JPH0853747A - 硬質粒子分散型耐摩耗被膜の形成方法 - Google Patents

硬質粒子分散型耐摩耗被膜の形成方法

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JPH0853747A
JPH0853747A JP6085873A JP8587394A JPH0853747A JP H0853747 A JPH0853747 A JP H0853747A JP 6085873 A JP6085873 A JP 6085873A JP 8587394 A JP8587394 A JP 8587394A JP H0853747 A JPH0853747 A JP H0853747A
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Hirofumi Shimura
村 洋 文 志
Shinya Sasaki
信 也 佐々木
Kazuyoshi Kurosawa
沢 一 吉 黒
Takanobu Hashimoto
本 孝 信 橋
Yuichi Yashiro
城 勇 一 八
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Nachi Fujikoshi Corp
Nihon Parkerizing Co Ltd
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Hitachi Seiki Co Ltd
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Nachi Fujikoshi Corp
Nihon Parkerizing Co Ltd
Hitachi Seiki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 硬質粒子分散型耐摩耗性被膜を溶射法を用い
て形成するに際し、炭化物系硬質粒子の熱分解を可及的
に抑制して耐摩耗性を高める方法を提供する。 【構成】 母材表面に、表面をNiまたはCoで被覆し
たSiCまたはWCの粒子を、減圧プラズマ溶射あるい
はレーザ照射を併用したレーザ・プラズマハイブリッド
溶射し、溶射被膜中における炭化物系硬質粒子含有量を
増大させて硬質粒子分散型耐摩耗被膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】回転部あるいは摺動部を有する機
械、装置、例えば、すべり軸受やピストン−シリンダな
どのような回転部や摺動部を有する機械、装置では、そ
の接触部の摩擦摩耗が大きな問題となる。本発明は、各
種機械、装置における摺動部の表面層部材として利用さ
れ、特に母材と被膜の高い密着性が要求され、かつ高い
耐摩耗性、低摩擦係数が要求されるところで利用するた
めの硬質粒子分散型耐摩耗被膜を形成する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】すべり軸受やピストン−シリンダなどの
回転部や摺動部における摩擦摩耗を改善するためには、
通常、液体潤滑剤(オイル、グリース)や固体潤滑剤
(BN,MoS2 ,WS2 )が適宜使用されているが、
表面層(膜)そのものの耐摩耗性や潤滑性が不足してい
ると、当然その使用寿命は短くなってくる。そのため、
回転部や摺動部の表面には、従来より電気メッキや化学
メッキでSiCやB4 Cの分散メッキも行われている
が、湿式メッキであり、有害薬品の使用、廃液処理など
に問題がある。また、CVD、PVDによるTiC、T
iNのコーティング膜は、耐摩耗性が高く、摩擦係数も
小さくて優れているが、設備、方法上の制約により、そ
の膜厚は数μmから厚くても数十μmと薄いため、被膜
強度が低くて取扱いが難しいという問題がある。
【0003】一方、最近では、WC硬質粒子を共析させ
た被膜をめっき法や溶射法で母材表面に形成させ、耐摩
耗性や摺動性を改善する表面処理技術が注目されてい
る。また、耐摩耗性向上のため、減圧プラズマ溶射やレ
ーザ・プラズマハイブリッド溶射等により、ニッケル
(Ni)やトライステル(TS−3)のマトリックス中
にSiCやAl23 、Si34 、WC等の硬質粒子
を共析させる方法の開発も行われ、これら硬質粒子を被
膜中に共析させ得ることも確認されている。しかし、一
般に、炭化物系硬質粒子(SiC、WC)を共析させた
被膜は、耐摩耗性に優れた性能を示すことになるが、特
に、レーザ照射を併用したレーザ・プラズマハイブリッ
ド溶射法を適用すると、それらの炭化物系硬質粒子が熱
分解してしまい、被膜中の共析量は1〜2%程度とな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の技術的課題
は、回転、摺動部の表面層に形成する硬質粒子分散型耐
摩耗性被膜を、厚膜で密着性に優れ、かつ高強度表面層
を形成するのに適した溶射法を用いて形成するに際し、
上記炭化物系硬質粒子の熱分解を可及的に抑制して耐摩
耗性を高め得るようにした被膜を形成する方法を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段、作用】上記課題を解決す
るための本発明の硬質粒子分散型耐摩耗被膜の形成方法
は、母材表面に、溶射用原料粉末である炭化物系硬質粒
子表面をNiまたはCoで被覆して、減圧プラズマ溶射
あるいはレーザ照射を併用したレーザ・プラズマハイブ
リッド溶射を行い、溶射被膜中における炭化物系硬質粒
子含有量を増大させることを特徴とするもので、上記炭
化物系硬質粒子としては、SiCまたはWCの粒子を好
適に用いることができる。また、上記方法においては、
減圧プラズマ溶射あるいはレーザ照射を併用したレーザ
・プラズマハイブリッド溶射により母材上にTiをアン
ダーコートし、溶射被膜の母材との密着性を高めること
ができる。
【0006】更に具体的に説明すると、本発明において
は、WC等の炭化物系硬質粒子の減圧プラズマ溶射ある
いはレーザ・プラズマハイブリッド溶射に際し、溶射被
膜中の炭化物系硬質粒子の含有量を増大させるため、そ
の硬質粒子表面を予めNiまたはCoで被覆し、それに
よって、プラズマアーク中を飛行する間に発生する炭化
物系硬質粒子の熱分解を阻止し、炭化物系硬質粒子のま
ま被処理物表面に到達させる。
【0007】即ち、溶射用粉末が溶射装置の特に溶射ガ
ンを通過する際、粉末を運搬するキャリアガス(主とし
てAr)が溶射ガンに負荷された電圧により放電し、W
C等の粉末が溶射ガンを通過する瞬間のわずかな時間に
急速に高温に加熱される。その放電中心に於ける温度は
数千度から約1万度と言われ、大部分の供給粉末は溶け
てしまうことになる。そのため、炭化物系硬質粒子がよ
ほど大粒であるか、何らかの処置が施されていないと、
溶融あるいは熱分解により炭化物系硬質粒子の特徴をと
どめなくなる。しかるに、本発明においては、上記炭化
物系硬質粒子の表面をNiまたはCoで被覆しているの
で、上記加熱により表面のNi、Coが溶融・軟化して
も、内部のWC粒子等の溶融・分解を防ぐことができ、
このことは、以下に示す実験例において確認されてい
る。
【0008】また、本発明においては、上記炭化物系硬
質粒子の溶射被膜と母材との密着性を改善するため、減
圧プラズマ溶射あるいはレーザ・プラズマハイブリッド
溶射によりTiを母材にアンダーコートし、拡散層を形
成することができる。このアンダーコートが密着性の改
善に有効であることも、以下に示す実験例において確認
されている。
【0009】このようにして形成された表面被膜は、以
下に説明する摩擦試験において耐摩耗性が極めて大き
く、摩擦係数も、通常使用される焼き入れ、焼き戻し済
みの構造用鋼と同様の0.1程度になるなど、優れた表
面特性を示し、しかも溶射法により厚膜で密着性に優
れ、かつ高強度な表面層を形成し、回転、摺動部材の寿
命を向上させることができる。なお、上記NiまたはC
o被覆する炭化物系硬質粒子としては、WCばかりでな
く、SiC、B4 C、TiCのような炭化物を用いるこ
ともできる。
【0010】
【実施例】
(1)被膜形成方法 0.1Torr以下まで排気した真空チャンバー内に試
験片をセットした後、チャンバー内を50Torrのア
ルゴン雰囲気とし、ロボットアームに取付けた試験片母
材(SS41)を揺動させながら被膜を形成させた。被
膜は、減圧プラズマ溶射のみ、レーザ・プラズマハイブ
リッド溶射、減圧プラズマ溶射後にレーザ照射の3通り
の方法で形成した。これらの3通りの被膜形成方法の概
略をそれぞれ図1の(A)〜(C)に示す。なお、被膜
厚さとしては200〜300μmを目標とした。
【0011】(2)被膜形成条件 試験片を予熱後、その表面にTiやNiCoCrAlY
のアンダーコートを施し、減圧プラズマ溶射法等の上記
3通りの方法により、Ni被覆したWC粒子の共析被膜
を形成した。被膜形成条件をまとめて表1に、試料作製
条件を表2に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】(3)断面組織及び断面硬度測定結果 表2に示した試料において、TiやNiCoCrAlY
等のアンダーコートを用いずに、SS41材に直接溶射
した場合には、被膜厚150μm程度(08−01)で
は被膜剥離を生じなかったが、膜厚が300μm程度
(08−02)になると被膜応力により剥離を生じた。
WC粒子共析被膜の密着性を向上させる目的で使用した
アンダーコートについては、NiCoCrAlYを用い
た場合(08−03)は効果が認められなかったが、T
iの場合(08−05、08−06)には被膜密着性の
向上効果が確認された。
【0015】また、減圧プラズマ溶射と同時にレーザ照
射するレーザ・プラズマハイブリッド溶射で形成した被
膜(09−01、09−02、09−05)は、300
μm程度の厚膜でも被膜剥離は生じなかった。さらに、
減圧プラズマ溶射後レーザ照射した場合(09−04)
も被膜剥離は生じなかった。なお、試験片08−04と
試験片09−03では、プラズマ炎が安定しなかった。
さらに、断面組織写真により、いずれの処理条件におい
ても、形成した被膜中には多くのWC粒子が確認でき、
Niで被覆したWC粒子を用いて溶射することにより、
大量のWC粒子を被膜中に共析させることが可能である
ことが確認できた。
【0016】図2、図3には、WC粒子共析被膜の断面
硬度測定結果を示す。いずれの被膜も、マイクロビッカ
ース硬度は900〜1200となり、WC粒子共析の効
果が現れている。この図2および図3によるマイクロビ
ッカース硬度上昇や、断面組織写真による観察から、最
低でも40〜50vol%程度のWC粒子共析量がある
ものと考えられる。
【0017】(4)被膜断面のEPMA元素分析結果 Ni被覆WC系被膜形成において、WCの分解に伴うW
Ni4 等の金属間化合物の被膜中での析出、およびSS
41素材とアンダーコートTi、アンダーコートTiと
WC粒子共析被膜の密着性の向上理由を調べるために、
EPMAとX線回折による測定を行った。08−06
(減圧プラズマ溶射)、09−02(レーザ・プラズマ
ハイブリッド溶射)、09−04(減圧プラズマ溶射後
レーザ照射)の被膜の線状元素分析結果(測定元素:F
e,Ni,Ti,W)を図4の(A)〜(C)に示す。
【0018】これらの被膜は、全てTiのアンダーコー
トを施しているが、減圧プラズマ溶射被膜では、Fe、
Ni、Ti等の元素が拡散している痕跡はほとんど確認
できない。それに対し、レーザ・プラズマハイブリッド
溶射被膜では、Fe、Ti、Ni元素がそれぞれ拡散し
ているのが確認できた。特に、TiのSS41素材中へ
の拡散が大きい。レーザ照射を併用することにより、素
材/被膜界面にFe−Ti系合金や金属間化合物が、T
i/Ni界面にはTi−Ni系合金や金属間化合物が形
成され、被膜密着性が向上していると考えられる。
【0019】一方、減圧プラズマ溶射後レーザ照射した
被膜では、Fe、Ti、Ni元素は各々拡散している
が、レーザ・プラズマハイブリッド溶射被膜ほど大きな
拡散は生じていない。特に、SS41素材とTi被膜間
のFeとTi元素の拡散がほとんど確認できない。これ
は、レーザ照射エネルギーが200〜300μmの被膜
によりほとんど吸収され、SS41素材界面に合金層を
形成させるだけのエネルギーが達しなかったためと考え
られる。
【0020】(5)被膜のX線回折測定結果 前記3通りの方法で形成した被膜およびNi被覆WC溶
射粉のX線回折測定の結果は、どの被膜においても、高
信頼係数で確認される物質は、WC、CおよびNi2.9
Cr0.7 Fe0.36だけであった。NiはNi被覆WC粒
子粉(溶射原料粉)のX線回折測定結果からは確認でき
るものの被膜では確認されなかった。 (X線回折測定条件) 装置:理学電機(株)製 RINT1400 管球:Cu サンプリング角度:0.0
20° 電圧:40kV スキャン速度 :4.0
0°/m 電流:200mA
【0021】次に、被膜中のWC粒子の共析量を調べる
ため、溶射原料粉末であるNi被覆したWC粒子を標準
試料とし、それとのX線回折ピークの強度比較で算定
し、結果を表3に示した。この方法では、非常に大ざっ
ぱな結果しか得られないが、溶射被膜の内の08−02
と08−03の測定結果で、共析率が100%を越えて
いる。これは、減圧プラズマ溶射中にNiが蒸発し、相
対的にWC比率が増えた結果、100%を越える残存量
値となったものと考えられる。WC粒子共析率は08−
05で75%、08−06で60%であった。また、レ
ーザ・プラズマハイブリッド溶射では35〜137%、
減圧プラズマ溶射後レーザ照射では80〜89%となっ
た。
【0022】
【表3】
【0023】通常行われているWC−Ni粉末混合原料
の溶射被膜中での測定結果では、ハイブリッド溶射被膜
の場合のWC粒子共析率は1〜2%程度であったが、本
発明におけるハイブリッド溶射被膜での共析率は、35
〜137%と上昇し、本発明で形成した皮膜中には多量
のWCが共析していることが分かる。また、これらの結
果は断面組織観察やEPMAによる元素マップ分析結果
とも対応した結果となっている。
【0024】(6)往復摺動摩擦摩耗試験結果 使用した試験機の概略図を図5に、試験条件を表4に示
す。形成した被膜と共に、比較例として、減圧プラズマ
溶射Ni被膜(素材SS41)、高周波焼入れ材(素材
S45C)についても試験した。試験面は研磨紙並びに
ダイヤモンド砥石で表面粗度を整えて試験に供した。な
お、減圧プラズマ溶射後レーザ照射した被膜は、研磨中
に被膜剥離してしまい、摩耗試験ができなかった。
【0025】
【表4】
【0026】図5に示す試験機は、往復駆動装置1によ
って往復摺動される試料ホルダ2に試験片Tを取付け、
この試験片Tに、球ホルダ3により保持した相手材とし
ての球(5/16 inch )4を押しつけて試験を行うも
のである。なお、図中5は圧力センサである。摩擦試験
相手材の球としては、SUJ2(焼入れ)、SUS44
0Cタフトライド処理、Si34 (焼結)の3種類の
材料を用いた。これら摩耗試験の組合せを表5に示し
た。
【0027】
【表5】
【0028】(6)−1.摺動摩擦係数 [組合せA]相手材がSUJ−2(HRc62)の場合
の摩擦係数測定結果を図6に示す。摺動摩擦係数は、減
圧プラズマ溶射で形成したWC粒子共析被膜の場合が、
μ=0.11〜0.12であり、ハイブリッド溶射で形
成したWC粒子共析被膜の場合が、μ=0.12〜0.
13となった。また、比較例では、Ni溶射被膜がμ=
0.11程度、高周波焼入れ材(素材S45C)がμ=
0.09程度となった。SiC分散共析Niめっき被膜
との組合せがそうであるように、もっと硬い相手材、例
えば窒化処理SUS球や硬質クロムめっき球を用いて試
験すれば、より低い摩擦係数が得られると考えられる。
また、摩耗試験片の仕上げを研磨紙で行ったが、共析し
ているWC粒子が非常に硬いのでフラットな面が得られ
なかったことも、S45C高周波焼入れ材と比較して摩
擦係数が高くなった原因であろう。
【0029】[組合せB]SUS440Cタフト処理球
との組合せで測定した摩耗試験結果を、図7に示す。試
験片摺動面の仕上げを良くし、相手球としてSUJ2よ
り硬いSUS440Cタフト材を用いると、摺動摩擦係
数はμ=0.09程度となり、S45C高周波焼入れ材
と同等となるものもあった(08−02,09−0
5)。しかし、08−06では試験中にかじりが発生
し、09−02では初期の摩擦係数が高くなった。Ni
の多い軟らかい面で試験すると、摩擦係数が高くなった
りかじりが発生し、WC粒子の多い面で試験すると、優
れた摺動性能が得られたと考えられる。
【0030】[組合せC]Si34 球との組合せで測
定した摩耗試験結果を図12に示す。WC共析被膜とS
34 球との組合せでは、S45C高周波焼入れ材の
摺動性能に匹敵する性能は得られなかった。硬質セラミ
ック同士の組合せでは優れた摺動性能は得られない。
【0031】(6)−2.被膜の摩耗量 被膜の摩耗量は、表面粗度計にて摩耗痕の断面曲線を測
定し、摩耗体積を計算した。[組合せA]では、Ni溶
射被膜以外の被膜は摩耗痕があまりにも小さく、測定不
可能であった。なお、Ni溶射被膜の摩耗量は0.4m
3 であった。[組合せB]では、全て摩耗痕が小さく
て測定不可能であった。[組合せC]では、08−06
の試料で0.023mm3 、09−02の試料で0.0
18mm3 、09−05の試料で0.066mm3 とな
った。なお、[組合せC]においてのみ、WC粒子共析
被膜に摩耗痕が測定できる程度の摩耗が観察された。
【0032】(6)−3.相手球の摩耗量 SUJ2球の摩耗量(V)は、光学顕微鏡で摩耗痕直径
を測定し、次式により計算して求めた。結果を表6に示
す。 V=πd4 /64r ここで、dは摩耗痕直径、rは球半径である。
【0033】
【表6】
【0034】WC粒子共析被膜と組み合わせた相手球の
摩耗は、摺動摩擦係数が低い場合に少なく、高い場合に
多い結果となった。また、硬質材同士の組合せにおいて
は、摺動面の仕上げを良くするほど、摺動性に対しても
相手摩耗量に対しても有利である結果となった。ただ
し、S45C高周波焼入れ材と比較すると、いずれの被
膜も相手攻撃性が大きかった。
【0035】以上の試験結果から、Niで被覆せずにた
だ単に硬質粒子を混合した粉末を溶射した場合、溶射被
膜中に残存する硬質粒子の量は、溶射用原料粉末に配合
した硬質粒子の量の1〜2%の量まで減少したのに対
し、Niで被覆した硬質粒子を溶射用原料粉末とした場
合、溶射被膜中に残存する硬質粒子の比率は極めて高い
ものになった。また、このようにNiで被覆し溶射した
被膜は硬質粒子を多く含有し、被膜の摩耗量は極めて少
なく、高い耐摩耗性と小さな摩擦係数を示すようにする
ことができた。
【0036】
【発明の効果】以上に詳述した本発明の方法によれば、
回転、摺動部の表面層に形成する硬質粒子分散型耐摩耗
性被膜を、厚膜で密着性に優れ、かつ高強度表面層を形
成するのに適した溶射法を用いて形成するに際し、炭化
物系硬質粒子の熱分解を可及的に抑制して耐摩耗性を高
めることができる。更に具体的には、本発明に基づい
て、WC等の炭化物系硬質粒子の表面をNiまたはCo
で被覆して溶射することにより、そのWC等が溶射中に
熱分解せず、被膜中に多量の硬質粒子を共析させること
が可能となり、そのようにして形成した低い摩擦係数で
高い耐摩耗性の被膜を回転、摺動部に適用することによ
り、機械、装置の寿命向上を測ることができる。
【0037】また、減圧プラズマ溶射またはレーザ・プ
ラズマハイブリッド溶射法を用いることにより、減圧プ
ラズマ溶射後レーザ照射する方法などと比較して、被膜
密着性に優れた耐摩耗性被膜を形成させることができ
る。さらに、母材上に減圧プラズマ溶射またはレーザ・
プラズマハイブリッド溶射でTiのアンダーコートを行
うことにより、溶射被膜の被膜密着性をさらに向上させ
ることができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)(B)は本発明の被膜形成方法を、
(C)は比較例の被膜形成方法を示す説明図である。
【図2】減圧プラズマ溶射によって得られた本発明に基
づく被膜の断面硬度分布を示すグラフである。
【図3】レーザ・プラズマハイブリッド溶射によって得
られた本発明に基づく被膜の断面硬度分布を示すグラフ
である。
【図4】(A)(B)は本発明に基づく被膜の、(C)
は比較例についてのEPMA線分析結果を示すグラフで
ある。
【図5】摺動摩擦試験装置の概略的構成を示す説明図で
ある。
【図6】表5中の[組合せA]の場合の摺動摩擦試験結
果を示すグラフである。
【図7】表5中の[組合せB]の場合の摺動摩擦試験結
果を示すグラフである。
【図8】表5中の[組合せC]の場合の摺動摩擦試験結
果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (74)上記3名の代理人 弁理士 林 宏 (外2名) (72)発明者 志 村 洋 文 茨城県つくば市並木1丁目2番地 工業技 術院機械技術研究所内 (72)発明者 佐々木 信 也 茨城県つくば市並木1丁目2番地 工業技 術院機械技術研究所内 (72)発明者 黒 沢 一 吉 神奈川県平塚市大神2784 日本パーカライ ジング株式会社総合技術研究所内 (72)発明者 橋 本 孝 信 富山県富山市中田南2−26 株式会社不二 越内 (72)発明者 八 城 勇 一 千葉県我孫子市我孫子1 日立精機株式会 社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】母材表面に、溶射用原料粉末である炭化物
    系硬質粒子表面をNiまたはCoで被覆して、減圧プラ
    ズマ溶射あるいはレーザ照射を併用したレーザ・プラズ
    マハイブリッド溶射を行い、溶射被膜中における炭化物
    系硬質粒子含有量を増大させることを特徴とする硬質粒
    子分散型耐摩耗被膜の形成方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の硬質粒子分散型耐摩耗被
    膜の形成方法において、炭化物系硬質粒子として、Si
    CまたはWCの粒子を用いることを特徴とする硬質粒子
    分散型耐摩耗被膜の形成方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の硬質粒子分散型
    耐摩耗被膜の形成方法において、減圧プラズマ溶射ある
    いはレーザ照射を併用したレーザ・プラズマハイブリッ
    ド溶射により母材上にTiをアンダーコートし、溶射被
    膜の母材との密着性を高めることを特徴とする硬質粒子
    分散型耐摩耗被膜の形成方法。
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