JPH0870858A - 動物細胞培養用培地 - Google Patents

動物細胞培養用培地

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JPH0870858A
JPH0870858A JP6336142A JP33614294A JPH0870858A JP H0870858 A JPH0870858 A JP H0870858A JP 6336142 A JP6336142 A JP 6336142A JP 33614294 A JP33614294 A JP 33614294A JP H0870858 A JPH0870858 A JP H0870858A
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animal cell
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JP6336142A
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Makoto Hashimoto
真 橋本
Tsutomu Naito
勉 内藤
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Eiken Chemical Co Ltd
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Eiken Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】動物細胞培養用の無血清培地を提供すること、
並びに抗体産生細胞の抗体産生、あるいはその他の生理
活性物質の産生を増強することが本発明の目的である。 【構成】本発明は、次の群から選択される成分を少なく
とも1種類利用する動物細胞培養用培地、動物細胞培養
方法、抗体産生細胞の抗体産生増強用組成物、抗体産生
増強方法、および生理活性物質の製造方法である。D−
ペニシラミンまたはその塩、アセト酢酸またはその塩、
ビグアナイド類、ビタミンK5またはその塩、N−アセ
チルグルタミン酸またはその塩 【効果】血清を添加することなく十分な細胞増殖支持能
を持つ培地を提供した。特にイムノグロブリンの発現に
用いた時には、培地中に動物血清由来のイムノグロブリ
ンが存在しないので産生物の精製が容易となる。また本
発明は、細胞の増殖のみならず抗体産生細胞の抗体産生
を顕著に増強する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動物細胞を培養するた
めの培地に関するものである。具体的には、培地組成と
して動物の血清成分を含まない無血清培地や、血清を含
まないばかりでなく可能な限り蛋白の添加量を少なくし
た低蛋白培地、そして蛋白を含まない無蛋白培地に関す
るものである。
【0002】生命科学の発展にともない、動物細胞を生
体外(in vitro)で培養する必要性が増してきた。動物細
胞には他の材料からは得ることができない有用物質を産
生するものも多く、これらの細胞を生体外で培養するこ
とは意味が有る。また有用蛋白をコードする遺伝子を組
み込んだベクターで形質転換するための宿主としても、
動物細胞は重要である。細菌や酵母のような微生物細胞
も宿主として利用されるが、蛋白によっては糖鎖の付加
やプロモーターのような発現制御領域の制限から動物細
胞の利用が要求されるケースも多い。たとえばイムノグ
ロブリン遺伝子を組み込んだベクターの発現には、ミエ
ローマ細胞が宿主としてよく利用される。またモノクロ
ーナル抗体や各種リンフォカイン等の供給元となる融合
細胞は、動物細胞から誘導されたものである。
【0003】
【従来技術の問題点】動物細胞の培養には、炭水化物、
脂質、アミノ酸、ビタミン、ペプチド、蛋白、各種無機
イオン等の栄養素の他、ホルモンやヌクレオシド等の成
長促進因子を含む合成培地が利用される。合成培地に
は、動物細胞一般に利用されるMEM培地(Science,13
0,432;1959)、リンパ球の培養に利用されるRPMI1
640培地(J.A.M.A.199,519;1967)等が知られている。
普通これらの合成培地は、単独では細胞の生育を維持す
ることが困難なため培養対象となる細胞の特性に合せて
適当な増殖因子を添加して用いる。一般には各種血清、
イースト抽出物、ラクトアルブミン加水分解物等の生物
材料を添加する。中でも血清は非常に重要な添加物であ
り、動物細胞に対して広く増殖支持活性を示し、細胞の
種類を問わず培地に添加される。現在、ヒト、ウマ、ウ
シ、サル、トリといったさまざまな由来の動物血清が培
養に利用されている。更に例えばウシの血清では、ウシ
胎児血清(以下FCSと省略する)、ウシ新生児血清
(生後1週間以内)、仔ウシ血清(生後6ヶ月以内)、
成牛血清の順に細胞増殖促進効果が下がることが知られ
ている。
【0004】しかし動物血清の培地への添加にはいくつ
かの問題点が有る。第一の問題は、動物血清が生物材料
であるため品質を一定に保ちにくい点である。動物血清
の品質には先の年齢による違いにも現れているように、
非常に大きなばらつきが有るし、また同じウシ血清であ
っても製造ロットによって培養支持能には差が見られ培
養条件を一定に維持しにくいのである。そのため培地材
料として購入した動物血清は、用途によっては培地に加
える前に培養支持能の検定が要求されることもあった。
特に動物細胞の生育を指標として分析を行う生物検定法
においては培養条件の統一が最低限の条件となるが、動
物血清を添加する限り培養条件の統一は困難である。ま
た品質面でばらつきの大きい成分を用いることは、培地
の安定供給を妨げることになる。
【0005】第二の問題は、動物細胞が産生した有用物
質の精製を動物血清に含まれる多くの蛋白が妨害する可
能性である。動物血清は非常に多様な成分の集合であ
る。しかも培養物には動物血清に由来する物質のみなら
ず、動物細胞による代謝産物も含むので極めて複雑な組
成となっている。このような培養物から有用物質のみを
単離するのは、負担が大きいばかりではなく、高い収率
を望むことは難しい。特に例えばイムノグロブリンのよ
うに正常な血清中にも多量に存在する物質を動物細胞に
生産させてこれを回収しようとする場合等には、培地に
添加した動物血清の存在が大きな問題となりやすい。ウ
シとヒトのイムノグロブリンを分離するには高度な精製
技術が要求されるためである。細胞が産生した有用物質
の精製を容易に行うためには、培地を無血清とするだけ
ではなく可能であれば無蛋白とすることができれば有利
である。しかしインスリンのような増殖促進成分の添加
さえ許されない無蛋白培地での培養は非常に困難である
ため、やむをえず各種蛋白成分を添加しているのが現状
である。
【0006】第三の問題点は、動物血清を媒体として培
養細胞が感染する可能性を否定できないことである。動
物血清は加熱による滅菌が不可能なため、無菌操作に制
限が有る。そのため未知のウイルス等によって培養細胞
が汚染される可能性を否定できないのである。現在は、
培養に用いる血清についてあらかじめ感染性の有無を確
認することや、メンブレンフイルターによる無菌的な処
理によって汚染の危険を避けるようにしているが完全で
はなく、また操作上も簡便性をそこなうものである。
【0007】第四の問題点は、動物血清のコストであ
る。動物血清を培地に加えた場合、培地のコストの90
%程度を血清に占められることになる。培地の品質を維
持するためにはばらつきの大きい血清の品質を厳選しな
ければならないので、厳しい品質を求めるほどコストは
更に大きくなる。
【0008】第五の問題点は、動物血清中の細胞増殖抑
制物質の存在である。先に述べたとおり動物血清は非常
に多様な成分の集合体であり細胞に対して増殖を促進す
る成分とともに抑制する物質の存在が知られている。あ
る種の細胞では、血清添加培地では短期間しか培養でき
ず、無血清培地でのみ長期間の培養が可能になることが
知られている。この他動物血清に含まれる抗体や補体成
分も細胞に対して障害作用を示すことが有る。
【0009】上記のような動物血清に固有の問題を解決
するため、さまざまな角度から代替物質を探索し培地へ
の動物血清の添加量を抑制する試み(低血清培地)や、
あるいはまったく動物血清を含まない培地(無血清培
地)の研究が行われた。具体的には、たとえば次に示す
ような物質または手段によって血清の使用量を減らした
り、あるいは細胞によっては無血清培養が可能なことが
確認されている。 インスリン トランスフェリン 上皮細胞増殖因子 プロゲステロン テストステロン アミノ酸類の調節 ビタミン類 メルカプトエタノール 脂肪酸類 アルブミン リポプロテイン類 ウシ脳下垂体抽出物 しかし現在までに報告された多くの増殖促進物質の効果
は必ずしも十分とは言えず、また効果が細胞の種類に強
く依存する傾向が有るため、いまなお動物血清が広く使
われているのが現状である。動物血清の組成をまねて化
学的に合成した擬似血清を調製することも考えられる
が、実際にはきわめて多様性に富む動物血清を化学的に
模倣することは現実的でない。加えて、たとえ血清の使
用量を抑制することができたとしても、代替物質として
蛋白成分を多く用いた場合には依然として精製時の問題
を残すことになる。精製操作への影響を考慮するとき、
単に培地に血清を用いないだけでは不十分で、血清以外
の蛋白成分についても使用量をできるだけ小さくする努
力が要求される。またこれらの増殖促進物質は、必ずし
もすべての動物細胞に対して同じ様に増殖支持能を示す
のかどうかは不明である。現実に、様々な実験に用いら
れることの多い株化細胞については適切な培地組成が知
られているものの、由来の違う細胞の培養時に同様の培
養能を期待できるとは限らず、多くの場合は細胞ごとに
適切な培地組成を経験的に設定する必要が有る。したが
って培地に添加することが可能な増殖促進物質の種類は
多い方が好ましい。用途に応じて物質を選択する幅が広
がるためである。
【0010】他方抗体のような有用物質を得ることを目
的として動物細胞を培養する場合には、細胞そのものに
ついての培養性能もさることながら目的である有用物質
の産生を支持することが最大のポイントである。単に細
胞を増殖させることだけではなく、目的である有用物質
をできるだけ多量に誘導し容易に回収できることが大切
である。このような観点から、たとえばヒト繊維芽細胞
によるインターフェロンの産生を誘導するシクロヘキシ
ミドとアクチノマイシンD等についての報告が有るが、
抗体の産生については十分な情報が得られていない。更
にシクロヘキシミド、アクチノマイシンD、酪酸ナトリ
ウム、およびビタミンA酸等は、物質産生を誘導する作
用は持つものの細胞毒性を示す物質でもあり、培地成分
として好ましいものとは言えない。このように物質生産
の増強に有効な物質は報告が少なく、特に精製に有利な
無蛋白培地における抗体産生増強作用を示す物質につい
ては未だに知られていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、新しい細胞
増殖促進物質を探索し、無血清培地を提供することを課
題としている。更に本発明は、無血清であることはもち
ろん、非常に微量の蛋白しか含まない低蛋白培地を、あ
るいは更にいっさいの蛋白を含まない無蛋白培地をも実
現することができる技術の提供を課題としている。また
本発明は、抗体産生細胞、特にイムノグロブリン遺伝子
を組み込んだベクターによって形質転換した宿主細胞の
培養に好適な無血清培地と、この培地によるイムノグロ
ブリンの製造技術の提供を課題としている。加えて、抗
体のみならず動物細胞の培養によって得ることが可能な
さまざまな生理活性物質の製造技術をも提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、次の群から選
択される成分を少なくとも1種類含む動物細胞培養用培
地により前記課題を解決する。更に本発明は、次の群か
ら選択される少なくとも1種類の成分を細胞増殖促進物
質として培地に添加する動物細胞培養方法、次の群から
選択される少なくとも1種類の成分を培地に添加する抗
体産生細胞の抗体産生増強方法、次の群から選択される
少なくとも1種類の抗体産生増強剤を含む抗体産生細胞
の抗体産生増強用組成物、および次の群から選択される
少なくとも1種類の細胞増殖促進物質を含む培地で動物
細胞を培養し、増殖した細胞、または細胞の生産した物
質を採取することを特徴とする生理活性物質の製造方法
を提供するものである。(本発明において各添加物質の
濃度は細胞培養時の最終濃度で記載する)。D−ペニシ
ラミンまたはその塩、アセト酢酸またはその塩、ビグア
ナイド類、ビタミンK5またはその塩、N−アセチルグ
ルタミン酸またはその塩
【0013】本発明で用いるD−ペニシラミン(D-penic
illamine)またはその塩は、ペニシリンの分解生成物と
して得られた物質である。一般にはリウマチやウイルソ
ン病の治療剤等として用いられ市販されているが、動物
細胞の培養に用いられた報告はない。D−ペニシラミン
は、各種合成基礎培地に無菌的に添加することによって
用い、その添加量は培地1lあたり、約0.5〜500
0mg、好ましくは約5〜500mgである。この範囲を外
れるにしたがって無添加の場合よりも良好な培養結果を
得られるものの徐々に効果が小さくなる。D−ペニシラ
ミンは塩酸塩として用いても良い。
【0014】本発明で用いるアセト酢酸(acetoacetic a
cid)またはその塩は、一般に市販されているが、動物細
胞の培養に用いられた報告はない。アセト酢酸はリチウ
ム等の塩として合成基礎培地に無菌的に加えて用いる。
リチウム塩の他、ナトリウムやカリウム等の塩を用いる
ことができるが、細胞増殖効果の点ではリチウム塩が最
も大きい。培地への添加量は、アセト酢酸リチウムの形
で培地1lあたり約0.005−50mg、好ましくは約
0.01−10mgである。アセト酢酸またはその塩は、
わずかの添加で非常に大きな細胞増殖促進効果、あるい
は抗体産生増強効果を示すが、一方添加量を増やしても
細胞増殖促進効果、あるいは抗体産生増強効果の点では
大きな改善はみられず、むしろわずかづつではあるが効
果が減少する傾向が有る。
【0015】本発明で用いるビグアナイド類は、細胞に
対してブドウ糖の利用を促進する作用を持ちこの作用を
利用して血糖降下剤として市販されている製剤の総称で
ある。現在のところビグアナイド類としてはブホルミ
ン、メトホルミン、およびフェンホルミン等が知られて
いるが、動物細胞の培養に用いられた報告はない。ビグ
アナイド類は高温でも安定であるため、合成基礎培地に
加えてともに高圧蒸気滅菌することができる。培地への
添加量は、ブホルミンでは塩酸塩として培地1lあたり
約0.005−5mg、好ましくは約0.01−1mgであ
る。塩酸ブホルミンは、アセト酢酸と同様にわずかの添
加量で細胞増殖効果、あるいは抗体産生増強効果を示
し、添加量を増やしていくと、わずかづつではあるが効
果が減少する傾向が有る。メトホルミンもブホルミンと
同様に利用することができ、その添加量は塩酸塩として
培地1lあたり0.1−100mg、好ましくは1−30m
gである。メトホルミンもアセト酢酸と同様にわずかの
添加量で細胞増殖促進効果、あるいは抗体産生増強効果
を示し、添加量を増やすとわずかずつであるが効果が減
少する傾向が有る。
【0016】本発明で用いるビタミンK5(vitamin K5)
は、ビタミンK3のオキシムを還元して得られる物質で
通常は塩酸塩の形で市販されている。ビタミンK5また
はその塩は医療用や食品保存料としては知られている
が、動物細胞の培養に用いられた報告はない。ビタミン
K5またはその塩も高温で安定であるため、合成基礎培
地とともに高圧蒸気滅菌することができる。培地への添
加量は、培地1lあたり約0.00005−0.1mg、
好ましくは約0.0001−0.01mgである。またビ
タミンK5は、アセト酢酸と同様にわずかの添加量で細
胞増殖効果、あるいは抗体産生増強効果を示し、添加量
を増やすとわずかづつではあるが効果が減少する傾向が
有る。
【0017】本発明で用いるN−アセチルグルタミン酸
(N-acetyl-L-glutamic acid)は、ナトリウム塩やカリウ
ム塩として市販されている。動物細胞の培養に用いられ
た報告はない。N−アセチルグルタミン酸またはその塩
も高温で安定であるため、合成基礎培地とともに高圧蒸
気滅菌することができる。培地への添加量は、培地1l
あたり約1−200mg、好ましくは約10−100mgで
ある。N−アセチルグルタミン酸は、添加量に比例して
細胞密度や抗体産生量が向上する傾向があるが50mg/l
以上では効果にあまり大きな差は生じない。
【0018】以上のような物質は、それぞれ単独で、あ
るいは組み合せて合成基礎培地に加え、動物細胞の培養
に用いる。特に組み合せて用いる場合に、D−ペニシラ
ミンとN−アセチルグルタミン酸では細胞の培養密度の
範囲を拡大するという効果が得られる。またアセト酢
酸、ビグアナイド類、およびビタミンK5という組合せ
によって、培地に添加するインスリンの量を低く抑え
る、あるいはインスリンの添加を省略できるという効果
を得ることができる。インスリンの添加量の抑制は低蛋
白培地、そして無蛋白培地を実現する上で重要な条件で
ある。合成基礎培地としては、先に述べたMEM培地、
RPMI1640培地の他、BME培地(BASAL MEDIUM
EAGLE)、およびDME培地(DULBECCO'S MODIFIED EAGL
E'S MEDIUM)やIMDM培地(ISCOVE'S MODIFIED DULBEC
CO'S MEDIUM)のようなBMEの改変培地等、一般に利用
されている多くの動物細胞用培地を挙げることができ
る。これらの合成基礎培地は、CaCl2、MgSO4
KCl、KNO3、NaHCO3、NaCl、NaH2
4、およびNa23Se等の無機塩類、L−アラニ
ン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラ
ギン酸、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタ
ミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、
L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェ
ニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオ
ニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−
バリン等のアミノ酸類、D−ビオチン、塩化コリン、葉
酸、ミオ−イノシトール、ニコチンアミド、D−パント
テン酸カルシウム、ピリドキサール、リボフラビン、チ
アミン、およびビタミンB12等のビタミン類の他、更
にD−グルコース等の糖類などの炭水化物を含むもので
あり、その他必要に応じてHEPES等の緩衝成分、フ
ェノールレッド、ピルビン酸塩等を含んで成るものであ
る。また前述した添加物の他に、ヌクレオシド類、2−
ケトグルタル酸(2−オキソグルタル酸)、フルクトー
ス、ガラクトース、グリセロリン酸、クエン酸、エタノ
ールアミン、パラアミノ安息香酸、FeSO4やヘミン
等の含鉄化合物、ベンズアミジン、プトレッシン、オレ
イン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸類等の公知の細胞
増殖促進剤を組み合せることができる。更に細菌やマイ
コプラズマ汚染を防ぐために、ストレプトマイシン、ナ
イスタチン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、ノ
ルフロキサシン、レボフロキサシン等の抗菌剤を組み合
せることもできる。これらの公知の細胞増殖促進物質を
適宜組合せることによって、本発明による動物細胞培養
用培地は無血清とすることが可能である。また更に好ま
しい態様では、蛋白成分を添加することなく動物細胞の
培養も可能である。無蛋白による動物細胞培養を可能と
する成分として次のような成分を示す。
【0019】
【表1】 本発明の動物細胞の培養において、無蛋白を意識しない
時には、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、
上皮細胞増殖因子、リポ蛋白質のようなホルモン類や増
殖因子を添加してもよい。
【0020】特にインスリンの添加は、多くの利点を持
っている。本発明の動物細胞培養用培地では幅広い種類
の細胞の生育を支持することができるが、インスリンの
添加によって更に培養支持能を飛躍的に改善できる場合
が有る。たとえば実施例に述べた例では、馴化していな
いHeLa細胞について血清添加培地をはるかに越える
培養成績が得られている。インスリンを加えるときに
は、培地1lあたり0.001〜20mg、好ましくは1
〜10mgの濃度範囲とする。インスリンは動物種を越え
て生理活性を示すホルモンなので、必ずしも培養細胞の
種に合わせる必要はない。実際にはブタやウシのインス
リンが市販されているので、培養対象となる細胞の由来
にかかわらずこれらを無菌的に培地に加えれば良い。イ
ンスリンは動物から抽出したものの他、遺伝子操作で得
られた組換え体であってもかまわない。本発明の動物細
胞培養用培地では、幅広い種類の動物細胞の培養が可能
である。現在、有用物質の産生のための形質転換宿主細
胞として、あるいはさまざまな生物学的な試験に利用さ
れることの多いNamalwa、CHO−K1(S
C)、HeLa、COS7、BHK−21C13−2
P、Vero、C127、ヒトBリンパ芽球細胞、繊維
芽細胞等の細胞株を本発明によって培養可能な細胞とし
て例示できる。この他、P3−X63−Ag8.653
やNS−1のような細胞融合用の親細胞に用いられるこ
との多いミエローマ細胞も本発明によって培養が可能で
ある。これらの細胞を各種リンパ球や脾細胞等と融合さ
せることによって得られるハイブリドーマや、外来遺伝
子によって形質転換された細胞も、本発明によって培養
可能であることは言うまでもない。本発明によって動物
細胞を培養するにあたって、たとえ無蛋白培地とした場
合であっても一般には必要とされている馴化操作は必ず
しも要求されない。すなわち、従来の血清添加培地から
直接本発明の培地に継代しても良い。長期にわたって培
養を続ける必要の有る場合などには、馴化をしないまま
接種した方が良い成績を得られることが多い。他方、培
養初期に急激な細胞密度の上昇を期待するのであれば、
馴化後に接種した方が好ましい。
【0021】本発明は、先に述べた物質を培地に添加す
ることによる抗体産生細胞の抗体産生増強方法をも提供
するものである。本発明における抗体産生細胞とは、抗
体産生細胞とミエローマ細胞等とのハイブリドーマ、エ
プスタインバーウイルス( Epstein-Barr virus, EBV
)によって形質転換した抗体産生細胞、イムノグロブリ
ン遺伝子発現ベクターによって形質転換した動物細胞等
を含む。このような細胞に対して先に述べた各種の物質
は、単に細胞増殖を促進するのみならず抗体産生をも増
強する。
【0022】本発明は幅広い細胞の増殖を支持するた
め、抗体の他にも動物細胞そのものや抗体以外の生理活
性物質の生産にも有用である。動物細胞そのものを生産
する例としては、ウイルス抗体を検出するための抗原決
定基発現細胞の調製、膵臓や肝臓の細胞を培養して機能
を失った臓器の治療に用いる場合、ホルモン等のリガン
ドレセプター研究材料としての細胞の調製等を挙げるこ
とができる。一方、細胞生産物質を目的とする例は前に
も述べたように非常に応用範囲が広い。抗体の他、サイ
トカイン、ホルモン、成長因子、酵素、およびウイルス
抗原等が動物細胞の培養によって製造されている。これ
らの生理活性物質を以下に例示する。 サイトカインの例: インターフェロン(IFN)α、β、γ 腫瘍壊死因子(TNF) リンフォトキシン(LT) インターロイキン(IL)1〜13 顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF) マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF) 顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CS
F) 幹細胞因子(SCF) 白血病阻止因子(LIF) ホルモンの例: エリスロポエチン(EPO) 成長ホルモン(GH) インスリン様成長因子(IGF) 成長因子の例: 神経成長因子(NGF) 上皮細胞成長因子(EGF) 繊維芽細胞増殖因子(FGF) 肝細胞増殖因子(HGF) 血小板由来増殖因子(PDGF) 血管内皮細胞成長因子(VEGF) ウイルス抗原の例: ヒト免疫不全ウイルス(HIV) ヒトB型肝炎ウイルス(HBV) ヒトC型肝炎ウイルス(HCV) ヘルペスウイルス(HSV) サイトメガロウイルス(CMV) 成人T細胞白血病ウイルス(ATLV) 水痘ウイルス ワクシニアウイルス コクサッキーウイルス ポリオウイルス コロナウイルス インフルエンザウイルス 狂犬病ウイルス 日本脳炎ウイルス 風疹ウイルス 麻疹ウイルス パラインフルエンザウイルス センダイウイルス ロタウイルス
【0023】
【作用】本発明において利用される物質はそれぞれ固有
の作用機序によって動物細胞の増殖を促進する作用を持
つ。各成分の作用機序について推測できることは次のよ
うな点である。
【0024】D−ペニシラミンは、蛋白のSS結合の保
護あるいは酸化還元電位の調整という作用により動物細
胞の増殖を促進する作用を示す。従来はB細胞に対して
マイトジェンとして用いられた報告は有るが(RES. COM
MUN. CHEM. PATHOL. PHARMACOL., 48(3), 353-367, 198
5 および RHEUMATOL. INT., 8, 119-124, 1988 )、株
化細胞に対する増殖促進作用は知られていなかった。更
にD−ペニシラミンは、細胞密度が低い場合の細胞死を
防ぐ効果が確認された。一般に動物細胞の培養において
は細胞密度が低くなると細胞死が増加する傾向が有る
が、D−ペニシラミンはこのような現象を抑制する効果
を持つ。D−ペニシラミンの細胞密度が低い環境での細
胞死を防ぐ作用は、公知の培地成分であるクエン酸との
併用で更に増強される。具体的には、D−ペニシラミン
の添加により1×103cells/ml以下という非常に低い
細胞密度においてもまったく生存率が低下しない。これ
に対して一般の無血清培地では1×105cells/ml以下
で生存率が低下しはじめる。また抗体産生の増強に対し
ては、特にSS結合の保護作用により産生された抗体を
安定化するという効果を生む。
【0025】アセト酢酸は、インスリンが不足する環境
において脂質合成の律速になる成分である。この成分を
培地に添加しておくことにより培地へのインスリン添加
量を抑え、無蛋白培地の実現に貢献する。また培地に血
清を添加しない場合であっても、脂質合成を助けること
により細胞の増殖を促進する作用を示すものである。
【0026】塩酸ブホルミン等のビグアナイド類は、イ
ンスリンが不足する環境において細胞に対して糖の取り
込みを促進する。この作用は血糖降下剤としての作用と
部分的に共通するものではあるが、動物細胞の増殖促進
につながることはまったく新規な知見である。
【0027】ビタミンK5は、ビグアナイド類と同様に
細胞の糖の取り込みを促進する。ビタミンK5の糖の取
り込みを促進する作用は、マウス3T3細胞で確認され
ていたが(J. BIOL. CHEM., 249(17), 5421-5427, 1974
および PROC. NATL. ACAD.SCI. USA, 76(2), 809-813,
1979 )、他の動物細胞において増殖促進に応用された
例はない。
【0028】N−アセチルグルタミン酸は、動物細胞の
培養において細胞密度を上げる作用を持つ。N−アセチ
ルグルタミン酸は尿素回路(オルニチン回路)において
カルバモイルリン酸の合成に関与しており、窒素代謝を
促進して細胞密度を上げ結果として細胞増殖を促進して
いるものと考えられる。またN−アセチルグルタミン酸
は、抗体産生の増強に対して、ビグアナイド類、ビタミ
ンK5、およびアセト酢酸と同様に少なくとも生細胞数
の増加や生存期間の延長という作用により結果として産
生量の増加という効果を生む。しかしながら後に述べる
実施例のデータからは、この作用だけでは説明すること
のできない抗体産生増強効果が認められる。すなわち、
必ずしも細胞数が増加していない状態であっても明らか
に抗体産生を増強する現象が観察されている。上述のよ
うにD−ペニシラミンまたはその塩、アセト酢酸または
その塩、ビグアナイド類、ビタミンK5またはその塩、
およびN−アセチルグルタミン酸またはその塩は、それ
を単独で培地中に加えても良好な細胞増殖作用を有す
る。さらに上記成分は、インスリン、インスリン様成長
因子、トランスフェリン、鉄化合物、エタノールアミ
ン、セレン化合物、及びクエン酸からなる群から選択さ
れる少なくとも1種類の成分と共に培地中へ添加すると
その作用は更に増強される。以下実施例により本発明を
具体的に説明する。
【0029】
【実施例】
1.本発明による培地の細胞増殖促進効果 本発明による増殖促進物質の単独添加による細胞増殖促
進効果を調査した。D−ペニシラミン、アセト酢酸リチ
ウム、塩酸ブホルミン、塩酸メトホルミン、ビタミンK
5、およびN−アセチルグルタミン酸を単独で添加した
合成基礎培地の細胞培養能を無添加の場合と比較した。
また糖や脂質の代謝に関連している物質であるアセト酢
酸リチウム、塩酸ブホルミン、塩酸メトホルミンおよび
ビタミンK5については、インスリン添加の場合との比
較も行った。合成基礎培地としては、表2に示す組成を
持つIMDM培地(SIGMA社製)に1mg/lのFeSO4
3mg/lのエタノールアミンを加えたものを用いた。また
培養細胞には無蛋白培養に馴化したP3−X63−Ag
8.653(ATCC−CRL1580)を用いた。
【表2】 N−アセチルグルタミン酸のみについては細胞密度への
影響を調査するために細胞数を計数した(細胞計数
法)。その他の添加物質については、生細胞の指標とし
てMTT(3-(4,5-dimethylthiazol)-2,5-diphenyltetr
azolium bromide)の分解にともなうホルマザン化合物
(暗青色)生成を測定し細胞増殖の促進効果を確認した
(MTT法)。
【0030】(a)MTT法:まず2.0×104cell/
50μl/wellとなるように96穴マイクロプレートのウエ
ルへ細胞懸濁液を分注し、更に50μlの培地を加え
た。37℃、5%CO2の環境で3日間培養後、5mg/ml
のMTTを20μl加えて5時間培養を続けた。次いで
10%ドデシル硫酸ナトリウム(0.01N塩酸溶液)1
00μlを加え、37℃で一夜インキュベートしてか
ら、主波長540nm副波長680nmで吸光度を測定し
た。なお各添加物質の使用量は、D−ペニシラミン:0
−1500mg/l、アセト酢酸リチウム:0−10mg/l、
塩酸ブホルミン:0−10mg/l、塩酸メトホルミン:0
−250mg/l、およびビタミンK5:0−0.1mg/lで
ある(培養時最終濃度)。結果は図1(D−ペニシラミ
ン)、図2(アセト酢酸リチウム)、図3(塩酸ブホル
ミン)、図4(塩酸メトホルミン)、および図5(ビタ
ミンK5)に示した。アセト酢酸リチウム、塩酸ブホル
ミン、塩酸メトホルミン、およびビタミンK5では、い
ずれもインスリン単独で用いた場合よりも優れた増殖促
進効果を示した。このことは、これらの添加物質がイン
スリンの代替物質として利用可能なことを示している。
D−ペニシラミン(図1)については240mg/lまでは
添加量に比例した細胞増殖促進効果が確認された。また
それ以上の添加量であっても、無添加の場合に比べて明
らかに細胞増殖を促進することが確認された。また塩酸
メトホルミン(図4)については、25mg/lまでは添加
量に比例した細胞増殖促進効果が確認され、250mg/l
では抑制的な作用が観察された。
【0031】(b)細胞計数法:N−アセチルグルタミ
ン酸については、細胞密度の向上作用を確認するために
細胞計数法による実験を行った。操作は次のとおりであ
る。あらかじめIMDM培地で増殖させたP3−X63
−Ag8.653を遠心して回収し、同じ培地で3度洗
浄後、1×106cells/mlとなるように細胞密度を調節
した。この細胞密度は、IMDM培地における飽和密度
に近い細胞密度である。細胞懸濁液をMTT法と同じ様
に96穴マイクロプレートのウエルに50μlずつ分注
し、更にN−アセチルグルタミン酸0−50mg/l(培養
時最終濃度、以下同じ)を含む50μlのIMDM培地
を加えた。37℃、5%CO2の環境で1−6日間培養
し、トリパンブルー染色して血球計算板上で細胞数をカ
ウントした。結果は図6に示すとおりである。N−アセ
チルグルタミン酸を添加した培地では、明らかに細胞密
度が上がっている。IMDM培地では1×106cells/m
lという細胞密度が飽和密度であるため、無添加の状態
では細胞密度が培養2日目以降急激に低下していくのに
対して、N−アセチルグルタミン酸を添加した培地では
2日目までは飽和密度を越えて細胞の増殖が継続し、4
日目でも1×106cells/ml前後という細胞密度を維持
している。また無添加の場合は培養6日目で細胞密度は
ほとんど0となるのに対して、N−アセチルグルタミン
酸を添加した場合は培養開始時の半分程度の細胞密度を
維持している。このように、N−アセチルグルタミン酸
の添加は、細胞密度の維持、あるいは向上に大きな効果
を持つことが確認された。
【0032】2.本発明による培地の抗体産生増強効果
(1) 本発明による培地の抗体産生増強効果について調査し
た。本発明による抗体産生増強物質のうち、D−ペニシ
ラミン、N−アセチルグルタミン酸、塩酸ブホルミン、
およびビタミンK5を加えた培地について、その抗体産
生支持能を血清(FCS)を添加した培地と比較した。
細胞には抗CEAモノクローナル抗体産生ハイブリドー
マ(F36−54)、および形質転換したマウスミエロ
ーマ細胞P3−X63−Ag8.653を用いた。ハイ
ブリドーマF36−54は、CEAで免疫したマウスの
脾細胞とマウスミエローマ細胞P3−X63−Ag8.
653とをポリエチレングリコールにより細胞融合しク
ローニングして確立し、10%FCSを含むIMDM培
地で継代したもので、無血清培地には馴化させないまま
実験を開始した。一方マウスミエローマ細胞P3−X6
3−Ag8.653の形質転換には、特開平4−166
089に開示されたヒト・マウス型抗CEAキメラ抗体
発現ベクター(pMH−CEA−gpt)を用い、無血
清培養に馴化した後に実験を行った。細胞懸濁液を2×
104cells/50μl/wellとなるように96穴マイクロプ
レートのウエルに分注し、更に50μlの培地を加え
た。37℃、5%CO2の環境で10日間培養を続け、毎
日細胞密度と培養上清の抗体濃度を測定した。細胞密度
の測定は1(b)と同じ方法で行い、抗体濃度は固相化
抗マウスIgG抗体と125I標識抗マウスIgG抗体を
利用したRIAサンドイッチ法により測定した。実験に
用いた培地の組成は次のとおりである。
【0033】(a)血清添加培地 1で基礎培地として用いたIMDM培地に10%V/VFC
Sをろ過滅菌により無菌的に加えたものを血清添加培地
として用いた。なおFCSは、50ロット分をスクリー
ニングして最も細胞増殖と抗体産生支持能の高かったも
のを実験に用いた。 (b)無血清培地(本発明による培地) 1で基礎培地として用いたIMDM培地に、表3に示す
成分を添加して無血清培地とした。なお表3の成分中、
D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン酸、塩酸ブ
ホルミン、およびビタミンK5が本発明による抗体産生
増強物質であり(表中に*で示した)、その他の成分は
公知の無血清培養用添加剤である。なおデータは示さな
いが、一般に無血清培地の必須成分と言われているIT
ES(Insulin;Transferrin;Ethanolamine;Selenium)の
うち、非蛋白成分であるエタノールアミンとセレンのみ
をIMDMに加えた培地では、実験に用いた細胞が増殖
できず死滅してしまうことを確認した。表3からわかる
ように、実験に用いた培地は無血清であるばかりでな
く、蛋白成分をも含まない無蛋白培地である。
【0034】
【表3】 結果は図7(ハイブリドーマF36−54)、および図
8(形質転換P3−X63−Ag8.653)に示すと
おりである。ハイブリドーマF36−54の場合、無血
清培養では明らかに細胞密度が低いのにもかかわらず抗
体産生量は培養時間にしたがって血清添加培地を越える
結果となった。また細胞密度についても、培養初期では
無血清培地の値が低くなっていたが培養を続けるにした
がい血清添加培地の細胞密度を越える結果となった。こ
れらの結果は、実験に用いたハイブリドーマを無血清培
地に馴化させることなく培養を開始したためと思われ
る。一般に行われるように実際に培養に用いる培地で馴
化した後に培養を開始すれば、本発明による抗体産生増
強剤の効果は更に顕著なものになると予想できる。形質
転換したP3−X63−Ag8.653では、無血清培
地に馴化した後に培養を開始したので培養初期から無血
清培地でも順調な細胞密度の上昇が観察された。また最
大細胞密度については無血清培地と血清添加培地で大き
な差がみられなかったものの、抗体産生量に着目すると
非常に大きな差が観察された。すなわち最も抗体産生量
の違いが大きい培養7−8日目のデータで、無血清培地
における抗体濃度は血清添加培地の3倍以上にも及んで
いる。これらの結果から、本発明による抗体産生細胞の
抗体産生増強効果は非常に大きいことが確認された。物
質産生を誘導する物質として先に引用したシクロヘキシ
ミド等が細胞毒性を合わせ持つことと比べ、本発明によ
る物質生産増強成分は同時に細胞増殖を促進する成分で
もあることから、本発明の有用性がいかに大きいものか
がわかる。
【0035】3.本発明による培地の抗体産生増強効果
(2) 本発明による培地の抗体産生増強効果について、2と同
じ条件でハイブリドーマの条件を変えて調査した。細胞
には抗CEAモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ
(F36−54)を用いた。2では馴化せずに接種した
が、本実施例では馴化の有無による比較を試みた。1と
同じように細胞懸濁液を2×104cells/50μl/wellと
なるように96穴マイクロプレートのウエルに分注し、
更に50μlの培地を加えた。37℃、5%CO2の環境
で10日間培養を続け、毎日細胞密度と培養上清の抗体
濃度を測定した。細胞密度の測定は1(b)と同じ方法
で行い、抗体濃度は固相化抗マウスIgG抗体と125
標識抗マウスIgG抗体を利用したRIAサンドイッチ
法により測定した。実験に用いた培地の組成は2と同じ
である。
【0036】結果は図9(馴化)に示すとおりである
(未馴化の場合には2と同じ結果なのでデータを示さな
い)。馴化後であっても、ハイブリドーマF36−54
の場合は本発明による培地では血清添加培地に比べて培
養初期の細胞密度が低く推移する。しかし抗体産生量は
培養時間にしたがって血清添加培地をはるかに越える結
果となった。また細胞密度についても、培養初期では無
血清培地の値が低くなっていたが、培養を続けるにした
がい血清添加培地の細胞密度を越える結果となった。馴
化の有無について比較すると、F36−54は馴化によ
ってより高い抗体産生を得ることができる。これらの結
果から、本発明による抗体産生細胞の抗体産生増強効果
は特に馴化操作によって更に大きくなることが確認され
た。
【0037】4.本発明による各種動物細胞の培養実験 本発明の培地によってどのような細胞を培養することが
できるかについて調査した。本発明の培地として表3に
示す組成を持つ培地(IMDM+D−ペニシラミン+N-
アセチルグルタミン酸+塩酸ブホルミン+ビタミンK
5)、この培地に5mg/lのインスリンを加えたもの、お
よび対照であるRPMI1640培地+血清(10%V/V
FCS)の3種類の培地を用い各種細胞の培養成績を比
較した。実験には以下に示す12種類の細胞を用い、馴
化の有無による培養成績の違いも観察した。 Namalwa(ATCC−CRL1432) ヒトBリンパ芽球細胞(末梢血リンパ球にEBVを感染
させたもの;EBV transformant) ARH77(ATCC−CRL1621) NS−1(ATCC−TIB18) P3U1(ATCC−CRL1597) SP2/0(ATCC−CRL1581) CHO−K1(SC)(理化学研究所寄託No.RCB−
0403) C127(ATCC−CRL1616) BHK−21C13−2P(RCB−0420) COS7(ATCC−CRL1651) Vero(ATCC−CCL81) HeLa(ATCC−CCL2)
【0038】細胞懸濁液を2×104cells/50μl/well
となるように96穴マイクロプレートのウエルに分注
し、更に50μlの各培地を加えた。37℃、5%CO2
の環境で10日間培養を続け、毎日細胞密度を測定し
た。細胞密度の測定は1(b)と同じ方法で行った。結
果は表4および図10−12に示すとおりである。なお
図表の中では表3の組成を持つ培地を「無タンパク」
で、またインスリンを加えた培地を「+Ins.」で、そし
て血清添加培地を「RPMI+10%FCS」で表し
た。インスリンを実験に用いた細胞株の多くは血清添加
培地での増殖が確認されているが、本発明の培地では馴
化しない場合であってもかなりの細胞は増殖が可能であ
る。更に特に良い培養成績を示したものについては、図
10(Namalwa、未馴化)、図11(HeLa、
未馴化)、図12(BHK−21C13−2P、馴化)
に増殖曲線を示した。HeLaは付着性の細胞であるた
め、結果を1cm2当りの細胞数として算出した。細胞密
度が飽和密度に達したのを確認後に培養を中止したた
め、図10−12には細胞密度のデータが10日未満ま
でしか表示されていない場合が有る。この結果よりNa
malwaは、未馴化でも完全な無蛋白培養が可能であ
る。HeLaでは、インスリンの添加により血清添加培
地の増殖能を上まわる培養成績が得られた。またBHK
−21C13−2Pが、馴化操作によって血清添加培地
に近い増殖能を示すことを確認した。これらの結果は、
本発明による培地が各種の動物細胞の培養を無血清でも
十分に支持していることを示している。またインスリン
を添加した場合には更に良好な培養成績を得られること
が確認された。
【表4】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、動物血清を添加しない
動物細胞培養用培地、すなわち無血清培地を得ることが
できる。しかも本発明において利用した増殖促進物質
は、いずれも化学的に合成された物質であるため培地の
品質を容易に維持することができる。培地の品質の維持
が容易なことは、経済的にも非常に有利な点である。ま
たこれらの物質は生物に由来しないので感染原となる可
能性が極めて低く、更にほとんどの物質は滅菌操作も容
易であるので、本発明による動物細胞培養用培地は無菌
操作にも貢献する。本発明は無血清培地ばかりでなく、
低蛋白培地あるいは無蛋白をも実現するものであり、有
用物質の精製をきわめて容易にする。特に本発明による
動物細胞培養用培地をイムノグロブリンを産生する細胞
の培養に利用した時には、培地中には他のイムノグロブ
リンを含まないので血清添加培地に比べて精製時のコス
トを大きく下げることが可能である。本発明は単なる細
胞増殖促進剤のみならず、抗体産生細胞の抗体産生能を
増強する技術をも提供するものである。実施例で確認し
たように、本発明による抗体産生増強用組成物は無血清
培地に馴化していない細胞に対してさえ抗体産生を増強
する作用を持つ。無血清培養に馴化した細胞ではその抗
体産生増強効果は更に顕著で、細胞密度については血清
添加培地と大きな差がみられないのにもかかわらず極め
て多量の抗体産生を確認した。
【0040】一般に動物細胞の培養にあたっては馴化と
いう操作が要求される。この操作は、培養環境を継代し
た環境から変更する時に行われるもので具体的には徐々
に培養環境を変えて最終的に目的とする培養環境にする
という操作である。たとえば血清添加培地で継代された
細胞を無血清培地に接種する場合には、徐々に培地の血
清濃度を下げることで細胞の馴化が行われる。この操作
を省略して急激に培養環境を変更した場合、動物細胞で
はたとえ培養が可能な環境であっても細胞数の一時的な
低下等がしばしば観察される。また培地によっては細胞
の死滅というケースさえめずらしくない。このようなデ
リケートな動物細胞の培養にあたって、馴化されていな
い細胞でさえ十分に増殖を支持し、更に血清添加培地よ
りも多量の抗体産生をみた本発明による無血清培地は、
きわめて優秀な培地であるということができる。逆に細
胞の馴化操作という点から見れば、本発明による無血清
培地は、細胞数の減少や死滅の心配の少ない、馴化が容
易な培地であるといえる。
【0041】加えて本発明によって提供される動物細胞
培養用培地は、培養可能な細胞密度の範囲を拡大すると
いう効果を持つ。すなわち、低密度から高密度まで細胞
の培養を幅広く支持するものである。この効果により、
従来の培地では細胞死が増加し易い低密度であっても細
胞の生存率を低下させることなく培養を継続することが
でき、一方従来の培地では飽和密度と言われている1×
106cells/mlを越える高密度の培養を可能としてい
る。このように本発明は、細胞培養密度のレンジを拡大
する有用な動物細胞培養用培地を提供するものである。
【0042】本発明の動物細胞培養用培地は、抗体産生
細胞のみならず幅広い動物細胞についての培養が可能で
ある。特にインスリンを添加した場合には、無血清培養
であっても馴化操作無しで培養を開始できる利点が有
る。このように、本発明は無血清という厳しい条件の元
で高い汎用性を実現する極めて有用性の高い培地を提供
するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】D−ペニシラミンを添加したIMDM培地にお
ける細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は吸光度を、横軸
は添加物質の濃度を示す。
【図2】アセト酢酸リチウムを添加したIMDM培地に
おける細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は吸光度を、横
軸は添加物質の濃度とインスリンの有無を示す。
【図3】塩酸ブホルミンを添加したIMDM培地におけ
る細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は吸光度を、横軸は
添加物質の濃度とインスリンの有無を示す。
【図4】塩酸メトホルミンを添加したIMDM培地にお
ける細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は吸光度を、横軸
は添加物質の濃度とインスリンの有無を示す。
【図5】ビタミンK5を添加したIMDM培地における
細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は吸光度を、横軸は添
加物質の濃度とインスリンの有無を示す。
【図6】N−アセチルグルタミン酸を添加したIMDM
培地における細胞の増殖を示したグラフ。縦軸は細胞密
度(×106cells/ml)を、横軸は培養日数を示す。
【図7】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地におけるハイブリドーマ細胞F36−54の
増殖と抗体産生量を示したグラフ。縦軸(左)は細胞密
度(×105cells/ml)を、縦軸(右)は抗体濃度(mg/l)
を、横軸は培養日数を示す。
【図8】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地における形質転換したミエローマ細胞P3−
X63−Ag8.653の増殖と抗体産生量を示したグ
ラフ。縦軸(左)は細胞密度(×105cells/ml)を、縦
軸(右)は抗体濃度(mg/l)を、横軸は培養日数を示す。
【図9】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地におけるハイブリドーマ細胞F36−54
(馴化)の増殖と抗体産生量を示したグラフ。縦軸
(左)は細胞密度(×105cells/ml)を、縦軸(右)は
抗体濃度(mg/l)を、横軸は培養日数を示す。
【図10】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地(−○−)、該培地にさらにインスリン5mg
/lを添加したIMDM培地(−●−)、および10%F
CSを添加したRPMI培地(−△−)の3種類の培地
におけるNamalwa(未馴化)の増殖を示したグラ
フ。縦軸は細胞密度(×105cells/ml)を、横軸は培養
日数を示す。
【図11】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地(−○−)、該培地にさらにインスリン5mg
/lを添加したIMDM培地(−●−)、および10%F
CSを添加したRPMI培地(−△−)の3種類の培地
におけるHeLa(未馴化)の増殖を示したグラフ。縦
軸は細胞密度(×104cells/cm2)を、横軸は培養日数を
示す。
【図12】D−ペニシラミン、N−アセチルグルタミン
酸、塩酸ブホルミン、およびビタミンK5を添加したI
MDM培地(−○−)、該培地にさらにインスリン5mg
/lを添加したIMDM培地(−●−)の2種類の培地に
おけるBHK−21C13−2P(馴化)の増殖を示し
たグラフ。縦軸は細胞密度(×105cells/ml)を、横軸
は培養日数を示す。

Claims (23)

    【整理番号】 P000311 【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の群から選択される少なくとも1種類の
    成分を含む動物細胞培養用培地 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
  2. 【請求項2】少なくともD−ペニシラミンまたはその塩
    を含む請求項1に記載の動物細胞培養用培地
  3. 【請求項3】D−ペニシラミンを0.5〜5000mg/l
    含む請求項2に記載の動物細胞培養用培地
  4. 【請求項4】少なくともアセト酢酸またはその塩を含む
    請求項1に記載の動物細胞培養用培地
  5. 【請求項5】アセト酢酸をリチウム塩として0.005
    〜50mg/l含む請求項4に記載の動物細胞培養用培地
  6. 【請求項6】ビグアナイド類がブホルミン、メトホルミ
    ン、およびフェンホルミン、またはそれらの塩から選択
    されたものである請求項1に記載の動物細胞培養培地
  7. 【請求項7】ビグアナイド類として塩酸ブホルミンを
    0.005〜5mg/l含む請求項6に記載の動物細胞培養
    用培地
  8. 【請求項8】ビグアナイド類として塩酸メトホルミンを
    0.1〜100mg/l含む請求項6に記載の動物細胞培養
    用培地
  9. 【請求項9】少なくともビタミンK5またはその塩を含
    む請求項1に記載の動物細胞培養用培地
  10. 【請求項10】ビタミンK5を0.00005〜0.1
    mg/l含む請求項9に記載の動物細胞培養用培地
  11. 【請求項11】少なくともN−アセチルグルタミン酸ま
    たはその塩を含む請求項1に記載の動物細胞培養用培地
  12. 【請求項12】N−アセチルグルタミン酸を1〜200
    mg/l含む請求項11に記載の動物細胞培養用培地
  13. 【請求項13】血清を添加していない請求項1−12の
    いずれかに記載の動物細胞培養用培地
  14. 【請求項14】細胞増殖促進物質として蛋白質を添加し
    ていない請求項13に記載の動物細胞培養用培地
  15. 【請求項15】次の群から選択される少なくとも1種類
    の成分を細胞増殖促進物質として培地に添加する動物細
    胞培養方法 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
  16. 【請求項16】動物細胞が、抗体産生細胞である請求項
    15に記載の動物細胞培養方法
  17. 【請求項17】抗体産生細胞が、抗体産生細胞とミエロ
    ーマ細胞とのハイブリドーマ、イムノグロブリン遺伝子
    発現ベクターによって形質転換された細胞、およびEB
    Vで形質転換された抗体産生細胞から選択される請求項
    16に記載の動物細胞培養方法
  18. 【請求項18】次の群から選択される少なくとも1種類
    の成分を培地に添加する抗体産生細胞の抗体産生増強方
    法 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
  19. 【請求項19】次の群から選択される少なくとも1種類
    の抗体産生増強剤を含む抗体産生細胞の抗体産生増強用
    組成物 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
  20. 【請求項20】次の群から選択される少なくとも1種類
    の細胞増殖促進物質を含む培地で動物細胞を培養し、増
    殖した細胞、または細胞の生産した物質を回収すること
    を特徴とする生理活性物質の製造方法 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
  21. 【請求項21】生理活性物質が、細胞そのものである請
    求項20の生理活性物質の製造方法
  22. 【請求項22】生理活性物質が、抗体、サイトカイン、
    ホルモン、成長因子、酵素、およびウイルス抗原から選
    択される請求項20の生理活性物質の製造方法
  23. 【請求項23】次の群から選択される少なくとも1種類
    の細胞増殖促進物質を含む培地で培養した動物細胞その
    もの、または細胞の生産した物質を回収することによっ
    て得られた生理活性物質 D−ペニシラミンまたはその塩、 アセト酢酸またはその塩、 ビグアナイド類、 ビタミンK5またはその塩、 N−アセチルグルタミン酸またはその塩
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007119808A1 (ja) 2006-04-13 2007-10-25 Medical And Biological Laboratories Co., Ltd. 融合パートナー細胞
JP2010000094A (ja) * 2002-03-05 2010-01-07 F Hoffmann La Roche Ag 哺乳類細胞をインビトロで増殖させる改善法
CN114214274A (zh) * 2021-12-22 2022-03-22 康妍葆(北京)干细胞科技有限公司 干细胞无血清培养基及其制备方法和应用

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