JPH09202213A - プリテンショナー付きシートベルト用リトラクター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガス圧力を効率良くピストンの変位に変換す
ることができると共に、生産コストを低減させ、組立性
を向上させることができる良好なプリテンショナー付き
シ−トベルト用リトラクターを提供する。 【解決手段】 シリンダ２４内に摺動可能に保持される
ピストン４０が、リトラクターの巻取り軸４を回転させ
るピニオンギヤが噛合するラック２５の一端に一体形成
されたピストン本体４１と、該ピストン本体４１に重ね
られてシリンダ２４内に供給されるガス圧力をピストン
本体４１に伝える受圧板２７とに分割した構成とされ
る。また、ピストン４０とシリンダ２４との間の気密性
を保持するためのＯリング２６は、前記ピストン本体４
１と受圧板２７との間に挾装される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両衝突時にウェ
ビングをリトラクターの巻取り軸に巻き込むことによ
り、シートベルトの緩みを除去するプリテンショナーを
備えたシートベルト用リトラクターに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来より、車両の乗員の身体を座席に安
全に保持するためのシートベルト装置においては、乗員
のシートベルト装着感を低減するためにリトラクターが
シートベルトを巻取る力を低くする傾向がある。これに
より、乗員の身体に装着されたシートベルトのたるみが
増加するため、車両衝突等の緊急時に大きな力がシート
ベルトに加わるとシートベルトが伸び出す量が増え、乗
員の身体を効果的に拘束することができないことがあっ
た。

【０００３】そこで、緊急時にシートベルトを巻取って
そのたるみを除去すべく、リトラクターの巻取り軸を巻
取り方向へ瞬時に回転させるプリテンショナーをリトラ
クターに組み込んだプリテンショナー付きシ−トベルト
用リトラクターが開発されている。また、上記の如きプ
リテンショナーとしては、緊急時にシリンダ内に摺動可
能に保持されたピストンにガス圧力を作用させ、このガ
ス圧力によるピストンの瞬間的な変位により、リトラク
ターの巻取り軸をシートベルトの弛みが除去される方向
に回転させる方式のものが種々開発されている。

【０００４】このようにガス圧力を受けたピストンの変
位によってリトラクターの巻き取り軸を回転させる構成
の場合は、ガス圧力を効率良くピストンの変位に変換す
るために、シリンダとピストンとの間の気密性を高める
ことが重要になる。そこで、従来では、例えば特開平６
−２９８０４１号公報等に開示されているように、ピス
トンの外周にはシール保持溝を周設しておき、該シール
保持溝に装着されるＯリング等のシール部材によって気
密性の向上を図ることが一般的に行われている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般
に、プリテンショナーのピストンには高圧下での動作に
耐え得るように、アルミニウム合金や鉄等の金属が使用
されるため、前記シール保持溝の加工に手間がかかりコ
ストアップになるという問題があった。また、前記シー
ル保持溝内へＯリングを装着する際には、該Ｏリングを
拡径させなければならないため、組み付けが困難である
という問題もあった。

【０００６】そこで、本発明の目的は上記課題を解消す
ることに係り、ガス圧力を効率良くピストンの変位に変
換することができると共に、生産コストを低減させ、組
立性を向上させることのできる良好なプリテンショナー
付きシ−トベルト用リトラクターを提供することであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、シ
リンダ内に摺動可能に保持されたピストンが一端に設け
られたラックと、該ラックに噛合して該ラックの移動に
よって回転駆動されてリトラクターの巻き取り軸に回転
トルクを伝達可能なピニオンギヤとを備え、車両衝突時
等の緊急時には前記ピストンに作用するガス圧力でラッ
クを押圧駆動することにより、巻取り軸をシートベルト
の弛みが除去される方向に回転させるプリテンショナー
を備えたシートベルト用リトラクターであって、前記ピ
ストンが、ラックの一端に配設されたピストン本体と、
該ピストン本体に重ねられてシリンダ内に供給されるガ
ス圧力をピストン本体に伝える受圧板とに分割した構成
とされると共に、ピストンとシリンダとの間の気密性を
保持するためのシール部材を前記ピストン本体と受圧板
との間に挾装したことを特徴とするプリテンショナー付
きシ−トベルト用リトラクターにより達成される。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明
の一実施形態に係るプリテンショナー付きシートベルト
用リトラクターを詳細に説明する。図１は本発明の第１
実施形態に基づくプリテンショナー付きシ−トベルト用
リトラクター１の正面図、図２は図１のＡ−Ａ断面矢視
図、図３は図２に示したプリテンショナー３の分解斜視
図、図４は前記プリテンショナー３のガス圧力作用前の
状態を示す要部断面図、図５は前記プリテンショナー３
のガス圧力作用時の状態を示す要部断面図である。

【０００９】前記シ−トベルト用リトラクター１は、ウ
ェビング２０を巻取り又は引き出し自在に巻回した巻取
りリール７を備えており、従来のリトラクターと同様
に、巻取りリール７はその巻取り軸４に連結された巻取
りバネ装置５により、ウェビング２０が巻取られる方向
に常時付勢されている。又、ウェビング２０が所定大き
さ以上の加速度で引き出されようとすると、緊急ロック
機構２により巻取り軸４の回転が阻止され、それ以上ウ
ェビング２０が引き出されないようになっている。

【００１０】更に、前記シ−トベルト用リトラクター１
は、略コ字形状に形成されたリトラクターベース１１の
一方のベース側壁１１ａに、巻取り軸４をシートベルト
の弛みが除去される方向に回転させる駆動手段６を備え
たプリテンショナー３が配設されている。該プリテンシ
ョナー３は、巻取り軸４にクラッチ機構（図示略）を介
して断続的にトルク伝達可能な図示略の回転駆動部材
と、ガス発生器２９が発生するガス圧力で押圧駆動され
るラック２５と常時噛み合わされたピニオンギヤ２１に
より前記回転駆動部材を回転駆動する駆動手段６と、前
記ピニオンギヤ２１の回転により前記回転駆動部材を増
速回転させるべくピニオンギヤ２１と該回転駆動部材と
の間に配設された増速歯車伝動装置と、車両衝突時に前
記ガス発生器２９を作動させる図示しない制御装置とを
備えている。

【００１１】前記駆動手段６は、図２に示すように、前
記ピニオンギヤ２１に噛み合わされるラック歯２５ａを
形成されたラック２５と、該ラック２５の一端を移動可
能に受容するシリンダ２４と、該シリンダ２４の先端部
とガス発生器２９のガス噴出部とを連通連結するガス発
生器ケース２８とを有している。前記シリンダ２４の先
端部はガス発生器ケース２８に螺合され、また、基端部
は前述の図示略の増速歯車伝動装置を構成する歯車ケー
スの外側に固定されたラックギヤケース２２に螺合され
ている。

【００１２】そして、このラックギヤケース２２には、
前記ピニオンギヤ２１が回転自在に収容される中央開口
３３と、該中央開口３３と一部連通して前記ラック２５
を摺動案内する案内凹部３４とが形成されており、該ラ
ックギヤケース２２の外側には巻取り軸４の先端が貫通
する開口２３ａを形成されたプレート２３が前記ピニオ
ンギヤ２１及びラック２５を覆うように配設されている
（図３参照）。

【００１３】前記ラック２５の背面２５ｂに対向する側
の前記案内凹部３４の側壁部には、くさび状空間を構成
するカム面３２が形成されており、該くさび状空間内に
はラックギヤケース２２の案内凹部３４の内側壁に対す
るラック２５の戻り方向（図２中、矢印Ｙ₂ 方向）の相
対移動を規制する噛み合い要素である円筒状のローラー
ピン３６と、該ローラピン３６をラック係合方向へ付勢
するコイルスプリング３１とが配設され、ラック２５の
戻り防止機構が構成されている。そこで、ラック２５が
ウェビング巻取り駆動方向（図２中、矢印Ｙ₁ 方向）に
移動する際には、ローラピン３６がコイルスプリング３
１の付勢力に抗して非噛み合い方向へ移動可能であり、
該ラック２５の移動を妨げるものではない。

【００１４】また、前記シリンダ２４内に受容されたラ
ック２５の一端は、前記ガス発生器２９から噴射されて
ガス発生器ケース２８を介してシリンダ２４内に供給さ
れるガス圧力を受けるピストン４０に連結されている。
即ち、前記プリテンショナー３は、車両衝突時等の緊急
時には前記ガス発生器２９から噴射されて前記ピストン
４０に作用するガス圧力でラック２５を押圧駆動するこ
とにより、リトラクターの巻取り軸４をシートベルト
（ウェビング２０）の弛みが除去される方向に回転させ
る。

【００１５】また、本第１実施形態のプリテンショナー
３では、前記ピストン４０が、図３及び図４に示すよう
に、ラック２５の一端に一体形成されたピストン本体４
１と、該ピストン本体４１に重ねられてシリンダ２４内
に供給されるガス圧力をピストン本体４１に伝える受圧
板２７とに分割した構成とされている。そして、前記ピ
ストン本体４１は、アルミニウム合金等の金属材料によ
りラック２５と一体に形成されているが、前記受圧板２
７は合成樹脂又は金属により単純な円板形に形成されて
いる。

【００１６】更に、ピストン４０とシリンダ２４との間
の気密性を保持するためのシール部材であるＯリング２
６は、前記ピストン本体４１と受圧板２７との間に挾装
されるようになっている。そこで、上述の如き第１実施
形態のプリテンショナー３では、先ず、シリンダ２４内
に摺動自在に組み付けられるピストン本体４１の上に環
状のＯリング２６と受圧板２７とを順に載せるように組
み込むだけで、拡径させることなくピストン４０にＯリ
ング２６を組み付けた状態とすることができるので、ピ
ストン４０の組み付け作業が極めて容易にできる。

【００１７】また、前記Ｏリング２６は、ピストン本体
４１と受圧板２７とで挾持されることで保持されるた
め、加工に手間のかかるシール保持溝をピストン外周に
形成する必要がなくなるので、加工コストを低減させる
こともできる。尚、ガス発生器ケース２８には周方向に
延びた段部２８ａが形成されており、前記ピストン本体
４１に組付けられたＯリング２６及び受圧板２７は、図
４に示すように受圧板２７が該段部２８ａに係止される
ことによって、初期状態における軸線方向の移動を規制
されている。

【００１８】そして、車両衝突時にプリテンショナー３
が作動し、図５に示すように、前記ラック２５を押圧駆
動すべく前記ピストン４０の受圧板２７にガス圧力Ｆが
作用すると、ピストン本体４１と受圧板２７とによるＯ
リング２６の圧迫が強められ、該Ｏリング２６は押しつ
ぶされて外径が拡径する。そこで、Ｏリング２６とシリ
ンダ２４との密閉度が増し、巻取り軸４を回転させるた
めのピストン４０とシリンダ２４との間に高い気密性を
確保することができる。

【００１９】従って、生産コストを低減させると共に組
立性を向上させることができ、しかもガス圧力を効率良
くピストン４０の変位に変換することができる。図６乃
至図８は、本発明のプリテンショナー付きシ−トベルト
用リトラクターに使用されるプリテンショナーの第２実
施形態を示したもので、図６は第２実施形態に係るプリ
テンショナー４３の要部分解斜視図、図７は前記プリテ
ンショナー４３のガス圧力作用前の状態を示す要部断面
図、図８は前記プリテンショナー４３のガス圧力作用時
の状態を示す要部断面図である。尚、上記第１実施形態
のプリテンショナーと同様の構成部材に関しては、同符
号を付して詳細な説明を省略する。

【００２０】前記プリテンショナー４３は、ガス圧力を
受けるピストン４４が、図示の様に、ラック２５の一端
に一体形成されたピストン本体４１と、該ピストン本体
４１に重ねられた受圧板４２とに分割した構成とされて
おり、さらに、シール部材であるＯリング２６が、前記
ピストン本体４１と合成樹脂製の受圧板４２との間に挾
装されるようになっている点では上記第１実施形態のプ
リテンショナー３と同様である。

【００２１】しかし、本第２実施形態のプリテンショナ
ー４３の場合は、受圧板４２が単純な円板形ではなく、
前記Ｏリング２６内を挿通してピストン本体４１に当接
する円筒形段部４５を片側面に突設した構造とされてい
る。該円筒形段部４５は、Ｏリング２６の内径と略同
径、又は若干大径とされた外径を有している。そこで、
Ｏリング２６をピストン４４に組み付ける際には、受圧
板４２の円筒形段部４５にＯリング２６を予め嵌装して
一体とした後、シリンダ２４内に摺動自在に組み付けら
れたラック２５の一端に設けられたピストン本体４１の
上に配設するだけで、ピストン４４にＯリング２６を組
み付けた状態とすることができる。

【００２２】尚、前記ピストン本体４１に組付けられた
Ｏリング２６及び受圧板４２は、図７に示すように円筒
形段部４５の外周面とシリンダ２４の内周面との間で弾
性変形させられた該Ｏリング２６の弾性力により係止さ
れることによって、初期状態における軸線方向の移動を
規制されている。従って、本第２実施形態におけるＯリ
ング２６は、上記第１実施形態のプリテンショナー３と
同様に、ピストン４４に組み付ける作業が極めて容易に
できると共に、加工に手間のかかるシール保持溝をピス
トンに形成する必要がなくなり、加工コストを低減させ
ることができる。

【００２３】また、受圧板４２の円筒形段部４５に嵌装
された前記Ｏリング２６は、予め受圧板４２と一体にさ
れているので、シリンダ内に組み込む際、シリンダ内で
不適切な配置にならないという効果がある。又、図８に
示すように前記ラック２５を押圧駆動すべく前記ピスト
ン４４にガス圧力Ｆが作用する際にもＯリング２６が内
方に変形してシリンダ２４との密閉度が低下することは
なく、巻取り軸４を回転させるためのピストン４４とシ
リンダ２４との間に高い気密性を確保することができ
る。

【００２４】更に、前記受圧板４２における円筒形段部
４５の高さをＯリング２６の断面径よりも低く設定する
ことにより、前記ピストン４４の受圧板４２にガス圧力
Ｆが作用した際、ピストン本体４１と受圧板４２とによ
りＯリング２６が押しつぶされて外径が拡径し、Ｏリン
グ２６とシリンダ２４との密閉度が増すように構成する
こともできる。この際、前記円筒形段部４５は、Ｏリン
グ２６の過度の変形を防止し、ピストン４４とシリンダ
２４との間の気密性の保持に対する信頼性を更に向上さ
せることができる。

【００２５】尚、本発明におけるプリテンショナーを構
成するシリンダ、ピストン、ラック及びピニオン等は、
上記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の
形態を採りうることは言うまでもない。

【００２６】

【発明の効果】本発明のプリテンショナー付きシ−トベ
ルト用リトラクターによれば、シリンダ内に摺動自在に
組み付けられるピストン本体の上にシール部材と受圧板
とを順に組み込むだけで、ピストンにシール部材を組み
付けた状態とすることができ、シール部材をピストンに
組み付ける作業が極めて容易にできる。

【００２７】また、シール部材は、ピストン本体と単純
な形状の受圧板とで挾持されることで保持されるため、
加工に手間のかかるシール保持溝をピストンに形成する
必要がなくなり、加工コストを低減させることができ
る。従って、ガス圧力を効率良くピストンの変位に変換
することができると共に、生産コストを低減させ、組立
性を向上させることのできる良好なプリテンショナー付
きシ−トベルト用リトラクターを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態に基づくプリテンショナ
ー付きシ−トベルト用リトラクターの正面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面矢視図である。

【図３】図２に示したプリテンショナーの分解斜視図で
ある。

【図４】図３に示したプリテンショナーのガス圧力作用
前の状態を示す要部断面図である。

【図５】図３に示したプリテンショナーのガス圧力作用
時の状態を示す要部断面図である。

【図６】本発明の第２実施形態に基づくプリテンショナ
ーの要部分解斜視図である。

【図７】図６に示したプリテンショナーのガス圧力作用
前の状態を示す要部断面図である。

【図８】図６に示したプリテンショナーのガス圧力作用
時の状態を示す要部断面図である。

【符号の説明】

１ プリテンショナー付きシ−トベルト用リトラクター ２ 緊急ロック機構 ３ プリテンショナー ４ 巻取り軸 ５ 巻取りバネ装置 ６ 駆動手段 １１ リトラクターベース ２０ ウェビング ２１ ピニオンギヤ ２４ シリンダ ２５ ラック ２６ Ｏリング ２７ 受圧板 ２８ ガス発生器ケース ２９ ガス発生器 ４０ ピストン ４１ ピストン本体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダ内に摺動可能に保持されたピス
   トンが一端に設けられたラックと、該ラックに噛合して
   該ラックの移動によって回転駆動されてリトラクターの
   巻き取り軸に回転トルクを伝達可能なピニオンギヤとを
   備え、車両衝突時等の緊急時には前記ピストンに作用す
   るガス圧力でラックを押圧駆動することにより、巻取り
   軸をシートベルトの弛みが除去される方向に回転させる
   プリテンショナーを備えたシートベルト用リトラクター
   であって、 前記ピストンが、ラックの一端に配設されたピストン本
   体と、該ピストン本体に重ねられてシリンダ内に供給さ
   れるガス圧力をピストン本体に伝える受圧板とに分割し
   た構成とされると共に、ピストンとシリンダとの間の気
   密性を保持するためのシール部材を前記ピストン本体と
   受圧板との間に挾装したことを特徴とするプリテンショ
   ナー付きシ−トベルト用リトラクター。