【発明の詳細な説明】
CD1により提示される抗原の単離方法、
CD1により提示される抗原から成るワクチン、
および該方法に使用する細胞株関連出願
本願は、米国特許出願第07/989,790号(1992年12月10日出
願、放棄済み)の一部継続出願である米国特許出願第08/080,072号(
1993年6月21日出願)の一部継続出願である。発明における政府の権利に関する声明
本発明が成立するに至る過程で実施された研究の一部は米国政府の助成金を受
けて成されたものであり、米国政府は本発明において一定の権利を有する。発明の分野
本明細書に開示する発明は、試料にCD1により提示される抗原が含まれてい
るかどうかを判定する方法、試料からCD1により提示される抗原を単離する方
法、CD1により提示される抗原から成るワクチン、およびCD1により提示さ
れる抗原の単離、同定、およびキャラクタライゼーションに有用な細胞株に関す
る。本発明のCD1により提示される抗原はMHCにより提示される抗原と同様
に、α:βTCR
T細胞を刺激して増殖性応答を起こさせるが、CD1により提示される抗原はM
HCにより提示される抗原とは異なり、非ポリペプチド性の疎水性抗原である。
とくにミコバクテリウムの種から単離されたCD1bにより提示される抗原はミ
コール酸を含有する。
背景技術の説明 免疫系とT細胞
動物は、有害作用を及ぼす可能性のある外来細胞または内因性ではあるが異常
な細胞(たとえば細菌やウイルスなどの病原体およびガン細胞や病原体感染細胞
などでそれぞれ代表される)を認識し、攻撃するが、内因性の正常細胞は許容す
る免疫系と総称される複雑な分子防御機構・細胞防御機構を持っている。外来性
または異常な生体分子の剌激を受けると、この免疫系は、その外来性または異常
生体分子と関連がある病原体やガン細胞や病原体感染細胞を中和し破壊するよう
に仕組まれた一連の作用を受ける。これらの作用は免疫応答と総称され、細胞性
免疫応答、液性(抗体性)免疫応答、または細胞性応答と液性応答の両要素を含
む免疫応答から成る。
液性免疫応答には、特定の外来性または異常な生体分子と結合する糖タンパク
質である抗体が関与する。抗体とは、鳥類の嚢または哺乳動物の骨髄中で発生し
て他器官、とくに脾臓へ移動して成熟するリンパ球であるB細胞によって産生さ
れる免疫グロブリン(Ig)分子である[ロバートソン(Ro
bertson,M.)、Nature 301:114(1983)]。細胞性免疫応答は、動物の胸腺内で
成熟するリンパ球であるT細胞の作用によって起きる[ティザード(Tizard,I.
R.)、Immunology:An Introduction,2d Ed.,Saunders,Philadelphia(以下
「ティザード」(Tizard)という)、p.163,1988]。T細胞とB細胞はどち
らも動物体内の様々な器官および/または組織の間を移動する[リドヤードとグ
ロッシ(Lydyard,P.,and Grossi,C.)、Chapter 3 in Immunology,2d Ed.,
Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,198
9]。
T細胞は少なくとも2つの一般的なタイプの免疫機能、すなわちエフェクター
機能と調節機能を媒介するが、このことは、同じ動物の体内でもT細胞亜集団が
異なればT細胞作用も大幅に異なるという事実を反映している[ルーク(Rook,
G.)、Chapter 9 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Me
dical Publishing,London,New York,1989]。エフェクター機能としては、遅
延過敏反応、同種移植片拒絶反応、腫瘍免疫、および移植片対宿主反応などが挙
げられる。エフェクター機能は、一部のT細胞がリンホカインと呼はれるタンパ
ク質を分泌する能力および他のT細胞(「細胞傷害性」または「キラー」T細胞
)が他細胞を殺す能力を反映している。T細胞の調節機能としては、「ヘルパー
」T細胞の能力が代表的である。ヘルパーT細胞は、B細胞と細胞傷害性T細胞
の両者と相互作用して、両者の挙動に影響を及ぼす生体分子を産生することで、
それぞれ抗体産生と
細胞傷害性作用を促進、制御する[モシエル(Mosier,D.E.)、Science 158:15
73-1575(1967)]。他にもサプレッサーT細胞やメモリーT細胞などのT細胞ク
ラスも存在する[ミエデマとメリーフ(Miedema,F.,and Melief,C.J.M.)、I
mmunol.Today 6:258-259(1983);ティザード(Tizard)、pp.225-228]。
T細胞クラスは、T細胞が異なるとその表面上に表出(display)されるCD
タンパク質も異なるという事実に基づき、ある程度区別される。未成熟T細胞は
CD4タンパク質とCD8タンパク質の両者を表出し(すなわち、未成熟T細胞
はCD4+8+である)、成熟ヘルパーT細胞はCD4+8-であり(すなわちCD
4タンパク質を表出し、CD8タンパク質を表出しない)、成熟細胞傷害性T細
胞はCD4-8+である(すなわちCD8タンパク質を表出し、CD4タンパク質
を表出しない)[スミス(Smith,L.)、Nature 326:798-800(1987);ワイスマ
ンとクーパー(Weissman,I.L.,and Cooper,M.D.)、Sci.American 269:65-7
1(1993)]。抗原認識
動物の免疫系のT細胞とB細胞が正しく機能するためには、それらが出くわし
た外来性(「非自己」)または内因性(「自己」)であるが発現が異常な組成物
に由来する無数の分子組成物を正しく確実に同定しなければならない。免疫系に
よる認識と同定は分子レベルで起きる。免疫応答を引き起こ
す能力を有する分子組成物である抗原は、エピトープと呼はれる1つ以上の分子
大の同定要素から成る。たとえば100個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を有
するポリペプチド抗原は、それぞれ約3個ないし約25個のアミノ酸から成るポ
リペプチドの一部分によって規定される数十個のエピトープから成るかも知れな
い。ポリペプチドだけから誘導できるエピトープの数は、約1千万個と推定され
る[ティザード(Tizard)、p.25]。
動物のT細胞またはB細胞が出くわした抗原は、正常な内因性(すなわち自己
)抗原、すなわちそれに対して免疫応答を示すと動物に傷害を引き起こす抗原か
、外来性または異常な(すなわち非自己)抗原、すなわちそれに対して免疫応答
を示さねばならない抗原)のいずれかと関連があるものとして同定される。免疫
系の抗原同定手段の一部として、個々のT細胞とB細胞は、それらの表面上に表
出されて特異的抗原と結合する抗原受容体を産生する[ターナー(Turner,M.)
、Chapter 5 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medi
cal Publishing,London,New York,1989]。B細胞は、Ig重鎖およびIg軽
鎖と呼ばれる2つの抗体サブユニットのそれぞれの可変領域にあるユニークなア
ミノ酸配列によるユニークな抗原結合部分を有するIg分子を含む抗原受容体を
産生し、表出する。各B細胞膜は20,000ないし200,000個の同じI
g分子でできている[ティザード(Tizard)、pp.78-80 and 202]。
個々のT細胞によって産生されT細胞上で表出されるT細
胞抗原受容体(TCR)は、T細胞表面上でジスルフィド結合によって結合して
いる重鎖(TCRβ)と軽鎖(TCRα)(ポリペプチドのサブユニット)を含
む。各TCRαサブユニットとTCRβサブユニットは、T細胞ごとの変化がな
いアミノ酸配列であるカルボキシ末端定常領域、およびT細胞ごとに変化するア
ミノ酸配列であるアミノ末端可変領域を有している。TCRαサブユニットとT
CRβサブユニットが会合すると、TCRαポリペプチドサブユニットとTCR
βポリペプチドサブユニットの可変領域が一体化して、α:βTCRのユニーク
な抗原結合部分ができる。第2のタイプのTCRヘテロダイマーであるγ:δが
記載されているが、それが何らかの機能を果たしているとしても内容は不明であ
る[デービスとブジョルクマン(Davis,M.M.,and Bjorkman,P.J.)、Nature 334
:395-404(1988)]。機能が不明の少なくとも1つの混合TCRヘテロダイマ
ーすなわちβ:δTCRが記載されているが、成熟動物ではα:βTCR分子を
有するT細胞が数的に優勢である[ホッホステンバックとブレナー(Hochstenba
ch,F.,and Brenner,M.B.)、Nature 340:562-565(1989)]。
各T細胞またはB細胞は同じ抗原受容体を表出するが、表出された受容体は細
胞ごとに異なる。したがって、動物体内の抗原受容体の種類は非常に多様である
。この多様性の遺伝的基礎は次のとおりである。Ig重鎖の可変領域またはTC
Rβ鎖の可変領域は、可変セグメント(V)、多様セグメント(D)、および連
結セグメント(J)という3つの遺伝子
セグメントによってコードされる。Ig軽鎖の可変領域またはTCRα鎖の可変
領域は、VとJの遺伝子セグメントによってコードされる。多くの異なるV、D
、およびJの遺伝子セグメントをコードする多重DNA配列が、生殖系列DNA
中に未発現コピーとして存在し、TCRサブユニットを構成する類似のしかし異
なる可変遺伝子セグメント群も存在する。動物の発育過程で、VとDとJの遺伝
子セグメントまたはVとJの遺伝子セグメントの無差別連結によって、多様な可
変領域をコードする遺伝子が免疫系の個々の細胞中に形成される。Ig重鎖サブ
ユニットまたはTCRβサブユニットの無差別に組み合わされた可変領域ができ
るDNA転位の過程をV−D−J連結と呼び、Ig軽鎖サブユニットまたはTC
Rαサブユニットの転位可変領域ができる類似過程をV−J連結と呼ぶ[サカノ
ら(Sakano,H.,et al.)、Nature 280:288-294(1979);アーリーら(Early,P
.,et al.)、Ce11 19:981-992(1980);アルトら(Alt,F.W.,et al.)、Scien
ce 238:1079-1087(1987);ハーローとレーン(Harlow,E.,and Lane,D.)、An
tibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold
Spring Harbor,pages 10-18,1988;デービスとブジョルクマン(Davis,M.M.
,and Bjorkman,P.J.)、Nature 334:395-404(1988)]。
機能的転位を受けたIgまたはTCRサブユニット遺伝子とは、V−D−Jま
たはV−J連結のDNA転位によって、終止コドンまたはフレームシフト突然変
異の導入のために未
成熟に終止する読み取り枠を生じてはいないサブユニット遺伝子である。免疫系
の各T細胞またはB細胞は、機能的転位を受けたユニークな可変領域が存在する
それぞれの抗原受容体をコードする遺伝子を発現するので、ユニークな抗原認識
領域を有するタンパク質をそれぞれが産生する多くの異なるT細胞またはB細胞
ができる[ヘイ(Hay,F.)、Chapter 6 inImmunology,2d Ed.,Roitt,I.,e
t al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989]。動物の
T細胞上に表出される様々な抗原受容体の完全なリストをその動物のTCRレパ
ートリーと呼ぶ[ベバンら(Bevan,M.J.,et al.)、Science 264:796-797(199
4)]。
成熟したT細胞またはB細胞の場合、抗原が細胞の抗原受容体に結合するとそ
の細胞が活性化される。すなわち、細胞が刺激されて、細胞性または液性免疫応
答の発生に関係する作用を示すようになる。通常、活性化された成熟T細胞また
はB細胞は抗原に応答して増殖する。一方、未成熟のT細胞またはB細胞の場合
は、それぞれ表出されたTCRまたはB細胞抗原受容体に抗原が結合すると、陰
性選択またはクローン欠失と呼ばれる過程によってその細胞が除去される。クロ
ーン欠失は健康な野生動物の正常な発育の過程で起きるが、これが、免疫系がそ
の動物の正常な内因性(自己)抗原を許容すること、すなわちその動物の自己抗
原を非免疫原性抗原として処理することを学ぶ機構である。免疫系が自己抗原許
容性の獲得や維持ができなくなると、ヒトを含む動物の自己免疫疾患にまで達す
る可能性のある自己免疫応答(すなわち
自己抗原に対する自己免疫応答)が起きることがある。自己免疫疾患は、非自己
抗原に対する適当な免疫応答が免疫エフェクター生体分子(たとえば自己抗体)
や自己抗原と交差反応を起こす細胞の産生もたらす場合に起こりうる。ヒトの自
己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)や全身性紅斑性狼痕)などの肢体不
自由障害などが挙げられる[ロイット(Roitt,I.)、Chapter 23 in Immunolog
y,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,Ne
w York,1989;ステインマン(Steinman,L.)、Sci.American 269:107-114(1
993)]。抗原提示
B細胞の抗原受容体は可溶性抗原と直接結合することができるが、T細胞は抗
原提示細胞(APC)と総称される他の特定のクラスの細胞上に表出される場合
に限って抗原に典型的に応答する[フェルドマンとメイル(Feldmann,M.,and
Male,D.)、Chapter 8 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Go
wer Medical Publishing,London,New York,1989]。たとえばマクロファージ
や樹状突起細胞などのAPCは、APCの表面上で表出されるMHC(主要組織
適合性複合体)として知られる糖タンパク質を介してポリペプチド由来の抗原を
提示する[ベバンら(Bevan,M.J.,et al.)、Seicnece 264:796-797(1994)]
。MHC遺伝子産物の命名は種ごとに異なる。たとえば、ヒトMHCタンパク質
はヒトリンパ球抗原(HLA)とも呼ばれ、ネズミMHC
タンパク質はH−2抗原とも呼ばれ、ラットMHCタンパク質はRT1抗原とも
呼ばれる[ティザード(Tizard)、p.181]。特定のMHCタンパク質は、限ら
れた特異性を有する一部クラスの抗原と結合する。たいていの場合、TCR:A
g:MHC複合体中に存在する特異性決定基は(1)TCRの可変部分のユニー
クなポリペプチド配列と(2)抗原のユニークなポリペプチド配列であるが、M
HCにより提示されるオリゴペプチド抗原はある程度はMHC分子内に埋め込ま
れており、抗原のTCR認識は適当なクラスのMHC分子が関与している場合に
限って起きる[ジャネウエイ(Janeway,C.A.)、Sci.American 269:73-79(199
3)]。この現象はMHC拘束と呼ばれ、T細胞の抗原認識と生理において基本的
に重要である[ジンケルナーゲルとドハーティー(Zinkernagel,R.M.,and Doh
erty,P.C.)、Nature 248:701-702(1974)]。
MHCが媒介する抗原提示においては、α:βT細胞抗原受容体がMHC遺伝
子産物と合わせてペプチド抗原を認識する。可溶性抗原の場合、認識はクラスI
Iの分子と合わせて起きる。ウイルス抗原の場合は、認識はクラスIの分子と合
わせて起きる。さらに、大型の可溶性抗原がマクロファージや樹状突起細胞など
の適当な附属細胞によってポリペプチドから処理される。
MHC拘束におけるT細胞によるポリペプチド抗原の認識に関係する一連の事
象は次のとおりである。ポリペプチド抗原が抗原提示細胞による食作用を受け、
内部に取り込まれ、
プロセシングされた後、該ポリペプチドに由来するペプチドが、クラスIまたは
クラスIIのMHC分子と共に細胞表面上で表出される。抗原を提示するために
は、MHCクラスI分子はさらに別のタンパク質すなわちβ2ミクログロブリン
を必要とする[ティザード(Tizard)、pp.181-183]。次いで、T細胞抗原受
容体であるα:βヘテロダイマーがペプチド抗原とMHC遺伝子産物を合わせて
認識する。ペプチド抗原だけあるいはMHC遺伝子産物だけが認識されても、T
細胞活性化を引き起こすには不十分である。MHC:Ag複合体だけがTCR分
子によって正しく認識されうる[スチュワード(Steward,M.)、Chapter 7 in
Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,L
ondon,New York,1989]。
MHCタンパク質をコードする遺伝子は多様であるが、同じ動物個体内でも細
胞ごとに異なるIg分子やTCR分子と異なり、MHC抗原は動物個体ごとにあ
るいは近縁動物個体の群ことに異なる。マウスでは近交系マウスで代表されるフ
ァミリー群のメンバーは類似のMHC抗原を共有しているが、他系統のマウスの
個体とはそれを共有しない[スネル(Snell,G.D.)、Science 213:172-178(198
1);オーエン(Owen,M.)、Chapter 4 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et
al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989]。変異体M
HC分子は異なる様々な抗原と結合する能力を有するであろうから、T細胞が認
識し(すなわちMHC関与状態で特異的に結合する)応答する抗原はマウスの
系統間で異なる[クーケ(CooKe,A.)、Chapter 11 in Immunology,2d Ed.,R
oitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989
]。ヒトでは、MHC(HLA)分子をコードする特定の対立遺伝子がさらに高
度に自己免疫疾患と関連しているが、これはおそらく、これらのMHC分子が自
己抗原と結合する点(したがってT細胞への提示の時点)でより応答能が高まる
ためであろう[バウグハン(Vaughan)、Immunological Diseases,3rd Ed.,Vo
l.II,Samter,M.,ed.,pp.1029-1037(1978);スタインマン(Steinman,L.
)、Sci.American 269:107-114(1993)]。二重陰性T細胞
一般に、CD8+Tリンパ球はMHCクラスI複合体を認識し、CD4+細胞は
抗原提示細胞上のMHCクラスII複合体を認識する。α:βTCRによる抗原
認識にはCD8とCD4の関与が重要である。CD4分子とCD8分子はTCR
相互作用Ag:MHC複合体の親和性を増大させるので、共受容体と呼ばれるこ
ともある[ビエラーら(Bierer,B.E.,et al.)、Ann.Rev.Immunol. 7:579-5
99(1989);スチュワード(Steward,M.)、Chapter 7 in Immunology,2d Ed.,
Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,198
9]。MHCの関与がある場合の抗原認識ではCD4とCD8が重要であるため
、CD4-8-(二重陰性、DN)のT細胞は古くから未成熟胸腺T細胞前
駆体であると考えられてきた[リドヤードとグロッシ(Lydy ard,L.,and Gros
si,C.)、Chapters 2 and 14 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,ed
s.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989;スミス(Smith,L.
)、Nature 326:798-800(1987);ストロミンジャーら(Strominger,J.L.,et a
l.)、Int.J.Cancer Suppl.4:43-47(1989);シライら(Shirai,T.,et al.
)、J.Immunology 144:3756-3761(1990);ワイスマンとクーパー(Weissman,I
.L.and Cooper,M.D.)、Sci.American 269:65-71(1993)]。
DN亜集団のT細胞は、それらが表出するTCRに特徴がある。末梢血から単
離されたヒトDN T細胞の大部分はδ:γTCRを発現する[ポーセリら(Po
rcelli,S.,et al.)、Immunological Reviews 120:137-183(1991)]。ネズミ
DNα:βTCR T細胞は高比率(約60%)でVβ8遺伝子産物を発現する
[フォウルケスら(Fowlkes,B.J.,et al.)、Nature 329:251-254(1987);ビ
ックスら(Bix,M.,et al.)、J.Exp.Med.178:901-903(1993)]。マウスを
使ったいくつかの分析で、連結(V−JまたはV−D−J)の多様性が顕著に欠
落していること、およびとくにTCRαサブュニットの生殖系列VおよびJ遺伝
子要素の利用が制限されていることがわかる[コセキら(Koseki,J.,et al.)
、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:5248-5252(1990);クボタら(Kubota,H.,e
t al.)、J.Immunol.149:1143-1150(1992)]。ヒトの新鮮DNα:βTCR
T細胞を調ベ
たところ、N領域付加を受けていない非変異体(規定配列)のVα24−JαQ
転位が顕著に優勢であることがわかった[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)
、J.Exp.Med. 178:1-16(1993)]。これらの知見を総合すると、DNα:βT
CR T細胞は、抗原と抗原提示分子の両方または一方の限られたセットを認識
することを反映する限られた受容体レパートリーを有する特徴的なTリンパ球亜
集団に相当するものであることが示唆される。CD1タンパク質
CD1座位の遺伝子によってコードされるポリペプチド分子は、α:βTCR
またはγ:δTCRのいずれかを発現する一部のCD4-8-T細胞クローンによ
って認識される[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450(1
989);ファウレら(Faure,F.,et al.)、Eur.J. Immun. 20:703-706(1990)]
。ヒト染色体番号1の上にある遺伝子によってコードされるCD1分子はヒト染
色体番号6の上にある遺伝子によってコードされるMHC分子と構造的に似てい
るため[カラビとミルステイン(Calabi,F.and Milstein,C.)、Nature 323:
540-543(1986);バルクら(Balk,S.P.,et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 86:252-256(1989)]、CD1はMHC遺伝子によってコードされるものとは別
の抗原提示分子のファミリーに相当することが示唆されている[ポーセリら(Po
rcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450(1989);ストロミンジャー(Stromi
nger,
J.L.)、Cell 57:895-898(1989);ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)、Immun
.Rev.120:137-183(1991)] 。
5つのCD1遺伝子はMHCクラスI遺伝子のものと似たエキソン・ドメイン
構造(α1、α2、α3)を持っているが、生じるタンパク質は配列的に遠縁で
あるにすぎない。CD1ファミリーのすべてのメンバーは保存されたα3ドメイ
ンを共有しているが、このドメインですらクラスIのMHCα3ドメインのコン
センサス残基とのアミノ酸配列相同性は32%にすぎず、α1ドメインとは相同
性が認められない。MHC分子とCD1分子の大きな違いは多型性である。ヒト
MHC遺伝子は多型性が非常に高く、多数の対立遺伝子が既知のMHC座位のそ
れぞれに存在することが記載されている。一方、CD1遺伝子は明らかに非多型
性である。これらの違いにも関わらず、CD1タンパク質はMHCクラスI分子
と同様に、β2ミクログロブリンと非共有結合的に結合した大型サブユニット(
重鎖)として発現される[バン・アグトーベンとテルホルスト(Van Agthoven,
A.,and Terhorst,C.J.)、Immunol. 128:426-432(1982);テルホルストら(Te
rhorst,C.,et al.)、Cell 23:771-780(1981)]。
これまでにCD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1eという5種類
のCD1遺伝子がヒトで同定されている。これら5つのCD1遺伝子産物のうち
の4つは血清学的に定義されており、CD1a、CD1b、CD1c、およびC
D1dと呼ばれ、それぞれおよそ49kDa、45kDa、43kDa、および
48kDaの分子量を有するユニークな
重鎖によって区別される[アミオットら(Amiot,M.,et al.)、J.Immunol.1 36:
1752-1758(1986);ポーセリら(Procelli,S.,et al.)、Immunol.Rev.12 0:
137-183(1991);ブレイヒャーら(Bleicher,P.A.,et al.)、Scinece 250:6
79-682(1990)]。CD1タンパク質は、ランゲルハンス細胞(皮膚における主な
樹状突起抗原提示細胞)、活性化B細胞、リンパ節の樹状突起細胞、および活性
化血液単球などの幾つかのAPCの上に表出される[ポーセリら(Porcelli,S.
,et al.)、Nature 360:593-597(1992);Leukocyte Typing IV,Knapp,W.,ed
.,Oxford University Press,Oxford,U.K.,pp.251-269,1989;Tissue Anti
gens,Kissmeyer-Nielsen,F.,ed.,Munksgard,Copenhagen,Denmark,pp.65
-72,1989]。
過去の研究で、CD1タンパク質はSLE患者由来のCD4-8-T細胞株によ
って認識されることが示されている[ポーセリら(Porcelli,et al.)、Nature 341
:447-450(1989)]。外来(非自己)抗原が存在しない場合でも、CD1タン
パク質発現白血病細胞はMHC拘束と無関係なT細胞によって溶解される。DN
T細胞は抗原の非存在下でCD1依存的に白血病細胞を溶解した。したがって
、CD1タンパク質は自己免疫疾患に何らかの役目を果たしている可能性がある
。
免疫系は通常は自己に対して反応しないというのが免疫学のセントラルドグマ
であった。自己免疫とは、自己に対する自然の無応答性すなわち許容性がなくな
る状態と定義される
。その結果、抗体または細胞が自己の成分と反応して疾患を引き起こす。様々な
自己免疫障害の起源と病態発生を説明できる統一概念は未確立である。疾患過程
は、様々な原因のなかでもとくに感作Tリンパ球によって引き起こされるのかも
しれない。これらのリンパ球は、破壊的なリンホカインの放出を伴うかもしれな
い、あるいは他の炎症細胞を病変部に引きつける未解明の機構によって組織病変
を作り出す。自己免疫については、既報文献[テオフィロポウロス(Theofilopo
ulos,A.N.)、Chapter 11 in Basic and Clinical Immunology,6th Ed.,Stit
es,D.P.,et al.,eds.,Appleton and Lang,1987]を参照されたい。ミコバクテリアとミコール酸
ミコバクテリアは、宿主に侵入すると単球およびマクロファージのエンドソー
ム画分内で生存するようになる好気性細胞内細菌の1属である。ヒトのミコバク
テリア疾患としては、結核(M.ツベルクロシスによって引き起こされる)、ら
い(M.レプラエによって引き起こされる)、ブルーリ潰瘍(Bairnsdale ulcer
s)(M.ウルセランスによって引き起こされる)、およびM.マリヌム、M.
カンサシイ、M.スクロフラセウム、M.スズルガイ、M.キセノピ、M.フォ
ルツイツム、M.チェロネイ、M.ハエモフィルム、およびM.イントラセルラ
ーレによって引き起こされる様々な感染症などが挙げられる[ウォリンスキー(
Wolinsky,E.)、Chapter 37 in Microbiology:Including Immunology and Mo
l
ecular Genetics,3rd Ed.,Harper & Row,Philadelphia,1980;ダニエル、ミ
ラーおよびフリードマン(Daniel,T.M.,Miller,R.A.and Freedman,S.D.)
、それぞれChapters 119,120 and 121,in Harrison's Principles of Intern
a 1 Medicine,11th Ed.,Braunwald,E.,et al.,eds.,McGraw-Hill,New Yo
rk,1987]。世界人口の3分の1はM.ツベルクロシス(M.tb)を保菌して
おり、15〜59歳の成人の死因の18.5%を占める結核(TB)を発症する
危険性がある[ブルームとムレイ(Bloom,B.R.,and Murray,C.J.L.)、Scien
ce 257:1055-1064(1992)]。公衆衛生と抗生物質療法の進歩により米国における
TBの発生率と重症度は大幅に低下したので、上記の警告的統計値は主に第3世
界諸国から得られたものである。不幸にも、エイズの出現により結核はほぼ対数
的に増加しつつあり、多剤抵抗性株が出現しつつあって、現在ではニューヨーク
市の全症例の3分の1を占めるに至っている[ブルームとムレイ(Bloom,B.R.
,and Murray,C.J.L.)、Science 257:1055-1064(1992);米国議会技術評価局
(U.S.Congress,Office of Technology Assessment)、The Continuing Chall
enge of Tuberculosis,OTA-H-574,U.S.Government Printing Office,Washi
ngton,D.C.,1993]。かつては病原性を有さない株と考えられていたミコバク
テリア株(たとえばM.アビウム)が今や免疫が抑制されたエイズ患者を死に至
らしめる大きな原因となっている。さらに、現在のミコバクテリアワクチンは、
M.ツベルクロシスに対するBCGワクチンの場合には不適当
であり、M.レプラエに関しては利用できない[カウフマン(Kaufmann, S.)、
Microbiol.Sci.4:324-328(1987);米国議会技術評価局(U.S.Congress,Offi
ce of Technology Assessment)、The Continuing Challenge of Tuberculosis
,pp.62-67,OTA-H-574,U.S.Government Printing Office,Washington,D.C.
,1993]。
ミコバクテリアに対する主要応答では、生物の細胞内死および閉じ込め効果ま
たは壁防止効果(肉芽腫形成)に大きな役目を果たしているT細胞やマクロファ
ージとの細胞性遅延過敏反応(DTH)が起きる。主要T細胞応答には、ミコバ
クテリア熱ショックタンパク質(hsp65など)を免疫優性抗原として認識す
るCD4+リンパ球が関与している[カウフマンら(Kaufmann,S.H.,et al.)
、Eur.J.Immunol.17:351-357(1987)]。ところが、ミコバクテリアはリピド
を極めて高い含有率で含んでおり、桿菌の乾物重の40%、細胞壁の60%を占
める[ゴーレンとブレナン(Goren,M.B.,and Brennan,P.J.)、Mycobacteria
l Lipids:Chemistry and Biologic Activities in Tuberculosis,1979]。お
そらく最も数が多く多様なミコバクテリアリピドはミコール酸であろう。これら
のα分岐βヒドロキシ脂肪酸は、ミコバクテリアおよび近縁細菌種に見られるユ
ニークな構造体の1群である[ウォリンスキー(Wolinsky,E.)、”Mycobacter
ia,”Chapter 37 in Microbiology:Including Immunology and Molecular Gen
etics,3rd Ed.,Davis,B.H.,ed.,Harper & Row,Philadelphia,1980]。
ミコール酸は主に細胞壁に含まれており、エステル化されてコアペプチドグリ
カンと結合したアラビノガラクタン重合体となっていて[マックニールとブレナ
ン(McNeil,M.R.,and Brennan,P.J.)、Res.Microbiol.142:451-563(1991)
;ベスラ(Besra,G.S.)、Biochemistry 30:7772-7777(1991);マックニールら
(McNeil,M.,et al.)、Journalof Biological Chemistry 266:13217-13223(1
991)]、アルカリまたは酸加水分解(鹸化)によって遊離することができる[ミ
ニキン(Minnkin,D.E.)、”Mycolic acids″in CRC Handbook of Chromatogra
phy:Analysis of Lipids,Murhergee,K.D.,and Weber,N.,eds.,CRCPress,
1993]。ミコール酸は生物を覆うリピド被膜の主成分であり、生物に疎水性面と
特徴的な耐酸染色性を与えている[ゴーレンとブレナン(Goren,M.B.,and Bre
nnan,P.J.)、Mycobacterial Lipids:Chemistry and Biologic Activities in
Tuberculosis,1979]。
サイズがC12−C24の幅がある真核生物や細菌の脂肪酸と異なり、ミコバクテ
リアのミコール酸のサイズはC60−C90の幅がある[ミニキン(Minnikin,D.E.
)、”Lipids:Complex Lipids,their Chemistry,Biosynthesis and Roles”i
n The Biology of Mycobacteria,Vol.1,Ratledge,C.,and Sanford,J.,ed
s.,Academic Press,London,1982]。
ミコール酸は直鎖状脂肪酸と異なり、α炭素部分に分岐アルキル基を、またβ炭
素部分にヒドロキシル基を持っている[ゴーレンとブレナン(Goren,M.B.,and
Brennan,P.J.)、
Mycobacterial Lipids:Chemistry and Biiologic Activities in Tuberculosis
,1979;ミニキン(Minnikin,D.E.)、”Lipids:Complex Lipids,their Chem
istry,Biosynthesis and Roles”in The Biology of Mycobacteria,Vol.l,
Ratledge,C.,and Sanford,J.,eds.,Academic Press,London,1982;タカ
ヤマとクレシ(Takayama,I.,and Qureshi,N.)、”Structure and Synthesis
of Lipids”in The Mycobacteria:A Sourcebook,Part A,Kubica,G.P.,and
Wayne,L.G.,eds.,Marcel Dekker,New York & Basel,1984]。ミコール酸
の主要アルキル長鎖(いわゆるメロ基)は長さと置換官能基の両者が不均一であ
る。アルケン基(二重結合)以外のミコール酸官能基としては、メトキシル基、
ケト基、孤立メチルバランス(lone methyl barances)、エチレン基、およびシ
クロプロパノイド基などが挙げられる[ミニキン(Minnikin,D.E.)、”Lipids
:Complex Lipids,their Chemistry,Biosynthesis and Roles”in The Biolog
y of Mycobacteria,Vol.1,Ratledge,C.,and Sanford,J.,eds.,Academic
Press,London,1982]。ミコール酸が利用できる官能基は多数あること、鎖長
が様々であること、および株間で不均一であることから、ミコール酸は、アミノ
酸側鎖間の不均一性を有するペプチドによって提供されるものと同程度に高度の
抗原変異性を示すことができる。したがって、これらのリピド分子はかつてはあ
まり注目されなかった免疫学的意味合いを持っているかもしれない。各ミコバク
テリア種ごとに、含まれる免疫系分子のパターンに基づく特有
のフィンガープリントが存在する。このパターンは、薄層クロマトグラフィー(
TLC)[ミニキン(Minnikin,D.E.)、”Lipids:Complex Lipids,their Ch
emistry,Biosynthesis and Roles”in The Biology of Mycobacteria,Vol.1
,Ratledge,C.,and Sanford,J.,eds.,Academic Press,London,1982;ド
ブソンら(Dobson,G.,et al.)、Chemical Methods in Bacterial Systematic
s,Academic Press,1985;バレロ−グイレンら(Valero-Guillen,P.L.,et al
.)、Journal of Applied Bacteriology 59:113-126(1985)]、ガスクロマトグ
ラフィー(GC)[バレロ−グイレンら(Valero-Guillen,P.L.,et al.)、Jo
urnal of Applied Bacteriology 59:113-126(1985);アタルイエら(Athalye,M
.,et al.)、Journal of Applied Bacteriology 58:507-512(1985):ルクイン
ら(Luquin,M.et al.)、Journal of Clinical Microbiology 29:120-130(199
1)]、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)[クレシら(Qureshi,N
.,et al.)、Journal of Biological Chemistry 253:5411-5417(1978);クレシ
ら(Qureshi,N.,et al.)、Journal of Biological Chemistry 255:182-189(1
980);ブットラーら(Butler,W.R.,et al.)、Journal of Clinical Microbio
logy 29:2468-2472(1991);ブットラーとキルバーン(Butler,W.R.,andKilbur
n,J.O.)、Journal of Clinical Microbiology 28:2094-2098(1990)]によって
種ごとに決定されている。
発明の概要
本発明は、CD1分子がT細胞に対する自己免疫抗原と同様に外来の抗原をも
提示する機能を有するという新規なかつ予想外の観察に基づいている。本発明は
さらに、単離された血液単球がCD1を発現するように誘導され、従って単球を
顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびインターロイ
キン−4(IL−4)と接触させることによりT細胞に対する抗原を提示する能
力を持つに至るという観察に基づいている。これらの二つの観察に基づき、本発
明はCD1により提示される抗原を同定し、単離し、そして精製するために使用
されるCD1+抗原提示細胞(CD1+APCs)を単離する方法、試料か1種以
上のCD1により提示される抗原を含むか否かを判定する方法、CD1により提
示される抗原を単離しそして精製する方法、本明細書に開示されている方法によ
って単離され精製されたCD1により提示される抗原、および単離されたCD1
により提示される抗原をワクチンに使用する方法を開示する。
一つの態様においては、本発明は試料がCD1により提示される抗原を含むか
否かを判定する方法を提供する。かかる方法の一つでは、試料中にCD1により
提示される抗原が存在することは、(1)この試料をCD1タンパク質を発現す
るように誘導された細胞と接触させ、(2)第1のステップで得られる細胞を、
CD1により提示される抗原を特異的に認識するCD4-8-(二重陰性;DN)
T細胞と接触させ、そして(3)DN T細胞の増殖性応答または細胞溶解性
応答を測定ことにより判定することができる。ここでそれぞれ、T細胞増殖の増
加またはCD1+標的細胞のT細胞を介する細胞溶解が起これば、CD1により
提示される抗原の存在と相関する。関連する一つの態様においては、本発明は、
試料がCD1ブロッキング物質、即ちCD1拘束性抗原提示を阻害する組成物を
含むか否かを判定する方法を提供する。この関連態様においては、上述のCD1
により提示される抗原の測定は2重に行われ、第1の(対照の)測定は上記のよ
うに行い、そして第2の測定はさらにCD1ブロッキング物質を含むと思われる
試料を加えて行う。試料中にCD1ブロッキング物質が存在すると、第2の測定
におけるT細胞増殖性応答または細胞溶解性応答が第1の測定で得られたものよ
りも小さいことと相関する。
本発明はさらに、CD1+抗原提示細胞(APCs)を生成させるために、単
球のような細胞中でCD1発現を誘導する方法を提供する。一つの方法では、1
種以上のサイトカインと血液の単球を接触させることにより、単離されたこの細
胞中でCD1発現が誘導される。CD1誘導のためのサイトカインとしては、顆
粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−
4と組み合わせたGM−CSF、またはインターロイキン−3が好ましい。CD
1+APCsは、CD1タンパク質を発現しそして表出する細胞であり、従って
DNα:βTCR T細胞に対するCD拘束性抗原を提示する能力を有する。C
D1+APCsは本明細書に開示される方法の幾つかで使用されている。
本発明はさらに、本明細書に開示される方法で使用するためのCD4-8-(D
N)α:βTCR T細胞を提供する。(DN)α:βTCR T細胞はCD1
結合抗原を認識(即ち特異的に結合)し、そして該認識の結果として増殖する。
本明細書には、DN1、DN2およびDN6と名付けられたこのような単離され
た細胞株3株が記載されている。
本発明はさらに、CD1により提示される抗原を試料から単離する方法を提供
する。そのような方法の一つでは、CD1により提示される抗原を含む試料をま
ず通常の技術を用いて分画する。ついで、その結果得られる画分を本明細書に開
示される手順を用いてCD1により提示される抗原が存在するか否かをテストす
る。ついで、CD1により提示される抗原を含む画分はワクチンの開発に用いら
れるか又はより高純度のCD1により提示される抗原を得るためにさらに分画さ
れる。
本発明はさらにCD1により提示される抗原を試料から単離する別の方法を提
供する。この方法は単離されたCD1または細胞表面で発現されたCD1と結合
するCD1により提示される抗原の能力に依存する。そのような方法の一つでは
、CD1により提示される抗原を含む試料をCD1+APCSまたは精製された
CD1分子のいずれかとインキュベートする。ついで、その結果生ずる抗原:C
D1+APCs複合体または抗原:CD1分子複合体を試料から取り出し、CD
1分子が結合しているCD1により提示される抗原を放出する条件の下に置く。
ついで、放出されたCD1により提示さ
れる抗原を精製してCD1+APCsまたは精製CD1分子を除き、さらに通常
の免疫学的、生化学的および/または遺伝学的方法を用いて特性を調べる。つい
で、精製されたCD1により提示される抗原、またはそれらの合成によるもしく
は遺伝子工学的に作られた誘導体を本明細書に開示される手順でCD1により提
示される抗原の活性を測定し、そして、ワクチンの処方に用いられてもよい。
CD1により提示される抗原を単離する上記の手順を用いて、本発明はさらに
本明細書に開示される方法によって調製された、単離されたCD1により提示さ
れる抗原を提供する。これらの開示される方法によって調製されるCD1により
提示される抗原は、CD1により提示される抗原の性質の特性を明らかにするた
めに、ワクチンの開発または処方のために、あるいは自己免疫治療の開発のため
に使用することができる。
本発明はさらに、CD1媒介抗原提示が自己免疫疾患の増悪の根拠として役立
ち得るという観察に基づく。この観察に基づき、本発明はCD1+APCにより
CD1媒介抗原提示を阻害する方法および手段を提供する。CD1媒介抗原提示
は本明細書に記述されるまたは本発明の方法によって単離されるさまざまな組成
物により阻害することができる。
図面の簡単な説明
図1(パネルaとb):GM−CSFおよびIL−4の存在下で培養した単球
によるCD1a、CD1b、およびCD
1cの発現、およびミコバクテリウム ツベルクロシスに対して特異的なCD1
b拘束性T細胞の表面表現型。
パネルa:GM−CSFとIL−4を含む培地中で60時間培養したCD1a
、CD1b、およびCD1cの発現を示した末梢血単球のフローサイトメトリー
分析。細胞を対照モノクローナル抗体(mAb)(点線)または各ヒストグラム
ボックスに示した特異性を有するmAb(実線)で染色した。サイトカインの非
存在下またはインターフェロン−γの存在下で培養した単球は有意量のCD1a
、CD1b、CD1cを発現しなかった(データは示さない)。
パネルb:α:βTCRの発現を示し、CD4の発現は示さず、CD8の発現
はほとんどあるいは全く示さなかったT細胞株DN1のフローサイトメトリー分
析(点線と実線はパネルaと同様に対照および特異的mAbを示す)。
図2(パネルa−d):CD4-8-T細胞株DN1およびそのサブクローンD
N1.C7の増殖性応答の抗原特異性と自己制限性。
パネルa:M.ツベルクロシス(黒塗り四角)、M.レプラエ(黒塗り丸)、
エシェリキア コリ(白抜き丸)、および破傷風毒素(白抜き丸)に対するDN
1の増殖性応答(3H−チミジン取り込み量の1分あたり計数値(CPM))。
抗原提示細胞は不均一のGM−CSF処理およびIL−4処理CD1+単球であ
った。抗原濃度(タンパク質含有率換算)はx軸上に示した。
パネルb:M.ツベルクロシス(1μgタンパク質/ml
)に対するT細胞株DN1の増殖性応答には、CD1+抗原提示細胞(CD1+A
PC)が必要である。APCは次の記号で示した。APCなし、白抜き四角;G
M−CSF処理およびIL−4処理単球(CD1+APC)、黒塗り丸;IFN
γ処理単球(CD1+)、白抜き丸;新鮮単離単球(CD1+)、白抜き三角。各
培養物に添加したAPCの数をx軸上に示した。
パネルc:調べたすべてのドナーのAPCは、M.ツベルクロシスに対してT
細胞株DN1が増殖性応答を示したことに根拠を与えるものであった。白抜きバ
ーはM.ツベルクロシス非存在下のT細胞とAPCを示し、黒塗りバーはM.ツ
ベルクロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のT細胞とAPCを示す。AP
Cは5名の未処理ドナーのGM−CSF処理およびIL−4処理末梢血単核細胞
であった。HLAタイプ分画を行なったところ、5名のドナー全員がHLA−A
、−B、−C、−DR、−DP、または−DQ座位の対立遺伝子を共有していな
いことが判明した(データは示さない)。
パネルd:抗CD1bmAbはM.ツベルクロシス(1μgタンパク質/ml
)に対するDN1およびDN1.C7の増殖性応答を特異的に阻害した。APC
はGM−CSF処理およびIF−4処理単球であった。黒塗りバーはM.ツベル
クロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のAPCに対するT細胞の増殖性応
答を示し、波線はM.ツベルクロシス非存在下のAPCに対する応答を示し、「
nd」は測定してい
ないことを示す。使用したモノクローナル抗体は、P3(対照IgG)、OKT
6(抗CD1a)、WM−25[抗CD1b;ファバロロら(Favaloro,E.J.,
et al.)、DiseaseMarkers 4:261-270(1986))]、10C3(抗CD1c)、W
6/32(抗MHCクラスI)、およびIVA12[抗MHCクラスII;ショ
ー(Shaw,S.)、Hum.Immun.12:191-211(1985)]であった。
図3:抗原提示細胞株CR1およびサイトカイン剌激単球が、T細胞株DN1
から得られたクローンであるT細胞株2.13DN1およびG7の成長を刺激す
る能力の比較。白抜きバーはM.ツベルクロシス非存在下のT細胞とAPCを示
し、黒塗りバーはM.ツベルクロシスの存在下(1μgタンパク質/ml)のT
細胞とAPCを示す。
図4(パネルa−d):リンパ芽球様細胞株C1RのCD1トランスフェクタ
ントによるM.ツベクロシスの提示。ベクターpSRα−NEO DNA(モッ
ク)または図に示したCD1分子をコードするcDNAを含むpSRα−NEO
の構築物(CD1a、CD1b、CD1c)で安定的にトランスフェクトされた
C1R細胞を培地のみ(白抜きバー)またはM.ツベルクロシスを含む培地(2
5μgタンパク質/ml、黒塗りバー)中で12時間培養し、51Crで標識し、
様々なエフェクターT細胞の存在下で細胞溶解性測定の標的細胞として使用した
。標的細胞に対するエフェクターT細胞の比率は50:1であった。
パネルa:M.tbCD1bにより提示されるAg特異的
T細胞株DN1。
パネルb:DN1サブクローンDN1.C7。
パネルc:CD1a自己反応性クローンBK6。
パネルd:CD1c自己反応性クローン3C8。
図5(パネルa−c):M.ツベルクロシス抗原のCD1b拘束性提示はMH
CクラスII領域によってコードされた分子を必要としないが、クロロキン感受
性経路による抗原プロセシングが関与している。
パネルa:T細胞株DN1によるCD1T2トランスフェクタントの溶解。ベ
クターDNAのみでトランスフェクトされたT2細胞(モックトランスフェクタ
ント)を丸で示し、CD1bでトランスフェクトされたT2細胞を三角で示した
。白抜き記号はM.ツベルクロシスの存在下で前培養しなかった標的細胞を示し
、黒塗り記号はM.ツベルクロシス(10μgタンパク質/ml)の存在下で1
2時間の前培養を行なった標的細胞を示す。フローサイトメトリー分析で、CD
1bでトランスフェクトされたT2細胞をM.ツベルクロシスの存在下で培養し
てもCD1b発現に影響を及ぼさないことが示された(データは示さない)。
パネルb:CD1b+APCをグルタールアルデヒドで固定すると、細胞株D
N1に対するM.ツベルクロシスの提示が防止される。CD1b+APC(GM
−CSF処理およびIF−4処理末梢血単核細胞、PBMC)をM.ツベルクロ
シスの存在下(1μgタンパク質/ml、「パルス化APC」)または非存在下
培地(「非パルス化APC」)中で12
時間培養し、集菌し、各細胞懸濁液の一定量を0.0125%グルタールアルデ
ヒドで30秒間固定した。生じたAPC調製物が、可溶性M.ツベルクロシス抗
原(1μgタンパク質/ml)の非存在下(白抜きバー)または存在下(黒塗り
バー)で細胞株DN1の増殖を刺激する能力があるかどうかを調べた。
パネルc:クロロキンによるM.ツベルクロシスのCD1b拘束性提示の阻害
。HLA−DR7+の個体から得たCD1b+APCを図に示した濃度のクロロキ
ンの存在下37℃で60分間M.ツベルクロシス抗原でパルス化し、グルタール
アルデヒドで固定し、細胞株DN1(黒塗り丸)またはM.ツベルクロシス特異
的HLA−DR7+拘束性CD4+T細胞株DG.1(白抜き三角)の存在下での
増殖測定にAPCとして使用した。結果は、クロロキン非存在下でM.ツベルク
ロシスでパルス化した固定APCに対する応答阻害率で表わしたが、数字は同様
の3つの実験の代表値である。
図6:図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に対
するT細胞株DG.1の増殖性応答に及ぼす影響。
図7:図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に対
するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響。
図8:図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.フォルツイツム抗原に対
するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響。
図9(パネルa−c):DNα:βTCR+T細胞株によって認識されるミコ
バクテリア抗原は有機溶媒による抽出後に有機相中に定量的に分配され、CD1
b拘束を受ける。有機溶媒による抽出を行なうと、CD1B拘束性ミコバクテリ
ア抗原が、従来のMHCクラスII拘束性CD4+α:βTCR+T細胞株によっ
て認識されるミコバクテリア抗原およびDNγ:δ(Vγ2Vδ2)TCR+T
細胞によって認識される小型の非タンパク質性ミコバクテリアリガンドと区別さ
れる[プフェッファーら(Pfeffer,K.,et al.)、J.Immunology 148:575-583
(1992)]。全ミコバクテリア超音波処理物をクロロホルム/メタノール/H2O
で抽出し、生じた3相を、CD1+単球および図に示した希釈率で希釈した様々
な抗原調製物の存在下でT細胞を培養することによって測定した。
パネルa:全ミコバクテリア超音波処理物(■、破線)、有機相(□、実線)
、水相(○、実線)、またはインターフェース(■、実線)に対するCD1b拘
束性DN T細胞株DN1の増殖性応答。x軸上の抗原濃度は全超音波処理物標
品に対して正規化させた希釈率の逆数で示した。
パネルb:有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するHLA−DR7(M
HC)拘束性ミコバクテリア特異的CD4+T細胞株DG.1の増殖性応答。
パネルc:有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するVγ2Vδ2T細胞
クローンDG.SF68の増殖性応答。
図10:ミコバクテリア抗原調製物でパルス化したC1R
細胞のCD1トランスフェクタントに対するDN1細胞株の細胞溶解性応答。C
1Rリンパ芽球様細胞のCD1bまたはCD1cトランスフェクタント[ポーセ
リら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450(1989)]を、有機溶媒(+
)で抽出した後のミコバクテリア抗原調製物または培地単独(−)のいずれかで
パルス化した標準細胞溶解性測定の標的として使用した。CD1bでトランスフ
ェクトしたC1R細胞のT細胞株DN1による認識は抗原でパルス化した場合に
限って起きる。CD1c+標的に対しては抗原特異的認識は起きない。
図11:6,6−トレハロースジミコレート(コード因子)の化学構造。
図12(パネルa−c):CD1b拘束性T細胞株DN1によって認識される
ミコバクテリア抗原はミコール酸である。
パネルa:CD1b拘束性T細胞株DN1の増殖性応答は逆相C18HPLC
上のミコール酸ピークと相関する。CD1b拘束性抗原をすべて含んでいる精製
ミコバクテリアアシル鎖画分を逆相HPLCを用いるクロマトグラフィーに付し
、生じた画分がT細胞株DN1による増殖性応答を刺激する能力を測定した。パ
ネルの上段は溶出物の254オングストロームにおける吸光度スペクトル(光学
密度単位OD、x10-4で表わす)(実線)ならびに対応する溶出勾配の塩化メ
チレン濃度(破線)を示す。2分と6分の間に溶出する大きな吸光度ピークは誘
導剤として使用した遊離の臭化ブロモフ
ェナシルである。パネルの下段は、それぞれの1分間画分に対するT細胞株DN
1の増殖性応答を示す。CD1b拘束性抗原応答はミコール酸と相関する広いピ
ークとして見られる。
パネルb:鹸化6,6−トレハロースジミコレート(コード因子)はCD1b
拘束性T細胞株DN1による増殖性応答を刺激するが、鹸化トレハロースジベヘ
ネートは刺激しない。M.ツベルクロシス(H37Ra)またはM.カンサシイ
のいずれかから精製されたトレハロースジミコレートの鹸化によってミコール酸
ができた。トレハロースジベヘネート(合成コード因子)も同じやり方で処理し
た。抗原濃度はx軸上にコード因子1mlあたりのμgで示した。
パネルc:M.ツベルクロシス(H37Ra)から精製したトレハロースジミ
コレート(H37Ra)を逆相HPLCで分析すると、ミコール酸ピークに対応
する画分によるCD1b拘束性T細胞株DN1の刺激が起きる。M.ツベルクロ
シスの鹸化トレハロースジミコレートをパネルaに示した実験と同様のクロマト
グラフィーに付し、画分が細胞株DN1による増殖性応答を誘導する能力がある
かどうか調べた。パネルaからわかるように、生理活性は早期ミコール酸ピーク
と相関する。
図13:M.ツベルクロシスのコード因子(Sigma社)から鹸化によって調製
したミコール酸でパルス化したC1R細胞のCDトランスフェクタントに対する
DN1T細胞株の細胞溶解性応答。C1Rリンパ芽球様細胞のCD1a、CD1
b、CD1c、またはモックトランスフェクタントを、トレハロースジミコレー
ト(+)から調製したミコール酸または培地のみ(−)でパルス化したものを細
胞溶解性測定の標的として使用した。結果は特異的溶解率(%)で示した。
図14:ミコール酸は分裂促進性はないが、CD1bによって拘束されT細胞
株DN1によって認識される特異的抗原である。ミコバクテリアに対して特異的
な4つのT細胞株と別の2つのT細胞株について、全M.ツベルクロシス超音波
処理物、精製コード因子から調製したミコール酸調製物、またはM.tb超音波
処理物かコード因子からHPLC精製したミコール酸のいずれかに対する応答能
力があるかどうかを調べた。3つの代表的なミコバクテリア特異的T細胞株の応
答を次のように示した。DN1(■)(DN、CD1b拘束、α:βTCR+)
、DG.1(□)(CD4+、HLA−DR7拘束、α:βTCR+)およびDN
6(○)(DN、CD1c拘束、α:βTCR+)。調べた6つのT細胞株のす
べてについて、HLA−DR7陽性個体のGM−CSF処理およびIL−4処理
(CD1+)PBMCがAPCであった。
上段パネル:M.tb(H37Ra、Sigma社)の全超音波処理物に対する3
つのミコバクテリア特異的T細胞株の増殖性応答。抗原濃度はx軸上にcpm
x 10-3で示した。図に示した3つのT細胞株はいずれも全ミコバクテリア
超音波処理物に応答する。
中段パネル:M.tb超音波処理物から単離したHPLC
精製ミコール酸に対する増殖性応答。CD1b拘束性T細胞株DN1だけが精製
ミコール酸に応答する。
下段パネル:精製M.tbコード因子(Sigma社)から作成したHPLC精製
ミコール酸に対する増殖性応答。CD1b拘束性T細胞株DN1だけが、コード
因子ミコール酸に応答して増殖する。同じ実験で調べた他の3つのT細胞株すな
わちSP−F3[ロンカルロら(Roncarlo,M.G.,et al.)、J.Exp.Medicine 168
:2139-2152(1988)](CD4+α:βTCR+、DR拘束、破傷風毒素特異的
)、CP.1.15[モリタら(Morita,C.T.,et al.)、Eur.J.Immunol. 2 1:
2999-3007(1991)](DN、Vγ2Vδ2TCR+、ミコバクテリア特異的)、
およびBK6[ポーセリ(Porcelli,S.)、Nature 341:447-450(1989)](DN
、α:βTCR+、CD1aに対して自己反応性)はここでは示さない。3つの
株すべてが精製ミコール酸に応答したわけではなく、2つが特異的抗原(破傷風
毒素−SP−F3、<1kDaM.ツベルクロシス調製物−CP.1.15)に
対して応答して増殖した。BK6はCD1aに対して細胞溶解活性を示すが、調
べたどのタイプのCD1a+APCに対しても応答して増殖することができない
[ポーセリ(Porcelli,S.)、Nature 341:447-450(1989)]。
図15:図に示したモノクローナル抗体がT細胞株2.13.DN1(DN1
、上段パネル)および8.23.DN1(DN2、下段パネル)の増殖性応答に
及ぼす影響。
図16:T細胞株DN2に対するM.ツベルクロシス抗原
のCD1c拘束性提示。ベクター(モック、パネルa)および図に示したCD1
タンパク質をコードするDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c)で
トランスフェクトしたCR1細胞の細胞溶解測定の結果。トランスフェクトされ
た細胞はM.ツベルクロシスの存在下(黒塗り丸)または非存在下(白抜き丸)
で前培養した。
図17:T細胞株DN6に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1c拘束性提
示。ベクター(モック、パネルa)および図に示したCD1タンパク質をコード
するDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c)でトランスフェクトし
たCR1細胞の細胞溶解測定の結果。トランスフェクトされた細胞はM.ツベル
クロシスの存在下(黒塗り丸)または非存在下(白抜き丸)で前培養した。
図18:有機溶媒による抗原抽出後の超音波処理物中のM.ツベルクロシス抗
原に対するCD1c拘束性細胞株DN6の増殖性応答。増殖はy軸上にcpm(3
Hチミジン取り込み量)単位で示した。APCはCD1発現単球であった。6
つの対数点における抗原力価を求め、代表的な対数点(抗原の1:3,750希
釈物)の結果を示した。バックグランドcpm(培地のみ対照から求めた)をす
べての値から差し引いた。
図19:抗原の鹸化前後の超音波処理物中のM.tb抗原に対するCD1c拘
束性細胞株DN6の増殖性応答。増殖性応答をy軸上にcpm単位で示し、抗原
濃度(希釈倍率の逆数で示す)をx軸上に示した。M.tb(H37Ra株、Di
fco社)の10mg相当量をPBS中で超音波処理し、そのまままたは鹸化して
から使用した。すべての抗原希釈液は5ml中の200mg凍結乾燥菌体の標準
初期濃度に対して正規化した。
好適な態様の説明 用語
抗原:(1)動物における免疫応答を誘導するとともに、(2)その動物の免
疫系の1つ以上の抗原認識成分と特異的に相互作用を示す分子または組成物。
外来抗原:正常健康動物にとって内因性でない抗原。
自己免疫抗原:特定の自己免疫疾患における抗原であって、動物体内の正常内
因性分子または組成物である抗原。「自己抗原」および「自家抗原」と同義。
CD1により提示される抗原:CD1ファミリーのタンパク質の1メンバーに
よって結合され、CD1+APCの表面上に表出される抗原。CD1により提示
される抗原は起源およびそれらを認識するCD1ファミリーのメンバーによって
サイズと組成が異なる。本明細書で使用する場合、「CD1により提示される抗
原」という用語は、本明細書中で同定される抗原および本明細書に開示される手
順を用いて単離される抗原の両方または一方を含む。「CD1拘束性抗原」と同
義。「CD1結合抗原」とは、適当なCD1分子に結合しているCD1により提
示される抗原をいう。
CD1ファミリーのタンパク質:構造、免疫学的交差反応
性、および/または分布に基づき既知のCD1分子と関連していることが確認さ
れるタンパク質の1群。ある特定のCD1タンパク質を、CD1ファミリーのタ
ンパク質のメンバーということもできる。CD1ファミリーのタンパク質のメン
バーとしては、CD1a、CD1b、CD1c,CD1d、およびCD1eなど
が挙げられるが、これらに限定されない[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)
、Immun.Rev.120:137-183(1991)参照]。
CD1陽性細胞:CD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現
し、表出する細胞。「CD1+細胞」と同義。当該分野に熟練せる者であれば、
本明細書で説明する手順または当該分野において既知の手順を用いて、ある細胞
がCD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現しているかどうか
を判定することができる[実施例1およびポーセリら(Porcelli,S.,et al.)
、Immun.Rev.120:137-183(1991)参照]。
抗原提示細胞(APC):タンパク質担体を介して表面上に抗原分子を表出し
、T細胞に対して抗原を提示する細胞。抗原結合タンパク質担体としては、MH
CクラスI分子、MHCクラスII分子、およびCD1分子などが挙げられ、対
応するAPCはMHCI+APC、MHCII+APC、およびCD1+APCと
呼ばれる。
CD1拘束性T細胞:CD1に結合したCD1により提示される抗原を認識し
うる成熟末梢血TCR陽性(TCR+)リンパ球。CD1拘束性T細胞の定義は
、CD1に結合した
CD1により提示される抗原と相互作用を示すT細胞サブセットに限定されてい
るので、その定義は当該分野で認められているT細胞の定義より狭い。本発明の
好ましいCD1拘束性T細胞はCD4−8−であることを特徴とする。
CD4-8-T細胞:CD4とCD8を発現しない成熟末梢血TCR+リンパ球
。「二重陰性T細胞」および「DNT細胞」と同義。CD4-8-T細胞を同定す
る技術は当該分野において既知であり、たとえば実施例1および既報[パンチョ
ムーシーら(Panchomoorthy,G.,et al.)、J.Immuno. 147:3360-3369(1991)
]に記載されているようにしてフローサイトメトリーを用いて本発明に容易に使
用することができる。このような手順を用いて、DN1、DN2、およびDN6
という3つのCD4-8-T細胞株が単離されているが、これらについても本明細
書で説明する。DN6の方が良好な成長率を示すという点を除けばDN2とDN
6は同等であると思われる。
アジュバント:抗原とともに動物に導入されるとその抗原に対する免疫応答を
強化する分子または組成物。
遺伝子操作を受ける:遺伝子変化を導入する目的で人為的操作に付すこと。
試料:本明細書に開示する手順を用いて試験することができる溶液、乳剤、懸
濁液、または抽出物。試料は可溶性抽出物または有機抽出物であってもよいが、
これらに限定されない。実施例1と2にミコバクテリウム ツベルクロシスから
得られる様々なタイプの試料を示す。
接触:ある対象物を別の対象物の存在下でインキュベートする過程。したがっ
て、ある細胞を試料と接触させるということは、その細胞をその試料とともにイ
ンキュベートするということである。
分画:試料を、限定されないが、サイズ、電荷、溶解度、組成などの物理的ま
たは化学的性質に基づき、その成分を分離する条件または手順に付すこと。分画
手順の例としては、選択的沈殿、有機抽出、サイズ排除透析またはクロマトグラ
フィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限
定されない。
発現:DNA分子の転写によって対応するmRNA分子ができ、それがリボソ
ームおよび関連細胞性因子によってポリペプチドへと翻訳されることによって遺
伝子産物ができる過程。
表出(Displaying):タンパク質またはタンパク質:抗原複合体が第2の細胞
または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場である細胞最外面
にタンパク質またはタンパク質:抗原複合体が局在化される過程。タンパク質ま
たはタンパク質:抗原複合体は、細胞の最外面に存在しているという理由で第2
の細胞および/または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場合
にその細胞によって表出されるという。
抗原のプロセシング:表出能を示すようにするために細胞性因子によって抗原
が処理される過程。
CD1ブロッキング剤:CD1により提示される抗原とC
D1の相互作用をブロックする能力またはCD1:抗原複合体とそれらのコグネ
ートT細胞受容体の相互作用をブロックする能力を有する組成物または化合物。
ブロッキング剤としては、(1)CD1と結合する薬剤、(2)CD1により提
示される抗原と結合する薬剤、(3)CD1:抗原複合体と結合する薬剤、(4
)CD1:抗原複合体を認識するT細胞受容体と結合する薬剤、および(5)C
D1により提示される抗原のプロセシングを防止する薬剤などが挙げられる。
本発明は、CD1分子がT細胞に対する抗原を提示する機能を果たすという予
想外の新知見に基づくものである。本発明はさらに、顆粒球/マクロファージコ
ロニー剌激因子(GM−CSF)やインターロイキン−4(IL−4)などのサ
イトカインと接触させることによってCD1を発現させるように誘導することで
T細胞に対する抗原提示の応答能を細胞にもたせることができるというという知
見に基づくものである。これら2つの知見に基づき、本発明は、試料がCD1に
より提示される抗原を含んでいるかどうかを判定する様々な方法、CD1により
提示される抗原を単離精製する方法、本明細書に開示する方法によって単離され
た精製CD1により提示される抗原、ならびにCD1により提示される抗原の同
定、単離、および精製に使用することができるCD1陽性細胞を単離する方法を
開示するものである。
1つの態様においては、本発明は、試料がCD1により提示される抗原を含ん
でいるかどうかを判定する方法を提供する。1つのそのような方法においては、
試料中のCD1によ
り提示される抗原の存在は、まず試料をCD1陽性細胞と接触させ、次いでその
第1段階の細胞をT細胞と接触させた後、T細胞の増殖を測定することによって
判定することができる。
T細胞のクラスをキャラクタライゼーションする方法およびT細胞の亜集団を
単離する方法が記載されている[ワイソッキとサトー(Wysocki,L.J.,and Sat
o,V.L.)、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)75:2844:2848(1978);ワシクとモ
リモト(Wasik,M.A.,and Morimoto,C.)J.Immunol. 144:3334-3340(1990);
ハリマンら(Harriman,G.R.,et al.)、J.Immunol.145:4206-2414(1990);
コウロバら(Koulova,L.,et al.)、J.Immunol.145:2035-2043(1990);スチ
ュワードとメイル(Steward,M.,and Male,D.)、Chapter 25 in Immunology
,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New
York,1989]。イン・ビトロでT細胞を培養する方法、およびT細胞をミエロ
ーマなどの非生育制限細胞と融合させて不死化させる方法が記載されている[パ
ウルら(Paul,W.E.,et al.)、Nature 294:697-699(1981);ウイリアムス(Wi
lliams,N.)、Nature 296:605-606(1982)]。CD4-8-T細胞を同定する技術
は当該分野において既知であり、たとえば実施例1および既報[パンチョムーシ
ーら(Panchomoorthy- G.,et al.)、J.Immuno. 147:3360-3369(1991)]に記
載されているようにしてフローサイトメトリーを利用して、本発明に使用するこ
とができる。本発明は、T細胞集団を強化する
ことでCD1により提示される抗原に対して反応性を示す単離T細胞クローンを
得る方法を提供することによって、これらの技術をさらに進歩せしめるものであ
る。T細胞の集団を細胞分裂させ、CD1+APCおよびCD1により提示され
る抗原の存在下の増殖の有無に基づき、またはCD1により提示される抗原の存
在下でのCD1分子を発現するトランスフェクト細胞に対する細胞傷害性活性の
有無に基づき、混合T細胞亜集団を単離する。このような手順を用いて、DN1
、DN2、およびDN6という3つのCD4-8-T細胞株を単離したが、これら
について本明細書で説明する。DN6の方が成長率が高いという点を除けば、D
N2とDN6は同等であると思われる。
本発明はさらに、細胞上にCD1発現を誘導する方法を提供する。1つのその
ような方法においては、細胞を1つ以上のサイトカインと接触させることによっ
てCD1の発現を誘導することができる。好ましいCD1誘導用サイトカインは
、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、GM−CSFとイ
ンターロイキン−4(IL−4)を組み合わせたもの、あるいはやインターロイ
キン−3(IL−3)である。実施例1は、10%ウシ胎仔血清を加えたRPM
I−1640培地中で単球をそれぞれ100単位のGM−CSFとIL−4に6
0時間接触させることによって、CD1ファミリーの様々なメンバーを発現する
よう誘導することができることを開示している。当該分野に熟練せる者であれば
、本明細書で開示する方法と材料を用いて、接触工程がCD
1発現の誘導に十分である場合に、接触時間、サイトカインのタイプと濃度、お
よび接触条件を変更して同様の結果を容易に得ることができる。
当該分野においてはT細胞増殖を判定するいくつかの手順が既知であり、上記
方法に使用することができる。当該分野に熟練せる者であれば、このような手順
を本発明における使用に適応させることが容易に可能である。実施例1で説明す
る1つのそのような手順では、液体シンチレーションおよび既報[モリタら(Mo
rita,C.T.,et al.)、Eur.J.Immunol.21:2999-3007(1991)]に記載の方法
によって3Hチミジンの取り込み率を測定する。
本発明はさらに、試料からCD1により提示される抗原を単離する方法を提供
する。1つのそのような方法においては、試料をまず常法を用いて分画する。次
いで、上記で概説したようにして、試料の画分にCD1により提示される抗原が
含まれているかどうかを調べる。実施例2と3は、クロロホルム:メタノールに
よる有機抽出とケイ酸クロマトグラフィーを用いてM.ツベルクロシス抽出物含
有試料を分画することでCD1により提示される抗原を精製する分画手順につい
て説明している。
本発明はさらに、CD1により提示される抗原へのCD1結合の特異性に基づ
きCD1により提示される抗原を単離する方法を提供する。1つのそのような方
法においては、まずCD1により提示される抗原を含有する試料を精製CD1ま
たはCD1を発現し表出する細胞(「CD1+細胞」)と接
触させる。次いで、生じた抗原:CD1複合体または抗原:CD1+細胞複合体
を試料から分離する。この手順を用いて、精製された抗原:CD1複合体または
抗原CD1+細胞複合体が得られる。CD1により提示される抗原をさらに精製
するためには、いずれかのタイプの複合体をCD1結合抗原のCD1分子からの
遊離に適した条件下で処理する。
当該分野の熟練者であれば、上記2つの単離方法を組み合わせて別のCD1に
より提示される抗原の単離方法を確立することができる。1つのそのような組み
合わせにおいては、CD1に対するCD1により提示される抗原の結合に基づく
精製方法を実施する前に、上記のようにして試料を分画する。
本発明はさらに、本明細書に開示する手順を用いて同定または単離されるCD
1により提示される抗原を提供する。MHCにより提示される抗原とは異なり、
CD1により提示される抗原はポリペプチドではない。実施例2〜4で詳細に説
明している1つのCD1により提示される非ペプチド抗原は、M.ツベルクロシ
スから単離されたミコール酸を含んで成るリピド抗原である。実施例5と6で説
明している別のCD1により提示される抗原はさらに複雑なリピドである。この
ような抗原はワクチンの処方と開発に用途がある。
本発明のCD1により提示される抗原(本明細書に開示する手順を用いて同定
または単離されたもの)はワクチンとして容易に使用できる。当該分野の熟練者
であれば、通常の処方方法を用いてワクチン用単離CD1により提示される抗原
を処方することができる[Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,G
ennaro,A.R.,ed.,Mack,Easton,1990;The Pharmacologist Basis of Thera
peutics,7th Ed.,Gilman,A.G.,et al.,eds.,MacMillan,New York,1985
参照]。
本発明のCD1により提示される抗原は、本明細書に開示するようにして広範
囲の純度に精製することができる。当該分野の熟練者にとっては、様々な精製方
法を用いて、目的に必要な程度まで精製されたCD1により提示される抗原を得
る手段が公知である。
本発明のワクチンは、精製されたCD1により提示される抗原を用いて処方す
ることができる。また、CD1結合抗原を用いて処方することもできる。CD1
拘束性抗原は抗原とCD1の複合体としてT細胞に提示されるので、場合によっ
ては抗原:CD1複合体の使用によってさらに優れた免疫特性を得ることができ
る。
本発明はさらに、T細胞に対するCD1拘束性抗原提示の阻害物質すなわちC
D1ブロッキング剤の測定方法を提供する。1つのそのような方法においては、
CD1ブロッキング剤を用いてCD1拘束性抗原がCD1に結合する能力をブロ
ックすることによってCD1抗原の提示を阻害する。本明細書で使用する場合、
(1)CD1分子に対するCD1により提示される抗原の結合または(2)コグ
ネートT細胞受容体へのCD1:CD1により提示される抗原複合体の結合を低
下させる場合に、CD1ブロッキング剤が「CD1拘束性抗
原提示を阻害する」という。そのような結合を検出不可能なレベルまでブロック
しうるCD1ブロッキング剤もあれば、そのような結合をわずかしか低下させな
いCD1ブロッキング剤もある。CD1ブロッキング剤としては、(1)CD1
と結合する薬剤、(2)CD1により提示される抗原と結合する薬剤、(3)C
D1:抗原複合体と結合する薬剤、および(4)CD1:抗原複合体を認識する
T細胞受容体と結合する薬剤などが挙げられる。それぞれのブロッキング剤の具
体例としては、(1)CD1により提示される抗原と結合するCD1分子の一部
分に結合してそれをブロックするポリクローナルまたはモノクローナル抗体、(
2)CD1と結合するCD1により提示される抗原の一部分に結合してそれをブ
ロックするポリクローナルまたはモノクローナル抗体、(3)T細胞受容体のC
D1:抗原結合部分に由来する合成オリゴペプチドであって、無傷のT細胞受容
体によって結合されているCD1:抗原複合体の一部分に結合してそれをブロッ
クするもの、および(4)精製CD1分子またはその合成誘導体に化学的に結合
させたCD1により提示される抗原から成る合成化合物などが挙げられる。
CD1拘束性抗原の抗原提示を阻害する別の方法においては、抗原:CD1複
合体とT細胞上のTCR分子との相互作用をブロックするCD1ブロッキング剤
を用いることができる。提示段階を阻害することによって、特定のT細胞サブセ
ットの活性化を阻害することができる。TCR分子由来ペプチドを用いて自己免
疫疾患(MS)患者を治療するパイロッ
ト試験が進行中である[オクセンベルグら(OKsenberg,J.R.,et al.)、J.Ne
urol.Sci.115(Suppl.):S29-S37(1993)]。本発明のCD1により提示される抗
原を認識するT細胞によって表出されるTCRポリペプチドをコードするDNA
分子は当該分野において既知の方法によって単離される[オクセンベルグら(Ok
senberg,J.R.,et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:988-992(1989);
オクセンベルグら(Oksenberg,J.R.,et al.)、Nature 345:344-346(1990)お
よび正誤表、Nature 353:94(1991);ウエマツら(Uematsu,Y.,et al.)、Proc
.Natl.Acad.Sci.(USA) 88:534-538(1991);パンザラら(Panzara,M.A.
,et al.)、Biotechniques 12:728-735(1992);ウエマツ(Uematsu,Y.)、Im
munogenet. 34:174-178(1991)]。DNA配列をポリペプチド配列に変換し、T
CRポリペプチドの抗原結合可変領域に対応するポリペプチド配列の一部を用い
て、APC上のCD1:抗原複合体と結合し、それにより抗原提示を阻害する合
成オリゴペプチドを設計する。オリゴペプチドは常法[スチュワードとヤング(
Steward and Young)、Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.
,Rockland,Illinois,1985]に従い化学的に合成し、逆相高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)によって反応混合物から精製する。付加的にあるいは代替
的に、抗TCR抗体および抗TCR結合ペプチドを作成する方法もMHC提示に
関しては当該分野において公知であり、本明細書に開示するCD1提示方式に容
易に適応させることができる[ストロミンジャ
ー(Strominger,J.L.)、Cell 57:895-898(1989);デービスとブジョルクマン
(Davis,M.M.,and Bjorkman,P.J.)、Nature 334:395-404(1989)] 。
当該分野の熟練者であれば、公知の抗体作成方法ならびに妥当なブロッキング
剤デザインを利用して、本発明のブロッキング剤を容易に得ることができる[ハ
ーローとレーン(Harlow,E.,and Lane,D.)、Antibodies:A Laboratory Man
ual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,1988;Synhtetic Pepti
des:Answers Guide,Freeman,W.H.,New York,1991;カスプルザク(Kasprza
k,A.A.)、Biochemistry 28:9230-9238(1989)]。付加的にあるいは代替的に、
分子量的に多様な分子のライブラリーをスクリーニングして、CD1ブロッキン
グ剤である個々のメンバーの分子を検出することができる。CD1介在T細胞増
殖性応答と細胞傷害性応答の両方または一方を阻害する能力に基づき、本明細書
に説明する材料と方法を用いて、有効なCD1ブロッキング剤を同定することが
できる。
上記本発明の態様は、単独で、または互いに組み合わせるか、他の補足的方法
および/または組成物と組み合わせて、目的の用途に使用することができる。
当該分野に熟練せる者であれば、以下の実施例を参照することによって本発明
の実施手順と方法をさらに詳細に理解できるが、これらの実施例は本発明の範囲
および本発明に係る請求の範囲を制限するものではない。
実施例1:CD1bによる抗原提示 方法
流動血球計算は、下記のモノクロナール抗体(mAbs)を用いて既報に記載され
ているような(パンチャモオルシィー(Panchamoorthy,G.)ら、J.Immunology 1 47
:3360-3369(1991))方法で実施された:P3(IgG1コントロール;パンチャモオ
ルシィー(Panchamoorthy,G.)ら、J.Immunology 147:3360-3369(1991))、OKT6
(anti-CD1a;ラインハーッ(Reinherz,E.)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(US
A) 77:1588-1592(1980)),4A7.6(anti-CD1b;オリーブ(Olive,D.)ら、Immun
ogenetics 20:253-264(1984)),10C3(anti-CD1c;マーチン(Martin,L.H)ら
、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 84:9189-9193(1987)),W6/32(anti-HLA-A
,B,C;ブロドスキー(Brodsky,F.M.)およびパーハム(Parham,P.P.)J.Immuno
logy 128:129-135(1982)),BMA031(anti-α:βTCR;ラニエル(Lanier,L.L.
)ら、in Leukocyte Typing III,McMichael,A.J.,ed.,pp.175-178、Oxford
University Press,1987),OKT4(anti-CD4;ラインハーツ(Reinherz,E.)
ら、Proc.Natl.Acad Sci.(USA)77:1588-1592(1980)),OKT8(anti-CD8α
:ラインハーツ(Reinherz,E.)ら、Proc.Natl.Acad,Sci.(USA) 77:1588
-1592(1980))および2ST8-5H7(anti-CD8β;シューエ(Shiue,L.)ら、J.Exp
.Med. 168:1993-2005(1988))。
単球を正常なドナーの濃縮白血球からプラスティック接着
により単離した(アネゴン(Anegon,I.)ら、J.Immunology 147:3973-3980(1991
),そして0.53 mM EDTAを含む燐酸緩衝食塩水(PBS)(PBS/EDTA)の中で37℃下
でインキュベートすることにより分離した。接着細胞は通常>90%CD14+およびMH
C classII+であり、又表面染色によりCD1a,CD1bおよびCD1cに対して陰性である
ことが判った(データは示されていない)。CD1発現を誘発する為に、単球を1
ml当たり100単位のGM-CSFおよびIL-4(Genetics Research Institute)をそれぞ
れ含む10%仔牛胎児血清(FCS,Hyclone)を含むRPMI-1640(Gibco)の中で60
時間培養した。細胞は上記のようにPBS/EDTAを用いて採取した。
T細胞株DN1は、無作為に選ばれた正常ドナーの抹消血液から確立した。非接
着性の単核球細胞をmAbs OKT4およびOKT8およびうさぎの補体を用いて処理し、
そして残りの生存細胞をOKT4 mAb(anti-CD4)、OKT8 mAb(anti-CD8α)およびan
ti-TCRδ1mAb(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(1991))の
混合物の中に1時間懸濁し、洗浄し、そしてやぎの抗マウス免疫グロブリンと結
合した磁気ビーズ(Dynal)を用い4℃で30分間インキュベートした。CD4+およ
び/又はCD8+および/又はδ-TCR細胞の磁気分離および除去の後に、残りのCD4-
8-α:βTCR+細胞を1ml当たり 100単位のGM-CSFおよびIL-4をそれぞれ含む
完全媒地(10%FCSおよびモリタ(Morita,C.T.)ら、により以前に記載された追
加の添加物(Eur.J.Immun. 21:2999-3007(1991)を含むRPM-1640)の中の同数の
自己由来単球と共に培
養された。脱湿された桿菌(H37Ra株(Dlfco))をPBSの中で超音波処理し、ついで
超音波被処理物を透明化する(即ち、不溶物質を除去する為に)為に100,000g
で遠心分離することにより作られたM.ツベルクロシス可溶性抽出物が加えられ
て10μg/mlのバクテリアタンパク質濃度にされた。超音波処理のプロセス中に
CHAPS又はオクチルグルコシドのような界面活性剤を加えることにより、M.tb.
の可溶水性超音波被処理体から可溶性の更に高い抗原性(即ちT細胞増殖性の)
活性が得られる;上記の界面活性剤を加えることがなければ超音波処理後の清澄
化中に抗原性の活性の90から95%が失われる。培養物は、10日から14日毎に
完全媒地中のM.ツベルクロシスおよび異種CD1+単球(上述のようにCD1を発現
するように誘発された)を用いて改めて剌載を与え、そして3日から4日毎に1
nM組換えインターロイキン-2(IL-2)を含む新鮮な媒地を補給した。
T細胞増殖応答測定はそれぞれ5×104のT細胞および96ウエルの平底マイク
ロタイタープレート(Linbro)の中の完全媒質200μlの中の照射された(5,000
Rad)APCsを用いて3重に実施された。M.ツベルクロシスに関して記載されたと
同様に、M.レプレ(leprae)およびエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)可
溶性抽出物が作られた。モノクロナール抗体を精製免疫グロブリンとして25μg/
mlの最終濃度で加えた。培養物を、1μCi3H−チミジン(6.7Ci/mmol,New En
gland Nuclear)による6時間のパルスの後5日目(mAbブロッキングの場合には
3日目)に採取し、そし
て3Hの取り込みを液体シンチレーションカウンティングにより測定した。結果は
、3つの培養物の3H−チミジン取り込みの1分当たりの平均カウント(CPM)とし
て表した。取り出された単球又は全抹消血液の単核球細胞(PBMCs)は、上述のよ
うに組換えGM-CSFおよび組換えIL-4により或はIFNγ 100単位/mlを用いて6
0時間処理した後、それらをT細胞と組み合わせて増殖測定に使用された。T細
胞クローンDN1.C7は、限界希釈培養する際にフィトヘマグルチニン(PHA)剌激
によりDN1から誘導され、そして上述のようにPHA刺激およびIL-2を用いて増殖せ
しめられた4つの広汎に特性化されたサブクローンの代表である。(Morita,C.
T.)ら、Eur.J.Immun. 21:2999-3007(1991)。DN1株から誘導されたすべてのク
ローンは、図1bに示されたもの、即ち、α:βTCR発現、CD4の発現不能およびCD
8の最小発現又は発現不能とは識別出来ぬ表面表現型を持っていた。
T細胞の細胞溶解性応答測定は下記のように行われた。C1R細胞のトランスフ
ェクションの方法および51Cr放出による特異的細胞溶解活性の測定方法は既に報
告されている。それぞれ、バルク(Balk,S.P.)ら、Science 253:1411-1415(19
91)およびモリタ(Morita,C.T.)ら、Eur.J.Immun.21:2999-3007(1991)。CD1
aを示す細胞を溶解させるα:βTCR細胞障害性T細胞クローンであるBK6は上述
のようなSLEを持つ患者の血液から単離され(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Natu
re 341:447-450(1989))、そしてCD1cを示す細胞を溶解させるα:βTCRを細胞障
害性T細胞クローンである
クローン3C8は同じ方法を用いて正常なドナーの血液から単離された。トランス
フェクトされた細胞は、51Crで標識されそして約50:1のエフエクター(T細胞)
対ターゲット (トランスフェクトされた細胞)比で細胞溶解測定にターゲット
細胞として用いられた。51Cr放出の測定法および比溶解パーセンテージを計算す
る方法は記載されている。ブレンネル(Brenner,M.B.)ら、Nature 325:689-694
(1987)。
T2細胞の安定なトランスフェクタントを、C1R細胞に対して記載された方法
を用いて作られた。バルク (Balk,S.P.)ら、Science 253:1411-1415(1991)
。グルタルアルデヒド固定およびクロロキン実験の為のAPCsは、上述のようにGM
-CSF処理されたPBMCsおよびIL-4処理されたPBMCsであり、そしてAPCsのグルタル
アデヒド固定およびクロロキン処理は公表された方法によって行った。チェスナ
ット(Chesnut,R.W.)ら、J.Immun.129:2382-2388(1982);ロンカルオロ(R
oncarolo,M.G.)ら、J.Immunol.147:781-787(1991)。CD4+T細胞株DG.1は、
滑液リンパ球を自己由来のEBV-形質転換されたB細胞およびM.ツベルクロシス
の精製タンパク質誘導体(PPD,Statens Serum Institute;データは示されてい
ない)で反復剌激されたHLA-DR7+リューマチ性間節炎患者由来のものであった。
増殖性応答測定は上述のように行われたが、但しこの場合にはウエル毎に2×105
のAPCsが加えられ、そして3H−チミジンの取り込みは3日後に測定された。結果
CD1分子による抗原提示を検出するために、通常は有意なレベルのこれらの
分子を発現せぬ末梢血液単球についてCD1a,CD1bおよびCD1cの発現を誘発する各
種の組替えサイトカインの能力を評価した。Leukocyte Typing IV,Knapp,W.,
ed.,Oxford University Press,Oxford,U.K.,pp.251-269,1989。CD1a,CD1
bおよびCD1cの高レベルが、顆粒球/単球コロニー剌激因子(GM-CSF)とインタ
ーロイキン-4(IL-4)を組合わせて培養された際の単球において一貫して観察さ
れた(図1a)。上記の代わりに、GM-CSFを単独で使用することが出来るが、この場
合にはGM-CSFと IL-4の組合わせの場合と比較してCD1発現の得られたレベルは
幾らか低い。インターロイキン-3(IL-3)も又単独又は他のサイトカインとの組
合わせで用いることが出来る。サイトカインなしで培養された単球又はインター
フェロン−γと共に培養された単球は、有意のレベルではCD1a,CD1b又はCD1cを
発現しなかった(データは示されない)。
単球は有効な抗原提示細胞(APCs)であるから、我々はCD1+単球は、外因性抗
原に対するCD1拘束性T細胞応答を剌激するのではないかと考えた。今日まで同
定された大抵のCD1特異的T細胞はダブルネガティブ(DN;CD4-8-)表現型(
ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989);ファウレ(Faure,
F.)ら、Eur.J. Immun.20:703-706(1990))であるから、我々はこの細胞の集
合に注目し、そしてα:βTCR+CD4-8-T細胞の末梢血液をM.ツベル
クロシスの可溶性抽出物および異種CD1+単球の可溶性抽出物で反復剌激する
ことによりT細胞株を作り出した(図1b)。
得られたT細胞株(DN1と称される)の機能を調べると、これらのT細胞はM
.ツベルクロシスからおよび密接に関連を持つM.レプレ桿菌由来の抗原に対し
ては特異的増殖性応答を示したが、しかしE.coli由来の抗原や破傷風毒素のよ
うな関係のない細菌性抗原には該応答を示さなかった(図2a)。これらの応答はGM
-CSFおよびIL-4(図2b)により予め処理されている単球に依存しており、そして多
形性MHC決定基により拘束されることはなかった(図2c)。このMHC拘束性の欠如は
、非MHC分子による抗原提示上の拘束性と一致した。CD1分子がM.ツベルクロシ
ス抗原提示に必要であるか否かを決定する為に、CD1分子又はMHC分子に特異的な
モノクロナール抗体(mAbs)のM.ツベルクロシスにより誘発されるT細胞株DN1
および代表的なサブクローン、DN1.C7の増殖に対する効果を測定した。anti-CD
1b mAbはM.ツベルクロシスにより誘発される増殖性応答の有意な遮断を示すに
過ぎず、又anti-CD1a mAb又はCD1c mAb又はMHCクラスI又はクラスII分子の単形
性決定基に対するmAbを使用しては一貫性のある効果は認められなかった(図2d)
。
B細胞トランスフェクタントは α:βTCR CD4-8-細胞溶解性T細胞活性に対
する有効なターゲットである。Bリンパ芽球様細胞株C1R(ゼンモール(Zenmour
,J.)ら、J.Immun.148:1941-1948(1992))を用いることにより、同等
のレベルでCD1a,CD1b又はCD1cを発現し機能する安定なトランスフェクタントが
作り出され、そして細胞溶解性測定に於いてM.ツベルクロシスを提示するそれ
らの能力がテストされた。CD1bをコードするDNA配列を用いてトランスフェクト
され、かつ側定前にM.ツベルクロシスと共にインキュベートされたC1R細胞の
みが、α:βTCR DNT細胞株DN1およびそのサブクローンDN1.C7により溶解され
た(図4aおよびb)。このCD1b拘束性応答の特異性はM.ツベルクロシス抗原に
暴露されることなく分裂誘発因子剌激により誘導された2つのコントロールCD4-
8-α:βTCR+T細胞クローン、BK6および3C8を用いて確認された。既報の報告は
BK6および3C8はそれぞれCD1aおよびCD1cを発現するターゲット細胞株を溶解する
ことを実証している(データは示されない)。この開示の行われる以前に記載さ
れているすべての他のCD1反応性T細胞クローンに関しては(ポルセリー(Porce
lli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989);ファウレ(Faure,F.)ら、Eur.J.I
mmun. 20:703-706 (1990);バルク(Balk,S.P.)ら、Science 253:1411-1415(1
991))、これらのクローンは自己反応的であると考えられ、外因性の抗原の存在
せぬ場合には自己の非多形性CD1リガンドを認識する。予想される通り、クロー
ンBK6および3C8はそれぞれCD1a又はCD1cを発現するC1Rトランスフェクタントの
みを溶解した。そしてこの溶解は、ターゲット細胞をM.ツベルクロシスと予め
インキュベートすることによって有意な影響を受けなかった(図4cおよびd)。
既報の実験により実証されたMHC拘束性の欠如から、MHCにコードされた抗原提
示分子は、DN1株に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1b拘束性提示には関与
していないと主張された。この仮説を更に厳密に裏付けるものとして、両MHC位
置に広汎な染色体の欠失を与えた結果、MHCクラスII分子の発現が完全に欠如し
ているT2細胞株のCD1bトランスフェクタントが形成された。サルター(Salter
,R.D.)ら、Immunogenetics 21:235:246 (1985);エルリッヒ(Erlich,H.)ら
、Hum.Immun.16:205-219(1986)。MHCによりリンクされたトランスポータ遺
伝子TAP-1およびTAP-2(パーハム(Parham,P.)Nature 357:193-194(1992)の
中でレビューされている)も又T2から欠落することにより、MHCクラスI分子
の発現と機能に欠陥をもたらす。ホスケン(Hosken,N.A.)およびビーバン(Be
van,M.)Science 248:367-370(1990);ウェイ(Wei,M.)およびクレスウエル(
Cresswell,P.)Nature 356:443-446(1992)。ところがCD1bがT2にトランスフ
ェクトされると、細胞表面上に他のトランスフェクトされたB細胞株に見られる
レベルと類似のレベルでCD1bを発現させ(データは示さない)、そしてM.ツベ
ルクロシスをDN1株に提示するターゲット細胞を生成させた(図5a)。
T細胞に対する外因性抗原の提示には一般に抗原提示細胞による複合タンパク
質抗原分子の取り込みおよび処理を必要とするが、この処理はAPC表面のアルデ
ハイド固定によりおよびクロロキンのような好リソソームアミンによりブロック
される。ツェグラー(Ziegler,H.K.)およびウナニュエ(Unanue,E.R.)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 79:175-179(1982);チェスナット(Chesnut,R.W.)ら、
J.Immun.129:2382-2388(1982)。これらの基準により、M.ツベルクロシスのC
D1b拘束性提示も又抗原の取り込みおよび処理を必要としていることが明かとな
った。グルタルアルデヒドによるCD1b+APCsのゆるやかな固定は、それらのM.
ツベルクロシス溶解性抗原の存在下でのDN1株を剌激する能力を完全に消滅させ
たが、固定前にM.ツベルクロシスによりパルス処理された同じAPCsは、増殖性
の応答を剌激する能力を保持していた(図5b)。更にDN1株に対するM.ツベルク
ロシス抗原の提示は、クロロキンによりミコバクテリウム抗原のMHCクラスIIに
より媒介される提示の阻害の場合と事実上同一の投与量依存性を以って強く阻害
され(図5c)、CD1bおよびMHCクラスII拘束性応答のための抗原の処理には同様の
経路又は細胞内器官が関与することがあり、或は経路は一つ以上のクロロキン感
受性の細胞因子を共有することを示している。T2細胞は最近、それがDMAおよ
びDMB遺伝子を欠いている故に、MHCクラスII分子により提示される抗原の処理に
は欠陥を持つことが実証された(リバディー(Riberdy,J.M.)およびクレスウェ
ル(Cresswell,P.) J.Immun. 148:2586-2590(1992))ことは興味のあるこ
とである。モーリス(Morris,P.)ら、Nature 368:551-554(1994);フライング
(Fling,S.P.)ら、Nature 368:554-558(1994)。この様に、CD1bをトランスフ
ェクトされたT2細胞は、DNIにM.ツベル
クロシスを提示し得るという我々の実験結果は、抗原処理におけるCD1bおよびMH
CクラスII分子の必要性はクロロキン感受性に関して類似しているものの、同じ
ではないことを示唆する。
幾人かの研究者達は、CD4およびCD8分子の両者の発現を欠くT細胞が古典的な
MHCクラスIおよびIIの位置によりコードされるもの以外の細胞表面分子により
提示される抗原を認識することが出来るのではと考えた。ポルセリー(Porcelli
,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(1991);ジャンウエイ(Janeway,C.A.Jr.
)ら、Immun.Today 6:73-76(1988);ブルーストーン(Bluestone,J.A.)およ
びマチス(Matis,L.A.)J.Immun. 142:1785-1788(1989)。上記の結果は、CD
1ファミリの一つのメンバーであるCD1bがMHC非拘束性CD4-8-T細胞の外因性異種
抗原に対する特異的応答を拘束することができることを実証するものである。他
のCD1タンパク質と同様に、CD1bの重鎖はβ2-ミクログロブリンに非共有的に結
合し(オリーブ(Olive,D.)ら、Immunogenetics20:253-264(1984))そして両MHC
クラスIおよびII分子に対して限定されているが、しかし有意な配列の相同性を
示す。カラビィ(Calabi,F.)およびミルステーン(Milstein,C.)Nature 323
:540-543(1986);バルク(Balk,S.P.)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:252-256
(1989)。CD1bのこれらの構造的な特徴は、抗原の認識における重要なその役割と
共に、CD1bがMHCにリンクされていない遺伝子上の位置によりコードされている
非多形性抗原提示分子であるという
結論を支持する。
これらの結果は正常な宿主を細菌性疾患から守る際のCD1拘束性T細胞の役割
の可能性を示す。上記の結果は、CD1とMHCクラスII分子との間の機能的平行性を
示唆する。何故ならば両者ともクロロキン感受性の経路を通じて処理された外因
性抗原の提示を両者は媒介し、又両者は自己反応性T細胞のTCRsに対するリガン
ドとして作用することも出来るからである。ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Na
ture 341:447-450(1989);グリムチャー(Glimcher,L.H.)およびシーバック(Sh
evach,E.M.)J.Exp.Med. 156:640-645(1982)。in vivoでのCD1分子の限定
された組織分布は更にMHCクラスIIファミリーとの類似性を明らかにする、何故
ならばランゲルハンス細胞、リンパ様のおよび多くの他の組織の中の樹状細胞、
8細胞および多分サイトカインにより活性化された単球を含むT細胞に対する抗
原提示に関与する細胞タイプ上で両ファミリーのメンバーの発現が顕著に認めら
れるからである。ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(1991
)。上記と異なり、本明細書の記載のCD1分子の構造的多形性欠如、それらの単球
に於けるユニークなサイトカイン調整およびCD1拘束性T細胞のCD4-8-表現型は
、CD1とMHCの抗原提示システムを識別する為の重要な差異である。これらの差異
は細胞を媒介させた免疫性に於けるCD1拘束性T細胞の明確な役割を指し示す。
実施例2:非ペプチド抗原はCD1bにより提示される 方法
CD1bにより提示された抗原は透析不能の巨大分子である(データは示さない)
。抗原性の高い(すなわちT細胞増殖性の)活性は、M.tb.の可溶性水性超音波
処理物から、超音波処理中にCHAPS又はオクチルグルコシドのような界面活性剤
を加えることにより、得ることが出来た(上記参照)。この結果はこの抗原が疎
水性であることを示唆する。
CD1により提示された抗原の化学的性質を明らかにする為に、ミコバクテリウ
ム抗原を非病原性のM.tb.株H37Ra(Difco)およびM.フォルツイツム(fortuitum)
(同様に抗原活性を含む急速に成長する株)から精製した。細菌は市販のもの(M
.tb.H37Ra,Difco)か又は培養され採取されたもの(M.フォルツイツム)であり
、超音波処理を行い逐次分画プロトコールを施し、そして生物学的活性を分析し
た。得られたすべての画分について、照射し、GM-CSF-処理およびIL-4-処理した
単球をAPCsとして用い、かつ6時間のパルス処理での3H-チミジンの取り込みを
測定することにより5日間の増殖測定中にDNT細胞株DN1を刺激するそれら画分の
能力をテストした(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 360:593-597(1992
))。細胞壁、細胞膜並びに細胞原形質部分を公表されたプロトコールから採用
された方法を用いてM.tb.又はM.フォルツイツムの何れかから調製した。ハン
ター(Hunter,S.W.)ら、Journal of Biological Chemistry 265:14065-14068(
1990)。簡略に述べれば、細胞を凍結乾燥し、
PBS/オクチルグルコシドの中に再懸濁し、20分間超音波処理を行い、そして
分画超遠心分離を施すことにより細胞ゾル、細胞膜および細胞壁の各画分を調製
した。細胞壁ペレットは分画スクロース勾配により更に精製した。3つの画分の
特徴的な構造上の特性は電子顕微鏡を用いてネガティブ染色により確認された。
DN1細胞株に対する生物的活性の大部分は細胞壁画分内に存在した(データは示
さない)。
CD1b拘束性抗原がタンパク質であるか否かを直接評価する為に、抗原の一連の
プロテアーゼ消化を実施した。限定されたアミノ酸特異性(キモトリプシン(疎
水性残基)、トリプシン(lys,arg)およびV-8(酸性))、又は広汎なアミノ酸認
識(ズブチリシン、プロテイナーゼK、プロナーゼ)を持つ各種のエンドペプチ
ダーゼを用い、M.tb.又はM.フォルツイツムの超音波処理物を消化し、ついで
T細胞増殖性応答を誘発する能力を測定した。コントロールとして、この研究室
で誘導されたミコバクテリウムPPD(精製されたタンパク質誘導体)の決定基を
認識するDR7拘束性の、CD4+T細胞クローンDG.1もテストした。SDS-PAGEによる
分析およびその後の銀染色はV8プロテアーゼ、プロテイナーゼK、プロナーゼE
又はズブチリシンによる消化がミコバクテリウム抗原標品に含まれるタンパク質
を分解することを実証した(データは示さない)。結果
代表的なCD4+MHCクラスII拘束性T細胞株であるDG.1
により認識されるM.ツベルクロシス抗原は、V8プロテアーゼ、プロテイナーゼ
K、又はトリプシンによる処理により効力を失わされる(図6)。図6 に示す
ように、DG.1細胞はミコバクテリウムの超音波処理物の偽消化物に応じて強力に
増殖したが、キモトリプシンを除き他のすべてのプロテアーゼ処理は増殖性応答
を完全に停止した。
上記に反し、CD1bにより株DN1に提示されたM.ツベルクロシスおよびM.フォ
ルツイツム抗原はこれらの広域反応性プロテアーゼによって影響されることはな
い(それぞれ図7および図8)。CD1bにより提示されたミコバクテリウム抗原は
MHCクラスIおよびII抗原提示分子により提示されるものとは基本的に異なる。M
HC分子はクラスIに対して約8-9アミノ酸の又クラスIIに対して13-25アミノ酸の
ペプチド抗原と結合し、かつ提示することが充分確認されている。このCD1bによ
り提示された抗原はプロテアーゼに対し耐性を持つ巨大分子である為にペプチド
であるとは考えられない。この様にしてCD1システムはペプチド以外の外来性物
質をα:βTCR+T細胞に提示する最初の知られた抗原提示システムである。
実施例3:CD1bにより提示される抗原の精製 方法
M.フォルツイツムバクテリアを液体培養で定常期まで増殖させ、遠心分離に
より収菌し、スチーム(stream)オートク
レーブ(250℃,18psi)により滅菌し、そして凍結乾燥した。脱湿されたM.tb
.(H37Ra株、Difco)又はM.フォルツイツムバクテリアを燐酸緩衝食塩水
の中に懸濁し(5mLPBS当たり200mgバクテリア)、そしてバクテリア懸濁液を
プローブソニケータで超音波処理することにより細胞を破砕した。得られた超音
波処理物は、ミコバクテリウムのリピドを定量的に有機相に抽出するFolchの2
相抽出系(クロロフォルム/メタノール/水)の有機溶媒で抽出した。ゴレン(
Goren,M.B.)およびブレンナン(Brennan,P.J.)ミコバクテリアリピド:Tuberc
ulosisにおける化学および生物学的活性、1979。この超音波処理物をガラス容器
の中で3倍容量のクロロフォルム:メタノール(2:1 v/v)溶液と混合し、この混
合物を室温で24時間激しく撹拌した。混合物を800gの遠心分離により相分離し
、そして有機相を集めてガラス沸騰フラスコに移した。各画分を次にロータリー
エバポレーターにより乾燥し(有機相)或は凍結乾燥した(水性相および界面相
)。蒸発後、有機相はフラスコの表面上に蝋性の物質の薄膜を残した。T細胞増
殖測定においてテストされる材料を作る為に、各画分の分別部分に水を加え(最
初の超音波処理物中のバクテリアの200mg当たり20mL)続いて水浴ソニケータ
での超音波処理により各画分をリポソームとして再構成した。得られた粗懸濁液
を次に0.1nmフィルタメンブランを反復して強制的に通すことにより均一なサイ
ズのリポソーム懸濁液を作成した。あるいは、10%仔牛胎児血清を含むT細胞
培地を乾燥画分に加え、追加的な処理を伴
うことなく超音波処理を施した。
上述のM.ツベルクロシスから抽出された物質をさらに精製するために、ヘキ
サンに溶かして珪酸のカラムにかけた。シリカカラム上で極性を増大させながら
有機溶剤で溶出することにより、リピドがその極性に基づいて分離された。燐脂
質のような極性の最も高いリピドはシリカカラムに最も強く結合する為に最後に
溶出したのに対し、グリコリピドは一般に結合が強くなく早い時点で溶出する。
トリグリセライド又はステロールのような中性脂質は結合が最も弱く、従って最
初に溶出する。
固相抽出(SPE)小型開放カラム(BakerBond,JT Baker)は多くのサンプルを
同時に処理することが出来る為に好まれた。シアン(CN)官能基と(共有的に)
”結合”されたシリカをベースとするカラムがM.tb.の有機抽出物の分別に用い
られた。バクテリアのクロロフォルム/メタノール抽出物の有機相を乾燥して、
ヘキサン中に再懸濁した。200μLヘキサン中の脱湿バクテリアの5.3mg当量を0.
5グラムCN SPEカラムに負荷した。カラムをヘキサンにより、ついでヘキサン中
に25%(v/v)クロロフォルムを混入して洗浄した。次に生物活性画分をヘキサン中
の85%(v/v)クロロフォルムで溶出させ、生物活性を100%以上で回収した。クプケ
及びツォイグナー(Kupke and Zeugner)の方法により(クリスティエ(Christi
e,W.W.)Lipid Analysis,117頁、Pergamon Press,Oxford,U.K.,(1982))、
シリカをベースとしたTLC プレート上での活性画分の分析によれば、リピドの
2
つの主要な種類のみが酢酸銅により可視化した(データは示されていない)。こ
れは遊離脂肪酸およびミコール酸に相当する。この結果は出発有機物質からの顕
著な精製の反映である。
増殖測定は2日目(DG.SF68)、3日目(DG.1)又は5日目(DN1)に採取さ
れた。DG.SF68はこの研究室において作り出されたvγ2Vδ2T細胞クローンであ
る(PNAS 印刷中、CM)。APCsはGM-CSFにより処理された単球およびIL-4により処
理された単球(DN1)又はPBMC(DR7+)(DG.1)であるか又は処理されぬPBMC(DG.SF68
)であった。細胞溶解測定は比溶解%として表され、そして上述のように実施さ
れた。ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989)。示された
データ(図9)は50:1のターゲットに対するエフェクタ比および1:20の希釈で
のM.ツベルクロシス抗原を用いている。結果
M.ツベルクロシスの関連の抗原はH37Ra株(Difco)の市販製剤から上述のよう
なクロロフォルムおよびメタノールの混合物中に抽出することにより単離される
。界面相は95%以上のタンパク質を含んでいるが、ミコバクテリウム抽出物のCD1
b拘束性抗原活性(即ちα:βTCR DN T細胞増殖性応答を誘導する能力)の100%
が有機相中に含まれている(図9a)。この事は関連バクテリア抗原の性質が非ペ
プチド性であるという当初の結論を強く支持するものである。これとは逆に
、DNγ:δ TCR+T細胞により認識される従来のMHCクラスIIに拘束性抗原は、水
性相と有機相の界面の相中に存在した(図9b)。しかし上記に反し、4つの独立し
た抗原製剤ではCD1b拘束性抗原は定量的に有機相の中に分配された。これらの相
のトランスフェクタント細胞溶解測定の結果により、CD1bにより提示された抗原
が有機相に存在することが確認された(図10)。
これらの条件下では、ミコバクテリウムのCD1により提示される抗原の活性の1
00%がCN SPEクロマトグラフィーの後に定量的に回収された。更に有機相抽出は
優れた精製ステップとして役立ち、そして有機相はその後のクロマトグラフィー
の為の出発物質として用いられた。上記と別の幾らかより一般的な後続のクロマ
トグラフィーのための抗原精製手順は、バクテリア全体又は超音波処理されたバ
クテリアを鹸化し、そしてヘキサンの酸性溶液で抽出することである。抗原を更
に精製することは上述のような珪酸クロマトグラフィーを用いて達成される。実施例4:ミコール酸はCD1bにより提示される抗原である 方法
上記の結果、並びに活性がCN修飾されたシリカHPLCカラム上で遊離脂肪酸アシ
ル鎖標品と共クロマトグラフされたことを示唆する予備データ(データは示され
ていない)から見れば、このCD1bにより提示される抗原はユニークなミコバ
クテリウムリピド、多分ミコール酸であると考えるのが妥当であろう。この点を
解明する為に、C18逆相カラムクロマトグラフィー上でミコール酸を分離するHPL
C法を使用して、ミコール酸が作られた。バッテラー(Butler,W.R.)ら、Journ
al of Clinical Microbiology 23:182-185(1986);バッテラー(Butler,W.R.)ら
、Journal of Clinical Microbiology26:50-53(1988);フロイド(Floyd,M.M.)
ら、Journal of Clinical Microbiology 30:1327-1330(1992)。逆相クロマトグ
ラフィーは主としてアシル鎖の長さ又は”炭素数”に基づいてアシル鎖を分離す
る。従って遊離脂肪酸と遥かに大きいミコール酸とを確実に分離することは比較
的容易である。
このHPLC法では先ずサンプルの鹸化が必要であり、続いてアシル鎖のカルボキ
シル末端に結合する紫外線(OD254)吸収性化合物であるp−ブロモフェナシルブ
ロミドで脂肪酸又はミコール酸の誘導体化を行う。予備実験においては我々はp
−フェナシルブロミドでバクテリアの画分を誘導体化するプロセスが生物活性を
破壊することを認めた。しかしCD1b拘束性抗原性活性は、その後メタノール性KO
Hによる鹸化により回復することが可能であった。このプロセスは、フェナシル
ブロミド基を切り離すことにより、アシル鎖のカルボキシル末端をフリーにする
ものである(HPLC上でOD254により検定されるように)。この結果は、CD1ポジティ
ブAPCsにより提示することの出来る形を実現するにはアシル鎖が切断されねばな
らぬこと、および/又は遊離のカルボキシル基がCD1b拘束性抗原の提示の為に不
可欠であることを示すもので
ある。これは抗原がアシル鎖を含むことの別の証拠である。
SPE CNカラムで精製された標品(実施例3)はC18クロマトグラフィーの為の
出発物質として用いられた。試料をメタノール性KOHで鹸化し、そして紫外線吸
収基であるブロモフェナシルブロミドを用いて誘導体化した。活性画分をC18カ
ラム(Alltech Nucleosil C185μm,25 cm×4.6mm)上、メタノール中メチレンク
ロライドの30〜90%の直線濃度勾配を用い50分間にわたり1mL/分の割合
で流した。コントロールとしてC90内部標準(Ribi)を用いて得られたクロマト
グラム(図12、パネルa 、上部)は公表された結果と同等のパターンを示す。
フロイド(Floyd,M.M.)ら、Journal of Clinical Microbiology 30:1327-1330(1
992)。画分は10%FCSを含む完全培地中に再懸濁化し、そして最初の超音波処理物
容量に対する1:17希釈でテストした。結果
T細胞増殖性応答測定により測定された生物活性はミコール酸の領域内の早期
ピークと共に移行することが見い出された(図12a)。ミコール酸がCD1bにより
提示されることを確認する為に、ミコール酸の別の給源である精製されたコード
ファクタ(トレハロースジミコレート、図11)をテストした。鹸化するとM.t
b.(Sigmaから)又はM.kansasii(Patrick Brennanから)から得られた精製さ
れたトレハロースジミコレートはT細胞株DN1の増殖を刺激した(図12b)。しか
し鹸化により遊離されるミコール酸を含まず、2つ
のC22脂肪酸鎖を含むコードファクタの合成誘導体である鹸化されたトレハロー
スジミコレートから作られた物質によっては刺激は達成できなかった。このこと
はトレハロース(サンプルの各々に存在する)でも脂肪酸でもなく、ミコール酸
がダブルネガティブα:βTCRT細胞株DN1に対してCD1bにより提示された抗原で
あることを充分に想定させる。次に鹸化されたSigmaコードファクタのHPLC分析
を実施し、再び生物活性が早期のミコール酸ピークに対応する画分に見出された
(図12c)。合わせると、上記のデータは、T細胞株DN1により認識されるCD1b拘
束性ミコバクテリウム抗原はミコール酸の一つの種類であることを示す。
ミコバクテリウムは極めて有効なアジュバントであることが知られている。ア
ルドビニィ(Aldovini,A.)およびヤング(Young,R.A.)Nature 351:479-482(199
1)。この場合に使用されているCD1bにより提示される抗原の一つ給源であるミコ
ール酸はトレハロースジミコレート(即ちミコバクテリウムのコードファクタ)
であり、これは抗体形成を増大せしめ(ベカイエルカンスト(Bekierkunst,A.)ら
、J.Bacteriol.100:95-102(1969);ベカイエルカンストら、Infection and Im
munity 4:245-255(1971);ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 4:2
56-263(1971))そして細菌感染(パラント(Parant,M.)ら、Infect.Immun.20:
12-19(1978))および腫瘍(ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 10:
1044-1050(1974))に対する非特異的免疫を剌激することが実証された。
精製された抗原活性が真実の抗原を含み不特定の分裂誘発因子を含まぬことを
確かめる為に、我々は粗M.tb.標品並びにM.tb.および鹸化されたコードファ
クタからのHPLCにより精製されたミコール酸に対するT細胞増殖性応答の特異性
を調べた。M.tb.の超音波処理物の全体(図14、上部パネル)はMHCクラスII拘
束性CD4+α:βTCR+T細胞株DG.1により認識される抗原、並びにCD1b拘束性T細
胞株DN1およびCD1c拘束性T細胞株DN6により認識される抗原を含む(下の実施例
5を参照のこと)。しかしM.tb.(図14、中部パネル)から又は鹸化されたコ
ードファクタ(図14、下部パネル)からのHPLCにより精製されたミコール酸(図
14、下部パネル)はCD1b拘束性DN1T細胞によってのみ認識される抗原を含む。
この特異性も又トランスフェクタントの細胞溶解測定において実証されている(
図13)。
DN1のCD1b拘束性応答は抗-CD1b抗体によりブロックされたが、しかしMHCクラ
スI又はIIに対する抗体によっては影響を蒙らなかった(図15、上部パネル)。
実施例5:CD1cによる抗原提示
実施例1に於いて開示されたCD1bによる抗原の提示に加えCD1c分子も又抗原を
提示する。GM-CSFおよびIL-4(CD1発現を誘発する為に)およびM.ツベルクロ
シス抗原により処理された単球による反復剌激により誘導された別個のCD4-8-α
:βTCR+T細胞株を単離し、そしてDN2(8.23.
DN1とも呼ばれる)と命名された。DN2の増殖はCD1cに対するmAbsを与えることに
より完全に阻害されるが、しかしCD1bに対するmAbsによっては影響を受けない(
図15、下部パネル)。細胞溶解測定によりこの結果は裏付けられる:ベクター
のみ又はCD1a、CD1b又はCD1cをコードするベクターでトランスフェクトされたC1
R細胞をM.ツベルクロシス超音波処理物の存在下または非存在下に予めインキ
ュベートし、ついで細胞溶解測定のターゲットとして用いた。CD1c+C1R細胞のみ
が認識される(図16);認識は超音波処理物との予備インキュベーションによ
り高められる。従ってCD1c分子はM.ツベルクロシス抗原をDN2T細胞に提示す
る。
GM-CSFおよびIL-4(CD1発現を誘発する為)およびM.ツベルクロシス抗原に
より処理された単球による反復刺激により誘発された第2CD1c拘束性CD4-8-α:
βTCR+T細胞株を単離し、DN6と名付けた。細胞溶解測定(図17)によれば、DN6
はM.tb.抗原の存在下でCD1c+細胞を溶解することが示される。
実施例6:CD1cにより提示される抗原の特性化
CD1cにより DN6T細胞に提示される抗原はミコール酸ではない(図14、中央
パネル)。しかしDN6により認識される抗原の化学特性化によれば、抗原は複合
リピドであることが判る。M.tb.の超音波処理物をクロロフォルム:メタノール
により抽出する時(実施例3に記載のように)抗原活性は実質的に界面相と有機
相の両者に見出される(図18)。有機相から回収される抗原はCN SPEカラムに結合
することができ、そして溶出される(実施例3に記載された如く)。これらの実
験により抗原は疎水性であり又クロマトグラフィーではリピドの性質を持つこと
が実証される。
しかしCD1b拘束性ミコバクテリウム抗原と異なり、追加実験の結果は、DN6に
より認識されCD1cにより提示される抗原が複合リピドであり、遊離アシル鎖では
ないことを示す。M.tb.の超音波処理物を鹸化すると、DN6の増殖性応答は消失
する(図20)。鹸化はアシル鎖を炭水化物バックボーンに接続するエステル結合を
切断するから、この結果はDN6T細胞により認識される抗原が遊離アシル鎖以外
の或る部分であるか又は追加的な部分であることを示唆している。鹸化は多分例
えばポリサッカライドバックボーン又は分岐点であるかもしれない追加的部分を
破壊し、又は除去するのであろう。従ってDN1T細胞株による遊離ミコール酸の
認識とは異なり、DN6T細胞株はより複合的なリピド構造を認識する。
T細胞株DN1およびDN6により認識されるCD1により提示される抗原は、M.ツ
ベルクロシスにユニークではないことは特筆に値する。寧ろDN1およびDN6により
認識されるCD1により提示される抗原は、今日テストされている多くのミコバク
テリウムの種に見られる抗原に対して交叉反応性を示す(M.フォルツイツム、M.
アビウム(avium))、M. ボービス(bovis)(BCG)およびM.レプレ(leprae))。DN6
T細胞
によるCD1c拘束性の場合には、別の属であるがミコール酸を産生する近縁の属の
細菌であるコリネバクテリウム(Corynebacteria)において一つの抗原が認識され
る(データは示されず)。タカヤマ(Takayama,K.)およびクレシ(Qureshi,N.
)”Structure and Synthesis of Lipids”in The Mycobacteria:A Sourcebook
,Part A,キュービカ(Kubica,G.P.)およびウエイン(Wayne,L.G.)編、Marcel
Dekker,New York&Basel,1984。この様にCD1により提示された抗原は少なく
とも幾つかの細菌リピド抗原を含む;自己免疫の場合にはCD1により提示される
抗原は内因性リピド抗原を含む。
実施例7:CD1により提示される抗原を含むワクチン
本開示以前には、リピドが潜在的に強力な特異的T細胞媒介免疫原性を持つこ
とは知られていなかった。本明細書に記載のCD1により提示されるリピド抗原は
ミコバクテリウム病原体に対するワクチンとして機能もするようにデザインされ
る組成の必須成分として用いることが出来る。CD1により提示される抗原を含む
ワクチンは注射により直接投与することが出来る。或は上記の代わりに胃腸管の
上皮に見られる細胞上のCD1の存在(ブレイチャー(Bleicher,P.A.)ら、Scien
ce 250:679-682(1990))の故に、CD1により提示される抗原を含むワクチンの経
口投与がCD1より提示された抗原を含むワクチンを必要とする動物にかかるワク
チンを投与する為に用いることが出来る。
本発明のCD1により提示される抗原を含むワクチンは、既知の方法に従って処
方される。Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版、ゲンナロ(Gennaro
,A.R.)編、Mack,Easton,1990;The Pharmacologist Basis of Therapeutics,
第7版、ギルマン(Gilman,A.G.)ら編、MacMillian,New York,1985.この分野
の熟練者に知られている薬学的に許容されるリピド安定剤およびリピド可溶化剤
はその有効性を高める為にCD1により提示される抗原を含むワクチンに加えるこ
とが出来る。テング(Teng,N.)ら、PCT特許出願WO 91/01750号公報(1991年2
月21日)。ナンバーグ(Nunberg,J.H.)米国特許第4,789,702号(1988年12月6日
)。実施例8:CD1拘束性抗原提示を阻止する為の手段と方法
CD1抗原提示システムの開示は、CD1拘束性抗原提示を阻害する為の各種の手段
と方法を可能にする。CD1により提示される抗原の処理を阻害し、抗原のCD1分子
への結合を妨害し又はCD1:抗原複合体のTCR分子への結合を妨害する組成物があ
れば、抗原のCD1拘束性提示を阻害するであろう。かかる組成物は、CD1ブロッキ
ング物質と呼ばれるが、例えば自己免疫疾患において生じる好ましくないT細胞
媒介免疫をコントロールする為に有用である。オクセンバーグ(Oksenberg,J.R
.)ら、J.Neurol.Sci.115(Suppl.):S29-S37(1993)。
CD1ブロッキング物質は下記に限定されることはないが、(1)精製されたCD1
分子、又はその合成誘導体であってCD1に
より提示される抗原を結合し、かつAPCs上で表出され、CD1と抗原との相互作用
を防止することの出来るもの;(2)精製されたTCRポリペプチド又はその合成
誘導体であってCD1+APC上でCD1−抗原複合体に結合することが可能であり、かつ
複合体とT細胞受容体との相互作用を防止することの出来るもの;(3)化学的
に修飾されたCD1により提示される抗原を含む抗原拮抗体又はCD1により提示され
る抗原の合成誘導体;(4)精製されたCD1−抗原複合体又はその合成誘導体で
あってCD1+APC上でCD1−抗原複合体を認識するT細胞受容体に結合し、かつT細
胞受容体とCD1−抗原複合体との相互作用を阻止することの出来るもの;(5)C
D1分子と結合し、こうしてCD1分子とCD1により提示される抗原との相互作用を阻
止する抗体;(6)CD1:抗原複合体と結合し、これによりCD1:抗原複合体とそ
のコグネート(cognate)TCRとの相互作用を阻止するポリクロナール抗体又はモノ
クロナール抗体;(7)CD1により提示される抗原を認識するTCRと結合し、これ
によりTCRとそのコグネートCD1:抗原複合体との相互作用を阻止するポリクロナ
ール抗体又はモノクロナール抗体;および(8)CD1により提示される抗原が表
出される前に処理される経路中の不可欠なステップをブロックする組成物を含む
。
上記の実施例は下記の如きCD1ブロッキング剤の類例を含む。
タイプ(5)のCD1ブロッキング物質は、CD1b拘束性抗原提示を特異的に阻害す
る、CD1bに対するモノクロナール抗体WM
25(図15、上部パネル)およびCD1c拘束性抗原提示を特異的に阻害する、CD1cに
対するモノクロナール抗体10C3(図15、下部パネル)をその代表とする。タイプ(
6)又は(7)のCD1ブロッキング物質として作用する抗体を単離する為の本明細書
に記載の方法を熟練者は使用することが可能であり、又この分野の熟練者は治療
の目的で抗体を処方する方法を知っている。A Critical Analysis of Antibody
Therapy in Transplantation,バーリントン(Burlington,W.J.)編、CRCPress
,Boca Raton,1992。
タイプ(8)のCD1ブロッキング物質の代表的なものはクロロキン(図5c)であり
、これはCD1b拘束性抗原の処理の中の或るステップを阻害する。クロロキンの処
方および投与の方法はこの分野の熟練者には既知である。ウエブスター(Webste
r,L.T.)"Drugs Used in the Chemotherapy of Protozoal Infections,"in Goo
dman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics41章及び4
2章、第8版、ギルマン(Gilman,A.G.)ら編、Pergamon Press,New York,19
90。クロロキンもMHC拘束性抗原提示を阻害するが、この分野の熟練者は本明細
書中に開示されている方法を用いてCD1拘束性抗原の処理を特異的に阻害する組
成物を特定しおよび/又は単離することが出来る。
タイプ(3)のブロッキング物質、即ち抗原拮抗物質は本発明の方法により単離
されるCD1拘束性抗原から誘導することが出来る。オリジナルペプチド抗原より
も低い親和性で結合するMHC拘束性ペプチド抗原の変種は、MHC拘束性抗原提示
に於ける成熟T細胞に対する拮抗物質として作用する。ライス(Wraith,D.C.)
ら、Cell 59:247-255(1989);スミイレク(Smilek,D.E.)ら、Proc.Natl.Aca
d.Sci.(USA)88:9633-9637(1991)。同様にCD1により提示される抗原は本発明
の方法により単離され、かつ標準技法により化学的に修飾することにより非抗原
性又は弱抗原性のCD1により提示される抗原誘導体を作り出すことが出来る。例
えばp−ブロモフェナシルブロミドにより誘導体化されたミコール酸は非抗原性
である(実施例4)。抗原拮抗物質はCD1により提示される抗原誘導体として同
定される。これはオリジナルの、非修飾CD1により提示される抗原の存在する時
にのみ起きるT細胞増殖性応答又はCD1トランスフェクタント細胞溶解性応答を
阻害又は防止する(実施例1)。
タイプ(2)のブロッキング物質、即ち抗原:CD1複合体とT細胞上のTCR分子と
の相互作用をブロックするTCR誘導体はこの分野の熟練者により本開示に基づい
て作ることが出来る。CD1により提示される本発明の抗原を認識するT細胞株に
より表出されるTCRポリペプチドをコードするDNA分子は、この分野における既知
の方法に基づいて単離される。オスケンバーグ(Oskenberg,J.R.)ら、Proc.Nat
l.Acad.Sci.(USA)86:988-992(1989);オクセンバーグ(Oksenberg,J.R.)ら、Na
ture 345:344-346(1990)及び修正版(and erratum)、Nature 353:94(1991);
ウエマツ(Uematsu Y.)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:534-538(1991)
;パンザラ(Panzara,M.A.)ら、Biotechniques 12:728-735(1992
);ウエマツ、Immunogenet.34:174-178(1991)。このDNA配列はポリペプチド
配列に変換され、そしてTCRポリペプチドの抗原結合可変領域に該当するポリペ
プチド配列の一部は、APCs上でCD1:抗原複合体と結合しこれにより抗原提示を
阻害する合成オリゴペプチドをデザインするのに用いられる。オリゴペプチドは
標準的手法に従って化学的に合成され(ステバルト及びヤン(Stewart and Young
),Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockland,Illinoi
s,1985)そして逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応混合物から
精製される。自己免疫疾患、MS,を持つヒトの治療の最初の試みが、MHC拘束性
α:βTCR分子から誘導されたペプチドを用いて現在進行中である。オクセンバ
ーグ(Oksenberg,J.R.)ら、J.Neurol.Sci.115(Suppl.):S29-S37(1993)。CD1
ブロッキング物質として機能するTCR−誘導ペプチドは、CD1により提示される抗
原の存在下で起きるT細胞増殖性応答又はCD1トランスフェクタント細胞溶解性
応答を阻害又は防止するTCR誘導ペプチドとして同定される(実施例1)。
本明細書に記載されたCD1により提示される抗原の測定は、分子ライブラリー
からCD1ブロッキング剤をスクリーニングするために用いることが出来る。分子
的に種々な組成を持つライブラリーは、化学的、生化学的および/又はバイオテ
クノロジー的な手段により作られる。この様なライブラリーの中には、合成ペプ
チドの組合わせライブラリー(combinatorial libraries)(ホウテン(Houghten
,R.A.)ら、BioTechn
iques 13:412-421(1992))および組換えDNAテクノロジーにより作られる融合
タンパク質、例えばファージ表出ライブラリーが含まれる。コイバンネン(Koiv
unen,E.)ら、J.Biol.Chem. 268:20205-20210(1993)。これらのライブラリ
ーは、本明細書に記載のDNT細胞増殖性応答および/又はCD1細胞溶解性応答を阻
害又は防止するメンバーの有無についてスクリーニングされる。CD1ブロッキン
グメンバーは、この分野での既知でしかも用いられたライブラリーのタイプに適
合した技法に基づいてライブラリーから単離される。ローマン(Lowman,H.B.)
ら、Biochemistry 30:10832-10838(1991);ヘリシイア(Felicia,F.)ら、J.Mol
.Biol.22:301-310(1991);ダンデカル(Dandekar,T.)ら、Neurochem.Int.7:
247-253(1985);オーウェン(Owens,R.A.)ら、Biophys.Res.Commun.181
:402-408(1991)。
サンプル中からCD1ブロッキング物質を検出する為には、CD1により提示される
抗原に対する測定を2重に実施する。第1の(コントロール)測定は、実施例1
に記載の方法と実質的に同様に行われるT細胞増殖性又は細胞溶解性測定である
。第2の測定は次の点を除きあらゆる点で第1の測定と同一である:すなわち第
2の測定はCD1ブロッキング物質を含む可能性のあるサンプルを追加的に含む。
サンプル中のCD1ブロッキング物質の存在と第1の測定で測定されたよりも有意
に少ない第2の測定におけるT細胞増殖性応答又は細胞溶解性応答との間に相関
関係が認められる。
参照による挿入
本明細書中に引用されたすべての刊行物は、参照の形でその全文が本明細書の
中に挿入されている。
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フロントページの続き
(72)発明者 ブレナー,ミッシェル ビー.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
01770 シェルボーン,ピー.オー.ボッ
クス 497,グリーン レーン 49
(72)発明者 ベックマン,エバン
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02146 ブルックリン,キルシス ロード
8