JPH0859244A - 粒状ゲータイト微粒子粉末及びその製造法並びに該微粒子粉末を用いた粒状酸化鉄微粒子粉末の製造法 - Google Patents

粒状ゲータイト微粒子粉末及びその製造法並びに該微粒子粉末を用いた粒状酸化鉄微粒子粉末の製造法

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JPH0859244A
JPH0859244A JP6222660A JP22266094A JPH0859244A JP H0859244 A JPH0859244 A JP H0859244A JP 6222660 A JP6222660 A JP 6222660A JP 22266094 A JP22266094 A JP 22266094A JP H0859244 A JPH0859244 A JP H0859244A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 BET比表面積値が大きい粒状ゲータイト微
粒子粉末並びに該粒状ゲータイト微粒子粉末及び粒状酸
化鉄微粒子粉末が工業的に得られる製造法を提供する。 【構成】 第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを反
応させて鉄含有沈澱物を含む懸濁液とし、この懸濁液を
非酸化性雰囲気下において50〜65℃の温度範囲にて
30〜360分間維持攪拌し、次いで、当該懸濁液に水
可溶性ケイ酸塩を添加し、50〜60℃の温度範囲にて
液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことによ
り粒状ゲータイト微粒子を生成させ、濾別、水洗、乾燥
することにより粒状ゲータイト微粒子粉末を得る。ま
た、当該粒状ゲータイト微粒子粉末を、常法により脱
水、酸化することにより粒状酸化鉄微粒子粉末を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粒状ゲータイト微粒子
粉末及びその製造法並びに該微粒子粉末を用いた粒状酸
化鉄微粒子粉末の製造法に関するものである。
【0002】本発明に係るBET比表面積値が300〜
350m2 /gの粒状ゲータイト微粒子粉末やBET比
表面積値が75〜150m2 /gの粒状酸化鉄微粒子粉
末の主な用途は、大気やガス中の硫黄酸化物、硫化水素
及び窒素酸化物等の吸着剤、脱臭剤であり、また、各種
触媒用の材料粉末、殊に、廃水処理酸化触媒用の材料粉
末である。
【0003】
【従来の技術】大気やガス中の硫黄酸化物、硫化水素及
び窒素酸化物等は大気汚染の元凶であり、特に、硫黄酸
化物や硫化水素等は、大気汚染源としてのみではなく、
鉄を用いた構築物や橋梁の大気による腐食に直接関与し
ており、また、窒素酸化物等は光化学スモッグの誘因と
なるなどの為、硫黄酸化物、硫化水素及び窒素酸化物等
の発生抑制や発生源からの除去の為の努力が日夜行われ
ている。
【0004】しかしながら、産業の発達に伴う燃焼炉の
増大や自動車の普及により大量の排ガスが排出されてお
り、種々の対策が採られているが未だ不十分なのが現状
であり、ガス中の硫黄酸化物、硫化水素及び窒素酸化物
等の吸着能に優れた吸着剤や脱臭剤の開発が強く要望さ
れている。
【0005】この事実は、例えば、日本化学会発行「日
本化学会誌」(1985年)第2315頁の「‥‥都市
における大気中の窒素酸化物濃度は、種々の対策が実施
されてもいまだ低下しないばかりでなく漸増の傾向さえ
見え、窒素酸化物除去の努力がますます重要である。‥
‥」なる記載の通りである。
【0006】硫黄酸化物、硫化水素及び窒素酸化物等の
吸着能に優れた吸着剤は現在最も要求されているところ
であるが、活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の公知の
吸着剤は、硫黄酸化物、硫化水素及び窒素酸化物等の吸
着剤としてはまだ不十分であることが指摘されている。
【0007】この事実は、例えば、日本化学会発行「日
本化学会誌」(1978年)第665頁の「‥‥二酸化
硫黄を吸着除去するために、活性炭をはじめ各種の金属
酸化物などの無機化合物が研究されてきたが、吸着能
力、選択性、再生法などになお問題があり、新しい吸着
剤の開発が望まれている。‥‥」なる記載及び前出「日
本化学会誌」(1985年)第2315頁の「‥‥一般
的吸着剤である活性炭、シリカゲルおよびゼオライトは
NO2 には有効ではあるが、NOを吸着する能力は十分
でない。このため、NOに対する吸着能の高い物質の開
発が望まれている。‥‥」なる記載の通りである。
【0008】含水酸化鉄粒子が硫黄酸化物、硫化水素及
び窒素酸化物等に対する吸着能に優れていることが見い
出され、注目を浴びている。この事実は、例えば、日本
化学会発行「日本化学会誌」(1980年)第681頁
の「‥‥含水酸化鉄がSO2を化学吸着する能力が高い
ことを見い出して以来、SO2 吸着材料としての可能性
を検討する目的で、燃焼炉排ガス組成に近い混合気体か
らのSO2 吸着実験を行い、SO2 吸着能は共存するH
2 Oの影響をほとんどうけないことを知り、‥‥」なる
記載及び前出「日本化学会誌」(1985年)第231
5頁の「‥‥Fe3 4 、FeO(OH)およびジャロ
サイトなどの鉄酸化物は、面積あたりで上述の吸着剤の
10倍以上のNO化学吸着能を有する。これら鉄酸化物
の中で、FeO(OH)は活性な表面酸素と特殊な表面
構造をもつために、大きいNO化学吸着容量のみなら
ず、1秒以内で終了する高速化学吸着能をもっている。
‥‥」なる記載の通りである。
【0009】硫黄酸化物、硫化水素及び窒素酸化物等を
対象とする吸着剤は、その表面に対象物を吸着させるも
のであるから、吸着剤の比表面積が大きくなる程吸着能
が増すので、吸着剤は出来るだけ微細であることが要求
される。この事実は、例えば、前出「日本化学会誌」
(1980年)第681頁の「‥‥固体表面の気体分子
吸着の研究においては、表面積の大きい粉体を用いるこ
とが多い。‥‥」なる記載の通りである。
【0010】一方、廃水処理酸化触媒用の材料粉末につ
いては、業種の種類によって工場からは異なる各種成分
を含む大量の廃水が排出されている。廃水の処理方法の
一つとしてチンマーマン法と呼ばれる湿式酸化処理方法
が知られており、この方法は、活性汚泥法と呼ばれてい
る生物化学的方法に比べ、有機物の分解が比較的短時間
でできることとバクテリアの生育に適した濃度に廃水を
希釈する必要がないため処理施設の小型化が可能である
ことなどから実用化されている。
【0011】この湿式酸化処理方法は、廃水の液相状態
を保持することができる高温、高圧下で廃水を酸素含有
ガスを通気しながら処理して、廃水中の有機物を分解さ
せる方法であり、有機物を分解させる反応の速度を早め
ることを目的として各種酸化触媒が使用されている。
【0012】各種酸化触媒に用いられる材料粉末につい
ても前述した吸着剤と同様に出来るだけ比表面積が大き
いことが要求される。例えば、日刊工業新聞社発行「工
業触媒」(昭和41年)第4頁の「‥‥触媒選択の第1
は活性の大きい触媒を選ぶことにある。‥‥」なる記
載、同「工業触媒」第62頁の「‥‥固体触媒では当然
有効な表面積の広いことが望ましい。したがって粉体あ
るいは多孔性の状態で使用される。‥‥」なる記載及び
(株)技術情報協会発行「顔料分散技術」(1993
年)第18頁の「‥‥粒子が小さくなればなるほど‥‥
粒子の化学的活性度は大きくなる。‥‥」なる記載の通
りである。
【0013】前記吸着剤として用いられる含水酸化第二
鉄粒子粉末や酸化鉄粒子粉末に関する先行技術として
は、特公昭46−20688号公報、特開昭50−60
492号公報及び特開平1−305957号公報などが
挙げられ、前記廃水処理用酸化触媒に関する先行技術と
しては、特開平5−138027号公報などが挙げられ
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】前掲特公昭46−20
688号公報に記載されている純γ−オキシ水酸化鉄粒
子粉末や前掲特開平50−60492号公報に記載され
ているいがぐり状含水酸化第二鉄粒子粉末は、その粒子
形態に起因して吸着剤としての吸着能に優れたものとは
言えない。
【0015】また、特開平1−305957号公報に記
載されている笹の葉状を呈した含水酸化第二鉄粒子粉末
は、長軸径が0.2〜1.0μmであり、BET比表面
積値は100m2 /g程度であるが、吸着能はまだ不十
分である。
【0016】前掲特開昭5−138027号公報に記載
されている廃水処理用触媒は、A成分として鉄とチタ
ン、ケイ素およびジルコニウムよりなる群から選ばれる
少なくとも1種の元素とを含む酸化物を有し、B成分と
してコバルト、ニッケル、セリウム、銀、金、白金、パ
ラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムより
なる群から選ばれる少なくとも1種の元素を有するもの
である。
【0017】A成分とB成分とを含む酸化触媒は、鉄の
酸化物粉末とチタン、ケイ素およびジルコニウムよりな
る群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む酸化物
(以下、単に「ケイ素の酸化物粉末」という。)とを所
定の重量比で含む混合物粉末を300〜750℃程度の
温度範囲で焼成してA成分を含む酸化物粉末を得、該A
成分を含む酸化物粉末に成形助剤を加え、適量の水を添
加しつつ混合、混練した後、所定の形状に成形し、次い
で、該成形物を乾燥した後、300〜750℃の温度範
囲で焼成して成形体を得、該成形体にB成分である金属
塩の水溶液を含浸させた後、更に、乾燥、焼成すること
により製造される。
【0018】A成分を含む酸化物粉末は、第二鉄塩を含
む水溶液とケイ素を含む水溶液との混合溶液にアルカリ
水溶液を添加して水溶液中から共沈物を生成させ、該共
沈物を濾別、水洗、乾燥し、次いで、300〜750℃
の温度範囲で焼成する方法や鉄の酸化物とケイ素の酸化
物粉末とを乾式で混合した混合物粉末を乾燥後、300
〜750℃の温度範囲で焼成する方法等が知られてい
る。
【0019】しかし、水溶液中から生成した共沈物を濾
別、水洗、乾燥し、次いで、300〜750℃で焼成す
る方法による場合には、鉄及びケイ素を含む共沈物を水
溶液中から生成させるものであるから、乾式による混合
方法に比べ、組成が均一なものが得られやすいが、周知
の通り、共沈物は粒状微細粒子として沈殿する為、該粒
状微細粒子を300〜750℃、殊、500℃以上の高
温で加熱すると、粒状微細粒子は、粒子相互の接触点が
大きいため粒子及び粒子相互間で焼結が生起しやすくな
って、比表面積が大幅に低下してしまい、比表面積が大
きいA成分を含む酸化物粉末は得られ難い。
【0020】また、鉄の酸化物粉末とケイ素の酸化物粉
末とを乾式で混合した混合物粉末を乾燥後、300〜7
50℃の温度範囲で焼成する方法による場合には、原料
である鉄の酸化物粉末とケイ素の酸化物粉末との均一混
合が困難である為、得られるA成分を含む酸化物粉末の
組成は、不均一に成りやすいものである。
【0021】原料である鉄の酸化物粉末のBET比表面
積値は、一般に粒状形態のヘマタイト粒子等酸化鉄粒子
の場合、2〜20m2 /g程度、針状形態のゲータイト
粒子の場合、10〜100m2 /g程度、針状形態のヘ
マタイト粒子等酸化鉄粒子の場合、10〜60m2 /g
程度と小さいものであり、300〜750℃、殊に、5
00℃以上の高温で加熱すると粒子及び粒子相互間で焼
結が生起し、更に、BET比表面積値が低下してしまう
という問題が生じる。
【0022】以上に述べた通りの含水酸化鉄粒子粉末や
酸化鉄粒子粉末は、通常、第一鉄塩水溶液とアルカリ水
溶液とを反応させて鉄含有沈澱物を含む懸濁液とし、こ
の懸濁液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うこと
により含水酸化鉄粒子を生成させ、濾別、水洗、乾燥し
て含水酸化鉄粒子粉末を得、また、この含水酸化鉄粒子
粉末を脱水、酸化して酸化鉄粒子粉末を得るという方法
によって製造されている。
【0023】上記製造法によって得られる含水酸化鉄粒
子の粒子形状は、針状や紡錘状である。これら針状や紡
錘状を呈した粒子を加熱処理した場合には、粒子形状が
崩れたり、粒子間の焼結によって変化が起きる。例え
ば、(株)総合技術センター発行「磁性材料の開発と磁
粉の高分散化技術」(昭和57年)第8頁の「‥‥加熱
温度が高くなると‥‥一般の焼結体にみられるように小
さい空孔が集まって出来た大きい空孔が生成する。‥‥
空孔のために針状粒子の強度が弱く、‥‥同時に粒子間
の焼結がおこり、凝集体となって分散性も悪くなる。‥
‥」なる記載の通りである。
【0024】また、上記以外の含水酸化鉄粒子粉末の製
造法として、特公昭63−13941号公報に記載の紡
錘状を呈したゲータイト粒子粉末の製造法が挙げられ、
これは第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを反応さ
せてFeCO3 を含む懸濁液とし、この懸濁液を酸化反
応に水可溶性ケイ酸塩を添加し、液中に酸素含有ガスを
通気して酸化反応を行なうことにより紡錘状を呈したゲ
ータイト粒子を生成させる方法であり、この方法による
場合には、軸比(長軸径/短軸径−以下、単に「軸比」
という。)が1.5乃至1.0程度のゲータイト粒子が
得られてはいるが、まだ粒径は0.15μm程度以上で
ある。
【0025】尚、特公昭51−12318号公報、特公
昭51−16039号公報、特公昭51−21639号
公報及び特公昭51−21640号公報等に記載されて
いるゲータイト粒子は、軸比が5以下の紡錘状粒子であ
り、平均粒子径が50〜200Åの微細な粒子が得られ
ているが、それぞれの公報中に記載されている各実施例
からそれぞれ軸比が3程度の紡錘状を呈した粒子であ
る。
【0026】また、粒状のゲータイト粒子粉末として
は、特開昭60−141625号公報に記載の微細粒状
のα−オキシ水酸化鉄(出願人注:ゲータイトであ
る。)が挙げられ、水可溶性ケイ酸塩、炭酸アンモニウ
ム及び苛性アルカリの共存下で、第一鉄塩水溶液の酸化
反応を行うことにより同公報の「実施例2」及び「実施
例3」において「0.1μ以下」の粒状ゲータイト微粒
子が得られている。しかし、同公報の「実施例1」の
「第1図」に示されているように粒度分布が不均斉なも
のである。
【0027】そこで、本発明は、大気やガス中の硫黄酸
化物、硫化水素及び窒素酸化物等の吸着能に優れ、ま
た、各種触媒用の材料粉末、殊に、廃水処理酸化触媒用
の材料粉末として好適なBET比表面積値が大きく、し
かも、粒度分布に優れたゲータイト微粒子粉末を得るこ
と、並びに、得られた該微粒子粉末を用いて、BET比
表面積値が大きく、しかも、粒度分布に優れた粒状酸化
鉄微粒子粉末、具体的には、粒状ヘマタイト微粒子粉末
を得ることを技術的課題とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって達成できる。
【0029】即ち、本発明は、BET比表面積値が30
0〜350m2 /gであって、粒状ゲータイト微粒子粉
末中の全Feに対してSi換算で0.5〜5.0原子%
のケイ素化合物を含有する粒状ゲータイト微粒子粉末で
ある。
【0030】また、本発明は、第一鉄塩水溶液と該第一
鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.0当量を越える量の
炭酸アルカリ水溶液とを非酸化性雰囲気下で反応させて
鉄含有沈澱物を含む懸濁液とし、この懸濁液を非酸化製
雰囲気下において50〜65℃の温度範囲にて30〜3
60分間維持攪拌し、次いで、当該懸濁液に水可溶性ケ
イ酸塩を前記第一鉄塩水溶液中のFe2+に対してSi換
算で0.5〜5.0原子%添加した後、50〜60℃の
温度範囲にて液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応を
行うことにより粒状ゲータイト微粒子を生成させ、濾
別、水洗、乾燥することからなる前記粒状ゲータイト微
粒子粉末の製造法である。
【0031】また、本発明は、前記粒状ゲータイト微粒
子粉末の製造法において、水可溶性アルミニウム塩及び
/又は水可溶性リン酸塩を、前記水可溶性ケイ酸塩を添
加した酸化反応前の懸濁液、酸化反応開始後から反応終
了までの間の反応液及び酸化反応終了後の反応液のいず
れかの液中、又は、水洗後の粒状ゲータイト粒子を水に
懸濁させたスラリーに、1回又は2回以上に分割して添
加することからなる前記粒状ゲータイト微粒子粉末の製
造法である。
【0032】また、本発明は、前記各粒状ゲータイト微
粒子粉末を250〜500℃の温度範囲で加熱脱水する
か、必要により、更に非酸化性雰囲気下又は酸化性雰囲
気下、300〜800℃の温度範囲で加熱焼成すること
によりBET比表面積値が75〜150m2 /gの粒状
ヘマタイト微粒子粉末を得ることからなる粒状酸化鉄微
粒子粉末の製造法である。
【0033】本発明の構成をより詳しく説明すれば次の
通りである。
【0034】先ず、本発明に係る粒状ゲータイト微粒子
粉末について述べる。
【0035】本発明に係る粒状ゲータイト微粒子粉末
は、BET比表面積値が300〜350m2 /gであ
る。300m2 /g未満の場合には、目的とする効果が
得られない。350m2 /gを越える場合には、濾過、
水洗工程における作業性が悪く工業的とは言えない。好
ましい範囲は、310〜330m2 /gである。
【0036】本発明に係る粒状ゲータイト微粒子粉末
は、粒状ゲータイト微粒子粉末中の全Feに対してSi
換算で0.5〜5.0原子%のケイ素化合物を含有す
る。0.5原子%未満の場合には、得られる粒状ゲータ
イト微粒子粉末のBET比表面積値が300m2 /g以
上とはならないので、目的の微粒子粉末が得られない。
5.0原子%を越える場合には、ケイ素化合物が得られ
る粒状ゲータイト微粒子粉末中に不要の塩として存在す
ることになるので好ましくないと共に、均一な組成を形
成し難くなる。
【0037】次に、本発明に係る粒状ゲータイト微粒子
粉末の製造法並びに該微粒子粉末を用いた粒状酸化鉄微
粒子粉末の製造法について述べる。
【0038】本発明において使用される第一鉄塩水溶液
としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を挙
げることができる。
【0039】第一鉄塩水溶液の量は、反応濃度として、
0.3〜0.6mol/lの範囲である。0.3mol
/l未満の場合には、反応濃度がうすく工業的ではな
い。0.6mol/lを越える場合には、得られる粒状
ゲータイト微粒子の粒度分布が広くなる。好ましくは
0.4〜0.5mol/lである。
【0040】本発明においては、第一鉄塩水溶液と炭酸
アルカリ水溶液とを非酸化性雰囲気下で反応させて鉄含
有沈澱物を含む懸濁液を得る。これは、生成するゲータ
イト粒子の短軸方向の成長抑制が施されないうちに酸化
反応がはじまりゲータイト粒子が生起することを避ける
ためである。
【0041】非酸化性雰囲気とするには、反応容器内に
不活性ガス(N2 ガスなど)又は還元性ガス(H2 ガス
など)を通気すればよい。
【0042】本発明において使用される炭酸アルカリ水
溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水
溶液等を挙げることができる。炭酸アンモニウムは前記
鉄含有沈澱物を含む懸濁液を非酸化性雰囲気下で維持攪
拌する時に、炭酸アンモニウムが反応分解してアンモニ
ウム塩がNH3 ガスとなって反応系外に排出されるので
使用できない。
【0043】尚、反応液のpH値をアルカリ領域とする
ので、NH3 ガスがCO2 ガスよりも先に系外に排出さ
れて反応における化学的平衡がくずれ、得られる粒状ゲ
ータイト微粒子の粒度分布が不均一となり、特に温度が
50℃を越えると粒状マグネタイトが混在することもあ
る。
【0044】炭酸アルカリ水溶液の量は、使用する第一
鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.0当量を越える量で
ある。1.0当量以下の場合には、得られる粒状ゲータ
イト微粒子中に多量の酸根、特に、第一鉄塩原料として
硫酸第一鉄を使用した場合には、硫黄分が含まれるよう
になるので、粒状酸化鉄微粒子とする際に行う各熱処理
によって、粒子の焼結が激しく起こるため、粒子と粒子
との間で焼結作用が促進されて、得られる粒状酸化鉄微
粒子の粒子が大きくなると共に粒度分布も悪化する。好
ましくは1.0当量を越え3.0当量以下である。3.
0当量を越えてもよいが過剰のアルカリを使用する必要
性はない。より好ましくは1.3〜2.5当量である。
尚、この場合の酸化反応時の反応溶液のpH値は7.0
〜11.0の範囲であり、好ましくは8.0〜10.0
の範囲である。
【0045】前記鉄含有沈澱物を含む懸濁液を非酸化性
雰囲気下で維持攪拌する温度は、50〜65℃の温度範
囲である。50℃未満の場合には、当該懸濁液中のCO
2 ガスの反応系外への排出を十分に行うことができない
ため、生成するゲータイト粒子の短軸方向の成長抑制が
十分ではなく、微粒子化も不十分となる。65℃を越え
る場合には、粒状ゲータイト微粒子中に粒状マグネタイ
ト粒子が混在することがある。好ましい温度範囲は50
〜55℃である。
【0046】前記鉄含有沈澱物を含む懸濁液を非酸化性
雰囲気下で維持攪拌する時間は、30〜360分間であ
る。30分間未満の場合には、当該懸濁液中のCO2
スの反応系外への排出を十分に行うことができないた
め、生成するゲータイト微粒子の短軸方向の成長抑制が
十分でなく、微粒子化も不十分となる。360分間を越
えてもよいが、いたずらに長時間とする必要性はない。
好ましい範囲は60〜240分間である。
【0047】非酸化性雰囲気は、前記非酸化性雰囲気と
同様であればよい。尚、非酸化性雰囲気下で維持攪拌す
ることによって、生成するゲータイト粒子の短軸方向の
成長抑制を行うのであるから、酸化性雰囲気下で維持攪
拌を行うと酸化反応がはじまりゲータイト粒子が生起す
ることで短軸方向の抑制効果が不十分となる。
【0048】本発明において使用される水可溶性ケイ酸
塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を挙
げることができる。
【0049】水可溶性ケイ酸塩の添加量は、第一鉄塩水
溶液中のFe2+に対してSi換算で0.5〜5.0原子
%である。0.5原子%未満の場合には、得られる粒状
ゲータイト微粒子粉末の粒子径が大きくなり、BET比
表面積値が300m2 /g以上とはならないので、目的
の微粒子粉末が得られない。5.0原子%を越える場合
には、ケイ素化合物が得られる粒状ゲータイト微粒子粉
末中に不要の塩として存在することになるので好ましく
ないと共に、均一な組成を形成し難くなる。
【0050】水可溶性ケイ酸塩の添加時期は、前記維持
攪拌終了後から酸化反応を開始するまでの間である。前
述の通り、維持攪拌により生成するゲータイト粒子の短
軸方向の成長抑制を行うのであるから、維持攪拌が終了
して酸化反応を開始する15分前乃至酸化反応開始直前
までの間が好ましい。より好ましくは5分前乃至酸化反
応開始直前までの間である。酸化反応が開始された後に
添加する場合には、酸化反応の開始によりすでにゲータ
イト粒子の針状粒子が生起しており、得られるゲータイ
ト粒子も粒状でなく、軸比のある米粒状を呈した粒子と
なる。
【0051】また、水可溶性ケイ酸塩をあらかじめ炭酸
アルカリ水溶液中に添加・混合して使用した場合には、
非酸化性雰囲気下で維持攪拌して生成するゲータイト粒
子の短軸方向の成長抑制を行う効果が得られ難く、微粒
子化が不十分となる。
【0052】尚、水可溶性ケイ酸塩は、水に溶解して水
溶液として添加するのが当該懸濁液中にすばやくかつ均
一に攪拌・分散させることから好ましい。
【0053】本発明における酸化反応時の温度は、50
〜60℃の温度範囲である。50℃未満の場合には、得
られる粒状ゲータイト微粒子の結晶性が不十分であるた
めに、粒状酸化鉄微粒子とする工程における各熱処理に
よって、粒子の焼結が激しく起こり、粒子と粒子との間
で焼結作用が促進されるので、得られる粒状酸化鉄粒子
の粒子が大きくなると共に粒度分布も悪化する。60℃
を越える場合には、得られる粒状ゲータイト微粒子中に
粒状マグネタイト粒子が混在することがある。好ましく
は50〜55℃の温度範囲である。
【0054】本発明における酸化手段は、酸素含有ガス
(例えば空気)を液中に通気することにより行う。ま
た、必要により機械的攪拌を伴ってもよい。
【0055】尚、粒状ゲータイト粒子粉末を得るための
濾別・水洗・乾燥は常法に従って行なえばよい。
【0056】本発明において使用される水可溶性アルミ
ニウム塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸
カリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化
アルミニウム、酢酸アルミニウム等を挙げることができ
る。
【0057】水可溶性アルミニウム塩の添加量は、第一
鉄塩水溶液中のFe2+に対してAl換算で0.5〜5.
0原子%である。0.5原子%未満の場合には、粒状ゲ
ータイト微粒子を粒状酸化鉄微粒子とする工程における
熱処理によって、焼結が起こることもあるため、得られ
る粒状酸化鉄微粒子の粒子径が大きくなったり、粒度分
布が不均斉となることもあるので好ましくない。5.0
原子%を越える場合には、得られる粒状ゲータイト粒子
中に過剰の水可溶性アルミニウム塩が不要の塩として存
在することになるので好ましくない。また、得られる粒
状酸化鉄微粒子の特性が劣化することがある。好ましい
範囲は、1.0〜3.0原子%である。
【0058】水可溶性アルミニウム塩の添加時期は、前
記水可溶性ケイ酸塩を添加した酸化反応前の当該懸濁
液、酸化反応開始後から反応終了までの間の反応液及び
酸化反応終了後の反応液のいずれかの液中、又は、水洗
後のペーストを水で解膠して得られるスラリー中であ
る。水可溶性ケイ酸塩を添加する前に水可溶性アルミニ
ウム塩を添加した場合には、当該懸濁液中の鉄含有沈澱
物が凝集して生成するゲータイト粒子が大きな凝集粒子
となることもある。また、酸化反応終了後の濾別中又は
水洗中に添加した場合には、粒状ゲータイト微粒子の粒
子表面に水酸化アルミニウムが均一に被覆されなくなる
ために焼結防止効果が得られなくなる。尚、水洗後のペ
ーストを水で解膠して得られるスラリー中に添加するこ
とができるのは、所謂、通常の焼結防止と同様の効果が
得られるためである。
【0059】本発明において使用される水可溶性リン酸
塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、メタ
リン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム等が挙げられ
る。また、水可溶性リン酸塩に代えてリン酸、ポリリン
酸、メタリン酸等のリン酸を使用することもできる。
【0060】水可溶性リン酸塩の添加量は、第一鉄塩水
溶液中のFe2+に対してP換算で0.05〜1.0原子
%である。0.05原子%未満の場合には、粒状ゲータ
イト微粒子を粒状酸化鉄微粒子とする工程における熱処
理によって、焼結が起こることもあり、、得られる粒状
酸化鉄微粒子の粒子径が大きくなったり、粒度分布が不
均斉となることがあるので好ましくない。1.0原子%
を越える場合には、得られる粒状ゲータイト粒子中に不
要の塩として存在することになるので好ましくない。ま
た、得られる粒状酸化鉄微粒子の特性が劣化することが
ある。好ましい範囲としては0.1〜0.5原子%であ
る。
【0061】水可溶性リン酸塩の添加時期は、前記水可
溶性アルミニウム塩の添加時期と同様である。
【0062】本発明においては、水可溶性アルミニウム
塩及び/又は水可溶性リン酸塩を前記添加時期の間に1
回又は2回以上に分割して添加することができる。ま
た、水可溶性アルミニウム塩と水可溶性リン酸塩を併用
する場合も前記各添加量の範囲内であればよい。尚、前
記各塩の組み合わせは、どのような組み合わせで添加し
てもよい。
【0063】水可溶性アルミニウム塩や水可溶性リン酸
塩は、水に溶解した水溶液として添加するのが当該液中
にすばやくかつ均一に攪拌・分散させることから好まし
い。
【0064】また、本発明における水可溶性アルミニウ
ム塩や水可溶性リン酸塩を添加した後のpH値の調整は
不要である。この理由は、水可溶性ケイ酸塩を添加した
酸化反応前の当該懸濁液中、酸化反応開始後から反応終
了までの間の反応液中、酸化反応終了後の当該反応液中
及び水洗後のペーストを水で解膠して得られるスラリー
中に添加する場合の、それぞれの液中のpH値は7〜1
1の範囲であり、殊に、8〜10の範囲にある場合には
十分粒状ゲータイト微粒子表面に吸着させることができ
るからである。
【0065】尚、水可溶性アルミニウム塩は水酸化物と
してゲータイト粒子の粒子表面上に析出してゲータイト
粒子に固着される。また、水可溶性リン酸塩はゲータイ
ト粒子の粒子表面上にイオン吸着して容易にゲータイト
粒子からは離脱しない。また、各塩は添加時期により粒
子中に含有されることもある。
【0066】本発明においては、酸化鉄粒子粉末の特性
向上等の為、ゲータイト微粒子の生成反応中に、通常添
加されるNi、Zn、Co、Cu、Sn、Ti、Zr及
びMgから選ばれる金属化合物の1種又は2種以上の異
種元素を添加することもできる。
【0067】本発明においては、加熱脱水時等の加熱処
理による粒子形状のくずれ及び粒子間の焼結を防止する
為に、あらかじめ出発原料とする粒状ゲータイト微粒子
をAl、P以外に通常のNi、Co、Mg、B、Zn、
Cr及びZrから選ばれる金属化合物の1種又は2種以
上で被覆処理を施してもよく、これらの金属化合物は焼
結防止効果を有するだけでなく、脱水速度等を制御する
働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用する
こともできる。
【0068】本発明においては、得られた粒状ゲータイ
ト微粒子粉末を出発原料として、常法により、そのまま
加熱脱水して粒状ヘマタイト微粒子粉末とする。加熱脱
水の温度範囲は、250〜500℃である。好ましい範
囲は250〜300℃である。必要により、更に非酸化
性雰囲気下又は酸化性雰囲気下において加熱処理を施し
てもよい。
【0069】前記非酸化性雰囲気下又は酸化性雰囲気下
における加熱処理は、空気、酸素ガス、窒素ガス流下、
300〜800℃の温度範囲で行うことができる。該加
熱処理温度は、出発原料粒子に用いたSi、Al、Pの
各塩の種類と添加量に応じて適宜選択することが好まし
い。800℃を越える場合には、粒子の変形と粒子及び
粒子相互間の焼結を引き起こしてしまう。好ましい範囲
は550〜700℃である。
【0070】本発明により得られた粒状ヘマタイト微粒
子粉末等の粒状酸化鉄微粒子粉末のBET比表面積値
は、75〜150m2 /gである。好ましい範囲は、1
00〜130m2 /gである。
【0071】尚、得られた粒状ヘマタイト微粒子粉末を
還元性ガス(例えば、H2 ガス)流下で加熱還元するこ
とにより粒状マグネタイト微粒子粉末とすることもでき
る。加熱還元の温度範囲は、300〜550℃である。
300℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、
長時間を要する。また、550℃を越える場合には、還
元反応が急激に進行して粒子の変形と、粒子及び粒子相
互間の焼結を引き起こす。好ましい範囲は300〜45
0℃である。
【0072】また、粒状マグネタイト微粒子粉末を更に
加熱還元することにより鉄を主成分とする粒状金属磁性
微粒子粉末とすることもでき、加熱還元後の鉄を主成分
とする粒状金属磁性微粒子粉末は周知の方法、例えば、
トルエン等の有機溶剤中に浸漬する方法及び還元後の鉄
を主成分とする粒状金属磁性微粒子粉末の雰囲気を一旦
不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を
徐々に増加させながら最終的に空気とすることによって
徐酸化する方法等により空気中に取り出すことができ
る。
【0073】また、得られた粒状マグネタイト微粒子粉
末を再酸化して粒状マグヘマイト微粒子粉末とすること
もできる。再酸化の温度範囲は、200〜500℃であ
る。200℃未満である場合には、酸化反応の進行が遅
く、長時間を要する。また、500℃を越える場合に
は、還元反応が急激に進行して粒子の変形と、粒子及び
粒子相互間の焼結を引き起こす。好ましい範囲は300
〜450℃である。
【0074】尚、粒状マグネタイト微粒子粉末と粒状マ
グヘマイト微粒子粉末の中間酸化物である粒状ベルトラ
イド化合物微粒子粉末とすることもでき、前記ヘマタイ
ト微粒子を還元性ガス中で加熱還元してマグネタイト微
粒子を得、更に250〜500℃の温度範囲で酸化して
含まれる第一鉄の量を調節してベルトライド化合物微粒
子とするか、前記マグヘマイト微粒子を再度還元性ガス
流下、300〜550℃の温度範囲で加熱還元して含ま
れる第一鉄の量を調節してベルトライド化合物微粒子と
することもできる。
【0075】
【作用】前述した通りの構成を採る本発明の作用は次の
通りである。
【0076】第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを
反応させて鉄含有沈殿物を含む懸濁液とし、該懸濁液中
酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより得ら
れるゲータイト粒子は、通常、紡錘状を呈しており軸比
も2程度以上を有する粒子である。
【0077】そこで、本発明者は、粒状ゲータイト微粒
子を得ようとする場合には、軸比の成長を極力抑制して
軸比が認められない程小さくすることにより、例えば、
軸比を1.0±0.2程度にすることにより粒状ゲータ
イト微粒子が得られると考えた。
【0078】前掲特公昭63−13941号公報には、
酸化反応前に水可溶性ケイ酸塩を添加することによっ
て、得られるゲータイト粒子の長軸方向の粒子径の成長
を抑制できることが示されている。しかし、同公報記載
の方法によって得られる紡錘状を呈したゲータイト粒子
粉末は、前述した通り、軸比が1.5乃至1.0程度で
あるが、粒径は0.15μm程度以上であり、本発明の
目的とする微粒子とは言えないものである。
【0079】本発明者の行った実験結果によれば、非酸
化性雰囲気下で維持攪拌する以前に水可溶性ケイ酸塩を
添加した場合には、その後に、非酸化性雰囲気下で維持
攪拌して酸化反応を行っても生成するゲータイト粒子の
短軸方向の成長抑制を行う効果が得られ難く、微粒子化
が不十分となり、また、水可溶性ケイ酸塩によるゲータ
イト粒子の長軸方向の成長抑制作用によって、むしろ短
軸方向の成長を促す現象が起こっていることを確認して
いる。
【0080】一方、前掲特開昭60−141625号公
報に記載の方法では、反応濃度が0.225mol/l
程度以下と非常に薄い濃度であり、また、反応温度を5
0℃以下としているが、同公報の各「実施例」の反応温
度は「20℃」であり、好ましい範囲を10〜25℃で
あるとしている。
【0081】しかし、このような反応濃度と反応温度で
生成された粒状ゲータイト微粒子は、前述した通り、同
公報の「実施例1」の「第1図」に示されているように
粒度分布に優れているとは言い難いものである。しか
も、この程度の反応濃度と反応温度では、生産性と季節
的な水温を考慮した場合には工業的であるとは言えな
い。
【0082】また、同公報中の「‥‥炭酸アンモニウム
以外の炭酸塩と苛性アルカリの共存下で酸化反応を実施
しても本発明における目的とする効果は期待し得ない。
‥‥」なる記載に関しては、本発明者の実験結果によれ
ば、炭酸アンモニウムを用いるとアンモニア成分である
NH3 がガス化して大気中に排出されるため、得られる
粒状ゲータイト微粒子の粒度分布が悪くなることを確認
している。
【0083】本発明者は、以上述べた通り、先行技術を
十分に検討した結果、酸化反応前に水可溶性ケイ酸塩を
添加する方法や炭酸アルカリと水酸化アルカリとの両ア
ルカリを併用する方法では、粒度分布に優れた粒状ゲー
タイト微粒子が得られないことを知った。
【0084】そこで、優れた粒度分布を有する粒状ゲー
タイト微粒子を得るためには、生成するゲータイト粒子
の長軸方向だけでなく短軸方向の成長も抑制する必要が
あると考え、種々検討した結果、炭酸アルカリ水溶液を
用いると共に、鉄含有沈殿物を含む懸濁液を非酸化性雰
囲気下、50〜65℃の温度範囲で一定時間維持攪拌し
た後に水可溶性ケイ酸塩を添加し、その後に酸化反応を
行うことにより、生成するゲータイト粒子の長軸方向の
成長は勿論短軸方向の成長も抑制できることを見出した
のである。
【0085】本発明方法において短軸方向の粒子径の成
長を抑制することができる理由を、本発明者は、次のよ
うに考えている。
【0086】即ち、通常の紡錘状を呈したゲータイト粒
子を生成する反応においては、第一鉄塩水溶液と炭酸ア
ルカリ水溶液とを中和反応させることによりFeCO3
を含む懸濁液が生成する。アルカリが1.0当量を越え
る場合には、懸濁液中のFeCO3 が反応・変化してF
e(OH)2 となり、さらに反応してFeOOH(ゲー
タイト)粒子が生成されるが、この酸化反応途中の反応
液中においてはFeCO3 とFe(OH)2 とが共存し
ており、FeCO3 の比率が高いと生成されるFeOO
H粒子の短軸方向の粒子径が成長して粒子の中央部がふ
くらんでいる軸比を有する紡錘状を呈した粒子となるも
のと推定できる。
【0087】本発明者は、上記酸化反応におけるFeC
3 が反応・変化する際に生じるCO2 がガス化して反
応系外に排出されていることに注目し、このCO2 ガス
を酸化反応が行われるより以前に反応系外に排出させる
ことを試みた。
【0088】前記酸化反応が行われる以前の懸濁液中の
FeCO3 を、非酸化性雰囲気下で維持攪拌することに
より、当該懸濁液中のFeCO3 を反応させてCO2
スとして反応系外に排出させるということは、FeCO
3 の一部がFe(OH)2 に変化してFeCO3 に対す
るFe(OH)2 の比率が高くなることを意味してい
る。このようにして得られたFeCO3 に対するFe
(OH)2 の比率が高い当該懸濁液に酸素含有ガスを通
気して酸化反応を行った結果、炭酸アルカリ系の反応の
特徴である紡錘状を呈したゲータイト粒子の短軸側のふ
くらみ部分が小さくなった。これは短軸方向の粒子成長
が抑制された結果と考えられる。
【0089】このように、当該懸濁液を非酸化性雰囲気
下で維持攪拌する方法によって生成するゲータイト粒子
の短軸方向の成長を抑制すると共に、維持攪拌後の当該
懸濁液中に、生成するゲータイト粒子の長軸方向の成長
を抑制する水可溶性ケイ酸塩を添加してから酸化反応を
行うことにより、本発明に係る粒度分布に優れた粒状ゲ
ータイト微粒子を得ることができたのである。
【0090】これは、炭酸アンモニウム等の揮発性アル
カリ成分を含まない炭酸アルカリ水溶液を用いる方法、
非酸化性雰囲気下で維持攪拌する方法及び水可溶性ケイ
酸塩を添加して酸化反応を行う方法の相乗効果によるも
のといえる。
【0091】本発明においては、得られた粒状ゲータイ
ト微粒子粉末を通常の加熱脱水等の熱処理を行うことに
より、粒状ヘマタイト微粒子等の粒状酸化鉄微粒子粉末
を得ることができるが、この場合、本発明に係る粒状ゲ
ータイト微粒子には、水可溶性ケイ酸塩を添加している
ので加熱処理の際に起こる焼結を防止することができる
ため、粒状ゲータイト微粒子の優れた粒子形状と粒度分
布を継承した粒状酸化鉄微粒子粉末を得ることができ
る。
【0092】また、より優れた粒子形状と粒度分布を継
承した粒状酸化鉄微粒子粉末を得るためには、本発明に
おける水可溶性アルミニウム塩や水可溶性リン酸塩を添
加処理する方法により、その効果を格段に向上させるこ
とができる。
【0093】その理由としては、水可溶性ケイ酸塩を添
加した後の酸化反応前の当該懸濁液中又は酸化反応開始
後から反応終了までの間の反応液中に、水可溶性アルミ
ニウム塩や水可溶性リン酸塩を添加した場合には、反応
途中で添加して生成された当該微粒子の粒子表面近傍に
均一に含有又は吸着させることができるので、前記熱処
理における焼結を効果的に防止できるためである。
【0094】2回以上に分割して添加した場合には、添
加した各塩が当該微粒子の粒子表面に積層した状態で含
有、吸着、被覆しているためにより効果的に焼結を防止
できる。
【0095】また、当該酸化反応終了後の粒状ゲータイ
ト粒子が懸濁している反応液中又は当該反応液を濾過し
て水洗した後のペーストを水で解膠して得られる粒状ゲ
ータイト微粒子が水に懸濁しているスラリー中に、水可
溶性アルミニウム塩や水可溶性リン酸塩を添加した場合
には、反応後又は水洗後の当該微粒子の粒子表面に均一
に吸着・被覆されるので、前記熱処理における焼結を効
果的に防止できるためである。
【0096】本発明においては、前記加熱処理により粒
状ゲータイト微粒子の粒子形状を継承するばかりでな
く、1個1個の粒子内部での焼結で粒子自体が丸くなる
性質が働き、粒状が球状に近づくようになり、後出各実
施例の図9及び図10に示す通り、球状粒子に近似した
粒状粒子となっているのでより分散性に優れたものとな
っている。
【0097】
【実施例】次に、実施例、比較例及び参考例により、本
発明を説明する。
【0098】実施例、比較例及び参考例におけるBET
比表面積値は、MONOSORBMS−11型(QUA
TACHROME社製)で測定した値で示した。
【0099】粒子の粒子径、軸比(球形性の目安とし、
軸比が1.0±0.2以内のものを粒状又は球状に優れ
ているとする。)は、いずれも電子顕微鏡写真から測定
した数値の平均値で示した。
【0100】粒子の粒度分布は、以下の方法により求め
た幾何標準偏差値(σg)で示した。即ち、12万倍の
電子顕微鏡写真に写っている粒子350個の粒子径を測
定し、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子
径と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上に
横軸に粒子の粒子径を、縦軸に等間隔にとった粒子径区
間のそれぞれに属する粒子の累積個数を百分率でプロッ
トする。そして、このグラフから粒子の個数が50%及
び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読み
とり、幾何標準偏差値(σg)=個数50%の時の長軸
径(μm)/個数84.13%の時の粒子径(μm)
に従って算出した値で示した。
【0101】ゲータイト粒子又は酸化鉄粒子に含有され
るSi量、Al量、P量は蛍光X線分析により測定し
た。
【0102】吸着容量は、実施例、比較例及び参考例で
得られた粒子粉末を加圧成形し、破砕して10〜20m
eshに粒度をそろえたものを試料として、約0.4g
をカラムに充填して循環式吸着速度評価装置(「化学工
業資料」vol.20,No4,(1985)第14頁
記載の評価方法)にセットし、次に、濃度5ppmの硫
化水素含有の試験ガス10lの入ったテドラバックを当
該装置に取り付けた。続いて、流量5l/minの割合
で試験ガスを試料カラムに通気して循環させた。循環し
ている試験ガスを120分後にサンプリングし、サンプ
リングした試験ガス中の硫化水素含有濃度をガスクロマ
トグラフィー法で測定した値で示した。尚、120分後
の吸着容量が少ないほど吸着能に優れている。
【0103】<ゲータイト粒子粉末の製造> 実施例1〜4、比較例1〜4及び参考例1;
【0104】実施例1 毎分50lの割合でN2 ガスを流して非酸化性雰囲気に
保持された反応容器に、1.6mol/lのNa2 CO
3 水溶液25lを投入(Na2 CO3 は、第一鉄塩水溶
液中のFe2+に対し2.0当量に該当する。)した後、
1.33molのFe2+を含む第一鉄塩水溶液15l
(反応濃度は0.5mol/lに該当する。)を添加・
混合し、温度50℃において鉄含有沈澱物を含む懸濁液
とした。
【0105】上記鉄含有沈澱物を含む懸濁液中に、引き
続き、N2 ガスを毎分50lの割合で吹き込みながら、
この懸濁液の温度を51℃とし、150分間維持攪拌し
た。
【0106】次いで、0.8mol/lのケイ酸ナトリ
ウム0.5l(第一鉄塩水溶液中のFe2+に対しSi換
算で2.0原子%に該当する。)を添加して5分間保持
した後、更に、0.8mol/lのアルミン酸ナトリウ
ム0.5l(第一鉄塩水溶液中のFe2+に対しAl換算
で2.0原子%に該当する。)を添加した。
【0107】続いて、当該懸濁液中に、温度52℃にお
いて毎分150lの空気を75分間通気して黄褐色沈澱
粒子を生成させた。尚、空気通気中におけるpH値は、
9.3〜9.5であった。
【0108】得られた黄褐色粒子粉末は、X線回折の結
果、ゲータイトであり、図1に示す電子顕微鏡写真(×
30000)から明らかな通り、軸比が1.0の粒状を
呈した粒子からなり、粒子径が0.005μm、幾何標
準偏差値σgが0.83と粒度分布に優れたものであっ
た。また、BET比表面積値が314m2 /gであり、
粒状ゲータイト微粒子粉末に含まれるSiは0.63重
量%、Alは0.60重量%であった。吸着容量は0.
12ppmであった。
【0109】実施例2〜4、比較例1〜4及び参考例1 第一鉄塩水溶液の濃度、炭酸アルカリ水溶液の種類、濃
度及び使用量、水酸化アルカリ水溶液の有無、種類、濃
度及び使用量、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対するアル
カリ比、反応濃度、反応容器の雰囲気(非酸化性雰囲気
の有無)、温度及び維持攪拌時間、水可溶性ケイ酸塩の
種類、添加量及び添加時期、水可溶性アルミニウム塩の
種類、添加量及び添加時期、水可溶性リン酸塩の種類、
添加量及び添加時期、酸化反応における空気通気量並び
に反応温度を種々変化させた以外は、実施例1と同様に
してゲータイト粒子を生成した。
【0110】この時の主要製造条件及び諸特性を表1乃
至表3に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】尚、実施例1の製造条件に対し、維持攪拌
処理を行わない比較例1は、図4に示す通り、BET比
表面積値が75m2 /gと小さい。水可溶性ケイ酸塩を
添加しない比較例2は、図5に示す通り紡錘状を呈した
粒子である。炭酸アルカリを添加する前に水可溶性ケイ
酸塩を添加した比較例3は、図6に示す通り、BET比
表面積値が135m2 /gと未だ小さいものである。ま
た、アルカリをアンモニウム塩とし、52℃で酸化反応
を行った比較例4は、図7に示す通り、粒状粒子と針状
粒子が混在したものであった。
【0115】<ヘマタイト粒子粉末の製造> 実施例5〜8、比較例5〜8及び参考例2;
【0116】実施例5 実施例1で得られた粒状ゲータイト微粒子粉末500g
を空気中400℃で加熱脱水し、更に、酸化性雰囲気下
で400℃で加熱処理して赤褐色粒子粉末を得た。
【0117】得られた赤褐色粒子粉末は、X線回折の結
果、ヘマタイトであり、図9に示す電子顕微鏡写真(×
30000)から明らかな通り、軸比が1.0のほぼ球
状を呈した粒状粒子からなり、粒子径が0.020μ
m、幾何標準偏差値σgが0.83と粒度分布に優れた
ものであった。また。BET比表面積値が130m2
gであった。吸着容量は0.75ppmであった。
【0118】実施例6〜8、比較例5〜8及び参考例2 被処理粒子粉末の種類、脱水温度並びに加熱温度を種々
変えた以外は、実施例5と同様にしてヘマタイト粒子を
得た。
【0119】この時の主要な製造条件及び諸特性を表4
に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
【発明の効果】本発明に係る粒状ゲータイト微粒子粉末
は、前出実施例に示した通り、BET比表面積値が大き
く、しかも、粒度分布に優れた粒状ゲータイト微粒子粉
末であり、該粒状ゲータイト微粒子粉末を用いた粒状酸
化鉄微粒子粉末も、前出実施例に示した通り、BET比
表面積値が大きく、しかも、粒度分布に優れた粒状酸化
鉄微粒子である。
【0122】従って、本発明に係る粒状ゲータイト微粒
子粉末や粒状酸化鉄微粒子粉末は、大気やガス中の硫黄
酸化物、硫化水素及び窒素酸化物等の吸着剤、脱臭剤と
して好適であり、また、各種触媒用の材料粉末、殊に、
廃水処理酸化触媒用の材料粉末としても好適である。
【0123】尚、本発明に係る粒状ゲータイト微粒子粉
末や粒状酸化鉄微粒子粉末は、樹脂と混練して樹脂成形
物とする場合やビヒクル中に混合分散して塗料とする場
合の分散性にも優れているので着色顔料用の粒状ゲータ
イト微粒子粉末や粒状酸化鉄微粒子粉末として好適であ
る。
【0124】また、樹脂中での分散性に優れているの
で、特開昭63−187418号公報、特開平4−16
7225号公報及び特開平5−182177号公報など
に開示されている磁気記録媒体用下地層の材料粉末とし
て用いた場合には、非常に優れた表面性を有する当該下
地層を形成できることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた粒状ゲータイト微粒子粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)で
ある。
【図2】 実施例2で得られた粒状ゲータイト微粒子粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)で
ある。
【図3】 実施例3で得られた粒状ゲータイト微粒子粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)で
ある。
【図4】 比較例1で得られた粒状ゲータイト粒子粉末
の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)であ
る。
【図5】 比較例2で得られた紡錘状ゲータイト粒子粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)で
ある。
【図6】 比較例3で得られた不定形のゲータイト粒子
粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)
である。
【図7】 比較例4で得られた粒状粒子と針状粒子の混
在した粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×3
0000)である。
【図8】 参考例1で得られた粒状ゲータイト粒子粉末
の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)であ
る。
【図9】 実施例5で得られた粒状ヘマタイト微粒子粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)で
ある。
【図10】 実施例7で得られた粒状ヘマタイト微粒子
粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×30000)
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 BET比表面積値が300〜350m2
    /gであって、粒状ゲータイト微粒子粉末中の全Feに
    対してSi換算で0.5〜5.0原子%のケイ素化合物
    を含有する粒状ゲータイト微粒子粉末。
  2. 【請求項2】 第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の
    Fe2+に対して1.0当量を越える量の炭酸アルカリ水
    溶液とを非酸化性雰囲気下で反応させて鉄含有沈澱物を
    含む懸濁液とし、この懸濁液を非酸化性雰囲気下におい
    て50〜65℃の温度範囲にて30〜360分間維持攪
    拌し、次いで、当該懸濁液に水可溶性ケイ酸塩を前記第
    一鉄塩水溶液中のFe2+に対してSi換算で0.5〜
    5.0原子%添加した後、50〜60℃の温度範囲にて
    液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことによ
    り粒状ゲータイト微粒子を生成させ、濾別、水洗、乾燥
    することを特徴とする請求項1記載の粒状ゲータイト微
    粒子粉末の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の粒状ゲータイト微粒子粉
    末の製造法において、水可溶性アルミニウム塩及び/又
    は水可溶性リン酸塩を、前記水可溶性ケイ酸塩を添加し
    た酸化反応前の懸濁液、酸化反応開始後から反応終了ま
    での間の反応液及び酸化反応終了後の反応液のいずれか
    の液中、又は、水洗後の粒状ゲータイト微粒子を水に懸
    濁させたスラリーに、1回又は2回以上に分割して添加
    することを特徴とする請求項1記載の粒状ゲータイト微
    粒子粉末の製造法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の粒状ゲータイト微粒子粉
    末を250〜500℃の温度範囲で加熱脱水するか、必
    要により、更に非酸化性雰囲気下又は酸化性雰囲気下、
    300〜800℃の温度範囲で加熱焼成することにより
    BET比表面積値が75〜150m2 /gの粒状ヘマタ
    イト微粒子粉末を得ることを特徴とする粒状酸化鉄微粒
    子粉末の製造法。
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