JPH0854013A - Ｆｒｐ製座金とその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 反発力を強く持続し得るＦＲＰ製座金とその
製造方法を提供することにある。 【構成】 座金板７が１ピッチ以内で螺旋状を成し、少
なくとも螺旋方向に沿ったガラスフィラメント１の芯材
２と、該芯材２に含浸して固化した熱硬化性合成樹脂19
から形成され、且つ適宜肉厚ｔと適宜板幅ｈに形成され
ている。ＦＲＰ製座金の製造方法は、丸棒Ｐの外周にフ
ィラメント１を傾斜角度θで集合して巻付ける芯材２の
形成工程と、芯材２に合成樹脂液９を含浸する筒状素材
３の形成工程と、適宜硬化した筒状素材３の少なくとも
外周面に仕上げ加工する筒状母材４の形成工程と、筒状
母材４に螺旋切断６する螺旋体５の形成工程と、螺旋体
５を長手方向に沿って縦断８する座金板７の分離工程か
ら成る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、主に電気絶縁分野や
耐蝕分野、断熱分野、非磁性分野等に使用する繊維強化
合成樹脂製座金とその製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】繊維強化合成樹脂（グラスファイバーや
ＦＲＰとも称される。以下、ＦＲＰと称する）は、ガラ
ス繊維（ガラスフィラメント）やカーボン繊維（カーボ
ンフィラメント）、或いはアルミナ繊維（アルミナフィ
ラメント）等の組織に、エポキシ樹脂やビニールエステ
ル樹脂、或いはフェノール樹脂を含浸させたもので、電
気絶縁分野や耐蝕分野、断熱分野、非磁性分野等の、例
えばヘルメット、花壇用植木鉢、小型船舶、浴槽、浴室
等に広く使用されている。（例えば特開昭48-92912号公
報、特開昭52-101275 号公報）

【０００３】二物体を離脱不能に固定する手段として、
ボルトとナットによる固定が知られているが、そのボル
トとナットをＦＲＰにて形成したり、或いはボルト頭部
の下に敷く円形の座金（ワッシャーとも称する）もＦＲ
Ｐにて形成することが試みられている。ＦＲＰ製のボル
トとナットは、固定する二物体の一方、又は両方がＦＲ
Ｐにて形成されている場合に多く用いられているが、ナ
ットの安定と、緩み止めを兼ねた座金やバネ座金には、
依然として金属製の座金が使用されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】座金は肉厚が数mmから
mm以下の薄肉でドーナツ状、又は１ピッチ以内の螺旋状
を成すものであるから、これをＦＲＰで形成した場合、
反発力が弱く、しかも反発力の持続性も少なく、座金と
しての役目を保持し得ない問題点があった。そこでこの
発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてな
されたものであり、その目的とするところは、反発力を
強く持続し得るＦＲＰ製座金とその製造方法を提供する
ことにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のＦＲＰ製座金は、丸棒の外周にガラスフィ
ラメントを適宜傾斜角度で巻付ける芯材の形成工程と、
芯材に合成樹脂液を含浸する筒状素材の形成工程と、筒
状素材を適宜硬化する筒状母材の形成工程と、筒状母材
の外周面を仕上げ加工して螺旋切断する螺旋体の形成工
程と、螺旋体を長手方向に沿って縦断する座金板の分離
工程から製造され、座金板が１ピッチ以内で螺旋状を成
し、適宜肉厚と適宜板幅に形成され、螺旋方向にフィラ
メントを揃って埋設するものである。

【０００６】

【作用】ガラスフィラメントの芯材と、芯材に含浸する
合成樹脂液にて筒状母材を形成し、筒状母材を螺旋切断
して螺旋体に加工した後、螺旋体を縦断して座金板を得
るものであるから、一定寸法のＦＲＰ製座金を一度に多
量生産し得る。座金板の螺旋方向にフィラメントが揃っ
て埋設しているので、このフィラメントが弾力性の持続
に大きく貢献するものと推察される。

【０００７】

【実施例】次に、本発明によるＦＲＰ製座金とその製造
方法を図１と図４に基づき説明すれば、丸棒Ｐの外周に
フィラメント１を適宜傾斜角度θで巻付け、適宜厚さの
芯材２を形成する芯材形成工程と、芯材２に合成樹脂液
９を含浸する筒状素材３の形成工程と、筒状素材３を適
宜硬化するＦＲＰ製筒状母材４の形成工程と、筒状母材
４を仕上げ加工して螺旋切断６する螺旋体５の形成工程
と、螺旋体５を長手方向に平行して縦断８する座金板７
の分離工程から形成し、外径Ｒ、内径ｒ、座金板幅ｈ、
肉厚ｔのＦＲＰ製座金を得る。

【０００８】フィラメント１を巻付ける丸棒Ｐには、ボ
ルトＢのネジ径ｄより僅かに太い丸棒Ｐを用い、丸棒Ｐ
に巻付けるフィラメント１には、可能な限り細くて強
い、例えば５〜13μの極細ガラス繊維を分散しないよう
束にして、しかも螺旋体５と座金板７の傾斜角度θに合
わせて巻付け、図２の如く座金板７の螺旋に沿ってフィ
ラメント１が揃って埋設し得るようにすることが重要で
ある。ガラスフィラメント１の代わりに、例えばカーボ
ンフィラメントやアルミナフィラメントを用いることも
可能である。

【０００９】フィラメント１を集合した芯材２に含浸す
る合成樹脂液９として、例えば熱硬化性のエポキシ系樹
脂やビニール樹脂、エステル樹脂、或いはフェノール樹
脂等を用いる。芯材２に合成樹脂液９を含浸する手段と
して、例えば芯材２を真空含浸機に投入し、真空状態に
おいて合成樹脂液９を隅々まで含浸する。

【００１０】筒状素材３の形成手段として、丸棒Ｐの外
周にフィラメント１を巻付け、該フィラメント１に合成
樹脂液９を含浸した後、その外周にフィラメント１を更
に巻付け、これに合成樹脂液９を含浸し、座金板幅ｈよ
り僅かに肉厚の筒状素材３を形成することも可能であ
る。合成樹脂液９の含有率等は、筒状母材４の強度や性
質に影響を与えるが、本発明はこの点を省略する。

【００１１】ＦＲＰ製筒状母材４の加工手段は、例えば
筒状素材３を加熱し、芯材２に含浸する合成樹脂液９を
適宜硬化し、合成樹脂19と成すものである。筒状素材３
を割金型（図示せず）の内部に入れ、割金型を加熱しな
がら型締して圧縮すれば、仕上げ加工の少ないＦＲＰ製
筒状母材４を形成することも可能である。螺旋体５の加
工手段は、先ず丸棒Ｐを例えば工作機械の旋盤（図示せ
ず）に取付け、丸棒Ｐと一体の筒状母材４を一定速度で
回転し、筒状母材４の外周面4aを仕上げバイトの切削工
具Ａ1 で切削する。

【００１２】次いで仕上げ加工した筒状母材４を螺旋切
断６する。例えば旋盤に取付けて仕上げ加工した筒状母
材４を、そのまま一定速度で回転し、回転する筒状母材
４の外部より中心に向けて突切りバイトやネジ切りバイ
トの切削工具Ａ2 を一定の送り速度で切込み、ネジ加工
の如く切削する。丸棒Ｐより筒状母材４を抜取り、該筒
状母材４の両端部を旋盤に固定し、筒状母材４を一定速
度で回転し、筒状母材４に切削工具Ａ2 で螺旋切断６す
ることも可能である。

【００１３】螺旋体５を縦断８する座金板７の加工手段
は、例えば旋盤に取付けて加工した螺旋体５を停止状態
にし、丸棒Ｐの長手方向と平行にカッターＣを入れ、縦
断分離する。螺旋体５より縦断分離された座金板７の内
径ｒは、図３の如くボルトＢのネジ径ｄより僅かに大き
く、外径Ｒはボルト頭部径Ｄより僅かに小さく形成さ
れ、座金板幅ｈ＝外径Ｒ−内径ｒに、座金肉厚ｔは数mm
以下に形成される。筒状母材４に螺旋切断６を入れた
り、螺旋体５を縦断８する場合、筒状母材４が完全に硬
化しない前に行うことが望ましい。

【００１４】図５の芯材２は、丸棒Ｐの外周にフィラメ
ント１で形成した紐1A、又はテープ1Bを巻付けて形成し
たものである。芯材２の外周に紐1Aやテープ1Bを巻付け
る場合、螺旋体５の傾斜角度θ、即ち座金板７の螺旋に
合わせて巻付けることが望ましい。何ずれにしても、座
金板７の螺旋に沿ってフィラメント１が揃って埋設し、
そのフィラメント１が弾力の役目をすることが重要であ
る。

【００１５】芯材２は手で押さえた時、若干弾力性を持
つ程度に柔軟性があるようにし、即ち、芯材２に合成樹
脂液９を含浸する際、或いは筒状素材３を割金型にて圧
縮硬化する際に、フィラメント１が多少任意に移動し、
逃げ得る状態にしておく。螺旋体５の縦断８により分離
した各座金板７には、座金板７の螺旋方向にフィラメン
ト１が揃って埋設していて、このフィラメント１が弾性
の持続に大きく貢献するものと推察される。

【００１６】本発明によるＦＲＰ製座金は、芯材２のフ
ィラメント１を座金板７の傾斜角度θに沿って巻き付
け、座金板７の螺旋に沿って揃って埋設しているので、
座金板７の弾性力が長く持続し、引張強度の向上に貢献
する。フィラメント１の材質と、これに含浸させる合成
樹脂液９の材質、及び合成樹脂液９の含有率等は、座金
板７の強度や性質に影響を与えるが、本発明はこの点を
省略する。

【００１７】尚、本発明によるＦＲＰ製座金とその製造
方法は上記実施例に限定されるものではなく、例えば合
成樹脂液９の代わりに、合成樹脂粉を塗布したり含浸す
ることも可能であるし、座金板７を硬化炉に入れ、再度
硬化すれば、座金板７を更に強靭にし得る。また丸棒Ｐ
の代わりに筒体を用いることも可能であるし、丸棒Ｐよ
り筒状母材４を抜取り、該筒状母材４を旋盤に取付け、
内周面4bも中ぐりバイトＡ3 で仕上げ加工することも可
能である。

【００１８】

【発明の効果】本発明によるＦＲＰ製座金は上記構造の
とおりであるから、次に記載する効果を奏する。ガラス
フィラメントを座金の螺旋方向に巻付けて芯材を形成
し、その芯材に熱硬化性合成樹脂液を含浸させ、ボルト
径より僅かに大きい筒状素材を形成し、筒状素材を適宜
硬化してＦＲＰ製の筒状母材を形成した後、該筒状母材
に仕上げ加工して螺旋切断し、螺旋体に加工し、螺旋体
を縦断して座金板に分離するものであるから、一定寸法
のＦＲＰ製座金を一度に多量生産し得る。

【００１９】フィラメントを巻付ける丸棒の太さと、丸
棒の外周に巻付けるフィラメントの芯材厚さを選択する
ことにより、内外径の異なるＦＲＰ製座金を自由に形成
し得るし、フィラメントの巻付け傾斜角度と、螺旋切断
の傾斜角度を選択することにより、ＦＲＰ製座金のピッ
チ幅も調整し得る。座金がＦＲＰ製であっても、座金板
の螺旋方向にフィラメントが揃って埋設しているため、
このフィラメントが弾力性の持続に大きく貢献し、金属
座金と同様にナットの安定と、緩み止め効果を発揮す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）（Ｂ）本発明によるＦＲＰ製座金の正面
図と側面図である。

【図２】（Ａ）（Ｂ）その断面図である。

【図３】ボルトと座金の関係を示す側面図である。

【図４】（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）（Ｅ）本発明座金の
製造工程図である。

【図５】（Ａ）（Ｂ）芯材の形成例を示す側面図であ
る。

【図６】筒状母材の内面仕上げを示す一部切欠側面図で
ある。

【図７】螺旋体の形成例を示す側面図である。

【符号の説明】

１ フィラメント、1A テープ、1B 紐 ２ 芯材 ３ 筒状素材 ４ 筒状母材 ５ 螺旋体 ６ 螺旋切断 ７ 座金板 ８ 縦断 ９ 合成樹脂液、19 合成樹脂 ｔ 座金の肉厚、ｈ 座金の板幅 Ｒ 座金板の外径、ｒ 座金板の内径 θ 座金傾斜角度 Ａ1,Ａ2,Ａ3 切削工具、Ｃ カッター、Ｐ 丸棒

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田島 勲 大阪府大阪市西区新町１丁目６番22号 双 和化成株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 座金板（７）が適宜肉厚（ｔ）と適宜板
   幅（ｈ）を有して１ピッチ以内で螺旋状を成し、少なく
   とも螺旋方向に沿ったフィラメント（１）の芯材（２）
   と、該芯材（２）に含浸して固化した合成樹脂（19）か
   ら形成されているＦＲＰ製座金。
2. 【請求項２】 座金板（７）を構成する合成樹脂（19）
   が熱硬化性合成樹脂液（９）の固化物であり、フィラメ
   ント（１）がガラス繊維である請求項１記載のＦＲＰ製
   座金。
3. 【請求項３】 丸棒（Ｐ）の外周にフィラメント（１）
   を傾斜角度（θ）で巻付ける芯材（２）の形成工程と、
   該芯材（２）に合成樹脂液（９）を含浸する筒状素材
   （３）の形成工程と、筒状素材（３）を適宜硬化するＦ
   ＲＰ製筒状母材（４）の形成工程と、筒状母材（４）の
   少なくとも外周面を仕上げ加工して螺旋切断（６）する
   螺旋体（５）の形成工程と、螺旋体（５）を長手方向に
   沿って縦断（８）する座金板（７）の分離工程から成る
   ＦＲＰ製座金の製造方法。