JPH0912875A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

Info

Publication number
JPH0912875A
JPH0912875A JP16073595A JP16073595A JPH0912875A JP H0912875 A JPH0912875 A JP H0912875A JP 16073595 A JP16073595 A JP 16073595A JP 16073595 A JP16073595 A JP 16073595A JP H0912875 A JPH0912875 A JP H0912875A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
polyamide
units
thermoplastic resin
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP16073595A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3549624B2 (ja
Inventor
Hideaki Oka
秀明 岡
Nozomi Sugo
望 須郷
Kozo Tamura
興造 田村
Tsugifumi Kashiwamura
次史 柏村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP16073595A priority Critical patent/JP3549624B2/ja
Publication of JPH0912875A publication Critical patent/JPH0912875A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3549624B2 publication Critical patent/JP3549624B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフ
タル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が
1,9-ノナンジアミン(NMDA)単位からなるポリアミド(A
1)、又は該ジアミン単位がNMDA単位および2-メチル-1,8
-オクタンジアミン(MODA)単位(但し、NMDA単位:MODA
単位のモル比=60:40〜99:1)であるポリアミド(A2)であ
って、極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gである(但し(A1)
の末端封止率は10%以上)ポリアミド100重量部に、溶
融液晶高分子を0.1〜200重量部配合した熱可塑性樹脂組
成物、該熱可塑性樹脂組成物100重量部に充填剤を1〜20
0重量部配合した熱可塑性樹脂組成物、これらの熱可塑
性樹脂組成物からなる成形品。 【効果】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、極めて優れ
た成形加工性を有すると共に、低吸水性、寸法安定性、
耐薬品性、力学強度などに優れており、これらの熱可塑
性樹脂組成物から得られるエンジニアリング用途の部
品、繊維、フィルム、シート、ボトルなどの種々の形状
の性景品は、産業資材、工業材料、家庭用品などの用途
に好適に使用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定の半芳香族ポリア
ミドおよび溶融液晶高分子からなる熱可塑性樹脂組成
物、この熱可塑性樹脂組成物にさらに充填剤を配合して
なる熱可塑性樹脂組成物、並びにこれらの熱可塑性樹脂
組成物からなる成形品に関する。本発明の熱可塑性樹脂
組成物は、極めて優れた成形加工性を有すると共に、低
吸水性、寸法安定性、耐薬品性、力学強度などに優れて
おり、これらの熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品
は、産業資材、工業材料、家庭用品などの用途に好適に
使用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来からナイロン6、ナイロン66など
に代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶
融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるい
は汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用い
られているが、一方では、耐熱性不足、吸水による寸法
安定性不良などの問題点も指摘されている。特に、近年
の表面実装技術(SMT)の進歩に伴うリフローハンダ
耐熱性を必要とする電気・電子分野、あるいは年々耐熱
性への要求が高まる自動車のエンジンルーム内の部品な
どにおいては、従来のポリアミドの使用が困難であり、
より耐熱性、寸法安定性、機械特性、物理化学的特性に
優れたポリアミドの要求が高まっている。
【0003】このような要求に対し、アジピン酸と1,
4−ブタンジアミンからなる全脂肪族ポリアミド、テレ
フタル酸と1,6−ヘキサンジアミンを主成分とする半
芳香族ポリアミドなどが種々提案され、一部は実用化さ
れている。しかしながら、アジピン酸と1,4−ブタン
ジアミンからなるポリアミド(以下PA4−6と略称す
ることがある)は、溶融粘度が低く、テレフタル酸と
1,6−ヘキサンジアミンを主成分とする半芳香族ポリ
アミドに比べ、良好な成形性を有するものの、吸水率が
高く、寸法安定性などの実使用時の諸物性の変動が問題
視されている。
【0004】一方、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジ
アミンからなるポリアミド(以下、PA6−Tと略称す
ることがある)は、ポリマーの分解温度を超える370
℃付近に融点があるため、溶融重合、溶融成形が困難で
あり、実用に耐えるものではない。そのため実際には、
アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あ
るいはナイロン6などの脂肪族ポリアミドを30〜40
モル%共重合することにより、実使用可能温度領域、す
なわち280〜320℃程度にまで低融点化した組成で
用いられている。このように多量の第3成分(場合によ
っては第4成分)を共重合することは、確かにポリマー
の低融点化には有効なものの、一方では結晶化速度、到
達結晶化度の低下を伴い、その結果、高温下での剛性、
耐薬品性、寸法安定性などの諸物性が低下するばかりで
なく、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下をも招
く。また、吸水による寸法安定性などの諸物性の変動に
関しても、芳香族基の導入により、従来の脂肪族ポリア
ミドに比べれば多少改善されてはいるものの、実質的な
問題解決のレベルまでには達していない。
【0005】ポリアミドの寸法安定性、耐熱性、成形
性、力学強度を向上させる方法として、溶融液晶高分子
(以下「TLCP」と略称することがある)をポリアミ
ドにブレンドする方法が知られている。例えば、特開平
2−199167号公報には、テレフタル酸およびイソ
フタル酸と1,6−ヘキサンジアミンとからなり、融点
が330℃のポリアミド100重量部に、溶融液晶高分
子を1〜5重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物が記
載されている。特開平3−17156号公報には、テレ
フタル酸、イソフタル酸およびアジピン酸と1,6−ヘ
キサンジアミンとからなり、融点が312℃のポリアミ
ド100重量部に、溶融液晶高分子を0.2〜67重量
部配合してなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らの研究によ
れば、上記の特開平2−199167号公報、あるいは
特開平3−17156号公報に記載されている方法を追
試して得られる、PA6−T系ポリアミドに溶融液晶高
分子を所定量配合した熱可塑性樹脂組成物は、成形時に
気泡が発生しやすいという問題点を有しており、さらに
該樹脂組成物から得られる成形品の寸法安定性や耐薬品
性においても、市場の厳しい要求に対し十分な性能を有
しているとは言い難い。さらに、上記公報には、ジアミ
ン成分として炭素数7以上のジアミンを使用することに
より、1,6−ヘキサンジアミンを使用した場合に比較
して、さらに優れた性能が発現するとの具体的な開示は
ない。
【0007】本発明の目的は、顕著に改善された成形加
工性を有すると共に、低吸水性、寸法安定性、耐薬品性
などに優れ、かつ力学強度に優れた熱可塑性樹脂組成物
を提供することにある。さらに本発明の他の目的は、上
記の優れた性質を有する熱可塑性樹脂組成物からなる成
形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、テレフタル酸
単位および1,9−ノナンジアミン単位を主成分とする
半芳香族ポリアミド、または、該ポリアミドに2−メチ
ル−1,8−オクタンジアミン単位を特定量共重合させ
た半芳香族ポリアミドに、溶融液晶高分子を特定量配合
することによりはじめて、成形加工性に極めて優れると
共に、低吸水性、寸法安定性、耐薬品性などに優れた熱
可塑性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本
発明を完成した。
【0009】すなわち本発明は、ジカルボン酸単位の6
0〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミ
ン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン
単位からなるポリアミドであって、濃硫酸中30℃で測
定した極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gで、か
つその末端基の10%以上が封止されているポリアミド
(A1)100重量部に、溶融液晶高分子(B)を0.
1〜200重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物であ
る。そして、本発明は、ジカルボン酸単位の60〜10
0モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の
60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位およ
び2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からな
り、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−
1,8−オクタンジアミン単位のモル比が60:40〜
99:1であるポリアミドであって、濃硫酸中30℃で
測定した極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gであ
るポリアミド(A2)100重量部に、溶融液晶高分子
(B)を0.1〜200重量部配合してなる熱可塑性樹
脂組成物である。また、本発明は上記熱可塑性樹脂組成
物100重量部に充填剤を1〜200重量部配合してな
る熱可塑性樹脂組成物である。更に、本発明は、上記の
熱可塑性樹脂組成物からなる成形品である。
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。本発明
に用いられるポリアミドは実質的にジカルボン酸単位お
よびジアミン単位からなる。ジカルボン酸単位として
は、テレフタル酸単位を60モル%以上含有しているこ
とが必要であり、75モル%以上含有していることが好
ましく、90モル%以上含有していることがより好まし
い。テレフタル酸単位の含有率が60モル%未満の場合
には、得られる熱可塑性樹脂組成物の低吸水性、耐薬品
性などの諸物性が低下するため好ましくない。
【0011】テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸
単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク
酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−
ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン
酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン
酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン
酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シ
クロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;
イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,
7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカ
ルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3
−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−
オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカ
ルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン
酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジ
カルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、こ
れらのうち1種または2種以上を含ませることができ
る。耐熱性などの点から、上記したジカルボン酸単位の
なかでも、芳香族ジカルボン酸単位を含ませるのが好ま
しい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメ
リット酸などの官能基を3個以上有する多価カルボン酸
から誘導される単位を、溶融成形が可能な範囲内で含ま
せることができる。
【0012】ジアミン単位としては、1,9−ノナンジ
アミン単位を60モル%以上含有していることが必要で
あり、75モル%以上含有していることが好ましく、9
0モル%以上含有していることがより好ましい。1,9
−ノナンジアミン単位の含有率が60モル%未満の場合
には、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、低吸
水性、耐薬品性などの諸物性が低下するため好ましくな
い。
【0013】1,9−ノナンジアミン単位以外の他のジ
アミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、プロ
ピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘ
キサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10
−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−
メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,
5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,
6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,
6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタン
ジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの
脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシク
ロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式
ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジ
アミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,
4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ
ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエ
ーテルなどの芳香族ジアミンから誘導される単位を挙げ
ることができ、これらのうち1種または2種以上を含ま
せることができる。これらのなかでも、特に2−メチル
−1,8−オクタンジアミン単位を含ませるのが好まし
い。ジアミン単位が、1,9−ノナンジアミン単位およ
び2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含有す
る場合には、ジアミン単位の60〜100モル%が1,
9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オ
クタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジア
ミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位
のモル比が、60:40〜99:1であることが好まし
く、70:30〜99:1であることがより好ましく、
80:20〜98:2であるのがさらに好ましい。ジア
ミン単位として1,9−ノナンジアミン単位および2−
メチル−1,8−オクタンジアミン単位を上記の割合で
含ませることにより、成形加工性、低吸水性、耐熱性、
耐薬品性、力学特性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成
物が得られる。
【0014】本発明に用いられるポリアミド(A1)
は、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤によ
り封止されている必要があり、末端基の40%以上が封
止されているのが好ましく、末端基の60%以上が封止
されているのがより好ましい。また、本発明に用いられ
るポリアミド(A2)は、その分子鎖の末端基の10%
以上が末端封止剤により封止されているのが好ましく、
末端基の40%以上が封止されているのがより好まし
く、末端基の60%以上が封止されているのがさらに好
ましい。ポリアミドの末端基を封止することにより、耐
熱水性がより優れ、溶融成形時の粘度変化が小さい熱可
塑性樹脂組成物が得られる。
【0015】末端封止率を求めるにあたっては、ポリア
ミドに存在しているカルボキシル基末端、アミノ基末端
および末端封止剤によって封止された末端の数をそれぞ
れ測定し、下記の式(1)により末端封止率を求めるこ
とができる。各末端基の数は、1H−NMRにより、各
末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが
精度、簡便さの点で好ましい。末端封止剤によって封止
された末端の特性シグナルが同定できない場合には、ポ
リアミドの極限粘度[η]を測定し、 Mn=21900[η]−7900 (Mnは数平均
分子量を表す) 分子鎖末端基総数(eq/g)=2/Mn の関係を用いて分子鎖末端基総数を算出する。さらに、
滴定によりポリアミドのカルボキシル基末端の数(eq
/g)〔ポリアミドのベンジルアルコール溶液を0.1
N水酸化ナトリウムで滴定する〕およびアミノ基末端の
数(eq/g)〔ポリアミドのフェノール溶液を0.1
N塩酸で滴定する〕を測定し、下記の式(1)により末
端封止率を求めることができる。
【0016】 末端封止率(%)=[(A−B)÷A]×100 ………(1) 〔式中、Aは分子鎖末端基総数(これは通常、ポリアミ
ド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bはカルボキシル
基末端およびアミノ基末端の合計数を表す〕
【0017】末端封止剤としては、ポリアミド末端のア
ミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性
の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止
末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノ
アミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノ
カルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸など
の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化
物、モノエステル類、モノアルコール類なども使用でき
る。
【0018】末端封止剤として使用されるモノカルボン
酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば
特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪
酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ト
リデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボ
ン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカル
ボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボ
ン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカ
ルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、
あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。
これらのうち、反応性、封止末端の安定性、価格などの
点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン
酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチ
ン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が特に好
ましい。
【0019】ポリアミドの末端基をモノカルボン酸で封
止する場合は、ポリアミドの製造に際してジカルボン酸
成分に対するジアミン成分の使用モル数をわずかに多く
して、ポリアミドの両末端がアミノ基になるようにし、
モノカルボン酸を末端封止剤として加えるのがよい。
【0020】ポリアミドのアミノ基末端は、これらのモ
ノカルボン酸で封止されることにより、下記の一般式
(I)で示される封止末端を形成する。
【0021】
【化1】 (式中、Rは上記のモノカルボン酸からカルボキシル基
を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロア
ルキル基、アリール基、アラルキル基である。)
【0022】末端封止剤として使用されるモノアミンと
しては、カルボキシル基との反応性を有するものであれ
ば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルア
ミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミ
ン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミ
ン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミ
ン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘ
キシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モ
ノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、
ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン、あるいはこれ
らの任意の混合物を挙げることができる。これらのう
ち、反応性、沸点、封止末端の安定性および価格などの
点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミ
ン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシル
アミン、アニリンが特に好ましい。
【0023】ポリアミドの末端基をモノアミンで封止す
る場合は、ポリアミドの製造に際してジカルボン酸成分
に対するジアミン成分の使用モル数をわずかに少なくし
て、ポリアミドの両末端がカルボキシル基になるように
し、モノアミンを末端封止剤として加えるのがよい。
【0024】ポリアミドのカルボキシル基末端は、これ
らのモノアミンで封止されることにより、下記の一般式
(II)で示される封止末端を形成する。
【0025】
【化2】 (式中、R1は上記のモノアミンからアミノ基を除いた
残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル
基、アリール基、アラルキル基である。R2は水素原子
または上記のモノアミンからアミノ基を除いた残基であ
り、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル
基、アリール基、アラルキル基である。)
【0026】ポリアミドを製造する際に用いられる末端
封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、
反応装置、反応条件などによって変化するが、通常、ジ
カルボン酸とジアミンの総モル数に対して0.1〜15
モル%の範囲内で使用されるのが好ましい。
【0027】本発明に用いられるポリアミドは、従来よ
りポリアミドを製造する方法として知られている、溶融
重合法、溶液重合法、反応型押出機を使用する重合法な
どの方法を用いて製造することができる。本発明者らの
研究によれば、触媒および必要に応じて末端封止剤を、
最初にジアミンおよびジカルボン酸に一括して添加し、
ナイロン塩を製造した後、いったん280℃以下の温度
において濃硫酸中30℃における極限粘度[η]が0.
10〜0.60dl/gのプレポリマーとし、さらに固
相重合するか、あるいは溶融押出機を用いて重合を行う
ことにより、容易にポリアミドを得ることができる。プ
レポリマーの極限粘度[η]が0.10〜0.60dl
/gの範囲内であると、後重合の段階においてカルボキ
シル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低
下が少なく、さらに分子量分布の小さな、各種性能や成
形性に優れたポリアミドが得られる。重合の最終段階を
固相重合により行う場合、減圧下または不活性ガス流通
下に行うのが好ましく、重合温度が180〜280℃の
範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着
色やゲル化を有効に押さえることができるので好まし
い。重合の最終段階を溶融押出機により行う場合、重合
温度が370℃以下であるとポリアミドの分解がほとん
どなく、劣化の無いポリアミドが得られるので好まし
い。
【0028】ポリアミドの製造の際に用いることができ
る触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、また
はそれらのアンモニウム塩、それらの金属塩(カリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウ
ム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲ
ルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属塩)、それ
らのエステル類(エチルエステル、イソプロピルエステ
ル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエ
ステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステ
アリルエステル、フェニルエステル)などを挙げること
ができる。
【0029】本発明に用いられるポリアミドは、濃硫酸
中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜3.0d
l/gの範囲内であり、0.6〜2.0dl/gの範囲
内のものが好ましく、0.8〜1.6dl/gの範囲内
のものがより好ましい。ポリアミドの極限粘度[η]が
上記の範囲内であれば、成形性に優れるだけでなく、力
学特性、耐熱特性などの諸物性に優れた熱可塑性樹脂組
成物が得られる。
【0030】本発明に用いられるポリアミドは、極限粘
度[η]が0.4〜3.0dl/gの範囲内で、極限粘
度[η]と剪断速度1000s-1で測定した溶融粘度
(MV)との間に、下記の式(2)で示される関係が成
立する。 logMV=1.9[η]+A ………(2) (ここでAは温度により変化する数である。)
【0031】本発明に用いられる好ましいポリアミドの
場合、340℃でのA値は0.6〜1.0であり、33
0℃でのA値と350℃でのA値との差は0.1〜0.
6である。一方、従来のPA6−T系ポリアミドの場
合、極限粘度[η]の係数は本発明に用いられるポリア
ミドとほぼ同じであるが、340℃でのA値は1.3〜
1.7であり、330℃でのA値と350℃でのA値と
の差は0.7〜1.1である。このように、成形温度と
して好ましい330〜350℃において、本発明に用い
られるポリアミドは従来のPA6−T系ポリアミドに比
較して、同じ極限粘度[η]であっても溶融粘度が小さ
く、成形温度の変化にともなう溶融粘度の変化も小さ
い。さらに、本発明に用いられるポリアミドは、成形時
の滞留時間中での溶融粘度の変化が小さいという特性を
も有しており、従来のPA6−T系ポリアミドに比較す
ると成形性が顕著に向上している。
【0032】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のポ
リアミドに、溶融液晶高分子を特定量配合させる必要あ
る。溶融液晶高分子を特定量配合させることにより、力
学強度、低吸水性、耐薬品性などに優れた熱可塑性樹脂
組成物が得られる。溶融液晶高分子の配合割合は、ポリ
アミド100重量部に対して、0.1〜200重量部で
ある必要があり、0.5〜150重量部であるのが好ま
しく、1〜100重量部であるのがより好ましい。
【0033】本発明に用いられる溶融液晶高分子は、溶
融相において液晶を形成する(すなわち光学的異方性を
示す)性質を有しており、ペンタフルオロフェノール中
60℃で測定した極限粘度[η]が0.1〜5dl/g
であるのが好ましい。溶融相におけるこのような光学的
異方性の確認は、加熱装置を備えた偏光顕微鏡を用い
て、直交ニコル下で試料の薄片、好ましくは厚み5〜2
0μm程度の薄片をカバーグラス間に挟み、一定の昇温
速度下で観察し、一定の温度以上で光を透過することを
見ることにより行い得る。なお、観察中に、高温度下で
カバーグラス間に挟んだ試料に軽く圧力を加えるか、あ
るいはカバーグラスをずり動かすことによって、より確
実に偏光の透過を観察し得る。偏光の透過し始める温度
が、光学的に異方性の溶融相への転移温度であり、本発
明に用いられる溶融液晶高分子の転移温度は、溶融成形
の容易さの点から400℃以下であることが好ましく、
350℃以下であることがより好ましい。
【0034】本発明に用いられる溶融液晶高分子は、上
記の条件を満たすものなら特にその構造を問わないが、
代表的な例として、実質的に芳香族ヒドロキシカルボン
酸単位からなるポリエステル;実質的に芳香族ヒドロキ
シカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位および芳香
族ジオール単位からなるポリエステル;実質的に芳香族
ヒドロキシカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位お
よび脂肪族ジオール単位からなるポリエステル;実質的
に芳香族ヒドロキシカルボン酸単位および芳香族アミノ
カルボン酸単位からなるポリエステルアミド;実質的に
芳香族ヒドロキシカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸
単位および芳香族ジアミン単位からなるポリエステルア
ミド;実質的に芳香族ヒドロキシカルボン酸単位、芳香
族アミノカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位およ
び芳香族ジオール単位からなるポリエステルアミド;実
質的に芳香族ヒドロキシカルボン酸単位、芳香族アミノ
カルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位、脂肪族ジオ
ール単位からなるポリエステルアミドなどを挙げること
ができる。
【0035】溶融液晶高分子を構成する芳香族ヒドロキ
シカルボン酸単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安
息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2
−ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などか
ら誘導される単位を挙げることができる。芳香族アミノ
カルボン酸単位としては、p−アミノ安息香酸、m−ア
ミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミ
ノ−2−ナフトエ酸などから誘導される単位を挙げるこ
とができる。芳香族ジカルボン酸単位としては、テレフ
タル酸、イソフタル酸、クロロ安息香酸、4,4’−ビ
フェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン
酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−オキ
シジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボ
ン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸な
どから誘導される単位を挙げることができる。芳香族ジ
オール単位としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、
メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、フェニルヒ
ドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,
6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナ
フタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテ
ル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,
4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどから誘導さ
れる単位を挙げることができる。脂肪族ジオール単位と
しては、エチレングリコール、プロピレングリコール、
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオー
ル、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオー
ル、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカン
ジオール、1,12−ドデカンジオールなどから誘導さ
れる単位を挙げることができる。芳香族ジアミン単位と
しては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジア
ミン、4,4’−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミ
ノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレンなどから誘
導される単位を挙げることができる。
【0036】本発明に用いられる溶融液晶高分子の好ま
しい例としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸単位
および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位からなるポ
リエステル;p−ヒドロキシ安息香酸単位、4,4’−
ジヒドロキシビフェニル単位およびテレフタル酸単位か
らなるポリエステル;p−ヒドロキシ安息香酸単位、エ
チレングリコール単位およびテレフタル酸単位からなる
ポリエステル;p−ヒドロキシ安息香酸単位、6−ヒド
ロキシ−2−ナフトエ酸単位およびp−アミノ安息香酸
単位からなるポリエステルアミドなどを挙げることがで
きる。
【0037】上記の熱可塑性樹脂組成物100重量部に
対して、さらに充填剤を1〜200重量部配合すること
ができる。このような割合で充填剤を配合することによ
り、成形性、力学特性、熱変形温度などの特性がより向
上した熱可塑性樹脂組成物が得られるので好ましい。充
填剤の配合割合は、ポリアミド100重量部に対して、
1〜150重量部であるのがより好ましく、2〜100
重量部であるのがさらに好ましい。
【0038】充填剤としては、従来より知られている粉
末状、繊維状、クロス状などの各種形態を有する充填剤
を用いることができる。
【0039】粉末状充填剤としては、シリカ、シリカア
ルミナ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ
素、タルク、マイカ、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシ
ウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、アスベ
スト、ガラスビーズ、カーボンブラック、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレンな
どを挙げることができる。このような粉末状充填剤とし
ては、通常、平均粒径が0.1μm〜200μmの範囲
ものを用いるのが好ましく、1μm〜100μmの範囲
のものを用いるのがより好ましい。これらの粉末状充填
剤を用いると、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品
の寸法安定性、機械特性、耐熱特性、物理化学的特性、
摺動特性などが向上する。
【0040】繊維状充填剤としては、ポリパラフェニレ
ンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタ
ルアミド繊維、ポリパラフェニレンイソフタルアミド繊
維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ジアミ
ノジフェニルエーテルとテレフタル酸またはイソフタル
酸との縮合物から得られる繊維などの全芳香族ポリアミ
ド繊維、全芳香族液晶ポリエステル繊維などの有機系の
繊維状充填剤;あるいはガラス繊維、炭素繊維またはホ
ウ素繊維などの無機系の繊維状充填剤が挙げられる。こ
のような繊維状充填剤を使用すると、熱可塑性樹脂組成
物から得られる成形品の力学強度が向上するだけでな
く、寸法安定性、低吸水性などが向上するので好まし
い。このような繊維状充填剤としては、通常、平均長が
0.05〜50mmの範囲のものを用いるのが好まし
い。さらに、成形性が良好であり、得られる成形品の摺
動特性、耐熱性、機械的特性がより向上する点で、平均
長が1〜10mmの範囲のものを用いるのがより好まし
い。これらの繊維状充填剤は、クロス状などに二次加工
されていてもよい。
【0041】これらの充填剤は、1種または2種以上混
合して使用することができる。特に、上記の繊維状充填
剤と、粉末状充填剤とを組合わせて使用することによ
り、成形性、表面美麗性、力学特性、および耐熱性がよ
り優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるので好
ましい。また、これらの充填剤として、シランカップリ
ング剤あるいはチタンカップリング剤などで表面処理し
た物を使用することもできる。充填剤の表面をこれらの
カップリング剤で処理したものを使用すると、得られる
成形品の力学特性が優れる点で好ましい。シランカップ
リング剤のなかでも、得られる成形品の力学特性が特に
優れることから、アミノシラン系のカップリング剤を使
用することがより好ましい。
【0042】その他必要に応じて、銅化合物などの安定
剤;着色剤;紫外線吸収剤;光安定化剤;ヒンダードフ
ェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、チオ系など
の酸化防止剤;帯電防止剤;臭素化ポリマー、酸化アン
チモン、金属水酸化物などの難燃剤;結晶核剤;可塑
剤;潤滑剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、
防曇剤、顔料、染料、天然油、合成油およびワックスな
どをポリアミドの重縮合反応時、またはその後に添加す
ることもできる。
【0043】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のポ
リアミドと溶融液晶高分子とを、さらに、必要に応じて
上記の充填剤や添加剤を、所望の方法で混合することに
より製造することができる。例えば、樹脂材料の混合に
通常用いられるような縦型または水平型の混合機を用い
て予備混合した後、一軸または二軸の押出機、ニーダ
ー、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの混練
装置を用いて、加熱下に溶融混練することにより、本発
明の熱可塑性樹脂組成物が製造される。
【0044】上記のようにして製造した樹脂組成物を用
いて、通常の溶融成形法、例えば、圧縮成形法、射出成
形法、押出成形法などにより所望の形状の成形品を製造
することができる。
【0045】例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、
シリンダ温度が280〜350℃に調節された射出成形
機のシリンダ内で樹脂を溶融させ、所定の形状の金型内
に導入(射出)することにより成形品を製造することが
できる。また、上記のシリンダ温度に調節された押出機
内で熱可塑性樹脂組成物を溶融させ、口金ノズルより紡
出することにより、繊維を製造することができる。さら
に、上記のシリンダ温度に調節された押出機内で熱可塑
性樹脂組成物を溶融させ、Tダイから樹脂を押出すこと
により、フィルムを製造することができる。さらに、イ
ンフレーション成形、吹き込み成形などによってもフィ
ルムやボトルなどの成形品を得ることができる。
【0046】上記のような成形品は、さらに表面に塗
料、金属層、あるいは他種ポリマーなどで被覆した状態
で使用することもできる。
【0047】本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形
品としては、例えば、電動工具、一般工業用部品、ギ
ヤ、カムなどの機械部品、コネクタ、スイッチ、リレ
ー、MID、プリント配線板、電子部品のハウジングな
どのような電子部品、フィルム、シート、繊維など種々
の形態の成形品を挙げることができる。特に、自動車用
途の成形品、例えば、自動車の内外装部品、自動車のエ
ンジンルーム内の部品、自動車の電装部品などに好適に
使用することができる。
【0048】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものでは
ない。なお、以下の例において、ポリアミドの末端封止
率、極限粘度、融点;熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度;
成形品の引張強度、吸水率、線膨脹係数、耐アルコール
性、耐熱水性は下記の方法により測定または評価した。
【0049】末端封止率1H−NMR(500MH
z,重水素化トリフルオロ酢酸中、50℃で測定)を用
い、各末端基ごとの特性シグナルの積分値よりカルボキ
シル基末端、アミノ基末端および封止末端の数をそれぞ
れ測定し、前記の式(1)から末端封止率を求めた。測
定に用いた代表的なシグナルの化学シフト値を以下に示
す。
【0050】
【表1】
【0051】極限粘度[η]:濃硫酸中、30℃にて、
0.05,0.1,0.2,0.4g/dlの濃度の試
料の固有粘度(ηinh )を測定し、これを濃度0に外挿
した値を極限粘度[η]とした。 ηinh =[ln(t1/t0)]/c 〔式中、ηinh は固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の
流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、c
は溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0052】融点:示差走査熱量計(メトラー社製「D
SC30」)を用いて、試料を100℃/分の速度で昇
温して完全に融解させた後、10℃/分の降温速度で5
0℃まで冷却し、再び10℃/分の速度で昇温した時に
現れる吸熱ピークの位置の温度を測定し、これを融点と
した。
【0053】溶融流動性:KAYNESS製「キャピラ
リーレオメーター、GALAXYV MODEL805
2」(ダイ径1mm、L/D=10)を使用して、34
0℃における、剪断速度1000s-1での溶融粘度(p
oise)を測定し、成形加工性の指標とした。
【0054】吸水率:80×80×3mmの射出成形品
を、23℃の水中に24時間浸漬した。浸漬前後の成形
品の重量変化から吸水率(%)を求めた。
【0055】引張強度:JIS1号ダンベル型射出成形
片を用い、JIS K 7113に準拠して測定した。
【0056】線膨脹係数:80×80×3mmの射出成
形品から、3×3×3mmの試験片を作製し、10℃/
分で昇温した時の、50〜70℃の温度領域における機
械軸方向(MD方向)の寸法変化を、熱機械分析(TM
A)装置(メトラー社製「TMA40」)を用いて測定
し、下記の式(3)により線膨張係数を求めた。
【0057】 線膨脹係数(1/℃)=(L1−L2)/〔(T1−T2)×L0〕 (3) (式中、L0は初期の試料長(mm)、L1は70℃にお
ける試料長(mm)、L 2は50℃における試料長(m
m)、T1は70(℃)、T2は50(℃)を示す。)
【0058】耐アルコール性:JIS1号ダンベル型射
出成形片を、23℃のメタノール中に1週間浸漬した。
浸漬前後の成形品の引張強度を測定し、引張強度の保持
率(%)を求めた。
【0059】耐熱水性:JIS1号ダンベル型射出成形
片を、耐圧オートクレーブ中でスチーム処理し(120
℃、2気圧で120時間)、さらにその試料を120℃
で120時間真空乾燥した。処理前後の成形品の引張強
度を測定し、引張強度の保持率(%)を求めた。
【0060】参考例1 テレフタル酸3256.2g(19.60モル)、1,
9−ノナンジアミン3165.8g(20.0モル)、
安息香酸97.7g(0.80モル)、次亜リン酸ナト
リウム一水和物6.5g(原料に対して0.1重量%)
および蒸留水2.2リットルを内容積20リットルのオ
ートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分
間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温し
た。この時、オートクレーブは22kg/cm2まで昇
圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温
し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐
々に抜いて圧力を22kg/cm2に保ちながら反応さ
せた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2まで
下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η]が0.2
5dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、
減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕
した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時
間固相重合し、融点が317℃、極限粘度[η]が1.
10dl/g、末端封止率が90%である白色のポリア
ミドを得た。
【0061】参考例2〜8 ジカルボン酸成分、ジアミン成分および末端封止剤(安
息香酸)を、下記の表2に示した割合で用いる以外は、
参考例1と同様にして製造することによりポリアミドを
得た。得られたポリアミドの極限粘度[η]、末端封止
率および融点を併せて下記の表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】実施例1〜5、比較例1〜3 参考例1〜8で得られたポリアミドと、下記の表4に示
した溶融液晶高分子(TLCP)とを、下記の表4に示
した割合で混合し、東洋精機製作所製の二軸押出機「ラ
ボプラストミル2D25W」を使用して、シリンダー温
度をポリアミドの融点よりも20〜40℃高い温度に設
定し、40rpmの回転速度で溶融状態で押出すことに
より熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成
物を、日精樹脂工業製の射出成形機「FS80S12A
SE」を用いて、シリンダー温度を樹脂の融点よりも2
0〜40℃高い温度に、金型温度を150℃に設定して
射出成形した。得られた成形品について評価した結果を
下記の表4に示す。なお、下記の表4〜6に記載されて
いる、溶融液晶高分子の略称は下記の表3の通り。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】実施例6〜10、比較例4、5 下記の表5に示したポリアミドおよび溶融液晶高分子
を、下記の表5に示した割合で混合し、東洋精機製作所
製の二軸押出機「ラボプラストミル2D25W」を使用
して、シリンダー温度をポリアミドの融点よりも20〜
40℃高い温度に設定し、40rpmの回転速度で溶融
状態で押出すことにより熱可塑性組成物を得た。この熱
可塑性樹脂組成物を、日精樹脂工業製の射出成形機「F
S80S12ASE」を用いて、シリンダー温度を樹脂
の融点よりも20〜40℃高い温度に、金型温度を15
0℃に設定して射出成形した。得られた成形品について
評価した結果を下記の表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】実施例11〜15、比較例4 下記の表6に示したポリアミドおよび溶融液晶高分子
を、下記の表6に示した割合で混合し、東洋精機製作所
製の二軸押出機「ラボプラストミル2D25W」を使用
して、シリンダー温度をポリアミドの融点よりも20〜
40℃高い温度に設定し、40rpmの回転速度で溶融
状態で押出してペレット化した。こうして得られたペレ
ットと下記の表6に示した充填剤とを、表6に示した割
合で混合し、プラスチック工学研究所製の一軸押出機
「UT−40H」を用いて、シリンダー温度をポリアミ
ドの融点よりも20〜40℃高い温度に設定し、溶融状
態で押出すことにより充填剤が配合された熱可塑性樹脂
組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を、日精樹脂工
業製の射出成形機「FS80S12ASE」を用いて、
シリンダー温度を樹脂の融点よりも20〜40℃高い温
度に、金型温度を150℃に設定して射出成形した。得
られた成形品について評価した結果を下記の表6に示
す。
【0069】
【表6】
【0070】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、極めて
優れた成形加工性を有すると共に、低吸水性、寸法安定
性、耐薬品性、力学強度などに優れており、これらの熱
可塑性樹脂組成物から得られるエンジニアリング用途の
部品、繊維、フィルム、シート、ボトルなどの種々の形
状の成形品は、産業資材、工業材料、家庭用品などの用
途に好適に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柏村 次史 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社 クラレ内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジカルボン酸単位の60〜100モル%
    がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜1
    00モル%が1,9−ノナンジアミン単位からなるポリ
    アミドであって、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度
    [η]が0.4〜3.0dl/gで、かつその末端基の
    10%以上が封止されているポリアミド(A1)100
    重量部に、溶融液晶高分子(B)を0.1〜200重量
    部配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 ジカルボン酸単位の60〜100モル%
    がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜1
    00モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2−メ
    チル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ
    1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オ
    クタンジアミン単位のモル比が60:40〜99:1で
    あるポリアミドであって、濃硫酸中30℃で測定した極
    限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gであるポリアミ
    ド(A2)100重量部に、溶融液晶高分子(B)を
    0.1〜200重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組
    成物100重量部に、充填剤を1〜200重量部配合し
    てなる熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項記載の熱可
    塑性樹脂組成物からなる成形品。
JP16073595A 1995-06-27 1995-06-27 熱可塑性樹脂組成物 Expired - Lifetime JP3549624B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16073595A JP3549624B2 (ja) 1995-06-27 1995-06-27 熱可塑性樹脂組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16073595A JP3549624B2 (ja) 1995-06-27 1995-06-27 熱可塑性樹脂組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0912875A true JPH0912875A (ja) 1997-01-14
JP3549624B2 JP3549624B2 (ja) 2004-08-04

Family

ID=15721330

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16073595A Expired - Lifetime JP3549624B2 (ja) 1995-06-27 1995-06-27 熱可塑性樹脂組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3549624B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4996748A (en) * 1988-11-03 1991-03-05 Maschinenfabrik Rieter Ag Double feed table
EP0957132A1 (en) * 1998-05-12 1999-11-17 Toray Industries, Inc. Polyamide resin composition
EP1170335A2 (en) * 2000-07-06 2002-01-09 Dsm Jsr Engineering Plastics Kabushiki Kaisha Thermoplastic resin composition
JP2017141395A (ja) * 2016-02-12 2017-08-17 三井化学株式会社 ヒューズハウジング用樹脂組成物、及びヒューズハウジング

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4996748A (en) * 1988-11-03 1991-03-05 Maschinenfabrik Rieter Ag Double feed table
EP0957132A1 (en) * 1998-05-12 1999-11-17 Toray Industries, Inc. Polyamide resin composition
US6121388A (en) * 1998-05-12 2000-09-19 Toray Industries, Inc. Polyamide resin composition
EP1170335A2 (en) * 2000-07-06 2002-01-09 Dsm Jsr Engineering Plastics Kabushiki Kaisha Thermoplastic resin composition
JP2002020618A (ja) * 2000-07-06 2002-01-23 Dsmjsr Engineering Plastics Kk 熱可塑性樹脂組成物
EP1170335A3 (en) * 2000-07-06 2003-02-05 Dsm Jsr Engineering Plastics Kabushiki Kaisha Thermoplastic resin composition
JP4605861B2 (ja) * 2000-07-06 2011-01-05 コニンクリーケ デーエスエム ナムローゼ フェンノートシャップ 熱可塑性樹脂組成物
JP2017141395A (ja) * 2016-02-12 2017-08-17 三井化学株式会社 ヒューズハウジング用樹脂組成物、及びヒューズハウジング

Also Published As

Publication number Publication date
JP3549624B2 (ja) 2004-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3466330B2 (ja) ポリアミドおよびポリアミド組成物
JP3481730B2 (ja) ポリアミド組成物
KR0168468B1 (ko) 폴리아미드 및 폴리아미드 조성물
RU2540338C2 (ru) Композиция огнестойкой полиамидной смолы
JP5640975B2 (ja) ポリアミド樹脂
TW593542B (en) Polyamide composition
JP3986889B2 (ja) ポリアミド組成物
JPH07228776A (ja) 成形材料用ポリアミド組成物
JPH07228689A (ja) ポリアミド樹脂
JPH07228775A (ja) 難燃性ポリアミド組成物
JPWO2015053181A1 (ja) 炭素繊維強化樹脂組成物、ペレット、成形品および電子機器筐体
JP2000204244A (ja) ポリアミド組成物
JPH07228690A (ja) ポリアミド
JP3466331B2 (ja) ポリアミド、ポリアミド組成物およびその用途
JP2000086759A (ja) ポリアミドおよびその組成物
JP4245716B2 (ja) ポリアミド組成物
JP3549624B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP3529899B2 (ja) ポリアミドおよびその組成物
JP2020186323A (ja) ポリアミド樹脂組成物
JP2000186142A (ja) ポリアミドの製造方法
JP2000212437A (ja) ポリアミド組成物およびそれからなる成形品
JP3549623B2 (ja) 樹脂組成物
JPH07228768A (ja) 耐熱老化性ポリアミド組成物
JP3742244B2 (ja) ポリアミド組成物
JP3523316B2 (ja) 半芳香族ポリアミドの製造法

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040406

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040421

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080430

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090430

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090430

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100430

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110430

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110430

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120430

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120430

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130430

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130430

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140430

Year of fee payment: 10

EXPY Cancellation because of completion of term