JPH09100166A - 複合焼結体 - Google Patents

複合焼結体

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JPH09100166A
JPH09100166A JP7260387A JP26038795A JPH09100166A JP H09100166 A JPH09100166 A JP H09100166A JP 7260387 A JP7260387 A JP 7260387A JP 26038795 A JP26038795 A JP 26038795A JP H09100166 A JPH09100166 A JP H09100166A
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germanium
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JP7260387A
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Shoji Tachibana
昇二 橘
Kenichi Hirano
賢一 平野
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱電変換効率または成績係数を決定する変数
の一つである熱伝導率が低く、かつ耐酸化性に優れ、代
表的な反応であるα-Fe2Si5相とFeSi相から速
い包析反応で生成するβ-FeSi2相を含む新規な複合
焼結体を提供することを目的とする。 【解決手段】 (A)けい素−ゲルマニウム合金相と
(B)ζβ-鉄シリサイド相とからなり、(A)相の割
合が35〜70モル%であり、(A)相または(B)相
からなる分散相の平均領域径が1μm以下であることを
特徴とする複合焼結体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電変換効率また
は成績係数を決定する変数の一つである熱伝導率が低
く、耐酸化性に優れる新規な複合焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】エネルギー源の大半を他の諸外国に依存
しているわが国にとって、新エネルギー開発の問題、ま
た年間約2億キロリットル(石油換算)にもなる膨大な
排熱の有効利用の問題、さらには地球の温暖化、あるい
は脱フロン化の問題は、対策を要する緊急の課題であ
る。
【0003】このような状況において、熱電変換材料
(熱電材料ともいう)は、排熱を電力として有効に利用
することが可能な熱発電用素子として、またフロンガス
などの冷却用媒体を用いることなく室温付近の温度制御
を行うことができる熱電冷却及び熱電加熱用素子、即ち
温度制御用素子として、さらには温度センサー用素子と
して実用化が期待されている。上記素子は総称して熱電
変換素子、あるいは熱電素子と呼ぶ。
【0004】熱電変換素子は、通常、添加剤を添加した
n型及びp型の電気伝導特性を有する(以下、単にn型
及びp型という)熱電変換材料を、図1に示したような
U字型あるいはπ字型などの形状に作製し、動作させ
る。
【0005】例えば、熱発電用素子においては、n型及
びp型の熱電変換材料の接合部(図1のaの付近、以
下、接合部という)を高温の媒体に接触あるいは近接さ
せ、接合部の反対側の端部(図1のb及びcの付近)を
空冷あるいは強制冷却し、ゼーベック効果によってab
間及びac間に生じる電力をbc間から取り出し、この
電力を電気機器を動作させることなどに利用する。この
とき熱発電用素子が高温の媒体から受け取る熱量(|Q
g|)に対して得られる電力(Pg)の割合、即ちPg/
|Qg|の値を熱電変換効率といい、より高い熱電変換
効率を有する熱電変換材料が好ましい。なお、高温の媒
体の代わりに液化天然ガスなどの極低温の媒体を利用す
ることもある。
【0006】また温度制御用素子においては、接合部の
反対側の端部間(図1のbc間)に直流の電力を入力
し、ペルチェ効果によって接合部が冷却あるいは加熱さ
れる現象を利用して、他の媒体の温度制御を行うもので
ある。このとき冷却を行うか、加熱を行うかは、電流の
方向によって制御できる。このとき温度制御用素子に入
力した電力(Pc)に対して接合部での吸熱量または発
熱量(|Qc|)、即ち|Qc|/Pcの値を成績係数と
いい、より高い成績係数を有する熱電変換材料が好まし
い。
【0007】上記熱電変換素子においては、図1のb及
びcに電極を接続したり、複数の熱電変換素子を並列あ
るいは直列に接続し、動作させる場合もある。またπ字
型の熱電変換素子においては、n型とp型の熱電変換材
料は直接接合されず、電極を介して接合される場合が多
い。
【0008】現在、熱電変換効率または成績係数の高い
熱電変換材料を見い出すため、次(1)式で表される性
能指数(Z)の高い熱電変換材料の開発がなされてい
る。これは、性能指数が熱電変換効率または成績係数を
決定する変数の一つとなっており、性能指数が高くなる
と、熱電変換効率または成績係数も高くなるからであ
る。
【0009】 Z=S2/(ρ・κ) (単位;1/K) …(1) ここでS、ρ及びκは、それぞれ熱電変換材料のゼーベ
ック係数、電気抵抗率、及び熱伝導率であり、各々測定
可能な値である。1式から、熱電変換効率または成績係
数の高い材料は、ゼーベック係数が高く、電気抵抗率及
び熱伝導率が低い材料によって達成されることがわか
る。
【0010】また下記(2)式で示される出力因子(P
f)によっても熱電変換材料を評価することもある。出
力因子は性能指数と同様に高い方が、熱電変換効率また
は成績係数は高くなる。
【0011】 Pf=S2/ρ (単位;W/K2・m) …(2) ゼーベック係数、電気抵抗率、及び熱伝導率は、図1に
示したようにn型とp型の熱電変換材料を接合した状態
で測定されることもあるが、通常はn型とp型の熱電変
換材料を接合せずに、単独の状態で測定されることが多
い。具体的には、ゼーベック係数は、発熱体などを利用
して同一の熱電変換材料内の2地点を異なる温度に保持
し、該2地点間に発生した電位差及び温度差を測定し、
該電位差及び温度差から与えられる。このとき得られる
ゼーベック係数は、該2地点の平均温度における値とし
て定義される。また電気抵抗率は、ゼーベック係数と同
様に同一の熱電変換材料内に温度差を与えた状態で、あ
るいは熱電変換材料を均一な温度に保持した状態で、四
端子法などによって測定を行う。さらに熱伝導率は通
常、熱電変換材料の比熱、密度、及びレーザーフラッシ
ュ法などによって測定された熱拡散率から算出される。
熱伝導率の測定においても、同一の熱電変換材料内に温
度差を与えた状態かまたは、熱電変換材料を均一な温度
に保持した状態で行われる。
【0012】性能指数は、平均温度Tで測定されたゼー
ベック係数の値と、平均温度Tで測定された電気抵抗率
あるいは均一な温度Tで測定された電気抵抗率の値、及
び平均温度Tで測定された熱伝導率あるいは均一な温度
Tで測定された熱伝導率の値を用いて、前記(1)式か
ら算出される。このときの性能指数は、平均温度Tにお
ける値として定義される。
【0013】現在有望とされている熱電変換材料に、け
い素−ゲルマニウム合金(Si-Ge合金ともいう)と
ζβ-鉄シリサイド(β-FeSi2ともいう)がある。
【0014】Si-Ge合金はβ-FeSi2と比較して
電気抵抗率が低く、性能指数が高いこと、またB、P、
Asなどのドーピング元素を添加することによって性能
指数が向上し、かつn型、あるいはp型の熱電変換材料
を製造することができることなどの理由から、熱電変換
材料として大きな期待がかけられている。しかしながら
Si-Ge合金は難焼結材であるため、高密度の焼結体
を作製するには、約1200℃以上の高温で焼結する必
要がある。即ち多くのエネルギーを必要とすること、ま
た600℃以上で耐酸化性が低下するため、熱電変換素
子として利用したときに高温の媒体に接触あるいは近接
させた部分が酸化し、性能指数が低下すること、さらに
地殻中の存在量が非常に少ない元素であるGeを含有す
るため、Si-Ge合金のみからなる熱電変換素子は非
常に高価であり、未だに実用化されていないという課題
があった。
【0015】一方、β-FeSi2はゼーベック係数が高
いこと、地殻中の存在量が多い元素から構成されるこ
と、また焼結体としたときの機械的強度、及び耐酸化性
に優れること、またさらにはCo、あるいはMn及びA
lなどのドーピング元素を添加することによって性能指
数が向上し、かつn型、あるいはp型の熱電変換材料を
製造することができることなどの理由から、やはり熱電
変換材料として大きな期待がかけられている。しかしな
がらβ-FeSi2は主に電気抵抗率が高いため、性能指
数が低いという課題があった。
【0016】そこで、Si-Ge合金とβ-FeSi2
両方のよい特性を具備するため、また熱伝導率の低下を
ねらって、両相からなる複合体を製造した例がある。こ
こで、Si-Ge合金単体及びβ-FeSi2単体(ドー
ピング元素及び添加成分を添加していないもの)の熱伝
導率はいずれも11〜12W/Km程度であり、ほとん
ど変わらないにもかかわらず、熱伝導率の低下をねらっ
た理由は、複合化によって異なる相が接する境界ができ
るため、単体の場合よりもフォノンの散乱効果が大きく
なると期待されるからである。
【0017】複合化の最初の例は、アメリカ特許328
5017号である。この特許の中に、Si-Ge合金相
を母相とし、鉄などのけい化物相を母相に対して0.0
01〜29モル%含有する複合体が開示されている。し
かしながら上記特許の複合体中のSi-Ge合金相の含
有率をけい化物相とSi-Ge合金相の合計量に対する
割合に換算すると77.5〜99.999モル%とな
り、Si-Ge合金相の割合が多く、けい化物相の割合
が少ないため、異なる相が接する境界が少なく、複合化
による熱伝導率の低下の効果が小さいという問題があっ
た。また上記複合体中においては、Si-Ge合金相の
割合が多いために、Si-Ge合金相の大きさが数μm
〜数100μm以上の複合体となるので、高温の酸化性
雰囲気にさらされると、複合体の表面層のみだけではな
く、Si-Ge合金相を通して次々に酸化が起こり、S
i-Ge合金相の大きさ程度の厚さか、あるいはそれ以
上にまで酸化が進行してしまい、性能指数が低下すると
いう問題、即ち耐酸化性が劣るという問題があった。さ
らには上記複合体には以下のような問題があった。
【0018】鉄のけい化物相、即ち鉄シリサイド相に
は、β-FeSi2相、α-Fe2Si5相(α-FeSi
2+X相、α-Fe1-XSi2相、ζα相などともいう)、F
eSi相(ε相ともいう)、Fe3Si相などがある。
上記特許の中では具体的な鉄シリサイド相の種類につい
ての記述はないが、もし上記鉄シリサイド相がβ-Fe
Si2相以外の鉄シリサイド相である複合体の場合は、
ゼーベック係数が極端に低下し、性能指数が低下すると
いう欠点があった。
【0019】またさらには上記鉄シリサイド相がβ-F
eSi2相である複合体の場合には、次のような問題が
あった。β-FeSi2相は、ドーピング元素によっても
異なるが、約980℃以上の温度で分解反応を起こし、α-
Fe2Si5相とFeSi相の2相の共晶合金になり、ま
たα-Fe2Si5相とFeSi相の2相の共晶合金は約9
80℃以下で包析反応(β化反応ともいう)を起こし、β
-FeSi2相になるという性質を有する。分解反応、及
び包析反応を起こす温度をそれぞれ分解温度、包析温度
というが、通常、両温度は同じ温度であるため、以降、
両温度を変態温度という。熱電変換素子に有用なβ-F
eSi2相からなる高密度の焼結体を製造する場合に
は、通常、Fe、Si、あるいはFe、Si、及びドー
ピング元素を含有する原料を溶解、固相反応、またはメ
カニカルアロイングなどを利用した方法によって合金化
し、必要ならば粉砕した後、得られた粉末を変態温度以
上で焼結し、α-Fe2Si5相とFeSi相を有する焼
結体とした後、包析反応を起こさせるために変態温度以
下でβ化熱処理を行う。但し、焼結とβ化熱処理を同時
に行うために、変態温度以下で焼結を行うこともある
が、この場合は低密度の焼結体しか得られず、熱電変換
素子として利用するためには強度が不足する上、電気抵
抗率が高くなる。よって上記特許の鉄シリサイド相を含
有する複合体においても、高密度の複合体を得るために
は、変態温度以上で焼結し、Si-Ge合金相、α-Fe
2Si5相、FeSi相の3相を含有する焼結体とした
後、変態温度以下でβ化熱処理を行う必要がある。この
ときβ-FeSi2相はα-Fe2Si5相とFeSi相の
包析反応によって生成するため、包析反応を短時間で起
こさせるためには、α-Fe2Si5相とFeSi相が効
率よく接していることが必要となる。
【0020】ところが、上記特許の複合体ではSi-G
e合金相の割合が多いため、β化熱処理前においてα-
Fe2Si5相とFeSi相の間に、数μm〜数100μ
m程度の大きなSi-Ge合金相が介在した組織を有す
る焼結体となり、β化熱処理での包析反応を妨げ、α-
Fe2Si5相が残留し、ゼーベック係数の低い複合体し
か得られないという問題があった。
【0021】一方、特開平6−204571号及び特開
平6−268263号に、鉄シリサイド相とSi-Ge
合金相の複合熱電材料または複合体の製造方法が開示さ
れている。
【0022】前者の発明は、1〜10μmの粒子径の鉄シ
リサイド相からなる母粒子の周囲に、それよりも10〜20
分の1の粒子径のSi-Ge合金相(Si1-XGeX、0.15
≦X≦0.21の組成のもの)からなる子粒子を3〜5重量
%程度配したカプセル粒子を形成し、これを焼結固化す
るという複合熱電材料の製造方法に関するものである。
この複合熱電材料中のSi-Ge合金相の割合は、Si-
Ge合金相とβ-FeSi2相の合計量に対して8.4〜
14.3モル%に相当する。このような複合熱電材料に
おいては、Si-Ge合金相の割合が少なく、異なる相
が接する境界が少ないため、複合化による熱伝導率の低
下の効果がほとんどないという問題があった。
【0023】後者の発明は、10〜100μmの粒子径のS
i-Ge合金相(Geの含有量は不明)からなる母粒子
の周囲にそれよりも小さい1〜10μmの粒子径の鉄シリ
サイド相からなる子粒子を付着させたマイクロカプセル
粉末を形成し、これを焼結するという複合体の製造方法
に関するものである。この方法によって製造された複合
体中のSi-Ge合金相の割合は、記述がないため不明
であるが、上記構造を有するマイクロカプセル粉末を形
成するためには、特開平6−204571号に記載のカ
プセル粒子の場合と同様に、子粒子(鉄シリサイド)は
数モル%程度でなければならないと考えられる。つまり
この複合体中のSi-Ge合金相の割合は、90数モル
%であると考えられる。このような複合体においては、
鉄シリサイド相の割合が少なく、異なる相が接する境界
が少ないため、複合化による熱伝導率の低下の効果はほ
とんどないという問題があった。また上記複合体におい
ては、Si-Ge合金相の粒子径が非常に大きいため、
前に述べたアメリカ特許に記載の複合体と同様に、耐酸
化性が劣るという問題があった。
【0024】上記説明からわかるように、Si-Ge合
金相とβ-FeSi2相からなる複合焼結体においては、
熱伝導率が低く、耐酸化性が優れたものは存在しなかっ
た。その理由は、Si-Ge合金相の割合と、Si-Ge
合金相及びβ-FeSi2相の大きさを最適な範囲に制御
した複合焼結体が未だかつて存在しなかったからであ
る。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】そこで、熱電変換効率
または成績係数を決定する変数の一つである出力因子
が、高く、かつ平均温度による出力因子の変化がより小
さい熱電変換材料の開発が望まれていた。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記技術
課題を解決すべく、鋭意研究を行ってきた。その結果、
(A)けい素−ゲルマニウム合金相と(B)ζβ-鉄シ
リサイド相とからなり、(A)相の割合が35〜70モ
ル%であり、(A)相または(B)相からなる分散相の
平均領域径が1μm以下である複合焼結体を熱電変換材
料として用いた場合、熱電変換効率または成績係数を決
定する変数の一つである熱伝導率が低く、かつ耐酸化性
に優れることを見い出して、本発明を完成し、ここに提
案するに至った。
【0027】即ち、本発明は、(A)けい素−ゲルマニ
ウム合金相と(B)ζβ-鉄シリサイド相とからなり、
(A)相の割合が35〜70モル%であり、(A)相ま
たは(B)相からなる分散相の平均領域径が1μm以下
であることを特徴とする複合焼結体である。
【0028】他の発明は、(A)けい素−ゲルマニウム
合金相及び(B)ζβ-鉄シリサイド相がp型の電気伝
導特性を有する上記複合焼結体、或は(A)けい素−ゲ
ルマニウム合金相及び(B)ζβ-鉄シリサイド相がn
型の電気伝導特性を有する上記複合焼結体である。更に
他の発明は上記複合焼結体からなる熱電変換材料に関す
るものである。
【0029】次に、これらの発明を詳細に説明する。
【0030】本発明におけるけい素−ゲルマニウム合金
相とは、けい素とゲルマニウムを構成元素とする固溶体
相であり、けい素とゲルマニウムの合計量に対するゲル
マニウムの含有量が20〜50原子%のものをいう。こ
こで固溶体とは、2種類以上の構成元素からなり、溶媒
となる構成元素の単体の結晶格子中に溶質となる構成元
素が置換型かまたは侵入型の形式で溶け込んだ状態の固
体、あるいは溶媒となる金属間化合物などの化合物の結
晶格子中に溶質となる構成元素が置換型かまたは侵入型
の形式で溶け込んだ状態の固体であり、該固溶体は溶媒
となる構成元素の単体あるいは金属間化合物などの化合
物と同一の結晶構造を有する。上記けい素−ゲルマニウ
ム合金相では、けい素が溶媒、ゲルマニウムが溶質であ
る。但し、p型あるいはn型の電気伝導特性を有するよ
うにB、P、Asなどのドーピング元素を添加したり、
熱伝導率が低下するようにGaPなどの添加成分を添加
したけい素−ゲルマニウム合金相も本発明に含めるもの
とする。ドーピング元素及び添加成分を添加したけい素
−ゲルマニウム合金相においても、けい素とゲルマニウ
ムの合計量に対するゲルマニウムの含有量が20〜50
原子%のものをいう。
【0031】該けい素−ゲルマニウム合金相中のゲルマ
ニウムの含有量の決定は、エックス線回折法、電子線回
折法などによる相同定や構造解析の方法、あるいは分析
電子顕微鏡、エックス線マイクロアナライザーなどを用
いた微小部の構成元素の定量分析を行う方法、あるいは
エックス線光電子分光法、メスバウアー分光法、核磁気
共鳴分光法などによる構成元素の結合状態を測定する方
法などによってなされる。
【0032】例えば、エックス線回折法を利用した方法
では、以下のように行われる。該けい素−ゲルマニウム
合金相は、ドーピング元素及び添加成分の存在に関わら
ず、けい素単体あるいはゲルマニウム単体と同一のダイ
ヤモンド構造を有する。したがってエックス線回折法に
よって、該けい素−ゲルマニウム合金相、けい素単体、
及びゲルマニウム単体の分析を行うと、同一の結晶面か
らの回折線が近接した位置に出現する。けい素単体及び
ゲルマニウム単体の格子定数はそれぞれ0.5431nm及び
0.5658nmであり、ゲルマニウム単体の格子定数の方が
大きいため、けい素単体の(hkl)面の回折線の回折
角2θSと、ゲルマニウム単体の(hkl)面の回折線
の回折角2θGを比較すると、2θGの方が小さい。また
2θS及び2θGをけい素−ゲルマニウム合金相の(hk
l)面の回折線の回折角2θSGと比較すると、次の関係
が成り立つ。
【0033】 2θG<2θSG<2θS …(3) 該けい素−ゲルマニウム合金相中のゲルマニウムの含有
量が増加するにしたがって、該けい素−ゲルマニウム合
金相の(hkl)面の回折線はゲルマニウム単体の(h
kl)面の回折線の方へシフトする。即ち、2θSGは2
θGに近づく。このシフト量とゲルマニウムの含有量と
の関係を求め、検量線を作製しておくことによって、該
けい素−ゲルマニウム合金相中のゲルマニウムの含有量
を測定することができる。
【0034】本発明におけるζβ-鉄シリサイド相と
は、通常β-FeSi2と記載される鉄シリサイド相のこ
とであり、エックス線回折法、電子線回折法などによっ
て容易に同定される。該ζβ-鉄シリサイド相には、け
い素を過剰に固溶したものや、p型あるいはn型の電気
伝導特性を有するようにMn、Al、Coなどのドーピ
ング元素を添加したり、熱伝導率が低下するようにジル
コニア、アルミナなどの添加成分を添加したものも含
む。
【0035】ここでシリサイドとは、金属元素とけい素
が比較的簡単な比率で結合し、固有の結晶構造を形成す
るなど元の金属元素やけい素の単体または固溶体とは違
った性質を有する金属間化合物の一種である。よって該
シリサイドのエックス線回折分析を行うと、構成元素の
単体または固溶体からの回折線とは異なる固有の回折線
が検出されるため、該シリサイドと構成元素の単体また
は固溶体とは区別できる。また特に鉄とけい素の金属間
化合物を鉄シリサイドという。
【0036】本発明の複合焼結体とは、けい素−ゲルマ
ニウム合金相の割合が35〜70モル%の範囲にあり、
けい素−ゲルマニウム合金相またはζβ-鉄シリサイド
相からなる分散相の平均領域径が1μm以下のものをい
う。
【0037】けい素−ゲルマニウム合金相の割合とは、
複合焼結体中に生成したけい素−ゲルマニウム合金相の
けい素とゲルマニウムの組成をSi1-XGeX(0.20≦X
≦0.50)の形式で表し、Si1-XGeX及びβ-FeSi2
をそれぞれ1モルとしたとき、Si1-XGeXとβ-Fe
Si2の2相の合計モル数に対するSi1-XGeXの割合
をいう。例えば、ζβ-鉄シリサイド相0.70モル
と、ゲルマニウムの含有量が約33原子%のけい素−ゲ
ルマニウム合金相、即ちSi0.67Ge0.33で表される相
0.9モルとからなる複合焼結体では、けい素−ゲルマ
ニウム合金相の割合は約43.8モル%となる。
【0038】但し、鉄、けい素、及びゲルマニウムの仕
込組成やβ化熱処理条件などによって、該複合焼結体中
にFeSi相が数重量%程度残留することもあるが、こ
のような場合においても、けい素−ゲルマニウム合金相
の割合は、Si1-XGeXとβ-FeSi2の2相の合計モ
ル数に対するSi1-XGeXの割合のことをいう。
【0039】上記けい素−ゲルマニウム合金相の割合
は、エックス線回折法、電子線回折法などの相同定の手
法を応用して測定される。例えば、エックス線回折法を
用いた場合においては、次のようにして測定される。ま
ずけい素−ゲルマニウム合金相の割合が予めわかってい
る2相の複合粉末あるいは複合焼結体のエックス線回折
分析を行い、得られたけい素−ゲルマニウム合金相の回
折線の回折強度と、けい素−ゲルマニウム合金相の割合
との関係、つまり検量線を作成する。次にけい素−ゲル
マニウム合金相の割合がわからない複合焼結体、即ち未
知試料のエックス線回折分析を行い、上記検量線から、
けい素−ゲルマニウム合金相の割合を求める。但し、け
い素−ゲルマニウム合金相中のゲルマニウムの含有量が
異なると、回折線の回折強度が異なることがあるため、
種々のゲルマニウム含有量のけい素−ゲルマニウム合金
相に対して検量線を作成した方が、より正確なけい素−
ゲルマニウム合金相の割合を測定することができるの
で、望ましい。なお、本発明の実施例及び比較例では、
β-FeSi2相の(202)面〔または(220)面〕
とSi-Ge合金相の(111)面の回折線の回折強度
比を用いて検量線を作成し、けい素−ゲルマニウム合金
相の割合を求めた。
【0040】該複合焼結体中のけい素−ゲルマニウム合
金相の割合が35〜70モル%の範囲から外れると、複
合化による熱伝導率の低下の効果が非常に小さくなる。
またけい素−ゲルマニウム合金相の割合が70モル%よ
りも多いと、けい素−ゲルマニウム合金相の体積分率が
β-FeSi2相の体積分率よりも大きくなるため、けい
素−ゲルマニウム合金相の平均領域径(後述)が大きく
なり、耐酸化性が劣るという問題が発生する。特にけい
素−ゲルマニウム合金相の割合が50〜68モル%の複
合焼結体は、熱伝導率の低下の効果がより大きいため好
ましい。
【0041】該複合焼結体中の分散相とは、けい素−ゲ
ルマニウム合金相とζβ-鉄シリサイド相の2相の内、
体積分率が小さい方の相のことである。一方、該複合焼
結体中での体積分率が大きい方の相を母相と称する。本
発明の複合焼結体においては、けい素−ゲルマニウム合
金相とζβ-鉄シリサイド相のいずれが分散相となって
いてもよい。しかしながら、該分散相の平均領域径は1
μm以下である必要がある。平均領域径が1μmを超え
ると、熱伝導率の低下の効果が小さい上、耐酸化性が劣
る。尚、本発明の複合焼結体となる前の未β化熱処理前
駆体において、α-Fe2Si5相、FeSi相およびけ
い素−ゲルマニウム合金相の分散、領域状態が上記状態
を満たす場合もα-Fe2Si5相とFeSi相からβ-F
eSi2相への包析反応が速くなり、大変好ましい。
【0042】けい素−ゲルマニウム合金相とζβ-鉄シ
リサイド相のそれぞれの体積分率は、走査型電子顕微鏡
(SEMともいう)、透過型電子顕微鏡(TEMともい
う)などの装置を用いる通常の微細組織観察によって測
定することが可能であるため、上記分散相と母相の区別
は容易にできる。
【0043】例えば、該複合焼結体の表面を鏡面研磨
後、走査型電子顕微鏡による微細組織観察を行うと、コ
ントラストの差によって、けい素−ゲルマニウム合金相
はζβ-鉄シリサイド相と比較して濃く観察される。し
たがって組織写真を撮影した後、得られた組織写真の上
に多数のドットをランダムに、あるいは数mm間隔ごと
に印刷した透明なフィルムを重ね合わせ、けい素−ゲル
マニウム合金相に重なるドット数を数え、全ドット数に
対する該ドット数の割合を算出する方法によって、けい
素−ゲルマニウム合金相の面積分率を測定することがで
きる。該複合焼結体中ではいずれの箇所も同じ微細組織
を有するので、いずれの箇所も同じ面積分率となる。よ
って上記方法により測定された分散相の面積分率はその
まま体積分率と見なすことができる。但し、分散相の平
均領域径によっても異なるが、誤差を少なくするため、
組織写真は5000倍以上の倍率で撮影することが望ま
しい。例えば、分散相の平均領域径が約0.8μmの場
合は、5000〜50000倍の倍率がよい。上記面積
分率の測定は画像解析装置を用いてもよい。また広い範
囲の微細組織の面積分率を測定できるという理由から、
上記フィルムは組織写真よりも大きい方が好ましい。さ
らには上記フィルムのドットの間隔は、組織写真の倍率
や大きさなどによって適宜調整される。
【0044】けい素−ゲルマニウム合金相とζβ-鉄シ
リサイド相の体積分率を比較すると、焼結密度やβ化熱
処理条件などによっても異なるが、けい素−ゲルマニウ
ム合金相の割合がおよそ65モル%以下のときに、けい
素−ゲルマニウム合金相が分散相となる。
【0045】該複合焼結体の代表的な微細組織を図2に
示す。図2からわかるように、該複合焼結体中の分散相
及び母相は不定形状を有しており、2相が複雑に絡み合
っている。したがって該複合焼結体中の分散相の大きさ
を決定するために、通常行われている方法、即ちスピノ
ーダル分解の生じたガラスにおける方法や、分散相を球
形と仮定する方法を適用することは困難である。それは
以下の理由からである。
【0046】例えば、スピノーダル分解が生じたSiO
2−Na2O系ガラスにおいては、SiO2濃度の高い相
と低い相に分相し、これら2相が複雑に絡み合った微細
組織を有する。分相した2相は不定形状を有しており、
本発明における複合焼結体中の微細組織と似ている。ス
ピノーダル分解の生じた上記ガラスでは、SiO2濃度
が高い相と低い相の境界ははっきりしておらず、正弦曲
線あるいは余弦曲線を重ね合わせた曲線で表されるSi
2の三次元的な組成変動が生じている。このSiO2
三次元的な組成変動の波長は小角エックス線散乱法など
によって測定することが可能であるため、得られた波長
をSiO2濃度の高い相と低い相の相間隔と見なしてい
る。しかし本発明における複合焼結体では、けい素−ゲ
ルマニウム合金相とζβ-鉄シリサイド相の境界ははっ
きりしており、またけい素−ゲルマニウム合金相への鉄
の固溶限、及びζβ-鉄シリサイド相中へのゲルマニウ
ムの固溶限はほとんどないため、スピノーダル分解の場
合のような正弦曲線あるいは余弦曲線を重ね合わせた曲
線で表される三次元的な組成変動は生じていない。した
がって本発明における複合焼結体中の分散相の大きさを
求める目的に、上記組成変動の波長を求める方法を適用
することは困難である。
【0047】またもし分散相が球形あるいは楕円体に近
い形状を有していれば、分散相を球形と仮定し、個々の
直径を測定、平均化し、それを分散相の大きさとすると
いう方法もあるが、本発明における複合焼結体中のけい
素−ゲルマニウム合金相及びζβ-鉄シリサイド相は複
雑な不定形状を有しているため、いずれかの相を球形と
仮定するには無理がある。
【0048】そこで、本発明における複合焼結体の分散
相の大きさの平均を次のようにして求め、該平均値を平
均領域径と定義した。
【0049】まず該複合焼結体の微細組織観察を行い、
組織写真を撮影する。得られた組織写真に2本の対角
線、及び任意の数本の線を引く。これらの線は、けい素
−ゲルマニウム合金相とζβ-鉄シリサイド相を交互に
横切る。次にけい素−ゲルマニウム合金相とζβ-鉄シ
リサイド相の内、体積分率の小さな相、即ち分散相を横
切る線の長さ(L(n))をノギスなどの長さ測定器具、
あるいは画像解析装置などを用いて測定する。そして横
切る線の長さを、横切る分散相の数(X)で平均化す
る。即ち、その平均値をLaとすると、下記式(4)
【0050】
【数1】
【0051】で表すことができる。次に写真の倍率を考
慮し、Laを実際の長さに換算し、分散相の平均領域径
とする。誤差を少なくするため、横切る分散相の数は1
0個以上が望ましい。
【0052】けい素−ゲルマニウム合金相がp型の電気
伝導特性を有するようにするためには、長周期型元素周
期表〔例えば、小原著、金属組織学概論、朝倉書店、6
(1983)〕においてB、Gaなどの3B族元素などを、ま
たn型の電気伝導特性を有するようにするためには、
P、Asなどの5B族元素などをドーピング元素として
添加する。けい素−ゲルマニウム合金相へ上記ドーピン
グ元素を添加すると、電気抵抗率が低下するため、好ま
しいが、あまり多く添加し過ぎると、ゼーベック係数の
低下を招く。好ましい添加量は、けい素とゲルマニウム
の合計量に対して、0.01〜10原子%であり、さら
には0.1〜3原子%が望ましい。
【0053】またけい素−ゲルマニウム合金相へGaP
などの添加成分を添加すると、熱伝導率がさらに低下す
るため好ましいが、あまり多く添加し過ぎると、電気抵
抗率の上昇を招く。好ましい添加量は、けい素−ゲルマ
ニウム合金相に対して、0〜20モル%が好ましく、さ
らには2〜10モル%が望ましい。但し、添加成分は、
けい素−ゲルマニウム合金相及びζβ-鉄シリサイド相
と反応性がないか、または反応性が低いものが好まし
い。そのような添加成分として、GaPの他にジルコニ
ア、チタニアなどの酸化物がある。
【0054】一方、ζβ-鉄シリサイド相がp型の電気
伝導特性を有するようにするためには、長周期型元素周
期表において、Y、La、Ceなどの3A族元素、T
i、Zrなどの4A族元素、V、Nbなどの5A族元
素、Cr、Moなどの6A族元素、Mn、Reなどの7
A族元素、Alなどの3B族元素などを添加し、またn
型の電気伝導特性を有するようにするためには、Co、
Niなどの8族元素(Fe、Ru、Osを除く)などを
ドーピング元素として添加する。この中で、Cr、M
n、Co、Ni、Alなどの第3周期及び第4周期に属
する元素は、性能指数を向上させる効果が大きいため好
ましい。ζβ-鉄シリサイド相へ上記ドーピング元素を
添加すると、電気抵抗率が低下するため好ましいが、あ
まり多く添加し過ぎると、ゼーベック係数の低下を招
く。好ましい添加量は、鉄とドーピング元素の合計量に
対して、0.01〜12原子%であり、さらには2〜1
0原子%が望ましい。
【0055】またζβ-鉄シリサイド相へジルコニア、
アルミナなどの添加成分を添加すると、熱伝導率がさら
に低下するため好ましいが、あまり多く添加し過ぎる
と、電気抵抗率の上昇を招く。好ましい添加量は、ζβ
-鉄シリサイド相に対して、0〜20モル%が好まし
く、さらには2〜10モル%が望ましい。但し、添加成
分は、ζβ-鉄シリサイド相及びけい素−ゲルマニウム
合金相と反応性がないか、または反応性が低いものが好
ましい。そのような添加成分として、ジルコニア、アル
ミナの他にチタニア、マグネシアなどの酸化物がある。
【0056】上記ドーピング元素あるいは添加成分を、
同時に2種類以上添加しても構わないし、ドーピング元
素と添加成分を両方添加しても構わない。但し、電気伝
導特性をp型に変化させるドーピング元素と、n型に変
化させるドーピング元素を同時に添加することは、性能
指数の低下を招くため、避けた方がよい。
【0057】またゼーベック係数の低下、及び電気抵抗
率の上昇を防ぐため、複合焼結体中のけい素−ゲルマニ
ウム合金相及びζβ-鉄シリサイド相の電気伝導特性は
同一にする。即ち、p型の複合焼結体を製造する場合に
は、p型のけい素−ゲルマニウム合金相とp型のζβ-
鉄シリサイド相を複合化させ、またn型の複合焼結体を
製造する場合には、n型のけい素−ゲルマニウム合金相
とn型のζβ-鉄シリサイド相を複合化させる。
【0058】本発明における複合焼結体の好適な製造方
法としては、けい素−ゲルマニウム合金相と鉄シリサイ
ド相の粉末を別々に製造し、後に複合化し焼結する方法
と、けい素−ゲルマニウム合金相と鉄シリサイド相を含
む粉末を一度に製造し、後に焼結する方法がある。な
お、以下で説明する製造方法において、β化熱処理を行
う前のインゴット、粉末あるいは焼結体中の生成相は通
常β-FeSi2相ではなく、α-Fe2Si5相とFeS
i相の2相であるため、以下で鉄シリサイド相と述べた
ときは、α-Fe2Si5相とFeSi相の2相の共晶合
金のことをいうものとする。
【0059】前者のけい素−ゲルマニウム合金相と鉄シ
リサイド相の粉末を別々に製造する方法を説明する。
【0060】ドーピング元素あるいは添加成分を添加し
ていない複合焼結体の場合は、まず次のような合金化を
行う。けい素、ゲルマニウムを含有する原料、及び鉄、
けい素を含有する原料をそれぞれ1200〜1600℃
で溶解するなどの工程を含む手法、即ち溶融法によって
合金化する方法、あるいは上記原料をそれぞれ拡散が起
こるような高温(およそ1000〜1250℃)に保持
するという固相反応法によって合金化する方法、あるい
は上記原料をそれぞれメカニカルアロイングして合金化
する方法などによって、けい素−ゲルマニウム合金相、
あるいは鉄シリサイド相が含まれるインゴットや粉末を
製造する。但し、インゴットは粉砕を行い、粉末にす
る。また単体を原料としてメカニカルアロイングを行っ
て合金化した場合には、得られた粉末中に未反応の単体
が若干残留することがあるが、残留した単体は後の焼結
時に全て合金化するため、構わない。
【0061】また、ドーピング元素あるいは添加成分を
添加した複合焼結体においても、上記とほぼ同様の合金
化方法が用いられる。具体的には、次のようにして合金
化される。けい素、ゲルマニウム、ドーピング元素また
は添加成分を含有する原料、及び鉄、けい素、ドーピン
グ元素または添加成分を含有する原料をそれぞれ120
0〜1600℃で溶解するなどの工程を含む溶融法によ
って合金化する方法、あるいは上記原料をそれぞれ拡散
が起こるような高温(およそ1000〜1250℃)に
保持するという固相反応法によって合金化する方法、あ
るいは上記原料をそれぞれメカニカルアロイングして合
金化する方法などによって、ドーピング元素または添加
成分を添加したけい素−ゲルマニウム合金相、あるいは
鉄シリサイド相が含まれるインゴットや粉末を製造す
る。但し、インゴットは粉砕を行い、粉末にする。また
単体を原料としてメカニカルアロイングを行って合金化
した場合には、得られた粉末中に未反応の単体が若干残
留することがあるが、残留した単体は後の焼結時に全て
合金化するため構わない。
【0062】その後、上記けい素−ゲルマニウム合金相
あるいは鉄シリサイド相が含まれる粉末を、けい素−ゲ
ルマニウム合金相の割合が前記範囲となるように混合
し、振動ボールミル、回転ボールミルなどのボールミ
ル、攪拌用アームを付属した攪拌式ミル、スタンプミル
などの粉砕用器具を用いて、平均粒径が1μm以下にな
るまで、粉砕あるいはメカニカルアロイングを行う。こ
のときの粉砕用器具は、回転数が60回転/分(以下r
pmという)以上、あるいは振動数または周波数が1ヘ
ルツ(以下Hzという)以上で操作できるものが好まし
く、さらには回転数が300rpm以上、あるいは振動
数または周波数が5Hz以上で操作できる高エネルギー
のボールミルまたは攪拌式ミルがより望ましい。但し、
けい素−ゲルマニウム合金相あるいは鉄シリサイド相を
含む粉末がすでに平均粒径1μm以下であれば、上記粉
砕あるいはメカニカルアロイングを行う必要はなく、混
合するだけでよい。またドーピング元素や添加成分の種
類によっては、溶融法によって合金化する場合にドーピ
ング元素または添加成分が揮発して、仕込組成通りの複
合焼結体が得られないことがあるが、そのようなときは
上記粉砕あるいはメカニカルアロイングを行うときに、
ドーピング元素や添加成分を添加してもよい。
【0063】上記混合、粉砕、あるいはメカニカルアロ
イングによって得られた粉末を、型に入れるなどして、
成形を行い、後述する条件で焼結した後、β化熱処理を
行って複合焼結体を製造する。
【0064】次に、後者の製造方法を説明する。
【0065】ドーピング元素あるいは添加成分を添加し
ていない場合は、次のようにして合金化される。けい
素、ゲルマニウム、鉄を含有する原料を1200〜16
00℃で溶解するなどの工程を含む溶融法によって合金
化する方法、あるいは上記原料を拡散が起こるような高
温(およそ1000〜1250℃)に保持するという固
相反応法によって合金化する方法、あるいは上記原料を
メカニカルアロイングして合金化する方法などによっ
て、けい素−ゲルマニウム合金相と鉄シリサイド相が含
まれるインゴットや粉末を製造する。但し、インゴット
は粉砕を行い、粉末にする。また単体を原料としてメカ
ニカルアロイングを行って合金化した場合には、得られ
た粉末中に未反応の単体が若干残留することがあるが、
残留した単体は後の焼結時に全て合金化するため、構わ
ない。
【0066】また、ドーピング元素あるいは添加成分を
添加した複合焼結体においても、上記とほぼ同様の合金
化方法が用いられる。具体的には、次のようにして合金
化される。けい素、ゲルマニウム、鉄、ドーピング元素
または添加成分を含有する原料をそれぞれ1200〜1
600℃で溶解するなどの工程を含む溶融法によって合
金化する方法、あるいは上記原料を拡散が起こるような
高温(およそ1000〜1250℃)に保持するという
固相反応法によって合金化する方法、あるいは上記原料
をメカニカルアロイングして合金化する方法などによっ
て、ドーピング元素または添加成分を添加したけい素−
ゲルマニウム合金相と鉄シリサイド相が含まれるインゴ
ットや粉末を製造する。但し、インゴットは粉砕を行
い、粉末にする。また単体を原料としてメカニカルアロ
イングを行って合金化した場合には、得られた粉末中に
未反応の単体が若干残留することがあるが、残留した単
体は後の焼結時に全て合金化するため、構わない。
【0067】その後、けい素−ゲルマニウム合金相と鉄
シリサイド相が含まれるインゴットまたは粉末を上記粉
砕用器具を用いて、平均粒径が1μm以下になるまで、
粉砕あるいはメカニカルアロイングする。但し、けい素
−ゲルマニウム合金相と鉄シリサイド相の両方を含む粉
末がすでに平均粒径1μm以下であれば、上記粉砕ある
いはメカニカルアロイングを行う必要はなく、混合する
だけでよい。またドーピング元素や添加成分の種類によ
っては、溶融法によって合金化する場合にドーピング元
素または添加成分が揮発して、仕込組成通りの複合焼結
体が得られないことがあるが、そのようなときは上記粉
砕あるいはメカニカルアロイングを行うときに、ドーピ
ング元素や添加成分を添加してもよい。
【0068】上記混合、粉砕、あるいはメカニカルアロ
イングによって得られた粉末を、型に入れるなどして成
形を行い、後述する条件で焼結した後、β化熱処理を行
って複合焼結体を製造する。
【0069】焼結は、電気炉、ホットプレス装置、熱間
静水圧プレス装置など、一般に用いられる焼成装置や焼
結装置などによって行われる。最適な焼結条件は、鉄、
けい素、ゲルマニウムの仕込組成などによっても異な
り、一概には言えないが、2相の粉末を別々に製造する
場合、あるいは2相の両方を含む粉末を一度に製造する
場合のいずれにおいても、分散相及び母相が粒成長を起
こさないようにするため、950〜1200℃の温度
で、0.1〜10時間の条件で行われることが好まし
く、さらに高い焼結密度を得るためには、焼結温度は1
000〜1200℃がより望ましい。
【0070】また焼結は、ホットプレス装置、熱間静水
圧プレス装置などを用いた圧力下で行う方法を採用して
もよいし、圧力なしで行ってもよい。圧力下での好まし
い焼結条件は、例えば1100〜1160℃、0.1〜
0.3時間、20メガパスカル(MPa)以上の圧力
下、あるいは1000℃、1〜4時間、20MPa以上
の圧力下でのホットプレスなどである。
【0071】成形に際しポリビニルアルコール、ステア
リン酸などのバインダーを添加した場合は、約400〜
600℃での脱バインダー焼成工程を経た後、続いて焼
結を行う。この焼結においては、脱バインダー焼成工程
を除いて、1.3×102パスカル(Pa)以下の真空
中、あるいは置換ガス中のいずれかで行うのが望まし
い。置換ガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどの不活
性ガス、窒素、水素などの非酸化性のガス、またはこれ
らの混合ガスが望ましい。更に脱バインダー焼成工程を
空気中、酸素中などの酸素を含有するガス中で行い、そ
の後の焼結を上記真空中、置換ガス中で行うことが望ま
しい。
【0072】β化熱処理は、一般に用いられる電気炉な
どの焼成装置や焼結装置などによって行われる。最適な
β化熱処理条件は、ドーピング元素、あるいは添加成分
の有無によっても異なるが、600〜900℃、1〜1
00時間が好ましい。より好ましいβ化熱処理条件は、
750〜850℃で、5〜30時間である。β化熱処理
は、焼結と連続して同一の電気炉あるいはホットプレス
装置などで行ってもよいし、焼結後、電気炉あるいはホ
ットプレス装置から取り出して、別の電気炉などで行っ
てもよい。またβ化熱処理は、どのような雰囲気下で行
ってもよい。
【0073】該複合焼結体を製造する際に用いる原料に
は、次のようなものがある。鉄源としては、鉄単体、あ
るいはFe-Si固溶体(例えばSiを5原子%固溶し
たもの)、フェロシリコン、Fe3Si、FeSi、α-
Fe2Si5、β-FeSi2などの鉄−けい素合金、ある
いはFe-Ge固溶体(例えばGeを5原子%固溶した
もの)、FeGe2、FeGeなどの鉄−ゲルマニウム
合金など、あるいはそれらの混合物などである。またけ
い素源としては、けい素単体、あるいは上記鉄−けい素
合金、あるいはSi-Ge合金(この場合はGe含有量
がいかなるものでもよい)、あるいはそれらの混合物な
どである。さらにゲルマニウム源としては、ゲルマニウ
ム単体、あるいは上記鉄−ゲルマニウム合金、あるいは
Si-Ge合金(この場合はGe含有量がいかなるもの
でもよい)、あるいはそれらの混合物である。
【0074】またさらには、ドーピング元素あるいは添
加成分を添加した該複合焼結体を製造する場合には、上
記原料に加えてまたは上記原料の代わりに、ドーピング
元素の単体、あるいは添加成分単体、あるいは鉄−コバ
ルト合金(例えばCoを5原子%含有するα-Fe固溶
体など)、コバルトシリサイド、マンガンシリサイドな
どのドーピング元素または添加成分と、鉄またはけい素
またはゲルマニウムとの合金を用いる。
【0075】上記原料は、焼結条件やβ化熱処理条件に
よっても異なるが、該複合焼結体中のけい素−ゲルマニ
ウム合金相の割合が前記範囲内になるようにするため、
鉄、ゲルマニウム、けい素の仕込組成が、 Fe1-YGeYSi2+Z (0.15≦Y≦0.50、-0.1≦Z≦0.
3) となるように、適宜混合することが好ましい。
【0076】また上記原料はどのような形状のものを用
いてもよい。例えば、溶解工程を含む溶融法の場合で
は、塊状、粒状、あるいは粉末状の原料が好ましく、メ
カニカルアロイングを利用する方法では、平均粒径が1
ミリ以下の粉末状の原料が望ましい。また大きさ、また
は形状の異なる同種粉末の混合物でもよい。さらには、
鉄、ゲルマニウム、けい素を含有する各原料の大きさを
同程度にするといった必要もない。工業的に入手しやす
い粉末状の原料としては、大きいものは50あるいは1
00メッシュ粒径、小さいものは平均粒径2〜3μmな
どがあり、粒状の原料としては約2〜5ミリ程度のもの
がある。一般的に、大きな形状のものほど安価で、取り
扱いがしやすく、酸化しにくいという利点があるが、溶
融法では小さな形状のものほど溶解するために必要な時
間が短くなるため、好ましい。
【0077】上記原料は、目的とする複合焼結体中の
鉄、けい素、ゲルマニウム、またはドーピング元素、添
加成分の含有率が98重量%以上、望ましくは99重量
%以上となるように適宜調整される。但し、原料中に不
可避的に混入する不純物を含むこともある。また本発明
における複合焼結体の製造工程中、不可避的に、酸素あ
るいは粉砕用ボールミルなどからのステンレス鋼成分な
どの不純物が混入することもある。
【0078】本発明における複合焼結体では、けい素−
ゲルマニウム合金相のみからなる焼結体や、けい素−ゲ
ルマニウム合金相の含有率が70モル%を超える複合焼
結体と比較して、熱伝導率を低下させる効果が大きいだ
けでなく、耐酸化性が向上することが判った。これらの
理由については、次のように推定される。熱伝導率を低
下させる効果が大きい理由は、けい素−ゲルマニウム合
金相とζβ-鉄シリサイド相が比較的近い割合で複合化
されており、かつ2相が非常に微細に絡み合って分散し
ているので、フォノンの散乱効果を引き起こす両相の境
界が非常に多くなったためと考えられる。また耐酸化性
が向上した理由は、耐酸化性の劣るけい素−ゲルマニウ
ム合金相の含有率が比較的低く、かつ酸化しやすいけい
素−ゲルマニウム合金相の平均領域径が小さいので、け
い素−ゲルマニウム合金相が酸化したとしても極表面層
のみに留まるためと考えられる。
【0079】さらに該複合焼結体の前駆体においてはα
-Fe2Si5相とFeSi相から速やかに包析反応によ
りβ-FeSi2相が生成する。当該前駆体においては、
即ちβ化熱処理前では、けい素−ゲルマニウム合金相、
α-Fe2Si5相、及びFeSi相の3相がやはり非常
に微細に絡み合って分散している。この状態では、α-
Fe2Si5相とFeSi相の間にけい素−ゲルマニウム
合金相が介在するような微細組織となっていたとして
も、けい素−ゲルマニウム合金相が拡散種の一つである
けい素を含有するため、包析反応時にけい素−ゲルマニ
ウム合金相を介してSiの拡散が容易に起こり得る上、
けい素−ゲルマニウム合金相の平均領域径が非常に微細
であるため、Siの拡散距離が短くてすむので、包析反
応が速いものと考えられる。
【0080】本発明の複合焼結体は、熱電変換材料とし
て有用な材料である。
【0081】
【発明の効果】以上の説明より理解されるように、本発
明の複合焼結体は、熱電変換効率または成績係数を決定
する変数の一つである熱伝導率が低くかつ耐酸化性に優
れるので、熱電変換材料として有用である。
【0082】
【実施例】以下、実施例を示すが、なんらこれに限定さ
れない。なお、以下の実施例及び比較例において、熱伝
導率は市販のレーザーフラッシュ法による熱伝導率測定
装置(真空理工製)によって室温で測定を行った。また
耐酸化性は、得られた複合焼結体を800℃の空気中で
10時間の酸化熱処理を行った後の重量増加の割合
〔(酸化熱処理後の重量−初期重量)/初期重量×10
0(単位は%)〕を測定し、この割合が少ないほど耐酸
化性があるものと判断した。
【0083】実施例1 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
2.23g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.87g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)0.51gを乳鉢で混
合し、メカニカルアロイング装置(日新技研製)により
アルゴンガス雰囲気中にてメカニカルアロイングを行っ
た。メカニカルアロイング装置の容器とボールの材質は
ステンレス鋼で、ボールの大きさ及び個数は直径約11
mm、及び12個であった。またメカニカルアロイング
時間は10時間、振動数は12.3Hz、容器の周囲を
冷却しないで行った。メカニカルアロイングによって得
られた粉末5.5gをとり、直径30mmの内孔を有す
る型を用いて、市販のホットプレス装置(東京真空製)
によって圧力下で焼結を行った。このときの焼結条件は
1100℃、0.2時間、27.3MPaであった。そ
の後、850℃、20時間の熱処理を行った。焼結とβ
化熱処理は真空中で行った。昇温前の到達真空度はいず
れも6.7×10-4Pa以下であった。得られた複合焼
結体の大きさは直径30.0mm×1.6mmであっ
た。複合焼結体のエックス線回折分析(CuKα線によ
る)を行った結果、β-FeSi2相の(111)面、
(202)面〔または(220)面〕、(221)面、
(313)面〔または(331)面〕、(004)面
〔または(040)面〕、(041)面、(114)面
〔または(511)面〕、(422)面、(133)面
などの回折線、及びSi-Ge合金相の(111)面、
(220)面、(311)面、(400)面、(33
1)面、(422)面などの回折線が検出されたことか
ら、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成してい
ることが確認された。但し、Si-Ge合金相の各面か
らの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折線と比
較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトしてい
た。前記方法によって測定したSi-Ge合金相の割
合、分散相の平均領域径、熱伝導率、及び酸化熱処理を
行った後の重量増加の割合、さらには包析反応が十分に
起こったかどうかの指標となるα-Fe2Si5相の有無
を調べ、その結果を表1に示した。以下の実施例及び比
較例においても同様に表1に示した。
【0084】実施例2 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.80g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.81g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)1.00gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.
6mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(C
uKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(1
11)面、(202)面〔または(220)面〕、(2
21)面、(313)面〔または(331)面〕、(0
04)面〔または(040)面〕、(041)面、(1
14)面〔または(511)面〕、(422)面、(1
33)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線が検出された
ことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0085】実施例3 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.63g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.79g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)1.19gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.
6mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(C
uKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(1
11)面、(202)面〔または(220)面〕、(2
21)面、(313)面〔または(331)面〕、(0
04)面〔または(040)面〕、(041)面、(1
14)面〔または(511)面〕、(422)面、(1
33)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線が検出された
ことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0086】実施例4 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.80g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.81g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)1.00gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
但し、焼結は、1000℃、0.2時間の条件で行っ
た。得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×
1.7mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析
(CuKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の
(111)面、(202)面〔または(220)面〕、
(221)面、(313)面〔または(331)面〕、
(004)面〔または(040)面〕、(041)面、
(114)面〔または(511)面〕、(422)面、
(133)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の
(111)面、(220)面、(311)面、(40
0)面、(331)面、(422)面などの回折線が検
出されたことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金
相が生成していることが確認された。但し、Si-Ge
合金相の各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面か
らの回折線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側に
シフトしていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分
散相の平均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の
重量増加の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示し
た。
【0087】実施例5 市販の鉄シリサイド粉末(α-Fe2Si5相とFeSi
相の共晶合金で、Si66.7原子%含有のもの、純度
99.9%、粒度100メッシュ)5.23g、けい素
−ゲルマニウム合金粉末(Ge30原子%含有のもの、
純度99.9%、粒度100メッシュ)2.77gを乳
鉢で混合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイ
ング、焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造
した。但し、焼結は、1000℃、2時間の条件で行っ
た。得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×
1.6mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析
(CuKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の
(111)面、(202)面〔または(220)面〕、
(221)面、(313)面〔または(331)面〕、
(004)面〔または(040)面〕、(041)面、
(114)面〔または(511)面〕、(422)面、
(133)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の
(111)面、(220)面、(311)面、(40
0)面、(331)面、(422)面などの回折線が検
出されたことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金
相が生成していることが確認された。但し、Si-Ge
合金相の各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面か
らの回折線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側に
シフトしていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分
散相の平均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の
重量増加の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示し
た。
【0088】実施例6 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.71g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.81g、ゲルマニウム粉末(純度99.
99%、平均粒径10μm)1.00g、マンガン粉末
(純度99.9%、粒度200メッシュ)0.09g、
及びほう素粉末(純度99%、粒度325メッシュ以
下)0.005gを乳鉢で混合し、実施例1と同一の条
件でメカニカルアロイング、焼結、及びβ化熱処理を行
い、複合焼結体を製造した。得られた複合焼結体の大き
さは直径30.0mm×1.6mmであった。複合焼結
体のエックス線回折分析(CuKα線による)を行った
結果、β-FeSi2相の(111)面、(202)面
〔または(220)面〕、(221)面、(313)面
〔または(331)面〕、(004)面〔または(04
0)面〕、(041)面、(114)面〔または(51
1)面〕、(422)面、(133)面などの回折線、
及びSi-Ge合金相の(111)面、(220)面、
(311)面、(400)面、(331)面、(42
2)面などの回折線が検出されたことから、β-FeS
2相及びSi-Ge合金相が生成していることが確認さ
れた。但し、Si-Ge合金相の各面からの回折線は、
Si単体の同一結晶面からの回折線と比較して、約0.
3〜1.5度低角度側にシフトしていた。表1に、Si
-Ge合金相の割合、分散相の平均領域径、熱伝導率、
酸化熱処理を行った後の重量増加の割合、及びα-Fe2
Si5相の有無を示した。
【0089】比較例1 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.80g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.81g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)1.00gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
但し、焼結は、1100℃、3時間の条件で行った。得
られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.5
mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(Cu
Kα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(11
1)面、(202)面〔または(220)面〕、(22
1)面、(313)面〔または(331)面〕、(00
4)面〔または(040)面〕、(041)面、(11
4)面〔または(511)面〕、(422)面、(13
3)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線が検出された
ことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0090】比較例2 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
0.73g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.66g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)2.21gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
但し、焼結は、1100℃、3時間の条件で行った。得
られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.5
mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(Cu
Kα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(11
1)面、(202)面〔または(220)面〕、(22
1)面、(313)面〔または(331)面〕、(00
4)面〔または(040)面〕、(041)面、(11
4)面〔または(511)面〕、(422)面、(13
3)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線、さらにはα
-Fe2Si5相の(001)面、(101)面、(11
0)面などの回折線が検出されたことから、β-FeS
2相、Si-Ge合金相、及びα-Fe2Si5相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0091】比較例3 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
1.25g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.73g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)1.62gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.
6mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(C
uKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(1
11)面、(202)面〔または(220)面〕、(2
21)面、(313)面〔または(331)面〕、(0
04)面〔または(040)面〕、(041)面、(1
14)面〔または(511)面〕、(422)面、(1
33)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線が検出された
ことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0092】比較例4 市販の鉄粉末(純度99.9%、粒度100メッシュ)
2.53g、けい素粉末(純度99.9%、粒度100
メッシュ)2.91g、及びゲルマニウム粉末(純度9
9.99%、平均粒径10μm)0.17gを乳鉢で混
合し、実施例1と同一の条件でメカニカルアロイング、
焼結、及びβ化熱処理を行い、複合焼結体を製造した。
得られた複合焼結体の大きさは直径30.0mm×1.
6mmであった。複合焼結体のエックス線回折分析(C
uKα線による)を行った結果、β-FeSi2相の(1
11)面、(202)面〔または(220)面〕、(2
21)面、(313)面〔または(331)面〕、(0
04)面〔または(040)面〕、(041)面、(1
14)面〔または(511)面〕、(422)面、(1
33)面などの回折線、及びSi-Ge合金相の(11
1)面、(220)面、(311)面、(400)面、
(331)面、(422)面などの回折線が検出された
ことから、β-FeSi2相及びSi-Ge合金相が生成
していることが確認された。但し、Si-Ge合金相の
各面からの回折線は、Si単体の同一結晶面からの回折
線と比較して、約0.3〜1.5度低角度側にシフトし
ていた。表1に、Si-Ge合金相の割合、分散相の平
均領域径、熱伝導率、酸化熱処理を行った後の重量増加
の割合、及びα-Fe2Si5相の有無を示した。
【0093】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 熱電変換素子の一形態(U字型)を示す概略
【図2】 本発明の複合焼結体の代表的な微細組織を示
すSEM写真
【符号の説明】
A Si-Ge合金相 B β-FeSi2

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)けい素−ゲルマニウム合金相と
    (B)ζβ-鉄シリサイド相とからなり、(A)相の割
    合が35〜70モル%であり、(A)相または(B)相
    からなる分散相の平均領域径が1μm以下であることを
    特徴とする複合焼結体。
  2. 【請求項2】 (A)けい素−ゲルマニウム合金相及び
    (B)ζβ-鉄シリサイド相がp型の電気伝導特性を有
    する請求項1記載の複合焼結体。
  3. 【請求項3】 (A)けい素−ゲルマニウム合金相及び
    (B)ζβ-鉄シリサイド相がn型の電気伝導特性を有
    する請求項1記載の複合焼結体。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3記載の複合焼結体
    からなる熱電変換材料。
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