JPH09203733A - 塗膜下のさび検知方法及びさび検知液並びにさび補修方法 - Google Patents

塗膜下のさび検知方法及びさび検知液並びにさび補修方法

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JPH09203733A
JPH09203733A JP8012428A JP1242896A JPH09203733A JP H09203733 A JPH09203733 A JP H09203733A JP 8012428 A JP8012428 A JP 8012428A JP 1242896 A JP1242896 A JP 1242896A JP H09203733 A JPH09203733 A JP H09203733A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼構造物の塗膜下のさびを顕在化させて定量
的に測定可能とする。 【解決手段】 さびの検知前に塗膜表面をカラー撮像す
る工程1と、さびより発生した鉄イオンと反応し発色す
る検知液を塗膜表面に塗布する工程2と、検知液により
さびが顕在化され発色部を生じた塗膜表面をカラー撮像
する工程3と、発色部を検知前の塗膜表面のカラー撮像
と比較して測定する工程4と、さびの進行度合を検知す
る工程5とよりなる。この構成により塗膜下のさびの進
行度合を検知できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼橋等の鋼構造物
の塗膜下で進行中のさびの検知に係り、特に初期の段階
でさびを顕在化させて検知するのに好適な塗膜下のさび
検知方法及びさび検知液並びにさび補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の塗膜下のさび検知方法において
は、塗膜が接する環境条件との物理化学的反応によって
生じた塗膜の劣化現象を、光沢及び色彩の変化等よりす
べて肉眼によって評価しているため、その評価に個人差
を生じている。したがって発錆の場合でも、かなり大き
く成長して塗膜表面にさびが出現してから発見されるた
め補修塗装の時期を失し、結局は多額な費用をかけて、
広範囲にわたる補修塗装を行っているのが現状である。
また単に塗膜表面をカラー撮像し画像処理しても、塗膜
下で進行中のさびによる塗膜表面への着色は不明瞭で検
知精度が得られない。国内の橋梁の約40%は鋼製であ
り、酸性雨等の影響で鋼橋のさびが進行する傾向にある
ため、さびの進行度合を定量的に検知し防食塗膜の維持
管理を合理的に推進する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の塗膜下のさび検
知方法にあっては、塗膜表面に出現したさびを肉眼で評
価しているため、塗膜下のさびの検知が不充分であっ
て、かなり大きく成長してから発見されるため補修の時
期を失し、結局は広範囲にわたる補修塗装が行われてい
る問題点がある。また塗膜表面をカラー撮像しても、塗
膜下のさびによる着色が不明瞭なため、検知精度が得ら
れない問題点がある。
【0004】本発明の目的は、鋼橋等の鋼構造物の塗膜
下のさびを顕在化させて定量的に測定し、さびの進行度
合を検知できる塗膜下のさび検知方法及びさび検知液並
びさび補修方法を提供することにある。
【0005】本発明の他の目的は、下地処理でさびが除
去されたことを検知して補修することのできるさび補修
方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、本発明に係る塗膜下のさび検知方法は、鋼構造物の
塗膜下で進行中のさびを検知する塗膜下のさび検知方法
において、さびの検知前に塗膜表面をカラー撮像し、さ
びより発生した鉄イオンと反応し発色する検知液を塗膜
表面に塗布し、検知液によりさびが顕在化されて発色部
を生じた塗膜表面をカラー撮像し、検知前の塗膜表面の
カラー撮像と比較して発色部を測定し、さびの進行度合
を検知する構成とする。
【0007】そして検知液に、鉄イオンと反応してチオ
シアン酸鉄を生成し赤褐色に発色する試薬と、反応を促
進させる塗膜浸透剤及び化学反応促進剤とを用いる構成
でもよい。
【0008】また検知液に、鉄イオンと反応してフェリ
シアン化鉄を生成し青色に発色する試薬と、反応を促進
させる塗膜浸透剤及び化学反応促進剤とを用いる構成で
もよい。
【0009】さらに発色部は、少なくとも発錆面積率が
測定される構成でもよい。
【0010】そしてさび検知液においては、前記いずれ
か一つの塗膜下のさび検知方法に用いられ、鉄イオンと
反応してチオシアン酸鉄を生成し赤褐色に発色する試薬
と、反応を促進させる塗膜浸透剤及び化学反応促進剤と
よりなる構成とする。
【0011】また前記いずれか一つの塗膜下のさび検知
方法に用いられ、鉄イオンと反応してフェリシアン化鉄
を生成し青色に発色する試薬と、反応を促進させる塗膜
浸透剤及び化学反応促進剤とよりなる構成でもよい。
【0012】さらに塗膜下のさび補修方法においては、
前記いずれか一つの塗膜下のさび検知方法を用い、さび
の進行度合に応じて決定された範囲を下地処理し、下地
処理した範囲に検知液を塗布して発色部の有無を検知
し、さびの除去を確認した後に塗装で補修する構成とす
る。
【0013】本発明によれば、鋼構造物の塗膜下のさび
より発生した鉄イオンと反応し発色する検知液を塗膜表
面に塗布するため、肉眼で発見できないピンホール等の
塗膜欠陥を通して瞬時にさびの部分がさび色に発色され
さびが顕在化される。その発色部を検知前のカラー撮像
と比較して測定することにより、塗膜下のさびの進行度
合が検知される。またさびの進行度合に応じて下地処理
し、検知液を塗布して発色部の有無を検知し、さびの除
去を確認した後に塗装で補修するため、完全に発錆部が
補修される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図1を参照し
ながら説明する。図1に示すように、鋼構造物の塗膜下
で進行中のさびを検知する塗膜下のさび検知方法であっ
て、さびの検知前に塗膜表面をカラー撮像する工程1
と、さびより発生した鉄イオンと反応し発色する検知液
を塗膜表面に塗布する工程2と、検知液によりさびが顕
在化されて発色部を生じた塗膜表面をカラー撮像する工
程3と、発色部を検知前の塗膜表面のカラー撮像と比較
して測定する工程4と、測定した発錆面積率等よりさび
の進行度合を検知する工程5とよりなる構成とする。
【0015】塗膜は、有機高分子化合物で連続被覆を形
成しているが、塗膜が接触している環境条件によって、
物理化学的な反応を生じて分解し、長時間を経て低分子
へと変化する。特に太陽光に直接照射される環境下で
は、太陽光中の紫外線により分解反応が促進されるがこ
の現象を塗膜劣化と称する。塗膜劣化後に例えば雨水等
の水分と接触すると、水分は容易に塗膜内に浸透し、鋼
構造物面に達して電気化学的反応でさびを生ずるように
なる。塗膜下でさびを生じると、さびが塗膜を剥離しな
がら横に広がり、次第に広範囲の面積へと伝ぱするた
め、塗膜表面にさびが出現し始めることは、塗膜下で腐
食反応が進行していることを意味し、さびの進行度合を
検知し対策することが重要である。
【0016】検知液は、塗膜表面に雨水とともに付着し
たごみが多量に存在しても、鋼構造物の塗膜下に発生し
たさびを、初期の段階で肉眼では発見できないピンホー
ル等の塗膜欠陥を通して発色により顕在化させ、発錆面
積率が約3%を超えると塗膜を塗り替える等の診断を可
能とし、防食塗膜の維持管理を合理的に推進させるもの
である。検知液の主成分は、鋼が腐食することによって
発生する鉄イオンと直接反応して、特有の色を発色する
試薬及びこの反応を促進させるための塗膜浸透剤及び化
学反応促進剤とよりなる。携帯用噴霧器に収納され、携
帯用噴霧器の噴霧ノズルを使用の都度開放することによ
って、塗膜浸透剤及び化学反応促進剤が噴霧缶より噴霧
可能になっており、噴霧後の1〜3秒以内に発色を生じ
る。
【0017】検知液は、さびの鉄イオンと反応して赤褐
色又は青色を発生する組成を有し、更に塗膜を浸透して
この反応を促進させるため、界面活性剤及びその他の塩
類が用いられている。
【0018】例えば、赤褐色を発色させてさびの存在を
検知する場合は、チオシアン酸ナトリウムを主成分とし
たものを用いる。この液は、無色透明であるが、さびが
存在するとチオシアン酸鉄を生成して(1)式に示すよ
うに赤褐色となる。
【0019】
【化1】
【0020】また、青色に発色させる場合は、フェリシ
アン化ナトリウムを主成分とした液を用いる。この液
は、黄色であるが、さびが存在することによりフェリシ
アン化鉄を生成して(2)式に示すように青色となる。
【0021】
【化2】
【0022】成分組成は、例として以下のとおりであ
る。 〔組成例−1〕 チオシアン酸ナトリウム ……10g/L チオシアン酸アンモニウム……10g/L 塩化ナトリウム …… 5g/L 界面活性剤 …… 2g/L 〔組成例−2〕 フェロシアン化ナトリウム……10g/L フェリシアン化ナトリウム……10g/L 塩化ナトリウム …… 5g/L 界面活性剤 …… 2g/L 次に検知液による塗膜下で進行中のさびの検知能力を確
めるため、塗膜試験片と、実際の橋梁とについて試験を
実施した。試験方法は、試験体に対して、検知液を塗布
する前と、塗布した後のカラー写真を撮り、そのカラー
写真の映像を画像処理装置により発色点の大きさ、数及
び発錆面積率等を測定した。
【0023】(1)試験片による測定 試験片は、暴露試験場で約5年間暴露試験を行ったもの
であり、試験片の大きさは、150×300×6.5m
mであって軟鋼板に変性エポキシ樹脂塗料を塗装したも
のである。検知液を塗布する前と、検知液を塗布した後
と、検知液を塗布した発色部の塗膜を剥離して確かにさ
びが発生していたかどうかを確めた後とに対し、さびの
粒径分布とその個数及び発錆面積率を測定し、その結果
を図2〜図4に示す。この結果によれば、検知液を塗布
する前のさびの個数よりも塗布後のさび個数の方が、い
ずれの試験片でも多く、検知液の塗布効果を如実に示し
ていることが分る。ただし、試験片No.729のみは、
検知液を塗布後のさび個数が少ない結果を示している
が、これは、検知液を塗布したことにより、さびの広が
りが大きくなり、検知液を塗布前の塗膜表面と色彩濃淡
差が小さくなって検出が難しくなったことに起因するも
のである。
【0024】(2)橋梁による測定 試験片による検知液の効果が確認できたため、実際の橋
梁について同様手法による測定を下記の橋梁について実
施した。 田園地域 …… 橋梁 田園地域 …… 橋梁 交通量の多い都市地域…… 橋梁 海岸地域 …… 橋梁 海岸地域 …… 橋梁 測定箇所は、例として図6に示す橋梁のように、何れ
の橋梁とも主とし腹板の塗膜表面の試験箇所 No.1〜N
o.8について実施し、橋梁については箱桁の底板につ
いて測定した。測定した結果をまとめると図6〜図10
に示すとおりである。総体的に検知液を塗布した方が発
色部の発錆個数が多く検出されていることが分り、この
結果からも検知液により塗膜下のさびを顕在化させる効
果が実証されたものと云える。ただし、橋梁の試験箇
所 No.4及び橋梁の試験箇所 No.2のように、検知液
を塗布した方が、発錆個数が少なくなっている個所が見
られるが、これは検知液を塗布したことにより、汚れが
洗浄されたためである。換言すれば、塗布前の塗膜表面
のカラー写真に映っている汚れ付着による汚点を、その
ままさびとしてカウントしたためであり、汚点とさびと
の分別の難しさを示していると云える。
【0025】本実施例によれば、塗膜表面の初期の発錆
は、さび粒径が微小なため肉眼では発見し難いが、検知
液を塗布することにより、さびで発生した鉄イオンと反
応して発色するため、汚れやその他の付着物等と見違え
ることがなく、容易にさびの発生度合を評価することが
できる。また、塗膜下で腐食が進行している場合は、そ
の腐食のさびを検知することもできる。
【0026】本発明の他の実施例として塗膜下のさび補
修方法は、前記いずれか一つの塗膜下のさび検知方法を
用い、さびの進行度合に応じて決定された範囲をグライ
ンダ等で下地処理し、下地処理した範囲に検知液を塗布
して発色部の有無を検知し、発色部が残っていればその
部分をさびがなくなるまで下地処理し、さびの完全な除
去を確認した後に塗装で補修する構成とする。
【0027】本実施例によれば、さび補修の際に鋼構造
物のさびの下地処理した面に検知液を塗布し、発色部が
なくさびが除去されたことを確認した後に、塗装で補修
することにより完全な塗膜を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、鋼構造物の塗膜表面に
検知液を塗布することにより、検知液がさびの鉄イオン
と反応して発色するため、発色部を計測して塗膜下で進
行しているさびの進行度合を定量的に検知することがで
きる。またさび補修の際に下地処理した面に検知液を塗
布し、発色部がなくさびが除去されたことを確認した後
に、塗装で補修することにより完全な塗膜を得ることが
できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】暴露試験片による確認試験結果を示す図であ
る。
【図3】暴露試験片による確認試験結果を示す図であ
る。
【図4】図2及び図3の確認試験結果を示すグラフであ
る。
【図5】橋梁の試験箇所を示す図である。
【図6】橋梁の検知液を塗布前後の試験結果を示すグ
ラフである。
【図7】橋梁の検知液を塗布前後の試験結果を示すグ
ラフである。
【図8】橋梁の検知液を塗布前後の試験結果を示すグ
ラフである。
【図9】橋梁の検知液を塗布前後の試験結果を示すグ
ラフである。
【図10】橋梁の検知液を塗布前後の試験結果を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 さびの検知前に塗膜表面をカラー撮像する工程 2 検知液を塗膜表面に塗布する工程 3 発色部を生じた塗膜表面をカラー撮像する工程 4 発色部を測定する工程 5 さびの進行度合を検知する工程

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼構造物の塗膜下で進行中のさびを検知
    する塗膜下のさび検知方法において、前記さびの検知前
    に塗膜表面をカラー撮像し、該さびより発生した鉄イオ
    ンと反応し発色する検知液を前記塗膜表面に塗布し、該
    検知液により前記さびが顕在化されて発色部を生じた塗
    膜表面をカラー撮像し、前記検知前の塗膜表面のカラー
    撮像と比較して前記発色部を測定し、前記さびの進行度
    合を検知することを特徴とする塗膜下のさび検知方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の塗膜下のさび検知方法に
    おいて、検知液に、鉄イオンと反応してチオシアン酸鉄
    を生成し赤褐色に発色する試薬と、前記反応を促進させ
    る塗膜浸透剤及び化学反応促進剤とを用いることを特徴
    とする塗膜下のさび検知方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の塗膜下のさび検知方法に
    おいて、検知液に、鉄イオンと反応してフェリシアン化
    鉄を生成し青色に発色する試薬と、前記反応を促進させ
    る塗膜浸透剤及び化学反応促進剤とを用いることを特徴
    とする塗膜下のさび検知方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の塗膜下のさび検知方法に
    おいて、発色部は、少なくとも発錆面積率が測定される
    ことを特徴とする塗膜下のさび検知方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の塗膜下のさび検知方法に
    用いられ、鉄イオンと反応してチオシアン酸鉄を生成し
    赤褐色に発色する試薬と、前記反応を促進させる塗膜浸
    透剤及び化学反応促進剤とよりなることを特徴とするさ
    び検知液。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の塗膜下のさび検知方法に
    用いられ、鉄イオンと反応してフェリシアン化鉄を生成
    し青色に発色する試薬と、前記反応を促進させる塗膜浸
    透剤及び化学反応促進剤とよりなることを特徴とするさ
    び検知液。
  7. 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか1項記載の塗膜
    下のさび検知方法を用い、さびの進行度合に応じて決定
    された範囲を下地処理し、該下地処理した範囲に検知液
    を塗布して発色部の有無を検知し、さびの除去を確認し
    た後に塗装で補修することを特徴とする塗膜下のさび補
    修方法。
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