成を示す回路図
である。
【図3】 図1における低周波電源の発生電圧を示す波
形図である。
【図4】 図1の実施の形態における消磁の状況を示す
ヒステリシス曲線である。
【図5】 この発明の他の実施の形態を示す低周波電源
の発生電圧を示す波形図である。
【図6】 さらに、この発明の他の実施の形態を示す三
相変圧器の消磁回路を示す結線図である。
【図7】 図6の回路における変圧器が外鉄形の三相変
圧器の場合の鉄心の磁束の状態を示す説明図である。
【図8】 図6の回路における変圧器が内鉄形の三相変
圧器の場合の鉄心の磁束の状態を示す説明図である。
【図9】 さらに、この発明の他の実施の形態を示す消
磁装置を備えたアーク炉用の外鉄形の三相変圧器を示す
結線図である。
【図10】 図9における消磁制御装置の動作を示すフ
ローチャートである。
【図11】 消磁装置を備えたアーク炉用の内鉄形の三
相変圧器を示す結線図である。
【符号の説明】
10,30,40,50:変圧器、10a,30a,4
0a:鉄心、10b,30b,40b,50b:一次巻
線、50c:二次巻線、14,54:低周波電源、2
4:積分手段、26:XYレコーダ、32,34,5
6,58:切換リレー、59:消磁制御装置。
【手続補正書】
【提出日】平成9年3月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】 さらに、この発明の他の実施の形態を示す
低周波電源の発生電圧を示す波形図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鞍谷 弘 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄心に巻回され交流電圧が印加される巻
    線に消磁用電圧及び消磁用周波数がともに上記交流電圧
    の電圧及び周波数よりも低くかつ上記消磁用電圧及び上
    記消磁用周波数の少なくとも一方が上記鉄心の残留磁束
    を低減させるように変化する消磁用の交流を印加する電
    磁誘導機器の鉄心の消磁方法。
  2. 【請求項2】 交流電圧の周波数は商用周波数であり、
    消磁用周波数が上記商用周波数よりも低い周波数から漸
    次増加する消磁用の交流を印加することを特徴とする請
    求項1に記載の電磁誘導機器の鉄心の消磁方法。
  3. 【請求項3】 電磁誘導機器は三つの鉄心にそれぞれ巻
    回された三つの巻線を有する三相変圧器であり、消磁用
    の交流は単相であって、上記三つの鉄心の内の二つの鉄
    心に巻回された巻線を並列にして上記消磁用の単相の交
    流を印加することを特徴とする請求項1に記載の電磁誘
    導機器の鉄心の消磁方法。
  4. 【請求項4】 消磁用電圧をその波高値が最大の位相か
    ら印加するとともに、鉄心の磁束と巻線に流れる消磁用
    電流とを鉄心の磁化ヒステリシス特性として描かせるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導機器の鉄心の
    消磁方法。
  5. 【請求項5】 鉄心に巻回され交流電圧が印加される巻
    線に消磁用電圧及び消磁用周波数がともに上記交流電圧
    の電圧及び周波数よりも低い消磁用の交流であって上記
    消磁用電圧及び上記消磁用周波数の少なくとも一方が上
    記鉄心の残留磁束を低減させるように変化する消磁用の
    交流を印加する消磁装置を備えた電磁誘導機器。
  6. 【請求項6】 交流電圧の周波数は商用周波数であり、
    消磁装置は消磁用周波数が上記商用周波数よりも低い周
    波数から漸次増加するものであることを特徴とする請求
    項5に記載の消磁装置を備えた電磁誘導機器。
  7. 【請求項7】 電磁誘導機器は三つの鉄心にそれぞれ巻
    回された三つの巻線を有する三相変圧器であり、消磁装
    置は、消磁用の交流が単相であって、上記三つの鉄心の
    内の二つの鉄心に巻回された巻線を並列にして上記消磁
    用の単相の交流を印加するものであることを特徴とする
    請求項5に記載の消磁装置を備えた電磁誘導機器。
  8. 【請求項8】 消磁装置に、消磁用の交流が巻線に印加
    されているときに巻線への交流電圧の印加を禁止する禁
    止手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の消磁
    装置を備えた電磁誘導機器。
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