JPH09198654A - 磁気ディスク - Google Patents

磁気ディスク

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JPH09198654A
JPH09198654A JP376496A JP376496A JPH09198654A JP H09198654 A JPH09198654 A JP H09198654A JP 376496 A JP376496 A JP 376496A JP 376496 A JP376496 A JP 376496A JP H09198654 A JPH09198654 A JP H09198654A
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JP
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magnetic
disk
recording layer
anisotropy
particles
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JP376496A
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English (en)
Inventor
Katsutaro Ichihara
勝太郎 市原
Satoru Kikitsu
哲 喜々津
Keiichirou Yuzusu
圭一郎 柚須
Futoshi Nakamura
太 中村
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気記録層への磁気異方性の付与とヘッド−
媒体間の狭スペーシング化とを同時に実現できる磁気デ
ィスクを提供する。 【構成】 ディスク基板上に磁気記録層が形成された磁
気ディスクにおいて、ディスク基板の情報記録面として
使用される領域が実質的に平坦であり、磁気記録層が情
報記録面でディスク基板の周回方向および半径方向に連
続的に形成されて実質的に平坦な表面を有し、かつディ
スク周回方向に磁気的な異方性を示す磁気ディスク。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気的に情報の記録を行
う磁気ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気的に情報の記録・保存・再生を行う
磁気ディスク装置は大容量性と高速アクセス性を有し、
現時点で計算機周辺記憶装置の主流をなしており、今後
は画像・文字情報も扱えるマルチメディア情報機器とし
ての発展が期待されている。現状の磁気ディスクの面記
録密度は数100Mbpsi程度であるが、CPUの演
算処理速度の高速化に追随し、画像情報記憶装置として
発展していく上では、さらに記録密度を向上させること
が不可欠である。
【0003】磁気ディスクの記録密度を向上させるため
には、ヘッドに用いられる軟磁性材料の飽和磁束密度の
向上、ヘッドのトラック幅精度の向上、媒体膜厚の減
少、媒体保磁力の増加など複数の要素があるが、ヘッド
−媒体間のスペーシングの低下も極めて重要である。こ
のスペーシングを狭くして記録・再生効率を上げるとい
う課題は、磁気ディスクの高密度化を図る上で避けて通
ることができない。
【0004】ヘッドはスライダー後端部に設けられ、こ
のスライダーはディスクが回転動作を停止している間は
媒体面上に着陸する。そこで、起動時および再起動時に
スライダーが円滑に媒体面から離れて所定の浮上動作を
するには、スライダーと媒体面間の静止摩擦係数を低下
させる必要がある。このため、媒体の情報記録面上にデ
ィスク周回方向に沿ってテクスチャーと呼ばれる凹凸を
設けることが行なわれている。媒体面にテクスチャーを
設ける方法は様々であるが、例えばAl合金基板を用い
る場合にはディスク基板またはNiPメッキ層にディス
ク周回方向に細かな傷をつける方法が採用されている。
しかし、情報記録面にテクスチャーを設けると、テクス
チャーの表面凹凸によりヘッド−媒体間の狭スペーシン
グ化が制限される。また、記録セル面積の縮小に伴い、
テクスチャーに起因する媒体雑音も顕在化するので好ま
しくない。なお、上記のように情報記録面にテクスチャ
ーを設けると、磁気記録層にディスク周回方向に沿って
形状異方性を起源とする磁気異方性を付与することがで
き、急俊な磁化転移を形成して線記録密度を向上させる
上では有利になる。逆に、磁気異方性の付与によりディ
スク周回方向の保磁力が増大することは記録がしにくく
なる点で不利である。
【0005】上述した情報記録面にテクスチャーを設け
た従来の磁気ディスクの問題点を解消するために、動作
停止時にヘッドを媒体面から離して隔離する方法と、情
報記録面以外に局部的なテクスチャー(ゾーンテクスチ
ャー)を設けて動作停止時にヘッドをゾーンテクスチャ
ー領域に着陸させる方法とが提案されている。いずれの
場合も情報記録面にはマクロな形状変化がなく実質的に
平坦である。しかし、ヘッド−媒体間の狭スペーシング
化のために情報記録面を平坦化すると、情報記録面にテ
クスチャーを設けた媒体のように形状異方性に起因する
磁気異方性の付与は望めなくなり、線記録密度的には不
利になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来は磁
気記録層への磁気異方性の付与とヘッド−媒体間の狭ス
ペーシング化とがトレードオフの関係にあった。本発明
の目的は、磁気記録層への磁気異方性の付与とヘッド−
媒体間の狭スペーシング化とを同時に実現できる磁気デ
ィスクを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ディスク
は、ディスク基板上に磁気記録層が形成された磁気ディ
スクにおいて、前記ディスク基板の情報記録面として使
用される領域が実質的に平坦であり、前記磁気記録層が
情報記録面でディスク基板の周回方向および半径方向に
連続的に形成されて実質的に平坦な表面を有し、かつデ
ィスク周回方向に磁気的な異方性を示すことを特徴とす
るものである。
【0008】本発明の磁気ディスクにおいて、磁気記録
層は磁性粒子と磁性粒子の間隙を充填する非磁性体(非
磁性粒界)とからなっている。このような磁気記録層に
導入される周回方向への磁気的な異方性は、例えば磁性
粒子がディスク周回方向に沿って傾斜することによる形
状異方性、磁性粒子の結晶方位がディスク周回方向に優
先的に配向することによる結晶異方性、または磁性粒子
の原子配列がディスク周回方向に優先的に配列すること
による異方性のいずれを起源とするものでもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の対象となる磁気ディスク
は、ディスク基板の情報記録面として使用される領域が
実質的に平坦であり、磁気記録層が情報記録面でディス
ク周回方向にもディスク半径方向にも連続的に形成され
て実質的に平坦な表面を有するものである。具体的に
は、ゾーンテクスチャーが設けられた磁気ディスクや、
ヘッド隔離スペースを有するドライブに使用されるテク
スチャー無しの磁気ディスクなどが本発明の対象とな
る。一方、従来のように情報記録面にテクスチャーを有
する磁気ディスクや、例えばディスクリートトラック媒
体のようにテクスチャー以外の形状異方性を設けた磁気
ディスクは本発明の対象とはならない。
【0010】本発明において、磁気記録層にディスク周
回方向に磁化しやすい磁気的な異方性を付与するには、
磁気記録層を形成するプロセスにおいて誘導異方性を導
入する。より具体的な方法としては、以下のような方法
が挙げられる。本発明で採用される方法は、従来の方法
例えばターゲット直上にディスク基板を対向して配置し
静止状態でスパッタする方法や、ターゲットに対向する
平面内に複数のディスク基板を配置して基板ホルダーを
自公転させる方法とは異なる。
【0011】例えば、ターゲットに対してディスク基板
を斜め位置に対向させて配置してスパッタ粒子を斜め方
向に入射させる、いわゆる斜めスパッタ法により磁気記
録層を成膜する方法を採用することができる。この際、
回転しているディスク基板の一部分にのみスパッタ粒子
が入射するような開口部を設けた遮蔽板を使用してもよ
いし、ディスク基板を冷却または加熱してもよい。ディ
スク基板を冷却した場合には、被着するスパッタ粒子の
表面移動が抑制され、スパッタ粒子は入射方向に沿って
成長するので、形状的な異方性を導入することができ
る。逆に、ディスク基板を加熱した場合には、被着する
スパッタ粒子の表面移動が盛んに起こり、磁性粒子の形
状はディスク基板の周回方向に等方的になるが、斜めス
パッタおよび原子移動の効果によりC軸がディスク周回
方向に優先的に配列する結晶構造を示す。
【0012】また、ディスク周回方向に磁界を印加しな
がら磁気記録層を成膜する方法を採用することもでき
る。この場合、磁界中成膜により磁性原子対のスピンが
印加磁界の方向すなわちディスク周回方向に優先的に配
列し、ディスク周回方向に磁気異方性を導入することが
できる。
【0013】さらに、上述した方法を適宜組み合わせて
もよく、斜めスパッタと磁界印加とを組み合わせるなど
多様な変形例を適用でき、磁性粒子の微細構造も適用す
る方法に応じて多様な構造とすることができる。以上の
ような方法により、磁性粒子の微細な形状、結晶構造、
原子配列が制御され、ディスク周回方向に優先的に磁化
しやすい磁気異方性を示す本発明の磁気ディスクを作製
できる。
【0014】ここで、形状異方性については透過型電子
顕微鏡(TEM)観察、結晶異方性についてはTEM観
察と微細領域の電子線回析パターン測定、原子配列の異
方性についてはEXAFSなどの分析手段でそれぞれ判
断できる。また、形成直後の磁気記録層をMFM観察す
れば、微細な領域の磁区構造を知ることができる。そし
て、磁気異方性は振動試料形磁力計または磁気トルク計
などでディスク周回方向とディスク半径方向を比較する
ことにより判断できる。
【0015】本発明の磁気ディスクでは、磁気記録層へ
の周回方向に磁化しやすい磁気異方性の付与と、情報記
録面の平坦化による狭スペーシング化を同時に実現でき
る。磁気異方性の付与により、保磁力を高めて急峻な磁
化転移を形成でき、線記録密度を向上させることができ
る。なお、磁気的異方性の付与により周回方向の保磁力
が増加すると、記録の面では不利に働くが、狭スペーシ
ング化により実質的にヘッドの記録能力を高めることが
できるので、記録上の問題は生じない。また、狭スペー
シング化と周回方向への異方性の付与とが相乗的に作用
し、サイドフリンジを一段と減少させることができるの
で、トラック密度を向上する上で有利になる。
【0016】本発明において、磁性粒子に微細な形状異
方性を誘導する場合、磁性粒子の形状は媒体面に対して
斜めに傾いた柱状となり、磁化転移部の急俊性を損なわ
ずに磁化転移部の界面磁極量を高めることができる。こ
のため、再生に寄与する媒体漏洩磁界強度を向上する効
果を持たせることもできる。また、特に斜めスパッタま
たは斜め蒸着など、成膜時に磁性粒子を基板面に対して
斜めに入射させて異方性を付与する方法を採用した場
合、成長中の膜面に入射する磁性粒子の密度が低減して
膜のダメージを軽減でき、保磁力を向上させたり媒体ノ
イズを低下できる。
【0017】本発明において、ヘッドの浮上量をさらに
低下させて記録密度を向上させるためには、保護層を形
成した状態で磁気ディスクの表面が平坦であることが求
められる。成膜された直後の保護層の表面には、異常成
長による突起と下地の形状(磁性粒子と非磁性体との境
界に形成される微小な凹凸)に依存する高低差とが混在
し、これを除くのは困難である。最も高い突起部の高さ
はグライドハイト(GH)と呼ばれ、このGHが高いと
ヘッドの浮上高さすなわちフライングハイト(FH)も
高くせざるを得ないため記録密度の向上は望めない。従
来、GHを下げるためにはバニッシング工程が行なわれ
ている。この工程は研磨材のついたテープで保護層表面
を全体的に研磨する方法であり、突出した突起部を取り
除くことはできるが、微小突起の除去は困難である。ま
た、保護層の形状的な高低差を取り除いて平坦化するこ
とも困難であった。
【0018】これに対して、例えば逆スパッタを利用し
て、形成された保護層にイオン照射を行うか、保護層形
成前に磁気記録層にイオン照射を行うことにより、媒体
表面の高低差をなくして平坦化することが可能になる。
特に、磁気記録層にイオン照射を行うと、磁性粒子の結
晶を分断することができ、磁気記録層の微細構造を改質
することができる。
【0019】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の磁気ディスク
の実施例を説明する。図1は磁気ディスクの概略的な断
面図である。図1において、ディスク基板1上に、磁気
記録層2および保護層3が順次形成されている。磁気記
録層2は後述するように多様な微細構造を有する。保護
層の表面には潤滑層(図示せず)がコーティングされて
いる。以下に説明する例では、ディスク基板1として内
周側にゾーンテクスチャー領域を有するガラス基板、磁
気記録層2としてCoPtO膜、保護層3としてはC膜
を使用した。なお、磁気記録層としてCoTaCr膜な
どを用いた場合に一般的に用いられるCrなどの下地層
は形成していない。ただし、本発明では磁気記録層の材
料および下地層の有無は特に限定されない。
【0020】図2〜図4に磁気ディスクを構成する磁気
記録層の微細構造を模式的に示す。ここで、図2および
図3は本発明に係る磁気記録層を示し、図4は従来の磁
気記録層を示すものである。これらの図は、透過型電子
顕微鏡(TEM)により磁気記録層の平面および断面を
観察した結果に基づくものである。
【0021】いずれの図でも、CoPtO膜を適当な条
件で成膜した場合、磁気記録層2は磁性粒子21と磁性
粒子21の間隙を充填する非磁性体22とからなる。磁
性粒子21の主たる構成材料はCoPt微結晶であり、
非磁性体22の主たる構成材料は非晶質CoOである。
図2〜図4においては、紙面の左右方向がディスク周回
方向に相当する。
【0022】図2に示す本発明の磁気ディスクでは、磁
性粒子21がディスク周回方向に対してやや斜めに傾斜
しており、微細な形状異方性を示す。したがって、この
形状異方性に起因して、図中矢印で示した向きすなわち
ディスク周回方向に優先的に磁化が向く。
【0023】図3に示す本発明の磁気ディスクでは、磁
性粒子21は膜面にほぼ垂直に成長しており、形状的に
は面内で等方的である。しかし、C軸が優先的にディス
ク周回方向に配列する微細な結晶磁気異方性を示すか、
またはCo原子のペアオーダリングに基づいて原子配列
がディスク周回方向に優先的に配列している。この結
果、ディスク周回方向に磁気異方性を示す。
【0024】なお、これらの図は極めて狭い領域を示す
ものであり、磁性粒子21の磁化の方向を示す矢印は同
一方向に向いているが、磁気ディスクの中心を対称中心
として反対側の領域には逆向きに磁化する磁性粒子が存
在する。
【0025】一方、図4に示す従来の磁気ディスクで
は、磁性粒子21の形状は図3に類似し、しかも面内で
なんら異方性を示さないので、磁化は面内でランダムな
方向に向き、磁気的には面内で等方的となる。
【0026】なお、情報記録面において周回方向にテク
スチャーが施された従来のディスク基板を使用した場合
には、磁気記録層自体はミクロ的には図4と同様に面内
でランダムな磁化配列を示すが、マクロ的にはテクスチ
ャーの方向に形状異方性を示すので、ディスク周回方向
に磁化が優先配列して磁気異方性を示す。
【0027】図5は本発明の磁気ディスクの作製に使用
したスパッタ装置を示す図であり、(a)は断面図、
(b)は平面図である。図5において、成膜室31には
排気系32およびガス導入系33が接続されている。成
膜室31内にはCoPtターゲットが装着されるマグネ
トロンスパッタ源34が設置され、このマグネトロンス
パッタ源34にはDC電源35が接続されている。ター
ゲットの斜め上方にはディスク基板1が保持される基板
ホルダー36が設けられている。基板ホルダー36は、
必要に応じて使用される加熱・冷却機構および磁界印加
機構を備えている(いずれも図示せず)。基板ホルダー
36は回転ジグ37により回転される。ターゲットと基
板との間には、遮蔽板38が設けられている。この遮蔽
板38は、本発明の磁気ディスクの微細構造を実現する
目的で特別に工夫した開口部38a、38bを有する。
なお、後述するようにこのスパッタ装置は必ずしも図5
に示した構成を何ら変更することなく使用されるわけで
はなく、目的に応じて構成を種々変更して使用される。
【0028】図5のスパッタ装置を用い、本発明の磁気
ディスクを作製する手順は例えば以下のようなものであ
る。まず、CoPtターゲットをマグネトロンスパッタ
源34に設置し、ディスク基板1を基板ホルダー36に
設置して成膜室31を閉じ、排気系32を動作させて成
膜室31内部の圧力を例えば10-4Pa程度に排気す
る。次に、ガス導入系33を操作して、例えば0.1%
の酸素を混入したArガスを100sccmの流量で導
入し、成膜室31内の圧力を例えば3Paに設定する。
この後、必要に応じてターゲット表面をクリーニングす
るためにプレスパッタを行ってもよい。次いで、DC電
源35を投入してCoPtターゲットの上面にマグネト
ロンプラズマを生成させてターゲットをスパッタリング
し、スパッタ粒子を斜め上方に配置されたディスク基板
1上に被着させて、例えば20nm厚さの磁気記録層を
形成する。その後、DC電源35をオフし、ガス導入系
33を停止し、排気系32のバルブを閉じ、成膜室31
を大気圧に戻してディスク基板1を取り出す。このディ
スク基板1を別の成膜装置に入れ、例えば0.7Paの
純Arガス中でCターゲットをマグネトロンスパッタし
て例えば10nm厚さの保護層を形成して取り出した
後、潤滑剤をコートする。なお、Cからなる保護層は、
磁気記録層を形成したのと同じスパッタ装置を使用して
形成してもよい。
【0029】以下、図2および図3に示す本発明の磁気
ディスクの作製方法を具体的に説明する。図2に示す磁
気ディスクを、図5の成膜装置の遮蔽板38の2つの開
口部のうちいずれか一方を開口して基板上に磁気記録層
を形成することにより作製した。より具体的には、ディ
スク基板1を冷却し、一方の開口部38aのみを開口
し、磁界を印加せずに、ディスク基板1を図5(b)の
時計回り方向に60rpmで回転させながら18nm/
minの成膜速度で磁気記録層を形成した。ターゲット
から放出されるスパッタ粒子は図5(b)の左方向から
右方向へ向かって開口部38aを通過してディスク基板
1上に入射する。ディスク基板1を冷却することにより
ディスク基板1上または成長中の膜面上での被着スパッ
タ粒子の表面移動が抑制されているので、スパッタ粒子
はその入射方向に沿って成長する。この結果、図2に示
したようにディスク基板1面に対して垂直な方向からや
や斜めに傾いた磁性粒子21が形成される。図2ではス
パッタ粒子の入射方向は右上上方から左下下方へ向かう
方向である。以下、このようにして作製した本発明の磁
気ディスクをa1という。
【0030】図2の変形例として、磁性粒子が単一の斜
方柱ではなく、膜厚方向に周期的に軸の向きが逆転する
斜方柱を重ね合わせた構造の磁性粒子を有する磁気ディ
スクを作製した。この場合、図5の遮蔽板38の開口部
38aおよび38bの両者を開口し、成膜時に基板ホル
ダー36の回転速度とターゲットへの入力パワーを調整
して、ディスク基板1面が一つの開口部を通過する間に
厚さ5nm程度の磁気記録層2が形成されるようにし
た。このようにして作製した磁気ディスクは、膜厚方向
に沿って高さ5nmの4本の斜方柱が軸の向きが交互に
逆向きになった状態で積み重なった磁性粒子構造を呈し
た。この場合にも微細な形状異方性に起因してディスク
基板1の周回方向に磁気的な異方性を示した。以下、こ
の磁気ディスクをa2という。
【0031】図3に示す磁気ディスクを、図5の遮蔽板
38の開口部38a、38bの両者を開口し、ディスク
基板1を200℃に加熱した以外は、図2の場合と同様
な条件で作製した。ディスク基板1を加熱することによ
りスパッタ粒子の表面移動が盛んに起こり、磁性粒子2
1は基板面に対して垂直な方向に軸を持つ10〜20n
m程度の直径を有する柱状に成長した。磁性粒子21の
形状はディスク基板1の周回方向に等方的であるが、斜
めスパッタおよび原子移動の効果によりC軸がディスク
周回方向に優先的に配列する結晶構造を示し、結果的に
ディスク周回方向に磁気異方性を示す磁気ディスクが作
製された。以下、この磁気ディスクをb1という。
【0032】また、図3に示す磁気ディスクを、図5の
遮蔽板38を取り除き、基板ホルダー36の上方にディ
スク基板1の周回方向に磁界を印加するための永久磁石
を固定し、ディスク基板1を液体窒素温度に冷却し、基
板ホルダー36を回転させながら成膜することによって
作製した。この場合、磁界中成膜によりCo原子対のス
ピンが印加磁界の方向すなわちディスク周回方向に優先
的に配列し、ディスク周回方向に磁気異方性を示す。な
お、成膜初期で磁性粒子のサイズが極めて小さい段階で
は熱擾乱により磁性を示さないが、成膜時に基板を冷却
することにより熱擾乱が抑制され、小さいサイズでも磁
性を帯び磁界に感応して原子配列の異方性が容易に得ら
れる。この場合、ディスク基板の冷却は必須ではない
が、冷却した方が好ましい。以下、このようにして作製
した本発明の磁気ディスクをb2という。
【0033】比較例として従来技術に従って図4に示す
磁気ディスクを作製した。具体的には、図5のスパッタ
装置の遮蔽板38を取り除き、ディスク基板1を室温に
維持し、ディスク基板1に磁界を印加せずに、基板ホル
ダー36を回転させて成膜した。このような方法では、
スパッタ粒子はディスク基板1面に完全に等方的に入射
する。形成される磁気記録層は、面内等方的で磁化状態
は図4に示すようにランダムであった。以下、このよう
にして作製した磁気ディスクをc1という。
【0034】同様に比較例として、市販の磁気ディスク
ドライブから取り出した磁気ディスクを用意した。この
磁気ディスクは全面にテクスチャーを形成したNiPメ
ッキAl合金基板上に磁気記録層を形成したものであ
る。以下、この磁気ディスクをc2という。
【0035】以上で説明した本発明の磁気ディスク(a
1、a2、b1、b2)および従来の磁気ディスク(c
1、c2)を種々の方法で評価した。まず、各磁気ディ
スクについてグライドハイトテスターにより媒体表面の
突起高さを調べた。情報記録面の突起高さの平均値は、
a1、a2、b1、b2およびc1では10nm未満で
あったが、従来のフルテクスチャーディスクであるc2
は20nm程度の大きな値を示した。このようにヘッド
−媒体間のスペーシングを低下させるには、情報記録面
にテクスチャーを設けない磁気ディスクが効果的である
ことが確認された。
【0036】実際にスピンスタンドタイプの記録再生評
価実験装置に各磁気ディスクを設置して音響工学的手段
でヘッドの浮上量を測定した。この試験では、c2のみ
が浮上量40nmでヘッドクラッシュを発生したのに対
して、その他のディスクでは浮上量が20nmでもクラ
ッシュは発生しなかった。なお、突起高さの平均値より
も臨界浮上量が大きいのは突起高さの分散に起因するも
のと考えられる。
【0037】次に、保磁力を測定した結果を表1にまと
めて記載する。表1から明らかなように、本発明の磁気
ディスクa1、a2、b1、b2ではディスク周回方向
の保磁力(Hct)がディスク半径方向の保磁力(Hc
r)よりも大きくなっている。また、HctとHcrと
の差に着目すると、本発明の磁気ディスクでは、従来の
フルテクスチャーの磁気ディスクc2と比較しても大き
な異方性が付与されていることがわかる。このように保
磁力Hcの特性は、上述した磁性粒子の微細形状、微細
磁化構造、微細結晶、近接原子配列などから予想される
結果と一致している。以上の結果は磁気トルクメータに
よる評価でも検証されている。
【0038】
【表1】
【0039】次に、スピンスタンドタイプの記録再生特
性評価装置にディスクをセットし、飽和磁束密度が1.
5TのMIGタイプの記録ヘッドで記録し、MRタイプ
のヘッドで再生を行った。ここで、飽和磁束密度の高い
記録ヘッドを使用したのは、表1に示したように本発明
の磁気ディスクは2.5kOeにも達する高い保磁力を
示し、通常用いられているパーマロイを記録磁極とする
記録ヘッドでは飽和記録が困難なためである。ヘッド浮
上量は40nmとした。媒体保護層およびMRヘッド保
護層の厚さを考慮すると、ヘッド−媒体間の実効スペー
シングはほぼ60nmとなる。なお、ディスクc2は、
浮上量が40nmの条件では動作が困難であるため記録
再生実験を行なっていない。
【0040】この実験では、弧立反転記録磁区の再生信
号強度(S0 )と、この再生信号強度が半分に低下する
空間記録周波数(D50)を測定した。また、記録磁区別
の磁化状態をMFM観察しサイドフリンジ量(F)を測
定した。これらの結果を表2にまとめて示す。
【0041】表2から明らかなように、本発明の磁気デ
ィスクa1、a2、b1、b2は従来の磁気ディスクc
1に比較して、再生信号強度S0 および空間記録周波数
50が高く、サイドフリンジFが小さくなっており、ト
ラック密度の向上に有利である。この実験で用いた磁気
ディスクの残留磁束密度および膜厚はいずれもほぼ等し
いため、Hcが大きいほどS0 が高くなると考えられ
る。表1と表2とを対比するとほぼこの考察通りの結果
が得られていることがわかる。しかも、磁気ディスクa
1、a2では、Hcの向上率よりもS0 の向上率の方が
上回っている。これは、磁気ディスクa1、a2では、
磁性粒子がやや斜めに傾斜した微細形状を有しているの
で、その分だけ磁化転移部の磁極量が多いためと考えら
れる。同様に、Hcの向上に対応して、空間記録周波数
50も高くなっている。D50については、本発明の磁気
ディスクa2と、成膜条件を調整してHcを2.3kO
eに調整した従来の等方性の磁気ディスクとを比較する
と、前者の方が大きい値を示した。これは、本発明の磁
気ディスクではディスク周回方向に磁気異方性が付与さ
れており、長手方向(周回方向)の微小磁区の安定性が
改善されたためと考えられる。
【0042】また、本発明に係る磁気ディスクどうしを
比較すると、磁気ディスクa1ではHcの向上および異
方性の付与から予想されるほどD50が向上していない。
これは、磁壁の傾きが記録分解能的には不利に作用した
ためと考えられる。ただし、磁性粒子の傾き角度は制御
可能なので、システム仕様で要求されるS0 およびD50
に合致する磁気ディスクを提供することは十分可能であ
る。
【0043】さらに、本発明の磁気ディスクは従来の磁
気ディスクに比べてサイドフリンジFも小さくなってい
る。これは、従来の磁気ディスクでは膜面内で記録トラ
ックに垂直な方向(ディスク半径方向)にも容易に磁化
が向いてしまうのに対して、本発明の磁気ディスクでは
ディスク半径方向には磁化が向きにくいためと考えられ
る。
【0044】
【表2】
【0045】次いで、保護層が形成された状態で表面が
平坦な磁気ディスクを得る方法を採用した場合の効果に
ついて説明する。ここでは、以下のような方法により5
種の磁気ディスクを作製した。
【0046】ガラス基板上に、DCスパッタ法により
0.05μmの厚さのCoCr磁気記録層を成膜し、R
Fスパッタ法により0.03μmの厚さのSiO2 保護
層を成膜した。次に、成膜時の真空をそのまま維持し、
Arを流入した0.6Paの真空下において500Wの
パワーでRF逆スパッタを2分間行なった。この逆スパ
ッタにより、保護層の厚さは0.02μmになった。そ
の後、平均粒径0.5μmのアルミナの粉末を埋め込ん
だテープを用いてバニッシュ工程を行なった。以下、こ
の磁気ディスクをAという。
【0047】NiPコートしたアルミ基板上に、0.0
3μmの厚さのCoPt磁気記録層を成膜した。イオン
ガンを用いて、磁気記録層に垂直な方向に対して80°
傾いた方向からイオン照射を行い、その表面をイオンポ
リシングした。その上にRFスパッタ法により0.03
μmの厚さのSiO2 保護層を成膜した。次に、成膜時
の真空をそのま維持し、Arを流入した0.6Paの真
空下において500WのパワーでRF逆スパッタを2分
間行なった。この逆スパッタにより、保護層の厚さは
0.02μmになった。その後、平均粒径0.5μmの
アルミナの粉末を埋め込んだテープを用いてバニッシュ
工程を行なった。以下、この磁気ディスクをBという。
【0048】ガラス基板上に、0.03μmの厚さのC
oPt磁気記録層を成膜した。この磁気記録層上に保護
層としてレジストをスピンコートした。以下、この磁気
ディスクをCという。ただし、保護層としてレジストを
用いた場合には、耐熱性に注意する必要がある。
【0049】比較のために、ガラス基板上にDCスパッ
タ法により0.05μmの厚さのCoPt磁気記録層を
成膜し、RFスパッタ法により0.02μmの厚さのS
iO2 保護層を成膜した。その後、平均粒径0.5μm
のアルミナの粉末を埋め込んだテープを用いてバニッシ
ュ工程を行なった。以下、この磁気ディスクをDとい
う。
【0050】同様に比較のために、ガラス基板上に、D
Cスパッタ法により0.05μmの厚さのCoPt磁気
記録層を成膜し、RFスパッタ法により0.02μmの
厚さのSiO2 保護層を成膜したが、何ら表面処理を施
さずに磁気ディスクを作製した。以下、この磁気ディス
クをディスクEという。
【0051】得られた各磁気ディスクA〜Eについて、
グライドハイトテスタによりグライドハイトを測定した
結果を表3に示す。表3から明らかなように、磁気ディ
スクA〜Cでは、従来の方法により作製された磁気ディ
スクDよりも低いグライドハイトが得られている。
【0052】次に、磁気ディスクAについて、逆スパッ
タの際のパワーデンシティとグライドハイトとの関係を
図6に示す。その結果、広い範囲のパワーデンシティ
で、グライドハイトは、磁気ディスクAの方が従来の磁
気ディスクDより小さな値を示した。
【0053】さらに、STMにより各磁気ディスクの表
面形状を観察し、膜全体で突起を除く高低差を調べたと
ころ、ディスクAでは0.005μm以内、ディスク
B、Cでは0.003μm以内、ディスクDでは0.0
1μm以内であり、ディスクA〜Cの方が平坦であるこ
とがわかった。
【0054】また、磁気ディスクBおよびDについて、
VSMにより保磁力を調べた。保磁力は、磁気ディスク
Bで2300Oe、磁気ディスクDで1500Oeであ
り、磁気ディスクBの方が大きかった。この現象を解明
するために磁気ディスクBと磁気ディスクDの磁気記録
層をTEM観察した。その結果、磁気ディスクDでは磁
性粒子がチェーン状に繋がっていたのに対し、磁気ディ
スクBでは磁性粒子が個々に分れていた。このことか
ら、イオン照射により結晶を分断する効果が得られるこ
とがわかる。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、磁
気記録層への磁気異方性の付与とヘッド−媒体間の狭ス
ペーシング化とを同時に実現できる磁気ディスクを提供
でき、線記録密度およびトラック密度を大幅に向上させ
て記録密度を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスクの構成を示す断面図。
【図2】本発明に係る磁気ディスクを構成する磁気記録
層の微細構造および磁化状態を模式的に示す図。
【図3】本発明に係る他の磁気ディスクを構成する磁気
記録層の微細構造および磁化状態を模式的に示す図。
【図4】従来の磁気ディスクを構成する磁気記録層の微
細構造および磁化状態を模式的に示す図。
【図5】本発明の磁気ディスクを作製するために使用さ
れたスパッタ装置の構成を示す図。
【図6】保護層を逆スパッタする際のパワーデンシティ
と磁気ディスクのグライドハイトとの関係を示す図。
【符号の説明】
1…ディスク基板、2…磁気記録層、3…保護層、21
…磁性粒子、22…非磁性体、31…成膜室、32…排
気系、33…ガス導入系、34…スパッタ源、35…D
C電源、36…基板ホルダ、37…基板回転ジグ、38
…遮蔽板、38a、38b…開口部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 太 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ディスク基板上に磁気記録層が形成され
    た磁気ディスクにおいて、前記ディスク基板の情報記録
    面として使用される領域が実質的に平坦であり、前記磁
    気記録層が情報記録面でディスク基板の周回方向および
    半径方向に連続的に形成されて実質的に平坦な表面を有
    し、かつディスク周回方向に磁気的な異方性を示すこと
    を特徴とする磁気ディスク。
  2. 【請求項2】 前記磁気記録層が、磁性粒子と磁性粒子
    の間隙を充填する非磁性体とからなり、磁性粒子がディ
    スク周回方向に形状異方性を有していることを特徴とす
    る請求項1記載の磁気ディスク。
  3. 【請求項3】 前記磁気記録層が、磁性粒子とこの磁性
    粒子の間隙を充填する非磁性体とからなり、磁性粒子が
    ディスク周回方向に結晶異方性を有していることを特徴
    とする請求項1記載の磁気ディスク。
  4. 【請求項4】 前記磁気記録層が、磁性粒子と磁性粒子
    の間隙を充填する非磁性体とからなり、磁性粒子の原子
    配列がディスク周回方向に異方性を有していることを特
    徴とする請求項1記載の磁気ディスク。
JP376496A 1996-01-12 1996-01-12 磁気ディスク Pending JPH09198654A (ja)

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