【発明の詳細な説明】
新規好中球抑制剤関連出願の開示
本出願は、1992年5月11日に出願された米国特許願第07/881,7
21号の一部継続出願である、1992年12月24日に出願された米国特許願
第07/996,972号の一部継続出願である、1993年5月11日に出願
された米国特許願第08/060,433号の一部継続出願である、1993年
11月10日に出願された米国特許願第08/151,064号の一部継続出願
である。これらの出願の開示は本明細書に参考として含まれる。発明の分野
本発明はCD11b/CD18インテグリン複合体またはCD11b/CD1
8インテグリン複合体のI−ドメイン部分と相互作用し、白血球の活性を抑制す
る因子に関する。この因子は好中球の活性化および血管内皮細胞に対する好中球
の接着を含む、好中球の活性化を抑制する。この因子はさらに、血管内皮細胞に
対する好酸球の接着の抑制を含む、好酸球活性に対する抑制作用も有する。発明の背景
白血球はリンパ球、単球および顆粒球からなる細胞群である。リンパ球の内に
はT−細胞(ヘルパーT−細胞および細胞障害性もしくはサプレッサーT細胞と
して)、B−細胞(循環性B−細胞および形質細胞として)、第3種類もしくは
ナチュラルキラー(NK)細胞および抗原提示細胞を含む。単球の内には、流血
中単核球、クッパー細胞、糸球体内メサンギアル細胞、肺胞マクロファージ、漿
膜マクロファージ、ミクログリア、脾洞マクロファージ、リンパ洞マクロファー
ジを含む。顆粒球には好塩基球、肥満細胞(粘膜性肥満細胞および結合組織肥満
細胞を含む)を含む。
好中球は微生物に対する宿主防御系において、重要な成分である。創傷部位の
細胞から放出された可溶性免疫メディエーターに対する応答において、好中球は
血管壁を通って血流から組織へと集まる。創傷部位において、活性化された好中
球は外来細胞を、貪食作用、または酸化剤、プロテアーゼ類およびサイトカイン
類のごとき細胞殺傷性物質を放出して殺す。感染に対する攻撃における重要性の
外に、好中球はそれ自身で組織のダメージを促進させ得る。異常な炎症応答の間
、好中球は血管壁上または非創傷組織内において毒性物質を放出することによっ
て、組織のダメージの重要な原因となり得る。または、毛細血管壁にこびりつい
ていたり、静脈内に堆積している好中球は、虚血によって組織にダメージを与え
ることがある。かかる異常な炎症応答は、成人呼吸困難症候群(adult respirat
ory distress syndrome:ARDS)、心筋梗塞、ショック、拍動および臓器移植の
後の虚血−再循環損傷;急性および慢性同種移植片拒絶;脈管炎;敗血症;リュ
ーマチ性関節炎;炎症性皮膚疾患を含むさまざまな臨床疾患の病因となっている
ハーラン(Harlan)ら、イムノロジー・レビュー(Immunol.Rev.)114,5)。
好中球の炎症部位への接着は少なくとも2つの別個の細胞−細胞相互作用を含
むと考えられている。最初に炎症組織の近傍の血管内皮が好中球に対して粘着性
となる;好中球はこの内皮と低親和性結合機構を介して、「ローリング」として
知られている工程において相互作用する。第2の接着ステップにおいて、ローリ
ングしている好中球は血管内皮細胞へより密着し、血管から組織へと移動する。
作用を受けた血管セグメント上の好中球のローリングおよび好中球類と内皮と
の間の他の初期の低親和性接触はセレクチン(selectin)類と称する一群の単量
体積分膜糖タンパク質によって媒介される。これまでに確認された三種のセレク
チン、即ち好中球表面に存在するL−セレクチン(LECAM−1、LAM−1
)、内皮細胞上に存在するE−セレクチン(内皮白血球接着分子−1;ELAM
−1)および内皮細胞上に発現するP−セレクチン(顆粒膜タンパク質−140
、即ちGMP−140;血小板活性依存性顆粒外部膜タンパク質、即ちPADG
EM;CD62)は、すべて血管内皮細胞への好中球の接着と関連がある〔ジュ
ティラ他(Jutila)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol)、第14
3巻、第3318頁、1989年;ワトソン他(Watson)、ネイチャー、第34
9巻、第164頁、1991年;ミュリガン他(Mulligan)、ジャーナル・オブ
・クリニカル・インベスティゲイション、(J.C1in.Invest.)、第88巻、第
1396頁;ガン
デル他(Gundel)、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲイション、
(J.Clin.Invest.)、第88巻、第1407頁、1991年;ジェング他(Ge
ng)、ネイチャー、第343巻、第757頁、1990年;ペイテル他(Patel
)、ジャーナル・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、第112巻、第74
9頁、1991年〕。E−セレクチンに対するカウンター−レセプターは細胞表
面糖タンパク質上に存在するシアル酸化ルイス(sialylated Lewis)X抗原(si
alyl-Lewisx)であることが報告されている〔フィリップス他(Phillips)、サ
イエンス、第250巻、第1130頁、1990年;ウォルツ他(Walz)、サイ
エンス、第250巻、第1132頁、1990年;ティーマイヤー他(Tiemeyer
)、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシ
ズ(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA))、第88巻、第1138頁、1991年;ロ
ウエ他(Lowe)、セル(Cell)、第63巻、第475頁、1990年〕。また他
のセレクチン類に対するレセプター類は天然の炭水化物であると考えられている
が、まだ解明されていない。
好中球と内皮細胞とのより安定な第2の接触は一群のインテグリン(integrin
s)類として知られている細胞接着分子類によって媒介される。インテグリン類
は広範囲の、進化の過程において保存された(evolutionaly conserved)、事実
上すべての型の細胞に存在するヘテロダイメリックな膜間糖タンパク質コンプレ
ックスを含む。CD11a/CD18(LFA−1)およびCD11b/CD1
8(Mac−1、Mo−1またはCR3)を含むインテグリン類の白血球に特異
的なCD18(β2)ファミリーのメンバーは好中球が内皮細胞に接着するのを
媒介するということが報告されている〔ラーソンおよびスプリンガー(Larson a
nd Springer)、イムノロジー・レビュー(Immunol Rev.)、第114巻、第1
81頁、1990年参照〕。これらのインテグリンに対する内皮細胞のカウンタ
ー−レセプターは、それぞれCD11a/CD18に対する細胞間細胞接着分子
ICAM−1およびICAM−2、CD11b/CD18に対する細胞間細胞接
着分子ICAM−1である〔ロスライン他(Rothlein)、ジャーナル・オブ・イ
ムノロジー(J.Immnol.)、第137巻、第1270頁、1986年;シュタウ
ントン他(Staunton)、セル、第52巻、第925頁、1988年;シュタウン
トン他、ネ
イチャー、第339巻、第61頁、1989年〕。ICAM類は免疫グロブリン
スーパーファミリーのメンバーである単量体膜間タンパク質である。
CD11b/CD18インテグリンは、単球、マクロファージ、顆粒球、大顆
粒リンパ球(NK細胞)および未成熟CD5+B細胞を含む様々な白血球上に発
現している(キシモト、ラーソン(Larson R.S.)、コルビ(Corbi,A.L.)、ダ
スティン(Dustin,M.L.)、スタウントン(Staunton,D.E.)およびスプリガー
(Spriger,T.A.)(1989)アドバンス・イン・イムノロジー(Adv.in Immunol
.)46、149〜182)。CD11b/CD18は好中球の内皮細胞への接着(プリ
エト(Prieto,J.)、ベティー(Beatty,P.G.)、クラーク(Clark,E.A.)、
パタロジョ(Patarroyo,M.)(1988)イムノロジー63,631-637;ウォリス(Wa
llis,W.J.)、ヒクスタイン(Hickstein,D.D.)、シュワルツ(Schwarts,B.R
.)、ジューン(June,C.H.)、オークス(Ochs,H.D.)、ベティー(Beatty,P
.G.)、クレバノフ(Klebanoff,S.J.)、およびハーラン(Harlan,J.M.)(19
86)ブラッド67,1007-1013;スミス(Smith,C.W.)、マーリン(Marlin,S.D.
)、ロスライン(Rothlein,R.)、トーマンム(Tomanm,C.)およびアンダーソ
ン(Anderson,D.C.)(1989)ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲ
ーション(J.Clin.Invest.)83,2008-2017)、および好中球からの過酸化水素
の放出(シャッペル(Shappell,S.B.)、トマン(Toman,C.)、アンダーソン
(Anderson,D.C.)、テイラー(Taylor,A.A.)、エントマン(Entman,M.L.)
およびスミス(Smith,C.W.)(1990)ジャーナル・オブイムノロジー144,2792
-2711;フォン・アスムス(Von Asmuth,E.J.)、バウールマン(Bauurman,W.A
.)(1991)ジャーナル・オブイムノロジー147,3869-3875)を含む様々な白血
球の機能に関与すると考えられている。このインテグリンは、オプソニン化され
た(例えばC3bに被覆された)標的に対する好中球および単球による貪食にお
いて、ある役割を果たし得る(ベラー(Beller,D.I.)、スプリンガー(Spring
er,T.A.)、シュライバー(Schreiber,R.D.)(1982)ジャーナル・オブ・エ
クスペリメンタル・メディシン156,1000-1009)。CD11b/CD18がC3
biに被覆された標的細胞に対するナチュラルキラー活性を増強することも報告
されている(ラモス(Ramos,O.F.)、カイ(Kai,C.)、イェフェノフ(Yefeno
f,E.)およびクライン
(Klein,E.)(1988)ジャーナル・オブイムノロジー140,1239-1243)。
内皮細胞と好中球の活性化は好中球媒介炎症の重要な成分を表すと考えられて
いる。細胞活性化を誘発する因子はアゴニストと名付けられている。腫瘍壊死因
子(TNFα)およびインターロイキン−1(IL−1α)のような小さい調節
タンパク質を含む内皮細胞アゴニスト類は障害のある部位の細胞によって放出さ
れる。内皮細胞が活性化されることにより、ICAM−1〔シュタウントン他、
セル、第52巻、第925頁、1988年〕およびELAM−1〔ベビラッカー
他(Bevilacqua)、プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・
サイエンシズ、第84巻、第9238頁、1987年〕の表面発現が増加する。
活性化内皮細胞の表面上にこれら接着分子が高レベルに発現することにより、傷
害部位近くに血管内皮細胞に対する好中球類の接着の増加が観測される。
好中球の活性化により、形状変化を含む生理的状態、外部侵入物を貪食する能
力および細胞内顆粒からの細胞傷害性物質の放出に大きな変化を生じる。更に、
活性化により、おそらく好中球表面上のCD11b/CD18インテグリン複合
体内の構造変化を通して、好中球と血管内皮細胞の間の接着接触の親和性が著し
く増加する〔ベッダーおよびハーラン(Vedder and Har1an)著、ジャーナル・
オブ・クリニカル・インベスティゲイション(J.Clin.Invest.)第81巻、第
676頁、1988年;ブイヨン他(Buyon)、ジャーナル・オブ・イムノロジ
ー第140巻、第3156頁、1988年〕。好中球活性化を誘発すると報告さ
れている因子には、IL−1α、GM−CSF、G−CSF、MIP−1、IL
−8(IL−8:インターロイキン−8、GM−CSF:顆粒球/単球−コロニ
ー刺激因子、G−CSF:顆粒球−コロニー刺激因子)、TNFα、補体C5α
フラグメント、微生物誘導ペプチドであるフォルミル−Met−Leu−Phe
および脂質様分子ロイコトリエンB4(LTB4)および血小板活性因子が含まれ
る〔フォルテスおよびナタン(Fuortes and Nathan)、「モレキュラー・ベイシ
ス・オブ・オキシデイティブ・ダメージ・バイ・ロイコサイツ(Molecular Basi
sof Oxidative Damage by Leukocytes)」、ジェサイテス・エイ・ジェーおよび
ドラッツ・イー・エー(Jesaitis,A.J.and Dratz,E.A.)編集、シ・アール・
シー出版(C
RC Press)、第81−90頁,1992年〕。加えて、ホルボールエステル類
(例えば、ホルボール12ミリステート13アセテート;PMA)は強力な合成
脂質様好中球アゴニストとして提案されている。PMAを除いて、これらのアゴ
ニストは好中球表面のレセプターに結合することによって好中球を活性化するこ
とが報告されている。アゴニスト分子によって占められているレセプター類は好
中球の内部で、最終的に好中球の活性化を伴う生理学的変化をもたらすカスケー
ド反応を開始すると考えられている。この工程はシグナル・トランスダクション
(signal transduction)として知られている。脂質様PMAが、細胞表面で形
質膜を通って、およびシグナル・トランスダクション機構の細胞内成分(即ち、
タンパク質キナーゼ)と直接相互作用して好中球活性に影響を及ぼすと考えられ
ている。
好中球の機能を抑制すると報告されている化合物には一般にふたつの群が存在
し、これらの化合物は炎症を軽減することが報告されている。抗炎症性化合物の
ひとつの群は、シグナルトランスダクション機構の成分に作用することにより、
好中球活性化、そして恐らく接着のインヒビターとして機能すると言われている
。抗炎症性化合物の第2の群は、好中球と血管内皮細胞との接触を媒介する接着
レセプターの直接のインヒビターとして作用することによって、好中球が炎症病
巣へ侵入するのを抑制すると言われている。
治療薬として現在用いられている、プロスタグランジン類、カテコールアミン
類、および非ステロイド系抗炎症性医薬(NSAIDs)として知られている一
群の試薬を含む、抗炎症性化合物の多くは第1のカテゴリーに入ると考えられて
いる〔ショウェルおよびウイリアムス(Showell and Williams)、イムノファー
マコロジー(Immunopharmacology)、ギルマン・エス・シーおよびロジャース・
ティー・ジェー(Gilman,S.C.and Rogers,T.J.)編集、テルフォード出版(T
elford Press)、ニューヨーク、第23−63頁、1989年〕。例えば、TN
Faによってる活性化された好中球で観察された進んだ接着はシグナルトランス
ダクションの媒介体サイクリックAMP〔cAMP;ナタンおよびサンチャズ(
Natan and Sanchez)著、ジェイ・シー・ビー(JCB)、第111巻、第21
71頁、19
90年〕が減少したことと関係がある。プロスタグランジンおよびカテコールア
ミンへの好中球の暴露により細胞内サイクリックAMPが高レベルとなることが
関連づけられている〔cAMP;ショウェルおよびウイリアムス(Showell and
Williams)、1989年〕。シグナルトランスダクションインヒビター類は広く
抗炎症性治療薬として用いられてきたが、それらは急性の炎症状況での効果が薄
いこと、特異性がないこと、および胃または腸潰瘍発生、血小板や中枢神経系機
能の障害および腎臓機能の変化といった好ましくない副作用を含む幾つかの欠点
があった〔インセル(Insel)著、ザ・ファーマコロジカル・ベイシス・オブ・
セラピューティクス(The Phermacological Basis of Therapeutics)、ギルマ
ン、エー・ジー(Gilman,A.G.)、レイル、ティー・ダブリュー(Rall,T.W.)
、ニーズ、エイ・エス(Nies,A.S.)およびテイラー、ピー(Tay1or,P.)編集
、パーガモン出版、ニューヨーク、第8版、第638−681頁、1990年〕
。
グルココルチコイド類は長い間その抗炎症特性が認められてきた。接着を含む
いくつかの好中球作用に対して、好中球に対するするステロイドに誘発される抑
制作用が報告されている〔クラーク他(Clark)、ブラッド(Blood)、第53巻
、第633−641頁、1979年;マグレガー(Macgregor)著、アナルズ・
オブ・インタナショナル・メディシン(Ann.Intern.Med.)、第86巻、第35
−39頁、1977年〕。グルココルチコイド類が好中球機能を調節する機構は
よく分かっていないが、一般には炎症プロセスで中心的な役割を演じる好中球を
処理して、該好中球での新しいタンパク質の増幅または抑圧を含むものと考えら
れている〔ニュドセン他(Knudsen)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Imm
unol.)、第139巻、第4129頁、1987年〕。特にその発現がグルココ
ルチコイドによって好中球中に誘発される、リポコルチンとして知られている一
群のタンパク質は抗炎症特性と関係づけられてきた〔フラワー(F1ower)著、ブ
リティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Br.J.Phermaco1.)、第
94巻、第987−1015頁、1989年〕。リポコルチン類は、好中球表面
の部位と相互作用することによって抗好中球作用を発揮するかもしれない〔カミ
ュッシ他(Camussi)、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J
.Exp.Med.)、第171巻、
第913−927頁、1990年〕が、リポコルチンが好中球上で直接接着タン
パク質を阻止するように働くということを暗示する証拠はない。これらの有益な
抗炎症特性とは別に、グルココルチコイド類は重要な副作用が関係する。これに
は、下垂体副腎皮質機能の抑圧、流体および電解質変調、高血圧、高血糖症、糖
尿、感染し易さ、潰瘍、骨粗鬆症、筋症、成長および行動変調の停止が含まれる
〔インセル、1990年〕。
血管内皮細胞への好中球接着の直接のインヒビターとして報告されている第2
の群の抗炎症性化合物はモノクローナル抗体である。これらの接着分子のいくつ
かの配位子結合機能を認識し阻止するモノクローナル抗体類は好中球媒介炎症の
臨床での効果的なインヒビターであることが報告されている。特に、好中球表面
上のCD18インテグリンコンプレックス(即ち、CD11a/CD18、CD
11b/CD18およびCD11c/CD18)のCD18サブユニットに対す
るモノクローナル抗体類は動物モデルで、再潅流によって誘発される肺浮腫〔ホ
ーガン他(Horgan)、アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(Am.J
.Physiol.)、第259巻、第L315−L319頁、1990年〕、出血性シ
ョックにより誘発される器官傷害〔マイルスキー他(Mileski)、サージェリー
(Surgery)、第108巻、第206−212頁、1990年〕、虚血/再潅流
に伴う心筋傷害〔ウィンキスト他(Winquist)、サーキュレーション、III−7
01、1990年〕、耳の虚血/再潅流に伴う浮腫および組織破壊〔ヴェッダー
他(Vedder)、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・
サイエンシズ、第87巻、第2643−2646頁、1990年〕、細菌性骨膜
炎により生じる脳浮腫および脳死〔チュオマーネン他(Tuomanen)、ジャーナル
・オブ・エキスペリメンタル・メディシン、第170巻、第956−968頁、
1989年〕、内毒素ショックによる血管の障害および死〔トーマス他(Thomas
)、エフ・エイ・エス・イー・ビ・ジャーナル(FASEB J.)、第5巻、
第A509頁、1991年〕およびインドメタシン誘発胃障害〔ウォレス他(Wa
llace)、ガストロエンタロロジー(Gastroenterology)、第100巻、第87
8−883頁、1991年〕を含む種々の好中球媒介組織傷害を抑制することが
示されている。
CD11bサブユニットを狙いとしたモノクローナル抗体が記載されている。
例えばつぎのものを参照:トッド、アール・エフ他(Todd,R.F.)、米国特許第
4,840,793号明細書(1989.6.20);トッド、アール・エフ他(To
dd,R.F.)、米国特許第4,935,234号明細書(1990.6.19);シュ
ロッスマン、エス・エフ他(Schlossman,S.F.)、米国特許第5,019,648
号明細書(1991.5.28)およびルッシェ、ジェイ・アール他(Rusche)、
国際出願第WO92/11870号(1992.7.23)。CD18サブユニッ
トを狙いとしたモノクローナル抗体が記載されている。例えばつぎのものを参照
:オーファーズ、ケイ・イー(Aufors,K.E.)、米国特許第4,797,277号
明細書(1989.1.10);ライト、エス・ディー他(Wright,S.D.)、欧州
特許出願第346,078号(1989.12.13);ロー、エム他(Raw,M.)
、欧州特許出願第438,312号(1991.7.24);ロー、エム他(Raw,
M.)、欧州特許出願第440,351号(1991.8.7);ライト、エス・デ
ィ他(Wright,S.D.)、米国特許第5,147,637号明細書(1992.9.1
5)およびウェグナー、シー・ディー他(Wegner,).、欧州特許出願第507,
187号(1992.10.7)。
他の接着分子に対する抗体類も抗炎症特性を有することが報告されている。C
D11a/CD18およびCD11b/CD18のカウンター−レセプター、I
CAM−1を認識するモノクローナル抗体は同種心臓移植患者の生存を延長する
こと〔フラビン他(Flavin)、トランスプランテーション・プロシーディングス
(Transplant.Proc.)、第23巻、第533−534頁,1991年〕および化
学的に誘発された肺の炎症を抑制すること[バートン他(Barton)、ジャーナル
・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)、第143巻、第1278−1282頁
、1989年〕が報告されている。更に、抗セレクチンモノクローナル抗体類も
好中球媒介炎症の動物モデルで有効であったとして報告されている。L−セレク
チンに対するモノクローナル抗体類は炎症を起こしている皮膚〔ルインション他
(Lewinshon)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)、第138巻
、第4313頁、1987年〕および炎症を起こしている腹水〔ジュティラ他(
Jutila)、ジャ
ーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)、第143巻、第3318頁、1
989年;ワトソン他(Watson)、ネイチャー、第349巻、第164頁、19
91年〕への好中球の移動を妨げることが報告されている。報告はまた炎症を起
こしている肺組織への好中球の浸潤が抗E−セレクチンモノクローナル抗体によ
って抑制されることを記載している〔ミュリガン他(Mulligan)、ジャーナル・
オブ・クリニカル・インベスティゲイション(J.Clin.Invest.)、第88巻、
第1396頁、1991年;ギュンデル他(Gundel)、ジャーナル・オブ・クリ
ニカル・インベスティゲイション(J.Clin.Invest.)、第88巻、第1407
頁、1991年〕。接着タンパク質に対するモノクローナル抗体の活性に関する
報告は、抗炎症性薬剤として好中球接着インヒビターを使用する実用可能性を示
していると言われているが、このようなこのようなモノクローナル抗体を治療薬
として使用するには更に評価が必要である。
遺伝子工学によって得られる可溶性接着レセプター類は、抗炎症性化合物とし
て提案されている。可溶性レセプターとは膜間および細胞内領域がDNA組替え
技術によって欠失しているものであるが、これが内皮細胞への好中球接着を抑制
することが報告されている。組替え可溶性接着分子の機能的使用を、CD11b
/CD18を用いておこなったもの〔ダナ他(Dana)、プロシーディング・オブ
・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ、第88巻、第3106−
3110頁、1991年〕およびL−セレクチンを用いておこなったもの〔ワト
ソン他(Watson)、ネイチャー1991年〕が報告されている。
最近、「ロイメディン(Ieumedins)」と集合的に呼ばれる抗白血球化合物の
新しい一群が報告された。これらの化合物は、臨床でT−リンパ細胞および好中
球が炎症部位へ入るのを阻止することを報告している。ロイメディン類の作用機
構は明確でないが、これらが好中球の活性化を抑制して機能するのでないという
証拠がある〔バーチ他(Burch)、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・
アカデミー・オブ・サイエンシズ、第88巻、第355頁、1991年〕。ロイ
メディン類が接着分子と直接干渉することにより好中球の侵入を抑制するかどう
かはまだ確かめられていない。
機構は未だはっきりしないままであるが、宿主の免疫性および炎症応答性を調
節することによって、寄生虫がその宿主の中で生存すると言われている〔レイド
、ダブリュ・エス(Leid,W.S.)、ヴェタリナリ・パラシトロジー(Veterinary
Parasitology)、第25巻、第147頁、1987年〕。これに関して、寄生
虫−誘発免疫抑制がある種のげっ歯類動物モデルを用いて報告されている〔ソウ
ルスビー他(Soulsby)、イムノロジー・レターズ(Immunol Lett.)、第16
巻、第315−320頁、1987年〕。免疫的攻撃からのがれるための蠕虫に
よる宿主免疫系の調節に関する様々な見解についての総説が近年出された(マイ
ゼルス他(Mizels)、ネイチャー、第365巻、第797−805頁、1993
年)。
様々な寄生虫が宿主の好中球に対して影響を及ぼすことが報告されている。例
えば、条虫類から単離したタンパク質、テエニア・タエニエフォルミス(Taenia taeniaeformis
)はウマ好中球類の化学走性および化学動性を抑制し、また好中
球凝集を抑制することが報告されている〔シー・スケット他(C.Suquet)、イン
タナショナル・ジャーナル・オブ・パラシトロジー(Int’lJ.Parasitol.)、
第14巻、第165頁、1984年;レイド、アール・ダブリュ他(Leid,R.W.
)著、パラサイト・イムノロジー(Parasite Immunology)、第9巻、第195
頁、1987年;およびレイド、アール・ダブリュ他、インタナショナル・ジャ
ーナル・オブ・パラシトロジー、第17巻、第1349頁、1989年〕。条虫
、エキノコッカス・ムルチオキュラリス(Echinococcus multiocularis)に感染
したネズミから単離した腹膜好中球は感染後時間が経つにつれて、寄生虫抗原お
よび非特定の化学誘因物質(chemoattractant)への移動能力を喪失することが
報告されている〔アルカルミ、ティー他(Alkarmi,T.)、エクスペリメンタル
・パラシトロジー(Exptl.Parasitol.)、第69巻、第16頁、1989年〕
。線虫、トリキネラ・スピラリス(Trichinella spiralis)は、化学走性および
p−ニトロブルーテトラゾリウム還元を抑制する因子を排除または分泌する(例
えば、酸化性代謝物の放出)が、人の好中球の化学動性を強めることが報告され
ている〔ブラッシ、エフ他(Bruschi,F.)、ウィアドモッシ・パラツィトロギ
ツン(Wiadomosci Parazytologiczne)、第35巻、第391頁、1989年〕
。線虫、トリキネラ・
スピラリスに感染した人の血清は白血球の化学走性および貪食作用を抑制すると
報告されている〔ブラッシ、エフ他著、ジャーナル・オブ・パラシトロジー(J.
Parasitol.)、第76巻、第577頁、1990年〕。マダニ、イクソデス・ダ
ミニ(Ixodes dammini)の唾液は好中球の機能を抑制することが報告されている
〔リベイロ他(Ribeiro)、エクスペリメンタル・パラシトロジー、第70巻、
第382頁、1990年〕。条虫エキノコッカス・グラニュロサス(Echinococc us granulosus
)によって分泌されるタンパク質は人の好中球化学走性を抑制す
ることが報告されている〔シェパード、シー・ジェー他(Shepard,J.C.)、モ
レキュラー・アンド・バイオケミカル・パラシトロジー(Mol.Biochem.Parasi
tol.)、第44巻、第81頁、1991年〕。
病原の侵入に対する宿主防御機構における他の成分は好酸球である。好酸球と
好中球は、貪食能を有し、直接もしくは間接的に病原となる物質に対して毒性と
なる化合物の放出能を有するという点で両者は機能的には同一である。好酸球は
その形態的特徴、成分、産生物および特別な疾患との関与によって好中球から区
別される。好酸球はインビトロにおいてバクテリアに対する殺傷能力が認められ
ているにもかかわらず、この種の白血球単独ではインビボにおいてはバクテリア
による感染からの防御には不十分であると考えられている。代わりに、好酸球は
寄生回虫のごとき大型の生物に対する初期防御に役立つと考えられている(ブッ
ターワース(Butterworth AE)、1984;アドバンス・イン・パラシトール(Adv.
Parasitol.)23:143-235)。さらに、好酸球はある種の炎症性疾患において主要
な役割を果たし得ることは広く支持されている。特に好酸球から放出される物質
の主なものは塩基性タンパク質、好酸球カチオン性タンパク質および好酸球誘導
性ニューロトキシンを含む、全体でカチオン性顆粒タンパク質として知られてい
るものであり、喘息(グレイクとアドルフソン(Gleich GJ and Adolphson,CR
,1986;アドバンス・イン・イムノロジー39:177-253)、炎症性腸疾患(ヘーレ
ン(Hallren,R)1989;アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン86:56-64)
およびアトピー性皮膚疾患(ツダら、1992ジャーナル・オブ・ダーマトロジー19
:208-213)。さらに、スーパーオキシドアニオン類、ヒドロキシルラジカル類お
よびシングレット酸素のご
とき他の好酸球産生物もまた、炎症性疾患症状において宿主組織に対するダメー
ジを与えると考えられている(パトリシア(Petreccia,DC)ら、1987、ジャー
ナル・オブ・ロイコサイト・バイオロジー41:283-288;カノフスキー(Kanofsky
,JR)ら、1988;ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー263:9692-96
96)。
好酸球が媒介する炎症疾患における初期段階では好酸球が血管のコンパートメ
ントから組織へ移動すると考えられている。この血管浸出工程においての第1段
階は、好酸球の血管内皮口径への接着であると報告されている。好酸球−内皮細
胞接着機構は好中球の接着機構ほど詳しくは知られていないが、好酸球の表面上
のインテグリンのCD11/CD18ファミリーの一員が好酸球−内皮接着に関
与していることが報告されている(ラマス(Lamas,AM)ら、(1988)ジャーナ
ル・オブ・イムノロジー、140、1500;ワルシュ(Walsh,GM)ら、(1990)イム
ノロジー、71、258)、および内皮細胞のカウンターレセプターはICAM−1
様であることが報告されている(ウエグナーCDら、1990;サイエンス247:456-4
59)。VLA−4(ベリー・レート抗原4、a4b1)として知られている、好
酸球、リンパ球および単球上には存在するが好中球上には存在しない第2のイン
テグリンは、内皮細胞表面上に発現しているVCAM−1(血管細胞接着分子−
1)へ結合することによって好酸球の接着に寄与していると考えられる(ドブリ
ナ(Dobrina,A.)ら、1991、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲ
ーション88:20)。内皮細胞単層膜のIL−1処理によってヒトの好塩基球、好
酸球および好中球に対する接着性が向上することが報告されているが、この内皮
細胞をVACM−1に対する抗体で処理すると好塩基球および好酸球の両方の接
着は抑制されるが、好中球の接着は抑制されないことが報告されている。VAC
M−1に対するモノクローナル抗体は刺激された内皮に対するリンパ球および単
球の接着を抑制することもまた報告されている(カルロス(Carlos)ら、(1990
)ブロッド、76:965-970);ライス(Rice)ら、ジャーナル・オブ・エクスペリ
メンタル・メディシン(1990)、171:1369-1374)しかし、好中球に対する接着
は抑制しない。
好酸球の媒介する炎症を治療するためのアプローチは、好中球の媒介する炎症
を治療するためのアプローチと同じである。例えば、好酸球の媒介する炎症のた
めの強力な治療薬として研究されているものにはグルココルチコイド(エバンス
(Evans,PM)ら、1993、ジャーナル・オブ・アレルギー・クリニカル・イムノ
ロジー91:643-650)。好中球の機能を調節すると報告されている他の剤の場合も
、これらの剤は比較的非特異的であり毒性を有することから最適なものではない
と認められている。抗好酸球治療のための第2のアプローチは、好酸球の血管内
皮への接着を直接的に抑制する化合物を用いるものである。動物の喘息モデルに
おいて、ICAM−1に対するモノクローナル抗体が組織内への好酸球の侵入を
抑止したことが報告されている。ウエグナーら、(1990)サイエンス、247:456-
459。ICAM−1およびその機能性誘導体が抗炎症剤として提案されている。
アンダーソンら、欧州特許願第314,863号(1988年4月29日);ウ
エグナーら、国際出願第WO90/10453(1990年9月20日)。
しかしながら、好中球および好酸球の機能に対する、特に血管内皮への接着機
能に対する高度に特異的で強力な抑制剤の必要性が、異常な顆粒球媒介炎症の治
療のために残っている。本発明は好中球および好酸球の活性、特にこれらの顆粒
球が血管内皮細胞へ接着する活性に対する強力で特異的な抑制剤で、アンサイロ
ストマ・カニナム(Ancylostoma caninum))のごとき鉤虫および関連種から誘
導される剤を提供する。発明の要旨
他の因子の中で、本発明は、本発明の好中球抑制因子が抗炎症性治療薬の新世
代の発展の先駆段階となるという発見に基づいている。本発明により、炎症性応
答を特異的に抑制することにより炎症性疾患の初期治療が可能となるであろう。
この新規なアプローチによる治療の利点は、好中球抑制因子の特異性によるもの
であり、ステロイド類、カテコールアミン類、プロスタグランジン類、および非
ステロイド系抗炎症剤のような現行の臨床治療の薬剤使用とは異なる。現行使用
されている治療薬類は、炎症過程に加えて多くの生物的過程を非特定的に標的と
する全身的効果のために、効率が低く且つ多くの逆反応がある。それにもかかわ
らず、最適なものではないが、抗炎症薬の広範なリストの存在とこの分野の研究
において医薬業界によって費やされた全資金とは、この医学的需要が相当なもの
であることを教えており、新規で高度に特定的な好中球抑制因子の本発見は重要
な適用性があることを暗示している。
発明の背景において述べたように炎症性応答によって、弱い関節炎や喘息から
生命を脅かすようなショックに至る幅広い臨床的兆候が起こり得る。これらの疾
患が強烈であること、非常に多くの人が苦しんでいることおよび適当な治療法が
ないことから、革新的な治療に対するニーズは、かなえられずに長い間求められ
ていた。本発明の好中球抑制因子はこのような革新的技術を代表し、現在国際医
学および医薬研究学会で幅広く探求されている生命を救うことのできる治療の可
能性を提供する。
さらに、好中球活性が関与していることが明かにされている所望しないおよび
/または異常な炎症性症状が関与している無数の症状があるという観点からも、
強力で特異性の高い好中球の機能を抑制する、特に血管内皮への接着を抑制する
剤が、好中球の媒介する異常な炎症の治療のために望まれている。本発明はこの
要求を、鉤虫、(アンサイロストマ・カニナム(Ancylostoma caniumu)のごと
き)および関連種から誘導された、好中球活性、特に好中球の血管内皮細胞への
接着に対する強力で特異的な抑制剤を開示する。
本発明は好中球抑制因子(NIF)および好中球抑制因子を豊富に含む組成物
を狙いとしたものである。好中球抑制因子は天然のソースから単離しても、組み
替え手法によって合成してもよい。好中球抑制因子は抗体、インテグリンまたは
セレクチンファミリーの一員ではなく、接着性タンパク質の免疫グロブリンスー
パーファミリーの一員でもないタンパク質であり、寄生虫から単離したときには
糖タンパク質である。ある発現システムによって作り出される組替えNIF類は
グリコシル化されている場合もいない場合もあり、またはグリコシル化の程度も
様々である。しかし、かかるNIF類がグリコシル化されていてもいなくても本
発明の範囲内である。本発明の好中球抑制因子は好中球抑制活性を示す。
ある観点から、本発明のNIFはその全アミノ酸配列中の一部として以下に示
す群から選択されるアミノ酸配列:
(a) Arg−X1−X2−Phe−Leu−X3−X4−His−Asn−
Gly−Tyr−Arg−Ser−X5−Leu−Ala−Leu−Gly−H
is−X6−X7−Ile
(式中、X1はLeuまたはArgである;X2はGln、LysまたはArgで
ある;X3はAlaまたはArgである;X4はLeuまたはMetである;X5
はLys、Arg、LeuまたはIleである;X6はValまたはIleであ
る;X7はSer、GlyまたはAsnである)、
(b) Ala−X8−X9−Ala−Ser−X10−Met−Arg−X11−
Leu−X12−Tyr−Asp−Cys−X13−Ala−Glu−X14−Ser
−Ala−Tyr−X15−Ser−Ala
(式中、X8はHisまたはProである;X9はThr、ArgまたはSerで
ある;X10はArgまたはLysである;X11はIleまたはTyrである;X12
はAsp、LysまたはGluである;X13はAspまたはGluである;X14
はGly、LysまたはArgである;X15はGlu、Met、Thrまたは
Valである)、
(c) Ser−X16−Phe−Ala−Asn−X17−Ala−Trp−A
sp−X18−Arg−Glu−Lys−X19−Gly−Cys−Ala−Val
−Val−X20−Cys
(式中、X16はAsnまたはAspである;X17はValまたはLeuである;
X18はAlaまたはThrである;X19はLeu、ValまたはPheである;
X20はThr、LysまたはAsnである)、
(d) His−Val−Val−Cys−His−X21−X22−Pro−L
ys
(式中、X21はTyrまたはIleである;X22はGlyまたは残基のないこと
を示す)、
(e) Ile−Tyr−X23−X24−Gly−X25−Pro−Cys−X26
−X27−Cys−X28−X29−Tyr
(式中、X23はThr、Ser、LysまたはGluである;X24はThr、V
alまたはIleである;X25はVal、LysまたはThrである;X26は
Arg、SerまたはAspである;X27はAsn、Gly、AspまたはAr
gである;X28はAsn、SerまたはThrである;X29はGly、Gluま
たはAspである)、および
(f) Cys−X30−X31−Asp−X32−Gly−Val−Cys−X33
−Ile
(式中、X30はHis、IleまたはAsnである;X31はAla、Proまた
はAspである;X32はGlu、Val、AspまたはIleである;X33はI
le、ValまたはPheである)
を有する。かかるNIFは好中球抑制活性を示す。
他の観点から、本発明は特定のアスパラギン残基がグルタミンで置換されてい
るNIFの変異体も含む。この置換によってこのNIFのグリコシレーションが
低下すると考えられる。変異NIFには全アミノ酸配列の一部として上記(a)
から(f)に示したペプチドからなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する
。かかるNIFは好中球抑制活性を有する。
他の観点から、本発明は全アミノ酸配列の一部として、特定の核酸プローブに
対してハイブリダイズするのに十分な相補性を有する核酸配列によってコードさ
れるアミノ酸配列を含有するNIFを提供する。かかるNIFは好中球抑制活性
を示す。本発明の範囲内には、かかる核酸プローブも含有する。
他の観点から、本発明はNIFをコード化し、本願で記載したごとく単離され
た核酸分子を提供する。かかる単離された核酸分子にはNIFをコード化する核
酸配列を含む発現ベクターを含有している。本発明にはまた、かかる発現ベクタ
ーによって形質転換された宿主細胞も含む。
他の観点から、本発明は生物活性なNIFを製造する方法、すなわちNIFが
発現され、所望により分泌されるような方法を提供する。本発明にはさらにこれ
らの方法によって製造されるNIFも含まれる。
他の観点から、本発明はcDNAライブラリーをNIFを含有していると予測
されるソースから調製し、本発明のあるオリゴヌクレオチドプローブを該ソース
からの核酸分子とハイブリダイズさせる工程を含むNIFの製造方法を提供する
。
かかるNIFは好中球抑制活性を示す。本発明にはまた、これらの方法にて製造
されるNIFも含有する。
他の観点から、本発明はある試料においてNIFをコード化する核酸分子の存
在を検索する方法を提供する。この方法にはかかる核酸分子が含有されていると
考えられる試料へ本発明のプローブを適用し、ハイブリダイズしたプローブの存
在を検出する工程を含む。
他の観点から、本発明はNIFに結合するモノクローナル抗体を提供する。本
発明にはまた、かかる抗体を産生するハイブリドーマセルライン、かかるモノク
ローナル抗体を用いたNIFの精製方法および試料中のNIFの存在をかかる抗
体を用いて検出する方法も含む。
他の観点から、本発明はCD11b/CD18受容体への結合において、NI
Fと競合するNIFのミミックを試料中から検出する方法を提供する。かかる方
法には試料をCD11b/CD18受容体と接触させる工程を含む。本発明はさ
らにCD11b/CD18のI−ドメイン部分への結合においてNIFと競合す
るNIFのミミックを試料中から検出する方法を提供するが、この方法はCD1
1b/CD18受容体のI−ドメインを有する組替えペプチドを試料に接触させ
る工程を含む。かかるNIFのミミックは好中球抑制活性を示す。本発明にはま
た、これらの方法によって検出されるNIFミミックも含む。
他の観点から、本発明はNIFがCD11b/CD18受容体に結合するのを
妨害するNIFアンタゴニストを試料中から検出する方法を提供する。かかる方
法には試料をCD11b/CD18受容体へ接触させる工程を含む。さらに本発
明はCD11b/CD18のI−ドメイン部分への結合においてNIFと競合す
るNIFアンタゴニストを試料中から検出する方法を提供するが、この方法はC
D11b/CD18受容体のI−ドメインを有する組替えペプチドを試料に接触
させる工程を含む。かかるNIFのアンタゴニストはそれ自身では好中球抑制活
性は示さない。本発明にはまた、これらの方法によって検出されるNIFアンタ
ゴニストも含む。
他の観点から、本発明はNIFを用いて炎症性疾患を治療する方法、特に炎症
応答を抑止もしくは減弱させる方法を提供する。かかる方法には哺乳動物にNI
Fの治療効果量を投与することを含む。
本発明の他の特性および有利さは以下の説明、好ましい態様および請求の範囲
の記載からより明らかとなるであろう。定義
本発明について、および本明細書で使用するように、以下の用語は他に特に断
らない限り、以下に示す意味のものとする。
「アミノ酸」という語は天然のL−アミノ酸を示す。天然のアミノ酸はその名
前もしくは以下に示す略号で示す
「アミノ酸残基」という語は-NH-CH(R)-CO-(式中、Rは各アミノ酸
基で異なる側鎖基を示す)で示される基である。環状アミノ酸においては、残基
は
(式中、xは1、2または3であり、それぞれアゼチジンカルボン酸、プロリン
またはピペコール酸残基を示す)で示される基である。
「アイソフォーム」という語は単一生物から得られた関連タンパク質のファミ
リーであって、アミノ酸残基の同一配列中に可変性の配列が散在している配列を
有しているものをいう。
「核酸」という語はデオキシ核酸もしくはリボ核酸いずれかのポリマーであっ
て、一本鎖または2本鎖のものをいう。
「単離された核酸」という語は、生物化学的または分子生物学的操作、例えば
遠心分離、クロマトグラフ法、電気泳動、ハイブリダイゼーションおよび類似の
方法によって単離された核酸をいう。
「NIFのミミック」という語は、小さな分子、ペプチド、ペプチド類縁体ま
たはタンパク質であって、CD11b/CD18受容体またはCD11b/CD
18受容体のI−ドメイン部分へNIFが結合するのに競合するものをいう。N
IFのミミックはまた、好中球抑制活性、好酸球抑制活性またはかかる活性を両
方有することでも特徴つけられる。
「NIFアンタゴニスト」という語は、小さな分子、ペプチド、ペプチド類縁
体またはタンパク質であって、CD11b/CD18受容体またはこのレセプタ
ーのI−ドメイン部分へNIFが結合するのを阻止するが、それ自身は有意な好
中球抑制活性を全く示さないものをいう。NIFアンタゴニストはNIFのCD
11b/CD18受容体またはCD11b/CD18受容体のI−ドメイン部分
への結合を、NIFのレセプターへ結合するのに必要な部位へ結合して、結合部
位を立体的に隠す効果により、またはNIF上のある部位に結合することにより
結合に必要な部位のコンフォメーションが変化して結合が実質的に弱まったりま
たは排除されたりするようにして、阻止する。図面の簡単な説明
図1は実施例2(B)のコンカナバリンAセファロース(Concanavalin A Sep
harose)カラム上で実施された実施例2(A)に記載されたごとくして得られた
鉤虫溶解物(lysate)のクロマトグラムである。
図2は実施例2(C)のスーパデックス(Superdex)200カラム上で実施さ
れたコンカナバリンAで精製された鉤虫溶解物のクロマトグラムである。
図3は実施例2(D)のヒドロキシアパタイトセラミックスカラム上で実施さ
れたコンカナバリンA/スーパデックスで精製された鉤虫溶解物のクロマトグラ
ムである。
図4は実施例1(E)に記載されているようにコンカナバリンA、スーパデッ
クス200およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって単離された
鉤虫溶解物の逆相HPLCのクロマトグラムである。
図5はHPLC単離物とある分子量標準物質をSDS−ゲル電気泳動を用いて
実施したゲルパターンである。
図6は本発明の精製好中球抑制因子のレーザー−デソープションタイム−オブ
−フライトマススペクトロメトリーである。
図7はイヌの鉤虫から単離した好中球抑制因子のタンパク質分解したフラグメ
ントのアミノ酸配列である。
図8は好中球抑制因子cDNA(クローン 1FL)の遺伝コード指定領域の
ヌクレオチド配列およびこれより予想されるアミノ酸配列である。
図9はいくつかの好中球抑制因子イソ型クローンの予想アミノ酸配列の並びを
示す。
図10はイヌの鉤虫から単離された好中球抑制因子を炎症をもった動物モデル
に腹腔内投与した場合の、種々の投与量での抗炎症効果を示す。
図11はイヌの鉤虫から単離された好中球抑制因子を炎症をもった動物モデル
に腹腔内投与または静脈投与した場合の抗炎症効果を示す。
図12はピキア・パストリス(Pichia pastoris)内で生成した組替え好中球
抑制因子を炎症モデル動物にイン・ビボ投与した場合の抗炎症効果を示す。
図13はTNF−刺激HUVEC単層への好酸球の接着に対する組替えNIF
の抑制効果を示す。データは1実験3回測定したものの平均値である。
図14は発現ベクターPma5−NI1/3の遺伝子地図を示す。このベクタ
ーは以下の成分を有する:(i)ColE1型複製起点(ORI);(ii)複
製起点を含む糸状ファージf1のインターシストロン領域(f1 ORI);(
iii)アンピシリン耐性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子(bla);(
iv)単一核酸置換の結果のアンバー翻訳停止コドンを有するクロラムフェニコ
ールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat−am);(v)ファージラム
ダPRプロモーター;(Vi)小さなリーダーシストロン;(vii)メチオニ
ルNIFコード化領域および(viii)2つの縦列に配置されたファージfd
の中心転写ターミネーター(fdT)コピー。Met−NIF発現カセット(拡
大された領域)の配列は図15に示した。ベクターのPma/cファミリーはす
でに開示されている。スタンセンズら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ17、
4441-4454、1989参照。
図15はPma5−NI1/3の2−シストロンMet−NIF発現カセット
のヌクレオチド塩基配列を示す。コード化されているメチオニン化NIFおよび
リーダーペプチドは1文字標記により示した。以下の性質が認められる:−35
および−10領域のファージラムダPRプロモーター領域、転写開始点、リーダ
ーシストロンに先立つシャイン−ダルガルノ配列(SDcro)およびMet−N
IF遺伝子(SD)、およびいくつかの制限部位。PCRで増幅したNIF−1
FLコード領域を、NcoIで開裂させたレシピエントベクターへライゲートし
てベクターを調製し、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントで処理し、
その後HindIIIで消化した(両方のライゲーション点を示した)。構築ス
キームでは、NIFコード領域の5’末端をATG開始コドンへ結合させる。
図16は鉤虫からのNIFタンパク質のヌクレオチド配列とアミノ酸配列の比
較を示す。NIF−1FLヌクレオチド配列に番号をつけた;この番号は他の遺
伝子の部位を指摘する際にも用いる。PCR−NIF17およびPCR−NIF
20はPCR操作によって回収した:PCRプライマー(と合致する領域)をイ
タリック体で示した。AcaNIF7およびNIF−1FL9はただひとつの部
位においてのみ異なっている(GからEへの置き換え;ヌクレオチド置換は64
7位に存する)。これらの配列のうちで変わりやすいままであるのは、PCR−
NIF20の660位である。ポリ(A+)テイルはNIF−1FL配列には認
められなかった。3’非翻訳領域の下線をひいた配列(UAUAAAおよびAG
UAAA)はポリアデニレーションシグナルとして働くであろう。NIF−1F
L、NIF−1FL9およびAcaNIF24のcDNAのみが全分泌シグナル
を有している。強力なN−グリコシレーション部位(N−X−T/S)に下線を
引いた。
図17は組替えNIF−1FLの強さを、組替えタンパク質であるAcaNI
F6およびAcaNIF24と比較したものを示す。この3つの精製したタンパ
ク質を、実施例1(E)の過酸化水素放出アッセイ(パネルA)および実施例1
(C)の好中球−プラスチック接着アッセイ(パネルB)にて試験した。
図18は組替えNIF−1FLを組替えAcaNIF4と、実施例1(F)の
競合結合アッセイにて比較した結果を示す。固定量のビオチン化NIF−1FL
を含有する試料、および様々な量のAcaNIF4またはNIF−1FLのいず
れかを含有する試料を、固定化LM2/Mac−1複合体上でアッセイした。結
合したビオチン化NIF−1FLを、アルカリ性ホスファターゼと複合体を形成
しているエキストロアビジン(ExtrAvidin)で調べた。
図19はエー・セイラニカム(A.ceylanicum)から誘導したNIFタンパク質
(AceNIF3)のアミノ酸配列を示す。下線を付した配列(GAATTCC
G)は、cDNA上に付加されたEcoRIリンカー由来である。ポリアデニル
化シ
グナル(AAUAAA)として機能するであろう配列もまた指摘した。コード化
されるタンパク質は10個の強いN−グリコシレーション部位(N−X−T/S
)を有する。
図20はエー・セイラニカムからのNIFタンパク質(AceNIF3)を表
示するファージのMac−1への結合を示す。LM2/Mac−1複合体にて被
覆したウエルを最初に様々な量のピキア(Pichia)により産生されたRNIF1
(もしくはコントロール群のバッファー)と共に最初にインキュベートし;30
分後、1010個のNIF−1FLもしくはAceNIF3を表示しているウイル
スを添加し、インキュベーションをさらに90分間続けた。保持されたファージ
をウサギ抗ファージ血清およびヤギ抗ウサギアルカリ性ホスファターゼ複合体に
よって検出した。様々な成分を1mM MgCl2、1mM CaCl2、および
0.1%スキムミルク(ファージ試料は1%スキムミルクに含まれている)を含
有するPBS内でインキュベートした。結合しなかった物質を1mM MgCl2
、1mM CaCl2、0.1%ツイン20および0.02%チメロサルを含有す
るPBSにて洗浄して除いた。結合したファージの相対量をOD405nmの測定値
に基づき、コントロール実験を100%として計算した。
図21は機能性NIF−1FLをPAN−NIF−1FLを用いてファージの
結合した形状または「可溶性」の形状で合成する方法を示す。PAN−NIF−
1FLベクターには以下の成分を有する:
1)Placプロモーターの転写調節の下にあるNIF−1FL含有融合遺伝子
。この融合遺伝子はpelB分泌シグナル、NIF−1FLコード領域、糸状フ
ァージM13遺伝子III(gIII)からなる。NIF−1FLとGIII配
列の間に、TAGアンバー翻訳停止コドンがある。NIF−1FLコード領域の
クローニングに用いたNcoIびNotI部位を指摘した。
2)100μ/mlのアンピシリンまたはカルベニシリンに対して耐性を付与す
るbla遺伝子(bla/ApR)。
3)糸状ファージM13複製起点を含有する遺伝子内部領域(M13−IR/O
RI)。
4)ColE1型ラスミドを操作する複製起点(ColE1−ORI)。TG1
のごときsu+バクテリア内では、PAN−NIF−1FLファージミドベクタ
ーはNIF−1FL−pgIII融合タンパク質(pgiii;GIIIの産生物
)をコードしており、TG1[PAN−NIF−1FL]細胞がM13−VCS
「ヘルパー」−ファージ(スタータジーン)に感染される際に糸状ウイルス内に
取り込まれる。su+株であるWK6には、PAN−NIF−1FLが遊離の(
ファージの結合していない)RNIFIの合成を支配している、これは抗NIF
Mab3D2およびMac−1に結合する。
TG1:△(lac−proAB)、hsd△5(rk -mk -)、thi、sup
E/F’[traD36、lacIq、lacZ△M15、proA+B+]。
WK6:△(lac−proAB)、galE、strA/F’[lacIq、
lacZ△M15、proA+B+]。
図22はNIF−1FLを表示するファージのELISAの結果を示す。NI
Fを表示するファージ(または非表示コントロールファージ、たとえばM13−
VCS;それぞれの実験において5×109個のファージ粒子を添加した)をM
ac−1(LM2−セファロースにて免疫精製したものを用いた)、LM2/M
ac−1、LM2または非中和抗NIFモノクローナル抗体3D2で被覆したマ
イクロタイターウエル内でインキュベートした。いくつかの実験においてはファ
ージの結合していない可溶性NIF(sNIF)を上記固定化物質(1μM)と
ファージの添加前30分間インキュベートした。結合したファージはウサギ抗M
13血清およびアルカリ性フォスファターゼ複合ヤギ抗ウサギ血清によって調べ
た。
図23はAcaNIF1とその変異体AcaNIF1/△f、Gl1−7およ
びAcaNIF1/△Gl1−5の、実施例1(C)に示した好中球プラスチッ
ク接着アッセイにおける強さを比較したものである。
図24は実施例30に示したごとき、ビオチン化したrNIFの、リンパ球、
単球および顆粒球への結合を示す。
図25はNIFの結合とCD11b/CD18の発現の直接的な一致を、2蛍
光による抹消リンパ球成分のフローサイトメトリー分析により示したものであっ
て実施例31に記載したものである。発明の詳細な説明 好中球抑制因子
本発明はあらゆる観点において好中球抑制因子(NIF)組成物、すなわち好
中球の活性を抑制するタンパク質であって抗体、インテグリン、セレクチンもし
くは接着性タンパク質のイムノグロブリンスーパーファミリーではなく、寄生虫
より単離した場合には糖タンパク質である物質に関する。あるの発現系によって
製造される組替えNIFは糖タンパクではない。かかる非グリコシル化NIFも
本発明の範囲内に入る。
ここでいう好中球抑制活性には以下の好中球の活性のうちの1または複数を抑
制することを含むが、これらに限定されるものではない:過酸化水素の遊離、ス
ーパーオキサイドアニオンの遊離、ミエロパーオキシダーゼの遊離、エラスター
ゼの遊離、好中球の同型凝集、プラスチック表面への接着、血管内皮細胞への接
着、ケモタキシス、内皮細胞の単層膜を通っての移行および貪食。好中球活性の
抑制を評価する好適なアッセイとしては、インビトロで行われるアッセイであっ
て、好中球活性の抑制が、血管内皮細胞への好中球の接着、好中球からの過酸化
水素の放出、同型凝集またはプラスチック表面への好中球の接着を評価するアッ
セイによって証明されるアッセイを含む。好ましいNIFは、上述の好中球活性
のアッセイによって測定した場合に、IC50が500nMまたはそれ以下、より
好ましくは100nM以下のものである。IC50値は、測定された活性の50%
を抑制するNIFの濃度である(実施例1参照)。
本発明のNIFはさらに、CD11b/CD18受容体への結合能を有してい
ることでも特徴付けられる(実施例14参照)。NIFとCD11b/CD18
との結合を測定する好ましいアッセイ法を実施例1(F)に記載している。
本発明のNIFはさらにCD11b/CD18受容体のI−ドメイン部位への
結合能を有する(実施例32参照)。NIFのIドメイン部分に対する結合を測
定するための好ましいアッセイを実施例32に示した。
本発明のNIFはさらに好酸球抑制作用を有することによっても特徴付けられ
る。好酸球抑制活性を調べるための好ましいアッセイは、好中球の血管内皮細胞
への付着を測定するインビトロアッセイであって、実施例29に示したものであ
る。好ましいNIFは、かかる好酸球活性のアッセイをした場合にIC50が50
0nM以下、より好ましくは100nM未満のものである。(a)濃縮組成物
他の観点から、本発明はNIFが濃縮されている組成物、NIFからなる組成
物、およびNIFがクロマトグラフまたは分子生物学的方法もしくは両方の方法
の組み合わせによって回虫、好ましくは線虫から単離されたものである組成物を
提供する。
好ましい寄生虫には偏形動物門(phyla Platyhelminthes)、線虫類(Nematod
a)、ネマトモルファ(Nematomorpha)および鉤頭虫類(Acanthocephala)の種
から選択される寄生虫が含まれる。特に好ましいソースとしては、例えば感染し
たイヌに見られるような内部寄生鉤虫種が挙げられる。あるNIFのアイソフォ
ームは、アンサイロストマ・カニナム(Ancy1ostoma caninum)のごときイヌ鉤
虫アンサイロストマ(Ancylostoma)種により産生される。他の適当なソースは
、内部寄生虫種のトキソカラ・カニス(Toxocara canis)である。実質的に同一
の化合物が、他の門の他の内部寄生虫からと同様、他の線虫種からも得られる。
NIFの好ましいソースには寄生体、寄生蠕虫類(parasitic worms)、好まし
くは内部寄生線虫類および特に、アンサイロストマ・ブラジリエンス(Ancylost oma
braziliense)、アンサイロストマ・カニナム(Ancylostoma caninum)、ア
ンサイロストマ・セイラニカム(Ancylostoma ceylanicum)、アンサイロストマ
・デュオデナール(Ancylostoma duodenale)、アンサイロストマ・ジャポニカ
(Ancylostoma japonica)、アンサイロストマ・マラヤナム(Ancylostoma mala
yanum)、アンサイロストマ・チューバエフオルム(Ancylostoma tubaeforme)
、ブノストマム・フィレボトマム(Bunostomum phlebotomum)、サイクロドント
ストマム・ピュアビシ(Cyclodontostomum purvisi)、ネカトール・アメリカヌ
ス(Necator americanus)、ネカトール・アルゼンチヌス(Necator argentinus
)、ネカトール・シラウス(Necator suillus)
およびウンシナリア・ステノセファラ(Uncinaria stenocephala)を含む鉤虫(
hookworm)種が含まれる。
濃縮組成物は、コンカナバリンAセファロース(登録商標)カラム、ヒドロキ
シアパタイトカラムまたは陰イオン交換カラム上でのクロマトグラフィー、好ま
しくは登録商標スーパーデックス200(Superdex 200)カラムを用いたゲル濾
過クロマトグラフィー、C4逆相HPLC、等電点電気泳動法、またはこれらの
方法の組み合わせ若しくはタンパク質またはタンパク質様因子を分離するのに用
いるこれらと等価な方法によって好中球抑制因子を濃縮して調製する。例えばコ
ンカナバリンAの代わりに他の固定化レクチンを用いてもよい。スーパーデック
ス200(登録商標)の代わりに、適当な分子量の範囲にタンパク質を分離し得
る他のアクリルアミドーもしくはアガロース−ベースのゲル濾過材を用いても良
い;この例としては登録商標セファクリル(Sephacryl)および登録商標スーパ
ーロース(Superose)(ファルマシア)として販売されているものが含まれる。
好ましい態様において、濃縮された組成物はNIFからなるものである。含有
されているNIFは、寄生虫、好ましくは線虫、より好ましくは鉤虫種、特にイ
ヌ(canine)鉤虫種より誘導または単離されるかまたは、トキソカラ(Toxocara
)種から誘導または単離された糖タンパク質または、実質的に該糖タンパク質と
同じである、好ましくはタンパク質である化合物である。該糖タンパク質のある
アイソフォームは、イヌ鉤虫アンサイロストマ・カニナム(Ancylostoma caninu m
)により製造される。「実質的に同一」という言葉は、その化合物が該当する
糖タンパクと同じ選択的な好中球抑制活性を示すことを意味し、該活性は以下に
記載した好ましい好中球活性アッセイ法により測定した場合、好ましくはIC50
が約500nMまたはそれ以下、より好ましくは100nM未満の値を示す。(B)糖タンパク質NIFおよびアイソフォーム
他の観点から、本発明のNIFは精製された糖タンパク質を含有する。NIF
はコンカナバリンAセファロースへの結合を評価することにより(実施例2(B
)参照)、および炭化水素基の存在を調べる、商標グリコトラック(G1ycoTrackTM
)による糖タンパク質としてのポジティブテスト(実施例7参照)によって糖
タン
パク質であると判定される。
イヌ鉤虫から単離された好中球抑制活性を有する糖タンパク質は以下の性質を
有する:この糖タンパク質は酸性であり、等電点電気泳動で測定すると等電点は
約4.5である(実施例3参照)。レーザーデソープション飛行時間型質量分析
計によって測定した分子量は41000ダルトン(±3000)である(実施例
6参照)。糖タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、還
元糖タンパク質がゲル上のかなり高いみかけの分子量の位置に移動したというそ
の挙動により複数のなジスルフィド結合を含むことが判明した(実施例5参照)
。該糖タンパク質は好中球活性に対する特異的な抑制を示したが、他の細胞接着
アッセイにおける一般的な細胞毒としては働かなかった(実施例13参照)。こ
の糖タンパク質は好中球の血管内皮細胞への接着および同型好中球凝集を抑制す
る活性を示した、濃縮組成物の一つ(実施例2(D)参照)はIC50が約10n
Mであった。IC50は測定した活性の50%を抑制する抑制剤の濃度である(実
施例1参照)。この糖タンパク質は、急性炎症の動物モデルにおいて腹腔内の炎
症応答を、腹腔内投与または静脈内投与によって抑制する(実施例16参照)。
この濃縮組成物は好中球からの過酸化水素の遊離およびプラスチック上への好中
球の接着/伸展を抑制する(実施例1(C)参照)。実施例2(D)で得た組成
物はIC50が約10nMであった。好中球機能に対する抑制因子の濃縮組成物は
、血小板凝集に対する抑制作用は示さなかった(実施例13参照)。
好中球抑制活性を有する第2の糖タンパク質をトキソカラ・カニズ(Toxocara
Canis)から単離した。この糖タンパク質は分子篩クロマトグラフィーによれば
、分子量が約20000ダルトンである。この糖タンパク質は好中球の血管内皮
細胞への接着および好中球のプラスチック上への接着/伸展を抑制した。
他の観点から、本発明はNIFを含有する濃縮組成物を製造する方法を提供す
る。かかる組成物は寄生虫を含む天然のソース(寄生虫に限定されない)から単
離されるものである。
好ましい態様のひとつには、濃縮した組成物をコンカナバリンA−セファロー
ス(登録商標)、ヒドロキシアパタイトもしくは陰イオン交換カラム上でのクロ
マトグラフを含むクロマトグラフ法、ゲル濾過クロマトグラフィー、好ましくは
スーパーデックス(登録商標)200、C4逆相HPLC、等電点電気泳動また
はこれらの方法の組み合わせ、またはタンパク質もしくはタンパク質と類似の物
質を分離するのに用いられる、これらと等価な方法を含むクロマトグラフ法によ
って単離することを含む。例えば、コンカナバリンAの代わりに、他の固定化レ
クチンを用いてもよい。スーパーデックス(登録商標)200に代えて、タンパ
ク質を適当な分子量の幅に分離する他のアクリルアミド系またはアガロースベー
スのゲル濾過剤を用いてもよい;これには例えば登録商標セファクリルおよび登
録商標スーパーローズ(ファルマシア)として販売されているものを含む。NI
Fを含有する濃縮組成物を調製するための好ましい方法として、寄生虫の溶解物
を以下の単離操作にかけることからなる方法を提供する;(a)コンカナバリン
Aセファロース(登録商標)上でのクロマトグラフィー、および(b)スーパー
デックス(登録商標)200上でのゲル濾過、および(c)セラミックヒドロキ
シアパタイト上でのクロマトグラフィー。濃縮された組成物をさらにC4カラム
を用いる逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて精製する。本発明
の濃縮した組成物の例を実施例2から5に示した。
クロマトグラフ法によって単離したNIF含有濃縮組成物は、少なくとも純度
が約50%、すなわち少なくとも50%のNIFを含有するものである。好まし
くは組成物は少なくとも約200倍に濃縮する必要がある。他の好ましい態様に
おいては、実質的に純粋な好中球抑制因子が調製される。「実質的に純粋」とい
う語は、純度が少なくとも90%のものを意味する。より好ましくは、こうして
調製された好中球抑制因子はクロマトグラフ的に純粋なものである。
特定のソースから単離されたNIFが様々なアイソフォームを含むと考えられ
ている。従って、かかるアイソフォーム類も本発明の範囲に含まれる。従って、
他の観点から、本発明は以下の群から選択されるアミノ酸配列を含有するNIF
に関する:
(a) Arg−X1−X2−Phe−Leu−X3−X4−His−Asn−G
ly−Tyr−Arg−Ser−X5−Leu−Ala−Leu−Gly−
His−X6−X7-Ile
(式中、X1はLeuまたはArgである;X2はGln、LysまたはArgで
ある;X3はAlaまたはArgである;X4はLeuまたはMetである;X5
はLys、Arg、LeuまたはIleである;X6はValまたはIleであ
る;X7はSer、GlyまたはAsnである)、
(b) Ala−X8−X9−Ala−Ser−X10−Met−Arg−X11−
Leu−X12−Tyr−Asp−Cys−X13−Ala−Glu−X14−Ser
−Ala−Tyr−X15−Ser−Ala
(式中、X8はHisまたはProである;X9はThr、ArgまたはSerで
ある;X10はArgまたはLysである;X11はIleまたはTyrである;X1 2
はAsp、LysまたはGluである;X13はAspまたはGluである;X1 4
はGly、LysまたはArgである;X15はGlu、Met、Thrまたは
Valである)、
(c) Ser−X16−Phe−Ala−Asn−X17−Ala−Trp−A
sp−X18−Arg−Glu−Lys−X19−Gly−Cys−Ala−Val
−Val−X20−Cys
(式中、X16はAsnまたはAspである;X17はValまたはLeuである;
X18はAlaまたはThrである;X19はLeu、ValまたはPheである;
X20はThr、LysまたはAsnである)、
(d) His−Val−Val−Cys−His−X21−X22−Pro−L
ys
(式中、X21はTyrまたはIleである;X22はGlyまたは残基のないこと
を示す)、
(e) Ile−Tyr−X23−X24−Gly−X25−pro−Cys−X26
−X27−Cys−X28−X29−Tyr
(式中、X23はThr)Ser、LysまたはGluである;X24はThr、V
alまたはIleである;X25はVal、LysまたはThrである;X26はA
rg、SerまたはAspである;X27はAsn、Gly、Aspまたは
Argである;X28はAsn、SerまたはThrである;X29はGly、Gl
uまたはAspである)、および
(f) Cys−X30−X31−Asp−X32−Gly−Val−Cys−X33
−Ile
(式中、X30はHis、IleまたはAsnである;X31はAla、Proまた
はAspである;X32はGlu、Val、AspまたはIleである;X33はI
le、ValまたはPheである)。
NIFには上記の(a)から(f)に示したアミノ酸配列の1から6個を含有す
るものであってよい。好ましくはNIFは(a)から(f)に示したアミノ酸配
列のすべてを含有する。好ましくはNIFは、上に列挙したアミノ酸配列を以下
の順番でタンパク質内に有する(アミノ末端からカルボキシ末端へ):(a)、
(b)、(c)、(d)、(e)、(f)。他のアミノ酸残基またはペプチド配
列が上記の配列の間に挟まって散在していても、タンパク質のアミノ末端および
/またはカルボキシ末端側の端にあってもよい(例えば図7及び図8参照)。N
IFアイソフォームのいくつかのアミノ酸配列が、1または複数の(a)、(b
)、(c)、(d)、(e)または(f)配列を含有していることが、イヌ鉤虫
NIFを示した図9、アンサイロストマ・カニナムのNIFを示した図16およ
びアンサイロストマ・セィラニカムのNIFを示した図19から明らかである。
好ましくはNIFは図8に示したアミノ酸配列を有するものである。
本発明には、アミノ酸配列(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(
f)の1または複数を有し、少なくともインビトロアッセイのひとつにおいて好
中球抑制作用を示すNIFを含む。好適なアッセイには血管内皮細胞に対する好
中球の接着、好中球からの過酸化水素の放出、好中球の同種凝集および好中球の
プラスチック表面への接着が含まれる。好ましいNIFは、好中球抑制アッセイ
のうちのひとつで測定した場合にIC50が約500nM以下、より好ましくは1
00nM未満であり、かかる好中球抑制濃度においては血小板凝集を実質的に抑
制しないものである。IC50値は、測定された活性を50%抑制するNIFの濃
度である(実施例1参照)。
本発明のNIFはさらに、CD11b/CD18受容体への結合能を有すると
いう特徴も有する(実施例14参照)。NIFのCD11b/CD18受容体へ
の結合を測定する好ましいアッセイ法を実施例1(F)に示した。
本発明のNIFはさらに、CD11b/CD18受容体のI−ドメイン部分へ
の結合能を有するという特徴も有する(実施例32参照)。NIFのCD11b
/CD18受容体のI−ドメインに対する結合を測定する好ましいアッセイ法を
実施例32に示した。
本発明のNIFはさらに好酸球抑制活性も有するという特徴を有する。好酸球
抑制活性を測定する好ましいアッセイ法は、好中球の血管内皮細胞に対する接着
を実施例29に記載したごとく測定するインビトロアッセイによって示された好
酸球の活性を抑制するアッセイである。好ましくは、NIFはこの好酸球活性の
アッセイにおいて測定されたIC50が約500nM以下、より好ましくは100
nM以下のものである。
(C)組替えNIF
他の観点から、本発明はNIFを含有すると予測されるソースから取った核酸
分子をあるオリゴヌクレオチドプライマーまたはかかるプライマーから作成した
cDNAとハイブリダイズさせる操作を含む方法により製造されるNIFに関す
る。かかるNIFは好中球抑制活性を示す。その他の観点から、本発明はNIF
を製造するためのこのような方法にも関する。
ひとつの好ましい観点において、本発明はあるNIFのアミノ酸配列から誘導
されたプライマーにハイブリダイズするのに十分に相補的な核酸配列によってコ
ード化されるアミノ酸配列を有するNIFに関する。PCRクローニング法にお
いて好ましいのは、アンサイロストマ・カニウムのNIFの配列から誘導された
20〜100ヌクレオチド一からなる本鎖DNAプライマーである。好ましいの
は、以下の性質を有するプライマーである:変性を受けにくい;ライブラリーが
構築される元となった特定の種のコドン使用の傾向へ忠実である、そして12の
アンサイロスト・マカニナムNIFアイソフォームにおいて保存されている配列
を標的配列とするプライマーである。各PCR反応においては2つのプライマー
を用いる:5−プライマーはNIFコード配列のセンス鎖に対応し、3’−プラ
イマーはNIFコード配列のアンチセンス鎖に対応する。特に好ましいのは
5’-CTCGAATTCT(GATC)GC(ATC)AT(ATC)(CT)T(GATC)GG(ATC)TGGGC-3'
および
5’-CTCGAATTCTT(TC)TCTGG(GA)AA(GA)CG(GA)TC(GA)AA-3'
プライマーである。括弧内に記載したヌクレオチドは、括弧にくくられた位置に
おいてはいずれのヌクレオチドを用いてもよい、余分なものを含む。
DNAプライマーの核酸配列は好ましくはアンサイロストマ・カニウムから誘
導されたものである。上述のごとく、本発明のNIFの1例には実質的に純粋な
形態で単離された糖タンパク質を含有する。業界で知られた方法を用い、通常の
当業者はこのタンパク質を用いて該タンパク質のアミノ酸配列を知ることができ
る。例えば、タンパク質の分析に際して、タンパク質のN−末端配列を調べても
、または該タンパク質のフラグメントを酵素もしくは他の特異的な消化手段によ
り得、該フラグメントの末端アミノ酸を決定してもよい。かかるアミノ酸配列は
、5から6の連続するアミノ酸のみの長さしかない場合ですら、このタンパク質
をコード化する遺伝子のDNA配列の予測のための十分な情報を提供し得る。
2または3のかかるアミノ酸フラグメントの配列を決定すれば、多くのオリゴ
ヌクレオチドを報告されている方法を用いて合成することができ、かかるオリゴ
ヌクレオチドをプローブとして用い、鉤虫(または他のソース)のゲノムまたは
cDNAライブラリーから配列を決定したタンパク質をコード化している遺伝子
またはそのフラグメントを単離できる。当業者はこれらのオリゴヌクレオチドが
オリゴヌクレオチドが選択されたアミノ酸配列をコード化するように選択される
という標準的なパラメーターを用いてデザインし得ることを認識するであろう。
例えば、各オリゴヌクレオチドがいずれのアミノ酸をコードしてもよい余分なコ
ドンを考慮に入れるように変えられている特定の塩基を除けば同じヌクレオチド
塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物を特定のアミノ酸配列のプローブ
として用いることは通常のことである。できるだけ相違の少ないオリゴヌクレオ
チドによってコード化されるアミノ酸配列を選択することが望ましいのはいうま
でもない。例えば鉤虫核酸において最も好ましいコドンを示すよう、様々の過剰
なコドンから特に選択してもよい。
加えて、単離された純粋なNIFタンパク質は、既知の方法を用いた抗体の製
造に用い得る。かかる抗体はモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含んで
おり、他のソース(例えば鉤虫)のDNAを含有するバクテリオファージラムダ
agt11発現ライブラリーをスクリーニングするのに用いてもよい。この場合
、NIFをコード化する核酸を含有する個々のいずれのクローンであっても標準
的な手法を用いて容易に同定し得る。
鉤虫のゲノムDNAライブラリーは、例えば鉤虫のゲノムDNAを単離し、該
DNAを超音波のごときランダムな方法または制限エンドヌクレアーゼ消化のご
とき特異的な方法のいずれかでDNAを分け、そしてこれらのフラグメントをバ
クテリオファージラムダ、プラスミドもしくはコスミドのごとき適当なベクター
へライゲートして調製する。かかるライブラリーで、上記オリゴヌクレオチド混
合物を用いた核酸ハイブリダイゼーションによって有用なクローンのスクリーニ
ングをし得る。より好ましくは、鉤虫全RNAを単離し、該RNAをオリゴ−d
Tカラムへ通してポリ(A)含有RNA(すなわちメッセンジャーRNA)を精
製し、このRNAの逆転写によりRNAに対応するDNAフラグメントを作成す
る(すなわちcDNAフラグメント)方法でcDNAライブラリーを作製する。
これらのcDNAフラグメントはいずれの所望のベクター、例えば、バクテリオ
ファージラムダgt11(大腸菌内に発現させるためのもの)のごとき市販の大
腸菌発現ベクターのごとき発現ベクター等、または哺乳類のCOS7細胞内へ発
現されるプラスミドpcDNA−1内等へ標準的な方法を用いて挿入させ得る。
プラスミド発現ライブラリーの個々のクローンによって発現されるタンパク質
の生物活性は、本明細書に記載した好中球抑制活性試験または他の適当なアッセ
イによって容易に調べることができる。この代わりに、上記の抗体を、バクテリ
オファージ発現ライブラリー(例えばラムダ−gt11)内のクローンから発現
された免疫活性タンパク質のためのプローブとして用いてもよい。さまざまなラ
イブラリーをサブプールとしてスクリーニングすること、例えば999クローン
をまとめて、いずれのサブプールが陽性クローンを含有するのかを測定するよう
な方法は特に好ましい。陽性クローンが単離された場合、999コロニーの格子
を33×33のプレート上に作成し、各33コロニーをプレートの各行および列
に並べて同時にアッセイして(すなわち66プレパレーション)所望のクローン
を同定すればよい。
所望のクローンを単離した後、その構造を標準的な方法、例えばDNA配列決
定によって所望のタンパク質全体をコード化しているか否かを調べる。そうでな
ければ、かかるクローンを全長クローンを探してcDNAまたはゲノムライブラ
リーをスクリーニングする際のプローブとして、またはかかるDNAを鉤虫また
は他のソースに存在するRNAからのハイブリッドによって選択するために、お
よびより選択的なcDNAライブラリーをかかるRNAから、上記方法を用いて
作成するために用いてもよい。
他の好ましい観点では、本発明はNIFのアミノ酸から誘導されたcDNAプ
ローブとハイブリダイズするよう十分相補的な核酸配列によってコード化される
アミノ酸配列を有するNIFに関する。好ましくは、図8に示した配列の部分に
対して少なくとも約12ヌクレオチドが相補的なプローブである。
当業者にとっては、オリゴヌクレオチドプライマーがポリメラーゼ連鎖反応(
PCR)において相補的DNAプローブを調製するのに用い得ることは明らかで
ある。これらのプローブはNIFを他のソースまたは同じソースのアイソフォー
ムから単離するのに用いられる。PCRクローニング法において、20〜100
ヌクレオチドの一本鎖DNAプライマーをアンサイロストマ・カニナムからのN
IFの配列から誘導する。好ましいプライマーは以下の性質を有する;好ましい
のは、以下の性質を有するプライマーである:変性を受けにくい;ライブラリー
が構築される元となった特定の種のコドン使用の傾向へ忠実である、そして12
のアンサイロストマ・カニナムNIFアイソフォームにおいて保存されている配
列を標的配列とするプライマーである。各PCR反応においては2つのプライマ
ーを用いる:5−プライマーはNIFコード配列のセンス鎖に対応し、3’−プ
ラ
イマーはNIFコード配列のアンチセンス鎖に対応する。特に好ましいのは
5’-CTCGAATTCT(GATC)GC(ATC)AT(ATC)(CT)T(GATC)GG(ATC)TGGGC-3'
および
5’-CTCGAATTCTT(TC)TCTGG(GA)AA(GA)CG(GA)TC(GA)AA-3'
プライマーである。括弧内に記載したヌクレオチドは、括弧の位置においてはい
ずれのヌクレオチドを用いてもよい、余分なものを含む。
1本鎖cDNA鋳型は、スクリーニングする組織もしくは生体の細胞より得ら
れたポリ(A)+または全RNAを用いて製造される。RNAはランダムヘキサ
ヌクレオチドまたはオリゴd(T)のいずれかによってプライムし、逆転写酵素
によって伸長する。この反応産物を適当なDNAポリメラーゼ(例えばTaqポ
リメラーゼ)をセンスおよびアンチセンスプライマーと共に用いて、適当な熱サ
イクルにて増幅する。
広く様々なポリメラーゼ連鎖反応の条件が用い得るが、最初の試行では好まし
くは比較的緩やかな条件下でアニーリングと鎖の延長を行う。好ましい条件は、
サイクル1〜3、94℃にて変性1分間、37℃にてアニーリング1分間そして
72℃にて鎖の延長2分間。アニーリング工程と延長工程の間の傾斜となってい
る時間は、これらのサイクルにおいては少なくとも2分間とする;サイクル4〜
40、94℃にて変性1分間、45℃にてアニーリング1分間、および72℃に
て鎖の延長2分間。続く試行においては、各プライマー対による増幅により単一
の生成物が得られるまで、アニーリング温度を上げた。
各増幅反応から得られた増幅した生成物を、PCRを行った組織から構築され
たゲノムDNAまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするための、ハイ
ブリダイゼーションプローブとして用いる。これらの増幅生成物とハイブリダイ
ズした組替えプラークまたはコロニーからのDNAまたはcDNAのいずれをも
をさらなる分析により選択する。
上述の手法を用いて単離したNIF関連相補的DNAをジデオキシ配列決定法
(サンガーら、1977、プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー
・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc.Natl.Acad.Sci USA)74:5463〜5467
)によるヌクレオチド配列分析に供した。
オープンリーディングフレーム(すなわち、メチオニンで開始し、TAA、TGAま
たはTAGストップコドンで終了する)を有する単離されたNIFのcDNAを、
タンパク質を細菌、酵母、昆虫または動物細胞内のいずれかへ発現させるための
適当なベクター内へ挿入する。発現系は組替えタンパク質を培養培地内へ分泌す
るようにデザインされているベクター(cDNA単離オープンリーディングフレ
ームと細胞の種類に応じた分泌シグナル配列とが融合している)を含有する。分
泌シグナル配列を有さないベクターもまた発現に用いられる。使用した発現系に
より調製した培地または細胞の溶解物のいずれかについて、1または複数の以下
の好中球活性化に対する抑制活性を調べる:過酸化水素の遊離、スーパーオキサ
イドアニオンの遊離、ミエロパーオキシダーゼの遊離、エラスターゼの遊離、好
中球の同型凝集、プラスチック表面への接着、血管内皮細胞への付着、ケモタキ
シス、内皮細胞の単層膜を通過する移行および貪食。
上の議論、および実施例10に記載するごとく、NIFのペプチド配列から誘
導されたオリゴヌクレオチドプローブ(鉤虫アンサイロストマ・カニナムから単
離された)を、NIFのcDNA配列を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応に
用いた。NIF配列は今回は鉤虫cDNAライブラリーを探索するために用いた
。プロトタイプのNIF−1FL全長クローンに加えてNIFの6つの部分的な
アイソフォームのクローンを単離した。この実施例はNIFに構造の類似する配
列の単離へのこの手法が有用性であることを示す。
出願人は、上述の方法および上述の方法と同じまたは等価である手法を用いる
ことにより、他の動物、菌、細菌もしくはウイルスソースからの好中球抑制因子
をコード化するDNA配列を単離することができ、また組替えの好中球抑制因子
を発現するのに用いることができることも指摘しておく。
免疫応答性物質が発現ライブラリーより発現される場合には、上述の発現ベク
ターまたはその誘導体を天然のタンパク質のものとと等価な生物活性を有する組
替えタンパク質を発現させるのに用いることができる。かかる組替えタンパク質
は本発明において有用である。
本発明の好中球抑制因子の1例を用い、ペプチドフラグメントを製造し、その
アミノ酸配列を決定した。この例は実施例9に説明している。タンパク質分解フ
ラグメントに対して得られたアミノ酸配列を図7に示した。
NIFの1例としては実施例10および21に示したイヌ鉤虫cDNAライブ
ラリーからクローン化されたものである。7つのファージ単離物を配列決定のた
めに単離した。単離したクローンのうちのひとつ(クローン1FL)のcDNA
のヌクレオチド配列を図8に示した。他の単離したNIFアイソフォームクロー
ンから演繹した部分的なアミノ酸配列を図9および図16に示す。
DNA単離物には、イントロンのごとき最終的なタンパク質となる部分をコー
ドしない配列および/または上述のペプチド配列に加えて、介在するアミノ酸残
基やペプチドをコードする配列をさらに含んでいてもよい。特に好ましいDNA
単離物のコード領域はこのヌクレオチド配列を有し、および/または図8に示し
た演繹したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
本明細書に記載した手法および当業者に用いられている他の手法を用いて、N
IFはいずれのソース すなわち動物、細菌、真菌、ウイルスまたはNIFを有
すると予測される他のソースのいずれからでも、単離することができる。かかる
NIFおよびこれをコード化する核酸配列は、NIFを含有すると予測されるソ
ースから得たゲノムもしくはcDNAのライブラリーを、図8に示した配列のご
ときNIFをコード化する核酸配列と十分に相補的であるオリゴヌクレオチドプ
ローブを用いて探索し、その後本明細書に記載のごとく該プローブとハイブリダ
イズした核酸配列を単離、発現させることによって単離し得る。かかるプローブ
は唯一の配列を表示するのに十分な数のヌクレオチドを有する。典型的には、プ
ローブは少なくとも約12ヌクレオチドからなる。好ましいプローブ群には以下
の配列が含まれる:
5’-CTCGAATTCT(GATC)GC(ATC)AT(ATC)(CT)T(GATC)GG(ATC)TGGGC-3'
および
5’-CTCGAATTCTT(TC)TCTGG(GA)AA(GA)CG(GA)TC(GA)AA-3'
括弧内に含有されているヌクレオチドは、括弧の位置においていずれのヌクレオ
チドを採用してもよいという点で余剰のものである。
上記に代えて、NIFタンパク質およびこのタンパク質をコードする核酸は、
NIFを含有すると予測されるソースから得た核酸のサンプルを、例えば図8に
示した配列のごときNIFをコード化することが知られている核酸配列と相補的
な、少なくとも約12ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドプローブを用い
て探索し、このオリゴヌクレオチドヘハイブリダイズするのに十分これと相補的
な、遺伝子のごとき核酸配列を単離しても得られる。単離された核酸配列をその
後クローン化し、常法を用いて発現させてもよい。(D)単離された核酸分子
他の観点から、本発明はNIFのアミノ酸配列をコード化する核酸配列を有す
る単離された核酸分子を提供する。DNA単離物には、イントロンのごとき最終
的なタンパク質となる部分をコードしない配列および/または上述のペプチド配
列に加えて、介在するアミノ酸残基やペプチドをコードする配列をさらに含んで
いてもよい。好ましい単離核酸分子は、以下の群から選択されるアミノ酸配列を
少なくとも1つ有するNIFをコード化するものである:
(a) Arg−X1−X2−Phe−Leu−X3−X4−His−Asn−G
ly−Tyr−Arg−Ser−X5−Leu−Ala−Leu−Gly−Hi
s−X6−X7−Ile
(式中、X1はLeuまたはArgである;X2はGln、LysまたはArgで
ある;X3はAlaまたはArgである;X4はLeuまたはMetである;X5
はLys、Arg、LeuまたはIleである;X6はValまたはIleであ
る;X7はSer、GlyまたはAsnである)、
(b) Ala−X8−X9−Ala−Ser−X10-Met−Arg−X11−
Leu−X12−Tyr−Asp−Cys−X13−Ala−Glu−X14−Ser
−Ala−Tyr−X15−Ser−Ala
(式中、X8はHisまたはProである;X9はThr、ArgまたはSerで
ある;X10はArgまたはLysである;X11はIleまたはTyrである;X12
はAsp、LysまたはGluである;X13はAspまたはGluである;X14
はGly、LysまたはArgである;X15はGlu、Met、Thrまたは
Valである)、
(c) Ser−X16−Phe−Ala−Asn−X17−Ala−Trp−A
sp−X18−Arg−Glu−Lys−X19−Gly−Cys−Ala−Val
−Val−X20−Cys
(式中、X16はAsnまたはAspである;X17はValまたはLeuである;
X18はAlaまたはThrである;X19はLeu、ValまたはPheである;
X20はThr、LysまたはAsnである)、
(d) His−Val−Val−Cys−His−X21−X22−Pro−L
ys
(式中、X21はTyrまたはIleである;X22はGlyまたは残基のないこと
を示す)、
(e) Ile−Tyr−X23−X24−Gly−X25−Pro−Cys−X26
−X27−Cys−X28−X29−Tyr
(式中、X23はThr、Ser、LysまたはGluである;X24はThr、V
alまたはIleである;X25はVal、LysまたはThrである;X26はA
rg、SerまたはAspである;X27はAsn、Gly、AspまたはArg
である;X28はAsn、SerまたはThrである;X29はGly、Gluまた
はAspである)、および
(f) Cys−X30−X31−Asp−X32−Gly−Val−Cys−X33
−Ile
(式中、X30はHis、IleまたはAsnである;X31はAla、Proまた
はAspである;X32はGlu、Val、AspまたはIleである;X33はI
le、ValまたはPheである)。特に好ましい単離核酸分子はコード領域に
このヌクレオチド配列を有し、および/または図8に示した演繹したアミノ酸配
列を有するタンパク質をコードするものである。(E)NIFの発現
他の観点から、本発明は生物的に活性なNIFを製造する方法を提供する。該
方法において、NIFは細胞内に発現され、所望により分泌される;NIFをコ
ード化している発現ベクター;および該発現ベクターによって形質転換されてい
る宿主細胞が、NIFを発現し、所望により分泌する。
NIFをコード化するcDNAを、複製可能な発現ベクターへ挿入して生物的
に活性な組替え好中球抑制因子を合成させ得る。ヘテロローガスなタンパク質の
発現のために多くのベクターを用いることができるが、適当なベクターの選択は
主としてホスト細胞にとって望ましい性質に依存する。入手可能な各ベクターは
、形質転換させようとするホスト細胞に特異的な様々な成分をそれぞれ有する。
ベクターの成分もしくは調節エレメントとしては一般に以下のものを1または複
数含有するがこれらに限定されるものではない:シグナル配列、複製オリジン、
1または複数のマーカー遺伝子、プロモーター、エンハンサーエレメントおよび
転写終止配列。インヒビターを含有する発現ベクターが一旦構築されると、この
発現ベクターによって適当なホスト細胞をトランスフェクトもしくは形質転換し
、組替えの好中球抑制因子ををホスト細胞そのものまたはホスト細胞の成育培地
より単離する。
一般に、シグナル配列はベクターの成分であってもよく、ベクターに挿入され
る好中球抑制因子のDNAによりコード化されていてもよい。天然の抑制因子が
分泌された遺伝子生成物(すなわち鉤虫(もしくは他のソース)細胞から)であ
る場合は、鉤虫DNAより得られた天然のプロー好中球抑制因子は、ポリペプチ
ドをマチュアーな好中球抑制因子へ変える翻訳後のプロセシングにより分離され
る該ポリペプチドのアミノ末端にあるシグナル配列をコード化する。
すべてのベクターは選択された1または複数のホスト細胞内で自己の復製を可
能とする核酸配列を有する。一般に、クローニングベクターにおいてこの配列は
ホストの染色体DNAから独立して複製し得るものであり、複製オリジンもしく
は自律複製配列を含有する。かかる配列は様々な細菌、酵母、昆虫および哺乳類
の細胞において良く知られている。プラスミドpBR322から得た複製オリジ
ンはほとんどのグラム陰性細菌に適し、2μプラスミドオリジンは酵母に適し、
バキュロウイルスオリジンはいくつかの昆虫細胞(例えばSf9細胞;ATCC
番号CRL1711)に適し、および様々なウイルスのオリジン(例えばSV4
0、アデノウイルス)哺乳類細胞内へのクローニングベクターに有用である。
発現ベクターには選択遺伝子(選択可能マーカーとも呼ばれる)を含有すべき
である。この遺伝子は形質転換されたホスト細胞が、選択培養培地における生存
または増殖するのに必要なタンパク質をコード化する。選択遺伝子を含有するベ
クターにて形質転換されていないホスト細胞はこの培地内で生存することができ
ない。典型的な選択遺伝子は(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えばアンピシ
リン、ネオマイシンまたはメソトレキサート、に対する抵抗性を付与する、(b
)栄養要求欠損を補足するまたは(c)複合培地から得られない重要な養分を補
給するタンパク質のいずれかをコード化するものである。
発現ベクターはホスト生体に認識されるプロモーターを有する。プロモーター
は構造遺伝子(一般に100から1000塩基対の間)のスタートコドンの上流
(5’)に位置する非翻訳配列であり、鉤虫の好中球抑制因子のごとき当該プロ
モーターが操縦しやすく連結している特定の核酸配列の転写および翻訳を制御す
る。様々なホスト細胞に認識され得る数多くのプロモーターが既知である。プロ
モーターは好中球抑制因子をコード化するDNAと、好中球抑制因子DNAの5
’末端がプロモーターと鎖上で極めて接近するように当該DNAをベクターへ挿
入することによって、操作し易いように連結する。
高等真核生物による本発明の好中球抑制因子をコード化するDNAの転写はし
ばしばエンハンサー配列をベクター内へ挿入することにより増強し得る(例えば
、クレイグラー(Kriegler,M.)、1991、ジーン・トランスファー・アンド
・エクスプレッション、第4〜18頁、フリーマン(W.H.Freeman)、ニューヨ
ーク)。エンハンサーはDNAのシス活性剤であり、通常約10〜300塩基対
の長さであって、プロモーターへその転写を増加させるように働く。エンハンサ
ーの方向および位置は比較的独立している。典型的なエンハンサーとしては、哺
乳類の細胞内への発現のため、真核生物細胞のウイルスより得たエンハンサーが
ある。例としては、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルスの初期プロモ
ーターエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
真核生物(すなわち、非細菌)ホスト細胞に用いられる発現ベクターもまた、
転写の終止に必要な配列およびmRNAを安定化させるのに必要な配列を含有す
る。これらの配列は真核生物もしくはウイルスのDNAの通常5’末端からおよ
び、場合によっては3’の非翻訳領域から得られる。
本発明において好ましい発現ベクターとしては、PHIL7SP-N1c10、PSG5/NIF1FL
CR1、Pma5-NI1/3 PAN-NIF-1FL、pYAM7SP-hNIF1/△、G11-5、pYAM7SP-hNIF1/△、
G11-5、pYAMSP-AcaNIF4、pYAMSP-AcaNIF6、pYAMSP-AcaNIF9、pYAMSP-AcaNIF24、
pAN-AceNIF3が挙げられるがこれらに限定されない。発現ベクターの構築につい
ては実施例に記載した。
本明細書に記載した発現ベクターに適するホスト細胞には細菌、酵母、昆虫も
しくは哺乳類の細胞を含む。好ましい細菌としては大腸菌種、好ましい酵母とし
てはサッカロミセス・セレビジュー(Saccharomyces serevisiae)とピキア・パ
ストリス(Pichia pastoris)、好ましい昆虫のセルラインとしてはSf9(A
TCC番号CRL1711)、好ましい哺乳類のセルラインとしてはCOS−7
(ATCC番号CRL1651)、CHO dhfr(ATCC番号CRL90
96)、CHO−K1(ATCC番号CCL61)およびHeLa(ATCC番
号CCL2)が挙げられる。これらのホスト細胞の例は例示としてのみ示したも
のであり、これによって本発明を制限するものではない。好ましいホスト細胞は
、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するものである。グリコシル化された好中
球抑制
因子を発現するのに特に有用なホスト細胞は、多細胞生体より誘導されたもので
ある。かかるホスト細胞では複雑な翻訳後プロセシングが可能であり、発現した
タンパク質のグリコシル化活性が可能である。
ホスト細胞をトランスフェクトし、好ましくは上述の本発明の発現ベクターに
より形質転換し、そしてプロモーターの誘導および形質転換体の選択に適するよ
うに変化させた通常の栄養培地にて培養する。トランスフェクションはホスト細
胞が発現ベクターを取り込むことをいう。非常に多くのトランスフェクションの
方法が当業者には知られている、例えばリン酸カルシウム共沈降、スフェロプラ
スト化による形質転換およびエレクトロポレーション等が挙げられる。トランス
フェクションが成功したことは一般に、ホストセル内へこのベクターの作用のい
ずれかが認められる場合に認識される。形質転換とはDNAをある生体内へ導入
し、染色体外エレメントとしてかまたは染色体と同化して、DNAを複製可能と
することをいう。用いるホスト細胞によって、形質転換はその細胞に適した標準
的方法(例えば細菌細胞へは塩化カルシウムまたはエレクトロポレーション;酵
母細胞へはスフェロプラスト化またはエレクトロポレーション;昆虫および哺乳
類細胞へはリン酸カルシウムまたはエレクトロポレーション)を用いてなし得る
。
組替え鉤虫NIFは分泌されたポリペプチドとして培養培地から回収するのが
好ましいが、シグナルもしくは分泌配列を有さず直接発現している場合にはホス
ト細胞の溶解物から回収してもよい。発現された鉤虫好中球阻害剤を、培養培地
もしくは細胞溶解物より以下の様々な分離方法により精製するが、精製方法とし
てはこれらに限定されない:ゲル濾過、アフィニティーおよびイオン交換クロマ
トグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、C4逆相HPLCお
よび等電点クロマトグラフィー等。
(F)NIFの変異体
他の観点から、本発明は図8に記載したアミノ酸配列の、10、18、87、
110、130、197または223位のアスパラギン残基の1または複数の残
基がグルタミン残基で置換されているNIF変異体を提供する。
NIFのアミノ酸配列変異体は、上述のごとく単離したNIFをコード化する
DNAへ、ヌクレオチドの変化を誘導することによって調製される。かかる変異
体にはNIFのアミノ酸配列内の残基を置換したものが含まれる。所望の性質を
有する最終構築物が得られるならば、どのような組み合わせの置換であってもか
かる最終構造に達するために生じさせることができる。変異体の好ましい性質と
しては、野生型NIFを越える強さが含まれる(これに制限されない)。一旦変
異NIFのDNAが構築されれば、上記発現系を用いてNIF変異体の組替え体
を合成し得る。
NIFの変異体を調製し得る1つの方法には、塩基−特異的化学変異源を用い
た、パイン(Pine)とフアン(Huang)(1987、メソッズ・イン・エンザイモロ
ジー(Methods Enzymol)154,415〜430)に詳述されている方法による変異誘発
がある。他のアプローチは例えばスタンセンズ(Stanssens)ら、(1989)ヌク
レイック・アシッズ・リサーチ17:4441〜4434に記載されている部位特異的変異
処理法がある。例えば、実施例25は1FLと名付けたあるNIF(図8参照)
上の特定のアスパラギン残基の置換に、部位特異的変異処理を用いたものである
。
NIFのアイソフォームである1FLのアミノ酸配列の10、18、87、1
10、130、197および223位にあるアスパラギン残基は、このアイソフ
ォームのN−結合性グリコシレーションに強くかかわっていると考えられている
。スタンセンスらの、段階的部位特異的変異処理および実施例25に記載した5
種類のオリゴヌクレオチドを用いて、1FLの10、18、87、110および
130位にあるアスパラギン残基をグルタミン残基に置換して、NIF変異体を
得た。その後、この変異体をコード化するcDNAをさらに、同じ方法によって
、記載された他のオリゴヌクレオチドを用いて、1FLのアミノ酸配列の197
および223位のアスパラギン残基をグルタミン残基と置換した。両方の場合に
おいて、発現された変異NIFは好中球抑制活性を有していた。2.ペプチドフラグメント
他の観点からすると、本発明はクロマトグラフ的に純粋な本発明の好中球抑制
因子から出発してタンパク質分解または化学的な方法によって調製される、好中
球阻害活性を有するペプチドフラグメントを提供する。
活性なペプチドフラグメントは糖部分を有するか否かにかかわりなく、酵素的
もしくは化学的手法によって製造し得る。タンパク質分解による切り出しはイン
ヒビターを1または複数の以下の酵素で消化することによって行い得る:キモト
リプシン、トリプシン、ロイシンアミノペプチダーゼ、エンドプロテイナーゼGl
u-C、エンドプロテイナーゼLys-C、エンドプロテイナーゼArg-C、エンドプロテ
イナーゼAsp-N(キャレー(Carrey,E.A.)、1989、「タンパク質の構造、実際
のアプローチ(Protein Structure,APractical Approach)」第117〜143頁クレ
イグトン(T.E.Creighton)編集、アイアールエルプレス、ニューヨーク)。イ
ンヒビターの化学的消化は、シアノーゲンブロミド、ヒドロキシルアミンもしく
は2−ニトロ−5−チオシアノベンゾエートによる切り出しにより行えばよい(
キャレー、1989、前出)。糖部分はペプチドフラグメントまたはそのままの
好中球抑制因子タンパク質のいずれかから1または複数の以下の酵素:グリコペ
プチダーゼF、エンドグリコシダーゼH、エンドグリコシダーゼF、またはエン
ドグリコシダーゼD、を用いて、キーセイ(Keesey,J.1987、バイオケミカ・イ
ンフォメーション(Biochemica Information)第147〜165頁、キーセイ編集、ベ
ーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ、インディアナポリス)の方法によ
って除去し得る。反対に、インタクトなインヒビターのグリコシレーションを、
細胞内におけるタンパク質の発現の阻害または真核生物の細胞培養培地内にグリ
コシレーション阻害剤を含有させることによって阻害してもよい。グリコシレー
ションの阻害剤およびその適用法は当業者によって開示されている(キーセイ(
Keesey,J.1987、バイオケミカ・インフォメーション(Biochemica Information
)第135〜141頁、キーセイ編集、ベーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ
、インディアナポリス)。活性フラグメントを不活性フラグメントから分離する
には、従来の低温、培地、または高圧クロマトグラフィー方法等、従来から公知
の方法でなし得る。3.抗体
他の観点から、本発明はNIFへの結合能を有するポリクローナルおよびモノ
クローナル抗体を提供する。
NIFに対する抗体を調製するには、当業者に知られている方法のうちのいず
れを使用してもよい。かかる技術のうちのひとつにおいて、ポリクローナル抗体
はある動物(例えばウサギ)に1または複数の本発明のNIFを注射して製造す
る。注射後、動物はかかるNIFに対する抗体を産生する。抗体濃度(または力
価)が十分なレベルに到達した時に、抗体を含有する血液をこの動物から抜き、
抗血清をこの血液から調製し、化合物に特異的な抗体を血清中の他の抗体から、
いくつもある分離方法のうちのいずれか(例えば、アフィニティークロマトグラ
フィー)によって単離する。
モノクローナル抗体は、ケーラーとミルスタインの、ネイチャー256.495〜497
(1975)の方法および他の当業者によく知られている常套の方法を用いて調製す
ればよい(例えば、ハーロウとレーン(Harlow and Lane)アンティボディーズ
、ア・ラボラトリー・マニュアル(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラト
リー1988)参照。該記載は参考として本明細書の一部をなす)。好ましいモ
ノクローナル抗体は、NIFアイソフォームであるIFL(アミノ酸配列を図8
に示した)に対するものを含み、IgGクラスの免疫グロブリンである。特に好
ましいモノクローナル抗体は、NIFにモノクローナル抗体3D2が結合する際
と同じエピトープに結合するものである。3D2と呼ばれるモノクローナル抗体
は好ましい態様のひとつである。3D2の調製は実施例26に記載した。
他の観点から、本発明はかかるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ
を提供する。このハイブリドーマをはハーロウとレーン(既出、本記載は参考と
して本明細書の一部をなす)に記載された常套法にて作成すればよい。好ましい
ハイブリドーマを実施例26に記載した。
他の観点からは、本発明はさまざまなソースからのNIFおよびかかるソース
から得られた不純なNIFを、NIFに対する抗体を用いて親和性に基づいて精
製する方法を提供する。NIFを単離する好ましい方法には、NIFを含有する
と考えられる試料を、該NIFと結合し得るモノクローナル抗体と接触させる工
程が含まれる。モノクローナル抗体として好ましいのは、モノクローナル抗体3
D2またはこのモノクローナル抗体3D2がNIF上で結合する同じエピトープ
に結合するモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の親和性に基づく精
製の好ましい方法によれば、モノクローナル抗体はクロマトグラフ用樹脂に共有
結合させる。特に好ましいクロマトグラフ用樹脂には商標エンファス(Emph
aze)バイオサポート・メディウム(3M社)が含まれる。実施例27および
28にはクロマトグラフ用樹脂をモノクローナル抗体3D2と結合させ、NIF
を含有する組成物からNIFを精製する方法を記載した。
他の観点から、本発明はNIFに対する抗体を用いるイムノアッセイに関する
。イムノアッセイのための特定の使用に応じて、イムノアッセイの方法を選択す
る。適当なイムノアッセイのいくつかを、ハーロウとレーンが記載している(既
出)(特に553から612ページ参照)。この文献の記載は参考として本発明
の一部をなす。
固相法または液相法を用いるイムノアッセイは、イムノアッセイ分野の当業者
によく知られている。例えば、モノクローナル抗体は薬物類、ホルモン類および
タンパク質類をアッセイするのに用いることができ、かかるアッセイは固相また
は液相法で行われる。本発明の好ましい方法は固相アッセイである。
NIFを試料から検出するための好ましい方法には、NIFを含有するであろ
うと考えられる試料を、NIFに結合し得るモノクローナル抗体と接触させる操
作を含む。好ましい態様においては、モノクローナル抗体をポリスチレン、ポリ
プロピレン、ポリエチレン、ナイロンおよび類似物のごときプラスチック表面へ
固定化させる。プラスチック表面は試験官、微小球、顕微鏡ビーズ、マイクロタ
イタープレートおよび類似物の形状のものであってよい。この態様において、モ
ノクローナル抗体は、共有結合または受動吸収によって固定化させればよいが、
好ましくは受動吸収によって固定化させる。モノクローナル抗体としては、モノ
クローナル抗体3D2がNIF上に結合するのと、同じNIF上のエピトープに
結合するもの、またはモノクローナル抗体3D2が好ましい。
モノクローナル抗体は、試料と同時に検出可能な標識を共有結合させたNIF
に接触させてもよい。またその代わりに、モノクローナル抗体を試料と最初に接
触させ、その後に先に検出可能な標識と共有結合させたNIFに接触させてもよ
い。
好ましい検出可能な標識は、酵素、蛍光化合物または放射性同位元素である。
特に好ましい検出可能標識はアルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ
またはホースラディッシュ・パーオキシダーゼのごとき酵素またはヨウ素125
のごとき放射性同位元素である。このような酵素および放射性同位元素をモノク
ローナル抗体へ共有結合させる方法は、診断の分野における当業者によく知られ
ている。
4.NIFのミミックおよびNIFのアンタゴニストの検索方法
他の観点から、本発明は、CD11b/CD18受容体もしくはCD11b/
CD18受容体のIドメイン部分に対するNIFの結合と競合するNIFのミミ
ックの存在を試料中から検出する方法に関する。他の観点から、本発明はCD1
1b/CD18受容体もしくはCD11b/CD18受容体のIドメインに対す
るNIFの結合を抑制するNIFアンタゴニストに関する。該方法には該試料を
CD11b/CD18受容体またはCD11b/CD18受容体のIドメインと
接触させる操作を含む。NIFミミックおよびNIFアンタゴニストには小さな
分子、ペプチド、ペプチド類縁体またはタンパク質を含有するが、これらに制限
されない。
好ましい態様において、試験するNIFミミックまたはアンタゴニストは好中
球または固定化CD11b/CD18受容体もしくはCD11b/CD18受容
体のIドメイン部分を有する組替えペプチドを含有する溶液内でプレインキュベ
ートし、このプレインキュベートした溶液を標識したNIFと接触させる。NI
Fの好中球、固定化CD11b/CD18受容体またはCD11b/CD18受
容体のIドメイン部分を含有する組替えペプチドへの結合に対する試験化合物の
効果を測定する。
好ましい態様において、アッセイ方法は溶液内で遊離の好中球を用いる。ここ
で、検出可能な標識と結合しているNIF、好中球および、NIFミミックもし
くはNIFアンタゴニストが含有されていると考えられる試料を溶液内で結合が
生じるのに十分な時間、共にインキュベートする。遠心分離、濾過または適当な
方法にて結合していない標識NIFを結合しているNIFから除き、結合NIF
を検出可能標識によって測定する。
他の好ましい態様では、好中球をプラスチック表面上へ受動吸収またはグルタ
ルアルデヒドまたは同様の物質を用いた化学的固定化によって固定化する。標識
したNIFをこの固定化NIFおよび、NIFミミックもしくはNIFアンタゴ
ニストを含有していると思われる試料と共にインキュベートする。非結合標識N
IFを洗浄して除き、結合している標識NIFを検出可能標識によって測定する
。
特に好ましい態様においては、ヒト白血球の洗剤抽出物からのCD11b/C
D18受容体を、プラスチック表面へ固定化している抗CD11b/CD18モ
ノクローナル抗体へ補足させる。検出可能な標識を結合したNIFまたは後から
検出可能標識へ結合させ得るNIF、およびNIFミミックもしくはNIFアン
タゴニストを含有すると思われる試料を、固定化CD11b/CD18受容体と
共にインキュベートする。結合が生じた後、結合していないNIFを洗浄して除
く。NIFに結合する検出可能標識をその後、NIFの検出ができるよう添加す
る(最初にNIFにかかる標識を結合していない場合)。結合したNIFを、検
出可能標識にて測定する。
抗CD11b/CD18抗体を共有結合または受動吸収によってプラスチック
表面へ結合させてもよく、この場合には受動吸収によるのが好ましい。好ましい
プラスチック表面は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン
および類似物であるが、ポリスチレンが好ましい。プラスチック表面は試験官、
微小球、顕微鏡ビーズ、マイクロタイタープレートおよび類似物の形状であって
よい。好ましい抗CD11b/CD18抗体はLM2と名付けられているモノク
ローナル抗体である。
NIFには検出可能標を結合させるか、または本発明のアッセイ方法の工程中
においてかかる標識を結合させてもよい。NIFにかかる標識を、グルタルアル
デヒド、ジスクシンイミジルスベレート(disuccinimidyl suberate)、ジメチ
ルスベリミデート(dimethyl suberimidate)および類似物のごとき、同−2官
能性(homobifunctional)架橋剤を用いた共有結合によって結合させる。NIF
は、本
発明のアッセイ法の工程中において、最初にビオチンをNIFへ結合し、そして
アビジンを検出可能標識へ結合させることによって、検出可能標識へ結合するこ
とができる。好ましい検出可能標識には、酵素、蛍光物質または放射線同位元素
を含む。特に好ましい検出可能標識はアルカリ性ホスファターゼ、β−ガラスト
シダーゼ、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼまたはヨウ素125である。
他の特に好ましい態様において、検出可能標識に結合しているかまたはその後
に検出可能標識に結合させ得るペプチドNIFのある部分を認識するモノクロー
ナル抗体複合体と複合体を形成しているCD11b/CD18受容体のIドメイ
ンを含有する組替えペプチドと、NIFミミックもしくはNIFアンタゴニスト
を含有すると考えられる試料を共にインキュベートする。結合が生じた後、タン
パク質Aセファロースを、未結合NIFと結合したものを分離するために添加す
る。その後、NIFに結合する検出可能標識を、NIFの検出のために添加する
(NIFが最初に標識されていない場合)。結合したNIFをこの検出可能標識
によって測定した。
NIFミミックもしくはNIFアンタゴニストについて、好中球抑制活性のア
ッセイを行ってもよい。好中球抑制活性は好中球の血管内皮細胞に対する接着の
測定、好中球からの過酸化水素の放出の測定、好中球の同種凝集およびプラスチ
ック表面への好中球の接着のごときアッセイによって測定し得る。NIFミミッ
クは好中球活性の抑制のIC50が500nMまたはそれ以下のものであり、約1
00nMまたはそれ以下が好ましい。NIFアンタゴニストはこのIC50が約1
000nMから約1mMと特徴付けられるが、好ましくは約5000nMから約
10mMである。IC50は測定された活性を50%抑制するNIFミミックまた
はNIFアンタゴニストの濃度である(実施例1参照)。
所望によりNIFミミックもしくはNIFアンタゴニストを好酸球抑制活性の
アッセイに供してもよい。好酸球抑制活性は好酸球の血管内皮細胞への接着を測
定するアッセイによって調べる。NIFミミックをアッセイした場合、好酸球活
性の抑制のIC50が約500nMまたはそれ以下であると特徴付けられるが、I
C50が100nMまたはそれ以下のものが好ましい。NIFアンタゴニストをア
ッセイした場合、好中球活性抑制のIC50が約1000nMから約1mMである
と特徴付けられるが、
IC50が5000nMから約10mMのものが好ましい。IC50は測定した活性
を50%抑制する際のNIFミミックもしくはNIFアンタゴニストの濃度であ
る。
他の観点から、本発明はこの章の上記検出方法によって発見されるNIFミミ
ックおよびNIFアンタゴニストも提供する。
5.医薬処方および投与方法
他の観点から、本発明はNIFを含有する医薬組成物を提供する。
医薬組成物は、経口投与のためのタブレット、カプセルまたはエリキシル;直
腸投与のための座薬、注射用の滅菌溶液、懸濁液などとして調製し、使用する。
投与量および方法は最適効果が得られるように設定すればよいが、これは体重、
食餌、同時に投与している薬などの因子、および医薬に関する当業者が認識して
いるであろう他の因子に依存する。使用される組成物の効力にもよるが一般に0
.01mg/kgから100mg/kg体重/日の量で投与される。
好ましい態様には貯蔵およびその後の投与のために調製された、医薬的に有効
な量の本明細書に記載したNIFもしくはNIFの濃縮組成物を、医薬的に許容
し得るキャリアーまたは希釈剤中に含む医薬組成物を包含する。治療に許容し得
るキャリアーまたは希釈剤は医薬分野ではよく知られ、かつ、例えばレミントン
ズ・ファーマシウチカル・サイエンス、(マック・パブリッシング・コ;A.R
.ジェナロ著1985)などに記載されている。保存剤、安定剤、染料、および
香料を医薬組成物中に加えてもよい。例えば安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、
p−ヒドロキシ安息香酸を保存剤として加えてもよい。加えて抗酸化剤および分
散剤を使用してもよい。
他の観点において、本発明は異常な好中球の活性化もしくは異常な好酸球の活
性化に特徴づけられる哺乳類の炎症症状を排除するために、当該哺乳類に治療効
果量のNIFもしくはその医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。好
ましい方法を実施する際に、NIFまたはその医薬組成物を単独でまたは相互に
組み合わせて、もしくは他の治療もしくは診断薬と組み合わせて使用してもよい
。これらの組み合わせはイン・ビボで通常ほ乳類に、好ましくは人に、あるいは
イン・ビトロで利用してもよい。
NIFまたはその医薬組成物をイン・ビボに採用する際には、種々の方法、例
えば非経口、静脈、皮下、筋肉内、結腸、直腸、鼻または腹膜内に、種々の投与
形態でほ乳動物に投与し得る。当業者に明らかなように、有用なインビボ投与の
剤形および投与方法は治療すべき哺乳動物種、使用する組成物およびこれらの組
成物を使用するための用途によって変わる。有効な容量レベルの決定、即ち、所
望の結果を達成するに必要な容量レベルは当業者の通常業務の範囲内である。典
型的には組成物の適用は低容量レベルで始め、所望の効果が達成されるまで容量
を増加させて行う。
NIFまたはその医薬組成物の用量は所望の効果および治療上の徴候により広
範囲であってよい。典型的には用量は約0.01mgから100mg/kg、好ましく
は約0.01から10mg/kg体重である。投与は好ましくは非経口投与、たとえ
ば毎日のあるいは必要に応じての静脈注射である。
注射薬は通常の形状、即ち、溶液状または懸濁液、注射前に溶液または懸濁液
にするために適した形状の固体またはエマルジョンとして調製してもよい。適当
な賦形剤は例えば水、生理食塩水、デキストローズ、マンニトール、ラクトース
、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などであ
る。加えて、所望ならば注射可能な医薬組成物は少量の非毒性助剤、例えば湿潤
剤、pH緩衝剤などを含んでいてもよい。所望ならば吸収増強剤(例えばリポソ
ーム)を利用してもよい。
6.利用および応用
出願人が上記に述べたように、本発明は白血球の抑制剤を提供するものであり
、好ましい観点からはCD11b/CD18受容体を有するかまたは発現してい
る白血球を抑制するものである。CD11b/CD18インテグリンレセプター
を有するかまたは発現している白血球はよく知られており単球、マクロファージ
顆
粒球、大顆粒リンパ球(NK細胞)および未熟CD5+B細胞(キシモト、ラー
ソン(Larson,R.S.)、コルビ(Corbi,A.L.)、ダスティン(Dustin,M.L.)
、スタウトン(Staunton,D.E.)およびスプリンガー(Springer,T.A.)(1989
)アドバンス・イン・イムノロジー46、149〜182)を含む。CD11b/CD1
8は好中球の内皮細胞への接着(プリエット(Prieto,J.)、ベティー(Beatty
,P.G.)、クラーク(Clark,E.A.)、パタローヨ(Patarroyo,M.(1988)イム
ノロジー、63、631〜637;ワリス(Wallis,W.J.)、ヒクスタイン(Hickstein,
D.D.)、シュワルツ(Schwartz,B.R.)、ジューン(June,C.H.)、オクス(Oc
hs,H.D.)、ベティー(Beatty,P.G.)、クレバノフ(Klebanoff,S.J.)、お
よびハーラン(Harlan,J.M.)(1986)ブラッド67、1007-1013;スミス(Smith
,C.W.)、マーリン(Marlin,S.D.)、ロスライン(Rothlein,R.)、トーマン
(Toman,C.)およびアンダーソン(Anderson,D.C.)(1989)ジャーナル・オ
ブ・クリニカル・インベスティゲーション83、2008〜2017)および好中球からの
過酸化水素の放出(シャペル(Shappell,S.B.)、トーマン、アンダーソン(An
derson,D.C.)、テイラー(Taylor,A.A,)、エントマン(Entman,M.L.)およ
び、スミス(Smith,C.W.)(1990)ジャーナル・オブ・イムノロジー144、2702
〜2711;フォン・アスムス(VonAsmuth,E.J.U.)、ファン・デル・リンデン(Va
n Der Linden,C.J.)、レレーウェベルグ(Leeuwenberg,J.F.M.)、およびブ
ールマン(Buurman,W.A.(1991)ジャーナル・オブ・イムノロジー147、3869〜
3875)のごときさまざまな白血球の機能に関与している。このインテグリンは好
中球および単球のオプソニン化された(すなわちC3bi被覆された)標的の貪
食において主要な働きをしている(ベラー(Beler,D.I.)、スプリンガー(Spr
inger,T.A.)およびシュライバー(Schreiber,R.D.)(1982)ジャーナル・オ
ブ・エクスペリメンタル・メディシン、156、1000〜1009)。CD11b/CD
18はC3bi被覆標的細胞に対するナチュラルキラー活性にも寄与しているこ
とが報告されている(ラモス(Ramos,O.F.)、カイ(Kai,C.)、イェフェノフ
(Yefenof,E.)、およびクライン(Klein,E.)(1988)ジャーナル・オブ・イ
ムノロジー140、1239〜1243)。
先に述べたごとく、本発明のNIFは強い好中球抑制活性を有する。したがっ
て、好中球のインビトロにおける活性化を含む、好中球活性の抑制剤として用い
るのと同様、好中球の異常な活性化に特徴付けられる哺乳類の炎症疾患の予防ま
たは治療のために用いることができる。
すなわちNIFは好中球の異常な活性化が重要な役割を果たす炎症の治療に有
用である。出願人は、活性の理論もしくは機構をむすびつけることを意図するも
のではないが、本発明の化合物が好中球−内皮細胞相互作用によって活性化され
る炎症応答を妨害するものであると考えられる。すなわち、好中球の内皮細胞へ
の結合が阻止されれば、好中球が組織へ移動できず、組織のダメージを導く前炎
症応答を生じさせることができなくなる。NIFによる好中球−好中球結合およ
び/または凝集の抑制もまた毛細血管閉塞を阻止する。すなわち、NIFは、シ
ョック、拍動、急性および慢性同種移植拒絶、脈管炎、自己免疫性糖尿病、慢性
間接リューマチ、炎症性皮膚疾患、炎症性腸疾患、成人呼吸減少症候群(ARD
S)、心筋梗塞の後の虚血−再灌流損傷等の、様々な臨床症状で好中球の浸潤お
よび活性化が関与する様々な症状、敗血症または細菌性脳膜炎のごとき細菌の感
染によって生じる急性炎症の治療に有用である。
NIFの好中球活性抑制能のため、NIFは炎症、虚血、および他の好中球の
媒介する組織のダメージの生理的プロセスを抑制するのに有用である。これらの
関連機能におけるNIFの特異的活性のため、NIFは治療および/または診断
薬として特に有用である。
NIFに対するモノクローナルおよびポリクローナル両方の抗体は、診断目的
に有用であり、さまざまな生物流体内の目的とするペプチドの濃度を特定するの
に有用である。これらの抗体を使用するイムノアッセイを哺乳類のホストへの寄
生虫の感染の検査または哺乳類ホストの組織内における寄生虫からのNIFの検
出のための診断試験に有用である。さらにかかるイムノアッセイは組織ホモジネ
イト、クローン化細胞などからのNIFの検出および単離にも有用である。
本発明の他の観点では、適当なアジュバントと共にNIFを哺乳類の寄生虫感
染に対するワクチンとして用いることができる。NIFワクチンによる免疫化は
、寄生虫の感染に対する予防および治療の両方に有用である。NIFのフラグメ
ントおよびNIFのアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドもまた、ワクチンと
し
て用い得る。寄生虫による疾患症状は、これらの感染動物に、NIFに対してア
ンタゴナイズする寄生虫物質(NIFアンタゴニストのごとき)を投与して治療
し得る。化合物の抗NIF効果は上述のスクリーニング法によってスクリーニン
グし得る。かかる抗蠕虫剤の例としては、NIFに対する抗体、血清から単離さ
れる天然由来の抗体および上述のポリクローナルおよびモノクローナル抗体が含
まれる。化学合成された化合物であってNIFの抑制剤として働く化合物もまた
抗蠕虫剤として適する。
本発明の理解を助けるため、以下の実施例は、一連の実験の結果を含む。以下
の実施例は本発明に関するものであるが、当然、本発明を特に限定するものと考
えられるべきではなく、現在知られており、および将来開発される本発明の変形
であって、当業者が明細書に記載し、特許請求の範囲としている本発明の範囲に
入るとするものは、本発明の範囲である。実施例 実施例1 好中球抑制活性試験
本発明の好中球抑制因子は、好中球‐HUVECおよび好中球プラスチック接着試
験、好中球の同型凝集試験および過酸化水素放出試験で測定された好中球機能抑
制で活性を示した。この抑制因子は鉤虫組織溶解物から、ゲル濾過クロマトグラ
フィー、ハイドロキアパタイトおよびコンカナバリンAセファロースクロマトグ
ラフィー、C4逆相HPLC、モノ‐Qイオン交換クロマトグラフィーおよび分取用等
電点電気泳動を含む様々な方法による濃縮成分として単離された。この単離され
た因子は好中球活性化を抑制することにより、内皮細胞単層への好中球接着を抑
制すると考えられる。(A)細胞および試薬
クロネティックス(Clonetics、サンディエゴ(San Diego、CA))より入手し
た一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を5%Co2環境下15%ウシ胎児血清(FBS
)を含むEGM‐UV培地(クロネティックス)中に保存した。HUVECを二回継代し、
接着試験のためにフィブロネクチン塗布96ウエルマイクロタイタープレート(コ
ラボレーティブリサーチ(Collaborative Research)、ベッドフォード(Bedfor
d)、MA)に接種するために使用した。
プロテアーゼ抑制剤E64、ペプスタチンA、キモスタチンおよびAPMSFはカルバ
イオケム(Calbiochem、ラ・ジョラ(La Jolla、CA))より入手した。
好中球はヘパリン化またはクエン酸化ヒト血液から、製造者の指針に従ってモ
ノポリ(Mono-Poly)分離培地(ICN バイオメディカルズ(Biomedicals)、コ
スタ・メサ(Costa Mesa、CA))を用いて単離した。好中球をHSA緩衝液(pH 7
.4の10mMHEPES、1.2mM CaCl2、1.0 mM MgCl2、1%ヒト血清アルブミンを含むRPM
I1640)中に6.6×106細胞/mlの濃度で再懸濁し、単離後1時間以内に使用した
。
好中球を以下の手順で蛍光標識した。細胞をハンクス(Hank's)の平衡塩溶液
(HBSS)で一回洗浄し、20μg/mlのカルセイン(モレキュラー・プローブス(M
olecular Probes;ユーゲン(Eugene)OR)))を含むHBSS中に1×107細胞/ml
で再懸濁した。HBSSに添加する前にカルセインをまず50μlの乾燥ジメチルスル
ホ
キサイドに溶解した。ときどき転置撹拌して細胞を37℃でインキュベートした。
45分間のインキュベーション後、細胞を氷上で5分間冷却し、次いで氷冷HSA緩
衝液で二回洗浄した。標識好中球を接着試験に使用するために1.3×107細胞/ml
でHSA緩衝液に再懸濁した。
(1)タンパク質濃度
精製したNIFアイソフォームおよびその変異体のモルタンパク質濃度を、278nm
にて分光分析して計算した吸光係数を用いて測定した。計算はトリプトファン残
基に対しては5600cm-1・mol-1、チロシン残基に対して1420cm-1・mol-1であると
いう標準吸光値に基づいて行った。
(2)3D2−HRP複合体の調製
250μlのグルタルアルデヒド(25%溶液)を8mg/mlのホースラディッシ
ュパーオキシダーゼ溶液(シグマP8375;リン酸緩衝生理的食塩水(PBS))
1mlへ添加した。室温で2時間置いた後、混合物を透析用の袋(分子量分断、
12KD)へ移し、1リットルのPBSに対して5時間透析した。緩衝液は3回
新しいものに変えた。溶液を試験管に移した後、等体積の3D2精製モノクロー
ナル抗体(実施例26参照;2mg/mlの濃度でPBSに溶解した)を添加し
、さらに室温で一晩インキュベートした。グリシンを最終濃度が50mMとなる
ように添加して反応を止めた。ウシ血清アルブミン(BSA;カルバイオケム社
)を最終濃度が0.25%(w/v)となるように添加し、溶液を分注して−2
0℃で保存した。
(3)ビオチン化ピキアNIF−IFLの調製
ピキアから精製した組替えNIF(NIF−IFL)を、100mM酢酸緩衝
液(pH5.5)に対して透析して、1mg/mlの濃度の精製物を得た。等体
積の冷20mMメタペリオデート・ナトリウム(100mMの酢酸緩衝液pH5
.5中)を添加した。暗所、氷上にて20分間酸化反応が進むよう、放置した。
反応
はグリセロールを最終濃度が15mMとなるように添加して停止させた。試料はセン
トリコン30(Centricon30)による限外濾過によって脱塩した。ジメチルスルホ
キシドに溶解したビオチン-LCヒドラジド(ピアース(Pierce))を最終濃度が5
mMになるように添加し、その後さらに2時間室温にてインキュベートした。ビオ
チン化試料を続いて、12000の分子量分画スペクトラポアー(Spectrapor)膜に
てPBSに対して透析した。(B)好中球‐HUVEC接着アッセイ
カルセイン標識好中球(1.32×107細胞/mlで175μl)を、160nMのホルボール
‐12‐ミリステート‐13‐アセテート(PMA;シグマ、セントルイス、MO))の
存在下に175μlの試験分画(HSA緩衝液中で希釈)と室温で10分間プレインキュ
ベーションした。PMAは1.6mMの貯蔵濃度でジメチルスルホキサイド中に可溶化さ
れている。本アッセイのために96ウエルプレートを使用した。次ぎにそれぞれの
懸濁液の100μlを、HUVEC単層を含むウエル3個に100μlずつそれぞれ分注した
。好中球をHUVEC単層と共に37℃で30分間インキュベートした。非接着細胞を除
くためウエルをまず250μlのHSA緩衝液で満たし、パラフィルムでシールし、次
いで75×gで3分間遠心回転した。次に回転させたプレートをロッキングプラッ
トホームシェーカー上に5分間置き、その後内容物を傾斜流出して除き、ウエル
を100μlのHSA緩衝液で二回洗浄した。接着した好中球を100μlの0.1%(v/v)
トリトンX‐100(Triton X-100)(50mMトリス(Tris)HCl、pH 7.4中)中で溶
解し、プレートシェーカー上で10分間撹拌した。25μlの好中球/内皮細胞溶解
物を100μlの50mMトリス(pH 7.4)を含む96ウエルマイクロタイタープレートに
移し、ウエルをサイトフルオル(Cytofluor)蛍光プレートリーダー(ミリポア
(Millipore);ベッドフォード(Bedford、MA))上で530nm(485nm励起)で読
みとった。
鉤虫好中球抑制因子のヒドロキシアパタイト貯蔵調製液(実施例1(D)参照
)は約10nMのIC50でHUVEC単層への好中球接着を抑制した。(C)好中球‐プラスチック接着アッセイ
(1)プロトコル#1
このアッセイは実施例1から19までにおいて用いたものであり、該実施例にお
いてはこのアッセイが適当であった。
0.5mlのポリエチレン試験管中で好中球(6.6×106細胞/mlで20μl)を5μLの
PMA(0.8μM)と室温で5分間インキュベートした。HSA緩衝液中で希釈した20μ
lの試験分画を添加し、懸濁液を緩やかに混合した。この懸濁液の10μl分を3連
で、60ウエルHCA(テラサキ)プレート(ヌンク(Nunc)、ネーぺルビル(Naper
ville、IL))のマイクロタイターウエルに添加した。好中球を37℃で5分間イ
ンキュベートし、プレートをHBSS中に6回浸けてして非接着細胞を除いた。
倒立光学顕微鏡下で計数して接着好中球を定量した。結合は目視で判定した。
PMA活性化好中球はポリスチレンプラスチック上に伸展して固く接着した。非活
性化好中球(例えばPMAなし)は円く半透明のままであり、プラスチックに固く
接着しない。接着好中球はより、より大きく、形状はひし形で、顆粒の存在から
、より不透明であった。好中球抑制因子がない場合、80%以上のPMA活性化好中
球は急速かつ不可逆的にプラスチックに結合、形状変化し穏やかな洗浄工程では
除去されなかった。さらにアンサイロストマ(Ancylostoma)好中球抑制因子を
含む分画は、活性化好中球によるプラスチック結合にかなりの抑制効果を示した
。
鉤虫好中球抑制因子のハイドロキシルアパタイト貯蔵調製液(実施例1(D)
参照)は、約10nMのIC50でこの試験におけるプラスチックへの好中球接着を抑制
した。
(2)プロトコル#2
このアッセイは実施例20から29にて用いたものであり、該実施例においてはこ
のプロトコルが適していた。
好中球(60μl、HSA緩衝液内に8×106細胞/ml)を、15μlのPMA(2.4mM)およ
び5μlのCaCl2(0.05M)と共にインキュベートした。穏やかに混合した後、80
μlの剌激した細胞懸濁液を、HSA緩衝液にて希釈した試験試料20μlを入れた96
ウエル高結合性ポリスチレンマイクロタイタープレート(コスター(Costar))
へ添加した。37℃で45分間インキュベートした後、プレートをPBS内へ4回沈め
て非結合細胞を除いた。接着した細胞を、100μlの0.5%(w/v)クリスタルバイ
オレット指示薬(CAS 548-62-9)溶液を添加して染色した。10分間室温で放置し
た後、プレートをPBS
内へ4回浸してゆすいだ。染色された接着細胞の溶解は、100μlの1%(v/v)ト
リトンX-100溶液を添加して行った。605nmにおける吸収を、サーモマックス・プ
レート・リーダー(Thermomax plate reader)を用いて測定し、結合した好中球
を定量した。(D)好中球の同型凝集
サイエンコ(Scienco)デュアルチャネル凝集計(モリソン(Morrison、CO)
)中、37℃で好中球凝集を行った。好中球(6.6×106細胞で190μl)をガラスキ
ュベット(サイエンコ)中で2分間、室温で200μlの試験分画(HSA緩衝液で希釈
)とプレインキュベートした。10μlのPMAを凝集を開始するために添加した(最
終80nM)。好中球凝集の抑制は、PMA添加後5分間の最大凝集応答で測定した。
好中球抑制因子のヒドロキシアパタイト貯蔵調製液(実施例1(D)参照)は
約10nMのIC50で好中球接着を抑制した。(E)過酸化水素放出試験
好中球(6.6×106細胞/ml)を放出試験緩衝液(25mMグルコースを含むHBSS緩
衝液、10%FBS)200μg/mlフェノールレッド、32μg/mlセイヨウワサビペルオ
キシダーゼ)中で5分間、37℃で試験分画とインキュベートした。インキュベー
ション容器は、50%FBSを含むHBSSで37℃で60分間プレコートされた1.5mlのプラ
スチック試験管製であり、被覆された試験管を使用前に0.15M NaClで2回洗浄し
た。最終濃度250μMのFMLP(シグマ;セントルイス、MC)を添加し、好中球/試
験化合物懸濁液を37℃で60分間インキュベートした。細胞を8000×gで3分間遠
心してペレットとし、200μlの上澄液を96ウエルマイクロタイタープレートに移
した。1N Na0H 10μlをそれぞれのウエルに添加し、モレキュラー・デバイス・
サーモマックス(Molecular Device ThermoMax)プレートリーダーにより610nm
で吸光度を読みとった。過酸化水素濃度は標準曲線を用いて測定した。データー
ポイントは二連で行った。
鉤虫好中球抑制因子のハイドロキシルアパタイト貯蔵調製液は、約10nMのIC50
で好中球からの過酸化水素放出を抑制した。(F)CD11b/CD18結合アッセイ
マイクロタイターポリスチレンプレート(コスター-高結合性;96ウエル)に、
CD11b/CD18結合性、非中和マウスモノクローナル抗体LM2(精製LM2モノクローナ
ル抗体、濃度10μg/ml(0.1M NaHCO3、pH9.5中);LM2 ATCCハイブリドーマ#HB2
04)を、4℃で一晩のインキュベーションして被覆した。抗体を除いた後、ウエ
ルを1%(w/v)スキムミルク(ディフコ・ラボラトリーズ)を含有するPBS200μ
lにて室温でブロックした。2時間後、ブロック溶液を除き、ウエルを200μlのP
BSで3回洗浄した。
固定化したLM2モノクローナル抗体を以下のごとく、洗浄剤に可溶化させたCD1
1b/CD18レセプターの免疫-捕獲に用いた。好中球をポリモルフプレップTM(Poly
morphprepTM)(ニコムド(Nycomed))を用いて、クエン酸化した全血または軟
層(buffy coat)から、説明書に従って単離した。50mlの軟層から得た好中球の
ペレットを40mlのRPMIに再懸濁し、ホールボルミリステートアセテート(PMA)
を最終濃度が0.8μMになるように添加した。懸濁液を室温で20分間、穏やかに回
転させた。回転により集まった細胞を、5mlの0.02Mトリス-HCl、0.15M NaCl,0.
001MMgCl2、0.001M CaCl2溶液に再懸濁させた。5mlの2%トリトンX-100(バ
イオーラッドラボラトリーズ))、0.02MトリスpH7.5、0.15M NaCl、0.001M MgC
l2、0.001M CaCl2および0.02%チメロサル(シグマT-5125)を含有する緩衝液を添
加して細胞を溶解させた。PMSF(シグマ)およびヨードアセトアミド(メルク-
シュカルド)を最終的な濃度が1mMとなるように添加した。混合した後、懸濁液
を氷上へ1時間保持し、定期的にボルテックスをかけた。30,000gにて遠心分離
した後、上澄を0.02Mのトリス-HCl、0.15MのNaCl、0.01MのMgCl2にて2倍に希釈
し、2mlのIgGセファロース(シグマ)を加えた。2時間冷却中でインキュベート
した後、回転させて樹脂を沈殿させた。上澄を分取し、0.02Mトリス-HCl、0.15M
NaCl、0.01M MgCl2、0.001M CaCl2を含む溶液にて5倍に希釈した。50μlのこ
の好中球溶解物をLM2で被覆したウエル内へ添加し、2時間室温でインキュベー
トしてCD11b/CD18インテグリンを捕獲させた。PBSにて洗浄の後、プレートを-20
℃にて保存した。
ある種類のアッセイにおいては、NIFの結合(NIF-1NFL、およびそのアイソフ
ォームもしくは操作して得た変異体)のLM2/CD11b/CD18被覆プレートに対する結
合
を3D2-HRP複合体にて測定した。NIFを含有する試料を0.1%(w/v)スキムミルク
、0.001M MgCl2、0.001M CaCl2を含有するPBSにて希釈した。室温で2時間イン
キュベーションした後、0.001M MgCl2、0.001M CaCl2、0.02%ツイン20および0.0
2%チメロサルを含有するPBS200μlにてウエルを2回洗浄した。その後適当に希
釈した3D2-HRP複合体(典型的には2000倍に、0.1%(w/v)スキムミルク、0.001M
MgCl2、0.001M CaCl2を含有するPBSにて希釈したもの)を100μl添加した。1
時間後、0.001M MgCl2、0.001M CaCl2、0.02%チメロサルおよび0.02%ツイン20を
含有するPBS200μlにてウエルを3回洗浄した。HRPに対する基質(100μl;2.3m
gのオルソーフェニレンジアミンを11.6mlの50mMクエン酸、100mMリン酸2ナトリ
ウム緩衝液、pH5に溶解させ、2μlの35%H2O2を添加して調製)をウエルへ添加
した。反応を(典型的には20分後に)10μlの4M硫酸溶液を添加して止めた;605n
mにおける吸収をサーモマックス・プレートリーダー(モレキュラー・デバイシ
ズ)によって測定した。
または、NIF(NIF-1FL)他のNIFタンパク質およびNIF変異体)のLM2/CD11b/CD
18複合体への結合は、ピキアが産生する組替えNIF-1FLをビオチン化したものと
の競合によって測定した(実施例12参照)。一定量のビオチン化組替えNIF-1FL
とさまざまな量の非標識組替えNIF-1FLを含有する試料を0.001M MgCl2、0.001M
CaCl2および0.1%(w/v)カゼイン(ディフコ・ラボラトリーズ)を含有するPBS
内に調製した。各試料100μlをそれぞれLM2/CD11b/CD18で被覆したウエルへ添加
し、室温で2時間インキュベートした。結合していない物質を0.001M MgCl2、0.
001M CaCl2、0.02%ツイン20および0.02%チメロサルを含有するPBS200μlにてウ
エルを3回洗浄して除いた。保持されたビオチン化組替えNIF-1FLを測定すべく
、最初に100μlのエキストラアビジン(ExtrAvidin)-フォスファターゼ(シグ
マ)複合体を0.1%カゼインを含有するPBSにて希釈したものと共にインキュベー
トした。1時間の室温におけるインキュベーションの後、非結合複合体を0.001M
MgCl2、0.001M CaCl2、0.02%ツイン20および0.02%チメロサルを含有するPBS200
μlにてウエルを3回洗浄して除いた。アルカリ性フォスファターゼの基質(1.8
mlの0.01Mジエタノールアミン、0.5mMのMgCl2、pH9.5中に5mgのオルソ-ニトロフ
ェニルホスフェー
トを含有する溶液を100μl)を添加した。30分の後、ウエルをサーモマックス・
プレートリーダーにて405nmの吸収を調べて、結合しているビオチン化組替えNIF
-1FLを定量した。実施例2 鉤虫溶解物からの天然好中球抑制因子の単離 (A)鉤虫溶解物の調製
凍結イヌ鉤虫をアンタィボディー・システムズ(Antibody Systems、ベッドフ
ォード(Bedford、TX))から入手した。鉤虫はホモジェネートに使用するまで
は-70℃にて保存した。
鉤虫をホモジェネーション緩衝液(0.02M トリス‐HCl(pH 7.4)、0.05M NaC
l、0.001M MgCl2、0.001M CaCl2、1.0×10-5M ジチオトレイトール、1.0×10-5
E-64プロテアーゼインヒビター(CAS 66701-25-5)、1.0×10ー6ペプスタチンA(
イソバレリル‐Val‐Val‐4‐アミノ‐3‐ヒドロキシ‐6‐メチル‐ヘプタノイ
ル‐Ala‐4‐アミノ‐3‐ヒドロキシ‐6‐メチルヘプタン酸、CAS26305-03-3)
、1.0×10-5Mキモスタチン(CAS 9076-44-2)、2.0×10-5M APMSF(アミジノフ
ェニルメチルスルホニルフルオライド‐HCl)、5%(v/v)グリセロール)中
で、テクマール・ティッシュマイザー(Tekmar Tissuemizer)ホモジェナイザー
を用いて氷上でホモジェネートした。プロテアーゼインヒビターE64、ペプスタ
チンA、キモスタチン、およびAPMSFはカルバイオケム(Calbiochem、ラ・ジョラ
(La Jolla、CA))から得た。約3〜6mlのホモジェネーション緩衝液をグラム
毎(約500匹の虫)の凍結虫をホモジェナイズするために使用した。不溶物を二
回連続遠心分離工程、すなわち4℃、40,000×gmaxで20分間、次いで4℃、105,
000×gmaxで40分間にてペレット化した。上澄液を0.2μmセルローズアセテート
フィルター(コスタール(CoStar))を通して透明化した。(B)鉤虫溶解物のコンカナバリンAセファローズクロマトグラフィー
鉤虫溶解物(79ml)を、Con A緩衝液(0.02M トリス‐HCl、pH 7.4、1M NaCl
、0.001M CaCl2、0.001M MnSO4、1×10-5ジチオトレイトール)を3ml/分(90cm
/時間)の流速で2時間、前以て平衡化した1.6×8cmのカラム上を循環させて、1
6mlのコンカナバリンAセファローズ(ファルマシア(Farmacia))に吸着させ
た。
カラムは室温(24℃)であったが、溶解物の容器は工程中氷の上に置いた。続い
てカラムを80mlのCon A緩衝液で洗浄した。カラム中のCon A緩衝液を0.5Mメチル
‐アルファ‐マンノピラノシドで置換し、30分間流れを止めた。次いで0.5ml/
分(15cm/時間)の流速で流れを再開した。好中球機能試験で抑制活性を有する
物質を、0.5Mメチル‐アルファ‐マンノピラノシド(CAS 617-04-09)を含有す
るカラム体積の約3倍容量のCon A緩衝液で溶離した。この工程における好中球
接着抑制活性の収率は約38%であった。
図1は、上記の様に行われた鉤虫溶解物のコンカナバリンAセファローズクロ
マトグラフィーを示す。280nmの吸光度を時間の関数としてプロットした。(C)スーパーデックス200を用いる分子ふるいクロマトグラフィー
活性分画を固定化コンカナバリンAから溶離し(上記工程(B)参照)、10,00
0ダルトン分画膜(YM10)を装着したアミコン(Amicon)撹拌セルを用いて4℃
で限外濾過により濃縮し、次いで5〜20mlの濃縮液を分取用スーパーデックス(
Superdex)200(ファルマシア)の、同種のカラムと直列につないだ2.6cm×60cm
カラム(合わせた寸法2.6×120cm)に負荷した。双方のカラムを24℃で0.01Mリ
ン酸カリウム、pH 7.35、0.150M NaCl、1×10-5Mジチオトレイトールであらか
じめ平衡化した。クロマトグラフィーは流速1.5ml/分で行い、抗接着活性は典
型的には実験中に395〜410mlに溶出した(Kav 0.46、図2参照)。この溶離体積
は分子量50.000を有する球状タンパク質で予想されるものである。この工程での
好中球機能抑制活性の収率は典型的には70〜80%であった。使用するクロマトグ
ラフィー緩衝液のイオン強度を0.01Mリン酸ナトリウム、pH 7.00、および10%(
v/v)グリセロール添加に減少させた場合、溶出する活性は実質的により早くな
る(Kav=0.34)が、これはこの様な条件下ではタンパク質が凝集するか、または
そのコンフォーメーションを変える(より大きいストークス半径を想定)ことを
示唆している。
図2はコンカナバリンA精製鉤虫溶解物のスーパーデックス200クロマトグラ
フィーを示す。280nmにおける吸光度を溶離体積に対してプロットした。活性分
画を固定化コンカナバリンAから溶離し(上記工程(B)参照)、10,000ダルト
ン分画膜(YM10)を装着したアミコン(Amicon)撹拌セルを用いて4℃で限外濾
過により濃
縮し、次いで5〜20mlの濃縮液を調製用スーパーデックス(Superdex)200の、
同種のカラムと直列につないだ2.6cm×60cmカラム(合わせた寸法2.6×120cm)
に負荷した。双方のカラムは24℃で0.01Mリン酸カリウム、pH 7.35、0.150M NaC
l、1×10-5Mジチオトレイトールであらかじめ平衡化しておいた。クロマトグラ
フィーを流速1.5ml/分で行い、活性が典型的には実験中に395〜410mlに溶出し
た(Kav 0.46、図2参照)。(D)セラミック‐ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
分子ふるいクロマトグラフィーで精製した材料を、10キロダルトン分画膜を装
着したアミコン撹拌セルを用いて4℃で限外濾過により5倍に濃縮し、次いで水
で10倍に希釈した。脱塩試料を、24℃で0.001Mリン酸カリウム、pH 7.00、1×1
0-5M CaCl2、1.0×10-5ジチオトレイトールで平衡したセラミックヒドロキシア
パタイト(“HA”)(ペンタックス(Pentax)、アメリカン・インターナショナ
ル・ケミカル社(American InternationalChemical、Inc)、ナチック(Natick
、MA)、2μm)の0.8×10cmカラムに負荷した。負荷は0.8ml/分(95.5cm/時間
)の流速で行われた。カラムを0.5ml/分の流速で、0.001M〜0.0375Mの範囲のリ
ン酸カリウムの50ml直線勾配で展開した。好中球抑制活性はリン酸カリウム0.02
5Mの位置に鋭く溶出し、次いでリン酸カリウム0.0325Mの位置まで尾を引いた(
分画37〜48)。この工程の活性収率は約48%であった。
図3はスーパーデックス/コンカナバリンA精製鉤虫溶解物のセラミックヒド
ロキシアパタイトクロマトグラフィーを示し、分画番号に対する280nm吸光度お
よびリン酸カリウム濃度をプロットしたものである。好中球抑制活性は分画37〜
48に溶出した。(E)逆相HPLC
コンカナバリンAセファローズ、スーパーデックス、およびセラミックハイド
ロキシルアパタイトクロマトグラフィーで分画した鉤虫溶解物(〜100μg)を30
0オングストローム C4(バイダック(vydac))の0.48×15cmカラムに負荷し、
次いで0.1%トリフルオロ酢酸中の0〜60%アセトニトリル直線勾配、アセトニト
リル変化1%/分の1ml/分で展開した。好中球抑制活性は典型的には41〜45%
アセ
トニトリルの間に溶出し、活性は広いピークに対応する。
図4は好中球抑制因子の逆相HPLCの結果を示す。抑制活性は43〜45%アセトニ
トリルの間に溶出し、活性は43〜45分の広いピークに対応した。
実施例3 分取用等電点電気泳動を用いる鉤虫溶解物からの好中球抑制因子の単離
鉤虫溶解物は、同種のカラムを直列につないだ分取用スーパーデックス200の2
.6cm×60cmカラム(合わせた寸法2.6×120cm)による分子ふるいクロマトグラフ
ィーにより部分的に分画し脱塩した。双方のカラムは24℃で、0.01Mリン酸ナト
リウム、pH 7.00、グリセロール10%(v/v)であらかじめ平衡化された。350〜
370mlに溶出する接着抑制分画を1.4mlの40%バイオライト(Biolyte)3-10アン
フォライト(バイオラッド(BioRad))、および10%(v/v)グリセロールを添
加して55mlに希釈した。この混合液をロトフォール(Rotofor)分取用等電点電
気泳動調製セル(バイオラッド)中、定常電力12Wで5時間、4℃で泳動させた。
20分画を採集したところ、抑制活性は分画6〜9に検出したが、これは等電点4.
5に相当する。この工程に対する抑制活性の総収率は約30%であった。実施例4 イオン交換クロマトグラフィー
スーパーデックス75(ファルマシア)による分子ふるいクロマトグラフィーで
分画した鉤虫溶解物を等容積のモノQ緩衝液(0.02Mトリス‐HCl、pH 7.5)と混
合し、モノQ緩衝液で平衡した0.5×5.0cmのモノQアニオン交換カラム上に1ml
/分(306cm/時間)の流速で負荷した。カラムを0.5ml/分(153cm/時間)で0
〜0.5M NaClインカラム直線勾配で展開した。好中球抑制活性はNaClの0.4Mの位
置に一致して溶出した。抑制活性の総収率は約2〜5%であった。実施例5 SDS‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動
鉤虫溶解物と分画溶解物のタンパク質組成を、銀染色後に(モリセイ(Morris
ey、J.H.)、1981年、Anal.Biochem.117、307)ドデシル硫酸ナトリウムポリ
アクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した(レムリー(Laemmli、U.K
.1970年、ネイチャー(Nature)227、680)。試料を等容積の20%グリセロール
、5%SDS、および0.125M トリス‐HCl、pH 6.8と混合し、沸騰水浴中に5分間
置いた。次に試料を厚さ0.75mmの10%SDSポリアクリルアミドスラブゲル上に導
入し、定電圧(125V)で2時間、電気泳動を行った。
図5はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す。試料を10%ポリア
クリルアミドスラブゲルに導入した(ノバックス、ラ・ジョラ、CA)。左から右
にレーン1〜10は(1)分子量標準;(2)分子量標準;(3)HA分画#37〜41のHP
LC貯蔵液、非還元;(4)ブランク;(5)HA分画#37〜41のHPLC貯蔵液、還元;
(6)ブランク;(7)HA分画#37〜41のIIPLC貯蔵液、還元;(8)HA分画#37〜
41のHPLC貯蔵液、非還元;(9)HAすそ野分画#42〜48のHPLC貯蔵液、非還元;
(10)分子量標準である。使用した分子量標準は:ミオシン、200,000、(ウサ
ギ筋肉);ベーターガラクトシダーゼ、116,300、(大腸菌);ホスホリラーゼb
、97,400、(ウサギ筋肉);ウシ血清アルブミン、66,300;グルタミン酸デハイ
ドロキシラーゼ、55,400(ウシ肝臓);カルボン酸アンハイドロゲナーゼ、31,0
00、(ウシ赤血球);トリプシン抑制剤、21、500、(大豆)であった。
単離方法の最終工程(逆相HPLC)によれば、見かけの分子量33,000〜47,000の
範囲のを有する単一泳動帯のみがSDS-PAGE上に観察された(図5参照)。煮沸前
に50
mMジチオトレイトールを試料に添加した場合、泳動帯は見積分子量43,000〜54,0
00に泳動した。実施例6 単離した好中球抑制因子のレーザー脱吸着飛行時間型質量分析
実施例2(E)記載の様に単離したNIFの見積質量をレーザー脱吸着飛行時間型
質量分析(Leaser-Desorption-Time-of F1ight Spectrometry)で測定した。
試料の1ml分を、30%CH3CN水溶液、0.1%TFAに溶解した等容積の3,5-ジメト
キシ-4-ヒドロキシケイ皮酸の飽和溶液で希釈した。希釈試料を銅試料台上にス
ポットし、風乾した。質量分析を島津LAMS-50KSレーザー脱吸着飛行時間型質量
分析計(島津(株)、京都、日本)を用いて行った。試料のイオン化は、Nd-YAG
レーザー(スペクトラフィジックス社(Spactra-Physics、Inc.)、マウント・
ビュー(Mt.View、CA))の500レーザーパルス(355nm)パルス幅<5 nsec)
を試料台上にフォーカスして行った。得られたイオンを5kV電位で質量分析計中
に加速した。装置の更正は質量既知の標準タンパク質を用いて行った。
図6は単離した好中球接着抑制剤のレーザー脱吸着飛行時間型質量分析の結果
を示す。精製好中球機能抑制剤の5ピコモルをレーザー脱吸着飛行時間型質量分
析で分析した。見積質量は41,200であった。試料の少量の分画は82,400の質量を
有していたが、これは2量体であると説明された。実施例7 好中球抑制因子は糖タンパク質である
精製NIF(実施例2(E)により調製、〜2μg)を10%SDSポリアクリロアミド
ゲル中で電気泳動し、分離したタンパク質をウエスターンブロッティング(トゥ
ビン(Towbin)ら、1979年、プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカ
デミー・オブ・サイエンス・ユ-エスエー、76、4350〜4354)によりゼ-タープロ
ーブ(Zeta-ProbeR)ニトロセルロース膜(バイオラッド、エメリービル(Emery
ville、CA))に転移した。炭化水素をアルデヒドに酸化するため膜をグリコト
ラック(GlycoTrackTM)キットに対する指示書(オックスフォード・グリコシス
テムズ(Oxford GlycoSystems)、ローゼダール(Rosedale、NY))に記載の通
り処理し、次いでビオチン‐ヒ
ドラジドと反応させて存在する任意の炭化水素中にビオチンを取り込ませた。ビ
オチン化炭化水素を次いでストレプトアビジン‐アルカリホスファターゼ複合体
と反応させて検出した。膜上の糖タンパク質と結合したアルカリホスファターゼ
と反応する基質を用い、着色沈澱物を形成して可視化した。好中球抑制因子をこ
の方法を用いて染色した結果、炭化水素を含有し、従って糖タンパク質であるこ
とが示された。実施例8 鉤虫溶解物の有機溶剤抽出
好中球接着試験で抑制活性を有することが知られている鉤虫ホモジエネートの
1mlを、15mlのガラスコレックス(Corex)試験管中で1mlのクロロホルム/メ
タノール(2:1)混合液で1分間ボルテックスして抽出した。有機層を取り出し
、窒素ガス流下で乾燥した。残存脂質を0.5mlのHSA中で2分間超音波処理で再懸
濁した(ブランソン(Branson)モデル1200、ダンブリー(Danbury、CT))。最
終希釈1:2で試験した場合、再懸濁脂質は好中球‐プラスチック接着試験にお
いて何等の活性も持たなかった。実施例9 好中球抑制因子のペプチド断片のアミノ酸配列の製造と決定
NIFの試料を実施例2記載の通りに得た。それぞれ約10μgのNIFを含有する二
本の溶液をそれぞれ、最初にスピードバック(Speed Vac)上で試料が凍結する
まで脱ガスし、次いで凍結乾燥した。乾燥試料を50mM N-エチルモルホリン、pH
8.5中に再懸濁し、エンドプロテアーゼAspN(ベーリンガー・マンハイム(Boehr
inger Mannheim)、インデイアナポリス(Indianapolis、IN))、Lys C(ベー
リンガー・マンハイム、インディアナポリス、IN)またはトリプシン(ワーシン
トン(Worthington)、フリーホールド(Freehol、NJ))のいづれかで基質対酵
素比25:1で消化した。室温で24時間インキュベートし、微生物汚染を防止する
ため少量のイソプロパノールを消化混合液に添加しておいた。消化の最終段階で
試料をスピードバック上で脱ガスし凍結乾燥した。逆相HPLC(RP HPLC)による
分画のため、消化混合物を6Mグアニジン/HCl中に再懸濁した。クラトス検出
器(ABI、フォスターシティー(Foster City、CA))を有するLKB HPLCシステム
を用い、東洋ソーダ120T C18カラム(4.5×250mm)HPLCでペプチドを単離した。
カラムを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル直線勾配で展開した
。流速0.5ml/分、120分で5〜54%アセトニトリルの勾配とした。A206およびA2 80
でモニターしたペプチドピークを、補正ピーク検出を有するLKB スーパーラ
ック(SuperRac)を用いて採集した。採集分画を炭酸アンモニウムで中和、20μ
gのSDSを添加し、分画を配列決定前にN2下で乾燥した。ペプチドを470A/120A/
900A気相シーケンサー(ABI、フォスターシティー、CA)で配列決定した。残査
同定はHPLCクロマトグラムの解析により手動で行われ、PTH残査の定量は900Aコ
ンピューターのオンライン解析で行われた。タンパク質をアルキル化しなかった
ため、システイン残基はこの解析では検出されなかった。タンパク質がトリプシ
ンで消化された実験では断片化の前にタンパク質がビニルピリジンでアルキル化
されたため、トリプシン断片中にシステインが検出された。HPLC溶離でバックグ
ラウンドピークがPTH残基と重なったため、アスパラギン酸とトリプトファン残
基は同定されたが定量されなかった。初期収量は1pmole〜10pmoleの範囲であり
、繰り返し収率は通常92〜95%の間であった。図7はタンパク質加水分解断片か
ら得られたアミノ酸配列を示す。図7で括弧で囲まれた位置は絶対的な確度で決
定されなかった。大文字で始まるアミノ酸の記号はより高い収率で観測され、こ
の場合は好ましい。ペプチドのエドマン(Edman)分解中に特定のアミノ酸が同
定されなかった位置では、記号Xxxにより未決定のアミノ酸を示す。スカルボラ
フ(Scarborough)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.
Biol.Chem.266:9359、1991年;ペリン(Perin)ら、ジャーナル・オブ・バイ
オロジカル・ケミストリー266:3877、1991年参照。実施例10 鉤虫由来好中球抑制因子のクローニングと配列決定
NIFを以下のように構築されたイヌ鉤虫cDNAライブラリーからクローン化した
。全RNAをグアニジンチオシアネート抽出により鉤虫全体から単離した(マクド
ナルド(McDonald)ら、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)152
:21
9(1987年))。ポリ(A)+RNAをオリゴd(T)セルロースアフィニティークロマ
トグラフィー(ポリAクイック;ストラタジーン(Stratagene)、ラ・ジョラ、
CA)を用いて500μgの全鉤虫RNAから精製した。ランダムヘキサマープライマー
(ramdom hexamer primer)およびエビアンマイオブラストーシスウイルス(avi
an myoblastosis virus(AMV))逆転写酵素(アマーシャム(Amersham)、アー
リントン・ヒルズ(Arlington Hills)、IL)を用いて、二重らせんcDNAをポリ
(A)+RNAから合成した。1キロ塩基対より大きいcDNA断片を6%ポリアクリル
アミドゲル上で精製し、標準手法を用いてEcoRIリンカー(ストラタジーン)に
連結(1igate)した。連結したcDNAをラムダgt10(ストラタジーン、ラ・ジョラ
、CA)中に連結し、ギガパックゴールドII(Gigapack Gold II、ストラタジーン
)を用いてパッケージ化した。
鉤虫NIF用二重らせんcDNAプローブを、NIFペプチド配列由来のプライマーを用
いて鉤虫RNAのポリメラーゼ連鎖反応により作成した。二本のNIFペプチドのため
に得られた配列(図7参照)、T-20(Leu-AIa-Ile-Leu-Gly-Trp-Ala-Arg)およ
びT-22-10(Leu-Phe-Asp-Arg-Phe-Pro-Glu-Lys)を、プライマー30.2および43.3
.RCそれぞれを設計するために使用した。30.2および43.3.RCの配列はそれぞれ5
’-CTCGAATTCT(GATC)GC(ATC)AT(ATC)(CT)T(GATC)GG(ATC)TGGGC-3’および5’-
CTCGAATTCTT(TC)TCTGG(GA)AA(GA)CG(GA)TC(GA)AA-3’であった。括弧にいれた
位置は余分なヌクレオチドを表す。一本鎖cDNAを、1μgの鉤虫ポリ(A)+RNA
(調製法は上記)をランダムヘキサヌクレオチドとプライムし、AMV逆転写酵素
(アマーシャム、アーリントンヒルズ、IL)で伸長させて合成した。400pmolの3
0.1および43.RC(リサーチジェネチックス(Research Genetics)、ハントスビ
ル(Huntsville)、AL製)を有するPCRジ−ンアンプキット(GeneAmp kit)パー
キンエルマー(Perkin Elmer)、ノルオーク(Norwalk)、CT)を用い、パーキ
ンエルマーDNAサーマルサイクラー(Thermal Cycler)で反応生成物の20分の1
を増幅した。PCR条件は:サイクル 1〜2、変性94℃、2分間、アニーリング5
8℃、2分間および伸長72℃、2分間;サイクル3〜42、変性94℃、45秒間、アニ
ーリング58℃、45秒間および伸長72℃、2分間であった。30.2/43.3.RC断片と
呼ばれる〜430塩基対
増幅生成物を反応汚染物から6%、ポリアクリルアミドゲル(ノベックス(Novex
)、サンディエゴ(San Diego)、CA)からの電気溶出により分離した。30.2/4
3.3.RC断片を、ランダムプライマーラベリング(ストラタジーン、ラ・ジョラ、
CA)を用いて[a-32P]-dCTP(アマーシャム)で標識した。クロマスピン(Chro
maSpin)カラム(クロンテック(Clontech)、パロ・アルト(Palo Alto)、CA
)を用いて標識DNAを非取り込みヌクレオチドから分離した。
プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション条件は6X SSC(SS
C:150mM NaCl、15mMクエン酸ナトリム)、0.02Mリン酸ナトリウム pH 6.5、5X
デンハルト(Denhardt)液、0.5%(w/v)SDS、0.01M EDTA、100μg/ml切断
変性サケ精子DNA、0.23%デキストラン硫酸、50%ホルムアミドであった。プレ
ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションは42℃であり、2X SSCで
15分間の2回の前洗浄の後、フィルターを60℃、0.2X SSCで20分間洗浄した。フ
ィルターを-70℃で、2枚の増感スクリーンを有するX-線フィルムに終夜露光し
た。
ランダムプライム鉤虫ライブラリーの約300,000個の組み替えファージ(非増
幅)を30.2/43.3.RC NIF PCR断片でスクリーニングした。約120個の組み替えフ
ァージがこのプローブにハイブリダイズし、その7個をヌクレオチド配列解析の
ために単離した。これらのファージ単離物中に含まれるEcoRI cDNA断片をp−ブ
ルースクリプトIIベクター(ストラタジーン、ラ・ジョラ、CA)中にサブクロー
ン化することにより、二重鎖配列決定は効率的となった。シーケナーゼバージョ
ン2.0キット(U.S.バイオケミカル、クリーブランド、OH)、および合成オリゴ
ヌクレオチドプライマーを用いてDNAを配列決定した。
NIFファージ単離物は、精製NIFに対して得られたアミノ酸配列に顕著に類似す
るポリペプチドをコードするDNAを含んでいた(図7参照)。図8は好中球抑制
因子cDNA(クローン1FL)のコード領域と、これより推測されるアミノ酸配列を
示す。単一単離物NIF-1FLは、メチオニンで開始しTGA停止コドンで終わる825nt
のオープンリーディングフレームをコードした(図8)。NIF-1FLでコードされ
るNIFポリペプチドは計算上の分子量30,680ダルトンを有する274アミノ酸残基で
ある。図
9は数個の好中球抑制因子アイソフォームクローンから推測されるアミノ酸配列
の並びを示す。それぞれの配列は、単離された様々なクローンに対応した配列断
片を表す。それぞれのセグメントはそのクローン名により同定される。(例えば
1FL、3P、2FL、3FL、4FL、6FLおよび1P)。クローン1FLの完全なアミノ酸配列を
標準3文字アミノ酸コードでそれぞれの配列セグメントの上に表記した。特定の
位置にクローンIFLと同一アミノ酸を有するクローンは゛「・」で表される。ア
ミノ酸置換は適当な3文字コードで示される。「---」は配列の並びを維持する
ために挿入されたスペースである。1FLおよび1P配列のカルボキシ末端はアステ
リスクで表される。他の6個のNIFファージ単離物は部分NIFポリペプチドをコー
ドした;すなわちそれらはNIF-1FLポリペプチドと比較してN-末端メチオニン残
基も、C-末端停止コドンも含まない(図9)。これらの部分NIF単離物は、プロ
トタイプNIF-1FLポリペプチドとかなり類似しているが同一でない6個の予測さ
れたNIFアイソフォームを包含する。実施例11 機能性組み替え好中球抑制因子の動物細胞による発現
(A)発現
NIF-1FLアイソフォームをコードするDNAセグメントを、コード領域の5’-お
よび3’-末端に対する特異的プライマーを用いて原λgt10単離DNAから増幅した
。
5’-プライマーはエンドヌクレアーセ部位(EcoR1)一致リボソーム結合部位
(コザク(Kozak、M)、セル 44:283(1986年))、NIFのATG開始コドンおよ
びそれに続く遺伝子の6コドンから構成される。3’-プライマーはNIFのTGA終
止コドンの3’-側に対する特異的ヌクレオチド配列、および制限エンドヌクレ
アーゼ部位(EcoR1)から構成される。5’-および3’-プライマーのヌクレオ
チド配列はそれぞれ5’-ACC-GAA-TTC-ACC-ATG-GAG-GCC-TAT-CTT-GTG-GTCおよび
5’-CTG-GAA-TTC-TCG-CTT-ACG-TTG-CCT-TGG-Cであった。
1mlの希釈緩衝液に懸濁した5μlのラムダプラークをDNA鋳型として使用した
。増幅は5’-および3’-プライマー(リサーチ・ジェネティクス製)それぞれ
400pmolを有するPCRジーンアンプキット(パーキンエルマー、ノルウオーク、CT
)を用いて、パーキンエルマーDNAサーマルサイクラーで行った。PCR条件は:サ
イクル1、97℃で1分間変性、37℃で1分間プライマーアニーリング、37℃から
72℃へ2分間で勾配、および72℃で2分間増幅;サイクル3および4、94℃で1
分間変性、37℃で1分間プライマーアニーリング、37℃から72℃へ2分間で勾配
、および72℃で2分間増幅;サイクル5〜34、94℃で1分間変性、45℃で1分間
プライマーアニーリング、および72℃で2分間増幅;とした。
増幅生成物(887bp)を反応混合物からクロマスピン(ChromaSpin)400カラム
(クローンテック・ラボラトリーズ(Clontech Laboratories、Inc)、パロアル
ト(Palo Alto)、CA)を用いて分離した。増幅生成物の末端は制限エンドヌク
レアーゼEcoR1で刈り込み、得られたDNA断片(875bp)を標準技法を用いてEcoR1
消化プラスミドpSG5(ストラタジーン、ラ・ジョラ、CA)に結合した。得られた
結合混合物をスールTM(SURETM)コンピテント細胞(ストラタジーン、ラ・ジョ
ラ、CA)を形質転換するために使用した。
適切な配位の875bp挿入部を含む単離物(pSG5 SV40ロモーターに近接したコー
ド領域の5’-末端)を50mg/mlのアンピシリンを有する250mlのサークルグロー
(Circle GrowTM、バイオロ(Biolo)、サンディエゴ、CA)中で生育させ、プラ
スミドDNAをマジックマキシプレップTM(Magic Maxi PrepTM)DNA精製システム
(プロメガ(Promega)、マディソン(Madison)、WI)を用いて調製した。精製
プラスミッドDNAの10μgを3.5×106COS7細胞(ATCC No.CRL 1651)中にエレク
トロポーレーション(electroporation)、(0.4cmエレクトロポーレーションセ
ル、325V)250F、無限抵抗、ヘペス(Hepes)緩衝生理食塩水中7×106/mlで0.
5ml細胞、pH 7.0、4℃)により導入した。エレクトロポーレーション後、37℃
であらかじめ暖めらた10%胎児ウシ血清を添加した14mlの温DMEM:RPMI 1640(
1:1比)で希釈する前に細胞を氷上に2〜3分間置いた。細胞を100mm細胞培養
ディッシュに入れ、8%CO2下で37℃でインキュベートした。静置後1、2、お
よび3日で細胞培養上澄液を取り出し、NIF活性を試験した。(B)細胞培養培地中の好中球抑制因子の検出および定量
エレクトロポーレーションされたCOS7細胞(pSG5/NIFIFLCR1)より15mlの細
胞培養液を収穫した。好中球‐プラスチック接着試験(実施例1(C))により
直接試験した場合、この液は1:8の希釈で好中球抑制活性を示した。過酸化水
素遊離試験(実施例1(E))では約1:14のIC50が測定された。対照の発現プラ
スミド(pCAT;プロメガ(Ptomega)、マディソン(Madison)、WI)を有するCO
S7細胞から収穫した細胞培養液を試験しても何等の活性も認められなかった。(C)CHO細胞内の安定な発現
(1)プラスミドDNAの調製
pSG5構築物に挿入された、上記(A)のNIF-1FL挿入物を制限エンドヌクレアー
ゼEcoRIにより消化して切り出した。875bpのNIF-1FLフラグメントをゲル精製(
マジック・ピーシー・プレップ(Magic PC prep)プロメガ、マデイソン、ウイ
スコシン)にかけ、EcoRIで消化したpブルースクリプトII KS(pBluescriptII K
S)(ストラタジェン、ラ・ジョラ、カリフォルニア)に、標準的方法により連
結させた。得られた連結混合物をスールTMコンピテント細胞を、販売者(ストラ
タジェン、ラ・ジョラ、
カリフォルニア)に記載された方法に基づいて形質転換させるために用いた。形
質転換された細胞をIPTGおよびX-galを含有するLB寒天培地上に蒔いた(サンブ
ルック、フリッチュおよびマニアティス、モレキュラー・クローニング、ア・ラ
ボラトリー・マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プ
レス、1989、1.85から1.86ページ)。白色のコロニーについて、NIF-1FL挿入物
を適当な位置に有するフラグメントを、プラスミドDNAをBamHIにて消化して
調べた;200bpのBamHIフラグメントが得られるプラスミドを有するコロニーを保
持した。このコロニーのうちの一つからプラスミドを調製し(マジックマキシプ
レップ、プロメガ、マデイソン、ウィスコンシン)、HindIIIおよびNotIで消化
して5’末端にHindIIIオーバーラップを、および3’末端にNotIオーバーラッ
プを有するNIF-1FLフラグメントを得た。このDNAフラグメントをゲルにより
精製し、HindIII-NotIで消化したpRC/CMV(インビトロゲン(Invitrogen)、サ
ンディエゴ、カリフォルニア)内に連結させた。得られた連結混合物をスールTM
コンピテント細胞を形質転換させるのに用いた。pRC/CMV-NIF-1FLのミリグラム
量をマジックマキシプレップキットを用いて調製した。
大腸菌RRI株内のプラスミドpLTRdHFR26(モレキュラー・セル・バイオロジー
、3:32-43(1983)、ネイチャー275:617-623(1978))をATCC(アメリカン・
タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランド)から入手した
。プラスミドDNAはクロラムフェニコール増幅培養物(サンブルック、フリッ
チュおよびマニアティス、モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マ
ニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、1989、1.
33ページ)から、マジック・マキシ・プレップ・キットを用いて精製した。
(2)CHO細胞のトランスフェクション
ジヒドロホラートデヒドロゲナーゼ遺伝子欠損(dhfr)チャイニーズ・ハムス
ター・卵巣細胞(CHO細胞)をATCC(カタログ番号:CRL9096)から入手し、RPMI1
640とDMEM培地(アーウィン・サイエンティフィック(Irvine Scientific)、サ
ンタ・アナ、カリフォルニア)の1:1混合物に10%FBS、10mMヘペス、必須アミ
ノ酸、非必須アミノ酸、5×10-5Mのβ-メルカプトエタノール、10mMのピルビン
酸ナトリウムおよ
び2mMのグルタミンを添加した培地(コンボ(combo)培地)内で増殖させた。CH
O細胞を燐酸カルシウムトランスフェクション系を用い、添付の説明書(ギブコB
RL、ゲイサースブルグ、メリーランド)に従って、10cmの細胞培養ディッシュ内
にて以下の割合でトランスフェクトさせた:1×106個の細胞、20gのpRC/CMV-NIF
-1FLのDNAおよび5gのpLTRdHFR26のDNA。細胞を共に投入したDNAと共に
12時間37℃でインキュベートした。
(3)CHO-NIF-1FLクローンの選択と増幅
接着した細胞を新たなコンボ培地にて1度洗浄し、500μg/mlの抗生物質G418
(ギブコBRL、ゲイサースブルグ、メリーランド)を含有するコンボ培地中で2
週間37℃で培養して、ネオマイシン耐性を示すクローンを選択した。G418抵抗性
の細胞を標準的なトリプシン処理により培養ディッシュから取り、500μg/mlのG
418を含有する新たなコンボ培地にて1度洗浄した。洗浄した細胞を10cmの細胞
培養用ディッシュへ接着させ(ディッシュあたり1×106個)、500μg/mlのG418
および10、20、40、60、または80nMのメトトレキサート(methotrexate)(シグ
マ、セントルイス、ミズーリ)を含有するコンボ培地で覆った。2週間、37℃で
インキュベーションした後、各ディッシュのコロニーおよび培養上清を好中球の
接着を見るカルセイン(calcein)アッセイを用いてNIF活性を調べた。NIF活性
を示した細胞をトリプシン処理により回収し、単一コロニーを得るためにプレー
トに蒔く前に洗浄した。NIF活性を発現している選択した単一細胞のひとつを8F5
と名付け、これをさらなるメトトレキサート増幅に用いた。
8F5細胞を10cmの細胞培養ディッシュ内でコンフルエントとなるまで増殖させ
、トリプシンにより剥がし、洗浄しておいた。細胞を500μg/mlのG418を含有す
るコンボ培地で希釈して、1×106細胞を10cm培養ディッシュ内へ蒔いた。接着
した細胞を500μg/mlのG418および40、80、160、320、または640nMのメトトレキ
サートを含有するコンボ培地で覆った。再び2週間、37℃にてインキュベーショ
ンした後、ディッシュをNIF活性のアッセイを行ってコロニーおよび培養上清に
ついて調べた。トリプシン処理により上記のごとく細胞をプレートから剥がした
。320nMのメトトレキサートのディッシュから得られた細胞を集めたものをさら
に用
い、個々の細胞に単離した。単一細胞単離操作を3ラウンド続けて各コロニーに
ついて行って、クローンの純度を確保した。最終的に得られたセルラインに8F5-
1E6-8C11-1G8と名付けた。これは500μg/mlのG418および320nMのメトトレキサー
トの存在下で50g/ml以上のNIFを産生する株である。(D)固定化コンカナバリンAクロマトグラフィーによる好中球抑制因子活性の 分画
5mlのCOS7(pSG5/NIFIFLCR1)細胞培養液を等容積の0.02Mビストリス‐プロパ
ン‐HCl、pH 7.3、1M NaCl、0.001M CaCl2、0.001M MnSO4と混合し、同じ緩衝
液で平衡したコンカナバリンAセファローズ(ファルマシア、ピスカタウエー(
Piscataway)、NJ)の1mlカラム上に負荷した。20℃、2ml/分で1時間、試料を
閉じたループでカラムを通して循環させた。カラムを次に5mlの0.02Mビストリス
‐プロパン‐HCl、pH 7.3、1M NaCl、0.001M CaCl2、0.001M MnSO4で洗浄した。
カラム内に残留する緩衝液を0.5M メチル‐アルファ‐マンノピラノシドを含む
緩衝液で置き換え、流れを15分間止めた。流れを1ml/分で再開し、約11mlの糖
含有溶離液を採集した。溶離液を1リッターの10mMリン酸カリウム、pH 7.35、1
50mM NaClに対し4℃で18時間透析し、10,000分子量分画膜(セントリプレップ1
0(CentriPrep 10)、アミコン、バーバリー(Bevely)、MA)を装着したアミコ
ン遠心濃縮器を用いて1.1mlに濃縮した。好中球‐プラスチック接着アッセイ(
実施例1(C))でアッセイした場合、この試料は1:16の希釈で実質的な活性を
示し、固定化コンカナバリンAに結合した細胞培養液中に化なりの部分の好中球
機能抑制活性が存在することを示している。この挙動はアンサイロストマ・カニ
ナム(実施例2(B))の粗抽出液で観察されたものと同等であり、好中球機能
の抑制剤として作用する糖タンパク質の形質転換動物細胞COS7からの合成と分泌
から得られた抑制と符合する。
対照として、DNAなしにエレクトロポーレーションされた細胞からの5mlのCOS7
細胞培養培地を、上記と同じ方法でコンカナバリンAでクロマトグラフィーを行
った。好中球‐プラスチック接着試験(実施例1(C))を用いて、コンカナバ
リンA‐セファローズクロマトグラフィー後も何等の活性も認められなかった。(E)ポロスII O/Mを用いる陰イオン交換クロマトグラフィーによる好中球抑 制因子活性分画
5mlのCOS7(pSG5/NIFIFLCR1)細胞培養液を1リッターの10mMビストリス‐プ
ロパン‐HCl、pH 7.0に対し4℃で18時間透析し、同じ緩衝液で平衡したポロス
(Poros)IIQ/M(パーセプティブ バイオシステムズ(PerSeptive Biosystems
)、リーグシティー(League City)、TX)の0.46×10cmカラムに3ml/分で負荷
した。カラムを平衡緩衝液の1容積で洗浄し、14.4カラム容積にわたって塩化ナ
トリウムの0〜0.5M直線勾配で展開し、2ml分画を採集した。好中球‐プラスチッ
ク接着試験(実施例1(C))で、約0.45M NaClに対応する分画17および18に有
意の活性が検出された。10,000 MWCO膜(アミコン・マイクロコン 10、バーバ
リー、MA)を装着した遠心濃縮器を用いて分画を24倍に濃縮すると、分画16〜19
に実質的な活性が見いだされた。
アンサイロストマ・カニナム由来の抽出液に存在する好中球抑制因子も、0.4M
のNaClで陰イオン交換カラム(モノQ、ファルマシア、ピスカットウエー、NJ)
から同様に溶離した(実施例4)。実施例12 ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における機能性組み替え好中球抑制因 子の発現 (A)ピキアシャトル/発現ベクターの説明
以後言及するピキア(Pichia)GTS115株(his4)(ストロマン(Stroman)D.M
)ら、米国特許第4,855,231号(1989年8月))、および大腸菌-ピキアシャトル
ベクターpHILS1およびpHILD5は、フィリップス・ペトロリウム社(Phillips Pet
roleum company)バートレスビル(Bartlesville)、オクラホマ)からライセン
スされたピキア酵母発現システムの一部である。
ピキアの取扱いの全ては、基本的にはサッカロミセス・セレビジュー(Saccha romyces cerevesiae
)について遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)
、231〜471頁、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(ジョー
デル(D.V.Goeddel)編集、1991年)、およびストローマンら、米国特
許第4,855,231号(1989年8月8日)記載の通りである。
ピキア・パストリス中にNIFの発現を導くために使用したpHIL7SP8ベクターは
、pHILS1およびPHILD5、および合成的により調製した断片からアセンブルした。
pHIL7SP8プラスミドはpBR322配列上にクローン化された以下の要素を含む:
1)5’AOX1、ピキア・パストリスアルコールオキシダーゼの5’非翻訳、お
よびプロモーター配列の約1000bpセグメント(ストローマンら、米国特許第4,85
5,231(1989年8月8日)、その開示は本明細書に参考資料として含まれる)。
2)PHO1 ピキア・パストリス分泌シグナル。
3)PHO1シグナルに融合した19-アミノ酸合成プロ配列。このプロ配列はクレ
メンツら(Clements et al.,1991年、ジーン(Gene)、106:257〜272)により
酵母アルファ因子リーダー配列に基づき設計された2個の19-aaプロ配列のひと
つである。
4)合成マルチクローニング部位
5)3’AOX1、aox1末端配列の約256bpセグメント(ストローマン、D.M.ら、
米国特許第4,855,231号(1989年8月8日)参照、その開示は本明細書に参考資料
として含まれる)。
6)ホストGTS115中の欠損his4遺伝子を補足するために2.4kb断片上に含まれ
るピキア・パストリスヒスチジノールデヒドロゲナーゼ遺伝子his4(ストローマ
ン、D.M.ら、米国特許第4,855,231号(1989年8月8日)参照、その開示は本明細
書に参考資料として含まれる)。
7)5’AOX1領域と共に部位指向組み込みに必要な3’AOX1未翻訳DNA配列領
域(ストローマン、D.M.ら、米国特許第4,855,231号(1989年8月8日)参照、そ
の開示は本明細書に参考資料として含まれる)。(B)pHIL7SP-NIcl/pHIL7SP/NIc10の構築とピキア中での発現
DNAコード化NIFのセグメントを、コード領域の5’-および3’-末端に対する
特異的プライマーを用いてブルースクリプトII(ストラタジーン、ラ・ジョラ、
CA)中のNIF-1FLのサブクローンからPCR増幅した。
5’-プライマーは制限エンドヌクレアーゼ部位を含まず、プロテアーゼ処理N
IF
の5’-末端で始まる領域およびそれに続く7コドンに対応するものである。成
熟NIFの最初の残基に対するコドンはAATからAACに変えられた(双方のコドンは
アスパラギンひ翻訳される)。3’-プライマーはコード領域の3’-末端で、天
然遺伝子のTGA停止コドンを置き換えるTAA停止コドン、および3個の特異的制限
エンドヌクレアーゼ部位(HindIII、SpeI、およびBglII)の8コドンで構成され
た。使用された5’-および3’-プライマーの配列はそれぞれ5’-AAC-GAA-CAC
-AAC-CTG-AGG-TGC-CCGおよび5’-CCT-CCT-CCT-AGA-TCT-AAG-CTT-ACT-AGT-TTA-T
AA-CTC-TCG-GAA-TCG-ATA-AAA-CTCであった。
100pmolのそれぞれのプライマー、2ユニットの1Xベント(Vent)緩衝液(ニュ
ーイングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)、バーバリー(bervery
)、MA)、およびそれぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを用いて増幅を
行った。鋳型DNAとして100ngのブルースクリプトII含有NIF-1FLを使用した。PCR
条件は10サイクルすべてで同じとした:95℃で1分間変性、60℃で1分間プライ
マーアニーリング、および72℃出1.5分間増幅。増幅生成物は上記の通り精製し
、BglIIで消化した。
次に増幅精製物を標準手法を用いてStuI-Bgl II開裂pHIL7SP8中に連結させた
。連結混合物を用いて大腸菌WK6を形質転換し、アンピシリンプレート上でアン
ピシリン耐性クローンを得た。制限およびDNA配列解析に基づき、得られた2個
のプラスミドクローン、pHIL7SP-NI1c1およびpHIL7SP-NI1c10中の正しい挿入配
列を、ピキア・パストリス酵母株GTS115(his4)を形質転換するために選んだ。
これらのベクターをNot1(A0X1領域中で発現カセットへの組み込みを目標)、ま
たはSall(HIS4遺伝子座への組み込みを目標)で消化した。
4個の制限DNA調製液を基本的にはベッカー(Becker、D.)とガレンテ(Guare
nte、L.)、メソッド・イン・エンザイモロジー(Method in Enzymology)、194
巻、182〜189頁(1991年)に記載通り別々にピキア中にエレクトロポーレーショ
ンで導入した。簡単に言えば細胞をYEPD培地、30℃で0D600 1.3〜1.5に生育させ
た。細胞を4℃(1500×gで5分間)でペレット化し、500mlの氷冷無菌蒸留水中
に再懸濁した。細胞を上記の通りペレット化し、250mlの氷冷蒸留水中に再懸濁
した。細胞
を再びペレット化後、1mlの氷冷1Mソルビトール中に再懸濁した。1Mソルビトー
ル中の40μlの細胞を5μlの直鎖状DNAと混合し、混合液を氷冷した0.2cmギャッ
プエレクトロポーレーションキュベット中に移した。氷上に5分間置いた後、細
胞を50uF、1.5kV/cm、および抵抗200Ωでパルスした。1mlの氷冷1Mソルビトー
ルをキュベットに添加し、100〜500μlの細胞懸濁液を最少デキストローズプレ
ート上に散布した。コロニーが現れるまでプレートを30℃でインキューベートし
た。His+形質転換体を選別するため形質転換混合物を最少デキストローズ(MD)
培地上にプレートした。NIF発現に対する継続選別を、ストローマン、D.W.ら、
米国特許第4,855,231号(1989年8月8日)記載通りメタノールを含む最少培地
中のフラスコ浸透培養で行った。(C)細胞培地中の好中球抑制活性の検出および定量
メタノール誘導の48時間後に0.22μmセルローズアセテート膜を通して濾過し
た細胞から、1,800×gmaxで15分間遠心してピキア細胞上澄腋(pHIL7SP-N1c10)
を得た。濾過した細胞上澄液を10,000 MWCO膜(アミコン・マイクロコン 10、
バーバリー、MA)を装着した遠心濃縮器を用いて約3倍に濃縮し、G-25セファデ
クススーパーファイン(ファルマシア、ピスカタウエイ、NJ)の1×10cmカラム
を用いるゲル濾過で脱塩した。好中球‐プラスチック接着試験を用いて(実施例
1(C))脱塩上澄液(ゲル濾過で2Xに希釈)は1:640に希釈したものまで好中
球抑制活性を示した。組み替え抗血栓症タンパク質を発現し、好中球抑制活性を
欠くピキア細胞から、同様に収穫し処理した細胞上澄液を用いた場合には、何等
の活性も見られなかった。(D)ピキア由来の好中球抑制因子の精製
48時間のメタノール誘導に引き続き、メタノール誘導後48時間のピキア細胞上
澄液(pHIL7SP-N1c10)の75mlを1,800×gmaxで15分間の遠心、および0.22μmの
セルローズアセテート膜を通す濾過によって得た。これを10,000分子量分画膜(
YM10)を装着したアミコン撹拌UFセルを用いて濃縮し、水で希釈した(約10倍)
。この限外濾過操作を、伝導度が45mSから1mSに減少するまで繰り返した。濃縮
液の最終容積は25mlであった。
pHを中性に調節するため、この濃縮液を4℃で6時間、1リッターの0.05Mト
リス‐プロパン‐HCl、pH 7.0に対して透析し、次いで1リッターの0.001Mリン
酸カリウム、pH 7.0に対して透析した。
透析した細胞上澄液の15mlを0.001Mリン酸カリウム、pH 7.0で平衡したセラミ
ックハイドロキシルアパタイト(ペンタックス、2μm;アメリカン・インタナシ
ョナル・ケミカル社、ナチック、MA)の0.8×15cmカラム上に0.4ml/分(48cm/
時間)の流速で負荷した。カラムを1カラム容積の0.001Mリン酸カリウム、pH 7
.0で洗浄し、次いで20カラム容積にわたる0.001〜0.050Mリン酸カリウム直線勾
配で、0.35ml/分で展開した。実質的な好中球抑制活性が約0.02〜0.035Mリン酸
カリウムの位置に溶離されたが、これはアンサイロストマ・カニナム(実施例2
(D))から単離された好中球抑制因子で観測されたものほとんど同じである。
実質的な好中球抑制活性を示す分画(好中球‐プラスチック接着試験により評
価(実施例1(C)))を合わせ、10,000分子量分画膜(セントリプレップ 10
、アミコン、バーバリー、MA)を装着したアミコン遠心濃縮器を用いて約3mlに
濃縮し、0.1%トリフルオロ酢酸で平衡させた1×25cm C4 300A逆相カラム(5μm
粒径、バイダック(Vydac)、ヘスペリア(Hesperia)、CA)に導入した。カラ
ムを4カラム容積の平衡緩衝液で洗浄し、次いで5ml/分の流速で10カラム容積
にわたり15〜40%のアセトニトリル直線勾配で展開した。214、254および280nm
に吸収のある主要な複合ピークが約36〜38%アセトニトリルの位置に溶離した。
溶媒とトリフルオロ酢酸を除くため、このピークを含み、包含する分画を遠心
エバポレーターで乾燥し、0.065Mリン酸カリウム、pH 7.0、0.08M NaClで再水和
した。好中球‐プラスチック接着試験(実施例1(C))、および過酸化水素遊
離試験(実施例1(E))で判断して再水和分画は実質的な好中球抑制活性を有
した。
実質的な活性を有する分画を合わせ、470A/120A/900A/気相シーケンサー(
ABI、フォスターシティー、CA)を用いたエドマン分解法にて配列決定して(実
施例9参照)以下の配列を得た:
Asn-Glu-His-Asn-Leu-Arg-Xxx-Pro-Gln-Xxx-Gly-Thr-Glu-Met-Pro-Gly-Phe-Xx
x-Asp-Ser-Ile-Arg-Leu-Gln-Phe-Leu-Ala-Met-His-Asn-Gly-Tyr-Arg-Ser-Lys-
Leu-Ala-Leu-Gly-His-Ile-Ser-Ile-Thr-Glu
゛Xxx¨はペプチドのエドマン分解中特定のアミノ酸が同定されなかったため、
その位置で未決定アミノ酸を表す。
この配列は、この構築に使用されたNIFアイソフォーム(pHIL7SP-N1c10;図8
参照)であるNIF-1FLの推定されるN-末端配列と合致する。残基が検出されなか
った最初の位置はシステインと予想される;タンパク質がアルキル化されなかっ
たため、システイン残基はこの解析では検出できなかった。残基が検出できない
他の二つの位置は、1残基離れたセリンまたはトレオニンが続くアスパラギン残
基に対応する。これはグリコシレーションコンセンサス配列(Asn-Xxx-(Ser/T
hr))であり、アスパラギンが検出されなかった事実は、これらのアスパラギン
がグリコシル化されたことを強く示唆する。C4-精製調製物は、過酸化水素遊離
試験(実施例1(E)参照)によって約5〜10nMのIC50値を有すると評価された。実施例13 好中球抑制因子の特異性の測定
本発明の好中球抑制因子の特異性を試験し、それが一般的な細胞毒性機構で好
中球活性を抑制するのではないことを確認するため、抑制剤の活性を非好中球細
胞接着系アッセイである血小板凝集で評価した。
鉤虫好中球抑制因子の血液血小板凝集に対する効果を調べた。血小板凝集はヒ
ト血小板濃縮血漿(PRP)で行った。PRPをアグリゴメーター(aggregometer、サ
イエンコ(Scienco)モデル247、モリソン(Morrison)、CO)中で37℃で撹拌し
、10μMのADP(シグマ、セントルイス、MO)を添加して凝集を開始した。凝集を
光透過率の変化でモニターし、凝集の初期速度で表した。好中球‐HUVECおよび
好中球‐プラスチック接着試験、血液型好中球凝集および好中球による過酸化水
素遊離で評価した場合には、好中球機能を完全にブロックする濃度である約150n
Mの濃度の好中球抑制因子はヒト血小板のADP誘起凝集に対して何等の抑制効果も
持たなかった。実施例14 CD11b/CD18インテグリンが鉤虫由来好中球抑制因子に対する一次受容体である (A)好中球抽出液存在下のCD11b/CD18に対するモノクローナル抗体を用いる125 I標識NIFの免疫沈降
以下の方法を用いてアンサイロストマ・カニナムから精製したNIFを放射線標
識した。エンザイモビーズ(バオラッド、ヘラキュールズ、CA)を用いて約30μ
gのNIFを2mCiのNa125I(キャリアフリー;アマーシャム(Amersham)、アーリン
トンヒルズ(Arlington Hills)、IL)で標識した。簡単に言うと、1.5mlのエッ
ペンドルフ試験管に360μlのエンザイモビーズ懸濁液を、180μLの1%ベータ‐
D‐グルコース溶液、NIFおよびNa125Iと共に入れた。この混合液を室温で30分
間反応させた。溶離緩衝液として1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝化生
理食塩水(0.1M リン酸ナトリウム、pH 7.2、0.15M 塩化ナトリウム)を用い
て、PD10-DGカラム(バイオラッド、ヘラキュールズ、CA)上で標識NIFを脱塩し
て非結合125I‐ヨウ素から分離した。NIFを含む放射能活性分画を貯蔵した。125
I-NIFの比活性は13.9μCi/μgであった。
様々な白血球タンパク質について、免疫沈降実験によりNIF捕捉能について評
価した。特異的モノクローナル抗体を用いて、白血球の界面活性剤抽出物からNI
Fに対する強い細胞受容体を選別した。
モノポリ(ICN、バイオメディカルズ(Bomedicals Inc.)、(コスタメサ(Co
staMasa)、CA)を用いてヒト血液から白血球を調製した。白血球細胞ペレット
を1mlの再懸濁緩衝液(20mM トリス pH 7.5、150mM NaCl、1mM CaCl2)に再懸
濁し、次いで1mlの抽出緩衝液(2%トリトン X-100、20mM トリス pH 7.5、1
50mM NaCl、1mM CaCl2)を添加した。10分間毎に短くボルテックスしながら細胞
を氷上で30〜60分間インキュベートした。4℃で細胞破砕物を5000g、5分間で
ペレット化した。
10μgの特異的モノクローナル抗体を、200μLの白血球界面活性剤抽出液と4
℃、4時間インキュベートして、モノクローナル抗体‐試験タンパク質複合体を
形成した。この混合物に2.5μLの125I-NIFを加え、これらの反応試薬を4℃で18
時間インキュベーとした。この混合物を50μlのタンパク質G‐セファローズ(フ
ァルマシア、ピツタカウエー、NJ;1%ウシ血清アルブミンと共にTACTS 20緩衝液
(0.
05%ツイーン20、20mM トリス pH 8、120mM NaCl、2mM CaCl2))を含有する1
.5mlのエッペンドルフ試験管に添加し、4℃で2時間おだやかに撹拌することに
より複合体の沈降を促進させた。
続いてタンパク質G-セファローズビーズをTACTS 20緩衝液で4回洗浄した。5
%β-メルカプトエタノールを含む50μLのレムリ(Laemmli)試料緩衝液(Laemm
li、U.K.、1970年、ネイチャー、227:680〜685)を次いで吸引ビーズに加えた
;この材料を100℃で10分間インキュベートし、4〜12%勾配SDS-ポリアクリル
アミドゲル(ノバックス、サンディエゴ、CA)上に負荷した。実験後ゲルを乾燥
し、-70℃でカンタIII(QuantaIII)スクリーン(ジュポン、ウイルミントン(W
ilmington)、DE)の存在でX-Omatフィルム(コダック、ロッチェスター(Roche
ster)、MY)に露光して可視化した。寸法標準には14C-レインボー(Rainbow)
マーカー(アマーシャム、アーリントンヒルズ、IL)を用いた。
CD11b/CD18インテグリン複合体(OKM-1、ATCC♯ CRL8026;LM-2、ATCC# HB20
4)に対するモノクローナル抗体(Mab)をこれらの実験に使用した場合、オート
ラジオグラフィー上で見かけの分子量約41,000ダルトンの位置に125I-NIFの泳動
したバンドが沈降した。125I-NIFの沈降はこれらの抗体の存在と共に白血球抽出
物の存在に依存した。さらに125I-NIFの沈降はコールドNIFが100倍モル過剰に存
在すると観察されなかった。VLA-4(L25.3;ベクトン・ディッキンソン(Becton
Dickinson)、サニーバレ(Sunnyvale)、CA)およびp150,95(SHCL-3;ベクト
ン・ディッキンソン、サニーバレ、CA)インテグリン複合体に対するモノクロー
ナル抗体を含む、他の白血球インテグリンに対するモノクローナル抗体を使用し
た場合には125I-NIFは沈降しなかった。CD11a/CD18(TSI/22;ATCC♯ HB202)
インテグリン複合体に対するモノクローナル抗体を使用した場合、比較的少量の125
I-NIFが観測された。これは抗−CD11a/CD18抗体のインテグリン複合体CD11b/
CD18に対する交差反応性によるものと思われる。これらの結果はCD11b/CD18が白
血球上のアンサイロストマ・カニナムNIFに対する細胞表面受容体であることを
示している。(B)ビオチン化NIFを用いる125I-CD11b/CD18の沈降
白血球上のNIF受容体を同定する別なアプローチとして、表面ヨウ素化白血球
の界面活性剤抽出液からNIF集合タンパク質を沈降するためにビオチン標識NIFを
使用した。
NIFの炭化水素部分への結合によりNIFをビオチン化した。鉤虫(アンサイロス
トマ・カニナム)溶解物(ハイドロキシルアパタイト溶離液;実施例2(D)参
照)から精製した約8μgのNIFを、1ml 0.1M酢酸ナトリウム、pH 5.5中の50mM Na
IO4で酸化した。4℃で20分後、反応を100μL 165mMグリセロールを添加して停
止した。酸化NIFを他の反応生成物からミクロコン(Microcon)10濃縮器(アミ
コン、バーバリー、MA)を用いて分離し、100μLの0.1M酢酸ナトリウム、pH 5.5
中へ希釈した。ビオチン化は400μLの6.25mMビオチン‐LC‐ヒドラジド(ピアー
ス(Pierce)、スコーキー(Skokie)、IL)の添加により促進させた。反応を4
℃で18時間続けた。ミクロコン10濃縮器を用い、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;0.
1M リン酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、pH7.2)に緩衝液を交換してビ
オチン化NIFを後処理した。250μlの濃縮液に等容積のグリセロールを加え、約1
6μg/mlの最終NIF‐ビオチン濃縮液を得た。この材料を-20℃で保管した。
抗‐CD18インテグリン複合体モノクローナル抗体LM-2および0KM-1(それそれ
抗‐CD11b/CD18;ATCC ♯HB204およびCRL8026)およびTS1/22(抗−CD11a/CD18
;ATCC # HB202)を上記プロトコールを用いてビオチン化した。
ヒト白血球の細胞表面ヨウ素化は以下の手順を用いて行った。モノポリ密度勾
配分離(ICN バイオメディカル、コスタメサ、CA)を用いて新鮮なヒト血液90m
lから調製した全白血球分画を0.5mlのリン酸塩緩衝化生理食塩水中に懸濁した。
細胞懸濁液に2mCiのNa125I(キャリアフリー、アマーシャム、アーリントンハイ
ツ、IL)、60μLの0.03%過酸化水素および100μlのラクトペルオキシダーゼ(
バイオラッド、ヘラキュールズ、CA)を2mg/mlで加えた。2分間毎に穏やかに
撹拌して、反応を室温で30分間続けた。25mM KIのPBS溶液を添加して反応を停止
し、細胞をPBSで2回洗浄した。白血球細胞ペレットを1mlの再懸濁緩衝液に再懸
濁し、実施例14−(A)に上記記載通り白血球抽出液を調製した。
60μlのNIF‐ビオチン(32μg/ml)を40μLの再懸濁緩衝液で希釈し、室温で
6
時間、200μlの125I標識白血球抽出液とインキュベートした。白血球抽出液から
のNIF‐集合タンパク質の沈降は、この混合液に100μlのストレプタビジン‐ア
ガローズ(ファルマシア、ピツカタウエー、NJ)を添加することにより促進させ
た。試験管を4℃で18時間、穏やかに撹拌した。続いてビーズを500μlのTACTS-
20緩衝液(0.05%ツイーン20、20mMトリス pH 8、120mM NaCl、2mM CaCl2)で
4回洗浄し、集合タンパク質を50μLの試料緩衝液(5% β-メルカプトエタノ
ール)で可溶化し、実施例5記載通りSDS-PAGEで分析した。CD11b/CD18およびCD
11a/CD18に対するビオチン化モノクローナル抗体で、同様の方法で対照沈降を行
った。
ビオチン化NIFは2種類の125I-標識ポリペプチドを沈降したが、これは6%SD
S-PAGEで分離すると約170kDaおよび95kDaの見かけの分子量を有した。これらの
ポリペプチドはこの実験でSDS-PAGE上、抗‐CD11b/CD18モノクローナル抗体LM-2
およびOKM-1により沈降する2種類のポリペプチドと共泳動した。このデータをCD
11b/CD18がNIFと結合することが示された先の実験(実施例14(A))の結果と
共に考察すると、CD11b/CD18が白血球上のNIFに対する主要受容体であることを
強く示唆するものとなる。実施例15 トキソカラ・カニス(Toxocara canis)由来の天然好中球抑制因子の調製 (A)トキソカラ溶解物の調製
凍結イヌ回虫トキソカラカニスをアンタイボデーシステムズ(ベッドフォード
、TX)から入手し、ホモジェナイズするまで-70℃で保管した。ホモジェナイズ
緩衝液(0.02M トリス-HCl、pH 7.4、0.05M NaCl)0.001M MgCl2、0.001M CaCl2
、1.0×10-5M E-64プロテアーゼ抑制剤(CAS 66701-25-5)、1.0×1-6Mペプス
タチンA(イソバレリル-Val-Val-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタノイ
ル-Ala-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、CAS 26305-03−3)、1.0
×10-5M キモスタチン(CAS 9076-44-2)、2.0×10-5M APMSF(アミジノフェニ
ルメチルスルホニルフルオライド-HCl)、5%(v/v)グリセロール)中でウル
トラータラックスホモジェナイザー(ヤンケ・アンド・フンケル(Janke andHun
kel)、スタンフェン(Stanfen)、ドイツ)を用いてトキソカラ・カニスを氷上
でホモジェナイズした。プロテアーゼ抑制剤E64、ペプスタチンA、キモトリプ
シン、およびAPMSFはカルバイオケム(ラ・ジョラ、CA)から入手した。凍結虫
1グラム当りをホモジェナイズするために約3〜6mlのホモジェナイズ緩衝液を使
用した。全体で24gの虫を使用した。不溶物質を2回の連続遠心工程でペレット
化した:4℃、40,000×gmaxで25分、続いて4℃、105,000×gmaxで1時間。上
澄液をグラスウールと0.45μmのセルロースアセテートフィルター(コスター(C
oStar)、ケンブリッジ、MA)を通して透明にした。(B)トキソカラ溶解物のコンカナバリンAセファローズクロマトグラフィー
トキソカラ・カニス溶解物(68ml)を、Con A緩衝液(0.02M トリス-塩酸、p
H7.4、1M NaCl、0.001M CaCl2、0.001M MnSO4)で、緩衝液を流速4ml/分(119c
m/時間)で2時間、1.6×13cmカラムを通して循環してあらかじめ平衡した26ml
のコンカナバリンAセファローズ(ファルマシア、ピツカタウエー、NJ)に吸着
させた。カラムは室温(24℃)であったが、溶解物の容器は実験中氷の上に置い
た。続いてカラムを100mlのCon A緩衝液で洗浄した。抗接着試験で活性を有した
材料(以下のD節参照)を1ml/分(30cm/時間)の流速で、約3〜5カラム容
積の0.5Mメチル‐
アルファ‐マンノピラノシド(CAS 617-04-09)を含有するCon A緩衝液で溶離し
た。10,000分子量分画膜を装着したアミコン撹拌限外濾過容器を用いて、溶離し
た材料を5mlに濃縮し、次いで脱イオン水で50mlに希釈、10,000分子量分画(ポ
リサイエンシズ(Polysciences、Inc.)、ウォーリントン(Warrington)、PA)
を有する遠心限外濾過ユニットを用いて2.3mlに再濃縮した。スーパーデックス
(1.5ml)による分子ふるいクロマトグラフィーに使用した材料は、10,000分子
量分画(アミコン、バーバリー、MA)を有する遠心限外濾過ユニットを用いてさ
らに0.5mlに濃縮した。(C)スーパーデックス200HRを用いる分子ふるいクロマトグラフィー
固定化コンカナバリンAから溶離し(上記工程(B)参照)、限外濾過で濃縮
した材料を1.0cm×30cmスーパーデックス200HRカラム(ファルマシア、ピツカス
ウエー、NJ)に負荷した。カラムは24℃、0.01M リン酸カリウム緩衝液、pH 7.
35および0.15M NaClで前もって平衡化しておいた。流速0.25ml/分でクロマトグ
ラフィーを行った。抗接着活性は見かけの分子量約20,000の位置に溶離した。(D)トキソカラ・カニスより単離された好中球抑制活性のアッセイ
メチル‐アルファ‐マンノピラノシドでコンカナバリンAセファローズから溶
離した材料を好中球-HUVEC試験(実施例1(B)参照)で分析したところ、好中
球の内皮細胞への接着を抑制することが見いだされた。接着抑制活性はまた、好
中球-プラスチック接着試験においても示された(実施例1(C))。
コンカナバリンAセファローズおよびスーパーデックス200HR双方によるクロ
マトグラフィーで精製された材料は、好中球接着試験で好中球接着を抑制した(
実施例1(C)参照)。実施例16 好中球抑制因子のインビボキャラクタリゼーション
イヌ鉤虫から単離された好中球抑制因子を、急性炎症の動物モデルで試験した
。
腹膜炎症を150〜250グラムのスプラグードーレー(Sprague-Dawley)ラットに
、9mlの2%カキグリコーゲン水溶液を腹膜内注射して誘導した(バロン(Baron
)ら、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド(Journal of Immunologic
al
Methods)、49:305、1982年;マッカロン(McCarron)ら、メソッド・イン・エ
ンザイモロジー(Method in Enzymology)、108:274、1984年;フェルドマン(
Feldman)ら、ジャーナル・オブ・イムノロジー、113:329、1974年;ロドリッ
ク(Rodrick)ら、インフラメーション(Inflammation)、6:1、1982年;お
よびキッカワ(Kikkawa)ら、ラボラトリー・インベスチゲーション(Laborator
y Investigation)、30:76、1974年)。
NIFを実施例2記載通りに調製した。約20,000匹の鉤虫からの溶解物(湿量48.
2g)を調製し、ConA、スーパーデックス、およびヒドロキシアパタイト(HA)で
クロマトグラフした。2つの等値のHA実験からの活性分画を合わせて41mlのHA材
料を得た。1mlのNIF溶液(11μg)をグリコーゲンと同時に腹膜内ルートで、ま
たはグリコーゲン投与の30分前に静脈ルートで投与した。4時間後、腹膜滲出液
を、腹腔内を30mlのCa++またはMg++は含まず、0.03%EDTAを添加したハンクス(
Hanks)バランス塩溶液で置換して収穫し、血液細胞をセルダイン(Celldyn)30
00(アボットラボラトリーズ(Abbott Laboratories)、ノースシカゴ(North C
hicago)、IL)自動マルチパラメーター差動細胞計数装置で計数した。滲出液中
の主な細胞成分は好中球であった。図10は、イヌ鉤虫から単離された好中球抑
制因子の投与量を変えて、グリコーゲンの腹膜内投与により誘発したラットの腹
膜炎症における好中球浸潤に対する効果を示す。グリコーゲン(9ml)および好
中球抑制因子(1ml)を同時に腹膜内ルートで注射した。図10は6回の独立し
た実験の結果を示す。NIFは、グリコーゲンに誘導されるラット腹腔への好中球
浸潤の容量依存的に抑制した。
NIFの静脈内投与がグリコーゲン誘発ラット腹膜炎症を防止することができる
かどうかを調べるために、第2の実験を行った。第1群ラットには、NIFとグリ
コーゲンを前記と同様の腹膜内ルートで投与した。第2の群のラットには、1μg
のNIFをグリコーゲンの腹膜内注入の30分前に静脈内投与した。第3の群のラッ
トには静脈内へのNIF投与を生理的食塩水と置換し、グリコーゲンを腹膜内へ投
与した。4時間後、腹膜滲出液を採集し、血液細胞を計数した。
図11はイヌ鉤虫から単離された好中球抑制因子の、グリコーゲンの腹膜内注
入で誘発されたラットにおける腹膜炎症での好中球滲出に対する効果を示す。好
中球抑制因子(1ml)をグリコーゲンの腹膜内注入と共に腹膜内ルートで注射、
またはグリコーゲン注入の30分前に静脈ルートで注射した。図11はNIFの腹膜内
投与に対する6回の独立の実験のまとめと、NIFの静脈内投与の1回の実験の結
果を表す。これらの結果は腹膜内または静脈内ルートいづれかで投与した場合、
NIFがラットのグリコーゲンで刺激された腹膜炎症反応を防止するのに有効であ
ることを示す。実施例17 組替え好中球抑制因子によるインビボ好中球媒介炎症の抑制
組替えNIF(γNIF)のインビボ抗炎症性をラット耳炎症試験で試験した(ヤン
グ(Young)ら、1984年より)
この試験では、アラキドン酸の局所投与によってラットの耳に炎症を誘発した
。スパラグ‐ドーレーラット(250g)をペントバルビタールで麻酔した(初期投
与量65mg/kg腹膜内;アンプロ・ファルマシューティカル(Anpro Pjarmaceutic
al)、アーカディア(Arcadia)、CA)。実験の間中、ラットを外科手術が可能
な麻酔の状態に維持した(4時間)。麻酔ラットの大腿動脈内にカテーテルを挿
入した。PBS中20mg/mlの濃度で100μlの組み替えNIF(ピキア・パストリスで産
生;実施例12参照)をカテーテルを経由して注射した。対照ラットには100μl
の無菌0.14M NaClを投与した。γNIFの静脈内投与の5分後、アラキドン酸(シ
グマ、セントルイス、MS;最終濃度500mg/mlにアセトンで1:1希釈)を右耳に
、耳の内側と外側に各10μlずつ3回投与した。従って右耳には全投与量30mgの
アラキドン酸が投与されたことになる。バックグラウンドコントロールとして使
った左耳には全体で60μlのアセトンを投与した。アラキドン酸投与の4時間後
、ラットをCO2で殺した。
アラキドン酸処置耳組織中への好中球浸潤は、ミエロパーオキシダーゼ活性を
測定して間接的に定量した。7mm皮膚パンチ(ミルテックス(Miltex);レーク
サクセス(Lake Success)、NY)を使用してそれぞれの耳の中心から組織試料を
得た。組織試料を小片に切り、0.5ml HTAB緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、
pH 6.4中の0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド;HTABはシグ
マ、セントルイス、MOから購入した)の入った16×100mm試験管に投入した。耳
組織をウルトラーチュラックス(Ultra-Turrax)ヤンケ・アンド・フンケル、ス
タウフェン、ドイツ)を使用して20秒間、高速でホモジェナイズした。不溶物を
ホモジェネートから、14,000×gで10分間遠心後ナイテックス(Nytex)ガーゼで
濾過して取り除いた。ミエロパーオキシダーゼ測定は96ウエルポリスチレンプレ
ート(コースター;ケンブリッジ、MA)中で3連で行った。25μlのHTAB可溶化
耳組織をそれぞれのウエルに添加し、これに100μlの基質溶液を加えた。基質溶
液は二つの成分:1)0.1M酢酸ナトリウム、pH 4.5中0.012%のH2O2、および2
)10%HCl中、0.3mg/mlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン;で構成されるも
のであり、これらを使用直前に0.125:1の比で組み合わせた。基質添加の10分
後、125μlの1MH2SO4を加えて反応を止めた。試料を450nmで比色定量し、バック
グラウンドを650nmで読みとった。ヒト白血球ミエロパーオキシダーゼ(シグマ
;セントルイス、MO)を用いて標準曲線を作成した。
組替えNIFは耳組織中へのアラキドン酸誘発好中球浸潤に対する保護効果を有
していた。図12はバックグラウンドミエロパーオキシダーゼ活性を差し引いた
場合、γFNIを投与されたラット由来の耳組織は平均1.6ミエロパーオキシダーゼ
ユニット/ml(MU/ml)を有したが、生理食塩水を投与されたラット由来の耳は
平均4.1MU/mlを有したことを示す(それぞれのグループでn=10)。pH7.0、25℃
において、1ミエロパーオキシダーゼユニットは、基質としてグアイアコールを
使用した反応の初期速度から計算して470nmでの吸光度で1分あたり1.0の増加を
示す(デッサー(Desser、R.K.)ら、Arch.Biochem.Biophys.、148:452(197
2年))。すなわちγNIF(8mg/kg 静脈内)を投与されたラットで好中球注入
は〜60%減少した;NIFを投与されたラットと生理食塩水を投与されたラットの
間に95%の信頼計数で有意差がある(スチューデントのt試験)。これらの結果
は、鉤虫由来NIFがグリコーゲンに誘導される腹腔中への好中球侵入を阻止した
という事実と符合する(実施例16参照)。これらのデータはさらに、γNIFが
インビボで強い抗炎症剤として作用するという証拠を提供する。実施例18 好中球抑制因子DNA配列の好中球抑制因子関連タンパク質を単離するための使用
NIF cDNA配列を、機能的および構造的にNIFに関連するタンパク質をコードす
るDNA配列を単離するためのプローブとして使用する。
標準手法を用いて遺伝子DNAまたはcDNAライブラリーを形成する(例えば分子
クローニング実験室マニュアル、サムロック、フリッシュおよびマニアチス第2
版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーズ・プレス、CSH、NY、198
9年参照)。これらのライブラリーはアンサイロストマ・カニナム、他のアンサ
イロストマ株、他の寄生虫、およびヒト胎盤組織を含む任意の哺乳動物等のかび
、バクテリアまたはウイルス起源由来のものでよい。
この様なライブラリーから、アンサイロストマから単離されたNIF cDNA配列を
プローブとして使用する核酸ハイブリダイゼーションによって有用なクローンを
選択する。例えば標準手順により検出するために標識された約100〜2000塩基対
のNIF cDNA断片(例えば分子クローニング実験室マニュアル、サムロック、フリ
ッシュおよびマニアチス第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリ
ーズ・プレス、CSH、NY、1989年参照)を、他の組織または他の種由来のライブ
ラリーと、多様な厳密性の条件下にハイブリダイズさせる。しかしながらより好
ましくはより厳密さの少ないハイブリダイゼーション条件を使用する(例えば6X
SSC[SSCは150mM NaCl)15mM クエン酸3ナトリウム]、0.02M リン酸ナトリ
ム pH 6.5、5X デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、0.01M EDTA、100μg/ml
切断変性サケ精子DNA、0.23% デキストラン硫酸、20〜30%ホルムアミド、42
℃、18時間)。またより好ましくは厳密さの少ない条件をハイブリダイゼーショ
ン後にフィルターを洗浄するために使用する(2X SSCで15分2回間予備洗浄後、
45〜60℃で20分間、0.5〜2X SCC)。
上記技法を用いて単離されたNIF関連相補的DNAのヌクレオチド配列を、ジデオ
キシ配列決定の手順を用いて解析する(サンガー(Sanger)ら、1977年、プロシ
ーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエ
スエー74:5463〜5467)。オープンリーディング枠を含む単離物(すなわちメチ
オニンで開
始し、TAA、TGA、またはTAG停止コドンで終了する)を、バクテリア、酵母、昆
虫または哺乳動物細胞のいずれかでのタンパク質発現のための適当なベクター内
に挿入する。発現システムは組み替えタンパク質を培養培地内に分泌するために
設計されたベクター(すなわちcDNA単離物オープンリーディングフレームと、そ
の細胞型に対する既知の分泌信号配列との融合)を包含する。均一な分泌配列を
欠くベクターもまた、発現のために使用される。使用する発現系によって調節培
地または細胞溶解物のいづれかについて、以下の好中球活性化の基準のひとつま
たは複数を用いて抑制活性を試験する:過酸化水素の遊離、スーパーオキシドア
ニオンの遊離、ミエロパオキシダーゼの遊離、エラスターゼの遊離、好中球同型
凝集、プラスチック表面への接着、血管内皮細胞への接着、ケモタキシス、内皮
細胞の単層を横切る移動および貪食。
構造的にNIFに関連するタンパク質、および上記好中球機能試験のひとつまた
は複数に対して抑制的であるタンパク質は、関連する分子のNIFファミリーに属
すると考えられる。実施例19 機能性組み替えNIFの大腸菌中での発現
N-末端に対応するコドンがメチオニンで開始するNIF-1FLコード領域のDNAを大
腸菌発現ベクター中に挿入する。このようなベクターの例はバルバス(Balbas、
P.)およびボリバー(Bolivar)F.)、1990年(メソッズ・イン・エンザイモロ
ジー、185:14〜37)に記載されている。実施例11および12にそれぞれ記載
した、NIF-1FLコード領域を哺乳動物および酵母発現ベクター中に挿入する方法
と類似の方法を用いて、DNAを大腸菌発現ベクター中へ挿入する。PCRオリゴヌク
レオチドプライマーを、NIF-1FLコード領域を含む増幅生成物を発生させるため
に設計する。NIF-1FLを哺乳動物および酵母発現ベクター中に挿入する方法と関
連して記載した様に(実施例11および12それぞれを参照)、この断片を選択
された発現ベクター中へ挿入させ得る5’および3’制限部位を含有する様にプ
ライマーを設計する。発現構築物は、好ましくは組替えNIFが細胞周辺腔でなく
細胞質中に分泌される様に設計する。これは大腸菌の分泌シグナルを構築物から
除外
することにより達成し得る。
大腸菌細胞を標準手法を用いて、NIF-1FL発現ベクター構築物により形質転換
させる。(例えばモレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル
、サムブルック、J.フリッシュ、E.F.、およびマニタス、T.、第2版、コールド
・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、1989年、1.74〜1.84参照)。
細胞は適当な培地中で生育させ(例えばルリアブロス(Luria Broth);モレキ
ュラー・クローニング、エ・ラボラトリー・マニュアル、サムブルック、J.フリ
ッシュ、E.F.、およびマニタス、T.、第2版、コールド・スプリング・ハーバー
・ラボラトリー・プレス、1989年、A.1参照)、生育の定状相に達するまでに収
穫する。
組替えNIFの大多数は細胞質中に、不溶性かつ機能的に不活性な凝集体として
存在する。このような凝集体中に存在する組み替えタンパク質の可溶化とときほ
ぐしは、コーノ(Kohno)ら、1990年、によって紹介されている様な既知の方法
(メソッド・イン・エンザイモロジー、185:187〜195)を用いて行えばよい。
再度折り畳まれた組替えNIFをときほぐされた組替えNIFおよび他の反応生成物か
ら、C4逆相HPLCを含む多数の標準的クロマトグラフィー技術を用いて分離する(
例えば実施例2(E)参照)。再度折り畳まれた組み替えDNAを、実施例1記載の
好中球機能試験に供する。
この組替えNIFはグリコシル化されていない。
実施例20
大腸菌細胞質内で生産された「不溶性」メチオニル−NIFの再生による機能 性組換えNIFの調製
(A)大腸菌発現ベクターpMa5−NI1/3の記述
NIF−IFLコーディング領域(coding region)を有する増幅生産物を生
成させるようにPCRオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。PCR生産物
は、増幅によってAATからAACに変化した成熟NIF−1FLの最初のAsn
−コドンにおいて開始する。3’−プライマーはTAAトリプレットによりTG
A翻訳終止コドンと代替し、コーディング領域の下流部位にSpeI、HindIIIおよ
び
BigIIを導入する。PCRプライマーは次の通りである:
Pst414:
5’−CCTCCTCCTA−GATCTAAGCT−TACTAGTTTA
−TAACTCTCGG−AATCGATAAA−ACTC(54量体;C−末
端と符合する3’−プライマー)
Pst415:
5’−AACGAACACA−ACCTGAGGTG−CCCG(24量体;
N−末端と符合する5’−プライマー)
HindIIIを用いて消化をおこなった後、適切な大きさのPCRフラグメントを
アガロースゲルを用いて分離し、ラムダファージPRプロモーターの下流の大腸
菌発現ベクターに挿入した。受容体ベクターをNcoIを用いて開いた後、DNAポ
リメラーゼI(クレノウフラグメント)を用いて処理し、次いで、HindIIIを用
いて消化した。得られたベクター(pMa5−NI1/3)を図14に模式的に示
す。該ベクターの関連部分の配列を図15に示す。このベクター中に存在するN
IF−1FL領域の配列を完全に決定し、不要な突然変異の不存在を確認した。
発現モジュールは次の要素(1)〜(4)から成る。(1)ラムダファージPR
プロモーター、(2)Met−NIF−1FL領域の上流に存在する小シストロン
(この上流シストロンは、ラムダファージcro遺伝子の最初の9個のコドンを含
んでおり、シャイン−ダルガルノ(SD)ボックスおよびMet−NIF−1FL
のATGイニシエーターコドンの間に位置するTAAストップにおいて終止する
(図14および図15参照)。リーダーシストロンは31番目のポリペプチド残
基をコードする機能を有する。多数の天然のオペロン中に存在するものを含むこ
の種の2シストロン配列を使用することによって、その発現レベルが翻訳の開始
により制限されると考えられている非相同遺伝子の発現を改良した[次の文献参
照:ショナー(Schoner)ら、PNAS.第81巻、第5403頁〜第5407頁
(1984年);スパンジャード(Spanjaard)ら、Gene、第80巻、第345
頁〜第351頁(1989年);マコッフ(Makoff)およびスモールウッド(Sma
llwood)、NAR、第18巻、第1711頁〜第1718頁(1990年)]。
(3)メチオニル−NIF
−1FLをコードするオープンリーディングフレーム。構築スキームは、NIF
−FL1 5’−末端がATGイニシエーターコドンと適切に融合するようなも
のである。このATGコドンの上流には、SD配列(例えば、GGAGGT;図
14および図15参照)が存在する。(4)Met−NIF−1FLコーディング
領域の下流に存在するファージfdから誘導された転写ターミネーター(fdT)の
2個のコピー。
(B)「不溶性」メチオニル−NIFの生産
NIF−1FL遺伝子の発現におけるpMa5−NI1/3の効率を評価するた
めに、pcI857を宿すW3110細胞内へベクターを導入した。プラスミドpc
1857はカナマイシン(20μg/ml)に対する耐性を規定し、ラムダPRプロ
モーターの感温性レプレッサーをコードし、また、pMa5−NI1/3に対して
適合性を示す。培養物をLB培地中において28℃で増殖させ(密度:約2×1
08個細胞/ml)、次いで42℃で2〜3時間誘発させた。誘発させた全細胞抽
出物と非誘発細胞をSDS−PAGEによって分析したところ、プロモーターの
熱誘発によって新たに約33kDaのタンパク質(NIF−1FLの分子量の計
算値:約29kDa)が合成されたことが判明した。全細胞抽出物のほかに、音
波処理による誘発細胞の開放と遠心分離による溶解物(lysate)の清澄化によっ
て得られた可溶性上澄と不溶性ペレットも分析した。この分析結果によれば、新
たに合成された約33kDaのタンパク質が細胞内に沈澱し、いわゆる封入体が
形成されたことが判明した。SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いる分画、プ
ロブロット(ProBlott)(ABI)上への転移およびクーマシー染色による可視
化の各処理をおこなった後、約33kDaのバンドを切取し、そのN−末端アミ
ノ酸配列を決定した。得られた配列はM−N−E−H…であった。この結果によ
って、イニシエーターであるメチオニンは一次翻訳生成物からは除去されなかっ
たことおよび33kDaのバンドが組換えNIFとして明確に同定されたことが
判明した。組換えNIFタンパク質の蓄積量はOD650ユニットあたり約10mg/
リットルであった。
(C)大腸菌内で発現されたNIFタンパク質の再生
プラスミドpMa5−NI1/3を含有するW3110大腸菌細胞を、LB培地
を1.5リットル有する振盪フラスコインキュベーター(6リットル)内におい
て、光学密度(OD)が0.6〜0.9au(550nm)になるまで28℃において
増殖させた。56℃のLB培地をさらに1.5リットルヘ各々のフラスコ内に添
加して組換えNIFの発現を誘発させ、フラスコを振盪下、42℃においてイン
キュベートした。ODを監視し、その値が1.0〜1.5になったときに遠心分離
処理によって細胞を採取した。細胞ペレットを−80℃で凍結させた。各チュー
ブには約3.5gの細胞が採取された。
TES緩衝液(0.05Mトリス、0.05Mエチレンジアミン四酢酸ナトリウ
ム、15%(w/v)ショ糖、pH8.0)15mlを1本のチューブに添加し、チュ
ーブの内容物を超音波処理によって解凍させた後、細胞ペレットを均一に懸濁さ
せた。懸濁液を2本のガラス製の遠心分離用チューブ(30ml)に分配させた。
元のチューブはTES2.5mlを用いて洗浄し、この洗浄液もガラス製チューブ
内へ添加した。ガラス製チューブ内の懸濁液をブランソン・ソニック・パワー社
(ダンバリー、コネクチカット)製装置を用いる超音波処理(30秒間)に4回
付した。超音波処理の全過程を通して、懸濁液の温度は、氷を用いて10℃以下
に保持した。このチューブは遠心分離処理(10,000rpm)に4℃で20分間
付した(12,100×gmax)。上澄を捨て、各々のペレットをPSX緩衝液(
0.02Mリン酸カリウム、1M塩化ナトリウム、1%(v/v)トリトン(Trito
n)X−100、pH7.2)15mlに再懸濁させた後、低出力の超音波処理によ
ってペレットを粉砕させ、次いで中出力での超音波処理を15秒間おこなった。
チューブを氷上で冷却し、中出力での超音波処理を15秒間おこなった後、遠心
分離処理(10,000rpm)に20分間付した(12,100×gmax)。上澄を
捨てた後、上記のPSXへの再懸濁と遠心分離をさらに2回おこなった。
各々のペレットは、前記のようにして、PBS緩衝液(0.01Mリン酸ナト
リウム、0.15M塩化ナトリウム、pH7.3)15mlに再懸濁させ、超音波処
理を短時間おこなった後、遠心分離処理に付した。PBSへの再懸濁処理をさら
に1回おこなった。
各々のペレットは、PBSを12.5ml入れた各チューブ内に超音波処理によ
って再懸濁させた。両方のチューブの内容物を一緒にし、PBSをさらに加えて
全体積を30mlとした。精製した封入体のタンパク質濃度は、バイオ・ラッド社
(Bio−Rad)(ヘラクレス、カリフォルニア)製のDCタンパク質アッセイ装
置を用いて決定した。
タンパク質を5mg含有する精製封入体のアリコートをプラスチック製遠心分離
管(1.7ml)内へ移した。これらの管を4℃でのマイクロ遠心分離処理に10
分間付した。上澄を捨て、各々のペレットを緩衝液(0.05Mトリス、1%(w
/v)サルコシル(Sarkosyl)、pH7.5)1ml中に超音波処理によって再懸濁
させた。
これらの管をエッペンドルフ社(Eppendorf)(ハンブルグ、ドイツ)製サー
モミキサー渦動装置を用いる37℃での渦動処理に48時間付した。このインキ
ュベーション処理をおこなった後、試料をNIF活性アッセイ法(実施例1参照
)に付した。典型的な活性は、存在するNIFの3%の活性(再生)に対応する
ものであった。
実施例21
アンサイロストマ・カニナムからのNIFの分離と特性評価
(A)アンサイロストマ・カニナムからのNIFのクローン化と配列決定
NIF−1FLに関連するタンパク質をコードする新たな全コーディング領域
(実施例10参照)を、NIF−1FLのN−およびC−末端に符号する一重鎖
オリゴヌクレオチドDNAプライマーを用いるPCR技法によって同定した。こ
れらのプライマーは次の通りである:
YG1:
5’−ATG−GAG−GCC−TAT−CTT−GTG−GTC−TTA(
N−末端コーディング領域M−E−A−Y−L−V−V−Lと符号する5’−プ
ライマー)
YG−2:
5’−TCA−TAA−CTC−TCG−GAA−TCG−ATA−AAA−
CTC(E−F−Y−R−F−R−E−L−終止コドンに対応するC−末端配列
と符号する3’−プライマー)
YG1/YG2プライマー対は、アンサイロストマ・カニナムの全RNA製剤
(実施例10参照)を鋳型として使用するときには、適切な大きさのPCR生成
物をもたらすことが判明した。第1鎖cDNA合成[ファルマシア社(Pharmacia
)(ウプサラ、スウェーデン)製第1鎖cDNA合成キット;YG2プライマー
10pmol;全RNA−15μg]およびPCRによるその後の増幅は該製造業者
の使用説明所に従っておこなった。PCRはTag DNAポリメラーゼ[ベーリン
ガー社(マンハイム、ドイツ)]を使用し、30回の温度サイクル(95℃にお
ける1分間の変性段階;55℃におけるアニーリング段階;1.5分間の延長段階
)によっておこなった。得られたPCR生成物はアガロースゲルを用いて分離し
、ファージミドベクター(一重鎖DNAの調製を可能にする)上でクローン化し
た。配列決定により、3種のクローンPCR−NIF5、PCR−NIF7およ
びPCR−NIF20が保持されることが判明した。PCR−NIF5はNIF
−1FLと同一であるが、PCR−NIF7とPCR−NIF20は2種の新規
なNIF配列であり、これらの配列を図16に示す。
アンサイロストマ・カニナムのNIFの付加的な全配列をcDNAライブラリ
ーのスクリーニングによって分離した。この場合、ハイブリダイゼーションプロ
ーブとしては、実施例10に記載のアンサイロストマ・カニナムの7種のNIF
配列(1FL、3P、2FL、3FL、4FL、6FLおよび1P)中に十分に
保存された配列を標的化するプライマーを用いて得られた放射能標識化PCRフ
ラグメントを使用した。また、下記のプライマーを使用した:
YG3:
5’−CAC−AAT−GGT−TAC−AGA−TCG−AGA−CTT−
GCG−CTA−GGT−CAC(NIF−1FL配列においてアミノ酸配列H
−N−G−Y−R−S−K−L−A−L−G−Hをコードする領域を標的化する
5’−プライマー)
YG4:
5’−T−TTT−TGG−GTA−GTG−GCA−GAC−TAC−AT
G(NIF−1FL配列においてH−V−V−C−H−Y−P−K−(I)をコ
ードする領域を標的化する3’−プライマー)
ポリ(A+)RNAを、クウィックプレプ(Quick Prep)mRNA精製キット
(ファルマシア)を用いて蠕虫の成虫から調製した。このポリ(A+)RNA製
剤を鋳型として使用し、ほぼ予定した長さの増幅生成物YG3/YG4プライマ
ー対を得た(PCRの条件は前記と同様である)。ゲル電気泳動分析によれば、
この増幅生成物は長さの点では幾分不均一であった。YG3/YG4プライマー
は種々のNIF配列の長さが有意に相違する領域をコードする部分に隣接する配
列を標的化するように設計した。PCR生成物の不均一な性質は、プライマーが
数種の異なるアイソフォームの増幅に有用なことを示す。PCR生成物はゲルを
用いる精製処理に付した後、「ランダムプライマー延長」[T7クウィックプライ
ム(Quick PrimeTM)キット(ファルマシア)によって放射能標識化し、ハイブ
リダイゼーションプローブとして使用した。cDNAライブラリーは、プロメガ
社(Promega Corp.)発行の「プロメガ・プロトコールズ・アンド・アプリケー
ションズ・ガイド(第2版)」に記載の方法によって構築した。約3μgのmRN
Aを、オリゴ(dT)−NotIプライマー−アダプター
[5’-TCGCGGCCGCC(T)15;プロメガ社(マディソン、ウィスコ
ンシン)]およびAMV(トリ骨髄芽球症ウイルス)逆転写酵素(ベーリンガー
)を用いて逆転写した。二重鎖cDNA合成には、BRLライフテクノロジー社
(ガイテルスブルグ、メリーランド)製の大腸菌DNAポリメラーゼIとRNas
eHおよびファルマシア社製のT4DNAポリメラーゼを使用した。得られたcD
NAはEcoRIメチラーゼ[プロメガ社製のリボクロン(RiboClone)EcoRI
リンカー連結システム]を用いて処理した。cDNAはNotIとEcoRIを用いて
消化させた後、1%アガロースゲル上でのサイズ選択処理に付し[1000〜7
000の塩基対を有するフラグメントを、ジーンクリーン(Geneclaen)プロト
コール[バイオ101社(BIO101 Inc.)(ラジョラ、カリフォルニア
)]に従って溶出させ、次いで、ラムダgt11 Sfi−Notベクター(プロメガ)
のEcoRI−NotIア
ームに一方向から連結させた。ストラタジーン社(Stratagene)(ラジョラ、カ
リフォニルア)製のギガパックII−ゴールド(GigapackII−Gold)を用いる生体
外パーケージング処理をおこなった後、菌株Y1090(プロメガ)を感染させ
ることによって組換えファージを得た。cDNAライブラリーの有用性は、多数
の任意に選択されたクローンについて、ラムダgt11プライマー#1218[ニ
ューイングランド・バイオラブズ社(ビバリー、マサチューセッツ)製]および
前記のオリゴ(dT)−NotIプライマー−アダプターを用いるPCR分析によっ
て示された[ベーリンガー社製Taq ポリメラーゼ;30回の温度サイクル(9
5℃/1分間、50℃/1分間、72℃/3分間)]。大部分のクローンには、
種々のサイズを有するcDNA挿入断片が含まれることが判明した。
約1×106個のcDNAクローン[アメルシャム社(Amersham)(バッキンガ
ムシャー、イングランド)製の「ハイボンド−N」を用いてプラーク−リフト重
複フィルターを調製した]を、次のプレハイブリダイゼーションおよびハイブリ
ダイゼーション条件下において、放射能標識化YG3/YG4 PCRフラグメ
ントを用いるスクリーニング処理に付した:5X SSC(SSC:150mM
NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、5Xデンハルト溶液、0.5%SD
S、50%ホルムアミド、100μg/mlの超音波処理した魚の精液のDNA(
ベーリンガー)、42℃/一夜。フィルターを2X SSC、0.1%SDSを
用いて37℃で4回洗浄した。X線フィルムに一夜さらした後、プローブとハイ
ブリダイズした多数のプラークを同定した。クローンの約0.1〜0.2%で正の
スコアを示した。2回目のハイブリダイズラウンド後(24個の正のスコアを低
プラーク密度で分析することによって単一の純粋なクローンを分離し、多数のフ
ァージクローンをPCR分析処理に付した後、全コーディング領域を包囲するの
に十分なcDNA挿入断片をSfiI−NotIフラグメントとしてpGEM型ファー
ジミド(プロメガ)上でサブクローン化した。8種のNIFcDNA、即ち、Ac
aNIF3,AcaNIF4,AcaNIF6,AcaNIF7,AcaNIF9,AcaN
IF18,AcaNIF19,およびAcaNIF24の配列を決定した。これらの
データを図16に示す。
(B)アンサイロストマ・カニナムからの機能性NIFタンパク質のピキア・ パストリス(Pichia Pastoris)中での発現
AcaNIF24,AcaNIF6,AcaNIF4およびAcaNIF9をコードす
るDNAセグメントを、上記の各々のcDNAを有するpGEM型ベクターを鋳
型として使用することによって増幅した。5’−プライマーは制限部位を有して
おらず、また、成熟タンパク質のコーディング領域の5’−末端部分に符号する
。第1コドンはAATからAACに変わる(両方のコドンはアスパラギンへ翻訳
する)。種々のNIF配列に対する5’−プライマーの配列は次の通りである:
AcaNIF24:5’−AAC−GAA−CAC−AAC−CTG−ACG−
TGC−CC
AcaNIF6: 5’−AAC−GAA−CAC−AAA−CCG−ATG−
TGC−CAG−C
AcaNIF4: 5’−AAC−GAA−CAC−AAA−CCG−ATG−
TGC−GAG
AcaNIF9: 5’−AAC−GAA−CAC−GAC−CCA−ACG−
TGT−CC
3’−プライマーはコーディング領域の3’末端の8個のコドン、天然遺伝子
のTGAストップと代替するTAAストップおよび3種の特有の制限エンドヌク
レアーゼ部位(SpeI、HindIIIおよびBglII)から成る。次の3’−プライマー
を使用した:
AcaNIF24:
5’−CCT−CCT−CCT−AGA−TCT−AAG−CTT−ACT−
AGT−TTA−AAA−TCG−ATA−AAA−CTC−CTT−GCT−
−ATC
AcaNIF6:
5’−CCT−CCT−CCT−AGA−TCT−AAG−CTT−ACT−
AGT−TTA−TAA−CTC−TCG−GAA−TCG−ATA−AAA−
CTC
AcaNIF4:
5’−CCT−CCT−CCT−AGA−TCT−AAG−CTT−ACT−
AGT−TTA−TAA−CTC−TCG−GAA−TCG−ATA−AAA−
CTC
AcaNIF9:
5’−CCT−CCT−CCT−AGA−TCT−AAG−CTT−ACT−
AGT−TTA−TAG−CTC−TCG−AAA−CGG−ATA−AAA−
ATA
増幅は、各々のプライマー100pmol)1×ヴェント(Vent)緩衝液(ニュー
イングランド・バイオラブズ)中のヴェントポリメラーゼ2単位、各々のdNT
P0.2mMおよび鋳型DNA100ngを用いて完結させた。PCR条件は、20
回の全サイクルを通じて同一にした(90℃での変性/1分間、60℃でのプラ
イマーアニーリング/1分間、72℃での増幅/1.5分間)。増幅生成物はゲ
ル精製処理に付した後、SpeIを用いて消化した。増幅生成物は、標準的な方法
により、StuI−SpeIで切断したpHIL7SP8に連結させた。この連結反応
混合物を用いて、アンピシリン耐性クローンを選択する大腸菌WK6を形質転換
させた。いずれの場合も、制限とDNA配列解析によって適切なクローンが同定
された。実施例12(B)に記載のようにして、これらのプラスミド(pYAM
7SP−AcaNIF24、pYAM7SP−AcaNIF6、pYAM7SP−A
caNIF4およびpYAM7SP−AcaNIF9)を使用してピキア−パストリ
ス酵母菌株GTS115(his4)を形質転換させた。His 形質転換細胞の選択
およびその後のNIF発現のための選択は実施例12(B)に記載のようにして
おこなった。機能性NIFタンパク質のピキア細胞上澄中での蓄積は、LM2/
CD11b/CD18に基づくELISAを用いる3D2−HRP検出法(実施
例1参照)(AcaNIF24、AcaNIF6およびAcaNIF4の場合)または
LM2/CD11b/CD18に対する競合アッセイ法(実施例1参照)(Aca
NIF9の場合)を利用することによって検出し、定量した。
(C)NIFタンパク質(AcaNIF24、AcaNIF6、AcaNIF4およ び
AcaNIF24)の精製と特性評価
機能的に活性な組換えタンパク質(AcaNIF24、AcaNIF6およびAca
NIF4)を精製し、詳細に特性を評価した。メタノールを用いて48時間誘発
させた後、遠心分離処理(1,800×g;15分間)によってピキア細胞上澄を
得た。
組換えタンパク質AcaNIF24およびAcaNIF6の場合、上澄250mlに
トリス−HClを添加することによってpHを7.0に調整した後、4℃で一夜保
存した。遠心分離によって沈澱物を除去し、透明な上澄は3D2−免疫親和性樹
脂を用いて処理し、結合物をグリシン−HCl溶液(pH2.5)を用いて溶離
させた(実施例27参照)。溶離フラクションを中和した後、限外濾過によって
濃縮した。いずれのタンパク質もSDS−PAGE[ノヴェックス社(Novex)
製;4〜20%傾斜ゲル]上では単一バンドとして移動した。エドマン分解法に
より、適切に処理されたタンパク質が生成されたことを確認した。N−末端アミ
ノ酸配列は次の通りである(Xは未同定残基を示す):
AcaNIF24:N−E−H−X−L−T−X−P−Q−N
AcaNIF6: N−E−H−K−P−M−X−Q−Q−X−E−T−E−M
−P
濃度は分光光度法によって測定し、試料のアッセイは、プラスチック接着アッ
セイ法と過酸化物放出アッセイ法(実施例1参照)によっておこなった。両方の
組換えタンパク質(AcaNIF24およびAcaNIF6)は組換えNIF−1F
L(図17参照)としては同等の活性を示した。
組換えAcaNIF4の精製は、実施例23に実質上記載されたようにして、ヒ
ドロキシアパタイトと逆相クロマトグラフィーによっておこなった(但し、Supe
rdex上でのゲル濾過処理は省略した)。精製したタンパク質はSDS−PAGE
(ノヴェックス社製;4〜20%傾斜ゲル)上では単一のバンドとして移動した
。濃度は分光光度法によって測定した。ビオチン化NIF−1FLを用いる競合
結合アッセイにおいて得られた結果により、AcaNIF4はNIF−1FLに比
べて、LM2/CD11b/CD18複合体に対して著しく低い親和性を示す
ことが判明した(図18参照)。
組換えAcaNIF9は逆相クロマトグラフィーによって部分的に精製した(実
施例23参照)。エドマン分解により、N末端アミノ酸配列がN−E−H−D−
Pであることが明らかになり、これによって、適切に処理されたAcaNIF9タ
ンパク質が生成されたことが確認された。この部分的に精製されたタンパク質は
ピキアで生産されたNIF−1FLタンパク質に比べて、SDS−PAGE(ノ
ヴェックス社製;4〜20%傾斜ゲル)上でかなり高い移動度を示した(40〜
80kDaに対して30〜35kDa)。このことは、NIF−1FLには7個
のN−グリコシル化部位が存在するのに対し、AcaNIF9にはわずかに2個の
有効なN−グリコシル化部位が存在するに過ぎないことに対応する。AcaNIF
9を含有する試料を、実施例1に記載の競合結合アッセイによって試験した。こ
の結果、ビオチン化組換えNIF−1FLのLM2/CD11b/CD18複合
体に対する競合は組換えAcaNIF9によって妨げられることが判明した。
実施例22
アンサイロストマ・セイラニカム(Ancylostoma ceylanicum)からのNIFタ ンパク質の分離と特性評価
(A)アンサイロストマ・セイラニカムからのNIF配列のクローン化と配列 決定
アンサイロストマ・セイラニカムの全NIF遺伝子を、同じ種から得られたP
CRフラグメントをハイブリダイゼーションプローブとして使用するcDNAラ
イブラリーのスクリーニングによって分離した。PCRフラグメントは、実施例
10に記載のアンサイロストマ・カニナムからの7種類のアイソフォームNIF
(1FL、3P、2FL、3FL、4FL、6FLおよび1P)内に良好に保存
された配列を標的化するプライマーを用いて得た。これらのプライマー(YG3
およびYG4)は実施例20に記載したものである。
ポリ(A+)RNAを、タウィックプレプmRNA精製キット(ファルマシア
)を使用してアンサイロストマ・セイラニカムの成虫から調製した。このポリ(
A+)RNA調製品を鋳型として使用し、ほぼ予想通りの長さ、即ち、アンサイ
ロスト
マ・カニナムのRNAを鋳型としたときのPCRフラグメントとほぼ同じ長さの
増幅生成物をYG3/YG4プライマー対を用いて得た。ファルマシア社製の第
1鎖cDNA合成キットを用いる第1鎖cDNA合成およびPCRによるその後
の増幅は、該製造業者の使用説明書に従い、YG2プライマー(実施例20参照
)10pmolおよびアンサイロストマ・セイラニカムのmRNA100ngを使用し
ておこなった。PCRは、ベーリンガー社製のTaq DNAポリメラーゼおよび
YG3とYG4 100pmolを使用する30回の温度サイクル(95℃での変性
/1分間、55℃でのアニーリング/1分間、伸長/1.5分間)の条件下でお
こなった。PCR生成物はゲルを用いて精製した後、T7クウィックプライムキッ
ト(ファルマシア)を用いる「ランダムプライマー延長(random primerextensi
on)」によって放射能標識化し、ハイブリダイゼーションプローブとして使用に
供した。
アンサイロストマ・セイラニカムのcDNAライブラリーは、実施例20に記
載の手順に従い、ラムダgt11内で構築した。cDNAライブラリーの特性は、
ラムダgt11プライマー#1218(ニューイングランド・バイオラブズ)およ
びオリゴ(dT)−NotIプライマー−アダプター(プロメガ)を使用し、多数の
任意に選択されたクローンについてのPCR分析によって評価した(ベーリンガ
ー社製のTaqポリメラーゼ;30回の温度サイクル:95℃/1分間、50℃/1
分間、72℃/3分間)。大多数のクローンは種々のサイズのcDNA挿入断片
を有することが判明した。
実施例20に記載のハイブリダイゼーション条件下において、放射能標識化し
たYG3/YG4 PCRフラグメントを用いて約5×105個のラムダcDN
Aクローンを選抜した。約60個のポジティブクローンが同定された。前記のP
CR分析によれば、NIFの全コーディング領域(約850bp)を包囲するのに
十分なサイズの挿入断片を有することが判明した1つのポジティブクローンcD
NA挿入断片をSfiI−NotIフラグメントとしてpGEM−9Zf(−)(プロ
メガ)へ転移させ、その配列を決定した。cDNAクローン(AceNIF3)の
配列を図19に示す。
(B)ファージ接着型アンサイロストマ・セイラニカムから得られたNIF様 タ ンパク質の発現
成熟タンパク質をコードするアンサイロストマ・セイラニカムのAceNIF3
領域を、実施例22におけるNIF−1FLに関する手順に従い、ファージ表示
ベクター上でクローン化した。
標準的なアンサイロストマ・セイラニカムのNIFタンパク質のN−末端アミ
ノ酸配列は知られていないので、推定されるアミノ酸配列(図19)において分
泌シグナルのプロセシング部位の位置を正確に決めることは困難である。次のオ
リゴヌクレオチドプライマーを選択してAceNIF3コーディング領域をPCR
増幅した:
YG16:
5’−GTCGCAACTG−CGGCCCAGCC−GGCCATGGCC
−GCTGACGAAC−CAACGTGCAA−GCAG(54量体;5’−
プライマー;NcoI部位とAceNIF3のN−末端は下線部である)
YG15:
5’−GAGTTCTCGA−CTTGCGGCCG−CACCTCCGAT −AGGTGGATAA−CGGAGTGA
(48量体;3’−プライマー;NotI部位とAceNIF3のN−末端は下線
部である)
NcoI/NotIの消化後、PCR生成物をゲル精製処理に付し、次いで宿主ベク
ターのNceI部位とNotI部位の間でクローン化した。得られたベクター(pAN
−AceNIF3)は、pelB、AceNIF3およびM13gIIIコーディング領域
の所望のインフレーム(in−frame)融合部を有する。
AceNIF3タンパク質を表示するファージは、TGl(su)細菌を宿すpA
N−AceNIF3をM13−VCSヘルパーファージを用いて感染させることに
よって得た(実施例22参照)。PBS中に再懸濁させたレスキューファージは
、固定化したLM2/CD11b/CD18複合体上でのELISAによってア
ッセイした(図20参照)。アンサイロストマ・カニナムのアイソフォームNI
F−1FL(実施例22)を表示するファージを正の制御として用いた。ピキア
中で生
産された種々の量の組換えNIF−1FLと共に30分間インキュベートした後
、組換えNIF−1FLまたは組換えAceNIF3を表示する1010個のビリオ
ンを、LM2/CD11b/CD18で被覆したウェル中に添加した。インキュ
ベーションを90分間おこなった後、結合したファージの量を、ウサギの抗ファ
ージ血清およびヤギの抗ウサギアルカリ性ホスファターゼ複合体を用いて決定し
た。固定化レセプター(実施例20参照)へのファージの結合は、AceNIF3
タンパク質がファージの表面にいて機能的に活性な形態で表示されなければなら
ないことを示す。実施例22に記載のデータは、ファージがNIFタンパク質を
表示するときにのみファージの結合が起こることを示す。即ち、非表示性の対照
ファージはLM2モノクローナル抗体に結合せず、また、LM2/CD11b/
CD18複合体にも結合しない。ピキア中で生産された可溶性組換えNIF−1
FLを増量させることによるNIF−1FL表示ファージとAceNIF3表示
ファージの置換は、両方のNIFタンパク質がCD11b/CD18レセプター
の同じ部位に対して同程度の親和性で結合することを示す。AceNIF3タンパ
ク質のファージ表示はウェスタンブロットによっても証明された。SDS−10
%ポリアクリルアミドゲルを用いて分画をおこなった後、ファージタンパク質を
プロブロット(ProBlott)膜(アプライド・バイオシステムズ)上に移し、引き
続き、ウサギの抗pgIII血清[GATC社(GATC GmbH)、コンスタンツ
、ドイツ]およびヤギの抗ウサギアルカリ性ホスファターゼ複合体と共にインキ
ュベートした。野性型ファージpgIIIタンパク質およびNIF−pgIII融合生成物
に対応するバンドが視識された。
(C)pYAM7SP−AceNIF3の構築とピキア中での発現
AceNIF3をコードするDNAセグメントを、コーディング領域の5’−末
端と3’−末端に対して特有のプライマーを使用することによって、前記のpG
EM−9Zf(−)中のAceNIF3のサブクローンからPCR増幅させた。タ
ンパク質分解処理したAceNIF3の5’−末端は明確には規定されなかったの
で、AceNIF9とAceNIF3との間の配列相同性に基づいてハイブリダイゼ
ーション5’−末端を創製した。即ち、タンパク質分解した成熟AceNIF9の
N−末
端コドンを5’−末端として用いた後、AceNIF3配列から得られた6個のコ
ドンを使用した。得られたN−末端アミノ酸ハイブリダイゼーション配列はN−
E−H−E−P−T−C−K−Qであり、天然のAcaNIF9およびAceNIF
3配列はそれぞれN−E−H−D−P−T−C−P−QおよびK−G−D−E−
P−T−C−K−Qであった。使用した5’−プライマーの配列は5’−AAC
−GAA−CAC−GAA−CCA−ACG−TGC−AAG−CAGである。
3’−プライマーはコーディング領域の3’−末端の8個のコドン、天然遺伝子
のTGA終止コドンと代替するTAA終止コドンおよび3個の特有な制限エンド
ヌクレアーゼ部位(SpeI、 HindIIIおよびXbaI)から成る。使用した3’−プ
ライマーの配列は次の通りである:
5’−CCT−CCT−CCT−TCT−AGA−AGC−TTA−CTA−
GTT−TAG−ATA−GGT−GGA−TAA−CGG−AGT−GAC−
G.
増幅は、各々のプライマー100pmol、1×ベント緩衝液(ニューイングラン
ド・バイオラブズ)中のベントポリメラーゼ2単位およびdATP、dCTP、
dGTPまたはdTTP0.2mMを用いて完結させた。AceNIF3を含有する
pGEM−9Zf(−)100ngを鋳型DNAとして使用した。PCR条件は、
20回の全サイクルにおいて同一にした(95℃の変性/1分間、60℃でのプ
ライマーのアニーリング/1分間、72℃での増幅/1.5分間)。増幅生成物
はゲル精製処理に付した後、SpeIを用いて消化した。
増幅生成物は、標準的な方法により、StuI−SpeIで切断したpHIL7SP
8と連結させた。連結反応混合物を使用して、アンピシリン耐性クローンを選択
する大腸菌WK6を形質転換した。制限とDNA配列解析に基づき、得られたプ
ラスミドクローン(pYAM7SP−AceNIF3)の1種について、適切な挿
入断片の配列を選択することにより、実施例12(B)に記載のようにして、ピ
キア・パストリス酵母菌株GTS115(his4)を形質転換した。His 形質転
換体の選択およびその後のAceNIF3発現の選択は、実施例12(B)に記載
のようにしておこなった。ピキア細胞の上澄中のAceNIF3の含有量は、ビオ
チン
化NIF1を用いる競合結合アッセイによって定量した(実施例1参照)。
メタノール誘発を48時間おこなった後、遠心分離によってピキア細胞の上澄
を得た。粗製上澄は、ヒト好中球のプラスチックに対する接着を抑制した。
実施例23
バクテリオファージ接着型または遊離の可溶性タンパク質としての機能的に活 性なNIFの大腸菌による生産
(A)ファージ表示ベクター上でのNIF−1FLのクローン化
ファージミドーベクターを構築した。この場合、成熟タンパク質をコードする
NIF−1FL領域は、そのN−末端においてはpe1B遺伝子から誘導された分
泌シグナル配列と融合させると共に、そのC−末端においては繊維状ファージM
13遺伝子III(gIII)と融合させた。この遺伝子融合は、Placプロモーターの
転写調節下でおこなった。
pe1Bコドンのいくつかをシノニムトリプレットによって代替させることによ
って、分泌シグナルにNcoI制限部位を付与した。追加のAla−コドンをpe1B領
域とNIF−1FL領域との間に導入し、連結部(junction)を原核原型シグナ
ル配列のプロセシング部位により近似させた。NIF−IFLおよびpgIII(gII
Iの生成物)のコーディング領域を、(i)NotI部位が組み込まれたリンカー配
列および(ii)su-菌株において翻訳終止コドンとして作用するが、su細菌細胞
においてセンス(sense)コドンとしてしばしば読みとられるTAG(アンバー
)トリプレットによって分離した。
ファージミドベクター(pAN−NIF−1FL)を図21に模式的に表示す
る。pAN−NIF−1FLは、5’−エクステンションを有するプライマーを
用いるNIF−1FLコーディング領域のPCR増幅によって構築した。該5’
−エクステンションは、宿主ベクター内のゲル精製PCRフラグメントのNcoI
/NotI指向性クローン化によってpe1B、NIF−1FLおよびgIIIコーディン
グエレメントの所望のインフレーム融合がもたらされるような配列を有するもの
である。
NIF−1FLコーディング領域は次の2種のオリゴヌクレオチドプライマー
を用いてPCR増幅した:
LJO45:
5’−GTCGCAACTG−CGGCCCAGCC−GGCCATGGCC
−GCTAATGAAC−ACAACCTGAG−GTGC(54量体;5’−
プライマー;NcoI部位およびNIF−1FLのN−末端は下線部で示す)
LJO46:
5’−GAGTTCTCGA−CTTGCGGCCG−CAGGTGGTAA −CTCTCGGAAT−CGATAAAACT−C
(51量体;3’−プライ
マー;NotI部位およびNIF−1FLのC−末端は下線部で示す)
pAN−NIF−1FL中に存在するNIF−1FL領域およびフランキング
配列は完全に決定され、不要の変異の存在は除外された。
(B)繊維状ファージによる機能性NIFの表示
TG1のようなsu細菌においては、pAN−NIF−1FLファージミドベク
ターは、NIF−1FL−pgIII融合タンパク質をコードする機能を有する。T
G1[pAN−NIF−1FL]ホスト細胞をいわゆるヘルパーファージで感染
させる場合には、この融合タンパク質は形態形成中において、繊維状ビリオン(
ファージミドの1つの特定鎖をカプシドで包む擬ビリオンおよびヘルパーファー
ジ)内へ取込むことができる。ファージ粒子は以下のようにして、M13−VC
Sヘルパーファージ[ストラタジーン(Stratagene)]感染によって救援される
。カルベニシリン(またはアンピシリン)100μg/mlおよびグルコース1%
含有する2×TY(2×TY:トリプトン16g/L;酵母抽出物10g/L;Na
Cl 5g/L)中において37℃で密度(OD600nm)約0.5〜0.6まで増殖
させた培養物1mlをM13−VCSで感染させた(感染多重度:約20)。この
感染培養物を振盪せずに37℃で30分間インキュベートした後、振盪下でさら
に30分間インキュベートした。カルベニシリン(100μg/ml)とカナマイ
シン(50μg/ml)を含有する加温2×TYアリコート10mlに感染培養物1m
lを接種した。この混合物を振盪下、37℃で60分間インキュベートした後、
約30℃で一夜インキュベートした。感染細胞を遠心分離によって除去した後、
20%ポリエチレングリコ
ール/2.5MNaClの1:5(体積比)混合物を上澄に添加した。氷上で60
分間インキュベートした後、沈澱したファージを遠心分離によって捕集した後、
PBS(Na2HPO4・2H2O 1.14g/L;KH2PO40.2g/L;NaCl
8.0g/L;KCl 0.2g/L;pH7.3)中に再懸濁させた。
救援ファージは以下のいくつかのアッセイにおいて機能的に活性なNIFを表
示した。(A)ウェスタンブロット法:SDS−10%PAGEによって分画し
た後、ファージタンパク質をプロブロット(ProBlott)膜[アプライド・バイオ
システムズ社(Applied Biosystems Inc.)製、フォスターシティー、カリフォ
ルニア]上に移した後、ウサギ抗ファージ血清およびヤギ抗ウサギアルカリ性ホ
スファターゼ複合体と共にインキュベートした。NIF−pgIII生成物に対応す
るバンドが視識された。(B)CD11b/CD18−ELISA法(図22参
照):NIFファージをCD11b/CD18に対する結合アッセイに付した(
負対照として非表示ファージを用いた)。0.25μg/ml免疫精製CD11b/
CD18レセプター[ダイアモンドら、J.Cell Biol.第111巻、第3129
頁〜第3139頁(1990年)参照]を用いる直接固定化、またはモノクロー
ナル抗体LM2(TACCナンバー:HB204)を用いる免疫捕獲によって、
CD11b/CD18で被覆したウェルを調製した。固定化レセプターに対する
ファージの結合は、NIFタンパク質を表示するときにのみ観測された。ピキア
中で生産された組換えNIF−1FL1mMと共に予め30分間インキュベート
した後、NIF−ファージはLM2モノクローナル抗体に結合せず、また、CD
11b/CD18で被覆したウェルにも結合しなかった。(C)3D2−ELI
SA法(3D2は、NIFに対して特異的なマウスの非中和モノクローナル抗体
である。実施例26参照)。非表示性の対照ファージとは対照的に、NIF−フ
ァージは3D2−被覆ウェルに結合した。NIF−ファージの結合は、ピキア中
で生産された組換えNIF−1FL1mMで3D2−ウェルをブロックするか、
またはNIF−ファージを3D2モノクローナル抗体でブロックすることによっ
て切断された。(D)CD11b/CD18に対するパンニング法(panning):
pAN−NIF−1FLファージ(1010ビリオン)を無関係な等量の非表示性
ファージ(fd−tet;1010ビリ
オン)と混合した後、結合緩衝液(PBS、1mMCaCl2、1mMMgCl2、
0.4%Tween−20および2%スキムミルク)100μlで希釈し、次いでCD
11b/CD18で被覆したマイクロタイターウェル内でインキュベートした。
120分間インキュベーションをおこなった後、1mMCaCl2、1mMMgC
l2および0.4%Tween−20を含有するPBSを用いて10回洗浄し、結合し
たファージをグリシン−HCl(pH2.0)と共に10分間インキュベートす
ることによって溶出させた。1Mトリス−HCl(pH8.0)を用いて中和し
た後、テトラサイクリン耐性(fd−tet)とアンピシリン耐性(pAN−NIF
−1FL)コロニー形成単位の数を決定した。pAN−NIFファージは非表示
性fd−tetファージに比べて30倍多かった。
上記の実験、例えば繊維状ファージ上でのNIF−1FLの機能表示および結
合選択によるこの種のNIF−ファージの特異的富化等は、より高い親和性を有
するNIF変異体(即ち、天然に存在するアイソフォームおよび合成突然変異体
)を同定するためにファージ技法が使用できることを示す。免疫グロブリンの分
野における類似の試験によれば、アンサイロストマ・カニナムのNIFタンパク
質の非常に広い範囲をファージ上でクローン化させた後、ファージライブラリー
を、CD11b/CD18レセプターを標的として用いる数サイクルの連続的な
結合選択処理(パンニング)に付すことによって、親和性の最も高いNIFアイ
ソフォームを選択することが可能となる。本発明者による配列に関するデータに
よれば、成熟NIFをコードする領域の5’−末端と3’−末端の保存の程度に
応じて、NIFタンパク質の範囲の実質的な部分を救援する変性オリゴヌクレオ
チドプライマーの設計が可能となる。例えば、所望の長さのPCR−増幅フラグ
メントは、プールしたアンサイロストマ・カニナムのcDNAライブラリーのラ
ムダDNA標品を、下記のオリゴヌクレオチドのプライマーセットを有する標的
として使用することによって調製した:
N−末端を標的化する5’−プライマー:3’−末端に次のマッチング配列を
有する3種のプライマーの等モル混合物:
AAT−GAA−CAC−AAC−CTG−ASG−TGC−3’
AAT−GAA−CAC−GAC−CCA−ACG−TGT−3’
AAT−GAA−CAC−AAA−CCG−ATR−TGC−3’
(上記配列中、SはCまたはGを示し、RはAまたはGを示す);
C−末端を標的化する3’−プライマー:3’−末端に次のマッチング配列を
有する2種のプライマーの等モル混合物:
TAA−CTC−TCG−GAA−TCG−ATA−AAA−3’
TAA−CTC−TCG−AAA−CSG−ATA−AAA−3’
(上記配列中、SはCまたはGを示す)
PCRプライマーは、適当な表示ベクター内において増幅生成物の一方向のク
ローン化を容易にする制限部位を組込む5’−エクステンションを有する。
(C)機能的に活性な可溶性NIFの分泌
NIF遺伝子(pAN−NIF−1FL)を有するファージミド表示ベクター
は、ファージ接着型および遊離可溶性のタンパク質におけるNIF−1FLの生
産に適している。WK6のようなsu-細菌においては、pAN−NIF−1FL
ファージミドベクターは、遊離型、即ち、非ファージ接着型のNIF−1FLタ
ンパク質の合成の指令を出す機能を有する。
イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドをWK6[pAN−NIF−
1FL]培養物に最終濃度が1mMになる量添加し、Placプロモーターを、一夜
誘発させることによりCD11b/CD18結合活性の増大がもたらされること
が、LM2/CD11b/CD18プレート上でのELISAによって明らかに
なった(このアッセイは、HRP複合モノクローナル抗体3D2を用いておこな
った)。組換えNIF−1FLタンパク質は、誘発培養物の上澄および誘発細胞
の超音波処理物の清澄化によって調製された全細胞溶解物のいずれにおいても検
出された。このELISAシグナルを、ピキア中で生産された既知量のrNIF
1によって発生したシグナルと比較することによって、rNIFタンパク質が大
腸菌培養物1リットルあたり約1mg蓄積することが判明した。rNIFタンパク
質は、誘発されたWK6[pAN−NIF−1FL]細胞のフレンチプレスによ
る溶解物を出発原料とする3D2−エンファーゼ(Emphaze)カラムを用いて免
疫精製した。低
pHでの溶出物は、LM2/CD11b/CD18ELISAによれば、活性を
示した。大腸菌rNIFタンパク質はSDS−ポリアクリルアミドゲル上におい
てシャープなバンドを示し、イムノブロット分析においては、ウサギ抗ピキア−
rNIF1血清によって検出された。
実施例24
ピキア中で生産されたNIFの別の精製法
細胞不含上澄を濾過し(0.2μm)、濾液を、1mM EDTAを含有する5
0mMクエン酸(pH3.5)10容量部を用いるポリエーテルスルホンオメガ膜
(フィルトロン社製;カットオフ値30kDa;0.75平方フィート)上での限
外濾過(diafiltration)処理に付した。1Mトリス−HClの添加によってp
Hを7.4に調整した後、溶液を氷上に少なくとも1時間放置した。沈澱物は濾
去した(0.2μm)、清澄上澄を2回目の透析濾過処理に付した[10容量部の
10mMリン酸塩溶液(pH7.4)]。その後、塩化ナトリウムを最終濃度が0
.3mMになるまで添加した。この溶液を、10mMリン酸塩溶液(pH7.4)を
用いて平衡にしたマクロプレプ(MacroPrep)(40μm)ヒドロキシアパタイト
[バイオーラド・ラボラトリーズ社(Bio−Rad Laboratories)製]カラム(0.
3mM CaCl2含有)にかけた。カラムの5倍容量の平衡緩衝液を用いて洗
浄した後、90mMリン酸塩溶液(pH7.4)を用いて組換えNIFタンパク質
を溶出させた。組換えNIFを含有するフラクションはLM2/CD11b/C
D18プレート上での結合アッセイによって同定し、貯留した。貯留したフラク
ション中に含まれるタンパク質は、10mMギ酸アンモニウム溶液(pH6.4)
および10%アセトニトリル溶液を用いて平衡にした多孔性R1/Hカラム[パ
ーセプティブーバイオシステムズ社(Perseptive Biosystems)製]上での逆相
クロマトグラフィーによってさらに精製した。組換えNIFは、アセトニトリル
の濃度を増加させることによって溶出させた。NIF含有フラクションはゲル電
気泳動法によって同定し、貯留した。この貯留液中のアセトニトリルは凍結乾燥
前に回転蒸発機を用いて除去した。乾燥したタンパク質はPBSに再溶解させた
後、PBS中で平衡にしたスーパーデックス200ゲル濾過カラム(ファルマシ
ア)にかけた。NIFタンパク質を含
有するフラクションを貯留し、オメガ膜(フィルトロン社製;カットオフ値10
kDa)を用いる限外濾過によって濃縮した。組換えNIFタンパク質は−80
℃で保存した。
実施例25
NIF−1FLの機能性誘導体のピキア−パストリス中での発現
(A)pMa5−hNIF1およびpMc5−hNIF1発現構造体
(Expression Construct)
NIFをコードするDNAのセグメントは、コーディング領域の5’末端と3
’末端に対して特有のプライマーを用いることによって、ブルースクリプト(Bl
uescript)II(ストラタジーン社製;ラジョラ、カリフォルニア)中におけるN
IF−1FLのサブクローンからPCR増幅させた。
5’−プライマーは2つの制限部位(EcoRIおよびHpaI)、タンパク質分
解的に処理されたNIFの5’末端から始まる最初の23個のヌクレオチドおよ
びこれに続く8個のコドンから成る。成熟NIFの最初の残基に対するコドンは
AATからAACに変化し(両方のコドンはアスパラギンに翻訳される)、Hpa
I制限部位(GTT/AAC)の一部を構成する。使用した5’−プライマーの
配列は5’−CCG−GAA−TTC−GTT−AAC−GAA−CAC−AA
C−CTG−AGG−TGC−CCである。3’−プライマーは実施例12(B
)に示した。
増幅は、各々のプライマー100pmol、1×ベント緩衝液中のベントポリメラ
ーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ社製、ビバリー、マサチューセッツ)
2単位並びにdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを各々0.2mMを用
いておこなった。ブルースクリプトII含有NIF−1FL10ngを鋳型DNAと
して使用した。PCR条件は20回の全サイクルに対して同じ条件を用いた:9
5℃での変性/1分間、60℃でのプライマーアニーリング/1分間および72
℃での増幅/1.5分間。増幅生成物はゲルを用いて精製した後、EcoRIとHin
dIIIを用いて消化した。
増幅生成物は、標準的な方法によって、EcoRI−HindIIIでの切断したpM
a5−8およびpMc5−8にそれぞれ連結させた[スタンセンスら、Nucl.Ac
ids Res.、第17巻、第4441頁〜第4454頁(1989年)参照]。アン
ピシリンおよびクロラムフェニコールに対してそれぞれ耐性を示す細胞を適当な
プ
レート上において選択して採取した。制限とDNA配列解析に基づき、得られた
プラスミドクローン、pMa5−hNIF1およびpMc5−hNIF1の各々
の適切な挿入断片配列を選択した。
(B)pMa5−hNIF1/△G11−5の構築
NIF−1FLタンパク質は5個の潜在的なN(アスパラギン)−グリコシル
化部位(共通のN−X−T/Sアミノ酸配列)を有する。
pMa5−hNIF1/△G11−5は前述のpMa5−hNIF1の誘導体
である。この場合、NIF−1FLの5個の潜在的なN−グリコシル化部位は、
対応する共通配列中の各々のアスパラギン残基でグルタミン残基を置換すること
によって修飾されている。これらの残基はAsn10、Asn18、Asn87、Asn110およびA
sn130である。この場合、右上の数字は、NIF−1FLのアミノ酸残基の数に
相当する(図8参照)。
逐次的な部位特異的変異誘発は、スタンセンスらの報文[ヌクレイック・アシ
ッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、第17巻、第4441頁〜第4454
頁(1989年)参照]に記載の手順に従い、次のオリゴヌクレオチドを用いて
おこなった:
(I)△G11:dCCGGGCATTTCGGTACCTTGCTGCGG
GCACCTC,
(II)△G12:dCCTAATCGAGTCTTGGAACCCGGGCA
TTTCTGTTCC,
(III)△G13:dAACTGTCCGAGCATTGTCGTGCACTC
ATGTAGGCGCTTTTTTC,
(IV)△G14:dCAGAGCTTCAGAGATCTGGTTTGAGT
TTTCG,
(V)△G15:dCTCCTTCTTTTGTTTTCTGCAGGTTG
AAAGCCTC。
最初の変異誘発過程においては、オリゴヌクレオチドI、IVおよびVを単鎖D
NA(ssDNA)鋳型pMa5−hNIF1と共にアニールすることによって、
対応
するグリコシル化部位G11、G14およびG15を修飾した。3個の所望の変
更部位を有する得られたプラスミドクローンを使用することによって、次の変異
誘発過程用のssDNA鋳型を調製し、該鋳型と適当なオリゴヌクレオチド(IIお
よびIII)を用いて残存部位G12およびG13を修飾した。
(C)pMa5−NIF−1FL/△h、G16−7の構築
上記の(B)の手順に準拠し、別のNIF−1FL誘導体pMa5−NIF−
1FL/△h、G16−7を構築した。この場合、NIF−1FLの潜在的なN
−グリコシル化部位G16およびG17は、対応する共通配列における各々のア
スパラギン残基でグルタミン残基を置換することによって修飾した。これらの残
基はAsn197およびAsn223である。さらに、NIF−1FLコーディング配列中に
存在するHpaI制限部位(GTTAAC)は、サイレント突然変異を適当な位置
に導入することによって除去した。Asn166に対するAACコドンはAATコドン
によって代替させた。
逐次的な部位特異的変異誘発は、スタンセンスらの上記報文に記載の手順に従
い、次のオリゴヌクレオチドを用いておこなった:
(VI)△G16:dCGGCTGTCCTTCAGTTTTCTGTATTT
TCGGGTAGTGGC,
(VII)△G17:dGGATCCGCAGACGTCGTTTGGTCTGC
TTTTTTTG,
(VIII)△h :dCTCCCAAAGGGCAATTAACAACTGCG
C。
最初の変異誘発過程においては、オリゴヌクレオチドVIIおよびVIIIをssDN
A鋳型に対して一緒にアニールすることによってグリコシル化部位G17を修飾
すると共に、HpaI制限部位を除去した。2個の所望の変更部位を含有する得ら
れたプラスミドクローンを使用することによって、次の変異誘発過程用のssDN
A鋳型を調製し、該鋳型と適当なオリゴヌクレオチド(VI)を用いて残存部位G
16を修飾した。
(D)pMa5−hNIF1/△h、G11−7の構築
NIF−1FLの誘導体hNIF1/△h、G11−7を標準的な方法により
、ベクターpMa5−hNIF1/△G11−5(前記(B)のようにして調製
)とpMa5−NIF1IFL/△h、G19−7(前記(C)のようにして調
製)から調製された適当なフラグメントを組合せることによって構築した。ベク
ターpMa5−NIF−1FL/△h、G16−7から調製されたフラグメント
であって、前記(C)に記載の3個の置換部を有する361bpAgeI−HindIIIフ
ラグメントを、ベクターpMa5−hNIF1/△G11−5から調製された大
きなAgeI−HindIIIベクターフラグメント内へクローン化させ、該ベクターの対
応する361bpAgeI−HindIII野性型NIF−1FLフラグメントを置換した。
得られたプラスミドpMa5−hNIF1/△h、G11−7中に7個のAsn
/Gln置換部および修飾されたHpaI制限部位(Asn166コドン修飾)が存在するこ
とは、完全なNIF挿入断片の配列解析によって確認された。この配列解析によ
って明らかになったNIF配列中の1個の塩基対の欠失(Gly201GGAコドン中
のGヌクレオチドの欠失)は、オリゴヌクレオチドdGTAAATCGGCTG
TCCTTCAGTTTTCTGを用いる部位特異的変異誘発によって修正した
。
(E)pYAM7SP−hNIF1/△G11−5の構築およびピキア・パス トリス中での発現
hNIF1/△G11−5をコードするDNAセグメントを、実施例12(B
)に記載の手順に準拠し、同一のプライマーセットを用いて、pMa5−hNI
F1/△G11−5のサブクローンからPCR増幅した。増幅生成物は精製後、Spe
Iを用いて消化し、次いで、標準的な方法によってStuI−SpeIで切断した
pHIL7SP8に連結させた。この連結反応混合物を用いて大腸菌WK6を形
質転換し、アンピシリンプレート上でアンピシリン耐性クローンを得た。制限と
DNA配列解析に基づき、得られたプラスミドクローンの1種pYAM7SP−
hNIF1/△G11−5の適切な挿入断片配列を、実施例12(B)に記載の
ようにして選択し、ピキア−パストリス酵母菌株GTS115(his4)を形質
転換した。His形質転換体の選択とその後のNIF−1FL/△G11−5発現
に対する選択は、実施例12(B)に記載のようにしておこなった。ピキア細胞
上澄中のN
IF−1FL/△G11−5は、3D2−HRP検出を伴うLM2/CD11b
/CD18に基づくELISAによって定量した(実施例1参照)。
(F)pYAM7SP−hNIF1/△h、G11−7の構築およびピキア・ パストリス中での発現
hNIF1/△h、G11−7をコードするDNAのHpa1−SpeIフラグメン
トを、ベクターpMa5−hNIF1/△h、G11−7から調製し、標準的な
方法により、StuI−SpeIで切断したpHIL7SP8と連結させた。この連結
反応混合物を用いて大腸菌WK6を形質転換し、アンピシリンプレート上でアン
ピシリン耐性クローンを得た。制限とDNA配列解析に基づき、実施例12(B
)に記載のようにして、得られたプラスミドクローンの1種pYAM7SP−h
NIF1/△h、G11−7中の適切な挿入断片配列を選択し、ピキア・パスト
リス酵母菌株GTS115(his4)を形質転換した。His形質転換体の選択とそ
の後のNIF−1FL/△h、G11−7発現に対する選択は実施例12(B)
に記載のようにしておこなった。ピキア細胞上澄中のNIF−1FL/△h、G
11−7は、3D2−HRP検出を伴うLM2/CD11b/CD18に基づく
ELISAによって定量した(実施例1参照)。
(G)組換えNIF−1FL/△G11−5および組換えNIF−1FL/△ h、G11−7の精製と特性評価
メタノール誘発を48時間おこなった後、遠心分離(1800×g;15分間
)によってピキア細胞上澄を得た。
組換えNIF−1FL/△G11−5は実施例23に記載の方法によって精製
した。組換えNIF−1FL変異体は、非還元条件下のSDS−PAGE(ノベ
ックス社製;4〜20%傾斜ゲル)上において、見かけの分子量36〜50kD
aで移動した。このバンドは、ピキア中で生産された野性型NIF−1FLに比
べて、より明確に分離し、また、非常に高い移動度を示した。組換えNIF−1
FL/△h、G11−7はヒドロキシアパタイトおよび逆相クロマトグラフィー
によって精製した(実施例23参照;但し、スーパーデックス上でのゲル濾過過
程は省略した)。非還元性条件下において、精製したタンパク質は、SDS−P
AGE(ノ
ベックス社製;4〜20%傾斜ゲル)上において単一のバンドとして移動した(
見かけの分子量:約30kDa)。NIF−1FL/△G11−5とNIF−1
FL/△h、G11−7はNIF−1FLに比べてより高い移動度とより低い不
均質性を示したが、これは、野性型タンパク質に比べてこれらの変異体のグリコ
シル化度が比較的低いことに起因する。
両方の変異体は、プラスチック接着アッセイによって評価した(実施例23参
照)。この結果、7個の潜在的なN−グリコシル化部位の一部または全部を除去
しても、この生体外アッセイによって評価されるようなNIF−1FL分子の特
性は影響を受けないことが判明した。
実施例26
NIFに対するモノクローナル抗体の調製
NIFに結合するMAbsを生産するハイブリドーマを、次の文献に記載の方法
に従い、ピキア中で生産された組換えNIF−1FLを用いて免疫にしたマウス
から調製した:ソウル(H.R.Soule)、リンダー(E.Linder)およびエジ
ントン(T.S.Edgington)、プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・
アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc.Natl.Acad.Sci.US
A)、第80巻、第1332頁(1983年);ケーラーおよびミルスタイン、
ネイチャー(ロンドン)、第256巻、第495頁(1975年)。
生後8〜15週間の雌のbalb−cマウスに、完全フロインドアジュバントに加
えた組換えNIF(実施例12で調製)10μgを皮下接種し、3週間後、不完
全フロインドアジュバントに加えた組換えNIF10μgを皮下接種し、2週間
後、ミョウバン4mgに加えた組換えNIF10μgを腹膜内接種し、3〜4週間
後であって融合の4日前、塩類液に加えた組換えNIF10μgを腹膜内接種し
た。組換えNIFに対するポリクローナル抗体を生産するマウスは、125Iで標
識化した組換えNIFおよびヤギの固定化抗マウスIgGを用いる血清のイムノ
アッセイによって決定した。1:25000〜1:50000のタイターを示す
マウスを選別した。選別したマウスから脾臓細胞を採取し、腫瘍細胞と融合させ
た(脾臓細胞:腫瘍細胞=5:1)。NIFに結合するモノクローナル抗体を発
現するハ
イブリドーマ細胞を上記のイムノアッセイ法によって選別した。5×106個の
ハイブリドーマ細胞を、プリスタンで処置された雌のbalb−cマウスに腹膜内接
種した。
1種のモノクローナル抗体(3D2)が鉤虫から誘導されたNIFおよびピキ
ア中で生産された組換えNIF−1FLに結合することは、抗原捕獲アッセイに
よって確認された[ハーロー(E.Harlow)およびレーン(D.P.Lane)、「
抗体:実験マニュアル(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コー
ルド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1988年)」、第192頁〜第
193頁参照]。
実施例27
3D2マウスモノクローナル抗体と「エンファーゼ・バイオサポート媒体(Em phaze Biosupport Medium)」とのカップリング
(A)一段階法
3D2抗体28mgを0.5mlまで濃縮し、該濃縮物に0.6M炭酸ナトリウムお
よび0.1Mクエン酸ナトリウムの溶液(pH9.0)を添加した。乾燥したエン
ファーゼ・バイオサポート媒体(3M社製;セントポール、ミネソタ)315mg
を抗体溶液に加え、回転下で1時間混合した。エンファーゼスラリーをプラスチ
ックフリット上に捕獲し、残存する抗体溶液を排出させた。この樹脂を、10m
Mリン酸ナトリウムおよび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)20ml
を用いて洗浄した。捕集した樹脂をエタノールアミン3.0M溶液(pH9.0)
と回転下で2.5時間混合した。この樹脂をフリット上に再び捕集し、10mMリ
ン酸ナトリウムおよび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)を用いて洗
浄した。洗浄処理は、フリットから流出する液のpHが7.3になるまでおこな
った。得られた樹脂は、10mMリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウムお
よび0.05%アジドナトリウムの溶液(pH7.3)中に使用に供するまで保存
した。この方法によって得られた3D2/エンファーゼ樹脂結合物2mlは精製し
たNIFタンパク質1.4mgに結合することが判明した。
(B)二段階法
3D2抗体30mgを0.5Mトリス−HCl溶液(pH4.0)を用いて透析し
、5.0ml(6mg/ml)まで濃縮した後、4℃まで冷却した。エンファーゼ・バ
イオサポート媒体315mgを抗体溶液に添加し、4℃において回転下で10分間
混合した。硫酸ナトリウムを最終濃度が0.8Mになるまで添加し(563mg)
、エンファーゼスラリーと共に4℃でさらに10分間十分に混合した。1M N
aOH溶液を滴下することによってpHを9.0まで高めた。カップリング反応
は、攪拌下、4℃において60分間おこなった。エンファーゼスラリーをプラス
チックフリット上に捕集し、残存する抗体溶液を排出させた。この樹脂を10m
Mリン酸ナトリウムおよび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)20ml
を用いて洗浄した。1.0Mエタノールアミン溶液(pH9.3)6mlの添加によ
ってカップリング反応を停止させ、系を4℃において回転下で2.5時間混合し
た。この樹脂をフリット上に再び捕集した後、0.2Mリン酸ナトリウムおよび
0.5M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)を用いて洗浄した。この洗浄処理は
、フリットからの流出液のpHが7.3になるまでおこなった。得られた樹脂は
、0.01Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウムおよび0.05%(w/
v)アジドナトリウムの溶液(pH7.3)中に、使用に供するまで懸濁させて保
存した。この方法によって調製された3D2/エンファーゼ結合カラム2mlには
、精製したNIFタンパク質1.5mgが結合した。
(C)カップリング反応のスケールアップ
すべての容量と重量を10倍にスケールアップし、両方のカップリング方法に
従って、樹脂20mlを調製した。両方の方法により、NIFタンパク質に対して
結合能を有する樹脂が得られた。二段階法によって得られた3D2/エンファー
ゼ樹脂カラム20mlには、2mlカラムに比べて10倍以上のNIFタンパク質が
結合した。即ち、前者および後者に対する該タンパク質の結合量はそれぞれ15
〜19mgおよび1.5mgであった。一方、一段階法で得られた3D2/エンファ
ーゼ樹脂カラム20mlには、スケールアップに対応した量のNIFタンパク質は
結合しなかった(該タンパク質の典型的な結合量は5〜8mgであった)。このた
め、二段階法を利用してスケールアップしたカップリング反応をおこなった。
150ml二段階カップリングを次の様にしておこなった。0.5Mトリス−H
Cl 450ml(pH4.0)に3D2抗体2.25gを加えた溶液を、1000m
lのミクロキャリアースピナーフラスコ[ベルコ・グラス社(Be11co G1ass Inc
.)製;バインランド、ニュージャーシー]内のエンファーゼ・バイオサポート
媒体19gと4℃で10分間混合した。硫酸ナトリウム42gをこのエンファーゼ
スラリーに添加し、4℃でさらに10分間攪拌した。1M NaOH溶液をスピ
ナーフラスコのアームを通して滴下することによって系のpHを9.0に高めた
。反応は攪拌下、4℃で60分間おこなった。エンファーゼスラリーを90mmの
0.45ミクロンフィルター[コ−ニング・グラス・ワークス社(Corning Glas
s Works);コーニング、ニューヨーク]上に捕集し、残存する抗体溶液を排出さ
せた。この樹脂を、0.01Mリン酸ナトリウムおよび0.15M塩化ナトリウム
の溶液(pH7.3)1リットルを用いて洗浄した。反応は、1.0Mエタノール
アミン溶液(pH9.3)500mlを添加することによって停止させた。この停
止反応は、攪拌下、4℃で2.5時間おこなった。この樹脂を90mmの0.45ミ
クロン酢酸セルロースフィルター上に捕集し、0.2Mリン酸ナトリウムおよび
0.5M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)を用いて洗浄した。この洗浄処理は
、フィルターからの流出液のpHが7.3になるまでおこなった。樹脂は0.01
Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウムおよび0.05%アジドナトリウ
ムの溶液(pH7.3)中に使用に供するまで懸濁して保存した。このカップリ
ングによって得られた樹脂2mlにはNIFタンパク質が1.5mg結合した。同量
のNIFタンパク質は2ml反応において得られた樹脂に結合した。
実施例28
3D2/エンファーゼ免疫親和性クロマトグラフィーカラムを用いることによ る組換えNIFタンパク質の精製
組換えNIFタンパク質を含有する細胞上澄をサルトブラン(Sartobran)P
H0.07ミクロンデッドエンドフィルター[サルトリウス・ノース・アメリカ
社(Sartorius North America)製;ボヘミア、ニューヨーク]を用いる濾過処理
に付した後、10kDaミニサルト(Minisart)ポリスルホン膜モジュールを有
する
ミニ十字流システム(サルトリウス社製)を用いる接線流濾過によって10〜5
0倍に濃縮した。ミニ十字流装置内において、濃縮物を、0.01Mリン酸ナト
リウムおよび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)5容量部用いる透析
濾過処理に付した。濃縮物は、3D2/エンファーゼカラムにかける直前に、9
0mmの0.22ミクロン酢酸セルロースフィルター(コーニング社製)を用いる
濾過処理に付した。NIFタンパク質約150mqを20ml/分の流速で3D2/
エンファーゼカラム400mlを用いて処理した。濃縮物は0.1Mリン酸ナトリ
ウムおよび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)400mlを用いて20
ml/分の流速でカラムから溶出させた。カラムからの溶出液を捕集し、保存した
。カラムを1M NaCl溶液400mlを用いて洗浄し、洗液は廃棄した。カラ
ムに結合した組換えNIFタンパク質は、0.1Mグリシン溶液(pH2.5)8
00mlを用いて溶出させた。溶出後、カラムからの精製NIFタンパク質に1M
トリス塩基溶液を滴下して中和した。0.1Mリン酸ナトリウムおよび0.15M
塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)800mlをカラムに通すことにより該カラ
ムを平衡化させて再使用に供した。このカラム処理は、カラムからの流出液のp
Hが7.3になるまでおこなった。
3D2/エンファーゼカラムによって、NIFタンパク質が約1g精製された
ときに、精製タンパク質を貯留し、イーズィーフロー(Easyflow)20kDAポ
リスルホン濃縮装置(サルトリウス社製)を用いて濃縮した。濃縮タンパク質は
ファルマシア社(ピスケートウェイ、ニュージャージー)製の60cm×600cm
のスーパーデックス200prepゲル濾過カラム[0.01Mリン酸ナトリウムお
よび0.15M塩化ナトリウムの溶液(pH7.3)を用いて平衡化させた]を用
いて処理した(流速10ml/分)。溶出中(870〜1050ml)に観測された
唯一のピークはNIFタンパク質に対応した。
実施例29
好中球抑制因子は、血管内皮細胞に対する好酸球の接着のインヒビターである 。
サイトカインで刺激された内皮細胞に対するヒト好酸球の接着についてのNI
Fの効果をアッセイした。好酸球はモサー(Moser)らの報文[ジャーナル・オ
ブ・
イムノロジー第149巻、第1432頁〜第1438頁(1992a)]に記載
の方法により、正常なヒトから単離した。単離された好酸球は、モサーらの上記
報文に記載の方法に従い、10pM GM−CSFおよび10pM IL−3の
存在下において24時間培養した。へその緒の静脈から内皮細胞を採取し、組織
培養フラスコ内へ接種した後、24−ウェルプレートに移した(モサーらの上記
報文参照)。接着アッセイは、モサーらの上記報文に記載の方法に従い、次の様
にしておこなった。ヒトのへその緒の静脈内皮細胞(HUVEC)の単層を、ハ
ンクス(Hank's)の平衡塩溶液(HBSS)を用いて洗浄した後、TNFα50
0μlと共に、最終濃度が10ng/mlになるまで37℃で4時間前保温した。H
UVEC単層は、接着アッセイに供する直前に洗浄した。次いで、ヒトの精製ア
ルブミンを5mg/ml含有するHBSS500μl中の好酸球(2.5×105)を
、洗浄したHUVEC単層上に載置した。37℃で飽和湿度、5%CO2の条件
下において30分間インキュベートした後、24−ウェルプレートをPBS30
0ml浴中に3回浸漬させることによって、弱く接着した好酸球を除去した。この
プレートを4℃で乾燥させた後、接着好中球の数を、ペルオキシダーゼ活性の測
定によって求めた[モサーら、ブロッド、第79巻、第2937頁(1992b
)参照]。
組換えNIF(rNIF)は、GM−CSF/IL−3で開始されたヒト好中
球のTNF−活性化HUVEC単層に対する接着を、100nMで最大で約63
%抑制した。約10nMのrNIFの存在下では、約50%の接着が抑制された
(図13参照)。
実施例30
白血球に対するNIFの結合
NIFと白血球の相互作用を、ビオチン化組換えNIFを用いる流動細胞計測
法によってアッセイした。ビオチン化rNIFは、鉤虫のホモジネートから精製
NIFを誘導する場合の前記方法に従って調製した。但し、この場合には、ビオ
チン−IC−ヒドラジドの最終濃度が0.14mMになる条件下でrNIFを誘導
した。ヒト白血球の軟層調製物を牛の新生児血清2%およびNaN3 1%含有
液(PBS−NCS)中に懸濁させ、ビオチン化rNIF(0.6μg/ml)と共
に室温で5
分間インキュベートした。細胞をPBS−NCS1mlを用いて2回洗浄した後、
ストレプタビジンーフィコエリトリン[ファルミンゲン(Pharmingen)社製]を
0.25μg/ml含有する洗浄緩衝液(PBS中に牛の新生児血清5%およびNa
N3 0.1%含有する溶液)50μl中に再懸濁させた。4℃で15分間放置した
後、細胞を洗浄し、洗浄緩衝液0.5mlに再懸濁させた。ライシス(Lysys)IIソ
フトウェアを用いるFACScan装置[ベクトン・デッキンソン社(Becton Dick
inson)製]を利用することによつて、フローサイトメトリーをおこなった。白
血球の集団は、直角方向に前進する光スキャッターのサイトグラム(cytogram)
を用い、コンピューターでゲート制御(gate)した。バックグラウンド結合はビ
オチン化BSA[ピアース社(Pierce)製]を用いて測定した。
リンパ細胞(パネルA、DおよびG)、単球(パネルB、EおよびH)および
顆粒細胞(パネルC、FおよびI)に対するビオチン化rNIFの結合は流動細
胞計測法によって分析した(図24参照)。細胞のタイプは、直角方向に前進す
る光スキャッターのサイトグラムを用い、コンピューターでゲート制御した。パ
ネルA−Cは、ビオチン化BSAを用いる負の対照反応を示し、パネルD−Fは
、ビオチン化rNIFを用いたときの反応性を示し、また、パネルG〜Iは、5
0倍モル過剰の未誘導体化rNIFの存在下でビオチン化rNIFを用いたとき
の反応性を示す。全反応はストレプトアビジン−フィコエリトリンを用いて開始
させた。細胞の数を縦軸に示し、蛍光強度を横軸に示す。
ゲート制御された顆粒細胞と単球は、BSA−ビオチン対照に比べて、ビオチ
ン化rNIFに95%以上多く結合することが判明した(図24参照)。これに
対して、rNIFは、末梢血管のリンパ球のわずかな離散状集団をもたらした。
NIFの細胞結合は特異的である。何故ならば、ビオチン化rNIFを50倍モ
ル過剰の未誘導体rNIFと共保温することにより、3種類の白血球細胞集団と
の反応が停止するからである(図24参照)。これらの白血球細胞の各集団内に
、NIFと特異的に結合する細胞が存在することをこれらのデータは示す。
実施例31
NIF結合とCD11b/CD18発現の直接的コンコーダンス(concordance )
CD11b/CD18(LM2;ATCC♯HB204)に対する抗体を使用
する二元反応流動細胞計測実験をおこなうことによって、NIFに結合したリン
パ球集団のCD11b/CD18発現を調べた。ビオチン化rNIFで染色した
白血球を実施例30に記載の方法によって処理した。これらの実験においては、
LM2(1μg/ml)をリンパ球の全調製物およびビオチン化rNIFと共にイ
ンキュベートした。赤血球を溶解させて洗浄した後、リンパ球を、FITCを複
合化させたヤギ(Fab')2抗マウスIgG[カルタグ社(caltag)製]35μg/m
lおよびストレプタビジンーフィコエリトリンと反応させた。
NIF結合とCD11b/CD18発現の直接的コンコーダンスは二元蛍光分
析、即ち、rNIF結合と抗−CD11b/CD18モノクローナル抗体LM2
の結合に関する末稍血管リンパ球の集団を、直角方向に前進する光スキャッター
のサイトグラムを用いてコンピュータでゲート制御する流動細胞計測法によって
確認された。rNIFに反応性を示す全ての細胞はCD11b/CD18に対し
て正であった(図25参照)。
これらの実験によって、NIFに結合したリンパ球およびCD11b/CD1
8を発現させたリンパ球との間の直接的コンコーダンスが実証された(図25参
照)。これらの結果は、インテグリンCD11b/CD18が、白血球上でのN
IFに対する結合部位であることの有力な証拠である。
実施例32
NIFは、CD11bポリペプチドのI−ドメインの一部に結合する。
CD11b/CD18インテグリンのI−ドメイン(=Aドメイン)の一部は
、残基Cys128とGly321に近接して結合したCD11bポリペプチドセグメントを
含む[ミチシタ(Michishita,M)、ビデム(Videm,V)およびアーノート(Arn
aout,M.A.)、セル(Cell)、第72巻、第857頁〜第867頁(199
3年)参照]。NIFとI−ドメインペプチドとの直接的相互作用を証明するた
めに、I−ドメインのペプチドを可溶性の組換え融合ペプチドとして大腸菌細胞
内で発現させた。融合ペプチドは8つのアミノ酸標識ペプチド(FLAG)であ
る。I−ド
メインをクローン化するのに用いたPCRプライマーはCD11bポリペプチド
のアミノ酸配列(Gly111−A1a318)に基づいた。プライマーの配列は5’−CC
A−AAG−CTT−GGA−TCC−AAC−CTA−CGG−CAG−CA
G−CC−3’(プライマー1)および5’−CCA−TCT−AGA−CGC
−AAA−GAT−CTT−CTC−CCG−AAG−CT−3’(プライマー
2)である。プライマー1は付加的な5’−HindIII制限エンドヌクレアーゼ部
位を有しており、また、プライマー2は付加的な3’−XbaI部位を有する。ヒ
トの単球全RNAから合成されたランダム開始単鎖cDNA[cDNA合成プラ
ス、アマーシャム社(Amersham)製]と共にこれらのプライマーは対にして使用
した(プロトコルとしては実施例10参照)。出発物質としては、ヒトの単球を
使用した(約0.5g)。RCRの条件(30サイクル)は次の通りである:95
℃での変性/30秒間、45℃でのアニーリング/30秒間、72℃での延長/
2分間。PCRに用いた全ての試薬はパーキン−エルマー社(Perkin−Elmer)
製のものである。PCR増幅によって、適当な5’−および3’−制限部位を有
する約615個の塩基対のI−ドメインのコーディング領域を含むセグメントを
調製した。HindIII/XbaIで消化したフラグメントを、HindIII/XbaIで切断し
たプラスミドベクターpFLAG−1[インターナショナル・バイオテクノロジ
ーズ社(Inter-national Biotechnologies,Inc.,)製]に連結させた。この連
結体を使用することによって、アンピシリン100μg/mlおよびグルコース0.
4%含有する選択用LB培地寒天プレート上に載置したエピキュリーン・コリ(
Epicurean Coli)スール(SURE)適格細胞(ストラタジーン社製)を形質転
換した。形質転換コロニーを接種した一夜培養物3mlを、アンピシリンを100
μg/ml含有するLB中、37℃で増殖させた。一夜培養物からのプラスミドD
NAの分離は、マジック・ミニプレプ・キット(Magic Miniprep kit)(プロメ
ガ社製)を用いておこなった。分離したプラスミドDNAはHindIIおよびXbaI
を用いて制限した。615bpおよび5300bpの消化生成物が観測された。この
ことは、発現ベクター中にCD11b I−ドメインをコードする挿入断片が存
在することを示す。この発現プラスミドはPM1と呼ばれる。プラスミドPM1
を用いて形質
転換した大腸菌の一夜培養物5mlを、アンピシリン100μg/ml含有するLB
500mlに接種した。この培養混合物500μlを、OD600が0.400になる
まで37℃で増殖させ(約120分間)、次いで、イソプロピルb−D−チオガ
ラクトピラノシド(シグマ社製)を用いて誘発させた後、37℃でさらに2時間
増殖させた。細胞を遠心分離(5000g/5分間、25℃)によって収集した
。収集した細胞を抽出緩衝液−1(50mMトリス、pH8.0、5mMEDTA
、0.25mg/mnリゾチーム、50μg/mlNaN3)に再懸濁させた後、25℃
で5分間インキュベートした。この調製物に抽出緩衝液−2(1.5M NaC
l、100mM CaCl2、100mM MgCl2、0.02mg/mlDNアーゼ
1、50μg/mlオボムコイドプロテアーゼインヒビター)5mlを添加し、この
懸濁液を25℃で5分間インキュベートした。細胞を70Wで30秒間の超音波
処理を4サイクルおこなうことによって溶解させた[この処理には、ブランソン
社(Branson)製のソニック・パワー・ソニファイヤー(Sonic power sonifier
)を使用した]。不溶性の細胞破片を遠心分離(25000g/60分間、4℃
)によって分離した。CD11bI−ドメイン融合ペプチドを含有する細胞溶解
物を−70℃で保存した。
上記のようにして調製した細胞溶解物を、CD11bI−ドメイン融合タンパ
ク質のFLAGペプチドを認識したモノクローナル抗体(抗−FLAG M1;
インターナショナル・バイオテクノロジーズ社製)と共にインキュベートするこ
とによって、モノクローナル抗体/CD11bI−ドメイン融合タンパク質複合
体を調製した。これらの複合体を125I−rNIFと共にインキュベートした後、
タンパク質A−セファロース[カルバイオケム社(Calbiochem)製]を用いて沈
澱させた。M1モノクローナル抗体1μgを、CD11bI−ドメイン融合ペプ
チド含有細胞溶解物390μlと共に、105cpmの125I−rNIF(比放射能4
7.5μCi/μg;実施例14(B)参照)の存在下においてインキュベートし
た。全反応体積は400μlであり、反応は4℃で18時間おこなった。免疫複
合体はタンパク質A−セファロース(ファルマシア社製)100μlを用いて沈
澱させた。タンパク質A−セファロースは、TACTS20緩衝液との1:1ス
ラリーとして調製した後、0.5%BSAを用いてプレブロックしたものである
。沈澱後、セ
ファロースビーズをTACTS20緩衝液を用いて3回洗浄し、免疫複合体は還
元条件下(100mMジチオトレイトール)において、トリスーグリシンサンプ
ル緩衝液(ノベックス社製)の添加によって遊離させた。沈澱した標識化タンパ
ク質は、4〜20%傾斜SDS−PAGE(ノベックス社製)を用いて分けた後
、オートラジオグラフィーによって視識した。
125I−rNIFは、組換えI−ドメインペプチドを含有する細胞溶解物の存
在下において、M1モノクーロナル抗体を用いて沈澱させた。125I−rNIF
は、該細胞溶解物の不存在下では沈澱せず、また、融合タンパク質のFLAG部
分と反応しないモノクーロナル抗体(抗gpIIbIIIa)をM1モノクーロナル抗体
の代わりに用いる場合にも沈澱しなかった。さらに、FLAGと細菌アルカリ性
ホスファターゼを含有する他の融合タンパク質(pFLAG−BAP;インター
ナショナル・バイオテクノロジーズ社製)の存在下においても、125I−rNI
FはM1モノクーロナル抗体によって沈澱しなかった。これらのデータは、NI
FおよびCD11b/CD18のI−ドメインペプチドの間の直接的な特異的相
互作用を実証するものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 35/72 7431−4C
35/74 Z 7431−4C
38/00
49/00 A 7431−4C
C07H 21/04 B 8615−4C
C07K 7/06 8318−4H
7/08
14/435
C12N 1/19 8828−4B
1/21 8828−4B
5/10
C12P 21/02 C 9282−4B
21/08 9358−4B
C12Q 1/68 A 9453−4B
G01N 33/53 D 8310−2J
33/577 B 8310−2J
// A61K 39/395 U 9284−4C
(C12N 1/19
C12R 1:84)
(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12N 5/10
C12R 1:91)
9455−4C A61K 37/02
//(C12N 5/00 B
C12R 1:91)
(31)優先権主張番号 08/151,064
(32)優先日 1993年11月10日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AU,CA,FI,JP,K
R,NO,NZ
(72)発明者 フォスター、デイビッド・リー
アメリカ合衆国92122カリフォルニア、サ
ン・ディエゴ、アパートメント1705、チャ
ーマント・ドライブ7445番
(72)発明者 ブラスク、ジョージ・フィリップ
アメリカ合衆国92009カリフォルニア、カ
ールズバッド、ガーボソ・ストリート3024
番