JPH09217148A - 浸炭部の高周波焼きなましを容易にした高強度肌焼鋼及びその製造方法 - Google Patents

浸炭部の高周波焼きなましを容易にした高強度肌焼鋼及びその製造方法

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JPH09217148A
JPH09217148A JP8024097A JP2409796A JPH09217148A JP H09217148 A JPH09217148 A JP H09217148A JP 8024097 A JP8024097 A JP 8024097A JP 2409796 A JP2409796 A JP 2409796A JP H09217148 A JPH09217148 A JP H09217148A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車輌用の歯車等に適した浸炭部の高周波焼き
なましを容易にした高疲労強度肌焼鋼並びにかかる肌焼
鋼を用いての歯車等の製造方法を提供する。 【解決手段】 重量%でC:0.15〜0.25%,Si:0.1
%以下,Mn:0.30〜1.00%,P:0.030 %以下,S:
0.005 〜0.020 %,Ni:0.30〜2.00%,Cr:0.40〜
1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.015 〜0.030
%,N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下あるい
はさらにNb:0.015 〜0.030 %未満を含有し、残部F
e並びに不可避的不純物元素からなり、高周波加熱によ
る焼きなましをして硬さHv420以下を有する浸炭部
の高周波焼きなましを容易にした高強度肌焼鋼および該
鋼を浸炭処理後焼きなまし必要部を温度670〜800
℃で高周波焼きなましする製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、建設車輌
及び産業機械等において用いられる歯車の製造に適した
浸炭部の高周波焼きなましを容易にした高疲労強度(本
明細書では高強度という)肌焼鋼並びにかかる肌焼鋼を
用いての歯車等の製造に適した処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車、建設車輌及び産業機械等におい
て、歯車等は各部分に数多くの種類のものが使用されて
いる。多くのものは浸炭焼入れ、焼きもどし処理又は浸
炭窒化処理して使用される。浸炭処理を施して使用され
る部品の疲労強度向上には、例えば特公平4−8384
8号公報に示されているように、疲労寿命を低下させる
原因となっている粒界酸化や不完全焼入れ部を低減させ
る目的で、Si,Mn,Cr量の低減、及び浸炭層の焼
入れ性を増すためにNi,Moの添加などが挙げられ
る。
【0003】従来より、ハイポイドピニオンギヤのよう
な自動車用歯車においては、高い疲労強度を得るために
これらの鋼に浸炭処理を行って製造している。従って、
歯車の一部品内にあるねじ部も同様に浸炭されて硬くな
る。しかしながら、ねじ部においては硬さが硬くなると
遅れ破壊の原因となる。従来、これを防ぐためにはねじ
部を高周波焼きなまし処理を行って短時間で硬さを下げ
ることにより遅れ破壊を防止しているのが一般的であ
る。
【0004】しかしながら、疲労寿命を増すために素材
に高強度材を使用した場合には、ねじ部の高周波なまし
処理において、合金成分(特にMo含有量)の影響によ
り従来の高周波焼きなまし処理条件のような短時間加熱
では定められた硬さに下がらない。又、高周波焼入れ条
件を換えるにしても、局部加熱による熱容量、及び、加
熱時間のバランスから条件を見つけだすことは困難であ
る。従って、浸炭前に予めねじ部へ防炭処理を施すこと
により硬度の増加を抑える方法を操っている。防炭処理
は、1本1本の歯車のねじ部へ防炭材を塗る作業を伴う
ので、生産性を著しく低下させると共にコストがかか
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題
点を容易に解決するため、素材である鋼の化学成分を調
整することによって疲労強度を増すと共に、従来の高周
波なまし条件でも容易に硬さを下げることのできる鋼を
提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は重量%で C:0.15〜0.25%,Si:0.1 %以下,Mn:0.30〜1.
00% P:0.030 %以下,S:0.005 〜0.020 %,Ni:0.30
〜2.00% Cr:0.40〜1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.01
5 〜0.030 % N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下 または上記成分にNb:0.015 〜0.030 %未満 を含有し残部Fe並びに不可避的不純物元素からなり、
高周波加熱による焼きなましをして硬さHv420以下
を有する浸炭部の高周波焼きなましを容易にした高強度
肌焼鋼及び前記鋼を浸炭処理後焼きなまし必要部を温度
670〜800℃で高周波焼きなましする高強度肌焼鋼
の製造方法である。
【0007】かかる本発明に到達した理由は下記のとお
りである。
【0008】まず短時間の高周波加熱により、焼きなま
し硬さを下げる必要から焼戻し軟化抵抗を増すと言われ
ているMoに注目し、その含有量を種々変えかつ、その
他の主要成分も変えた鋼を溶解し、鍛伸、焼きならし処
理後20mmφの浸炭用試験片を作製し、所定の浸炭処
理を行なって高周波なまし用試験片を作製した。供試材
の成分値を表1に示す。
【0009】
【表1】
【0010】これら試験片を高周波加熱時間を変えるこ
とにより表面温度を変化させて焼きなまし処理を行っ
た。このような焼きなまし処理後、表面硬さを測定する
ことにより、加熱温度と焼きなまし後の硬さとの関係を
求めた。代表的な結果を図1に示す。図1より、遅れ破
壊の生ずることのない硬さの基準Hv420以下となる
焼きなましの温度範囲を求めた。供試した鋼の範囲と温
度差を表2に示す。
【0011】
【表2】
【0012】この表よりMo量と焼きなまし温度範囲関
係をとると図2のようになる。この結果からMo量と焼
きなまし温度範囲の間には相関があることが判った。従
ってこの温度範囲が広い方が焼きなましし易いと考えら
れるので工業的生産条件で制御できる最小の温度範囲は
60℃以上を必要とするので、これより適正Mo量は
0.45%以下であることが確認される。一方、高疲労
強度を必要とすることから本発明鋼を図3に示す試験片
を用いて回転曲げ疲労試験を実施し疲労強度の確認を行
った。結果を表2に合わせて示す。これよりMo量と回
転曲げ疲労限の関係をとると図4のようになる。したが
って、疲労限900MP以上の高い曲げ強度が必要な場
合にはMo量は0.3%以上必要である。従って、本発
明鋼を670〜800℃の温度で高周波焼きなましを行
うことによって硬さHv420以下でかつ疲労強度90
0MP以上の特性を有し更に遅れ破壊が生じないことを
見いだした。
【0013】次に本発明の上記組成について限定理由を
説明する。
【0014】C:Cは浸炭焼入れ処理される歯車の要求
される芯部硬さHRC35〜45を得るためには0.1
5%以上の添加が必要である。しかし0.25%を越え
る多量の添加は、焼入れ後、表面での圧縮残留応力を充
分導入できず、又、芯部の衝撃値を低下させる。従っ
て、Cの添加量は0.15〜0.25%の範囲とした。
【0015】Si:Siは必須成分で溶鋼の脱酸材とし
て効果があり、後述するOT値を低下させる上から多量
に添加しておくことが好ましいが、逆に酸化され易い元
素でもあり、浸炭された表層部において浸炭処理中の雰
囲気酸素と反応し粒界酸化層が生じ易く、このため粒界
酸化層を少なく(深さ10μm以下)するため上限を
0.10%とした。
【0016】Mn:Mnは焼入れ性を確保するために少
なくとも0.30%は必要とする。しかしSi同様浸炭
雰囲気中の酸素と反応し、粒界酸化層を形成することか
ら、この低減を目的とし上限を1.00%とした。従っ
て、Mnの添加量は0.30〜1.00%とした。
【0017】Ni:Niは浸炭層並びに芯部の靭性を向
上させる元素であり、特に浸炭層の硬さを高くした場合
の靭性確保の上からは少なくとも0.3%以上必要であ
る。一方、Niは残留オーステナイトの形成を助長する
元素であることと、過剰の添加は経済性を損なうことか
ら、上限を2.00%とした。従ってNiの添加量は
0.30〜2.00%の範囲とした。
【0018】Cr:CrはMn同様所要の焼入れ性を得
るのに必要な元素であると同時に浸炭雰囲気の酸素によ
り生じ易い元素であることから、下限を0.40%、上
限を1.50%とした。
【0019】Mo:MoはNiと同様に焼入れ性を向上
し、浸炭層及び芯部の靭性を向上させる元素である。そ
して高い曲げ疲労寿命を得るには少なくとも0.3%以
上の添加が必要である。しかしながら焼戻し軟化抵抗に
より浸炭材の高周波焼きなまし特性から考えると、上限
を0.45%に抑える必要がある。従ってMoの添加量
を0.30〜0.45%の範囲とした。
【0020】Al:AlはNと結合してAlNとなり、
オーステナイト結晶粒度を細粒化する作用を有する元素
である。結晶粒の細粒化は浸炭層並びに芯部の靭性を向
上させる効果を有する。従って、浸炭処理温度でも細粒
を確保するため下限を0.015%とした。一方、多量
のAlは疲労強度に有害なAl23介在物の生成を助長
することや歯車とした場合の焼入歪を増やすことから、
上限を0.03%とした。
【0021】N:NはAlと結合してAlNを生成して
結晶粒の微細化をはかるために必要な元素であり、含有
するAlを全てAlNとするに必要な下限値として0.
0100%を、又、過剰な添加は微細化に対し効果が無
いばかりではなく、冷間での加工性を低下させるので、
上限を0.0180%とした。
【0022】Nb:NbはC,Nと結合して炭窒化物を
生成し、AlNと同様にオーステナイト結晶粒度の微細
化に効果のある元素であり、この微細化を介して浸炭層
並びに芯部の靭性向上に寄与する。特に、冷間鍛造によ
り製造される歯車等においては、浸炭時のオーステナイ
ト結晶粒の粗大化を防止する上で必須の元素である。従
って、添加量はAlとNのバランスで決まるが、少ない
と効果が出ないので、0.015%を下限とし、一方、
過剰の添加は粗大な炭窒化物を形成,析出し、浸炭層の
靭性を損なうことから、0.030%未満を上限とし
た。
【0023】P:Pは結晶粒界に偏析しやすい元素であ
り、特に浸炭層のような高炭素鋼の靭性に対する影響が
大きいので、靭性改善の上からは低いほど望ましいが、
原材料の選択などの経済性から上限を0.030%とし
た。
【0024】S:Sは大部分は硫化物介在物として鋼中
に存在し、多量に存在する場合には、疲労強度低下の要
因になる元素であるが、一方歯車のように切削加工によ
り成形される部品では被削性を与える元素でもあること
から、この両者の特性を満たすため、下限値を0.00
5%、上限値を0.020%とした。
【0025】OT:OTは鋼中においては酸化物介在物と
して存在し、疲労強度を損なう元素であることから上限
を0.0015%とした。
【0026】
【発明の実施の形態】以下発明の実施の形態を実施例を
もって説明する。
【0027】
【実施例】表1の記号fの本発明鋼でねじ部を伴うハイ
ポイドピニオンギヤを作製し、温度925℃で4時間浸
炭処理とその後の焼入れ、焼きもどし処理を実施した
後、加熱温度750℃で高周波焼きなまし処理を実施し
た。なまし後ねじ部の硬さ結果を図5に示す。本部品の
硬さ基準値Hv420以下をいずれも満足している。
又、本発明鋼で回転曲げ疲労試験を実施した結果の一部
を図6に示す。比較鋼1のAであるSCM420Hに比
べて本発明鋼は曲げ疲労寿命が優れていることが判る。
【0028】
【発明の効果】本発明鋼は、自動車建設車輌及び産業機
械等で使用されるハイポイドピニオンギヤ等の浸炭部品
で高い曲げ疲労強度や長い耐久寿命を要求される部品と
ねじ部を有する部品において、高い疲労強度を有しなが
らねじ部の高周波焼きなまし処理を容易に行える特性を
兼ね備えている。したがって本発明鋼を使用することに
より、ねじ部の防炭処理のようにコストの増す工程を必
要とせずに現状の条件で歯車部品の小形軽量化、及び、
高出力化対応が可能である。
【0029】このような理由により、本発明の効果は苛
酷な条件で歯車類を使用する産業界においてコストの低
減と信頼性の向上に広く貢献できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】供試材の加熱温度に焼きなまし後の硬さとの関
係を示すグラフである。
【図2】Mo量と焼きなましの温度範囲と硬さとの関係
を示すグラフである。
【図3】回転曲げ疲労試験のための試験片の形状を示す
図である。
【図4】Mo量に疲労限との関係を示すグラフである。
【図5】焼きなまし後のネジ部の硬さを示すグラフであ
る。
【図6】本発明鋼と比較鋼との回転曲げ試験結果を示す
グラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正内容】
【0002】
【従来の技術】自動車、建設車輌及び産業機械等におい
て、歯車等は各部分に数多くの種類のものが使用されて
いる。多くのものは浸炭焼入れ、焼きもどし処理又は浸
炭窒化処理して使用される。浸炭処理を施して使用され
る部品の疲労強度向上には、例えば特平4−8384
8号公報に示されているように、疲労寿命を低下させる
原因となっている粒界酸化や不完全焼入れ部を低減させ
る目的で、Si,Mn,Cr量の低減、及び浸炭層の焼
入れ性を増すためにNi,Moの添加などが挙げられ
る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】Mo量と焼きなましの温度範囲との関係を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/44 C22C 38/44 // C21D 1/32 C21D 1/32 (72)発明者 坂本 和夫 北海道室蘭市仲町12番地 三菱製鋼室蘭特 殊鋼株式会社室蘭製作所内 (72)発明者 坂本 尚彦 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 谷口 庸一 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 加藤 賢二 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 磯谷 高志 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で C:0.15〜0.25%,Si:0.1 %以下,Mn:0.30〜1.
    00% P:0.030 %以下,S:0.005 〜0.020 %,Ni:0.30
    〜2.00% Cr:0.40〜1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.01
    5 〜0.030 % N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下 を含有し残部Fe並びに不可避的不純物元素からなり、
    高周波加熱による焼きなましをして硬さHv420以下
    を有することを特徴とする浸炭部の高周波焼きなましを
    容易にした高強度肌焼鋼。
  2. 【請求項2】 重量%で C:0.15〜0.25%,Si:0.1 %以下,Mn:0.30〜1.
    00% P:0.030 %以下,S:0.005 〜0.020 %,Ni:0.30
    〜2.00% Cr:0.40〜1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.01
    5 〜0.030 % N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下 を含有し残部Fe並びに不可避的不純物元素からなる鋼
    を浸炭処理した後、焼きなまし必要部を670〜800
    ℃の温度で高周波焼きなましすることを特徴とする高強
    度度肌焼鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で C:0.15〜0.25%,Si:0.1 %以下,Mn:0.30〜1.
    00% P:0.030 %以下,S:0.005 〜0.020 %,Ni:0.30
    〜2.00% Cr:0.40〜1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.01
    5 〜0.030 % N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下,さらにN
    b:0.015 〜0.030%未満 を含有し残部Fe並びに不可避的不純物元素からなり、
    高周波加熱による焼きなましをして硬さHv420以下
    を有することを特徴とする浸炭部の高周波焼きなましを
    容易にした高強度肌焼鋼。
  4. 【請求項4】 重量%で C:0.15〜0.25%,Si:0.1 %以下,Mn:0.30〜1.
    00% P:0.030 %以下,S:0.005 〜0.020 %,Ni:0.30
    〜2.00% Cr:0.40〜1.50%,Mo:0.30〜0.45%,Al:0.01
    5 〜0.030 % N:0.0100〜0.0180%,OT:0.0015%以下,さらにN
    b:0.015 〜0.030%未満 を含有し残部Fe並びに不可避的不純物元素からなる鋼
    を浸炭処理した後、焼きなまし必要部を670〜800
    ℃の温度で高周波焼きなましすることを特徴とする高強
    度度肌焼鋼の製造方法。
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