【発明の詳細な説明】
床材
発明の背景
1.発明の分野
本発明は弾性床材に関し、詳細にはシートまたはタイルの状態での弾性床材に
関する。
2.関連技術の説明
床材はEncyclopedia of Polymer Science and Engineering,Volume 7(Wiley-I
nterscience,1987)のp233に“FloorMaterials”という題の論文で記載されてい
る。床材はUllman'sEncyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Publishers,
Volume All(1988),p263にも“Floor Materials”という題の論文で記載されて
いる。
ビニルシートおよびビニルタイル弾性床材はよく知られており、そしてかなり
の商業的成功を享受してきた。この床材はビニルクロリドのホモポリマーまたは
コポリマー、例えば、ビニルクロリド/ビニルアセテートコポリマーをベースと
するものである。ホモポリマーおよびコポリマーは、両方ともPVC樹脂またはPVC
ポリマーと一般に呼ばれている。PVC樹脂を含む組成物は一般にPVC組成物または
単にPVCと呼ばれる。PVC Technology,ed.W.V.Titow,Elsevier Applied Scien
ce Publishers,4th Edition(1984)はPVCの製造、特性および使用、並びにPVC組
成物中に使用される可塑剤のような材料の特性を記載している。PVC組成物中の
様々な成分の量は、一般に、全組成物に対する重量百分率としてまたはPVC樹脂1
00重量部当たりの重量部(phr)として表記される。殆どまたは全
く可塑剤を含まないPVC組成物(例えば、約2重量%以下)は比較的に剛性で、
脆く、そして一般には硬質PVC、無可塑PVCまたはUPVCと呼ばれる。比較的に多量
の可塑剤を含むPVC組成物(例えば、約10〜40重量%、即ち、約10〜50phr)は、UP
VCより柔軟であり、低い弾性率を有し、そして一般に軟質PVC、可塑化PVCまたは
PPVCと呼ばれる。硬質PVCおよび軟質PVCは、大きく異なる特性、技術および最終
用途を有する材料である。PVCポリマーおよび塩素を含む他のポリマーの製造お
よび使用に対して環境上の反対意見が上がっている。このようなポリマーを、よ
り少量の塩素を含むまたは好ましくは塩素を全く含まないポリマーにより代替す
ることが望ましい。
ビニルシートおよびビニルタイル床材は軟質PVCをベースとする。ビニルシー
トおよびビニルタイル床材は通常、特定数の層またはフィルムから作られた複合
材料であり、各層は特定の役割を担うように特別に配合されている。最上層は、
一般に摩耗層と呼ばれており、良好な耐摩耗性を有するように配合されている。
構造体の1つの一般的な形態において、摩耗層は、下層の色およびパターンがそ
れを通して見えるように透明であり、そしてその為、透明摩耗層と呼ばれること
ができる。
英国特許出願公開第1517428号は内部可塑化されたビニルクロリドコポリマー
を記載しており、それは追加の可塑剤なしにビニル床の製造に使用されうる。こ
のコポリマーは、ビニルクロリド45〜80重量部、C2-C10アルキルアクリレート15
〜54重量部およびC8-C22ジアルキルマレエート若しくはフマレート1〜15重量部
の付加重合により製造される。
欧州特許出願公開第342562号はPVC床材、特にテキスチャード加工された床材
の連続コーティングのためのポリアクリレートプラス
ティゾルの使用を記載している。このプラスティゾルは乳化重合体および懸濁重
合体の90〜30:10〜70の混合物とともに50〜200phrの可塑剤を含む。このような
プラスティゾルの使用は「乾燥表面」を有するコーティングを提供し、且つ、易
動性の可塑剤によるPVC支持体の破壊を防ぐと言われている。
米国特許第4,110,296 号はアクリルターポリマーおよび難燃剤を含む難燃組成
物を記載しており、それは床タイルのトップコーティングとして使用されうる。
このターポリマーはC1-C16アルキルアクリレートまたはメタクリレート20〜60重
量部、アクリロニトリルまたはその誘導体10〜40重量部およびハロゲン化オレフ
ィンモノマー、例えば、ビニリデンクロリドまたはペンタクロロエチルメタクリ
レート20〜70重量部の付加重合により製造される。難燃剤は通常、ターポリマー
の可塑剤、例えば、トリオルガノホスフェートである。
アクリル酸およびメタクリル酸エステルポリマーの製造、特性および使用はEn
cyclopedia of Polymer Science and Engineering,Volume l(Wiley-Interscienc
e,1985)のp234に“Acrylic and Metacrylic Ester Polymers”という題の論文
で記載されている。このようなポリマーは、一般に、アクリル酸エステルポリマ
ーまたはアクリレートポリマーと呼ばれることができる。
様々なポリマー物質は、Plastics Additives Handbook,edd.R.Gachterおよび
H.Muller,3rd Edition(Hanser Pub1ishers,1990),Chapter 7および8に記載さ
れているように、硬質PVC組成物に加工助剤として加えられ、またはこのような
組成物の靭性を改良する耐衝撃性改良剤として加えられてきた。既知のポリマー
加工助剤および耐衝撃性改良剤は、アクリル酸エステルポリマー(一般にアクリ
ル改良剤と呼ばれ、そしてアクリレートエステルポリマー
としても知られている)、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸エチル若し
くはブチルとのコポリマーを含み、それは硬質PVC組成物に良好な耐光性および
耐候性をも付与する。
本発明の要旨
本発明は、床材の摩耗層がアクリル酸エステルポリマーおよび可塑剤を含む軟
質組成物からなる弾性床材を提供し、ここで、床材は本質的に塩素または臭素を
含まないことを特徴とする。この軟質組成物は可塑化アクリル酸エステル組成物
と呼ばれることができる。
アクリル酸エステルポリマーは熱可塑性ポリマーであり、そして、一般には少
なくとも50℃、しばしば80℃のガラス転移温度を有する。アクリル酸エステルポ
リマーは、アルキル基が好ましくはC1-C16アルキル基であるアクリル酸アルキル
またはメタクリル酸アルキルを少なくとも50重量%含んだ1種以上のオレフィン
系モノマーの付加重合体である。好ましいモノマー混合物は、アクリル酸アルキ
ルまたはメタクリル酸アルキルを75〜90重量%含むか、または、本質的にアクリ
ル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルのみからなっていてよい。モノマーの
1つの好ましい例は、メタクリル酸メチルであり、それは高いTgのポリマーを提
供するように作用するが、一般にはポリ(メタクリル酸メチル)はポリマーが硬
質になりすぎるので本発明の床材において満足に使用することができない。他の
好ましいモノマーの例はアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸
2-エチルヘキシルを含み、それらはより低いTgで、より軟質および柔軟性のポリ
マーを提供するように作用する。このポリマーは、一般に、少なくとも2種、好
ましくは2種または3種のこのようなアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸ア
ルキルを含む。好ましいポリマーはメタクリル酸メチルと、C1-C16アルキル基を
有する1種以上のアクリル酸アルキルとのコポリマーである。アクリル酸エステ
ルポリマーは低い比率で他のオレフィン系モノマー、例えば、スチレンおよびア
クリロニトリルを含んでもよい。ビニルクロリドおよびビニリデンクロリドのよ
うな塩素-および臭素含有モノマーの使用は一般に好ましくなく、そして好まし
くは、アクリル酸エステルポリマーは本質的に塩素または臭素を含まない。1種
以上のアクリル酸エステルポリマーのブレンドは使用されてよい。
軟質組成物は、一般に100部のアクリル酸エステルポリマー当たりに25〜65部
の可塑剤(25〜65phr)を含み、好ましくは35〜55phr、より好ましくは40〜50phr)
更に好ましくは約45phrの可塑剤を含む。余りにも少量の可塑剤を含む組成物は
一般に、不満足な耐引掻性を示すことが判った。余りに多量の可塑剤を含む組成
物は、一般に、軟質すぎ、そしてプラスティゾルの特性に近い特性を有すること
が判った。
軟質組成物における使用に適切な1つのクラスの可塑剤はPVC技術でモノマー
可塑剤または単純エステル可塑剤として知られている材料からなる。これらの材
料は高沸点を有する有機酸エステルであり、そして殆どの場合、それらは300〜5
00の範囲の分子量を有する。本発明における使用に適切な単純エステル可塑剤の
例はフタル酸ジエステル、燐酸エステル、二塩基脂肪酸エステルおよびトリメリ
ット酸エステルを含む。このようなエステル中のエステル化基は同一であっても
または異なっていてもよい。1種以上の単純エステル可塑剤の1種以上の混合物
は使用されてよい。フタル酸ジエステルの例はフタル酸とC4-C12アルコールとの
エステル、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソオクチル(DIOP)
、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソ
ウンデシル(DIUP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)およびフタル
酸オクチルベンジル(OBP)を含む。燐酸エステルの例は燐酸オクチルジフェニル
、燐酸イソデシルジフェニル、燐酸トリトリル(TTP)、燐酸トリフェニル(TPP)お
よび燐酸2-エチルヘキシルジフェニルを含む。燐酸エステルは本発明の床材にお
いて耐燃焼性および耐炭化性を付与する。二塩基脂肪酸エステルの例はアジピン
酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジオクチルおよびセバシ
ン酸ジオクチルを含む。トリメリット酸エステルの例はトリメリット酸トリオク
チルである。1種以上の可塑剤の混合物は使用されてよい。OBPと他のフタル酸
エステル若しくは燐酸エステルまたはその両方との混合物は好ましいであろう。
可塑剤の好ましい混合物は、一般には少なくとも35重量%の燐酸エステル、好ま
しくは少なくとも40重量%、より好ましくは約50重量%の燐酸エステルを含む。
約35%以下の燐酸エステルを含む混合物は一般には軟質組成物の耐燃焼性および
耐炭化性を大きく改良しない。可塑剤が約60%以上の燐酸エステルを含む混合物
である軟質組成物は軟質すぎて、そして満足される耐引掻性を有しないであろう
。
軟質組成物中に使用されるのに適切な可塑剤の他のクラスはPVC技術でポリマ
ー可塑剤として知られている可塑剤、例えば、脂肪族ポリエステルおよびポリフ
タレートからなる。ポリフタレート可塑剤は脂肪族ポリエステル可塑剤よりもア
クリル酸エステルポリマーと相溶性が高いことが判った。モノマー可塑剤および
ポリマー可塑剤の混合物は使用されてよい。
軟質組成物は好ましくは、主鎖にウレタン基を有する熱可塑性ポリマーを15ph
r以下で、より好ましくは5〜15phrで、更に好ましくは約10phrで更に含む。こ
のポリマーは好ましくはポリウレタンである。このポリウレタンは脂肪族または
芳香族ポリイソシアネートをベースとするものであってよい。脂肪族ポリイソシ
アネートを
ベースとするポリウレタンは太陽光への長期間の暴露時の黄変に対して良好な耐
性を有することが知られているので、脂肪族ポリイソシアネートをベースとする
ポリウレタンが好ましい。このポリウレタンは一般に高分子量ポリオール、例え
ば、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールをベースとする。こ
のポリウレタンはポリエステルポリオールをベースとし、それはこのようなポリ
ウレタンが太陽光および酸化に対して良好な耐性を有することが知られているか
らである。軟質組成物中にこのようなポリウレタンがこのような含有率で存在す
ると、改良された耐摩耗性、耐引掻性およびくぼみ回復性が本発明の床材に付与
されることが知られている。改良された耐摩耗性は、より多量のポリウレタンが
使用されても得られないであろう。このポリウレタンは、好ましくは、使用の容
易さのために室温で固体で且つ粉末の状態で入手されるものである。このポリウ
レタンは純粋の状態で使用されてもまたはブロッキング剤とともに粉末化された
粉体で使用されてもよい。適切なポリウレタンの例は商標“Baymod PU”でBayer
AGから供給される。
軟質組成物は、好ましくは2phrまでの加工潤滑剤、より好ましくは1〜2phr
の加工潤滑剤を更に含む。この潤滑剤は好ましくは、加工の間に組成物の表面に
分離するものであり、組成物の表面上にプレートアウトしないものであり、そし
て組成物の透明性を低下させないものであるように選択される。適切な潤滑剤の
例は長鎖脂肪酸、例えば、ステアリン酸、脂肪酸エステル、例えば、グリセロー
ルモノオレエートおよびポリエチレンワックス、例えば、Hoechst AGによりEwax
の商標で供給されるものを含む。長鎖脂肪酸は、軟質組成物が主鎖にウレタン基
を有する熱可塑性ポリマーを含むときには、一般に好ましくない。
アクリル酸エステルポリマー、可塑剤および軟質組成物は本質的
に塩素または臭素を含むべきでなく、このことは、それらのいずれも、塩素およ
び臭素の合計重量で約2重量%以上の塩素および臭素を含まないことを意味する
。
本発明の床材は既知のビニル床材と同様に引掻に対して耐性である。本発明の
床材は、一般に、既知のビニル床材よりも耐擦りきず性および乾燥滑り防止性を
有する。例えば、SATRA試験で0.8以上の乾燥滑り耐性を示すであろう。本発明の
床材は好ましくはSATRA試験で0.3以上の湿潤滑り耐性を示す。本発明の床材は一
般に既知のビニル床材と少なくとも同等に折目白化に対して耐性である。本発明
の床材は一般に既知のビニル床材よりも紫外線光に対する良好な耐性および透明
性を有する。本発明の床材の洗浄容易性は既知のビニル床材と同様である。本発
明の床材の耐汚染性は既知のビニル床材と同様である。本発明の床材は一般に煙
草の火に対して優れた耐性を有し、しばしば、既知のビニル床材よりも驚くほど
良好である。
ビニルタイルの複合材の形態の既知の弾性床材は、一般に、55〜60、しばしば
約58のShore D硬度を有する。本発明の床材は一般に35〜55、好ましくは40〜50
のShore D硬度を有する。床材のShore D硬度が低いほど、一般に満足されない耐
引掻性を有することが判っており、そして床材のShore D硬度が高いほど、一般
に満足されないほど低い耐滑り性を有することが判っている。既知の床材と比較
して非常に軟質の床材は望ましい特性の組み合わせを示すはずであることが注目
される。可塑化アクリル酸エステル組成物の単層フィルムの硬度は摩耗層として
そのフィルムを含む複合材タイルの硬度よりも一般に低い。このような単層フィ
ルムは25〜40のShore D硬度を有する。
軟質組成物は更に架橋剤、例えば、多官能性オレフィン系モノマ
ーを更に含んでよい。多官能性オレフィン系モノマーは2個または好ましくは3
個若しくは4個のアクリルまたはメタクリル基を含むエステルであってよく、例
えば、テトラエチレングリコールジ(メト)アクリレート、アクリロキシピバロ
イルアクリロキシピバレート、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレー
トおよびペンタエリトリトールテトラメタクリレートであることができる。多官
能性オレフィン系モノマーの他の例は、ジビニルベンゼン、および2個または好
ましくは3個若しくは4個のアリル基を含むアリル化合物、例えば、トリアリル
シアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートを含む。この組成物は約10〜30
phr、好ましくは約20phrの架橋剤を含んでよい。架橋剤は、例えば、加熱処理ま
たは電子ビーム処理により押出フィルム中で重合して、本発明の床材に改良され
た靭性並びに耐引掻性および耐摩耗性を提供することができる。重合した架橋剤
は軟質組成物を可塑化する傾向があり、従って、このような架橋剤を使用すると
きには、組成物の好ましい可塑剤の含有量は低下される。可塑剤含有分は使用さ
れる架橋剤2phr毎に約1phrだけ低下する。
軟質組成物はアクリル酸エステルポリマーおよび可塑剤の均質ブレンドであり
、必要に応じてポリウレタン、潤滑剤および架橋剤のような材料を含んでよい。
本発明の床材は、表面に高い耐摩耗性および耐滑り性を付与するように、摩耗
層の表面に露出した比較的に硬質の材料の粒子を更に含んでよい。粒子の粒径は
100〜500μmであることができる。もし床材が透明な摩耗層を有するならば、こ
の粒子は好ましくは透明な粒子であり、そして更に好ましくは軟質組成物と同一
または同様の屈折率を有する。粒子および軟質組成物の屈折率は0.02以下、好ま
しくは0.01以下だけ異なっていてよい。この粒子は好ましくはプ
ラスティック材料であり、例えば、無可塑アクリルポリマーである。この粒子は
140℃以上の流れ温度を有し、より好ましくは160℃以上の流れ温度を有する。こ
の粒子は好ましくは85以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは95以上のRo
ckwell M硬度を有する。摩耗層は約2〜25重量%、好ましくは約5〜10重量%の
粒子を含んでよい。適切なプラスティック粒子の例は商標Oroglas VM100(89のRo
ckwell M硬度および140℃の流れ温度を有すると明記されている)および特にOro
glas VM825(97のRockwell M硬度および163℃の流れ温度を有すると明記されてい
る)でRohm & Haas Co.から販売されているものである。
本発明に係る床材はビニルシートおよびビニルタイル床材の製造用の従来の装
置を使用して製造されることができる。
本発明に係る床材の製造に適切なフィルムの製造の通常の手順は次の通りであ
る。アクリル酸エステルポリマー粉末および可塑剤をZ-ブレードミキサー内でブ
レンドする。他の成分、例えば、任意成分のポリウレタン、任意成分の潤滑剤お
よび任意成分の硬質粒子並びに顔料、加工助剤、酸化防止剤および安定剤は同時
に混合物中にブレンドされてよい。一般に、透明な摩耗層としての使用に適切な
フィルムを製造することが望まれるならば顔料は添加されない。粉末状のブレン
ドを、その後、強力ミキサー、例えば、バンバリーミキサー中に入れ、そして、
例えば、130〜180℃でホットメルトを製造するように加工する。この溶融物は同
様の温度に加熱された2本ロールミル上で流動化させることにより更に加工され
る。その後、それはローラー間に押出されて制御された厚さ、例えば、0.2〜1.0
mmのフィルムを形成し、このフィルムはリール上で冷却されて回収される。
本発明の床材は好ましくは2層以上のフィルムをラミネートする
ことにより製造された複合材である。床材の摩耗層は1層、2層または3層の軟
質組成物のフィルムからなることができる。摩耗層は透明な摩耗層であることが
でき、そしてこのことは好ましい。摩耗層を構成するフィルム以外のフィルムは
可塑化アクリル酸エステルポリマー組成物または弾性床材の製造において知られ
ている他の材料から製造されてよい。このラミネートはラミネート内部に薄いフ
ィルム、例えば、パターン印刷された層を含むならば、このようなフィルムは通
常の無可塑アクリル酸エステルポリマーから製造されたものであってよい。摩耗
層と反対側の床材の面の層は支持層として知られている。本発明の床材の支持層
の可能な材料は既知の材料を含み、例えば、ニトリルゴムおよび多量の充填剤入
りのエチレンコポリマー、例えば、エチレン/ビニルアセテート(EVA)コポリマー
を含む。本発明の床材がフォームクッションシートまたはタイルであることがで
きるように、支持層は、加熱したときにフォーム構造体を提供する発泡剤を含む
プラスティゾルで、公知の様式で塗布されてよい。本発明の床材は本質的に塩素
または臭素を含まず、即ち、塩素および臭素の合計で約2重量%以下でしか含ま
ない。
本発明に係るラミネート化された床材の製造の通常の手順は次の通りである。
2層以上のフィルムは、フィルムを融着するために、例えば、約175℃の温度に
維持された熱ニップローラー間にフィードされる。1セット以上のニップローラ
ーは使用されてよい。フィルムは全て第一のセットのニップローラー間に供給さ
れても、または、1層以上のフィルムが後のセットのニップローラー間に導入さ
れてもよい。その後、得られたフィルムラミネートは、ラミネートと支持布帛を
更なるセットの熱ニップローラー間に通過させることにより支持布帛に結合され
うる。この支持布帛はフォーム層を提供するように発泡剤を含んだプラスティゾ
ルで塗布されていてよい。
代わりに、布帛キャリアまたはドラムと接触させることにより粗い表面を提供す
るようにフィルムラミネートの下層面はしぼ押しされてよい。摩耗層は、しぼ押
しされた表面を提供するように、所望のパターンのネガティブの表面を有する熱
ドラム上に通過させることによりパターン化されうる。その後、得られた床材は
冷却され、そして通常には使用しやすいようにストリップまたは正方形に切断さ
れる。通常のフィルムラミネートは1層または2層の透明な摩耗層、パターン印
刷された層、パターンの視覚深さを提供するための白色または他の顔料層(フェ
ースプライとして知られる)および不透明性を確保するためのブラック層(支持
層)からなることができる。
本発明に係る好ましい床材は次の順序の次の構造体を有するフィルムのラミネ
ートである。
(1)アクリル酸エステルポリマー、可塑剤および潤滑剤からなる500〜750ミクロ
ン(20〜30ミル)の透明摩耗層、
(2)(1)記載の透明摩耗層、
(3)アクリル酸エステルポリマーからなる50〜125ミクロン(2〜5ミル)のパターン
印刷された層、
(4)アクリル酸エステルポリマー、可塑剤、潤滑剤および顔料、例えば、二酸化
チタンのような白色顔料からなる250〜500ミクロン(10〜20ミル)のフェースプラ
イ、
(5)アクリル酸エステルポリマー、可塑剤、潤滑剤および顔料、例えば、カーボ
ンブラックのような黒色顔料からなる、布帛キャリアベルトのパターンで下面上
がしぼ押しされた、750〜1000ミクロン(30〜40ミル)の支持層。
好ましい態様の説明
本発明は次の実施例(全ての部および比率は特に指示がないかぎり重量基準で
ある)および添付の図面により例示される。その1つの図面はラミネート化され
た床タイルの模式図である。
図1
次の成分の組成物を調製した。
100部 Paraloid K125(アクリル酸エステルポリマー)
変化 Santiciser 141(2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート)
変化 DINP
10部 Baymod PU(脂肪族ポリエステルポリウレタン)
1部 Loxiol G71S(複合エステル潤滑剤)
ParaloidはRohm & Haas Co.の商標である。SanticiserはMonsanto Co.の商標
である。BaymodはBayer AGの商標である。LoxiolはHenkel KGaAの商標である。S
anticiser 141およびDINPはともに可塑剤として参照される。Santiciser 141お
よびDINPの量は、一般に、重量基準で60:40〜50:50の範囲であった。
各組成物は90℃の温度まで実験室規模のバンバリーミキサーで混合され、110
℃〜130℃で5分間、2本ロールミルで溶融化され、その後、弾性床タイルの透
明な摩耗層としての使用に適切な500ミクロン(22ミル)厚さのフィルムを形成す
るように110℃〜130℃でカレンダーロール間で押出された。より大規模の試験で
は、組成物は130℃の最終温度まで混合され、180℃で溶融化され、そして175℃
で押出された。
次の組成を有する通常のビニルフィルムを対照として使用した。
100部 PVC樹脂
26部 DIOP
5.7部 エポキシ化大豆油
2.5部 熱安定剤
単層フィルムにおいて次の実験結果を得た。
耐摩耗性は、各1kg荷重で2枚の回転研磨ホイールの間に取り付けたTaber研
磨試験機内の100mm直径のディスクの重量損失を記録することにより評価した。
コイン引掻は主観的に評価した。くぼみは、B.S.3261により、4.5mm直径の短剣
のヒールで35kg荷重を10分間加え、そしてヒール除去の60分後に残存しているく
ぼみの深さを測定することにより評価した。最初のくぼみ結果を最も近いミル単
位の値に丸め、そしてそれ故、最も近い25ミクロン単位で示した。
例2
次の原料の組成物を調製した。
100部 Paraloid K125(アクリル酸エステルポリマー)
22.5部 Santiciser 141(2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート)
10部 DINP
10部 Baymod PU(脂肪族ポリエステルポリウレタン)
1部 Loxiol G71S(複合エステル潤滑剤)
この組成物は90℃の温度まで実験室規模のバンバリーミキサーで混合され、11
0℃〜130℃で5分間、2本ロールミルで溶融化され
、その後、弾性床タイルの透明な摩耗層としての使用に適切な500ミクロン(22ミ
ル)厚さのフィルムを形成するように110℃〜130℃でカレンダーロール間で押出
された。
次のフィルムの順序のラミネートである複合材床タイルを製造した。
(1)上記の透明摩耗層、
(2)上記の透明摩耗層、
(3)パターン印刷されたアクリルフィルム、50、75または125ミクロン厚さ(2、
3または5ミル厚さ)、
(4)二酸化チタンまたは他の適切な顔料を含んだ摩耗層と同一の組成のフェース
プライ、380ミクロン(15ミル)厚さ;および、
(5)摩耗層と同一の組成であるが、Baymod PUを含まず、カーボンブラックで着色
した支持フィルム、810ミクロン(32ミル)厚さ。
添付の図面はこのようなタイルの断面を例示し、これらの層に上記の番号を付
けた。
これらのタイルはハロゲン、特に塩素を本質的に含まない。タイルはShore D
硬度45、くぼみ50ミクロン、摩耗0.14g/1000回転を示し、そしてコイン引掻試験
で良好であると等級化された。
床タイルを通常のビニルタイルと比較して耐汚染性を評価した。結果を全ての
場合で同一であった。口紅、オレンジのクレヨン、靴磨きおよびトマトケチャッ
プは検知されるシミを残さなかった。カレー粉末は顕著なシミを残した。
例3
次の成分を含む組成物を調製した。
100部 Paraloid K125(アクリル酸エステルポリマー)
20部 Santiciser 141(2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート)
20部 DINP
変化 Baymod PU(脂肪族ポリエステルポリウレタン)
1部 Loxiol G71S(複合エステル潤滑剤)
例1と同一の方法でフィルムを製造するように、組成物をブレンドし、そして
押出した。これらのフィルムは次表に示す特性を有した。
耐滑り性は、M.P.Wilson,“Development of SATRA Slip Test and Tread Patt
ern Design Guidelines”, Slips, Stumbles, and Falls:Pedestrian Footwear
and Surfaces, ASTM STP 1103,B.E. Gray, Ed., American Society for Testin
g and Materials, Philadelphia, 1990, pp.113〜123に記載のように、4Sラバー
(RAPRA規格)を使用して、乾燥条件下でSATRA法により評価した。各試料を5回
試験し、3回〜5回の試験結果を平均して結果を示した。例1に記載の通常のビ
ニルフィルムはこの試験で0.8の結果を示した。
例4
4種の組成物A〜Dを次の配合で調製した。
これらの組成物は例1と同様にブレンドされ、そして約1.3mmの厚さのフィル
ムを製造するように押出された。例1と同一の通常のビニルフィルムを比較のた
めに使用した(対照PVC)。
煙草の燃焼に対する耐性は(1)フィルムに火の付いた煙草を押しつけて消すこ
と、および(2)火の付いた煙草が燃焼するまでフィルム上でそれをくすぶらせる
ことにより評価した。次の観測を行った。
(1)燐酸エステル可塑剤を含んでいないこと、および(2)アクリル酸エステルポ
リマーとは対照的に、PVCは塩素含有物のために、元来、耐燃性であることにも
係わらず、試料Aは通常のビニルタイルよりも良好な結果を示したことは注目さ
れるであろう。試料BおよびCは、試料Cが試料Bの2倍量の燐酸エステル可塑剤を
含んでいるにも係わらず同様の結果を示したことも注目されるであろう。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1994年9月5日
【補正内容】
請求の範囲(請求の範囲翻訳文第19頁〜第20頁)
請求の範囲
1.床材の摩耗層がアクリル酸エステルポリマーおよび可塑剤を含む軟質組成
物からなり、且つ、床材が塩素または臭素を本質的に含まない弾性床材であって
、前記可塑剤が約35〜約60重量%の燐酸エステルを含むことを特徴とする弾
性床材。
2.前記軟質組成物が100重量部のアクリル酸エステルポリマー当たりに2
5〜65重量部の可塑剤を含む請求の範囲1記載の床材。
3.前記可塑剤が単純エステル可塑剤である請求の範囲1記載の床材。
4.前記可塑剤が少なくとも40重量%の燐酸エステルを含む請求の範囲3記
載の床材。
5.前記軟質組成物が100重量部のアクリル酸エステルポリマー当たりに5
〜15重量部の熱可塑性ポリウレタンを更に含む請求の範囲1記載の床材。
6.前記床材が35〜55のショアーD硬度(Shore D hardness)を有する
請求の範囲1記載の床材。
7.前記軟質組成物は100重量部のアクリル酸エステルポリマー当たり10
〜30重量部の架橋剤を更に含む請求の範囲1記載の床材。
8.前記架橋剤が多官能性アクリルモノマーである請求の範囲7記載の床材。
9.前記床材が前記軟質組成物と比較して比較的に硬質の材料の粒子を含み、
前記粒子が100〜500ミクロンの粒径を有し、且
つ、摩耗層の表面上に露出している請求の範囲1記載の床材。
10.前記粒子が無可塑アクリルポリマーからなる請求の範囲9記載の床材。
11.次の順序
(1)アクリル酸エステルポリマー、35〜60重量%の燐酸エステルを含む可
塑剤、熱可塑性ポリウレタンおよび潤滑剤からなる500〜750ミクロンの厚
さの透明摩耗層、
(2)(1)記載の透明摩耗層、
(3)アクリル酸エステルポリマーからなる50〜125ミクロンの厚さのパタ
ーン印刷された層、
(4)アクリル酸エステルポリマー、可塑剤、潤滑剤および顔料からなる250
〜500ミクロンの厚さのフェースプライ、および、
(5)アクリル酸エステルポリマー、可塑剤、潤滑剤および顔料からなる、布帛
キャリアベルトのパターンで下面がしぼ押しされた、750〜1000ミクロン
の厚さの支持層、
のフィルムのラミネートである床材。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C08L 75/04 NGG 8620−4J C08L 75/04 NGG
E04F 15/10 104 8702−2E E04F 15/10 104A