JPH0874903A - 湿式摩擦材およびその製造方法 - Google Patents

湿式摩擦材およびその製造方法

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JPH0874903A
JPH0874903A JP21625194A JP21625194A JPH0874903A JP H0874903 A JPH0874903 A JP H0874903A JP 21625194 A JP21625194 A JP 21625194A JP 21625194 A JP21625194 A JP 21625194A JP H0874903 A JPH0874903 A JP H0874903A
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friction material
wet friction
wet
thickness
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Inventor
Hirotaka Chiba
葉 啓 貴 千
Toshihiko Aikawa
川 俊 彦 相
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた摩擦性能を有すると共に、圧縮および
剪断疲労寿命に優れた湿式摩擦材および、このような湿
式摩擦材の製造方法を提供する。 【構成】 重ね合わせた2枚の抄紙体に結合剤を溶媒で
希釈した結合剤溶液を含浸させて乾燥させたのち、抄紙
体を分離して結合剤を硬化させることにより、結合剤の
含浸率を当該摩擦材の摩擦面から厚さ方向に向けて漸増
させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば自動車の自動変
速機などにおいて、油中に浸漬された状態で使用される
クラッチやブレーキなどに利用される湿式摩擦材に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のような湿式摩擦材として
は、セルロース繊維やポリアミド,ポリエステル繊維な
どの基材繊維と、珪藻土や炭酸カルシウム,黒鉛などの
無機添加剤,摩擦調整剤との混合物を水中で抄くことに
より紙状の抄紙体を形成し、当該抄紙体に液状の結合
剤、すなわちフェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬
化性樹脂をメタノールなどの溶媒で希釈した溶液を含浸
させて乾燥させたのち、結合剤を熱硬化させて得られ
る、いわゆるペーパー系と呼ばれるものが用いられてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、湿式摩擦材を
構成する抄紙体の組成および結合剤が同一である場合、
抄紙体への結合剤の含浸率を高くするほど、基材繊維の
周りに被覆される樹脂層の厚みが大きくなることから、
摩擦材としての強度が向上することが確認されている。
【0004】ところが、上記したような従来の湿式摩擦
材においては、表層部(摩擦面および裏面近傍部)に較
べて深層部(厚さ方向中央部)における結合剤含浸率が
低くなる傾向がある。 したがって摩擦材の板厚中央部
の強度が摩擦面近傍部および裏面近傍部に較べて低下す
るために、使用状態において当該摩擦材に圧縮および剪
断応力が繰り返し負荷されると、強度的に最も弱い板厚
中央部からまずクラックが発生し、発生したクラックが
基材繊維の配向方向に沿って、摩擦面に平行に進展する
ことによって、当該摩擦材が層状に大きく剥離するとい
う問題点があった。
【0005】なお、湿式摩擦材の表層部に較べて深層部
(内部)の結合剤含浸率が低下する原因は、抄紙体の乾
燥工程にあり、抄紙体の乾燥が主に表層部において進行
することによると考えられる。
【0006】すなわち、抄紙体の乾燥過程において、抄
紙体に含浸された結合剤溶液の溶媒(メタノールなど)
は、主に抄紙体の表面(摩擦面)および裏面から蒸発し
て行くために、乾燥途中における溶質(熱硬化性樹脂結
合剤)濃度は抄紙体内部に較べて常に表層部が高くな
り、逆に溶媒濃度は抄紙体内部が高くなるので、表層部
の結合剤溶液に較べて抄紙体内部の結合剤溶液の粘度が
小さくなる。 したがって、移動しやすい抄紙体内部の
結合剤溶液が抄紙体の表層部に移動し、抄紙体の表面お
よび裏面において結合剤溶液の溶媒のみが蒸発すること
から、乾燥終了時には抄紙体内部より摩擦面および裏面
の結合剤含浸率が高くなるものと考えられる。
【0007】一方、結合剤含浸率が最も小さい板厚中央
部の結合剤含浸率を増加させることにより、当該部分の
強度を向上させることも考えられるが、深層部の結合剤
含浸率を増加させると、同時に表層部の結合剤含浸率が
必要以上に高くなってしまい、表層部すなわち摩擦面の
気孔率が低下することによって、摩擦材としてのμ−V
特性が劣化するという問題点があり、これら問題点の解
消が従来の湿式摩擦材の性能を向上させるための課題と
なっていた。
【0008】
【発明の目的】本発明は、従来の湿式摩擦材における上
記課題に着目してなされたものであって、優れたμ−V
特性を有すると共に、圧縮および剪断疲労寿命に優れた
湿式摩擦材、およびμ−V特性を劣化させることなく圧
縮および剪断疲労寿命を向上させることのできる湿式摩
擦材の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1および
請求項2に係わる湿式摩擦材は、基材繊維に無機添加剤
と、必要に応じて摩擦調整剤を配合した混合物から抄造
した抄紙体に結合剤を含浸させてなる湿式摩擦材におい
て、結合剤の含浸率が摩擦面から当該摩擦材の厚さ方向
に向けて漸増している構成とし、本発明に係わる湿式摩
擦材の好ましい実施態様として請求項3に係わる湿式摩
擦材は、摩擦面から厚さ方向に0.1mmまでの摩擦面
近傍部における結合剤含浸率に対する摩擦材の厚さ中央
位置を中心として0.1mmの厚さを有する中央近傍部
における結合剤含浸率の比が1.03〜1.15である
構成とし、同じく実施態様として請求項4に係わる湿式
摩擦材は、摩擦面から厚さ方向に0.1mmまでの摩擦
面近傍部における結合剤含浸率が30〜40重量%であ
る構成としたことを特徴としており、このような湿式摩
擦材の構成を前述した従来の課題を解決するための手段
としている。
【0010】また、本発明の請求項5に係わる湿式摩擦
材の製造方法は、略同一厚さを有する抄紙体を2枚重ね
合わせた状態において、当該抄紙体に結合剤を溶媒で希
釈した結合剤溶液を含浸させて乾燥させたのち、当該抄
紙体を分離して結合剤を硬化させる構成とし、請求項6
に係わる湿式摩擦材の製造方法は、結合剤を溶媒で希釈
した結合剤溶液を含浸させた略同一厚さの抄紙体を2枚
重ね合わせた状態で乾燥させたのち、当該抄紙体を分離
して結合剤を硬化させる構成とし、請求項7に係わる湿
式摩擦材の製造方法は、結合剤を溶媒で希釈した結合剤
溶液を含浸させた抄紙体を乾燥させたのち、厚さ中央部
から切断し、2枚に分離した状態で結合剤を硬化させる
構成とし、本発明の請求項8に係わる湿式摩擦材の製造
方法は、結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を含浸させ
た抄紙体を乾燥させ、結合剤を硬化させたのち、厚さ中
央部から切断して2枚に分離する構成とし、請求項9に
係わる湿式摩擦材の製造方法は、結合剤を溶媒で希釈し
た結合剤溶液を含浸させた抄紙体の一方の面を緻密な平
滑面に密着させた状態において抄紙体を乾燥させたの
ち、当該抄紙体を前記平滑面から分離して結合剤を硬化
させる構成とし、さらに本発明の請求項10に係わる湿
式摩擦材の製造方法は、結合剤を溶媒で希釈した結合剤
溶液を含浸させた抄紙体の一方の面を緻密な平滑面に密
着させた状態において抄紙体を乾燥させ、結合剤を硬化
させたのち、前記平滑面から分離する構成としており、
湿式摩擦材の製造方法における上記構成を前述した従来
の課題を解決するための手段としたことを特徴としてい
る。
【0011】本発明に係わる湿式摩擦材および湿式摩擦
材の製造方法において使用する基材繊維は摩擦材全体の
強度と弾性を与えるもので、セルロース繊維,芳香族ポ
リアミド繊維,アクリル系繊維,ポリエステル繊維,ポ
リプロピレン繊維などの有機繊維、あるいはガラス繊
維,カーボン繊維,セラミックス繊維などの無機繊維を
単独で、あるいは2種以上の繊維を配合して使用するこ
とができる。
【0012】無機添加剤は耐摩耗性および耐熱性を付与
するものであって、珪藻土,炭酸カルシウム,シリカ,
クレイ,マイカ,タルク,炭酸マグネシウムなどを単独
あるいは組み合わせて、抄紙体中に望ましくは10〜4
9重量%の範囲で添加することができる。 また、摩擦
調整剤としては、グラファイト,無定形炭素,カシュー
ダストなどが単独あるいは組み合わせて、望ましくは2
0重量%以下の範囲で抄紙体中に添加される。
【0013】さらに、結合剤としては、硬化前の形態が
液状をなす熱硬化性樹脂、例えばレゾール系フェノール
樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂などが用いられ、抄
紙体への含浸を容易なものとするために、これら樹脂を
メタノールなどの溶媒によって希釈した溶液を使用す
る。
【0014】
【発明の作用】本発明の請求項1および請求項2に係わ
る湿式摩擦材においては、結合剤の含浸率が摩擦面から
厚さ方向に向けて漸増しているので、摩擦面における結
合剤含浸率を従来と同程度とすれば、μ−V特性が劣化
することなく板厚中央部の強度が摩擦面より高いものと
なり、摩擦材全体の強度が向上する。 すなわち、本発
明に係わる湿式摩擦材においては、摩擦面近傍部の結合
剤含浸率が最も低くなるので、当該摩擦材に圧縮および
剪断応力が繰り返し負荷されることにより、強度の低い
摩擦面近傍部にクラックが生じたとしても、このクラッ
クは摩擦面に極めて近い位置にあるため、ほとんど進展
することなく摩擦面側に抜けてしまうことから、摩擦面
から小片がピッチング状に剥離するに止まり、板厚中央
部から大きく層状に剥離するようなことがないようにな
る。
【0015】本発明に係わる湿式摩擦材における望まし
い実施態様として請求項3に係わる湿式摩擦材において
は、摩擦面から厚さ方向に0.1mmまでの摩擦面近傍
部における結合剤含浸率に対する摩擦材の板厚中央位置
を中心として0.1mmの厚さを有する中央近傍部にお
ける結合剤含浸率の比が1.03〜1.15となってい
るので、強度バランスが湿式摩擦材として最適なものと
なる。 同じく実施態様として請求項4に係わる湿式摩
擦材においては、摩擦面から厚さ方向に0.1mmまで
の摩擦面近傍部における結合剤含浸率が30〜40重量
%であるから、摩擦面における気孔率が最適なものとな
り、圧縮および剪断疲労寿命(耐久性)と共に、湿式摩
擦材としてのμ−V特性がより良好なものとなる。
【0016】また、本発明の請求項5および請求項6に
係わる湿式摩擦材の製造方法においては、2枚重ねの
後、あるいはその前に、結合剤を溶媒で希釈した結合剤
溶液を含浸させた略同一厚さの2枚の抄紙体を重ね合わ
せた状態で乾燥させるようにしているので、2枚の抄紙
体の重ね合わせ面の裏面側から、すなわち重ね合わされ
て一体化した抄紙体の外側に露出する裏面側から結合剤
溶液の溶媒が蒸発して行くことになり、中央部に位置す
る重ね合わせ面側に較べて裏面側の結合剤含浸率が高い
ものとなる。 したがって、乾燥後の抄紙体を2枚に分
離したのち結合剤を硬化させ、重ね合わせ面を摩擦面と
して使用すれば、摩擦面からその裏面側に向けて、すな
わち摩擦材の厚さ方向に向けて結合剤含浸率が漸増する
湿式摩擦材となる。
【0017】本発明の請求項7あるいは請求項8に係わ
る湿式摩擦材の製造方法においては、結合剤溶液を含浸
させた抄紙体を乾燥させたのち、結合剤の硬化前、ある
いは硬化後に、抄紙体を厚さ方向の中央部より半分に切
断するようにしているので、抄紙体は結合剤含浸率の最
も低い部分で切断されることになる。 したがって、当
該切断面を摩擦面として使用すれば、摩擦面から摩擦材
の厚さ方向に向けて結合剤含浸率が漸増する湿式摩擦材
となる。
【0018】本発明の請求項9あるいは請求項10に係
わる湿式摩擦材の製造方法においては、結合剤溶液を含
浸させた抄紙体を気孔のない緻密な平滑面に密着させた
状態で乾燥させたのち、結合剤の硬化前、あるいは硬化
後に、前記平滑面から分離するようにしているので、結
合剤溶液は平滑面との密着面側からは蒸発せず、裏面側
から主に蒸発することになって、密着面に較べて裏面側
の結合剤含浸率が高いものとなる。 したがって、平滑
面との密着面を摩擦面として使用すれば、摩擦面からそ
の裏面側に向けて、すなわち摩擦材の厚さ方向に向けて
結合剤含浸率が漸増する湿式摩擦材となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。
【0020】実施例1 基材繊維としてコットンリンターパルプ55重量%およ
び芳香族ポリアミド繊維10重量%、添加剤として珪藻
土30重量%、摩擦調整剤としてグラファイト5重量%
からなる混合物を多量の水中に分散混合し、湿式抄紙法
によって厚さ1.2mmの抄紙体を抄造した。
【0021】次に、この抄紙体を2枚用意し、摩擦面と
して用いる面を合わせるようにして互いに重ね合わせ、
この状態でレゾール系フェノール樹脂をメタノールによ
り希釈した結合剤溶液を含浸させたのち、この状態のま
まで乾燥させることにより結合剤溶液中の揮発成分を蒸
発させた。
【0022】そして、乾燥を終えた抄紙体を鋼製のカッ
ターにより2枚に引き剥したのち、200℃に保持した
熱風乾燥炉内で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させ
た。なお、この実施例においては、耐久性よりも摩擦性
能(μ−V特性)を重視した摩擦材を得るために、硬化
処理後のフェノール樹脂含浸率が摩擦材全体で35重量
%、摩擦面近傍部で32重量%程度の比較的低い値を目
標に、結合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整す
るようにした。
【0023】次いで、結合剤を硬化させた後の抄紙体
に、あらかじめ200℃に熱せられた1軸加圧プレス機
により加圧成形を施すことによって、厚さ1mmの湿式
摩擦材のフェーシングを作製した。
【0024】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所、すなわ摩擦材表面部,板厚
の1/4位置,中央部,板厚の3/4位置,および摩擦
材裏面部における結合剤含浸率を測定したところ、図1
に示す結果となった。 なお、図において各プロット点
は、プロット点を中心として板厚方向に前後0.05m
m、合計0.1mmの厚さを有する部分における結合剤
含浸率を示すものである。
【0025】実施例2 実施例1と同様の材料および方法により抄造した2枚の
抄紙体のそれぞれに、実施例1と同じ結合剤溶液を含浸
させたのち、これら抄紙体の摩擦面として使用する面を
合わせるようにして2枚重ねした状態で乾燥させ、結合
剤溶液中の揮発成分を蒸発させた。
【0026】そして、乾燥後の抄紙体を2枚に引き剥し
たのち、実施例1と同様の条件で結合剤であるフェノー
ル樹脂を硬化させた。 なお、この実施例においては、
実施例1と同様に摩擦性能を重視した摩擦材を得るため
に、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率が摩擦材全体で
34重量%、摩擦面近傍部で32重量%程度となるよう
に、結合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整し
た。
【0027】次いで、結合剤を硬化させた後の抄紙体
に、実施例1と同様の加圧成形を施すことによって、厚
さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを作製した。
【0028】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図1に併せて示すような結果となっ
た。
【0029】実施例3 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
3.4mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させたのち、乾燥させ、結合剤溶液中の揮発成分を蒸
発させた。
【0030】そして、円盤状の回転砥石を用いたファイ
ンカッターにより、乾燥後の抄紙体を厚さ方法の中央部
から半分に切断し、2枚に分離した。 この切断加工の
加工代は1mmであるので、当該切断加工によって厚さ
1.2mmの抄紙体が2枚得られた。
【0031】次に、2枚に切断された抄紙体を熱風乾燥
炉に入れ、実施例1と同様の条件で結合剤であるフェノ
ール樹脂を硬化させた。 なお、この実施例において
は、実施例1と同様に摩擦性能を重視した摩擦材を得る
ために、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率が摩擦材全
体で36重量%、摩擦面として使用する切断面近傍部で
32重量%程度となるように、結合剤溶液濃度および結
合剤溶液含浸量を調整した。
【0032】次いで、結合剤を硬化させた後の抄紙体
に、実施例1と同様の加圧成形を施すことによって、厚
さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを作製した。
【0033】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図1に併せて示すような結果となっ
た。
【0034】実施例4 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
3.4mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させて乾燥したのち、実施例1と同様の条件で結合剤
であるフェノール樹脂を硬化させた。 なお、この実施
例においては、実施例1と同様に摩擦性能を重視した摩
擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率
が摩擦材全体で35.5重量%、摩擦面として使用する
切断面近傍部で31重量%程度となるように、結合剤溶
液濃度および結合剤溶液含浸量を調整した。
【0035】そして、実施例3で使用したファインカッ
ターにより、硬化後の抄紙体を厚さ方法の中央部から半
分に切断し、2枚に分離した。 この切断加工による加
工代は1mmであるので、厚さ1.2mmの摩擦材が2
枚得られた。
【0036】次に、実施例1と同様の加圧成形を施すこ
とによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを
作製した。
【0037】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図1に併せて示すような結果となっ
た。
【0038】比較例1 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体の摩擦面として用いる面に、同様に
抄造した厚さ0.4mmの抄紙体を重ね合わせ、両抄紙
体に実施例1と同じ結合剤溶液を含浸させて乾燥し、結
合剤溶液中の揮発成分を蒸発させた。
【0039】そして、0.4mm厚さの抄紙体を鋼製の
カッターにより引き剥して廃棄し、実施例1と同様の条
件で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させた。 な
お、この場合、実施例1と同様に摩擦性能を重視した摩
擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率
が摩擦材全体で33重量%程度となるように、結合剤溶
液濃度および結合剤溶液含浸量を調整した。
【0040】次に、実施例1と同様の加圧成形を施すこ
とによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを
作製した。
【0041】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図1に併せて示すような結果となっ
た。
【0042】比較例2 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させて乾燥し、結合剤溶液中の揮発成分を蒸発させ
た。
【0043】そして、熱風乾燥炉に入れて、実施例1と
同様の条件で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させ
た。 なお、この場合、実施例1と同様に摩擦性能を重
視した摩擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹
脂含浸率が摩擦材全体で31重量%程度となるように、
結合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整した。
【0044】次に、実施例1と同様の加圧成形を施すこ
とによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを
作製した。
【0045】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図1に併せて示すような結果となっ
た。
【0046】実施例5 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体を2枚用意し、摩擦面として用いる
面を合わせるようにして互いに重ね合わせ、この状態で
実施例1と同一の結合剤溶液を含浸させたのち、この状
態のままで乾燥させることにより結合剤溶液中の揮発成
分を蒸発させた。
【0047】そして、乾燥を終えた抄紙体を鋼製のカッ
ターにより2枚に引き剥したのち、実施例1と同様の条
件で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させた。 な
お、この実施例においては、摩擦性能(μ−V特性)よ
りも高寿命耐久性を重視した摩擦材を得るために、硬化
処理後のフェノール樹脂含浸率が摩擦材全体で38重量
%、摩擦面近傍部で35重量%程度の比較的高い値を目
標に、結合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整す
るようにした。
【0048】次いで、実施例1と同様の加圧成形を施す
ことによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシング
を作製した。
【0049】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に示す結果となった。
【0050】実施例6 実施例1と同様の材料および方法により抄造した2枚の
抄紙体(1.2mm)のそれぞれに、実施例1と同じ結
合剤溶液を含浸させたのち、これら抄紙体の摩擦面とし
て使用する面を合わせるようにして2枚重ねした状態で
乾燥させ、結合剤溶液中の揮発成分を蒸発させた。
【0051】そして、乾燥後の抄紙体を2枚に引き剥し
たのち、実施例1と同様の条件で結合剤であるフェノー
ル樹脂を硬化させた。 なお、この実施例においては、
実施例5と同様に耐久性を重視した摩擦材を得るため
に、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率が摩擦材全体で
37重量%、摩擦面近傍部で35重量%程度となるよう
に、結合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整し
た。
【0052】次いで、結合剤を硬化させた後の抄紙体
に、実施例1と同様の加圧成形を施すことによって、厚
さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを作製した。
【0053】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に併せて示すような結果となっ
た。
【0054】実施例7 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させたのち、当該抄紙体の摩擦面として使用する面を
平滑面を備えた鋼製の平板上に密着させた状態で乾燥さ
せ、結合剤溶液中の揮発成分を蒸発させた。そして、鋼
製の直刃を備えたカッターを用いて、乾燥後の抄紙体を
鋼製の平板から引き剥したのち、実施例1と同様の条件
で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させた。 なお、
この実施例においては、実施例5と同様に耐久性を重視
した摩擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂
含浸率が摩擦材全体で39重量%、摩擦面近傍部で35
重量%程度となるように、結合剤溶液濃度および結合剤
溶液含浸量を調整した。
【0055】次いで、結合剤を硬化させた後の抄紙体
に、実施例1と同様の加圧成形を施すことによって、厚
さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを作製した。
【0056】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に併せて示すような結果となっ
た。
【0057】実施例8 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させたのち、当該抄紙体の摩擦面として使用する面を
平滑面を備えた鋼製の平板上に密着させた状態で乾燥さ
せ、結合剤溶液中の揮発成分を蒸発させ、この状態のま
まで、熱風乾燥炉に入れ、実施例1と同様の条件で結合
剤であるフェノール樹脂を硬化させた。 なお、この実
施例においては、実施例5と同様に耐久性を重視した摩
擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率
が摩擦材全体で41重量%、摩擦面近傍部で35重量%
程度となるように、結合剤溶液濃度および結合剤溶液含
浸量を調整した。
【0058】そして、鋼製の直刃を備えたカッターを用
いて、硬化後の抄紙体を鋼製の平板から引き剥し、実施
例1と同様の加圧成形を施すことによって、厚さ1mm
の湿式摩擦材のフェーシングを作製した。
【0059】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に併せて示すような結果となっ
た。
【0060】比較例3 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体の摩擦面として用いる面に、同様に
抄造した厚さ0.4mmの抄紙体を重ね合わせ、両抄紙
体に実施例1と同じ結合剤溶液を含浸させて乾燥し、結
合剤溶液中の揮発成分を蒸発させた。
【0061】そして、0.4mm厚さの抄紙体を鋼製の
カッターにより引き剥して廃棄し、実施例1と同様の条
件で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させた。 な
お、この場合、実施例5と同様に耐久性を重視した摩擦
材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂含浸率が
摩擦材全体で36重量%程度となるように、結合剤溶液
濃度および結合剤溶液含浸量を調整した。
【0062】次に、実施例1と同様の加圧成形を施すこ
とによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを
作製した。
【0063】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に併せて示すような結果となっ
た。
【0064】比較例4 実施例1と同様の材料および方法により抄造した厚さ
1.2mmの抄紙体に、実施例1と同じ結合剤溶液を含
浸させて乾燥し、結合剤溶液中の揮発成分を蒸発させ
た。
【0065】そして、熱風乾燥炉に入れて、実施例1と
同様の条件で結合剤であるフェノール樹脂を硬化させ
た。 なお、この場合、実施例5と同様に耐久性を重視
した摩擦材を得るために、硬化処理後のフェノール樹脂
含浸率が摩擦材全体で36重量%程度となるように、結
合剤溶液濃度および結合剤溶液含浸量を調整した。
【0066】次に、実施例1と同様の加圧成形を施すこ
とによって、厚さ1mmの湿式摩擦材のフェーシングを
作製した。
【0067】このようにして得られた湿式摩擦材フェー
シングの厚さ方向の5か所における結合剤含浸率を同様
に測定したところ、図2に併せて示すような結果となっ
た。
【0068】性能評価試験 上記実施例1ないし8、および比較例1ないし4で説明
した手順によってそれぞれ得られた湿式摩擦材フェーシ
ングを用いて、図3(a)および(b)に示す形状のク
ラッチプレートPを製作して、これら摩擦材の摩擦性能
および耐久性を調査した。
【0069】すなわち、クラッチプレートPは、JIS
G 3141に規定される冷間圧延鋼板SPCCから
なり、図3(a)に示すような形状をなす芯金1の両面
にフェノール樹脂系の接着剤を塗布して乾燥させたの
ち、当該芯金1の両面に、切削加工によってリング状に
加工した湿式摩擦材2の摩擦面2aの裏面側がそれぞれ
接するように配置し、誘導加熱器により芯金1を加熱し
ながら摩擦材2,2を圧着することにより製作される。
【0070】このようにして得たクラッチプレートPを
用いて、新編自動車工学便覧(社団法人自動車技術会
昭和57年発行)第5編 第1章 第44および45頁
に記載されたSAE No.2試験により摩擦係数の静
動比μ0/μdを測定した。なお、この摩擦性能試験に
おける試験条件としては、摩擦材面数:4面,フェーシ
ング面積:37cm2 /面,初期回転数:3000rp
m,慣性モーメント:0.2kgf・m2 ,面圧:11
10kPa,試験時油温:120℃の条件を採用し、試
験油として日産純正ニッサンマチックフルードDを用
い、200サイクルの慣らし運転を行い、この後の摩擦
係数を10サイクル測定して平均値を求めるようにし
た。
【0071】この摩擦性能試験の試験結果としての静動
比μ0/μdにおいて、μdは回転数が1200rpm
となった時点での動摩擦係数であり、μ0は回転が停止
する直前の最終動摩擦係数である。 すなわち、μ0/
μdが大きければ速度の増加に伴って摩擦係数が減少す
ることを示し、μ0/μdがある程度以上大きいと摩擦
による自励振動の発生原因となるため、μ0/μdの値
が小さければμ−V特性が良好であると評価できる。
なお、自励振動が発生する条件は、湿式摩擦材のμ−V
特性だけで決まるわけではなく、その系の振動質量,ば
ね定数,ダンパー作用の強弱などによっても左右され、
許容できる振動の大きさも使用される環境によって異な
るので、必要とされるμ0/μdの値は、当該湿式摩擦
材が使われる部品,ユニットなどの環境により相違し、
一義的には決めることはできない。
【0072】そしてさらに、前記クラッチプレートPを
用いて、剪断トルク負荷ON−OFFストローキング試
験を行い、圧縮および剪断疲労寿命を測定した。 な
お、当該試験は、120℃に加熱したオートマチックト
ランスミッションオイル浴中で行い、相対すべり速度を
10cm/secの一定にしておきながら,面圧を0〜
100kgf/cm2 の範囲で変動させる圧縮疲労試験
であり、試験油として日産純正ニッサンマチックフルー
ドDを用いた。
【0073】これら試験結果を表1および表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】これらの表から明らかなように、本発明に
係わる湿式摩擦材の製造方法に基づいて製作した実施例
1ないし8に係わる湿式摩擦材においては、結合剤含浸
率を比較的低くした高摩擦性能タイプの湿式摩擦材にあ
っては、図1および表1に示されるように、結合剤含浸
率が摩擦面(約32重量%)から裏面側(39〜44重
量%)に向けて厚さ方向に漸増しており、とくに摩擦面
近傍部の含浸率に対する厚さ中央近傍部の含浸率に比が
1.03〜1.15の範囲となっているので、摩擦係数
の静動比μ0/μdが0.99〜1.01という優れた
摩擦性能を示すと共に、疲労寿命についても70000
サイクル以上の繰り返し応力を負荷したのちにはじめて
摩擦面上にチッピング状の剥離が生ずるという良好な耐
久性を示し、結合剤含浸率を比較的高くした高寿命タイ
プの湿式摩擦材にあっては、図2および表2に示される
ように、結合剤含浸率が摩擦面(約35重量%)から裏
面側(43〜48重量%)に向けて厚さ方向に漸増して
おり、とくに摩擦面近傍部の含浸率に対する厚さ中央近
傍部の含浸率に比が1.03〜1.15の範囲となって
いるので、疲労寿命が90000サイクル以上という優
れた耐久性を示すと共に、静動比μ0/μdが1.09
〜1.11という良好な摩擦性能を示すことが確認され
た。
【0077】これに対して、従来の製造方法によって、
あるいは厚さの異なる抄紙体を重ねた状態で結合剤溶液
を乾燥させた比較例1ないし4に係わる湿式摩擦材にお
いては、図1および表1に示される高摩擦性能タイプの
湿式摩擦材にあっては、摩擦面近傍部における結合剤含
浸率が33%前後であって、実施例1ないし4に係わる
湿式摩擦材とほぼ同等の優れた摩擦性能を示したもの
の、摩擦材の厚さ中央近傍部の結合剤含浸率が31%程
度に低下しているため、30000サイクルあるいは4
0000サイクルといった極めて早期の段階で摩擦材の
厚さ中央部にクラックの発生が認められ、実施例1ない
し4の摩擦材にくらべて耐久性の点で劣ることが判明
し、図2および表2に示される高寿命タイプの湿式摩擦
材にあっては、摩擦面近傍部における結合剤含浸率が3
6%前後であって、実施例5ないし8に係わる湿式摩擦
材に較べてほとんど遜色のない優れた摩擦性能を示した
にもかかわらず、摩擦材の厚さ中央近傍部の結合剤含浸
率が33%程度に低下しているため、50000サイク
ルあるいは60000サイクルといった比較的早期の段
階で摩擦材の厚さ中央部にクラックの発生が認められ、
実施例5ないし8の摩擦材にくらべて耐久性の点で劣る
ことが確認された。
【0078】なお、上記実施例7および8においては、
抄紙体を密着状態で乾燥させるために鋼製の平板を用い
たが、これは抄紙体の摩擦面となるべき面からの結合剤
溶液の蒸発を防止することが目的であり、この他にアル
ミニウムや銅などの金属やガラス、セラミックスなどか
らなり、結合剤溶液を吸収しない平滑な面を備えたもの
を使用することができる。 また、分離を容易にするた
めに付着力の小さいPTFEやPFAなどのふっ素系樹
脂を用いることも可能である。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
および請求項2に係わる湿式摩擦材においては、結合剤
の含浸率が摩擦面から厚さ方向に向けて漸増しているの
で、摩擦面における結合剤含浸率を従来と同程度とする
ことにより、摩擦性能を劣化させることなく、板厚中央
部の強度を摩擦面より向上させることができ、摩擦材の
板厚中央部に発生するクラックおよびこれによる層状剥
離を防止することができるという優れた効果がもたらさ
れる。
【0080】本発明に係わる湿式摩擦材の望ましい実施
態様として請求項3に係わる湿式摩擦材においては、摩
擦面近傍部における結合剤含浸率に対する厚さ方向の中
央近傍部における結合剤含浸率の比が湿式摩擦材として
最適なものとなっているので、強度バランスに優れ、ク
ラックによる摩擦材の層状剥離を有効に防止することが
でき、同じく実施態様として請求項4に係わる湿式摩擦
材においては、摩擦面近傍部における結合剤含浸率が3
0〜40重量%となっているので、摩擦面における気孔
率が最適なものとなり、圧縮および剪断疲労寿命(耐久
性)と共に、湿式摩擦材としてのμ−V特性をより向上
させることができる。
【0081】また、本発明の請求項5および請求項6に
係わる湿式摩擦材の製造方法においては、2枚重ねの
後、あるいはその前に、結合剤を溶媒で希釈した結合剤
溶液を含浸させた略同一厚さの2枚の抄紙体を重ね合わ
せた状態で乾燥させるようにしているので、2枚の抄紙
体の重ね合わせ面の裏面側から結合剤溶液の溶媒が蒸発
して行くことになり、中央部に位置する重ね合わせ面側
に較べて裏面側の結合剤含浸率を高くすることができ、
結合剤を硬化させたのち、重ね合わせ面を摩擦面とする
ことにより、摩擦面から厚さ方向に結合剤含浸率が漸増
する湿式摩擦材を得ることができ、本発明の請求項7あ
るいは請求項8に係わる湿式摩擦材の製造方法において
は、結合剤溶液を含浸させた抄紙体を乾燥させたのち、
結合剤の硬化前、あるいは硬化後に、抄紙体を厚さ方向
の中央部より半分に切断するようにしているので、抄紙
体は結合剤含浸率の最も低い部分で切断されることにな
り、当該切断面を摩擦面とすることにより、摩擦面から
厚さ方向に結合剤含浸率が漸増する湿式摩擦材を得るこ
とができる。 さらに、本発明の請求項9あるいは請求
項10に係わる湿式摩擦材の製造方法においては、結合
剤溶液を含浸させた抄紙体を気孔のない緻密な平滑面に
密着させた状態で乾燥させたのち、結合剤の硬化前、あ
るいは硬化後に、前記平滑面から分離するようにしてい
るので、結合剤溶液は平滑面との密着面側からは蒸発せ
ず、裏面側から主に蒸発することになって、密着面に較
べて裏面側の結合剤含浸率を高句することができ、平滑
面との密着面を摩擦面とすることにより、摩擦面から厚
さ方向に向けて結合剤含浸率が漸増する湿式摩擦材を得
ることができるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1ないし4に係わる湿式摩擦材
における結合剤含浸率の厚さ方向の変化を比較例1およ
び2の湿式摩擦材の場合と比較して示すグラフである。
【図2】本発明の実施例5ないし8に係わる湿式摩擦材
における結合剤含浸率の厚さ方向の変化を比較例3およ
び4の湿式摩擦材の場合と比較して示すグラフである。
【図3】(a)および(b)は 湿式摩擦材の性能評価
に用いるクラッチプレートの形状を示す斜視図および断
面図である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材繊維に無機添加剤を配合した混合物
    から抄造した抄紙体に結合剤を含浸させてなる湿式摩擦
    材において、 結合剤の含浸率が摩擦面から当該摩擦材の厚さ方向に向
    けて漸増していることを特徴とする湿式摩擦材。
  2. 【請求項2】 基材繊維に無機添加剤および摩擦調整剤
    を配合した混合物から抄造した抄紙体に結合剤を含浸さ
    せてなる湿式摩擦材において、 結合剤の含浸率が摩擦面から当該摩擦材の厚さ方向に向
    けて漸増していることを特徴とする湿式摩擦材。
  3. 【請求項3】 摩擦面から厚さ方向に0.1mmまでの
    摩擦面近傍部における結合剤含浸率に対する摩擦材の厚
    さ中央位置を中心として0.1mmの厚さを有する中央
    近傍部における結合剤含浸率の比が1.03〜1.15
    であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載
    の湿式摩擦材。
  4. 【請求項4】 摩擦面から厚さ方向に0.1mmまでの
    摩擦面近傍部における結合剤含浸率が30〜40重量%
    であることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の
    湿式摩擦材。
  5. 【請求項5】 略同一厚さを有する抄紙体を2枚重ね合
    わせた状態において、当該抄紙体に結合剤を溶媒で希釈
    した結合剤溶液を含浸させて乾燥させたのち、当該抄紙
    体を分離して結合剤を硬化させることを特徴とする請求
    項1,2,3または4記載の湿式摩擦材の製造方法。
  6. 【請求項6】 結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を含
    浸させた略同一厚さの抄紙体を2枚重ね合わせた状態で
    乾燥させたのち、当該抄紙体を分離して結合剤を硬化さ
    せることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の
    湿式摩擦材の製造方法。
  7. 【請求項7】 結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を含
    浸させた抄紙体を乾燥させたのち、厚さ中央部から切断
    し、2枚に分離した状態で結合剤を硬化させることを特
    徴とする請求項1,2,3または4記載の湿式摩擦材の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を含
    浸させた抄紙体を乾燥させ、結合剤を硬化させたのち、
    厚さ中央部から切断して2枚に分離することを特徴とす
    る請求項1,2,3または4記載の湿式摩擦材の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を含
    浸させた抄紙体の一方の面を緻密な平滑面に密着させた
    状態において抄紙体を乾燥させたのち、当該抄紙体を前
    記平滑面から分離して結合剤を硬化させることを特徴と
    する請求項1,2,3または4記載の湿式摩擦材の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 結合剤を溶媒で希釈した結合剤溶液を
    含浸させた抄紙体の一方の面を緻密な平滑面に密着させ
    た状態において抄紙体を乾燥させ、結合剤を硬化させた
    のち、前記平滑面から分離することを特徴とする請求項
    1,2,3または4記載の湿式摩擦材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011257008A (ja) * 2002-12-09 2011-12-22 Aisin Chemical Co Ltd 摩擦材及びその製造方法
JP2016138566A (ja) * 2015-01-26 2016-08-04 株式会社ジェイテクト 摩擦部材、摩擦部材の製造方法及び検査方法

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