JPH0922303A - 振動抑制装置 - Google Patents

振動抑制装置

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JPH0922303A
JPH0922303A JP7172285A JP17228595A JPH0922303A JP H0922303 A JPH0922303 A JP H0922303A JP 7172285 A JP7172285 A JP 7172285A JP 17228595 A JP17228595 A JP 17228595A JP H0922303 A JPH0922303 A JP H0922303A
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JP
Japan
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function
frequency
vibration
control
target position
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JP7172285A
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English (en)
Inventor
Shinji Mitsuta
慎治 光田
Kazuhiro Hatake
一尋 畠
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Komatsu Ltd
Original Assignee
Komatsu Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】目標位置追従性能と制振性能を高める制御装置
を実現する。 【解決手段】可動部の目標位置追従性能を示す感度関数
に乗ずべき周波数重み関数の関数値については、所定周
波数以下の低周波数域に対応する関数値が、他の周波数
域に対応する関数値よりも大きくなるように決定され
る。制御対象の振動抑制性能を示す感度関数に乗ずべき
周波数重み関数の関数値については、制御対象の共振周
波数に対応する関数値が、他の周波数域に対応する関数
値よりも大きくなるように決定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振動系を含む構造
物を移動させる運動系の制御に関し、その運動系を制御
することによって同時に振動系に生じる振動を低減させ
るようにし、もって構造物の高速、高精度な移動、位置
決めを可能ならしめる振動抑制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】サーボモータ等のアクチュエータなどを
制御する場合、速応性、追従性といったアクチュエータ
出力に関する感度特性と、主として高周波領域に存在す
る不確定要素に対するロバスト安定性とを良好に保つこ
とが必要とされる。
【0003】ここに、PI(比例・積分)制御やLQ
(線形2次)制御等といった手法では、上述した要求を
満たす制御系を設計することが困難であるため、H∞制
御理論を用いて、上記感度特性とロバスト安定性のトレ
ードオフ(折り合い)を図るという手法が提案されてお
り、たとえば特開平6ー113578号公報にその技術
が開示されている。
【0004】H∞制御理論は、周知のように、制御対象
に関するH∞ノルムが所定値以下となるように、制御対
象の感度関数および相補感度関数等ロバスト安定性を評
価する評価関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値を決
定し、これによりコントローラの周波数特性(周波数伝
達関数)を決定するという理論である。
【0005】しかしながら、上記公報に開示された技術
は、速応性や追従性を示す感度特性と、軸ねじり振動や
制御パラメータ変動等に対するロバスト安定性の改善を
図るとはいえ、実際には、被制御対象自体に発生する振
動や軸のねじり振動などを防ぐことは困難であり、その
ような振動によって被制御対象の高速、高精度な制御が
阻まれる場合がしばしば生じる。
【0006】また、振動低減に関する他の従来の方法と
して、以下のような方法が挙げられる。
【0007】1)振動が生じる部分に軽量、高剛性の材
料を用いることにより振動を発生しにくくする。
【0008】2)動吸振器等を装着することにより振動
を低減する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法1)、2)では、以下のような問題がある。
【0010】まず、1)の軽量、高剛性の材料を使うと
いう方法では、一般に材料が高価となるとともに、加工
性や耐久性といった問題が生じる。また、そのような材
料を使用すれば、振動の振幅は小さくなるものの、残留
振動の減衰性は依然として向上しないままとなる。
【0011】また、2)の動吸振器等を装着するという
方法では、共振周波数に応じてチューニングの必要があ
る。また、既存の装置に適用するには、既存の装置自身
に大きな改造が必要となり、高コストを招来する。
【0012】本発明は、こうした問題点を解決するため
になされたものであり、被制御対象に発生する振動を、
目標位置追従性能を損なうことなく達成するようにし
て、被制御対象の高速、高精度な制御を実現できるよう
にするとともに、高価な材料の使用や、既存の装置の改
造を要することなく、簡易に制御装置を構成できるよう
にすることを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、この発明の主た
る発明では、目標位置に位置決めされる可動部と、前記
可動部を駆動するアクチュエータと、前記目標位置を示
す信号に基づき前記可動部を前記目標位置に位置決めす
るための駆動指令信号を、前記アクチュエータに対して
出力するコントローラとを備え、H∞制御理論に基づき
前記可動部と前記アクチュエータとからなる制御対象に
関するH∞ノルムが所定値以下となるように、前記制御
対象の感度関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値を決
定することにより、前記コントローラの周波数特性を決
定するようにした振動抑制装置において、前記可動部の
目標位置追従性能を示す感度関数に乗ずべき周波数重み
関数の関数値については、所定周波数以下の低周波数域
に対応する関数値が、他の周波数域に対応する関数値よ
りも大きくなるように決定し、かつ、前記制御対象の振
動抑制性能を示す感度関数に乗ずべき周波数重み関数の
関数値については、前記制御対象の共振周波数に対応す
る関数値が、他の周波数域に対応する関数値よりも大き
くなるように決定するようにしている。
【0014】ここで、可動部の目標位置追従性能を示す
感度関数は、具体的には、目標位置を入力信号とし、可
動部の現在位置と目標位置との偏差を出力信号とする伝
達関数のことである。
【0015】また、制御対象の振動抑制性能を示す感度
関数は、具体的には、制御対象に加わる外乱を入力信号
とし、制御対象の振動量を出力信号とする伝達関数のこ
とである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る振動抑制装置の実施の形態について説明する。
【0017】図1は、本発明に係る実施例装置を示して
おり、図2は、図2の実施例装置の制御構造をブロック
線図で示している。
【0018】同図1に示すように、被搬送物1の下部
は、柔軟構造物2によって支持されており、この柔軟構
造物2の下部は、可動テーブル3によって支持されてい
る。なお、この実施例装置では、構造物2を、本発明の
有効性を示すために、故意に搬送方向に対して柔軟で振
動を起こしやすい構造にしている。
【0019】可動テーブル3は、被搬送物1(構造物
2)を搬送するためのテーブルであり、DCサーボモー
タ4によって駆動される。
【0020】すなわち、モータ4の回転力は、ボールネ
ジ5により直進力に変換され、このボールネジ5に接続
された可動テーブル3が図面左右方向xに移動される。
【0021】モータ4には、その回転数を検出するエン
コーダ6が付設されている。
【0022】一方、テーブル3と一体の支柱3aには、
構造物2の振動量y1(テーブル3の位置に対する構造
物2の相対位置x1ーx2)を検出する変位検出器7が配
設されている。
【0023】制御装置8は、エンコーダ6の出力θを入
力し、可動テーブル3の現在位置x2を演算するととも
に、可動テーブル3の目標軌道(目標位置の軌跡)rを
生成するか、あるいは記憶装置に記憶している。そし
て、制御装置8は、可動テーブル3の現在位置x2をそ
の目標軌道rに一致させるのに必要なモータ4に対する
操作量y2(x2ーr)を演算し、これを制振制御装置9
に出力する。
【0024】制振制御装置9は、変位検出器7の出力x
1ーx2と制御装置8の出力x2ーrとを入力し、これら
に基づき構造物2の振動を抑制するためのモータ4に対
する回転速度指令uを演算し、これをモータ駆動装置1
0に出力する。
【0025】モータ駆動装置10には、回転速度指令u
が入力されるとともに、エンコーダ6の出力θの1階微
分値(モータ4の回転速度)が入力され、モータ4の現
在の回転速度をフィードバック量とするモータ4の駆動
指令Tmが演算され、これをモータ4に対して出力す
る。
【0026】こうして、モータ4が駆動されると、その
回転力によりボールネジ5を介して可動テーブル3に推
進力が働き、構造物2に支持された被搬送物1がx方向
に搬送され、目標位置r(目標軌道)に順次位置決めさ
れる。
【0027】図2の制御ブロック図において、モータ制
御系とあるのは、上記制御装置8、制振制御装置9、モ
ータ駆動装置10に対応しており、モータとあるのは、
DCサーボモータ4に対応しており、機械系とあるの
は、ボールネジ5、可動テーブル3、構造物2、被搬送
物1に対応している。
【0028】以下、被搬送物1、構造物2、可動テーブ
ル3をまとめて可動部11と称する。
【0029】可動部11がモータ4の回転力により加減
速されると、可動部11に働く慣性力により構造物2は
変形する。構造物2には、同時にその変形量に応じて復
元力が働くために振動が生じることになる。
【0030】可動部11の移動、位置決めの制御は、制
御装置8によってフィードバック制御として行われる。
すなわち、可動部11の目標軌道rと現在位置x2との
差が取られ、当該偏差に適切な係数が掛けられたもの
が、必要に応じて低域通過フィルタ等を通されてモータ
駆動装置10に出力される。
【0031】本発明に係るこの実施例装置では、さら
に、この制御装置8とモータ駆動装置10の間に制振制
御装置9が挿入されるとともに、構造物2の振動変位
(振動量)を検出する変位検出器7が可動部11に装着
されている。
【0032】こうした装置が付加されることで、変位検
出器7の出力x1ーx2が制振制御装置9に取り込まれ、
可動部11の振動を減衰させるための適切な制御演算が
施され、この結果、構造物2で振動が発生しないように
可動部11を移動させることができるとともに、可動部
11の停止時に外力等により構造物2に生じた振動を速
やかに減衰させることができるようになる。
【0033】制振制御装置9の制御アルゴリズムは、そ
の検出できる量が制御装置8の出力x2ーrと変位検出
器7の出力x1ーx2の2つであり、出力フィードバック
の形態となる。
【0034】制振制御装置9を振動系の制御という視点
で見る場合、変位検出器7から振動量をフィードバック
している制御は、構造物2に減衰を付加する制御に相当
する。一方、可動部11の位置決めのために制御装置8
から入力している偏差信号x2ーrは、振動系にとって
は、振動を引き起こす外乱信号にあたるものであり、制
振制御装置9は、この外乱信号に対してフィードフォワ
ード制御により構造物2に生じる振動を励起しないよう
に可動部11を移動させる制御を行うものである。
【0035】つぎに、制振制御装置9の制御アルゴリズ
ムの設計方法の1つとして、μーシンセシス法を用いた
制御法について説明する。
【0036】まず、図1の制御対象の可動部11を図3
に示すように、2つの質量がばねと減衰によって結合さ
れているものとして仮定して1自由度モデルとしてモデ
ル化する。
【0037】ここで、等価質量m1、m2、等価剛性k、
等価減衰cは、インパクト加振等の手法により伝達関数
や時間応答を測定することにより実験的に求めることが
できる。
【0038】図3の可動部11のモデルに対して運動方
程式をたてると、次式(1)、(2)が得られる。
【0039】 ここで、x1、x2はそれぞれ等価質量(構造物2、被搬
送物1に相当する質量)m1、等価質量(可動テーブル
3に相当する質量)m2の絶対座標系xにおける位置、
Tmはモータ4のトルク、fmはモータ4のトルクTmに
よって質量m2に働く直進力、fdは質量m1に働く外力
をそれぞれ表している。
【0040】また、モータ4は、インダクタンスは十分
小さいものと仮定し、モータトルクTmは、モータ入力
電圧に比例するものとする。
【0041】また、モータ駆動装置10は、速度指令入
力uとエンコーダ6の出力θに基づき得られるモータ回
転角速度(θの1階微分値)との差を取り、当該偏差を
増幅器で増幅して、モータ4を駆動するものである。
【0042】したがって、モータ駆動装置10は、図4
のようにモデル化することができる。ここで、θは、モ
ータ4の回転角、aは、トルクTmを入力と見たときの
速度フィードバック係数を表す。
【0043】また、Jは、モータ4からみて等価な全慣
性モーメントを表す。したがって、次式(3)が成り立
つ。
【0044】 つぎに、モータトルクTmは、ボールネジ5を介して可
動部11に対しては、直進力fmとして働く。摩擦の影
響はないものとして、これら回転系と直進系の間の変換
係数をbとすると、次式(4)、(5)式が成り立つ。
【0045】 x2=bθ (4) Tm=bfm (5) 以上の(1)〜(5)式をまとめると、次式(6)の状
態方程式が得られる。
【0046】 ここで、行列xは、状態変数を表しており、次式(7)
で定義される。
【0047】 図1において、制振制御装置9から見た制御対象の出力
yは、構造物2の変位(振動量)、つまり質量m2から
みた質量m1の相対変位x1ーx2(=y1)と、可動部1
1の絶対位置、つまり質量m2の位置x2とその目標軌道
rとの誤差x2ーr(=y2)であるので、つぎの出力方
程式(8)が得られる。
【0048】 さて、図1の実施例装置における被搬送物1は、常に同
一のものとは限らず、変化するものと考えられる。
【0049】したがって、図3のモデルにおいて、その
等価質量m1は、一定ではなく、変化するものと捕らえ
ることができる。したがって、質量m1を、一定の公称
値m10と公称値m10からの変動分δm1との和として、次
式(9)のように表すことができる。
【0050】 m1=m10+δm1 (9) 上記(9)式を(6)式に代入し、変形してゆくと、次
式(10)が得られる。
【0051】 ここで、行列A、B、C、F、L、Rを、次式(11)
から(15)のように定義する。
【0052】 したがって、状態方程式(10)、出力方程式(8)
は、次式(16)、(17)のように書き直される。
【0053】 ここで、 とおき、上記状態方程式(16)、出力方程式(17)
をラプラス変換して、行列Pを次式(18)のように定
義する。
【0054】 この結果、図1に示す可動部11とモータ4からなる制
御対象の制御モデルPmodelは、次式(19)のように
表される。
【0055】 ここで、上述した質量m1の変動分δm1を、あらためて
次式(20)のようにおく。
【0056】 δm1=Δm1Wm1 (20) ただし、Wm1は、変動分δm1の大きさの上限値を表す正
の実数である。また、Δm1は、正規化された質量m1の
変動分を表す正規化変動分であり、下式(21)に示す
ように大きさが1以下の実数である。
【0057】 |Δm1|≦1 (21) こうして導出された制御対象のモデル式(19)の誤
差、つまり図3のモデルと実際の装置との間に存在する
不確定さを検討するまず、図3の可動部11のモデル
は、構造物2の1次の共振周波数モードまでしか考慮さ
れていない。よって、2次以上の共振周波数モードの影
響を、導出したモデルの誤差(不確定さ)として考える
ことができる。
【0058】また、モータ4の駆動系も理想化してモデ
ル化しているため、これもモデルの誤差として考えるこ
とができる。
【0059】したがって、実際の制御対象Prealは、そ
の制御モデルPmodel(制御入力u、制御出力y)に、
加法的な誤差が加わるものとして、図5に示すように、
次式(22)のように表すことができる。
【0060】 ただし、|Wadd1|と|Wadd2|は、上記加法的な誤差
の大きさの上限値、Δadd1とΔadd2は、正規化された加
法的な誤差を表す正規化誤差であり、すべての周波数に
おいて次式(23)が成り立つものとする。
【0061】 |Δadd1|≦1、|Δadd2|≦1 (23) ここで、|Wadd1|と|Wadd2|は、上述したように、
加法的な誤差の大きさを表すので、Wadd1、Wadd2は、
モデル化されていない2次の共振周波数以上の高周波数
帯で大きな関数値をとる周波数関数となる。
【0062】つぎに、制振制御装置9の周波数特性の決
定の仕方について検討する。この実施例では、H∞制御
理論に基づいて、可動部11とモータ4とからなる制御
対象に関するH∞ノルムが所定値以下となるように、制
御対象の感度関数および相補感度関数などロバスト安定
性を評価する評価関数に乗ずべき周波数重み関数の関数
値を決定し、これにより制振制御装置9の周波数特性を
決定するようにしている。
【0063】つぎに、モデルの不確かさに対するロバス
ト安定性について検討する。以下、モデルの乗法的不確
かさに対するロバスト安定性を評価する相補感度関数の
ごとく、モデルの不確かさに対するロバスト安定性を保
証、評価する評価関数を、最大許容不確かさ関数と呼ぶ
ことにする。
【0064】この場合、可動部11の目標位置追従性能
を示す感度関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値につ
いては、所定周波数以下の低周波数域に対応する関数値
が、他の周波数域に対応する関数値よりも大きくなるよ
うに決定される。
【0065】また、制御対象の振動抑制性能を示す感度
関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値については、制
御対象の共振周波数に対応する関数値が、他の周波数域
に対応する関数値よりも大きくなるように決定される。
【0066】また、制御モデルの不確定要素に対するロ
バスト安定性を評価する最大許容不確かさ関数に乗ずべ
き周波数重み関数の関数値については、所定周波数以上
の高周波数域に対応する関数値が、他の周波数域に対応
する関数値よりも大きくなるように決定される。
【0067】このように、周波数領域において、3通り
の要求、目標位置追従性能、振動抑制性能、不確定要素
に対するロバスト安定性のトレードオフ(折り合い)が
図られ、H∞ノルムが所定値以下となるように制振制御
装置9の周波数特性が決定される。
【0068】すなわち、制振制御装置9には、以下の事
項が要求される。
【0069】(a)可動部11あるいはアクチュエータ
(モータ4)の位置を、その指令位置に追従させる。
【0070】(b)構造物2に生じる振動を速やかに減
衰させる。
【0071】(c)モデルで考慮していない高次モード
等のダイナミクスに対して安定である(ロバスト安定
性)。
【0072】このような要求は、以下のようにして考え
ることができる。
【0073】まず、上記(a)の要求は、アクチュエー
タであるモータ4(可動部11)の目標位置rを入力信
号とし、実際の位置x2と目標位置rとの偏差x2ーrを
出力信号とする伝達関数を、小さく抑えることにより実
現できる。
【0074】また、上記(b)の要求は、振動を励起す
るような外乱fdを入力信号とし、振動量x1ーx2を出
力信号とする伝達関数を、小さく抑えることにより実現
される。
【0075】さらに、上記(c)の要求は、制御対象の
比較的高周波域での非モデル化モードを加法的誤差や乗
法的誤差として扱い、これらの不確かさに対してロバス
ト安定になるようにすることで実現される。
【0076】しかしながら、一つの制御信号uによって
振動と運動が行われる制御対象のコントローラを設計し
ようとするとき、上記要求(a)〜(c)は互いに従属
な関係にあり、トレードオフが存在する。
【0077】このうち、上記要求(a)、(b)につい
ては、制御モデルのパラメータのみに依存しており、も
ともと互いに従属の関係にある。
【0078】したがって、一つのアクチュエータである
モータ4によって運動と振動の制御が行われる制御対象
の場合、制振性能と目標位置追従性能のトレードオフが
図られるように、周波数領域において両者を分離して考
えればよい。
【0079】また、感度関数を小さくすれば最大許容不
確かさ関数が大きくなり、逆に最大許容不確かさ関数が
小さくなれば感度関数が大きくなるように、制御性能と
ロバスト安定性との間にもトレードオフが必ず存在す
る。
【0080】したがって、これらのトレードオフが図ら
れるように、周波数領域において両者を分離して考えれ
ばよい。
【0081】そこで、要求(a)に対しては、目標位置
追従性能を示す感度関数に乗じる周波数重み関数の関数
値を低周波数域において大きくし、また要求(b)に対
しては、振動制御性能を示す感度関数に乗じる周波数重
み関数の関数値を共振周波数域において大きくし、また
要求(c)に対しては、制御対象の不確定さに対するロ
バスト安定性を評価する最大許容不確かさ関数に乗じる
周波数重み関数の関数値を高周波域において大きくする
よう設定することによって、通常なら相矛盾する要求を
両立させるようにしている。
【0082】なお、要求(a)、(b)のみを満たすよ
うにしてもよい。
【0083】以下、図1の実施例装置に適用した場合を
説明する。
【0084】まず、構造物2の振動を低減するために
は、構造物2に加わる外乱、つまり等価質量m1に働く
外力fdの大きさに対する、等価質量m1の相対変位x1
ーx2の大きさを小さく抑えればよいことがわかる。
【0085】また、可動部11の位置x2を、速やかに
その目標位置rに一致させるためには、目標位置rの大
きさに対する、可動部11の位置x2と目標位置rとの
誤差x2ーrの大きさを小さく抑えるようにすればよい
ことがわかる。
【0086】したがって、振動抑制性能、目標位置追従
性能を達成するという問題は、伝達関数の大きさを評価
関数とし、この評価関数を最小にする問題と考えること
ができる。
【0087】外乱fdを入力信号とし、振動量x1ーx2
を出力信号とする伝達関数をS1、目標位置rを入力信
号とし、偏差x2ーrを出力信号とする伝達関数をS2と
おく。この場合、適切な周波数重み関数Wperf1、Wper
f2に対して、すべての周波数において次式(24)、
(25)を満たすことが条件とされる。
【0088】 制振性能は、主に共振周波数帯における振動系の伝達関
数S1のピーク値によって決まるため、振動を低く抑え
るためには共振周波数帯における周波数重み関数Wperf
1の関数値の大きさが、他の周波数域における関数値よ
りも大きくなるような条件を課せばよい。
【0089】目標位置追従性は、主に低周波数帯におけ
る運動系の伝達関数S2の大きさにより決まるため、目
標位置追従性能を高めるためには低周波数帯における周
波数重み関数Wperf2の関数値の大きさが、他の周波数
帯における関数値よりも大きくなるような条件を課せば
よい。特に、周波数0で周波数重み関数Wperf2の大き
さを、∞にすれば目標位置に対する定常誤差は、0にな
る。
【0090】図7(a)の実線は、H∞制御を行わない
場合の感度関数(伝達関数)S1、S2を示しており、破
線は、周波数重み関数Wperf1、Wperf2の逆特性W-1pe
rf1、W-1perf2を示している。
【0091】上記式(24)、(25)より、H∞制御
器(図2参照)たる制振制御装置9は、それぞれの感度
関数S1、S2が周波数重み関数の逆特性W-1perf1、W-
1perf2以下になるように設計されるため、H∞制御を付
加した場合は、感度関数S1、S2は、図7(b)のよう
に変化される。
【0092】すなわち、共振周波数付近においては振動
制御性能が高められ(図7(b)のS1参照)、低周波
数域では、目標値追従性能を高める特性になる(図7
(b)のS2参照)。
【0093】最大許容不確かさ関数に乗ずべき周波数重
み関数Wadd1,Wadd2の関数値については、高周波数域
における関数値が他の周波数域における関数値よりも大
きくなるような条件を課してやればよい。
【0094】このことは、図5に示す系を考えたとき、
式(21)、(23)を満たすすべてのΔm1、Δadd1、
Δadd2に対して、コントロ―ラK(制振制御装置9)に
より系を安定にし、なおかつfdからy´1 への伝達関
数およびr からy´2 への伝達関数をすべての周波数に
おいて1以下にすることと等価である。そして、このこ
とは、以下に説明する構造化特異値をすべての周波数に
おいて1以下にすることと等価である。
【0095】第7図(c)の太実線が実際の装置に存在
するモデル化誤差であり、一般に高周波で大きくなる。
このようなモデル化誤差に対して系を安定化させるため
には最大許容不確かさ関数の逆特性T1-1、T2-1をモデ
ル化誤差より大きくすればよい。また、この最大許容不
確かさ関数の逆特性T1-1、T2-1は、H∞制御理論によ
る制御系設計の結果、最大許容不確かさ関数に乗じる周
波数重み関数Wadd1,Wadd2より大きく設定されるた
め、この周波数重み関数Wadd1,Wadd2をモデル化誤差
よりも大きく設定すればよいことになる。
【0096】すなわち、高周波数域においては最大許容
不確かさ関数T1、T2に乗じる周波数重み関数Wadd1、
Wadd2の関数値が大きく設定されることになる。
【0097】まず、図5においてy'1 からfdに対して
仮想的に不確かさΔperf1を考える。同様に、y'2 から
rに対して仮想的に不確かさΔperf2を考える。このと
き、Δm1,Δadd1,Δadd2,Δperf1,Δperf2を対角要
素としてもつブロック構造行列Δ_を次式(26) の
ように定義する。
【0098】 ただし、Rは、実数全体の集合、Cは、複素数全体の集
合を表す。すると図5のシステムは、図6に示すような
ブロック構造行列Δ_、一般化プラントGp、コントロ
―ラKの3つの系からなる閉ル―プ系が構成される。一
般化プラントGp を次式(27)のように分割する。
【0099】 このとき一般化プラントGp のコントローラKによる線
形分数変換Fl(Gp,K)は次式(28)のように定義
される。
【0100】 線形分数変換Fl(Gp,K)のブロック構造行列Δ_に
対する構造化特異値μ(Fl(Gp,K))は、次式(2
9)のように定義される。
【0101】 この構造化特異値μ(Fl(Gp,K))を、すべての周
波数で1未満にすることと、上記式(21)、(23)
を満たすべてのΔm1,Δadd1,Δadd2に対してコントロ
―ラKにより系を安定にし、なおかつfd からy'1 へ
の伝達関数およびr からy'2 への伝達関数をすべての
周波数で1未満にすることは等価になる。構造化特異値
μ(Fl(Gp,K))を最小化するコントロ―ラを得る
制御系設計法は、μ- シンセシスと呼ばれている。
【0102】いま、等価質量m1の誤差の大きさWm1
を、その公称値m10 の25%と設定する。
【0103】このときモデルの加法的誤差の大きさ|W
add1|、|Wadd2|の周波数特性は、図8に示すように
設定される。|Wadd1|、|Wadd2|は、モデル化され
ている1次の共振周波数以下の低周波数帯では小さく、
高周波数帯では大きくなるように設定されているのがわ
かる。
【0104】制振性能を決める周波数重み関数Wperf1
の周波数特性は、図9に示すように設定される。同図9
に示すように、制振したい1次の共振周波数付近の関数
値が最大とされ、他の低周波数帯、高周波数帯では、関
数値がそれより小さくなるように設定されているのがわ
かる。
【0105】また、目標位置追従性能を決めるWperf2
の周波数特性は、図10に示すように設定される。同図
10に示すように、低周波数帯では関数値が大きく、高
周波数帯では逆に関数値が小さくなるように設定されて
いるのがわかる。特に、目標位置に対する定常誤差をな
くすように、0Hzにおいて関数値が∞となるように設
定されている。
【0106】以上のようにして各周波数重み関数Wm1,
Wadd1,Wadd2,Wperf1,Wperf2の周波数特性を設定
することで、μ- シンセシスの手法により構造化特異値
μ(Fl(Gp,K))を1未満にするコントローラKの
周波数特性が求められる。
【0107】得られたコントロ―ラK、つまり制振制御
装置9の周波数特性を図11に示す。
【0108】同図11に示す実線は、構造物2の相対変
位x1ーx2に対するフィ―ドバックゲインを、破線は可
動部11の現在位置x2と目標位置rとの偏差x2ーrに
対するフィ―ドバックゲインをそれぞれ表している。
【0109】同図11に示すように得られたコントロ―
ラKは、モデル化されていない2次以上の共振周波数に
おける振動を励起しないように、高周波数帯でゲインが
抑えられているのがわかる。また、制振したい1次の共
振周波数付近では、構造物2の相対変位x1ーx2に対す
るフィ―ドバックゲインは大きくなり、積極的に振動抑
制のための制御が働くことを示している。逆に、可動部
11の現在位置x2と目標位置rとの偏差x2ーrに対す
るフィ―ドバックゲインは、低く抑えられており、可動
部11の移動に対しては、1次の共振周波数において振
動を励起しないような移動、位置めの制御がなされるこ
とがわかる。
【0110】低周波数帯では、可動部11の現在位置x
2と目標位置rとの偏差x2ーrに対するフィ―ドバック
ゲインは、大きさが一定であり、これは制振制御を行わ
ないときの位置フィ―ドバックゲインに相当する大きさ
となっている。
【0111】図12、図13は、搬送装置における搬送
パタ―ンとしてしばしば用いられるサイクロイド軌道を
目標軌道rとしたときの可動部11の位置x2の時間応
答(各図(a)に示す)、構造物2の相対変位x1ーx2
の時間応答(各図(b)に示す)を示しており、図12
は、制振制御無しの場合の時間応答を、図13は本実施
例の制振制御を行ったときの時間応答を示している。
【0112】これら図12と図13とを比較してわかる
ように、可動部11の目標位置rに対する追従性は、ほ
ぼ同じである。しかし、構造物2の相対変位x1ーx2の
時間応答に関していえば、可動部11の加減速にともな
い構造物2は変形して図12、図13ともに、同程度の
変位を生じているが、制振制御を行わない図12では、
可動部11の停止後に残留振動が持続しているのに対し
て、制振制御を行う図13では、生じる残留振動の振幅
は小さく、しかも良好に減衰していくのがわかる。
【0113】図14〜図16は、被搬送物1の質量を変
えて、実施例の制振制御を行ったときのサイクロイド目
標軌道rに対する可動部11の位置x2の時間応答(各
図(a)に示す)、構造物2の相対変位x1ーx2の時間
応答(各図(b)に示す)を示している。
【0114】図14は、基準の被搬送物1の質量から、
等価質量m1の公称値m10の約20%にあたる質量を取
り除いたときの時間応答を示している。図15は、基準
の被搬送物1の質量に対して、等価質量m1の公称値m1
0の約20%にあたる質量を付加したときの時間応答を
示している。これら図14、図15の被搬送物1の質量
の変化はともに、本実施例の制振制御装置9(コントロ
―ラ)設計時に設定した誤差25%の範囲内の変化であ
る。
【0115】そこで、これら図14、図15と基準の被
搬送物1の質量の状態における時間応答である図13と
の比較を行うと、共振周波数が変化するために可動部1
1が停止された後の残留振動の周波数が変化してはいる
が、振動の振幅および減衰は、ほぼ同程度に制振されて
いることがわかる。
【0116】一方、図16は、基準の被搬送物1の質量
に対して、等価質量m1の公称値m10の約60%にあた
る質量を付加したときの時間応答を示している。
【0117】そこで、この図16と図13とを比較する
と、質量が増加したことにより、可動部11の加減速に
よって生じる慣性力が増加し、これにより構造物2の変
形量2が増えるために構造物2の相対変位x1ーx2が増
加しているのがわかる。このため図16の残留振動の振
幅は、図13のそれに比べて大きくなるが、減衰につい
てはほぼ同程度の効果が見られるのがわかる。
【0118】さて、上記運動方程式(1)〜(5)につ
いてラプラス変換を施し、速度指令uを入力信号とし、
構造物2の相対変位x1 −x2を出力信号とする伝達関
数、速度指令uを入力信号とし、可動テ―ブル3の絶対
変位x2 を出力信号とする伝達関数をそれぞれ求める
と、以下のようになる。
【0119】 これら(30)、(31)式に示すそれぞれの伝達関数
は、制御モデルのパラメ―タのみに依存しており、要求
(b)を表わす構造物2の相対変位x1 −x2と、要求
(a)を表す可動テ―ブル3の絶対変位x2とは、どの
ような制御入力uを施しても、もともと互いに従属の関
係にあることがわかる。
【0120】例えば、図17(a)の右図に示すよう
に、振動特性として急峻な特性の伝達関数(x1ーx2)
/uを持つ場合に、制振制御を施すと、図17(b)の
右図に示すごとく、振動特性がなまってくる。一方にお
いて図17(b)の左図に示すごとく、可動部11の伝
達関数x2/uの大きさは、振動特性に従属する形で、
振動の共振周波数付近において下がってくることにな
る。
【0121】したがって、一つのアクチュエ―タである
モータで、運動と振動の制御を行う場合、制振性能と目
標位置追従性能を満たす仕様のコントロ―ラは、本来な
ら得られないことになる。
【0122】しかしながら、この実施例では、前述した
ように、制振性能と目標位置追従性能を満たすべき周波
数領域をそれぞれ分離し、各周波数重み関数の周波数特
性を設定することで、これら制振性能と目標位置追従性
能のトレ―ドオフを図ることを可能ならしめている。
【0123】つぎに、感度関数と最大許容不確かさ関数
(相補感度関数)のトレ―ドオフについて、1入力1出
力系を例にとり説明する。
【0124】すなわち、図18に示すように、制御対象
Pとコントロ―ラKからなるフィ―ドバック系におい
て、yを出力、uを入力、dを外乱、nを測定雑音、r
を参照信号としている。ここで、外乱dと測定雑音n
が、出力yに及ぼす影響は、それぞれ以下のようにな
る。
【0125】 そこで、以下の伝達関数を定義する。
【0126】 ここに、上記式(32)、(33)より次の関係が成立
する。
【0127】 S(s)+T(s)=1 (36) この(36)式は、コントロ―ラKのゲインを大きくす
れば感度関数S(s)が小さくなるが、相補感度関数T
(s)が1に近づき、逆にゲインを小さくすれば相補感
度関数T(s)が小さくなるが、感度関数S(s)が1
に近づくことを意味している。すなわち、外乱dの影響
を小さくするためにPKのゲインを十分に大きくする
と、S=0となるが、同時にT=1となるため雑音nが
まったく抑制されないことになる。逆に、雑音nの影響
を小さくするためにPKのゲインを十分に大きく小さく
すると、T=0となるが同時にS=1となるため外乱d
がまったく抑制されないことになる。
【0128】このように外乱抑制と雑音の低減とは、相
反する関係にあることがわかる。ここに、外乱抑制と目
標位置追従性能は等価な関係にあり、雑音抑制とロバス
ト安定性は等価な関係にある。
【0129】よって、目標位置追従性能とロバスト安定
性とのトレ―ドオフも同様に存在することになる。ここ
で、目標位置追従性能においては低周波数で必要とな
り、ロバスト安定性に寄与するモデル化誤差は、高周波
数域で大きくなることから、低周波数域で感度関数S
(s)を小さくし、高周波数で相補感度関数T(s)を
小さくすることで、それぞれの要求(a)、(c)のト
レ―ドオフを図ることができる。
【0130】つぎに、2自由度制御を施したときの制御
構造について説明する。
【0131】図19は、2自由度制御を行う場合のブロ
ック線図を図2と同様にして示す図である。同図19に
示すように図2のH∞制御器の前段に2自由度制御器が
設けられているのがわかる。
【0132】図20は、2自由度制御の基本構造であ
り、サ―ボフィ―ダの制御モデルをPとし、フィ―ドバ
ック制御器の測定量y、被制御量をz として、rから
zへの伝達特性を改善することを考える。Pの右既約分
解を、 とおくと、rからzへの伝達特性がN1Tとなり、フィ
―ドバックコントロ―ラであるKがN1Tに影響しな
い。
【0133】本実施例に適用した場合における2自由度
制御の構成を、図21に示している。この制御系の設計
手順としては以下のようになる。
【0134】(1) フィ―ドバック特性を改善するよ
うにH∞制御を用いて、コントロ―ラK1 、K2 を設計
する。
【0135】(2)rからzへの伝達特性N1Tが望ま
しくなるようにTを設計する。
【0136】(3) K1、K2、T、D、Nを用いてコ
ントロ―ラを構成する。
【0137】本実施例の場合、加速度及び位置のフィ―
ドバックK1,K2 については前述した実施例(図2)の
H∞制御器を用いており、この図2の実施例に2自由度
制御器を加えた形になる。また、2自由度制御側のパラ
メ―タT,D,N2は、図22〜図25に示す周波数特
性を有するフィルタを用いている。
【0138】図26は制振制御を行わない場合、図27
はH∞制御を行った場合、図28は2自由度制御+H∞
制御を行った場合の時間応答をそれぞれ示すグラフであ
る。これらの各図の左図(a)は、可動部11の目標位
置と現在位置を表しており、右図(b)は、構造物2の
可動部11に対する相対変位x1ーx2である。
【0139】これら図26〜図28を比較してわかるよ
うに、可動部11の目標位置に対する追従性はほぼ同じ
である。
【0140】また、構造物2の相対変位x1ーx2の時間
応答に関しては、可動部11の加減速に伴い構造物2は
変形しており、各図26〜28図は、ともに同程度の変
位を生じている。しかし、制振制御を行わない図26で
は、可動部11が停止した後に残留振動が持続している
のに対して、H∞制御を行ったときの図27では、良好
に残留振動が減衰していくのがわかる。さらに、H∞制
御に2自由度制御を付加した場合の図28では、運動停
止後の最初のオ―バ―シュ―トも消えており、さらに良
好な減衰がなされているのがわかる。
【0141】なお、上述した2自由度制御については、
たとえば、文献「制御系設計−H∞制御とその応用」
(システム情報学会編/細江繁幸,荒木光彦監修/朝倉
書店)によって公知のものとなっている。
【0142】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
周波数領域を、低周波数域と共振周波数域に分離して、
目標位置追従性能と制振性能のトレードオフを図るよう
にしている。
【0143】このため、高価な材料の使用や、既存の装
置の改造を要することなく、簡易に制御装置を構成する
ことができるようになる。
【0144】また、目標位置追従性能と制振性能を同時
に満足することができるため、制御対象の振動系におい
て振動を引き起こすことなく運動指令に速やかに追従さ
せることができるようになり、制御対象の高速、高精度
な制御が実現される。
【0145】さらに、周波数領域を、低周波数域と共振
周波数域と高周波数域に分離して、目標位置追従性能と
制振性能と制御対象の不確かさに対するロバスト安定性
のトレードオフを図った場合には、制御装置において発
振等を引き起こすこともなく安定した高精度が制御が実
現されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例装置の構成を示す図である。
【図2】図2は図1の制御ブロック図である。
【図3】図3は制御対象のモデルを示す図である。
【図4】図4は図1のモータ駆動装置の制御ブロック図
である。
【図5】図5は実際の制御対象の不確かさを考慮した制
御ブロック図である。
【図6】図6はブロック構造行列を説明するために用い
た制御ブロック図である。
【図7】図7(a)、(b)は、感度関数の周波数特性
をH∞制御を行わない場合と行った場合を比較して示す
図であり、図7(c)は最大許容不確かさ関数の周波数
特性を示す図である。
【図8】図8は、ロバスト安定性に関する周波数重み関
数の周波数特性を、示す図である。
【図9】図9は、制振性能に関する周波数重み関数の周
波数特性を示す図である。
【図10】図10は、目標位置追従性能に関する周波数
重み関数の周波数特性を示す図である。
【図11】図11は実施例の制振制御装置の周波数特性
を示す図である。
【図12】図12はサイクロイド目標軌道に沿って追従
する場合の可動部の位置、構造物の相対変位をそれぞれ
示す図である。
【図13】図13はサイクロイド目標軌道に沿って追従
する場合の可動部の位置、構造物の相対変位をそれぞれ
示す図である。
【図14】図14はサイクロイド目標軌道に沿って追従
する場合の可動部の位置、構造物の相対変位をそれぞれ
示す図である。
【図15】図15はサイクロイド目標軌道に沿って追従
する場合の可動部の位置、構造物の相対変位をそれぞれ
示す図である。
【図16】図16はサイクロイド目標軌道に沿って追従
する場合の可動部の位置、構造物の相対変位をそれぞれ
示す図である。
【図17】図17(a)は可動部の伝達関数、構造物の
伝達関数の周波数特性をそれぞれ示す図で、制振制御を
行わない場合の周波数特性を示す図であり、図17
(b)は可動部の伝達関数、構造物の伝達関数の周波数
特性をそれぞれ示す図で、制振制御を行った場合の周波
数特性を示す図である。
【図18】図18は感度関数と相補感度関数のトレード
オフを説明するために用いた制御ブロック図である。
【図19】図19は2自由度制御を適用した場合の制御
ブロック図である。
【図20】図20は2自由度制御の基本的な構造を説明
する図である。
【図21】図21は2自由度制御を実施例装置に適用し
た場合を説明する図である。
【図22】図22は、2自由度制御則のパラメータのフ
ィルタの周波数特性を示す図である。
【図23】図23は、2自由度制御則のパラメータのフ
ィルタの周波数特性を示す図である。
【図24】図24は、2自由度制御則のパラメータのフ
ィルタの周波数特性を示す図である。
【図25】図25は、2自由度制御則のパラメータのフ
ィルタの周波数特性を示す図である。
【図26】図26は可動部の目標位置と現在位置の時間
応答、構造物の相対変位の時間応答をそれぞれ示す図
で、制振制御を行わない場合の時間応答を示す図であ
る。
【図27】図27は可動部の目標位置と現在位置の時間
応答、構造物の相対変位の時間応答をそれぞれ示す図
で、H∞制御を行った場合の時間応答を示す図である。
【図28】図28は可動部の目標位置と現在位置の時間
応答、構造物の相対変位の時間応答をそれぞれ示す図
で、H∞制御にさらに2自由度制御を付加したときの時
間応答を示す図である。
【符号の説明】
2 柔軟構造物 3 可動テーブル 4 DCサーボモータ 8 制御装置 9 制振制御装置 10 モータ駆動装置

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目標位置に位置決めされる可動部
    と、前記可動部を駆動するアクチュエータと、前記目標
    位置を示す信号に基づき前記可動部を前記目標位置に位
    置決めするための駆動指令信号を、前記アクチュエータ
    に対して出力するコントローラとを備え、H∞制御理論
    に基づき前記可動部と前記アクチュエータとからなる制
    御対象に関するH∞ノルムが所定値以下となるように、
    前記制御対象の感度関数に乗ずべき周波数重み関数の関
    数値を決定することにより、前記コントローラの周波数
    特性を決定するようにした振動抑制装置において、 前記可動部の目標位置追従性能を示す感度関数に乗ずべ
    き周波数重み関数の関数値については、所定周波数以下
    の低周波数域に対応する関数値が、他の周波数域に対応
    する関数値よりも大きくなるように決定し、かつ、 前記制御対象の振動抑制性能を示す感度関数に乗ずべき
    周波数重み関数の関数値については、前記制御対象の共
    振周波数に対応する関数値が、他の周波数域に対応する
    関数値よりも大きくなるように決定するようにした、 振動抑制装置。
  2. 【請求項2】 目標位置に位置決めされる可動部
    と、前記可動部を駆動するアクチュエータと、前記目標
    位置を示す信号に基づき前記可動部を前記目標位置に位
    置決めするための駆動指令信号を、前記アクチュエータ
    に対して出力するコントローラとを備え、H∞制御理論
    に基づき前記可動部と前記アクチュエータとからなる制
    御対象に関するH∞ノルムが所定値以下となるように、
    前記制御対象の感度関数およびロバスト安定性を評価す
    る評価関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値を決定す
    ることにより、前記コントローラの周波数特性を決定す
    るようにした振動抑制装置において、 前記制御対象を、不確定要素が存在する制御モデルとし
    て予め設定しておき、 前記可動部の目標位置追従性能を示す感度関数に乗ずべ
    き周波数重み関数の関数値については、所定周波数以下
    の低周波数域に対応する関数値が、他の周波数域に対応
    する関数値よりも大きくなるように決定し、かつ、 前記制御対象の振動抑制性能を示す感度関数に乗ずべき
    周波数重み関数の関数値については、前記制御対象の共
    振周波数に対応する関数値が、他の周波数域に対応する
    関数値よりも大きくなるように決定し、かつ、 前記制御モデルの不確定要素に対するロバスト安定性を
    評価する評価関数に乗ずべき周波数重み関数の関数値に
    ついては、所定周波数以上の高周波数域に対応する関数
    値が、他の周波数域に対応する関数値よりも大きくなる
    ように決定した、 振動抑制装置。
  3. 【請求項3】 前記可動部の目標位置追従性能を示
    す感度関数は、前記目標位置を入力信号とし、前記可動
    部の現在位置と前記目標位置との偏差を出力信号とする
    伝達関数である請求項1または2記載の振動抑制装置。
  4. 【請求項4】 前記制御対象の振動抑制性能を示す
    感度関数は、前記制御対象に加わる外乱を入力信号と
    し、前記制御対象の振動量を出力信号とする伝達関数で
    ある請求項1または2記載の振動抑制装置。
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