JPH08511163A - 糸状真菌由来酸化還元酵素、それをコードするdnaおよび該dnaで形質転換された細胞 - Google Patents

糸状真菌由来酸化還元酵素、それをコードするdnaおよび該dnaで形質転換された細胞

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JPH08511163A JP7501611A JP50161195A JPH08511163A JP H08511163 A JPH08511163 A JP H08511163A JP 7501611 A JP7501611 A JP 7501611A JP 50161195 A JP50161195 A JP 50161195A JP H08511163 A JPH08511163 A JP H08511163A
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デン ブリンク、ヨハネス マールテン ファン
ホルコム、ロベルタス フランシスサス マリア ファン
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Abstract

(57)【要約】 糸状真菌由来のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素をコードする新規遺伝子が開示される。また、その遺伝子の少なくとも一部を含んでなる組換えDNA分子、それに由来するRNA分子および新規ポリペプチド(またはタンパク質)、さらにそのような組換えDNA分子で形質転換された少なくとも1つの宿主細胞が開示される。とくに適切な宿主細胞は、糸状真菌に由来するものである。本発明のポリペプチド(タンパク質)および宿主細胞を用いて、酵素的転換の新しい方法を行なうことができる。とくに、モノオキシゲナーゼによる、より詳しくはチトクロームP450スーパーファミリーの酵素による酵素的転換は、本発明により改善される。

Description

【発明の詳細な説明】 糸状真菌由来酸化還元酵素、それをコードする DNAおよび該DNAで形質転換された細胞 本発明は、新規遺伝子、少なくともその遺伝子の一部分を含んでなる組換えDN A分子、それに由来するRNA分子および新規ポリペプチド(またはタンパク質)、 さらに少なくともそのような組換えDNA分子で形質転換された宿主細胞、とくに 形質転換された糸状真菌(filamentous fungi)に関する。加えて、本発明は、 モノオキシゲナーゼ、さらに詳しくはチトクロームP450スーパーファミリーの酵 素を用いる酵素的転換(enzymatic conversion)における、前記新規タンパク質 または宿主細胞の用途のための方法に関する。 とくに、本発明は、糸状真菌由来NADPHチトクロームP450酸化還元酵素(oxido reductase)をコードする遺伝子の単離、特徴づけおよび用途に関する。さらに 、本明細書は、チトクロームP450媒介酵素活性の増加のためのこの遺伝子の用途 を開示する。 現実に、モノオキシゲナーゼ反応によって、内因性および外因性双方の化合物 の多数の転換が行なわれている。モノオキシゲナーゼは、多くの異なるクラスの 酵素に分類することができる。それらのクラスのひとつが、チトクロームP450モ ノオキシゲナーゼのファミリーである。これらは、原核生物および真核生物双方 に存在する酵素である。 これらのタンパク質の特別な構造は、進化の過程にお いて高度に保存されている。各チトクロームP450の最も特徴的な部分は、イオウ −鉄結合によってタンパク質に共有結合しているヘムグループの存在である。そ のイオウは、常にシステイン分子に由来している。鉄分子は、ポルフィリン環の 中央に位置しており、該分子はこの環に対して4つの結合を有している。鉄分子 の6番目のリガンドは、反応の触媒作用に関与している。反応の間、酸素がそれ に結合している。したがって、ヘムグループがタンパク質に結合しているその結 合方法が、このクラスのタンパク質の特徴であり、このためおよそP450ナノメー ターに独特の吸光ピークを生ずる(CO還元型)。 チトクロームP450タンパク質は、NAD(P)HからチトクロームP450の活性中心へ の電子の移動を助けるほかの1または2つのタンパク質といっしょになった酵素 複合体においてのみ、機能性である。 大まかに、チトクロームP450酵素系のクラスは、2つのサブクラス、すなわち 真核生物のミクロソームP450および「原核生物様」P450のクラスに分けることが できる。真核生物のミクロソームP450類の全般的特徴は、それらが真核生物の膜 に結合していること、それらが2要素(反応特異的チトクロームP450と一般的NA DPHチトクロームP450酸化還元酵素)酵素系であること、およびその反応がNADPH 依存性であることである。他方のサブクラスの全般的特徴は、酵素複合体が、3 要素からなることである。このサブクラスは、さらに2つのグループ、すなわち 細菌性P450(可溶性、たいていNADH依存性、反応特異的チトクロームP450と一般 的鉄−イオウタンパク質とNADH還元酵素からなる複合体)およびミトコンドリ アなどの細胞小器官中に生ずる真核生物P450(膜結合性、たいていNADPH依存性 、反応特異的チトクロームP450と一般的鉄−イオウタンパク質とNAD(P)H還元酵 素からなる複合体)に細分類することができる。 第1のサブクラスのチトクロームP450タンパク質は、したがってタンパク質NA DPHチトクロームP450酸化還元酵素とともに膜に結合する。このタンパク質は、 チトクロームP450のように、下級真核生物、植物および動物のミクロソーム(小 胞体)膜に見られる。 このタンパク質の構造については、チトクロームP450の構造についてよりもよ く分かっていないが、酵母と哺乳動物の系の間で、NADPHチトクロームP450酸化 還元酵素の機能的交換が証明されているという事実から見て、ここでもまた進化 の過程において高度の構造的保存があるに違いない。 種々の真核生物のミクロソーム酵素系において、とくに特異的チトクロームP4 50の誘導の後に、酸化還元酵素が小さい比率で存在しうることが、異なるケース で証明されている。したがって、還元酵素の量は、チトクロームP450によって修 飾されるべき化合物の転換速度の決定要因であろう。細胞中のNADPHチトクロー ムP450酸化還元酵素の量が増加すると、生触媒(biocatalytic)活性(P450によ って触媒作用をうける反応についての)が増加しうる。 今日まで、糸状真菌のチトクロームP450酵素系については、よく知られていな い。わずか2、3のチトクロームP450酵素しか特徴づけされておらず、NADPHか らチトクロームP450への電子移動の方法については、さらに少 ない知識しかえられていない。真菌でも、おそらくNADPHを通してチトクロームP 450酸化還元酵素に電子の移動が生ずるであろうことが証明されている。これに 関連して、免疫学および生化学実験での使用も行なわれている(スカラ(Scala )、マチュース(Matthcws)、コスタ(Costa)およびバン・エッタン(Van Ett an)(1988)エキスペリメンタル・マイコロジー(Experimental Mycology)12 、377-385)。この記事で彼らは、インビトロでピサチン脱メチル酵素アッセイ を用いて、ネクトリア・ヘマトコッカ(Nectria haematococca)由来ピサチン脱 メチル酵素(CYP57)での再構築実験において、ほかの糸状真菌のNADPHチトクロ ームP450酸化還元酵素が内因性のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素を補いう ることを示している。 これらの著者は、さらに彼らの調べた糸状子のう菌のNADPHチトクロームP450 酸化還元酵素間の免疫学的関係、酵母サッカロミセス・セレビシアエ(saccharo myces cerevisiae)のなど、他のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素間には存 在しない関係を示している。 今日まで、糸状真菌由来チトクロームP450酵素をコードする遺伝子は、限られ た数しかクローン化されていない。さらに、2、3のチトクロームP450酵素につ いて、いくらかの生化学的/生転換(biotransformation)知識がえられている だけである。今日までにクローン化されている遺伝子は、ペニシリウム・イタリ カム(Penicillium italicum)由来ラノスチロール14α−脱メチル酵素(CYP51 )、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)由来安息香酸パラ−ヒドロ キシラーゼ(CYP53)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来シ クロヘキ シミド誘導可能チトクロームP450(CYP54)、フサリウム・オキシスポラム(Fus arium oxysporum)由来硝酸塩/亜硝酸塩誘導可能チトクロームP450(CYP55)お よびネクトリア・ヘマトコッカ(Nectria haematococca)(CYP57)由来ピサチ ン脱メチル酵素をコードするものである。とくに、最初(CYP51)と最後(CYP57 )の酵素系に関して、相当量の生化学的知識がえられている。CYP51酵素は、非 常に多くの抗真菌剤の適用のポイントであり、したがってこの用途の視点から何 年も研究されてきた。加えて、アスペルギルス(Aspergillus)種によるビフェ ニル様化合物の水酸化に関して生化学知識が発表されてきている。 無関係な真菌宿主における真菌チトクロームP450の異種発現は、CYP57につい て記述されている。ネクトリア・ヘマトコッカからアスペルギルス・ニドランス (Aspergillus nidulans)にピサチン脱メチル酵素をコードする遺伝子を単に移 動するだけで、新しい宿主はピサチンを脱メチル化する能力を獲得することが見 いだされた。このことは、機能的な酵素複合体の形成に必要な他のすべての構成 要素は、アスペルギルス・ニドランス中にすでに存在し、それらはインビボにお いて異種起源のチトクロームP450とともに活性な酵素複合体を形成することもで きることを示している。 特異的チトクロームP450酵素の産生の増加(たとえば、さらにこの酵素をコー ドする遺伝子コピーを導入することによる)は、決してこの特異的酵素反応の総 合活性の増加を必ず確実にするものではない。実際、酵素活性を増加させるため のいくつかのP450酵素の導入は、一定の程度までにしか適さない。このことは、 アスペルギ ルス・ニガー由来チトクロームP450酵素安息香酸パラ−ヒドロキシラーゼをコー ドする遺伝子のクローニングおよび特徴づけを記述する発表(バン・ゴーコム( Van Gorcom)ら、(1990)モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティック ス(Mol.Gen.Genet.)223、192-197)に現れている。この発表はまた、アス ペルギルス・ニガーの安息香酸パラ−ヒドロキシラーゼ活性を改善する試みも記 述している。これは、問題のチトクロームP450の産生を増加することによって試 みられた。しかしながら、安息香酸パラ−ヒドロキシラーゼの産生の増加は、安 息香酸パラ−ヒドロキシラーゼ活性にプラスの効果をもたなかった。明らかに、 酵素複合体の他の構成要素が制限している。行われるべき転換が可能となるのに 必要な充分な電子が、P450酵素に供給されていないのかもしれない。 今までのところ、これらのチトクロームP450酵素に電子が供給される方法に関 して、ほとんど知られていない。ここで記述されるミクロソーム系における供与 体はNADPHであるが、いかにして移動が行われるのかの詳細は未だ証明されてい ない。ほかの真核生物のミクロソーム系と同様、これはおそらく1つの酵素、NA DPHチトクロームP450酸化還元酵素によって行なわれているということが、生化 学的に証明されている。酸化還元酵素が制限要素でありうることが提案されてい る。 したがって、とくに糸状真菌について多くのP450酵素が記述されているが、そ れらの特定の真菌由来の対応酸化還元酵素は、本発明は時点までえられていない 。 本発明によれば、以下に詳細に説明する新規酸化還元 酵素をコードする遺伝子により、新規酸化還元酵素によりおよび/または新規微 生物により、糸状真菌におけるP450酵素系の酵素活性を改善することができる。 本明細書において、「ポリペプチド」または「タンパク質」と述べるときはい つでも、これらの語は、とりわけ、少なくとも本発明のDNA配列によって部分的 にコードされるポリペプチドを示すものと理解される。実施態様には、所望の活 性を示す新規酸化還元酵素の断片および/または誘導体が含まれる。 本発明の時点まで、真菌においてチトクロームP450反応を改善するために用い ることが可能であったのは、酵母、植物、昆虫および哺乳動物などのほかの無関 係な生物由来のチトクロームP450酸化還元酵素のみであった。これらは、その対 応遺伝子がえられている生物である。宿主にできる限り適合する相同な系を用い るための努力において、真菌由来のチトクロームP450酸化還元酵素の使用は、当 然に好ましい。 既知のほかの生物由来チトクロームP450酸化還元酵素にもとづいて、標準技術 を用いて糸状真菌由来の酸化還元酵素を拾いあげ、単離し、クローン化すること が可能であるはずである。 驚いたことにこのばあいには、核酸ハイブリダイゼーションおよび標準PCR( ポリメラーゼ連鎖反応)などの現在の技術はうまくいかなかった。本発明の実施 例に記載するように、従来の方法により調製されたプローブ(他の酸化還元酵素 における保存配列に対して相補的な単鎖DNA片)を用いて、糸状真菌の酸化還元 酵素をコードする遺伝子を見つけることは不可能であることが示さ れた。 さらに、通常PCRに用いられる酵素(Taq−DNAポリメラーゼ)も、ほかのNADPH チトクロームP450酸化還元酵素中の保存領域にもとづく、我々の選んだプライマ ーを用いて、糸状真菌の酸化還元酵素をコードする遺伝子を拾いあげるのには適 さないことが分かった。 従来とは異なるポリメラーゼと組み合わせて、非常に高度に縮重された(dege nerated)プローブを選択することによってはじめて、我々は本発明の遺伝子を えることに成功した。 新規遺伝子は、図1に示す配列を含んでなる。それに由来するアミノ酸配列は 、図2に示す。 異なる種類の用途のために、菌体の生触媒活性を増加させることは興味深い。 天然に存在する酵素活性レベルは、しばしばこれらの酵素系のより工業的な用途 、たとえば廃棄物、土壌、水および大気中の化学物質や毒物の解毒(環境的用途 )、食料および家畜飼料(の生産のための原料)の解毒および修飾ならびに化学 または薬学的中間体もしくは最終生産物の合成を目的とした1またはそれ以上の 酵素的転換を行なうための菌類もしくはそれから単離した酵素複合体の使用、に 充分なほど高くはない。特定の生産物は、真菌の発酵によって完全に生産可能で あることも考えられる。もし、これに1またはそれ以上のチトクロームP450酵素 が関与するのであれば、改善されたNADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性を 有する株によって、生産を改善することができる。 チトクロームP450酵素活性は、しばしば経路における律速段階である。したが って、このタイプの酵素活性を 増加させることによって、そのような経路によって合成または分解される化合物 の転換の程度や速度に対して、プラスの効果を有する。チトクロームP450によっ て(部分的に)触媒作用を受ける転換の例として、安息香酸および他の芳香族の パラ−水酸化、ビフェニル様化合物の種々の水酸化、複環構造を有する芳香族お よび非芳香族化合物(PAKおよびステロイド様分子など)の特異的水酸化、エポ キシ化および脱メチル化、(短鎖、長鎖の)アルカンおよび脂肪酸の末端水酸化 、フィトアレキシンなどの脱メチル化、などがあげられる。現時点では、多くの チトクロームP450酵素が未だ発見されていないと推測される。しかしながら、こ れらの未だ発見されていない酵素活性においても、ここに記述される本発明は、 問題となる活性の増加に寄与することができる。 ここに開示される本発明の結果は、研究の行なわれた生物、すなわちアスペル ギルスのみに限定されるものではない。これに対する2つの重要な理由を述べる ことができる。第一に、糸状真菌の相同遺伝子間ではたいへん保存されており、 アスペルギルスから単離した遺伝子が道具の役割を果たして(簡単に)他の糸状 真菌から対応遺伝子をえることができる。チトクロームP450酸化還元酵素のファ ミリーにおける保存から見れば、このことはまったくこの遺伝子にも適用されよ う。第二に、アスペルギルス・ニガーのcprA遺伝子(本発明の酸化還元酵素をコ ードする遺伝子)は、さらなるNADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性の供給 源として、他の糸状真菌に直接用いることもできる。過去数年の間に、酵母由来 の対応遺伝子を用いた異種ハイブリダイゼーションによる 真菌からの遺伝子単離は、非常にしばしば失敗することが知られていた。これら のばあいには、糸状真菌由来の対応遺伝子を用いると、しばしば成功した。酵母 遺伝子中の保存されている(であろう)領域から始めて設計したオリゴヌクレオ チドをプライマーとして用いたPCR実験による遺伝子の単離でさえ、決して常に 有用なアプローチであるとは分かっていないのである。 さらに糸状真菌由来の遺伝子は、ほかの真菌における対応の働きを行なうため に、優れて用いうることが分かっている。そのプロモーターは通常機能的であり 、イントロンも、酵母のばあいとは異なり、ほかの真菌中で正しくスプライシン グされる。真菌における、たとえばチトクロームP450酵素系にもある、より複雑 な複合系の部分を形成するタンパク質の交換は、すでに何度も現実の可能性とし て見いだされている。チューブリンのサブユニットおよびミトコンドリアのATP アーゼ複合体の核コードされた(nucleo coded)サブユニット双方とも異なる種 類の糸状真菌の間で、インビボにて交換可能であることが分かっている。インビ トロでは、異なる種類の糸状真菌の間でのNADPHチトクロームP450酸化還元酵素 の交換可能性は、すでに証明されている。 NADPHチトクロームP450酸化還元酵素の活性に関して、タンパク質の修飾(方 向づけられたまたは方向づけされないやり方で提供される)によって、一般的ま たは特定の用途におけるより良い性質を有するNADPHチトクロームP450酸化還元 酵素をえることができる。この種のタンパク質の適合化(遺伝子における適合化 )は本発明により可能となった。したがって、それらも本発明の 保護の範囲に入るものである。 ほかの生物について、問題の遺伝子どうしの融合によりえられる、NADPHチト クロームP450酸化還元酵素と特定のチトクロームP450の融合により、酵素的に活 性な分子がえらえる。いくつかのばあいには、これは問題のチトクロームP450の 総合酵素活性にプラスの効果さえもたらしうる。そのような融合物も、本発明の 範囲に入ると理解される。 細胞中のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性を除去することが可能であ るかどうかは、きわめて疑わしい。この酵素は細胞に必須ないくつかの活性に関 与しており、そのためそのゲノムにおける、NADPHチトクロームP450酸化還元酵 素活性を除去することになる変異(方向づけられた、または任意に与えられた) は、おそらく致命的である。しかしながら、NADPHチトクロームP450酸化還元酵 素をコードする遺伝子(cprA)の発現シグナルの変化も所望の効果(NADPHチト クロームP450酸化還元酵素活性の変化(たいていは増加))をもたらすというこ とは、きわめてもっともらしい。現在えられているデータは、アスペルギルス・ ニガーcprA遺伝子のプロモーターはとくに強くはないことを示している。本発明 によりえられた知識にもとづけば、cprA遺伝子のプロモーターおよび/または5 ′非翻訳部分の修飾によりNADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性を増加させ る戦略は、特定するのが容易である。それは、cprA遺伝子のmRNAおよびタンパク 質合成の開始に関与するそれ自身の配列の修飾(方向づけられた、または任意の )により、行なうことができる。 本遺伝子のまったく異なる用途は、誘導剤毒物、キセノバイオティクス(xeno biotics)など(zoals)の検出のためのレポーターとして、この遺伝子またはプ ロモーターなどその一部を用いることである。この酵素の一般的な性質のため、 この態様では「幅広いスペクトラム」の診断薬が開発できることが考えられる。 これに関連して、たとえば、本遺伝子の発現シグナルを、単なる診断レポーター 遺伝子(たとえばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼもしくはルシフ ェラーゼをコードしている)、または免疫学的技術にもとづいた検出手段と融合 させることも考えられる。 チトクロームP450酵素系のインビトロにおける使用は、未だ大スケールでは行 なわれていないが、本発明はそのようなインビトロ酵素系の構成要素の1つ(NA DPHチトクロームP450酸化還元酵素)を大スケールで生産することを可能にする 。本発明は、また問題のチトクロームP450および増量したNADPHチトクロームP45 0酸化還元酵素双方を産生する菌株を作ることも意図している。そうすれば、そ こから簡単な方法で大量に酵素複合体を単離することが可能である。実験 以下に、糸状真菌のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素をコードする遺伝子 のクローニングおよび特徴づけを記載する。 これはとくに、アスペルギルス・ニガーATCC 1015のcprA遺伝子に関する。最 初に、異種ハイブリダイゼーションにより、アスペルギルス・ニガーからNADPH チトク ロームP450酸化還元酵素をコードする遺伝子を単離することを試みた。酵母サッ カロミセス・セレビシアエおよびカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis )の対応遺伝子をプローブとして用いた。これらの実験では、よい結果はえられ なかった(実施例1参照)。 つぎに、PCRにより遺伝子の単離を試みた。ほかの生物由来のNADPHチトクロー ムP450酸化還元酵素の既知のタンパク質配列の比較にもとづいて、最も保存され た領域からのアミノ酸配列をコードするプライマーを設計した。これらのプライ マーを、実施例IIに記述するように、PCR実験に用いた。このPCRでは種々のバン ドがえられたが、予期した高さにはなかった。引き続き、PCR混合物のゲル電気 泳動ののち、予期した大きさの領域をゲルから切り出して、(目には見えない) DNAを単離した。つぎに、このDNAに対して同じプライマーを用いて、新たにPCR 反応を行なった。このPCRでは、予期した大きさの産物がえられた。このPCR産物 を単離し、pUC19中にクローン化した。しかしながら、単離したクローンのDNA配 列分析では、既知のNADPHチトクロームP450酸化還元酵素配列のいずれにもいか なる類似性ももたないDNA配列がえられた。 この試みもうまくいかなかったとき、また別の方法により合成されたプローブ により遺伝子を単離することを試みた(実施例III)。アスペルギルス・ニガー のゲノムDNAを鋳型として、およびNADPHチトクロームP450酸化還元酵素から保存 された領域由来の縮重されたプライマーを用いて、PCR反応を行なった。この実 験で、従来の酵素(Taq DNAポリメラーゼ)とは対照的に、今や異なる 熱抵抗性DNAポリメラーゼ、すなわちいわゆるTth DNAポリメラーゼを用いた。こ の酵素はサルマス・サーモフィラス(Thermus thermophylus)由来で、一般にRN Aを鋳型として用いるPCR実験に薦められる。この酵素によっても、多くの異なる バンドがえられ、その中に予期した大きさのバンドがひとつあった。このバンド を、pUC19中にクローン化した。単一のクローン、pCPR1の配列分析により、そ の時点で知られていたNADPHチトクロームP450酸化還元酵素配列に対して、明ら かに認識可能な類似性(タンパク質レベルでの)がえられた。このクローンを、 遺伝子ライブラリーからのアスペルギルス・ニガーのNADPHチトクロームP450酸 化還元酵素遺伝子の単離の目的のために、プローブとして用いた。 アスペルギルス・ニガーcprA遺伝子は、7kb EcoRI-SalI断片(pCPR7)およ び3.7kb BglII-KpnI断片上に単離された(実施例IV)。完全な3.7kb BglII-Kpn I断片のDNA配列が決定された。それを図1に示す。このDNA配列中にオープンリ ーディングフレームが見いだされ、これは692アミノ酸をコードしている。この オープンリーディングフレームは、イントロンをコードするDNA配列によって1 回中断されている(実施例V参照)。mRNAの開始点も決定された(実施例VI)。 推定されるアミノ酸配列とほかの生物由来のNADPHチトクロームP450酸化還元 酵素の既知のアミノ酸配列との比較から、アミノ酸配列にもとづいて最も近い関 係にあるNADPHチトクロームP450酸化還元酵素(酵母サッカロミセス・セレビシ アエのもの)との同一性(identicality)は、40%しかないことが示された。ア スペルギルス・ ニガーNADPHチトクロームP450酸化還元酵素の種々の「保存された領域」におい ても、一致は100%ではない。 アスペルギルス・ニガーcprA遺伝子のmRNAレベルでの発現も分析した。本遺伝 子の発現は、とても高いというわけではないことが見いだされた。したがって、 cprAプロモーターを改善するか、またはcprAプロモーターを別のより強いプロモ ーターと置き換えることにより、発現を改善することができる可能性がある。 NADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性の程度に対する、数コピーのアスペ ルギルス・ニガーcprA遺伝子の導入の効果を調べ、またチトクロームP450活性に 対する効果も調べた。 実施例XIは、数コピーのcprA遺伝子のアスペルギルス・ニガーへの導入により 、NADPHチトクロームP450酸化還元酵素活性が強く増加されることを説明する。 この株(野生株)の安息香酸パラ−ヒドロキシラーゼ活性に対するこれの効果も 、この実施例に記載する。 実施例XIIは、数コピーのcprA遺伝子を、すでに数コピーのパラ−ヒドロキシ ラーゼ遺伝子(bphA)を含有し(そして、結果的に安息香酸パラ−ヒドロキシラ ーゼの産物が増加している)アスペルギルス・ニガー形質転換体へ導入すること によって、非常に実質的なBPH活性の増加をえることができる。これらの実験に よって、本明細書に記載されているNADPHチトクロームP450酸化還元酵素遺伝子 は、菌体中に導入されると、チトクロームP450活性に対して非常にプラスの効果 を与えうることが、明らかに示される。実施例I 異種のハイブリダイゼーションによるアスペルギルス・ニガーのcprA遺伝子のク ローニング 詳細を記載しない限り、技術は記載されたように行なった(サムブルック、フ リトシュおよびマニアティス(Sambrook,Fritsch & Maniatis)(1989)モレ キュラー・クローニング(Moleculair cloning)、コールド スプリング ハー バー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、米国 )。 異種のハイブリダイゼーション実験によるアスペルギルス・ニガー ATCC 101 5のチトクロームP450還元酵素をコードする遺伝子の単離を試みた。その目的の ために、アスペルギルス・ニガーおよびサッカロミセス・セレビシアエの染色体 DNA(5μg)を、HindIIIおよびEcoRIで消化した。このDNAを電気泳動により0. 8%TBE−アガロースゲル上で分離し、ハイボンドN膜(Hybond N membrane)( アマルシャム(Amersham)製)に移した。このようにして数個の等しいブロット をえた。2時間80℃で焼いて前記膜上にDNAを固定化し、2〜4時間のプレハイ ブリダイゼーションののち、えられたブロットをそれぞれカンジダ・トロピカリ スおよびサッカロミセス・セレビシアエ由来の32Pで標識された(アマルシャム マルチプライム DNA ラベリング キット(Amersham multiprime DNA label ing kit)、製造者の指示書にしたがう)チトクロームP450還元酵素に特異的な プローブとハイブリダイズした。カンジダ・トロピカリスCPR遺伝子用プローブ として、cpr1の一部分を含む820bpのEcoRIのフラグメントおよびCPR遺伝子全体 を含んでなる3.7kb のSpeIフラグメントをプラスミドpTS1から単離した(サッター(Sutter)ら、 1990、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)2 65(27)、16428〜16436)。サッカロミセス・セレビシアエのCPRに特異的なプロ ーブとして、CPRの中間部分(internal part)を含む700bpのBamHIフラグメン トおよびCPR遺伝子全体を含んでなる3.3kbのPvuIIフラグメントをプラスミドpTS 20から単離した(サッターおよびロパー(Loper)、1989、バイオケミカル・ア ンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Bioch.Biophys. Res.Comm.)160(3)、1257〜1266)。前記フラグメントを電気泳動により0.8% TBE−アガロースゲル上で分離し、供給者の指示書にしたがいジーンクリーンキ ット(Geneclean kit)(バイオ101)(Bio 101)により精製した。ブロットを 記載されたようにハイブリダイズし56℃で洗浄した(サムブルック、フリトシュ およびマニアティス(1989)モレキュラー・クローニング、コールド スプリン グ ハーバー ラボラトリー プレス、米国)。最後の洗浄工程を56℃で6×SS C、0.1%SDSを用いて行なった。サッカロミセス・セレビシアエのプローブを用 いて、はっきりした、特異的なハイブリダイジングバンドがサッカロミセス・セ レビシアエの染色体DNAをともなったレーンに見ることができた。カンジダ・ト ロピカリスのプローブを用いた実験はアスペルギルス・ニガーの染色体DNA上で 排他的に行なった。驚くべきことに、いずれのプローブを用いてもアスペルギル ス・ニガーの染色体DNAをともなったレーンにはハイブリダイジングバンドは見 いだされなかった。これは、おそらく一方のアスペルギ ルス・ニガーのチトクロームP450還元酵素の遺z伝子ともう一方のサッカロミセ ス・セレビシアエおよびカンジダ・トロピカリスのチトクロームP450還元酵素の 遺伝子との間の非常に限られた相同性のせいであろう。実施例II Taq DNAポリメラーゼを用いるPCRによるアスペルギルス ニガーのcprA遺伝子の クローニング 異種のハイブリダイゼーション実験がうまくいかなかったことを考慮して、PC R技術によりcprに特異的なフラグメントの合成を試みることにした。ラット(ポ ーターおよびカスパー(Porter & Kasper)(1985)プロシーディングス・オブ ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.)米国/82、973〜977) ;カンジダ・トロピカリス(サッターら(1990)ジャーナル・オブ・バイオロジ カル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)265、16428〜16436);およびサッカロミ セス・セレビシアエ(サッターおよびロパー(1989)バイオケミカル・アンド・ バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ160、1257〜1266)(表I )の既知のチトクロームP450酸化還元酵素における保存された配列にもとづき、 縮重されたプライマーを設計した。PCR産物のクローニングを容易にし手順の特 異性を増大するために、特異的な制限部位をコードする、追加の配列を末端につ けた(5′PCRプライマーにEcoRI制限部位、3′プライマーにBamHI制限部位 をつけた)。 PCR反応用にTaq DNAポリメラーゼ(パーキン エルマー製)を用いた。鋳型と して、アスペルギルス・ニガーの染色体DNAを用いた。チェックするために、鋳 型としてサッカロミセス・セレビシアエの染色体DNAおよび(サッカロミセス・ セレビシアエのチトクロームP450還元酵素の遺伝子全体がある)プラスミドpTS2 0 10ngを用いてPCR反応を行なった。 鋳型およびプライマーを10分間94℃で変性し、25サイクル(cycli)(1分間9 4℃、1分間43℃、2分間72℃)行なった。25サイクル行なったのち、インキュ ベーションを5分間72℃で行なった。 Taq DNAポリメラーゼを鋳型のプラスミドpTS20とともに用いたばあい、プライ マーの組合せMBL997-MBL999、MBL997-MBL1000およびMBL997-MBL1001を用いたと きに、予期した大きさのフラグメントが見いだされた。プライマーMBL998を用い たばあいは、いずれのばあいも予期した大きさの産物を合成するにはいたらなか った。 サッカロミセス・セレビシアエの染色体DNAを鋳型として用いることにより、 プライマーの組合せMBL997-MBL1001を用いたときに予期した大きさのはっきり示 すことができる産物がえられた。MBL997を、縮重4608回の、プライマーMBL999と 組み合わせて用いることにより、予期した大きさのわずかに示すことができる産 物がえられた。これらすべてのばあいにおいて、より小さい大きさの非特異的な 産物が多量に見いだされた。プライマーMBL998およびMBL1000とともに、鋳型と してサッカロミセス・セレビシアエの染色体DNAを用いたばあい、正しいPCR産物 を示すことはできなかった。 アスペルギルス・ニガーの染色体DNAを鋳型として用い、かつTaq DNAポリメラ ーゼを用いたばあい、どのようなプライマーの組合せを用いても予期した大きさ の産物は、見られなかった。全ての可能な組合せにおいて示すことができたもの は、多量の非特異的な、小さすぎる産物であった。 プライマーの組合せMBL997-999、MBL997-1000およびMBL997-1001を用いる1回 の実験の全材料を電気泳動により0.8%TBE−アガロースゲル上で分離した。1.2k b(予期した大きさ)のマーカーバンドのレベルにおける前記ゲルの1片を切り 取った。前記ゲルにおけるこの位置にはDNAは見えなかった。このゲルフラグメ ントからのDNAをフリーズ・スクイーズ法(freeze squeeze method)により単離 した。このようにしてえた材料を新しいPCR反応の鋳型として用いた。驚くべき ことに、プライマーの組合せMBL998/999およびMBL998/1001を用いたときに、こ の反応を行なったのち、予期した大きさの産物が見いだされた。しかしながら、 用いた全てのプライマーの組合せ(MBL997-MBL999、1000、1001およびMBL998-MB L999、1000、1001)で、おもにより小さい非特異的な産物を見いだした。見いだ した予期した大きさの産物を、ゲル電気泳動により0.8%低融点アガロースゲル (Low Melting Point agarose gel)上で分離し、そののちDNAをβ−アガラーゼ (agarase)により単離した(ニューイングランド バイオラブズ(New England Biolabs)、供給者の指示書にしたがう)。えられたDNAをEcoRIおよびBamHI で消化しpUC19のEcoRIおよびBamHI部位中にクローン化した。大腸菌に対する 形質転換ののち、ミニスクリ ーン(miniscreen)DNAを12個のアンピシリン耐性コロニーから単離した。えら れたミニスクリーンDNAをEcoRIおよびBamHIで消化したのち、ただ1つの構築 物が正しい大きさの挿入物を含んでいることがわかった。これについてキアゲン チップ500(Qiagen Tip500)を供給者の指示書にしたがって用い大きなプラスミ ド単離を行なった。この構築物のDNA配列を、M13の通常(universal)および逆 のプライマーを用い、ジデオキシ配列分析(ファルマシア T7 シークエンシ ングキット、供給者の指示書にしたがう)により分析した。決定されたようなDN A配列において、ほかの生物の既知のチトクロームP450還元酵素の遺伝子との相 同性は見られなかった。実施例III Tth DNAポリメラーゼを用いたPCRによるアスペルギルス・ニガーのcprA遺伝子の クローニング 代案として、Taq DNAポリメラーゼ1単位にかえて、RT-PCR(逆転写酵素PCR) 実験にとくに適した酵素、Tth DNAポリメラーゼ(スパエロ(Spaero)Q)0.1単 位を用いてPCR実験を行なうことにした。プラスミドpTS20を鋳型として用いた結 果、プライマーの組合せMBL997-999、MBL997-1000およびMBL997-1001を用いたと きに予期した大きさの産物をえた。アスペルギルス・ニガーの染色体DNAを鋳型 として用いた結果、プライマーの組合せMBL997-1001を用いたときに多量の産物 をえた。これらの産物の大部分は予期した大きさよりも小さいことがわかった。 驚いたことに、これらの縮重プライマーをTth DNAポリメラーゼと組合せて用い たばあい、非特異的な産物に加えて、予期した大きさの産物が見いだされた。PC R産物 をゲル電気泳動により1%TBE−低融点アガロースゲル上で分離し、そののちお そらく正しいであろう産物をβ−アガラーゼにより分離した。 えられたDNAをEcoRIおよびBamHIで消化したのち、フラグメントをプラスミ ドpUC19のEcoRIおよびBamHI制限部位中にクローン化した。大腸菌に対する形 質転換ののち、ミニスクリーンDNAを12個のアンピシリン耐性コロニーから単離 した。ミニスクリーンDNAをEcoRIおよびBamHIで消化したのち、12個の調製物 のうち4つが正しい大きさの挿入物をともなうプラスミドを含んでいることがわ かった。 これらの4つの調製物について、1つの構築物(pCPR1)についてキアゲン チップ500により大きなDNA単離を行なった。このDNAについて、挿入物の一部分 の配列はM13の通常および逆のプライマーを用いて決定した。この配列は、アミ ノ酸レベルで、ほかのチトクロームP450還元酵素遺伝子と明らかに相同な領域を 含んでいることがわかった。実施例IV cpr特異的プローブを用いるアスペルギルス・ニガーのλ遺伝子ライブラリーの スクリーニング アスペルギルス・ニガー株ATCC 1015のゲノムDNAをSau3AIで部分的に消化し 、ゲル電気泳動で分離した。大きさが13〜17kbのDNAを前記ゲルから単離し、前 記DNAを単離した。単離したDNAをベクターλEMBL3中にクローン化し、BamHIで 消化した。このゲノムライブラリーを、プラスミドpCPR1から単離したcpr特異 的プローブ(1.2kbのEcoRI-BamHIフラグメント、図4参照)を 用いて、スクリーニングした。cpr特異的PCRフラグメントを用い、単離したEcoR I−BamHI制限フラグメントに、マルチプライムDNAラベリング キット(multi prime DNA labeling kit)(アマルシャム製)を用い供給者の指示書にしたがい32 P-dCTPで放射性標識をつけた。標識をつける反応は3時間室温で行なった。前 記プローブをスピンカラムろ過により1mlのセファデックスG50−中型カラム( medium column)にかけて精製した。約40,000pfuをスクリーニングした(ゲノム の約20倍)。1回目のスクリーニングで13個の陽性プラークが単離された。これ らを再度スクリーニングした。2回目のスクリーニングののち、3つの陽性プラ ークが残った(λ5−3、λ11−1およびλ19−1)。サザン分析により全ての クローンがcpr特異的プローブとハイブリダイズするフラグメントを含んでいた ことが示された。これらのクローンの制限パターンは明らかに関連していたが同 一ではなかった。クローンλ19−1の制限地図を作成した(図3参照)。cprA遺 伝子のコーディング領域を含む、クローンλ19−1の7kbのEcoRI-SalIフラグ メントおよび3.7kbのBglII-KpnIフラグメントを単離し、ベクターpBluescript- SKII+(ストラタジーン(Stratagene)製)中にクローン化し、それぞれEcoRI およびsalIでならびにBamHIおよびKpnIで消化した。この結果としてベクター pCPR7およびpCPR2をえた(図3および4参照)。実施例V アスペルギルス ニガーのcprA遺伝子の配列分析 プラスミドpPCPR2中にクローン化されたアスペルギルス・ニガーのBglII−Kp nIフラグメントの両ストラン ドの配列を、「ジデオキシ・チェーン・ターミネーティング(dideoxy chain te rminating)」法(サンガー(ら)(1977)プロシーディングス・オブ・ナショ ナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ ・オブ・アメリカ 74、5463〜5467)にしたがい、35S−dATP T7 DNAシークエ ンシングキット(ファルマシア(Pharmacia)製)を用い供給者の指示書にした がって決定した。サブクローンの配列分析をM13の通常のプライマーおよび逆の プライマーを用いて行なった。配列の部分は合成オリゴヌクレオチドを用い、pC PR2 ds-DNAを鋳型として用いて決定した(図4参照)。配列情報はGCGソフト ウェア(デベリュックス(Devereux)ら、(1984)ヌクレイック・アシッズ・リ サーチ(Nucleic Acids Res)12、387-395)を用いて分析した。 前記DNA配列においてイントロンをコードするであろう領域を見いだした(図 2、位置2367‥ ‥ ‥ 2437)。cprA遺伝子のmRNAにおけるこのイントロンの実 際の欠除が、RT-PCR実験で証明された。これらにおいてPCR産物の大きさにおけ る予期した違いは、染色体DNAまたは単離した全RNAを鋳型として用い(ジーンア ンプ(GeneAmp)RNA-PCRキット、パーキン エルマー(Perkin Elmer)製)、前 記イントロンの周囲に位置するプライマーを用いたばあいに見いだされた。 アスペルギルス・ニガーのcprA遺伝子の推定される(deduced)アミノ酸配列 は、酵母サッカロミセス・セレビシアエ、カンジダ・トロピカリスおよびシゾサ ッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のCPRならびに齧歯類から の遺伝子のアミノ酸配列に対して39〜46% の同一性および現在までに公開された植物のCPRアミノ酸配列に約35%の同一性 を示すことがわかった。実施例VI 転写開始の決定 アスペルギルス・ニガーのチトクロームP450還元酵素遺伝子の転写開始を決定 するために、プライマーの延長実験(primer extension experiment)を行なっ た。その目的のために、2つのプライマー、PE50およびPE100を設計した。これ らのプライマーはATGの方向に読まれたATGのそれぞれ50bpおよび100bp3′に位 置する配列にもとづいた。 RNAをアスペルギルス;ニガーの形質転換体T16(バン ゴルコム(van Gorcom )ら、(1990)モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Mol Ge n Genet)223、192〜197)から単離した。菌糸体を培養し液体チッ素中でひいて 粉末化した。細かい粉末を1mlのRNAゾル(zol)(シンナ(Cinna)/バイオ テックス(Biotecx))中に再度懸濁し、そののち供給者の指示書にしたがい単 離を続けた。 両プライマー100ngを32P-yATP5μlでリン酸化(kinate)した。反応は30分間 37℃で記載されたように行なった(サムブルック、フリトシュおよびマニアティ ス(1989)モレキュラー・クローニング、コールド スプリング ハーバー ラ ボラトリー プレス、米国)。インキュベ ーションののち、前記プライマーをセファデックスG50スピンカラムにかけてろ 過により精製した。このプライマーに酢酸アンモニウム(NH4acetate)を加え 最終濃度2M、2.5容量氷冷エタノールとした。プライマーを−20℃で60分間で 沈殿させた。プライマーを4℃にて14000rpmで30分間遠心分離することによりペ レット化し、そののちえられたペレットを70%エタノールで洗浄し20μl TEに再 懸濁した。 プライマーをM−MLV逆転写酵素を用いて1時間37℃で延長した。反応混合物( 25μl)には、10μg RNA、50mM NaCl、34mM Tris-HCl/pH8.3、6mM MgCl2、5mM D TT、200U M-MLV逆転写酵素(ギブコ(Gibco)製)、0.5mM dGTP、0.5mM dATP、0 .5mM dCTP、0.5mM dTTPおよび5μl(25ng)のリン酸化(kinated)プライマー が含まれた。 反応は2μlの0.5M EDTAを加えることにより止め、ついでアルコール沈殿を行 なった(60分間-20℃)。遠心分離(30分間、14000rpm、4℃)ののち、えられ たペレットを5μlの蒸留水に再度懸濁した。その混合物(mix)に3.4μlの停止 ミックス(mix)を加えた(ファルマシア T7 ポリメラーゼ シークエンシ ング キット)。ゲルに適用する前に、試料を95℃で5分間変性し、そののち氷 の上に直接置いた。試料の1/2を8%くさび型変性ポリアクリルアミド ゲル(w edge shape denaturing polyacrylamid gel)に適用した。 チェックするために、両方のプライマー(ファルマシア T7 ポリメラーゼ シークエンシング キット)を用いプラスミドpCPR2を鋳型として用いて連鎖 反応を行ない、プライマー伸長混合物と同時にゲルに適用し た。2時間の電気泳動(1100V)ののち、ゲルを乾燥しX線感受性フィルムにさ らした。 いちじるしく、プライマーPE50を用いた結果は、プライマーPE100を用いたも のよりも非常に強いものであった。とくにプライマーPE50をともなったレーンに おいては非常に多くのバンドが見られた。両方の結果を組合せると、ATGの前に 3つの可能な転写開始位置、すなわち86bp(ctcActc)、55bp(cagActcg)およ び37bp(aagTcgg)が明示された。最後のバンドはプライマーPE100を用いたばあ いには見られなかった。実施例VII アスペルギルス・ニガー株の形質転換 アスペルギルス・ニガー株N204(ATCC 1015、csp、met、ボシュル(Boschloo )ら、アプル ミクロバイオル バイオテクノル(Appl Microbiol biotechnol )(1990)34*225〜228;bphA遺伝子の1コピーを含む)およびT18(bphA遺伝 子の約12コピーが提供されたアスペルギルス・ニガー N271;バン ゴルコム ら(1990)モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Mol Gen Ge net)223、192〜197)を、250mlの完全培地(0.1%Casアミノ酸、0.5%酵母エキ ス、0.1mg/mlメチオニン、1μg/mlピリドキシンが加えられた最小限培地)中2 l容のエーレンマイヤーフラスコ中で培養した。培養物に1mlあたり1.106胞子 を接種し、ついで18時間通気撹拌インキュベーター(air-agitated incubator) 中35℃で300rpmでインキュベートした。インキュベーションののち、菌糸体をミ ラクロス フィルター(miracloth filter)(カルバイオケム(Calbiochem)製 )を用いてろ過に より集めた。この菌糸体をついでプロトプラスト化し、そこから単離されたプロ トプラストをイェルトン(Yelton)ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル ・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オ ブ・アメリカ 81(1984)1470〜1474に記載されたように形質転換した。 100μlのプロトプラストの試料を、全部で、1μg環状pAN7-1 DNA、9μg環状 pCPR2 DNA、および2μlの1M ATA(オーリン トリカルボキシル酸(Aureen tr i-carboxyl acid)溶液で形質転換した。対照のチューブはDNAを含まないか、ま たは1μg pAN7-1(プント(Punt)ら、ジーン(Gene)56(1987)117〜124) のみを含んだ。ついで形質転換されたプロトプラストを、1.2Mソルビトール、 1μg/mlピリドキシン、0.1mg/mlメチオニンおよび100μg/mlヒグロマイシン を加えた最小限培地寒天プレート上にまいた。前記プレートを10日間35℃でイン キュベートした。4日後、最初の胞子形成した形質転換体が見えるようになった 。形質転換体を2回ブラシを用いて適用し、100μg/mlヒグロマイシン、0.1mg/m lメチオニンおよび1μg/mlピリドキシンをともなう最小限培地寒天プレート上 に純枠培養物を形成した。 形質転換1回あたり10〜40のヒグロマイシン耐性形質転換体を形成することが できた。DNAを用いずに処理されたプロトプラストの形質転換プレート上には、 ヒグロマイシン耐性形質転換体は35℃での14日間のインキュベーションののちに も見られなかった。実施例VIII 形質転換体のスクリーニング T18 複数コピーcprA形質転換体 実施例VIIからの形質転換体を、500pg/mlヒグロマイシン、0.1mg/mlメチオニ ンおよび1μg/mlピリドキシンを加えた最小限培地寒天プレート上に胞子をまく ことによって、それらのヒグロマイシン耐性レベルについて試験をした。 増大したcprA mRNAレベルをもつ形質転換体を選択するために、RNAコロニーハ イブリダイゼーション実験を、ステピエン(stepien)およびブドウ(Butow)( 1992、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)18(2)p380)によ りサッカロミセス・セレビシアエ用に記載されたように修飾したバージョンのプ ロトコルにしたがって行なった。最小限培地寒天プレートに形質転換体の胞子を 接種し、ハイボンド−Nフィルター(Hybond-N filter)で覆い、引き続いて菌 糸体がちょうど見えるがまだ胞子形成にはいたらないところまで25℃でインキュ ベートした。前記フィルターをソルビトール緩衝液(1.2Mソルビトール、0.1Mク エン酸ナトリウム/pH5.8、0.1M EDTA、50mM β−メルカプトエタノール)の500 μlの液滴に移し、5分間インキュベートし、続いてワットマン(Whatmann)3M Mろ紙のシートに移した。ワットマン紙上で5分間乾燥したのち、フィルターを ペトリ皿に10mg/mlノボザイム(Novozym)234(ノボノルデスク(NOVO Nordisk )製)を加えたソルビトール緩衝液の1滴(500μl)に移した。ペトリ皿をパラ フィルムで密封し、菌糸体を1時間35℃でインキュベートすることによりプロト プラスト化した。プロトプラスト化ののち、フィルターを溶菌緩衝液(2%SDS 、7.3%ホルムアルデヒド、50mM Tris-HC l/pH7.5、10mM EDTA)の500μlの液滴に移すことにより、プロトプラストを溶菌 し、ついで5分間室温でインキュベートした。フィルターが乾燥するまで(約5 分間)ワットマン3MMろ紙のシートに、溶菌したプロトプラストとともに、フィ ルターを移すことにより、フィルター上にRNAをブロットした。このブロットす る工程を1回繰り返した。最終的にフィルターを1分間800μl6×SSC(サムブ ルック(Sambrook)ら、***)、0.1%SDSの1滴に移し、続いてフィルターをワ ットマン3MM紙のシートに移すことにより乾燥した。RNAをUV架橋によりハイボ ンドNフィルター上に固定した。その目的のために、フィルターを3分間UV線箱 にセットした。フィルターを65℃で一晩32P-dCTPで標識されたcprAプローブとと もに、ハイブリダイズに供した。フィルターを65℃で洗浄し、最後の洗浄工程に おいては0.2×SSC、0.1%SDSを用いて、洗浄した。-70℃で一晩置いたのち、陽 性の形質転換体を同定することができた。N204複数コピーのcprA形質転換体 N204のヒグロマイシン耐性形質転換体を、cprA特異的プローブを用いたRNAコ ロニーハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。第2のスクリーニン グはチトクロームP450還元酵素特異的フィルターの活性のアッセイにより行なっ た。この目的のために、ヒグロマイシン耐性形質転換体の胞子を、0.1mg/mlメチ オニンおよび1μg/mlピリドキシンを加えた最小限培地寒天プレート上に接種し た。プレートをハイボンドNフィルターで覆い、菌糸体がちょうど見えるがまだ 胞子形成にはいたら ないところまで25℃でインキュベートした。フィルターを除き、菌糸体を液体チ ッ素中で凍結し、つづいて融解することにより溶菌した。フィルターを暗所で約 1時間、ネオテトラゾリウム(neotetrazolium)溶液(25mlあたり5mgネオテト ラゾリウム、5mg NADPH)中でインキュベートした。チトクロームP450還元酵素 活性をもつ位置で、明らかにピンクの沈殿を形成する。 2つのスクリーニング法にもとづき、形質転換体W13およびW35を、おそらく複 数コピーcprA形質転換体であろうものとして選択した。実施例IX 形質転換体のDNA分析 実施例VIIIで選択した菌糸体の形質転換体を、1μg/mlピリドキシン、0.1mg/ mlメチオニンおよび0.1%CASアミノ酸を加えた、最小限培地50ml中で培養した。 エーレンマイヤーフラスコ(300ml)に1.108胞子を接種し、通気撹拌インキュベ ーター(35℃、300rpm)に入れた。菌糸体をミラクロスフィルター(カルバイオ ケム製)上でろ過により集め、25mlの0.9%NaClで洗浄した。菌糸体をただちに 液体チッ素で凍結した。この菌糸体から染色体DNAをコラー(Kolar)らによって 記載された方法にしたがって単離した(ジーン(Gene)62(1988)127〜134)。 最後のアルコール沈殿のペレットを蒸留水100μlに混合した。 染色体DNA(40μl)をEcoRI 20UおよびKpnI 20Uを用いて6時間37℃で消化 した。消化ののち、等量のDNAを電気泳動(18時間、35ボルト)により0.8%TBE −アガロースゲル上で分離した。分離後、DNAをハイボンドNフィル ター(アマルシャム製)のシートに供給者の指示書にしたがい移した。DNAを固 定したのち(2時間、80℃)ブロットを65℃で4時間プレハイブリダイズし続い て65℃で32Pで標識したcprA特異的プローブとハイブリダイズした。前記ブロッ トを65℃で洗浄し、最後の洗浄工程には、0.2×SSC、0.1%SDSを含んだ。X線感 受性フィルムを-70℃で24時間さらした。 7つの選択された形質転換体をこのようにして分析した。1つの形質転換体に おいて、野性型のバンドのみが見られ、4つの形質転換体においては、cprA遺伝 子の1〜2コピーの取り込みが見られ、2つの形質転換体においてはcprAの数個 のコピーの取り込みが見られた。これらの複数コピー取り込み体のうち、形質転 換体T18#5を選択した。実施例X NADPH:チトクロームP450(チトクロームc)還元酵素活性 CPR活性をチトクロームcを還元する形質転換体の細胞を含まない抽出物の可 能性を測定することによって決定した。(マダヤシア(Madyastha)ら(1976) バイオケミストリー(Biochemistry)15、1097〜1102) 菌糸体を、0.1%CASアミノ酸、0.1mg/mlメチオニンおよび0.1μg/mlピリドキ シンを加えた、最小限培地50ml中で18時間培養した。通気撹拌インキュベーター (35℃、300rpm)において300ml容エーレンマイヤーフラスコ中、培地1mlあた り1.106胞子を接種した。菌糸体をミラクロスフィルター(カルバイオケム製) 上でろ過により集め、25mlの0.9%NaClで洗浄した。菌糸体をともな うフィルターを、ティッシュの間でブロットすることにより過剰の緩衝液を除去 した。菌糸体を液体チッ素で凍結し、モルタル(mortar)中で粉末化した。細か い粉末を、1mlの氷冷したCPR抽出緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液/pH7.8 、20%グリセロール、1mM EDTA、1mM DTT、5μg/ml ロイペプチン(Leupept in)、4mM PMSF、0.2%デオキシコール酸ナトリウム)を満したエッペンドルフ 反応容器に移した。前記容器を直接混合し氷上においた。抽出物を氷上で15分間 インキュベーションし(可溶化工程)および15分間4℃、1000gで遠心分離した 。上清を新しい容器に移し氷上で保存した。チトクロームc還元酵素活性を直接 測定した。 1mlのCPRアッセイミックス(0.3M K−リン酸塩緩衝液/pH7.7、0.1mM EDTA 、1mM KCN)に2μlの20mMチトクロームcを加えた。室温(20〜25℃)で5〜2 0μlの細胞を含まない抽出物を加え、1〜2分間インキュベートした。反応を1 μlの100mM NADPHを加えることにより開始した。チトクロームcの還元を分光測 光的に3分間(550nm)モニターした。 タンパク質濃度はバイオ・ラド・タンパク質アッセイキットを用い、供給者の 指示書にしたがって、BSAを標準として用いて決定した。 実施例XI インビトロアッセイにおける、BPH活性 インビトロでBPH活性を測定するために、NADPHチトクロームP450酸化還元酵素 によるNADPHの安息香酸塩(benzoate)依存消費にもとづいた、まだ至適化され ていないアッセイを用いた。 BPH活性をインビトロでアスペルギルス・ニガー株T18(cprA 1コピー、bphA 12コピー)、株T18#5(cprA 6コピー、bphA 12コピー)、株N204(cprA 1コピー、bphA 1コピー)および株W35(bphA 1コピー、cprA複数(multiple )コピー)において測定した。 菌糸体を、0.1%CASアミノ酸、0.1mg/mlメチオニンおよび0.1μg/mlピリドキ シンを加えた、最小限培地250ml中で18時間培養した。通気撹拌インキュベータ ー(35℃、300rpm)において21容エーレンマイヤーフラスコ中、1mlあたり1 ・106胞子を培地に接種した。菌糸体をミラクロスフィルター(カルバイオケム 製)上でろ過により集め、250mlの0.9%NaClで洗浄した。菌糸体を250mlのイン キュベーション培地(グルコースのかわりにC源として0.1%安息香酸塩が存在 する、ピリドキシンお よびメチオニンをともなった最小限培地)を満した21容のエーレンマイヤーフ ラスコに移した。菌糸体をミラクロスろ過布上でろ過により集めた。0.9%NaCl で洗浄したのち、菌糸体をともなうフィルターをティッシュの間でブロットする ことにより過剰の緩衝液を除去した。菌糸体を液体チッ素で凍結しモルタル中で 粉末化した。細かい粉末を、1mlの氷冷したCPR抽出緩衝液(50mMリン酸ナトリ ウム緩衝液/pH7.8、20%グリセロール、1mM EDTA、1mM DTT、5μg/mlロイペ プチン)、4mM PMSF、0.2%デオキシコール酸ナトリウム)を満したエッペンド ルフ反応容器に移した。前記容器を直接混合し氷上においた。抽出物を氷上で15 分間インキュベーションし(可溶化)、ついで15分間4℃、3500rpmで遠心分離 した。上清を新しい容器に移し氷上で保存した。 BPH活性をチトクロームP450還元酵素によるNADPAのBPH特異的消費を分光測光 的にモニターすることにより(340nm)測定した。細胞を含まない抽出物(10μl )を500μlのBPHアッセイ緩衝液(100mM Tris/pH7.8、10mM MgCl2、200μM NADP H)に加えた。非特異的NADPH消費を2分間測定した(δ−BA)。安息香酸塩を加 え(20μlの20mM溶液)、NADPH消費を4分間測定した(δ+BA)。BPH特異的NAD PH消費を以下の計算式にしたがって決定した。 単位(1単位=総タンパク質1mgあたり1分間に消費される1μmolのNADPH) をδBAに消滅係数(extinctioncoefficient)(e=6.22・10-3M-1cm-1)をかけ ることによって計算した。 タンパク質濃度はバイオ・ラド・タンパク質アッセイキットを用い、供給者の 指示書にしたがって測定し、BSAを標準として用いた。 実施例XII インビボのHPLCアッセイにおける、Bph活性 菌糸体を、0.1%CASアミノ酸、0.1mg/mlメチオニンおよび0.1μg/mlピリドキ シンを加えた、最小限培地500ml中で18時間培養した。通気撹拌インキュベータ ー(35℃、300rpm)において21容エーレンマイヤーフラスコ中、培地に1mlあた り1・106胞子を接種した。菌糸体をミラクロスフィルター(カルバイオケム製) 上でろ過により集め、25mlの0.9%NaClで洗浄した。菌糸体を誘導培地(1%グ ルコースのかわりに0.1%の安息香酸塩をC源として加え、0.1mg/mlメチオニン および0.1μg/mlピリドキシンを加えた最小限培地)中で2次培養した。培地の 試料を5時間後に採取した。 2μlの試料をHPLCクロマトグラフィーにより、逆相C−18カラム(スーパー ・ケム(Super chem)LC18−DB) 上30℃で、溶出緩衝液として10mMクエン酸ナトリウム緩衝液/pH3、60%エタノ ールを用いて分析した。1ml/分の流速を用いた。安息香酸塩および4−ヒドロ キシ−安息香酸塩を245nmで検出した。参考試料は10μlの1mM安息香酸塩および 10μlの1mM 4−ヒドロキシ−安息香酸塩を含有した。 実施例XIII チトクロームP450酸化還元酵素遺伝子の広範な作用を確かめるために、異なる (本実施例においては異種についても)チトクロームP450酵素の活性に対するCP Rの過剰生産(overproduction)の効果を試験する実験を行なった。 その目的のために、糸状真菌 ペニシリウム イタリ カム由来ラノステロール 14α−脱メチル酸素(14dm)をコードする遺伝子の数 コピーとともに、アスペルギルス・ニガーのcprA遺伝子の数コピーを提供された アスペルギルス・ニガー株を構築した。プラスミドの構築 前記の2つの遺伝子を導入するために、2つのプラスミドを構築した。プラス ミドpCPR2−amdSは、プラスミドpCPR2をNotIで消化し、それにアスペルギル ス・ニドランスのamdS遺伝子の機能的なコピーを提供し(ハイネス(Hynes)ら 、モル・セル・バイオル(Mol.Cell.Biol.)3(1983)1430〜1439)、長さ約5 kbのNotIフラグメント(染色体amdSフラグメント(EcoRIおよびSalI)のオリ ジナルの末端はNotI部位に置きかえてある)上におくことによって構築した。a mdS遺伝子を形質転換実験の選択マーカーとして用いた。プラスミドp14dmを以下 のように構築した。酵母−発現プラスミドYEP24をBamHIおよびsalIで消化した 。これらの部位の間に、ペニシリウム・イタリカム由来14dm遺伝子全体が配置さ れている、約2.1kbの染色体(部分的)BamHI−(部分的)salIフラグメントを つなげた(図5参照)。アスペルギルス・ニガーの形質転換 pCPR-2−amdS アスペルギルス ニガーN402(ボス、ピーエイチデー テシス アグリカルチ ュラル ユニバーシィティ ワゲニンゲン ニュージーランド、1986(Bos,PhD Thesis Agricultural University Wageningen NL,1986))を 出発株として用いた。形質転換実験を(ケリー(Kelly)およびハイネス、イー エムビーオー ジャーナル(EMBOJ.)4(1985)475〜479)に記載されたように 行った。アスペルギルス・ニガーN402をpCPR2-amdSを用いて形質転換した。選択 プレート(15mM CsClと唯一のN源として働くアセトアミド(10mM)をともなっ た最小限培地プレート)上にブラシを用いて適用して純粋培養物を形成したのち 、形質転換体を、さらに唯一のN源としてのアクリルアミドを用いる可能性につ いて選択した。amdSコピー数が多い株はアクリルアミド上でより少ないコピー数 をもつ株よりも、よりよく増殖した(バーダス(Verdoes)ら、トランスゲニッ ク・リサーチ(Transgenic Research)2(1993)84〜92)。 選択された数の形質転換体をさらにサザンブロット分析により分析した。結果 的には、形質転換体AB2-2(≧10コピーcprA)をさらなる実験のために選択した 。p14dm プラスミドp14dmを、hph遺伝子が配置され、ヒグロマイシン耐性を与えるプラ スミドpAN7-1を用いて同時形質転換によりアスペルギルス・ニガーに導入した( プント(Punt)ら、ジーン(Gene)56(1987)117〜124)。形質転換体を、100 μg/mlヒグロマイシンを用いてプレート上で選択した。そののち陽性の形質転換 体をより高い濃度のヒグロマイシンに対するそれらの耐性について選択した。よ り高い濃度のヒグロマイシンにおいても充分に増殖する形質転換体をさらにサザ ンブロット分析により分析した。結果的には形質転換体AB−D1(≧10コピー14d m)をさらなる実験のために選択した。 形質転換体AB-D1中に、第2の形質転換実験で、過剰の14dmコピーに加えて、 過剰のcprAコピーの導入を試みた。形質転換体AB-D1をこの目的のためにプラス ミドpCPR2-amdSを用いて形質転換した。さらなる選択手順は形質転換体AB2-2の 単離にしたがう手順と同じであった。結果として、形質転換体ABD1.15(≧10コ ピー14dm、≧10コピーcprA)をさらなる実験のために選択した。チトクロームP450還元酵素活性 ラノステロール 14α−脱メチル酵素活性 4つの異なる株におけるラノステロール 14α−脱メチル酵素活性を、ラノス テロール 14α−脱メチル酵素の阻害剤を異なる濃度で含有する培地中の異なる 株の放射状増殖を酵素活性の測定値として測定する実験で決定 した。その目的のために、菌糸体のプラグ(plugs)を既知のラノステロール 1 4α−脱メチル酵素阻害剤(DMIs)の濃度を高くしながらプレート上に提供した 。DMIの濃度が高くなるにつれ、菌糸体の伸長(outgrowth)はますます小さくな る。数日後伸長した菌糸体のフィラメントの長さを測定した。EC50値、伸長した 菌糸体のフィラメントの長さがDMIを用いないばあいの伸長の1/2であるDMIの濃 度を算出した。用いたDMIはフェナリモル(Fenarimol)、エタコナゾール(Etac onazole)およびイマザリル(Imazalil)であった。チェックのために、ベノミ ル(Benomyl)による増殖阻害についても調べた。この物質は異なる、14dmとは 独立した機構により菌糸体の増殖を阻害する。これらの実験の結果を表VIおよび 図6に示す。 培地および溶液 50 x AspA(1l) 300g NaNO3 26g KCl 76g KH2PO4 18ml KOH(10M) 1000*胞子エレメント(100ml) 2.2 g ZnSO4・7H2O 1.1 g H3BO3 0.5 g MnCl2・4H2O 0.5 g FeSO4・7H2O 0.17g CoCl2・6H2O 0.16g CuSO4・5H2O 0.15g Na2MoO4・2H2O 5.0 g EDTA 最小限培地(500ml) 10 ml 50*AsPA 10 ml 50% グルコース 0.5ml 1000*胞子エレメント 1.0ml 1M MgSO4 完全培地 10 ml 50*AspA 10 ml 50% グルコース 0.5ml 1000*胞子エレメント 1.0ml 1M MgSO4 5.0ml 10% Cas−アミノ酸 25 ml 10% 酵母エキス 図4 拾い上げた陽性λクローン、λ19−1およびそれから構築されたサブクロ ーン、pCPR2およびpCPR7。(S=SalI、E=EcoRi、Bg=BglII、K=KpnI 、N=NcoI) 図5はCPR遺伝子が配置されたpCPR2の挿入物を示す。配列が決定されている領 域は矢印で示す。(Bg=BglII、N=NcoI、X=XhoI、P=PstI、K=KpnI
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C12R 1:685) (C12N 9/02 C12R 1:685) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G B,GE,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ ,LK,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL, NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S I,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN (72)発明者 ファン ホルコム、ロベルタス フランシ スサス マリア オランダ王国、2622 デーエー デルフ ト、リベリアストラート 7

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  1. 【特許請求の範囲】 1.少なくともチトクロームP450酸化還元酵素の酵素的に活性な部分をコードし 、図1に示す分子の核酸配列の2本鎖のうちの1本の少なくとも一部分を含んで なるか、または穏やかにストリンジェントな条件の下でそれら2本鎖の1本とハ イブリッド形成する核酸配列を含んでなる組換えDNA分子。 2.請求の範囲第1項記載のDNA分子に由来する、チトクロームP450酸化還元酵 素をコードするRNA分子。 3.請求の範囲第1項記載の組換えDNA分子によってコードされるポリペプチド であって、チトクロームP450酸化還元酵素活性を有するポリペプチド。 4.少なくとも請求の範囲第1項記載のDNA分子で形質転換され、糸状真菌由来 である形質転換された宿主細胞。 5.糸状子のう菌由来である、請求の範囲第4項記載の宿主細胞。 6.アスペルギルス属由来である請求の範囲第5項記載の宿主細胞。 7.アスペルギルス・ニガー由来である請求の範囲第6項記載の宿主細胞。 8.さらに、P450チトクロームタンパク質をコードするDNA分子で形質転換され た、請求の範囲第4〜7項記載の宿主細胞。 9.P450チトクロームタンパク質が図3に示すDNA分子によってコードされてい るか、または該タンパク質が穏やかにストリンジェントな条件の下で図3のDNA 分 子とハイブリッド形成するDNA分子によってコードされている、請求の範囲第8 項記載の宿主細胞。 10.請求の範囲第4〜9項のいずれかに記載の宿主細胞を用いる、P450チトクロ ームタンパク質を用いる酵素的転換を行なう方法。 11.請求の範囲第3項記載のポリペプチドを用いる酵素的転換を行なう方法。
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