JPH09199180A - リチウム2次電池用負極および該負極を使用したリチウム2次電池 - Google Patents

リチウム2次電池用負極および該負極を使用したリチウム2次電池

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JPH09199180A
JPH09199180A JP8026125A JP2612596A JPH09199180A JP H09199180 A JPH09199180 A JP H09199180A JP 8026125 A JP8026125 A JP 8026125A JP 2612596 A JP2612596 A JP 2612596A JP H09199180 A JPH09199180 A JP H09199180A
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negative electrode
thin film
vapor deposition
secondary battery
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Shoichi Akiyama
省一 秋山
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Ricoh Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電池組立後の安全性が確保されかつ短時間で
製造可能なリチウムイオン2次電池の構造を提供するこ
ととこれを可能にするための負極活物質へのリチウム導
入方法の提供。 【解決手段】 炭素負極の表面部分がリチウム蒸着薄膜
形成領域とリチウム薄膜非存在領域との周期的な形状で
構成され、かつリチウム蒸着薄膜形成領域の全表面積の
比率が該電極の全表面積を1として0.3〜0.98の
ものであることを特徴とするリチウム2次電池用負極お
よび該リチウム2電池用負極の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は非水溶液電解質2次電池とくにリ
チウム2次電池とその製造法に関する。
【0002】
【従来技術】炭素材料などとリチウムとの化合物を負極
とする非水溶液電解質2次電池は、リチウム電池特有の
高容量性に加え高い安全性を兼ね備えており、一部実用
化が図られ更に高性能化が盛んに研究されている。以前
は負極活物質はリチウム金属が用いられていたが、デン
ドライト形成による内部短絡の防止が難しいことやリチ
ウム金属の反応性が大きいため安全性の確保に要するコ
ストが大きいという問題があった。リチウム化合物を負
極として用いた場合はこのような問題は回避されるが、
一方炭素材料などとリチウムの化合物を負極活物質とし
て使用する場合には炭素材料等を集電体上に塗布して電
池用の極板としたあとにこれに外部からリチウムを導入
する必要がある。正極活物質としてLiMn24,Li
CoO2,LiNiO2などのリチウム複合酸化合物を用
い、炭素材料と組み合わせて電池を構成したとき1回目
の充電で正極活物質から放出されたリチウムイオンは負
極活物質に吸蔵され、これにつづく放電では逆にリチウ
ムイオンは負極活物質から放出され正極活物質に吸蔵さ
れる。したがって充放電される電気量は最初に正極活物
質から放出されるリチウムイオン量で決定される。しか
し負極活物質として用いられる炭素材料は1回目の充電
で取り込まれたリチウムイオンの一部がそれ以後の充放
電作用に関与しなくなる特性を持っているため、繰り返
し移動可能なリチウムイオン量が減少し電池容量が低下
する。この問題を解決するため負極活物質に予めリチウ
ムイオンを導入しておく必要があり、種々の方法が考案
されている。基本的な方法として電池に組み込む前の負
極をリチウム金属板を対向電極として電解質中で充放電
を繰り返し電気化学反応によってリチウムイオンを導入
することができる。しかしこの方法は充放電工程に要す
る時間とコストが大きいという問題がある。
【0003】また、特開平5−234621号公報には
電池構成時に正負極上に所定量のリチウム粉末を付着さ
せておく方法が記載されている。この方法ではリチウム
粉末が付着しているだけであるのでこの粉末とこれが付
着している電極活物質との電気的接触が必ずしも完全で
はない。電気的に導通のないリチウム粉は電池反応にか
かわらないため一部の粉末はリチウム金属のままで残存
する可能性があり安全性の確保に問題がある。特開平5
−234621号公報の明細書にも述べられているよう
に、所定量のリチウム金属板あるいは箔を予め電極上に
設置することが考えられる。リチウム金属板を設置する
場合は電極活物質量に対する必要量と取り扱いの可能な
リチウム板厚さとの兼合から電極上の一部にのみ設置す
ることとなりリチウム導入量の均一性に問題を生じる。
リチウム箔を使用しこれを電極全面に設置すれば均一性
の問題は解決されるが通常必要なリチウム箔の厚さは負
極の電気容量によるが概ね10マイクロメートルであ
る。この様な厚さでは展延したリチウム金属箔は機械的
強度が極めて小さいため製造工程において使用すること
は困難で、真空蒸着等によりリチウム金属を極板上に堆
積する方法を用いることとなる。真空蒸着等により形成
したリチウム薄膜は電極活物質に強固に結合して堆積さ
れるため電気的接触も確実に図られ、未反応のリチウム
金属が残存する恐れはない。しかしこの方法で形成され
るリチウムは電極活物質に強固に結合していることか
ら、プロセス上の不具合も生じる。リチウム金属が層間
化合物として電極活物質に導入されるためには電解質が
リチウム金属と電極活物質との双方に接触する必要があ
るのに対し蒸着等により形成されるリチウム薄膜は電極
活物質に強固に結合していることから電解質は負極活物
質界面まで浸透することができず、リチウムが導入され
る反応はほとんど生じなくなるのである。ごく一部にあ
るピンホールなどを開始点として反応が進行するのでそ
の速度は極めて小さい。このため、負極活物質へのリチ
ウム導入方法として真空蒸着等により堆積されたリチウ
ム薄膜を用いる方法は均一なリチウム導入が可能であ
り、かつリチウム金属が残存する恐れがないという利点
を有していながらも実際はその反応に要する時間が非常
に長くこれまで製造プロセスにおいて実施することは困
難であった。
【0004】
【目的】本発明の目的は、電池組立後の安全性が確保さ
れかつ短時間で製造可能なリチウムイオン2次電池の構
造を提供することとこれを可能にするため上記の課題を
解決した負極活物質へのリチウム導入方法を提供するこ
とである。
【0005】
【構成】本発明者は前記課題の解決方法を見いだすため
負極活物質上に真空蒸着によりリチウム薄膜を堆積した
負極を有するリチウム2次電池用負極について種々の実
験を行ない、炭素負極上に堆積されたリチウム薄膜の平
面パターンを工夫する方法を案出した。すなわち、本発
明の第1は、リチウムイオンを吸蔵および放出すること
ができる正極と炭素負極、および電解質を少なくとも構
成要素として含むリチウム2次電池用炭素負極におい
て、炭素負極上に局部的に堆積したリチウム蒸着金属薄
膜をもとにしてリチウムを導入すると堆積されたリチウ
ムの端部で急速に層間化合物化反応が進行し、さらにリ
チウムが堆積された周囲にも均一に拡散されて導入され
るという実験結果で得られた新たな知見にもとづき、リ
チウムが堆積されている部分と炭素負極が露出している
部分とを周期的に形成することにより、層間化合物化反
応の速やかな進行と同時に均一なリチウムの導入を可能
にした点にある。さらに、炭素負極の露出している部分
の割合には反応の進行速度と導入されたリチウムイオン
濃度の均一性とを両立させるために最適な範囲があり、
リチウム薄膜の形成された表面積の比率が該炭素負極の
全表面積を1として0.3乃至0.98にある場合が適
しており、より望ましくは0.7から0.9の範囲が最
適であることがわかった。前記炭素負極において、炭素
負極上にリチウムがストライプ状に蒸着された構造とす
ることにより特に電極形成が角型である場合に電解質の
注入あるいは塗布方向を該ストライプと平行に取ること
により、これら電解質の注入あるいは塗布が容易に行な
えるという利点を有している。また蒸着したリチウム薄
膜の厚さとストライプの幅を変化して導入されたリチウ
ム濃度の面内均一性を測定したところ、リチウム薄膜領
域の幅W(ミリメートル)が、リチウム薄膜の厚さD
(ミリメートル)に対して次式:
【数3】W≦D×2500 で定められる範囲にあれば、この炭素負極を使用して完
成したリチウムイオン2次電池のサイクル劣化を十分に
小さく保つために必要なリチウムイオン導入量の面内均
一性が得られることがわかった。通常、電極は電極材料
を帯状の集電体上に連続して塗布し、その後に基板移動
機構を備え長尺のロール材料に連続蒸着が可能な蒸着装
置を用いて前記電極材料塗布集電体上にリチウムを蒸着
する工程をへてリチウム薄膜が堆積して製造されるが、
この第1の構造の負極は、従来の蒸着装置を用いてリチ
ウムを蒸着する際に複数の開口部を持つ蒸着マスクを用
いて部分的にリチウムを蒸着することができるので、従
来とほとんど同じ工程で、したがってほとんど同じ蒸着
装置で製造が可能になる。
【0006】本発明の第2は、リチウムイオンを吸蔵お
よび放出することができる正極と炭素負極、および電解
質を少なくとも構成構素として含むリチウム2次電池用
負極において、炭素負極の表面部分全体が相対的に膜厚
の大小のある2つの第1のリチウム蒸着薄膜形成領域
(d1)および第2のリチウム薄膜領域(d2)とが隣
接して連続的に存在する周期的な形状で構成され、かつ
膜厚が相対的に大きなリチウム薄膜領域(d1)の表面
積の総和の比率が、該電極の全表面積を1として0.3
〜0.98のものであることを特徴とするリチウム2次
電池用負極にある。前記リチウム2次電池用負極におい
て、負極活物質が露出している部分にも相対的に薄いリ
チウム薄膜が堆積された構造となっているから、本発明
者の行った実験の結果、リチウム薄膜の厚さが薄い場合
には若干の時間を要するもののその部位において層間化
合物化反応が進行しリチウムの導入が可能なことが解っ
た。そして、この負極においては、まず相対的に薄いリ
チウム薄膜の部分で比較的緩やかにリチウムの導入が行
なわれ、この部位のリチウムがすべて負極活物質内に導
入された後には前記第1の負極の構造と同様の構造を取
ることになるから、この段階では急速なリチウムの導入
が行なわれる。したがってこの負極は、前記第1の負極
に比較すると、リチウム導入に要する時間は若干長くな
るが、負極活物質が露出している部分にも相対的に薄い
リチウム薄膜が堆積された構造となっているから、同じ
リチウム薄膜の厚さにおいてより多くの量のリチウムを
導入することができ、またリチウム導入量の面内の均一
性を更に高くできるので、電池の設計条件などからの要
請で、さらに多くのリチウム量を導入したい場合および
リチウム導入量の均一性を高めなければならない場合等
には、前記第1の負極の構造のものに比較して適してい
る。また、この第2の構造の負極も前記第1の構造の負
極と同様に、従来の製造設備に最小限の変更を加えた製
造設備を用いて製造が可能である。すなわち、従来のリ
チウム蒸着工程に第2の蒸着工程を設け、該第2の蒸着
工程の際に複数の開口部を持つ蒸着マスクを用いて部分
的にリチウムを蒸着することにより製造することができ
るので、前記第1の構造の負極と同様に、従来とほとん
ど同じ工程で、したがってほとんど同じ蒸着装置で製造
が可能になる。
【0007】前記第2の構造の炭素負極において、炭素
負極上に第1のリチウム蒸着薄膜領域(d1)および第
2のリチウム蒸着薄膜領域(d2)がストライプ状に蒸
着された構造であるので、特に電極形状が角型である場
合に電解質の注入あるいは塗布方向を該ストライプと平
行に取ることにより、これら電解質の注入あるいは塗布
が容易に行なえるという利点を有している。また蒸着し
たリチウム薄膜の厚さとストライプの幅を様々に変化し
て導入されたリチウム濃度の面内均一性を測定したとこ
ろ、第1のリチウム蒸着薄膜領域(d1)の幅W1(ミ
リメートル)が、該リチウム蒸着薄膜領域の厚さD1
(ミリメートル)に対して次式:
【数4】W1≦D1×2500 で定められる範囲にあれば、前記第2の構造の炭素負極
を使用することにより、該電極を使用して完成したリチ
ウムイオン2次電池のサイクル劣化を十分に小さく保つ
ために必要なリチウムイオン導入量の面内均一性が得ら
れることがわかった。したがって、前記の範囲にあるス
トライプ形状でリチウム薄膜をパターニングした炭素負
極を使用することによりサイクル劣化の少ないリチウム
イオン2次電池が提供できるという効果がある。また第
2のリチウム蒸着薄膜領域の厚さを変化してリチウム導
入が終了するまでの時間を測定したところ、第2のリチ
ウム薄膜領域の厚さが5μmを越える範囲ではリチウム
導入が終了するまでに非常に長い時間を要することがわ
かった。このことから第2のリチウム薄膜領域の厚さは
5μm以下が適している。
【0008】前記第1または2の構造のリチウム2次電
池用炭素負極の製造法において、少なくとも1つのリチ
ウム蒸着工程時にリチウムとの反応性が無いかまたは極
めて小さい気体を一定流量で真空蒸着槽内に供給し、該
真空槽の圧力を1.33×10-4Paから1.33×1
3Paの間に一定に保持することにより蒸着したリチ
ウム薄膜の特性とくに密度を制御することができる。圧
力が1.33×10-4Pa未満では、膜の密度はほぼ上
限の値で飽和し、真空槽の排気により多くのコストを費
すのみであるから適さず、また、1.33×103Pa
を越えるとリチウム薄膜の付着力が低下し、製造工程で
の取り扱いが困難となる。また、前記の方法によれば、
リチウム薄膜内に前記の気体分子が取り込まれ真空槽内
の圧力に対応して密度を変化させ密度の低下したリチウ
ム薄膜を堆積して形成することができるが、本発明者の
実験結果によれば、前記のような密度を低下させたリチ
ウム薄膜を用いるとリチウム導入反応がより速やかに進
行することが確認されているので、前記リチウムに対し
て不活性な気体を用いてリチウム蒸着を行うことによ
り、さらに短時間内にリチウム導入反応を終了させるこ
とができる。ただ、この方法によると、堆積されたリチ
ウム薄膜の密度が減じられることにより、前記不活性気
体を使用しないで同じ膜厚を堆積した場合に導入される
リチウム量に比較して小さくなるので、リチウム薄膜の
密度の制御や製造時間の短縮を重視しない場合には不活
性気体を採用しない方法が好ましい。前記リチウムとの
反応性が無いか、または極めて小さい気体としては、ヘ
リウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノン
よりなる群から選択された単独の気体、またはこれらの
うちの複数の気体を混合した気体が挙げられる。さらに
前記第1または2の構造のリチウム2次電池用負極の製
造法において、リチウム蒸着時に炭素負極の温度を70
〜170℃の間に保持することが好ましく、この方法に
よればより活性の大きなリチウムが蒸着されるので、層
間化合物化がより容易に行なわれる。ただ、加熱を行な
うためには装置コストの上昇と製造プロセスのエネルギ
ーを伴うので、製造時間の短縮を特に必要としない場合
には、必ずしもこのような加熱手段を採用する必要はな
い。
【0009】
【実施例】以下、本発明の構成および効果を図面を参照
しながら実施例により具体的に説明する。
【0010】実施例1 請求項1に記載の構成のリチウム2次電池を以下の手順
により作成した。正極活物質として5酸化バナジウム
(V25)を使用し、該正極活物質100gに対して導
電材として炭素粉末を15g、結着材としてポリフッ化
ビニリデンを25g、および溶剤としてジメチルホルム
アミドを適当な粘度になるまで加え均一に混合し、集電
体である厚さ20μmのステンレス板に50μmの厚さ
に塗布し乾燥したものを正極とした。負極活物質として
黒鉛を使用し黒鉛100gに対して結着材としてポリフ
ッ化ビニリデンを25g、および溶剤としてジメチルホ
ルムアミドを適当な粘度になるまで加え均一に混合し、
集電体である厚さ20μmの帯状の銅板に50μmの厚
さに連続して塗布し乾燥したものを負極とした。この負
極に基板移動機構を備え長尺のロール材料に連続蒸着が
可能な蒸着装置を用いてリチウムを堆積した。この蒸着
工程においては複数の開口部を持つ蒸着マスクを用いて
リチウム薄膜をストライプ形状に堆積した。ストライプ
形状は、リチウム堆積部の幅が5ミリメトールおよび厚
さ12μmで炭素負極が露出している部分の幅が1ミル
メートルとした。この負極から5×7センチメートルに
切り出したものを負極板とし正極板も同寸法に作成し
た。実施例1の電池の断面図を図1に示す。電池積層体
はそれぞれスポット熔接により結合した集電体と同材質
の引き出し線1,2を有する正極板3と負極板4とをポ
リプロピレン製セパレータ5を挾んで対向させたユニッ
トを6組積層して構成した。この積層体をポリプロピレ
ン製の絶縁フィルムで覆いステレンス製のケース6に挿
入し1モル/リットルのトリフロロスルホン酸リチウム
を溶解したプロピレンカーボネート溶液を注入し端子取
りだし部7をレーザ熔接により接合し封止して電池とす
る。
【0011】比較例1 実施例1と同構造でリチウム薄膜を蒸着する代わりに負
極上に一部に厚さ200μmのリチウム板を設置した電
池を作成した。
【0012】比較例2〜5 実施例1と同構造でリチウム薄膜のストライプ形状とリ
チウム堆積部の厚さを次の様に変化させた電池を作成し
た。 比較例2:リチウム堆積部の幅10mm、厚さ10μm、炭素
負極露出部の幅0.1mm 比較例3:リチウム堆積部の幅10mm、厚さ10μm、炭素
負極露出部の幅0.2mm 比較例4:リチウム堆積部の幅6mm、厚さ33μm、炭素負
極露出部の幅14mm 比較例5:リチウム堆積部の幅5mm、厚さ15μm、炭素負
極露出部の幅15mm これらの電池を0.5クーロンの放電電流および2.5
から3.7ボルトの電圧範囲で300回充放電させた
後、充電状態において電池を分解し内部の状態を観察し
た。観察した結果を表1に示す。
【表1】 金属リチウムが残存しているとリチウムによる発火の恐
れがあり、安全性に問題がある。負極の表面色に色むら
が見られることは均一な充放電状態でないことを示し、
容量の低下やサイクル寿命の悪化を生じることを示して
いる。表1に示した結果から請求項1に記載の構造によ
ればこれらの問題を生じないリチウムイオン2次電池が
作成できることがわかった。
【0013】実施例2 請求項2に記載の構造でリチウムイオン2次電池を以下
の手順により作成した。電池容量を増加させるため負極
の厚さを75μmとし、第1のリチウム薄膜領域と第2
のリチウム薄膜領域はそれぞれの幅が5ミリメートルお
よび1ミリメートルのストライプ形状で第1のリチウム
薄膜領域の厚さは17μm、第2のリチウム薄膜領域の
厚さは5μmとした。リチウム薄膜は全面にリチウム薄
膜を堆積する第1の蒸着工程とこれにつづく第2の蒸着
工程により形成し第2の蒸着工程においては複数の開口
部を持つ蒸着マスクを用いてリチウム薄膜をストライプ
形状に堆積した。リチウム薄膜の構造以外は実施例1と
同様に製作した。第1のリチウム薄膜領域の厚さはリチ
ウムの全体量を負極の充電容量に対応させることにより
決定した。
【0014】比較例6 実施例1の構造で負極厚さを75μmとし、これに対応
してリチウム必要量を堆積するためリチウム堆積部の厚
さを18μmとしたものを作成した。これらの電池を
0.5クーロンの充放電電流および2.5から3.7ボ
ルトの電圧範囲で300回充放電させた後、充電状態に
おいて電池を分解し内部の状態を観察した。観察した結
果を表2に示す。
【表2】 金属リチウムが残存しているとリチウムによる発火の恐
れがあり、安全性に問題がある。負極の表面色に色むら
が見られることは均一な充放電状態でないことを示し、
容量の低下やサイクル寿命の悪化を生じることを示して
いる。表2に示した結果から請求項1に記載の構造によ
れば負極の容量が大きく必要なリチウム量が多い場合に
もこれらの問題を生じないリチウムイオン2次電池が作
成できることがわかった。
【0015】実施例3 リチウム蒸着時にアルゴンガスを供給して槽内の圧力を
一定に保ち、これ以外は実施例1の方法と同様にしてリ
チウムイオン2次電池を作成した。この作成手順による
電池は初期容量の安定に要するサイクル数が実施例1の
電池に比べて減少し製造時間が短縮された。槽内の圧力
が1.33×10-4Paから1.33×103Paの範
囲において同様の効果が見られた。
【0016】実施例4 リチウム蒸着時に負極を加熱して温度を一定に保ち、こ
れ以外は実施例1の方法と同様にしてリチウムイオン2
次電池を作成した。この作成手順による電池は初期容量
の安定に要するサイクル数が実施例1の電池に比べて減
少し製造時間が短縮された。負極の温度が70℃から1
70℃の範囲において同様の効果が見られた。
【0017】これまでの実施例においては正極活物質に
5酸化バナジウムを使用したリチウムイオン2次電池に
使用される他のリチウム複合酸化物を使用した場合にも
本発明は同様の効果を有する。また、実施例では電解液
として、トリフロロメタンスルホン酸リチウムをプロピ
レンカーボネートに溶解したものを用いているが、電解
液にはこれ以外に、リチウム塩としてトリフロロメタン
スルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、6フッ化カリ
ン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、およびこれらの混
合物、溶媒としてプロピレンカーボネート、エチレンカ
ーボネートなどのカーボネート類、酢酸メチルなどのエ
ステル類、その他の非水溶媒でリチウムイオン電池に適
用できるもの、およびこれらの混合物、を使用した場合
にも本発明は同様の効果を有する。また実施例では積層
型の角型電池で説明したが円筒型、コイン型の電池につ
ていも本発明は同様の効果を有する。
【0018】
【効果】
(1)請求項1に対する作用効果 リチウムの導入が均一に行なわれることから金属リチウ
ムが電池内に残存する恐れがなく電池の安全性が確保さ
れるとともに、層間化合物化反応が速やかに進行するの
で短時間で製造可能なリチウム2次電池用負極が提供で
きる。 (2)請求項2に対する作用効果 特に電極形状が角型である場合に電解質の注入あるいは
塗布方向を該ストライプと平行に取ることにより、これ
ら電解質の注入あるいは塗布が容易に行なえるという利
点を有している。また、リチウム蒸着薄膜形成領域の幅
W(ミリメートル)が該リチウム蒸着薄膜の厚さD(ミ
リメトール)に対して次式:
【数5】W≦D×2500 で定められる範囲にあれば、この炭素負極を使用して完
成したリチウムイオン2次電池のサイクル劣化を十分に
小さく保つために必要なリチウムイオン導入量の面内均
一性が得られることがわかった。したがってこの範囲に
あるストライプ形状でリチウム薄膜をパターニングした
炭素負極を用いることによりサイクル劣化の少ないリチ
ウム2次電池が提供できる。 (3)請求項3に対する作用効果 請求項3に記載のリチウム2次電池用負極は、請求項1
および2に記載のリチウムイオン2次電池に比較して、
炭素負極活物質が露出している部分にも相対的に薄いリ
チウム薄膜が堆積された構造となっているから、前記請
求項1および2に記載の負極に比べて同じリチウム厚さ
においてより多くのリチウムを導入することができ、ま
たリチウム導入量の面内の均一性を更に高くできる。し
たがって電池の設計条件などからの要請で多くのリチウ
ムを導入したい場合およびリチウム導入量の均一性を特
に高めなければならない場合などに用いる負極として、
請求項1および2に記載の負極に比べて適している。 (4)請求項4に対する作用効果 特に電極形状が角型である場合に電解質の注入あるいは
塗布方向を該ストライプと平行に取ることによりこれら
電解質の注入あるいは塗布が容易に行なえるという利点
を有している。また、第1のリチウム蒸着薄膜形成領域
(d1)の幅W1(ミリメートル)が、該リチウム蒸着
薄膜形成領域の厚さD1(ミリメートル)に対して次
式:
【数6】W1≦D1×2500 で定められる範囲にあれば、この炭素負極を使用して、
完成したリチウムイオン2次電池のサイクル劣化を十分
に小さく保つために必要なリチウムイオン導入量の面内
均一性が得られることがわかった。したがってこの範囲
にあるストライプ形状でリチウム薄膜をパターニングし
た炭素負極を用いることによりサイクル劣化の少ないリ
チウム2次電池が提供できる。
【0019】(5)請求項5および6に対する作用効果 リチウムを蒸着する際に複数の開口部を持つ蒸着マスク
を用いて部分的にリチウムを蒸着すること以外は、従来
とほとんど同じ工程で請求項1または2記載のリチウム
2次電池用負極の製造が可能になる。したがって、この
発明の炭素負極の製造方法を採用することにより、新た
に要する製造コストの増加を小さくすることができると
いう効果が得られる。 (6)請求項7および8に対する作用効果 リチウム蒸着薄膜の密度をコントロールすることがで
き、特に密度を低下させることにより、短時間内に炭素
負極へのリチウム導入反応を終了させることができるの
で、この炭素負極の製造方法を用いることにより、リチ
ウム2次電池の製造に要する時間が短縮されるという効
果がある (7)請求項9に対する作用効果 炭素負極の温度を常温より高く保つので蒸着されたリチ
ウム金属が表面付着物などで不活性化される度合いが少
なくなりより活性が高められ、炭素負極へのリチウム導
入反応に要する時間が短縮されるので、この発明の炭素
負極の製造方法を用いることにより、リチウム2次電池
の製造に要する時間が短縮されるという効果がある。 (8)請求項10に対する作用効果 前記(1)ないし(7)で述べた効果を奏するリチウム
2次電池が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1によるリチウムイオン2次電
池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極引き出し線 2 負極引き出し線 3 正極 4 負極 5 セパレータ 6 ケース 7 端子取り出し部

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素負極の表面部分がリチウム蒸着薄膜
    形成領域とリチウム薄膜非存在領域との周期的な形状で
    構成され、かつリチウム蒸着薄膜形成領域の全表面積の
    比率が該電極の全表面積を1として0.3〜0.98の
    ものであることを特徴とするリチウム2次電池用負極。
  2. 【請求項2】 リチウム蒸着薄膜形成領域とリチウム薄
    膜非存在領域が、炭素負極全面にわたり一定の間隔を開
    けて平行に形成されたストライプ形状をなして存在し、
    かつ前記リチウム蒸着薄膜形成領域の幅(Wミリメート
    ル)が該リチウム蒸着薄膜の厚さ(Dミリメートル)に
    対して次式: 【数1】W≦D×2500 の範囲にある請求項1記載のリチウム2次電池用負極。
  3. 【請求項3】 炭素負極の表面部分全体が相対的に膜厚
    の大小のある2つの第1のリチウム蒸着薄膜形成領域
    (d1)および第2のリチウム薄膜領域(d2)とが隣
    接して連続的に存在する周期的な形状で構成され、かつ
    膜厚が相対的に大きなリチウム薄膜領域(d1)の表面
    積の総和の比率が、該電極の全表面積を1として0.3
    〜0.98のものであることを特徴とするリチウム2次
    電池用負極。
  4. 【請求項4】 第1のリチウム蒸着薄膜形成領域(d
    1)と第2のリチウム蒸着薄膜形成領域(d2)とは、
    それぞれW1およびW2の幅を持って炭素負極全面にわ
    たり平行に形成されたストライプ形状をなし、かつ、第
    1のリチウム蒸着薄膜形成領域(d1)の幅W1(ミリ
    メートル)は、第1のリチウム蒸着薄膜形成領域の厚さ
    D1(ミリメートル)に対して次式: 【数2】W1≦D1×2500 で定められる範囲にあり、また、第2のリチウム蒸着薄
    膜形成領域の厚さD2は、5×10-3ミリメートル以下
    である請求項3記載のリチウム2次電池用負極。
  5. 【請求項5】 蒸着法により炭素負極上にリチウム蒸着
    薄膜を形成するリチウム2次電池用負極の製造方法にお
    いて、炭素負極とリチウム蒸着源との間に複数の開口部
    を有するマスクを設けて炭素負極上にリチウム蒸着を行
    うことを特徴とする請求項1または2記載のリチウム2
    電池用負極の製造法。
  6. 【請求項6】 蒸着法により炭素負極上にリチウム薄膜
    を形成する2次電池用負極の製造方法において、リチウ
    ムの第1の蒸着工程とこれに続く第2の蒸着工程とを有
    し、前記第2の蒸着工程を炭素負極とリチウムとの間に
    複数の開口部を有するマスクを設けて行うことを特徴と
    する請求項3または4記載のリチウム2電池用負極の製
    造法。
  7. 【請求項7】 少なくとも1つの蒸着工程におけるリチ
    ウム蒸着時に、リチウムに対して不活性な気体を一定流
    量で真空蒸着槽内に供給し、該真空槽の圧力を1.33
    ×10-4Paから1.33×103Paの間に保持して
    リチウム蒸着を行うことを特徴とする請求項5または6
    記載のリチウム2次電池用負極の製造法。
  8. 【請求項8】 真空蒸着槽内に供給する気体が、ヘリウ
    ム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンから選択
    された単独の気体、もしくはこれらのうちの複数の気体
    を混合した気体である請求項7記載のリチウム2次電池
    用負極の製造法。
  9. 【請求項9】 蒸着工程におけるリチウム蒸着時に、炭
    素負極の温度を70℃から170℃の間に保持すること
    を特徴とする請求項5,6,7または8記載のリチウム
    2次電池用負極の製造法。
  10. 【請求項10】 リチウムイオンを吸蔵および放出する
    ことができる正極と炭素負極、および電解質を少なくと
    も構成要素とするリチウム2次電池おいて、炭素負極が
    請求項1,2,3または4記載のリチウム2次電池用負
    極を用いたことを特徴とするリチウム2次電池。
JP8026125A 1996-01-19 1996-01-19 リチウム2次電池用負極および該負極を使用したリチウム2次電池 Pending JPH09199180A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9812701B2 (en) 2014-06-30 2017-11-07 Samsung Sdi Co., Ltd. Rechargeable lithium battery

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