JPH08507857A - 細胞および他の粒子の固定化および分離 - Google Patents
細胞および他の粒子の固定化および分離Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、特異性結合パートナーと不溶性担体との間の結合がヒドロキシボリル/シス-ジオール結合を含むことを特徴とする、標的粒子を特異性結合パートナーにより不溶性担体に結合させることによる、標的粒子を不溶性担体に結合させる方法を提供する。本発明は、細胞の固定化および単離に特に有用である。
Description
【発明の詳細な説明】
細胞および他の粒子の固定化および分離
本発明は、細胞および他の粒子の固定化および分離に関し、特にヒドロキシボ
リル/シス-ジオール結合に基く固定化系に関する。
生化学および関連分野において、例えば固体担体上で物質を単離もしくは精製
する際、または固定化する際に、2種の化学的/生化学的実体または生物学的実
体(実体:entities)を一緒に結合し、続いて解離することが頻繁に所望される
。特に細胞または細胞レベル下の粒子を、それらの単離を助ける物質に結合させ
ることによりそれらを単離し、続いて細胞等を生存可能な形態で単離することが
しばしば必要とされる。
このような結合は、多くの場合アフィニティー結合を使用して、即ち、一対の
結合パートナー(これらは、例えば結合を要する実体に別々に結合され、そして
接触させると結合する)を用いて達成される。このような結合パートナーは、結
合を要する実体に外から添加してもよく、または結合を要する実体の一部、例え
ば細胞表面上の分子を形成してもよい。多数の結合パートナー系、例えば抗原-
抗体、酵素-基質、レセプター-リガンドが知られているが、一般的にいって、選
択的結合または捕捉は最も普通には、標的の表面上の抗原を認識する標的特異性
結合パートナーとして、抗体を用いて達成される。
抗体のような結合パートナーを担体に結合させて、アフィニティー捕捉マトリ
ックスを提供するための多くの方法が知られている。担体は、或る範囲の官能基
を備えていてもよく、この官能基は活性化することができ、活性化された基と抗
体中のアミノ基またはSH基との反応により、担体と抗体との間に共有結合を与え
る。最も普通の方法の例は次のとおりである。 1.抗体を、-CH2-OH基を含有
する担体に、スルホニルクロリドで活性化することによりカップリングさせる(
スルホニルクロリドは担体上にスルホニルエステルを与え、このエステルは次に
抗体上のアミノ基または-SH基と反応して、それぞれ-CH2-NH-結合および-CH2-S-
結合により共有結合カップリングされた抗体を与える)。 2.抗体を、
COOH基を含有する担体に、カルボジイミドおよびN-ヒドロキシスルホスクシン
イミドで活性化することによりカップリングさせ、これにより担体と抗体との間
にアミド結合を生成させる。 3.抗体を、グルタルアルデヒドで活性化された
アミノ基を含有する担体にカップリングさせ、これにより反応させて抗体のアミ
ノ基と共有結合を形成する。 4.抗体と、エポキシ基含有担体とのカップリン
グを、更に活性化しないで、抗体上のアミノ基および-SH基と直接反応するよう
に行う。
このような結合方法でしばしば観察され、その結果これらの方法に基く固定化
系または分離系でしばしば観察される問題は、結合パートナーを担体に結合させ
る達成可能な効率がしばしば低いことであり、次いで標的物質の不充分な結合効
率をもたらすことである。多くの場合、標的特異性結合パートナーと担体との充
分な”密度”の結合を得ること、または結合パートナーを正しい配向で担体に結
合させて、標的を有効に結合させることは困難である。普通に使用される共有結
合方法は、通常は無差別的であり、20%ほどにも低い固定化を観察することは珍
しいことではない。これは主として、結合パートナーが担体上に不正確な配向で
結合するためと考えられ、このような分離系の実用性を制限する重大な問題であ
る。
標的物質、およびその用途に応じて、例えば混合物からの分離後に、標的を遊
離させることが望ましいことも、望ましくないこともある。幾つかの場合には、
例えば臨床的使用または機能的研究のために純粋な細胞フラクションを単離する
際に、担体の除去が必要なことがある一方で、他の場合に、例えば望ましくない
物質の負の選択(negative selection)においては、そうすることが必要でない
ことがある。それ故に、標的物質を放出させることが望ましい場合に、アフィニ
ティーに基く結合系で観察されることのあるもう一つの問題は、起こりうる結合
の不可逆性である。アフィニティー結合系は一般に可逆的であるが、これらの系
は、幾つかの場合に破壊作用なしに反転し難いことがある。これは特に抗原-抗
体結合について本当であり、これらの結合は場合によっては、結合パートナー(
1種以上)の配座を充分に修正し、これにより相互作用の強さを低下させて結合
を破断させるために、苛酷な条件、例えばpH変更または塩析を必要とするこ
とがわかっている。これは、結合の解離に必要な条件による損傷、例えば表面タ
ンパク質の不可逆的変性または細胞膜の破裂を受け易い細胞および同様の繊細な
実体を分離する場合に、特に問題である。細胞または細胞小器官の生存率は、抗
体/抗原結合の開裂工程により悪影響を受けることがしばしば認められている。
担体からの細胞の脱着は、担体と結合パートナーとの間に-S-S-結合または-Hg
-S-結合を挿入することにより達成されており、この場合、-SH基を含有する化合
物、例えばエリスリトールの添加により、結合が破壊される。これらの化合物は
細胞膜タンパク質中の-S-S-結合に影響を与えることができる。細胞と担体との
間の結合は、酵素的に、例えばキモパパインの使用により破壊することもできる
。しかしながら、これは細胞に有害な作用を有することもある。ごく最近になっ
て、標的細胞の分離後に、特定の抗体を用いてモノクローナル抗体と細胞抗原と
の間の結合を破壊する方法が開発された(DETACH-A-BEAD,DYNAL A/S,Norway)
。この方法は、限られた数の細胞型およびモノクローナル抗体に限定されるとい
う欠点を有する。
それ故に、細胞のような生物学的実体を効率良く、かつ信頼性良く結合させ、
所望ならば、その実体を放出させるための改良方法に対する要望がある。本発明
は、このような改良方法を提供しようとするものであり、特に担体への標的特異
性結合パートナーの配向された結合を提供し、次いで担体への標的実体の有効な
カップリングをもたらすだけでなく、所望ならば、結合された実体を有意に破壊
することなく、容易に逆転しうる結合系を提供しようとするものである。
更に詳しくは、本発明者らは、標的特異性結合パートナーと固体担体との間の
ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合に基く結合系が、上記の問題を解決する
のに特に有効であることを見出した。
従って一つの局面によれば、本発明は、特異性結合パートナーと不溶性担体と
の間の結合がヒドロキシボリル/シス-ジオール結合を含むことを特徴とする、
標的粒子を特異性結合パートナーにより不溶性担体に結合させることによる、標
的粒子を不溶性担体に結合させる方法を提供する。
もうーつの局面から見て、本発明は、結合パートナーを、ヒドロキシボリル/
シス-ジオール結合により、その後の結合に好適な位置で担体上に配向させるこ
とを特徴とする、標的細胞の選択的固定化に使用するための、不溶性担体に結合
された結合パートナーを含むアフィニティーマトリックスの製造方法を提供する
。
このような方法において、結合パートナーは標的特異性であってもよく、また
は標的特異性結合パートナーに結合できるものであってもよい。
ヒドロキシボリル部分(ボロネート部分ともいう)が最も顕著には炭水化物中
のシス-ジオール残基に結合すること、およびこの特性をアフィニティークロマ
トグラフィー分離の基礎として使用しうることは、久しい以前から知られていた
。文献には、ヒドロキシボリル基がこのような分子のグリコシル部分に結合する
ことに基く炭水化物および糖タンパク質の分離系についての多数の記載を含んで
いる(例えばGB-A-2024829、およびHageman et al.,Anal.Biochem.,80:547,
1977参照)。
ヒドロキシボリル基およびシス-ジオール基は、任意の配向で結合パートナー
および固体担体に結合させうるが、シス-ジオール基を結合パートナーに結合さ
せる一方で、ヒドロキシボリル基を不溶性担体に結合させることが好ましい。以
下に、主として後者の配置について論じるが、それぞれの場合にヒドロキシボリ
ル/シス-ジオール結合の配向を逆転しうることは当然である。
結合パートナー、例えば生化学的または生物学的分離および固定化にきまりき
って使用されるものは、その性質上しばしば糖タンパク質(例えば抗体、アビジ
ン等)または炭水化物であり、従ってボロネートによる結合を受け易い。本発明
者らは驚くべきことに、このような結合パートナーをヒドロキシボリルに基く結
合によって担体にカップリングさせる場合、担体上の結合パートナーの好適な配
向が、その選択的結合を損なわずに得られることを見出した。次いでこれは、標
的粒子と担体との極めて有効かつ信頼性の高い結合を生じさせる。以下に更に詳
しく論じるように、ヒドロキシボリルに基く系の付加的な利点は、或る条件下で
、ヒドロキシボリル/シス-ジオール残基の結合を温和な条件下で容易に逆転さ
せることができ、これにより標的粒子を簡単かつ非破壊的な様式で遊離させうる
ことである。
本明細書で用いられる”粒子”という用語は、粒状体、例えば細胞(これは原
核細胞または真核細胞であってよい)、細胞レベル下の成分、例えばミトコンド
リアまたは核のような細胞小器官、およびウイルスを定義する。しかしながら、
本発明の方法は、細胞の選択的捕捉に特に有効であることが見出された。
標的特異性結合パートナーは、標的粒子を認識しかつそれに結合できる全ての
基であってよく、好都合には、例えば炭水化物基の一部としてのシス-ジオール
含有部分を含む限り、分離技術および固定化技術に従来使用されるような任意の
結合パートナーを挙げることができる。典型的には、結合パートナーには、細胞
、ウイルス粒子等の表面上の抗原を認識する抗体、または抗体フラグメントが包
含されるであろう。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよく、
結合活性を保持しているフラグメント、例えばF(ab)2、FabまたはFVフラグメ
ント(Fvフラグメントは抗原結合部位を含む抗体の”可変”領域と定義される
)の形態で使用できる。ジヒドロキシボリル結合に必要なシス-ジオール部分は
、例えば完全抗体上のグリコシル基のように自然に存在するものであってよく、
または、例えば通常はグリコシル基を有しないフラグメントにポリヒドロキシ残
基を結合させることにより、合成により導入することができる。本明細書で用い
られる”シス-ジオール”という用語は、炭水化物中におけるような普通のシス-
ジオール基を包含するだけでなく、隣接ジオール、およびヒドロキシ基が配座上
隣接している他の基をも包含することが注目される。別の結合パートナーとして
は、しばしば自然にグリコシル化されているタンパク質、例えばアビジン等が挙
げられる。
分離しようとする粒子、および粒子を分離しようとする環境に応じて、結合パ
ートナーは、粒子に特異的な表面エピトープ、例えば特別な型の細胞によっての
み発現される表面抗原を選択的に認識するように選択することができ、あるいは
結合パートナーは、より普遍的に反応性であってよく、例えば或る範囲の細胞ま
たは細胞レベル下の本体を認識できるものであってよい。
抗体およびそれらのフラグメントは、それらの選択性および入手容易性のため
に、一般的に好ましい結合パートナーであり、特にIgG抗体およびIgM抗体である
。なぜならば、これらは、FC部分上に存在するグリコシル基のために、ヒドロキ
シボリルに容易にカップリングできるからである。モノクローナル抗体は所望の
標的特異性を容易に与えることができる。多くの細胞、細胞小器官およ
びウイルスに特異的な抗体が知られており、商業的に入手できる。このような多
くの抗体およびそれらの源は、Linccott's Directory(40 Glen Drive,Mill Va
lley,California,USAから入手可能)にリストされている。このような抗体の
代表としては、ヒト多能性前駆体に対する抗体B1-3C5、Sera Lab Ltd,Sussex,
UK.から入手可能;ヒト樹枝状細胞に対する抗体BU10、Binding Site Ltd,Birm
ingham,UKから入手可能;ヒトHLA DRおよびDR組織適合性抗原に対する抗体B721
およびL243、Becton Dickinson Immunocytometry Systems,CA,USAから入手可
能;ミトコンドリアに対する抗体MAB1273、Paesel GmbH,Frankfurt,Germanyか
ら入手可能;カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する抗体CA14-5
0、 Chemunex S.A,Maisons Alfort,Franceから入手可能;B型肝炎ウイルスコ
ア抗原に対する抗体HBC170-4、Biosoft,Paris,Franceから入手可能;および黄
色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)に対するの抗体4D2、Biodesign Inc.Ma
ine,USAから入手可能、が挙げられる。
もう一つの例として、造血細胞系の細胞上で発現される特異的マーカーに対す
る多数の抗体を利用することができる(例えばDako,Copenhagenから入手可能な
CD抗原に対する一連の抗体を参照)。加えて、早期造血細胞を選択するのに有用
な抗-CD34抗体12.8およびB1-3C5は、Biosys S.A,Franceから入手できる。
また、文献には、バクテリア、原生動物およびウイルスを含む感染性作用物質
を選択するのに適した多数の抗体に関する記載が含まれている。即ち、例えばE. C coli
のK88(F4)フィンブリア抗原に対する抗体は、Lund et alによりJ.Clin
.Microbiol.26:2572-2575に記載されており;Skjerveおよびolsvikは、市販
のポリクローナルヤギIgGをサルモネラ(Salmonella)の免疫磁気(immumagneti
c)分離に使用し(J.Fod Microbiol.14:11-18,1989);サルモネラに対する
血清群特異性モノクローナル抗体は、Widjojoatmodo et al.により記載されて
おり(Eur.J.Clin,Microbiol.Infect.Dis.10:935-938,1991);Skjerve
et al.は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)に対す
るモノクローナル抗体を記載しており(Appl.
Environ.Microbiol.56:3478:3481);Morgan et al.は、シュードモナス・
プチダ(Pseudomonas putida)に対するモノクローナル抗体を記載しており(Ap
pl.Environ.Microbiol.67:503-509,1991);HIV感染CD4細胞を検出するの
に有用なCD4抗原に対する抗体は、Brinkmann et al.により記載されている(J
.virol.65:2019-2023,1991)。
あるいは、所望の特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗
体は、標準的技術を用いて得ることができる。
結合パートナーは、所望の粒子または所望されない粒子を結合させるように、
即ち正または負の選択(positive or negative selection)を達成するように、
例えば細胞の所望の集団を単離するか、または所望されない粒子を系からパージ
するように選択することができる。本発明の方法は、例えば血液、血漿もしくは
他の体液または臨床サンプルからの、または細胞培養液もしくは他の培地等から
の、種々の所望の細胞または他の粒子集団の正の選択に特に有用であることが見
出された。
幾つかの状況において、ヒドロキシボリル基への結合を助けるために、結合パ
ートナー中のグリコシル基または他のシス-ジオール基を”遊離させる”ことが
望ましいことがある。これは、例えば結合パートナーをノイラミニダーゼのよう
な炭水化物消化酵素と共にプレインキュベートすることにより達成しうる。
不溶性担体は、固定化、分離等のために現在広く使用されているか、または提
案されている公知の担体またはマトリックスの何れであってもよい。これらは、
粒子、シート、ゲル、フィルター、膜、またはマイクロタイターストリップ、管
もしくはプレートの形態をとることができ、好都合にはポリマー材料からつくら
れていてもよい。粒状材料、例えばビーズ、特にポリマービーズは、それらの大
きな結合能のために一般に好ましく、その広範囲のものが当業界で知られている
。操作および分離を助けるために、磁性ビーズが好ましい。本明細書で用いられ
る”磁性”という用語は、担体が磁場に置かれたとき、それに付与される磁気モ
ーメントを有することができ、従って磁場の作用下で変位できることを意味する
。換言すれば、磁性粒子を含む担体は磁気凝集により容易に除去しうる。このよ
うな磁性粒子は、磁気残留、ひいてはクランピングを避けるように超常磁性であ
る
ことが好ましく、そして一様な運動力学および分離を与えるように単分散性であ
ることが有利である。超常磁性の単分散性粒子の製造はSintefによりEP-A-10687
3に記載されている。
Dynal AS(Oslo,Norway)によりDYNABEADSとして販売されている単分散性高
分子超常磁性ビーズを変性して、ヒドロキシボリル試薬のカップリングを表面に
おいて可能にすることができる。
ヒドロキシボリル基含有試薬は、ヒドロキシボリル基が結合のために遊離のま
ま留まる限り、任意の物理的手段または化学的手段により不溶性担体に結合させ
ることができる。この手段としては、例えば静電気相互作用、例えば水素結合、
閉じ込めによるもの、または更に好ましくは共有結合によるものが挙げられる。
それはまた、他の分子(これら自体を上記手段の何れかにより不溶性担体に結合
させることができる)に直接または間接に結合されていてもよい。
このような一つの方法としては、例えば、ヒドロキシボリル試薬がホウ酸であ
る場合には、シス-ジオール含有部分、例えば糖またはデキストリンを担体にカ
ップリングさせることが挙げられ、この担体はホウ酸を結合し、次いでこのホウ
酸はシス-ジオール含有結合パートナーへの結合に利用される。糖その他を担体
に、例えば担体上のエポキシ基(エポキシ基を担持しているDYNABEADS M450はDy
nal ASから入手可能)にカップリングさせるための多くの方法が当業界で知られ
ている。
本明細書で用いられる”ヒドロキシボリル基”という用語は、ジヒドロキシボ
リル基、そしてまたボロン酸(boronic acids)の陰イオン形態のようなもう一
つのヒドロキシル基の可能性を包含する。ジヒドロキシボリル基-B(OH)2は、
ヒドロキシルイオンの結合により陰イオン(-B(OH)3 -)を容易に形成し、この
ようなものとして塩を形成しうる。陰イオン形態はシス-ジオール残基への結合
に活性である。それ故に、本発明に従って使用されるヒドロキシボリル基および
試薬は、試薬組成物またはサンプルのpHおよび電解質含量に応じて、これらの形
態の一つ以上またはそれ以上として存在しうることが理解されるべきである。更
に、このような陰イオン形態は、付加物におけるように2個の遊離ヒドロキシル
基のみを有していてもよく、これらの付加物では、ホウ酸(H3BO4)が第一の
シス-ジオールに2個の酸素原子を介して付加して、もう一つのシス-ジオールと
の相互作用に利用可能な2個のヒドロキシル基を有する下記の基
を与える。
多くのヒドロキシボリル試薬が当業界で知られており、特にフェニルボロン酸
(例えばアミノフェニルボロン酸)、ホウ酸または他のボロン酸(例えばエタン
ボロン酸、1-プロパンボロン酸、3-メチル-1-ブタンボロン酸)が挙げられ、こ
れらは広範囲の相互作用により担体に結合させることができる。このようなカッ
プリング化学はよく知られており、文献に広く記載されている(例えばWolfgang
Kliegel,Boron Chemistry,Springer,Berlin,1980参照)。ヒドロキシボリ
ル試薬の結合は、或る範囲の官能基を介して行うことができ、これは結合の前に
活性化を必要としたり、必要としなかったりすることがある。例えばGB-A-20248
29には、異なるヒドロキシボリル試薬に結合させるための可能な多くの官能基が
記載されている。上記の超常磁性ビーズまたは他の担体には、結合のための或る
範囲の官能基(例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エポキ
シ基またはアミノ基)を供給することができ、あるいはこれらの担体は、所望の
官能基を導入するために、例えば表面被覆により変性されていてもよい。US-A-4
654267、4336173および4459378には、多くのこのような表面被覆の概論が記載さ
れている。即ち、例えばアミノ基含有ヒドロキシボリル試薬、例えば3-アミノフ
ェニルボロン酸を、担体表面におけるカルボキシ基と反応させることにより担体
にカップリングさせて、アミド結合を形成できる。これを達成するための種々の
反応機構、例えばカルボジイミドおよびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドに
よるカルボキシ基の活性化が、当業界で知られている。
ヒドロキシボリル結合を介して、標的特異性結合パートナーを不溶性担体に結
合させる鎖について、或る範囲の可能性がある。最も簡単には、シス-ジオール
含有結合パートナーを担体上のヒドロキシボリル基に直接結合させる。しかしな
がら、この結合は間接的であってもよく、特異性結合パートナーは別の分子、例
えば抗体またはアビジンのようなタンパク質(これ自体がヒドロキシボリル基に
直接結合される)を介して結合される(上記のように、固体担体へのヒドロキシ
ボリル基のカップリングもまた、直接的でも間接的でもよい)。
従って、可能なアレンジメントとしては、特異性結合パートナーが抗体である
場合には、以下のものが挙げられる。
(1)特異性結合パートナーを、担体上のヒドロキシボリル基に直接に結合さ
せる;
(2)結合パートナーを、一次特異性結合パートナーを認識する二次抗体、例
えばポリクローナル抗-種抗体に結合させ、そして二次抗体を、担体上のヒドロ
キシボリル基に結合させる;
(3)アビジンは、ビオチニル化された特異性結合パートナー、またはビオチ
ニル化された二次抗体の何れかに結合させるために、担体上のヒドロキシボリル
基に結合させることができる。後者の場合には、二次抗体は一次特異性結合パー
トナーと結合する;
(4)アビジンまたはストレプトアビジンは、担体に共有結合によりカップリ
ングさせることができ(ストレプトアビジンで被覆されたDynabeadsはDynal AS
から入手可能)、そしてビオチニル化されたヒドロキシボリル試薬と結合させる
ことができ、この試薬は次いで特異性結合パートナーまたは二次抗体と結合する
;
(5)上記のように、ヒドロキシボリル試薬は、担体上に担持されたシス-ジオ
ール基により担体に結合させることができ、次いで特異性結合パートナーまたは
二次抗体の何れかと結合させることができる。
結合の形成は幾つかの工程により行うことができる。例えば特異性結合パート
ナーを含む全ての試薬を担体に段階的に結合させてもよく、これを次いで固定化
すべき粒子を含むサンプルと接触させる。また、標的粒子集団を、適切な不溶性
担体に暴露する前に、別の工程で、特異性結合パートナー、例えばモノクローナ
ル抗体と接触させてもよい。こうして、結合の異なる部分は、特にこの結合が複
雑な間接結合である場合に、結合のために一緒にする前に、標的粒子および担体
のそれぞれ上に構築することができる。
一つの好ましい方法は、抗体または他の標的特異性結合パートナーを別の工程
で標的粒子に結合させ、次いで過剰の結合パートナーを除去し、このような処理
された粒子を遊離ヒドロキシボリル基を担持している固体担体と接触させること
である。
他の別法としては、以下の方法が挙げられる。
(a)特異性結合パートナーを、標的粒子と接触させる前に、遊離ヒドロキシボ
リル基を担持している担体に結合させる;
(b)モノクローナル抗体(標的特異性結合パートナーとして)を、第一工程に
おいて、標的粒子に結合させる。別の工程において、モノクローナル抗体のFC領
域に結合できる二次抗体を、遊離ヒドロキシボリル基を担持している担体に結合
させ、その後、処理された粒子および担体を接触させる。
本発明の実施中の温度条件は、最適の結果を得るように有利に調節することが
できる。
結合パートナーの結合工程については、温度は特に臨界的ではないこと、そし
て周囲温度、例えば20℃または室温が好都合であることが見出された。しかしな
がら、低下された温度は、結合パートナーが担体に非特異的に結合するのを減少
させることができる。これは、標的粒子の非特異的結合を減少させ、次いでより
容易な脱着に導く(これが必要な場合)ので、有利である。また、特に細胞の場
合に、粒子の結合工程および分離工程中に温度を低下させると、より好ましい結
果が得られることが見出された。即ち、例えば0℃〜10℃、特に2〜6℃、例え
ば4℃の温度が好適であることが見出された。
結合した粒子の脱着を行うために、好都合には温度を上昇させて脱着を加速す
ることができるが、0℃〜37℃の任意の温度を使用しうることが見出された。好
ましい結果は、8〜25℃例えば20℃の温度で得られた。
結合パートナー、例えばモノクローナル抗体が遊離ヒドロキシボリル基との反
応により担体に結合されている場合の担体は、おそらく抗体の有効な配向のため
に、担体への標的粒子の結合に非常に有効であることが見出された。そして上記
のように、本発明の目的の一つは、標的粒子と担体とのこのような有効な結合を
生じさせることである。所定の標的粒子を選択的に抽出するための系を使用した
いが、後で標的粒子を担体から除去することを意図していないような場合には、
特異性結合パートナーと担体との間に、遊離ヒドロキシボリル基単独との結合に
よって得られるよりも不可逆的な結合を導入することが有利なことがある。遊離
ヒドロキシボリル基は特異性結合パートナーと迅速に反応して、特異性結合パー
トナーの好適な配向を与える。担体と特異性結合パートナーとの間で、より強い
結合または更には不可逆的結合を得るためには、担体が、遊離ヒドロキシボリル
基に加えて、時が経つにつれて特異性結合パートナーと強い疎水性相互作用を生
じる疎水性基をも有することで足りることがある。また、遊離ヒドロキシボリル
基に加えて、特異性結合パートナーと反応して共有結合を与える官能基を含む担
体を供給することも可能である。この場合、特異性結合パートナーとヒドロキシ
ボリル基との迅速な結合は、それが共有結合カップリング反応に適正な配向で提
示されることを確実にするであろう。このような追加の官能基としては、例えば
エポキシ基、カルボジイミド基と反応させたカルボン酸基、カルボジイミダゾー
ル化合物またはスルホニル化合物と反応させたOH基、グルタルアルデヒド基と反
応させたNH2基、あるいは当業界でよく知られており、かつ記載された任意の他
の官能基が挙げられる。特に好適な一つの官能基系としては、ペンタフルオロベ
ンゼンスルホニルクロリドにより活性化されたOH基が挙げられ、これらはタンパ
ク質のアミノ基と反応する。
このようなより強い結合系は、消極的な選択の場合だけでなく、担体からの結
合パートナー、例えば抗体の漏出を避けることが特に望ましい場合にも、有用で
あろう。例えばHLA型の検査の場合、分離された細胞が、抗体が結合されている
担体から早まって脱着するならば、このような細胞は補体活性化により殺され、
これにより得られる結果は悪影響を受けるであろう。
上記のように、本発明の方法の他の利点は、所望により、ヒドロキシボリルー
シス-ジオール結合を容易に破壊して、結合した標的粒子を放出しうることであ
る。従って、本方法はまた、選択的分離後に細胞を担体から脱着することを欲す
る場合に、細胞および他の粒子を選択的に分離するのに特に有用である。こうし
て、結合の破壊は、ヒドロキシボリル試薬への結合と競合し、これにより、結合
した標的粒子を置換するシス-ジオール含有試薬の添加により、簡単に行うこと
ができる。典型的には、このような競合シス-ジオール試薬は、結合パートナー
よりもヒドロキシボリルに対して大きな親和性を有する。
このような試薬としては、例えば隣接ヒドロキシ基を好適な立体配置で担持し
ている試薬が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物、例えばカテコールのようなア
ルコール、フラクトースのような糖、ならびにソルビトールおよびマンニトール
のような糖アルコールが特に有用であることが見出された。
その代わりに、または前記の競合シス-ジオール試薬の添加と組み合わせて、
ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合は媒体のpHを調節することにより破壊す
ることもできる。ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合は、その結合に関与す
る特別なシス-ジオール化合物に応じて、7.0以下のpHで解離することが見出され
た。解離工程の最低pHは、結合した標的粒子の許容度により定められるが、一般
に細胞の場合、結合の有効な解離および細胞の脱着は4〜7.0のpH範囲で起こる
であろう。標的粒子と担体との結合は一般に7.0〜9.0のpHで起こり、pH低下は媒
体の交換または酸の添加により都合よく行うことができる。
上記のように、幾つかの場合には、担体上の可能な疎水性基との相互作用のた
めに、時間が経つと共により不可逆的な結合が、特異性結合パートナーと担体と
の間で形成されることが認められることがある。それ故に、標的粒子を分離後に
担体から脱着したいような系にとって、脱着プロセスを最適化するために、結合
パートナーと担体との接触時間を最小に短縮することが好ましい。結合パートナ
ーを担体に結合させるために、1時間のインキュベーション時間が良好に作用す
ることが見出された。
更に、結合パートナーとの相互作用から担体の疎水性基をブロックするために
、結合パートナーと共にインキュベーションした直後に、アルブミンまたは別の
ブロッキング剤を含有する緩衝液を担体に添加することが好ましい。
脱着の容易さおよび速度は、使用される特別な系、粒子等に応じて変化するこ
とがあり、また幾つかの場合には、機械的処理、例えば攪拌を、脱着プロセスを
助けるのに役立てることができる。これは、例えば混合物(例えば固相が粒状で
ある場合)を調節して振盪し、および/または反復してピペット処理して、剪断
力を与えることにより達成できる。脱着プロセスを助けるのに必要な機械的処理
は、異なる系について、標的粒子、例えば細胞と担体との連結の数、および結合
に関与した結合の強さに応じて変化しうる。機械的処理は標的粒子を破壊しては
ならないことは明らかである。このような処理工程中の細胞等のインキュベーシ
ョンのための他の条件(例えば培地、温度等)は、当業界でよく知られている。
上記のように、本発明の方法は細胞を有効に分離するのに特に有用であり、別
の局面において本発明は、標的細胞と特異的に結合する特異性結合パートナーに
より、標的細胞を不溶性担体に結合させ、前記結合パートナーと前記担体との間
の結合がヒドロキシボリル/シス-ジオール結合を含み、続いて担体に結合した
細胞をサンプルから分離し、そしてヒドロキシボリル/シス-ジオール結合の開
裂により、標的細胞を担体から放出させることを特徴とする、サンプルから標的
細胞を分離する方法を提供する。
粒子脱着工程中に導入された条件の変化それ自体が、担体からの結合パートナ
ーの完全な脱着、ひいては標的粒子の放出を生じさせる必要はないことに注目す
べきである。上記の機械的処理が標的粒子の脱着を生じさせるような程度まで、
標的粒子と担体との間の結合を低下させることで充分である。従って、結合パー
トナーと担体との間の結合の或る割合のみを破壊することができる。これは次に
、標的粒子と担体との間の全体的結合強さを低下させるであろう。なぜならば、
担体と標的粒子との間の結合数が減少するからである。次いで、機械的処理は、
残りの担体/結合パートナー結合の破壊、または結合パートナーと標的粒子との
間の結合の破壊を引き起こすことにより、担体からの標的粒子の最終的脱着を引
き起こすことができる。これに関して、担体と結合パートナーとの間の結合を破
壊するのに寄与する機械的処理から生じる剪断力は、当該結合パートナーが比較
的大きい標的粒子に連結されている場合には、いっそう強くなることに注目すべ
きである。即ち、標的粒子の不在下での同様な状況において、担体から結合パー
トナーを70%だけ脱着できる場合でさえも、条件および機械的処理を変化させる
ことにより、担体から標的粒子を完全に脱着させうることが見出された。
このような方法において、固体担体は、磁気凝集によりサンプルから容易に分
離しうる磁性粒子を含むことが好都合であろう。本発明の方法は、造血細胞の単
離に特に適しているが、全血、バフィコートおよび密度勾配遠心分離により得ら
れる細胞懸濁液を含む生物学的または人工の媒体(または培地)からの原核細胞
または真核細胞の単離に適用しうる。
本発明の細胞分離方法は、多くの用途、例えば、骨髄パージング、同種移植片
中の正常T細胞の枯渇、例えば再構成のための幹細胞の単離、機能研究のための
純粋な細胞亜集団の単離、組織型の検査、および診断、例えば細菌病原体の検出
に使用できる。
本発明の方法における種々の反応関与体は、キットの形態で供給することが好
都合であろう。従って、更にもう一つの局面において、本発明は、
i)遊離ヒドロキシボリル基を担持している固体の、好ましくは粒状の担体、
好ましくは磁性粒子;
ii)標的粒子に結合できる結合パートナー、好ましくは抗体またはそのフラグ
メント
を含むキットであって、
前記結合パートナーが、前記担体上に担持されたヒドロキシボリル基と直接に
反応するか、またはキットが、前記ヒドロキシボリル基に結合パートナーを結合
させるための手段を更に含むキットを提供する。
好都合には、キットは、ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合を開裂するた
めの手段、例えば競合シス-ジオール試薬を更に含んでいてもよい。
あるいは、担体は、結合パートナーに共有結合させるための官能基を更に担持
していてもよい。
遊離ヒドロキシボリル基を担持している磁性粒子は、本発明のもう一つの好ま
しい局面である。
以下の非限定的実施例を参照して、本発明を更に詳しく説明する。
実施例1
ボロネート基を担持している4.5μmの磁化性ビーズ(Dynabeads)を、Dynabe
ads M450(Dynal AS)から以下のようにして調製した。Dynabeads M450へのアミノフェニルボロン酸のカップリング
(1)表面COOH基の調製
遊離エポキシ基を担持しているDynabeads M450をビス-(3-アミノプロピル)
アミンと70℃で5時間反応させて、ビーズ上に表面-NH2基を生成させた。次いで
ビーズをジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)で洗浄した。次
いでビーズ10gをグリシジルメタクリレート200gと70℃で10時間反応させて、
表面ビニル基を生成させた。次いでビーズをアセトンで洗浄し、ビーズ10gを、
アクリル酸50g、およびイソプロパノール300gに分散されたAIBN(アゾビスイ
ソブチロニトリル)2gと70℃で10時間反応させて、共重合および表面COOH基の
生成を行った。
(ii)3-アミノフェニルボロン酸のカップリング
H2O(3Oml)(pH4.7)中のCOOH-ビーズ(0.5g)の懸濁液に、H2O(15ml)中の
L-エチル-3(3-アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.4g)の溶液(pH4.7
に予備調整)を攪拌下に8〜10℃で滴加した。8〜10℃で更に20分間攪拌した後
、反応溶液を除去した(注:この溶液を後に使用)。
ビーズを蒸留H2O(30ml)(pH4.7)に再度分散させ、H2O(20ml)中の3-アミ
ノ-フェニルボロン酸ヘミスルフェート(0.4g)の溶液(pH4.7)を滴下して添加
した。10℃で更に20分間攪拌した後、前記のカルボジイミド溶液を添加し、粒子
懸濁液を20℃で16時間攪拌した。ビーズを0.05M NaOH(7x7.5ml)、0.1M NaCl(
1x100ml)、および最後に蒸留H2Oで洗浄して中性にした。
これらのビーズを順にIgG、モノクローナル抗体、ST4(これは抗-CD4抗体であ
る)と共にインキュベートした。粒子と抗体とのインキュベーションは、PBS緩
衝液、pH7.4中で20℃にて1時間行った。次いで粒子を磁石を用いて
単離し、続いてPBS緩衝液で洗浄した。
次いで粒子を2%のウシ胎児血清を含むPBS緩衝液、pH7.4で4℃で処理し、続
いて粒子を磁石を用いて単離した。
次いで単離された粒子を、Lymphoprepでのバフィコートの勾配遠心分離により
末梢血から得られたリンパ球画分からのT4細胞の選択的単離に使用した。リンパ
球とビーズとのインキュベーションは4℃で行った。
標的細胞に対する粒子の数を、標的細胞当たり約10粒子に調節した。5分間の
インキュベーション後に、粒子が結合している標的細胞および過剰の粒子を磁気
凝集により単離した。単離された細胞を2%の血清を含むPBS緩衝液、pH 7.4中
に4℃で再度懸濁させ、磁石により単離した。再懸濁および単離のこのプロセス
を4回繰り返した。細胞からのビーズの脱着を行うために、単離された細胞を、
50%の血清、0.6%のクエン酸塩および0.2Mのソルビトールを含むPBS緩衝液、pH7.
4中に20℃で再度懸濁させた。
細胞を含む管を0.5時間にわたって機械的処理にかけた。この処理は、管をロ
ック・アンド・ローラーの上に置くことにより行った。細胞からのビーズの脱着
を更に改良するために、細胞懸濁液を10回ピペットで処理した。
単離されたT4細胞の量を、アクリジンオレンジ-臭化エチジウム混合物による
細胞の染色後にサイトメーター中でカウントすることにより評価した。
磁性粒子により単離されたT4細胞の収率は、細胞懸濁液中のT4細胞の合計量の
90%より多い量であった。粒子からの細胞の脱着工程は、単離された標的細胞の
75%の脱着をもたらし、そのうちの85%より多くが生存T4細胞からなっていた。
実施例2 T4細胞の単離 Dynabeads M450上の表面COOH基の調製
遊離エポキシ基を担持している4.5μmの磁化性ビーズであるDYnabeads M450
(Dynal AS,Oslo,Norway)(10g)を、ビス-3-(3-アミノプロピル)アミン(
100g)と70℃で5時間反応させて、ビーズ上に表面-NH2基を生じさせた。次いで
ビーズをジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)500mlで7回洗
浄した。次いでビーズ(10g)をグリシジルメタクリレート(200g)と70℃で20
時間反応させて表面ビニル基を生じさせた。ビーズをアセトン500mlで7回洗浄
した後、ビーズ10gをアクリル酸500g、およびイソプロパノール300gに分散さ
れたAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)2gと反応させ、共重合および表面CO
OH基の形成を行った。3-アミノフェニルボロン酸のカップリング
H2O(30ml)(pH4.7)中のCOOHビーズ(0.5g)の懸濁液に、H2O(15ml)中の
L-エチル-3(3-アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(0.4g)の溶液
(pH4.7に予備調整)を攪拌下に8〜10℃で滴加した。8〜10℃で更に20分間攪
拌した後、反応溶液を除去した(注:この溶液を後に使用)。
ビーズを蒸留H2O(30ml)、pH4.7に再度分散させ、H2O(20ml)中の3-アミノ-
フェニルボロン酸ヘミスルフェート(0.4g)を滴加した。10℃で更に20分間攪拌
した後、前記のカルボジイミド溶液を添加し、粒子懸濁液を20℃で16時間攪拌し
た。ビーズを0.05M NaOH 7.5mlで7回、0.1M NaCl 100mlで1回、そして最後に
蒸留水で洗浄して中性にした。抗-CD4抗体のカップリング
上記のビーズをIgG1、抗-CD4モノクローナル抗体、ST4(Biosys,Compiegne,
France)と共にインキュベートした。粒子(10mg/ml)と抗体
(100μg/ml)とのインキュベーションはPBS緩衝液、pH7.4中で4℃にて1時間
行った。次いで粒子を磁石により単離し、使用直前に0.01%のBSAを含むPBS緩衝
液で4℃にて2回洗浄した。細胞懸濁液の調製
末梢血単核細胞(PBMC)をLymphoprep(Nycomed Pharma AS,Oslo,Norway)
により血小板枯渇バフィコートから単離し、0.6%のクエン酸ナトリウムを含むP
BS緩衝液、pH7.4で4回洗浄した。次いでPBMC懸濁液を、それぞれCD14に対する
モノクローナル抗体(5-10粒子/標的細胞)およびCD19に対するモノクローナル
抗体(10-15粒子/標的細胞)で被覆された二つの型のDynabeads M450(Dynal A
S,Oslo,Norway)と共にインキュベートした。粒子濃度は各型1ml当たり少な
くとも20x106ビーズであった。インキュベーションは、2%のウシ胎児血清を
含むPBS緩衝液、pH7.4中で4℃にて30分間行った。次いで磁石により磁性ビーズ
、およびこれにより単核細胞およびB細胞を除去し、単核細胞およびB細胞の枯
渇されたPBMCを回収した。T4細胞の単離
抗-CD4抗体で被覆されたボロン酸粒子を、単核細胞およびB細胞の枯渇された
PBMCと共にインキュベートした。粒子の数を標的細胞当たり10〜20粒子に調節し
、更に粒子濃度を25x106ビーズ/mlに保った。インキュベーションは、2%のウ
シ胎児血清を含むPBS緩衝液、pH7.4中で4℃にて30分行った。次いで粒子が結合
している標的細胞および過剰の粒子を磁気凝集により単離した。単離された細胞
を2%の血清を含むPBS緩衝液、pH7.4中に4℃で再度懸濁させ、磁石により単離
した。再懸濁および単離のこの工程を4回繰り返した。ビーズの脱着
細胞からのビーズの脱着を行うために、単離された細胞を、50%の血清、0.3%
のクエン酸ナトリウムおよび0.2Mのソルビトールを含むPBS緩衝液、pH7.
4中に20℃で再度懸濁させた。次いで細胞を含む管をロック・アンド・ローラー
(Labinco,Breda,The Nederlands)上に2時間置いた。細胞からのビーズの脱
着を更に改良するために、細胞懸濁液を10〜20回ピペットで処理した。次いでビ
ーズおよびビーズになお結合している標的細胞の残りを磁石により除去し、脱着
された細胞を単離した。ビーズを脱着緩衝液中に再度懸濁させ、この懸濁液を10
〜20回ピペットで処理し、ビーズを磁石で除去し、細胞を回収し、第一工程から
の細胞懸濁液に添加した。細胞計測
異なる細胞画分中の細胞数を、Coulter Multisizer II(Coulter Electronics
Ltd.,Luton,England)を使用して評価した。フローサイトメトリー
CD3、CD4、CD8およびCD56に対する発蛍光団接合抗体(Becton Dickinson,Mou
ntain View,California,USA)を下記の三つの細胞画分からの細胞と共にイン
キュベートした。単核細胞およびB細胞の枯渇されたPBMC、T4細胞単離後に残っ
た細胞画分、および磁性ビーズの枯渇された単離細胞からの画分。細胞を、FACS
canフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析した。結果
単離されたT4細胞量はT4細胞の合計量の94%であった。単離された細胞のうち
の90%が脱着され、その96%がCD4+細胞であった。
実施例3 T4細胞の単離 3-アミノフェニルボロン酸のカップリング
実施例2に記載されたCOOHビーズ(5g)を100mlの0.1Mリン酸緩衝液、pH7.3で
1回洗浄した。次いでビーズをこの緩衝液50mlに再度懸濁させ、
0.1Mリン酸緩衝液(50ml)中の3-アミノフェニルボロン酸(3g)の溶液を添加し
た。0.1Mリン酸緩衝液、pH7.3(100ml)中のEDC(3g)およびN-ヒドロキシスル
ホスクシンイミドナトリウム塩(0.5g)の溶液を10℃で攪拌下に滴加した(20ml
/min)。更に5分間攪拌した後、温度を20℃に上げ、粒子懸濁液を20℃で20時間
攪拌した。次いでビーズを150mlの0.1Mリン酸緩衝液、pH7.3で2回、150mlの1M
NaClで2回、150mlの0.1M炭酸緩衝液、pH10.5で2回洗浄し、それぞれの洗浄は
攪拌下で1時間行った。最後に、ビーズを蒸留水200mlで3回洗浄した。T4細胞の単離
T4細胞を、実施例2に記載された操作を繰り返すことにより単離した。結果
単離されたT4細胞量はT4細胞の合計量の96%であった。単離された細胞のうち
の100%がビーズから脱着され、その96%がCD4+細胞であった。
実施例4 B細胞の単離 抗-CD37抗体のカップリング
実施例3に記載されたビーズを、IgG1、抗-CD37モノクローナル抗体、HH1(La
boratory of Immunology,Institute of Cancer Research,Oslo,NorwayのStei
nar Funderudからの寄贈物)と共にインキュベートした。このインキュベーショ
ンは実施例2に記載されたようにして行った。細胞懸濁液の調製
PBMCを実施例2に記載されたようにして調製した。次いでこの細胞懸濁液を抗
-CD4抗体で被覆されたDynabeads M450と共にインキュベートし、続いて実施例2
に記載されたのと同じ操作により単核細胞を枯渇した。B細胞の単離
抗-CD37抗体で被覆されたビーズを単核細胞枯渇PBMC画分と共にインキュベー
トした。インキュベートおよびB細胞の単離、並びに細胞の脱着を実施例2に記
載されたようにして行った。更に、細胞をCD19に対する発蛍光団接合抗体(Bect
on Dickinson)で染色した以外は、同様にして細胞分析を行う。結果
単離されたB細胞量は、B細胞の合計量の95%であった。脱着工程により、95
%の脱着が得られ。これらの細胞の86%がCD19+細胞であった。
実施例5 IGM抗体を使用するB細胞の単離
ビーズをIgM、抗-CD19モノクローナル抗体、AB1(Laboratory of Immunology
,Institute of Cancer Research,Oslo,NorwayのSteinar Funderudからの寄贈
物)で被覆した以外は、実施例4に記載されたのと同じ操作に従って、B細胞を
単離した。結果
この方法により、全てのB細胞のうちの77%が単離され、これらの80%が粒子
から脱着された。単離された細胞の純度は95%であった。
実施例6 間接方法によるB細胞の単離 細胞と抗-CD37抗体とのインキュベーション
実施例4のようにして調製された単核細胞の枯渇されたPBMCを、2%の血清を
含むPBS緩衝液、pH7.4中で抗-CD37モノクローナル抗体、HH1(0.08μg/106細胞
)と共に4℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、
2%の血清を含むPBS緩衝液、pH7.4で細胞を3回洗浄した。ヤギ抗-マウス抗体のカップリング
実施例3に記載されたビーズをIgGヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートし
た。このインキュベーションは実施例2に記載されたようにして行った。B細胞の単離
HH1と共にプレインキュベートされた細胞を、ヤギ抗マウス抗体で被覆された
ビーズと共にインキュベートし、続いて細胞単離、脱着および定量化につき実施
例4に記載されたのと同様に操作した。結果
B細胞の回収率は84%であり、その70%が脱着された。脱着された細胞の純度
は85%であった。
実施例7 T8-細胞の単離 抗-CD8抗体のカップリング
実施例3に記載されたビーズを、実施例2に記載されたのと同じ操作によりIg
G1、抗-CD8モノクローナル抗体、ST8(Biosys,Compiegne,France)と共にイン
キュベートした。T8-細胞の単離
実施例2に記載されたようにして調製したPBMCを、ST8で被覆されたビーズと
共にインキュベートし、実施例2に記載されたように操作した。結果
単離されたT8細胞量はT8細胞の合計量の70%であることがわかり、単離された
細胞の85%がビーズから脱着された。脱着された細胞のうちの88%がCD8+細胞で
あることがわかった。
実施例8 1週間貯蔵されたST4被覆ビーズを使用するT4細胞の単離 抗-CD4抗体で被覆されたビーズ
実施例2に記載されたようにしてST4で被覆された実施例3に記載されたビー
ズを、0.01%のBSAを含むPBS緩衝液、pH7.4中で4℃にて1週間貯蔵した。T4細胞の単離
ST4で被覆された貯蔵ビーズを、0.01%のBSAを含むPBS緩衝液、pH7.4中で使用
直前に洗浄し、実施例2に記載されたようにして単核細胞およびB細胞の枯渇さ
れたPBMCと共にインキュベートした。単離操作および細胞分析を、実施例2に記
載されたようにして行った。結果
単離されたT4細胞量は合計量の82%であり、脱着は100%であり、また純度は9
4%であった。
実施例9 ノイラミニダーゼ処理ST4を使用するT4細胞の単離 抗体のノイラミニダーゼ処理
ST4を、0.1MのNaClおよび0.1Mの酢酸ナトリウムを含む緩衝液、pH5.0に溶解し
、ノイラミニダーゼ(0.05U/mg抗体)と共に37℃で4時間イ
ンキュベートした。次いで温度を4℃に下げ、pHを1MのNaOHで7.4に調節した。T4細胞の単離
実施例3に記載されたビーズを、実施例2に示された操作に従ってノイラミニ
ダーゼ処理抗体と共にインキュベートした。更に、単核細胞およびB細胞の枯渇
されたPBMCからのT4細胞の単離および細胞分析を、実施例2に記載されたように
して行った。結果
T4細胞の回収率は95%であり、これらの92%が脱着された。純度は96%であっ
た。
実施例10 血液からのT4細胞の単離 血液サンプルの処理
血液を10mlのACD-Vacutainer中でに集めた。血液サンプルを2000Gで5分間遠
心分離し、血漿を除去した。次いで血液細胞を、0.6%のクエン酸ナトリウムを
含むPBS緩衝液、pH7.4を使用して同じ容積で4℃にて再度懸濁させた。T4細胞の単離
実施例2に記載された操作に従って、ST4で被覆されたビーズを、先に調製し
た血液サンプル(107粒子/ml)と共に4℃で30分間インキュベートした。単離工
程および脱着工程、並びに細胞分析を、実施例2に示された操作に従って行った
。結果
血液サンプルから単離されたT4細胞量はT4細胞の合計量の80%であり、これら
の細胞の90%をビーズから脱着することができた。単離された細胞の純度は92%
であった。
実施例11 血液からのT8細胞の単離
実施例10に記載された実験を、ST8(Biosys,France)で被覆されたビーズを
用いて繰り返した。結果
単離されたT4細胞量は合計量の65%であり、90%がビーズから脱着された。
純度は83%であった。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ベルゲ,アルヴィッド
ノールウェー トロンドハイム エヌ―
7034 エルリング スクアルグソンズ ゲ
ート 14
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. 特異性結合パートナーと不溶性担体との間の結合がヒドロキシボリル/シ ス-ジオール結合を含むことを特徴とする、標的粒子を特異性結合パートナーに より不溶性担体に結合させることによる、標的粒子を不溶性担体に結合させる方 法。 2. ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合のヒドロキシボリル基を、担体に 直接または間接に結合させる、請求の範囲第1項に記載の方法。 3. 担体が粒状である、請求の範囲第1項または第2項に記載の方法。 4. 担体が磁性である、請求の範囲第1項〜第3項の何れか一つに記載の方法 。 5. 結合パートナーが抗体またはそのフラグメントである、請求の範囲第1項 〜第4項の何れか一つに記載の方法。 6. 結合パートナーがモノクローナルIgGもしくはIgM抗体、またはそのフラグ メントである、請求の範囲第5項に記載の方法。 7. 結合パートナーをノイラミニダーゼで前処理する、請求の範囲第1項〜第 6項の何れか一つに記載の方法。 8. 標的粒子が細胞である、請求の範囲第1項〜第7項の何れか一つに記載の 方法。 9. ヒドロキシボリル基がアミノフェニルヒドロキシボリル基である、請求の 範囲第1項〜第8項の何れか一つに記載の方法。 10. ヒドロキシボリル基を、担体の表面におけるカルボキシ基との反応により 担体に結合させる、請求の範囲第2項〜第9項の何れか一つに記載の方法。 11. 標的特異性結合パートナーがシス-ジオール基を有し、そして担体上のヒ ドロキシボリル基に、前記ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合により直接に 結合させる、請求の範囲第1項〜第10項の何れか一つに記載の方法。 12. 標的特異性結合パートナーを、前記一次標的特異性結合パートナーと結合 する二次結合パートナーにより担体に間接に結合させ、前記二次結合パートナー がシス-ジオール基を有し、前記ヒドロキシボリルシス-ジオール結合により担体 上のヒドロキシボリル基に結合させる、請求の範囲第1項〜第10項の何れか一つ に記載の方法。 13. 担体への結合パートナー(1種以上)の結合、および/または特異性結合 パートナーへの標的粒子の結合を、0℃〜10℃の温度で行う、請求の範囲第1項 〜第12項の何れか一つに記載の方法。 14. 標的粒子を、請求の範囲第1項〜第13項の何れか一つに記載の方法により 不溶性担体に結合させ、続いて担体に結合した粒子をサンプルから分離し、そし てヒドロキシボリル/シス-ジオール結合の開裂により標的粒子を担体から放出 させることを特徴とする、サンプルから標的粒子を分離する方法。 15. ヒドロキシボリル/シス-ジオール結合を開裂する工程が、競合シス-ジオ ール含有試薬の添加を含む、請求の範囲第14項に記載の方法。 16. 競合シス-ジオール含有試薬がソルビトールである、請求の範囲第15項に 記載の方法。 17. i)遊離ヒドロキシボリル基を担持している不溶性担体; ii)標的粒子に結合できる結合パートナー を含むキットであって、 前記結合パートナーが、前記担体におけるヒドロキシボリル基と直接に反応す るか、またはキットが、前記ヒドロキシボリル基に結合パートナーを結合させる ための手段を更に含むことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第16項の何れか一 つに記載の方法に使用するためのキット。 18. 遊離ヒドロキシボリル基を担持している磁性粒子。 19. 結合パートナーを不溶性担体上に、ヒドロキシボリル/シス-ジオール結 合により、その後の結合に好適な位置で配向させることを特徴とする、標的細胞 の選択的固定化に使用するための、不溶性担体に結合された結合パートナーを含 むアフィニティーマトリックスの製造方法。
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