JPH09173075A - アンチセンス核酸の調製方法 - Google Patents

アンチセンス核酸の調製方法

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JPH09173075A
JPH09173075A JP7350459A JP35045995A JPH09173075A JP H09173075 A JPH09173075 A JP H09173075A JP 7350459 A JP7350459 A JP 7350459A JP 35045995 A JP35045995 A JP 35045995A JP H09173075 A JPH09173075 A JP H09173075A
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Japan
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nucleic acid
antisense nucleic
mrna
rna
dna
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JP7350459A
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Yoko Matsuda
陽子 松田
Kiyoshi Uchida
潔 内多
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Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アンチセンス核酸法に有効に利用されるアン
チセンス核酸の調製方法の提供。 【解決手段】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
はRNAと、当該DNA又はRNAのアンチセンス鎖の
塩基配列の一部分と同一の塩基配列を有する複数種のオ
リゴ核酸とを、ハイブリダイズ(対合)させることにより
アンチセンス核酸の標的部位を確定し、該標的部位にハ
イブリダイズ(対合)する核酸をアンチセンス核酸とす
る。 【効果】 本発明によれば、目的とする蛋白質をコード
するDNA又はRNA上におけるアンチセンス核酸標的
部位を効率よく確定することができ、治療剤、診断剤、
研究試薬の開発に有用なアンチセンス核酸効果に優れた
アンチセンス核酸を容易に調製し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンチセンス核酸
法で利用される有効なアンチセンス核酸の調製方法に関
するものであり、生化学・分子生物学、特に遺伝子発現
を制御する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アンチセンス核酸法は、目的の遺伝子と
ハイブリダイズ(対合)する配列を持つアンチセンス核酸
を用いて、その遺伝子による蛋白質の発現を抑止する方
法であり、医薬や遺伝子組み換え植物の調製等に利用さ
れている。アンチセンス核酸法においては、蛋白質の発
現を抑止する効果、即ち、アンチセンス核酸効果のあ
る、目的の遺伝子とハイブリダイズ(対合)する塩基配列
を持つアンチセンス核酸を調製することがまず必要であ
るが、そのような塩基配列(以下標的又は標的部位とも
いう)を見いだすための確立された方法は未だ見出され
ていない。即ち、翻訳開始部位やその上流の非翻訳部位
を標的として調製する方法が提案されているが(K. R. B
lake等, Biochemistry 24巻 6132-6138頁 1985年; E. U
hlmann, A. Peyman, Chemical Reviews 90巻 543-584頁
1990年)、提案された方法により選択されたアンチセン
ス核酸は、常に蛋白質の発現を有効に阻害するものとは
限らず(例えば、R. D. Ricker, A. Kaji, FEBS Letters
309巻 363-3 70頁1992年)、又、計算をもとにアンチセ
ンス核酸標的部位を予測する方法も提案されているが、
この方法で選択されたものも必ずしも常に有効なもので
はない(R.A. Stull等, Nucleic Acids Research 20巻 3
501-3508 1992年)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アンチセン
ス核酸法において有効に利用し得るアンチセンス核酸
を、即ち、目的とする蛋白質をコードするDNA又はR
NAに対してアンチセンス核酸効果のある塩基配列を持
つアンチセンス核酸を、当該DNA又はRNAの特定の
領域において、アンチセンス核酸効果が発揮され易い箇
所、即ち、アンチセンス核酸の標的部位を効率的に見い
だすことにより、容易に調製する方法を提供することを
目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
に基づいて鋭意研究を行った結果、目的とする蛋白質を
コードするDNA又はRNAと、特に目的とする蛋白質
をコードする mRNA又は mRNA前駆体の全部又は一
部と複数種の当該DNA又はRNAのアンチセンス鎖の
塩基配列の一部分と同一のの塩基配列を有するオリゴ核
酸とをハイブリダイズ(対合)させることにより、更には
ハイブリダイズした箇所を核酸分解能を有する物質を用
いて分解させることにより、アンチセンス核酸の標的部
位が効率的に判別出来ること及びそれに基づいてアンチ
センス核酸が容易に調製出来ることを見い出し、本発明
を完成したのである。即ち、本発明は目的とする蛋白質
をコードするDNA又はRNAと、当該DNA又はRN
Aのアンチセンス鎖の塩基配列の一部分と同一の塩基配
列を有する複数種のオリゴ核酸とを、ハイブリダイズ
(対合)させることにより、アンチセンス核酸の標的部位
を確定し、該標的部位に基づき当該DNA又はRNAと
ハイブリダイズ(対合)するアンチセンス核酸を調製する
ことを特徴とするアンチセンス核酸の調製方法に関する
ものであり、更には、目的とする蛋白質をコードするD
NA又はRNAと、当該DNA又はRNAのアンチセン
ス鎖の塩基配列の一部分と同一の塩基配列を有する複数
種のオリゴ核酸とを、ハイブリダイズ(対合)させると共
に核酸分解能を有する物質でハイブリダイズ(対合)した
箇所を分解させることによりアンチセンス核酸の標的部
位を確定し、該標的部位に基づき当該DNA又はRNA
とハイブリダイズ(対合)するアンチセンス核酸を調製す
ることを特徴とするアンチセンス核酸の調製方法に関す
るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 ○ DNA又はRNAのアンチセンス鎖の塩基配列の一
部分の塩基配列を有するオリゴ核酸 本発明において、目的とする蛋白質をコードするDNA
又はRNAに対する、特には特定の塩基配列領域に対す
るアンチセンス核酸を効率的に探索するために、当該D
NA又はRNAのアンチセンス鎖の塩基配列、又はその
特定領域の塩基配列の一部分と同一のの塩基配列を有す
る複数種のオリゴ核酸を、好ましくは、特定の塩基配列
領域に対する該領域を適切に網羅する一群のオリゴ核酸
を用いるのであり、この様に複数種のオリゴ核酸の混合
物の使用によりアンチセンス核酸の標的部位が容易に、
又、効率的に、探索できるということは、本発明者らが
初めて見いだしたことである。ここでいう、目的とする
蛋白質をコードするDNA又はRNAの特定の塩基配列
領域を適切に網羅する一群のオリゴ核酸とは、該領域の
アンチセンス鎖の一部に対応する塩基配列を有するオリ
ゴ核酸からなる複数種の混合物であって、該オリゴ核酸
は4乃至30量体、好ましくは6乃至20量体からなる
天然型若しくはホスホロチオエート型のオリゴデオキシ
リボヌクレオチドであって、DNA又はRNAの特定の
塩基配列に副って1乃至30、好ましくは1乃至20塩
基ずつずらして得られる塩基配列に基づいて合成したオ
リゴ核酸の混合物をいう。又、目的とする蛋白質をコー
ドするDNA又はRNAのアンチセンス鎖の塩基配列の
一部分と同一の塩基配列を有するオリゴ核酸として、該
核酸のDNA又はRNAへのハイブリダイズ能を増強さ
せる目的で、アンチセンス鎖の塩基配列から導いた塩基
配列からなるオリゴ核酸のいずれか一方の端、両方の
端、又は配列中に、該目的にかなう化合物を結合させた
ものを使用することができる。この様な化合物として、
例えば、塩基部分にヒポキサンチンを含有するオリゴ核
酸をあげることができる(Takahashi. Y. 等、 Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 82巻 1931-1935頁 1985年)。この様
なハイブリダイズ能を向上させたオリゴ核酸を用いるこ
とで、例えば、相補部分が2乃至5塩基であるオリゴ核
酸であっても、アンチセンス核酸の標的部位を探索し、
有効なアンチセンス核酸の取得を可能にする。目的とす
る蛋白質をコードするDNA又はRNAの特定の塩基配
列領域を適切に網羅する一群のオリゴ核酸を構成する各
オリゴ核酸は、以下の様な調製方法で調製することが可
能であり、本発明においては、以下の様にして調製され
たもの及び市販されているもの等いずれも使用可能であ
る。
【0006】オリゴ核酸の調製方法 天然型及びホスホロチオエート型のオリゴ核酸であるオ
リゴデオキシリボヌクレオチドは、例えば、ABI(Applie
d Biosystems Inc.)社製DNA合成機、DNA/RNA
合成機又はパーセプティブ社製核酸自動合成機を用い
て、ホスホロアミダイト法(ABI社の手順書又はF. Eckst
ein, Oligonucleotides and Analogues: APractical Ap
proach, IRL Press, 1991年参照) により行うことがで
きる。又、天然のオリゴデオキシリボヌクレオチドにつ
いては、チオフォスファイト法を用い、核酸自動合成機
で合成することもできる( 特公平6-84396,米国特許 4,8
08,708参照) 。得られた天然型のオリゴデオキシリボヌ
クレオチド又はホスホロチオエート型のオリゴデオキシ
ヌクレオチドの粗製物は、通常の精製方法、例えば、逆
相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー
及びゲル濾過クロマトグラフィーの原理に基づく高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界クロマトグラフィ
ー等種々のクロマトグラフィー、エタノール沈澱法及び
電気泳動法などを用いて精製される。このほか、逆相ク
ロマトグラフィーの原理に基づいて製造されたカートリ
ッジ[例えば、tC18を充填剤とするセップパックプラス
(ロングボディ/ENV);パーセプティブ社製]等を用いても
精製される。なお、オリゴデオキシリボヌクレオチド及
びホスホロチオエート型のオリゴデオキシリボヌクレオ
チドの純度は、HPLCやキャピラリー電気泳動法による分
析により調べることができる。アンチセンス核酸の標的
部位の探索を行う際に、どの程度の鎖長のオリゴ核酸を
用いるかは、充分に考慮すべき点である。即ち、オリゴ
核酸の長さがある程度以上でないとmRNA又はmRNA
前駆体等とのハイブリッドが形成されない恐れがあるた
め、アンチセンス核酸の標的部位の探索のために用いら
れるオリゴ核酸としては、その鎖長が4量体以上である
ものが好ましい。これは、RNA/DNAの塩基対が4
以上であれば、RNase Hの基質となりうるからであり
(H. Don is-Keller, Nucleic Acids Research 7巻 179-
192頁, 1979年)、さらに、本発明者等が先に6量体のラ
ンダムな塩基配列を有する天然型若しくはホスホロチオ
エート型のオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いた研
究から明らかにした様に、これらがmRNAにハイブリ
ダイズ(対合)するからである(松田陽子及び内多潔「アン
チセンス核酸の調製方法」平成7年10月3日特許出
願)。オリゴ核酸の鎖長は、基本的には長い程、mRNA
又はmRNA前駆体とのハイブリッド形成能が増加する
ので好ましい。これは、最近接塩基対モデルを用いて実
験データを解析した結果からも推論出来ることである
(杉本直己 「蛋白質核酸酵素」 臨時増刊号(40 巻10号)
「核酸化学の新展開−新しい機能性高分子を求めて」(松
田、大塚、上杉及び三浦編) 1548-1557頁 共立出版 199
5年及び杉本直己 特願平7-124852 1995年)。即ち、上記
結果に基づけば、ハイブリッドの長さが1塩基対伸びる
ことにより、安定化エネルギーが平均で1.5kcal/mol
増えることになり、これはハイブリッド形成の定数が3
7℃において11倍になることに相当する。即ち、これ
はオリゴ核酸の塩基配列が長くなればなる程、mRNA
又はmRNA前駆体とのハイブリッド形成は有利になる
ことを示すものである 。しかし、長くなりすぎると、
オリゴ核酸が分子内で二次構造を形成する可能性やオリ
ゴ核酸同士で閉鎖構造を形成する可能性が生じ、オリゴ
核酸としての機能が低下することが予想でき、さらに不
必要にオリゴ核酸の鎖長を長くすることに合成的及び経
済的に見て格別の利点はないため、通常オリゴ核酸とし
て用いられる20乃至30量体が、本発明においても実
用的な長さの限度である。
【0007】○ 目的とする蛋白質をコードするDNA
又はRNA 本発明に用いられる目的とする蛋白質をコードするDN
A又はRNA、特に本発明に好ましいmRNA又はmRN
A前駆体は以下の手順で調製精製し、更には標識化して
使用する。mRNA又はmRNA前駆体等の調製 目的とする蛋白質をコードするmRNA又はmRNA前駆
体等は、当該遺伝子、即ち、cDNA、ゲノムDNA、m
RNA又はmRNA前駆体の塩基配列を文献等の情報に
より又は実験を行うことにより調べ、直接又は鋳型DN
A又はプラスミドの調製を経る等の方法により調製する
ことができる(J. Sambrook, E. F. Fritsch, T. Maniat
is, Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版,
Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989年)。mR
NA又はmRNA前駆体等の直接調製法としては、得ら
れた塩基配列に基づいて自動合成機などを用いて化学合
成する方法がある。鋳型DNAを基にmRNA又はmRN
A前駆体等を調製する方法には、該mRNA又はmRNA
前駆体等に対応する塩基配列を持ち、かつ必要に応じそ
の上流にDNA依存性RNAポリメラーゼが認識する部
位、例えば、SP6、T7又はT3部位などに対応する塩基配
列を持つ鋳型DNAを化学的に合成し、該DNAを鋳型
とし、該部位を認識するDNA依存性RNAポリメラー
ゼを用いて、G、A、U、Cの4種類のモノヌクレオチ
ド三リン酸をそれぞれのポリメラーゼに適した条件下で
順次結合させ合成する方法がある。プラスミドを経てm
RNA又はmRNA前駆体等を製造する方法は、特に限
定されないが、例えば、次の様に行うことができる。即
ち、目的とする構造遺伝子はクローニングにより又はク
ローニングにより得た該遺伝子を組み込んだプラスミド
から調製する。次いで、DNA依存性RNAポリメラー
ゼが認識する部位を上流に持つ、任意の構造遺伝子のプ
ラスミドを用いて、任意の構造遺伝子の上流と下流とに
存在する異種又は同種の制限酵素部位を、それぞれに対
する制限酵素で切断する。なお、これらの制限酵素部位
は、目的とする構造遺伝子のそれぞれ上流及び下流に存
在する制限酵素部位と一致していることが必要である。
そして、クローニング等により得た該構造遺伝子を組み
込んだDNA又はプラスミドについても同一の制限酵素
で切断し、これをプラスミドから置換すべき構造遺伝子
を除去した部分にDNAリガーゼの作用を利用して結合
させる。クローニング等により得た該構造遺伝子を組み
込んだDNA又はプラスミドについて、対応する制限酵
素部位がない場合は、化学合成により得られたオリゴデ
オキシヌクレオチドを該構造遺伝子にリガーゼ等で結合
させ、目的のものを得ることができる。この様にして得
たプラスミドを、例えば大腸菌等に導入し、寒天培地等
に蒔いて培養し、コロニーを形成させる。目的の遺伝子
が確かに含まれているか否かをポリメラーゼチェーン反
応(PCR)等を利用して確認する。目的に合致したコロニ
ーに ついては、必要に応じ、それを更に大腸菌等の増
殖作用を利用して大量に複製する。ここで、大腸菌とし
ては、例えば E. Coli JM109、E. Coli HB101、E. Col
iDH5等を用いることができる。次いで、大腸菌からプラ
スミドを抽出精製し、目的のプラスミドを入手する。そ
の方法は特に限定されないが、例えば、次の様に行うこ
とができる。即ち、まず、目的とするプラスミドを含有
する大腸菌等の細胞を遠心分離操作により集める。つい
で、該細胞にGTE溶液を加えて懸濁し、リゾチーム溶液
及び水酸化ナトリウム−ドデシル硫酸ナトリウム混合溶
液を用いて細胞を溶解させる。酢酸カリウムを加えて中
和し、不溶物質を遠心分離操作で除去する。蛋白質を除
去するため、フェノール−クロロホルム−イソアミルア
ルコールの混合溶液を加えて振り混ぜる。遠心分離操作
を行って上層(水相)を取り出し、水相と等量の2-プロパ
ノールを加えて撹拌し、室温でしばらく置く。これを遠
心分離して得られたものが目的のプラスミドを含有す
る。次いで、これを適量のTEに溶かし、それを塩化セシ
ウムの密度勾配分離用液に混ぜ、超遠心分離操作により
分離する。塩化セシウムは、プラスミドをTEに対して透
析することにより除去することができる。この様にして
得たプラスミドは、アガロースゲル電気泳動法、ポリア
クリルアミドゲル電気泳動法、パルスフィールドゲル電
気泳動法、ゲル濾過クロマトグラフィー法、沈降速度
法、光散乱法等によって分子量を決定することができ
る。更に、目的の蛋白質をコードする塩基配列が含まれ
ていることは、Sanger法又はMaxam-Gilbert法を用いて
調べることができる。この様にして得られたプラスミド
を用いて目的の蛋白質の全て又は一部をコードするmR
NA又はmRNA前駆体等を大量に調製する。このと
き、mRNA又はmRNA前駆体等を大量に調製するため
には、Promega社製のRiboMAXTM Large Scale RNA Produ
ction Systems のキット等を用いることができる。実験
方法は、同キットに添付の方法に準じて行うことができ
る。なお、必要に応じて、プラスミドの適当な部位を制
限酵素等で切断し、直鎖状にして用いる。調製した該 m
RNA又は mRNA前駆体等の濃度は紫外領域での吸収
スペクトルから求めることができる。又、アガロースゲ
ル電気泳動又はポリアクリルアミドゲル電気泳動を行
い、それをエチジウムブロマイド溶液に浸し、その後ゲ
ルに紫外光を照射しつつ、目的物のバンドの光り方の程
度を、濃度及び分子量が既知のRNAと比較することに
よっても求めることができる。
【0008】mRNA又は mRNA前駆体等の末端標識
目的とする蛋白質をコードする mRNA又は mRNA前
駆体の全部又は一部については、その一端をラジオアイ
ソトープや蛍光物質等で標識して用いるのが好ましい。
標識方法として特に限定されたものはないが、5'末端を
標識するには、例えば、まず、アルカリフォスファター
ゼでRNAの5'末端のリン酸基を除去し、次にT4ポリヌ
クレオチドキナーゼで[γ-32P]ATPのγ位のリン酸基を
RNAの5'位水酸基に転移させる操作を行う(J. Sambro
ok, E. F. Fritsch, T. Maniatis,Molecular Cloning :
A Laboratory Manual 第2版, Cold Spring Harbor Lab
oratory Press, 1989年)。なお、操作途中にRNaseが混
在する可能性が除去できないときは、リボヌクレオチド
阻害剤の存在下で反応を行う。次に、この脱リン酸化し
たmRNA又はmRNA前駆体等を用い、5'末端を標識化
する。その際、操作途中にRNaseが混在する可能性が除
去できないため、リボヌクレアーゼ阻害剤の存在下で反
応を行う。又、高次構造をとるRNAの標識化を効率よ
く行うために、ジメチルスルフォキシド(DMSO)を適当
に、例えば最終濃度7.5〜15%となるように添加す
る。なお、反応液における[γ-32P]ATPの代わりに[γ-
33P]ATP等を用いることもできる。3'末端を標識する場
合は、例えば次の様に行うことができる(添田、久原、
高岩共著, 核酸の塩基配列決定法, 121-122頁, 学会出
版センター, 1987年)。即ち、脱リン酸化した3'末端を
持つmRNA又はmRNA前駆体等に[5'-32P]pNp(ここ
で、NはA、G、C、T、U等のヌクレオシドを表し、
Nの前のpはヌクレオシドの5'位にリン酸が結合してい
ることを、又Nの後のpはヌクレオシドの3'位にリン酸
が結合していることを示す。ここで5'位のリン酸はリン
として放射性同位元素である32Pを含む。32Pにかわる
ものとして、33P等、T4RNAリガーゼの基質となりう
るものならば他の放射性同位元素でも良い)をT4RNA
リガーゼを用いて結合させることにより、3'末端が標識
されたmRNA又はmRNA前駆体等を得ることができ
る。また、上に述べた5'末端標識および3'末端標識にお
いて、放射性同位元素を利用する方法の他に蛍光色素を
利用することもできる。
【0009】末端標識化mRNA又はmRNA前駆体等の
精製 上述の操作で得られた末端標識化mRNA又はmRNA前
駆体等には、目的とする完全長のmRNA又はmRNA前
駆体等以外に実験操作途中に生じた様々な短鎖のmRN
A又はmRNA前駆体等で標識化されたものも混在して
いる場合がある。従って、本発明の目的を効率良く達成
するために、末端を標識した完全長又は所望の長さのm
RNA又はmRNA前駆体のみを用いたいときには、分
離・回収して精製する必要がある。分離は、末端標識化
mRNA又はmRNA前駆体等を熱変性し、それをアガロ
ースゲル電気泳動にかけて行い、RNAの検出は泳動終
了後のゲルへの紫外線の照射により行う。末端標識化m
RNA又はmRNA前駆体等の濃度は同時に泳動を行っ
た濃度既知のRNAの濃度を基準に計算する。次に、目
的のRNAを含むバンドのみを切り出してRNAを回収
し、それを精製する。これら一連の操作を行う方法は特
に限定されないが、例えばThe RNaidR Kit(BIO101社製)
を用い、指定された方法で精製する方法が採用される。
【0010】探索のための反応条件の検討 探索のための実験条件としては、実験に用いるオリゴ核
酸、標識化したmRNA又はmRNA前駆体等及びRNas
e Hなどの核酸分解能を有する化合物が安定に存在する
条件が採用されるが、生物体の通常の条件下においてア
ンチセンス核酸標的部位を探索するというためには、可
能な限り生物体の存在し得る条件に合わせた条件下で行
うのが望ましい。即ち、一般的には、温度37℃程度、
イオン強度0.15M程度、圧力1気圧程度の条件で行わ
れる。探索のために用いるオリゴ核酸の鎖長は、前記し
た様に、4量体以上が好ましく、さらに好ましくは6量
体以上である。鎖長が長くなる程、mRNA又はmRNA
前駆体とのハイブリッド形成能が増加するので本発明に
とり好ましいが、同時に自己構造をとる可能性も高くな
るので不必要に長くすることも避けるのがよく、通常ア
ンチセンス核酸として用いられる20乃至30量体が実
用的な長さである。用いる各オリゴ核酸の濃度は、たと
えば20量体を用いてRNase Hを0.06ユニット(U)
/μlとした場合は、1乃至500pMで行うことができ、
好ましい範囲は10乃至50pMである。反応は、例えば
37℃で1分から180分程度行わせ、その間の反応の
経時変化を追跡し、ハイブリダイズ(対合)と切断反応の
進行を観察する。反応に用いるオリゴ核酸の鎖長が短い
場合には、核酸濃度を増加させる、反応時間を長くす
る、又はRNase Hの量を増加させる等の条件変更を行
う。反応が終了した該反応液には変性ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動用の色素入り泳動用緩衝液を加え、95
℃で5分間熱変性させ、その後直ちに氷中に移し、そこ
で3分間保つ。これを変性ポリアクリルアミドゲル電気
泳動にかける。泳動は、たとえば定電圧(50V/cm程度)
下で約1時間行う。その後、変性ポリアクリルアミドゲ
ルを固定化してオートラジオグラフィーを行うか蛍光を
調べ、もとのmRNA又はmRNA前駆体等以外の断片の
生成の有無について調べる。更に、mRNA又はmRNA
前駆体にオリゴ核酸混合物が結合している部位を特異的
に検出するために、例えば分子量が既知のRNA若しく
はDNA標準物質を用いるか、RNase Hなどの核酸分
解能を有する物質で該部位で切断されたRNAを調製す
る。そして、該部位で切断されていることをポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動法などの分析化学的手法により検
出する。
【0011】探索結果に基づくアンチセンス核酸標的部
位の確定 以上の結果から、該mRNA又はmRNA前駆体等上にお
ける、アンチセンス核酸の標的部位が確定できる。即
ち、切断された断片の大きさから、どの部位で切断が起
こっているかがわかる。特に、反応の初期に見られる切
断の断片は、アンチセンス核酸の標的部位を確定するの
に有力な手がかりを与える。これらの結果をもとに、切
断部位を含むその近傍の部位を、アンチセンス核酸の標
的部位として確定でき、さらに、該部位を含むアンチセ
ンス鎖を有する核酸を有効なアンチセンス核酸として確
定できる。
【0012】アンチセンス核酸効果の確認 確定したアンチセンス核酸標的部位を含むアンチセンス
核酸が、本発明が目的とするアンチセンス核酸であり、
当該アンチセンス核酸のアンチセンス核酸としての効果
の確認は、目的とする蛋白質をコードする遺伝子を含む
プラスミド又はDNAを用い、該アンチセンス核酸の存
在下、無細胞転写翻訳系において、目的とする蛋白質の
発現量を調べることにより行うことができる。又、目的
とする蛋白質をコードするmRNAを用い、当該アンチ
センス核酸を共存させ、目的とする蛋白質の発現量を調
べることにより行うこともできる。転写翻訳系及び翻訳
系としては、目的とする蛋白質を産生するものならばい
ずれも利用することができ、兎網状赤血球溶解物由来の
転写翻訳系及び翻訳系並びに小麦胚由来の転写翻訳系及
び翻訳系等を利用することができる。これらの転写翻訳
系及び翻訳系においては、たとえば、L-35S-メチオニ
ン、L-35S-システイン及びL-3H-スレオニンなどの放射
性同位元素で標識したアミノ酸を加え、その蛋白質への
取り込みを指標に蛋白質の発現量を知ることができる。
ここで、アンチセンス核酸効果、即ち、目的とする蛋白
質に対する発現阻害効果を高めるためにRNA分解酵素
の一つであるRNase Hを加えることができる。RNas
e Hは、RNAが、その塩基配列に相補的なオリゴデオ
キシリボヌクレオチドと水素結合を介して2本鎖を形成
したとき、RNAをその2本鎖形成部分で切断する酵素
である(H. Stein, P. Hausen, Science 166巻 393-395
頁, 1969年;P. Hausen, H. Stein, European Journal
of Biochemistry, 14巻 278-283頁, 1970年)。この酵素
を共存させることにより、その遺伝子がコードする蛋白
質の産生阻害がいっそう確実に行われるようになる。上
述のような無細胞系のかわりに、細胞系において、該標
的部位に相補的な塩基配列を持つアンチセンス核酸を添
加し、目的とする蛋白質の発現を調べることもできる。
そのような細胞系としては、目的とする蛋白質を発現す
るものが利用できる。上述の転写翻訳系又は翻訳系で目
的とする蛋白質の生成を確認する方法としては、目的と
する蛋白質であることを確実に判明する方法を任意に選
択すればよく、その代表例として、以下の2つを挙げる
ことができる。第一の方法として、目的とする蛋白質に
対する抗体を用いて確認する方法、例えばサンドイッチ
方式の酵素免疫測定法(例えばE. Harlow, D. Lane, Ant
ibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor L
aboratory, 1988年参照)が挙げられる。この方法は一般
によく知られた方法であり、具体的には、マイクロタイ
タープレートに上述の抗体を常法(例えば、上掲のE. Ha
rlow, D. Lane, Antibodies: ALaboratory Manual参照)
に従って固定化し、ついで、目的の蛋白質をコードする
遺伝子を転写翻訳系に加えて適当な温度に維持した後マ
イクロタイタープレートに入れて室温で放置し、洗浄す
る。しかる後に、西洋ワサビペルオキシダーゼ等で標識
した、目的の蛋白質に対する抗体を添加して室温で放置
した後に洗浄し、酵素である西洋ワサビペルオキシダー
ゼの基質として、例えば、オルト−ジアミノベンゼンを
含有する溶液を加え、適度に発色するまで室温で放置
後、吸光度を測定し、目的とする蛋白質の含有量を評価
する。なお、この方法は、細胞系において、該標的部位
に相補的な塩基配列を持つアンチセンス核酸を添加し、
目的とする蛋白質の発現を調べる際にも用いることがで
きる。第二の方法として、目的とする蛋白質が上述の転
写翻訳系又は翻訳系で生成することをラジオアイソトー
プでラベルしたアミノ酸の取り込みを指標にSDS-PAGE
(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動法)及びオートラジオグラフィーを用いて確認す
る方法がある。SDS-PAGEは、常法(例えば、Promega社の
転写翻訳系キットに添付されている手順書及び高木俊
夫, PAGEポリアクリルアミドゲル電気泳動法, 広川書
店, 1990年参照)に従えばよく、典型的な例は次のとお
りである。転写翻訳系又は翻訳系の反応混合液に2-メル
カプトエタノール含有のSDS Sample緩衝液(Promega社の
手順書による)を加えて密栓後、熱処理を行って蛋白質
を変性させる。このサンプルを泳動槽に取り付けたドデ
シル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲルのウェル
に添加し、SDS-PAGEで電気泳動を行う。その後、オート
ラジオグラフィーを行うために、ゲルを濾紙に移し、ゲ
ル乾燥装置を用いて乾燥させ、次いで、暗室中でそのゲ
ルをX線用フィルムと重ねてカセットに入れ、数時間か
ら数十時間、室温で放置したあと、該X線用フィルムを
現像する。目的とする蛋白質が発現していれば、該蛋白
質の分子量に応じた位置にバンドが出現する。アンチセ
ンス核酸化合物によって該蛋白質の発現が阻害されてい
る場合には、該バンドは発現しないか又は発現が弱くな
る。無細胞転写翻訳系等無細胞系でアンチセンス核酸効
果を評価する際のアンチセンス核酸化合物の濃度は、天
然型のオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いた場合は
0.1〜10μMの範囲が好ましく、より好ましくは0.
4〜2μMである。特に好ましくは、RNase H共存
下、0.4μMである。又、ホスホロチオエート型のオリ
ゴデオキシリボヌクレオチドを用いた場合は、0.01
〜1μM、好ましくは0.02〜0.4μMである。特に好
ましくは、RNase H共存下、0.064μM又は0.1
5μMである。細胞系でアンチセンス核酸効果を評価す
る際における天然型のオリゴデオキシリボヌクレオチド
の場合は、0.1〜100μM、好ましくは0.5〜30
μMであり、ホスホロチオエート型のオリゴデオキシリ
ボヌクレオチドの場合は0. 01〜100μM、好まし
くは0.05〜30μMである。又、必要に応じ、例えば
リポフェクチン試薬やDOTAP試薬等をアンチセンス核酸
の導入効率を上げるために用いることができる。添加し
た核酸化合物、すなわち、アンチセンス核酸の目的とす
る蛋白質をコードする遺伝子に対する発現阻害効果の確
認は、それを添加しない場合と比較することで行うこと
ができる。例えば、目的とする蛋白質が生成するか否か
の確認方法に記載の通り、産生した目的の蛋白質を前記
SDS-PAGEで分離し、それをオートラジオグラフィーに付
し、その黒化度をデンシトメータで定量すればよい。そ
して、アンチセンス核酸化合物を添加した場合の黒化度
を添加しない場合の黒化度と比較することにより評価す
ることができる。なお、この方法は、細胞系において、
標的部位に相補的な塩基配列を持つアンチセンス核酸を
添加し、目的とする蛋白質の発現を調べる際にも免疫沈
降法で目的の蛋白質のみを選択的に選び出したあとに、
適用することができる。かかる比較によって、遺伝子の
発現阻害率を求めることができ、探索により決定した標
的部位に相補的なアンチセンス核酸による、蛋白質発現
阻害効果を確認することができる。
【0013】
【作用】アンチセンス核酸の標的部位として考えられる
mRNA又はmRNA前駆体上で一本鎖になっている部
位、アンチセンス核酸であるオリゴデオキシリボヌクレ
オチド若しくはホスホロチオエート型オリゴデオキシリ
ボヌクレオチド等が結合しやすい部位及びオリゴデオキ
シリボヌクレオチド若しくはホスホロチオエート型オリ
ゴデオキシリボヌクレオチドが結合することによって核
酸分解能を有する物質、例えばRNase Hの作用を受け
切断されやすくなっている部位が、それぞれに相補的な
塩基配列を持つオリゴ核酸の集合体を用いることにより
確定され、それぞれに対するアンチセンス核酸も確定さ
れるのである。
【0014】
【実施例】mRNA又はmRNA前駆体等の大量調製 血管内皮細胞増殖因子[VEGF: 別名血管透過性因子
(VPF)]をコードする635塩基からなるmRNAを、
目的とする塩基配列を有するプラスミドを経る方法によ
り、以下の様にして大量調製した。 (1)プラスミドの構築及び塩基配列の決定 プラスミドpPoly(A)-luc(SP6)(Promega社製)に含まれる
ルシフェラーゼ構造遺伝子の上流と下流をそれぞれ制限
酵素ApaI及び制限酵素SacIで切断した。一方、PCR法に
より得たヒト由来VEGFをコードする遺伝子を、プラ
スミドpRC/CM Vのマルチクローニングサイト中にあるAp
aI部位とXbaI部位間に挿入したプラスミドpSU01を構築
した。ついで該プラスミドをVEGF遺伝子の上流に存
在するApaI部位及び下流に存在するSacI部位をそれぞれ
に作用する制限酵素ApaI及びSacIで同様に切断した。pP
oly(A)-luc(SP6)から前記2種の制限酵素(ApaI及びSac
I)でルシフェラーゼ構造遺伝子を切断除去した残りの部
分に、VEGF構造遺伝子を含みApaI及びSacIで切断さ
れた部分をTakara社製のDNA Ligation Kitを用いて結合
させた。次に、このようにして得られたプラスミドをTa
kara社製の大腸菌コンピテントセルJM109に、同社の説
明書に従って導入し、大量に複製し、該プラスミドを含
有する大腸菌等の細胞を遠心分離操作により集めた。つ
いで、該細胞にGTE溶液(50mMグルコース, 25mM Tris・Cl
及び10mM EDTA含有, pH=8.0)を加えて懸濁し、その1/9
量のリゾチーム溶液(50mg/ml)及び20/9量の水酸化ナト
リウム(0.2規定)-ドデシル硫酸ナトリウム(1%)混合溶液
を用いて細胞を溶解させた。酢酸カリウム(pH=5.2)を加
えて(最終濃度1M)中和し、不溶物質を遠心分離操作で
除去した。蛋白質を除去するため、フェノール−クロロ
ホルム−イソアミルアルコール(25:24:1)の混合溶液
を加えて振り混ぜた。遠心分離操作を行って上層(水相)
を取り出し、水相と等量の2-プロパノールを加えて撹拌
し、室温でしばらく 放置した。これを遠心分離して得
られたものが目的のプラスミド(pSU02と命名)を含有し
ていた。ついで、これを適量のTE(10m MTris・Cl 及び1m
M EDTA含有, pH=8.0)に溶かし、それを塩化セシウムの
密度勾配分離用液に混ぜ、超遠心分離 操作により分離
した。得られたプラスミドは、塩化セシウムを除去する
ため、TEに対して透析した(前掲のMolecular Cloning
参照)。この様にして、目的のプラスミド(pSU02)を0.
7mg得た。ここで得たプラスミド(pSU02)は、約3.6kb
p(bp:塩基対)からなることがアガロースゲル電気泳動の
結果から示された。次に、pSU02のうちVEGF構造遺
伝子部分およびその前後の部分について、その塩基配列
をSanger法で決定した。その塩基配列を配列番号1に示
す。
【0015】(2)mRNAの大量調製 mRNAを大量に調製するためには、Promega社製のRibo
MAXTM Large Scale RNA Production Systems SP6 のキ
ットを用いた。実験方法は、同キットに添付の方法にほ
ぼ従い、その半量のスケールで行った。以下に反応液の
組成を示す。ここで用いる直鎖状pSU02 は配列番号1に
示すpSU02の672番目の塩基から677番目の塩基に
対する制限酵素BamH Iで切断(センス鎖では672番目
と673番目の間で切断)したものである。 この反応液を37℃で4時間保った後に、RQ1 RNase-不
含DNaseを25U加え、更に15分間保った。そして、フ
ェノール処理、エタノール沈澱を行い、沈澱したVEG
FmRNAを70%エタノールで洗浄した。洗浄後のVE
GFmRNAは15分間風乾し、RNase-不含H2O 250
μlで希釈した。調製したVEGFmRNAの濃度は紫外
領域での吸収スペクトルから求めた。そのために、ま
ず、VEGFmRNAを20mMリン酸ナトリウムと10
0mM塩化ナトリウムからなる緩衝液(pH=7.0)で100〜
300倍に希釈し、光路長1cmのセルを用いて260nm
及び280nmで測定(室温)し、VEGFmRNAの濃度
を換算した。濃度を求める際には、260nmで吸光度の
値が1の時、その溶液1ml中にRNAが40μg含まれ
ているとした。
【0016】VEGFmRNAの5'末端標識化 まず、5'末端のリン酸基をアルカリフォスファターゼで
以下の様にして除去した。その際、操作途中にRNaseが
混在する可能性が存在するときは、リボヌクレアーゼ阻
害剤の存在下に反応を行った。 VEGFmRNA 40μg アルカリフォスファターゼ(0.37 U/μl) 7.7 μl 10×反応緩衝液(注) 10 50 mM ジチオスレオトール 3.2 + RNase-不含H20 で総量 100 μl (注)10×反応緩衝液 500 mM Tris-HCl,pH=9.0 10 mM MgCl2 上記の反応液を65℃で30分間保った後に、0.5M E
DTA(pH=8.0)を1μl添加して反応を停止した。フェノー
ル抽出を3回行った後、3M 酢酸ナトリウム(pH=5.3)を
3.3μl、Etachinmate(ニッポンジーン社製)2μlを加
えよく攪拌後、2倍量のエタノールを加えた。そして、
14krpm、5分間(4℃)遠心を行うことにより、VEG
FmRNAを回収し、70%エタノールで洗浄した。洗浄
後のVEGFmRNAは15分間風乾し、RNase-不含H20
20μlで溶解した。次に、以下の様に、この脱リン酸
化したVEGFmRNAを用い、T4ポリヌクレオチドキ
ナーゼを用いて[γ-32P]ATPのγ位のリン酸基をRNA
の5'位水酸基に転移させ、末端を標識化した。この際に
も、上述と同様、操作途中にRNaseが混在する可能性が
あるときは、リボヌクレアーゼ阻害剤存在下に反応を行
った。又、高次構造をとるRNAの標識化を効率よく行
うために、DMSOを添加して行った。 脱リン酸化したVEGFmRNA(35μg) 10.0μl 〔γ-32P〕ATP(6,000 Ci/mmol) 10.0 1M Tris-HCl(pH=7.4) 3.0 333mM MgCl2 1.2 T4ポリヌクレオチドキナーゼ 3.0 50mMジチオスレオトール 4.0 DMSO 3.0 + RNase-不含H20 で総量 40.0μl 上記の反応液を37℃で1時間保ち、0.5M EDTA 3μ
lを添加し反応を停止した。
【0017】5'末端標識化VEGFmRNAの分離・回
収・精製 上述の操作で得られた5'末端標識化RNAには、完全長
のVEGFmRNA以外に実験操作途中に生じた様々な
VEGFmRNAの断片も含まれているため、分離及び
回収・精製を以下の様に行った。まず、キナーゼ反応を
停止した5'末端標識化反応溶液にアガロースゲル電気泳
動用色素であるブロモフェノールブルーの入った緩衝液
を等量添加した後、95℃に5分間維持し熱変性させ、
ついで直ちに氷中に移し3分間保持した。これを非変性
型アガロースゲル電気泳動により分離した。その際、用
いるアガロースは、短フラグメント用低融点アガロース
であるNusieveR GTG Agarose(Takara社製)を用いた。ア
ガロースゲルの濃度は3.0%とし、緩衝液は、1×TBE
溶液を用いた。泳動は、定電圧(4V/cm)で12時間行っ
た。泳動終了後は、0.5μg/mlのエチジウムブロマイ
ドの入った1×TBE溶液にゲルを20分間浸した後、紫
外線照射下でRNAを検出した。5'末端標識化VEGF
mRNAの濃度は同時に泳動を行ったサイズマーカーを
基に次のように換算した。即ち、0.5μg/mlのエチジ
ウムブロマイドの入った1×TBE溶液に電気泳動後の非
変性型アガロースゲルを20分間浸して、紫外線を照射
してバンドの輝度を比較した場合、同程度の輝度であれ
ば、RNAのほうが二本鎖DNAに比べ、2.5倍の濃
度であることがわかったのでこれをもとに換算した。次
に、目的の完全長VEGFmRNAのバンドのみをカッ
ターナイフで切り出し細かくスライスした後、1.5ml
チューブに約0.3g ずつ分けた。ここで目的の完全長
VEGFm RNAを回収するために、The RNaidR Kit(B
IO101社製)を利用した。操作方法は、同キットに添付の
方法にほぼ従った。即ち、まず、スライスしたゲル約
0.3g 入りのチューブに3倍量のRNA BINDING SALT(約
1ml)を添加し、アガロースゲルを完全に分解させた。
チューブあたり5μlのRNAMATRIXTMを添加し、よく攪拌
し、その後15分間室温で放置した。その際、RNA MATR
IXTMに効率よくVEGFmRNAが結合するように時々
攪拌した。そして、VEGFmRNA-RNAMATRIXTMを1
4krpmで1分間、室温で遠心し回収した。回 収したV
EGFmRNA-RNAMATRIXTMはRNAWASH Solutionをチュ
ーブあたり500μl添加し、よく洗浄した(この洗浄操
作は2回行った)。そのRNAWASH Solutionを遠心操作に
よって完全に除いた後、RNase-不含H20(チューブあたり
20μl)でVEGFmRNA-RNAMATRIXTMをよく攪拌し
た。そして、55℃で30分間保 つことによりVEG
FmRNA-RNAMATRIXTMから溶離させた。この溶離操作
を行った後、14krpmで、2分間室温で遠心を行い、V
EGFmRNAを回収した。 回収したVEGFmRNA
に混在しているRNAMATRIXTMを完全に除去するために再
度、遠心を行った。このようにして得た5'末端標識化V
EGFmRNAを更にフェノールで処理した後、エタノ
ールを加えて沈澱させた。その沈殿したmRNAを70%
エタノールで洗浄後、15分間風乾し、RNase-不含H20
30μlに溶解し、ランダムスクリーニングに用いる5'
末端標識化VEGFmRNAとした。
【0018】天然型及びホスホロチオエート型のオリゴ
核酸の合成及び精製 天然型及びホスホロチオエート型のオリゴ核酸の合成
は、ABI(Applied Biosystems Inc.)社製の381A DNA合成
機、394 DNA/RNA 合成機及びパーセプティブ社製8909核
酸自動合成機を用いて、ホスホロアミダイト法(ABI社の
手順書又はF. Eckstein, Oligonucleotides and Analog
ues: A Practical Approach, IRL Press,1991年参照)に
より行った。最後のサイクルにおいて、5'末端の糖水酸
基の保護基(ジメトキシトリチル基)が結合した状態で合
成を終了した。室温下において、約25%のアンモニア
水で60分間処理し、合成したオリゴマーをサポートか
ら切断した。これを55℃で8時間保ち、塩基部分およ
びリン酸部分の脱保護を行い、天然型およびホスホロチ
オエート型オリゴデオキシリボヌクレオチドの粗製物を
得た。得られた天然型オリゴデオキシリボヌクレオチド
粗製物は、逆相クロマトグラフィーの原理に基づいて製
造されたカートリッジ[ウォーターズ社製セップパック
プラス(ロングボディ/ENV)]を用いて以下の通り精製し
た。即ち、20mlのアセトニトリルでカートリッジ内を
洗浄したあと、20mlの12%アセトニトリル-88%TEA
A(TEAA: 0.1M酢酸トリエチルアンモニウム pH=7.2)溶液
でカートリッジ内を平衡化した。約3mlの12%アセト
ニトリル-88%TEAAに溶解したオリゴデオキシリボヌク
レオチド粗精製物をカートリッジ内に注入し、その際に
溶出した液を再びカートリッジ内に注入した(2回繰り
返す)。15mlの12%アセトニトリル-88%TEAAでカー
トリッジ内を洗浄した後、3mlのTEAAでカートリッジ内
の溶液を置換した。ついで、3mlの2%トリフルオロ酢
酸水溶液をカートリッジ内に注入し、約4分間そのまま
放置して、ジメトキシトリチル基を切断後、3mlの2%
トリフルオロ酢酸水溶液を新たに注入し、カートリッジ
内のトリフルオロ酢酸水溶液を押し出した。3mlのTEAB
(重炭酸トリエチルアンモニウム pH=7)でカートリッジ
内を置換した後、8mlの15%アセトニトリル-85%TEA
Bで溶出し、精製オリゴデオキシリボヌクレオチドを含
む分画を集めた。これを真空下で乾固した後、滅菌した
生理食塩水0.2mlを加え、再び真空下で乾固した。少量
の滅菌水を加えて乾固する操作を繰り返し(合計2回
)、最初に加えた滅菌生理食塩水と同量の滅菌水を加
え、これを所定の濃度(オリゴデオキシリボヌクレオチ
ドとして500μM)に希釈して後述のスクリーニング実
験に用いた。但し、20mMリン酸ナトリウムと100mM
塩化ナトリウムからなる緩衝液(pH=7.0)にオリゴデオキ
シリボヌクレオチドを溶かし、光路長1cmのセルを用い
て260nmで測定(室温)したときの吸光度の値が1のと
き、その溶液1ml中には、オリゴデオキシリボヌクレオ
チドが33μg 含まれているとした。また、天然型オリ
ゴデオキシリボヌクレオチドのヌクレオチドあたりの分
子量は330として換算するか、報告されているモノヌ
クレオチド及びジヌクレオチドの分子吸光係数(E. G. R
ichards, Handbook of Biochemistry and Molecular Bi
ology:Nucleic Acids(C. D. Fasman)第3版, 1巻 p197 C
RC Cleveland OH)を基にする最近接近似法に従って70
〜80℃で求めた。本発明において記載の核酸化合物の
濃度は、以上のいずれかの方法で計算した値である。ホ
スホロチオエート型オリゴデオキシリボヌクレオチド(2
0量体、粗製品で約3mg)の逆相クロマトグラフィーの原
理に基づいて製造されたカートリッジ[パーセプティブ
社製セップパックプラス(ロングボディ/ENV)]を用いる
精製も上述の天然型の場合と同様に行った。但し、カー
トリッジの平衡化、粗製物のカートリッジに添加後の洗
浄、および精製ホスホロチオエート型オリゴデオキシリ
ボヌクレオチドの溶出には、20%アセトニトリル-80
%TEAA(又はTEAB)を用いた。なお、このようにして精製
されたオリゴデオキシリボヌクレオチド及びホスホロチ
オエート型のオリゴデオキシリボヌクレオチドの純度
は、HPLC分析により調べた。
【0019】探索法のための反応条件の検討 探索を行う際に、どのような鎖長のオリゴ核酸を用いる
かは、前述した様に、充分に考慮すべき点であり、本発
明者等は、オリゴ核酸として、20量体のオリゴデオキ
シリボヌクレオチドを用いた。また、用いるオリゴ核酸
の濃度や反応条件の検討を行うに先立ち、アンチセンス
核酸効果によりVEGFの発現阻害を引き起こすことが
既に示されている、配列番号1に示すVEGFの塩基配
列503〜510番目に相補的な配列をもつアンチンス
核酸A503 H(8量体; 天然型)を用いて反応条件を検討
した(PCT/JP95/01121 参照) 。即ち、このアンチセンス
核酸を用いて、アンチセンス核酸混合物を用いた場合に
使用可能な濃度範囲でRNase Hによる部位特異的な切
断が検出し得るかどうかを以下の様にして判定した。 (注)5 ×反応用緩衝液の組成 150 mM塩化ナトリウム 20 mM Tris-HCl(pH=7.4) 1.5 mM塩化マグネシウム 1.0 mMジチオスレオトール 50μg/ml牛血清アルブミン 上記の反応液を37℃に2又は6時間維持した後、0.5
MEDTA 1μlを添加して反応を停止した。ついで、この
反応液に色素(キシレンシアノール及びブロモフェノー
ルブルー)の入った変性ポリアクリルアミドゲル電気泳
動用緩衝液を加え、95℃で5分間保ち熱変性させた。
これを直ちに氷中に移し、3分間置いたのち、8M Urea
-6%ポリアクリルアミドゲルにのせ、定電圧(52V/cm)
下で1時間、電気泳動を行った。その後、ゲルを濾紙に
固定化し、オートラジオグラフィーを行い、元の完全長
mRNA以外に、RNase Hで切断された断片が生じて
いるかどうかを調べた。その結果を図1に示す。図1で
レーン1〜4はRNase Hが存在した場合(6U/μl)で
あり、レーン5はRNase Hが存在しない場合である。
また、レーン1と2はA503 Hの濃度が1nMであり、レ
ーン3〜5ではその濃度が10nMである。さらに、レー
ン1と3の反応時間は2時間であり、レーン2、4、5
での反応時間は6時間である。図1から明らかなように
レーン1〜4においては、A503 Hが結合する mRNA
の部位で切断された断片(〜500nt)が検出できた(図
1で矢印にて示す)。したがって、1nM又は10nMの濃
度のアンチセンス核酸存在下でRNase Hによる切断が
起きることがわかった。その切断の程度は、A503 Hの
濃度や反応時間とともに増大することもわかった。な
お、図1には示していないが、この切断片の生成にアン
チセンス核酸であるA503 Hの存在が必須であることは
別の実験において示された。
【0020】オリゴ核酸混合物を用いた場合のスクリー
ニング結果 複数種のオリゴ核酸を用いて、同様な切断反応が行える
かどうかを調べた。その為にまず、無細胞系の実験で、
VEGFの発現阻害が認められなかったアンチセンス鎖
に基づく塩基配列を有するオリゴ核酸とVEGFの発現
阻害が見られ、それがアンチセンス核酸効果によると考
えられるアンチセンス核酸を用いた場合とで違いが検出
できるかどうかを調べた(後に述べる無細胞転写翻訳系
におけるアンチセンス核酸の効果の項参照)。発現阻害
が見られなかったものとして、VEGFの配列番号1に
示す塩基配列83〜96番目及び275〜288番目に
相補なオリゴ核酸であるA083 N及びA275 Nを用いた
(PCT/JP95/01121 参照)。アンチセンス核酸効果による
発現阻害が見られるアンチセンス核酸として、VEGF
の塩基配列95〜108番目、237〜240番目及び
503〜510番目に相補的な塩基配列を有するアンチ
センス核酸であるA095 N、A237 N及びA503 Hを用
いた(PCT/JP95/01121 参照)。また、数種のアンチセン
ス核酸存在下であっても切断部位を同様に検出できるか
どうかを見るためにA083 N、A095 N及びA237 Nの
3種を等濃度ずつ混ぜたものを用いた。反応液の組成は
次のとおりである。 *複数種のアンチセンス核酸又はオリゴ核酸を混合して
用いる場合は、各々の核酸の濃度が100nM(反応混合
液中での濃度は各々が10nM)になるように調製した。 (注)5 ×反応用緩衝液の組成 150 mM塩化ナトリウム 20 mM Tris-HCl(pH=7.4) 1.5 mM塩化マグネシウム 1.0 mMジチオスレオトール 50μg/ml牛血清アルブミン この反応液を37℃に2時間維持した後、0.5M EDTA1
μlを添加して反応を停止し、上と同様の操作を行っ
た。その結果を図2に示す。レーン1はA083 N、レー
ン2はA275 N、レーン3はA095 N、そしてレーン4
はA237 Nを添加した場合である。レーン5は、A083
N、A095 N及びA237 Nの3種混合物を添加した場合
であり、レーン6はA503 Hを添加した場合である。さ
らに、レーン7は核酸及びRNase Hともに非存在下の
場合である。図2のレーン3及び4に示すように、A09
5 N及びA237 Nを添加した場合には、それぞれがVE
GFmRNAに結合し該部位でRNase Hにより切断さ
れると仮定した場合の大きさの断片が確認された。一
方、A083 N及びA275 Nを添加した場合には、各々の
VEGFmRNA結合部位に対応する切断産物が確認さ
れなかった。また、A083N、A095 N及びA237 Nの
3種を等量ずつ混合したものは、A095 N及びA237 N
のそれぞれに対応する切断産物が確認された。以上の結
果より、標識化VEGFmRNAを用いたこの系におい
ては、単一種もしくは複数種のオリゴ核酸を用い、それ
らがアンチセンス核酸効果を示すか否かの判断ができる
ことがわかった。このことは、言い換えれば、ここで述
べた方法を用いて、単一種又は複数種のオリゴ核酸の結
合するmRNAの部位が、アンチセンス核酸の標的部位
として有効か否かの判断ができることを意味する。さら
に、本実験方法では、複数種のアンチセンス核酸の効果
を単一の反応混合系で調べられることが実証されたとい
える。一群のオリゴ核酸として、配列番号1に示す77
番目から96番目の塩基配列に相補的な20量体のオリ
ゴデオキシリボヌクレオチドであるA077 T、および該
ヌクレオチドから下流方向に12塩基ずつずらして得ら
れる20量体のオリゴ核酸の合計40種類、即ち、A07
7 T、A089 T、A101 T、A113 T、・・・A545 T
及び配列番号1に示す101番目から120番目の塩基
配列に相補的な20量体のオリゴデオキシリボヌクレオ
チドであるA101 T、および該ヌクレオチドから下流方
向に12塩基ずつずらして得られる20量体オリゴ核酸
の合計38種類、即ち、A101 T、A113 T、・・・A
545 Tについて、各々のオリゴ核酸が50pMの混合物をつ
くり、これらの共存下でRNase Hによる5'末端標識化
VEGFmRNAの切断反応を行った。反応条件は次に
示す通りである。 *各々のオリゴ核酸濃度が500pM(反応混合液中での濃度
は各々が50pM)になるように調製した40種もしくは3
8種の混合物。 このようにして得られた切断断片を上に述べたのと同様
な変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した。
その結果を図3に示す。この際、分子量のマーカーとし
て、配列番号1の101番目から114番目、217番
目から230番目、299番目から312番目、321
番目から334番目及び422番目から435番目に対
する相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドであるオ
リゴ核酸(それぞれA101 N、A217 N、A299 N、A3
21 N及びA422 Nと命名)存在下で切断したそれらの断
片の混合物を用いた。すなわち、レーン1は、A101
N、A217 N及びA261 Nのそれぞれの存在下で切断し
た断片の混合物であり、レーン2は、A299 N、A321
N及びA422 Nのそれぞれの存在下で切断した断片の混
合物であり、レーン3は、A217 N、A321 N及びA50
3 Hのそれぞれの存在下で切断した断片の混合物であ
る。これらのマーカーの位置を基準に38種(レーン5
〜8)もしくは40種のオリゴ核酸(レーン9〜12)の
共存下での切断位置は次のようになる(なお、レーン5
と9は5分、レーン6と10は30分、レーン7と11
は60分、レーン8と12は120分、切断反応を行っ
た結果である)。即ち、両方の混合物を用いた場合に共
通に現れる切断部位として、配列番号1の158〜16
3、196〜200、256〜259、322〜32
6、それに417付近を挙げることができる。また、4
0種の混合物の場合には、上の5種の切断部位に加え
て、90〜95付近をも挙げることができる。これらの
部位の、アンチセンス核酸標的部位としての妥当性につ
いては、兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系で調べた
アンチセンス核酸効果の結果から明らかにされる。即
ち、兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系で調べたアン
チセンス核酸効果の結果によると、アンチセンス核酸核
酸効果の顕著な部位として、配列番号1の95番目から
108番目、配列番号1の149番目から174番目、
配列番号1の185番目から210番目、配列番号1の
219番目から244番目、配列番号1の254番目か
ら276番目、配列番号1の287番目から328番
目、配列番号1の357目から372番目、配列番号1
の389番目から534番目を挙げることができ(内
多、内田、田中、松田、近藤 「アンチセンス核酸化合
物」 特願平06−145146およびPCT/JP95
/01121)、上に述べた両混合物に共通な5箇所の
切断部位及び40種の混合物に共通な1箇所の切断部位
はいずれもアンチセンス核酸核酸効果の顕著な部位に含
まれているかその連続隣接部位である。従って、標識化
RNAを特定領域を間隙なく網羅する一群のオリゴ核酸
存在下、RNase Hで切断する方法によって、特定領域
中における、アンチセンス核酸効果の顕著な部位が検出
できることが明らかになった。又、38種のオリゴ核酸
の混合物と40種のオリゴ核酸の混合物を用いたときの
違いから明らかなように、本方法によると、オリゴ核酸
の混合物の対応する領域内で切断がおこることも明らか
である。さらに、ここで述べた切断反応について、配列
番号1の90〜95の切断に寄与するアンチセンス核酸
としては、A077 TとA089 Tとがその候補となるが、
先に引用した兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系で調
べたアンチセンス核酸効果の結果によるとA089 Tによ
る可能性が高い。配列番号1の158〜163の切断に
寄与するアンチセンス核酸としては、A149 TとA161
Tとがその候補となるが、先に引用した兎網状赤血球溶
解物由来の転写翻訳系で調べたアンチセンス核酸効果の
結果によると両方もしくはいずれか一方が寄与している
と考えられる。配列番号1の196〜200の切断に寄
与するアンチセンス核酸としては、A185 TとA197 T
とがその候補となるが、先に引用した兎網状赤血球溶解
物由来の転写翻訳系で調べたアンチセンス核酸効果の結
果によると両方もしくはいずれか一方が寄与している可
能性が高い。配列番号1の256〜259の切断に寄与
するアンチセンス核酸としては、A245 TとA257 Tと
がその候補となるが、先に引用した兎網状赤血球溶解物
由来の転写翻訳系で調べたアンチセンス核酸効果の結果
によるとA257 Tによる可能性が高い。配列番号1の3
22〜326の切断に寄与するアンチセンス核酸として
は、A305 TとA317 Tとがその候補となるが、先に引
用した兎網状赤血球溶解物由来の転写翻訳系で調べたア
ンチセンス核酸効果の結果によるとA305 Tによる可能
性が高い。配列番号1の417付近の切断に寄与するア
ンチセンス核酸としては、A401 T、A413 T及びA42
5Tがその候補となるが、先に引用した兎網状赤血球溶
解物由来の転写翻訳系で調べたアンチセンス核酸効果の
結果によるとそのうちのいずれか、もしくはそれらの複
数もしくはすべてによると考えられる。以上のように、
配列既知のアンチセンス核酸の混合物を用いることによ
りアンチセンス核酸標的部位を確定できるのみならず、
アンチセンス核酸効果の顕著なアンチセンス核酸の候補
を抽出することもできる。
【0021】VEGFの発現系 pSU02の発現系として、Promega社製の兎網状赤血球溶解
物由来の転写翻訳系を利用した(PCT/JP95/01121 参
照)。pSU02にはVEGFの構造遺伝子の上流にSP6プロ
モーターが存在するので、pSU02を用いて転写翻訳を行
う際は、Promega社製のTNTTMSP6 Coupled Reticulocyte
Lysate Systemのキットを用いた。実験方法は、同キッ
トに添付の方法に従った。即ち、転写翻訳系の反応液の
組成は次の通りである。 35S-メチオニンは、Amersham社製のin vivo cell label
ling grade(SJ1015,37TBq/mmol, 0.37MBq/μl)を用
い、Promega 社キットに添付の方法で示されている量の
半分に相当する量(1μl)を添加した。又、滅菌水は、
121℃で15分間処理したものを用いた。35S-メチオ
ニン、滅菌水、pSU02及びリボヌクレアーゼ阻害剤以外
の混合液組成物は、上述のPromega社キットに含まれて
いるものである。上述の反応混合液を30℃又は37℃
に1〜2時間保ち、目的の蛋白質であるVEGFを10
〜100ng得た。
【0022】VEGF発現の確認 (1)酵素免疫測定法 マイクロタイタープレート(ポリスチレン製)にポリクロ
ーナル抗体(ヒト由来のVEGFを大腸菌に産生させ、
その産生物を兎に投与して得た抗体)を常法に従って固
定化した(PCT/JP95/01121 参照)。ついで、上に記載の
VEGF用の転写翻訳系混合液(30℃で2時間反応さ
せたもの)を3倍から9375倍に希釈した液を加え、
室温(約25℃)で2時間放置した。この希釈液を除き、
0.1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝液で
充分に洗浄した。次に、西洋ワサビペルオキシダーゼで
標識した前記ポリクローナル抗体を添加し、室温で1時
間放置した。前記洗浄液で充分に洗浄した後、基質であ
るo-ジアミノベンゼン溶液を加え、適度に発色するまで
室温で放置した(約30分)。その後、490nmにおける
吸光度を測定し、VEGFの含有量を評価した。プラス
ミドとしてpSU02を用いた際、反応液の希釈倍率が小さ
い場合(3倍から375倍希釈)の吸光度は、希釈倍率の
大きい場合(1875倍又は9375倍希釈)のそれにく
らべ明らかに増加した。このような現象は、VEGFを
産生しないpPoly(A)-luc(SP6)をプラスミドとして用い
た反応液の場合には見られなかった。即ち、この場合は
一定の吸光度の値を示し、その値はpSU02を用いた反応
液を高希釈した場合の値及びコントロールとしてpSU02
の代わりに水のみを加えて反応させた反応液の場合の値
と実質的に等しい。従って、pSU02を用いた反応液を低
希釈した場合の吸光度の増加は、VEGFが転写翻訳系
混合液に含まれていたためと結論できる。
【0023】(2) 電気泳動法 次にVEGFが上述の転写翻訳系で生成することをSDS-
PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動法)で確認した(PCT/JP95/01121参照)。SDS-P
AGEは、Promega社の転写翻訳系キットに添付されている
手順書に従って、以下の通り行った。転写翻訳系の反応
液から5μlをとり、これに20μlの2-メルカプトエタ
ノール含有のSDS Sample緩衝液(Promega社の手順書に示
す組成の混合溶液を使用)を加えて密栓した。ついで、
100℃で2分間処理を行い、蛋白質を変性させた。こ
のうちの5μlをとり、SDS-PAGE(15%又は17.5%の
ポリアクリルアミドゲル)で電気泳動を行った。その
後、オートラジオグラフィーを行うために、ゲルを濾紙
に移し、ゲル乾燥装置を用いて80℃で充分に乾燥させ
た。ついで、暗室中でそのゲルをX線用フィルムと重ね
てカセットに入れ、10時間から100時間室温で放置
したあと、X線用フィルムを現像した。その結果、プラ
スミドとしてpSU02を用いたときは、分子量約15kdに
バンドが認められ、目的のVEGFが生成していること
がわかった。なお、分子量は、色素で標識した蛋白質の
分子量マーカー[Amersham社製のRainbowTMマーカー(高
分子量レンジ)]を同時に泳動し、その位置をもとに算定
した。
【0024】無細胞転写翻訳系におけるアンチセンス核
酸の効果 上に述べた方法を用い、VEGFmRNAに対するアン
チセンス核酸の効果を種々のオリゴ核酸化合物について
調べた(PCT/JP95/01121 参照)。その結果の一部を次に
示す。 オリゴ核酸化合物 VEGFの発現率 A083 N 46% A095 N 0 A237 N 2 A275 N 85 A503 H 1 この結果から明らかなように、A083 N及びA275 Nに
よるVEGF産生阻害効果に較べ、A095 N、A237 N
及びA503 HによるVEGF産生阻害効果は著しかっ
た。
【0025】
【発明の効果】本発明により、目的とする蛋白質をコー
ドするDNA又はRNA、特にmRNA又はmRNA前駆
体等上の特定領域におけるアンチセンス核酸標的部位
を、効率よく確定することができるようになり、治療
剤、診断剤、研究試薬の開発に有用なアンチセンス核酸
効果に優れたアンチセンス核酸を容易に調製することが
できる。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:774 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: cDNA to mRNA 配列: TTATGTATCA TACACATACG ATTTAGGTGA CACTATAGAA TACAAGCTTA 50 TGCATGCGGC CGCATCTAGA GGGCCCGGCC CCGGTCGGGC CTCCGAAACC 100 ATGAACTTTC TGCTGTCTTG GGTGCATTGG AGCCTTGCCT TGCTGCTCTA 150 CCTCCACCAT GCCAAGTGGT CCCAGGCTGC ACCCATGGCA GAAGGAGGAG 200 GGCAGAATCA TCACGAAGTG GTGAAGTTCA TGGATGTCTA TCAGCGCAGC 250 TACTGCCATC CAATCGAGAC CCTGGTGGAC ATCTTCCAGG AGTACCCTGA 300 TGAGATCGAG TACATCTTCA AGCCATCCTG TGTGCCCCTG ATGCGATGCG 350 GGGGCTGCTG CAATGACGAG GGCCTGGAGT GTGTGCCCAC TGAGGAGTCC 400 AACATCACCA TGCAGATTAT GCGGATCAAA CCTCACCAAG GCCAGCACAT 450 AGGAGAGATG AGCTTCCTAC AGCACAACAA ATGTGAATGC AGACCAAAGA 500 AAGATAGAGC AAGACAAGAA AAATGTGACA AGCCGAGGCG GTGAGCCGGG 550 CAGGAGGAAG GAGCCTCCCT CAGGGTTTCG GGAACCAGAT CCACTAGTTC 600 TAGATGCATG CTCGAGCGGC CGCCAGTGTG ATGGATATCT GCAGAATTCC 650 AGCACACTGG CCGTTACTAG TGGATCCGAG CTCCCAAAAA AAAAAAAAAA 700 AAAAAAAAAA AAAAACCGAA TTAATTCGTA ATCATGGTCA TAGCTGTTTC 750 CTGTGTGAAA TTGTTATCCG CTCA 774
【図面の簡単な説明】
【図1】 VEGFの塩基配列503〜510番目に相
補的な配列をもつA503 H(8量体; 天然型)存在下にお
けるRNase HによるVEGFmRNAの切断結果を示
す変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動写真である。
【図2】 5種のアンチセンス核酸を用いて、RNase
H存在下でVEGFmRNAの切断を調べた変性ポリア
クリルアミドゲル電気泳動写真である。
【図3】 40種若しくは38種のアンチセンス核酸を
用いて、RNase H存在下でVEGFmRNAの切断を
調べた変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動写真であ
る。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
    はRNAと、当該DNA又はRNAのアンチセンス鎖の
    塩基配列の一部分と同一の塩基配列を有する複数種のオ
    リゴ核酸とを、ハイブリダイズ(対合)させることによ
    り、アンチセンス核酸の標的部位を確定し、該標的部位
    に基づき当該DNA又はRNAとハイブリダイズ(対合)
    するアンチセンス核酸を調製することを特徴とするアン
    チセンス核酸の調製方法。
  2. 【請求項2】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
    はRNAと、当該DNA又はRNAのアンチセンス鎖の
    塩基配列の一部分と同一の塩基配列を有する複数種のオ
    リゴ核酸とを、ハイブリダイズ(対合)させると共に核酸
    分解能を有する物質でハイブリダイズ(対合)した箇所を
    分解させることによりアンチセンス核酸の標的部位を確
    定し、該標的部位に基づき当該DNA又はRNAとハイ
    ブリダイズ(対合)するアンチセンス核酸を調製すること
    を特徴とするアンチセンス核酸の調製方法。
  3. 【請求項3】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
    はRNAがmRNA又はmRNA前駆体の全部又は一部で
    あることを特徴とする請求項1又は2のアンチセンス核
    酸の調製方法。
  4. 【請求項4】 核酸分解能を有する物質がRNase Hで
    あることを特徴とする請求項2のアンチセンス核酸の調
    製方法。
  5. 【請求項5】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
    はRNAが、その一端が標識化されたものであることを
    特徴とする請求項1又は2のアンチセンス核酸の調製方
    法。
  6. 【請求項6】 目的とする蛋白質をコードするDNA又
    はRNAがmRNA又はmRNA前駆体の全部又は一部で
    あることを特徴とする請求項5のアンチセンス核酸の調
    製方法。
  7. 【請求項7】 オリゴ核酸が、塩基数4〜30のオリゴ
    核酸であることを特徴とする請求項1又は2のアンチセ
    ンス核酸の調製方法。
  8. 【請求項8】 複数種のオリゴ核酸のいずれもが、実質
    的に同一の塩基数を有するものであることを特徴とする
    請求項1又は2のアンチセンス核酸の取得方法。
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