JPH09183639A - アルミナセメント及びそれを用いた不定形耐火物 - Google Patents

アルミナセメント及びそれを用いた不定形耐火物

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JPH09183639A
JPH09183639A JP7342564A JP34256495A JPH09183639A JP H09183639 A JPH09183639 A JP H09183639A JP 7342564 A JP7342564 A JP 7342564A JP 34256495 A JP34256495 A JP 34256495A JP H09183639 A JPH09183639 A JP H09183639A
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alumina cement
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alumina
refractory
cao
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JP7342564A
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Yukio Sasagawa
幸男 笹川
Masanori Hisamoto
雅則 久本
Yuji Koga
祐司 古賀
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Denka Co Ltd
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Denki Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高耐火性、高流動性、及び可使時間を確保す
るアルミナセメントとそれを用いた不定形耐火物を提供
すること。 【解決手段】 鉱物組成がCaO・2Al2O350〜90重量部と12
CaO・7Al2O350〜10重量部からなるアルミナセメント物質
50〜95重量部と、BET比表面積が0.4〜0.8m2/gである
α-Al2O3、また、BET比表面積が0.4〜0.8m2/gで、平
均粒子径が40〜90μmである及び/又はα-Al2O3中の可
溶性Na2Oが0.1重量%以下で、可溶性SO30.05重量%以下
であるα-Al2O35〜50重量部とを含有してなるアルミナ
セメント、該アルミナセメントと耐火骨材とを含有して
なる不定形耐火物を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミナセメント
とそれを用いた不定形耐火物に関し、特に、従来品にな
い、高耐火性、高流動性、及び可使時間を確保するアル
ミナセメントとそれを用いた不定形耐火物に関する。本
発明のアルミナセメントは、耐火物分野、化学プラント
のライニング、耐食材料、触媒材料、及び土木建築分野
等への使用が可能である。
【0002】
【従来の技術とその課題】アルミナセメントとは、CaO・
Al2O3、CaO・2Al2O3、及び12CaO・7Al2O3等と示される鉱
物組成の水硬性カルシウムアルミネートが主体となるよ
うに各種原料を配合し、溶融及び/又は焼成して製造し
たクリンカーを単独粉砕した水硬性セメント、又はその
クリンカーにアルミナや各種添加剤を配合し粉砕した水
硬性セメントをいう(秋山桂一著,セメント・コンクリー
トの化学,p225〜260,1984、荒井康夫著,セメントの材料
化学,p215〜218,1991、耐火物,Vol.29,p368〜374,197
7、耐火物,Vol.34,p634〜640,1982、耐火物,Vol.35,p19
0〜199,1983、及びTrans.J.Br.Ceram.Soc.,Vol.81(2),1
982)。また、日本工業規格(JIS)には、耐火物用アルミ
ナセメントの規格があり、JISR 2511の中で、化学成分
(CaO、Al2O3、及びFe2O3)、粉末度、凝結時間、及び強
さによって、アルミナセメントが1種〜5種まで規定さ
れている。これらアルミナセメントについては、ヨーロ
ッパを中心に古くから研究が行われており、一般的なア
ルミナセメントの製造方法、各種鉱物組成の特性、各種
添加剤による硬化調整方法、及び不定形耐火物への適用
方法等が提案された(T.D.Robson,High Alumina Cements
and Concrete,p1〜45,1962、耐火物,Vol.34,p499〜50
3,1982、及びChemistry of Cement Clinker(Part 1),Sy
mposium held October 7-11,Vol.11968,Tokyo,p349〜36
5等)。
【0003】従来、高耐火性のアルミナセメントに関
し、特定割合のCaO・2Al2O3と12CaO・7Al2O3からなる組成
物又は特定割合のCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、及び12CaO・7
Al2O3からなる組成物に微粉アルミナを添加し、さら
に、適当な凝結時間を調整する目的で、スルホン酸系界
面活性剤とグルコン酸等の凝結遅延剤とを添加混合した
アルミナセメント組成物(特公昭63−37055号公報又は特
公昭63−37054号公報)、Al 2O3/CaOモル比が0.6〜1.2の
鉱物組成を有するアルミナセメントにアルミナ質微粉を
混合したアルミナセメントの製造法(特公昭47−40694号
公報)、CaO・Al2O3のクリンカーと特定の比表面積や粒子
形状を有するアルミナとを混合した耐火性アルミン酸カ
ルシウムセメント(特開昭52−111920号公報)、並びに、
特定割合のCaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、及び非晶質から
なるアルミナセメントに、ヒドロオキシカルボン酸塩や
無機炭酸塩などの添加剤を配合したアルミナセメント組
成物(特開昭55−45507号公報)等が提案された。
【0004】CaO・2Al2O3を含有したアルミナセメントで
は、CaO・2Al2O3の水和活性が低いことから低温施工時に
硬化遅延が発生する傾向があった。また、12CaO・7Al2O3
を含有したアルミナセメントでは、イオン溶出が早いた
め、硬化が促進され、可使時間と流動性が確保できない
傾向があった。これら、CaO・2Al2O3や12CaO・7Al2O3など
のカルシウムアルミネートの硬化調整剤として、前述の
添加剤が使用されるが、可使時間を確保するために添加
量を増加させたり、より遅延作用の強い添加剤を配合す
ると硬化遅延が大きくなり、施工温度によっては硬化し
ないなどのトラブルが発生する傾向があり、そのため、
従来の技術では、不定形耐火物の可使時間と流動性を確
保することに限界があり、高耐火性も得られないという
課題があった。
【0005】一方、硅弗化塩、ポリアクリル酸類、ほう
酸類、及び炭酸塩類等の各種添加剤によって、可使時間
や流動性を向上させることが提案された(特開昭60−548
497号公報、特開昭55−759448号公報、特開昭61−86454
号公報、特開平1−83543号公報、及び特開平6−32639号
公報)。
【0006】このように、アルミナセメントに高耐火性
を付与し、可使時間、流動性、及び強度発現特性等を改
善したアルミナセメント組成物やその製造方法は多数存
在するものの、不定形耐火物に使用した際の焼成強度は
不充分であり、高温使用時の強度発現特性の改善が求め
られていた。
【0007】また、不定形耐火物では、施工時の可使時
間、流動性、及び硬化性等の初期特性も重要であって、
高温強度と初期特性のバランスが重要である。しかしな
がら、これらアルミナセメントやアルミナセメント組成
物は高耐火性、可使時間、流動性、及び硬化性など、不
定形耐火物としての要求特性を満足するものではなかっ
た。
【0008】従来、アルミナセメントの流動性や可使時
間を確保するため、特定割合のCaO・Al2O3とCaO・2Al2O3
の鉱物組成をもち添加剤を併用したアルミナセメントが
提案された(特開平2−175638号公報、特開平7−232941
号公報、及び特開平7−232956号公報等)。また、CaO・Al
2O3と2CaO・Al2O3・SiO2からなるアルミナセメントの硬化
遅延剤や、CaO・Al2O3やCaO・2Al2O3組成のクリンカーに
α-Al2O3と添加剤とを配合してなるアルミナセメント組
成物が提案されている(特開昭63−103847号公報や特開
平7−232941号公報)。しかしながら、このアルミナセメ
ントは、一定時間内に硬化することが要求されるにもか
かわらず、鉱物組成としてCaO・Al2O3とCaO・2Al2O3とを
含有しているため、施工温度が低温の場合、著しい硬化
遅延を生じ、一定時間内に硬化しにくいという課題があ
った。
【0009】さらに、アルミナセメントと特定粒度の骨
材とを使用した無振動(セルフレベリング)で施工可能な
不定形耐火物も提案された(特開平4−260673号公報、特
開平5−180689号公報、及び特開平7−237977号公報
等)。しかしながら、骨材の粒度構成や添加剤の併用で
は不定形耐火物の流動性を向上することができないとい
う課題があった。
【0010】これらの特許や文献に記載されているアル
ミナセメントは、強度発現性を得ようとすると可使時間
が確保できなかったり、高耐火性を得るために、Al2O3
含有率を上げると流動性が低下したり、強度発現性が不
足するなどの課題があり、従来の品質レベルを凌駕でき
るものではなかった。
【0011】一方、アルミナセメントの主用途である耐
火物分野では、アルミナセメントを配合した不定形耐火
物の使用範囲が増加する傾向にあり、また、不定形耐火
物の施工方法も省力化されつつあり、例えば、1回の施
工量が10トンを越えるような場合に実施する多量混練り
やポンプ圧送による施工、セルフレベリング施工、及び
ノンバイブレーター施工等が普及してきた。そのため、
特に、高強度発現性や高緻密性を目的とし、アルミナセ
メント、シリカヒューム等の超微粉、及び分散剤を配合
した不定形耐火物では、その使用範囲が増えるにつれ、
可使時間不足の問題が深刻化してきた。
【0012】また、アルミナセメントと水とを混合する
と、アルミナセメントを構成する水硬性カルシウムアル
ミネートから、Ca2+、Al3+、Mg2+、Na+、K+、及びAl2O4
2-等のイオンが溶出する。アルミナセメントの水和反応
は、アルミナセメントの粒子より溶出したイオンが析出
し硬化が促進される液相反応と、アルミナセメントの粒
子表面層から水和が進行する固液反応の競争反応であ
り、雰囲気温度の影響や各種添加剤の影響を強く受ける
ものであった。
【0013】不定形耐火物、特に超微粉を配合した不定
形耐火物では、この溶出したイオンと超微粉とが凝集硬
化する理論を適用して、その凝集や可使時間の確保につ
いて各種の技術報告が報告された(耐火物,33-59,p3〜7,
1981、耐火物,33-393,p31〜34,1981、及び耐火物,40-5,
p270〜278,1988等)。超微粉を配合した不定形耐火物で
は、アルミナセメントの水和は、注水後、液相に溶出す
るイオンによって進行し、可使時間と流動性の長短が決
定される。これは、コロイドの凝集、分散をモデルとし
たDLVO理論に基づくものであって、溶出したイオン
量に凝集速度が依存することとなり、高温施工雰囲気で
の流動性や可使時間の確保が難しいという課題があっ
た。
【0014】ここでいうDLVO理論とは、コロイドの
安定性理論(Verwey,E.J.W.etc.,Therory of the Stabil
ity of Lyophobic Colloids,Elsevier,New york,1948)
を基本とし、懸濁液のレオロジー的特性が超微粉の分散
と凝集に密な関係があることによるというものであり、
粒子間に働くポテンシャルエネルギーと電気二重層間と
の静電気的反発ポテンシャルの関係を示すものである。
この理論によれば、電解質の濃度を上げれば上げるほ
ど、また、イオン価の大きい電解質ほど凝集は促進され
る。
【0015】アルミナセメントから溶出するCa2+やAl2O
4 2-などの多価イオンが、不定形耐火物に凝集特性を付
与し、凝集が早くなることから流動性が低下したり、可
使時間が短くなる傾向を示す。このため、従来のアルミ
ナセメントでは、多価イオンの制御が不充分で流動性と
可使時間とを確保できるものではないという課題があっ
た。特に、従来技術で使用のアルミナを使用すると流動
性と可使時間が確保できず、さらに、高温使用時の焼成
強度も充分でないという課題があった。
【0016】CaO・2Al2O3をアルミナセメント組成物に使
用した場合は低温施工時に硬化遅延が著しく大きいた
め、また、12CaO・7Al2O3をアルミナセメント組成物に使
用した場合はアルミナセメント組成物が急硬化するた
め、吹付け材等の一部の用途を除いて実用化されておら
ず、アルミナセメント組成物としては、流動性、硬化
性、及び強度発現性に優れたCaO・Al2O3が主体となるも
のに限定されていた。
【0017】前述のように、従来技術として、CaO・2Al2
O3と12CaO・7Al2O3に、アルミナ、界面活性剤、及び凝結
調整剤を添加したアルミナセメント組成物もあるが、ア
ルミナセメントの可使時間と硬化時間は、CaO・2Al2O3
12CaO・7Al2O3の水和反応に依存し、界面活性剤や凝結調
整剤を配合しているために施工温度の影響を受けやす
く、不定形耐火物に使用した場合、骨材と後添加する添
加剤との相性が一致せず、可使時間が大幅に低下した
り、低温施工時に硬化しないという課題があり、高温下
で使用した場合、強度が充分でなく、耐スポーリング性
や剥離発生面なども充分ではないという課題があった。
特に、超微粉を配合した不定形耐火物では、流動性と減
水特性を付与する必要性から、添加剤が通常使用されて
おり、アルミナセメント組成物中に添加剤を予め含有し
た場合、後添加する添加剤の相性によって、添加剤効果
の過不足が生じ、アルミナセメント組成物に予め添加剤
を含有してなるものは、不定形耐火物用とすれば、好ま
しくないという課題があった。
【0018】また、施工の省力化を目的としたポンプ圧
送による施工、コンクリートミキサー車などによる施
工、及びノンバイブレーター施工等では、不定形耐火物
にした際の流動性が非常に重要であって、従来のアルミ
ナセメントでは、流動性や可使時間が確保できず、ミキ
サー内で固まったり、ホッパーから排出できないなどの
課題があった。近年、各種施工方法に適応した不定形耐
火物としての特性が要求されるようになり、従来のアル
ミナセメントでは、流動性や可使時間が充分確保できな
いという課題があった。
【0019】さらに、原料不純物に由来するSiO2、Ti
O2、Fe2O3、及びMgO等の化学成分は、不定形耐火物に使
用した際、低融点化合物を生成し、耐火度や熱間強度を
低下するといった課題があった。しかしながら、2CaO・A
l2O3・SiO2が存在すると不定形耐火物に使用した際、注
水初期の凝集時間が長くなるといった優れた特性を表す
ものの、2CaO・Al2O3・SiO 2の存在によるSiO2含有量の増
加は、著しい硬化遅延や強度低下を生じ、さらに、高温
下で液相を生成することによる耐火度の低下や熱間曲げ
強度の低下を生じて、耐火物としての使用が制限される
という課題があった。
【0020】また、従来のアルミナセメントの鉱物組成
は、適度な流動性を確保し、強度発現性や硬化性付与の
面で、CaO・Al2O3を主体とするものに限定されていた。
特に、カルシウムアルミネートは、CaO/Al2O3モル比に
より特性が変化し、CaO/Al2O3モル比が大きくなると耐
火度が低下したり、急硬性を示したりし、CaO/Al2O3
ル比が小さくなると高耐火性や硬化遅延性を示すことが
一般に知られている。
【0021】一方、カルシウムアルミネートの硬化速度
を調整するため、12CaO・7Al2O3のような早硬性カルシウ
ムアルミネートを配合することが提案された(特開昭54
−13639号公報)。また、CaO・2Al2O3や3CaO・5Al2O3は、
高耐火性を有するものの硬化遅延性が大きいという課題
があり、流動性、硬化性、及び強度発現性をバランスさ
せたアルミナセメントとして、CaO・Al2O3、CaO・2Al
2O3、及び12CaO・7Al2O3を混在させたものが提案された
(特開平7−61844号公報等)。
【0022】さらには、これら従来のアルミナセメント
を低セメントキャスタブルに使用した際、アルミナセメ
ントからのCa2+、Al3+、Al2O4 2-、及びOH-等のイオンの
溶出量を低減し、可使時間の確保を目的としたものとし
て、粒度分布を変えたアルミナセメントや粒子形状が角
状又は鱗片状のアルミナセメントが提案された(特開昭5
8−36953号公報や特開昭61−7200号公報など)。しかし
ながら、アルミナセメントの粒度分布や粒子形状を変え
てもカルシウムアルミネートに起因する多価イオンの溶
出制御は不充分で、流動性と可使時間の確保が満足でき
るものではなかった。
【0023】また、アルミナセメントに遅延性を付与す
るものとして、特定のガラス化率を有するCaO・Al2O3と2
CaO・Al2O3・SiO2とを主成分とする硬化遅延剤が提案され
た(特開昭61−248487号公報)。しかしながら、この硬化
遅延剤を使用しても、硬化時間と高耐火性とを充分確保
できるものではなく、可使時間を延長することも不充分
であるという課題があった。
【0024】アルミナセメントを耐火物分野に使用する
場合、SiO2を含有したものは耐火性が劣るため、通常、
SiO2は配合されず、アルミナセメント製造時に使用する
ボーキサイト等の原料中に存在するSiO2によりカルシウ
ムアルミネートの副産物として生成する2CaO・Al2O3・SiO
2の量の程度に留まっており、その2CaO・Al2O3・SiO2は、
水和活性が著しく低く、耐火度低下等を示すため、これ
まで積極的にアルミナセメントに活用されたものはなか
った。
【0025】流動性や可使時間の確保を目的に添加剤を
併用した技術として、例えば、特定割合のCaO・Al
2O3、12CaO・7Al2O3、及び非晶質からなり、α-Al2O3
ヒドロオキシカルボン酸、及び無機炭酸塩を含有してな
るアルミナセメント組成物(特公昭45−129562号公報、
特開昭49−32921号公報、特開昭50−102617号公報、及
び特開昭55−121933号公報等)、 水溶性のポリアクリ
ル酸類及び/又はメタクリル酸−アクリル酸共重合体と
アルカリ金属炭酸塩とを含有してなるアルミナセメント
(特開昭55−75947号公報や特開昭55−75948号公報な
ど)、 特定のCaO/Al2O3モル比を持つ非晶質を含有す
るアルミナセメント、又はCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、3Ca
O・Al2O3、12CaO・7Al2O3、及び11CaO・7Al2O3・CaF2等のう
ちの一種以上の鉱物組成に対応する非晶質カルシウムア
ルミネートを主成分とするアルミナセメント(特開昭61
−132556号公報、特開昭61−77659号公報、及び特開平2
−175638号公報等)、 少なくとも80重量%以上のCaO・
Al2O3のクリンカーと特定比表面積のアルミナとを含有
してなるアルミナセメント、又はアルミナセメントクリ
ンカーにアルミナ質微粉を含有してなるアルミナセメン
ト(特開昭52−111920号公報や特公昭43−74896号公報な
ど)、 CaO・2Al2O3を主体にして12CaO・7Al2O3、微粉ア
ルミナ、及びスルホン酸系アニオン界面活性剤を配合し
てなるアルミナセメント(特開昭55−144456号公報や特
開昭55−121934号公報)、 特定割合のCaO・Al2O3とCaO
・2Al2O3とを有するクリンカーとα-Al2O3からなるアル
ミナセメント(USP 4162923)、 カルシウムアルミネー
ト、ポリアクリル酸類、ホウ酸類、及び炭酸塩又はカル
ボン酸類からなるセメント組成物(特開平6−157097号公
報)等が提案されたが低セメントキャスタブルに適用し
た場合、高温施工時等では可使時間が確保できず、流動
性が充分確保できないという課題があった。
【0026】通常、市販のアルミナセメントは、いずれ
もCaO・Al2O3を主体にし、要求特性に応じて、12CaO・7Al
2O3、α-Al2O3、及び添加剤等を含有したものであっ
て、クリンカー製造時の副産物としてCaO・2Al2O3を若干
量含有したものであった。
【0027】ボーキサイト等の天然原料を使用したアル
ミナセメントには、2CaO・Al2O3・SiO 2が見られるもの
の、あくまでも不純物としての量であり、本発明のよう
に積極的に鉱物組成として配合調整したものはなかった
(耐火物,Vol.29,p368〜374,1977、耐火物,Vol.34,p634
〜640,1982)。また、高純度アルミナや水酸化アルミニ
ウムなどの合成原料を使用したアルミナセメントでは、
SiO2を含有すると耐火度が低下する課題があり、SiO2
積極的に除外されており、本発明のように各種鉱物組成
を組み合わせることでSiO2を含有する2CaO・Al2O3・SiO2
鉱物組成の特性を引き出すものはなかった。そして、こ
れらのアルミナセメントでは、耐火物分野、特に、製銑
設備や製鋼設備などの鉄鋼分野で要求される不定形耐火
物の特性レベルには、流動性、強度発現性、耐火性、及
び耐食性等の面で不充分であるという課題があった。
【0028】一方、従来技術として、例えば、アルミナ
セメントに含有されるCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、及び12C
aO・7Al2O3等のカルシウムアルミネートに関する研究は
数多く見られ、中でもCaO・2Al2O3は硬化遅延傾向を示す
ことから、従来技術としてCaO・2Al2O3を含有させたもの
の研究が行われた(Cement and Concrete research,Vol.
20,p623〜635,1990、Trans.J.Br.Ceram.Soc.,81(2),p35
〜42,1982、及び耐火物,No.11,p18〜24,1982)。しかし
ながら、実際の不定形耐火物に使用すると流動性や可使
時間が充分確保できないという課題があった。
【0029】また、アルミナセメントの長期強度を改善
する目的で、2CaO・Al2O3・SiO2を含有した鉄鋼スラグ粉
末を混合する手法が提案された(特開昭53−12926号公報
や特開昭60−5055号公報など)。しかしながら、不定形
耐火物に使用した場合、流動性や可使時間が充分確保で
きないばかりか耐火度不足や高温下での強度が不足する
という課題があった。
【0030】本発明者は、前記課題を解消すべく種々検
討を重ねた結果、特定の鉱物組成のアルミナセメント物
質と特定のα-Al2O3とを使用することによって前記課題
が解消できという知見を得て本発明を完成するに至っ
た。
【0031】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、鉱物組
成がCaO・2Al2O350〜90重量部と12CaO・7Al2O350〜10重量
部からなるアルミナセメント物質50〜95重量部と、BE
T比表面積が0.4〜0.8m2/gであるα-Al2O3、また、BE
T比表面積が0.4〜0.8m2/gで、平均粒子径が40〜90μm
である及び/又はα-Al2O3中の可溶性Na2Oが0.1重量%
以下で、可溶性SO30.05重量%以下であるα-Al2O35〜5
0重量部とを含有してなるアルミナセメントであり、該
アルミナセメントと耐火骨材とを含有してなる不定形耐
火物である。
【0032】以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】本発明で使用するアルミナセメントとは、
CaOをC、Al2O3をAとすると、鉱物組成がCA2とC12A7のア
ルミナセメント物質と特定のα-Al2O3からなるものであ
り、本発明では、この特定の鉱物組成をもつアルミナセ
メント物質とα-Al2O3の特性が重要である。
【0034】ここでアルミナセメント物質とは、石灰石
や生石灰などのCaO原料と、ボーキサイトや赤ボーキサ
イトなどの天然原料、これら天然原料をバイヤープロセ
ス等の精製法により精製して得られた高純度アルミナ、
及びアルミ残灰等のAl2O3原料とを、熱処理生成物中の
鉱物組成が所定の割合になるように配合し、電気炉、反
射炉、縦型炉、平炉、シャフトキルン、及びロータリー
キルン等の設備で、溶融及び/又は焼成して得られるク
リンカーを粉砕してなるものである。焼成法では、窯業
協会誌,Vol.83(5),p239〜243,1975 にも記載のように、
CaO原料とAl2O3原料によるカルシウムアルミネートの生
成反応が固相拡散反応で進むためクリンカー中に多相の
鉱物組成を形成しやすく、本発明の目的とする鉱物組成
が得られにくい傾向がある。そのため、本発明において
は、焼成法で製造したクリンカーに比べて、カルシウム
アルミネートの鉱物組成割合を本発明の目的内で製造し
やすい溶融法でクリンカーを製造することが好ましい。
溶融法では、カルシウムアルミネートの生成反応が、熱
力学的に進むため、比較的、簡単に本発明の目的とする
鉱物組成を得ることができる。溶融法でアルミナセメン
ト物質を製造する場合、CaO原料とAl2O3原料とを所定の
割合で混合及び/又は混合粉砕し、電気炉、平炉、又は
反射炉等の溶融炉で、1,500℃以上の高温で溶融するの
が好ましく、未反応原料が完全に無くなるまで溶融する
ことがより好ましい。原料配合物を溶融後、高圧空気や
水に接触させて冷却し、アルミナセメントのクリンカー
とすることが好ましい。これらクリンカーの粉砕・混合
は、クリンカー同士を混合後、粉砕しても良く、あるい
は、各々粉砕したものを混合しても良く、特に、目的の
鉱物組成割合になるようにする手段は制限されるもので
はない。クリンカーの粉砕機としては、通常、粉塊物の
微粉砕に使用される、例えば、ローラーミル、ジェット
ミル、チューブミル、ボールミル、及び振動ミル等の粉
砕機の使用が可能である。
【0035】アルミナセメント物質の鉱物成分は、例え
ば、Trans.J.Br.Ceram.Soc.,p35〜42,1982、Br.Ceram.T
rans.J.,90,p71〜76,1991、及び耐火物,Vol.35,p190〜1
99,1983等の技術文献を参考に、CaO/Al2O3の成分割合
と溶融物の冷却速度を調整することで得ることが可能で
ある。アルミナセメント物質の鉱物組成の配合割合は、
Cu−Kα線を用いたX線回折分析によって分析可能であ
る。
【0036】X線回折法による鉱物組成の定量方法とし
て、回折線の強度比測定法、内部標準法、Zevine法、及
びX線回折ピーク分離法等があり、本発明においては、
いずれの方法でも定量可能である。ここでいう回折線の
強度比測定法は、各鉱物組成の回折強度を相対的に現し
た値で示すものであり、内部標準法とは、内部標準物質
と試料とを一定の割合で混合し、成分濃度と回折線強度
比との間には直線関係が得られることを利用して、濃度
が既知の標準試料で検量線を作成し分析する方法であ
る。また、Zevine法とは、試料の平均質量吸収係数と回
折線強度比とを測定し、n次の連立方程式を解くことに
より各結晶相を定量する方法であり、平均質量吸収係数
は蛍光X線分析法又は化学分析によって試料の成分を定
量して算出することができる。この他、試料の結晶やガ
ラス相から測定するX線回折ピーク分離法でも定量可能
である。本発明においてはいずれの方法でも、鉱物組成
やガラス化率を定量することが可能であるが、測定が簡
単で、精度が良いZevine法又は回折線の強度比測定法が
好ましい。
【0037】本発明のアルミナセメント物質の鉱物組成
は、CA250〜90重量部で、C12A750〜10重量部であり、CA
270〜80重量部で、C12A730〜20重量部が好ましい。アル
ミナセメント物質の鉱物組成比がこの範囲外では流動
性、硬化性、及び強度発現性が悪化する傾向がある。特
に、CA2が多いと低温施工時に硬化遅延が大きくなる傾
向を示し、CA2が少ないと水和後の水酸化アルミニウム
の生成量が少なく、高温下での強度発現性が不足する傾
向がある。また、C12A7の量が多いと可使時間と流動性
が確保できない傾向がある。
【0038】本発明におけるアルミナセメント物質のガ
ラス化率は、溶融及び/又は焼成した高温のクリンカー
を冷却する速度により調整可能であり、特に限定される
ものではないが、アルミナセメント物質では、ガラス化
率が高いと可使時間が長く取れるので好ましい。ガラス
化率は、粉末X線回折法による鉱物組成の分析で測定が
可能であり、回折線の強度が弱いもの程ガラス化率が大
きい。本発明では、ガラス化率は20%以上が好ましく、
50%以上がより好ましい。このガラス化率は、粉末X線
回折法による回折線の消失により測定することが可能で
あり、ガラス化率(重量%)=100−(ピーク面積/全回折
線面積)×100の式によって算出できる。アルミナセメン
ト物質は、一般に溶融や焼成によって製造したクリンカ
ーを水や空気に接触させて冷却する方法で製造される
が、冷却時に急冷するとガラス化率は高くなり、また、
クリンカーの鉱物組成中のSiO2含有量が多くなるとガラ
ス化率は高くなる。
【0039】アルミナセメント物質の粒度は、流動性、
硬化性、及び強度発現性に影響するため、目的特性を得
るためには重要な管理ポントであって、粉砕したクリン
カーの粒度は、例えば、JIS R 2521に記載のブレーン比
表面積の測定方法で測定でき、ブレーン値2,000〜8,000
cm2/gが好ましく、4,000〜7,000cm2/gがより好ましい。
2,000cm2/g未満ではアルミナセメント物質やアルミナセ
メントとしての水和活性が低く、強度発現性が低下した
り、硬化不良が発生したりする傾向がある。また、8,00
0cm2/gを越えると水和活性が大きくなりすぎ、注水後の
可使時間が確保できない傾向がある。
【0040】また、平均粒子径は、20μm以下が流動性
と高温での可使時間に優れるため好ましく、1〜15μm
がより好ましい。20μmを越えると流動性が低下した
り、硬化遅延する傾向がある。ここでいう平均粒子径と
は、レーザー回折法、レーザー散乱法、及び沈降天秤法
等の一般的に使用されている粒度分布測定機による粒度
測定結果の値であって、50%平均径である。
【0041】本発明では、本発明のアルミナセメントを
不定形耐火物に使用した際、高耐火性、高温強度発現
性、耐食性、及び体積安定性を付与する面からα-Al2O3
を配合するが、配合するα-Al2O3の種類によって、アル
ミナセメントの特性が大きく変わるため、α-Al2O3の選
択は重要である。
【0042】α-Al2O3とは、バイヤープロセス等によっ
て高純度化処理された水酸化アルミニウムを、ロータリ
ーキルン、トンネル窯、及びシャトル窯等の焼成装置
で、例えば、1,200〜1,450℃の温度で焼成して得られる
精製アルミナであって、Al2O3を90重量%以上含有する
高純度アルミナであり、一般には、高純度アルミナ、バ
イヤーアルミナ、易焼結アルミナ、又は軽焼アルミナと
呼ばれるものである。
【0043】本発明で使用するα-Al2O3のBET比表面
積は重要であって、0.4〜0.8m2/gであり、0.5〜0.7m2/g
が好ましい。0.4m2/g未満では不定形耐火物に使用した
際の高温強度が低下し、0.8m2/gを越えるとアルミナセ
メント組成物としての可使時間や流動性が低下する傾向
がある。α-Al2O3のBET比表面積の調整は、焼成温度
や焼成装置内の滞留時間をコントロールすることで可能
であって、焼成温度を上げるとBET比表面積は小さく
なり、焼成温度を下げるとBET比表面積は大きくなる
傾向を示す。
【0044】さらに、本発明ではα-Al2O3の平均粒子径
も重要であって、平均粒子径が大きいとアルミナセメン
ト物質と混合粉砕する際に細かく粉砕されず、アルミナ
セメントにした際の流動性が低下する傾向がある。α-A
l2O3の平均粒子径は、α-Al2O3の一次粒子の平均粒子径
であって、バイヤー法で水酸化アルミを製造する際の水
酸化アルミニウムの析出時間を調整することでコントロ
ールできる。沈殿槽での滞留時間が長いと平均粒子径の
大きい水酸化アルミニウムを得ることができ、これを焼
成したα-Al2O3も平均粒子径が大きいものが得られる。
本発明においては、α-Al2O3の平均粒子径は、40〜90μ
mが好ましく、45〜65μmがより好ましい。平均粒子径
が小さいとアルミナセメント物質のクリンカーと混合粉
砕した際に小さくなり過ぎ、アルミナセメントとしての
可使時間や流動性が確保できない傾向がある。また、α
-Al2O3の平均粒子径が大きいと粉砕に時間を要し、アル
ミナセメントにした際も平均粒子径が大きく、不定形耐
火物に使用した場合、高温下での強度発現性に劣る傾向
がある。
【0045】本発明においては、α-Al2O3粒子の大きさ
も重要である。α-Al2O3粒子の大きさは、電子顕微鏡に
より、α-Al2O3粒子表面を観察することによって測定可
能であり、2〜5μmであることが好ましい。α-Al2O3
粒子の大きさが5μmより大きいとクリンカーと混合粉
砕した後の粒度も大きくなり、不定形耐火物に使用した
場合の高温強度が低下する傾向があり、α-Al2O3粒子の
大きさが小さいと可使時間や流動性が低下傾向がある。
【0046】さらに本発明においては、α-Al2O3粒子形
状も重要であって、粒子形状が球形に近いほどアルミナ
セメントにした際の流動性が向上するが、球形度が上が
るに連れて曲げ強度も低下するため、このα-Al2O3粒子
形状は最適値が存在する。このα-Al2O3粒子形状は、幾
何学形状として表されるものであって、ボールーミルに
てα-Al2O3を構成するα-Al2O3粒子を解砕し、次に示す
式によって算出される粒子の球形度により求めることが
できる。この球形度や形状係数は数値が小さい方が球形
に近いことを示すものである(化学工学便覧,改訂5版,p
220〜224,1988)。球形度は、球形度=(4.84×k2/3)/
f、ここで、kは体積形状係数、fは面積形状係数であ
り、球形係数は、形状係数=(粉砕品のBET比表面積)
×(粉砕品の平均粒子径)×(α-Al2O3真比重)、ここで、
粉砕品とは、α-Al2O3をα-Al2O 3粒子まで解砕したもの
である。α-Al2O3粒子までの解砕は、バッチ式ボールミ
ルやバッチ式振動ミルで可能であり、例えば、内容積10
リットルのミルに、10mm径のアルミナボール1Kgとα-A
l2O3を500gを投入し、1時間程度粉砕することで解砕可
能である。本発明においては、形状係数は19.0以下が好
ましく、16.0以下がより好ましい。球であれば形状係数
は6.0となる。形状係数が19.0を越えるとアルミナセメ
ントの流動性が低下する傾向がある。α-Al2O3焼成時に
α-Al2O3粒子の結晶形状を制御する目的で、フッ化アル
ミニウム(AlF3)をα化の転化反応の触媒としてキルン内
に滞留させ、フッ化アルミニウムのキルン内の濃度を調
節することが可能であって、フッ化アルミニウムの滞留
量が多いとα-Al2O3粒子の形状が扁平化するため、形状
係数を小さくするにはフッ化アルミニウム量を低減する
ことで必要である。
【0047】ここでいうバイヤー法によるアルミナの製
造方法とは、1881年オーストリアの化学者であるKarl J
osef Bayerによって発明されたアルミナの工業生産方法
であって、ボーキサイト中の不純物であるTiO2やFe2O3
が水酸化ナトリウム水溶液に不溶なこと、水酸化ナトリ
ウム水溶液に可溶なSiO2はアルミナ分の溶解時にNa2Oや
Al2O3と結合して、ソーダライト化合物(3Na2O3・3Al2O3
SiO2)を生成し、不溶化して、不純物を含まないアルミ
ン酸ナトリウム水溶液を得た後、この溶液を冷却して過
飽和にすることで水酸化アルミニウムの結晶を析出させ
る製造方法である。α-Al2O3は、バイヤー法で製造する
過程において、可溶性Na2Oが少なくなるように、得られ
た水酸化アルミニウムを充分洗浄したものを原料として
焼成したものであって、ソーダ分の除去を行ったもので
あることが好ましい。
【0048】α-Al2O3の純度は、通常のバイヤープロセ
スによって製造されたアルミナであれば、Al2O398重量
%以上の純度の確保が可能である。本発明では、Al2O3
の純度は高いことにこしたことはないが、98重量%以上
あれば充分である。α-Al2O3では、Al2O3純度の他に不
純物としてのNa2O量が問題であって、Na2Oが多いとアル
ミナセメントにした際、流動性が低下したり、耐火性が
低下したり、高温で収縮したりする傾向がある。そのた
め、Na2O量は少ない方が好ましく、0.1重量%以下が好
ましく、0.05重量%以下がより好ましい。可溶性Na2Oが
多くなるとアルミナセメント組成物にした際、Naイオン
が硬化促進剤として働き、可使時間や流動性が確保でき
ない傾向がある。
【0049】可溶性SO3量は、その大部分が水酸化アル
ミニウムを焼成する際に、重油や石炭などの燃料からα
-Al2O3中に含まれるものであり、可溶性SO3量が多いと
アルミナセメントにした際の硬化が遅延するため好まし
くない。可溶性SO3量は0.05重量%以下がアルミナセメ
ントの品質特性上好ましく、0.03重量%以下がより好ま
しい。
【0050】本発明では、アルミナセメント物質とα-A
l2O3を混合してアルミナセメントを調製する。
【0051】アルミナセメント物質とα-Al2O3の混合方
法は特に限定されるものではないが、アルミナセメント
物質のクリンカーとα-Al2O3とを配合し、粉砕機で混合
粉砕するか、α-Al2O3を単独でアルミナセメント相当の
粒度まで粉砕後、クリンカー粉砕物と混合することも可
能である。α-Al2O3を単独で粉砕する場合、Dp50が1〜
10μm程度まで粉砕することが好ましい。本発明では、
α-Al2O3をクリンカーと混合粉砕した方がセメント粒子
との馴染みが良く、また、アルミナセメント中に均一に
混合されるため、不定形耐火物に使用した際、硬化体組
織が均一になり、耐食性が向上する傾向がある。
【0052】α-Al2O3の使用量は、アルミナセメント物
質とα-Al2O3からなるアルミナセメント100重量部中、
5〜50重量部であり、10〜40重量部が好ましい。α-Al2
O3の使用量を増量すると、耐火性や高温での焼成強度は
増加するが、常温での養生強度や乾燥強度が低下し、流
動性も低下する傾向がある。特に、本発明においては、
配合するクリンカーの成分組成との兼ね合いがあるが、
アルミナセメント中の化学成分がCaO10〜30重量%、Al2
O370〜90重量%になるようにα-Al2O3を配合することが
好ましく、CaO20〜30重量%、Al2O370〜80重量%となる
ように配合することが、流動性が良好で高強度が得られ
ることからより好ましい。CaOが多いと耐食性や耐火度
が著しく低下する傾向がある。耐火骨材としてマグネシ
ア質骨材を配合した不定形耐火物の場合、アルミナセメ
ント中のα-Al2O3が多いと、高温下でマグネシアと反応
し、マグネシアスピネルを生成することがあり、その過
程で体積膨張する傾向を示すため、アルミナセメント中
のα-Al2O3が80重量%を越えるように多量に配合するこ
とは、目的とする不定形耐火物で配合する耐火骨材の種
類と添加量によっては好ましくない。
【0053】アルミナセメント物質とα-Al2O3からなる
アルミナセメントのブレーン比表面積はJIS R 2521記載
の方法によって測定でき、流動性、硬化性、及び強度発
現性に関与するため、目的特性を得るためには重要な管
理ポントであって、粉砕したクリンカーの粒度は、ブレ
ーン法による比表面積で2,000〜8,000cm2/gが好まし
く、4,000〜7,000cm2/gがより好ましい。ブレーン値が
2,000cm2/g未満では、アルミナセメントとしての水和活
性が低く、強度低下や硬化不良が発生する傾向があり、
ブレーン値が8,000cm2/gを越えると水和活性が大きくな
りすぎ、注水後の可使時間が確保できない傾向がある。
また、平均粒子径としては、20μm以下に微粉砕したも
のが流動性と高温での可使時間に優れるため好ましく、
1〜15μmがより好ましい。20μmを越えると流動性が
低下し、硬化が遅延する傾向がある。ここでいう平均粒
子径とは、レーザー回折法やレーザー散乱法、あるいは
沈降天秤法等の一般的に使用されている粒度分布測定機
による粒度測定結果の値であって、50%平均径である。
【0054】本発明のアルミナセメントには、目的とす
るCA2、C12A7、及びα-Al2O3の他に、原料中の不純物か
ら生成するCaO・TiO2や4CaO・Al2O3・Fe2O3 などの不純物
を含有しているものも使用可能であるが、アルミナセメ
ント中の不純物は少ない方が好ましく、不純物の合計量
が5重量%以下がより好まし、TiO20.5重量%以下、Fe2
O30.5重量%以下、及びMgO0.5重量%以下が最も好まし
い。これら不純物が多くなると耐火度だけでなく、強度
発現性、高温下での硬化体としての体積安定性や耐スポ
ーリング抵抗性などの特性が悪化するばかりでなく、ス
ラグ等への耐食性が低下する傾向がある。
【0055】さらに、本発明では、アルミナセメントや
それを用いた不定形耐火物の流動性の改善目的で、通
常、不定形耐火物に配合される、例えば、耐火物,33-5
9,p3〜7,1981、耐火物,3-393,p31〜34,1981、及び耐火
物,40-5,p270〜278,1988等に記載されている、硬化遅延
剤や硬化促進剤などの添加剤や、流動化剤等を併用する
ことが可能である。
【0056】硬化遅延剤としては、カルボン酸類、アル
カリ金属炭酸塩、ホウ酸類、ポリアクリル酸類、ポリメ
タクリル酸類、及びリン酸類が挙げられ、そのうち、カ
ルボン酸又はそのアルカリ塩の使用が好ましい。
【0057】ここで、カルボン酸類とは、オキシカルボ
ン酸類であって、具体的には、クエン酸、グルコン酸、
酒石酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、及びサリチル酸又
はそれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム
塩等のアルカリ塩等が挙げられる。これらのうち、クエ
ン酸又はそのアルカリ塩、中でもクエン酸ナトリウムや
クエン酸カリウムの使用が好ましい。カルボン酸類の純
度は特に限定されるものではないが、現在、工業的に精
製されているカルボン酸類の使用が可能であって、目的
とするカルボン酸類の純度が80重量%程度以上が好まし
い。中でも、不純物として硫酸塩が0.05重量%以下のク
エン酸又はその塩や、20℃における1重量%濃度の水溶
液のpHが7〜10のクエン酸又はその塩を使用すること
は、可使時間に優れるため好ましい。
【0058】アルカリ金属炭酸塩としては、無機の炭酸
塩のいずれも使用可能であるが、炭酸ナトリウム、炭酸
カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム
等のアルカリ金属炭酸塩の使用が好ましく、その含水塩
や無水塩のいずれの使用も可能である。これらのうち、
炭酸ナトリウムの使用が好ましく、JIS K 1201やJISK 8
625で規定される炭酸ナトリウムを使用することが可能
である。アルカリ金属炭酸塩の粒度は、アルミナセメン
トと混合した際、水に溶解しやすいように、細かいもの
程好ましく、100メッシュ以下、特に、200メッシュ以下
が好ましい。アルカリ金属炭酸塩の純度は特に限定され
るものではないが、現在、工業的に精製されているアル
カリ金属炭酸塩の使用が可能であって、目的とする炭酸
塩の純度が80重量%程度以上のものの使用が好ましい。
【0059】ホウ酸類とはホウ酸又はそのアルカリ塩を
いう。ホウ酸は、別名ボール酸、正ホウ酸、又はオルソ
ホウ酸と呼ばれ、H3BO4で示され、ピロホウ酸、テトラ
ホウ酸、及びメタホウ酸を含有するものである。ホウ酸
の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、ホ
ウ酸の原鉱石に硫酸を加えて加熱分解し、ホウ酸を遊離
させて分離抽出後、精製する。ホウ酸のアルカリ塩とし
ては、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等
が挙げられ、そのうち、ナトリウム塩又はカリウム塩の
使用が好ましく、その含水化合物や無水化合物のいずれ
の使用も可能である。ホウ酸類の粒度は、セメントに混
合した際、水に溶解しやすいように小さければ小さいほ
ど好ましい。また、ホウ酸類の純度は特に限定されるも
のではないが、現在、工業的に精製されているホウ酸の
使用が可能であって、ホウ酸中のBO4分が80重量%以上
が好ましい。
【0060】ポリアクリル酸類としては、ポリアクリル
酸又はこれらの塩で、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ
アクリル酸カリウム、及びポリアクリル酸アンモニウム
等が挙げられるが、これらの中で、性能、価格、入手し
易さ、及び取扱い易さ等からポリアクリル酸ナトリウム
の使用が最も好ましい。
【0061】ポリメタクリル酸類とは、ポリメタクリル
酸又はこれらの塩で、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポ
リメタクリル酸カリウム、及びポリメタクリル酸アンモ
ニウム等が挙げられるが、これらの中で、性能、価格、
入手し易さ、及び取扱い易さ等からポリメタクリル酸ナ
トリウムの使用が最も好ましい。
【0062】リン酸類とは、ヘキサメタリン酸、トリポ
リリン酸、及びピロリン酸又はそのアルカリ塩等が挙げ
られる。
【0063】また、硬化促進剤としては、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウム等の水酸
化物や、炭酸リチウム等のリチウム塩が挙げられ、その
うちリチウム塩の使用が硬化促進作用が強い面から好ま
しい。
【0064】これら添加剤の使用量は、アルミナセメン
ト100重量部に対して、0.5〜2.5重量部が好ましく、1.0
〜2.0重量部がより好ましい。0.5重量部未満では作業性
が低下する傾向があり、2.5重量部を越えると硬化が遅
延したり、強度が低下する傾向がある。
【0065】流動化剤は、セメント分散性に優れる界面
活性剤を主成分とする混和剤であって、一般には、ナフ
タレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩(ナフタレン
系)、メラミン樹脂スルホン酸ホルマリン縮合物の塩(メ
ラミン系)、及びオレフィン/マレイン酸共重合物の塩
(カルボン酸系)等が使用可能であり、具体的にはβ−ナ
フタレンスルホン酸高縮合物のナトリウム塩、クレオソ
ート油スルホン酸縮合物のナトリウム塩、β−ナフタレ
ンスルホン酸低縮合物のナトリウム塩、及びポリオキシ
エチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。流動
化剤の使用量は特に限定されるものではないが、アルミ
ナセメントと耐火骨材からなる不定形耐火物100重量部
に対し、0.5〜5重量部が好ましい。
【0066】添加剤や流動化剤の配合方法は特に限定さ
れるものではなく、添加剤等を所定の割合になるように
配合し、あらかじめ粉砕したアルミナセメントと、V型
ブレンダー、コーンブレンダー、ナウタミキサー、パン
型ミキサー、及びオムニミキサー等の混合機を用いて均
一混合するか、あるいは、所定の割合でアルミナセメン
トと添加剤等を配合後、振動ミル、チューブミル、ボー
ルミル、及びローラーミル等の粉砕機で混合粉砕するこ
とが可能である。
【0067】また、本発明では、添加剤等を100〜400℃
の温度で加熱し、アルミナセメントと混合するか、又
は、添加剤等とアルミナセメントとを一緒に混合したも
のを加熱する方法が可能である。加熱方法としては、粉
砕と同時に加熱する方法、輸送時に熱風で加熱する方
法、輸送機械を加熱する方法、及び貯蔵時に加熱する方
法等が可能である。
【0068】これらの添加剤は、ICP、ICPA、G
C−MS、NMR、HPLC、及びFT−IR等の機器
分析、キレート分析、及び放射化分析法等で種類と量比
とを特定化することが可能である。
【0069】本発明で使用する水は特に限定されるもの
ではなく、水道水、天然水、及び河川水等、一般のコン
クリート用として使用される水が使用できるが、Na+、K
+、Mg2+、Ca2+、及びCl-等の可溶性成分の少ない水の使
用が好ましい。水の使用量は目的とする不定形耐火物に
よって適宜決定され、特に限定されるものではないが、
水の使用量が多くなるとブリージングしたり強度が低下
する傾向がある。そのため、流し込み施工する不定形耐
火物では、通常、不定形耐火物100重量部に対して、2
〜20重量部が好ましい。一般的には、JIS R 2553記載の
方法で測定したフロー値が130〜240mmになるように水を
添加することが好ましい。
【0070】本発明で使用する耐火骨材とは、耐火骨材
92〜99重量%とアルミナセメント1〜8重量%からなる
低セメントキャスタブルタイプに使用するとその効果が
より発揮するもので、通常、不定形耐火物に使用されて
いる耐火骨材が使用可能である。具体的には、マグネシ
ア質、マグネシアスピネル質、アルミナ質、カーボン
質、並びに、超微粉等が挙げられ、その他、溶融シリ
カ、焼成ムライト、酸化クロム、ボーキサイト、アンダ
ルサイト、シリマナイト、シャモット、ケイ石、ロー
石、粘土、ジルコン、ジルコニア、ドロマイト、パーラ
イト、バーミキュライト、煉瓦屑、陶器屑、窒化珪素、
窒化ホウ素、炭化珪素、及び窒化珪素鉄等の使用が可能
である。特に、本発明の不定形耐火物においては、耐食
性、耐用性(耐久性)、及び耐火性の面から、マグネシア
質骨材、マグネシアスピネル質骨材、アルミナ質骨材、
カーボン質骨材、超微粉、並びに、シャモットや炭化珪
素等の骨材の中から選ばれた一種又は二種以上の耐火骨
材を配合することが好ましい。また、鉄鋼製造プロセス
の溶鋼工程に使用する場合は、スラグ浸透抑制の面か
ら、マグネシア質骨材とアルミナ質骨材の併用又はマグ
ネシアスピネル質骨材とアルミナ質骨材の併用が好まし
く、溶銑工程に使用する場合は、電融アルミナや焼結ア
ルミナなどのアルミナ質骨材とカーボン質骨材、超微
粉、及び添加剤の併用が好ましい。
【0071】ここで、マグネシア質骨材とは、海水法に
より海水から抽出された水酸化マグネシウム、炭酸マグ
ネシウム、天然マグネシアであるマグネサイト、及び天
然炭酸マグネシウム等をロータリーキルン等で焼成して
得られる焼結マグネシアクリンカーを、その焼結マグネ
シアクリンカーを電気炉等で溶融して得られる電融マグ
ネシアクリンカーを、さらには、焼結マグネシアクリン
カーと電融マグネシアクリンカーの混合物等を所定のサ
イズに粉砕し、篩い分けしたものであって、MgOの純度
が80重量%以上のものが不定形耐火物に使用した際、耐
食性に優れる面で好ましく、SiO2やTiO2などの不純物が
少ないものが好ましく、MgOの純度が95重量%以上であ
り、CaOの含有率が2重量%以下、SiO2の含有率が0.5重
量%以下、及びB2O3の含有率が0.5重量%以下のマグネ
シアが、耐食性に優れる面から好ましい。具体的には、
溶融マグネシア、焼結マグネシア、天然マグネシア、及
び軽焼マグネシア等が使用可能であり、この他、スピネ
ルコーティングしたマグネシア、粒界にチタン酸マグネ
シウムを含有させたマグネシア、マグネシア粒子表面に
カルシウムアルミネートを生成させたマグネシア、塩基
性煉瓦に使用される、高純度、高嵩密度、及び粗大結晶
粒の特殊なマグネシア、並びに、耐熱スポーリング性を
向上させたマグネシア・ジルコニア等を粉砕した特殊な
マグネシアも使用可能である。マグネシアクリンカーに
おけるMgO/Al2O3モル比は、0.1/1〜1/1が好まし
く、0.2/1〜0.4/1が不定形耐火物に配合した際、耐
用性に優れる面からより好ましい。
【0072】マグネシアスピネル質骨材とは、水酸化マ
グネシウムや仮焼マグネシア等のMgO原料と、水酸化ア
ルミニウムや仮焼アルミナ等のAl2O3原料とを、所定の
割合になるように配合し、ロータリーキルン等の焼成装
置を用いて、約1,800〜1,900℃の温度で反応・焼成させ
たマグネシアスピネルクリンカーを、また、電気炉など
の溶融装置にて溶融したマグネシアスピネルクリンカー
を、さらには、これらの焼成したものと溶融したものを
混合したマグネシアスピネルクリンカー等を所定のサイ
ズに粉砕し、篩い分けしたものである。具体的には、溶
融マグネシアスピネルや焼結マグネシアスピネルなどが
挙げられる。
【0073】アルミナ質骨材とは、水酸化アルミニウム
や仮焼アルミナなどのAl2O3原料を、電気炉等の溶融装
置やロータリーキルン等の焼成装置で、溶融及び/又は
焼成したものを、所定のサイズに粉砕し、篩い分けした
ものであって、鉱物組成としては、α-Al2O3やβ-Al2O3
などと示される酸化アルミニウムであり、電融アルミ
ナ、溶融アルミナ、焼結アルミナ、仮焼アルミナ、及び
易焼結アルミナ等と呼ばれるものである。通常、Al2O3
を90重量%以上含有するα-Al2O3の使用が最も好まし
い。具体的には、溶融アルミナ、焼結アルミナ、軽焼ア
ルミナ、及び易焼結アルミナ等が挙げられる。また、ア
ルミナとジルコニアクリンカーとを溶融して得られる、
耐熱スポーリング性を向上させたアルミナ・ジルコニア
クリンカー等の使用も可能である。
【0074】カーボン質骨材としては、オイルピッチ、
タール、及び鱗状黒鉛等が挙げられる。
【0075】耐火骨材は各種の粒度を要求物性に応じて
配合するもので、耐火骨材の粒度は、通常、5〜3mm、
4〜1mm、3〜1mm、1mm下、200メッシュ下、及び325
メッシュ下等に分けられている。
【0076】本発明において、耐火骨材として、さら
に、粒径が微小の粉体である超微粉を使用することが可
能である。ここで、超微粉とは、粒径10μm以下の粒子
が80重量%以上の耐火性微粉末であって、平均粒子径が
1μm以下で、BET法による比表面積が10m2/g以上の
ものが、不定形耐火物に配合した際、流動性が確保で
き、高強度発現性を有するため好ましい。具体的には、
シリカヒューム、コロイダルシリカ、軽焼アルミナ、易
焼結アルミナ、非晶質シリカ、ジルコン、炭化珪素、窒
化珪素、酸化クロム、及び酸化チタン等の無機微粉が使
用可能であり、このうち、シリカヒューム、コロイダル
シリカ、及び易焼結アルミナの使用が好ましい。特に、
低セメントキャスタブルに使用するシリカヒュームは、
スラリーにした際のpHが分散性を左右することから重
要であって、弱酸性から酸性のものが特に可使時間が確
保できる面から好ましい。
【0077】本発明の耐火骨材の使用量は、施工場所に
よって適宜決定すべきものであり、特に限定されるもの
ではないが、不定形耐火物100重量部中、50〜99重量部
が好ましく、耐食性の面から、85〜90重量部がより好ま
しい。耐火骨材として超微粉を使用した低セメントキャ
スタブルでは、アルミナセメント2〜6重量部、耐火骨
材94〜98重量部、及びシリカヒューム5重量部以下とす
る配合が、著しく流動性と可使時間を確保できる面から
好ましい。
【0078】本発明の不定形耐火物の製造方法は特に限
定されるものではないが、通常の不定形耐火物の製造方
法に準じ、各構成原料を所定の割合になるように配合
し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウターミキ
サー、パン型ミキサー、及びオムニミキサー等の混合機
を用いて均一混合するか、あるいは、所定の割合で混練
り施工する際、混練り機に直接秤込むことも可能であ
る。
【0079】さらに、本発明の不定形耐火物には、硬化
体を乾燥する際に生じやすい爆裂を防止する目的で、金
属アルミニウムやシリコン合金などの金属粉末、ビニル
繊維やポリプロピレンなどの有機繊維、窒素含有ガス生
成物、及びデキストリン等の爆裂防止剤を必要に応じて
配合することも可能である。爆裂防止剤の使用量は目的
とする耐爆裂性に応じて適宜決定すべきもので一義的に
決定することはできないが、一般的には、不定形耐火物
100重量部に対して、0.05〜5重量部配合することが可
能である。
【0080】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに説明す
る。
【0081】実施例1 CaO原料とAl2O3原料を配合し、電気炉にて溶融後、高圧
冷却エアーにより溶融物を急冷して、CA2とC12A7のクリ
ンカーを各々合成し、その鉱物組成と化学分析を測定し
た。結果を表1に示す。合成したクリンカーを表2に示
すように配合しアルミナセメント物質とし、このアルミ
ナセメント物質75重量部とα-Al2O3イ25重量部を混合
し、粉砕時間によってブレーン値を調整して約4,800cm2
/gになるようにバッチ式ボールミルで粉砕し、本発明の
アルミナセメントを製造した。製造したアルミナセメン
ト物質からなるアルミナセメント15重量部と、粒度5〜
3mmの耐火骨材(骨材)が40重量%、粒度3〜1mmの骨
材(骨材)が45重量%、1mm下の骨材(骨材)が10重量
%、及び200メッシュ下の骨材(骨材)が5重量%であ
る耐火骨材a85重量部とを配合して不定形耐火物を製造
し、この不定形耐火物100重量部に対して、水10.2重量
部を加え、ミキサーで5分間混練り後、流動性としてフ
ロー値、可使時間、硬化時間、常温強度として養生強度
と乾燥強度、及び高温強度として焼成強度をそれぞれ測
定した。測定は全て20℃恒温室内で行った。結果を表2
に併記する。
【0082】<使用材料> CaO原料 :市販生石灰 Al2O3原料 :バイヤー法により製造された高純度アルミ
ナ、市販品、Al2O3純度99重量%、平均粒子径70μm α-Al2O3イ:市販アルミナ、BET比表面積0.6m2/g、
平均粒子径60μm、可溶性Na2O0.03重量%、可溶性SO
30.001重量%、及び形状係数16.5 耐火骨材a:焼結アルミナ、市販品
【0083】<測定方法> 鉱物組成 :X線回折装置により、Zevine法により定量
した鉱物組成量 化学分析 :JIS R 2522に準じて測定 フロー値 :流動性の評価、20℃恒温室内に混練り物を
所定時間放置した後、15回タッピングして測定 可使時間 :20℃恒温室内に混練り物をナイロン袋に移
し取り、触指にて硬化するまでに要した時間 硬化時間 :温度記録計を用いて、20℃恒温室内に混練
り物を放置した際の注水から発熱温度が最大に到達する
までの時間 養生強度 :常温強度、4×4×16cmの型枠に混練り物
を入れ、20℃恒温室内で24時間養生後の圧縮強度 乾燥強度 :常温強度、24時間養生後、さらに、110℃
にて24時間乾燥後の圧縮強度 焼成強度 :高温強度、110℃で乾燥後、シリコニット
電気炉にいれ、1,000℃で2時間焼成した後、室温まで
放冷したものの圧縮強度
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】表2に示すように、本発明の不定形耐火物
は、流動性が良好で、可使時間も長く、高温での強度も
高いものであった。
【0087】実施例2 CA270重量部とC12A730重量部を混合してアルミナセメン
ト物質とし、アルミナセメント物質とα-Al2O3の配合量
を表3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に
行った。結果を表3に併記する。また、恒温室温度を5
℃として同様に行った。結果を表3に併記する。比較の
ため、α-Al2O3の製造条件を変更し、BET比表面積、
平均粒子径、可溶性Na2O、可溶性SO3、及び形状係数の
異なるα-Al2O3ロを用い、同様に行った。結果を表3に
併記する。
【0088】<使用材料> α-Al2O3ロ:市販アルミナ、BET比表面積1.0m2/g、
平均粒子径55μm、可溶性Na2O0.03重量%、可溶性SO
30.002重量%、及び形状係数16.0
【0089】
【表3】
【0090】表3に示すように、本発明のアルミナセメ
ントを使用すると、流動性や可使時間などの物性が良好
である。
【0091】実施例3 CA270重量部とC12A730重量部からなるアルミナセメント
物質75重量部と、可溶性SO3が0.01重量%未満で表4に
示す物性のα-Al2O325重量部を配合したこと以外は実施
例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0092】
【表4】
【0093】表4に示すように、α-Al2O3のBET比表
面積が大きくなると、焼成強度は高くなるものの、フロ
ー値が小さくなり、可使時間も短くなる傾向がある。
【0094】実施例4 BET比表面積が0.6m2/g、可溶性Na2Oが0.04重量%、
及び可溶性SO3が0.01重量%未満で、表5に示す平均粒
子径のα-Al2O3を配合したこと以外は実施例3と同様に
行った。結果を表5に併記する。
【0095】
【表5】
【0096】表5に示すように、平均粒子径が40〜90μ
mのα-Al2O3を使用すると、流動性や可使時間の確保に
有効である。
【0097】実施例5 BET比表面積が0.7m2/g、平均粒子径が62μmで、表
6に示す可溶性Na2Oと可溶性SO3のα-Al2O3を配合した
こと以外は実施例3と同様に行った。結果を表6に併記
する。
【0098】
【表6】
【0099】表6に示すように、α-Al2O3中の可溶性Na
2O量が多くなるとフロー値が低下し、可使時間が短くな
る傾向がある。また、可溶性SO3が多くなると可使時間
や硬化時間が長くなる傾向がある。
【0100】実施例6 BET比表面積が0.6m2/g、平均粒子径が60μm、可溶
性Na2Oが0.03重量%、及び可溶性SO3が0.01重量%未満
で、表7に示す形状係数のα-Al2O3を配合したこと以外
は実施例3と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0101】
【表7】
【0102】表7に示すように、α-Al2O3の形状係数が
小さくなり、α結晶が球形に近づくにつれフロー値が向
上する傾向がある。
【0103】実施例7 CA270重量部とC12A730重量部からなるアルミナセメント
物質75重量部とα-Al2O3イ25重量部を配合してアルミナ
セメントを調製した。調製したアルミナセメントと、耐
火骨材bの骨材、骨材、及び骨材と耐火骨材cの
骨材を用い、骨材40重量%、骨材45重量%、骨材
10重量%、及び骨材5重量%からなる耐火骨材を表
8に示すように配合して、千代田技研工業社製オムニミ
キサーで20分間混合して不定形耐火物を製造し、この不
定形耐火物100重量部に対して、水10.0重量部を加え、3
0℃恒温室内でミキサーで混練したこと以外は実施例1
と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0104】<使用材料> 耐火骨材b:電融アルミナ、市販品 耐火骨材c:仮焼アルミナ、市販品
【0105】
【表8】
【0106】表8に示すように、本発明のアルミナセメ
ントを使用した不定形耐火物は流動性が優れ、長い可使
時間が確保でき、高強度な硬化体を得ることができる。
【0107】実施例8 調製したアルミナセメント10重量部と、表9に示す種類
の骨材40重量%、骨材)45重量%、骨材10重量
%、及び骨材5重量%からなる耐火骨材90重量部を配
合したこと以外は実施例7と同様に行った。結果を表9
に併記する。
【0108】<使用材料> 耐火骨材d:焼結マグネシアスピネル、市販品 耐火骨材e:焼結マグネシア、市販品
【0109】
【表9】
【0110】表9に示すように、本発明の不定形耐火物
は、従来の市販アルミナセメントを配合したものに比べ
て、流動性が良好で、可使時間も長く、硬化時間や圧縮
強度とも問題のないものであった。
【0111】実施例9 不定形耐火物100重量部に対して、表10に示す種類の
添加剤0.05重量部を配合したこと以外は実施例7と同様
に行った。結果を表10に併記する。
【0112】<使用材料> 添加剤A :クエン酸ナトリウム、市販品 添加剤B :ホウ酸、市販品 添加剤C :ポリアクリル酸ナトリウム、市販品
【0113】
【表10】
【0114】表10に示すように、本発明の不定形耐火
物に添加剤を併用することで、フロー値や可使時間など
の物性を調整することができる。
【0115】実施例10 CA270重量部とC12A730重量部からなるアルミナセメント
物質75重量部とα-Al2O3イ25重量部を配合してバッチ式
ボールミルの粉砕時間を変えて、表11に示すようにブ
レーン値の異なるアルミナセメントを調製した。製造し
たアルミナセメント15重量部と、骨材40重量%、骨材
が45重量%、骨材が10重量%、及び骨材が5重量
%の耐火骨材a85重量部とを配合して不定形耐火物を製
造したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1
1に併記する。
【0116】
【表11】
【0117】表11に示すように、アルミナセメントの
ブレーン値が著しく小さいか又は著しく大きくなると、
フロー値が低下し、可使時間が短くなる傾向がある。
【0118】
【発明の効果】本発明のアルミナセメント、及びそれを
用いた不定形耐火物は、従来品にない高流動性と可使時
間を確保できるものであり、硬化性と強度発現性とも問
題のないものであった。本発明品を耐火物分野に使用し
た場合、ポンプ施工や無振動施工などの省力化施工方法
に対応が可能であり、従来品に見られた施工途中での混
練り物の硬化トラブの発生が防止できる。また、化学プ
ラントのライニング材料や流動性と可使時間を重要視す
るような土木建築材料としても使用可能である。さらに
は、水硬性セラミックス、触媒材料、及び耐食材料等へ
も広く適応可能である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉱物組成がCaO・2Al2O350〜90重量部と12
    CaO・7Al2O350〜10重量部からなるアルミナセメント物質
    50〜95重量部と、BET比表面積が0.4〜0.8m2/gである
    α-Al2O35〜50重量部とを含有してなるアルミナセメン
    ト。
  2. 【請求項2】 α-Al2O3のBET比表面積が0.4〜0.8m2
    /gで、平均粒子径が40〜90μmである請求項1記載のア
    ルミナセメント。
  3. 【請求項3】 α-Al2O3中の可溶性Na2Oが0.1重量%以
    下、可溶性SO30.05重量%以下である請求項1又は2記
    載のアルミナセメント。
  4. 【請求項4】 アルミナセメント物質とα-Al2O3とを混
    合粉砕してなる請求項1〜3のうちの1項記載のアルミ
    ナセメント。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のうちの1項記載のアルミ
    ナセメントと耐火骨材とを配合してなる不定形耐火物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008001566A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Denki Kagaku Kogyo Kk アルミナセメント、アルミナセメント組成物及びそれを用いた不定形耐火物。
WO2010044531A2 (en) * 2008-10-13 2010-04-22 Korea Research Institute Of Chemical Technology Metal oxide catalysts for etherification, method for its preparation thereof, and method for the production of linear polyglycerol using the same

Cited By (3)

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WO2010044531A2 (en) * 2008-10-13 2010-04-22 Korea Research Institute Of Chemical Technology Metal oxide catalysts for etherification, method for its preparation thereof, and method for the production of linear polyglycerol using the same
WO2010044531A3 (en) * 2008-10-13 2010-06-17 Korea Research Institute Of Chemical Technology Metal oxide catalysts for etherification, method for its preparation thereof, and method for the production of linear polyglycerol using the same

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