JPH09202961A - 赤外線用光学膜の製造方法 - Google Patents

赤外線用光学膜の製造方法

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JPH09202961A
JPH09202961A JP8011927A JP1192796A JPH09202961A JP H09202961 A JPH09202961 A JP H09202961A JP 8011927 A JP8011927 A JP 8011927A JP 1192796 A JP1192796 A JP 1192796A JP H09202961 A JPH09202961 A JP H09202961A
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JP
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optical film
film
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infrared
substrate
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JP8011927A
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English (en)
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Kazumasa Konishi
一昌 小西
Noboru Yamazaki
暢 山▲崎▼
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】水分による吸収が低減された光学膜を製造する
方法を提供する。 【解決手段】(1) 透過部材もしくは反射部材からなる基
材の表面または該基材上に形成した光学膜の表面に50
0eV以上800eV以下のビーム電圧でアルゴンイオ
ンを照射した後、上記表面に1つ以上の光学膜を形成す
る。(2) 透過部材もしくは反射部材からなる基材の表面
または該基材上に形成した光学膜の表面に光学膜を形成
する際に、300eV以上600eV以下のビーム電圧
でアルゴンイオンを照射しつつ該光学膜を蒸着する。
(1) と(2) を組み合わせることにより、更なる水分低減
がはかれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は透過部材又は反射部
材からなる基材の表面に赤外線用光学膜を形成する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種のウインドウ、レンズ、部分反射
鏡、全反射鏡、フィルタ、ファイバなどの赤外線用光学
部品として透過部材又は反射部材からなる基材(以下単
に基材という)の表面に反射防止膜、部分反射膜あるい
は増反射膜などの光学膜を形成させたものが用いられて
いる。これらの赤外線用光学膜は、低屈折率材として、
ThF4 、YbF3 、YF3 、DyF3 、PrF3 、S
mF3 などを、高屈折率材料としては、ZnS、ZnS
e、Geなどを用いて、単層あるいは2層以上の複層で
形成されている。図3に赤外線用光学膜の1例を示す。
例えば基材8としてのZnSe部材の表面に、第1の光
学膜として低屈折率材膜のYbF3 膜がコーティングさ
れ、さらにその上に第2の光学膜として高屈折率材膜の
ZnS膜が形成される。
【0003】従来これらの赤外線用光学膜の形成は基材
を十分に洗浄した後、真空チャンバー内にセットし、1
30〜280℃の範囲の適当な温度に加熱して5×10
-5〜1×10-6Torr程度の真空度のもと蒸着するこ
とにより行なわれていた。 文献:特開昭60−245775、特開昭61−290
402、特公平5−52922、特開平5−28140
1、特願平6−128704、特開平6−158270
各号公報、「PVD・CVD皮膜の基礎と応用」(槇書
店)1994年,第277-278 頁、「光学システムのための薄
層(THIN FILMS FOR OPTICAL SYSTEMS)」1995 年,第1
19-132 頁、Applied Optics, Vol26 No.18,15 Septembe
r 1987 ,3752-3753 、真空,1992年 第35巻第9号,7
73-780 頁、Thin Solid Films, 214(1992)188-193、SPI
E Vol 1441 、Laser-lnduced Danagein Optical Materi
als1990-113-126 、 Laser in der Technik Laser in E
ngineering, 1993, 664-667 、Thin Solid Films, 209
(1992)109-115。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来この種の手法によ
る光学膜は、基材表面に吸着していて吸収率増大の原因
となる水分の除去が不十分であること、チャンバー壁面
や蒸着原料に吸着している水分が蒸着中に膜に取り込ま
れてしまうこと、さらに膜が隙間の多い粒状でありち密
性が悪いため真空チャンバーから大気中に取り出した際
に水分が侵入しやすいこと、といった理由から、水分に
起因する吸収率が高く、高出力レーザなどの使用には問
題があった。この種の手法により、ZnSeの透過部材
の両面上に反射防止膜を形成させたものについて、1
0.6μm波長の赤外線レーザ光を入射した際の赤外線
吸収率のデータの一例を表−1に示す。本発明はこのよ
うな問題点を解決して水分による吸収を低減できる光学
膜の製造方法を課題とするものである。
【0005】
【表1】
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する手段
として本発明は、(1) 透過部材もしくは反射部材からな
る基材の表面または該基材上に形成した光学膜の表面に
500eV以上800eV以下のビーム電圧でアルゴン
イオンを照射した後、上記表面に1つ以上の光学膜を形
成することを特徴とする赤外線用光学膜の製造方法、
(2) 透過部材もしくは反射部材からなる基材の表面また
は該基材上に形成した光学膜の表面に、300eV以上
600eV以下のビーム電圧でアルゴンイオンを照射し
つつ1つ以上の光学膜を蒸着することを特徴とする赤外
線用光学膜の製造方法、(3) 透過部材もしくは反射部材
からなる基材の表面または該基材上に形成した光学膜の
表面に500eV以上800eV以下のビーム電圧でア
ルゴンイオンを照射した後、該表面に300eV以上6
00eV以下のビーム電圧でアルゴンイオンを照射しつ
つ1つ以上の光学膜を蒸着することを特徴とする赤外線
用光学膜の製造方法、(4) 前記光学膜がYF3 、YbF
3 、DyF3 、ZnSe、ZnS、GaAs、Ge、C
dTe及びPbTeからなる群より選ばれるものである
ことを特徴とする上記 (1)ないし(3) 3のいずれかに記
載の赤外線用光学膜の製造方法、(5) 上記基材の表面に
接する第1の光学膜としてフッ化物からなる光学膜を形
成することを特徴とする上記 (1)ないし(4) のいずれか
に記載の赤外線用光学膜の製造方法、(6) 上記基材の表
面に接する第1の光学膜としてフッ化物からなる光学膜
を設け、さらに直下の光学膜とは異なる屈折率を有する
材料よりなる1つ以上の光学膜を形成することを特徴と
する上記 (1)ないし(5) のいずれかに記載の赤外線用光
学膜の製造方法、(7) 前記フッ化物がYF3 、Yb
3 、DyF3 のいずれかであることを特徴とする上記
(4)ないし(6) のいずれかに記載の赤外線用光学膜の製
造方法、(8) 前記屈折率の異なる材料よりなる1つ以上
の膜がZnSe、ZnS、GaAs、Ge、CdTe及
び PbTeからなる群より選ばれるものであることを
特徴とする上記 (5)ないし(7) のいずれかに記載の赤外
線用光学膜の製造方法、及び (9)前記基材が、ZnS
e、ZnS、GaAs、Ge、CdTe、PbTe、表
面にAuをコーティングしたSi及び表面にAuをコー
ティングしたCuからなる群から選ばれる透過部材また
は反射部材であることを特徴とする上記 (1)ないし(8)
のいずれかに記載の赤外線用光学膜の製造方法、を提供
する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、上記の水分除去の手段
として、蒸着前の基材または光学膜表面をアルゴン(A
r)イオン照射により水分除去、清浄化することにより
上記の目的を達成するものであり、さらに上記表面水分
除去、清浄化工程と、蒸着手段としていわゆるアルゴン
イオンビームアシスト蒸着法を組み合わせることにより
相乗作用を得て、一つの装置内で、しかも蒸着する膜材
料以外にはアルゴンイオンのみの使用により、簡単且つ
確実に水分吸着を大幅に低減して赤外線用光学膜を製造
するものである。
【0008】図1は本発明を実施する装置構成の一例を
模式的に示す図である。真空チャンバー3内にはイオン
ガン1と電子ビーム(EB)蒸発源2及びホルダーに保
持された基材(又は表面に光学膜を形成した基材)6が
配設されており、真空チャンバー3内は高真空に排気さ
れていて、該基材6はヒーター5により加熱される。光
学膜形成前に基材6又は光学膜表面をアルゴンイオン照
射するには、該基材6に向けてイオンガン1からアルゴ
ンイオンビームを照射するだけである。また、光学膜を
アルゴンイオンビームアシスト蒸着するには、電子ビー
ム(EB)蒸発源2により膜材料7を該基材6に蒸着す
ると同時に該基材6に向けてイオンガン1からアルゴン
イオンビームを照射する。4は光電式膜厚計あり、形成
する光学膜の厚みを制御する。
【0009】(作用) 1)従来この種の手法では、吸収率増大の原因となる基
材表面に吸着している水分の除去が真空中での基材の加
熱だけでは不十分であった。そこで水分の除去手段とし
てドライエッチングの手法の1つとして知られているA
rイオン照射を行なう。すなわち、本発明においては基
材表面に光学膜を形成する際に、基材表面を荒らさず且
つ水分を十分除去できる適当な強度である500eV以
上800eV以下のビーム強度でArイオンを予め照射
することにより効果的に水分除去が可能となった。Ar
イオンのビーム強度が500eVより弱いと水分除去が
不十分であり、800eVより強いと基材または光学膜
自身がエッチングされ光学部品として用途を果たせなく
なる。
【0010】2)また本発明では、蒸着中にチャンバー
壁面や蒸着原料に吸着している水分が膜に取り込まれる
のを防止するために、および膜が隙間の多い粒状であり
ち密性が悪く真空チャンバーから大気中に取り出した際
に水分が侵入するのを防止するために、イオン支援蒸着
法を適用する。すなわち、基材表面に300eV以上6
00eV以下のビーム電圧でArイオンを照射しつつ膜
材料を蒸着する。図2はフッ化物原料(代表例としてY
bF3 を示す)の蒸着中におけるArイオン照射の効果
を説明する概念図である。Arイオン(Ar+ )は、
YbF3 膜表面に吸着した水分子(H2 O)のスパッタ
リング除去、YbF3 分子に結合した水分子の解離、
YbF3 へのエネルギー付加による膜緻密化、という
〜の作用をする。Arイオンのビーム強度が300
eV以下では、Arイオンが蒸発している原料にぶつか
ることにより該原料に吸着している水分を除去したり、
チャンバー壁面からとびだして形成中の膜表面に吸着し
ている水分をArイオンをスパッタ除去するのに不十分
である。また300eV以下では、蒸発している原料に
Arイオンが衝突することによりエネルギーを与えるこ
とができず、また形成中の膜表面にArイオンが衝突す
ることにより膜を押し固めることができず、緻密な膜を
形成できない。一方600eV以上であると、原料化合
物を変質させてしまう。
【0011】3)基材に接する第 1の光学膜の上に積層
して屈折率の異なる1つ以上の光学膜を形成する際、直
下の膜表面に吸着している水分を除去するため光学膜を
形成する前に500eV以上800eV以下のビーム電
圧でArイオンを照射してクリーニングを行なうことに
より上記(1) と同様の効果を得ることができる。
【0012】4)光学膜を積層形成する、すなわち、直
下の膜とは屈折率の異なる、フッ化物膜あるいはZnS
e、ZnS、GaAs、Ge、CdTe、PbTeなど
のいずれかからなる光学膜を形成する際、300eV以
上600eV以下のビーム電圧でArイオンを照射しつ
つ蒸着する。これにより上記(2) と同様の効果を得るこ
とができる。
【0013】本発明の蒸着前に行うArイオン照射の一
般的条件は、上記のように500eV以上800eV以
下のビーム電圧であることが必須である。ビーム電流密
度はイオンガンの能力や配置により左右されるが、50
〜250μA/cm2 程度がよい。基材又は光学膜温度
については特に制限はないが、蒸着するときの温度であ
る100〜180℃程度が適当である。また真空度はA
rイオンを照射する前のベース真空度(Arイオンを照
射するためにArガスを導入するが、その前の真空度)
で1×10-5Torr以下が望ましく、Arイオン照射
時の真空度は3×10-4Torr以下が望ましい。
【0014】また、本発明の膜をアルゴンビームアシス
ト蒸着する際は、上記のように300eV以上600e
V以下のビーム電圧が必須である。その他の一般的条件
は次のとおりである。ビーム電流密度はイオンガンの能
力や配置により左右されるが30〜200μA/cm2
程度がよい。基材または光学膜温度は100〜180℃
が適当であり、蒸着速度は0.02〜0.1μm/mi
n程度がよく、また真空度はArイオンを照射するため
にArイオンを導入する前のベースで1×10 -5Tor
r以下が望ましく、Arイオン照射時の真空度は2×1
-4Torr以下が望ましい。
【0015】本発明において基材としては、例えばZn
Se、ZnS、GaAs、Ge、CdTe、PbTe等
の透過部材あるいは例えば表面にAuをコーティングし
たSi及び表面にAuをコーティングしたCu等の反射
部材を挙げることがてきる。
【0016】本発明の方法を適用できる光学膜として
は、例えばYF3 、YbF3 、DyF 3 、ZnSe、Z
nS、GaAs、Ge、CdTe及びPbTe等が挙げ
られる。
【0017】また本発明において、基材の表面に接して
形成する第1の光学膜としては、基材と屈折率が異なる
ものであればよい。光学膜では屈折率の異なる材料を組
み合わせて使用するが、赤外線光学部品においては一般
に基材として使用する材料が高屈折率の材料であること
が多く、このような基材には屈折率の低い材料を第1の
光学膜とすることが普通である。例えばZnSe(屈折
率:約2.4)、Ge(屈折率:約4)等の基材に対し
て、例えばYbF3 (屈折率:約1.4)等のフッ化物
が一般的に多用されている。このようなフッ化物として
特に好ましくは、YF3 、YbF3 及びDyF3 から選
ばれるいずれかが挙げられる。
【0018】本発明において、基材の表面に接する第1
の光学膜がフッ化物であり、該フッ化物膜の上に1以上
の光学膜を更に積層形成する場合、第2の光学膜以降の
材質としては、例えばZnSe、ZnS、GaAs、G
e、CdTe及びPbTe等が挙げられる。
【0019】
【実施例】
〔実施例1〕図1に示す装置構成により基材表面に光学
膜を形成した。透過部材である厚さ3mmのZnSe部
材を基材とし、その表面に第1の光学膜としてYb
3 、YF3 またはDyF3 のいずれかよりなる低屈折
率材の膜(厚さ1μm)を形成させ、さらにその上に第
2の光学膜10として高屈折率材のZnSeの膜(厚さ
0.2μm)またはZnSの膜(厚さ0.3μm)を形
成させて、図3に示す構成の波長10.6μm赤外線用
反射防止膜を基材の両面に有する光学部品を作製した。
原料としてそれぞれのフッ化物について純度99.99
%で平均粒子径0.5mmの粒状のものを使用し、Zn
Se、ZnSについては純度99.999%で平均粒子
径5mmの粒状のものを使用した。膜形成は基材を14
0〜160℃に加熱し、電子ビームにより原料を蒸発さ
せ、真空度2×10-4Torr以下、蒸着速度0.05
μm/minで実施した。膜厚は反射型光電式膜厚計に
て制御した。作成した各試料について赤外線吸収率の測
定及び外観観察により表面の荒れ具合の評価を行った。
また代表的な試料について水分に起因する水素原子、酸
素原子の深さ方向の存在量の分析を行い、水分低減の効
果を確認した。赤外線吸収率は波長10.6μmのCO
2 レーザ光を用いたレーザカロリメトリ法により測定し
た。表面の荒れ具合は目視による外観観察によりその透
明度を評価した。H原子、O原子の深さ方向の存在量の
分析は、SIMS(Secondary Ion MassSpectrometer
:2次イオン質量分析計)により行った。結果を表−
2ないし表−5に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】表−2ないし表−5において、基材表面に
Arイオンの照射なし(試料 No.1)、及びArイオン
のビーム電圧を変化させて照射させた試料(試料 No.
2,3,4,5及び6)において、照射なしと400e
Vでは赤外線吸収率の低減が見られず(試料 No.1及び
2)、900eVでは赤外線吸収率の低減が見られるも
のの外観観察で白色となっている(試料 No.6)。これ
に対し、ビーム電圧500eV、600eV、800e
Vでは赤外線吸収率の低減が見られ、外観観察でも透明
で良好な結果が得られている(試料 No.3,4及び
5)。
【0026】フッ化物を蒸着中にArイオンの照射なし
(試料 No.4)、及びArイオンのビーム電圧を変化さ
せて照射させた試料(試料 No.7,8,9,10,1
1,28,29,30,31,32,33,34,3
5,36,37,38及び39)において、照射なし,
200eV及び700eVでは赤外線吸収率の低減が見
られない(試料 No.4,7,11,28,29,33,
34,35及び39)。これに対し、ビーム電圧300
eV、400eV、600eVでは赤外線吸収率の低減
が見られ、外観観察でも透明で良好な結果が得られてい
る(試料 No.8,9,10,30,31,32,36,
37及び38)。
【0027】フッ化物を蒸着した後、該フッ化物膜とは
屈折率の異なる光学膜を形成する前にフッ化物膜の表面
にArイオンを照射しなかった場合(試料 No.9)、及
びArイオンをビーム電圧を変化させて照射させた試料
(試料 No.12,13,14,15及び16)におい
て、照射なしと400eVでは赤外線吸収率の低減が見
られず(試料 No.9及び12)、900eVでは赤外線
吸収率の低減が見られるものの外観観察で白色となって
いる(試料 No.16)。これに対し、ビーム電圧500
eV、600eV、800eVでは赤外線吸収率の低減
が見られ、外観観察でも透明で良好な結果が得られてい
る(試料 No.13,14及び15)。
【0028】フッ化物を蒸着した後、該フッ化物膜とは
屈折率の異なる光学膜を形成する際、Arイオンを照射
しなかった場合(試料 No.14)、及びArイオンをビ
ーム電圧を変化させて照射させた試料、すなちアルゴン
アシスト蒸着を行った試料(試料 No.17,18,1
9,20,21,22,23,24,25,26及び2
7)において、照射なし、200eV、700eVでは
赤外線吸収率の低減が見られない。(試料 No.14,1
7,21,22,23及び27)。これに対し、ビーム
電圧300eV、400eV、600eVでは赤外線吸
収率の低減が見られ、外観観察でも透明で良好な結果が
得られている(試料 No.18,19,20,24,25
及び26)。
【0029】水分低減の効果の確認の例として、表1の
試料 No.1と19についてのSIMSによる分析結果を
示す。図4は酸素量、図5は水素量の分析結果である。
従来(試料 No.1)と比べ本発明の手段を実施した試料
( No.19)では、ZnSe基材の表面、フッ化物であ
るYbF3 膜内部、フッ化物膜と上層のZnSe膜との
界面、上層のZnSe膜すべてにおいて酸素、及び水素
の量の低減が認められ、これらは水分に起因する元素で
あり、本発明により水分が低減されることがわかる。
【0030】〔実施例2〕透過部材である厚さ3mmの
GaAs部材を基材とし、その表面に低屈折率材として
のYbF3 よりなる膜(厚さ0.65μm)を形成さ
せ、さらにその上に高屈折率材としてのZnSの膜(厚
さ0.54μm)を形成させて、図7に示す構成の波長
10.6μm赤外線用反射防止膜を、該基材の両面に有
する光学部品を作製した。原料としてYbF3 について
純度99.99%で平均粒子径0.5mmの粒状のもの
を使用し、ZnSについては純度99.999%で平均
粒子径5mmの粒状のものを使用した。膜形成は基材を
140〜160℃に加熱し、電子ビームにより原料を蒸
発させ、真空度2×10-4Torr以下、蒸着速度0.
05μm/minで実施した。膜厚は反射型光電式膜厚
計にて制御した。基材表面にArイオンを照射しなかっ
た場合(試料 No.40)と、Arイオン照射をビーム電
圧を変えて行った場合(試料 No.41,42,43,4
4及び45)に得られた各試料について、赤外線吸収率
(%)の測定及び外観観察により表面の荒れ具合の評価
を行った。結果を表−6に示す。ZnSe基材の場合に
比べ赤外線吸収率が高いのは、GaAs基材自体の吸収
率が高いためである。
【0031】
【表7】
【0032】〔実施例3〕図8に示すように、透過部材
である厚さ3mmのGe部材を基材とし、その片側表面
に低屈折率材としてのYbF3 よりなるの膜(厚さ0.
42μm)を形成させ、さらにその上に高屈折率材とし
てのZnSの膜(厚さ0.62μm)を形成させて波長
10.6μm赤外線用反射防止膜を片面に設け、また基
材のもう一方の面に低屈折率材としてのYbF3 よりな
るの膜(厚さ1.9μm)を形成させ、さらにその上に
高屈折率材としてのZnSの膜(厚さ1.2μm)を形
成させ、このYbF3 −ZnSの組合せが計5組となる
ように繰り返し膜を形成させて波長10.6μm赤外線
用部分反射膜を設け、図8の構成の光学部品を作製し
た。原料としてYbF3 ついては純度99.99%で平
均粒子径0.5mmの粒状のものを使用し、ZnSにつ
いては純度99.999%で平均粒子径5mmの粒状の
ものを使用した。膜形成は基材を140〜160℃に加
熱し、電子ビームにより原料を蒸発させ、真空度2×1
-4Torr以下、蒸着速度0.05μm/minで実
施した。膜厚は反射型光電式膜厚計にて制御した。基材
表面にArイオンを照射しなかった場合(試料 No.4
6)と、Arイオン照射をビーム電圧を変えて行った場
合(試料 No.47,48,49,50及び51)に得ら
れた各試料について、赤外線吸収率(%)の測定及び外
観観察により表面の荒れ具合の評価を行った。結果を表
−7に示す。
【0033】
【表8】
【0034】〔実施例4〕表面にスパッタ法により厚さ
1μmのAuをコーティングした厚さ3mmのSiから
なる反射部材を基材とし、Au表面にYbF3 の膜より
なる低屈折率材の膜(厚さ1.9μm)を形成させ、さ
らにその上に高屈折率材としてのZnSの膜(厚さ1.
2μm)を形成させて、図9に示す構成の波長10.6
μm赤外線用増反射膜を有する光学部品を作製した。原
料としてYbF3 について純度99.99%で平均粒子
径0.5mmの粒状のものを使用し、ZnSについては
純度99.999%で平均粒子径5mmの粒状のものを
使用した。膜形成は基材を140〜160℃に加熱し、
電子ビームにより原料を蒸発させ、真空度2×10-4
orr以下、蒸着速度0.05μm/minで実施し
た。膜厚は反射型光電式膜厚計にて制御した。基材表面
にArイオンを照射しなかった場合(試料 No.52)
と、Arイオン照射をビーム電圧を変えて行った場合
(試料 No.53,54,55,56及び57)に得られ
た各試料について、赤外線吸収率(%)の測定及び外観
観察により表面の荒れ具合の評価を行った。結果を表−
8に示す。
【0035】
【表9】
【0036】本発明においては光学膜は2層以上の多層
積層であってもよい。図6に本発明の製造方法により作
成した各種の赤外線用光学膜の構造を示す。なお、多層
の例としては図示のような2種類の膜材料に限定される
ところはなく、例えば4層構成において、YbF3 /Z
eSe/YF3 /Geのように全て異なる材料にするこ
ともできる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、従来法によるよりも水
分による赤外線の吸収を低減できた赤外線用光学膜が得
られる。また本発明によるる赤外線用光学部品は、赤外
線の吸収率が低いものであるから、YAG、CO、ある
いは、CO2 レーザなどの大出力赤外レーザやそれらを
用いたレーザ加工機、レーザシステム等に使用する光学
部品として好適である。中でも出力が0.05〜40k
w、特に0.5〜40kwのレーザ用として有効であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の概略説明図である。
【図2】本発明におけるフッ化物蒸着中のイオン照射効
果を説明する概念図である。
【図3】本発明の実施例で作成した試料の膜構成を模式
的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例の試料No.1とNo.19 の膜内の酸
素量をSIMSにより分析した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例の試料No.1とNo.19 の膜内の水
素量をSIMSにより分析した結果を示す図である。
【図6】本発明により製造する各種の赤外線用光学膜の
膜構成を模式的に説明する図である。
【図7】本発明の実施例2における赤外線用光学膜の膜
構成を模式的に説明する図である。
【図8】本発明の実施例3における赤外線用光学膜の膜
構成を模式的に説明する図である。
【図9】本発明の実施例4における赤外線用光学膜の膜
構成を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
1 イオンガン 2 電子ビーム(EB)蒸発源 3 真空チャンバー 4 光電式膜厚モニター 5 ヒーター 6 基材 7 膜原料 8 基材 9 第1の光学膜 10 第2の光学膜

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透過部材もしくは反射部材からなる基材
    の表面または該基材上に形成した光学膜の表面に500
    eV以上800eV以下のビーム電圧でアルゴンイオン
    を照射した後、上記表面に1つ以上の光学膜を形成する
    ことを特徴とする赤外線用光学膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 透過部材もしくは反射部材からなる基材
    の表面または該基材上に形成した光学膜の表面に、30
    0eV以上600eV以下のビーム電圧でアルゴンイオ
    ンを照射しつつ1つ以上の光学膜を蒸着することを特徴
    とする赤外線用光学膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 透過部材もしくは反射部材からなる基材
    の表面または該基材上に形成した光学膜の表面に500
    eV以上800eV以下のビーム電圧でアルゴンイオン
    を照射した後、該表面に300eV以上600eV以下
    のビーム電圧でアルゴンイオンを照射しつつ1つ以上の
    光学膜を蒸着することを特徴とする赤外線用光学膜の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記光学膜がYF3 、YbF3 、DyF
    3 、ZnSe、ZnS、GaAs、Ge、CdTe及び
    PbTeからなる群より選ばれるものであることを特徴
    とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の赤外
    線用光学膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記基材の表面に接する第1の光学膜と
    してフッ化物からなる光学膜を形成することを特徴とす
    る請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の赤外線用
    光学膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記基材の表面に接する第1の光学膜と
    してフッ化物からなる光学膜を設け、さらに直下の光学
    膜とは異なる屈折率を有する材料よりなる1つ以上の光
    学膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項
    5のいずれかに記載の赤外線用光学膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記フッ化物がYF3 、YbF3 、Dy
    3 のいずれかであることを特徴とする請求項4ないし
    請求項6のいずれかに記載の赤外線用光学膜の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記屈折率の異なる材料よりなる1つ以
    上の膜がZnSe、ZnS、GaAs、Ge、CdTe
    及び PbTeからなる群より選ばれるものであること
    を特徴とする請求項5ないし請求項7に記載の赤外線用
    光学膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記基材が、ZnSe、ZnS、GaA
    s、Ge、CdTe、PbTe、表面にAuをコーティ
    ングしたSi及び表面にAuをコーティングしたCuか
    らなる群から選ばれる透過部材または反射部材であるこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記
    載の赤外線用光学膜の製造方法
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002148407A (ja) * 2000-11-14 2002-05-22 Sumitomo Electric Ind Ltd 赤外線レーザ用光学部品とその製造方法
JP2007316283A (ja) * 2006-05-25 2007-12-06 Matsushita Electric Works Ltd 赤外線フィルタ及びその製造方法

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