JPH085738B2 - 細径の非線形光学単結晶ファイバーの育成方法 - Google Patents

細径の非線形光学単結晶ファイバーの育成方法

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JPH085738B2
JPH085738B2 JP3068853A JP6885391A JPH085738B2 JP H085738 B2 JPH085738 B2 JP H085738B2 JP 3068853 A JP3068853 A JP 3068853A JP 6885391 A JP6885391 A JP 6885391A JP H085738 B2 JPH085738 B2 JP H085738B2
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紀男 大西
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工業技術院長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、単結晶ファイバーを
原料融液から育成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ファイバー導波路が光を閉じ込め、その
内部に高い光パワー密度を実現することから、光強度に
依存してその効果が発揮される非線形光学の分野で、材
料の単結晶ファイバー化に関心が集まっている。
【0003】非線形光学用途の単結晶ファイバーの育成
法としてレーザーペデスタル法とマイクロチョクラルス
キー法(大西:特願昭61-24763号、 特願昭61-24763号)
が公開されている。
【0004】しかし従来、金属やハロゲン化合物などの
ファイバーに関しては、ルツボに設けられた目的口径の
引き出し口やノズルなどから原料融液を引き出す基本的
な方法(以下、引き出し法と呼ぶ)が公知であった。
【0005】この方法は、図2に示すようにルツボ1内
の原料融液4を、その先端に種結晶5を設けた引き出し
用駆動軸8を用いて種結晶5で単結晶化させながら引き
出し単結晶ファイバーを製造するものであり、原料の形
態を選ばず、技術的にも簡単で利点の多い方法として注
目を集めている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】しかるに、この引き
出し法を非線形光学ファイバーの製作に適用するには、
要求されるファイバー径が100 ミクロン以下と細径で、
それを達成するための融液温度の制御などに非線形光学
ファイバーに特有の問題がある。
【0007】即ち現在有用とされている主な非線形光学
結晶は高融点の酸化物結晶が多く、その育成温度、育成
雰囲気で使用に耐え且つ微細に加工自在なルツボ用の金
属は得難い。しかも非線形光学結晶のほとんどは、リチ
ウム(Li)、ソジュウム(Na)、ポタシュウム
(K)など蒸発し易い元素を含む多元成分結晶である
が、蒸発は融液温度が高いほど激しく、この結果融液の
組成のずれにつながるため、非線形光学結晶の育成に適
する融液の温度幅は狭い。
【0008】引き出し法では、高周波加熱、抵抗加熱、
赤外線加熱などの加熱方式によってルツボ自体が加熱さ
れ、原料の融解やファイバー育成のための熱は全てルツ
ボ1の発熱で供給され、ファイバー育成時の温度制御は
ルツボ温度の制御によっている。
【0009】いま開口部分で理想的な固液界面6が形成
されファイバー7が定常的に成長している状態を考える
と[図3(a)]、熱的にルツボ近傍が最も高温である
から、ルツボ壁から遠い原料部分の温度は融点以下で固
体状態9にあり、ルツボに接した原料部分のみが融液状
態10にある。
【0010】この熱環境でファイバー7を育成すると、
ルツボ1に接した部分の融液状態にある原料10のみがフ
ァイバー育成で消費されるためルツボ1と未融解な原料
9の間に空間11が生じ、熱の伝達がそこで妨げられてそ
れ以上融解が進まず、融液供給が途絶えファイバー育成
が続行できないことになる[図3(b)]。
【0011】一方、ルツボ1に充填された全原料4が融
解する迄加熱された状態では、引き出し口2がルツボ壁
に設けられている関係上、引き出し口2での融液温度は
ファイバー育成に最適な固液界面を形成するには高過ぎ
ることになり、メルト切れが起り易くなったり、随意の
径が得られないなどの不都合が生じる。
【0012】したがって高融点結晶のファイバーを従来
の引き出し法で育成するには、引き出し口部分にパイプ
やノズルなどを付設して融液をより低温部へ導く工夫と
かファイバー育成速度を極端に遅くするなどの調節が必
要になり、育成技術そのものが難しくなってくる。
【0013】また、融液の温度が高い場合、図4に示す
ように引き出し口で滲み出た融液12がルツボ底13を濡ら
しながら広がる現象がしばしば起り、これによってファ
イバー径が変化するなど不都合な問題も起き易い。この
発明はこれらの問題点を解決するためになされたもので
ある。
【0014】
【問題点を解決するための手段】このためこの発明にお
いては図1に示すように、その先端に種結晶5を設けた
引き出し用駆動軸8を用いてルツボ1の一部に設けられ
た引き出し口2よりルツボ1内の原料融液4を、引き出
しつつ行なうファイバー育成方法において、ルツボ1の
一部に設けられた引き出し口2に挿通体3を突出させ、
一方原料融液4は挿通体3と引き出し口2との隙間から
滲出させ、挿通体3表面を伝わらせて種結晶5に導くと
ともに、種結晶5で結晶化させながら駆動軸8で引き出
すことにより単結晶ファイバーを育成する方法を提案す
るものである。
【0015】
【作用】即ち、この発明によれば、ルツボ温度の高い場
合には挿通体3の突出長さを長く、ルツボ温度が低い場
合には突出長さを短くするなどの選択により、挿通体先
端部で結晶条件を満たす固液界面6を形成することが可
能となる。
【0016】したがって、この発明では挿通体3先端部
の引き出し口2からの突出長さを調節することにより、
ルツボ温度の比較的広い範囲で単結晶ファイバーの最適
な結晶育成条件が実現できる。
【0017】また、この発明では原料融液4は引き出し
口2より突出した挿通体3表面を伝わって種結晶5に導
くようにしているため、固液界面の温度より充分高いル
ツボ温度が設定でき、原料融液4の十分な供給がなさ
れ、長尺なファイバーの育成が可能となると同時に、従
来法では引き出し口2の口径によって決められていたフ
ァイバー径がこの発明ではある程度自由に選択でき、細
径ファイバーの育成が容易になる。
【0018】
【実施例】以下、この発明を図示の実施例に基づいて説
明する。図5はこの発明の内容を実施する具体例を示
す。この実施例ではルツボとして通電加熱式ルツボ14を
使用し、原料の融解や融液温度を全てルツボの発熱量即
ち電流量で制御するようにしている。
【0019】ここで使用するルツボ14は8 ×4 ×0.1 mm
程度の白金板を折曲げてその両側を熔着して図5のよう
に加工し、これに電導線15を取り付けたもので、ルツボ
14の底部には直径約200〜400 ミクロンの融液引き出し
用の孔口を設ける。
【0020】挿通体3としては100 〜300 ミクロンの白
金線を用い、その一端をルツボ壁に固定し、他端を引き
出し口に挿通して突出部分が300 〜500 ミクロンになる
ように調節して切断した。
【0021】このように加工したルツボに、ニオブ酸リ
チウム(LiNbO3)やニオブ酸バリウム・ソジュウム(Ba2Na
Nb5O15) などの原料を充填した後、ルツボに直接通電し
て加熱する。原料が融解すると開口と挿通体の隙間から
融液が滲み出して挿通体の表面を濡らすので、この融液
を挿通体の先端において、種結晶を用いて引き下げつつ
ファイバー7を育成する。
【0022】図6は挿通体として中空パイプを用いた例
を示す。この場合、パイプ16は外径500 ミクロン、内径
約350 ミクロンで、前実施例と同様な手順によりファイ
バー育成を行なうが、融液が中空パイプ16の端面から中
空に引かれている所に固液界面6を設定することにより
中空な単結晶ファイバー17を育成することができる。
【0023】図7は挿通体として使用するその先端を二
分割したパイプ18を示すものであり、この種のパイプを
挿通体として用いることにより表面を伝う融液はパイプ
端において二手に分かれるため、これを前実施例と同様
に種結晶を用いて引き下げることにより同時に2本のフ
ァイバーを育成することができる。
【0024】なお、融液の表面張力の作用によって端面
形状に拘らずファイバー断面はほぼ円形となる。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば融
液引き出し口より挿通体を突出させ、その突出部分の長
さを調整することにより融液の形状や固液界面が制御で
き、ルツボ温度の幅広い範囲でファイバー育成条件を満
足させることができる。
【0026】また、この発明では融液を挿通体を伝わら
せて種結晶に導くようにしているため、育成ファイバー
の長尺化、細径化、均一化などが容易になる。
【0027】更に、この発明では挿通体の端部断面形状
を工夫することで中空ファイバーや複数ファイバーの同
時育成など、特殊なファイバー育成も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の原理を示す概略図
【図2】従来からの引き出し法の説明図
【図3】高温結晶ファイバーの育成時に起こる不都合を
説明する図で、図3(a)は引き出し操作を行う前の状
態を説明する図、図3(b)は引き出し操作を行った状
態を説明する図
【図4】高温でのファイバー径の変動の説明図
【図5】この発明の一実施例を示す図
【図6】この発明において中空ファイバーを育成するた
めの他の実施例を示す図
【図7】この発明において2本のファイバーを同時育成
する挿通体の先端形状図
【符号の説明】
1 ルツボ 2 引き出し口 3 挿通体 4 原料融液 5 種結晶 7 育成ファイバー 8 引き出し用の駆動軸 16 中空パイプ 17 育成された中空ファイバー 18 先端2分割パイプ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 その先端に種結晶を設けた引き出し用駆
    動軸を用いてルツボの底部に設けられた引き出し口より
    ルツボ内の高融点の原料融液を、引き出しつつ行う細径
    の非線形光学単結晶ファイバーの育成方法において、
    き出し用駆動軸の先端に設けられた種結晶をルツボの底
    部に設けられた引き出し口の下方に位置させると共に、
    挿通体の先端部を前記引き出し口から突出させ、一方原
    料融液は前記挿通体と引き出し口との隙間から滲出さ
    せ、且つ挿通体表面を伝わらせて前記種結晶に導き、該
    種結晶で結晶化させながら前記駆動軸で引き出すことを
    特徴とする細径の非線形光学単結晶ファイバーの育成方
  2. 【請求項2】 ルツボ内の温度に応じて引き出し口から
    の挿通体の突出長さを調節する請求項1記載の細径の非
    線形光学単結晶ファイバーの育成方法。
  3. 【請求項3】 挿通体として中空パイプを使用する請求
    項1項記載の細径の非線形光学単結晶ファイバーの育成
    方法。
  4. 【請求項4】 挿通体として先端の分割した中空パイプ
    を使用する請求項1項記載の細径の非線形光学単結晶フ
    ァイバーの育成方法。
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