JP2014221037A - 細胞分離法 - Google Patents

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行広 岡本
桃子 大林
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桃子 大林
美華 山本
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美華 山本
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Abstract

【課題】新規な細胞分離技術を提供することを課題とする。【解決手段】(1)標的細胞と、該標的細胞に結合性を示す捕捉物質で表面修飾された浮揚性粒子とを液体中で接触させる工程と(2)浮揚した前記浮揚性粒子を回収する工程を含む細胞分離法が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は新規な細胞分離法及びその用途に関する。
細胞分離技術は疾患診断(例えば、疾患関連細胞の分離)(非特許文献1)、再生医療支援(例えば、有用幹細胞の純化)(非特許文献2)、産業利用(例えば、抗体産生細胞や微生物の回収)(非特許文献3)、環境浄化(例えば、アオコや有害微生物の除去)(非特許文献4)等において重要である。これまでに様々な細胞分離技術が開発されてきた(非特許文献5)。例えば、少量の試料に利用される技術として遠心分離、磁気分離、セルソーター、電気泳動などがあるが、これらの技術では一般に高価な装置、外部場(電気等)が必要である。従って、例えば発展途上国等では使用が困難である。一方、大規模の分離の場合にはろ過や浮上(気泡、泡沫)分離といった方法が採用される。しかしながら、これらの方法は選択性に乏しく、環境問題の懸念もある。
Nagrath,S.; Sequist, L.V.; Maheswaran, S.; Bell, D.W.; Irimia, D.; Ulkus, L.; Smith, M.R.; Kwak, E.L.; Digumarthy, S.; Muzikansky, A.; Ryan, P.; Balis, U.J.; Tompkins, R.G.; Haber, D.A.; Toner, M. Nature 2007(20), 450,1235-1239. Spangrude, G.J.; Heimfeld, S.; Weissman, I.L. Science, 1988, 241, 58-62. Takamatsu, H.;Hamamoto, K.; Ishimaru, K.;Yokoyama,S.; Tokashiki, M. Appl Microbiol Biotechnol,1996, 45, 454-457. Betzer, N.; Argaman, Y.; Kott,Y. Water Research, 1980, 14, 1003-1009. Sharpe, P. T. Methods of Cell Separation; Elsevier: Amsterdam, 1988
そこで本発明は、従来技術が抱える上記課題を克服するために、新規な細胞分離技術を提供することを目的とする。
上記目的の下で本願発明者らは浮揚性粒子に着目し、新たな細胞分離技術の創出を目指した。具体的には、浮揚性粒子である中空ガラスビーズの有用性を検討した。中空ガラスビーズは容易に表面修飾が可能であり(参考文献6)、また比重が小さいために溶液中で自発的に浮揚する(図1)。前者の特性により、特定の細胞を捕捉することができる。一方、後者の特性は低動力又は無動力での細胞分離を実現する上で重要であり、小規模〜大規模の細胞分離を可能にする。検討の結果、後述の実施例に示した通り、抗体で表面修飾した中空ガラスビーズが期待以上の分離特性を示し、浮揚性粒子を用いた分離技術の有用性が裏付けられた。
以下に示す発明は主として以上の成果に基づく。
[1]以下の工程(1)及び(2)を含む、細胞分離法:
(1)標的細胞と、該標的細胞に結合性を示す捕捉物質で表面修飾された浮揚性粒子とを液体中で接触させる工程;
(2)浮揚した前記浮揚性粒子を回収する工程。
[2]以下の工程(3)を更に含む、[1]に記載の細胞分離法:
(3)回収した前記浮揚性粒子から、前記捕捉物質を介して捕捉された前記標的細胞を回収する工程。
[3]浮揚性粒子が中空ガラスビーズである、[1]又は[2]に記載の細胞分離法。
[4]中空ガラスビーズがホウケイ酸ガラスからなる、[3]に記載の細胞分離法。
[5]前記捕捉物質が前記標的細胞に特異的な結合性を示す、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の細胞分離法。
[6]前記捕捉物質が抗体である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の細胞分離法。
[7]工程(1)において前記液体を攪拌する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の細胞分離法。
中空ガラスビーズの特性。ピペッティング後(A)及びインキュベーション後(B)の中空ガラスビーズ懸濁液の状態を示す。 セルバルーン(中空ガラスビーズ)を用いた細胞分離法の原理。抗体を介して標的細胞を捕捉したセルバルーンは無動力で浮揚する。標的細胞以外の細胞は沈降する。 抗体固定化セルバルーンの蛍光染色。Alexa Fluor 488標識ウサギ抗マウスIgG抗体で染色した抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンの明視野像(A)及び蛍光像(B)を示す。 液体表面から回収した試料の明視野像(A)及び蛍光像(B)。抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンに捕捉されたH1975細胞がDAPIで染色されている。 細胞回収実験の結果。(1)H1975細胞とH1299細胞をそれぞれ単独で用いた試料についての回収率。(2)H1975細胞とH1299細胞を混合した試料についての回収率及び純度。(3)血球細胞及びH1975細胞を添加した血漿試料についての回収率及び純度。
本発明は細胞分離法に関する。様々な対象物から細胞を分離又は回収することに本発明を利用可能である。また、対象物の規模(量)に特段の制約はなく、小規模から大規模に至るまで本発明の細胞分離法を適用可能である。この特徴は本発明の利点の一つでもある。本発明の細胞分離法では以下の工程(1)及び(2)を行う。尚、説明の便宜上、工程(1)を捕捉工程と呼び、工程(2)を回収工程と呼ぶ。
(1)標的細胞と、該標的細胞に結合性を示す捕捉物質で表面修飾された浮揚性粒子とを液体中で接触させる工程
(2)浮揚した前記浮揚性粒子を回収する工程
工程(1)、即ち捕捉工程では浮揚性粒子を利用し、分離目的物である標的細胞を捕捉する。具体的には、標的細胞に結合性を示す捕捉物質で表面修飾された浮揚性粒子を用意し、液体中において標的細胞に接触させる。本明細書において用語「浮揚」とは、液体中を上昇することいい、液体表面から出ることのみを意味するのではない。浮揚することにより、浮揚性粒子は浮揚前よりも上方に位置することになる。一方、用語「浮揚性粒子」とは、液体中を浮揚する特性を示す粒子である。原則的には、使用する液体よりも比重が小さい粒子は浮揚性を示す。捕捉工程における溶液として、好ましくは、水、又は溶媒が水である溶液(即ち水溶液)を使用する。従って、好ましくは浮揚性粒子の比重は1.00より小さい。比重が例えば0.1〜0.8、好ましくは0.1〜0.6の浮揚性粒子を採用することができる。
好ましくは、浮揚性粒子として中空ガラスビーズを採用する。中空ガラスビーズの材質は特に限定されない。材質の例を挙げるとホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸塩ガラス(例えばホウケイ酸ナトリウムガラス)、アルミノ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、リン酸亜鉛ガラス、セラミックである。各種中空ガラスビーズが市販されている(例えばポッターズ・バロティーニ株式会社製のSphericel(登録商標)、Q-CEL(登録商標)、Ceramic Multi Cellular(登録商標)、3M社製の3MTMグラスバブルズ))。本発明における浮揚性粒子として市販の中空ガラスビーズを用いてもよい。
浮揚性粒子として中空ガラスビーズを用いることは表面修飾の点からも好ましい。即ち、中空ガラスビーズは一般的な表面修飾が容易であり、本発明の目的に適する。「表面修飾」とは、表面に対する特定の物質(本発明では捕捉物質)の結合、付着又は被覆を意味する。従って、本発明では、捕捉物質が結合又は付着した浮揚性粒子、或いは捕捉物質で被覆された浮揚性粒子が用いられることになる。浮揚性粒子の表面修飾は常法で行えばよい。例えば、浮揚性粒子として中空ガラスビーズを用いるのであれば、シランカップリング剤を用いた方法(後述の実施例に具体例が示される)や物理吸着によってその表面を捕捉物質で修飾することができる。
浮揚性粒子のサイズも特に限定されず、使用する浮揚性粒子の特性(特に材質)や標的細胞の種類、分離の目的などを勘案して適切なサイズの浮揚性粒子を採用すればよい。浮揚性粒子のサイズ(平均粒径)を例示すれば10μm〜1000μmである。好ましくは平均粒径が10μm〜100μm、更に好ましくは平均粒径が10μm〜50μmの浮揚性粒子を用いる。浮揚性粒子のサイズが大きすぎると非特異的吸着の問題があり、小さすぎると浮揚しないおそれがある。
本発明では浮揚性粒子の表面を予め捕捉物質で修飾しておく。捕捉物質としては、標的細胞に結合性を示す物質が用いられる。換言すれば、標的細胞に対応するように捕捉物質を選択し、本発明に使用する。選択的な細胞分離を実現するためには、標的細胞に特異的結合性を示す物質を捕捉物質として用いることが好ましい。該当する捕捉物質の例は細胞表面抗原に対する抗体、受容体又はリガンド、レクチンである。完全な形態の抗体に限らず、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv抗体などの抗体断片を用いることにしてもよい。また、抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。但し、特異性の高い分離を実現するためにはモノクローナル抗体を用いることが好ましい。所望の抗体は免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。市販の抗体が入手可能であれば、市販品を利用することにしてもよい。尚、標的細胞に対する特異性を高めるため、捕捉物質での修飾の後、浮揚性粒子の表面をブロッキング処理(例えば血清アルブミンやスキムミルクによる処理)しておくとよい。
標識物質が結合した捕捉物質(標識化捕捉物質)を使用することにしてよい。標識化捕捉物質を使用すれば、分離後の細胞を、標識を利用して検出したり、選別したり、或いは回収したりすることが可能となる。標識物質としては例えば、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、Texas Red(登録商標)、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC、APC-CyTM7、オレゴングリーン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドット等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、125I等の放射性同位体、及びビオチンを挙げることができる。
標的細胞と浮揚性粒子を液体中に共存させることによって、両者が接触する状態を形成することができる。標的細胞と浮揚性粒子が接触する場(環境)を提供する液体としては、上記の通り、好ましくは水又は水溶液が用いられる。水溶液の例として生理食塩水、緩衝液、標的細胞が生存及び/又は増殖可能な培地を挙げることができる。緩衝液の例は、リン酸緩衝溶液(PBS等)、Tris緩衝液(Tris-HCl等)、HEPES緩衝液(HEPES/NaOH/NaCl、HEPES/NaOH/NaClO4等)である。生体試料から特定の細胞を分離する場合(即ち、生体試料中に標的細胞が存在する場合)には、生体試料を構成する液体又はその希釈液を捕捉工程での液体として用いることができる。生体試料の例は、血液、血清、血漿、唾液、尿、骨髄液、脳脊髄液、組織又は臓器の破砕物である。
標的細胞と浮揚性粒子を接触させておく時間(接触時間)は特に限定されないが、例えば30分〜120分程度である。接触時間が短すぎると、十分な量の標的細胞を浮揚性粒子に捕捉できないおそれがあり、接触時間が長すぎると捕捉効率の低下を招くことはもとより、標的細胞の活性や生存率の低下を引き起こしうる。捕捉効率を高めるために、液体を攪拌した状態で捕捉工程の一部又は全部を実施することにしてもよい。攪拌にはパドル型、プロペラ型、マグネチィックスターラー等、各種攪拌子を用いることができる。適度な攪拌は捕捉効率の向上、捕捉量の増大をもたらす。その一方で過度の攪拌は却って捕捉効率や捕捉量の低下を引き起こしうる。最適な攪拌条件は使用する浮揚性粒子やその他の分離条件等によって変動するが、当業者であれば予備実験を通して設定可能である。
細胞の生存率の向上や活性の維持などの目的で保温(インキュベート)することにしてもよい。即ち、本発明の一態様ではインキュベートしつつ捕捉工程を実施する。インキュベートの温度条件は標的細胞に適したものを採用すればよい。温度条件の例を挙げれば4℃〜36℃である。温度条件が高すぎたり或いは低すぎたりすれば、細胞の活性や生存率が影響を受けるおそれがある。
捕捉工程の具体的操作の例を以下に示す。
例1:標的細胞を含有する生体試料(例えば、標的細胞と他の細胞が混在する生体試料)と浮揚性粒子を水又は水溶液に添加する。その後、任意の操作として、攪拌及び/又はインキュベートする。尚、生体試料と浮揚性粒子の添加の順序は問わない。
例2:標的細胞を含有する被処理物(例えば、有害細胞を含む汚染水)に対して浮揚性粒子を添加する。その後の操作は例1に準ずる。尚、この例では被処理物中の液体成分が、標的細胞と浮揚性粒子の接触の場を提供することになる。
捕捉工程を実施すると、捕捉物質を介して浮揚性粒子に標的細胞が捕捉される。即ち、標的細胞と浮揚性粒子の複合体が形成される。捕捉工程に続く回収工程では当該複合体を回収する。浮揚性粒子は標的細胞との複合体を形成しつつ浮揚し、液体の上部に移動・集合する。従って、回収工程では液体中の上部に移動・集合した浮揚性粒子を回収すればよい。このように本発明では、浮揚性粒子の特性を巧みに利用することによって、低エネルギー消費(低動力又は無動力)且つ簡便な標的細胞の回収を実現する。
一態様では、回収した浮揚性粒子から、捕捉物質を介して捕捉された標的細胞を回収する。ここでの回収操作の方法及び条件は、使用する捕捉物質の特性や標的細胞の特性・状態などを考慮して選択すればよい。一例を示すと、捕捉物質として抗体を使用した場合には、pH2.2〜pH3.0のグリシン塩酸溶液によって抗体と標的細胞を解離させることにより、標的細胞を回収することができる。この場合、標的細胞への影響を考慮し、速やかに中和処理を行うことが好ましい。
上記の態様とは異なり、回収した浮揚性粒子をそのまま各種利用(細胞を用いた反応など)に供することも可能である。
新たな細胞分離技術の創出を目指して研究を進める中で、浮揚性粒子に着目し以下の検討を行った。
1.材料と方法
(1)材料
ホウケイ酸ガラスからなり、平均粒径が45μm(粒径範囲15μm〜75μm)、比重が0.25の中空ガラスビーズ(Sphericel(登録商標))はポッターズ・バロティーニ株式会社から提供された。PBS、アセトン、0.5%(w/v)トリプシンを含有する5.3 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩三水和物は和光純薬株式会社から購入した。EDC(1-ethyl-3-(3-dimethyllaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)及びエチレンジアミン四酢酸無水物(EDTA 2Na)は関東化学株式会社から購入した。抗ヒト上皮細胞接着分子抗体(抗hEpCAM抗体)はR&D Systems社から購入した。APTS(3-aminopropyltriethoxysilane)及びウシ血清アルブミン(BSA)はSigma-Aldrich社から購入した。ウシ胎仔血清(FBS)はBiowest SASから購入した。L-グルタミン、5%ペニシリン ストレプトマイシン及び5%ピルビン酸ナトリウム含有のRPMI-1640、DAPI(4,6-diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride)及びAlexa Fluor 488標識ウサギ抗マウスIgG抗体はLife Technologies社から購入した。健常者から全血を採取し、EDTA処理した後、遠心処理により血球と血漿を分離した。
(2)細胞培養
肺癌細胞株のNCI-H1299(H1299細胞)及びNCI-H1975(H1975細胞)はATCCから購入した。これらの細胞を、5% CO2、37℃の条件下、L-グルタミン、5%ペニシリン ストレプトマイシン、5%ピルビン酸ナトリウム及び10% FBSを含有するRPMI-1640で培養した。
(3)抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンの調製
以下の手順で抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンを調製した。中空ガラスビーズ(以下「セルバルーン」と呼ぶ)(10 mg)を1M 塩酸、超純水及びアセトンで洗浄した。続いて、セルバルーンをアセトンに溶解した10% APTSで30分間処理し、アセトンで洗浄後、室温下で乾燥させた。次に、このAPTS固定化セルバルーン(5 mg)を4 mlのPBSに添加し、室温下、抗hEpCAM抗体(25μg/mL, 200μl)及びEDC(20 mM, 400 μl)と2時間、ブロックインキュベータ(WSC-2630 PowerBLOCK Shaker, アトー株式会社)を使用して一定速度(1500 rpm)で振盪させつつ反応させた後、PBSで洗浄した。セルバルーンへの非特異的吸着を抑えるため、4 mlの2% BSA/PBSを添加して4℃で30分間、一定速度(1500 rpm)で攪拌することによりBSAでコートした。その後、PBSで洗浄した。セルバルーンに抗hEpCAM抗体が固定化されたことは、蛍光顕微鏡観察で確認した。尚、BSAをコートしたセルバルーン(抗hEpCAM抗体は固定化していない)とAPTS固定化セルバルーンを調製し、ネガティブコントロールに使用した。
(4)細胞分離
標的細胞として、EpCAM抗原を発現するH1975細胞を用いた。本細胞は循環腫瘍細胞(CTC)モデルとして利用されている。比較対照として、EpCAM抗原を発現しないH1299細胞を用いた。抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンにH1975細胞が結合したことを確認するためにDAPIで染色し、細胞分離能を評価した。細胞分離操作の概要を図2に示す。0.1% BSAと2mM EDTA Ca 2Naを含む4 mlのPBSに抗hEpCAM抗体固定化セルバルーン(5 mg)と、H1975細胞又はH1299細胞(105個)を添加し、4℃で30分間、一定速度(1500 rpm)で攪拌して懸濁した。非吸着細胞を回収し、血球計で計数した。セルバルーンの細胞分離能(回収率及び純度)は、以下の計算式で求めた。
Figure 2014221037
Figure 2014221037
H1299細胞とH1975細胞を含む混合サンプルを使用した場合も、識別のためにH1299細胞を予めDAPIで染色しておくこと以外、同様のプロトコールで実施した。血液からの細胞の回収、及びスケールアップしたときの分離能について評価するため、以下の手順でサンプルを調製した。3 mlの血漿をPBSで4倍に希釈し、ここに15 mgの抗hEpCAM抗体固定化セルバルーンを加え、3×105 の血球細胞及びDAPI染色H1975細胞を添加した。
2.結果及び考察
さまざまな細胞分離法が提案されている。その中で、低エネルギー消費である手法は磁気微粒子を用いた分離法であろう。しかし、磁気微粒子を用いた分離法は、大容量の試料に応用すると中心部に磁場を及ぼすために、巨大な磁場発生装置が必要になり、低エネルギー消費の細胞分離を実現することは不可能である(参考文献7)。一方で、大容量分離手法として気泡分離がある(参考文献8)。しかし、気泡剤には環境汚染が懸念され、しかも、一般的に気泡分離には細胞選択性が皆無である。つまり、気泡に吸着する微生物を非選択的に回収してしまう。このように、低エネルギー消費、環境フレンドリーかつ小容量〜大容量まで対応可能な細胞分離法は皆無であり、その開発が切望されている。ホウケイ酸ガラス製の中空ガラスビーズは、このような問題を解決できる可能性を秘める。ホウケイ酸ガラスの表面は、静電相互作用(物理吸着)やシランカップリング剤などにより容易に修飾可能であり、抗体をはじめ細胞認識分子を固定化することができる。また、ホウケイ酸ガラスは環境を汚染する心配がないことから、仮に回収し損ねた場合でも環境への影響は小さい。中空ガラスビーズに細胞を付着させることにより、特定の細胞を浮上させることができる。一方で、目的としない細胞は沈降するために、低エネルギー消費かつ選択性のある細胞分離が達成されることになる。また、磁気微粒子分離を用いた手法とは異なり、中空ガラスビーズを用いた細胞分離法は小容量〜大容量の試料まで適用可能である。
本検討では初めに、セルバルーン(中空ガラスビーズ)の有用性と可能性を証明するために、抗体固定化セルバルーンの作製を試みた。免疫染色により抗体固定化の成否を確認した結果、抗体固定化セルバルーンからのみ蛍光が観測され(図3)、抗体がセルバルーン上に固定化できていることが証明された。続いて、セルバルーンを使用して細胞分離を試みた。図4に示すとおり、H1975細胞と抗体固定化セルバルーンを混合した後に浮上してきたセルバルーンにはH1975細胞が固定化されているのがわかる。一方、抗体とは交差性のないH1299細胞はビーズに付着しないことがわかる。それぞれの細胞を単独で用いた試料を利用し、回収率を評価したところ、H1975細胞の回収率は84%(n=5 SD 6.7)、H1299細胞では同27%(n=5, SD 6.2)であった(図5(1))。このように、高い選択性と回収率が示された。ここで、H1299細胞は27%が回収されている結果となったが、その原因は、試料ハンドリングの際に試料のロスが生じたことによると思われる。H1299細胞とH1975細胞の混合試料の場合、H1975細胞の回収率は72%(n=5, SD 9.5)、H1299細胞の純度は78%(n=5, SD4.1)であった。(図5(2))。つまり、混合試料であっても、上記の結果と同様に高い選択性と高度な純化が可能であることがわかる。
実験条件の最適化を更に検討するために、セルバルーンの量を増やした実験を実施した。採用した実験条件の範囲ではセルバルーンの量を増やしても回収率に変化が見られず、細胞は吸着飽和に達していると考えられた。尚、この結果より、理論的には1個のセルバルーンは1〜2個の細胞を吸着させ、浮上可能であることがわかる。
最後に、スケールアップ実験と血中からの細胞回収実験を実施した。その結果、標的細胞であるH1975細胞について62%の回収率を達成した(図5(3))。本細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)モデルとして利用されるものである。本実験結果より、血中でもセルバルーンの性能に遜色はなく、目的とする細胞を回収可能であり、CTCの効率的且つ選択的な回収も期待できる。また、スケールアップ実験の結果、容量を増やしても本実験系は適用可能であることが明らかとなった。
以上の結果より、セルバルーンを利用した方法は、低エネルギー消費、環境フレンドリー、且つ小容量〜大容量まで適用可能な細胞分離法であり、血中でも適用可能であった。捕捉した細胞をビーズから脱着させることも可能であることから、回収した細胞を様々な用途に利用することや、あるいはセルバルーンに抗体産生細胞などを固定化して産業利用に供することなど、多くの用途・応用が期待される。
<参考文献>
1. Nagrath,S.; Sequist, L.V.; Maheswaran, S.; Bell, D.W.; Irimia, D.; Ulkus, L.; Smith, M.R.; Kwak, E.L.; Digumarthy, S.; Muzikansky, A.; Ryan, P.; Balis, U.J.; Tompkins, R.G.; Haber, D.A.; Toner, M. Nature 2007(20), 450,1235-1239.
2. Spangrude, G.J.; Heimfeld, S.; Weissman, I.L. Science, 1988, 241, 58-62.
3. Takamatsu, H.;Hamamoto, K.; Ishimaru, K.;Yokoyama,S.; Tokashiki, M. Appl Microbiol Biotechnol,1996, 45, 454-457.
4. Betzer, N.; Argaman, Y.; Kott,Y. Water Research, 1980, 14, 1003-1009.
5. Sharpe, P. T. Methods of Cell Separation; Elsevier: Amsterdam, 1988
6. Vansant, E. F.; Van der Voort, P.; Vrancken, K. C. Characterization and Modification of the Silica Surface; Elsevier: Amsterdam,1995.
7. Miltenyi,S.;Muller, W.; Weichel, W.; Radbruch, A. Cytometry 11:231-238 (1990)
8. Parthasarathy,S.; Das,T.R.; Kumar,R.; Gopalakrishnan, K.S. Biotech.Bioeng, 1988, 32, 174-183.
本発明によれば、簡便且つ低動力又は無動力で特定の細胞を分離することが可能となり、従来の細胞分離技術の課題を克服できる。また、本発明の細胞分離法は小規模(小容量)〜大規模(大容量)の細胞分離に適用可能であり、汎用性が高い。細胞分離技術が利用されてきた様々な用途、例えば、疾患診断、再生医療支援、産業利用、環境浄化への本発明の適用が想定される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (7)

  1. 以下の工程(1)及び(2)を含む、細胞分離法:
    (1)標的細胞と、該標的細胞に結合性を示す捕捉物質で表面修飾された浮揚性粒子とを液体中で接触させる工程;
    (2)浮揚した前記浮揚性粒子を回収する工程。
  2. 以下の工程(3)を更に含む、請求項1に記載の細胞分離法:
    (3)回収した前記浮揚性粒子から、前記捕捉物質を介して捕捉された前記標的細胞を回収する工程。
  3. 浮揚性粒子が中空ガラスビーズである、請求項1又は2に記載の細胞分離法。
  4. 中空ガラスビーズがホウケイ酸ガラスからなる、請求項3に記載の細胞分離法。
  5. 前記捕捉物質が前記標的細胞に特異的な結合性を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞分離法。
  6. 前記捕捉物質が抗体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞分離法。
  7. 工程(1)において前記液体を攪拌する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞分離法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021123878A1 (en) * 2019-12-17 2021-06-24 3M Innovative Properties Company Buoyant hollow particles compostion and method

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