JPH0886740A - 金属材料の腐食検査方法及び装置 - Google Patents

金属材料の腐食検査方法及び装置

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JPH0886740A
JPH0886740A JP6224576A JP22457694A JPH0886740A JP H0886740 A JPH0886740 A JP H0886740A JP 6224576 A JP6224576 A JP 6224576A JP 22457694 A JP22457694 A JP 22457694A JP H0886740 A JPH0886740 A JP H0886740A
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JP
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corrosion
metal material
film
potential
composition
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JP6224576A
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Yusuke Isobe
裕介 磯辺
Haruo Fujimori
治男 藤森
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

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  • Testing Resistance To Weather, Investigating Materials By Mechanical Methods (AREA)
  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】金属材料の応力腐食割れを的確に検査または予
測し、さらに、予防保全の行える腐食検査方法及び装置
を提供する。 【構成】不動態皮膜の粒界直上における組成及び構造を
測定し、これらより電子構造を設定し、全エネルギーや
電子エネルギー準位を求める。全エネルギーから結合
エネルギーEbを、電子エネルギー準位から溶解開始電
位Pvを求める。結合エネルギーEbを用いて、Eb>
基準Ebcであれば皮膜破壊は起きず、Eb≦基準Eb
cであれば皮膜が破壊しSCCが発生する腐食状態にあ
るとする。また、溶解開始電位Pvを用いて、Pv>実
測ECPであれば皮膜溶解は起きず、Pv≦実測ECP
であれば、皮膜が溶解しSCCが発生する腐食状態にあ
るとする。そして、皮膜破壊と皮膜溶解のいずれも発生
しない状態であれば、皮膜は健全である判定し、いずれ
か一方が発生する状態であれば、SCCが発生すると判
定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原子力、火力および化
学プラントの構造物、一般の構造物および配管等におい
て、溶液に接して使用される金属材料の腐食度合を検査
し、腐食に対する強さおよび寿命、腐食速度などを把握
する腐食検査方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】プラントの構造物や配管等に用いられる
金属材料の腐食度合が、該構造物あるいはプラント全体
の寿命を決定する因子ともなっているので、この腐食度
合を検査することは重要である。
【0003】腐食は、材料表面がほぼ等分に腐食される
全面腐食と、一部分だけが加速的に腐食される局部腐食
に分けられる。この局部腐食の一形態である応力腐食割
れ(以下、SCCと略称する)は、最終的に脆性破壊に
至るため、その腐食発生時期、腐食進度状況に関する高
精度の検査が要望される。
【0004】そして、SCCに関しては、定荷重あるい
は低歪速度での引張り試験によりSCC感受性や亀裂進
展速度のデータ集積が行われ、また、腐食に関する電気
化学的なパラメータとしての腐食電位(以下、ECPと
略称する)の測定が行われ、上記SCC感受性等との相
関が検討されている。また、上記のデータ集積から、経
験的なSCC亀裂進展式も提案されている。そして、従
来の経験的SCC検査式をまとめた文献としては、「EP
RI Report NP-5064M, Feb. 1987」がある。
【0005】このSCCは、材料の電気化学的な腐食に
応力の影響が重畳した現象である。Crを合金元素とし
て含むステンレス鋼では、溶接熱影響部において結晶粒
界へCr炭化物が析出する事に伴う結晶粒界近傍でのC
r濃度の低下を始めとして、溶接残留応力や外部応力
が、SCC発生要因として指摘されている。そして、亀
裂は母材表面に現れている結晶粒界より発生することが
知られている。
【0006】また、ステンレス鋼等では、母材表面に形
成される不動態皮膜(酸化皮膜)が腐食に対する保護膜
として機能することが知られている。このため、耐SC
C性やSCC腐食度合を知るために、母材表面の粒界直
上にある保護膜としての、不動態皮膜の腐食状態を検査
する必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般的に腐食
状態の検査に用いられているECP測定は、電極面全体
に起きている腐食反応の電位の平均を測定しているた
め、電極面全体に占める割合が圧倒的に少ない粒界での
腐食反応の電位に必ずしも対応しておらず、粒界の腐食
状態の検査には向いていない。また、母材と不動態皮膜
(以下、単に皮膜と略称する)のどちらの情報を捕らえ
ているのか、明確には区別できない。
【0008】さらに、SCCの状態を、亀裂が一定の深
さに達して、言い換えると応力拡大係数が臨界値を越え
て、応力の影響のみで亀裂が定常的に進展する腐食進展
領域と、それ以前の腐食発生領域に分けると、粒界直上
での不動態皮膜の保護機能が重要になるのは腐食発生領
域と考えられる。ところがこれら両領域のうち、腐食進
展領域については、破壊力学的な検査法により亀裂進展
速度などが求められるが、腐食発生領域については、そ
の検査法は依然未確立な状況にある。
【0009】このため腐食発生領域に対しては、使用開
始当初からある大きさの初期亀裂が材料に存在すると仮
定した、過大に安全性を重視した検査が行われていた。
また実験値をベースとした経験的な検査では、実験条件
と異なる状況での検査がどの程度の精度で行えるのか不
明であった。例えば、SCC実験は一般に同一の試験片
に対して一定の水質環境で行われるが、現実の使用環境
では、水質が時間によって変化し、特に放射線照射を受
ける原子炉の炉心では粒界部の組成や応力状態が材料中
に生成する照射欠陥の影響で変化することがあり、亀裂
進展速度検査法では精度に不安があるという問題があっ
た。
【0010】従って、本発明の目的は、材料、応力、水
質の3条件の変化に伴って進行する腐食を含めて、精度
良く金属材料の腐食状態を検査する腐食検査方法及び装
置を提供することにある。
【0011】また、上記の腐食検査に基づき予防保全を
実施する方法及び装置を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、金属材料
表面の腐食発生部位となり得る局所に形成された不動態
皮膜の組成及び構造と金属材料の腐食電位とを測定し、
該組成及び構造の情報より不動態皮膜の電子構造を設定
し、該電子構造より不動態皮膜の結合強度と溶解開始電
位とを演算により求め、金属材料の所与の皮膜破壊結合
強度と結合強度との比較、または、溶解開始電位と腐食
電位との比較のうち、少なくとも1つの比較から金属材
料の腐食状態を検査する金属材料の腐食検査方法により
達成される。
【0013】また、上記目的を達成する金属材料の腐食
検査装置は、金属材料表面の腐食発生部位となり得る局
所に形成された不動態皮膜の組成及び構造を測定する組
成及び構造測定手段と、該組成及び構造の情報により不
動態皮膜の電子構造を設定する電子構造設定手段と、電
子構造より不動態皮膜の結合強度を演算する結合エネル
ギー演算手段と、電子構造より不動態皮膜の溶解開始電
位を演算する溶解開始電位演算手段と、金属材料の腐食
電位を測定する腐食電位測定手段と、金属材料の所与の
皮膜破壊結合強度と結合強度との比較、または、溶解開
始電位と腐食電位との比較のうち、少なくとも1つの比
較から、金属材料の腐食進度を判定する腐食進度判定手
段とを備え、金属材料の腐食状態を検査するものであ
る。
【0014】さらに、上記目的を達成するプラントの予
防保全方法は、請求項1または請求項2または請求項3
記載の金属材料の腐食検査方法によりプラントの構造
物、配管等の金属材料の腐食状態を検査し、検査された
該腐食状態に応じて、金属材料に対して予防保全あるい
は監視保全を講じるものである。
【0015】
【作用】本発明の作用について応力腐食割れを例に取
り、以下説明する。応力腐食割れは、まず不動態皮膜に
割れが生じ、下に現れた金属新生面の活性溶解と共に再
不動態化が起き、暫くした後にまた皮膜が割れるという
現象が、繰り返されて亀裂に至ると考えられる。このた
め、皮膜がどの様な条件でいつ割れるか、ということを
検査することが重要である。皮膜の割れについては、付
加された応力の影響で機械的に割れる場合と電気化学的
反応で溶解する場合の2ケースが想定され、いずれもそ
の起こり易さは皮膜の電子構造に支配されている。
【0016】まず、皮膜の機械的強度、すなわち不動態
皮膜の結合強度は、皮膜結晶中原子間の結合エネルギー
と相関がある。皮膜を構成する原子が、それぞれ単独で
存在する場合の、各原子の全エネルギーをea 、結晶を
構成している場合の、結晶の全エネルギーをEpとする
と、結合エネルギー Ebは、次式で表される。
【0017】 Eb=Σea−Ep (数1) Ebが大きいほど結合強度、すなわち機械的強度は上昇
する。 また(数1)より明らかなように、Ebは皮膜
の組成や構造に依存して変化する。
【0018】次に、皮膜溶解の機構について、図11に
示す皮膜電子構造の模式図を参照し説明する。Ec,E
f及びEvは、それぞれ皮膜の伝導帯準位、フェルミ準
位及び価電子帯準位である。皮膜と水が接触すると、E
fと水中の酸化還元系のフェルミ準位が等しくなるまで
電荷の移動が起こり、皮膜のバンド端が湾曲して平衡状
態に達する。図11(a),(b)は、この湾曲が無く
なり、バンドが平坦になるまで分極した状態(フラット
バンド状態)を示している。
【0019】また、皮膜は、半導体的性質を持つため、
Efは、EcとEvの間、すなわちバンドギャップ中に
存在する。図11(a),(b)の2つの電子構造は、
それぞれ結晶粒界直上及び結晶粒上の皮膜の電子構造に
対応しており、(b)のEv(Ev’)が(a)のそれ
に比べて低いという特徴がある。
【0020】これに対し、図11(c),(d)は、こ
れらの電子構造を持った皮膜を同じ量だけアノード分極
した場合の電子構造である。アノード分極、すなわち皮
膜の電位を上げるという操作は、皮膜のEfを下げるこ
とに対応し、分極に伴い皮膜/水界面のバンド端は湾曲
し、EfとEvの差は小さくなる。
【0021】ところで、フラットバンド状態でのEv’
が低かった(b)の皮膜を分極した(d)では、Ef’
は依然としてバンドギャップ中にあるのに対し、(c)
ではEfとEvが逆転し、Efが価電子帯の中に存在す
る。この状態では皮膜/水界面近傍の皮膜は金属的にな
り、それまでバンドの湾曲によって吸収してきた電場勾
配が界面にかかるため、皮膜の溶解速度が急激に増大す
る。
【0022】すなわち図11は、同じ分極条件におい
て、粒界直上の皮膜が結晶粒上の皮膜よりも先に溶解す
ることを示している。
【0023】一方、図12は、図11で示した2種の皮
膜( 図11(a),(c)および(b),(d)で表
される皮膜)を持つ部分の、局所的アノード分極曲線を
模式的に示す図である。 図11(a)及び(b)での
電位をそれぞれPf及びPf’(これらをフラットバン
ド電位と呼ぶ)、また、それぞれの部分の溶解開始電位
(過不動態開始電位)をPv及びPv’とすると、Pv
とPf、およびPv’とPf’は、それぞれ図11
(a)、(b)における、EvとEf、およびEv’と
Ef’に対応しており、各電位間の電位差は、対応する
準位間のエネルギー差に比例する。(例えば、EfとE
vの差が0.1eVの時、PvとPfの差は、 0.1
Vとなる)この様に、皮膜の溶解開始条件はアノード分
極によって皮膜のEfとEvが重なるときであるが、皮
膜の電子準位は結合エネルギーの時と同様、皮膜の組成
や構造によって変化する。
【0024】以上のように、皮膜割れの要因である、皮
膜の機械的破壊及び電気化学的溶解は、いずれも皮膜の
電子構造が決まることによって把握することができ、ま
た電子構造は皮膜の組成や構造に左右されている。従っ
て、粒界直上等の局所における皮膜の組成や構造からこ
の部分の電子構造を求め、上述のモデルに従って皮膜の
結合強度や溶解開始電位を知ることにより、金属材料の
腐食発生領域にある腐食状態を検査することが可能であ
る。すなわち、金属材料に腐食が発生する前の段階で、
腐食が発生する条件が揃っているか否かを検知すること
が可能である。また、皮膜の組成及び構造の時間変化を
測定し、結合強度や溶解開始電位が、時間経過と共にど
の様に変化するかを予測計算し、 金属材料の腐食状態
の進度(例えば、皮膜割れが発生する時期など)を予想
することも可能である。
【0025】そして、いずれの場合においても、検査、
検知された腐食状態や予想される腐食状態などの情報を
利用して、予防保全を行うこと、あるいは、視覚や聴覚
に訴え報知することは可能である。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明す
る。
【0027】図1は、本発明による一実施例の腐食検査
方法の手順を示す流れ図である。次に説明する検査手順
は、ステンレス鋼のSCCについてである。まず、ステ
ンレス鋼からなる被検査試料の、表面に被われている不
動態皮膜(以下、単に皮膜と略称する)の粒界直上にお
ける組成及び構造を測定する。ここでいう組成とは、皮
膜中に存在する元素の種類と量を指し、構造とは、皮膜
の結晶構造および応力による原子位置の安定点からの変
位を指すものとする。そしてこの場合、粒界直上の部位
が金属材料表面の腐食発生部位となり得る局所に相当し
ている。
【0028】次に、上記の組成及び構造の情報より、皮
膜の電子構造を設定する。本実施例では、クラスタ法に
よる分子軌道計算を用いてこれを行った。図2は、計算
クラスタの一実施例を示す図である。
【0029】クラスタ法では、図に示すような皮膜結晶
の組成及び構造を反映した計算クラスタを作り、電子系
の波動方程式を解き、全エネルギー(ea ,Ep)や
電子エネルギー準位(Ef,Ev)を求め、これらの因
子でもって電子構造を設定するものである。また電子構
造の設定はバンド計算によるものでも同様に行える。
【0030】計算の代わりに、組成及び構造が既知であ
る皮膜に対して光電分極法やX線光電子分光分析法によ
り予め実験作成した、電子構造データベースと比較判定
し対象皮膜の電子構造を設定することもできる。
【0031】次に、全エネルギーから、皮膜の結合エネ
ルギーEbを求める。Ebは、前述の(数1)式に基づ
き、計算クラスタを構成する元素がそれぞれ単独で存在
するとして計算した、各原子の全エネルギーea の和か
ら、計算クラスタの全エネルギーEpを引いた値として
算出する。尚、上記計算では、その時点での付加応力に
よる結晶の歪を考慮し、その歪によるEbの変化分を補
正している。
【0032】次に、電子エネルギー準位(Ef,Ev)
から、皮膜の溶解開始電位Pvを求める。図3は、粒界
直上の電子エネルギー準位の計算結果を示す図である。
図3には、結晶粒と粒界からなる母材と、母材の表面に
被われた不動態皮膜とが示され、皮膜における、結晶粒
上と粒界直上の局所の区別が示されている。
【0033】また、Cr欠乏が発生した粒界直上とCr
欠乏が発生しない結晶粒上の、電子エネルギー準位の計
算結果も示されている。これから、結晶粒上に比べ、C
r欠乏が発生する粒界直上の電子エネルギー準位が上昇
していることが判る。
【0034】電子エネルギー準位の計算結果からPvを
求めるには、次式の関係を用いる。
【0035】 Pv ∝{(Ef−Ev)+Pf} (数2) ただし、Ef,Ev:eV単位、Pf,Pv:V単位 すなわち、組成及び構造が既知である皮膜について、検
査しようとする環境中での基準フラットバンド電位を予
め測定し基準値を求めて置き、この基準値と基準値を測
定した皮膜のEfの計算値、被検査試料表面の皮膜のE
fの計算値からPfを求め、(数2)式よりPvを算出
する。
【0036】基準フラットバンド電位の測定は、水質環
境が一定の場合は検査の初めに一回だけ行なえば良い。
しかし、フラットバンド電位は皮膜の変化のみではな
く、水質の変化にも依存するため、水質変化がある場合
は、検査の都度、基準フラットバンド電位を測定する
か、または、別途、白金などの貴金属電極からなる腐食
電位センサによって補正ECPを測定し、これにより水
質変化に伴う電位変化を検知し、基準フラットバンド電
位を補正する方法が採用される。
【0037】尚、図4は、付加応力により歪がある場合
の価電子帯準位Evの変化を示す図である。このように
図4に示した引張り歪がある場合は、図3に示したCr
が欠乏する場合と同様に、価電子帯準位Evが上昇しこ
れによりPvが低下し、皮膜の溶解が起き易くなるの
で、補正することが必要である。
【0038】次に、以上のようにして求めた結合エネル
ギーEbと溶解開始電位Pvから、応力腐食割れ(SC
C)の判定を行なう。
【0039】結合エネルギーEbを用いて、皮膜の機械
的破壊について判定する。この皮膜の結合エネルギーE
bは、前述したように不動態皮膜の結合強度である。そ
して皮膜の機械的強度、すなわち、皮膜の機械的破壊と
相関がある。従って、皮膜の機械的破壊に関して、皮膜
の機械的破壊が起きるEbの臨界値、すなわち、基準E
bcを、組成及び構造が既知である皮膜に対し予め行な
った破壊試験とその既知皮膜のEbの計算値との対応か
ら求め設定することができる。この基準Ebcが所与の
皮膜破壊結合強度である。所与とは「所定の値として与
えられた」という意味である。
【0040】そして、被検査試料のEbと基準Ebcを
比較する。Eb>基準Ebcであれば皮膜破壊は起き
ず、Eb≦基準Ebcであれば、皮膜破壊が発生する状
態にあるとする。
【0041】皮膜溶解については、被検査試料と同一素
材で電極を作成し、被検査試料の環境と同じ環境中に置
いた該電極からなる腐食電位センサによって測定した実
測ECPを、被検査試料のPvと比較し、Pv>実測E
CPであれば皮膜溶解は起きず、Pv≦実測ECPの場
合は、皮膜溶解が発生する状態にあるとする。
【0042】そして、皮膜破壊と皮膜溶解のいずれも発
生しない状態であれば、皮膜は健全であると判定する。
いずれか一方が発生する状態にあれば、SCCが発生す
る腐食状態にあると判定する。なお、金属材料によって
は皮膜破壊か皮膜溶解かどちらか一方で判定しても可で
ある。
【0043】以上が金属材料の腐食状態を検査する腐食
検査方法の一実施例の手順である。
【0044】図5は、本発明による他の実施例の腐食検
査方法の手順を示す流れ図である。本実施例では、皮膜
の組成及び構造の時間変化を測定する。このような時間
変化が生じる原因としては、照射の影響を受けた組成の
変化、また付加応力による歪の変化などが考えられる。
時間変化の測定方法は、所定の時間に皮膜の同じ位置ま
たは等価な位置の組成及び構造を数回測定し、内外挿に
よって時間変化を得る方法、あるいは、照射下での物質
移動の理論式や応力下での変形挙動の理論式に基づき、
計算によって時間変化を得る方法などが考えられる。
【0045】尚、時間変化を得るためには、その時点時
点の組成及び構造を測定しているから、組成及び構造の
情報には、時間変化の情報も含まれるものである。
【0046】次に、組成及び構造の時間変化の情報よ
り、皮膜の電子構造の時間変化を設定する。設定は図1
に示した手順と同じように、全エネルギー及び電子エネ
ルギー準位の時間変化を求めて設定する。実験値を蓄積
したデータベースによるものでも可である。
【0047】次に、全エネルギー(ea ,Ep)の時間
変化より、まず結合エネルギーEbの時間変化を求め
る。そして、現在までのEbの時間変化のデータより将
来の腐食挙動を予測し、この結果から、皮膜破壊が起き
る時期(時刻)、すなわち、Eb≦基準Ebcとなる時
期(予測破壊時間)であるtrc を算出する。
【0048】次に、電子エネルギー準位(Ef,Ev)
の時間変化より、皮膜の溶解開始電位 Pvの時間変化
を求める。上記のtrc の算出と同じように、現在まで
のPvの時間変化のデータより腐食進度を予測し、この
結果を実測ECP、あるいは今後予想される予測ECP
と比較し、皮膜溶解が始まる時期(時刻)、すなわち、
Pv≦実測ECP(または、Pv≦予測ECP)となる
時期(予測溶解時間)である tdcを算出する。
【0049】最後に、trcとtdcを比較し、短い方をS
CC発生時期(時刻)tc として決定する。本実施例に
おいては、皮膜が健全であるか否かの検査のみでなく、
いつ皮膜割れが発生するかという、腐食割れの時間的予
測(腐食進度の予測)が可能である。
【0050】図6は、本発明による一実施例の腐食検査
装置の構成を示す図である。本実施例は、沸騰水型原子
炉の炉心で用いるステンレス鋼を対象としている。まず
被検査部位21より試料20を取り出し、組成及び構造
測定手段1によって粒界直上の皮膜の組成及び構造を測
定する。試料は、腐食検査を行いたい部材と同一の素材
からできている。尚、溶接の影響を考慮する場合は、部
材が受けた熱履歴と同様の処理を行って試料を作成す
る。
【0051】この試料20を、被検査部位21に設置し
て検査したい金属材料部材(本実施例の場合は炉心のス
テンレス鋼)と同じ環境に置き、定期検査時に取り出し
て測定を行う。また、試料は実際に検査を行ないたい部
材から放電加工などにより試験片として切り出しても良
く、この場合は環境等の条件が全く同一になるという利
点がある。試料は、これまでの経験からSCC発生の可
能性が高いと考えられる、溶接部や高中性子線量の部位
などに、数箇所に分け設置する。
【0052】組成及び構造測定手段1には、数十nmの
測定精度、構造や元素の分析という点を考えると、電子
顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、また
はアトムプローブ顕微鏡が挙げられる。照射による使用
中の組成変化を考慮しなくて良い場合は、応力による歪
量変化のみを測定すればよいため、X線回折装置等を用
いることもできる。これら一連の装置はいずれも非破壊
で測定が可能なため、試料を測定後速やかに元の位置に
戻し、継続して使用する。
【0053】皮膜の腐食速度はそれほど速くでないの
で、組成及び構造の測定は定期検査毎でも十分である。
しかし、次回定期検査までの腐食度合を精度良く把握し
たい場合は、組成及び構造予測手段9によって、照射下
での物質移動の理論式や応力下での変形挙動の理論式に
基づき、所定の時期における予測組成および予測構造を
求め、利用してもよい。
【0054】尚、組成及び構造測定手段1(または測定
方法)は、試料や試験片を取り出すというオフライン方
式でなく、例えば、グラスファイバーとレーザを用い
て、オンライン方式でリアルタイムに測定することも可
である。
【0055】次に、皮膜の組成及び構造のデータは、電
子構造設定手段2に送られる。電子構造設定手段2に
は、ステンレス鋼の不動態皮膜がいろいろ取り得る結晶
構造に対応した、計算クラスタが記憶されており、送ら
れてきた皮膜構造データとの比較から、使用する計算ク
ラスタの種類が決められる。応力による原子位置の変位
がある場合は、その変位データに基づき、計算クラスタ
中の原子位置が補正される。更に、皮膜組成データに基
づき計算クラスタ中の原子種が決められる。以上のよう
な手順で設定した計算クラスタを用いて、分子軌道法に
よって全エネルギー及び電子エネルギー準位が計算され
る。
【0056】次に、全エネルギーが結合強度を演算する
結合エネルギー演算手段3に、電子エネルギー準位が溶
解開始電位を演算する溶解開始電位演算手段4に、それ
ぞれ送られ、Eb及びPvが算出される。
【0057】尚、この時、溶解開始電位演算手段4に、
被検査部位に設置された白金電極の腐食電位センサであ
る腐食電位測定手段としての白金センサ5から得た、補
正ECPが入力される。この補正ECPは、水質変化に
より腐食電位が変化した場合のPfの補正に用いられる
もので、前述の基準フラットバンド電位の補正に使われ
る。
【0058】次に、Eb及びPvは、SCC発生を判定
する腐食進度判定手段7に送られ、Ebは基準Ebc
と、さらに、Pvは、ステンレス電極の腐食電位センサ
である腐食電位測定手段としてのステンレスセンサ6に
より測定された、腐食電位である実測ECPと比較さ
れ、SCC発生の条件を満たしているか否か判定され
る。
【0059】判定結果は、表示手段8に表示される。以
上が、金属材料の腐食状態を検査する腐食検査装置の一
実施例である。
【0060】尚、被検査部材と同一素材からなるステン
レスセンサ6や、白金センサ5は、試料20と同じ位置
の被検査部位21に設置される。検査毎の判定結果と共
に、Eb,基準Ebc,Pv,実測ECPなどの値が、
表示手段8にて表示されても可である。この表示手段8
は、視覚のみでなく聴覚に訴える、例えば、警報機のよ
うなものでも可であり、すなわち、表示手段8は、検査
された腐食状態を報知する腐食報知手段である。
【0061】図7は、本発明による他の実施例の腐食検
査装置の構成を示す図である。図6の実施例では、腐食
検査が行なえる被検査部位が、予め試料及び腐食電位セ
ンサを設置した部位に限定されていた。これに対し、図
7に示す実施例は、炉内の任意の部位に対しても、検査
が可能な腐食検査装置である。
【0062】本実施例では、試料20は、予め設置され
た設置部位と、被検査部材から試験片を切り出す任意部
位とから採取される。予め設置された部位を被検査部位
21とし、試験片を切り出す部位を任意部位22とす
る。そして、任意部位22での実測ECPの測定は、以
下のような方法で行われる。炉内にいくつか設置してあ
る白金センサ5、ステンレスセンサ6による実測ECP
及び補正ECPの値をECP演算手段10に入力する。
そして、これらの値と、別途測定している炉内温度や炉
水流速の分布データより、炉水中酸化種濃度分布を数値
計算にて求め、この濃度分布とECP分布等の相関か
ら、任意部位22の実測ECP等を演算測定するもので
ある。
【0063】本実施例によれば、検査している腐食環境
がSCC発生の条件を満たしているかどうか、またSC
C発生までに(皮膜破壊や皮膜溶解までに)どの程度の
裕度があるかなどを、広範囲に亘り知ることができる。
【0064】即ち、金属材料に腐食が発生する前の段階
で、腐食が発生する条件が揃っているか否かを検知する
こと、結合強度や溶解開始電位が時間経過と共にどの様
に変化するかを予測計算し、金属材料の腐食進度を予想
することが可能である。そして、検査した腐食状態、予
測腐食進度、予測腐食割れ時期などを、腐食報知手段と
しての表示手段8にて報知するものである。
【0065】また、比較的速い水質変化の情報を含む腐
食電位が、炉内の任意部位に対しECP演算手段10で
演算測定されているので、リアルタイムでSCC発生の
条件の変化を把握することができる。更に、これらの情
報により、後述する水質制御による腐食環境緩和対策や
金属材料の交換(以下、部材交換という)などのSCC
に対する予防保全を的確に実施することも可能である。
【0066】図8は、本発明による予防保全の手順を示
す流れ図である。大別すると、検査手順と予防保全手順
の2つになる。まず、検査手順は図5と同様の手順であ
る。即ち、皮膜の組成及び構造の時間変化と、実測EC
Pのデータより、trcおよびtdcを算出する。
【0067】次に、予防保全手順について説明する。上
記の皮膜破壊が起きる時期trc、および皮膜溶解が始ま
る時期tdcを、部材の使用時間t0と比較する。trc
0である場合は、使用期間中に皮膜破壊によりSCC
が発生する虞れがあるため、trc に到達する前に、部
材表面にショットピーニング等を施すといった応力緩和
対策、あるいは部材交換を講ずる。
【0068】また、tdc≦t0である場合は、使用期間
中に皮膜溶解によりSCCが発生する虞れがあるため、
dc に至る前に、前述の応力緩和対策、または水素注
入等の水質制御による腐食環境緩和対策、またはそれら
の両方、或いは部材交換等を実施する。それぞれのSC
C発生に対する具体的な予防保全の実施内容と効果の確
認としては、以下のようなものが考えられる。
【0069】trc≦t0である場合は、trcに至る前の
適当な時期の定期点検を設定し、この時に応力緩和対策
を実施する。対策の効果は、対策後の部材から採取した
試料或いは部材と同様の応力緩和対策を行なった試料の
粒界直上の組成及び構造を測定し、これから新たに算出
したtrcが、安全率を見込んでもt0より十分大きくな
っていることにより確認する。また、応力緩和対策によ
って、十分なtrcの増加が得られていないことが確認さ
れれば、当該部位について、その定期点検時、またはt
rcに至る前の適当な時期に部材交換を実施するなどの実
施内容が考えられる。
【0070】tdc≦t0である場合は、水素注入等の水
質制御による腐食環境緩和対策が実施される。例えば、
dcに至る前の適当な時期に、給水配管等から水素が注
入される。注入によるECPの変化を腐食電位センサに
より測定し、この値から新たに演算したtdcが、安全率
を見込んでもt0より十分大きくなっていることが確認
されたら注入を停止する。また水素注入によって効果が
得られていない場合は適当な定期点検時に、応力緩和対
策または部材交換を実施する。
【0071】以上のように本実施例によれば、SCC発
生に対し、部位別にあるいは機構別に予防保全を的確に
行うことが可能である。また、予防の効果を定量的に確
認することも可能である。これによって計画外の停止頻
度を低減し、プラントの安全性を向上することができ
る。また、予防保全のための対策人員や規模の最適化が
図られ、経済性を向上することができる。
【0072】本実施例では、部材の使用期間中にSCC
が発生しないように予防保全を実施する例を示したが、
他の実施例として、「SCC発生後」も腐食挙動を監視
し、使用期間t0における亀裂深さが予め定めた値を越
えないように、監視保全を施すことも可能である。予防
の場合よりも監視の場合の基準を緩くすることができる
ので、対策に要する費用は低減できる。
【0073】図9は本発明による一実施例のプラント運
転制御装置の構成を示す図である。沸騰水型原子力プラ
ントに予防保全や監視保全を適用した例である。本実施
例は、図7と同様の検査装置に予防保全の部分である予
防保全装置を付加したものである。予防保全装置は、例
えば、データ記憶手段11、予防保全制御手段12およ
び水素注入手段13から構成されるものである。表示装
置8が含まれても可である。検査装置の部分の作動は図
7と同様であるので、予防保全の部分についてのみ説明
する。尚、予防保全装置で監視保全は可である。
【0074】検査装置の部分にて採取されたEb、Pv
および実測ECPの値が、データ記憶手段11に蓄積さ
れる。そして、これらの値が利用され、Eb、Pvの時
間変化の予測値、あるいは必要に応じた推定値等が算出
される。
【0075】次に、これらの情報を基に、例えば、図8
の手順に従って、予防保全制御手段12が、予防保全の
内容の選択と決定、対策時期の検討と設定などを行な
い、予防保全を実施する。
【0076】例えば、図8の手順と同じように、tdc
0である場合は、予防保全制御手段12から、制御信
号が、tdcに至る前の適当な時期に、水素注入手段13
に送られる。そして、給水配管等から水素が炉内に注入
される。注入の効果は、各センサ5、6によって得られ
た情報が検査装置の部分にて処理され確認される。そし
て、注入後に新たに算出したtdcが、t0より大きくな
れば注入は停止される。 または、その時点での炉水中
水素濃度を一定に保持するように、水素注入手段13が
制御される。水素注入により、tdcの増加が得られてい
ない場合は、作業員が、別途tdc に至る前の適当な定
期点検時に、応力緩和対策または部材交換などを実施す
るように、表示装置8が報知する。そのために、trc
dc、及び予防保全の内容、定期点検時期などが、E
b,Pv,実測ECP等と共に、表示装置8に表示され
る。
【0077】本実施例では水素注入の開始または停止
は、オンラインで自動的に行なっているが、予防保全の
対策結果に基づいて、オフラインで水質自体の制御を行
なっても良く、この場合は、装置の構造が簡素化しコス
トが下がるというメリットがある。
【0078】図10は、本発明による検査方法を合金設
計に応用した実施例を示す流れ図である。まず、金属材
料の粒界上の皮膜の組成及び構造の初期設計値を設定す
る。次に理論計算等により所定期間後におけるこの粒界
上の組成及び構造の変化量を算出する。
【0079】次に、この変化量を考慮した範囲内での組
成及び構造の電子構造を設定し、この結果より、所定期
間後のEb及びPvの最小値を求める。次に、Ebの最
小値と設計基準「Ebc」とを、またPvの最小値と所
定期間後に想定される設計基準「ECP」とを比較す
る。尚、これらの設計基準は過去の蓄積データから別途
設定したものである。
【0080】そして、前述と同様にSCC発生の条件を
満たすか否か判定する。条件を満たすならば、所定期間
後にSCCが発生する可能性が高いため、皮膜の組成及
び構造の初期設計値を修正し、再び判定する。この設計
値の設定を繰り返す。
【0081】条件を満たさなくなれば、設計値として設
定した粒界上の皮膜の組成及び構造が、所定期間後にS
CCが発生しないものであると、決定されたことにな
る。
【0082】そして、この設計値として設定された皮膜
の組成及び構造から、金属母材の化学組成を決定する。
すなわち、皮膜と金属母材の組成の違い、使用前の溶接
による母材の粒界と結晶粒の組成の変化や応力の発生な
どを考慮し、さらに理論計算や実験値に基づく経験則を
駆使して、皮膜の組成及び構造が先に決定した設計値と
一致するような金属母材の化学組成を決定する。すなわ
ち、耐食性のある合金組成が設計されることになる。
【0083】以上のように本実施例によれば、SCC発
生の理論に基づき合金設計を行なうため、多種の組成の
試験片を実際に作製しSCC試験を行なっていた従来の
設計開発に比べて、効率良く、耐食性合金を設計するこ
とができる。また、本方法により設計した合金は、合金
設計時に想定した環境や使用期間内において、SCC発
生の可能性をなくすことができるので、信頼性を向上す
ることができる。更に本方法で設計した合金を使用した
プラントは、SCC発生の可能性がないため、安全性が
向上し、また予防保全に費やす経費が節減されるもので
ある。
【0084】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、金属材料
の結晶粒界上という局所的な部位の、不動態皮膜の腐食
度合を調べることにより、精度良く金属材料の腐食状態
を検査する腐食検査方法及び装置を提供することができ
る。そして、これらの検査方法及び装置を利用して予防
保全等を実施することができる。
【0085】また、理論的モデルに基づいた検査である
ため、組成及び構造、付加応力、水質などに予想外の変
化があっても、それらの変化に対し同等の精度で対応す
ることができ、信頼性の高い腐食検査方法及び装置を提
供する効果がある。
【0086】さらに、従来のような初期亀裂といった根
拠不明確な仮定などによらず、リアルタイムで腐食度合
を把握しまた腐食予測が精度良く行えるので、安全率を
過大に設定する必要がなく、経済的な効果に結び付くも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例の腐食検査方法の手順を
示す流れ図である。
【図2】計算クラスタの一実施例を示す図である。
【図3】粒界直上の電子エネルギー準位の計算結果を示
す図である。
【図4】付加応力により歪がある場合の価電子帯準位E
vの変化を示す図である。
【図5】本発明による他の実施例の腐食検査方法の手順
を示す流れ図である。
【図6】本発明による一実施例の腐食検査装置の構成を
示す図である。
【図7】本発明による他の実施例の腐食検査装置の構成
を示す図である。
【図8】本発明による予防保全の手順を示す流れ図であ
る。
【図9】本発明による一実施例のプラント運転制御装置
の構成を示す図である。
【図10】本発明による検査方法を合金設計に応用した
実施例を示す流れ図である。
【図11】皮膜の電子構造を説明する模式図である。
【図12】アノード分極曲線を説明する模式図である。
【符号の説明】
1…組成及び構造測定手段、2…電子構造設定手段、3
…結合エネルギー演算手段、4…溶解開始電位演算手
段、5…白金センサ、6…ステンレスセンサ、7…腐食
進度判定手段、8…表示手段、9…組成及び構造予測手
段、10…ECP演算手段、11…データ記憶手段、1
2…予防保全制御手段、13…水素注入手段、20…試
料、21…被検査部位、22…任意部位
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G21D 1/00

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属材料表面の腐食発生部位となり得る局
    所に形成された不動態皮膜の組成及び構造と前記金属材
    料の腐食電位とを測定し、該組成及び構造の情報より前
    記不動態皮膜の電子構造を設定し、前記電子構造より前
    記不動態皮膜の結合強度と溶解開始電位とを演算により
    求め、前記金属材料の所与の皮膜破壊結合強度と前記結
    合強度との比較、または、前記溶解開始電位と前記腐食
    電位との比較のうち、少なくとも1つの比較から前記金
    属材料の腐食状態を検査することを特徴とする金属材料
    の腐食検査方法。
  2. 【請求項2】金属材料表面の腐食発生部位となり得る局
    所に形成された不動態皮膜の組成及び構造の時間変化と
    前記金属材料の腐食電位とを測定し、該組成及び構造の
    時間変化の情報より前記不動態皮膜の電子構造の時間変
    化を設定し、前記電子構造の時間変化より前記不動態皮
    膜の結合強度の時間変化と溶解開始電位の時間変化とを
    演算により求め、前記金属材料の所与の皮膜破壊結合強
    度と前記結合強度の時間変化との組み合わせ、または、
    前記腐食電位と前記溶解開始電位の時間変化との組み合
    わせのうち、少なくとも1つの組み合わせから前記金属
    材料の腐食状態を検査することを特徴とする金属材料の
    腐食検査方法。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記金属材料の所与の
    皮膜破壊結合強度と前記結合強度の時間変化との組み合
    わせから前記不動態皮膜が皮膜破壊に至るまでの予測破
    壊時間と、前記腐食電位と前記溶解開始電位の時間変化
    との組み合わせから前記不動態皮膜が皮膜溶解に至るま
    での予測溶解時間とを演算により求め、 前記予測破壊時間、または、前記予測溶解時間のうち、
    少なくとも1つから前記金属材料の腐食状態を検査する
    ことを特徴とする金属材料の腐食検査方法。
  4. 【請求項4】金属材料表面の腐食発生部位となり得る局
    所に形成された不動態皮膜の組成及び構造を測定する組
    成及び構造測定手段と、該組成及び構造の情報により前
    記不動態皮膜の電子構造を設定する電子構造設定手段
    と、 前記電子構造より前記不動態皮膜の結合強度を演算する
    結合エネルギー演算手段と、前記電子構造より前記不動
    態皮膜の溶解開始電位を演算する溶解開始電位演算手段
    と、 前記金属材料の腐食電位を測定する腐食電位測定手段
    と、 前記金属材料の所与の皮膜破壊結合強度と前記結合強度
    との比較、または、前記溶解開始電位と前記腐食電位と
    の比較のうち、少なくとも1つの比較から、前記金属材
    料の腐食進度を判定する腐食進度判定手段とを備え、前
    記金属材料の腐食状態を検査することを特徴とする金属
    材料の腐食検査装置。
  5. 【請求項5】金属材料表面の腐食発生部位となり得る局
    所に形成された不動態皮膜の組成及び構造の時間変化を
    測定する組成及び構造測定手段と、該組成及び構造の時
    間変化の情報より前記不動態皮膜の電子構造の時間変化
    を設定する電子構造設定手段と、 前記電子構造の時間変化より前記不動態皮膜の結合強度
    の時間変化を演算する結合エネルギー演算手段と、前記
    電子構造の時間変化より前記不動態皮膜の溶解開始電位
    の時間変化を演算する溶解開始電位演算手段と、 前記金属材料の腐食電位を測定する腐食電位測定手段
    と、 前記金属材料の所与の皮膜破壊結合強度と前記結合強度
    の時間変化との組み合わせ、または、前記腐食電位と前
    記溶解開始電位の時間変化との組み合わせのうち、少な
    くとも1つの組み合わせから前記金属材料の腐食進度を
    判定する腐食進度判定手段とを備え、前記金属材料の腐
    食状態を検査することを特徴とする金属材料の腐食検査
    装置。
  6. 【請求項6】請求項1または請求項2または請求項3記
    載の金属材料の腐食検査方法によりプラントの構造物、
    配管等の金属材料の腐食状態を検査し、 検査された該腐食状態に応じて、前記金属材料に対して
    予防保全あるいは監視保全を講じることを特徴とするプ
    ラントの予防保全方法。
  7. 【請求項7】プラントの構造物、配管等の金属材料の腐
    食状態を検査する、請求項4または請求項5記載の金属
    材料の腐食検査装置を備え、 前記腐食検査装置により検査された前記腐食状態に応じ
    て、前記プラントの金属材料に対して予防保全を講じる
    よう前記プラントを運転制御する予防保全装置を設けた
    ことを特徴とするプラント運転制御装置。
  8. 【請求項8】請求項7において、前記予防保全装置は、
    前記プラントの金属材料が置かれている腐食環境を制御
    することを特徴とするプラント運転制御装置。
  9. 【請求項9】プラントの構造物、配管等の金属材料を予
    防保全する、請求項7または請求項8記載のプラント運
    転制御装置を備えたことを特徴とするプラント。
  10. 【請求項10】金属材料の表面の腐食発生部位となり得
    る局所に形成される不動態皮膜の組成及び構造に対し繰
    返し設計値を与え、該設計値より所定期間後の前記不動
    態皮膜の組成及び構造を算出し、所定期間後の前記不動
    態皮膜の電子構造を設定し、 前記電子構造より所定期間後の前記不動態皮膜の結合強
    度と溶解開始電位とを算出し、前記金属材料の所与の設
    計基準の皮膜破壊結合強度と前記結合強度、または、前
    記金属材料の所与の設計基準の腐食電位と前記溶解開始
    電位を比較し、 前記比較から前記不動態皮膜に腐食発生がないと判定さ
    れる前記設計値を決定し、 決定された前記設計値の前記不動態皮膜の組成及び構造
    を有する前記金属材料の組成を、腐食発生のない合金材
    料の組成として設計することを特徴とする耐食性合金の
    設計方法。
  11. 【請求項11】請求項10記載の耐食性合金の設計方法
    により設計された耐食性合金が、プラントの構造物、配
    管等の金属材料に用いられていることを特徴とするプラ
    ント。
  12. 【請求項12】金属材料表面の腐食発生部位となり得る
    局所に形成された、不動態皮膜の組成及び構造を測定
    し、該組成及び構造の情報より前記不動態皮膜の電子構
    造を設定し、前記電子構造より前記不動態皮膜の結合強
    度と溶解開始電位とを演算により求め、前記金属材料の
    腐食発生領域にある腐食状態を検査することを特徴とす
    る金属材料の腐食検査方法。
  13. 【請求項13】プラントの構造物、配管等の金属材料の
    腐食状態を、請求項1または請求項2または請求項3ま
    たは請求項12記載の金属材料の腐食検査方法により検
    査し、検査された前記腐食状態を報知する腐食報知手段
    を備えたことを特徴とするプラント。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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