JPH091609A - 射出圧縮成形の良品判別方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 射出充填前と製品取出前の型締力を除去した
時の金型位置検出のみの簡単な比較制御による高精度な
射出充填量制御で、成形中の成形条件の変動に影響され
ずに良品を安定して供給する。 【構成】 樹脂の射出圧縮成形を行なう際に、射出充填
前の金型位置を基準点とし、圧縮工程完了後に製品取出
しのために型締圧を除去した時の金型位置が前記基準点
に対して設定された任意の設定値からはずれた場合に不
良品と判別する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】金型内に溶融樹脂を射出充填後型
締側で圧縮を行なう射出圧縮成形時の射出充填量を高精
度に制御する射出圧縮成形の良品判別方法および装置に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、射出圧縮成形によって得られた成
形品の良品判別は次のようにして行なわれていた。 （１）金型内に充填する射出充填量の制御精度が、その
後の型締側での圧縮工程に大きな影響を与えるため、射
出充填工程中の射出ストローク設定値に対する偏差で良
品判別を行なう。

【０００３】（２）金型の位置を検出し、射出充填工程
中の型開量設定値に対する偏差、または、圧縮工程中の
圧縮完了位置設定値に対する偏差で良品判別を行なう。

【０００４】（３）金型内の樹脂圧力、樹脂温度などを
検出して、圧縮工程中の各々の設定値に対する偏差（例
えば、樹脂の冷却固化収縮挙動に対応したＰＶＴ曲線と
実測値との差）で良品判別を行なう。によってなされて
いた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の良品
判別方法では次のような問題があった。すなわち、 （１）計量時の背圧設定の違い、射出時のチェックリン
グの作動のバラツキ、可塑化中の樹脂温度のバラツキな
どにより、射出充填量は変動する可能性がある。さら
に、成形品の品質は圧縮工程完了後の状態で決まるた
め、射出充填工程時の射出ストローク設定値に対する偏
差で良品判別を行なうのは非現実的と言える。

【０００６】（２）射出充填工程中の型開量設定値に対
する偏差で良品判別を行なう場合では、上記（１）と同
様の理由により、さらに、最適型開量設定が難しい上
に、成形中の樹脂温度などの成形条件が変動した場合の
対応が不可能なことにより、正確性に欠ける良品判別方
法と言える。

【０００７】また、圧縮完了位置設定値に対する偏差で
良品判別を行なう場合では、成形品の最終形状により近
いタイミングで判別ができるようになるが、圧縮工程の
最終型締力の設定によっては、金型は圧縮変形を生じて
いる状態とともに、樹脂も圧縮変形を生じており、この
状態では金型から取出した製品とは寸法的に差が生じて
いるため、高精度な射出圧縮成形品の良品判別にはいま
だ正確性を欠いている。

【０００８】例えば、充填量が過大で明らかに品質許容
値をはずれている場合でも圧縮力値の設定によっては圧
縮完了位置設定値まで圧縮が可能となることもあり、金
型内樹脂の圧縮状態と圧縮力値の整合性を正確に把握し
ておかなければ間違った判別を行なう可能性が大きい。
いずれにしても、金型内の樹脂の状態を間接的に検出し
ている方法であるので高精度な射出圧縮成形の良品判別
方法への適用は難しいと言える。

【０００９】（３）上記（１）、（２）と比べて、金型
内の樹脂の状態を直接検出しているので最も精度の高い
判別方法と言えるが、従来の検出センサはいずれも金型
内樹脂に直接接触させなければならず（突出ピンを介し
て検出する場合でも突出ピンと樹脂は接触）、そのため
製品外観に影響を及ぼさない位置へ限定されるため、セ
ンサ取付位置によっては大きな誤差を生じる。

【００１０】さらに、従来の検出方法では、良品判別の
ための検出信号はピンポイントであり、キャビティ内全
体を把握することはできない。仮に、検出センサを多数
取付けたとしても、あくまでもピンポイントデータの集
合であり、処理のためのソフト・ハードを複雑化させる
だけとなる。

【００１１】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、本発明の目的は、射出充填前と製品取出前の型締力
を除去した時の金型位置検出のみの簡単な比較判別で、
成形中の成形条件変動に影響されず高精度な良品判別が
でき、その結果、良品を安定して供給できるようにした
射出圧縮成形の良品判別方法および装置を提供するもの
である。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る第１の発明では、樹脂の射出圧縮成形
を行なう際に、射出充填前の金型位置を基準点として圧
縮工程完了後に製品取出しのために型締圧を除去した時
の金型位置が前記基準点に対して成形品の品質許容範囲
値から設定される許容値から外れた場合に不良品と判断
し、第２の発明では、前記基準点を型締動作によって両
金型がタッチした状態とする。そして、第３の発明で
は、金型の位置を検出する金型位置検出部と、射出充填
前の金型位置を基準点として設定する基準点設定部を備
え、圧縮工程完了後製品取出しのため型締圧を除去した
時の前記金型位置検出部からの検出信号と前記基準点設
定部の設定値を比較して、設定された品質許容値からは
ずれた場合に不良品信号を発する良品判別部を備えた構
成にする。

【００１３】

【作用】射出充填前の金型位置を基準点とし、圧縮工程
完了後の製品取出しのために型締圧を除去した時の金型
位置と基準点を比較して良品判別を行なうことにより、
射出時のチェックリングの作動のバラツキや成形中の樹
脂温度などの成形条件の変動などの制御精度に悪影響を
及ぼす外乱因子の影響をまったく受けない。また成形品
の品質を決定する圧縮完了時の金型状態で良品判別を行
なうことを基本としているため、最も理想的な判別方法
であり、かつ、制御のソフト・ハード面ともに簡単とな
り、高精度な射出圧縮成形の良品判別が容易にできる。
すなわち、型締側で圧縮作用を付加させる射出圧縮成形
では、圧縮完了まで連続的に型締力が付加されていなけ
ればならず、圧縮完了時の冷却固化した成形樹脂体は型
締力によっていくらかの圧縮作用が働いているのが理想
的である。したがって、圧縮完了後の型締力を除去した
時に若干、金型が成形樹脂体の圧縮復元力でバックする
のが最適成形条件となる。このバックする量を成形品の
品質基準範囲内で設定することにより、高品質成形体を
得る。また、樹脂の冷却固化収縮量を見込んで設計され
た金型においては、設計値を考慮に入れてバック量を設
定する必要がある。

【００１４】

【実施例】以下に、本発明に係る射出圧縮成形の良品判
別方法および装置の具体的な実施例を図面を参照して詳
細に説明する。

【００１５】図１は本発明の実施例に係る制御概念図、
図２は本発明の実施例に係る射出圧縮成形による良品判
別フロー図、図３は本発明の実施例に係る射出プレス成
形時による良品判別フロー図である。

【００１６】固定金型３は図示しないマシンベースの一
端上に固着された固定盤５に取付けられており、一方マ
シンベースの他端部には前記固定盤５と対向して可動金
型２が可動盤４に取付けられている。

【００１７】前記可動盤４の背面部には型締シリンダ６
内を前後動するピストン６ａとこのピストン６ａのピス
トンロッド６ｂの先端部に可動盤４が固着され、ピスト
ン６ａの前後に圧油を導入して可動盤４を前後動自在と
する構成となっている。符号２５はキャビティを示す。
符号１は型締装置を示す。

【００１８】符号１０は射出装置であって、この射出装
置１０はスクリュ１１、射出シリンダ１２、正逆転用モ
ータ１３、ホッパ１４ａおよびバレル１４から構成され
ている。

【００１９】バレル１４内にスクリュ１１が回転自在に
設けられ、ホッパ１４ａ内の樹脂原料が供給ゾーン、圧
縮ゾーンにおいて加熱圧縮され、計量ゾーンにおいて溶
融計量され、そして射出ゾーンを経てノズル１５内へ射
出されるように構成されている。

【００２０】そして、バレル１４の外周面には樹脂原料
を外部加熱するためのヒータが設けられており、樹脂原
料が溶融されながらスクリュ１１の回転によって前方へ
送られるようになっている。

【００２１】符号１２は射出シリンダ、１３は正逆転用
モータであってスクリュ１１に直結されており、スクリ
ュ１１を正逆回転するようになっている。

【００２２】符号８は油圧制御弁、９ａ、９ｂは油圧供
給源である。１７は制御部を示し、位置センサ７、金型
位置検出部１８、基準点設定部１９、良品判別部２０か
ら構成されている。

【００２３】位置センサ７は金型位置検出部１８に接続
されている。また位置センサ７により射出充填前の可動
金型２の位置を基準点として設定する基準点設定部１９
と金型位置検出部１８が接続されているとともに、圧縮
工程完了後製品取出しのために型締圧を除去した時の金
型位置検出部１８からの検出信号と基準点設定部１９の
設定値を比較して設定された品質許容値から外れた場合
に不良信号を発する良品判別部２０が接続されている。

【００２４】以上述べた射出圧縮成形装置を用いた良品
判別方法を説明する。まず、型締側で圧縮作用を付加さ
せる射出圧縮成形は、射出充填する前の金型位置により
次の２つの方法に分類される。 （１）あらかじめ閉鎖された金型内に溶融樹脂を射出充
填し、その後、型締側で圧縮を行なう方法（図２）。 （２）あらかじめ圧縮量を見込んだ型開位置に保持され
た金型内に溶融樹脂を射出充填し、その後、型締側で圧
縮を行なう方法（図３）。

【００２５】先に、図２を用いていわゆる射出圧縮成形
による良品判別方法を説明する。あらかじめ閉鎖された
金型２、３内に溶融樹脂を充填し、その後型締側で圧縮
を行なう低圧の射出圧縮方法について述べる。

【００２６】まず、図２に示す実施例１において型締シ
リンダ６に圧油を導入して可動金型２を固定金型３側へ
前進移動させる。

【００２７】可動金型２と固定金型３とがタッチした
後、型締圧設定手段により油圧制御弁８を制御して型締
シリンダ６へ圧油を送油し、可動金型２を固定金型３側
へ押圧し型締昇圧を行なう。

【００２８】ここで位置センサ７からの検出信号を金型
位置検出部１８で受けて、基準点として基準点設定部１
９へ設定される。この場合の基準点の設定は、可動金型
２が固定金型３とタッチした時点（基準点Ａ）、あるい
は、型締昇圧後の任意の時点（基準点Ｂ）のいずれの場
合でもよく、成形条件、製品形状などより、Ａあるいは
Ｂのどちらかをあらかじめ決める。

【００２９】型締昇圧完了後、キャビティ２５内へ射出
充填を行なう。射出充填に伴ない、射出充填された樹脂
圧と型締シリンダ６で付加した型締力のバランスによ
り、可動金型２は固定金型３に対して離間する方向へ後
退移動する（型開挙動）。

【００３０】射出完了あるいは射出充填中の任意の時点
で、型締シリンダ６の型締圧により可動金型２を固定金
型３側へ再び押圧させて型締側で圧縮工程を行なう。こ
の場合、型締シリンダ６で発生させる型締力は、射出充
填前に設定した型締力を持続してもよく、あるいは必要
に応じて変化させてもよい。

【００３１】型締側での圧縮工程完了後、油圧制御弁８
を制御して、型締シリンダ６の型締圧を除去して製品取
出しを行なう。ここで、型締圧を除去した時の可動金型
２の変化量（金型位置Ｃ）を位置センサ７で検出して、
基準点（Ａ又はＢ）に対して製品の品質許容範囲値を考
慮した許容値（Ｄ）と比較して良品判別部２０で良品判
定を行なう。

【００３２】すなわち、型締側でキャビティ２５内の樹
脂に圧縮作用を与える射出圧縮成形においては、キャビ
ティ２５内に充填された溶融樹脂が冷却固化されるま
で、型締側からの圧縮力が継続されていなければなら
ず、樹脂の冷却固化完了後、型締圧を除去した時に、樹
脂の固体弾性圧縮量分だけ、可動金型２が固定金型３に
対して、製品の品質の許容範囲内において離間するの
が、理想的である。また、製品の状態に最も近い型締降
圧時に良品判別を行なうことにより、極めて精度の高い
判別が成形サイクルの動作中にできる。

【００３３】したがって、型締降圧後の金型位置（Ｃ）
が許容値（Ｄ）に対して外れている場合（Ｃ−Ａ＞Ｄあ
るいはＣ−Ｂ＞ＤまたはＣ−Ａ＜ＤあるいはＣ−Ｂ＜
Ｄ）であれば、製品の品質許容範囲外であるので、良品
判別部２０は不良品信号を発信する。ＣがＤの範囲内
（Ｃ−Ａ＝ＤあるいはＣ−Ｂ＝Ｄ）であれば良品と判断
する。

【００３４】次に、図３に示す実施例２を用いて射出プ
レス成形による良品判別方法を説明する。圧縮量（すな
わち型開量）を設定するに際して、可動金型２の原点設
定のため、可動金型２を固定金型３側へ前進させ、可動
金型２と固定金型３をタッチさせて原点設定を行なう。
ここで、位置センサ７からの検出信号を金型位置検出部
１８で受けて、原点設定を行なうとともに、基準点とし
て基準点設定部１９へ設定される（基準点Ａ）。

【００３５】型開量設定手段により、設定された型開量
まで可動金型２を固定金型３に対して離間させる。設定
型開量に達した後、例えば油圧制御弁８を制御して、型
締シリンダ６をロックさせるなどの手段により、可動金
型２の位置を保持する。

【００３６】型開量設定完了後、キャビティ２５内へ射
出充填を行なう。射出完了あるいは射出充填中の任意の
時点で、油圧制御弁８を制御して型締シリンダ６のピス
トン６ａを作動させ、可動金型２を固定金型３へ押圧し
て型締側で圧縮工程を行なう。

【００３７】型締側での圧縮工程完了後、油圧制御弁８
を制御して型締シリンダ６の型締圧を除去して製品取出
しを行なう。ここで、実施例１と同様に、型締圧を除去
した時の可動金型２の変動量（金型位置Ｃ）を位置セン
サ７で検出して、許容値（Ｄ）と比較して良品判別部２
０で良品判定を行なう。

【００３８】型締降圧時の金型位置（Ｃ）が許容値
（Ｄ）に対して外れている場合（Ｃ−Ａ＞ＤまたはＣ−
Ａ＜Ｄ）であれば、製品の品質許容範囲外であるので良
品判別部２０は不良品信号を発信し、ＣがＤの範囲内
（Ｃ−Ａ＝Ｄ）であれば良品信号を発信する。

【００３９】なお、本実施例では検出精度を高めるため
キャビティ２５内の樹脂により近い箇所として金型に検
出センサ７を取付けて金型位置検出を行なったが、これ
以外に、例えば可動盤４の位置や型締シリンダ６のスト
ローク位置などで検出することも可能である。ただし、
この場合においては、検出精度は多少低下するが、本発
明の効果を見い出すことは十分に可能である。

【００４０】

【発明の効果】以上説明したことからも明らかなよう
に、本発明では、 （１）射出前の金型位置を基準点とし、圧縮工程完了後
の製品取出しのために型締圧を除去した時の金型位置が
基準点に対する許容値と比較して良品判別を行なうこと
により、成形品の品質を決定する圧縮完了時の型締圧を
除去した金型状態で射出圧縮成形品の良品判定ができる
ため、また、成形中の外乱因子の影響をまったく受けな
いため極めて高精度な良品判別ができ、その結果、高品
質の成形品を供給することができる。また、判別システ
ムについても、検出信号と射出あるいは型締側との同時
連動制御を必要としないため、簡単な制御で可能とな
り、その結果、操作性は極めて容易である。 （２）判別の基準点を射出充填前の金型閉鎖位置、比較
点を圧縮完了後の型締圧を除去した時の金型変動量とし
ていることで、１つの判別システムで多岐にわたる射出
圧縮成形法のいずれにも適用可能であるため、生産性が
大幅にアップする。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る制御概念図である。

【図２】本発明の実施例に係る射出圧縮成形による良品
判別フロー図である。

【図３】本発明の実施例に係る射出プレス成形時による
良品判別フロー図である。

【符号の説明】

２ 可動金型 ３ 固定金型 ４ 可動盤 ５ 固定盤 ６ 型締シリンダ ７ 位置センサ ８ 油圧制御弁 ９ａ、９ｂ 油圧供給源 １０ 射出装置 １２ 射出シリンダ １３ 正逆転用モータ １４ バレル １６ 油圧制御弁 １７ 制御部 １８ 金型位置検出部 １９ 基準点設定部 ２０ 良品判別部 ２５ キャビティ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 樹脂の射出圧縮成形を行なう際に、射出
   充填前の金型位置を基準点として圧縮工程完了後に製品
   取出しのために型締圧を除去した時の金型位置が前記基
   準点に対して成形品の品質許容範囲値から設定される許
   容値から外れた場合に不良品と判断することを特徴とす
   る射出圧縮成形の良品判別方法。
2. 【請求項２】 請求項１記載の基準点を型締動作によっ
   て両金型がタッチした状態とすることを特徴とする射出
   圧縮成形の良品判別方法。
3. 【請求項３】 金型の位置を検出する金型位置検出部
   と、射出充填前の金型位置を基準点として設定する基準
   点設定部を備え、圧縮工程完了後製品取出しのため型締
   圧を除去した時の前記金型位置検出部からの検出信号と
   前記基準点設定部の設定値を比較して、設定された品質
   許容値からはずれた場合に不良品信号を発する良品判別
   部を備えたことを特徴とする射出圧縮成形の良品判別装
   置。