【発明の詳細な説明】
M−蛋白質の分類及びタイピングのための毛細管電気泳動免疫サブトラクシ
ョン法発明の分野
:
本発明はヒト血清などのサンプル中のM−蛋白質を分類及びタイピングするた
めの改良法に関するものである。より詳細に述べるならば、本発明はこのような
分類及びタイピングを行うための均質水性毛細管電気泳動免疫サブトラクション
分析に関するものである。発明の背景
:
I.M−蛋白質
抗体は、哺乳動物及びその他の脊椎動物に侵入する“異物”(または抗原)分
子を識別し、この分子に結合することのできる免疫グロブリンのクラスに属する
。典型的抗体は、仮定上“Y”構造を形成する2本の“heavy”鎖(H鎖)が2
本の同一の“light”鎖(L鎖)と結合して成る。H鎖は“Y”の根幹を形成し
、L鎖は2本の分枝を形成する。H鎖及びL鎖は別々に免疫系によって合成され
る。L鎖には2つの型があり、それぞれカッパ(“κ”)及びラムダ(“λ”)
と名付けられる。H鎖にも次の数クラスがある:γ(“IgG”);α(IgA
);δ(“IgD”);μ(“IgM”)及びε(“IgE”)。IgG、Ig
A及びIgMが主な血清免疫グロブリンである;IgD及びIgEは血清中には
概して非常に低濃度で存在する。
IgM免疫グロブリンは基礎的4本鎖抗体の五量体であるという点で他の免疫
グロブリン クラスとは異なる。すなわちそれは5つの“Y”構造をもち、その
各々が2本のL鎖と2本のH鎖をもっている。IgMのモノマー単位はジスルフ
ィド結合によって、及び“J鎖”として知られる単一のポリペプチドによってつ
ながっている。遊離のモノマーM−蛋白質は健常者には見いだされず、むしろ多
くの病気及び症状を見分ける特徴である[ブッシュ(Bush,S.T.)など、J.Lab.C
lin.Med.73巻:194−201[1969])。
実際、健常者においては抗体鎖の合成は免疫系によって調節され、正常状態下
では完全な免疫グロブリンのみが生成するようになっている。抗原に出合うと免
疫系のB−細胞が無性的に(clonally)増殖し、侵入してきた抗原を中和するの
に十分な量の免疫グロブリ
ンを確実に産生する。侵入物が中和された後、普通は免疫グロブリン産生はやむ
。しかし時として、統制されないB−細胞クローンが規制から外れ、抗原が排除
された後も免疫グロブリンを産生し続ける。このような細胞の免疫グロブリンは
同じ抗原結合部位をもち、これら細胞が一個の祖先細胞の無性的増殖の結果であ
ることを示唆している。このような細胞によって産生された免疫グロブリンはモ
ノクローナル免疫グロブリン、または“M−蛋白質”と呼ばれる。
このようなM−蛋白質の産生は重大な疾患の存在の反映であることがある。例
えば多発性骨髄腫はIgG、IgA、IgD、IgM、またはIgE M−蛋白
質の産生と関連している。多発性骨髄腫の主な病理学的特徴は、骨破壊、すなわ
ち骨変形または急性疼痛性病的骨折である。臨床的には患者は骨痛を経験し、正
常Ig’sの産生減少により感染しやくなり、また貧血になる。骨髄腫患者の2
0%は、遊離モノクローナルL鎖であるベンス−ジョーンズ蛋白の存在を示す。
多発性骨髄腫は神経組織(すなわち脊髄、神経根及び脳−または末梢神経)にも
悪影響を与える。
IgM M−蛋白質の産生はリウマチ性関節炎、いくつかの免疫不全疾患、感
染症、及びB−細胞リンパ増殖性疾患、例えば多発性骨髄腫、ワルデンストロー
ム・マクログロブリン血症及びリンパ腫などと関連する[イシイ(Ishii,H.)、
Acta.Med.Okayama 42巻:279−286ページ(1988);ロバーツ-トムソン(Robert
s-Thomson,P.J.)など、Aust.NZ J.Med.14巻:121−125ページ(1984);カータ
ー(Carter,P.M.)など、Br.Med.J.2巻:260−261ページ(1971);ハリス-ダン
クル(Harris-Dangkul,V.)など、J.Immunol.155巻:216−222ページ(1977)]
。このような病気ではIgM M−蛋白質はIgMの総濃度の10ないし40%
に達する[ロバーツ−トムソンなど、Austr.NZ J.Med.14巻:121−125ページ(
1984)]。そしてこの蛋白質の全体的表現はこのような病気の臨床的重大性と相
関するようにみえる[ナガイ(Nagai,K.)など、Scand.J.Immunol.14巻:99−10
8ページ(1981);イシイ、Acta.Med.Okayama 42巻:279−286ページ(1988)]
。IgMの産生増加は患者血液の粘度を高め(“高粘稠度”となる)、頭痛、め
まいをおこす。
M−蛋白質のH鎖組成物(すなわちIgA、IgG、IgM、IgE、IgD
)がその蛋白質のクラスを決める。蛋白質のL鎖組成(κまたはλ)がその型(
タイプ)を決める。M−蛋白質の分類及びタイピングは臨床的に非常に価値があ
り、重要である。そしてM−蛋白質を分類し、型を区別するために種々の方法が
用いられている。例えば血清M−蛋白質濃度はカラムクロマトグラフィー[スガ
イ(Sugai,S.)など、Jpn.J.Clin.Oncol.13巻
:533−542ページ(1983);ロバーツ−トムソンなど、Austr.NZ J.Med.14巻:
121−125ページ(1984)]、酢酸セルロース電気泳動法[イシイ、Acta.Med.Oka
yama 42巻:279−286ページ(1988);セザキ(Sezaki,T.)など、Jpn.J.Clin.H
ematol.23巻:847-853ページ(1982)]、アガロースゲル電気泳動法(ベックマ
ン インスツルメント社。パラゴンシステム)、毛細管電気泳動法(米国特許第
5 228 960号)を用いて、及び溶血斑アッセイによって[ナガイ(Nagai,K.)な
ど、Scand.J.Immunol.14巻:99-108ページ(1981)]測定される。M−蛋白質の
ためのエライサ法も開発された[スガイなど、Jpn.J.Clin.Oncol.13巻:533-542
ページ(1983)]。このアッセイではM−蛋白質をガラスビーズに結合させ、家
兎抗M−蛋白質抗体と反応させ、その後ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗家兎IgG
と反応させる。
II.電気泳動−免疫サブトラクション
M−蛋白質分析は電気泳動法によって容易になった。このような方法は、溶液
中の蛋白質が固有の電荷をもっていることを利用したものである。電場が存在す
ると、この固有電荷のためにその蛋白質には特徴的な“電気泳動”移動度が与え
られる。こうして種々の種類の蛋白質を互いに分離させることができる。このよ
うな場の影響下ではすべての蛋白質がその蛋白質の電荷と反対の電荷をもつ電極
の方に動く;より小さい電気泳動移動度をもつ蛋白質はより遅く動き、したがっ
て(相対的に)より大きい電気泳動移動度をもつ蛋白質と分離される。
M−蛋白質の分類及び型別のためには免疫学的電気泳動法、例えば免疫固定電
気泳動(“IFE”)、免疫電気泳動(“IEP”)、特に免疫サブトラクショ
ン電気泳動(“ISE”)が用いられている。
IEP及びIFEは関係のある方法である[Beckman Bulletin EP 2.“免疫
電気泳動法の応用指針(Immunoelectrophoresis Application Guide)”(1991
)]。IFEは第一段階でアガロースゲル蛋白質電気泳動を用い、第二段階で免
疫沈殿法を用いる。臨床的には免疫グロブリン分析のために臨床的サンプル(例
えば、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液)をアガロースゲル上の多数の位置(“
レーン”)に置く。免疫グロブリンは蛋白質であり、そのためサンプル含有ゲル
が電場にさらされた場合にはその免疫グロブリンは陽極から陰極に向かってゲル
を横断するような電荷分布を有する。その後特異的免疫グロブリンクラス及びタ
イプ(典型的にはIgG、IgA、IgM,カッパ及びラムダ)に対する抗体を
含む抗血清を特異的レーンに適用する。ゲルと抗血清をインキュベートする;そ
の
間に特異的免疫グロブリンとその抗体との間に免疫コンプレックスが形成される
。このような免疫コンプレックスの位置は染色によって可視化される。それから
ゲル上の標準パターンを用いることによって、ゲル上にある免疫グロブリンのタ
イプを決定することができる。こうして特定バンドの存在は特定免疫グロブリン
タイプと一致するM−蛋白質の存在を示すことになる。IFE実施法はチェン(
Chen,F-T.A.)の米国特許第5 202 006号;チェンの米国特許第5 120 413号に開
示されている;これらはすべて引例によってここに挿入される。
パラゴンR電気泳動装置(ベックマン インスツルメント社、フラトン、カリ
フォルニア、USA)はIFEもIEPも実施できる市販装置である[参照。ゲ
ボット(Gebott)など、米国特許第4 669 363号;Beckman Bulletin EP−3、
“パラゴンR血清蛋白質電気泳動II(SPE−II)説明書(ParagonR Serum Prot
ein Electrophoresis II Application Guide)”(1991);Beckman Bulletin
EP−4“免疫固定電気泳動法説明書(Immunofixation Electrophoresis Appli
cations Guide)”(1991);ベックマン説明書(Beckman Instructions)015-2
46513-H“パラゴンR電気泳動装置-IFE”(1990);Beckman Bulletin EP−
6“モノクローナルγグロブリン異常及びその他の血清蛋白質異常の検出のため
の高分解電気泳動法(High Resolution Electrophoresis in the Detection of
Monoclonal Gammopathies and Other Serum Protein Disorders)”(1991);
チェンなど、Clin.Chem.37巻:14-19ページ(1991)]。
免疫電気泳動法のように、免疫サブトラクション電気泳動法(ISE)もIF
Eの変法である[アグッチ(Aguzzi,F)など、Estratto dal.Boll.Ist Sieroter
,Milanese 56巻:212-216ページ(1977);ホワイト(White,W.A.)など、Bioch
em.Clin.10巻:571−574ページ(1986);メルリニ(Merlini,G)など、J.Clin.
Chem.Biochem.21巻:841−844ページ(1983);リウ(Liu,C-.M.)など、米国特
許第5 228 960号。これらは引例によってここに挿入される]。しかしながらI
SEにおいてはサンプルを、特定の“標的”蛋白質に向かう不溶性化抗体で前処
理する。もしも標的蛋白質が存在するならば、それはその抗体に結合し、サンプ
ルから除去される。それからサンプルをゲルに加え、電気泳動にかける。標的蛋
白質が最初のサンプル中にあった場合、ゲル中の蛋白質を可視化するとゲルに“
陰性バンド(染色されない)”があらわれる;ゲル中のその位置は、除去された
バンドがもしも抗体によって除去されなかった場合に移動するであろう位置であ
る。
IEP、IFE及びISEはこして各々多段階を必要とし、分離用ゲル及びシ
グナル発
生染料の製造及び使用を必要とする。これらの方法が多大な労力を必要とするこ
とは、臨床的立場から明らかに支障となる。その上これらの方法に関連する廃棄
最終産物の量はこれらの方法の関連費用をさらに増加させる。
臨床的環境におけるこれら方法の欠点を考え、より低い費用でより多くのサン
プルを処理できる労力の比較的かからない方法が探索されてきた。このような方
法の一つが“毛細管ゾーン電気泳動”(“CZE”)である。(チェンなど、Cl
in.Chem.77:14-19(1991);米国特許第5 120 413号;両方共引例によってここ
に挿入される)。毛細管ゾーン電気泳動法は蛋白質[グロスマン(Grossman,P)
など、Anal.Chem.61巻:1186-1194ページ(1989)]及びその他の帯電物質の速
かな、効率的分離を可能にする。臨床的サンプルの構成成分の分離は20分以内
、典型的には10分以内に達せられるのが普通である。
概してCZEでは毛細管、すなわち内径約2μmないし約200μm(好適には
約50μm、最も好適には約25μmまたはそれ以下)の管にサンプルを導入し、
その管に電場をかける。電場の電位が管のサンプルを引っ張り、それをその構成
成分部分に分離する。サンプル構成成分の各々は独自の電気泳動移動度を有する
から、より大きい移動度をもつものはより小さい移動度をもつものよりも速く毛
細管中を動く。そこでサンプルの構成成分は管を移動する間に毛細管中の分離し
たゾーンに分けられる。On-line検出器を用いてその分離を連続的に検出し、分
割ゾーンに基づいて種々の構成成分に関するデータを得ることができる。
CZEは毛細管カラムの内容物に基づいて概ね2種類にわけられる。“ゲル”
CZEでは、毛細管は適したゲル、例えばポリアクリルアミドゲルで満たされ、
したがってサンプルの構成成分の分割は構成成分のサイズ及び電荷によって予想
される。分析速度が大きいにもかかわらず、ゲルCZEにはいくつかの欠点があ
る;特に目立つのはゲル材料の非予測性及び非耐久性である。これらの要因によ
り多数の分析行程を実施する場合にはゲルCZEは適さない。
もう一つの種類のCZE(すなわち“オープン”CZE)では、毛細管に電導
性緩衝液を満たす[キム(Kim,J.W.)など、Clin.Chem.39巻:689-692ページ(1
993)]。それから毛細管を負電荷でイオン化する。このようなイオン化は毛細
管壁を負に帯電させ、それによって緩衝液から正電荷を引っ張る。溶液の電気的
中性が保たれなければならないから、正イオンが毛細管壁の方へ流れると緩衝液
溶液及びサンプル成分の同様な流れがおきる。この毛細管内電気浸透的流れによ
り、中性のものもイオン性のものも、電荷には無関係に
陰極の方へ導く固定速度コンポーネントが生ずる。“オープン”CZEの緩衝液
は伝導及び拡散に対して安定である。よって“オープン”CZEでは、ゲルを基
礎とする電気泳動で得られるのと全く同様な分離が得られる。
石英ガラス(fused silica)が主として毛細管用の材料として用いられる;そ
れはCZEで用いられる比較的高い電圧に耐えることができるからであり、内壁
がイオン化して負電荷を作り出し、これが所望の電気浸透的流れを生じるからで
ある。だがアルミナ、ベリリウム、テフロンR被覆材料、ガラス、石英及びこれ
らの組み合わせ(石英ガラスが入っている場合も入っていない場合もある)も用
いられる。毛細管カラムは約10v/cmないし約1000v/cmの広範囲の適用電気
泳動電場に耐えられるのが普通である。毛細管カラムは取り扱いやすくするため
に外側を(例えばポリイミド材料を用いて)コーティングしてもよい。毛細管の
内壁は処理しなくても、または多量の溶液が電気浸透的に流れている間内壁への
吸着を減らすことができる材料をコーティングしてもよい。しかしながら内壁は
コーティングしない方が普通は好適である。なぜならば一般的コーティングは思
いがけなく破壊する傾向があるからである。米国特許第5 120 413号では臨床的
サンプルの分析を未処理の毛細管カラムを用いて行っている。
オープンCZEは例えば臨床的サンプル分析のために好適な多くの性質をもっ
ている:この分析はゲル充填カラムを含まないから、特定のゲル充填カラムでは
あり得る分析行程数の固有の制限がない;毛細管カラムが未処理の場合、被覆カ
ラムではおこり得る予測不可能の発気が回避される;サンプルサイズが小さい(
普通は希釈サンプル5ないし200nLの桁である);サンプル分析時間は速い、
すなわち約20分以内である;プロトコルは自動制御に向いており、それによっ
て効率的、効果的サンプル分析のために必要な労力技術を減らすことができる。
引例によってここに挿入されるリウなどの米国特許第5 228 960号はM−蛋白
質の分類及びタイピングを容易にするCEI法の最近の改良法について述べてい
る。この方法ではサンプルの一部を、M−蛋白質を実質上溶液から除去すことの
できる、不溶性にした又は不溶性化可能の結合パートナーと共にインキュベート
する、そしてその後CZEにかける。その部分の“エレクトロフォレグラム”(
すなわちサンプルの構成成分部分の分離を示すグラフ)を未処理サンプルのそれ
と比較する。もしもサンプルがM−蛋白質を含んでいる場合、未処理サンプルの
エレクトロフォレグラムはサンプルの“完全な”構成成分プロフィールを示す;
同様に処理サンプルのエレクトロフォレグラムには、前者と比較して、サン
プルから除去されたM−蛋白質に相当する“差し引かれた”ピークを証明するで
あろう。
明らかなように、この方法はM−蛋白質をサンプルから分離する固相の使用を
必要とすることである。この不均質系の使用はサンプルのインキュベーション時
間を増加させ、したがって分析処理量を減少させる。このような分離段階を削除
することは不可能である、なぜならば抗体、特に主要血清免疫グロブリンである
IgGsがH鎖M−蛋白質と共に移動するからである。正常血清中のIgGの量
は20mg/mLより多く、IgA及びIgMの濃度は10mg/mL以上である。(例え
ばロバート−トンプソンのAustr.NZ J.Med.14巻:121-125ページ、1984、参照)
。
M−蛋白質の正確な分類及びタイピングの重要性を考慮すると、そのような分
析に応用できる、処理段階が最小で、使用しやすく、処理量が大きく、分離用ゲ
ルの使用によって時々起きる最終産物廃棄問題を回避できる技術が所望である。発明の概要
:
本発明はヒトなどの血清サンプルに存在するM−蛋白質の上記のような分離及
びタイピング法を提供する。より詳細に言えば、本発明は確認されたM−蛋白質
を分類及び型別するための毛細管電気泳動免疫サブトラクションの改良法に関す
るものである。
詳細には、本発明は少なくとも1つの分析物を構成成分部分として含むサンプ
ルの下記段階から成る毛細管電気泳動分析法を提供する:
(a)サンプルの第一部分(first portion)を毛細管電気泳動法によって構成
成分分析物部分(parts)に分離し、それらの部分を検出し;
(b)サンプルの第二部分をあらかじめ決められた候補分析物に対する最低1つ
の特異的結合パートナーと混ぜ合わせ、上記特異的結合パートナーは分析物の電
気泳動移動度とは異なる電気泳動移動度をもち;
(c)毛細管電気泳動によって第二部分を構成成分部分に分離し;
(d)段階(c)の分離した構成成分部分を段階(a)の分離した構成成分部分
と比較する。
本発明は少なくとも1つの構成成分部分を含むサンプルの下記諸段階から成る
毛細管電気泳動分析法をも提供する:
(a)毛細管電気泳動法によるサンプルの第一部分(aliquot)の構成成分部分
への分離及びその部分の検出と、サンプルの第二部分の構成成分部分への分離と
が同時に行われ、第二の部分はサンプルの構成成分に対する少なくとも1つの特
異的結合パートナーと混ぜ
合わせてあり、その特異的結合パートナーは特異的結合パートナーの構成成分部
分の電気泳動移動度とは異なる電気泳動移動度をもち;
(b)第一部分の分離した構成成分部分を第二部分の分離した構成成分部分と比
較する。
本発明はさらに、サンプルが全血、血漿、血清、尿及び脳脊髄液から成る群か
ら選択されたものであるか、またはあらかじめ定めた候補分析物が免疫グロブリ
ン(特にM−蛋白質)である実施態様に向けられる。
発明は特に、特異的結合パートナーが、それが結合する分析物、または抗体の
分析物結合フラグメントの電気泳動移動度とは異なる電気泳動移動度をもつよう
に(特に無水物との反応によって)変形された抗体である上記方法の実施態様に
関するものである。
本発明はヒト免疫グロブリンの電気泳動移動度とは異なる電気泳動移動度をも
つアシル化抗ヒト免疫グロブリン抗体も提供する。図の簡単な説明
:
図1はエレクトロフェログラムを示す。曲線aは未変形IgGのエレクトロフ
ェログラムである;曲線bは変形IgGのエレクトロフェログラムである;曲線
cは変形抗IgG抗体と共にインキュベートした後のIgGM−蛋白質含有サン
プルのエレクトロフェログラムである。好適実施例の説明:
本発明は“毛細管電気泳動免疫サブトラクション(CEI)”の改良法を提供
する。本法を用いてあらゆる可溶性サンプル置換基(substituent)を分析する
ことができ、特にサンプル中のM−蛋白質を分類し型別することができる。
上記のように、M−蛋白質がIgGと共に移動する(すなわちカラムの“ガン
マ領域において移動する”)という事実から、患者のM−蛋白質を分析するため
には“除去”(または不溶性化)段階が必要である。リウらの米国特許第5 228
960号は不均質電気泳動アッセイ装置を用いてこの問題を解決した。
本発明のCEI法は“変形”分析物結合分子を用いる;この分子はこのような
変形にもかかわらずM−蛋白質、血清蛋白質など(すなわちあらかじめ定めた“
分析物”)に結合する能力を保有する。変形分析物結合分子の使用により、コン
プレックス化した分析物を不溶性化する必要なしに、(好適には水性)均質相で
CEI法を行うことができる。最も好適には分析物結合分子は抗体である(モノ
クローナルでもポリクローナルでもよい)。この代わりにこのような抗体のフラ
グメント(FabまたはF(ab)2フラグメント
など)でもよいし、組換え または“1本鎖”抗体でもよい。ここに用いられる
抗ヒト免疫グロブリン抗体は、ヒト免疫グロブリンと特異的に結合できる(ヒト
またはヒト以外の)抗体である。適した抗M−蛋白質抗体はDAKOコーポレー
ション(コペンハーゲン、デンマーク)、及びベーリングウェルク社(Behringe
werke AG)(マールブルグ、ドイツ)から市販されている。別法としてM−蛋白
質を精製し、それを用いて家兎またはその他の哺乳動物からポリクローナル抗体
を誘導するという方法によってポリクローナル抗体を得ることができる。同様に
モノクローナル抗体を誘導し、用いることができる。以後の説明を容易にするた
めに、結合分子は抗体とすることにする。
その上本発明の方法は固相の必要がなく、結合抗原を除去するための分離段階
を必要とせず、液相抗体の使用によって免疫反応を高め、各免疫サブトラクショ
ンのために必要な抗体量を減らす。
本発明によると、分析物−特異抗体は毛細管電気泳動における移動時間がもは
やガンマ領域にはないように化学的に変形される。抗分析物抗体の一般的同時移
動を変えるいかなる方法も用いることができる。抗体を変形して陽極への移動を
高める(すなわち陰極方向への移動を遅らせる)のが最も好適である。
このような変形を行うためには種々の方法のいずれを用いてもよい。しかしな
がら最も好適なのは、抗体を無水物(例えば琥珀酸無水物)を用いて変形し、そ
の電気泳動移動度を変えることである。琥珀酸無水物は一級アミノ基、例えば免
疫グロブリン中のリジンエプシロンアミノ基などには非常に反応性である。例え
ば各H鎖免疫グロブリン分子は約50のリジン残基を含む。これらの基を琥珀酸
無水物により変形させる場合、その変形が電気泳動移動度を変化させるには十分
であるが、抗体の分析物への結合能力を許容範囲を超えて侵害するほどではない
ことが好ましい。
こうして好適変形法は、抗ヒト免疫グロブリン(すなわち抗IgG、抗Iga
、抗IgM、抗−κまたは抗−λ)を無水物の存在下で30−60分間おだやか
に撹拌しながらインキュベートする段階を含む。その後反応混合物を緩衝水溶液
に対して透析し、それから本発明の方法にしたがって用いることができる。
本発明の1実施態様においては、毛細管電気泳動法を用いてサンプルの未処理
部分をその構成成分部分に分離する。サンプルの第二部分を、変形した分析物−
特異抗体とインキュベートし、それから毛細管電気泳動法にかける。
このような実施態様では、このような未処理及び処理サンプルの毛細管電気泳
動分析を
比較する。このような比較は種々のほとんど同じ方法で行われるとはいえ、分析
すべきサンプルのエレクトロフォレグラムを生成し、比較することが最も好まし
い。例えばサンプル中に高濃度で存在する或る構成成分は(比較的)低濃度で存
在する構成成分に比較して高い高さと広い巾をもつピークを示す。普通はエレク
トロフォレグラムは検出単位(例えばUV吸光度)を縦軸に、構成成分がカラム
を移動して検出領域に行くまでの時間を横軸にプロットすることによって作成さ
れる。蛍光を基礎とする検出法も報告されている[リー(Lee,T.T.)など、J.Ch
romatogr.595巻:319-325ページ(1992)]。結果は単位数値によっても得られ
、普通は個々のピークによって境界づけられる面積から導かれる。サンプルがM
−蛋白質を含む場合、未処理サンプルのエレクトロフォレグラムはサンプルの“
完全な”構成プロフィールを示す;同様に処理サンプルのエレクトロフォレグラ
ムでは、前者と比較した場合、変形抗体を使用した結果としてガンマ領域からピ
ークが“消失”(すなわち減少または欠如)している。
本発明のもう一つの実施態様において、サンプルを変形分析物−特異抗体と共
にインキュベートし、それから毛細管電気泳動にかける。この実施態様において
は、分析物の分類及びタイピングは未処理サンプルのエレクトロフォレグラムと
の比較なしに行われる。かくして、“ピークがガンマ領域から消失するかどうか
”よりもむしろ、ピーク−−分析物特異抗体によって形成された免疫コンプレッ
クスをあらわす−−がガンマ領域の外側に検出されるかどうかを確認する。2実
施態様を組み合わせて分析物の分類及びタイピングの精度を高めることができる
。
使用抗体の性質がそのピークの免疫グロブリンのクラスまたはタイプを特徴づ
ける。例えば、もしスクシニル化抗IgA抗体の使用がカラムのガンマ領域から
ピークを消失させたならば、その患者の特定のM−蛋白質はIgAM−蛋白質と
して分類される。同様にして、抗κ抗体の使用により、患者がκ型M−蛋白質を
もつかどうかが明らかにされる。CEI1行程につき1つの変形抗体のみを使用
するのが好ましいとはいえ、変形程度を調節して同じ反応で2つ以上の変形抗体
(例えば抗IgA及び抗IgG)を用いることができる。このような変形に必要
なことは、このような抗体の各々が(1)IgGとは異なり、しかも(2)互い
に異なる電気泳動移動度をもつことだけである。このような変形抗体は変形程度
を種々変えることによって得られる。
既述のように、本発明のCEI法の評価は普通は肉眼によって行われる、すな
わち未処理サンプルのエレクトロフォレグラムを評価し、新しいピークが形成さ
れているかどうか
を確かめ、及び/または処理サンプルのエレクトロフォレグラムと比較して消失
したピークがあるかどうかを見分ける。各構成成分のピークの下の面積も比較す
る;すなわち“サブトラクテド”ピークの下の面積を別とすれば、第一及び第二
部分から得られる個々のピーク下面積の数値は実質上同一であるが、処理サンプ
ルから得られる免疫サブトラクテドM−蛋白質領域下の面積は、未処理サンプル
の対応する面積とは本質的に異なる。要するに、処理サンプル中にM−蛋白質ピ
ークが存在しないということは、分析サンプルがM−蛋白質を含んでいたことを
示し、さらに元のサンプルのM−蛋白質濃度の定量が可能であることを示す。
2つのエレクトロフォレグラム(またはピーク下の比較可能の面積)を比較す
るために、エレクトロフォレグラムを標準化することが好ましい。一般的には標
準化は次の3段階を含む:(1)ベースラインの標準化;(2)吸光度の標準化
;(3)時間の標準化。
ベースラインの標準化は、各エレクトロフォレグラムが共通の水平基準線をも
つようにエレクトロフォレグラムを調節することによって達せられる;好都合な
ことに、これをするには、最初のベースラインがそれぞれゼロ軸の下か上にある
場合には単にエレクトロフォレグラム全体を上か下に移動させればよい。ベース
ラインの標準化は共通の横軸を作り出すことである。
吸光度の標準化は、好適には血清中の最も有力な蛋白質−アルブミン−を基礎
とする。一般的にはアルブミンと関連したエレクトロフォレグラム ピークは“
最も高い”ピークである。アルブミンピークの単一の最大吸光度を選択すること
によって、そのエレクトロフォレグラムのすべてのピークは比例的に調節される
。吸光度の標準化はこうして、分析される処理−及び未処理サンプルのそれぞれ
の量の差を修正する。アルブミンの最大吸光度が約0.10ないし約0.2吸光
度単位の間にあるのが好適であり、約0.15が最も好適である。アルブミン濃
度を用いる代わりに、或るマーカー、または処理または未処理サンプル両方に共
通するその他のいかなる成分を用いることによっても吸光度の標準化を達成する
ことができる。
時間の標準化を行うのは主として、得られたエレクトロフォレグラム結果を一
定の領域内に置くためである。好適には、これは処理−及び未処理サンプルの分
析前に2つの“マーカー”を添加することによって達せられる。これらマーカー
は毛細管カラムを横切って行くことができ、サンプル構成成分の検出時間を(括
弧で)囲むそれぞれの時間に検出されるように選択される。こうしてもしも検出
すべきサンプル構成成分が(例えば分析すべ
きサンプルの量の変動のために)異なる種々の時間に検出される場合、2組の構
成成分の相対的検出時間をこれらのマーカーを用いて標準化することができる。
最も好適なのは2つのマーカーが次のように調製されることである:ジクロロ
安息香酸20mgをジメチルホルムアミドに溶解し、この混合物を適切な緩衝溶液
、例えばICSTM希釈液(ベックマン インスツルメント社)100mlに溶解す
ることである。それからこの溶液の部分を処理 及び未処理サンプルに加える;
そのときこれらのサンプルは、マーカーの同一相対的濃度を含むようにする。分
析中、これらのマーカーはサンプル構成成分と共にカラムを横切って行く。その
電気泳動移動度では、ジメチルホルムアミドのピークが一般的には“最初に”検
出されるピークとしてあらわれ、その後にサンプル構成成分があらわれ、それか
ら“最後の”検出ピーク、ジクロロ安息香酸があらわれる。このようにサンプル
構成成分に帰せられるピークは2つのマーカーによって囲まれる。
このような時間標準化のもう一つの実施態様において、マーカーは分析物 抗
体コンプレックスの位置を(括弧で)囲むように選択される。
時間の標準化は、吸光度の標準化のように、個々のエレクトロフォレグラムピ
ークの下の相対的面積を同じに保持するようにして行われる;そのような標準化
によってのみ2つのエレクトロフォレグラムの互いに正確な比較が可能となる。
このような時間の標準化の方法論はここに引例によって完全に挿入されるチェン
(F.T.A.)の米国特許第5 139 630号によって開示されている。エレクトロフォ
レグラムのシグナル−ノイズ比を改良する方法はここに引例によって挿入される
アンダーソン(Anderson,P.D.)の米国特許第5 098 536号によって開示される。
分析の別法(これも肉眼によって方向づけられる)は、スラブ−ゲルIFEの
結果、すなわちM−蛋白質の位置のバンドが誘導されるような方法に基づくもの
である。エレクトロフォレグラムピークをこのようなバンドに変換する方法及び
装置はゲラルド(Gerald L.Klein)及びスティーヴン(Steven P.Katzman)の米
国同時係属出願第07/911,307号、タイトル“毛細管電気泳動データをあらわす方
法及び装置(Method and Appsratus for Displaying Capillary Electrophoresi
s Data)”に開示されている;これは引例によりここに挿入される。
上記の説明はサンプルとして血清に焦点を当てているが、種々のサンプルのど
れでも分析できる。サンプルは臨床的サンプル(全血、血清、血漿、尿、脳脊髄
液など)であるのが好ましい。このような臨床的サンプルは分析前に希釈するの
が好ましい;このような希
釈は特に所望の分析比を得やすくし、さらに分析の感度を高める。すなわち未希
釈臨床的サンプル、特に血清は多量の蛋白質をふくむので正確に分析することが
できない。血清に関して言えば、最も好適な希釈は血清1部に対して適切な希釈
液10部であるが、血清1部対希釈液約100部までの希釈を用いることもでき
る。希釈液は好適には軽度に緩衝した食塩溶液、PH7.0、例えばICSTM希
釈液である。
問題のサンプル構成成分に対する特異的結合パートナーの比は主に2つの要因
に関して選択される。第一に、このような結合パートナー(単数または複数)は
そのサンプル中に存在すると予想されるM−蛋白質の全部を実質上除去するのに
十分な濃度で準備されるのが好適である。第二に、固体支持体への結合パートナ
ーの負荷効率が考慮される。この第二の要因は費用−便益 比に関する考慮を反
映する、なぜならば結合パートナーの過負荷は構成成分結合量を増加させずに費
用を増加し得るからである。特異的結合パートナー:M−蛋白質の比は約1:1
と約15:1との間にあるのが好ましい。
本発明により種々の毛細管チューブ又はカラムを用いることができる。このよ
うなカラムは処理されてなくてもよいし(すなわち“むきだしの”石英ガラスな
どの内壁)または適した材料で被覆してもよい。被覆した毛細管が毛細管電気泳
動の領域では広く利用されてきた、その主な理由は電気泳動分離操作中、これら
コーティングが蛋白質の未処理壁への吸着を制限する傾向をもつことである。し
かしながらこれらのコーティングは思いもかけず壊れることがある。そこで、開
示されたCEIプロトコルは未処理カラムでも被覆カラムでも用いられる一方、
カラムが未処理である方が好ましい。未処理毛細管カラムを用いるとき、分離用
緩衝液はここに引例によって挿入される米国特許第5 213 669号に開示されたも
のであることが好ましい。適切なカラムはその他にグットマン(Guttman,A)の
米国特許第5 213 669号;ブロラ(Burolla,V.P.)の米国特許第5 198 091号;シ
ー(Shieh,C-.H.)の米国特許第5 098 539号に開示されている:これらは全部引
例によってここに挿入される。
最も好適なのは、緩衝液が150M硼酸塩、PH10.00±0.25、である
ことである;だが約70mMないし約400mMの濃度が使用可能である。緩衝液の
モル濃度が増加するにつれてカラム内の温度は上がる。したがって構成成分に対
する温度の影響が要因になるような状況下では、より低濃度の緩衝液を利用すべ
きである。しかしながら、開示されたCEIプロトコルは、被覆または未処理カ
ラムどちらを用いる場合でも、蛋白質材料の分離と関連して用いられるいかなる
分離用緩衝液によっても実現されることは当然であ
る。
本発明のCEI法と関連して用いられる毛細管電気泳動機器装置はよく知られ
ている。特に好適な機器は、サンプルの少なくとも2つの部分を同時評価するこ
とのできる多チャンネル装置である;その装置が複数部分を同時に分析でき、複
数のエレクトロフォレグラムが得られ、比較できるのがより好適である。特に好
適な毛細管電気泳動装置がゲラルド(Gerald L.Klein)の米国同時係属出願第07
/916,308号、タイトル“多チャンネル自動毛細管電気泳動装置(Multichannel A
utomated Capillary Electrophoresis System)”に開示されている;これは引
例によってここに挿入される。研究評価及び確認のために特に適した毛細管電気
泳動装置はP/ACETM高性能毛細管電気泳動装置(ベックマン インスツルメ
ント社)である[チェン、Clin.Chem.38巻:1651-1953ページ(1992);チェン
、J.Chromatogr.559巻:445-453ページ(1991);フ(Fu,P.C.)など、Clin.Ch
em.37巻:970ページ(1991);チェン、Clin.Chem.37巻:1061ページ(1991)
;ゴードン(Gordon,M.J.)など、Anal.Chem.63巻:69-72ページ(1991)]。こ
れらは全部引例によってここに挿入される。エレクトロフォレグラムの標準化が
、組み込まれたコンピューターソフトウエア[例えばベックマンインスツルメン
ト社(フラトン、CA、USA)のシステムゴールドTMソフトウエア]によって
行われるという点で最も好適である。
このような多チャンネル分析の1実施態様において、M−蛋白質の存在はその
他のサンプル構成成分、例えばIgG、IgA、IgM及び免疫グロブリンのκ
及びλ鎖などの分析と平行して確認される。このような実施態様はサンプルの多
数の構成成分を1回の分析で評価することができる。
今、本発明を概略述べたが、同じことが下記の例によってより容易に理解され
る。それは説明のために提供されるもので、特に記載がない限り本発明を制限す
るものではない。
例1M−蛋白質の分類及びタイピングのための毛細管電気泳動免疫サブトラクション
サンプルがIgGクラスM−蛋白質を含むかどうかを確認するために、毛細管
電気泳動サブトラクションを行った。サンプルを変形抗IgG抗体と共にインキ
ュベートし、毛細管電気泳動にかけた。実験
1.未変形抗IgG抗体のエレクトロフォレグラム移動度
抗IgG抗体を150mM硼酸緩衝液(PH10.0)に溶かして電圧10kV及
び温度
24℃で電気泳動にかけた。抗体は期待通り、血清蛋白質エレクトロフォレグラ
ムのガンマ領域を移動することがわかった。
2.琥珀酸無水物による抗IgG抗体の変形
a)ヤギ抗ヒトIgG[DAKOコーポレーション(コペンハーゲン、デンマー
ク)から入手した10mg/ml]を燐酸緩衝食塩水(0.15M、PH7.2)に対し
て透析し、、緩衝液を各1:1000の容量比で3回交換した。
b)琥珀酸無水物10mgをジメチルホルムアミド100μlに溶解した。
c)琥珀酸無水物溶液6.7μlを蒸留水200μlと混合した。
d)透析したヤギ抗ヒトIgGを5ng/mlに希釈し、その後希釈琥珀酸無水物溶
液と混合した。
e)混合物を30ないし60分間、インバーティング ミキサーで撹拌した。
f)反応混合物を段階1に記載したようにPBSに対して透析した。
g)ここで透析物はスクシニル化ヤギ抗ヒトIgG抗体として使用する準備がで
きた。
3)スクシニル化抗IgG抗体のエレクトロフォレグラム移動度
スクシニル化抗IgG抗体を段階1に記載のように電気泳動にかけると、未変
形抗体よりも陽極性(anodic)であることがわかった。
4.毛細管免疫サブトラクションを用いる免疫グロブリンの同定及び特徴づけ
免疫グロブリンサンプルを段階1に記載の条件で毛細管中で電気泳動にかけた
。図1のエレクトロフォレグラムで説明されているように、曲線a、免疫グロブ
リンはガンマ領域にあらわれた。同様にスクシニル化ヤギ抗ヒトIgGでは図1
の曲線cで示されるエレクトロフォレグラムが得られた。免疫グロブリンサンプ
ルの1mlをそれからスクシニル化抗IgG抗体溶液6.7μlと混合した。反応混
合物を周囲温度で1−60分間インキュベートし、同じ条件を用いて毛細管電気
泳動にかけた。結果は図1の曲線bに示される:そのピークは免疫グロブリン:
抗IgG抗体コンプレックスのピークであり、免疫コンプレックスの生成を示す
ものである。曲線bのコンプレックスピークの肩は、スクシニル化抗IgG:I
gGコンプレックスが形成されたサンプル中でコンプレックスを形成しなかった
少量のIgGを示す。
ガンマ領域からのピークの消失は、そのピークの免疫グロブリンのクラスまた
は型を特徴づけた;すなわちスクシニル化抗IgG抗体はIgGにmonospecific
であったから、サンプル中の免疫グロブリンはIgGとして特徴づけられた。こ
の方法は固相を必要とせ
ず、結合抗原を除去するための分離段階を必要とせず、液相抗体の使用により免
疫反応を高め、各免疫サブトラクションに必要な抗体量を減少させた。この方法
の使用により、血清M−蛋白質を分類し(IgA、IgG、IgMなど)、それ
らのL鎖組成物(カッパ及びラムダ)によって型別することができた。
要するに、ヒト血清M−蛋白質の分類及びタイピングを分析物特異的抗体を用
いて行った;分析物特異的抗体は、その抗原分析物に対する結合力を維持しなが
ら、毛細管電気泳動におけるその移動時間がもはやガンマ領域にはないように、
琥珀酸無水物によって化学的に変形された。
本発明を特殊な例と関連づけて説明したが、これはさらに変更可能であり、こ
の利用は本発明の原理に概ねしたがうあらゆる種々のバリエーション、用途また
は適応を網羅し、発明が関係する技術の範囲内の公知のまたは一般的実用の際に
おこるような、これまでに示された、そして以下の添付のクレイムの範囲に示さ
れる本質的特徴にあてはまるような本発明からの逸脱をも含むものとする。