JPH089485Y2 - シールリング付メタルシリンダヘッドガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案に係るシールリング付メタルシリンダヘッド
ガスケットは、エンジンのシリンダブロック上面とシリ
ンダヘッド下面との間に挟持して、両面間の気密、液密
を保持するのに利用される。

（従来の技術） 内燃機関のシリンダヘッド下面とシリンダブロック上
面との間にはシリンダヘッドガスケットを挾持して、シ
リンダ内で発生する高圧の燃焼ガスが外部に漏洩した
り、或はシリンダブロックとシリンダヘッドとの間を流
通する冷却水や潤滑油が漏洩したりするのを防止してい
る。

第３図はこの様な場合に使用するシリンダヘッドガス
ケットの１例を示している。このシリンダヘッドガスケ
ット１には、シリンダ頂部の開口形状に合わせた円形の
ボア孔２、２、シリンダヘッドをシリンダブロックに固
定する為のボルトを挿通する小孔３、３、冷却水や潤滑
油を通す為の透孔４、４（形状は円形とは限らない。）
が穿設されている。５は各ボア孔２、２の内周縁部に装
着した金属薄板製のグロメットである。

ところで、この様に形成されるシリンダヘッドガスケ
ットに於いて、透孔４、４を流通する冷却水や潤滑油が
外部に漏洩するのを有効に防止する為、各透孔４、４の
内側にシールリングと呼ばれる部品を装着する事が行な
われている。

この様に各透孔４、４の内側に装着するシールリング
は、例えば第４図に示す様に構成されている。第４図に
示したシールリング６は、円形に形成された透孔４の内
側に装着する為に造られたもので、外周の大きさを装着
すべき透孔４の内周形状に合わせて形成した、円輪状の
金属製基板７の上下両面に、第５図に示す様に、NBR
（ニトリルブタジエンゴム）等のシール材８を焼き付け
る事で構成されている。

この様なシールリング６を透孔４の内側に装着する場
合、このシールリング６を透孔４の内側に嵌合し、シー
ルリング６の外周縁を構成する基板７の外周縁と、透孔
４の内周縁とを接着剤によって接着する。

（考案が解決しようとする課題） ところが、上述の様にして各透孔４、４の内側にシー
ルリング６を装着する従来のシールリング付シリンダヘ
ッドガスケットに於いては、次に述べる様な不都合を生
じた。

即ち、シールリング６を構成する金属製の基板７の厚
さは、0.5mm程度と小さく、従って、シールリング６を
透孔４の内側に装着する場合に於ける接着面積が狭く、
接着強度が弱くなる事が避けられない。特に近年、耐熱
性に優れたシリンダヘッドガスケットとして、金属薄板
製のメタルシリンダヘッドガスケットを使用する場合が
増えているが、この様なメタルシリンダヘッドガスケッ
トの場合、シールリング６の基板７だけでなく、ガスケ
ット側の厚さ寸法も小さくなる為、接着剤によるシール
リング６の固定作業を行ないにくくなる。

シールリング６を各透孔４、４の内側に装着する場合
に於ける接着強度が弱くなると、このシールリング６が
透孔４の内側から脱落し易くなる。メタルシリンダヘッ
ドガスケットの使用状態に於いては、シールリング６も
シリンダブロック上面とシリンダヘッド下面との間で挟
持されるので脱落する事はないが、エンジンに装着する
以前の、メタルシリンダヘッドガスケットを運搬する場
合等に、シールリング６が透孔４の内側から脱落し易
い。

脱落したシールリングは紛失し易く、シールリングを
紛失したシールリング付メタルシリンダヘッドガスケッ
トは透孔周囲部分のシール性が悪化して、そのまま使用
した場合にエンジン故障の原因ともなってしまう。

この様な不都合を解消する為の構造として、実開昭63
-46656号公報には、第６〜８図に示す様に、グロメット
５の外周縁から延出する延長部９を設け、この延出部９
の先端に形成した保持部10の一部を折り曲げる事によ
り、この保持部10に、上記シールリング６を構成する基
板７を支持する構造が開示されている。

ところが、この公報に開示されたシールリング６の保
持構造は比較的複雑で製作費が嵩むだけでなく、金属板
の折り返しにより、金属板の重なり部が多くなって、当
該重なり部の厚さ寸法が大きくなる為、少ない（例えば
１〜２枚）金属薄板により構成される、薄いメタルシリ
ンダヘッドガスケットの場合、各部の厚さ寸法を整える
事が難しくなり、実際上採用出来ない場合もある。

又、シールリング６の固定を第５図に示す様に接着剤
により行なうにしても、或は第６〜８図に示す様に保持
部10により行なうにしても、基板７の外周縁をシール材
８、８よりも十分に外方に迄突出させる必要があった。
これは、シール材８、８に接着剤が付着する事でシール
性が低下したり、或は保持部10の一部を折り曲げる事に
より、シール材８、８が傷付くのを防止する為である。

ところが、この様に基板７の外周縁をシール材８、８
よりも外方に迄大きく突出させると、シールリング６を
装着すべき透孔４の開口面積が大きくならざるを得ず、
この透孔４に近接して別の孔を設ける事が難しくなる。

本考案のシールリング付メタルシリンダヘッドガスケ
ットは、上述の様な不都合を何れも解消するものであ
る。

（課題を解決する為の手段） 本考案のシールリング付メタルシリンダヘッドガスケ
ットは、金属薄板に、シリンダの開口に合致するボア孔
と、水油孔の開口に合致する透孔とを穿設すると共に、
この透孔の内側に、金属製の基板の両面にシール材を設
ける事で構成されたシールリングを装着している。

更に、本考案のシールリング付メタルシリンダヘッド
ガスケットに於いては、上記基板に、この基板の外周縁
から直径方向外方に延出する延長腕を、上記透孔の周縁
部に、その内側に上記延長腕を収納する切り欠きを、そ
れぞれ形成すると共に、上記基板を上記透孔の内側に、
上記延長腕を上記切り欠きの内側に、それぞれ納めた状
態で、上記延長腕の先端部外周縁と上記切り欠きの内周
縁とを溶接している。

（作用） 上述の様に構成される本考案のシールリング付メタル
シリンダヘッドガスケットを、シリンダブロック上面と
シリンダヘッド下面との間に挟持して使用する場合に於
ける、シールリング付メタルシリンダヘッドガスケット
の作用自体は、前述した従来のシールリング付メタルシ
リンダヘッドガスケットの場合と全く同様である。

但し、本考案のシールリング付メタルシリンダヘッド
ガスケットに於いては、透孔の内側に装着したシールリ
ングを構成する基板が、延長腕を介してメタルシリンダ
ヘッドガスケットの本体を構成する金属薄板に溶接され
ている為、このメタルシリンダヘッドガスケットをシリ
ンダブロック上面とシリンダヘッド下面との間に挟持す
る以前に於いても、上記シールリングが透孔の内側から
脱落する事はない。

又、溶接は基板から外方に突出した延長腕の先端部で
行なわれる為、溶接の熱によってシールリングを構成す
るシール材が傷む事はない。

更に、延長腕が弾性変形する事により、基板が透孔の
内側に、金属薄板の表裏方向に亙って若干の変位自在に
支持される。従って、上記延長腕の先端部外周縁と切り
欠きの内周縁とを溶接する際に、基板を金属薄板の表裏
方向中間位置に厳密に一致させる必要がない。言い換え
れば、溶接を完了した時点で上記基板が金属薄板の表裏
方向中間位置から多少ずれていても、基板の両面に設け
られたシール材が、シリンダブロック上面とシリンダヘ
ッド下面とに均等に当接する。従って、溶接作業時に基
板の位置決め精度を極端に高くする必要がなく、シール
リング付メタルシリンダヘッドガスケットの製作費が嵩
む事がない。

（実施例） 次に、第１〜２図に示した実施例を説明しつつ本考案
を更に詳しく説明する。

シールリング付メタルシリンダヘッドガスケットの本
体を構成する金属薄板11には、シリンダの開口に合致す
るボア孔２、２（第３図参照）と水油孔の開口に合致す
る透孔４とを穿設し、上記透孔４の内側に、金属製の基
板７の表裏両面にシール材８、８を設ける事で構成され
た、シールリング６を装着している。

上記シールリング６を構成する基板７の外周縁複数個
所（図示の例では２個所）には、この基板７の外周縁か
ら直径方向外方に延出する延長腕12、12を形成してい
る。

一方、上記透孔４の周縁部複数個所には、その内側に
上記延長腕12、12を収納する切り欠き13、13を、それぞ
れ形成している。

そして、上記基板７を上記透孔４の内側に、上記延長
腕12、12を上記切り欠き13、13の内側に、それぞれ納め
た状態で、上記各延長腕12、12の先端部外周縁と上記切
り欠き13、13の内周縁とを、スポット溶接等の溶接手段
により溶接している。

上述の様に構成される本考案のシールリング付メタル
シリンダヘッドガスケットを、シリンダブロック上面と
シリンダヘッド下面との間に挟持して使用する場合に於
ける、シールリング付メタルシリンダヘッドガスケット
の作用自体は、前述した従来のシールリング付メタルシ
リンダヘッドガスケットの場合と全く同様である。

但し、本考案のシールリング付メタルシリンダヘッド
ガスケットに於いては、メタルシリンダヘッドガスケッ
トの本体を構成する金属薄板11に形成した透孔４の内側
に装着した、シールリング６を構成する基板７が、延長
腕12、12を介して、上記金属薄板11に溶接されている
為、このメタルシリンダヘッドガスケットをシリンダブ
ロック上面とシリンダヘッド下面との間に挟持する以前
に於いても、上記シールリング６が透孔４の内側から脱
落する事はない。

又、各延長腕12、12と金属薄板11との溶接は、シール
リング６を構成する基板７から外方に突出した延長腕1
2、12の先端部で行なわれる為、溶接の熱によってシー
ルリング６を構成するシール材８が傷む事はない。

又、上記各延長腕12、12の先端部外周縁を金属薄板11
に形成した切り欠き13、13の内周縁に溶接した後であっ
ても、これら各延長腕12、12が弾性変形する事により、
上記基板７が透孔４の内側に、金属薄板11の表裏方向
（図２の上下方向）に亙って若干の変位自在に支持され
る。従って、上記各延長腕12、12の先端部外周縁と切り
欠き13、13の内周縁とを溶接する際に、基板７を金属薄
板11の表裏方向中間位置に厳密に一致させる必要がな
い。言い換えれば、溶接を完了した時点で上記基板７が
金属薄板11の表裏方向中間位置から多少ずれていても、
基板７の両面に設けられたシール材８、８が、シリンダ
ブロック上面とシリンダヘッド下面とに均等に当接す
る。従って、溶接作業時に基板７の位置決め精度を極端
に高くする必要がなく、シールリング付メタルシリンダ
ヘッドガスケットの製作費が嵩む事がない。

更に、図示の実施例の様に、シールリング６及び透孔
４の平面形状が異形である場合にも、上記シールリング
６を透孔４内に挿入する為の位置合わせ作業を容易に行
なう事ができる。

即ち、シールリング６及び透孔４の平面形状が、例え
ば達磨型の様な異形で、そのままではシールリング６を
透孔４内に正しく挿入する作業が面倒な場合でも、各延
長腕12、12を切り欠き13、13に挿入する事で、シールリ
ング６を透孔４内に正しく挿入する作業を容易に行なえ
る。

尚、延長腕12、12を設ける位置は、基板７外周縁の18
0度ずれた反対とする必要はなく、任意の複数個所に設
ければ良い。

（考案の効果） 本考案のシールリング付メタルシリンダヘッドガスケ
ットは、以上に述べた通り構成され作用する為、接着剤
塗布工程を省略する事による工数低減、製作費の低廉化
を図れるだけでなく、透孔周囲のシール性保持を図るシ
ールリングが運搬中に脱落する事を防止して、シールリ
ングの紛失に伴なう、シールリング付メタルシリンダヘ
ッドガスケットの不良品発生を防止出来、製品の歩留り
を向上させる事が出来る。

又、シールリングが脱落したシリンダヘッドガスケッ
トを知らずに使用して、冷却水や潤滑油の漏洩を生じ、
エンジンを故障させる様な危険がなくなる。

又、信頼性を含む性能を向上させる事で製作費が嵩む
事がなく、高性能のシールリング付メタルシリンダヘッ
ドガスケットを安価に提供できる。

更に、両面にシール材を設ける基板を、シール材の外
周縁よりも大きく突出させる必要がなく、上記基板を挿
入する透孔の開口面積を徒に大きくする必要がなくなる
ので、透孔と別の孔とを近接させて設ける事が容易にな
る。

【図面の簡単な説明】

第１〜２図は本考案の実施例を示しており、第１図はシ
ールリング付メタルシリンダヘッドガスケットのシール
リング装着部を示す拡大平面図、第２図は第１図のＡ−
Ａ断面図、第３図はシリンダヘッドガスケットの１例を
示す平面図、第４図は従来のシリンダヘッドガスケット
に装着したシールリングの１例を示す斜視図、第５図は
このシールリングを透孔の内側に装着した状態を示す断
面図、第６〜８図は公報に記載された、従来のシールリ
ング装着部の構造の第２例を示しており、第６図は分解
斜視図、第７図は組み立てた状態を示す平面図、第８図
は第７図のＢ−Ｂ断面図である。 1:シリンダヘッドガスケット、2:ボア孔、3:小円孔、4:
透孔、5:グロメット、6:シールリング、7:基板、8:シー
ル材、8:延出部、10:保持部、11:金属薄板、12:延長
腕、13:切り欠き。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】金属薄板に、シリンダの開口に合致するボ
   ア孔と、水油孔の開口に合致する透孔とを穿設すると共
   に、この透孔の内側に、金属製の基板の両面にシール材
   を設けたシールリングを装着したシールリング付メタル
   シリンダヘッドガスケットに於いて、上記基板に、この
   基板の外周縁から直径方向外方に延出する延長腕を、上
   記透孔の周縁部に、その内側に上記延長腕を収納する切
   り欠きを、それぞれ形成すると共に、上記基板を上記透
   孔の内側に、上記延長腕を上記切り欠きの内側に、それ
   ぞれ納めた状態で、上記延長腕の先端部外周縁と上記切
   り欠きの内周縁とを溶接した事を特徴とするシールリン
   グ付メタルシリンダヘッドガスケット。