JPH0873574A - 脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体 - Google Patents

脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体

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JPH0873574A
JPH0873574A JP21612994A JP21612994A JPH0873574A JP H0873574 A JPH0873574 A JP H0873574A JP 21612994 A JP21612994 A JP 21612994A JP 21612994 A JP21612994 A JP 21612994A JP H0873574 A JPH0873574 A JP H0873574A
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武 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 良好な熱安定性を有したアルミニウムを含有
する脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体を
提供する。 【構成】 下記式(I)で表され、アルミニウムを含有
することを特徴とする脂肪族ポリエステルおよび/また
はその共重合体。 【化5】 【効果】 本発明における脂肪族ポリエステルおよび/
またはその共重合体は良好な熱安定性を有するため、溶
融成形が容易である。このため種々の生分解性成形物を
製造でき、広範な用途が期待できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、脂肪族ポリエステルお
よび/またはその共重合体に関し、更に詳しくは良好な
熱安定性を有するため溶融成形の容易な、生分解性を有
する脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体に
関する。
【0002】
【従来の技術】ポリ乳酸、ポリグリコール酸に代表され
るα−オキシ酸ポリエステルは脂肪族ポリエステルとし
て良好な生分解性を有しており、手術用縫合糸、注射薬
用マイクロカプセル等の生体吸収材料として利用されて
いる。また近年、プラスチック廃棄物が引き起こす環境
破壊問題から、酵素や微生物による分解が期待される生
分解性プラスチックとしても注目され、その研究開発が
進められている。前記α−オキシ酸ポリエステルの高分
子量体を得る方法として、従来より、α−オキシ酸の環
状ジエステル(例えば乳酸の場合ラクチドと呼称され
る)をスズ系触媒存在下に加熱、開環重合する方法が知
られている。このようにして得られた前記α−オキシ酸
ポリエステルは一般に、融解温度よりわずかに高い温度
において比較的容易に熱分解して分子量が低下する。し
たがって、溶融成形時に得られる成形品の物性低下が問
題となっている。この原因のひとつとして考えられてい
るのがポリエステル中の残留金属触媒である。たとえば
前記スズ系触媒は高温では生成したポリエステルの解重
合やエステル交換反応を引き起こすことが知られてい
る。
【0003】そこで、熱分解触媒として作用する残留金
属を除去するために、得られたポリエステルを有機溶媒
に溶解させ再沈澱をおこなう方法やポリエステルから有
機溶媒と水を用いて抽出する方法、あるいはポリエステ
ルに金属触媒の失活剤としてリン系化合物を添加する方
法が先行技術により知られている。しかし前記の方法で
は煩雑な除去操作が必要であり、かつ溶媒の回収、ポリ
エステル中への溶媒の残留などの問題が生じるため通
常、塊状重合法で製造されるこれらのポリエステルの場
合工業的に好ましいものではない。また後記の方法では
高粘度の溶融状態ポリエステルと混合しておこなわれる
ため効率が低く、熱劣化防止の充分な効果を得るまでに
は到っていないのが実情である。一方、金属触媒を用い
ずに重合をおこなうことは高分子量体を得るために非常
に長大な時間が必要となりまったく非現実的であるた
め、触媒の使用は工業的に必須である。したがって工業
的見地からは触媒を含有しながらも、熱安定性の良好な
脂肪族ポリエステルが必要とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のごとく、熱安定
性が良好な脂肪族ポリエステルが切望されているのにも
かかわらずこのような脂肪族ポリエステルは未だ得られ
ていない。かかる理由により本発明は、熱安定性のすぐ
れた脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体を
提供することを目的とする。
【0005】
【問題を解決するための手段】そこで本発明者らは、以
上の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、開
環重合触媒にアルミニウム化合物をもちいて重合するこ
とで、良好な熱安定性を有した脂肪族ポリエステルが得
られることを見いだし、本発明を完成するに到った。即
ち本発明は、下記式(I)で表され、アルミニウムを含
有することを特徴とする脂肪族および/またはその共重
合体に関するものである。
【化3】 ここで、R1 はHまたは炭素数1〜5個のアルキル基で
あり、R2 は炭素数1〜20個のアルキレン基であり、
XはHまたは炭素数2〜50個の1−アシル基であり、
YはHまたは炭素数1〜50個のアルキル基または炭素
数1〜50個のアルケニル基であり;mは正の整数であ
って、nは0または正の整数である。ここで、XがHの
場合は、該脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重
合体は以下の物性(II)(III) および(IV)を満足す
る; IVf /IVi ≧0.85 (II) IVf およびIVi は、それぞれ200℃で1時間不活
性ガス雰囲気条件下で溶融させたときの溶融前後の還元
粘度を示し; T10% (℃)≧300 (III) T10% は、不活性ガス気流下で10℃/分の速度で加熱
する熱重量分析において、当初重量の10重量%がなく
なるときの温度を示し; 1.00≧A/(A+B)≧0.95 (IV) Aは、ポリマーの 1H−NMRにおけるシグナル強度
を、Bはモノマーの 1H−NMRにおけるシグナル強度
を示す。
【0006】本発明により得られた、式(I)で表され
るアルミニウムを含有することを特徴とする熱安定性の
すぐれた脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合
体、特に式(I)においてXがHの場合の(II)、(II
I) 、(IV)で示される物性を同時に満足し、アルミニ
ウムを含有する脂肪族ポリエステルおよび/またはその
共重合体はこれまで当該分野でまったく知られていな
い。本発明者らの知見によれば、(II)、(III) で示さ
れる物性においてそれぞれIVf /IVi が0.85未
満、T10% が300℃未満である場合、このようなポリ
エステルはもはや成形加工性において実用上良好な熱安
定性を有しているとはいえず成形品は物性の顕著な低下
をともなう。
【0007】式(I)においてXが炭素数2以上50以
下の1−アシル基である場合、本発明により得られたア
ルミニウムを含有するポリエステルは水酸基末端が封鎖
されているため良好な熱安定性を有しており、(II)、
(III) および(IV)で示される物性を満足する。式
(I)においてXがHである場合、アルミニウムを含有
する脂肪族ポリエステルは公知である。すなわちBer
oらによりトリアルキルアルミニウムのような有機アル
ミニウムと有機亜鉛および水の複合触媒やアルミニウム
イソプロポキシドさらにアルミニウムアセチルアセトネ
ートを開環重合触媒にもちいたラクチドの溶融重合が報
告されている(Makromol.Chem.,19
1,2287)。しかしながら本文献において得られる
ポリエステル中には未反応のモノマーがかなり多量に残
留している。つまり(IV)で示される物性を満足してお
らず、また(II)、(III) で示される物性も満足せず、
さらに得られたポリマーの平均分子量が低いため、本発
明者らが追試したところその熱安定性に特に著しい改善
はみられなかった。
【0008】すなわち、ジエステルの開環重合による脂
肪族ポリエステルの製造においては、開環重合反応と解
重合反応が平衡関係にあるため、重合体中にモノマーが
残存してしまう。ここで(IV)で示される物性を満足し
ない場合、残留したモノマーは成形加工時に、たとえば
溶融紡糸をおこなう際には糸切れが多発する原因とな
り、また得られた糸強度のバラツキの原因となる。さら
にこれらのモノマーは重合体が溶融する高温においては
微量の水分によっても分解し、重合体の酸価を上昇させ
るため熱分解の原因になる。また(IV)で示される物性
を満足しない場合、(III) で示される物性を満足させる
ことは困難となるのが通常である。
【0009】本発明においては式(I)で表されるアル
ミニウムを含有することを特徴とする脂肪族ポリエステ
ルおよび/またはその共重合体、特にXがHである場合
は、上記のような(II)、(III) 、(IV)で示される物
性を同時に満足し、すぐれた熱安定性を有することを見
出したもので、この点で従来技術と明確に差別化され
る。さらに式(I)においてmは100以上、5000
以下が好ましい。さらに好ましくは200以上、250
0以下の範囲であり、最も好ましくは500以上200
0以下の範囲である。mが100未満の場合、上記ポリ
エステルはアルミニウムを用いたことによる熱安定性向
上の効果が発現しない。またmが5000を越えると高
い溶融粘度のため、一般に溶融成形が困難となるため実
用上の問題が生じる。
【0010】本発明において式(I)で表され、アルミ
ニウムを含有した脂肪族ポリエステルおよび/またはそ
の共重合体、特に式(I)においてXがHである場合
に、上記のような(II)、(III) 、(IV)で示される物
性を同時に満足し、アルミニウムを含有した脂肪族ポリ
エステルおよび/またはその共重合体は、たとえば下記
に示すような特定のアルミニウム化合物を開環重合時の
触媒にもちいることにより得られる。具体的なアルミニ
ウム化合物触媒としては、たとえば下記式(V)(式
中、R a 、Rc はそれぞれ独立してアルキル基、シクロ
アルキル基またはアリール基であり、Rb は水素原子ま
たはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基で
あり、このアルキル基、シクロアルキル基またはアリー
ル基は置換ハロゲンを含有しうる)で表されるアルミニ
ウムβ−ジケトン無電荷錯体、および/または飽和もし
くは不飽和の炭素数2以上20以下のアルミニウムカル
ボン酸塩が挙げられる。
【化4】
【0011】ここで、アルミニウムに配位しているβ−
ジケトン類はより具体的には、アセチルアセトン(2,
4−ペンタンジオン)、プロピオニルアセトン(2,4
−ヘキサンジオン)、2,4−ヘプタンジオン、2,4
−オクタンジオン、2,4−デカンジオン、3,5−ヘ
プタンジオン、2−メチル−3,5−ヘプタンジオン、
2,2−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,6−
ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、ピバロイルメタン
(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジ
オン)、ベンゾイルアセトン(1−フェニル−1,3−
ブタンジオン)、1,3−ジフェニル−1,3−プロパ
ンジオン、トリフルオロアセチルアセトン(1,1,1
−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン)、ヘキサフ
ルオロアセチルアセトン(1,1,1,5,5,5−ヘ
キサフルオロ−2,4−ペンタンジオン)等があげられ
るがこれらに限定されるものではない。
【0012】これらの錯体は通常、アルミニウムアルコ
ラートと対応するβ−ジケトンをトルエンなどの有機溶
媒中で反応させる、または硫酸アルミニウムと対応する
βージケトンを水中で反応させることにより容易に合成
される。さらにこれらの錯体のほとんどは汎用有機溶媒
に易溶であり、昇華性を有しているため精製が容易であ
る。良好な触媒活性、入手が容易であることおよび純粋
な物質が得られやすいことなどから好ましいのはアセチ
ルアセトンの錯体である。
【0013】またカルボン酸塩としてもちいられるカル
ボン酸は具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草
酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン
酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノ
ール酸、オレイン酸等があげられるがこれらに限定され
るものではない。
【0014】これらの触媒の量は、触媒種、モノマー種
などの条件により若干の相違はあるが、モノマーである
ジエステルに対して0.005から0.1mol%の割
合で用いられる。なかでも0.01から0.05mol
%用いるのが好ましい。使用量が0.005mol%未
満では重合速度が著しく低下し、重合終了までに多大な
時間を要する。また0.1mol%を越えるとアルミニ
ウム触媒をもちいたことによる熱安定性向上の効果が発
現せず、重合体の着色が著しいため、製品として用を成
さない。この所定範囲内で用途に合わせて適宜選択す
る。
【0015】本発明において、1−アシル基で生成する
ポリエステルの水酸基末端を封鎖するには、炭素数2以
上50以下の脂肪族カルボン酸を添加して重合をおこな
う。用いられる脂肪族カルボン酸として具体的には、酢
酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリ
ル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パル
ミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リ
ノール酸、オレイン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリ
ン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ド
デカン二酸、フマル酸等が挙げられるがこれらに限定さ
れるものではない。また、これらの酸無水物を用いても
一向に構わない。好ましくはステアリン酸、パルミチン
酸、ミリスチン酸、リノール酸、オレイン酸、フマル
酸、コハク酸、アジピン酸であり、食品添加物として評
価も確立している。さらに好ましくは、製パン用助剤と
して用いられるステアリル乳酸カルシウムの原料である
ステアリン酸が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸
の量は目的により異なるが、通常モノマーであるジエス
テルに対し0.001〜1mol%の割合で用いられ
る。
【0016】反応は窒素、アルゴン等の不活性雰囲気、
あるいは減圧下で行ってもよく、また溶媒を用いても、
用いなくともよい。溶媒の回収等の問題より、工業的に
は溶媒を用いない塊状重合が好ましい。その際、逐次、
触媒、カルボン酸を添加してもかまわない。重合温度、
重合時間は重合体が目的とする分子量に達するまでおこ
なわれ、モノマー種、添加する触媒種、触媒量、アルコ
ール量およびカルボン酸量といった因子に依存する。本
発明の脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体
を得るための重合は、通常100℃から150℃といっ
た比較的低い温度でおこなわれる。重合終了後に残存モ
ノマーを固相熱処理によって除去する場合、反応は15
0℃から250℃といった比較的高い温度でおこなわ
れ、重合速度を増大させ短時間で重合を平衡に到達せし
め終了させることができる。いずれの場合も重合温度は
モノマーの融点以上に設定される。
【0017】本発明においては、分子量調節剤として、
又みかけの重合速度を高め、かつアルキル基またはアル
ケニル基で生成するポリエステルの酸末端を封鎖するた
め、炭素数1以上50以下の一価以上の多価アルコール
を用いてもよい。用いる脂肪族アルコールとして具体的
には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプ
ロパノール、ブタノール、アミルアルコール、オクチル
アルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリス
チルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコ
ール、ベヘニルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、
乳酸プロピル等のモノアルコール類、エチレングリコー
ル、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサメチレ
ングリコール、ドデカメチレングリコール等のジアルコ
ール類、グリセリン、ソルビトール、リビトール、エリ
スリトール等の多価アルコール類が挙げられるがこれら
に限定されるものではない。好ましくは直鎖高級脂肪族
アルコールであるデカノール、ラウリルアルコール、ミ
リスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルア
ルコールなどであり、これらは天然油脂から容易に得ら
れるものであり無害である。さらに好ましくはラウリル
アルコールである。これらのアルコールは触媒に配位し
活性種をつくりだすとともに開始剤として作用している
ものと考えられる。これらのアルコール類の量は目的に
より異なるが、通常、モノマーであるジエステルに対
し、0.01から0.5mol%の割合で用いられる。
【0018】本発明において用いられるジエステルとし
て、具体的にはグリコリド、ラクチド、さらにα−ヒド
ロキシ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイ
ソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシ
イソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、
α−ヒドロキシヘプタン酸等の分子間ジエステルなどが
挙げられる。これらのなかで、グリコリド、ラクチドは
容易に入手することができ、これらのポリマーの物理的
性質が望ましいものであり好ましいジエステルである。
また不斉炭素を有するものは、L体、D体、ラセミ体、
メソ体のいずれでもよい。またジエステルは異なるαー
オキシ酸分子同士により形成されるものであっても一向
に構わない。具体的には、グリコール酸と乳酸の間の環
状二量体でありモノメチルグリコリドなる慣用名で知ら
れる3−メチル−2,5−ジオン−1,4−ジオキサン
などが挙げられる。
【0019】なお、本発明において、機械特性、分解特
性等を種々変化させるために、第2成分等を共重合させ
てもよく、中でも生分解性を有する成分が好ましい。具
体的には炭素数1以上20以下のアルキレン基から成る
オキシ酸成分であり、対応するラクトンを共存させて重
合をおこなえばよい。具体的にはβ−プロピオラクト
ン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バ
レロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクト
ン、ε−カプロラクトン、ピバロラクトン、エナントラ
クトン、ドデカノラクトン等が挙げられるがこれらに限
定されるものではない。
【0020】このようにして得られたα−オキシ酸ポリ
エステルは熱安定性が向上し溶融成形が容易になるた
め、種々の生分解性成形物を製造することが可能であ
る。必要に応じて、顔料、酸化防止剤、劣化防止剤、可
塑剤、艶消剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤
などの添加剤を加えても差し支えない。さらに必要に応
じて、他のポリマーおよび/または無機物と混合しても
差し支えない。混合可能なポリマーとしてポリオレフィ
ン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエ
ーテル、ポリアルキレングリコール、変性されたおよび
/または変性されていない澱粉あるいはセルロースなど
の天然高分子などを挙げることができる。混合可能な無
機物として、タルク、モレキュラーシーヴス、炭酸カル
シウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。
【0021】本発明におけるα−オキシ酸ポリエステル
は、溶融、溶液状態から繊維、フィルム、種々の成形品
に成形加工することが可能であり、生分解性材料として
有用である。具体的な用途として繊維や不織布では、釣
り糸、魚網、植木の根巻き用不織布、育苗床用不織布、
防草用シート等、フィルムでは包装用フィルム、農園芸
用マルチフィルム、ショッピングバック、ごみ袋、テー
プ類、肥料袋、分離膜等、成型品では飲料や化粧品類の
ボトル、ディスポーザブルカップ、トレイ、ナイフ、フ
ォーク、スプーン等の容器食器類、農業用植木鉢、育苗
床、掘り出し不要のパイプ、仮止め材等の建材が考えら
れる。さらに医療用途として、縫合糸、人工骨、人工皮
膚、マイクロカプセルなどのDDS分野への応用等が考
えられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するために以下
に実施例を述べるが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。なお実施例における特性値は以下の方法によ
って測定した。
【0023】(1) 還元粘度(ηsp/C) ポリマー0.125gをクロロホルム、もしくはフェノ
ール−トリクロロフェノール(10/7)の混合溶媒、
25mlに溶解し、それぞれ25±0.1℃もしくは3
0±0.1℃で測定して還元粘度を算出した。
【0024】(2) 10%重量減少温度 島津製作所製TGA−50を用いて、アルゴン雰囲気
下、昇温速度10℃/分で測定した。(サンプル量10
mg)
【0025】(3) 残留モノマー量(wt%) ヴァリアン社製Gemini−200を用いて、ポリマ
ーとモノマーのメチレンプロトンのシグナル強度より算
出した。
【0026】(4) アルミニウム含有量(w/w ppm) ポリマーを灰化させ酸に溶解した後、高周波プラズマ発
光法により定量した。
【0027】実施例1 L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およびア
ルミニウムアセチルアセトネート9mg(28μmo
l、モノマ−の0.04mol%)のトルエン溶液を重
合アンプルに装入し、1時間減圧乾燥、窒素置換を行な
った後、減圧下に溶封し130℃に加熱して開環重合し
た。48時間で反応を終了して得られたポリマーのクロ
ロホルム中の溶液粘度を測定したところ、ηsp/C=
6.31を示した。このものを重クロロホルムに溶解し
て未反応モノマー量を 1H−NMRにて測定したところ
0.8%であった。TGAによるT10% は338℃であ
った。またこのものをペレット状に破砕し、減圧下に6
0℃で48時間乾燥したのち200℃、窒素雰囲気下で
溶融させた。1時間の攪拌の後に得られたポリマーの溶
液粘度を測定したところ、IVf /IVi =0.92を
得た。器壁にラクチドの付着はまったく認められなかっ
た。ポリマー中のアルミニウム濃度は130ppmであ
った。
【0028】比較例1 L−ラクチド10.0g(6.94×10-2mol)を
当該分野で広く用いられているオクチル酸スズ(2−エ
チルヘキサン酸スズ)3mg(7μmol)で実施例1
と同様に重合したところ、48時間で反応を終了して得
られたポリマーはηsp/C=8.45を示した。このも
のを重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1
−NMRにて測定したところ1.3%であった。TGA
によるT 10% は245℃であった。またこのものをペレ
ット状に破砕し、減圧下に60℃で48時間乾燥したの
ち200℃、窒素雰囲気下で溶融させた。1時間の攪拌
の後に得られたポリマーの溶液粘度を測定したところ、
IVf /IVi =0.58を得た。器壁に白色のラクチ
ドが付着した。
【0029】実施例2 L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およびア
ルミニウムアセチルアセトネート9mg(28μmo
l)のトルエン溶液を攪拌装置、窒素導入管を有する重
合管に装入し、1時間減圧乾燥、窒素置換を行なった
後、190℃に加熱して開環重合した。4時間で反応を
終了して得られたポリマーはηsp/C=2.01を示し
た。重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1H
−NMRにて測定したところ5.2%であった。このも
のをペレット状に破砕し、減圧下に120℃で48時間
乾燥して固相処理した。得られたポリマーはηsp/C=
1.95を示した。このものを重クロロホルムに溶解し
て未反応モノマー量を 1H−NMRにて測定したところ
0.5%であった。すなわち120℃においては熱分解
がほとんど生じることなしにモノマーを除去できること
がこの実施例から明らかとなった。TGAによるT10%
は335℃であった。このものを200℃で溶融させ
た。1時間の攪拌の後に得られたポリマーの溶液粘度を
測定したところ、IVf /IVi =0.94を得た。器
壁にラクチドの付着はまったく認められなかった。ポリ
マー中のアルミニウム濃度は152ppmであった。
【0030】比較例2 L−ラクチド10.0g(6.94×10-2mol)を
当該分野で広く用いられているオクチル酸スズ3mg
(7μmol)で実施例2と同様に1時間重合し、得ら
れたポリマーはηsp/C=2.77を示した。重クロロ
ホルムに溶解して未反応モノマー量を 1H−NMRにて
測定したところ7.8%であった。実施例2と同様に固
相処理したところ、得られたポリマーはηsp/C=1.
85を有していた。このものを重クロロホルムに溶解し
て未反応モノマー量を 1H−NMRにて測定したところ
1.0%であった。すなわち比較例においては、120
℃においてさえ、長時間の処理をおこなうと熱分解が生
じることが明らかとなった。TGAによるT10% は24
3℃であった。このものを200℃で溶融させた。1時
間の攪拌の後に得られたポリマーの溶液粘度を測定した
ところ、IVf /IV i =0.65を得た。器壁に白色
のラクチドが付着した。
【0031】実施例3 L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およびア
ルミニウムアセチルアセトネート9mg(28μmo
l)、ラウリルアルコール18.7mg(100μmo
l)のトルエン溶液を重合アンプルに装入し、1時間減
圧乾燥、窒素置換を行なった後、減圧下に溶封し150
℃に加熱して開環重合した。10時間で反応を終了して
得られたポリマーの、クロロホルム中の溶液粘度を測定
したところ、ηsp/C=1.90を示した。このものを
重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1H−N
MRにて測定したところ0.9%であった。TGAによ
るT 10% は340℃であった。またこのものをペレット
状に破砕し、減圧下に60℃で48時間乾燥したのち2
00℃で溶融させた。1時間の攪拌の後に得られたポリ
マーの溶液粘度を測定したところ、IVf /IVi
0.95を得た。器壁にラクチドの付着はまったく認め
られなかった。ポリマー中のアルミニウム濃度は120
ppmであった。
【0032】比較例3 L−ラクチド10.0g(69.4mmol)を当該分
野で広く用いられているオクチル酸スズ(2−エチルヘ
キサン酸スズ)3mg(7μmol)、ラウリルアルコ
ール18.7mg(100μmol)で実施例3と同様
に4時間重合したところ、10時間で反応を終了して得
られたポリマーはηsp/C=1.87を示した。このも
のを重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1
−NMRにて測定したところ1%であった。TGAによ
るT10% は260℃であった。またこのものをペレット
状に破砕し、減圧下に60℃で48時間乾燥したのち2
00℃で溶融させた。1時間の攪拌の後に得られたポリ
マーの溶液粘度を測定したところ、IVf /IVi
0.68を得た。器壁に白色のラクチドが付着した。
【0033】実施例4 グリコリド10.0g(86.2mmol)およびアル
ミニウムアセチルアセトネート9mg(28μmol)
のトルエン溶液を重合アンプルに装入し、1時間減圧乾
燥、窒素置換を行なった後、減圧下に溶封し150℃に
加熱して開環重合した。18時間で反応を終了して得ら
れたポリマーのフェノール−トリクロロフェノール溶媒
中の溶液粘度を測定したところ、ηsp/C=1.12を
示した。このものをヘキサフルオロイソプロパノールに
溶解して未反応モノマー量を 1H−NMRにて測定した
ところ1.2%であった。TGAによるT10% は335
℃であった。またこのものをペレット状に破砕し、減圧
下に60℃で48時間乾燥したのち200℃で溶融させ
た。1時間の攪拌の後に得られたポリマーの溶液粘度を
測定したところ、IVf /IVi =0.95を得た。器
壁にグリコリドの付着はまったく認められなかった。
【0034】実施例5 D,L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およ
びアルミニウムアセチルアセトネート9mg(28μm
ol)、ミリスチルアルコール42.8mg(200μ
mol)のトルエン溶液を重合アンプルに装入し、1時
間減圧乾燥、窒素置換を行なった後、減圧下に溶封し1
50℃に加熱して開環重合した。10時間で反応を終了
して得られたポリマーの、クロロホルム中の溶液粘度を
測定したところ、ηsp/C=1.26を示した。このも
のを重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1
−NMRにて測定したところ0.9%であった。TGA
によるT10% は332℃であった。またこのものをペレ
ット状に破砕し、減圧下に40℃で48時間乾燥したの
ち200℃で溶融させた。1時間の攪拌の後に得られた
ポリマーの溶液粘度を測定したところ、IVf /IVi
=0.91を得た。器壁にラクチドの付着はまったく認
められなかった。ポリマー中のアルミニウム濃度は12
8ppmであった。
【0035】実施例6 D,L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およ
びアルミニウムアセチルアセトネート3mg(7μmo
l)、ミリスチルアルコール42.8mg(200μm
ol)のトルエン溶液を重合アンプルに装入し、1時間
減圧乾燥、窒素置換を行なった後、減圧下に溶封し15
0℃に加熱して開環重合した。36時間で反応を終了し
て得られたポリマーの、クロロホルム中の溶液粘度を測
定したところ、ηsp/C=1.18を示した。このもの
を重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1H−
NMRにて測定したところ1.2%であった。TGAに
よるT10% は337℃であった。またこのものをペレッ
ト状に破砕し、減圧下に40℃で48時間乾燥したのち
200℃で溶融させた。1時間の攪拌の後に得られたポ
リマーの溶液粘度を測定したところ、IVf /IVi
0.94を得た。器壁にラクチドの付着はまったく認め
られなかった。
【0036】実施例7 L−ラクチド10.0g(69.4mmol)およびア
ルミニウムジピバロイルメタナート8mg(14μmo
l)、ステアリルアルコール27.1mg(100μm
ol)のトルエン溶液を重合アンプルに装入し、1時間
減圧乾燥、窒素置換を行なった後、減圧下に溶封し19
0℃に加熱して開環重合した。2時間で反応を終了して
得られたポリマーの、クロロホルム中の溶液粘度を測定
したところ、ηsp/C=2.05を示した。このものを
重クロロホルムに溶解して未反応モノマー量を 1H−N
MRにて測定したところ0.9%であった。TGAによ
るT10% は338℃であった。またこのものをペレット
状に破砕し、減圧下に40℃で48時間乾燥したのち2
00℃で溶融させた。1時間の攪拌の後に得られたポリ
マーの溶液粘度を測定したところ、IVf /IVi
0.93を得た。器壁にラクチドの付着はまったく認め
られなかった。ポリマー中のアルミニウム濃度は68p
pmであった。
【0037】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、本
発明におけるアルミニウムを含有した脂肪族ポリエステ
ルおよび/またはその共重合体は、良好な熱安定性を有
するため溶融成形が容易であり、種々の生分解性成形物
を熱劣化をおこさずに製造することが可能となる。得ら
れた成形品は広範な用途が期待できるので、産業界、ま
たは環境問題の解決にも寄与すること大である。
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 武 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 有地 美奈子 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 堀田 清史 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社医薬研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I)で表され、アルミニウムを含有
    することを特徴とする脂肪族ポリエステルおよび/また
    はその共重合体: 【化1】 ここで、R1 はHまたは炭素数1〜5個のアルキル基で
    あり、R2 は炭素数1〜20個のアルキレン基であり、
    XはHまたは炭素数2〜50個の1−アシル基であり、
    YはHまたは炭素数1〜50個のアルキル基または炭素
    数1〜50個のアルケニル基であり;mは正の整数であ
    って、nは0または正の整数である。ここで、XがHの
    場合は、該脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重
    合体は以下の物性(II)(III) および(IV)を満足す
    る; IVf /IVi ≧0.85 (II) IVf およびIVi は、それぞれ200℃で1時間不活
    性ガス雰囲気条件下で溶融させたときの溶融前後の還元
    粘度を示し; T10% (℃)≧300 (III) T10% は、不活性ガス気流下で10℃/分の速度で加熱
    する熱重量分析において、当初重量の10重量%がなく
    なるときの温度を示し; 1.00≧A/(A+B)≧0.95 (IV) Aは、ポリマーの 1H−NMRにおけるシグナル強度
    を、Bはモノマーの 1H−NMRにおけるシグナル強度
    を示す。
  2. 【請求項2】 脂肪族ポリエステルおよび/またはその
    共重合体に含有されるアルミニウムが飽和または不飽和
    のカルボン酸アルミニウム塩、または以下の式(IV)で
    表されるアルミニウムのβ−ジケトン無電荷錯体から選
    ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1
    記載の脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合
    体。 【化2】 ここでRa およびRc はそれぞれ独立してアルキル基、
    シクロアルキル基またはアリール基であり、Rb は水素
    原子またはアルキル基、シクロアルキル基またはアリー
    ル基であり、このアルキル基、シクロアルキル基または
    アリール基は置換ハロゲンを含有しうる。
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